JP2009072154A - 新規枯草菌変異株及び長寿命化した枯草菌変異株の作製方法 - Google Patents

新規枯草菌変異株及び長寿命化した枯草菌変異株の作製方法 Download PDF

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勝俊 荒
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順一 関口
Naoki Ogasawara
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Abstract

【課題】枯草菌に由来する長寿命化した変異株を提供するとともに、枯草菌に由来する長寿命化した変異株の作製方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る枯草菌変異株は、枯草菌におけるyydD-rocR遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有するものである。また、本発明に係る長寿命化した枯草菌変異株の作製方法は、対象となる枯草菌ゲノムにおけるyydD-rocR遺伝子領域を欠失させるものである。本発明に係る枯草菌変異株は、上記yydD-rocR遺伝子領域を有するゲノム構造を有する枯草菌株と比較して、長寿命化されているといった特徴を有している。ここで、上記yydD-rocR遺伝子領域は、特定の2つの塩基配列のオリゴヌクレオチドにより挟み込まれる領域として定義することもできる。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規な枯草菌変異株に関し、特に長寿命化した新規枯草菌変異株に関し、さらに長寿命化した枯草菌変異株の作製方法に関する。
枯草菌は、グラム陽性菌のモデルとして広く分子生物学の研究に供されているのみならず、アミラーゼやプロテアーゼといった各種酵素の生産菌として発酵工業及び医薬品工業等に広く利用されている。日欧共同ゲノムプロジェクトにより、枯草菌ゲノムの全塩基配列が既に決定されているが、枯草菌ゲノムに存在する約4100種類の遺伝子に関する機能同定は完了していない。
現在まで、枯草菌ゲノムに存在する約4100種類の遺伝子の破壊株が網羅的に研究され、271個の遺伝子が成育に必須であることが指摘されている(非特許文献1)。また、枯草菌等の胞子形成初期に関わる遺伝子やプロテアーゼ遺伝子、又は細胞壁或いは細胞膜中のテイコ酸へのD-アラニン付加に関わる遺伝子、更にはサーファクチンの生合成或いは分泌に関わる遺伝子を単独に欠失又は不活性化した菌株が構築されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8参照)。
しかしながら、それらの菌株において、長寿命化を達成したといった報告はなく、枯草菌に由来する長寿命化を達成した変異株は現在のところ知られていない。また、非特許文献1や特許文献1〜8には、枯草菌における長寿命化に関与する遺伝子について報告されていない。
K. Kobayashi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 100, 4678-4683, 2003 特開昭58-190390号公報 特開昭61-1381号公報 国際公開第89/04866号パンフレット 特表平11-509096号公報 特許第3210315 特表2001-527401 特表2002−520017 特表2001−503641
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、枯草菌に由来する長寿命化した変異株を提供するとともに、枯草菌に由来する長寿命化した変異株の作製方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは、枯草菌ゲノムの種々の領域を欠失させた変異株を解析し、枯草菌における長寿命化に関与するゲノム領域を特定することに成功し、発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る枯草菌変異株は、枯草菌におけるyydD-rocR遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有するものである。また、本発明に係る長寿命化した枯草菌変異株の作製方法は、対象となる枯草菌ゲノムにおけるyydD-rocR遺伝子領域を欠失させるものである。本発明に係る枯草菌変異株は、上記yydD-rocR遺伝子領域を有するゲノム構造を有する枯草菌株と比較して、長寿命化されているといった特徴を有している。ここで、上記yydD-rocR遺伝子領域は、配列番号1の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(CCTCTTCGGAAAACGCGCCATGACG)と配列番号2の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(CTCTGTCACACAAGGCGTCATCTCG)により挟み込まれる領域として定義することもできる。
また、本発明に係る枯草菌変異株は、枯草菌におけるprophage6 (yoaV-yobO)領域、prophage1 (ybbU-ybdE)領域、prophage4 (yjcM-yjdJ)領域、PBSX (ykdA-xlyA)領域、prophage5 (ynxB-dut)領域、prophage3 (ydiM-ydjC)領域、spb (yodU-ypqP)領域、pks (pksA-ymaC)領域、skin (spoIVCB-spoIIIC)領域、pps (ppsE-ppsA)領域、prophage2 (ydcL-ydeJ)領域、ydcL-ydeK-ydhU領域、yisB-yitD領域、yunA-yurT領域、cgeE-ypmQ領域及びyeeK-yesX領域からなる群から選ばれる1以上の遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有する枯草菌株から、上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有するものであることが好ましい。
本発明により、野生株や公知の変異株と比較して、長寿命化した枯草菌変異株を提供することができる。本発明に係る枯草菌変異株を種々の物質生産に使用することによって、長期間に亘って物質の生産を行うことができるため生産性を向上させることができる。
さらに、本発明により、種々の枯草菌野生株や枯草菌変異株を用いて、当該野生株や当該変異株と比較して長寿命化した枯草菌変異株を作製する方法を提供することができる。したがって、本発明に係る長寿命化した枯草菌変異株の作製方法によれば、種々の枯草菌野生株や枯草菌変異株の長寿命化を達成することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において提供される新規な枯草菌変異株は、枯草菌ゲノムからyydD-rocR遺伝子領域を欠失させることで取得できる。本発明に係る枯草菌変異株は、yydD-rocR遺伝子領域を欠損させる前の枯草菌株と比較して長寿命化したものとなる。ここで、長寿命化とは、培養時間の経過によって低下する細胞呼吸活性が長期に亘って高い値を維持することを意味する。枯草菌における細胞呼吸活性の測定方法としては、特に限定されず、従来公知の手法を使用することができる。例えば、5-シアノ-2,3-ジトリル-2H-テトラゾリウムクロライド(以下、CTCと略称する)を接触させた後の測定試料におけるCTCフォルマザン(以下、CTFと略称する)からなる赤色蛍光性沈殿を検出する手法が挙げられる。ここで、CTCとは、微生物内に取り込まれ呼吸活性に伴う電子伝達系の作用でCTFに還元され、水に不溶性の赤色蛍光沈殿として細胞内に蓄積することが知られている物質である。したがって、CTFに由来する赤色蛍光性沈殿を検出することによって、測定対象の微生物における呼吸活性を評価することができる。
このとき、CTFからなる赤色蛍光性沈殿の検出系としては、特に限定されないが、例えばフローサイトメトリーを利用する検出系、マイクロプレート及びプレートリーダーを利用する検出系を挙げることができる。フローサイトメトリーを利用する検出系では、CTF赤色蛍光性沈殿を所定の波長で励起し、これにより生ずる蛍光シグナルを検出する。また、マイクロプレート及びプレートリーダーを利用する検出系では、マイクロプレートにおけるウェル内において、CTF赤色蛍光性沈殿から生ずる蛍光シグナルを検出しても良いし、特定の波長の吸光度を検出しても良い。なお、CTF赤色蛍光性沈殿は、例えば、450nm付近の励起波長により励起し、630〜640nmの蛍光シグナルを測定することで検出することができる。また、CTF赤色蛍光性沈殿は、例えば、420nmの吸光度を測定することで検出することができる。
その他にも、枯草菌における細胞呼吸活性の測定方法としては、蛍光顕微鏡を用いた方法やフローサイトメトリーを用いた方法が知られている。蛍光顕微鏡を用いた方法では、励起波長を510〜560nmとし、蛍光波長590nmの蛍光を検出することで細胞活性を有する細胞(CTF赤色蛍光性沈殿)を測定することができる。また、フローサイトメトリーを用いた方法では励起波長を488nmとし、び蛍光波長650nmの蛍光を検出することで細胞呼吸活性を有する細胞(CTF赤色蛍光性沈殿)の検出が可能である。
本発明に係る枯草菌変異株は、枯草菌の野生株及び変異株からyydD-rocR遺伝子領域を欠損させたゲノム構造を有している。ここで、上記yydD-rocR遺伝子領域とは、yydD遺伝子とrocR遺伝子とを含み、これらyydD遺伝子とrocR遺伝子により挟み込まれた領域を意味する。また、yydD-rocR遺伝子領域とは、枯草菌ゲノムにおいて、配列番号1の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(CCTCTTCGGAAAACGCGCCATGACG)と配列番号2の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(CTCTGTCACACAAGGCGTCATCTCG)により挟み込まれる領域として言い換えることができる。
また、yydD-rocR遺伝子領域には、yydD遺伝子、yydC遺伝子、yydB遺伝子、yydA遺伝子、yycS遺伝子、yycR遺伝子、yycQ遺伝子、yycP遺伝子、yycO遺伝子、yycN遺伝子、rapG遺伝子、phrG遺伝子、rocF遺伝子、rocE遺伝子、rocD遺伝子及びrocR遺伝子が含まれている。すなわち、本発明に係る枯草菌変異株は、これらyydD遺伝子、yydC遺伝子、yydB遺伝子、yydA遺伝子、yycS遺伝子、yycR遺伝子、yycQ遺伝子、yycP遺伝子、yycO遺伝子、yycN遺伝子、rapG遺伝子、phrG遺伝子、rocF遺伝子、rocE遺伝子、rocD遺伝子及びrocR遺伝子の全てが欠損した枯草菌変異株であると言える。
これらyydD遺伝子、yydC遺伝子、yydB遺伝子、yydA遺伝子、yycS遺伝子、yycR遺伝子、yycQ遺伝子、yycP遺伝子、yycO遺伝子、yycN遺伝子、rapG遺伝子、phrG遺伝子、rocF遺伝子、rocE遺伝子、rocD遺伝子及びrocR遺伝子のなかで、rapG遺伝子は、コンピテンスの促進に関わるComAのリン酸化(活性化)を抑制する脱リン酸化酵素をコードしており、またphrG遺伝子にコードされているペプチドはコンピテンスシグナル因子であり、RapGタンパク質の阻害因子としても機能している。枯草菌には環境応答システムとしてコンピテンス及びスポア形成を制御しているRap-Phrシステムが11種類存在している。よって、これらrapG遺伝子及びphrG遺伝子が欠失することによって、Rap-Phrシステムの一部であるRapG-PhrGシステムが機能していないことが示唆される。
また、rocR遺伝子は、アルギニン代謝に関わる遺伝子の正の転写制御因子をコードしている。よって、rocR遺伝子を欠失することによって、細胞内のアミノ酸、糖などの代謝のバランスが大きく変わると考えられ、細胞内の代謝活動が長期間に亘り維持できる状況が生じたと考えられる。
以上のようにyydD-rocR遺伝子領域が欠失することによって、細胞内の正常な機能が失われ、或いは細胞内の種々の状態変化を誘発することとなる結果、細胞呼吸活性を長期間に亘って維持できるものと考えられる。なお、詳細は後述するが、prophage6 (yoaV-yobO)領域)、skin(spoIVCB-spoIIIC)領域)及びprophage2(ydcL-ydeJ)領域には、Rap-PhrシステムとしてそれぞれRapK-PhrK、RapE-PhrE及びRapI-PhrIシステムをコードする遺伝子が含まれている。したがって、prophage6 (yoaV-yobO)領域)、skin(spoIVCB-spoIIIC)領域)及びprophage2(ydcL-ydeJ)領域から選ばれる少なくとも1領域を欠失した枯草菌変異株から更に上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失させることによって、上記yydD-rocR遺伝子領域に含まれるRapG-PhrGシステムに加えてRapK-PhrK、RapE-PhrE及びRapI-PhrIシステムの機能を欠損させることができ、上述した環境応答システムの機能不全が顕著となり、細胞呼吸活性をより長期間に亘って維持できるものと考えられる。
上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失させる枯草菌株としては、特に限定されず、従来公知の野生株や変異株を挙げることができる。このように、上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失させることにより、yydD-rocR遺伝子領域を欠失させる前の野生株や変異株と比較して呼吸活性が長期間に亘って維持することができる。すなわち、上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失した枯草菌株は、長寿命化したものとなる。
また、特定の領域を欠失させた枯草菌変異株に対して、更に上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失させてもよい。特定の領域を欠失させた枯草菌変異株としては、枯草菌におけるprophage6 (yoaV-yobO)領域、prophage1 (ybbU-ybdE)領域、prophage4 (yjcM-yjdJ)領域、PBSX (ykdA-xlyA)領域、prophage5 (ynxB-dut)領域、prophage3 (ydiM-ydjC)領域、spb (yodU-ypqP)領域、pks (pksA-ymaC)領域、skin (spoIVCB-spoIIIC)領域、pps (ppsE-ppsA)領域、prophage2 (ydcL-ydeJ)領域、ydcL-ydeK-ydhU領域、yisB-yitD領域、yunA-yurT領域、cgeE-ypmQ領域及びyeeK-yesX領域からなる群から選ばれる1以上の遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有する枯草菌株を挙げることができる。なお、枯草菌168株からこれら16領域の全てを欠損させた変異株を枯草菌MGB625株と称する場合もある。特に、本発明に係る枯草菌変異株は、この枯草菌MGB625株から上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有するものであることが好ましい。
ここで上述した各遺伝子領域は、表1のオリゴヌクレオチド・セットにより挟み込まれる領域として定義することもできる。
Figure 2009072154
これら遺伝領域を欠失した枯草菌株において、さらに上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失させることによって、yydD-rocR遺伝子領域を欠損させる前の枯草菌株と比較して呼吸活性を長期間に亘って維持することができ、長寿命化されたものとなる。
上記yydD-rocR遺伝子領域を枯草菌ゲノム上から欠失させる方法、表1に示した欠失領域を枯草菌ゲノム上から欠失させる方法としては、特に限定されないが、例えば図1に示す以下の方法を適用することができる。
すなわち、いわゆるSOE-PCR法(Gene,77,61 (1989))によって調製される欠失用DNA断片を挿入した欠失用プラスミドを用いた2段階の1重交差法を用いる方法によって、表1に示した欠失領域を枯草菌ゲノム上から欠失させる。本方法で用いる欠失用DNA断片は、欠失対象領域の上流に隣接する約0.1〜3kb断片(上流断片と称する)、同じく下流に隣接する約0.1〜3kb断片が結合したDNA断片(下流断片と称する)とを連結したDNA断片である。また当該DNA断片の下流或いは上流にクロラムフェニコール耐性遺伝子などの薬剤耐性マーカー遺伝子断片を結合させたDNA断片を用いることもできる。
まず、1回目のPCRによって、欠失対象遺伝子の上流断片及び下流断片、並びに必要に応じて薬剤耐性マーカー遺伝子断片の3断片を調製する。この際、結合対象となるDNA断片の末端10〜30塩基対の配列を付加したプライマーを設計する。例えば、上流断片及び下流断片をこの順で結合させる場合、上流断片の下流末端に位置する(アニールする)プライマーにおける5’末端に、下流断片の上流側10〜30塩基に相当する配列を付加し、また下流断片の上流末端に位置する(アニールする)プライマーにおける5’末端に、上流断片の下流側10〜30塩基に相当する配列を付加する。このように設計したプライマーセットを用いて上流断片及び下流断片を増幅した場合、増幅された上流断片の下流側には下流断片の上流側に相当する領域が付加されることとなり、増幅された下流断片の上流側には上流断片の下流側に相当する領域が付加されることとなる。
次に1回目に調製した上流断片及び下流断片を混合して鋳型とし、上流断片の上流側に位置する(アニールする)プライマー及び下流断片の下流側に位置する(アニールする)プライマーからなる1対のプライマーを用いて2回目のPCRを行う。この2回目のPCRにより、上流断片及び下流断片をこの順で結合した欠失用DNA断片を増幅することができる。
なお、欠失用DNA断片に薬剤耐性マーカー遺伝子断片を連結する場合には、1回目のPCRにおいて、下流断片の下流側に相当する領域を付加するように、薬剤耐性マーカー遺伝子断片を増幅する。さらに2回目のPCRにおいて、上流断片の上流側に位置する(アニールする)プライマーと薬剤耐性マーカー遺伝子断片の下流側に位置する(アニールする)プライマーからなる一対のプライマーを使用する。これにより、上流断片、下流断片及び薬剤耐性マーカー遺伝子断片の順で結合した欠失用DNA断片を増幅することができる。
また、上流断片及び下流断片をこの順で結合した欠失用DNA断片を2回目のPCRによって増幅した後、薬剤耐性マーカー遺伝子を含むプラスミドに欠失用DNA断片を挿入することで、上流断片、下流断片及び薬剤耐性マーカー遺伝子断片をこの順で有する欠失用DNA断片を調製しても良い。
更に、上述の方法などによって得られる欠失用DNA断片を、通常の制限酵素とDNAリガーゼを用いて宿主菌内で増幅されないプラスミドDNA、又は温度感受性プラスミド等、容易に除去できるプラスミドDNAに挿入することによって、欠失導入用プラスミドを構築する。宿主菌内で増幅されないプラスミドDNAの例としては、例えば枯草菌を宿主とする場合、pUC18、pUC118、pBR322などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
次いで、欠失用プラスミドによる宿主菌の形質転換をコンピテントセル形質転換法(J. Bacteriol. 93, 1925 (1967))などによって行い、プラスミドに挿入された上流断片或いは下流断片とゲノム上の相同領域間での1重交差の相同組換えによって欠失用プラスミドが宿主菌ゲノムDNA内に融合した形質転換体を得る。形質転換体の選択には欠失導入用プラスミドのクロラムフェニコール耐性遺伝子などのマーカー遺伝子による薬剤耐性を指標に行えば良い。
かくして得られる形質転換体のゲノム上には欠失すべきゲノム上の薬剤耐性遺伝子の上流領域及び下流領域の配列について、宿主菌ゲノム由来と欠失用プラスミドに由来するものが重複して存在している。この上流領域又は下流領域のうち、形質転換体を獲得する際に相同組換えした領域と異なる領域でゲノム内相同組換えを起こさせることにより、欠失用プラスミド由来の領域と共にゲノム上の薬剤耐性遺伝子など欠失すべき標的遺伝子の欠失が生じる。ゲノム内の相同組換えを起こさせる方法としては、例えばコンピテンスを誘導する方法(J. Bacteriol. 93, 1925 (1967))が挙げられるが、単に通常の培地での培養中においても自然誘発的に相同組換えが生じる。目的通りにゲノム内相同組換えを起こした菌株は同時に薬剤耐性遺伝子を欠失して薬剤に対する耐性能を失うため、薬剤感受性となった菌株より選択することができる。こうした菌株からゲノムDNAを抽出し、PCR法などによって目的遺伝子の欠失を確認すれば良い。
目的の欠失株を選択する際、薬剤耐性から感受性に変化した菌株を直接選択することは難しく、またゲノム内での相同組換えは約10-4以下の低い頻度で生じるものと考えられる。そこで、目的欠失株を効率的に取得するためには薬剤感受性株の存在比率を高めるなどの工夫を施すことが望ましい。薬剤感受性株の濃縮方法としては、例えばアンピシリンなどのペニシリン系抗生物質が、増殖細胞に対して殺菌的に作用し、一方、非増殖細胞には作用しないことを利用した濃縮法(Methods in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Labs, (1970))などが挙げられる。アンピシリンなどによる濃縮を行う場合、例えばテトラサイクリンやクロラムフェニコールなどの様に宿主細胞に対して静菌的に作用する薬剤に対する耐性遺伝子の欠失に関して有効である。こうした静菌的作用の薬剤を適量含む適当な培地において、当該薬剤耐性遺伝子を保持する耐性株は増殖可能であり、当該薬剤耐性遺伝子を欠失した感受性株は増殖も死滅もしない。この様な条件下において適当な濃度のアンピシリンなどのペニシリン系抗生物質を添加して培養を行うと、増殖しようとする耐性株が死滅する一方、感受性株はアンピシリンなどの作用を受けず、結果として感受性株の存在比率が高まることになる。この様な濃縮操作を行った培養液を適当な寒天培地に塗抹、培養し、出現したコロニーのマーカー薬剤に対する耐性の有無をレプリカ法などによって確認することにより、効率的に感受性株を選択することが可能となる。
以上のようにして、ゲノム上の所定の領域を単独で欠失したゲノム構造を有する枯草菌変異株を製造することができる。さらに、複数の領域を欠失したゲノム構造を有する枯草菌変異株は、いわゆる、LP(lysis of protoplasts)形質転換方法によって製造することができる。LP形質転換法は、『T. Akamatsu及びJ. Sekiguchi, 「Archives of Microbiology」, 1987年, 第146巻, p.353-357』及び『T. Akamatsu及びH. Taguchi, 「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」, 2001年, 第65巻,第4号, p.823-829』を参照することで利用することができる。すなわち、LP形質転換法では、細胞壁を溶解させたプロトプラストを供与体DNAとして、レシピエント菌株のコンピテントセルに供与する。添加されたプロトプラストは浸透圧ショックにより破壊され、培養液中に放出された供与体DNAがレシピエント菌株のコンピテントセルに取り込まれるものと考えられている。また、LP形質転換方法によれば、一般的な形質転換方法に比べて、導入すべきDNAの損傷は大幅に軽減する。
このLP形質転換法を適用することによって、単独で欠失したゲノム構造を有する枯草菌変異株から複数の領域を欠失したゲノム構造を有する枯草菌変異株をあらたに製造することができる。具体的には、先ず、特定の領域(第1の欠失領域と呼ぶ)を欠失したゲノム構造を有する枯草菌変異株をプロトプラスト化し、異なる領域を(第2の欠失領域)を欠失したゲノム構造を有する枯草菌変異株のコンピテントセルと共存させる。これにより、第1の欠失領域を有するゲノムDNA(供与体DNA)と、第2の欠失領域を有するゲノムDNA(宿主DNA)との間で一組の鎖間交換構造を形成することとなる。この一組の鎖間交換構造が供与体DNAにおける第1の欠失領域を挟み込んだ位置で生じることによって、供与体DNAにおける第1の欠失領域が宿主DNAに導入されることとなる。このようにして、LP形質転換法を適用することによって、第1の欠失領域及び第2の欠失領域を欠失したゲノム構造を有する枯草菌変異株を製造することができる。この方法を応用すれば、成育に必須な遺伝子を欠失しない限り、複数の領域を欠失したゲノム構造を有する枯草菌変異株を製造することができる。以上のようにして、上記yydD-rocR遺伝子領域や表1に示した領域を枯草菌ゲノム上から欠失させることができ、所望のゲノム構造を有する枯草菌変異株を作製することができる。
本発明に係る微生物株は、yydD-rocR遺伝子領域を欠失する前の枯草菌168株等の野生標準菌株や変異株と比較して長寿命化したのもであるため、物質生産に利用することで当該物質を優れた生産性で製造することができる。例えば、本発明に係る微生物株に所望のタンパク質をコードする遺伝子を導入することによって、当該タンパク質を製造することができる。生産される目的タンパク質又は目的ポリペプチドは、特に限定されず、例えば洗剤、食品、繊維、飼料、化学品、医療、診断など各種産業に使用される産業用酵素や生理活性ペプチドなどが挙げられるが、特に産業用酵素であることが好ましい。産業用酵素には、機能別に分類すると、酸化還元酵素(Oxidoreductase)、転移酵素(Transferase)、加水分解酵素(Hydrolase)、脱離酵素(Lyase)、異性化酵素(Isomerase)及び合成酵素(Ligase/Synthetase)等が含まれる。この中でも、本発明の枯草菌変異株を用いて生産される目的タンパク質としては、好適には、セルラーゼ、α-アミラーゼ、プロテアーゼ等の加水分解酵素が挙げられる。
例えば、遺伝子としてセルラーゼ、プロテアーゼ及びアミラーゼを導入すると、野生標準菌株や変異株に同遺伝子を導入した場合と比較して長期間に亘って物質生産を行うことができる。なお、セルラーゼの生産性は、一例として以下のようにして測定することができる。先ず、セルラーゼ遺伝子を有するベクターを用いて供試枯草菌変異株を形質転換する。次に、得られた形質転換体を培養した後、遠心分離等によって菌体を除いた培養液上清を得る。そして、得られた上清に基質として例えば、p-nitrophenyl-β-D-cellotrioside(生化学工業)を添加し、所定時間反応させ、反応を行った際に遊離するp-ニトロフェノール量を420nmにおける吸光度(OD420nm)変化により定量する。これにより、供試枯草菌変異株に導入したセルラーゼ遺伝子にコードされるセルラーゼの生産性を測定することができる。なお、枯草菌168株等の標準野生株におけるセルラーゼの生産性を同様に測定することで、供試枯草菌変異株におけるセルラーゼ生産性を相対値として評価することができる。
プロテアーゼの生産性は、一例として以下のようにして測定することができる。先ず、プロテアーゼ遺伝子を有するベクターを用いて供試枯草菌変異株を形質転換する。次に、得られた形質転換体を培養した後、遠心分離等によって菌体を除いた培養液上清を得る。そして、得られた上清に基質として例えば、Succinyl-L-Alanyl-L-Alanyl-L-Alanine p-Nitroanilide (STANA ペプチド研究所)を添加し、所定時間反応させ、反応を行った際に遊離するp-ニトロアニリン量を420nmにおける吸光度変化(OD420nm)により定量する。これにより、供試枯草菌変異株に導入したプロテアーゼ遺伝子にコードされるプロテアーゼの生産性を測定することができる。なお、枯草菌168株等の標準野生株におけるプロテアーゼの生産性を同様に測定することで、供試枯草菌変異株におけるプロテアーゼ生産性を相対値として評価することができる。
アルカリアミラーゼの生産性は、一例として以下のようにして測定することができる。先ず、アルカリアミラーゼ遺伝子を有するベクターを用いて供試枯草菌変異株を形質転換する。次に、得られた形質転換体を培養した後、遠心分離等によって菌体を除いた培養液上清を得る。そして、例えば、アミラーゼ活性測定キットであるリキテックAmy EPS(ロシュ・ダイアグノスティック社)を使用して、上清に含まれるアルカリアミラーゼの活性を測定することができる。これにより、供試枯草菌変異株に導入したアルカリアミラーゼ遺伝子にコードされるアルカリアミラーゼの生産性を測定することができる。なお、枯草菌168株等の標準野生株におけるアルカリアミラーゼの生産性を同様に測定することで、供試枯草菌変異株におけるアルカリアミラーゼ生産性を相対値として評価することができる。
本発明に係る微生物株に導入される目的タンパク質又はポリペプチドの遺伝子は、その上流に当該遺伝子の転写、翻訳、分泌に関わる制御領域、即ち、プロモーター及び転写開始点を含む転写開始制御領域、リボソーム結合部位及び開始コドンを含む翻訳開始領域並びに分泌シグナルペプチド領域から選ばれる1以上の領域が適正な形で結合されていることが望ましい。特に、転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が結合されていることが好ましく、更に分泌シグナルペプチド領域がバチルス(Bacillus)属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始領域及び翻訳開始領域が当該セルラーゼ遺伝子の上流0.6〜1kb領域であるものが、目的のタンパク質又はポリペプチド遺伝子と適正な形で結合されていることが望ましい。例えば、特開2000-210081号公報や特開平4-190793号公報等に記載されているバチルス(Bacillus)属細菌、すなわちKSM-S237株(FERM BP-7875)、KSM-64株(FERM BP-2886)由来のセルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始領域及び分泌シグナルペプチド領域が目的のタンパク質又はポリペプチドの構造遺伝子と適正に結合されていることが望ましい。
より具体的には配列番号159で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜659の塩基配列、配列番号160で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜696の塩基配列、また当該塩基配列に対して70%以上、80%以上または、90%以上の相同性を有することが好ましく、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上、より特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA断片、あるいは上記いずれかの塩基配列の一部が欠失した塩基配列からなるDNA断片が、目的タンパク質又はポリペプチドの構造遺伝子と適正に結合されていることが望ましい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕MGB625ΔR4株の構築
枯草菌168株ゲノムDNAを鋳型とし、表2に示したR4/CmF及びR4-RVのプライマーセット並びにR4-FW及びR4/CmRのプライマーセットを用いて、ゲノム中のR4(yydD-rocR遺伝子)領域の上流に隣接する1.0kb断片並びに下流に隣接する1.0kb断片を、PCRによりそれぞれ増幅した。さらに、プラスミドpC194(J. Bacteriol. 150 (2), 815 (1982))を鋳型として、表2に示したcatfとcatrのプライマーセットを用いてクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む0.85kb断片をPCRにより増幅した。次に、得られた3つのDNA断片を混合して鋳型とし、表7に示したR4-FW2とR4-RV2のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行なうことによって、R4領域削除用DNAを合成した。
Figure 2009072154
次に、このR4領域削除用DNAを用いてコンピテント法により、後述する参考実験例1で得られた枯草菌MGB625株の形質転換を行い、10ppmのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体のゲノムを抽出し、PCRによってyydD-rocR領域が欠失してクロラムフェニコール耐性遺伝子に置換していることを確認した。得られた枯草菌変異株をMGB625ΔR4株と称する。
〔実施例2〕MGB625ΔR4株のCTC活性評価
CTC(5-シアノ-2,3-ジトリル-2H-テトラゾリウムクロライド)は、呼吸活性に伴う電子伝達系の作用でCTCフォルマザン(CTF)に還元され、水に不溶性となり細胞中に赤色蛍光性沈澱として検出される(図2参照)。本実施例では、SYTO9核酸染色試薬(以下LIVEと略す)と併用して呼吸活性を有する細胞を観察した。実施例1にて得られたMGB625ΔR4株及び対照として枯草菌168株を5mLのLB培地で一夜30℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.6mLを30mLの2×L−マルトース培地(2% トリプトン、1% 酵母エキス、1% NaCl、7.5% マルトース、7.5 ppm硫酸マンガン4-5水和物、15 ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃で振盪培養を行った。
培養60時間後にOD600が2.5の培養液から菌体を集菌(10,000 rpm、5min)し、1mlの滅菌精製水に懸濁し、再度集菌(10,000rpm、5min)した。0.9 mlの滅菌精製水に懸濁し、0.1mlの10mM CTC試薬(同仁化学社製、組成:100mg、純度95%以上)を菌懸濁液に加え、30分室温に遮光した状態で静置した。菌懸濁液中の反応しなかった蛍光試薬を除くため、集菌(10,000rpm、5min)し、1mlの滅菌精製水に懸濁し、再度集菌(10,000rpm、5min)を2回繰り返し、1mlの滅菌精製水に懸濁し、マイクロプレートリーダー(BAIORAD社製、商品名:MICROPLATE READER Model550)にて吸光度420nmを測定した。
本実施例の結果として、CTC染色を行った後のMGB625ΔR4株懸濁液及び枯草菌168株懸濁液をマイクロプレートに分注した後の写真を図3Aに示した。また、マイクロプレートリーダーを使用して吸光度420nmで測定した結果を図3Bに示した。図3Bに示した結果より、MGB625ΔR4株懸濁液の吸光度は168株懸濁液の吸光度の1.23倍であった。この結果から、yydD-rocR遺伝子を欠失することによって細胞呼吸活性が向上し、長寿命化が図れることが明らかとなった。
〔実施例3〕MGB625ΔR4株のアルカリセルラーゼ分泌生産評価
実施例1にて得られたMGB625ΔR4株及び対照として枯草菌168株に、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)由来のアルカリセルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)断片(3.1 kb)がシャトルベクターpHY300PLKのBamHI制限酵素切断点に挿入された組換えプラスミドpHY-S237を、プロトプラスト形質転換法によってそれぞれ導入した。これによって得られた菌株を5mLのLB培地で一夜30℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.6mLを30 mLの2×L−マルトース培地(2% トリプトン、1% 酵母エキス、1% NaCl、7.5% マルトース、7.5 ppm硫酸マンガン4-5水和物、15 ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃で振盪培養を行った。培養60時間後に培養液を採取し、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清のアルカリセルラーゼ活性を測定し、培養によって菌体外に分泌生産されたアルカリセルラーゼの量を求めた。
MGB625ΔR4株或いは枯草菌168株に由来するアルカリセルラーゼ分泌生産菌それぞれにおける、アルカリセルラーゼ量を測定した結果を図3Cに示す。図3Cから判るように、宿主としてMGB625ΔR4株を用いた場合には、168株を宿主とした場合と比較して1.38倍の高いアルカリセルラーゼの分泌生産が認められた。この結果から、yydD-rocR遺伝子を欠失することによって長寿命化が図れるとともに、分泌型タンパク質等の物質の生産性も向上することが明らかとなった。
〔参考実験例1〕
本実験例では、枯草菌168株を野生株としてゲノム上の所定の領域を欠失させることによって実施例1で使用したMGB625株を作製した。なお、本実験例で使用した各種のプライマーに関し、プライマー名と、塩基配列と、配列番号との対応を末尾に表5として示した。
<upp遺伝子欠失株(cat-uppカセットを含む)の作製>
図4に示すように、枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、upp-AFWとupp-ARV、及びupp-BFWとupp-BRVの各プライマーセットを用いて、ゲノム上のupp遺伝子(BG 13408;uracil phosphoribosyl-transferase)の上流に隣接する1.0kb断片(a1)、及び下流に隣接する1.0kb断片(b1)をPCRにより増幅した。また、プラスミドpMutinT3 (Microbiology ,144, 3097 ,1998)を鋳型として、Erm-FWとErm-RVプライマーのセットを用いてエリスロマイシン耐性遺伝子を含む1.2kb断片(c1)を、PCRによって調製した。尚、PCR反応は反応系を20μLとして、LATaqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて添付のプロトコールに従い、(a1)、(b1)については鋳型DNAである枯草菌168株ゲノム50ng、(c1)についてはプラスミドDNA1ng、上記プライマーを各200nM、dATP、dTTP、dCTP、dGTPを各200μM、LATaq0.2U、添付の10×緩衝液を1×となるように混合した。増幅反応には、PCRシステム(アプライドバイオシステム社製GeneAmp9700)を用い、95℃で5分間の熱変性の後、95℃で15秒、次に55℃で30秒、さらに72℃で60秒間恒温し、これを繰り返し25回おこない、最後に30秒間72℃で伸長を完了させた。このようにして得られた上記3つ(a1)、(b1)及び(c1)のPCR増幅断片をセントリコン(ミリポア社製)にて精製後、各0.5μLを混合し、さらに、プライマーupp-AFWとupp-BRVを加えて上記PCR条件の72℃での恒温を3分間に変更し、SOE−PCRをおこなった。このPCRの結果、3断片を(a1)、(c1)及び(b1)の順になる様に結合させた3.2kbのDNA断片(d1)を得た。このDNA断片を用いてコンピテント法(J.Bacteeriol.,81,741,1960)により枯草菌168株の形質転換を行った。
すなわち、枯草菌168株をSPI培地(0.20% 硫酸アンモニウム、1.40% リン酸水素二カリウム、0.60% リン酸二水素カリウム、0.10% クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50% グルコース、0.02% カザミノ酸 (Difco)、5mM 硫酸マグネシウム、0.25μM 塩化マンガン、50μg/ml トリプトファン)において37℃で、生育度(OD600)の値が1程度になるまで振盪培養した。振盪培養後、培養液の一部を9倍量のSPII培地(0.20% 硫酸アンモニウム、1.40% リン酸水素二カリウム、0.60% リン酸二水素カリウム、0.10% クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50% グルコース、0.01% カザミノ酸 (Difco)、5mM 硫酸マグネシウム、0.40μM 塩化マンガン、5μg/ml トリプトファン)に接種し、更に生育度(OD600)の値が0.4程度になるまで振盪培養することで、枯草菌168株のコンピテントセルを調製した。次いで調製したコンピテントセル懸濁液(SPII培地における培養液)100μLに上記DNA断片(d1)を含む溶液(上記SOE−PCRの反応液)5μLを添加し、37℃で1時間振盪培養後、0.5g/mLのエリスロマイシンを含むLB寒天培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、1.5%寒天)に全量を塗沫した。37℃における静置培養の後、生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体のゲノムを抽出し、これを鋳型とするPCRによってupp遺伝子がゲノム上から欠失し、エリスロマイシン耐性遺伝子に置換していることを確認した。以後この株を168Δuppと表記する。尚、後述するコンピテント法による形質転換は、使用するDNAや形質転換体選抜の為の寒天培地を適宜変更する他は、上述の方法と同様にして行った。
<cat-uppカセットDNA断片の構築>
図5に示すように、upp遺伝子とクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)の転写が確実に行われる様、枯草菌で転写が確認されているプラスミドpSM5022 (Mol. Microbiol. 6, 309 ,1992) のcat遺伝子の下流にupp遺伝子を結合させた。即ち、cat-Fwとcat-Rvのプライマーセットを用い、pSM5022を鋳型として、PCRによりcatを含む1.3kbのDNA断片を増幅した。また、プライマーupp-Fwとupp-RVを用いて168株ゲノムを鋳型としてPCRを行いupp遺伝子を含む1.1kbのDNA断片を得た。次にこれら2断片を精製後、SOE−PCRにより結合し、cat遺伝子の下流にupp遺伝子が結合した2.4kbのca-uppカセットDNA断片(C)を調製した。更にこの断片をプラスミドpBR322のClaI切断部位に挿入することにより組換えプラスミドpBRcatuppを得た。
<Pro1領域欠失株(cat-uppカセット断片を含む)の作製>
図6に示すように、Pro1-AFWとPro1-ARV、Pro1-BFWとPro1-BRVの各プライマーセットを用いて、168株ゲノムを鋳型として、PCRによってPro1領域の上流に隣接する0.6kbの断片(A)及び下流に隣接する0.3kbの断片(B)を調製した。なお、図6において、Pro1領域は「欠失標的領域」と記載した。
次いで、得られたPCR増幅断片(A)及び(B)と、上述のcat-uppカセット断片(C)とを鋳型として、プライマーPro1-AFWとPro1-BRVによるSOE−PCRを行って3断片を(A)、(C)及び(B)の順になる様に結合させた。得られたDNA断片(D)を用いてコンピテント法により168Δupp株の形質転換を行い、10ppmのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に生育可能な形質転換体を分離した。得られた形質転換体はPCRによってPro1領域がゲノム上から欠失し、cat-uppカセットDNA断片に置換していることを確認した。更に、本形質転換体を種々の濃度の5FU(シグマアルドリッチ社製)を添加したCg + グルコース寒天培地(7%リン酸水素二カリウム、3%リン酸二水素カリウム、0.5%クエン酸ナトリウム、1%硫酸アンモニウム、0.1%硫酸マグネシウム、0.05%グルタミン酸、0.5%グルコース、10ng/mL L-トリプトファン、0.55μg/mL塩化カルシウム、0.17μg/mL塩化亜鉛、43ng/mL塩化銅二水和物、60ng/mL塩化コバルト六水和物、60ng/mLモリブデン酸(IV)ナトリウムニ水和物、1.5%寒天)上で培養を行ったが、0.5μg/mL以上の5FUを加えた培地では生育が認められなかった。一方、形質転換体の親株である168Δupp株は同一条件で5μg/mLの5FUを加えた培地でも生育が観察された。以上の結果から、形質転換体に導入されたupp遺伝子がcat遺伝子プロモーターからの転写により発現して5FUに感受性になったものと推定された。このようにして得られた株をΔPro1::cat-upp株とした。なお、図6において、ΔPro1::cat-upp株は、Δ欠失標的領域::cat-upp株と記載した。
<Pro1領域欠失株からのcat-uppカセット断片(C)の削除>
図7に示すように、ΔPro1::cat-upp株ゲノムを鋳型とし、Pro1-AFWとPro1-ERV及びPro1-FFWとPro1-BRVのプライマーセットを用いてcat-uppカセット断片(C)の上流に隣接する0.6kbの断片(E)、下流に隣接する0.3kbの断片(F)を増幅し、更に、得られた両DNA断片を鋳型としPro1-AFW及びPro1-BRVプライマーセットによるSOE−PCRによって、両断片が結合した0.9kbの断片(G)を調製した。この断片(G)によって、上述のΔPro1::cat-upp株をコンピテント法により形質転換し、1μg/mL/の5FUを添加したCg + グルコース寒天培地に生育可能な株を取得した。得られた株においてクロラムフェニコール感受性と、ゲノム上のPro1領域及びcat-uppカセットDNA断片が欠失していることを確認し、これをΔPro1株とした。なお、図7において、ΔPro1::cat-upp株及びΔPro1株は、それぞれ「Δ欠失標的領域::cat-upp株」「Δ欠失標的領域株」と記載した。
<単独領域欠失株の作製1>
上述したΔPro1株の作製手順に準じて、図6で説明した方法により、ΔPro3::cat-upp株、ΔPro4::cat-upp株、ΔPro5::cat-upp株、ΔPro6::cat-upp株、ΔPro7::cat-upp株、ΔPBSX::cat-upp株、を作製した。また、図7で説明した方法により、ΔPro2株、ΔPro3株、ΔPro4株、ΔPro5株、ΔPro6株、ΔPro7株、ΔPBSX株、ΔSPβ株、ΔSKIN株、Δpks株及びΔpps株を作製した。これら各株を作製する工程における、断片(A)〜断片(G)を増幅する際に使用したプライマーセットを下記の表3に示す。
Figure 2009072154
<多重欠失株の構築(MGB01株〜MGB07株まで)>
次に、ΔPro7株(MGB01株とも称する)を用いて、複数の領域が欠失した株(多重欠失株)を構築した。まず、Pro7領域及びPro6領域の二重欠失株を以下のように構築した。すなわち、Pro6領域がcat-uppカセット断片で置換されたΔPro6::cat-upp株のゲノムDNAを用いてΔPro7株をコンピテント法により形質転換し、10ppmのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に生育したコロニーを形質転換体として分離した。次に、得られたクロラムフェニコール耐性の形質転換体を、ΔPro6株のゲノムDNAを用いてコンピテンと法により形質転換し、1μg/mLの5FUを添加したCg + グルコース寒天培地に生育可能な株を取得した。得られた株においてクロラムフェニコール感受性を確認し、Pro6領域とPro7領域の両方が欠失し、更に、cat-uppカセット断片を含まない二重欠失株を分離した。この株をMGB02株と命名した。
同様の操作を繰り返すことによってPro7領域、Pro6領域及びPro1領域を順次欠失させたMGB03株を構築した。同様の操作を繰り返すことによってPro7領域、Pro6領域、Pro1領域及びPro4領域を順次欠失させたMGB04株を構築した。同様の操作を繰り返すことによってPro7領域、Pro6領域、Pro1領域、Pro4領域及びPBSX領域を順次欠失させたMGB05株を構築した。同様の操作を繰り返すことによってPro7領域、Pro6領域、Pro1領域、Pro4領域PBSX領域及びPro5領域を順次欠失させたMGB06株を構築した。同様の操作を繰り返すことによってPro7領域、Pro6領域、Pro1領域、Pro4領域、PBSX領域、Pro5領域及びPro3領域を順次欠失させたMGB07株を構築した。
<各単独領域欠失株の作製2>
上述した<単独領域欠失株の作製1>とは異なる方法で、SPβ領域、pks領域、SKIN領域、pps領域、Pro2領域、Pro5領域、NED0302領域(ydcL-ydhU領域)、NED0803領域(yisB-yitD領域)、NED3200領域(yunA-yurT領域)、NED1902領域(cgeE-ypmQ領域)及びNED0501領域(yeeK-yesX領域)を単独で欠失した株を構築した。
ここでは、SPβ領域を単独で欠失した株の構築例を説明する。図8に示すように、spB-AFWとspB-ARV2、及びspB-BFW2とspB-BRVのプライマーセットを用いて、168株ゲノムを鋳型として、PCRによってSPβ領域の上流に隣接する0.6kbの断片(H)及び下流に隣接する0.3kbの断片(I)を調製した。なお、図8には、SPβを「欠失標的領域」と記載した。
またtet-FWとtet-RVのプライマーセットを用いて、テトラサイクリン耐性遺伝子領域断片(J)を増幅した。次いで、得られたPCR増幅断片(H)(I)(J)を鋳型として、プライマーspB-AFWとspB-BRVによるSOE−PCRを行って3断片を(H)(J)(I)の順になる様に結合させた。得られたDNA断片(K)を用いてコンピテント法により、上述した168Δupp株の形質転換を行い、15ppmのテトラサイクリンを含むLB寒天培地に生育可能な形質転換体を分離した。得られた形質転換体はPCRによってSPβ領域がゲノム上から欠失し、テトラサイクリン耐性遺伝子断片に置換していることを確認し、これをΔSPβ::tet株とした。なお、図8には、ΔSPβ::tet株を「Δ欠失標的領域::tet株」と記載した。
同様にして上述した各領域を単独で欠失した株を作製した。作製した株は、ΔSPβ::tet株と同様に「Δ欠失標的領域::tet株」と呼称する。
<MGB07株からのSPβ領域の欠失>
上記で作製したΔSPβ::tet株のゲノムDNAを用いてΔPro7株を形質転換し、テトラサイクリン耐性株MGB07ΔSPβ::tet株を取得した。一方、次の様にしてテトラサイクリン耐性遺伝子断片のゲノム上からの除去を行った。
図9に示すように、spB-AFWとspB-ERV、及びspB-FFWとspB-BRVのプライマーセットを用いて、168株ゲノムを鋳型としてPCRによってSPβ領域の上流に隣接する0.6kbの断片(L)及び下流に隣接する0.3kbの断片(M)を調製した。なお、図9には、SPβを「欠失標的領域」と記載した。
次いで、得られたPCR増幅断片(L)(M)を鋳型として、プライマーspB-AFWとspB-BRVによるSOE−PCRを行って2断片を(L)(M)の順になる様に結合させた。得られたDNA断片(N)を、上述したpBRcatuppのsacI-KpnI制限酵素部位(切断後に平滑末端化)に挿入して、テトラサイクリン耐性遺伝子断片削除用プラスミドpBRcatuppΔSPβを構築した。なお、図9には、pBRcatuppΔSPβを「pBRcatuppΔ欠失標的領域」と記載した。
構築したpBRcatuppΔSPβにてMGB07ΔSPβ::tet株を形質転換し、プラスミド上のSPβ上流または下流の領域と、ゲノム上のSPβ上流または下流の領域との間で一重交差の組換えが起こったことにより、プラスミドがゲノム上に導入され、クロラムフェニコール耐性を示す株MGB07ΔSPβ(pBR)株を取得した。
得られた形質転換株MGB07ΔSPβ(pBR)株をテトラサイクリン1.5μg/mLを含むLB培地50mL(500mL容坂口フラスコ)に、OD600=0.3となる様に植菌し、37℃で振盪培養して1時間目にアンピシリン15mg (300μg/mL)を加え、以降2時間毎にアンピシリン15mgを添加しながら培養を継続、培養8.5時間後に培養液を2%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、薬剤を含まないLB寒天培地に塗沫した。生育したコロニーのうち、プラスミド領域の脱落に伴ってクロラムフェニコール感受性となったものを選抜した。
選抜した菌株のゲノムDNAを鋳型とし、PCRを行うことにより、SPβ領域及びテトラサイクリン耐性遺伝子断片が欠失していることを確認し、MGB08株を取得した。
<MGB08株からのpks領域の欠失とPro5領域の復帰>
上記で作製したMGB08株からのpks領域の欠失を、上述した方法(図9)に準じ、Δpks::tet株を用いて行った。MGB08株からpks領域を欠失させた株をMGB09株と命名した。取得したMGB09株のゲノムDNAをPCRにて確認したところ、pks領域は欠失していたが、pks領域とゲノム上で近い位置に存在するPro5領域内部の配列の存在が認められ、Pro5領域が復帰していることが分かった。これはΔpks::tet株のゲノムDNAを用いてMGB08株を形質転換した際に、pks領域の欠失に伴うテトラサイクリン耐性遺伝子の導入と同時に、Δpks::tet株ゲノム上のpks領域の上流領域とPro5領域下流の領域が、MGB08株ゲノム上の相当する領域との間で相同組換えが起こったことによるものと考えられた。
<MGB09株からのSKIN領域の欠失とPro7領域の復帰>
上記で作製したMGB09株からのSKIN領域の欠失を、上述した方法(図9)に準じ、ΔSKIN::tet株を用いて行った。MGB09株からSKIN領域を欠失させた株をMGB10株と命名した。取得したMGB10株のゲノムDNAをPCRにて確認したところ、SKIN領域は欠失していたが、SKIN領域とゲノム上で近い位置に存在するPro7領域内部の配列の存在が認められ、Pro7領域が復帰していることが分かった。これはΔSKIN::tet株のゲノムDNAを用いてMGB09株を形質転換した際に、SKIN領域の欠失に伴うテトラサイクリン耐性遺伝子の導入と同時に、ΔSKIN::tet株ゲノム上のSKIN領域の上流領域とPro7領域下流の領域が、MGB09株ゲノム上の相当する領域との間で相同組換えが起こったことによるものと考えられた。
<MGB10株からのpps領域の欠失>
上記で作製したMGB10株からのpps領域の欠失を、上述した方法(図9)に準じ、Δpps::tet株を用いて行った。MGB10株からpps領域を欠失させた株をMGB11株と命名した。取得したMGB11株のゲノムDNAをPCRにて確認したところ、他の領域が復帰することなくpps領域が欠失していた。
<MGB11株からのPro2領域の欠失>
上記で作製したMGB11株からのPro2領域の欠失を、上述した方法(図9)に準じ、ΔPro2::tet株を用いて行った。MGB11株からPro2領域を欠失させた株をMGB12株と命名した。取得したMGB12株のゲノムDNAをPCRにて確認したところ、他の領域が復帰することなくPro2領域が欠失していた。
<MGB12株からのPro5領域の欠失>
MGB09株を作製する際に復帰したPro5領域を再び欠失させるため、上記で作製したMGB12株からのPro5領域の欠失を、上述した方法(図9)に準じ、ΔPro5::tet株を用いて行った。MGB12株からPro5領域を欠失させた株をMGB11d株と命名した。取得したMGB11d株のゲノムDNAをPCRにて確認したところ、他の領域が復帰することなくPro5領域が欠失していた。
以上のように作製されたMGB11d株は、枯草菌168株における、Pro6(yoaV-yobO)領域、Pro1(ybbU-ybdE)領域、Pro4(yjcM-yjdJ)領域、PBSX(ykdA-xlyA)領域、Pro5(ynxB-dut)領域、Pro3(ydiM-ydjC)領域、SPβ(yodU-ypqP)領域、pks(pksA-ymaC)領域、SKIN(spoIVCB-spoIIIC)領域、pps (ppsE-ppsA)領域及びPro2(ydcL-ydeJ)領域が欠失されたゲノム構造を有している。
<本実施例で使用した枯草菌MGB625株の構築>
本実施例で使用した枯草菌MGB625株は、上述したように作製したMGB11d株から以下のように作製した(図10参照)。すなわち、上述した方法(図9)に準じ、MGB11d株からのNED0302領域の欠失を、ΔNED0302::tet株を用いて行った。MGB11d株からNED0302領域を欠失させた株をMGB533株と命名した。取得したMGB533株は、MGB11d株における欠失領域の他にNED0302領域が欠失したゲノム構造を有することとなる。
その後、MGB533株からNED0803領域、NED3200領域、NED1902領域及びNED0501領域を順に欠失させて変異株を構築した。構築された変異株を、それぞれMGB559株、MGB592株、MGB604株及びMGB625株と命名した。以上のようにして、実施例1で使用した枯草菌MGB625株を作製した。
なお、NED3200領域はPro2領域を含んでおり、MGB592株構築の際にMGB559株より欠失された実際の領域はydeK-ydhUの領域である。またNED1902領域はSPβ領域を含んでおり、MGB604株構築の際にMGB592株より欠失された実際の領域はcgeE-phyの領域とyppQ-ypmQの領域である。
これら各株を作製する工程における、断片(H)〜断片(N)を増幅する際に使用したプライマーセットを下記の表4に示す。
Figure 2009072154
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Figure 2009072154
Figure 2009072154
枯草菌のゲノム上から所定の領域を欠失させる方法の一例を説明するための模式図である。 CTCの蛍光発色の原理の模式図である。 AはCTC染色を行った後の枯草菌168株懸濁液(左列)及び枯草菌MGB625ΔR4株懸濁液(右列)をマイクロプレートに分注した後の写真であり、Bはマイクロプレートに分注された枯草菌168株懸濁液(左列)及び枯草菌MGB625ΔR4株懸濁液(右列)をマイクロプレートリーダーを使用して吸光度420 nmで測定した結果を示す特性図であり、Cは枯草菌MGB625ΔR4株に由来するアルカリセルラーゼ分泌生産菌(右列)或いは枯草菌168株に由来するアルカリセルラーゼ分泌生産菌(左列)それぞれにおけるアルカリセルラーゼ量を測定した結果を示す特性図である。 枯草菌168株から168Δupp株を作製する手順を説明するための模式図である。 cat-uppカセットDNA断片を挿入してなる組換えプラスミドpBRcatuppを作製する手順を説明するための模式図である。 Δ欠失標的領域::cat-upp株を作製する手順を説明するための模式図である。 Δ欠失標的領域株を作製する手順を説明するための模式図である。 Δ欠失標的領域::tet株を作製する手順を説明するための模式図である。 pBRcatuppΔ欠失標的領域を用いて、所定の変異株における欠失標的領域を欠失させる手順を説明するための模式図である。 本発明に係る複数の欠失領域を欠失した枯草菌変異株の作製過程を説明するための模式図である。

Claims (9)

  1. 枯草菌におけるyydD-rocR遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有する枯草菌変異株。
  2. 上記yydD-rocR遺伝子領域を有するゲノム構造を有する枯草菌株と比較して、長寿命化されていることを特徴とする請求項1記載の枯草菌変異株。
  3. 上記yydD-rocR遺伝子領域は、配列番号1の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(CCTCTTCGGAAAACGCGCCATGACG)と配列番号2の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(CTCTGTCACACAAGGCGTCATCTCG)により挟み込まれる領域であることを特徴とする請求項1又は2記載の枯草菌変異株。
  4. 枯草菌におけるprophage6 (yoaV-yobO)領域、prophage1 (ybbU-ybdE)領域、prophage4 (yjcM-yjdJ)領域、PBSX (ykdA-xlyA)領域、prophage5 (ynxB-dut)領域、prophage3 (ydiM-ydjC)領域、spb (yodU-ypqP)領域、pks (pksA-ymaC)領域、skin (spoIVCB-spoIIIC)領域、pps (ppsE-ppsA)領域、prophage2 (ydcL-ydeJ)領域、ydcL-ydeK-ydhU領域、yisB-yitD領域、yunA-yurT領域、cgeE-ypmQ領域及びyeeK-yesX領域からなる群から選ばれる1以上の遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有する枯草菌株から、上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項記載の枯草菌変異株。
  5. 上記遺伝子領域は、表1のオリゴヌクレオチド・セットにより挟み込まれる領域であることを特徴とする請求項4記載の枯草菌変異株。
    Figure 2009072154
  6. 対象となる枯草菌ゲノムにおけるyydD-rocR遺伝子領域を欠失させる、長寿命化した枯草菌変異株の作製方法。
  7. 上記yydD-rocR遺伝子領域は、配列番号1の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(CCTCTTCGGAAAACGCGCCATGACG)と配列番号2の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(CTCTGTCACACAAGGCGTCATCTCG)により挟み込まれる領域であることを特徴とする請求項6記載の長寿命化した枯草菌変異株の作製方法。
  8. 枯草菌におけるprophage6 (yoaV-yobO)領域、prophage1 (ybbU-ybdE)領域、prophage4 (yjcM-yjdJ)領域、PBSX (ykdA-xlyA)領域、prophage5 (ynxB-dut)領域、prophage3 (ydiM-ydjC)領域、spb (yodU-ypqP)領域、pks (pksA-ymaC)領域、skin (spoIVCB-spoIIIC)領域、pps (ppsE-ppsA)領域、prophage2 (ydcL-ydeJ)領域、ydcL-ydeK-ydhU領域、yisB-yitD領域、yunA-yurT領域、cgeE-ypmQ領域及びyeeK-yesX領域からなる群から選ばれる1以上の遺伝子領域を欠失させたゲノム構造を有する枯草菌株から、上記yydD-rocR遺伝子領域を欠失させることを特徴とする請求項6又は7項記載の枯草菌変異株の作製方法。
  9. 上記遺伝子領域は、表2のオリゴヌクレオチド・セットにより挟み込まれる領域であることを特徴とする請求項8記載の枯草菌変異株の作製方法。
    Figure 2009072154
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