JP2009052268A - 超高強度コンクリート部材の製造方法、及び脱枠手順解析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超高強度コンクリート3の養生をする際に断熱型枠2を使用する。本発明においては、複数の断熱部材1を積層させて断熱型枠2を構築しておき、これら複数の断熱部材1を順次取り外していく。これらの断熱部材1を取り外していく順序やタイミングは有限要素法による解析にて求める。当初の断熱型枠2の厚みを適正にすることにより、初期ひび割れ(最初の脱枠を行うまでに生じるひび割れ)の発生を回避できる。また、断熱部材1を取り外すタイミングを適正にすることにより、脱枠時のひび割れ発生(つまり、サーマルショックを原因とするひび割れ発生)を回避でき、全ての断熱部材1を取り外すまでの養生期間の短縮化を図ることができる。
【選択図】図2
Description
・ 断熱型枠を用いずに養生を行った場合
・ 断熱型枠を用いたとしてもその厚みが薄すぎたり厚すぎたりした場合
には、材齢初期(具体的には材齢7日以内程度)にひび割れが発生するという問題があった。また、断熱型枠の厚みが適正であって材齢初期にひび割れが発生しなかったとしても脱枠時にひび割れが発生してしまう場合もあった。以下、それぞれのひび割れ発生及びその他の問題点について説明する。
(b) の符号4参照)からの距離[mm]を取り(該中心線から右方向を正、左方向を負とした)、縦軸には引張応力[N/mm2]を取ったものであるが、引張応力は、中心部分のコンクリートの方が表面部分のコンクリートよりも大きくなり、材齢7日目以降でコンクリートの引張強度よりも高くなっている。これは、材齢初期において、表面部分に比べて温度が高く自己収縮ひずみの増進が大きい中心部分のコンクリートが表面部分のコンクリートに拘束されること、さらに中心部分のコンクリートは温度が高いことからヤング係数の増進が表面部分のコンクリートに比べ大きくなるため、変形が拘束された際に発生する応力(拘束応力)が表面部分に比べ大きくなることによるものと推察でき、部材中心部分には自己収縮に伴うひび割れが発生し得る状態となる。図6(b)
は、部材中心部分の応力変化32、部材表面部分の応力変化30、並びに該中心部分と該表面部分との間の中間部分における応力変化31を経時的に示す模式図であり、横軸には材齢[日]を取り、縦軸には引張応力[N/mm2]を取っている。この図によっても、鉄筋コンクリート部材中心部分におけるひび割れ発生を推察することができる。この現象は、部材内に鉄筋が配置されていない無筋コンクリート部材の場合であっても同様である。逆に、このような条件に加え、部材内部(中心部分)に芯鉄筋が配筋されている場合、コンクリートの自由ひずみのうち自己収縮ひずみが該芯鉄筋により拘束されるため、該部分にはより大きな引張応力(拘束応力)が発生し、該引張応力が許容応力(引張強度)を超えた時点でひび割れが発生することとなる。以上のような理由から、超高強度コンクリートを使用したコンクリート部材の初期ひび割れ発生を抑制するためには、断熱型枠の厚み(すなわち熱伝達率)は、厚すぎてもまた薄すぎても(すなわち小さすぎてもまた大きすぎても)好ましくなく、適正な範囲が存在し、それはコンクリート調合や拘束条件、養生条件より部材毎に定まるのである。
は比較的薄い断熱型枠を用いた場合の解析結果であり、図8(a) は比較的厚い断熱型枠を用いた場合の解析結果であるが、いずれの場合も、応力は引張強度を超えず、ひび割れは発生しないことが推察できる。一方、表面部分のコンクリートの温度と外気温とに差ΔT(℃)がある時期に脱枠を行うと、外気に曝されることによってコンクリート表面部分の温度が急激に低下し、コンクリートの表面部分と中心部分に温度差が発生する。この結果、温度低下により収縮しようとする表面部分のコンクリートと、温度の高い中心部分のコンクリートとはお互いの変形を拘束し、表面部分のコンクリートには引張応力、中心部分のコンクリートには圧縮応力がそれぞれ作用する。このような現象はサーマルショックと呼ばれ(図7(b)
の符号40、及び図8(b) の符号41参照)、ΔTが大きくなると、表面部分のコンクリートにおいて引張応力(拘束応力)が引張強度を超える箇所が発生しひび割れが発生する場合がある。
ところで、上述の(1) 〜(3) のようなひび割れを回避するには、断熱型枠の厚みを適正にしておき、サーマルショックによるひび割れすなわち温度差ΔTに起因する引張応力(拘束応力)が引張強度を超えない範囲まで、コンクリート部材の温度が低下した段階で脱枠を行えば良い。ここで、図9(a)
は、断熱型枠の厚みが厚い場合のコンクリート部材各部の温度変化を示す模式図であり、材齢初期には上述の水和熱によって上昇した温度も時間と共に低下していく様子が示されている。図中には、サーマルショックによるひび割れが起こらない範囲で最も大きいΔTすなわちΔTmaxと、ΔTがΔTmaxとなる材齢DΔTmaxを示している。しかし、このように断熱型枠の厚みが厚いと、ΔT≦ΔTmaxとなる材齢DΔTmaxまでに時間が掛かってしまい、養生期間が長くなってしまい、工事工程に支障をきたすことが懸念される。断熱型枠の厚みを薄くすると、図9(b)
に示すように養生期間を短くすることができるが、上記(2) のような初期ひび割れ発生の可能性が残る。したがって、初期ひび割れの発生とサーマルショックによるひび割れの発生を防止し、養生期間を出来るだけ短くする為には、部材全体の温度が下降する速度が速やかであり、かつ脱枠時において、外気温とコンクリート部材表面部分との温度差ができるだけ小さくなるような養生方法が必要となる(同図(c)
参照)。
熱伝達率を変更可能な養生材で、前記打設された超高強度コンクリートの表面を覆う工程と、
該超高強度コンクリートを養生している際に、前記養生材の熱伝達率を段階的に変化させる工程と、からなる超高強度コンクリート部材の製造方法に関する。
該構築した断熱型枠(2、12)に超高強度コンクリート(3)を打設する工程と、
該超高強度コンクリート(3)を養生している際に、前記重なるように積層された複数の断熱部材(1)を順次取り外て前記熱伝達率を段階的に変化させる工程と、からなる超高強度コンクリート部材の製造方法に関する。
コンクリートの温度を解析する温度解析ステップ(図1のS3)と、
コンクリートの有効材齢を算出する有効材齢算出ステップ(S4)と、
前記温度及び前記有効材齢からコンクリートの自己収縮ひずみ量を予測する自己収縮ひずみ量予測ステップ(S6)と、
前記温度からコンクリートの温度ひずみ量を予測する温度ひずみ量予測ステップ(S7)と、
コンクリートの材料特性を予測する材料特性予測ステップ(S5)と、
これらの自己収縮ひずみ量、温度ひずみ量及び材料特性から応力を解析する応力解析ステップ(S8)と、
該解析した応力に基づいて脱枠前に初期ひび割れが発生するか否かを予測する初期ひび割れ予測ステップ(S10)と、
初期ひび割れが発生しないと予測した場合に前記温度解析ステップ(S3)、前記自己収縮ひずみ量予測ステップ(S6)、前記温度ひずみ量予測ステップ(S7)、前記材料特性予測ステップ(S5)及び前記応力解析ステップ(S8)を実施して、断熱部材を取り外した際にひび割れが発生するか否かを予測する脱枠時ひび割れ予測ステップ(S11)と、
超高強度コンクリートの打設から脱枠までの養生期間を判定する養生期間判定ステップ(S12)と、
を有することを特徴とする。
・ 超高強度コンクリートを打設する工程と、
・ 熱伝達率を変更可能な養生材で、前記打設された超高強度コンクリートの表面を覆う工程と、
・ 該超高強度コンクリートを養生している際に、前記養生材の熱伝達率を段階的に変化させる工程と、
からなることを特徴とする。
(イ) 互いに重なるように複数の断熱部材(図2(a)
(b) の符号1参照)を積層させて構築した断熱型枠(同図の符号2、12参照)や、
(ロ) コンクリートに何重にも巻き付けるように配置したシートや毛布等や、
(ハ) 電気的に温度調整できるようにした発熱体(例えば、電気毛布のようなもの)
(ニ) 或いは、それらを適宜組み合わせたもの(例えば、断熱型枠と水密性のシートとを積層させることにより、乾燥防止効果を付加したもの)
等を挙げることができる。また、熱伝達率を段階的に変化させる方法としては、
(イ) 後述するように、前記重なるように積層された複数の断熱部材1を順次取り外す方法
(ロ) 何重にも巻き付けたシートや毛布を徐々に剥がしていく方法
(ハ) 発熱体の温度を徐々に下げていく方法
等を挙げることができる。
・ 互いに重なるように複数の断熱部材(図2(a) (b) の符号1参照)を積層させて前記養生材としての断熱型枠(同図の符号2、12参照)を構築する工程と、
・ 該構築した断熱型枠(例えば、符号2、12参照)に超高強度コンクリート3を打設する工程と、
・ 該超高強度コンクリート3を養生している際に、前記重なるように積層された複数の断熱部材1を順次取り外して前記熱伝達率を段階的に変化させる工程と、
からなることを特徴とする。なお、図2(a) (b) に示す断熱型枠2、12の場合、全ての部分において複数の断熱部材1が積層されるように構成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、
・ 複数の断熱部材1が積層されて構成される部分と、
・ 断熱部材1が積層されずに一層で構成される部分と、
で構成するようにしても良い。なお、養生材としてシート(上記(イ)参照)や毛布(上記(イ)参照)や発熱体(上記(ロ)参照)を用いる場合には、コンクリートを打設する前でなくコンクリートを打設した後にこれらの養生材を配置しても良い。
・ コンクリートの調合に関するデータ
・ コンクリート部材の寸法に関するデータ
・ 配筋についてのデータ
・ 施工方法に関するデータ
・ 外部温度環境に関するデータ
・ 目標脱枠日数Drに関するデータ
・ 拘束条件に関するデータ
・ 熱伝達率条件(型枠の材質、厚み、枚数など)に関するデータ
などを入力する。
(1) 内部拘束応力の評価を行って初期ひび割れ(つまり、部分脱枠を開始するまでに生じるひび割れ)の有無を予測し(S10)、
(2) 初期ひび割れの発生が無いと予測される場合には、部分脱枠をしたとして熱伝達率(熱境界条件)の設定を変更して応力解析を順次行い、サーマルショックによるひび割れの有無を予測し(S11)、
(3) 養生期間が所定の範囲内か否かの評価を行う(S12)、
ようになっている。つまり、上記(1) では初期ひび割れ予測ステップを実施して、前記応力解析ステップS8で解析した応力σt(t)に基づいて部分脱枠開始前に初期ひび割れが発生するか否かの予測をし、該初期ひび割れが発生しないと予測した場合には前記温度解析ステップS3、前記自己収縮ひずみ量予測ステップS6、前記温度ひずみ量予測ステップS7、前記材料特性予測ステップS5及び前記応力解析ステップS8を実施して断熱部材1を取り外した際にひび割れが発生するか否かを予測し(上記(2) の脱枠時ひび割れ予測ステップ)、上記(3) では養生期間判定ステップを実施して、超高強度コンクリートの打設から脱枠までの養生期間を判定すると良い。
・ 温度解析ステップS3にて求めた温度履歴T(t)より有効材齢te (t)を求め、
・ 所定の関係式 εas=f4(te)
から各要素の自己収縮ひずみ量εasを予測すると良い。
・ 温度解析ステップS3にて求めた温度履歴T(t)と、
・ 所定の関係式 εT=f5(T(t))と
から各要素の温度ひずみ量εTを予測すると良い。
・ 温度解析ステップS3にて求めた温度履歴T(t)と、
・ 所定の関係式 Fc(te)=f6(te)と
から算出するようにすると良い。さらに、各要素の静弾性係数E(te)は、
・ 上述のようにして求めた圧縮強度Fc(te)と、
・ 所定の関係式 E(te)=f8(Fc(te))と
から算出するようにすると良い。また、クリープによる応力緩和を考慮するクリープ係数φ(te)は、
・上述のようにして求めた有効材齢te、圧縮強度Fc、静弾性係数E等と、
・所定の関係式 φ(te)=f(te、Fc(te)、E(te))
とから算出するようにすると良い。
さらに、各要素の引張強度Ft(te)は、
・ 上述のようにして求めた圧縮強度Fc(te)と、
・ 所定の関係式 Ft(te)=f7(Fc(te))と
から算出するようにすると良い。
2 断熱型枠
3 超高強度コンクリート
12 断熱型枠
S3 温度解析ステップ
S4 有効材齢算出ステップ
S5 材料特性予測ステップ
S6 自己収縮ひずみ量予測ステップ
S7 温度ひずみ量予測ステップ
Claims (5)
- 超高強度コンクリートを打設する工程と、
熱伝達率を変更可能な養生材で、前記打設された超高強度コンクリートの表面を覆う工程と、
該超高強度コンクリートを養生している際に、前記養生材の熱伝達率を段階的に変化させる工程と、
からなる超高強度コンクリート部材の製造方法。 - 互いに重なるように複数の断熱部材を積層させて前記養生材としての断熱型枠を構築する工程と、
該構築した断熱型枠に超高強度コンクリートを打設する工程と、
該超高強度コンクリートを養生している際に、前記重なるように積層された複数の断熱部材を順次取り外して前記熱伝達率を段階的に変化させる工程と、
からなる請求項1に記載の超高強度コンクリート部材の製造方法。 - 前記断熱部材を取り外していく順序やタイミングは、有限要素法を用いた脱枠手順解析方法により算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の超高強度コンクリート部材の製造方法。 - 前記脱枠手順解析方法は、コンクリートの温度を解析する温度解析ステップと、コンクリートの有効材齢を算出する有効材齢算出ステップと、前記温度及び前記有効材齢からコンクリートの自己収縮ひずみ量を予測する自己収縮ひずみ量予測ステップと、前記温度からコンクリートの温度ひずみ量を予測する温度ひずみ量予測ステップと、コンクリートの材料特性を予測する材料特性予測ステップと、これらの自己収縮ひずみ量、温度ひずみ量及び材料特性から応力を解析する応力解析ステップと、該解析した応力に基づいて脱枠前に初期ひび割れが発生するか否かを予測する初期ひび割れ予測ステップと、初期ひび割れが発生しないと予測した場合に前記温度解析ステップ、前記自己収縮ひずみ量予測ステップ、前記温度ひずみ量予測ステップ、前記材料特性予測ステップ及び前記応力解析ステップを実施して断熱部材を取り外した際にひび割れが発生するか否かを予測する脱枠時ひび割れ予測ステップと、超高強度コンクリートの打設から脱枠までの養生期間を判定する養生期間判定ステップと、を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の超高強度コンクリート部材の製造方法。 - 複数の断熱部材を積層させて構築した断熱型枠を用いて超高強度コンクリートを養生する場合の断熱部材を取り外す順序やタイミングを解析する脱枠手順解析方法において、
コンクリートの温度を解析する温度解析ステップと、
コンクリートの有効材齢を算出する有効材齢算出ステップと、
前記温度及び前記有効材齢からコンクリートの自己収縮ひずみ量を予測する自己収縮ひずみ量予測ステップと、
前記温度からコンクリートの温度ひずみ量を予測する温度ひずみ量予測ステップと、
コンクリートの材料特性を予測する材料特性予測ステップと、
これらの自己収縮ひずみ量、温度ひずみ量及び材料特性から応力を解析する応力解析ステップと、
該解析した応力に基づいて脱枠前に初期ひび割れが発生するか否かを予測する初期ひび割れ予測ステップと、
初期ひび割れが発生しないと予測した場合に前記温度解析ステップ、前記自己収縮ひずみ量予測ステップ、前記温度ひずみ量予測ステップ、前記材料特性予測ステップ及び前記応力解析ステップを実施して、断熱部材を取り外した際にひび割れが発生するか否かを予測する脱枠時ひび割れ予測ステップと、
超高強度コンクリートの打設から脱枠までの養生期間を判定する養生期間判定ステップと、
を有することを特徴とする脱枠手順解析方法。
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