JP2009046742A - メタルワイヤーパタンの製造方法、バックライトシステム及びそれらを用いた液晶ディスプレイ - Google Patents

メタルワイヤーパタンの製造方法、バックライトシステム及びそれらを用いた液晶ディスプレイ Download PDF

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Abstract

【課題】サブミクロンオーダーの任意形状の凹凸部を有する支持基板上に、良好な金属膜を確実に形成することができるメタルワイヤーパタンの製造方法、バックライトシステム及びそれらを用いた液晶ディスプレイを提供する。
【解決手段】金属基板10の表面10aに有機材料を塗布する有機材料塗布工程と、有機材料にナノインプリント法により凹凸部11を形成する凹凸部形成工程と、凹凸部11の凹部12内に金属基板10を陰極とした電解めっき法によりメタルワイヤー層13を埋設するめっき工程と、金属基板10の表面10aに支持基板14を接着する接着工程と、金属基板10を除去する除去工程とを有することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、液晶ディスプレイ用のメタルワイヤー型偏光板あるいは透磁率が負であるメタマテリアルやプラズモンの導波用に用いるサブミクロンオーダーのメタルワイヤーパタンの製造方法、液晶ディスプレイ用のバックライトシステム及びそれらを用いた液晶ディスプレイに関する。
液晶ディスプレイは自発光でないため蛍光灯や発光ダイオードからなるバックライトが必要である。さらに、液晶セルには直線偏光を入射させるため、バックライトから出た無偏光な光は偏光板を通す必要がある。
この種の偏光板の中には、ヨウ素を延伸して高度に配向させたポリビニルアルコール樹脂に分散させたものや、ヨウ素の代わりに2色性色素を用いたものがある。この偏光板の偏光度は99.99%以上もあり、光学的には非常に高性能である。
しかしながら、上述の偏光板は、有機物で形成されているため、紫外線や熱に対する耐性が低いという問題がある。したがって、光源から発光される光に紫外線が含まれたり、強度が強いと偏光板としての寿命が短くなる。さらに、この偏光板は入射光の半分がヨウ素に吸収される吸収型の偏光板であり、光の利用効率が50%以下であるという問題がある。吸収型であることは決定的に不利な点であって、吸収型の偏光板である限り改善は不可能である。
上述した吸収型の偏光板に対し、金属細線を使ったワイヤーグリッド型偏光板技術も知られている(例えば、特許文献1,2及び非特許文献1参照)。このワイヤーグリッド型偏光板は、主として赤外線など波長の長い電磁波(波長はミクロンオーダー)に対して使用されている。
ここで、図4は、ワイヤーグリッド型偏光板の概略構成図である。
図4に示すように、ワイヤーグリッド型偏光板の原理は、メタルワイヤー層300間の隙間の電磁場透過性に基づくものである。電場ベクトルE301が基板303の面内にあり、かつメタルワイヤー層300の延長方向に垂直で、磁場ベクトルH302が電場ベクトルE301に対して垂直の場合(TE波;transverse electric field)、電磁場はメタルワイヤー層300間で境界条件を自然に満たすので抵抗無く透過することができる(図4中左側)。一方、電場ベクトルE301と磁場ベクトルH302を入れ替えた場合(TM波;transverse magnetic field)には、境界条件を満たさず、電磁場はメタルワイヤー層300間で大きな変形を余儀なくされ、透過のインピーダンスが増加する(図4中右側)。また、メタルワイヤー層300間を透過できなかった光は、メタルワイヤー層300の高さhとピッチpが適切であると、損失を無視すればほぼ100%反射される。
TM波とTE波で透過性に大きな違いが出るのは、メタルワイヤー間のピッチpが入射電磁場の波長λに比べて短い場合(p≪λ)、好ましくは1/3から1/4以下の場合である。ミリ波、サブミリ波にかけては波長がμmからmmにあるので、メタルワイヤー層300の製造もサブミリ程度、せいぜいマイクロメーターのオーダーの加工であって、製作にそれほどの困難性はなかった。一方、可視光及び紫外光の波長はサブミクロンオーダー(赤で0.6μm、青で0.45μm程度)であり、これに対応したピッチ(0.15〜0.20μm以下程度)の金属加工は極めて困難である。これが、特性的に優れているにもかかわらずメタルワイヤー型偏光板が液晶ディスプレイ使用されない理由である。
また、メタマテリアル合成の分野においても、より微細なメタルワイヤーパタンの形成が要請されている(例えば、非特許文献2参照)。メタマテリアルとは、通常自然界には存在しない屈折率nが負の物質であって、簡単に言えば次式に示すような誘電率εと透磁率μが同時に負となる物質の総称である。
Figure 2009046742
一般にマイクロ波以上の高周波の電磁波に対する金属の誘電率εは負、透磁率μは正である。マイクロ波から可視域にかけて透磁率が負であるとn<0の物質が合成できるので特有の光学的効果が期待できる。特有の光学的効果の一例として平坦な凸レンズ、エバネッセント光の増強効果がある。
図5は、メタルワイヤー構造を示す概略構成図である。金属は誘電率εが負であるので、μを負にする構造としてカットワイヤー403(図5(a)参照)あるいはカットワイヤー403を2重にしたスプリットリング構造(図5(b)参照)と呼ばれるメタルワイヤー構造が開示されている(例えば、非特許文献3)。
これらメタルワイヤー構造は、図5(a),(b)に示すように、基板400上に環状の金属部401を形成し、その一部にカット402を入れたものが配列されたものである。入射電磁場の振動磁場H404(図5(a)参照)が金属部401に電流I405(図5(a)参照)を誘導しインダクタンスを持つ。さらにカット402がコンデンサーの機能を果たすのでカットワイヤー403は実質的にインダクタンスLと容量Cの直列回路と見なせる。この回路は次式に示すような共振周波数近傍の低周波側でμが負となることが期待される。
Figure 2009046742
ここで重要なことは単位のカットワイヤーのスケールである。これは入射電磁波の波長λよりも十分に小さいことが必要で、λ/3以下、望ましくはλ/6程度以下である。従って赤外から可視域ではサブミクロンオーダーの金属加工が不可欠である。一般にはフォトリソグラフィーとドライエッチングを組み合わせて作成する。しかしこの方法による微細パタン形成は単品を作るには使えるが、量産品を作る製法としては大面積化が難しくコストがかさむという問題がある。
さらに別の分野では、プラズモンポラリトンの導波路としてメタルワイヤーパタンが期待されている(例えば、非特許文献4参照)。プラズモンポラリトンは光と金属内電子のプラズマ振動が強結合した集団励起である。これは金属表面を伝播する2次元的な光である。従来からの信号処理に使われる伝播光は石英ファイバー、ポリマー導波路やガラスベースの光学素子中でしか扱えず半導体プロセスとの整合性は無い。それに対しプラズモンポラリトンは金属表面を伝播する光であるため、半導体プロセスとの整合性が取れ、且つ伝播光のように分岐や合波も可能である。
可視光に対するプラズモンポラリトンの伝播には銀、金の卑金属を用いる。金や銀を微細な直線状配線に加工したり、図6(a)に示すように、基板500a上に直径と厚さがそれぞれ数十nmに形成された円盤501を数十nmのピッチで並べる必要がある。あるいは、図6(b)に示すように、基板500b上に、上述した円盤501とほぼ同径で長さを長くしたロッド502を束ねたものが用いられる。しかしこうしたスケールの金、銀のパタンを所望の基板上に大量に製造する技術はない。
米国特許第6122103号明細書 米国特許第6788461号明細書 特開2007−24974号公報 H.R.Hertz、A "Collection of Articles and Addresses"、edited by J.F.Mulligan、 Garland, New York,1994.V.Pelleter、K.Asakawa、M.W、D.H.Adamson、R.A.Register and P.M.Chaikin、Applied Physics Letters、88、211114(2006) J.J.Wang, F.Walters, X.Liu, P.Sciortino,and X.Deng, Applied Physics letters、90、061104(2007) J.B.Pendry、"Contemporary Physics"、45、191(2004). W.L.Barns、 "A.Dereux and T.W.Ebbesen、 "Nature"、 424,824(2003). 谷口淳著 "はじめてのナノインプリント技術"、工業調査会、2005年
ところで、近年サブミクロンオーダーの微細な凹凸パタンの形成技術としてナノインプリント法が知られている(例えば、非特許文献5参照)。このナノインプリント法は、まずモールドと呼ばれる金型を作製し、この金型によりスタンプすることにより、複製品を多数製造するものである。これにより、数インチサイズの基板上では数十nmの微細なパタン形成が可能となる。そして、スパッタリング法や蒸着法により全面に金属を飛散堆積することで、パタン内にメタルワイヤー層を形成する。
しかしながら、ナノインプリント法により凹凸のパタンを形成した後、スパッタリング法や蒸着法により金属を堆積する場合、図7(a)に示すように、凸部上面601と凹部602との双方にメタルワイヤー層600が形成される。つまり、スパッタリング法や蒸着法では基板603aの全面に金属が堆積されてしまうため、基板603a上に2段のメタルワイヤー層600が形成されることとなる。その結果、電磁場の透過率が低く、またメタルワイヤー層600の形状が不均一であるため、偏光能が低く損失が大きくなるという致命的な問題がある。類似の方法としては、図7(b)に示すように、金属を基板603bに対して斜め方向から飛散堆積させるのもあるが、この場合、メタルワイヤー層604が不均一に堆積されるため、高品質なメタルワイヤー層の形成は困難である。
なお、ナノインプリント法を使用しないパタン形成方法としては、基板を直接エッチングしたり、リフトオフすることが考えられる。これは金属薄膜上もしくは絶縁性基板上にフォトリソグラフィーでストライプ状のレジストパタンを形成する。サブミクロンのパタン形成にはEUV露光、EB露光、2光束干渉露光等を行って現像することが可能である。そして、レジストパタンを介して金属箔膜を直接にエッチングするか(例えば、特許文献1参照)、リフトオフでは全面に蒸着あるいはスパッタリング等で金属皮膜を形成した後、レジストを除去するとメタルワイヤー部分のみが残る。
しかしながら、これらの方法に用いるレジストパタンの形成が容易ではなく、生産性が悪いという問題がある。特に現像や洗浄時にレジストパタンが表面張力により倒れたり接触したりする虞があるため、ストライプ間の距離が狭くなればなるほど、問題が生じる。また、リフトオフではレジストが残存する可能性があるため、機械的強度、安定性に不安が残る。
さらに、インクジェット法や印刷法でメタルワイヤー層を形成しても良いが、微細化と生産性、コストの点で現実的でない。また、多成分系樹脂の相分離と溶出現象とを利用して凹部を形成し、この凹部に金属を埋設し延伸するなどの製法も開示されてはいる。しかしながら、サブミクロン以下のパタンを大面積で簡便に複製する量産技術はないといってよい状況である。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであって、サブミクロンオーダーの任意形状の凹凸部を有する支持基板上に、良好な金属膜を確実に形成することができるメタルワイヤーパタンの製造方法、バックライトシステム及びそれらを用いた液晶ディスプレイを提供するものである。
第一の発明は、金属基板の表面に有機材料を塗布する有機材料塗布工程と、前記有機材料にナノインプリント法により凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、前記凹凸部の凹部内に前記金属基板を電極とした電解めっき法により金属膜を埋設するめっき工程と、前記金属基板の表面に支持基板を接着する接着工程と、前記金属基板を除去する除去工程と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、ナノインプリント法により凹凸部を形成することで、生産性を向上させた上で、サブミクロンオーダーの微細なパタンを確実に形成することができる。そして、電解めっき法により金属膜を形成することで金属基板上に形成された凹凸部のうち凹部のみに確実に金属膜を形成することができる。さらに、金属膜が形成された金属基板の表面に支持基板を接着した後、金属基板を除去することで、製造コストを抑えた上で高精細なメタルワイヤーパタンを形成することができる。
第二の発明は、前記めっき工程に先立って、前記凹部底面の有機物を除去する工程を有することを特徴とする。
この構成によれば、前述の電解めっきにより金属膜をより確実に析出することができる。
第三の発明は、前記凹凸部はストライプ状に形成され、前記凹凸部のピッチが150nm以下に設定されるとともに、前記凹凸部の凸部の高さが100nm以上に設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、凹凸部のピッチを150nm以下に設定することで、可視光や紫外光を確実に偏光させることができる。さらに、凸部の高さを100nm以上に設定することで、TE波以外の電磁波の透過を防ぐことができる。これにより、偏光作用に優れたメタルワイヤーパタンを形成することができる。
第四の発明は、前記凹凸部が、入射電磁波に対し透磁率が負になるように設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、入射電磁波に対し透磁率が負になるように設定することで、いわゆるメタマテリアルを合成することができる。
第五の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のメタルワイヤーパタンの製造方法により製造されたメタルワイヤー偏光板と、該メタルワイヤー偏光板からの反射光の偏光面を90度回転させ、前記メタルワイヤー偏光板に再入射させる位相差板と、を備えることを特徴とするバックライトシステムである。
この構成によれば、メタルワイヤー偏光板を透過せずに反射されたTM波成分の光の反射偏光面を偏光面回転機能により90度回転させ、メタルワイヤー偏光板に再入射させることで、メタルワイヤー偏光板を透過させることができるため、光の利用効率を向上させることができる。これにより、省電力で明るいバックライトシステムを提供することができる。
第六の発明は、請求項5記載のバックライトシステムを具備したことを特徴とする液晶ディスプレイである。
この構成によれば、光の利用効率に優れたバックライトシステムを具備しているため、高性能な液晶ディスプレイを提供することができる。
本発明によれば、サブミクロンオーダーの任意形状の凹凸部を有する支持基板上に、良好な金属膜を確実に形成することができる。
また、この工程をストライプ状のメタルワイヤーパタン形成に適用すれば、工程が単純容易であるので低コストのメタルワイヤー偏光板の提供ができる。また、非吸収型偏光板のため反射光の再利用ができ、光の利用効率が高くなるので、省電力で明るいバックライトが提供することができる。さらに、カットワイヤー構造、スプリットリング構造に適用すれば可視波長に対して屈折率が負のメタマテリアルを合成することができる。また、プラズモンポラリトンを導波するためのメタルワイヤーパタンを容易に形成することができる。
いずれにおいてもサブミクロンオーダーのメタルワイヤーパタンが有機材料により形成された凹凸部の凹部内に埋設されているため、強度が高くスクラッチ耐性に優れ、ハンドリングが容易である。また、支持基板の表面、つまり凸部と金属膜の表面の形状が優れ、凹凸が少ないため、損失の少ない偏光板とメタマテリアル、メタル導波路を提供することができる。
(メタルワイヤーパタンの製造方法)
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1,2は、本実施形態のメタルワイヤーパタンの製造工程を示す工程図である。
本実施形態では、メタルワイヤー偏光板を形成する際におけるメタルワイヤーパタンの製造方法について説明する。本実施形態のメタルワイヤーパタンの製造方法は、金属基板10の表面10aに有機物材料を塗布する有機材料塗布工程(図1(a))と、ナノインプリント法により有機物材料に凹凸部11を形成する凹凸部形成工程(同(b))と、凹凸部11の凹部12底面の有機物を除去する工程(同(c))と、電解めっき法により凹部12にメタルワイヤー層13を埋設するめっき工程(図2(a))と、金属基板10の表面10aに支持基板14を接着する接着工程(同(b))と、金属基板10を除去する除去工程(同(c))とを有するものである。
まず、メタルワイヤーパタンの母型となる石英モールド20(図1(b)参照)を形成する。石英モールド20の形成材料としては、石英基板やシリコン基板を用いることが可能であり、本実施形態では石英基板を用いている。そして、この石英基板上にフォトリソグラフィー法でクロムパタンを形成する。
具体的には、石英基板上にクロム膜を形成した後、ネガレジスト(例えば、富士フィルムエレクトロニクス製FEP171)を100nmの厚さでコーチィングし、120℃で10分間乾燥する。そして、電子ビーム(EB)露光装置で描画した後、2.38wt%のTMAH(Tetramethyl ammonium hydroxide)でスプレー現像し乾燥させる。なお、レジストを描画する際、汎用の電子ビーム露光あるいはポイントビームの露光装置では、幅や径が100nm〜20nm程度の開口をレジストに形成することができる。
次いで、石英基板上のクロム膜をパターニングする。具体的には、乾燥させたレジストをマスクとして塩素系ガスでドライエッチングする。次に、エッチングされたクロムパタンをマスクとして、CとOとの混合ガスを用いてRIE(reactive ion etching)を行い、石英基板を70〜80秒間エッチングする。その後、石英基板の表面にフッ素系の剥離材をコーチィングすることにより、クロムパタンが除去され凹部深さが例えば150nmの石英モールド20を形成することができる。このように、ナノインプリント法による石英モールド20は、数インチサイズの石英基板上では数十nmの微細なパタン形成が可能である。
なお、この石英モールド20で耐久性が不足する場合は、石英基板を使わずに樹脂による複製版を製造してもよい。この場合、複製版の表面を無電解ニッケルめっきと電解ニッケルめっきで強化したものを実用版として使用することとなる。この石英モールド20を母型として例えば有機樹脂で複製品を作るには、石英モールド20上に紫外線硬化樹脂を載せて硬化させて剥離するか、もしくは熱硬化性の樹脂を載せて硬化させて剥離する、あるいは押し出し成型的な方法を採用する等、場合に応じて使い分ければよい。
一方、図1(a)に示すように、金属基板10の表面10aには、その全面にスピンコート法等により有機材料30が塗布される。この金属基板10は、後の工程で除去する必要があるため(図2(c))、銅、アルミニウム等の金属箔が好ましく、本実施形態では銅箔が好適に用いられている。また、有機材料30としては、例えばエポキシ系樹脂や酸化の高いアクリル系樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。なお、除去可能なレジスト材料を用いても構わない。
次に、図1(b)に示すように、金属基板10の表面10aに塗布された有機材料30に凹凸部11を形成する。具体的には、有機材料30が塗布された金属基板10の表面10aに、石英モールド20を押圧したままで加熱して固めた後、剥離することで形成する。この場合、凹凸部11の凹部12の底面には、厚さが10nmから15nmの有機材料30の残渣層が残存する部分が生じることもある。
ここで、メタルワイヤー型偏光板のストライプパターンのピッチp1は波長に依存するが、概ね70〜150nm程度で形成することが好ましい。具体的には、その凹凸部11のピッチp1が150nm以下に設定されるとともに、凹凸部11の凸部15の高さh1が100nm以上に設定されていることが好ましい。凹凸部11のピッチを150nm以下に設定することで、可視光や紫外光を確実に偏光させることができる。また、凸部15の高さを100nm以上に設定することで、TE波以外の電磁波の透過を防ぐことができる。これにより、消光比の優れたメタルワイヤーパタンを形成することができる。
次に、図1(c)に示すように、凹部12の底面に残存した残渣層を除去する。具体的には、プラズマアッシング装置を用い、アルゴンプラズマで残渣層を除去する。これにより凹凸部11の下地の金属基板10が確実に露出することとなる。ここで、プラズマアッシングではサイドエッチが入り、凸部15が若干細る虞があるため、細りを加味した設計が必要である。つまり、残渣層の厚さは短時間のエッチングで除去できる程度の厚さが好ましく、具体的には15nm程度以下に抑制することが好ましい。
次に、図2(a)に示すように、凹部12内にメタルワイヤー層13となる金属膜を埋設する。具体的には、電解銅めっき装置で金属基板10を陰極として電流密度60mA/cmで10分間銅めっきを行い、厚さ120nmの銅の金属膜を凹部12内に形成する。なお、電解めっきに適用可能な金属は、銅、ニッケル、銀、金、錫、白金等、要求特性に応じて選択する。銀めっきに関してはめっき液(例えば、(株)ジャパンエナジー製HS−M400)を用い、浴温度65℃、浴流速1m/秒、5A/dmで1分間めっきすることで120nmの銀皮膜を形成できる。
このように、メタルワイヤー層13を形成する方法として電解めっき法を用いることで、めっき皮膜は電解液に直接接触する金属基板10上にしか形成されない。つまり、金属基板10の表面10aが露出した微細な凹部12内にのみに選択的にメタルワイヤー層13を形成することができる。
次に、図2(b)に示すように、凹部12内にメタルワイヤー層13を形成した後、金属基板10の凹凸部11側(表面10a側)に接着剤を介して支持基板14を接着する。支持基板14としては、有機物でも無機物でも構わないが、少なくとも偏光板として用いる場合は可視光域で透明である必要がある。有機物では適切な厚みのPETフィルム、ポリイミドフィルム等に接着剤を用いて接着させる。無機物では石英、ガラス、半導体基板が好適に用いられる。
次に、図2(c)に示すように、金属基板10を剥離する。具体的には、定法の塩化第2鉄、塩化第2銅などの溶液でエッチングを行う。これにより、支持基板14上に凹凸部11の凸部15とメタルワイヤー層13とが微細なストライプ状に配列されたメタルワイヤーパタンが形成される。
以上により、メタルワイヤー偏光板204が完成する。
したがって、上述の実施形態によれば、ナノインプリント法により凹凸部11を形成することで、生産性を向上させた上で、サブミクロンオーダーの微細なメタルワイヤーパタンを確実に形成することができる。そして、電解めっき法によりメタルワイヤー層13を形成することで金属基板10の表面10aに有機材料により形成された凹凸部11のうち、凹部12のみに確実にメタルワイヤー層13を形成することができる。さらに、メタルワイヤー層13が形成された金属基板10の表面10aに支持基板14を接着した後、金属基板10を除去することで、高精細なメタルワイヤーパタンを形成することができる。
このように、製造工程を簡素化させることができるため、製造コストを抑えることができる。また、有機材料により形成された凹凸部11の凹部12内にメタルワイヤー層13が埋設されているため、強度が高くスクラッチ耐性に優れ、ハンドリングが容易である。また、凸部15の上面とメタルワイヤー層13の表面との形状が優れ凹凸が少ないため、損失の少ないメタルワイヤーパタンを形成することができる。
ここで、凹部12の底面に有機材料の残渣層が残存する場合に、プラズマアッシングを行うことにより、残渣層が除去され、確実に金属基板10を露出させることができる。したがって、めっき工程の際に電解めっきによりメタルワイヤー層13を、より確実に析出することができる。
そして、以上の工程をストライプ状のメタルワイヤーパタン形成に適用すれば、工程が単純容易であるので低コストのメタルワイヤー偏光板204(図3参照)を提供することができる。さらに、カットワイヤー構造、スプリットリング構造に適用すれば可視波長に対して屈折率が負のメタマテリアルを合成することができる。また、プラズモンポラリトンを導波するためのメタルワイヤーパタンを容易に形成することができる。
(液晶ディスプレイ)
次に、上述のメタルワイヤーパタンの製造方法により製造されたメタルワイヤー偏光板を具備した液晶ディスプレイについて説明する。図3は、液晶ディスプレイの概略構成図である。また、図3においては、図中右側を前面、図中左側を背面とする。
図3に示すように、液晶ディスプレイは、バックライトシステム200及び液晶表示パネル205が配置されており、液晶表示パネル205から前面側に向けて表示光を出射することで、例えば平面視矩形状の画像を表示するものである。
液晶表示パネル205は、例えば配向膜、透明電極が形成された2枚の封止基板の間に液晶を封入するなどして構成され、さらに上下を偏光板で挟むことにより、矩形格子状に形成された複数の画素領域ごとに、画像信号に応じて光の透過状態を制御する液晶シャッタを構成するものである。
バックライトシステム200は、上下方向に離間して紙面奥行き方向に延びる複数のバックライト203と、バックライト203の背面側に配置されたアルミ等からなる反射板201と、メタルワイヤー偏光板204からの反射光の偏光面を90度回転させ、メタルワイヤー偏光板204に再入射させる複屈折性フィルム202(位相差板)と、バックライト203の前面側に配置されたメタルワイヤー偏光板204とから構成されている。
バックライト203としては、例えば冷陰極管(CCFL)等を用いるが、複数のLED素子を紙面奥行き方向に沿うライン上に配列したLED光源等を採用してもよい。複屈折性フィルム202は、一軸延伸した有機物フィルムであって、波長分散の少ないものを用いることができる。メタルワイヤー偏光板204は、支持基板14上に有機材料からなる凸部15とメタルワイヤー層13とがストライプ状に配列されたものである(図2(c)参照)。なお、図3において拡散フィルム等の光学部材は省略したが、必要に応じて設置しても構わない。
次に作用を説明する。
まず、バックライト203から発光された光のうちTE波成分の光は、メタルワイヤー偏光板204をほぼ100%透過していく。
一方、バックライト203から発光された光のうちTM波成分の光は、メタルワイヤー偏光板204を透過せずに、反射される。この時、本実施形態のメタルワイヤー偏光板204では、メタルワイヤー層13の厚みが適切に設定されているため、TM波成分の光は損失を無視すればほぼ100%反射されるとしてよい。そして、反射された光は複屈折性フィルム202を通過する際に、その偏光面を90度回転させる。
偏光面を回転させるには公知の技術である複屈折効果を使う。具体的には、波長λの光は複屈折がΔn、厚さがdの複屈折性フィルム202を透過すると2πΔn・d/λだけ偏光面が回転する。本実施形態では、複屈折性フィルム202の厚さdは、45度偏光面が回転するように設定されている。そして、偏光面を45度回転された光は、複屈折性フィルム202の背面側で反射板201により反射されることで、90度偏光面が回転した光が取り出せる。そして、再びメタルワイヤー偏光板204に入射されることでメタルワイヤー偏光板204を透過していく。これが繰り返えされるのでバックライト203から発光された光をほぼ100%利用することができる。
したがって、本実施形態によれば、上述のメタルワイヤーパタンの製造方法により形成されたメタルワイヤー偏光板204は、製造工程が単純容易であるので低コストのバックライトシステム200を提供することができる。また、メタルワイヤー偏光板204は非吸収型偏光板のため、バックライト203から発光される光によって熱劣化することがない。また、反射光の再利用ができ、光の利用効率が高くなるので、省電力で明るいバックライトシステム200を提供することができる。
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、液晶ディスプレイでは表示画素以外の部分から光が射出されるとコントラストが低下するので、一般には非表示部にブラックマトリックスと言われる遮光層を設けている。そのため、非表示部に該当する部分にあるメタルワイヤー層13は不要である。そこでメタルワイヤー層13の幅(例えば、図2(c)中w1)を広く形成すれば、そのメタルワイヤー層13を遮光層に転用できる。さらに、メタルワイヤー層13の延長方向と直交する部分にもブリッジのようなメタル部分を形成して遮光層とすればより効率的である。この構成によれば、液晶表示パネル内に設けられているブラックマトリックスを除くことが出来る。
さらに、上述したメタルワイヤー構造におけるスプリットリングのワイヤー層を単層でなく多層に形成することも可能である。この場合、スプリットリングの表面に薄い接着層を介して1層目の支持基板に接着を繰り返すことで製造できる。
本発明は液晶ディスプレイに従来使用されているヨウ素を配向させた吸収型偏光板の代替として、より偏光能と耐久性に優れた偏光板を提供する。さらに、赤外から可視域で屈折率が負のメタマテリアル材料の簡便な製造方法を提供する。プラズモンポラリトンを導波するための基板の製造に有効である。
本発明の実施形態におけるメタルワイヤーパタンの製造工程を示す工程図である。 本発明の実施形態におけるメタルワイヤーパタンの製造工程を示す工程図である。 本発明の実施形態におけるバックライトシステムを具備した液晶ディスプレイの概略構成図である。 メタルワイヤーに対して電磁場の分極の違いが透過性に与える効果を説明する図である。 (a),(b)はメタルワイヤー構造を示す概略構成図である。 (a),(b)はプラズモンポラリトンを導波するメタルワイヤーパタンの一例を示す模式図である。 (a),(b)は飛散粒子がパタン上に堆積する様子を模式的に説明する図である。
符号の説明
10・・・金属基板
10a・・・表面
11・・・凹凸部
12・・・凹部
13・・・メタルワイヤー層(金属膜)
14・・・支持基板
15・・・凸部
200・・・バックライトシステム
202・・・複屈折性フィルム(位相差板)
204・・・メタルワイヤー偏光板

Claims (6)

  1. 金属基板の表面に有機材料を塗布する有機材料塗布工程と、
    前記有機材料にナノインプリント法により凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、
    前記凹凸部の凹部内に前記金属基板を電極とした電解めっき法により金属膜を埋設するめっき工程と、
    前記金属基板の表面に支持基板を接着する接着工程と、
    前記金属基板を除去する除去工程と、を有することを特徴とするメタルワイヤーパタンの製造方法。
  2. 前記めっき工程に先立って、前記凹部底面の有機物を除去する工程を有することを特徴とする請求項1記載のメタルワイヤーパタンの製造方法。
  3. 前記凹凸部はストライプ状に形成され、前記凹凸部のピッチが150nm以下に設定されるとともに、前記凹凸部の凸部の高さが100nm以上に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメタルワイヤーパタンの製造方法。
  4. 前記凹凸部が、入射電磁波に対し透磁率が負になるように設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメタルワイヤーパタンの製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のメタルワイヤーパタンの製造方法により製造されたメタルワイヤー偏光板と、
    該メタルワイヤー偏光板からの反射光の偏光面を90度回転させ、前記メタルワイヤー偏光板に再入射させる位相差板と、を備えることを特徴とするバックライトシステム。
  6. 請求項5記載のバックライトシステムを具備したことを特徴とする液晶ディスプレイ。
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