ところで、上述の特許文献1のように対となる電極を平行に配置する構成では、電極の上流側から下流側に向かって徐々に空気中の塵埃が捕捉されることになる。従って、電極間を流れる空気中の塵埃の濃度は、電極の上流端側に近い程高くなり、該電極の下流端側に近い程低くなる。このため、対となる電極では、その両者の電極の対向面における上流端部に多量の塵埃が付着してしまう。その結果、この部位においてスパーク等の異常放電が生じやすくなるという問題が生じる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、対となる電極の対向面の間で電界を形成する集塵装置において、各電極の対向面の上流端部における多量の塵埃の付着を抑制して異常放電を防止することである。
第1の発明は、互いに対向するように空気通路(23)に配置される一対の電極(40,50)を備え、該一対の電極(40,50)の各対向面の間で空気中の塵埃を捕集する電界を形成する集塵装置を前提としている。そして、この集塵装置は、上記一対の電極(40,50)の一方又は両方に、その上流端部よりも下流側の所定部位(47,57)から該上流端部へ向かうに連れて、上記対向面同士の距離を拡げるような形状の傾斜面(45a,52a,45b,52b)が形成されていることを特徴とするものである。
第1の発明では、空気通路(23)に一対の電極(40,50)が配置される。一対の電極(40,50)の一方又は両方には傾斜面(45a,52a,45b,52b)が形成される。この傾斜面(45a,52a,45b,52b)は、電極(40,50)の所定部位(47,57)から上流端部に向かうに連れて対向面同士の距離(いわゆる電極間距離)を拡げるような形状をしている。つまり、対となる電極(40,50)では、上記所定部位から上流端部に向かって電極間距離が徐々に拡がっている。これにより、対となる電極(40,50)の電界強度も、上記所定部位から上流端部に向かって徐々に弱くなる。その結果、電極(40,50)の上流端部を流れる空気中には、高濃度の塵埃が含まれるものの、この部位では電界強度が比較的弱いので、該電極(40,50)の上流端部に塵埃が付着し難くなる。一方、電極(40,50)の上流端部から下流側へ空気が流れるに伴って、空気中の塵埃の濃度が低くなっていくが、これとは逆に電界強度は徐々に強くなっていく。従って、電極(40,50)の上流端部から上記所定部位に亘って均一に塵埃が捕捉されることになる。
第2の発明は、第1の発明の集塵装置において、上記一対の電極(40,50)の一方又は両方は、導電性樹脂製の樹脂電極で構成され、上記樹脂電極(40,50)には、上記傾斜面(45a,52a,45b,52b)が形成されていることを特徴とするものである。
第2の発明では、上記一対の電極(40,50)のうちの一方又は両方が、導電性の樹脂電極で構成され、この樹脂電極(40,50)に上記傾斜面(45a,52a,45b,52b)が形成される。このように、樹脂電極(40,50)に傾斜面(45a,52a,45b,52b)を形成することで、この傾斜面(45a,52a,45b,52b)の金型成型時の抜き勾配として利用でき、且つ傾斜面(45a,52a,45b,52b)を容易に成形することができる。
第3の発明は、第1の発明の集塵装置において、上記一対の電極(40,50)の一方又は両方は、導電性樹脂製の樹脂電極で構成され、該樹脂電極(40,50)には、その下流端部と上流端部との間の中間部(47,57)から上流端部に向かうに連れて、上記対向面同士の距離を拡げるような形状の傾斜面(45a,52a)と、上記中間部(47,57)から下流端部に向かうに連れて、対向面同士の距離を拡げるような形状の下流側傾斜面(42a,55a)とが形成されていることを特徴とするものである。
第3の発明では、上記一対の電極(40,50)のうちの一方又は両方が、導電性の樹脂電極で構成される。この樹脂電極(40,50)には、上記所定部位としての中間部から上流端部に向かうに連れて電極間距離を拡げるように上記傾斜面(45a,52a)が形成される。従って、この傾斜面(45a,52a)により、樹脂電極(40,50)の上流端部に塵埃が多量に付着してしまうことが抑制され、且つ空気中の塵埃が電極(40,50)の上流端部から中間部に亘って均一に付着し易くなる。
また、本発明の樹脂電極(40,50)では、その中間部から下流端部に向かって対向面同士の距離を拡げるような下流側傾斜面(42a,55a)も形成される。つまり、樹脂電極(40,50)は、その中間部(47,57)を挟んで空気流れ方向の上流側と下流側とにそれぞれ勾配が形成される。従って、本発明では、これらの勾配を樹脂電極(40,50)の金型成型時の抜き勾配として利用することができる。
第4の発明は、第1の発明の集塵装置において、上記一対の電極(40,50)の一方又は両方には、その下流端部から上流端部に向かうに連れて、上記対向面同士の距離を拡げるような形状の傾斜面(45b,52b)が形成されていることを特徴とするものである。
第4の発明の電極(40,50)には、上記所定部位としての下流端部から上流端部に向かうに連れて電極間距離を拡げるように上記傾斜面(45b,52b)が形成される。従って、本発明の電極(40,50)では、その下流端部から上流端部に向かって徐々に電界強度が弱くなる。その結果、高濃度の塵埃を含む空気が電極(40,50)の上流端部を通過する際にも、この部位では電界強度が最も弱いので、該上流端部に塵埃が付着し難くなる。一方、電極(40,50)の上流端部から下流側へ空気が流れるに伴って、空気中の塵埃の濃度が低くなっていくが、これとは逆に電界強度は徐々に強くなっていく。従って、電極(40,50)の対向面の全域に亘って、塵埃が均一に捕捉されることになる。
第5の発明は、第1の発明の集塵装置において、上記一対の電極(40,50)は、多数の通風孔(56)が形成された格子構造の基台部(51)と、該基台部(51)から通風孔(56)の軸方向と略平行に上流側に向かって延びる突起部(52)とを有する第1電極(50)と、多数の通風孔(46)が形成された格子構造の基台部(41)を有する第2電極(40)とで構成され、第1電極(50)の突起部(52)が第2電極(40)の通風孔(46)の内部に位置するように対向して配置されており、上記傾斜面(45a,52a)は、上記第1電極(50)の突起部(52)と上記第2電極(40)の通風孔(46)の内壁とのいずれか一方又は両方に形成されていることを特徴とするものである。
第5の発明では、第1電極(50)に基台部(51)及び突起部(52)が設けられ、第2電極(40)に基台部(41)が設けられる。両電極(40,50)の基台部(41,51)は、多数の通風孔(46,56)が形成される格子構造となっている。また、第1電極(50)の突起部(52)は、空気流れの上流側に向かって延びており、第2電極(40)の基台部(41)の通風孔(46)内に配置される。そして、第2電極(40)の通風孔(46)の内壁と、第1電極(50)の突起部(52)の側周面との間に、空気中の塵埃を捕集するための電界が形成される。この構成により、本発明では、集塵面積が大きくなり、集塵効率が向上する。
また、本発明では、第1電極(50)の突起部(52)、又は第2電極(40)の通風孔(46)の内壁とのいずれか一方又は両方に上記傾斜面(45a,52a)を形成している。このため、この傾斜面(45a,52a)により、第1電極(50)の突起部(52)と第2電極(40)の通風孔(46)の内壁との間の対向面同士の電極間距離が上流端部に向かうに連れて拡がるので、該上流端部における電界強度が比較的弱くなる。従って、空気が第2電極(40)の通風孔(46)を流れる際には、その上流端部の対向面に多量の塵埃が付着してしまうことが抑制される。
第6の発明は、第5の発明の集塵装置において、上記第2電極(40)は、該第2電極(40)の基台部(41)から通風孔(46)の軸方向と略平行に下流側に向かって延びる突起部(42)を有しており、上記一対の電極(40,50)は、各突起部(42,52)が相対する電極(50,40)の通風孔(56,46)の内部にそれぞれ位置するように対向して配置されていることを特徴とするものである。
第6の発明では、第2電極(40)にも突起部(42)が設けられる。第2電極(40)の突起部(42)は、空気流れの下流側に向かって延びており、第1電極(50)の基台部(51)の通風孔(56)内に配置される。そして、本発明では、第2電極(40)の突起部(42)の側周面と、第1電極(50)の通風孔(56)の内壁との間にも、空気中の塵埃を捕集するための電界が形成される。この構成により、本発明では、集塵面積が更に大きくなり、集塵効率も更に向上する。
第7の発明は、第6の発明の集塵装置において、上記第1電極(50)は、導電性樹脂製の樹脂電極で構成されると共に、その突起部(52)に上記傾斜面(52a)が形成され、上記第1電極(50)の通風孔(56)の内壁には、その上流端部から下流端部へ向かうに連れて、該通風孔(56)の内壁と第2電極(40)の突起部(42)との距離を拡げるような形状の下流側傾斜面(55a)が形成されていることを特徴とするものである。
第7の発明では、第1電極(50)が樹脂電極で構成されると共に、上流側寄りに位置する突起部(52)に上記傾斜面(52a)が形成される。従って、この傾斜面(52a)により、第1電極(50)の突起部(52)と第2電極(40)の通風孔(46)の内壁との間の対向面の上流端部に塵埃が多量に付着してしまうことが抑制される。
また、第1電極(50)の通風孔(56)内壁には、該内壁の上流端部から下流端部に向かうに連れて、通風孔(56)内壁と突起部(52)との距離を拡げるような下流側傾斜面(55a)も形成される。つまり、第1電極(50)では、突起部(52)と基台部(51)とにそれぞれ勾配が形成される。従って、本発明では、これらの勾配を第1電極(50)の金型成型時の抜き勾配として利用することができる。
第8の発明は、第6の発明の集塵装置において、上記第2電極(40)は、導電性樹脂製の樹脂電極で構成されると共に、その通風孔(46)の内壁に上記傾斜面(45a)が形成され、上記第2電極(40)の突起部(42)には、その上流端部から下流端部へ向かうに連れて、該突起部(42)と第1電極(50)の通風孔(56)の内壁との距離を拡げるような形状の下流側傾斜面(42a)が形成されていることを特徴とするものである。
第8の発明では、第2電極(40)が樹脂電極で構成されると共に、上流側寄りに位置する通風孔(46)の内壁に上記傾斜面(45a)が形成される。従って、この傾斜面(45a)により、第2電極(40)の通風孔(46)の内壁と第1電極(50)の突起部(52)との間の対向面の上流端部に塵埃が多量に付着してしまうことが抑制される。
また、第2電極(40)には、その突起部(42)の上流端部から下流端部に向かうに連れて該突起部(42)と第1電極(50)の通風孔(56)の内壁との距離を拡げるような下流側傾斜面(42a)も形成される。つまり、第2電極(40)では、基台部(41)と突起部(42)とにそれぞれ勾配が形成される。従って、本発明では、これらの勾配を第2電極(40)の金型成型時の抜き勾配として利用することができる。
本発明では、一対の電極(40,50)のうちの一方又は両方に傾斜面(45a,52a,45b,52b)を形成することで、両電極(40,50)の対向面同士の距離(電極間距離)を所定部位(47,57)から上流端部に向かうに連れて拡げるようにしている。これにより、本発明によれば、電極(40,50)の上流端部側では、比較的高濃度の塵埃を含む空気が流れるものの、電極(40,50)の上流端部に多量の塵埃が付着してしまうことを抑制できる。従って、このような塵埃の付着に起因してスパーク等の異常放電が発生してしまうのを防止できる。
また、本発明の電極(40,50)では、その上流端部から所定部位に亘って徐々に電界強度が大きくなるので、上流端部よりも下流側において空気中の低濃度の塵埃を確実に捕集できる。その結果、電極(40,50)の表面に均一に塵埃が捕捉され易くなるので、長期に亘って集塵能力を維持することができる。
また、第2の発明では、樹脂電極(40,50)に上記傾斜面(45a,52a,45b,52b)を形成することで、この傾斜面(45a,52a,45b,52bを樹脂電極(40,50)の金型成型時の抜き勾配として利用できる。従って、電極(40,50)の加工性を向上でき、高品質の樹脂電極(40,50)を得ることができる。
また、第3の発明では、樹脂製の電極(40,50)の中間部(47,57)の上流側に傾斜面(45a,52a)を傾斜すると共に、中間部(47,57)の下流側に下流側傾斜面(42a,55a)を形成している。これにより、本発明によれば、電極(40,50)の上流端部から中間部(47,57)に亘って均一に塵埃を捕捉することができる。従って、多量の塵埃の付着に起因するスパーク等の異常放電の発生を防止しながら、長期に亘って集塵能力を維持できる。
また、このように電極(40,50)の中間部(47,57)の両側に傾斜面(45a,52a,42a,55a)を形成することで、これらの傾斜面を樹脂電極(40,50)の金型成型時の抜き勾配として利用できる。従って、電極(40,50)の加工性を向上でき、高品質の樹脂電極(40,50)を得ることができる。しかも、このように空気流れ方向の両側にそれぞれ抜き勾配を形成するようにすると、例えば片側のみに抜き勾配を形成する場合と比較して、樹脂電極(40,50)の平均的な厚みを小さくできる。従って、限られたスペースに配置可能な樹脂電極(40,50)の本数を多くできるので、集塵装置の集塵効率を向上できる。
また、第4の発明によれば、電極(40,50)の上流端部から下流端部に亘って傾斜面(45a,52a)を形成しているので、電極(40,50)の全域に亘って均一に塵埃を捕捉することができる。従って、多量の塵埃の付着に起因する異常放電の発生を一層確実に防止でき、且つ電極(40,50)の集塵能力を更に長期に亘って維持することができる。
第5の発明では、第1電極(50)の突起部(52)を第2電極(40)の基台部(41)の通風孔(56)内に配置させ、第1電極(50)の突起部(52)と第2電極(40)の通風孔(46)の内壁との間に電界を形成するようにしている。これにより、本発明によれば、第1電極(50)と第2電極(40)との間の集塵面積が拡大されるので、集塵効率を向上できる。
ここで、本発明では、第1電極(50)の突起部(52)や第2電極(40)の通風孔(46)の内壁に傾斜面(45a,52a)を形成している。従って、通風孔(46)の上流端から下流端に亘って塵埃を均一に捕捉でき、異常放電の発生を防止しながら、長期に亘って集塵能力を維持できる。
更に、第6の発明では、第2電極(40)にも突起部(42)を形成し、該突起部(42)と第1電極(50)の通風孔(56)の内壁との間でも電界を形成するようにしている。従って、第1電極(50)と第2電極(40)との間の集塵面積が更に拡大されるので、集塵効率を効果的に向上できる。
また、第7の発明では、第1電極(50)を樹脂電極で構成し、突起部(52)に傾斜面(52a)を形成すると共に通風孔(56)の内壁に下流側傾斜面(55a)を形成している。これにより、本発明によれば、これらの両側の傾斜面(52a,55a)を金型成形用の抜き勾配として利用できるので、樹脂製の第1電極(50)を容易に得ることができる。また、このように第1電極(50)の両側に抜き勾配を形成するようにすると、例えば片側のみに抜き勾配を形成する場合と比較して、第1電極(50)の平均的な厚みを小さくできる。従って、第1電極(50)の集積率を高めて集塵効率の向上を図ることができる。
同様に、第8の発明では、第2電極(40)を樹脂電極で構成し、通風孔(46)の内壁に傾斜面(45a)を形成すると共に突起部(42)に下流側傾斜面(42a)を形成している。これにより、本発明によれば、これらの両側の傾斜面(52a,55a)を金型成形用の抜き勾配として利用して、樹脂製の第2電極(40)を容易に得ることができる。また、第2電極(40)を薄型化が図られるので、第2電極(40)の集積率を高めて集塵効率の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《実施形態1》
本発明の集塵装置は、例えば一般家庭や小規模店舗などで用いられる空気清浄機(10)に適用されている。
〈全体構成〉
図1及び図2に示すように、空気清浄機(10)は、ケーシング(20)を備えると共に、該ケーシング(20)の内部に収納されたプレフィルタ(11)と荷電部(12)と集塵部(30)と触媒フィルタ(13)と送風機(14)とを備えている。
上記ケーシング(20)は、例えば矩形体状の横長の容器に形成されている。ケーシング(20)には、前面に空気の吸込口(21)が、背面に空気の吹出口(22)が、内部に空気通路(23)がそれぞれ形成されている。そして、空気通路(23)では、吸込口(21)から吹出口(22)に向かって順に、上記プレフィルタ(11)、荷電部(12)、集塵部(30)、触媒フィルタ(13)、及び送風機(14)が配置されている。
上記プレフィルタ(11)は、吸込口(21)からケーシング(20)内に吸込まれた空気に含まれる比較的大きな塵埃を捕集するためのフィルタを構成している。
上記荷電部(12)は、イオン化部を構成し、上記プレフィルタ(11)を通過した比較的小さな塵埃を帯電させるものである。上記荷電部(12)は、図示しないが、例えば、複数のイオン化線と、複数の対向電極から構成され、該イオン化線と対向電極との間に直流電圧が印加されるように構成されている。上記イオン化線は、荷電部(12)の上端から下端に亘って設けられ、対向電極はイオン化線の間に配置されている。
上記集塵部(30)は、上記荷電部(12)で帯電した塵埃を捕集するものである。集塵部(30)には、アース電極としての集塵電極(40)と、該集塵電極(40)よりも高電位となる陽電極としての高圧電極(50)とが設けられている。本実施形態では、高圧電極(50)が第1電極を構成し、集塵電極(40)が第2電極を構成している。集塵電極(40)と高圧電極(50)との間には直流電圧が印加される。これにより、集塵電極(40)と高圧電極(50)との間には、集塵電極(40)に塵埃を誘引するための電界が形成される。集塵部(30)の詳細構造については後述する。
上記触媒フィルタ(13)は、図示しないが、例えばハニカム構造の基材の表面に触媒が担持されて構成されている。この触媒は、例えばマンガン系触媒や貴金属触媒などが適用され、集塵部(30)を通過して塵埃が除去された空気中の有害成分や臭気成分を分解する。
上記送風機(14)は、ケーシング(20)内の空気通路(23)において最下流側に配置され、室内空気をケーシング(20)内に吸い込み、清浄化された空気を室内に吹き出すためのものである。
〈集塵部の詳細構造〉
次に、上述した集塵部(30)の詳細構造について図3〜図5を参照しながら説明する。上記集塵電極(40)と高圧電極(50)とは、何れも導電性の樹脂製であり、樹脂電極を構成している。これらの樹脂電極は、何れも微導電性樹脂であることが好ましく、特に体積抵抗率が108Ωcm以上で1013Ωcm未満の樹脂材料であることが好ましい。
集塵電極(40)と高圧電極(50)とは、それぞれ一体成形品であり、基本的にはほぼ同一の形状に形成されている。そして、集塵電極(40)と高圧電極(50)とは、一部が相互に挿入自在な差し込み構造に構成されている。即ち、集塵電極(40)は高圧電極(50)を囲むように構成され、高圧電極(50)も集塵電極(40)を囲むように構成されている。
そして、集塵電極(40)及び高圧電極(50)が、空気通路(23)の横断面において電界を放射状に形成するように構成されている。
集塵電極(40)と高圧電極(50)とは、その外形が矩形状に形成され、1つの基台部(41,51)と、該基台部(41,51)から突出する多数の突起部(42,52)とをそれぞれ備えている。
各基台部(41,51)は、空気通路(23)において、空気流れと直交する方向に配置されている。集塵電極(40)の基台部(41)は、空気通路(23)の上流側寄りに配置され、高圧電極(50)の基台部(51)は、空気通路(23)の下流側寄りに配置されている。また、集塵電極(40)の基台部(41)は、高圧電極(50)の基台部(51)よりも厚さが大きくなっている。各基台部(41,51)は、枠体(43,53)と、該枠体(43,53)の内部に設けられた複数の縦仕切部(44,54)及び横仕切部(45,55)とを備えている。
上記各枠体(43,53)は、矩形状に形成されている。集塵電極(40)の枠体(43)には、その4つの隅角部に薄肉部(4a)が形成されている。薄肉部(4a)には、固定孔(4b)を有する固定脚(4c)が立設している。同様に、高圧電極(50)の枠体(53)には、その4つの隅角部に薄肉部(5a)が形成されている。薄肉部(5a)には、固定孔(5b)が形成されている。そして、集塵電極(40)の枠体(43)と高圧電極(50)の枠体(53)とは、四隅の薄肉部(4a,5a)において、固定脚(4c)を介して互いに固定される。これにより、集塵電極(40)の基台部(41)と高圧電極(50)の基台部(51)とは、互いに対向するように配置されている。
上記各縦仕切部(44,54)は、ケーシング(20)の上下方向に延び、上記各横仕切部(45,55)は、ケーシング(20)の幅方向に延びている。そして、縦仕切部(44,54)と横仕切部(45,55)とは、縦横に交差するように配列されている。各基台部(41,51)には、枠体(43,53)と縦仕切部(44,54)と横仕切部(45,55)との間に多数の通風孔(46,56)が区画形成されている。つまり、基台部(41,51)は、通風孔(46,56)を形成する多数の筒状部が形成され、四角格子構造に形成されている。多数の通風孔(46,56)は、空気通路(23)の空気流れ方向に基台部(41,51)を貫通している。
上記各縦仕切部(44,54)は、集塵電極(40)の基台部(41)と高圧電極(50)の基台部(51)とを固定した組立て状態において、同一平面上に位置するように形成されている。また、この組立て状態において、両者の縦仕切部(44,54)は、互いに接触することなく、所定の間隔を置くように配置されている。
一方、上記各横仕切部(45,55)は、集塵電極(40)の基台部(41)と高圧電極(50)の基台部(51)とを固定した組立て状態において、千鳥状に位置するように構成されている。つまり、集塵電極(40)の横仕切部(45)は、高圧電極(50)の通風孔(56)の中央部に位置し、高圧電極(50)の横仕切部(55)は、集塵電極(40)の通風孔(46)の中央部に位置している。
上記各突起部(42,52)は、横仕切部(45,55)と一体的に連接して該横仕切部(44,45)から突出している。つまり、各突起部(42,52)は、横仕切部(45,55)と概ね同じ厚さの平板状の突出片に形成され、相対する電極(50,40)の通風孔(56,46)の内部まで延びている。また、集塵電極(40)の突起部(42)は、空気通路(23)の空気流れの下流側に延びており、高圧電極(50)の突起部(52)は、空気通路(23)の空気流れの上流側に延びている。
集塵電極(40)の基台部(41)と高圧電極(50)の基台部(51)とを固定した組立て状態においては、横方向に隣り合う突起部(42,52)の間に相対する電極(50,40)の縦仕切部(54,44)が位置する。また、この組立て状態においては、上記各突起部(42,52)が通風孔(56,46)の内部中央に位置する。
具体的に、集塵電極(40)の突起部(42)は、高圧電極(50)の縦仕切部(54)と横仕切部(55)とによって囲まれる。ここで、突起部(42)から縦仕切部(54)及び横仕切部(55)までの距離は概ね等しくなっており、突起部(42)の周囲には通風孔(56)の横断面において電界が放射状に形成される。
また、上記高圧電極(50)の突起部(52)は、集塵電極(40)の縦仕切部(44)と横仕切部(45)とによって囲まれる。ここで、突起部(52)から縦仕切部(44)及び横仕切部(45)までの距離は概ね等しくなっており、突起部(52)の周囲には通風孔(46)の横断面において電界が放射状に形成される。突起部(42,52)と、該突起部(42,52)に相対する縦仕切部(54,44)及び横仕切部(55,45)までの距離は、1.0mm〜2.0mmとなっている。
〈樹脂電極の成形方法及び表面形状〉
以上のような構造の集塵部(30)では、導電性樹脂製の集塵電極(40)及び高圧電極(50)がそれぞれ金型成形によって成形される。以下には、これらの樹脂電極(40,50)の成形方法と、この成形方法によって得られる樹脂電極の表面形状について説明する。なお、集塵電極(40)及び高圧電極(50)の成形方法及び表面形状は、基本的に同じであるので、以下には集塵電極(40)のこれらの点を主として説明する。
集塵電極(40)は、2つの金型の内部に導電性の樹脂を射出して成形品を得る、射出成形によって成形される。具体的に、上記2つの金型は、基台部(41)を成形するための第1金型と、突起部(42)を成形するための第2金型とから成る。
第1金型は、基台部(41)の縦仕切部(44)及び横仕切部(45)に沿うような格子状の溝を有している。第1金型の溝には、成形後の基台部(41)の抜き出しを容易とするための抜き勾配が形成されている。換言すると、成形後の基台部(41)には、通風孔(46)の内壁、即ち横仕切部(45)と縦仕切部(44)とにそれぞれ抜き勾配が形成される(図5参照)。具体的に、横仕切部(45)の上下の表面には、突起部(42)と反対側(空気流れの上流側)に向かうに連れて横仕切部(45)の厚みを小さくさせるような第1上流側傾斜面(45a)が形成される。同様に、縦仕切部(44)の左右の表面にも、上流側に向かうに連れて縦仕切部(44)の厚みを小さくさせるような傾斜面(図示省略)が形成される。従って、基台部(41)の通風孔(46)は、厳密には上流側に向かって流路断面が拡大するような、四角垂台形状に形成されている。
一方、上記第2金型は、多数の突起部(42)に沿うような多数の平板状の溝を有している。第2金型の溝には、成形後の突起部(42)の抜き出しを容易となるための抜き勾配が形成されている。具体的に、突起部(42)の上下の表面には、突起部(42)の突出側(空気流れの下流側)に向かうに連れて突起部(42)の厚みを小さくさせるような第1下流側傾斜面(42a)が形成される。同様に、突起部(42)の左右の表面にも、下流側に向かうに連れて突起部(42)の幅を小さくさせるような傾斜面(図示省略)が形成される。従って、突起部(42)は、厳密には突出方向に向かって横断面が狭くなるような、四角錐台形状に形成されている。なお、第2金型からの突起部(42)の突き出しが容易な場合には、突起部(42)の左右の表面に必ずしも傾斜面を形成しなくても良い。
以上のような成形方法によって得られる集塵電極(40)では、基台部(41)と突起部(42)との連接部(47)が両金型の分割線(いわゆるパート面)上に位置することになる。即ち、集塵電極(40)では、境界部位としての連接部(47)を挟んで空気流れ方向の両側、つまり基台部(41)側と突起部(42)側とにそれぞれ抜き勾配が形成される。
一方、上記高圧電極(50)は、集塵電極(40)と同様にして、第1金型で基台部(51)が形成され、第2金型で突起部(52)が形成される。そして、基台部(51)の横仕切部(55)の上下の表面には、第2下流側傾斜面(55a)が形成され、基台部(51)の縦仕切部(54)の左右の表面にも、傾斜面(図示省略)が形成される。また、突起部(52)には、その上下の表面に、第2上流側傾斜面(52a)が形成され、その左右の表面にも傾斜面(図示省略)が形成される。なお、突起部(52)の左右の表面において、必ずしも傾斜面を形成しなくても良い。そして、高圧電極(50)では、基台部(51)と突起部(52)との連接部(57)が両金型の分割線(いわゆるパート面)上に位置することになる。
集塵部(30)の組立て状態においては、上記各傾斜面(42a,45a,52a,55a)により、上記集塵電極(40)と高圧電極(50)との間で対向する対向面同士の距離(即ち、電極間距離)が、空気流れの上流側から下流側に向かって変化している。具体的に、集塵電極(40)の通風孔(46)の内壁と高圧電極(50)の突起部(52)の側周面との間では、連接部(47)から基台部(41)の上流端部に向かうに連れて電極間距離が拡がっている。これにより、集塵電極(40)の通風孔(46)では、その下流端から上流端に向かって電界強度が徐々に弱くなっている。一方、高圧電極(50)の通風孔(56)の内壁と集塵電極(40)の突起部(42)の側周面との間では、連接部(57)から基台部(51)の下流端部に向かうに連れて電極間距離が拡がっている。
また、集塵部(30)の組立て状態においては、集塵電極(40)の基台部(41)と高圧電極(50)の基台部(51)との間に所定の間隔が置かれている。これにより、集塵電極(40)の連接部(47)と高圧電極(50)の連接部(47)とは、空気流れ方向に離間することになる。つまり、集塵電極(40)及び高圧電極(50)は、各々の連接部(47,57)が、突起部(42,52)と基台部(51,41)との対面方向(図5における上下方向)において、互いにずれるように構成されている。
−運転動作−
次に、上記空気清浄機(10)の運転動作について説明する。空気清浄機(10)の運転時には、送風機(14)が運転状態となる。また、荷電部(12)では、イオン化線と対向電極との間に直流電圧が印加され、集塵部(30)では、集塵電極(40)と高圧電極(50)との間に直流電圧が印加される。
図1及び図2に示すように、送風機(14)を駆動すると、室内空気がケーシング(20)の空気通路(23)に吸引され、該空気通路(23)を流れることになる。空気通路(23)を流れる空気は、まず、上記プレフィルタ(11)を通過する。プレフィルタ(11)では、室内空気中に含まれる比較的大きな塵埃が捕集される。
上記プレフィルタ(11)を通過した空気は荷電部(12)を流れる。この荷電部(12)では、上記プレフィルタ(11)を通過した比較的小さな塵埃が帯電され、例えば塵埃が正極に帯電し、この帯電した塵埃が下流側に流れることになる。
続いて、帯電した塵埃は集塵部(30)を流れる。図5に示すように、集塵部(30)に流入した空気は、まず、集塵電極(40)の基台部(41)の通風孔(46)内を流れる。通風孔(46)では、空気が高圧電極(50)の突起部(52)の周囲を流れる。ここで、高圧電極(50)の突起部(52)と、集塵電極(40)の基台部(41)との間には電界が形成されており、集塵電極(40)はアース電極となっている。従って、正極に帯電した塵埃は、集塵電極(40)の基台部(41)、即ち縦仕切部(44)や横仕切部(45)に誘引される。その結果、集塵電極(40)の通風孔(46)を空気が流通する間には、空気中の塵埃が通風孔(46)の内壁表面に付着して捕集される。
ここで、通風孔(46)では、上述した傾斜面(42a,52a)により、下流端から上流端に向かって徐々に電界強度が弱くなっている。そして、通風孔(46)では、その上流端部近傍の電界強度が最も低くなっている。従って、高濃度の塵埃を含んだ空気が通風孔(46)に流入しても、通風孔(46)の内壁表面の上流端部に多量の塵埃が付着されることが抑制される。その結果、多量の塵埃の付着に起因するスパーク等の異常放電が防止される。
また、通風孔(46)では、その下流側に向かうに連れて空気中の塵埃の濃度が小さくなるが、電界強度は下流側に向かうに連れて大きくなる。従って、通風孔(46)の内壁表面には、その上流端から下流端に亘って均一に塵埃が付着する。
集塵電極(40)の基台部(41)を通過した空気は、高圧電極(50)の基台部(51)の通風孔(56)を流れる。通風孔(56)では、空気が集塵電極(40)の突起部(42)の周囲を流れる。ここで、高圧電極(50)の基台部(51)と、集塵電極(40)の突起部(42)との間には電界が形成されているので、未だ空気中に残存している塵埃が、集塵電極(40)の突起部(42)の表面に付着して捕集される。
集塵部(30)で塵埃が除去された空気は、触媒フィルタ(13)を流れる。触媒フィルタ(13)では、空気中の有害物質や臭気物質が分解除去される。以上のようにして清浄化された空気は、送風機(14)を通過後に吹出口(22)より室内へ供給される。このような動作が連続して行われることで、室内空間の清浄度が向上する。
−実施形態1の効果−
上記実施形態1では、集塵電極(40)の通風孔(46)の内壁に第1上流側傾斜面(45a)を形成すると共に、高圧電極(50)の突起部(52)に第2上流側傾斜面(52a)を形成することで、通風孔(46)の内壁と突起部(52)との間の対向面同士の距離を連接部(47)から上流端に向かって徐々に拡げるようにしている。これにより、通風孔(46)では、その上流端部側の電界強度が比較的弱くなる。従って、通風孔(46)の上流端部側では、比較的高濃度の塵埃を含む空気が流れるものの、通風孔(46)の内壁の上流端部にばかり多量の塵埃が捕集されてしまうのを抑制できる。従って、このような多量の塵埃の付着に起因する異常放電の発生を未然に防止することができる。また、通風孔(46)では、その内壁の上流端から下流端に亘って均一に塵埃が付着する。このため、集塵電極(40)による集塵能力を長期間に亘って維持することができ、メンテナンスの頻度も少なくできる。
また、上記実施形態1では、集塵電極(40)及び高圧電極(50)をそれぞれ樹脂電極で構成すると共に、各電極(40,50)の傾斜面(45a,42a,52a,55a)を金型成型用の抜き勾配として利用するようにしている。従って、集塵電極(40)及び高圧電極(50)の加工性が向上し、高品質の樹脂電極(40,50)を得ることができる。
また、このように各電極(40,50)の両側(基台部(41,51)側及び突起部(42,52)側)にそれぞれ抜き勾配(42a,45a,52a,55a)を形成するようにすると、例えば各電極の片側のみに抜き勾配を形成する場合と比較して、各電極(40,50)の平均的な厚みを小さくできる。このため、基台部(41,51)の内壁と突起部(52,42)の側周面との間の実質的な距離を狭くすることができ、集塵部(30)における電極の集積率を向上できる。従って、この空気清浄機(10)の集塵効率の向上、あるいは空気清浄機(10)のコンパクトを図ることができる。
更に、上記実施形態1では、集塵電極(40)における基台部(41)及び突起部(42)間の連接部(47)と、高圧電極(50)における基台部(51)及び突起部(52)間の連接部(57)とを、空気流れ方向に離間するように配置している(図5参照)。ここで、各連接部(47,57)は、上述した金型成形時における一対の金型の分割線(パート面)に相当するので、各連接部(47,57)ではいわゆるバリが形成され易い。また、この連接部(47,57)は、相対する電極に対して僅かに突出する形状をしている。このため、仮に各連接部が近い位置にあると、各連接部の間でスパーク等の異常放電を招く虞がある。これに対し、図5に示すように、各連接部(47,57)を空気流れ方向に離間させると、各連接部(47,57)の間での異常放電を回避することができる。従って、空気清浄機(10)の信頼性を確保できる。
〈実施形態1の変形例〉
図6に示す変形例は、上記実施形態1の集塵部(30)において、上記高圧電極(50)の構成が異なるものである。具体的に、この変形例の高圧電極(50)は、導電性の金属電極で構成されている。高圧電極(50)は、上記実施形態1と同様にして、基台部(51)と突起部(52)とを有している。一方、この変形例では、基台部(51)及び突起部(52)に抜き勾配が形成されていない。つまり、高圧電極(50)では、基台部(51)の横仕切部(55)から突起部(52)までが一体的な平板状に形成されている。また、集塵電極(40)は、上記実施形態1と同様、樹脂電極で構成されると共に、基台部(41)と突起部(42)とにそれぞれ抜き傾斜面(45a,42a)が形成されている。
また、この変形例では、集塵電極(40)と高圧電極(50)との組立て状態において、集塵電極(40)の連接部(47)と、高圧電極(50)の基台部(51)の端部(51a)とが、空気流れ方向に離間するように配置されている。つまり、集塵電極(40)及び高圧電極(50)は、集塵電極(40)の連接部(47)と基台部(51)の端部(51a)とが、突起部(42,52)と基台部(51,41)との対面方向(図5における上下方向)において、互いにずれるように構成されている。
この変形例の集塵部(30)では、空気が通風孔(46)を流通する際に、空気中の塵埃が基台部(41)の内壁に誘引されて除去される。この際、通風孔(46)では、基台部(41)の連接部(47)から基台部(41)の上流端に向かって電極間距離が拡がっており、連接部(47)から上流端に向かうに連れて電界強度も弱くなる。従って、通風孔(46)の内壁の上流端部にばかり塵埃が付着してしまうことが防止され、且つ通風孔(46)の上流端から下流端に亘って塵埃が均一に捕捉される。
また、この変形例では、集塵電極(40)の連接部(47)と高圧電極(50)の基台部(51)の端部(51a)とを空気流れ方向に離間するように配置している。ここで、上述の如く集塵電極(40)の連接部(47)にはバリ部が形成される。また、高圧電極(50)の基台部(51)の端部(51a)には、角張った形状のエッジ部が形成される。従って、仮に集塵電極の連接部と高圧電極の基台部の端部とが近い位置にあると、これらの部位の間でスパーク等の以上放電を招く虞がある。これに対し、図6に示すように、集塵電極(40)の連接部(47)と基台部(51)の端部(51a)とを空気流れ方向に離間させると、これらの部位(47,51a)の間での異常放電を回避することができる。従って、空気清浄機(10)の信頼性を確保できる。
なお、この変形例では、集塵電極(40)を樹脂電極で構成し、高圧電極(50)を金属電極で構成しているが、これとは逆に集塵電極(40)を金属電極で構成し、高圧電極(50)を樹脂電極で構成するようにしても良い。
〈実施形態2〉
実施形態2は、上記実施形態1と集塵部(30)の構成が異なるものである。実施形態2では、集塵電極(40)及び高圧電極(50)が樹脂電極によって構成されている。具体的には、図7に示すように、実施形態2の集塵電極(40)は、上記実施形態1の突起部(42)が省略された構成となっている。つまり、集塵電極(40)は、格子構造の基台部(41)のみを有しており、基台部(41)から空気流れの下流側に向かって突起部(42)が延びていない。また、基台部(41)には、通風孔(46)の内壁に上記実施形態1と同様にして傾斜面(第1上流側傾斜面(45a))が形成されている。
一方、実施形態2の高圧電極(50)は、基台部(51)と突起部(52)とを有し、突起部(52)が集塵電極(40)の通風孔(46)内まで延びている。また、実施形態2の高圧電極(50)では、基台部(51)の横仕切部(55)から突起部(52)に亘って連続的な傾斜面(52b)が形成されている。この傾斜面(52b)は、高圧電極(50)の下流端部から上流端部に向かうに連れて厚みを小さくするように形成されている。換言すると、実施形態2の高圧電極(50)では、その下流端部から上流端部に向かうに連れて集塵電極(40)との電極間距離を拡げるような形状の傾斜面(52b)が形成されている。
実施形態2の集塵部(30)において、空気が通風孔(46)を通過すると、空気中の塵埃が集塵電極(40)の通風孔(46)の内壁に捕集される。ここで、通風孔(46)では、その上流端部の電界強度が比較的弱くなっているので、通風孔(46)の内壁の上流端部に多量の塵埃が付着してしまうのが防止される。また、実施形態2では、集塵電極(40)の上流端部から下流端部に向かって徐々に電界強度が強くなっているので、集塵電極(40)の全域に亘って均一に塵埃を捕集することができる。従って、集塵部(30)では、長期に亘って集塵効率を維持することができる。
〈実施形態2の変形例〉
図8に示す変形例では、上記実施形態2の集塵電極(40)が金属電極で構成されている。また、集塵電極(40)は、格子構造の基台部(41)を有する一方、上記突起部(42)を有していない。また、この変形例の基台部(41)の縦仕切部(44)及び横仕切部(45)は、上記傾斜面を有しておらず、それぞれ平板状に形成されている。
この変形例においても、高圧電極(50)の傾斜面(52b)により、集塵電極(40)と高圧電極(50)の電極間距離が下流端部から上流端部に向かって拡がっている。従って、集塵電極(40)の全域に亘って均一に塵埃を捕集することができ、且つ両電極(40,50)の上流端部における異常放電を防止することができる。
なお、上記実施形態2及びその変形例において、上記集塵電極(40)と高圧電極(50)の関係を逆に構成しても良いのは勿論のことである。
〈実施形態3〉
実施形態3は、上記実施形態1及び2と集塵部(30)の構成が異なるものである。具体的には、図9に示すように、実施形態3の集塵部(30)では、略平板状の集塵電極(40)と、略平板状の高圧電極(50)とが交互に配列されて互いに平行配置されている。集塵電極(40)及び高圧電極(50)は、それぞれが樹脂電極で構成されている。また、集塵電極(40)及び高圧電極(50)は、図9における紙面方向(空気流れと直交する方向)に延びた形状をしている。
実施形態3の集塵電極(40)には、傾斜面(45b)が形成されており、その下流端部から上流端部に向かうに連れて厚みが小さくなっている。一方、高圧電極(50)には、その幅方向の両側にそれぞれ傾斜面(52a,55a)が形成されている。具体的には、高圧電極(50)では、その幅方向の中間部の境界部位(57)を挟んで、空気流れの上流側に第2上流側傾斜面(52a)が形成され、空気流れの下流側に第2下流側傾斜面(55a)が形成されている。
実施形態3では、高圧電極(50)の第2上流側傾斜面(52a)と集塵電極(40)との間の対向面において、その電極間距離が境界部位(57)から上流端部に向かうに連れて拡がっている。従って、集塵電極(40)の上流端部に多量の塵埃が付着することを抑制でき、スパーク等の異常放電を防止できる。
また、実施形態3では、樹脂製の高圧電極(50)について、その両側に形成された傾斜面(52a,55a)を金型成形用の抜き勾配として利用できる。従って、高圧電極(50)の加工性が向上すると共に、高圧電極(50)の薄型化を図ることができる。
〈実施形態3のその他の変形例〉
図10に示すように、集塵電極(40)及び高圧電極(50)を略同一形状として、これらの上流側と下流側とにそれぞれ傾斜面(45a,42a,52a,55a)を形成しても良い。具体的に、この変形例の集塵電極(40)では、その幅方向の中間部の境界部位(47)を挟んで、空気流れの上流側に第1上流側傾斜面(45a)が形成され、空気流れの下流側に第1下流側傾斜面(42a)が形成されている。
この変形例においても、第1上流側傾斜面(45a)と第2上流側傾斜面(52a)との間の電極間距離が、境界部位(47,57)から上流端部に向かうに連れて拡がるので、該上流端部における多量の塵埃の付着を抑制でき、異常放電の発生を防止できる。
また、この変形例では、集塵電極(40)と高圧電極(50)との双方において、各傾斜面(45a,42a,52a,55a)を抜き勾配として利用できる。従って、両電極(40,50)の加工性が向上すると共に、各電極(40,50)の薄型化を図ることができる。
また、図11に示すように、集塵電極(40)を平板状の金属電極で構成する一方、高圧電極(50)を樹脂電極で構成し、その全域に亘って傾斜面(52b)を形成しても良い。また、図12に示すように、集塵電極(40)を平板状の金属電極で構成する一方、高圧電極(50)を樹脂電極で構成し、空気流れ方向の両側にそれぞれ傾斜面(52a,55a)を形成しても良い。また、実施形態3及びこれらの変形例の各電極(40,50)の構成を組み合わせても良いし、集塵電極(40)と高圧電極(50)とを逆に構成しても良いのは勿論のことである。
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態1の集塵電極(40)は、多数の通風孔(46)を形成したが、1つであってもよく、高圧電極(50)の突起部(52)は通風孔(46)に対応して1つであってもよい。
また、本実施形態1の集塵電極(40)は、第2電極である集塵電極(40)と第1電極である高圧電極(50)とが共に突起部(42,52)を備え、第1電極(50)と第2電極(40)とが互いに嵌り込む構造にした。しかしながら、高圧電極(50)のみが突起部(52)を備えて集塵電極(40)に嵌り込むようにしても良いし、集塵電極(40)のみが突起部(42)を備えて高圧電極(50)に嵌り込むようにしても良い。
また、上記実施形態1の集塵電極(40)と高圧電極(50)の基台部(41,51)は、長方形の四角格子構造に形成したが、正方形の四角格子構造にしてもよく、また、六角格子構造にしてもよく、三角格子構造にしてもよい。要するに、基台部(41,51)は、各種の格子構造に形成して集塵面積を拡大するようにしたものであればよい。
また、上記実施形態1の突起部(42,52)は、横仕切部(45,55)に設けたが、縦仕切部(44,54)に設けるようにしてもよく、形状は平板状の他、棒状など各種の形状にしてもよいことは勿論である。
また、上記各実施形態において、上記高圧電極(50)を負の高電圧電極とし、集塵電極(40)をアース電極としてもよい。また、荷電部(12)はイオン化線と対向電極から構成したが、イオン化線を針状電極としてもよい。その際、例えば、針状電極を負の高電圧電極とし、対向電極をアース電極としてもよい。
また、上記集塵電極(40)は正電極であってもよく、その際、相対する電極(50)がアース電極となる。
また、本発明の集塵装置は、空気清浄機(10)に限られるものではなく、空気調和装置に搭載されるものであってもよく、また、荷電部(12)と集塵部(30)のみを有するものであってもよい。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。