JP2009057609A - 磁性体ナノ粒子及びその製造方法 - Google Patents

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信也 前之園
Yasushi Tanaka
康史 田中
Soichiro Saida
壮一郎 齋田
Haruo Asatani
治生 浅谷
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Abstract

【課題】飽和磁化の低下を抑えたFe及びPtを含有するナノ粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
下記1)〜4)からなる群より選ばれる1種以上の特定化合物をFePtナノ粒子の表面修飾剤として用いることにより、従来知られていたオレイン酸で表面修飾されているFePtナノ粒子よりも飽和磁化の低下が抑えられるナノ粒子及びその製造方法を提供することが出来る。
1)炭素数9以下の飽和脂肪族カルボン酸
2)炭素数6〜10の飽和脂肪族アミン
3)炭素数4以上の飽和脂肪族チオール
4)炭素数17以下の不飽和脂肪族カルボン酸
【選択図】なし

Description

本発明は、Fe及びPtを含有するナノ粒子及びその製造方法に関する。
従来、少なくともFe及びPtを含有するナノ粒子(以下、適宜「FePtナノ粒子」と言う。)に関して、磁性体微粒子として、酸化鉄微粒子と並んでその製造方法や物性確認等に関する研究が各種なされてきた。例えば、非特許文献1には、鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]と白金アセチルアセトナート[Pt(acac)2]とを原料とし、等モル量のオレイン酸およびオレイルアミンの共存下、オクチルエーテル溶媒中で、Fe(CO)5の熱分解とヘキサデカンジオールなどの多価アルコールによるPt(acac)2の還元とを同時進行させることによって立方晶のFePtナノ粒子を得る方法(ポリオール法)が記載されている。この方法により得られるFePtナノ粒子は、オレイン酸がその表面に配位している。また、4級アンモニウム塩を表面に配位させることで、FePtナノ粒子を親水性化させること(非特許文献2参照)や、バンコマイシンといった抗生物質を表面に結合させることも知られている(非特許文献3参照)。
このような表面修飾剤の存在は、ナノ粒子同士の凝集、ナノ粒子表面の酸化等による劣化などの抑制に重要な役割を示したり、ナノ粒子表面への官能基導入による機能性の付加・複合化といった点で有用である一方で、非特許文献4に記載のようにFePtナノ粒子においてはその飽和磁化に悪影響を与えることも知られている。
S. Sun, C. B. Murray, D. Weller, L. Folks, A. Moser, Science287, 1989, 2000 V. Salgueirino-Maceira et al., Langmuir 2004, 20, 6946-6950 H. Gu et al., Chem. Commun., 2003,1966-1967 X. W. Wu, et al., J. Appl. Phys., 95, 2004, 6810-6812
FePtナノ粒子は、その飽和磁化の高さから、酸化鉄に代わる発熱体として有用であるものの、高飽和磁化及び安定性を両立させることに課題があったため、飽和磁化の低下を抑えながらも安定なFePtナノ粒子の出現が望まれていた。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、特定化合物をFePtナノ粒子の表面修飾剤として用いることにより、従来知られていたオレイン酸で表面修飾されているFePtナノ粒子よりも飽和磁化の低下が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、粒子表面に、1)炭素数9以下の飽和脂肪族カルボン酸、2)炭素数6〜10の飽和脂肪族アミン、3)炭素数4以上の飽和脂肪族チオール、4)炭素数17以下の不飽和脂肪族カルボン酸、からなる群より選ばれる1種以上の化合物が配位し、Fe及びPtを含有することを特徴とするナノ粒子に存する(請求項1)。
また、この時、平均粒径が1nm以上500nm以下であり、かつ、Feの平均含有割合が35原子%以上であることが好ましい(請求項2)。
さらに、平均結晶子径が前記平均粒径の70%以上であることが好ましい(請求項3)。
また、本発明の別の要旨は、表面に有機酸及び/又は有機塩基が配位したFe及びPtを含有するナノ粒子を製造した後、前記有機酸及び/又は前記有機塩基の少なくとも一部を、1)炭素数9以下の飽和脂肪族カルボン酸、2)炭素数6〜10の飽和脂肪族アミン、3)炭素数4以上の飽和脂肪族チオール、4)炭素数17以下の不飽和脂肪族カルボン酸、からなる群より選ばれる1種以上の化合物と置換する工程を少なくとも有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノ粒子の製造方法に存する(請求項4)。
この時、前記有機酸が脂肪族カルボン酸であることが好ましい(請求項5)。
本発明によれば、従来よりも飽和磁化の低下を抑えた、Fe及びPtを含有するナノ粒子を得ることができる。
以下、本発明について実施の形態を示して説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[1.ナノ粒子の製造方法]
本発明の少なくともFe及びPtを含有するナノ粒子(即ち、「FePtナノ粒子」)の製造方法としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、Fe原料とPt原料とを反応させてFePtナノ粒子を製造する公知の方法を任意に選択して製造することが出来る。ただし、本発明のFePtナノ粒子の製造方法においては、表面に有機酸及び/又は有機塩基が配位した少なくともFe及びPtを含有するナノ粒子を製造した後、前記有機酸及び/又は前記有機塩基の少なくとも一部を、1)炭素数9以下の飽和脂肪族カルボン酸、2)炭素数6〜10の飽和脂肪族アミン、3)炭素数4以上の飽和脂肪族チオール、4)炭素数17以下の不飽和脂肪族カルボン酸、からなる群より選ばれる1種以上の化合物と置換する工程を行うことが好ましい(以下、この製造方法を適宜「本発明の製造方法」と言う。)。この時、前記有機酸が脂肪族カルボン酸であることが好ましい。
また、本発明のFePtナノ粒子は、Fe原料とPt原料とを反応させる際、有機酸及び有機塩基が共存することが好ましい。以下、本発明の製造方法について説明する。
[1−1.Fe原料]
Fe原料としては、Feを含有し、Pt原料と反応してFePtナノ粒子を得ることができるものであれば、任意のものを用いることができる。
Fe原料の例を挙げると、有機鉄化合物が挙げられる。この有機鉄化合物の具体例としては、鉄(II)メトキシド、鉄(III)メトキシド、鉄(III)エトキシド、鉄(II)プロポキシド等の鉄アルコキシド、鉄ペンタカルボニル、酢酸鉄(II)、ステアリン酸鉄(III)、ラウリン酸鉄(III)、鉄(II)アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、2−エチルヘキサン酸鉄(II)などが挙げられる。
また、その他の鉄化合物としては、例えば、酸化第一鉄、酸化第二鉄、四酸化三鉄、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、セレン化鉄、酸化タングステン酸鉄(III)、三酸化チタン鉄、五酸化チタン二鉄、窒化鉄、二硫化鉄、バナジン酸鉄(II)、ほう化鉄、ほう化二鉄、よう化鉄、りん化鉄、りん化二鉄などが挙げられる。
これらのうち好ましくは有機鉄化合物であり、より好ましくは鉄アルコキシドであり、特に好ましくは鉄(III)エトキシドである。
なお、Fe原料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
[1−2.Pt原料]
Pt原料としては、Ptを含有し、Fe原料と反応してFePtナノ粒子を得ることができるものであれば任意のものを用いることができる。
Pt原料の例を挙げると、白金(II)アセチルアセトナート、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)白金等の有機白金化合物、ジアンミンジニトロ白金(II)、塩化白金(II)、シス−ジアンミンジクロロ白金(II)、トランス−ジアンミンジクロロ白金(II)、二よう化白金、四よう化白金などが挙げられる。このうち、好ましくは白金(II)アセチルアセトナート、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)白金等の有機白金化合物、ジアンミンジニトロ白金(II)、塩化白金(II)であり、より好ましくは白金(II)アセチルアセトナート、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)白金等の有機白金化合物、塩化白金(II)であり、特に好ましくは白金(II)アセチルアセトナート、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)白金等の有機白金化合物であり、更にその中でも白金(II)アセチルアセトナートが好ましい。
なお、Pt原料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
Pt原料の使用量は、所望のFePtナノ粒子が得られる限り任意であり、所望のFePtナノ粒子の組成に応じて設定すればよい。ただし、熱分解や還元反応によって生成したFeやPt原子(あるいは中間体)は、有機酸(オレイン酸)および有機塩基(オレイルアミン)とそれぞれ錯体を形成すると考えられる。その後、Fe錯体及びPt錯体からFe及びPt原子がそれぞれ生成し、核発生・核成長過程を経てFePtナノ粒子が生成すると考えられる。従って、反応時におけるそれぞれの錯体の安定性によって、生成する原子の量が異なるため、使用量はそれらを考慮することが望ましい。即ち、オレイン酸鉄とオレイルアミン白金との組み合わせの場合、オレイン酸鉄はオレイルアミン白金よりも安定性が高いため、ナノ粒子中に取り込まれる量が少ない。従って、目的とする原子比のFePtナノ粒子を合成するためには、オレイン酸鉄の使用量を目的とする原子比に相当する使用量より多くすることが望ましい。具体的には、温熱治療用のFePtナノ粒子を製造する場合には、Fe原料に対するPt原料の使用量は、通常30モル%以上、中でも40モル%以上、特には45モル%以上が好ましく、また、通常70モル%以下、中でも60モル%以下、特には55モル%以下が好ましい。Fe原料とPt原料との比率を前記の範囲とすることにより、含有するFeとPtとの原子比が50:50に近い、温熱治療に用いて好適なFePtナノ粒子が得られるからである。
[1−3.有機酸]
有機酸の種類に制限は無く、FePtナノ粒子が得られる限り任意の有機酸を用いることができる。
該有機酸の具体例としては、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、α−リノレン酸等のトリ不飽和脂肪酸、リノール酸等のジ不飽和脂肪酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸等のモノ不飽和脂肪酸などの脂肪族カルボン酸が挙げられる。また、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸も、具体例として挙げられる。さらに、γ−リシノール酸等のヒドロキシ酸なども具体例として挙げられる。これらの中でも、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸が好ましく、脂肪族カルボン酸がより好ましく、トリ不飽和脂肪族カルボン酸、ジ不飽和脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸が更に好ましく、オレイン酸が特に好ましい。なお、有機酸は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
本反応に用いられる有機酸の状態、沸点等は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意である。ただし、Fe原料とPt原料との反応時に液体状態にあるものが好ましく、また、その沸点としては、100℃以上のものが好ましい。
また、FePtナノ粒子の表面保護という観点から、有機酸としては、官能基に近い部分が嵩高くないものの方が、FePtナノ粒子表面を密に被覆することができるため、好ましい。具体的には、芳香族化合物よりも脂肪族化合物の方が好ましく、脂肪族化合物の中でも、環状、分岐鎖状化合物より直鎖状化合物の方が好ましい。
有機酸の炭素数は、本発明のFePtナノ粒子が得られる限り、任意であるが、通常6以上、好ましくは10以上、より好ましくは16以上、また、通常28以下、好ましくは24以下、より好ましくは22以下である。炭素数が少なすぎると沸点が低くなりすぎる可能性があり、多すぎると融点が高くなり反応溶液調製が困難になったり、均一反応を実現することが難しくなったりする可能性がある。
また、有機酸の使用量は、本発明のFePtナノ粒子が得られる限り、任意であるが、Fe原料に対し等モル倍以上用いることが好ましい。具体的には、Fe原料に対して、通常1モル倍以上、中でも1.5モル倍以上、特には2モル倍以上使用することが好ましい。このように、有機酸をFe原料に対して等モル倍以上用いることにより、FePtナノ粒子の粒径をより確実に大きくすることが可能になる。一方、上限としては、通常8モル倍以下、好ましくは6モル倍以下、より好ましくは4モル倍以下として使用する。Fe原料に対する有機酸の量が多すぎると、得られるFePtナノ粒子中のFe含有量が少なくなる可能性がある。
[1−4.有機塩基]
有機塩基の種類に制限は無く、FePtナノ粒子が得られる限り任意の有機塩基を用いることができる。
好適な有機塩基の例を挙げると、オレイルアミン等の1級アミン化合物;ジエチルアミン等の2級アミン化合物;トリエチルアミン等の3級アミン化合物;テトラメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;ピリジン等の複素環式アミン化合物等のアミン化合物などが挙げられる。中でも、1級アミン化合物が好ましく、オレイルアミンが特に好ましい。
なお、有機塩基は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
本反応に用いられる有機塩基の状態、沸点等は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意である。ただし、Fe原料とPt原料との反応時に液体状態にあるものが好ましく、また、その沸点としては、100℃以上のものが好ましい。
また、FePtナノ粒子の表面保護という観点から、有機塩基としては、官能基に近い部分が嵩高くないものの方が、FePtナノ粒子表面を密に被覆することができ好ましい。即ち、芳香族化合物よりも脂肪族化合物の方が好ましく、脂肪族化合物の中でも、環状、分岐鎖状化合物より直鎖状化合物の方が好ましい。
有機塩基の炭素数に制限は無いが、通常6以上、好ましくは10以上、より好ましくは16以上、また、通常28以下、好ましくは24以下、より好ましくは22以下である。炭素数が少なすぎると沸点が低くなりすぎる可能性があり、多すぎると融点が高くなり反応溶液調製が困難になったり、均一反応を実現することが難しくなったりする可能性がある。
また、FePtナノ粒子の製造においては、有機塩基を有機酸に対して過剰に用いることが好ましい。好適な範囲としては、有機酸に対して有機塩基の使用量が、通常1.5モル倍以上、好ましくは1.7モル倍以上、より好ましくは2モル倍以上である。このように有機塩基を有機酸よりも過剰に用いることにより、FePtナノ粒子中のFeの割合を高めることが可能となるとともに、粒径を好適な範囲にまで大きくすることが可能となる。ただし、有機塩基をあまりに過剰に使用するとFePtナノ粒子が凝集する可能性があるため、凝集を避けたい場合は、通常10モル倍以下、中でも5モル倍以下とすることが好ましい。
[1−5.その他の成分]
本発明の製造方法においては、本発明の効果を著しく損なわない限り、反応系に上述したFe原料、Pt原料、有機酸及び有機塩基以外にその他の成分を共存させても良い。例えば、FePtナノ粒子にFe及びPt以外の金属成分を含有させるのであれば、当該金属に対応した原料を共存させても良い。
また、例えば、反応媒質とするために溶媒を共存させても良い。溶媒の例を挙げると、ジオクチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル等のエーテルなどが挙げられる。なお、溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
また、溶媒を用いる場合、溶媒の使用量は製造するFePtナノ粒子の粒径に応じて調整すればよい。通常、溶媒の使用量が少なくなれば過飽和度が小さくなることによってPtの臨界核サイズが増大するため、得られるFePtナノ粒子の粒径は大きくなる。したがって、FePtナノ粒子の粒径を大きくしたい場合は、溶媒の使用量は、Pt原料に対して、通常10モル倍以下、中でも5モル倍以下、特には2モル倍以下が好ましい。
[1−6.反応条件及び反応方法]
Fe原料とPt原料とを反応させるに際し、反応条件はFePtナノ粒子の生成反応が進行する限り任意であるが、通常は、以下の条件で反応を行なうことが好ましい。
即ち、反応温度は、通常150℃以上、中でも200℃以上、特には230℃以上が好ましい。温度が低すぎると反応が進行しない可能性がある。なお、上限に制限は無いが、通常300℃以下である。
また、所望の温度までの昇温速度、冷却時の降温速度については、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、速度が遅すぎると、本発明のFePtナノ粒子を得るまでの時間がかかりすぎる可能性がある。また、速度が速すぎると、本発明のFePtナノ粒子が得られない可能性がある。
反応時間(反応溶液の温度が上記反応温度に到達後、その温度を保持している時間)は、通常3分以上、中でも5分以上、特には10分以上が好ましい。時間が短すぎると反応が十分に進行しない可能性がある。なお、上限に制限は無いが、通常1時間以下である。
反応時の圧力は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意であるが、通常は常圧又は加圧下で反応を行なう。
反応の雰囲気は、通常、不活性雰囲気で行なう。不活性雰囲気に用いる不活性ガスの例を挙げると、アルゴン等の希ガス、窒素ガス等が挙げられる。なお、不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
また、反応装置についても、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意である。
反応方法としては、まず、上述したFe原料、Pt原料、有機酸及び有機塩基、並びに、必要に応じてその他の成分を、それぞれ所望の量だけ秤量し、混合する。この際、混合の順番は任意である。また、一度に全量を混合してもよく、一部を段階的又は連続的に混合しても良い。なお、ここで混合とは、系内を均一に混ぜ合わせる狭義の混合ではなく、前記の各成分を同一系内に共存させる広義の混合のことをいい、系内が均一となることは必ずしも要しない。
混合後、反応系に超音波を与えることが好ましい。超音波により、Fe原料及びPt原料が解砕されたり、反応系内が均一化されたりするので、Fe原料とPt原料との反応をより良好に進行させることが可能となる。超音波を与える際の振動数や時間等の条件についても、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意に決定することができる。
そして、反応系を前記の反応条件に制御して、Fe原料とPt原料とを反応させる。なお、各成分の秤量・混合後に反応系の環境を所望の反応条件に制御してもよく、予め所望の反応条件に制御してあった環境に各成分を仕込むことで反応を進行させても良い。この際、反応系内は撹拌することが好ましい。また、反応は、バッチ方式で行なってもよく、フローを用いて連続的に行なってもよい。
前記の操作により、反応系内にはFePtナノ粒子が生成する。通常は、生成したFePtナノ粒子を精製し、単離する。精製の方法に制限は無いが、通常は遠心分離を利用して精製する。具体例を挙げると、以下のとおりである。即ち、まず、反応終了後に反応液を室温まで風冷し、過剰エタノールを加え、遠心分離によってFePtナノ粒子を沈殿・分離する。その後、得られたFePtナノ粒子を、ヘキサン/オレイン酸混合溶液と混合し、再度遠心分離を行ない、沈殿物を除去してFePtナノ粒子分散液を得る。このFePtナノ粒子/ヘキサン分散液に過剰エタノールを加え、さらに遠心分離することによって、精製されたFePtナノ粒子(固体)を得ることができる。
[1−7.表面修飾剤への置換]
(表面修飾剤)
以上の方法により、表面に有機酸及び/又は有機塩基が配位したFe及びPtを含有するナノ粒子を製造した後、前記有機酸及び/又は前記有機塩基の少なくとも一部を、1)炭素数9以下の飽和脂肪族カルボン酸、2)炭素数6〜10の飽和脂肪族アミン、3)炭素数4以上の飽和脂肪族チオール、4)炭素数17以下の不飽和脂肪族カルボン酸、からなる群より選ばれる1種以上の化合物(以下、適宜「表面修飾剤」と言う。)と置換する。この時、前記有機酸が脂肪族カルボン酸であることが好ましい。
炭素数9以下の飽和脂肪族カルボン酸は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、フェニル基で置換されていても良い、オクタン酸、3−フェニルプロピオン酸等が挙げられる。
炭素数6〜10の飽和脂肪族アミンは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、へキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン等が挙げられる。
炭素数4以上の飽和脂肪族チオールは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール等が挙げられる。
炭素数17以下の不飽和脂肪族カルボン酸は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意である。例えば、10−ウンデセン酸等が挙げられる。
なお、上記不飽和脂肪族カルボン酸については、その二重結合の位置はカルボン酸基から離れた位置にあるほうが好ましい。また、本明細書において、脂肪族化合物の1つ以上の水素原子をフェニル基で置換した場合でも、当該化合物を脂肪族化合物と称することとする。
また、表面修飾剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
(置換方法)
表面修飾剤の置換方法としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の方法で行うことができる。例えば、得られたFePtナノ粒子を配位させたい化合物とともに、必要に応じて、加熱及び/又は攪拌することで、配位化合物の置換を行うことができる。
また、置換の装置についても、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意のものを用いることが出来る。また、前記FePtナノ粒子製造の際の反応装置と同じ装置を用いても良いし、別の装置を用いても良い。また、前記FePtナノ粒子製造後の反応装置に更に表面修飾剤を混合することで、置換を行ってもよい。
置換時の温度としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意であるが、通常、25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは45℃以上である。また、その上限は、通常300℃以下である。温度が低すぎると、所望の置換が行えない可能性があり、温度が高すぎると有機酸及び/又は有機塩基が分解する可能性がある。なお、所望の温度までの加熱は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の方法、装置等により行うことができる。例えば、表面修飾剤の種類にも依るが、加熱還流により行うこともできる。
反応時間は、反応温度及び置換化合物の種類にもよるが、通常、30分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上であり、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下である。
反応終了後、反応液を室温まで風冷した後、貧溶媒析出と遠心分離によって、表面が置換されたFePtナノ粒子(固体)を得ることが出来る。
ここで、貧溶媒析出とは、以下のことを指す。即ち、一般に表面置換後のナノ粒子は溶解しないが、ナノ粒子表面に配位していない単体の表面修飾剤を溶解する溶媒(例えば、カルボキシル基等の極性基がナノ粒子に配位し、アルキル基を外側に向けるような配位子の場合には、メタノールやエタノールなどの極性溶媒)を混合することによって、ナノ粒子と配位していない表面修飾剤を分離することにより、表面置換後のナノ粒子を析出させることである。
[2.FePtナノ粒子]
本発明のFePtナノ粒子は、以下の性質を有するものである。
[2−1.表面修飾剤]
本発明のFePtナノ粒子は、その粒子表面に、1)炭素数9以下の飽和脂肪族カルボン酸、2)炭素数6〜10の飽和脂肪族アミン、3)炭素数4以上の飽和脂肪族チオール及び4)炭素数17以下の不飽和脂肪族カルボン酸、からなる群より選ばれる1種以上の化合物が配位し、Fe及びPtを含有する。FePtナノ粒子の表面に配位する全化合物中の上記表面修飾剤が占める割合としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常、1mol%以上、好ましくは10mol%以上、より好ましくは50mol%以上、また、その上限は、通常100mol%以下ある。
[2−2.平均粒径]
本発明の製造方法により得られるFePtナノ粒子の平均粒径は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、特に好ましくは9nm以上である。また、その上限は、通常500nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、特に好ましくは15nm以下である。中でも、平均粒径が上記の特に好ましい範囲内にあると、FePtナノ粒子を温熱治療用の発熱粒子として用いた場合、特に効率よく発熱することができる。
なお、FePtナノ粒子の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(以下、適宜「TEM」と言う。)によって撮影した粒子画像から、通常10個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上、さらに好ましくは300個以上の粒子を無作為に選択し、それぞれフェレ径を画像解析によって求め、その平均値を平均粒径とすることにより測定することができる。
[2−3.平均組成(Feの平均含有割合)]
本発明のFePtナノ粒子におけるFeとPtの平均組成としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意である。ただし、Feの平均含有割合(Fe原子とPt原子との合計に対するFe原子の割合)が、通常35原子%以上、好ましくは40原子%以上、より好ましくは45原子%以上、更に好ましくは48原子%以上、特に好ましくは49原子%以上であり、また、通常65原子%以下、好ましくは60原子%以下、より好ましくは55原子%以下、更に好ましくは52原子%以下、特に好ましくは51原子%以下である。このうち、Fe及びPtの割合がそれぞれ50原子%となることが最も好ましい。前記Feの平均含有割合が50原子%に近いFePtナノ粒子は、温熱治療用の発熱粒子として用いた場合に特に効率よく発熱することができる。
なお、前記のFeの平均含有割合は、例えば、固体基板上にFePtナノ粒子の膜をドロップキャスト法やスピンコート法によって作製し、10カ所以上の無作為選択した箇所の組成をSEM−EDX(エネルギー分散型X線分析装置付走査型電子顕微鏡)によって測定すること、或いは、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析装置)、ラザフォード後方散乱分析装置などによって平均組成を測定することにより求めることができる。
このように大きく且つFeの平均含有割合が高いFePtナノ粒子を製造するためには、Fe原料とPt原料とを反応させる際に、有機塩基を有機酸に対して過剰に用いることが好ましい。特に、上述したFePtナノ粒子の中でも、平均粒径が1nm以上500nm以下であり、かつ、Feの平均含有割合が35原子%以上であるFePtナノ粒子は、飽和磁化および磁気異方性エネルギーともに大きく、化学安定性も高いという優れた性質を有する。
なお、本発明のFePtナノ粒子は、本発明の効果を著しく損なわない限り、Fe及びPt以外の任意の成分を有していても良い。また、その含有比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意である。
[2−4.平均結晶子径]
本発明のFePtナノ粒子の平均結晶子径の大きさに制限は無いが、当該平均結晶子径は、平均粒径の、通常70%以上、中でも80%以上、特には90%以上であることが好ましい。なお、上限は理想的には100%である。このように平均結晶子径が平均粒径に対して大きい比率となることは、FePtナノ結晶の大部分が同一の結晶子により形成されていることを表わす。これにより、磁気異方性エネルギーが大きくなるという優れた効果が得られる。
なお、前記の平均結晶子径は、例えば、XRDパターン(X線回折測定により測定されたパターン)の111ピークの半値幅を用いて、シェラー式によって求めることができる。なお、シェラー式は下記で表される式である。
Figure 2009057609
ここで、Lは平均結晶子サイズを表わし、λはX線波長を表わし、Δθは半値幅を表わし、θは回折ピーク角度を表わす。シェラー式の参考文献としては、「物質からの回折と結像 −透過電子顕微鏡法の基礎−」、今野豊彦 著、共立出版、2003」などが挙げられる。
[2−5.粒径分布]
本発明FePtナノ粒子は、その粒径分布の標準偏差に制限は無いが、通常50%以下、中でも30%以下、特には25%以下であることが好ましい。標準偏差が前記の範囲内にあれば、FePtナノ粒子を温熱治療用途に用いた場合に、発熱量の制御が容易となる。
なお、前記の粒径分布は、例えば、TEMによって撮影した粒子画像から、通常10個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上、さらに好ましくは300個以上の粒子を無作為に選択し、それぞれフェレ径を画像解析によって求め、その標準偏差を粒径分布とすることにより求めることが出来る。
[2−6.飽和磁化]
本発明FePtナノ粒子は、表面修飾剤として特定の化合物を用いることにより、従来よりも飽和磁化の低下が軽減されている。該飽和磁化の値は、表面修飾剤として、オレイン酸及び/又はオレイルアミンのみの場合に比較して高い値となり、該値としては、測定温度にもよるが、通常297kA/m以上である。また、上限に制限は無いが、通常1200kA/m以下である。
なお、飽和磁化は、例えば、SQUID(超伝導量子干渉磁束計)を用いて、100K以下の低温で磁場を掃印し、磁化を測定することによって求められる。
[2−7.磁気異方性エネルギー]
本発明のFePtナノ粒子の磁気異方性エネルギーの大きさに制限は無いが、通常10kJ/m3以上、中でも50kJ/m3以上、特には100kJ/m3以上であることが好ましい。一方、上限に制限は無いが、通常20,000kJ/m3以下である。本発明によればこのように大きい磁気異方性エネルギーを有するFePtナノ粒子が得られ、このFePtナノ粒子は、様々な分野で磁性材料として非常に有用に利用できる。
なお、本発明の発熱体ナノ粒子の磁気異方性エネルギーは、例えば、VSM(振動試料型磁力計)やSQUID(超伝導磁束量子干渉計)により測定することができる。
なお、表面修飾剤の存在の確認は、例えば、赤外分光法(IR)や元素分析等の一般的な分析手法により行うことができる。
[2−8.FePtナノ粒子の用途]
本発明に係るFePtナノ粒子は、磁性体ナノ粒子として、例えば、高密度磁気記録媒体や磁気光学デバイスの分野での応用が可能である。また、例えば、磁気細胞(タンパク)分離、超高感度磁気免疫診断、磁気温熱療法、ドラッグデリバリーシステム、MRI造影剤などの磁気医療の分野での応用も可能である。なお、従来、磁気医療分野で使用されている磁性体ナノ粒子は主に酸化鉄微粒子であり、より磁気特性の優れたFePtナノ粒子を利用した例はない。
中でも本発明に係るFePtナノ粒子は、温熱治療用の発熱体ナノ粒子として好適に使用できる。以下、その場合のFePtナノ粒子の使用方法の例について説明する。
通常は、FePtナノ粒子は、注射等の方法によって生体内に注入され、FePtナノ粒子と生体との物理化学的相互作用(EPR効果など)、生物学的特異的相互作用(抗原抗体反応やリガンド−レセプター相互作用など)、及び/又は、外部刺激応答(光、磁場、超音波など)を利用して体内の標的部位(腫瘍細胞近傍、腫瘍組織)に選択的に集積される。FePtナノ粒子を腫瘍組織に特異的に送達した後、例えば、高周波磁場発生装置やMRI(磁気共鳴画像装置)などを用いて外部から高周波磁場を印加して磁性体微粒子を発熱させ、腫瘍組織だけが死滅するまで加温することによって正常細胞の損傷の少ない局所温熱療法が可能となる。この際、壊死温度は通常42.5℃以上である。
磁場の強さは、腫瘍細胞を死滅させることができれば制限は無い。望ましい範囲を示すと、磁場振幅強度の大きさとして、通常1mT以上、好ましくは5mT以上、さらに好ましくは10mT以上、また、通常1000mT以下、好ましくは200mT以下、さらに好ましくは100mT以下である。磁場が小さすぎると発熱効果は得られない可能性がある。磁場が大きすぎると高周波磁場が正常な身体に悪影響を及ぼす可能性があり、また装置を大型化せざるを得ない等の不都合が生じることがある。
また、加熱時には交流の磁場を用いるが、この磁場の周波数は腫瘍細胞を死滅させることができれば制限は無い。ただし、磁場の周波数は、通常1kHz以上、好ましくは10kHz以上、更に好ましくは100kHz以上、また、通常1000kHz以下、好ましくは900kHz以下、さらに好ましくは800kHz以下である。周波数が小さすぎると発熱効果は得られない可能性がある。周波数が大きすぎると高周波磁場が正常な身体に悪影響を及ぼす可能性があり、また装置を大型化せざるを得ない等の不都合が生じることがある。
加熱を行なう程度は、腫瘍細胞を死滅させることができれば制限は無い。ただし、腫瘍細胞は、通常40℃以上、好ましくは41℃以上、さらに好ましくは42℃以上に加熱することが好ましい。ただし、あまりに高温であると腫瘍細胞の周囲の正常細胞までをも死滅させる可能性がある。
また、加熱は、急速に行なうことが好ましい。加熱速度が遅い場合、腫瘍細胞が熱に対する耐性を身につけ、腫瘍細胞を適切に死滅させることができなくなる可能性がある。具体的には、昇温速度は通常0.1℃/分以上、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは1.0℃/分以上である。なお、上限に制限は無いが、通常20℃/分以下、好ましくは15℃/分以下、より好ましくは10℃/分以下である。なお、腫瘍細胞の温度は、例えば温度センサーを患部に装着することにより測定できる。
本発明に係るFePtナノ粒子を温熱治療用途に用いた場合、当該FePtナノ粒子は前記の磁場により効率よく発熱させることが可能であるため、患部を前記の温度にまで急速に加熱することが可能である。これは、本発明によれば、FePtナノ粒子の平均粒径及び平均組成を望ましい粒径範囲及び組成範囲に収めることができるからと考えられる。
なお、FePtナノ粒子は、水等の媒体に分散させたFePtナノ粒子分散液として使用されることがある。また、取引をする場合においても、FePtナノ粒子は、FePtナノ粒子分散液の状態で、アンプル等として取引されることがある。したがって、媒体にFePtナノ粒子を分散させてなるFePtナノ粒子分散液も、権利範囲に含まれるものである。この際、FePtナノ粒子の媒体中の濃度(体積分率)は、通常、1×10-6以上、好ましくは1×10-5以上、より好ましくは5×10-5以上であり、発熱量といった観点において理論的には高い方が好ましいが、一方で、濃度が高すぎるとFePtナノ粒子の凝集によりその発熱量が損なわれるため、通常、1×10-2以下、好ましくは5×10-3以下である。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
[I.測定方法]
後述する合成例のFePtナノ粒子の平均粒径、粒径分布及び平均組成についてはそれぞれ以下の方法で測定した。
[平均粒径の測定方法]
FePtナノ粒子の平均粒径Dp[nm]は、TEMによって撮影した粒子画像から、300個以上の粒子を無作為に選択し、それぞれフェレ径を画像解析によって求め、その平均値を平均粒径として測定した。
[粒径分布の測定方法]
粒径分布σ[%]は、平均粒径の測定と同様に、300個以上の粒子の粒径を測定し、その標準偏差(単位nm)を求め、その値を平均粒径で割って100を掛けて算出することにより測定した。
[平均組成の測定方法]
FePtナノ粒子の平均組成(FeとPtとの原子比(Fe/Pt[原子%]))は、固体基板上にFePtナノ粒子の膜(FePtナノ粒子が堆積して形成された膜)をドロップキャスト法によって作製し、10カ所以上の無作為選択した箇所の組成をSEM−EDXによって測定して求めた。
[II.合成例]
50mL 三口フラスコ内へ、Pt原料である白金アセチルアセトネート[Pt(acac)2]を0.5mmol、Fe原料である鉄エトキシド[Fe(OEt)3]を2mmol、有機塩基であるオレイルアミン(Oam)を20mmol、有機酸であるオレイン酸(Oac)を4mmol仕込んだ。
次いで、マグネチックスターラーで攪拌しながら、フラスコ内をアルゴン置換した。そして、マントルヒータを用いて温度T=250℃で加熱還流を30分行なった。そして、還流後、室温まで風冷し、過剰エタノールを加え、遠心分離によって試料(FePtナノ粒子)を沈殿させた。そして沈殿したFePtナノ粒子にヘキサンをOac濃度が5重量%となるように加え、再び遠心分離を行ない、上澄みのみ回収し保管した。
得られたFePtナノ粒子について、上述した方法により各値を測定したところ、平均粒径Dp[nm]=9.2、σ[%]=11及び平均組成Fe/Pt[原子%]=50/50であった。
該FePtナノ粒子にエタノールを加えた後遠心分離を行い、沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させ、187mgのFePtナノ粒子を得た。
[実施例1〜4、比較例1〜5]
合成例で得られたFePtナノ粒子5mgに対し、下記表1に記載の各表面修飾剤1mlを加え、50℃のウオーターバス中、マグネチックスターラーで3時間攪拌した。反応終了後、エタノールを加え、遠心分離を行い、FePtナノ粒子の沈殿を得た。
各FePtナノ粒子についてFT−IR測定を行い、もとのFePtナノ粒子からIRスペクトルが変化していることを確認した。結果を図1〜図3に示す。
なお、図1において、(a)はC−H結合を示すピークを表し、(b)はCH2−NH2結合を示すピークを表し、(c)はN−H結合を示すピークを表す。
また、図2において、(a)はC−H結合を示すピークを表し、(b)はC=O結合を示すピークを表し、(c)はO−H結合を示すピークを表す。
さらに、図3において、(a)はC−H結合を示すピークを表し、(b)はC−S結合を示すピークを表す。
また、各FePtナノ粒子の150Kにおける飽和磁化を超伝導磁束量子干渉計(Quantum Design社製 MPMS 5.5T)で測定した結果を表1に示す。
Figure 2009057609
[実施例5、6、比較例6〜8]
下記表2に記載の各表面修飾剤を用い、反応温度を60℃、反応時間を10時間にした以外は上記実施例と同様に反応を行い、FePtナノ粒子の沈殿を得た。
実施例5、比較例6及び比較例7のFePtナノ粒子についてのFT−IRスペクトル測定を行い、もとのFePtナノ粒子からIRスペクトルが変化していることを確認した。結果を図4に示す。なお、図4において、(a)はC−H結合を示すピークを表し、(b)は芳香環の共役炭素二重結合を示すピークを表す。
また、各FePtナノ粒子の140Kにおける飽和磁化を飽和磁化を超伝導磁束量子干渉計(Quantum Design社製 MPMS 5.5T)で測定した結果を表2に示す。
Figure 2009057609
本発明は産業上の任意の分野で使用可能であり、中でも、例えば高密度磁気記録媒体、磁気光学デバイス等の磁性材料の分野に用いたり、磁気細胞(タンパク)分離、超高感度磁気免疫診断、磁気温熱療法、ドラッグデリバリーシステム、MRI造影剤等の磁気医療の分野に好適に用いたりすることができる。
実施例2、比較例1、比較例4及び比較例5で得られたFePtナノ粒子のFT−IR測定時のIRスペクトルを表す図面である。 実施例1及び比較例1〜3で得られたFePtナノ粒子のFT−IR測定時のIRスペクトルを表す図面である。 実施例3、実施例4及び比較例1で得られたFePtナノ粒子のFT−IR測定時のIRスペクトルを表す図面である。 実施例5、比較例6及び比較例7で得られたFePtナノ粒子のFT−IR測定時のIRスペクトルを表す図面である。

Claims (5)

  1. 粒子表面に、
    1)炭素数9以下の飽和脂肪族カルボン酸、
    2)炭素数6〜10の飽和脂肪族アミン、
    3)炭素数4以上の飽和脂肪族チオール、
    4)炭素数17以下の不飽和脂肪族カルボン酸、
    からなる群より選ばれる1種以上の化合物が配位し、
    Fe及びPtを含有することを特徴とするナノ粒子。
  2. 平均粒径が1nm以上500nm以下であり、かつ、
    Feの平均含有割合が35原子%以上である
    ことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子。
  3. 平均結晶子径が該平均粒径の70%以上である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ粒子。
  4. 表面に有機酸及び/又は有機塩基が配位したFe及びPtを含有するナノ粒子を製造した後、該有機酸及び/又は該有機塩基の少なくとも一部を、
    1)炭素数9以下の飽和脂肪族カルボン酸、
    2)炭素数6〜10の飽和脂肪族アミン、
    3)炭素数4以上の飽和脂肪族チオール、
    4)炭素数17以下の不飽和脂肪族カルボン酸、
    からなる群より選ばれる1種以上の化合物と置換する工程を少なくとも有する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノ粒子の製造方法。
  5. 該有機酸が脂肪族カルボン酸である
    ことを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
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