JP2009040713A - 血管平滑筋細胞増殖抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 血管平滑筋細胞の増殖抑制剤、そのための水溶性エラスチンおよび医療用材料を提供する。
【解決手段】 血管平滑筋細胞が血管壁中のエラスチンを認識して増殖が抑制されていることを利用する。本発明は、架橋構造を残存させた水溶性エラスチンを用いて、血管平滑筋細胞を増殖抑制させながら培養する、また作成した水溶性エラスチンを用いてコアセルべーションゲルあるいは架橋ゲルを作成し、これらを用いて血管平滑筋細胞を培養して得られる医療用材料である。
【選択図】 なし
【解決手段】 血管平滑筋細胞が血管壁中のエラスチンを認識して増殖が抑制されていることを利用する。本発明は、架橋構造を残存させた水溶性エラスチンを用いて、血管平滑筋細胞を増殖抑制させながら培養する、また作成した水溶性エラスチンを用いてコアセルべーションゲルあるいは架橋ゲルを作成し、これらを用いて血管平滑筋細胞を培養して得られる医療用材料である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、血管平滑筋細胞の増殖を抑制する効果を有する水溶性エラスチンの製造方法、および水溶性エラスチンを含有してなる動脈硬化治療剤と生体適合性材料に関する。
動脈血管は内膜、中膜および外膜の3層構造から構成され、それぞれの層には主に血管内皮細胞、血管平滑筋細胞および線維芽細胞が配向性を有した形の階層化構造を持つ。こうした動脈の疾患である動脈硬化とは、その起き方や場所によりアテローム硬化、細動脈硬化、メンケルベルグ硬化などの3つのタイプに分類される。アテローム硬化とは、比較的太い動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪からなる粥状物質が蓄積し、内膜が肥厚する現象で、その肥厚内膜内には血管平滑筋細胞の増殖が観察され、この症状が続くと次第に血管が詰まり狭窄する硬化症である。細動脈硬化とは、脳内などの細い動脈で血管壁の伸縮性が失われ脆くなることより、高血圧などで血管が破壊する現象で、出血の原因になる。メンケルベルグ型硬化とは、動脈中膜にカルシウムが蓄積し、その結果血管壁の伸縮性が失われ脆くなり硬化する症状を有する。動脈硬化性の疾患には、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞、大動脈瘤、大動脈解離、腎硬化症による腎不全など死亡原因の上位を占める重大な疾患が多く、その治療薬の研究開発が盛んに行われている。
特に血管内皮細胞の障害が原因と考えられているアテローム動脈硬化では、正常な内皮細胞の働きである血管の抗血栓性作用や、抗酸化作用および平滑筋細胞増殖抑制作用などの機能が低下するのが特徴で、そうした血管内皮細胞の働きを維持する目的の動脈硬化治療薬や予防方法が考案されている。
動脈硬化の危険因子には、高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満などが知られているが、動脈硬化治療薬にはこうした危険因子に対して作用することで治療効果を発揮する原理を有するものが多い。例えば、高脂血症に対しては血中脂質改善、悪玉コレステロールの酸化防止効果を有するスタチン系治療薬、降圧薬であるアンジオテンシン受容体拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素阻害剤、またはアルドステロン拮抗薬などがある。
一方、動脈硬化の現象を促進させる血管壁の伸縮性の低下や脆さの原因には、血管平滑筋細胞の増殖による組織の器質化・繊維化があげられる。血管平滑筋細胞は、正常な組織では主に中膜に存在し収縮型と呼ばれる表現型で増殖性が低く、血管内皮細胞の障害による中膜構造の露出や血管炎症時にマクロファージが産生するエラスターゼによる細胞外基質であるエラスチンの崩壊により、合成型へ脱分化し増殖が開始され新生内膜が過形成することが知られている。即ち、平滑筋細胞の増殖を抑制し、増殖が休止している状態の表現型へ誘導することが動脈硬化治療に有効的である。こうした原理に基づく治療薬の開発も多くなされている。例えば特許文献1ではファルネルシルトランスフェラーゼ活性を有する分子、特許文献2に示されたネオカルチノスタチン誘導体などで、主に細胞内情報伝達を促進する触媒酵素を阻害する原理で増殖を抑制する方法が公開されている。また前述のアンジオテンシン受容体拮抗薬にも平滑筋細胞の増殖を抑える効果があるとされている。
近年、脱分化し増殖型に変換した血管平滑筋細胞は、中膜の細胞外基質であるエラスチンの影響で再度分化誘導されることが明らかになり、その原理には細胞表面のエラスチン受容体との結合によるシグナル伝達が細胞内骨格構造を発達させ分化を促進する機構が考えられているが、エラスチンに対する受容体の詳細はまだ不明な点が多く、必ずしもエラスチンと呼ばれるものであれば同様の効果を与えるものではない。
エラスチンは、血管平滑筋細胞がその前駆体である水溶性のトロポエラスチンとして産生し、細胞外でコアセルべーションと呼ばれる凝集現象を起こした後、リシルオキシターゼと呼ばれる酵素によりデスモシンやイソデスモシンと呼ばれる架橋構造が形成された不溶性物質である。即ち、トロポエラスチンには架橋構造が存在しないが、血管壁中のエラスチンは架橋構造を有した状態が通常型で、この状態で血管の伸縮性や弾性を発現している。
従来、生体から抽出したエラスチンを酸加水分解することで水溶性を付加させた水溶性エラスチンの製造方法が知られている。特にシュウ酸を用いた分解方法でα―エラスチンと称する凝集特性を有するエラスチンが入手しやすい水溶性エラスチンとして知られ、この水溶性エラスチンを用いた多くの医学生物学研究がなされてきた。その他のエラスチンの可溶化方法としては、アルカリエタノール法、酵素処理法などが知られているが、酵素処理以外の方法では条件が過酷なため分解が生じやすく、架橋構造を残存させず即ち高分子量のエラスチンを得にくいと考えられてきた。一方、ペプシン(特許文献3)やエラスターゼなどの酵素処理により可溶化する方法では、使用した酵素を失活させる薬剤が必要で、更に酵素と水溶性エラスチンとの分離工程も必要であった。そのため最近では、固定化酵素による方法(特許文献4)なども考案されている。いずれも可溶化したエラスチンの規格、例えば分子量分布や凝集性などをそろえる方法ではなく、またその効果に関する検討も行われてはいない。
エラスチンはもともとひとつの分子構造で表すことが困難であるため、エラスチンの純度を求める方法には多くの工夫が見られる。例えば、アミノ酸組成が出来るだけ前駆体であるトロポエラスチンに近いものとする方法や、遊離した架橋構造のデスモシン含有量を測る方法や、凝集性で決定する方法などがこれまでにも報告されている。
エラスチンマトリックス内でのエラスチン構造は水溶化処理することにより明らかに破壊されていることが予想されるが、細胞の接触する環境を考慮すると不溶性エラスチンでは利用しにくく、水溶性エラスチンでも分子量が小さくコアセルべーションしないエラスチンの場合は、逆にエラスチン分解物と細胞の反応を再現し、血管平滑筋の増殖抑制を誘導しないことが懸念される。
架橋構造を有している点がエラスチンの特徴でもある点から考慮すると、水溶性エラスチンであるだけでは平滑筋細胞に対する効果を特定することは困難であることが想像でき、本発明の課題である血管平滑筋細胞の増殖を抑制する用途には不向きであった。実際に水溶性エラスチンの分子量、架橋構造の残存性、物理的特性などの指標は、平滑筋細胞の生体内での生育環境に関連した重要な細胞外基質情報に類似する効果を有していると考えられるからである。
水溶性エラスチンの中でも比較的分解が進行していない、即ち分子量が2万程度以上の水溶性エラスチンの共通の特徴として、ある温度以上に加温すると白濁化し、そのまましばらく静置すると水溶液中で2相分離を引き起こすコアセルべーションと呼ばれる現象がある。この現象は可逆的で再度冷却することで1相に復元する。これは、水溶性エラスチンの分子間に働く疎水性相互作用に基づく現象と考えられ、水溶性エラスチンの有する化学的特徴が重要な支配因子となる。すなわち、不溶性エラスチンから分解した水溶性エラスチンの平均分子量や、分解の際に残存する疎水性側鎖の含有率の差に大きく依存した挙動であることが考えられてきた。
前述した従来の水溶化技術では、こうした因子を制御することは困難で、物理化学的性質をそろえた水溶性エラスチンを製造することは不可能と思われる。唯一、カラムクロマトグラフフィーなどの分離技術を駆使すればある程度は実現可能と思われる。しかしながら、多量に製造する場合、こうした分離技術は多くの時間と煩雑な工程を必要とするため問題となる。一方、生体組織から抽出したエラスチンから製造する水溶性エラスチンとは別な水溶性エラスチンとしては、前駆体であるトロポエラスチンやペプチド合成的手法あるいは遺伝子工学的手法で製造する、エラスチン中の特殊なアミノ酸配列部分を模倣したポリペプチドなどが上げられるが、何れも生体内での中膜構造の架橋エラスチンとは本質的には異なるため、エラスチンとはいえ、その効果は千差万別であると思われる。
つまり、生体由来のエラスチンから分解して得られる水溶性エラスチンには、細胞に対するエラスチンの本来の役割を維持している可能性が多く、特に細胞の増殖や分化・遊走などの骨格構造変化を伴う活動や、細胞が産生する蛋白質などの調節効果があるが、これまでは架橋構造を含んだ生体内のエラスチンの関与に関しては利用できる水溶性エラスチンが存在せず、その機構も不明であった。
また近年では、組織工学や再生医療の分野でも、人工血管や人工神経の素材として生体由来の組織組成物であるエラスチンの利用が注目されている。エラスチンは生体の弾性を担い特に弾性組織である動脈や靭帯などでの含有率は高く、組織の力学特性を構築する上で必要不可欠な分子とされる。
エラスチンを再生医用材料として用いる場合は、本来のエラスチンの特徴である弾力性、伸縮性といった性質を有効に生かすことが求められているが、従来の化学架橋技術では、分解し一度水溶性にした水溶性エラスチンを架橋しても、硬く脆くなりがちで伸縮性を復元させた状態で新たに成形加工する技術がなかった。本発明者らは、伸縮性を維持したままで架橋し成形加工する技術の発明に成功し、特許文献5で公表している。しかしながら、公表している方法による成形方法では、架橋体の伸縮性に与える水溶性エラスチンの詳細な特性についての言及はない。
即ち、水溶性エラスチンを利用する際に、その分解物の均一な特徴である分子量や残存架橋構造濃度を制御することが可能であれば、生体内と同様の環境のエラスチン構造を水溶液中で再現でき、その効果により血管平滑筋細胞の増殖抑制を可能にする治療研究や新規な医用材料としての成形加工品の製造も期待できる。
動脈硬化性疾患に有効な血管平滑筋細胞の増殖抑制効果を有する物質に対する要望は高い。本発明において解決しようとする課題は、上述の公知の技術が抱える問題点を解決することであり、具体的には血管平滑筋細胞の増殖を抑えるための製剤および材料を提供することである。
本発明は、血管平滑筋細胞がエラスチンを足場として生育するという知見と、その際のエラスチンは一様でなく増殖を抑制する場合としない場合があるという知見を応用するものである。したがって、本発明は、血管平滑筋細胞の増殖を抑制することを特徴とする、生体環境に近い水溶性エラスチンとその製法に関する。血管平滑筋細胞は、動脈中膜においては架橋したエラスチン環境下で生着し増殖能が休止した表現型で、血管の収縮や拡張を担う細胞内骨格が発達した収縮型として機能している。血管壁障害によりエラスチンが欠如または分解した場合に、血管平滑筋細胞は増殖性が促進され加えてエラスチンをはじめとした細胞外基質を産生し、新生内膜の過形成を引き起こし、これが動脈硬化現象として観察される。したがって、生体中の血管平滑筋細胞に近い増殖性の抑えられた状態にするには、本来の架橋構造が残存している生体条件に近いエラスチンとの接触が望ましい。
エラスチンの架橋構造は数種類知られているが、その主なものはデスモシン、イソデスモシンと呼ばれる4つあるいは3つのリシン残基を出発とした疎水性の高い構造である。これらは不溶性エラスチンを加水分解して水溶性にする際に、分解されないかまたは部分的に分解された場合エラスチン主鎖に残存することが可能で、その状態のアミノ酸をデスモシンまたはイソデスモシン誘導体アミノ酸とすると、その含有率が総アミノ酸の2〜4モル%程度含まれていることが望ましい。
本発明は、更に、水溶性エラスチンの分子量が大きいほうが好ましく、100〜1,000kDaであることが望ましい。エラスチン前駆体であるトロポエラスチンの分子量が60〜70kDaであることから、架橋構造にて数分子のトロポエラスチンが結合している状態であることが、本発明の血管平滑筋細胞の増殖抑制効果が大きい。
本発明は、更に、水溶性エラスチンのリシン残存濃度がデスモシンあるいはイソデスモシン誘導体として検出されるため、相対的に少ない状態にあることが好ましく、その含有率は総アミノ酸の0.2〜2モル%程度であることが望ましい。本来トロポエラスチン分子中にはリシン残基は総アミノ酸の3〜5モル%程度は含まれるが、その多くが架橋構造に使用されデスモシンあるいはイソデスモシン誘導体アミノ酸として検出されることがその理由である。
本発明は、生体内のエラスチンは凝集した状態で伸縮性および弾性を維持する知見から、凝集能力に優れた物性を発現する水溶性エラスチンであることが望ましく、具体的には1重量%水溶液濃度での凝集温度が15〜30℃であることが好ましい。即ち凝集温度は低いほど、残存する架橋構造が多く含まれ、高分子であることを意味しているが、単にそれだけではなく自己凝集することで人為的に化学架橋を施さなくてもコアセルべーションゲルを作成することも可能になる。このことは、体温程度では溶解せずに血管病変部位に直接的に接触させ固化させる材料や方法を提供できる。また細胞培養研究や医用材料開発研究する上でも、ゲル内細胞培養などに応用可能な特異的な性質を提供することが可能になる。
本発明は、更に、水溶性エラスチンを化学的に架橋し弾性強度を上げ、生体の力学特性程度にまで変化させた架橋エラスチンの成形体を作成する上でも、残存架橋構造が多いという利点を応用することで、材料の弾性率の高い、または伸縮性の大きな医療用材料を提供する。
残存する架橋構造が多い水溶性エラスチンを含んだ培養液で血管平滑筋細胞を培養することにより、血管平滑筋細胞の増殖を抑制する。更には、残存する架橋構造の作用による凝集効果が増強している水溶性エラスチンをコアセルべーションゲルあるいは架橋ゲルとして加工することで、血管平滑筋細胞の増殖を抑制する動脈硬化治療を目的とした医療用材料を製造することができる。
動脈中膜内の平滑筋細胞層の間にはエラスチン繊維が存在する。また、内膜と中膜の間には内弾性板と呼ばれる有窓状のエラスチン均質層からなる構造体が存在する。血管平滑筋細胞はエラスチン層と密接な関係にあり、血管壁が炎症しマクロファージが遊走されてくると、エラスターゼを産生することでよりエラスチン層の崩壊が進行する。その結果、平滑筋細胞の増殖が誘導される。ここで、生体条件と近い架橋構造を残存させている水溶性エラスチンは、増殖性に変換した血管平滑筋細胞に作用させることで、休止状態に誘導することができるため、動脈硬化症などの異常増殖を抑制させるのに好適である。
本発明の第一の主題は、水溶性エラスチンを添加した培養液で培養することを特徴とする血管平滑筋細胞の増殖抑制方法に関する。その一つの態様は、細胞が生育する培養器材で血管平滑筋細胞を培養するものである。他の態様は、細胞が生育する培養器材で水溶性エラスチンからなるコアセルべーションゲルを用いるものである。
本発明には、特に含有するデスモシンあるいはイソデスモシン誘導体アミノ酸濃度が、含有する総アミノ酸の2〜4モル%であり、分子量が100〜1,000kDaの水溶性エラスチン、および水溶性エラスチンを架橋剤で架橋した架橋エラスチンなどを用いることができる。
デスモシンとあるいはイソデスモシンとは化1および化2で示される構造を有しており、エラスチン分子中のおもにリシン−アラニン−アラニン−リシン配列やあるいはリシン−アラニン−アラニン−アラニン−リシン配列に見られるリシンが、酸化されアリシン構造になり、その構造が4つ集まり形成される疎水性の高く安定な構造体であることが知られる。
通常は、生体組織より抽出した不溶性エラスチンにはこうした架橋構造が多く含まれているため、あらゆる溶媒に対して溶解性がない。本発明人はシュウ酸分解を行うことで従来得られてきた水溶性エラスチンは、架橋構造の残存量が不均一な混合状態であることを突き止め、なおかつこうした混合物状態では凝集温度は全体に平均化されることも見いだした。つまり、分解物の混合物から凝集性の違いによって分類することは困難である。これは、凝集温度の異なる2種類の水溶性エラスチンを混合すると、凝集温度がその平均的値に収束してしまうことからも理解できる。この理由は、コアセルべーションには凝集の核形ることからと考えられる。この効果は、濃度が高くなるにつれ顕著に現れるため、精製過程をコアセルべ成過程に相乗効果が見られ、2相分離を起こす温度条件は基本的には同一溶液内では1つの温度状態であーションで分類する従来報告されている方法では分離が不十分と思われる。
そこで、本発明ではシュウ酸分解を段階的に行い、分解されやすい分画と、分解されにくい分画に分離して回収することで、簡単に架橋構造の残存量を変化させた水溶性エラスチンを製造できることを見いだした。このことは、結果的に分子量の大きな水溶性エラスチンを製造する方法としても有効で、生体の条件により近い水溶性エラスチンの製造につながる。即ち、シュウ酸分解されにくい分画のみを回収することで、デスモシンあるいはイソデスモシン誘導アミノ酸含有率が2〜4モル%含まれる水溶性エラスチンを製造でき、この分画が、血管平滑筋細胞の増殖を抑制する効果を有した水溶性エラスチンとして、好適に用いられる。
本発明の第二の主題は、含有するデスモシンあるいはイソデスモシンアミノ酸誘導体を2〜4モル%である水溶性エラスチンを用いて、37℃でコアセルべーションさせた際に作成できるゲル中で血管平滑筋細胞を培養することを特徴とする、血管平滑筋細胞の増殖抑制培養に関する方法である。従来エラスチンを用いた培養は、血管平滑筋細胞の分化誘導を促進させその表現型を収縮型に変換することが知られているが、コアセルべーションゲルを培養中の血管平滑筋細胞の培養液に10〜20重量%含ませた溶液に置換し、37℃の細胞培養用インキュベーターに5〜12時間静置した状態で培養することで、コアセルべーションゲルの層が細胞を取り囲むように形成される。こうした性質は水溶性エラスチンに共通の特性とされるが、本発明の水溶性エラスチンは、凝集温度が従来の公知の方法で作成した他のエラスチンと比べ15から30℃と低く、37℃におけるゲルの安定性が高く、かつ残存する架橋構造を利用した細胞応答との効果で、より血管平滑筋細胞の増殖を抑制する効果が期待できる。
本発明の第三の主題は、上記の機能を特徴とする動脈硬化治療剤を提供することである。本発明における治療剤の特徴は、動脈硬化病変の血管平滑筋細胞の増殖を、正常なエラスチン構造をもって休止型に誘導する原理を有する点にある。組織中の増殖性細胞は、架橋構造を含む凝集性エラスチンの構造に対する細胞表面レセプターに対するシグナル伝達において極めて好適な環境を与える。
本発明の第四の主題は、上記の機能を特徴とする再生医療用材料を提供することである。本発明における再生医療用材料の特徴は、エラスチン架橋体を作成する方法の何れを持ってしても作成は可能である。
本発明において用いられる水溶性エラスチンを、架橋剤で架橋したエラスチン架橋体は、WO02/096978に記載の方法で製造できる。
好適な水溶性エラスチンの架橋剤は、下記の一般式で表される。
本発明において用いられる水溶性エラスチンを、架橋剤で架橋したエラスチン架橋体は、WO02/096978に記載の方法で製造できる。
好適な水溶性エラスチンの架橋剤は、下記の一般式で表される。
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明するが、以下よって示される方法は、作用確認において用いたものであり、これに限定されるものではなく、その要旨を変更することなく様々に改変して実施することができる。
(不溶性エラスチンの作製)
ブタ大動脈血管から脂肪を除去し水洗した後、5〜10%塩化ナトリウム水溶液に浸し24時間冷蔵庫内で静置し、コラーゲンを溶解除去した。水洗後水を加え圧力鍋で1時間煮沸後、血管付着物を除去し、ミキサーに入れ組織片が1〜5mm片になるまで破砕した。その後、再度圧力鍋で1時間加熱し水洗した。メッシュ状袋に移し電動洗浄機で洗浄した後、エタノールを最終濃度50%になるように加え30分間静置した。その後エタノールを最終濃度70%になるように加え90分間静置した。更にエタノールを最終濃度90%になるように加えた後10時間静置した。最終的にエタノールを取り除き、デシケーターにて減圧乾燥し不溶性エラスチン(血管2kgより乾燥重量で約330gの収量)を得た。
ブタ大動脈血管から脂肪を除去し水洗した後、5〜10%塩化ナトリウム水溶液に浸し24時間冷蔵庫内で静置し、コラーゲンを溶解除去した。水洗後水を加え圧力鍋で1時間煮沸後、血管付着物を除去し、ミキサーに入れ組織片が1〜5mm片になるまで破砕した。その後、再度圧力鍋で1時間加熱し水洗した。メッシュ状袋に移し電動洗浄機で洗浄した後、エタノールを最終濃度50%になるように加え30分間静置した。その後エタノールを最終濃度70%になるように加え90分間静置した。更にエタノールを最終濃度90%になるように加えた後10時間静置した。最終的にエタノールを取り除き、デシケーターにて減圧乾燥し不溶性エラスチン(血管2kgより乾燥重量で約330gの収量)を得た。
(水溶性エラスチンAの作製)
不溶性エラスチン10gに対し0.25Mシュウ酸を45mL加え100℃で1時間加熱した。分解反応液を氷水で冷やした後3000rpmで10分間遠心分離し不溶部分を集めた。この不溶部分に0.25Mシュウ酸を30ml加え100℃で1時間加熱した。加熱度同様に溶液を冷却し、遠心分離した後不溶部分を集めた。以上の操作を繰り返し、不溶部分がシュウ酸水溶液を含み膨潤する状態になるまで、可溶部分を除く。通常は5〜6回程度でこの状態になる。その状態に再度0.25Mシュウ酸を加え100℃に加熱することで分解した分画を、同様に冷却後、遠心分離して上澄み液を集め、分子量10,000〜14,000の透析チューブを用い4℃に冷却した脱イオン水に対し、外液のpHが5〜6程度になるまで透析を行ってシュウ酸を除去した。上澄み液を孔サイズが0.45μmのフィルターで吸引ろ過し、ろ液を凍結乾燥して水溶性エラスチン(約2g)を得た。
不溶性エラスチン10gに対し0.25Mシュウ酸を45mL加え100℃で1時間加熱した。分解反応液を氷水で冷やした後3000rpmで10分間遠心分離し不溶部分を集めた。この不溶部分に0.25Mシュウ酸を30ml加え100℃で1時間加熱した。加熱度同様に溶液を冷却し、遠心分離した後不溶部分を集めた。以上の操作を繰り返し、不溶部分がシュウ酸水溶液を含み膨潤する状態になるまで、可溶部分を除く。通常は5〜6回程度でこの状態になる。その状態に再度0.25Mシュウ酸を加え100℃に加熱することで分解した分画を、同様に冷却後、遠心分離して上澄み液を集め、分子量10,000〜14,000の透析チューブを用い4℃に冷却した脱イオン水に対し、外液のpHが5〜6程度になるまで透析を行ってシュウ酸を除去した。上澄み液を孔サイズが0.45μmのフィルターで吸引ろ過し、ろ液を凍結乾燥して水溶性エラスチン(約2g)を得た。
(水溶性エラスチンBの作製)
不溶性エラスチン10gに対し0.25Mシュウ酸を45mL加え100℃で1時間加熱した。分解反応液を氷水で冷やした後3000rpmで10分間遠心分離し不溶部分を集めた。この不溶部分に0.25Mシュウ酸を30ml加え100℃で1時間加熱した。加熱度同様に溶液を冷却し、遠心分離した後不溶部分を集めた。以上の操作を4回繰り返し、不溶部分がシュウ酸水溶液を含み膨潤する状態になる直前で終了する。その状態に再度0.25Mシュウ酸を加え100℃に加熱することで分解した分画を、同様に冷却後、遠心分離して上澄み液を集め、分子量10,000〜14,000の透析チューブを用い4℃に冷却した脱イオン水に対し、外液のpHが5〜6程度になるまで透析を行ってシュウ酸を除去した。上澄み液を孔サイズが0.45μmのフィルターで吸引ろ過し、ろ液を凍結乾燥して水溶性エラスチン(約0.2g)を得た。
不溶性エラスチン10gに対し0.25Mシュウ酸を45mL加え100℃で1時間加熱した。分解反応液を氷水で冷やした後3000rpmで10分間遠心分離し不溶部分を集めた。この不溶部分に0.25Mシュウ酸を30ml加え100℃で1時間加熱した。加熱度同様に溶液を冷却し、遠心分離した後不溶部分を集めた。以上の操作を4回繰り返し、不溶部分がシュウ酸水溶液を含み膨潤する状態になる直前で終了する。その状態に再度0.25Mシュウ酸を加え100℃に加熱することで分解した分画を、同様に冷却後、遠心分離して上澄み液を集め、分子量10,000〜14,000の透析チューブを用い4℃に冷却した脱イオン水に対し、外液のpHが5〜6程度になるまで透析を行ってシュウ酸を除去した。上澄み液を孔サイズが0.45μmのフィルターで吸引ろ過し、ろ液を凍結乾燥して水溶性エラスチン(約0.2g)を得た。
(水溶性エラスチンCの作製)
不溶性エラスチン10gに対し0.25Mシュウ酸を45mL加え100℃で2時間加熱した。分解反応液を氷水で冷やした後3000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を集め、分子量10,000〜14,000の透析チューブを用い4℃に冷却した脱イオン水に対し、外液のpHが5〜6程度になるまで透析を行ってシュウ酸を除去した。上澄み液を孔サイズが0.45μmのフィルターで吸引ろ過し、ろ液を凍結乾燥して水溶性エラスチン(約0.2g)を得た。
不溶性エラスチン10gに対し0.25Mシュウ酸を45mL加え100℃で2時間加熱した。分解反応液を氷水で冷やした後3000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を集め、分子量10,000〜14,000の透析チューブを用い4℃に冷却した脱イオン水に対し、外液のpHが5〜6程度になるまで透析を行ってシュウ酸を除去した。上澄み液を孔サイズが0.45μmのフィルターで吸引ろ過し、ろ液を凍結乾燥して水溶性エラスチン(約0.2g)を得た。
(架橋剤の製造)
水溶性エラスチンを用いてエラスチン構造体を作製するための化学架橋剤を、公開WO02/096978に記載されている方法に従って作製した。この方法は、ドデカンジカルボン酸のカルボキシル基を4−ヒドロキキシフェニルジメチル−スルホニウムメチルサルフェート(以下DSP)により活性エステル化させるものである。具体的には1モルのドデカンジカルボン酸と2モルのDSPおよび2モルのジシクロヘキシルカルボジイミド(以下DCCD)をアセトニトリルに溶解し25℃で5時間撹拌し反応させる。反応過程で生じたジシクロヘキシル尿素をガラスフィルターで除去した。更に反応溶液(ろ液)をエーテルに滴下して固化させた。該固形物を減圧乾燥して目的の架橋剤を得た。化学構造および純度は1H−NMRにより確認した。
水溶性エラスチンを用いてエラスチン構造体を作製するための化学架橋剤を、公開WO02/096978に記載されている方法に従って作製した。この方法は、ドデカンジカルボン酸のカルボキシル基を4−ヒドロキキシフェニルジメチル−スルホニウムメチルサルフェート(以下DSP)により活性エステル化させるものである。具体的には1モルのドデカンジカルボン酸と2モルのDSPおよび2モルのジシクロヘキシルカルボジイミド(以下DCCD)をアセトニトリルに溶解し25℃で5時間撹拌し反応させる。反応過程で生じたジシクロヘキシル尿素をガラスフィルターで除去した。更に反応溶液(ろ液)をエーテルに滴下して固化させた。該固形物を減圧乾燥して目的の架橋剤を得た。化学構造および純度は1H−NMRにより確認した。
(水溶性エラスチンの分子量測定)
水溶性エラスチンの分子量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。測定条件は、東ソー3000SWカラムを用い、0.1M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7)を溶出液とし、カラム温度はコアセルべーションしない温度である10℃で、試料体積20μl、試料濃度10mg/ml、流速0.5ml/時間、検出は紫外線である280mmの吸収で行った。分子量マーカー(バイオラット社製)を用いて溶出時間から相対分子量を算出した。得られたクロマトグラムから数平均分子量を算出し平均分子量とした。製造例2〜4で製造した水溶性エラスチンA、B、Cの結果を(表1)に示す。シュウ酸処理回数が多くなるにつれ平均分子量が高くなることがわかる。分解されにくい分画を残存させる方法により分子量を調節できることがわかる。
水溶性エラスチンの分子量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。測定条件は、東ソー3000SWカラムを用い、0.1M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7)を溶出液とし、カラム温度はコアセルべーションしない温度である10℃で、試料体積20μl、試料濃度10mg/ml、流速0.5ml/時間、検出は紫外線である280mmの吸収で行った。分子量マーカー(バイオラット社製)を用いて溶出時間から相対分子量を算出した。得られたクロマトグラムから数平均分子量を算出し平均分子量とした。製造例2〜4で製造した水溶性エラスチンA、B、Cの結果を(表1)に示す。シュウ酸処理回数が多くなるにつれ平均分子量が高くなることがわかる。分解されにくい分画を残存させる方法により分子量を調節できることがわかる。
(水溶性エラスチンのアミノ酸組成)
水溶性エラスチンのアミノ酸組成は、HPLCにより分析した。製造例2〜4で製造した水溶性エラスチンA、B、Cの結果を表2に示す。平均分子量が70kDa以上の水溶性エラスチンAおよびBのアミノ酸組成には大きな差は見られない。なお、水溶性エラスチンCに関しては分子量が前駆体であるトロポエラスチン(分子量60〜70kDa)以下の大きさであることから、組成比率が異なるのは当然と思われる。また水溶性エラスチンCに特徴的な点は、リシン(Lys)およびアスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)などの親水性アミノ酸の組成比率がやや高い点であるが、トロポエラスチンのアミノ酸配列にはメチオニン(Met)が存在しない点から、何れの試料も純度は高いと考えられる。
(水溶性エラスチンの残存デスモシン/イソデスモシン誘導体アミノ酸濃度の測定)
エラスチンの前駆体であるトロポエラスチンの分子量は60〜70kDaであるのに対し、製造例2〜4で得られた水溶性エラスチンがそれよりも大きな分子量を有している理由は、デスモシンあるいはイソデスモシン構造が残存し、その架橋構造でエラスチン分子が結合していることが原因と考えられる。従来水溶性アミノ酸のデスモシンの測定は、アミノ酸分析する際に標準デスモシンとの比較より求められているが、そうした方法では架橋構造が残存したアミノ酸誘導体を測定することは不可能と思われる。即ち、デスモシンあるいはイソデスモシンはエラスチン分子中の4つのリシンから形成される点と、トロポエラスチン中の1次配列から計算できる理論上のリシン濃度は4.2モル%であるのに対し、水溶性エラスチン中のリシンは0.8モル%と、他のアミノ酸組成の比率はトロポエラスチンとさほど変わらないのにリシンのみが変わるのは、リシンが抜けたのではなくデスモシンあるいはイソデスモシンを構成するアミノ酸誘導体に変換したからと考えるのが妥当と思われる。
エラスチンの前駆体であるトロポエラスチンの分子量は60〜70kDaであるのに対し、製造例2〜4で得られた水溶性エラスチンがそれよりも大きな分子量を有している理由は、デスモシンあるいはイソデスモシン構造が残存し、その架橋構造でエラスチン分子が結合していることが原因と考えられる。従来水溶性アミノ酸のデスモシンの測定は、アミノ酸分析する際に標準デスモシンとの比較より求められているが、そうした方法では架橋構造が残存したアミノ酸誘導体を測定することは不可能と思われる。即ち、デスモシンあるいはイソデスモシンはエラスチン分子中の4つのリシンから形成される点と、トロポエラスチン中の1次配列から計算できる理論上のリシン濃度は4.2モル%であるのに対し、水溶性エラスチン中のリシンは0.8モル%と、他のアミノ酸組成の比率はトロポエラスチンとさほど変わらないのにリシンのみが変わるのは、リシンが抜けたのではなくデスモシンあるいはイソデスモシンを構成するアミノ酸誘導体に変換したからと考えるのが妥当と思われる。
つまり、水溶性エラスチンを加水分解することなく分子に結合しているデスモシンあるいはイソデスモシン濃度の測定が、残存架橋構造を測定する正確な方法と思われる。そこで以下の方法で、水溶性エラスチンの残存デスモシンあるいはイソデスモシン誘導体アミノ酸濃度の測定を行った。
次に、市販のデスモシンを用いて、紫外線270nmにおける吸光係数を算出した。具体的には、デスモシン1%濃度の吸光係数は58.3であった。製造例2〜4で得られた水溶性エラスチンの1%水溶液の吸光係数を(表3)に示す。
次に、市販のデスモシンを用いて、紫外線270nmにおける吸光係数を算出した。具体的には、デスモシン1%濃度の吸光係数は58.3であった。製造例2〜4で得られた水溶性エラスチンの1%水溶液の吸光係数を(表3)に示す。
270nmに吸収のあるアミノ酸は他にTyr(吸光係数=1.340)およびPhe(吸光係数=0.19)であり、アミノ酸組成よりそれぞれの組成比率がわかっているので、以上のパラメータを用いて下記の算出式からデスモシンあるいはイソデスモシン誘導体アミノ酸の組成比率(モル%)を算出した。
(水溶性エラスチンのコアセルべーション温度の測定)
水溶性エラスチンには、溶液温度の上昇に応じて分子内および分子間における疎水性相互作用が発現し、凝集する感熱現象が観察される。これはコアセルべーションと呼び、水溶性エラスチンの特徴的な現象の一つとして知られている。こうしたコアセルべーション温度は、溶液の濁度を測定することで決定できる。具体的には温度可変装置つきの分光光度計を用いて、特定波長(640nm)を試料溶液に照射し入射光強度に対する透過光強度の割合を透過率として算出した。温度を10〜80℃まで変化させ透過率を測定し透過率の減少が全体の50%になる温度をコアセルべーション温度と定義した。製造例2〜4で作成した水溶性エラスチンの濃度を1重量%に調整し、コアセルべーション温度を測定した。結果を(表5)に示した。この結果から残存デスモシンあるいはイソデスモシン濃度が高く、分子量が大きい水溶性エラスチンがコアセルべーション温度も低く、凝集能力が高いことが判明した。
水溶性エラスチンには、溶液温度の上昇に応じて分子内および分子間における疎水性相互作用が発現し、凝集する感熱現象が観察される。これはコアセルべーションと呼び、水溶性エラスチンの特徴的な現象の一つとして知られている。こうしたコアセルべーション温度は、溶液の濁度を測定することで決定できる。具体的には温度可変装置つきの分光光度計を用いて、特定波長(640nm)を試料溶液に照射し入射光強度に対する透過光強度の割合を透過率として算出した。温度を10〜80℃まで変化させ透過率を測定し透過率の減少が全体の50%になる温度をコアセルべーション温度と定義した。製造例2〜4で作成した水溶性エラスチンの濃度を1重量%に調整し、コアセルべーション温度を測定した。結果を(表5)に示した。この結果から残存デスモシンあるいはイソデスモシン濃度が高く、分子量が大きい水溶性エラスチンがコアセルべーション温度も低く、凝集能力が高いことが判明した。
(水溶性エラスチンの添加培地による平滑筋細胞増殖抑制試験)
細胞増殖試験は、BrdU Labeling & Detection Kit3(ロッシュ・ダイアグノスティックス製)を用いて行った。測定原理は、細胞周期のS期(増殖期)で新たに合成されるDNA中にBrdU試薬を取り込ませ、それを標識抗体で認識させ、酵素基質反応による発色を測定することで、取り込みBrdU量に応じて増殖期の細胞数が定量できる方法である。
細胞増殖試験は、BrdU Labeling & Detection Kit3(ロッシュ・ダイアグノスティックス製)を用いて行った。測定原理は、細胞周期のS期(増殖期)で新たに合成されるDNA中にBrdU試薬を取り込ませ、それを標識抗体で認識させ、酵素基質反応による発色を測定することで、取り込みBrdU量に応じて増殖期の細胞数が定量できる方法である。
96穴細胞培養プレートに、市販の正常ヒト血管平滑筋細胞をそれぞれ血清入りの専用培地と共に、2.0×103(cells/well)で播種し、37℃、5%CO2培養装置(OLIMPUS
MI−IBC)で72時間培養した。その後、水溶性エラスチンを添加した無血清の専用培地に交換して、更に72時間培養した。その後BrdUラベリング溶液を加え、更に6時間培養し試薬を取り込ませた。ラベリング溶液を0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄した後、固定液を加え−20℃で30分間固定し、再度洗浄を繰り返し、ヌクレアーゼ溶液を加え、37℃で30分間インキュベートしBrdUを取り込まなかったDNAを分解・消化させた。洗浄後、POD標識の抗BrdU抗体溶液を加え37℃で30分間インキュベート後洗浄し、基質を加え発色させ405nmでの吸光度(490nmを対照として)を測定した。
MI−IBC)で72時間培養した。その後、水溶性エラスチンを添加した無血清の専用培地に交換して、更に72時間培養した。その後BrdUラベリング溶液を加え、更に6時間培養し試薬を取り込ませた。ラベリング溶液を0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄した後、固定液を加え−20℃で30分間固定し、再度洗浄を繰り返し、ヌクレアーゼ溶液を加え、37℃で30分間インキュベートしBrdUを取り込まなかったDNAを分解・消化させた。洗浄後、POD標識の抗BrdU抗体溶液を加え37℃で30分間インキュベート後洗浄し、基質を加え発色させ405nmでの吸光度(490nmを対照として)を測定した。
培地に添加した水溶性エラスチンは、製造例2〜4で製造した水溶性エラスチンA、BおよびCを用い、濃度は10〜200μg/mlの範囲で調整した。水溶性エラスチン無添加の条件をコントロールとし、その吸光度で規格化した相対値を(図1)〜(図3)に示す。水溶性エラスチンAおよびBは血管平滑筋細胞の増殖を10μg/mlから有意に抑制し、特に水溶性エラスチンAでは200μg/mlで30%以上の増殖性を抑制した。(図1)および(図2)から抑制効果は水溶性エラスチンAがBより高いことがわかった。一方、水溶性エラスチンCでは増殖性の抑制は見られなかった。以上より、残存する架橋構造濃度が高く分子量が高いほうが、血管平滑筋細胞の増殖抑制効果が大きいことが明らかである。
(水溶性エラスチンを用いたコアセルべーション培地の作成)
製造例2〜4により作成した水溶性エラスチンはコアセルべーション温度以下では、凝集性のゲルを作成する能力が見られる。そこで、細胞培養用培地を溶媒とした際の、コアセルべーションゲルの作成を行った。水溶性エラスチン750mgに対し平滑筋細胞培養の専用倍地を氷冷下で3ml加え、孔経0.22μmの滅菌フィルターで濾過した溶液を細胞培養シャーレ上に加え、37℃でインキュベートすることでコアセルべーションゲルを作成した。ゲル表面が平衡になり安定するためには、溶媒として培地を用いた場合は6時間必要であった。比較のため脱イオン水を溶媒とした水溶性エラスチン溶液では1時間未満で安定した。コアセルベーションゲル内のエラスチン濃度を算出した結果、37℃の条件では約30〜50重量%程度の濃度に濃縮されていることがわかった。なお、水溶性エラスチンCでは37℃で6時間静置の条件では、コアセルべーションゲルが観察されなかった。脱イオン水中での凝集温度が37.6であるため37℃の条件では凝集できないことがその理由と考えられる。
製造例2〜4により作成した水溶性エラスチンはコアセルべーション温度以下では、凝集性のゲルを作成する能力が見られる。そこで、細胞培養用培地を溶媒とした際の、コアセルべーションゲルの作成を行った。水溶性エラスチン750mgに対し平滑筋細胞培養の専用倍地を氷冷下で3ml加え、孔経0.22μmの滅菌フィルターで濾過した溶液を細胞培養シャーレ上に加え、37℃でインキュベートすることでコアセルべーションゲルを作成した。ゲル表面が平衡になり安定するためには、溶媒として培地を用いた場合は6時間必要であった。比較のため脱イオン水を溶媒とした水溶性エラスチン溶液では1時間未満で安定した。コアセルベーションゲル内のエラスチン濃度を算出した結果、37℃の条件では約30〜50重量%程度の濃度に濃縮されていることがわかった。なお、水溶性エラスチンCでは37℃で6時間静置の条件では、コアセルべーションゲルが観察されなかった。脱イオン水中での凝集温度が37.6であるため37℃の条件では凝集できないことがその理由と考えられる。
(コアセルべーション培地による平滑筋細胞増殖抑制試験)
実施例6により作成した水溶性エラスチンAからなるコアセルべーションゲル培地を用いて、血管平滑筋細胞の増殖抑制試験を、実施例5に記載したBrdU試験により検討した。96穴細胞培養プレートに、市販の正常ヒト血管平滑筋細胞をそれぞれ血清入りの専用培地と共に、2.0×103(cells/well)で播種し、37℃、5%CO2培養装置(OLYMPUS MI−IBC)で72時間培養した。その後、培地を取り除き、新たに血清無しの専用培地3mlに水溶性エラスチンAを750mgを添加し氷冷下で溶解させた溶液に交換して、37℃で72時間培養した。コアセルべーションゲルは、溶液添加から約6時間後に形成された。その後冷却しながら0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄しゲルを取り除いた後BrdUラベリング溶液を加え更に6時間培養し、細胞に試薬を取り込ませた。ラベリング溶液を0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄した後、固定液を加え−20℃で30分間固定し、再度洗浄を繰り返し、ヌクレアーゼ溶液を加え、37℃で30分間インキュベートしBrdUを取り込まなかったDNAを分解・消化させた。洗浄後、POD標識の抗BrdU抗体溶液を加え37℃、30分間インキュベート後洗浄し、基質を加え発色させ405nmでの吸光度(490nmを対照として)を測定した。
水溶性エラスチン無添加の条件をコントロールとし、その吸光度で規格化した相対値を(図4)に示す。コアセルべーションゲルで作用させた場合は、同一試料である水溶性エラスチンAの添加培地の結果と比較すると、DNAの取り込みを大きく抑制している。これにより残存架橋構造を有し凝集性が高い水溶性エラスチンに接したことで、血管平滑筋細胞の増殖性が著しく抑制されることが明らかである。
実施例6により作成した水溶性エラスチンAからなるコアセルべーションゲル培地を用いて、血管平滑筋細胞の増殖抑制試験を、実施例5に記載したBrdU試験により検討した。96穴細胞培養プレートに、市販の正常ヒト血管平滑筋細胞をそれぞれ血清入りの専用培地と共に、2.0×103(cells/well)で播種し、37℃、5%CO2培養装置(OLYMPUS MI−IBC)で72時間培養した。その後、培地を取り除き、新たに血清無しの専用培地3mlに水溶性エラスチンAを750mgを添加し氷冷下で溶解させた溶液に交換して、37℃で72時間培養した。コアセルべーションゲルは、溶液添加から約6時間後に形成された。その後冷却しながら0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄しゲルを取り除いた後BrdUラベリング溶液を加え更に6時間培養し、細胞に試薬を取り込ませた。ラベリング溶液を0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄した後、固定液を加え−20℃で30分間固定し、再度洗浄を繰り返し、ヌクレアーゼ溶液を加え、37℃で30分間インキュベートしBrdUを取り込まなかったDNAを分解・消化させた。洗浄後、POD標識の抗BrdU抗体溶液を加え37℃、30分間インキュベート後洗浄し、基質を加え発色させ405nmでの吸光度(490nmを対照として)を測定した。
水溶性エラスチン無添加の条件をコントロールとし、その吸光度で規格化した相対値を(図4)に示す。コアセルべーションゲルで作用させた場合は、同一試料である水溶性エラスチンAの添加培地の結果と比較すると、DNAの取り込みを大きく抑制している。これにより残存架橋構造を有し凝集性が高い水溶性エラスチンに接したことで、血管平滑筋細胞の増殖性が著しく抑制されることが明らかである。
(血清添加培地を用いた平滑筋細胞増殖抑制試験)
通常、血清を加えた倍地中では血清中の細胞増殖因子の影響で細胞は増殖することが知られる。そこで、その条件下での水溶性エラスチンの増殖抑制効果を検証した。実施例5と同様に、96穴細胞培養プレートに、市販の正常ヒト血管平滑筋細胞をそれぞれ血清入りの専用培地と共に、2.0×103(cells/well)で播種し、37℃、5%CO2培養装置(OLYMPUS MI−IBC)で72時間培養した。その後、培地を取り除き、新たに水溶性エラスチンAを100μg/mlの濃度で添加した血清入り専用培地に交換して、37℃で72時間培養した。また同時にコアセルべーションゲル培地による検討も行った。上記と同一条件でに72時間培養した細胞に、新たに血清入りの専用培地3mlに水溶性エラスチンA750mgを添加し氷冷下で溶解させた溶液に交換して、37℃で72時間培養した。コアセルべーションゲルは、溶液添加から約6時間後に形成された。その後水溶性エラスチン添加した細胞およびコアセルべーションゲルを添加した細胞とも、冷却しながら0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄し、およびゲルを取り除いた後BrdUラベリング溶液を加え更に6時間培養し、細胞に試薬を取り込ませた。ラベリング溶液を0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄した後、固定液を加え−20℃で30分間固定し、再度洗浄を繰り返し、ヌクレアーゼ溶液を加え、37℃で30分間インキュベートしBrdUを取り込まなかったDNAを分解・消化させた。洗浄後、POD標識の抗BrdU抗体溶液を加え37℃、30分間インキュベート後洗浄し、基質を加え発色させ405nmでの吸光度(490nmを対照として)を測定した。
水溶性エラスチン無添加で血清入り培地での培養条件をコントロールとし、その吸光度で規格化した相対値を(図5)に示す。血清入り培地でも水溶性エラスチンAは増殖を抑制する効果が確認でき、コアセルべーションゲル培地ではその効果はより顕著にあらわれることがわかった。
通常、血清を加えた倍地中では血清中の細胞増殖因子の影響で細胞は増殖することが知られる。そこで、その条件下での水溶性エラスチンの増殖抑制効果を検証した。実施例5と同様に、96穴細胞培養プレートに、市販の正常ヒト血管平滑筋細胞をそれぞれ血清入りの専用培地と共に、2.0×103(cells/well)で播種し、37℃、5%CO2培養装置(OLYMPUS MI−IBC)で72時間培養した。その後、培地を取り除き、新たに水溶性エラスチンAを100μg/mlの濃度で添加した血清入り専用培地に交換して、37℃で72時間培養した。また同時にコアセルべーションゲル培地による検討も行った。上記と同一条件でに72時間培養した細胞に、新たに血清入りの専用培地3mlに水溶性エラスチンA750mgを添加し氷冷下で溶解させた溶液に交換して、37℃で72時間培養した。コアセルべーションゲルは、溶液添加から約6時間後に形成された。その後水溶性エラスチン添加した細胞およびコアセルべーションゲルを添加した細胞とも、冷却しながら0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄し、およびゲルを取り除いた後BrdUラベリング溶液を加え更に6時間培養し、細胞に試薬を取り込ませた。ラベリング溶液を0.1Mリン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄した後、固定液を加え−20℃で30分間固定し、再度洗浄を繰り返し、ヌクレアーゼ溶液を加え、37℃で30分間インキュベートしBrdUを取り込まなかったDNAを分解・消化させた。洗浄後、POD標識の抗BrdU抗体溶液を加え37℃、30分間インキュベート後洗浄し、基質を加え発色させ405nmでの吸光度(490nmを対照として)を測定した。
水溶性エラスチン無添加で血清入り培地での培養条件をコントロールとし、その吸光度で規格化した相対値を(図5)に示す。血清入り培地でも水溶性エラスチンAは増殖を抑制する効果が確認でき、コアセルべーションゲル培地ではその効果はより顕著にあらわれることがわかった。
(コアセルべーションゲル培地による培養平滑筋細胞増殖数の変化)
血管平滑筋細胞の増殖能を細胞数の変化から直接測定した。市販の正常ヒト血管平滑筋細胞を無血清の専用培地と共に、1.0×104(cells/mL)で、市販の細胞培養用シャーレ(直径35mm)に播種し、37℃、5%CO2培養装置(OLYMPUS MI−IBC)で72時間培養した。その後培地を取り除き、新たに血清無しの専用培地3mlに水溶性エラスチンA750mgを添加し氷冷下で溶解させた溶液に交換して、37℃で72時間培養した。コアセルべーションゲルは、溶液添加から約6時間後に形成された。5%CO2培養装置(OLYMPUS MI−IBC)で培養しながら、光学顕微鏡(OLYMPUS IMT−2)でパソコンのXCAPソフトに画像を取り込み、撮影枚数や撮影インターバルを設定した。播種した時間を0とし、撮影した画像はAdobe Photoshopにて解析処理した。細胞数は撮影した画像の解析より算出した。すなわち経時間的に撮影した細胞画像から各時間における細胞数を測定し、増殖率(%)=(接着細胞数/初期接着細胞数)×100により算出した。比較としてコアセルべーションゲル培地を添加しない条件の細胞数も測定した。結果を(表6)に示す。血管平滑筋細胞の細胞数の変化から、水溶性エラスチンAの増殖抑制が大きく作用していることが示される。但し、コアセルべーションゲルは架橋ゲルとは異なり、流動性があるため細胞そのものは運動性が抑制されているわけではなく、自由に移動可能な状態にあり、実際移動能に関しては失われてはいないことを確認した。
血管平滑筋細胞の増殖能を細胞数の変化から直接測定した。市販の正常ヒト血管平滑筋細胞を無血清の専用培地と共に、1.0×104(cells/mL)で、市販の細胞培養用シャーレ(直径35mm)に播種し、37℃、5%CO2培養装置(OLYMPUS MI−IBC)で72時間培養した。その後培地を取り除き、新たに血清無しの専用培地3mlに水溶性エラスチンA750mgを添加し氷冷下で溶解させた溶液に交換して、37℃で72時間培養した。コアセルべーションゲルは、溶液添加から約6時間後に形成された。5%CO2培養装置(OLYMPUS MI−IBC)で培養しながら、光学顕微鏡(OLYMPUS IMT−2)でパソコンのXCAPソフトに画像を取り込み、撮影枚数や撮影インターバルを設定した。播種した時間を0とし、撮影した画像はAdobe Photoshopにて解析処理した。細胞数は撮影した画像の解析より算出した。すなわち経時間的に撮影した細胞画像から各時間における細胞数を測定し、増殖率(%)=(接着細胞数/初期接着細胞数)×100により算出した。比較としてコアセルべーションゲル培地を添加しない条件の細胞数も測定した。結果を(表6)に示す。血管平滑筋細胞の細胞数の変化から、水溶性エラスチンAの増殖抑制が大きく作用していることが示される。但し、コアセルべーションゲルは架橋ゲルとは異なり、流動性があるため細胞そのものは運動性が抑制されているわけではなく、自由に移動可能な状態にあり、実際移動能に関しては失われてはいないことを確認した。
(水溶性エラスチンを用いた架橋ゲルの力学特性)
製造例2〜4で製造した、水溶性エラスチンA,BおよびCと、製造例5に記載した架橋剤を用いて架橋ゲルを作成した。製造方法はWO
02/096978に記載の方法を参考にした。水溶性エラスチン300mgに対し、製造例5で製造した架橋剤の340mM水溶液を120μl加え、更に脱イオン水を加え最終エラスチン濃度が40重量%になるように溶液を調整した。内径1mmのガラス管で鋳型を作成し、上記エラスチン溶液を棒状に成型するように流し込み100℃で30分間加熱架橋させ、円柱状エラスチンゲルを得た。なお本条件で水溶性エラスチンCでは架橋ゲルは作成できなかった。
製造例2〜4で製造した、水溶性エラスチンA,BおよびCと、製造例5に記載した架橋剤を用いて架橋ゲルを作成した。製造方法はWO
02/096978に記載の方法を参考にした。水溶性エラスチン300mgに対し、製造例5で製造した架橋剤の340mM水溶液を120μl加え、更に脱イオン水を加え最終エラスチン濃度が40重量%になるように溶液を調整した。内径1mmのガラス管で鋳型を作成し、上記エラスチン溶液を棒状に成型するように流し込み100℃で30分間加熱架橋させ、円柱状エラスチンゲルを得た。なお本条件で水溶性エラスチンCでは架橋ゲルは作成できなかった。
作成したゲルを脱イオン水中、37℃で24時間洗浄した後、引っ張り試験機を用いて弾性率測定を行った。0.5mm/秒の速度で直径1mm長さ2cmの架橋ゲルを引っ張り、その際の応力(単位:Pa)をフォースゲージ(新保電機製)にて測定し、解析ソフトを用いて歪に対する応力の変化率として弾性率(単位:Pa)を算出した。また破断した点から自然長からの伸び比率である伸張率(%)を算出した。
結果を表7に示す。残存架橋構造の多い水溶性エラスチンAから作成した架橋ゲルの弾性率は、エラスチンBよりも大きく、伸張率は逆にエラスチンBよりも小さいことが明らかになった。これは総架橋密度の差による効果と考えられる。即ち、凝集性が高く架橋密度が高いほど弾性率が高く、凝集性が弱くなるにつれ弾性率が低下する反面伸張率が増加する。ただし、架橋密度が低下し凝集性も低下すると架橋ゲル自体が形成されないと理解でき、したがって残存架橋構造の高い水溶性エラスチンからなる架橋ゲルを人工血管として用いる場合、内膜肥厚を誘発しない、即ち動脈硬化症を誘導しない再生医療用のゲルを作成することが可能と考えられる。
結果を表7に示す。残存架橋構造の多い水溶性エラスチンAから作成した架橋ゲルの弾性率は、エラスチンBよりも大きく、伸張率は逆にエラスチンBよりも小さいことが明らかになった。これは総架橋密度の差による効果と考えられる。即ち、凝集性が高く架橋密度が高いほど弾性率が高く、凝集性が弱くなるにつれ弾性率が低下する反面伸張率が増加する。ただし、架橋密度が低下し凝集性も低下すると架橋ゲル自体が形成されないと理解でき、したがって残存架橋構造の高い水溶性エラスチンからなる架橋ゲルを人工血管として用いる場合、内膜肥厚を誘発しない、即ち動脈硬化症を誘導しない再生医療用のゲルを作成することが可能と考えられる。
Claims (7)
- 含有するデスモシンまたはイソデスモシン誘導体アミノ酸濃度が、エラスチンの含有総アミノ酸の2〜4モル%で、分子量が100〜1,000kDaである水溶性エラスチンを有効成分とする血管平滑筋細胞増殖抑制剤。
- 前記水溶性エラスチンの1重量%水溶液の凝集温度が15℃〜30℃である請求項1に記載の血管平滑筋細胞増殖抑制剤。
- 前記水溶性エラスチン中のリシン濃度が0.5〜2モル%である請求項1に記載の血管平滑筋細胞増殖抑制剤。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の水溶性エラスチンを含有してなる細胞培養用培地。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の水溶性エラスチンを用いて形成する細胞培養用コアセルべーションゲル。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の水溶性エラスチンを含有してなる動脈硬化治療剤。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の水溶性エラスチンと架橋剤を用いて形成する生体適合性の医用材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007206504A JP2009040713A (ja) | 2007-08-08 | 2007-08-08 | 血管平滑筋細胞増殖抑制剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007206504A JP2009040713A (ja) | 2007-08-08 | 2007-08-08 | 血管平滑筋細胞増殖抑制剤 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2009040713A true JP2009040713A (ja) | 2009-02-26 |
Family
ID=40441852
Family Applications (1)
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JP2007206504A Pending JP2009040713A (ja) | 2007-08-08 | 2007-08-08 | 血管平滑筋細胞増殖抑制剤 |
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JP (1) | JP2009040713A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014183886A (ja) * | 2013-03-22 | 2014-10-02 | Mie Univ | 弾性組織様構造体の製造方法 |
EP3156055B1 (en) * | 2014-06-12 | 2020-11-04 | Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology | Pharmaceutical composition for preventing or treating muscular weakness-related diseases, containing butylpyridinium or derivative thereof |
-
2007
- 2007-08-08 JP JP2007206504A patent/JP2009040713A/ja active Pending
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JP2014183886A (ja) * | 2013-03-22 | 2014-10-02 | Mie Univ | 弾性組織様構造体の製造方法 |
EP3156055B1 (en) * | 2014-06-12 | 2020-11-04 | Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology | Pharmaceutical composition for preventing or treating muscular weakness-related diseases, containing butylpyridinium or derivative thereof |
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