JP2009039100A - 癌感受性および欠陥のあるdna修復機構の診断方法および組成物、ならびにそれらを治療するための方法および組成物 - Google Patents

癌感受性および欠陥のあるdna修復機構の診断方法および組成物、ならびにそれらを治療するための方法および組成物 Download PDF

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アラン ディ. ドアンドレア、
Toshiyasu Taniguchi
トシヤス タニグチ、
Cynthia Timmers
シンシア ティマーズ、
Markus Grompe
マーカス グロンプ、
Edward A Fox
エドワード エイ. フォックス、
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    • G01N2800/52Predicting or monitoring the response to treatment, e.g. for selection of therapy based on assay results in personalised medicine; Prognosis

Abstract

【課題】癌感受性、欠陥のあるDNA修復機構の診断方法および組成物、ならびにそれらを治療するための方法および組成物の提供。
【解決手段】FANCD2遺伝子、該遺伝子に基づく試験において患者をスクリーニングするためのプローブおよびプライマー、ならびにファンコニ貧血および癌について診断するためのプローブおよびプライマー。FANCD2遺伝子を、欠陥のあるDNA修復に関連する病態を治療するための新規治療薬のスクリーニングにおいて実験マウスモデルを調製するためにインビボで標的とする。2つのアイソフォームを識別するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を調製し、対象が無傷ファンコニ貧血/BRCA経路を有するかどうかを決定するための診断学的検査において使用する。
【選択図】なし

Description

政府の支援
本明細書に記載した研究は、米国国立衛生研究所(NIH)助成金番号第RO1HL52725−04号、第RO1DK43889−09号、第1PO1HL48546号、および第PO1HL54785−04号により支援を受けた。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
背景
本発明は、FANCD2遺伝子に欠陥を有する対象における癌感受性の診断、および癌を発症した当該対象のために適切な治療プロトコールの決定に関する。FANCD2遺伝子に欠陥のある動物モデルを使用すると、治療薬をスクリーニングすることができる。
ファンコニ貧血症(FA)は、先天性欠陥、骨髄不全および癌の素因を特徴とする常染色体劣性癌感受性症候群である。FA患者由来細胞は、マイトマイシンCまたはジエポキシブタン等の鎖間DNA架橋を産生する物質に対して特有の過敏性を示す。FA患者は、急性骨髄性白血病ならびに皮膚、胃腸および婦人科系の癌を含む、数種のタイプの癌を発症する。皮膚および胃腸の腫瘍は、通例は扁平上皮細胞癌である。FA患者の少なくとも20%が癌を発症する。患者が癌を発症する平均年齢は、白血病については15歳、肝腫瘍については16歳、そして他の腫瘍については23歳である。(D’Andreaら,Blood,(1997)vol.90、p1725、Garcia−Higueraら,Curr.Opin.Hematol.,(1999)vol.2、p83〜88、およびHeijnaら,Am.J.Hum.Genet.vol.66、p1540〜1551を参照)。
FAは、遺伝的に異質性である。体細胞融合研究では、少なくとも7つの別個の相補性群が同定されている(Joenjeら,(1997)Am.J.Hum.Genet.,vol.61、p940〜944、およびJoenjeら,(2000)Am.J.Hum.Genet,vol.67、p759〜762)。この観察から、FA遺伝子はDNA架橋に対する細胞応答に関係する多成分経路を定義するという仮説が生じた。5種のFA遺伝子(FANCA、FANCC、FANCE、FANCFおよびFANCG)がクローニングされ、FANCA、FANCCおよびFANCGタンパク質は主として核局在化を伴って分子複合体を形成することが証明されている。FANCCはまた、細胞質内にも局在する。種々のFAタンパク質は、無脊椎動物種において、FANCA、FANCC、FANCE、FANCF、およびFANCGタンパク質の強力な相同物を備えていない既知の配列モチーフをほとんどまたは全く有していない。FANCFは、大腸菌(E.Coli)RNA結合タンパク質に対して有意性が不明の弱い相同性を有する。最も頻回に見られる2つの相補性群はFA−AおよびFA−Cであり、合計するとFA患者の75〜80%を占める。多発性突然変異は、80kbに及び、少なくとも43個のエクソンからなるFANCA遺伝子において認識されている。FANCCは、14個のエクソンを有することが見いだされており、およそ80kbに及ぶ。FANCC遺伝子内の突然変異の数は同定されており、これは、重症度の相違するFAと相関する。FA−Dは、明確であるがまれな相補性群であると同定されている。FA−D患者は表現型により他のサブタイプの患者から区別することができるが、FAタンパク質複合体は、通常はFA−D細胞内に集合する(Yamashitaら,(1998)P.N.A.S.、vol.95、p13085〜13090)。
クローン化FAタンパク質は、相互に配列類似性を備えていないか、またはGenBank内の他のタンパク質との配列類似性を備えていないオーファンタンパク質をコードし、前記タンパク質配列内では機能的ドメインは明白ではない。これらのタンパク質の細胞機能または生化学機能に関してはほとんど何も知られていない。
FAの診断は、FA患者表現型における幅広い変動性によって複雑になる。さらに診断を混乱させることに、FA患者のおよそ33%は明白な先天性異常を有していない。その上、現行の診断テストでは一般集団からFAキャリアを弁別できない。診断に関連する問題は、D’Andreaら,(1997)に記載されている。FA細胞では多数の細胞表現型が報告されているが、最も一致しているのは、マイトマイシンCまたはジエポキシブタン等の二官能性アルキル化剤に対する過敏性である。これらの薬剤は、鎖間DNA架橋(DNA損傷の重要な種類)を産生する。
癌感受性の診断は、癌の形成には極めて多数の調節遺伝子および生化学的経路が関係しているために複雑になる。それらがどのように発生するかに依存する種々の癌および関連する遺伝的病変は、対象がいずれかの特定の治療処置にどのように反応するかを決定しうる。欠陥のある修復機構に関連する遺伝的病変は、欠陥のある細胞分割およびアポトーシスを生じさせることがあり、これは次には、癌に対する患者の感受性を増加させる可能性がある。FAは、多数の病理学的転帰が、癌感受性に加えて欠陥のある修復機構にも関連している、疾患状態である。
ファンコニ貧血経路の分子遺伝学および細胞生物学について理解できれば、非FA患者ならびにFA患者において発症する特定の種類の癌およびDNA修復機構における欠陥に関連する病態に関して、予後、診断および治療への洞察が得られる。
発明の概要
本発明は、患者が癌を有するかどうか、もしくは患者の発癌リスクが増加しているかどうかを診断または決定する方法を特徴とし、本方法は癌関連性欠陥の存在についてファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子を検査することを含むが、ここで、1以上の癌関連性欠陥の存在は前記患者における癌または癌リスクの増加を示す。癌は、乳癌、卵巣癌、もしくは前立腺癌、または他の形態の癌であってよい。癌関連性欠陥は、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子内において1以上の癌関連性欠陥を有していない患者における比率に比較してFANCD2−Sに対するFANCD2−Lの比率の低下を生じさせる、癌関連性欠陥であってよい。
本発明はまた、患者が癌を有するかどうか、もしくは患者の発癌リスクが増加しているかどうかを診断または決定する方法を特徴とし、本方法は癌関連性欠陥の存在についてファンコニ貧血/BRCA経路タンパク質を検査することを含むが、ここで、癌関連性欠陥の存在は患者における癌または癌リスクの増加を示す。癌は、乳癌、卵巣癌、もしくは前立腺癌、または他の形態の癌であってよい。
別の態様においては、本発明は、患者の発癌リスクが増加しているかどうかを診断または決定する方法を特徴とし、本方法は:(a)患者由来の組織サンプルを提供するステップと;(b)組織サンプルの細胞内でDNA損傷を誘発するステップと;および(c)細胞内のFANCD2−SおよびFANCD2−Lタンパク質の存在についてアッセイするステップ;とを含むが、ここで、FANCD2−L対FANCD2−Sの比率の低下は、前記患者の発癌リスクが増加していることを示す。癌は、乳癌、卵巣癌、もしくは前立腺癌、または他の形態の癌であってよい。患者は、BRCA−1またはBRCA−2遺伝子内に以前より知られているいずれかの癌関連性欠陥を有することが、分かっていても分かっていなくてもよい。多数の当該組織サンプルは、アレイ上またはアレイ内に分配することができる。
別の態様においては、本発明は、患者が癌を有するかどうか、もしくは患者の発癌リスクが増加しているかどうかを決定する方法を特徴とするが、ここで、患者はBRCA−1またはBRCA−2遺伝子内に既知の癌を引き起こす欠陥を有しておらず、本方法は:(a)患者からのDNAサンプルを提供するステップと;(b)配列番号115〜186のFANCD2遺伝子特異的ポリヌクレオチドプライマーを用いて、患者由来のFANCD2遺伝子を増幅させるステップと;(c)増幅したFANCD2遺伝子について配列決定するステップと;(d)患者由来のFANCD2遺伝子配列を、対照標準FANCD2遺伝子配列と比較するステップとを含むが、ここで、2つの遺伝子配列間の不一致は癌関連性欠陥の存在を示し、1以上の癌関連性欠陥の存在は、前記患者が癌であること、または患者の発癌リスクが増加していることを示す。癌は、乳癌、卵巣癌、もしくは前立腺癌、または他の形態の癌であってよい。患者は、BRCA−1またはFANC−D1/BRCA−2遺伝子内に以前より知られているいずれかの癌関連性欠陥を有することが、分かっていても分かっていなくてもよい。多数の当該組織サンプルはアレイ上またはアレイ内に分配することができる。配列番号115〜186は、表7に示したように、一致したプライマーセットであり、奇数番号のプライマーはフォワードプライマーであり、偶数番号のプライマーはリバースプライマーである。プライマーはまた、新規のプライマー対を作成するために種々の対から使用することができ、例えば配列番号115を配列番号118と一緒に使用できる。「不一致(discrepancy)」とは、2つの配列間の相違を意味し、この相違は癌と関連することが知られている。
さらに別の態様においては、本発明は、化学増感剤をスクリーニングする方法を特徴とし、本方法は:(a)ファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的阻害剤を提供するステップと;(b)1以上の抗腫瘍剤に耐性である腫瘍細胞系を提供するステップと;(c)腫瘍細胞系、およびファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的阻害剤、および1以上の抗腫瘍剤を接触させるステップと;(d)ファンコニ貧血/BRCA経路の阻害剤および抗腫瘍剤の存在下において腫瘍細胞系の増殖率を測定するステップ;とを含むが、ここで、抗腫瘍剤の存在下およびファンコニ貧血/BRCA経路の阻害剤の不存在下における腫瘍細胞系の細胞と比較した腫瘍細胞系の増殖率の低下は、潜在的阻害剤が化学増感剤であることを示している。ファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的阻害剤はマイクロアレイ上でスクリーニングすることができるが、ここで、マイクロアレイは、1以上の抗腫瘍剤に耐性である1以上の細胞を含有するアドレス(addresses)を含有する。ファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的阻害剤は、FANCD2タンパク質のユビキチン化の阻害剤であってよい。抗腫瘍剤はシスプラチンであってよい。腫瘍細胞系は卵巣癌細胞系であってよい。
別の態様においては、本発明は、癌を有する患者を治療する方法を特徴とし、ここで、癌は抗腫瘍剤に耐性であり、本方法は治療的有効量のファンコニ貧血/BRCA経路の阻害剤を抗腫瘍剤と一緒に投与するステップを含む。抗腫瘍剤はシスプラチンであってよい。ファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的阻害剤は、FANCD2タンパク質のユビキチン化の阻害剤であってよい。腫瘍細胞系は卵巣癌細胞系であってよい。
さらに別の態様においては、本発明は、癌治療薬をスクリーニングする方法を特徴とし、本方法は:(a)1以上の癌関連性欠陥を有するファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子を含有する1以上の細胞を提供するステップと;(b)潜在的癌治療薬の存在下で細胞を増殖させるステップと;(c)前記潜在的癌治療薬の不存在下で増殖した相当する細胞の増殖率に比較して潜在的癌治療薬の存在下における前記細胞の増殖率を決定するステップ;とを含むが、ここで、潜在的癌治療薬の不存在下で増殖した相当する細胞の増殖率に比較した潜在的癌治療薬の存在下における前記細胞の増殖率の低下は、潜在的癌治療薬が癌治療薬であることを示している。細胞は、1以上の癌関連性欠陥を有するファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子、または数個のそのような遺伝子を含有していてよく、そしてアレイ内に分配されている。
本発明はまた、癌患者における治療薬の有効性を予測する方法を特徴とし、本方法は:(a)治療薬を用いて治療されている癌患者由来の組織サンプルを提供するステップと;(b)組織サンプルの細胞内でDNA損傷を誘発するステップと;(c)細胞内におけるFANCD2−Lタンパク質の存在を検出するステップ;とを含むが、ここで、FANCD2−Lの存在は、癌患者における治療薬の有効性の低下を示す。治療薬は抗腫瘍剤であってよく、例えばシスプラチンであってよい。または、ステップ(c)では、FANC−D2−SおよびFANC−D2−Lの両方を検出することができ、非癌患者における比率と比較したFANCD2−Sに対するFANCD2−Lの比率の低下は、有効性の低下を示す。
本発明はまた、抗腫瘍剤に対する腫瘍細胞の耐性を決定する方法を特徴とし、:(a)抗腫瘍剤を用いて治療されている患者由来の組織サンプルを提供するステップと;(b)組織サンプルの細胞内でDNA損傷を誘発するステップと;(c)ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子のメチル化状態を決定するステップ;とを含むが、ここで、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子のメチル化は抗腫瘍剤に対する腫瘍細胞の耐性を示す。ファンコニ貧血/BRCA遺伝子はFANCF遺伝子であってよい。抗腫瘍剤はシスプラチンであってよい。
本発明はまた、FANCD2遺伝子に対して特異的なポリヌクレオチドプライマー対、対照標準FANCD2遺伝子配列およびそのためのパッケージング材料を含む、FANCD2遺伝子内の欠陥を検出するためのキットを特徴とする。
本発明はまた、FANCD2−L特異的抗体およびそのためのパッケージング材料を含む、FANCD2−Lの存在を検出するためのキットを特徴とする。
本発明はまた、FANCD2ポリヌクレオチドプライマー対およびプローブ、非メチル化対照標準FANCD2遺伝子配列、ならびにそのためのパッケージング材料を含む、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子のメチル化状態を決定するためのキットを特徴とする。
本発明はまた、1以上の抗腫瘍剤に耐性である腫瘍細胞系およびそのためのパッケージング材料を含む、化学増感剤についてスクリーニングするためのキットを特徴とする。腫瘍細胞系は卵巣癌細胞系、例えばシスプラチン耐性卵巣癌細胞系であってよい。抗腫瘍剤はシスプラチンであってよい。
本発明はまた、1以上のファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子からの1以上の核酸配列を含有する、マイクロアレイを特徴とする。この遺伝子は、ATM、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCFおよびFANCGからなる群から選択できる。
本発明はまた、患者が癌を有するかどうか、または患者の発癌リスクが増加しているかどうかを決定する方法におけるこのようなマイクロアレイの使用を特徴とし、本方法は:(a)マイクロアレイを提供するステップと;(b)患者由来の核酸サンプルを提供するステップと;(c)マイクロアレイ上でファンコニ貧血/BRCA経路からの核酸配列へ核酸サンプルをハイブリダイズさせるステップと;(d)患者由来の核酸サンプルにおいてファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子内の突然変異の存在を検出するステップ;とを含むが、ここで、突然変異の存在の検出は、癌を有する患者、または発癌リスクが増加している患者を示す。
本発明のある実施形態では、(a)配列番号4に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と;(b)(b)のポリヌクレオチドと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列と;(c)(b)のポリヌクレオチドと相補的であるヌクレオチド配列と;(d)配列番号5〜8、187〜188に示したヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列と;(e)(d)のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列;とから選択されるポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子が提供される。ポリヌクレオチドはRNA分子、またはcDNA等のDNA分子であってよい。
本発明の別の実施形態では、DNA修復を促進するために細胞核内においてFANCD2の短鎖型から長鎖型への転換の生物学的特性を維持するために、配列番号4のアミノ酸配列と十分に類似するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から本質的に成る、単離された核酸分子が提供される。または、単離された核酸分子は本質的に、配列番号9〜191と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、もしくは配列番号9〜191に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列に相補的であるポリヌクレオチドからなる。
ある実施形態では、上述した単離核酸分子のいずれかをベクター内に挿入することを含む、組換えベクターを作成するための方法が提供される。この方法によって、組換えベクター産物を作成することができ、このベクターを宿主細胞へ導入して組換え宿主細胞を作成することができる。
本発明のある実施形態では、FA−D2細胞系を作成する方法であって、(a)FA−D2と関連する相補性群において二対立遺伝子突然変異を有する対象から細胞を入手するステップと;(b)FA−D2細胞系を作成するために形質転換ウイルスで細胞を感染させるステップとを含む方法が提供され、ここで、この細胞が線維芽細胞およびリンパ球から選択され、そして形質転換ウイルスがエプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr virus)およびレトロウイルスから選択される。FA−D2細胞系は、例えば(i)FANCD2に対して特異的な抗体を使用するウェスタンブロット法または核免疫蛍光法、および(ii)DNAハイブリダイゼーションアッセイから選択される診断アッセイを実施することによって、細胞系における欠陥のあるFANCD2の存在を決定することにより、特徴づけることができる。
本発明のある実施形態では、組換え宿主細胞を培養することを含む、ポリペプチドを産生するための組換え法が提供され、前記宿主細胞は上述した単離核酸分子のいずれかを含む。
本発明のある実施形態では、(a)配列番号4と;(b)(a)と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と;(c)配列番号5〜8、187〜188の少なくとも1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列と;(d)配列番号5〜8、187〜188の少なくとも1つに相補的な配列に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列と;(e)(a)〜(d)のポリペプチドフラグメントであって、長さが少なくとも50アミノ酸であるフラグメント;とから選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドが提供される。
この単離ポリペプチドは、nt 376A〜G、nt 3707G〜A、nt 904C〜Tおよびnt 958C〜Tから選択される突然変異を有するDNAによってコードされうる。または、ポリペプチドは、ポリペプチドをコードするDNAにおける多形性によって特徴づけることができ、この多形性は、nt 1122A〜O、nt 1440T〜C、nt 1509C〜T、nt 2141C〜T、nt 2259T〜C、nt 4098T〜G、nt 4453G〜Aから選択される。または、ポリペプチドはアミノ酸222またはアミノ酸561での突然変異によって特徴づけることができる。
本発明のある実施形態では、FANCD2タンパク質に対する結合特異性を有する抗体の調製が記載されるが、ここで、抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってよく、FANCD2はFANCD2−SまたはFANCD2−Lであってよい。
本発明のある実施形態では、生物学的サンプル内のFANCD2アイソフォームを測定する診断方法が提供されるが、ここで、本方法は、(a)サンプルを、FANCD2−Lとの第1複合体を形成するために第1抗体へ、そして場合によってはFANCD2−Sとの第2複合体を形成するために第2抗体へ曝露させるステップと;(b)マーカーを用いてサンプル内の第1複合体および第2複合体の量を検出するステップとを含む。このサンプルは、無傷細胞または溶解物中の溶解細胞であってよい。生物学的サンプルは、癌への過敏性を有するか、または初期段階の癌を有するヒト対象由来であってよい。サンプルはヒト対象における癌由来であってよいが、ここで、癌は、黒色腫、白血病、星細胞腫、グリア芽腫、リンパ腫、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、ならびに膵臓癌、乳癌、甲状腺癌、卵巣癌、子宮癌、精巣癌、下垂体癌、腎臓癌、胃癌、食道癌および直腸癌から選択される。生物学的サンプルはヒト胎児またヒト成人由来であってよく、そして対象からの血液サンプル、生検組織サンプルおよび細胞系のいずれかに由来するものであってよい。生物学的サンプルは、心臓、脳、胎盤、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、子宮、小腸、結腸、末梢血、またはリンパ球由来であってよい。マーカーは蛍光マーカー、場合によってはFANCD2−L抗体と共役した蛍光マーカー、場合によってはFANCD2−L抗体と共役した化学発光マーカーであってよく、そして第1および第2複合体を、基質へ共役した第3抗体へ結合させることができる。サンプルが溶解物である場合、サンプルはFANCD2アイソフォームを分離するための分離方法にかけ、分離されたアイソフォームは、第1または第2FANCD2抗体への結合を決定することにより同定することができる。
本発明のある実施形態では、FANCD2タンパク質に対する抗体を選択することと、野生型細胞集団内の量と比較してこの細胞集団内でFANCD2−Lアイソフォームの量が低下しているかどうかを決定することとを含む、対象からの細胞集団内のファンコニ貧血経路における欠陥を同定するための診断学的検査が提供されるが、FANCD2−Lタンパク質の量が低下している場合に、野生型細胞集団内と比較してこの細胞集団内において、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCE、FANCFまたはFANCGタンパク質のいずれかの量が変化しているかどうかを決定し、この細胞集団内のファンコニ貧血経路における欠陥を同定することができる。1つの例では、アイソフォームの量はFANCD2−LおよびFANCD2−Sアイソフォームの分離に左右され、ここで分離は、ゲル電気泳動法または移動結合バンド表示テストストリップ(migration binding banded test strip)によって達成できる。
本発明のある実施形態では、FAND2−Lが低減量で生成される細胞集団を選択することと;この細胞集団を候補治療分子ライブラリーの個別メンバーへ曝露させることと;この細胞集団内でFANCD2−Lの量の増加を誘発する個別メンバー分子を同定することとを含む、治療薬を同定するためのスクリーニングアッセイが提供される。1つの例では、この細胞集団はインビトロ細胞集団である。また別の例では、この細胞集団はインビボ細胞集団であり、インビボ細胞集団は実験動物内にあり、この実験動物は突然変異FANCD2遺伝子を有する。さらに別の例では、実験動物は、マウスFAND2遺伝子がヒト突然変異FANCD2遺伝子で置換されているノックアウトマウスである。別の例では、FANCD2が低減量で生成される細胞集団へ化学発癌物質が添加され、いずれかのメンバー分子がFANCD2−Lの量の増加を誘発することによって化学発癌物質の有害作用から細胞を保護できるかどうかが決定される。
本発明のある実施形態では、動物FANCD2遺伝子が取り除かれており、場合によっては上述したいずれかの核酸分子で置換されている、実験動物モデルが提供される。
本発明のある実施形態では、対象由来の細胞サンプル内で、疑われる突然変異FANCD2対立遺伝子内の突然変異FANCD2ヌクレオチド配列を同定する方法であって、疑われる突然変異FANCD2対立遺伝子のヌクレオチド配列を野生型FANCD2ヌクレオチド配列と比較するステップを含む方法が提供されるが、ここで、疑われる突然変異配列と野生型配列との相違が前記細胞サンプル内の突然変異FANCD2ヌクレオチド配列を同定する。ある例では、疑われる突然変異対立遺伝子は生殖細胞系対立遺伝子である。また別の例では、突然変異FANCD2ヌクレオチド配列の同定は、対象における癌の素因またはファンコニ貧血を有する子孫を持つ対象のリスクの増加についての診断に役立つ。別の例では、疑われる突然変異対立遺伝子は腫瘍タイプにおける体細胞対立遺伝子であり、そして突然変異FANCD2ヌクレオチド配列を同定するステップは、腫瘍タイプについての診断に役立つ。別の例では、野生型のヌクレオチド配列および疑われる突然変異FANCD2ヌクレオチド配列は、遺伝子、mRNAおよびmRNAから作成されたcDNAから選択される。別の例では、疑われる突然変異FANCD2対立遺伝子のポリヌクレオチド配列を野生型FANCD2ポリヌクレオチド配列と比較するステップは、突然変異FANCD2ヌクレオチド配列へ特異的にハイブリダイズするFANCD2プローブを選択するステップと、プローブを用いたハイブリダイゼーションにより突然変異配列の存在を検出するステップと、をさらに含む。別の例では、疑われる突然変異FANCD2対立遺伝子のポリヌクレオチド配列を野生型FANCD2ポリヌクレオチド配列と比較するステップは、増幅したFANCD2 DNAを産生するために野生型FANCD2 DNAに対して特異的なプライマーセットを使用してFANCD2遺伝子の全部または一部を増幅させるステップと、突然変異配列を同定できるようにFANCD2 DNAについて配列決定するステップと、をさらに含む。別の例では、突然変異FANCD2ヌクレオチド配列がヒト対象のFANCD2対立遺伝子内における生殖細胞系の変化である場合は、この変化は表3に記載した変化から選択され、そして、突然変異FANCD2ヌクレオチド配列がヒト対象のFANCD2対立遺伝子内における体細胞の変化である場合は、この変化は表3に記載した変化から選択される。
本発明のある実施形態では、対象における癌への感受性を診断する方法であって、対象由来の組織サンプル内におけるFANCD2遺伝子の生殖細胞系配列またはそのmRNAの配列を、FANCD2遺伝子の生殖細胞系配列またはそのmRNAの配列と比較するステップを含む方法が提供されるが、ここで、対象のFANCD2遺伝子の生殖細胞系配列またはそのmRNAの配列における変化は、癌への感受性を示す。変化は、FANCD2遺伝子の調節領域において検出できる。生殖細胞系配列内の変化は、(a)非変性ポリアクリルアミドゲル上の一本鎖DNAの電気泳動移動度における変化を観察するステップと;(b)FANCD2遺伝子プローブを組織サンプルから単離されたゲノムDNAにハイブリダイズするステップと;(c)組織サンプルのゲノムDNAに対立遺伝子特異的プローブをハイブリダイズするステップと;(d)増幅配列を作成するために組織サンプルからのFANCD2遺伝子の全部または一部を増幅させ、そして増幅配列について配列決定するステップと;(e)特異的FANCD2突然変異対立遺伝子に対するプライマーを使用して、組織サンプルからのFANCD2遺伝子の全部または一部を増幅させるステップと;(f)クローン化配列を作成するために組織サンプルからのFANCD2遺伝子の全部または一部を分子クローニングし、そしてクローン化配列について配列決定するステップと;(g)(i)組織サンプルから単離されたFANCD2遺伝子またはFANCD2 mRNAと、(ii)ヒト野生型FANCD2遺伝子配列に相補的な核酸プローブとが相互にハイブリダイズして二本鎖を形成する場合に、分子(i)と(ii)との間のミスマッチを同定するステップと;(h)組織サンプル内のFANCD2遺伝子配列を増幅させるステップ、および野生型FANCD2遺伝子配列を含む核酸プローブヘ増幅配列をハイブリダイズするステップと;(i)組織サンプル内のFANCD2遺伝子配列を増幅させるステップ、および突然変異FANCD2遺伝子配列を含む核酸プローブヘ増幅配列をハイブリダイズするステップと;(j)組織サンプル内の欠失突然変異についてスクリーニングするステップと;(k)組織サンプル内の点突然変異についてスクリーニングするステップと;(l)組織サンプル内の挿入突然変異についてスクリーニングするステップと;(m)FANCD2遺伝子を含む核酸プローブを用いて組織サンプルのFANCD2遺伝子をin situハイブリダイズするステップ;とからなる群から選択されるアッセイによって決定できる。
本発明のある実施形態では、対象における癌に対する感受性を診断する方法であって:(a)欠陥のあるDNA修復を決定できるように、対象からの遺伝物質を入手するステップと;(b)遺伝子セット内の突然変異の存在を決定するステップであって、このセットが、FAND2、ならびにFANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCDE、FANDF、FANDG、BRACA1およびATMのうちの少なくとも1つを含むステップと;(c)遺伝子セット内で、突然変異の存在から癌への感受性を診断するステップ;とを含む方法が提供される。
本発明のある実施形態では、ヒト対象におけるFANCD2遺伝子での腫瘍病変における突然変異を検出する方法であって、対象の病変由来組織サンプル内のFANCD2遺伝子の配列またはそのmRNAの配列を、野生型FANCD2遺伝子の配列またはそのmRNAの配列と比較するステップ(ここで、対象のFANCD2遺伝子の配列またはそのmRNAの配列における変化が腫瘍病変のFANCD2遺伝子での突然変異を示す)を含む方法が提供される。腫瘍病変のFANCD2遺伝子での突然変異による腫瘍病変を治療するための、治療プロトコールを提供することができる。
本発明のある実施形態では、ヒト対象由来の腫瘍病変におけるFANCD2突然変異の欠如を確認する方法であって、対象の病変由来組織サンプル内のFANCD2遺伝子の配列またはそのmRNAの配列を、野生型FANCD2遺伝子の配列またはそのmRNAの配列と比較するステップ(ここで、組織サンプル内の野生型配列の存在がFANCD2遺伝子での突然変異の欠如を示す)を含む方法が提供される。
本発明のある実施形態では、癌を有する対象のための治療プロトコールを決定する方法であって、(a)特異的抗体を使用してFANCD2アイソフォームを測定することにより、FANCD2−Lにおける欠損が対象由来細胞サンプル内で発生するかどうかを決定するステップと;(b)(a)において欠損が検出された場合に、この欠損が非癌細胞における遺伝的欠陥の結果であるかどうかを決定するステップと;(c)(b)が陽性である場合に、対象における正常組織を保護するためにDNA損傷の増大を誘発する治療プロトコールの使用を減少させ、そして(b)が陰性であってこの欠損が癌細胞における遺伝的欠陥内にのみ含有される場合には、癌細胞に不都合な影響を及ぼすことができるようにDNA損傷の増加を誘発する治療プロトコールの使用を増加させるステップ;とを含む方法が提供される。
本発明のある実施形態では、細胞標的内のFA経路欠陥を治療する方法であって、標的に有効量のFANCD2タンパク質または外因性核酸を投与するステップを含む方法が提供される。FA経路欠陥は欠陥のあるFANCD2遺伝子であってよく、そして外因性核酸ベクターは上述したものによるベクターを導入するステップをさらに含んでいてよい。ベクターは、突然変異ヘルペスウイルス、E1/E4欠失組換えアデノウイルス、突然変異レトロウイルスから選択することができ、ウイルスベクターは、感染性新規ウイルス粒子を産生するために必須のウイルス遺伝子に関して欠陥がある。ベクターは脂質ミセル中に含有されていてよい。
本発明のある実施形態では、欠陥のあるFANCD2遺伝子を有する患者を治療する方法であって、欠陥のあるFANCD2遺伝子から生じる病態から発生する欠陥を機能的に治すために、配列番号4に記載したポリペプチドを提供するステップを含む方法が提供される。
本発明のある実施形態では、FA経路欠陥を検出するための、細胞に基づくアッセイであって、対象から細胞サンプルを入手するステップと;細胞サンプルをDNA損傷剤へ曝露させるステップと;FANCD2−Lがアップレギュレートされるかどうかを検出するステップであって、アップレギュレーションの欠如がFA経路欠陥を示すステップ;とを含むアッセイが提供される。細胞に基づくアッセイでは、FANCD2の量は、核内フォーカスを検出する免疫ブロット法と;FANCD2アイソフォームの量を検出するウェスタンブロット法と;DNAプローブを用いてハイブリダイズすることによるmRNAの定量;とから選択される分析技術によって測定できる。
本発明のある実施形態では、生物学的サンプル内の癌細胞を検出する際に使用するキットであって、(a)FANCD2遺伝子内の配列へ高ストリンジェンシー条件下で結合するプライマー対であって、このプライマー対が表7に記載された変化した核酸配列を特異的に増幅させるために選択されるプライマー対と;前記プライマーの各々のための容器;とを含むキットが提供される。
本明細書で使用する「ファンコニ貧血/BRCA経路(Fanconi Anemia/BRCA pathway)」もしくは「ファンコニ貧血経路(Fanconi Anemia Pathway)」とは、7つの相補性群(FA−A〜FA−G)内の遺伝子、BRCA−1遺伝子およびATM遺伝子、ならびに、本明細書でファンコニ貧血/BRCA経路と称する経路において相互作用し、DNA損傷への細胞応答を調節するそれらの各タンパク質を意味する(図22を参照)。
ファンコニ貧血/BRCA経路の遺伝子は以下の通りである:
1)FANC−A(例、Genbank受託番号:NM 000135)
2)FANC−B(まだクローン化されていない)
3)FANC−C(例、Genbank受託番号:NM 000136)
4)FANC−D1/BRCA−2(例、Genbank受託番号:U43746)
5)FANC−D2(例、Genbank受託番号:NM 033084)
6)FANC−E(例、Genbank受託番号:NM 021922)
7)FANC−F(例、Genbank受託番号:NM 022725)
8)FANC−G(例、Genbank受託番号:BC000032)
9)BRCA−1(例、Genbank受託番号:U14680)
10)ATM(例、Genbank受託番号:U33841)
本明細書で使用する「ファンコニ貧血/BRCA経路タンパク質を癌関連性欠陥の存在について試験すること(testing a Fanconi Anemia/BRCA pathway protein for the presence of a cancer−associated defect)」とは、本明細書で定義されたようにファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子によってコードされたタンパク質が、本明細書で定義されたように、患者において癌を誘発または癌と関連する欠陥を持っているかどうかを決定する方法を意味する。
本明細書で使用する用語「欠陥(defect)」とは、ファンコニ貧血/BRCA経路内における未変化の遺伝子またはタンパク質に関して、ファンコニ貧血/BRCA経路内の遺伝子またはタンパク質、および/またはタンパク質のいずれかの変化を意味する。
遺伝子の「変化(alteration)」には、a)DNA配列自体の変化、すなわちDNAの突然変異、欠失、挿入、置換と;b)調節領域突然変異等の遺伝子発現の調節に影響を及ぼすDNA修飾、関連する染色質における修飾、mRNAスプライシングに影響を及ぼすイントロン配列の修飾、遺伝子配列のメチル化/脱メチル化状態に影響を及ぼす修飾と;c)タンパク質翻訳またはmRNA輸送またはmRNAスプライシングに影響を及ぼすmRNA修飾;とが含まれるが、それらに限定されない。
タンパク質の「変化」には、アミノ酸の欠失、挿入、置換;タンパク質のリン酸化またはグリコシル化に影響を及ぼす修飾;タンパク質の輸送または局在化に影響を及ぼす修飾;1以上の関連タンパク質とタンパク質複合体を形成する能力に影響を及ぼす修飾、またはアミノ酸をコードするDNA配列における変化により惹起されたアミノ酸配列の変化が含まれるが、それらに限定されない。
本明細書で使用する用語「増加したリスク(increased risk)」または「上昇したリスク(elevated risk)」とは、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子またはタンパク質における変化を有していない患者と比較して、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子またはタンパク質が変化している患者における癌発生率がより高いことを意味する。「増加したリスク」はまた、既に癌であると診断され、異なる形態の癌の発生率が増加した可能性のある患者も意味する。本発明によると、癌の「増加したリスク」とは、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子内の癌関連性欠陥を有していない患者と比較して、癌を獲得する確率において50%、好ましくは90%、より好ましくは99%以上の増加をもたらす、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子内の癌関連性欠陥に関連する。
本明細書で使用する、本発明による「ファンコニ貧血/BRCA経路の阻害剤(inhibitor of the Fanconi Anemia/BRCA pathway)」とは、直接的または間接的のいずれかでFANCD2−Lタンパク質機能を崩壊させるあらゆる化合物を意味する。FANCD2−Lタンパク質機能の崩壊は、経路内のFANCD2タンパク質の上流にある他のFANCタンパク質のいずれかの崩壊、FANCD2−LアイソフォームへのFANCD2−Sのユビキチン化の阻害、続いて起こるFANCD2−Lタンパク質の核輸送の阻害、またはFANCD2−Lタンパク質の核BRCA DNA修復タンパク質複合体との結合の崩壊、のいずれかを通して達成できる。本発明による「阻害剤(inhibitor)」は、FANCD2−Lに特異的に結合してFANCD2−Lタンパク質機能を崩壊させる核酸(アンチセンスRNAまたはDNAオリゴヌクレオチド)、タンパク質(ヒト化抗体)、ペプチドまたは低分子薬であってよい。最も好ましい実施形態では、ファンコニ貧血/BRCA経路の阻害剤は、FANCD2タンパク質のモノユビキチン化の低分子阻害剤である。
本明細書で使用する「FANCD2−L対FANCD2−Sの比率の低下(reduction in the ratio of FANCD2−L relative to FANCD2−S)」とは、FANCD2−Lアイソフォーム内のFANCD2タンパク質総量のパーセンテージの減少を意味する。ある好ましい実施形態では、FANCD2−Lアイソフォーム内にあるFANCD2タンパク質の総量は、多くとも25%、好ましくは10%、より好ましくは1%および最も好ましくは0%である。このような低下は、本明細書で定義したように、ファンコニ貧血/BRCA経路の1以上の遺伝子またはタンパク質における欠陥を示す。
本明細書で使用する「ファンコニ貧血/BRCA経路タンパク質を癌関連性欠陥の存在について試験すること(testing a Fanconi Anemia/BRCA pathway protein for the presence of a cancer−associated defect)」とは、本明細書で定義されたように、ファンコニ貧血/BRCA遺伝子経路を含む7つの相補性群(A、B、C、D、E、FおよびG)内でコードされたタンパク質が、患者において癌を誘発または癌の一因となる欠陥またはその他の突然変異を持っているかどうかを決定する方法を意味する。
本明細書で使用する用語「DNA損傷を誘発すること(inducing DNA damage)」とは、DNAを損傷させる化学的方法および物理的方法の両方を意味する。DNAを損傷させる化学薬品には、臭化エチジウム、アクリジンオレンジ、ならびにフリーラジカル等の酸/塩基および様々な突然変異原が含まれるが、それらに限定されない。物理的方法には、X線およびγ線等の電離放射線、および紫外(UV)放射線が含まれるが、それらに限定されない。「DNA損傷を誘発する」どちらの方法も、典型的には一本鎖切断、二本鎖切断、塩基の変化、DNA鎖の挿入、欠失または架橋が含まれるが、それらに限定されない、DNA突然変異を生じうる。
本明細書で使用する用語「生検組織(tissue biopsy)」とは、患者から単離された生体材料を意味する。本明細書で使用する用語「組織(tissue)」は、生体内で特定機能を実行する細胞凝集体であり、例えば血液、血漿、痰、尿、脳脊髄液等の生体液、洗浄液、および白血球泳動法サンプルを含むがそれらに限定されない、細胞系およびその他の細胞物質源を含む。
本明細書で使用する用語「増幅させること(amplifying)」は、核酸配列に適用したときには、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応方法によって、それにより特定の核酸配列の1以上のコピーがテンプレート核酸から生成される工程を意味する(Mullis and Faloona,1987,Methods Enzymol.,155:335)。「ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)」すなわち「PCR」とは、特異的核酸テンプレート配列を増幅させるためのインビトロ法を意味する。PCR反応には、一連の繰り返し温度サイクルが含まれ、典型的には50〜100μLの容量で実施される。反応混合物は、dNTP(4つのデオキシヌクレオチドdATP、dCTP、dGTP、およびdTTPの各々)、プライマー、バッファー、DNAポリメラーゼ、および核酸テンプレートを含む。PCR反応は、1組のポリヌクレオチドプライマーを提供するステップ(第1プライマーは核酸テンプレート配列の1本の鎖における1領域に相補的な配列を含有し、相補的DNA鎖の合成を準備し、そして第2プライマーは標的核酸配列の第2鎖における1領域に相補的な配列を含有し、相補的DNA鎖の合成を準備する)と、および、(i)テンプレート配列内に含有される標的核酸配列に増幅に必要なプライマーをアニーリングするステップと、(ii)前記プライマーを伸長させるステップ(核酸ポリメラーゼはプライマー伸長産物を合成する)とからなるPCRサイクリングステップを許容する条件下においてテンプレート依存性重合化剤として核酸ポリメラーゼを使用して核酸テンプレート配列を増幅させるステップと、を含む。「1組のポリヌクレオチドプライマー(a set of polynucleotide primers)」または「1組のPCRプライマー(a set of PCR primers)」は、2、3、4またはそれ以上のプライマーを含むことができる。
その他の増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ポリヌクレオチド特異的塩基増幅法(NSBA)、または当該技術分野において知られている他の方法が含まれるが、それらに限定されない。
本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチドプライマー(polynucleotide primer)」とは、核酸テンプレートに相補的なプライマー伸長産物の合成が標的核酸テンプレートに相補的なプライマー伸長産物を産生するために触媒される条件下で、核酸テンプレートにハイブリダイズして酵素による合成のための基質として機能できる、DNAまたはRNA分子を意味する。開始および伸長のための条件には、適切なバッファー(「バッファー(buffer)」には、補因子である置換体、またはpH、イオン強度等に影響を及ぼす置換体が含まれる)中における、4つの異なるデオキシリボヌクレオシド三リン酸、およびDNAポリメラーゼもしくは逆転写酵素等の重合化誘導剤の存在、ならびに適切な温度が含まれる。プライマーは、好ましくは、増幅における最高効率のために一本鎖である。本発明において有用な「プライマー(primers)」は、一般に長さが約10〜35ヌクレオチド、好ましくは長さが約15〜30ヌクレオチド、および最も好ましくは長さが約18〜25ヌクレオチドである。
本明細書に定義された「腫瘍(a tumor)」は、悪性または非悪性のどちらであってもよい腫瘍である。同一組織タイプの腫瘍は同一組織に由来し、それらの生物学的特徴に基づいて様々なサブタイプに分類できる。
本明細書で使用する用語「癌(cancer)」は、正常の増殖制御に対する感受性を消失した細胞の増殖により惹起された、またはそれを特徴とする悪性疾患を意味する。「悪性疾患(malignant disease)」は、起源組織に侵入する、または起源組織から除去されて離れた部位へ移動する能力を獲得した細胞によって誘発される疾患を意味する。
本明細書で使用する用語「抗体(antibody)」は、所定の抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリンを意味する。本明細書で使用する用語「抗体」は、いずれかのアイソタイプの全抗体(IgG、IgA、IgM、IgE等)、および同様に例えば哺乳動物のような脊椎動物のタンパク質に特異的に反応性であるそれらのフラグメントを含むことが意図されている。抗体は、従来技術を用いてフラグメント化することができ、そして前記フラグメントは全抗体と同一方法で有用性についてスクリーニングすることができる。そこで、この用語には、所定のタンパク質と選択的に反応することができる抗体分子のタンパク質分解により開裂した部分、または組換え作成された部分のセグメントが含まれる。このようなタンパク質分解性および/または組換えフラグメントの非限定的な例には、ペプチドリンカーにより結合されたV[L]および/またはV[H]ドメインを含有するFab、F(ab’)2、Fab、Fv、および一本鎖抗体(scFv)が含まれる。scFvは、共有結合的または非共有結合的に連結して、2以上の結合部位を有する抗体を形成することができる。抗体は、当業者により、検出可能な部分を用いて標識できる。いくつかの実施形態では、測定することが望まれる実体へ結合する抗体(一次抗体)は標識されず、その代わりに標識された二次抗体が一次抗体へ特異的に結合することにより検出される。
患者は、本明細書に記載した癌の1つもしくは好ましくはそれ以上の症状が除去されるか、または重症度が低下するか、またはそれ以上進行もしくは発達することが防止される場合に、本発明によって「治療される(treated)」。
本明細書で使用する用語「治療的有効量(therapeutically effective amount)」は、重要な患者に利益、すなわち関連する医学的状態の治療、治癒、予防もしくは改善、または当該病態の治療率、治癒率、予防率もしくは改善率の増加を示すに十分である、医薬組成物または方法における各活性成分の総量を意味する。
本明細書で使用する用語「癌治療薬(cancer therapeutic)」とは、癌の発病もしくは進行を予防するか、または癌転移を予防するか、または癌の症状を減少させるか、遅延させるか、もしくは除去する化合物を意味する。
本明細書で使用する用語「モノユビキチン化の阻害剤(inhibitor of the mono−ubiquitination)」とは、FANCD2遺伝子のユビキチン化を防止または阻害する化合物を意味する。「ユビキチン化(ubiquitination)」は、E3モノユビキチンリガーゼによる、ユビキチンのタンパク質への共有結合であると定義されている。1つの好ましい実施形態では、「モノユビキチン化の阻害剤」とは、FANCD2モノユビキチンリガーゼ活性が阻害されるような、E3FANCD2モノユビキチンリガーゼ活性を備えるFANCタンパク質複合体のあらゆる阻害剤を意味する。
本明細書で使用する用語「シスプラチン(cisplatin)」とは、以下の化学構造を備える物質を意味する。
Figure 2009039100
シス−ジアミンジクロロ白金(II)とも呼ばれるシスプラチンは、最も頻回に使用される抗癌剤の1つである。シスプラチンは、様々な充実性腫瘍を治療するために使用される幾つかの異なる薬物併用療法プロトコールの有効成分である。これらの薬物は、精巣癌(ブレオマイシンおよびビンブラスチンを使用)、膀胱癌、頭頸部癌(ブレオマイシンおよびフルオロウラシルを使用)、卵巣癌(シクロホスファミドまたはドキソルビシンを使用)および肺癌(エトポシド)の治療に使用される。シスプラチンは、これらの腫瘍の大多数に対して単剤で最も活性であることが見いだされている。シスプラチンは、Bristol Myers Squibb社から「Platinol」として市販で入手できる。シスプラチンは、抗腫瘍活性を備える多数の白金配位複合体の1つである。白金化合物は、アルキル化剤に類似するが同一ではないDNA架橋剤である。白金化合物は、塩化物イオンを様々な種類の求核基と置換する。シス異性体およびトランス異性体はどちらもこれを行うが、しかしトランス異性体は、その理由は完全には理解されていないが、生物学的不活性であることが知られている。抗腫瘍活性を持つためには、白金化合物は、2つの相対的に不安定なシス配向性脱離基を有していなければならない。主要な反応部位は、グアニンおよびアデニンのN7原子である。主要な相互作用は、薬物と隣接グアニンとの鎖間架橋の形成である。鎖間架橋は、シスプラチン療法への臨床反応と相関することが証明されている。DNA/タンパク質架橋もまた発生するが、これは細胞毒性とは相関しない。2つの薬物グループ間の交差耐性は通例見られず、これは作用機序が同一ではないことを表している。DNAとの架橋のタイプは、白金化合物と典型的なアルキル化剤との間で相違しうる。
本明細書で使用する「1以上の抗腫瘍剤に対する耐性(resistance to one or more anti−neoplastic agents)」とは、抗癌剤への耐性を発生させる癌細胞の能力を意味する。薬物耐性の機序には、薬物流出の増加もしくは内部への輸送の低下によって惹起される細胞内薬物レベルの低下、薬物不活性化の増加、薬物の活性型への変換の減少、標的酵素もしくは受容体の量の変化(遺伝子増幅)、標的酵素もしくは受容体の薬物に対する親和性の低下、薬物誘発性欠陥の修復の増強、殺滅作用(トポイソメラーゼII)に必要な酵素活性の低下が含まれる。本発明の好ましい実施形態では、薬物耐性とは、1以上の抗腫瘍剤によって誘発されたDNA損傷の修復の強化を意味する。本発明の別の好ましい実施形態では、1以上の抗腫瘍剤によって誘発されたDNA損傷の修復の強化は、構成的に活性なファンコニ貧血/BRCA DNA修復経路による。
本明細書で使用する用語「抗腫瘍剤(anti−neoplastic agent)」とは、癌を治療するために使用される化合物を意味する。本発明によると、「抗腫瘍剤」には化学療法化合物ならびに当該技術分野において知られているその他の抗癌剤が含まれる。好ましい実施形態では、「抗腫瘍剤」はシスプラチンである。本発明による抗腫瘍剤にはまた、放射線療法および/または手術と共に化学療法化合物を使用する癌療法プロトコールが含まれる。放射線療法は、細胞DNAを崩壊させる電離放射線による癌細胞の局所的破壊に依存する。放射線療法は、高線量もしくは低線量で体外または体内から開始でき、そして腫瘍部位へコンピュータに支援された精度で送達できる。小線源療法、もしくは組織内放射線治療は、放射線源を、植え込まれた「シード(seeds)」として直接腫瘍内に配置することができる。
本明細書で使用する用語「低下した増殖率(a reduced growth rate)」とは、ファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的阻害剤および1以上の化学療法化合物を用いて治療されていない腫瘍細胞系の細胞に比較して、ファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的阻害剤および1以上の化学療法化合物を用いて治療されている腫瘍細胞系の細胞増殖率において、50%、好ましくは90%、より好ましくは99%および最も好ましくは100%の減少を意味する。
本明細書で使用する用語「化学感作剤(chemosensitizing agent)」とは、細胞または細胞集団を化学療法化合物に対して感受性にさせ、本明細書で定義した「低下した増殖率」を生じさせるあらゆる化合物を意味する。化学感作剤は、一般にそれ自体は細胞毒性ではないが、宿主細胞または腫瘍細胞を修飾して抗癌療法を強化する化合物である。本発明によると、化学療法化合物に対する細胞耐性は、化学感作剤が存在すると逆転する。ある好ましい実施形態では、化学感作剤はファンコニ貧血/BRCA経路の阻害剤である。最も好ましい実施形態では、化学感作剤はFANCD2タンパク質のモノユビキチン化の阻害剤である。
本明細書で使用する「ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子のメチル化状態(methylation state of a Fanconi Anemia/BRCA pathway gene)」とは、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子内の1以上のメチル化シトシン(5m−C)の存在に関連しており、メチル化されていない遺伝子に比較して遺伝子発現の90%、99%または好ましくは100%の減少または阻害を生じる。好ましい実施形態では、メチル化シトシンはCpG島内に存在する。本発明によると、遺伝子は、1以上のCpG残基がメチル化されると、「メチル化(された)(methylated)」と称される。
本明細書で使用する「マイクロアレイ(microarray)」または「アレイ(array)」は、固体支持体の1つの表面に付着した多数の固有の生体分子を意味する。好ましくは、本発明の生体分子は、本明細書に記載したファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的阻害剤である。この実施形態では、本発明のマイクロアレイは、固体支持体上に、一般には高密度で固定化された、核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質または低分子を含む。生体分子各々は、前もって選択した領域内の固体支持体の表面に付着させられる。適切な固体支持体は市販で入手でき、当業者には明白であろう。これらの支持体は、ガラス、セラミック、シリカおよびシリコン等の材料から製造できる。支持体は通例、平坦な(平面的な)表面、または少なくとも、検査すべき分子が同一平面にあるアレイを含む。1つの実施形態では、アレイはマイクロビーズ上にある。1つの実施形態では、前記アレイは、固体支持体の1つの表面に付着した少なくとも10、500、1,000、10,000の異なる生体分子を含む。
詳細な説明
「FANCD2−L治療薬(FANCD2−L therapeutic agent)」は、いずれかのタンパク質アイソフォームを意味し、FANCD2−Lタンパク質のペプチド、ペプチド誘導体、類似体または異性体を含み、そしてFANCD2−Lと機能的に等価であるあらゆる低分子誘導体、類似体、異性体またはアゴニストをさらに含む。この定義にまた含まれるのは、完全長もしくは部分長の遺伝子配列またはcDNAである可能性があり、または、遺伝子発現を調節するように作用できるアンチセンス分子のアプタマーを含む遺伝子活性化核酸もしくは核酸結合分子である可能性がある、FANCD2をコードする核酸である。
「FANCD−2をコードする核酸(nucleic acid encoding FANCD−2)」には、上記に定義したように、FANCD2−Lタンパク質を発現させるためのFANCD2またはその部分の完全cDNAまたはゲノム配列が含まれる。核酸は、核酸担体もしくはベクター内にさらに含まれていてもよく、標的部位への効果的送達のために適切に修飾されている核酸を含む。
「ハイブリダイゼーションのストリンジェント条件(stringent conditions of hybridization)」には、一般に、30℃を超える、典型的には37℃を超え、好ましくは45℃を超える温度が含まれる。ストリンジェント塩条件は、通常は1,000mM未満、典型的には500mM未満、および好ましくは200mM未満である。
核酸についての「実質的相同性または類似性(substantial homology or similarity)」とは、核酸もしくはそのフラグメントが別の核酸もしくはそのフラグメントと「実質的に相同(substantially homologous)」(または「実質的に類似(substantially similar)」)な場合であって、他の核酸(またはその相補鎖)と最適に(適切なヌクレオチド挿入もしくは欠失を含めて)アラインメントされた場合に、ヌクレオチド塩基の少なくとも約60%、通常は少なくとも約70%、より通常は少なくとも約80%においてヌクレオチド配列同一性があることをいう。
「抗体(antibodies)」には、一本鎖抗体およびFabフラグメントを含む、ポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体およびそのフラグメント、ならびにタンパク質のアイソフォームを識別するために十分な結合特異性を有するそれらの免疫学的結合等価物が含まれる。これらの抗体は、アッセイならびに医薬品において有用であろう。
「単離(された)(isolated)」は、その自然状態でそれに付随する成分から分離されている、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸を記載するために使用される。「単離された」タンパク質または核酸は、サンプルの少なくとも約60〜75%が単一のアミノ酸またはヌクレオチド配列を示す場合には、実質的に純粋である。
「調節配列(regulatory sequences)」とは、通常は遺伝子座の100kbのコーディング領域内にある配列を意味するが、それらはまた、遺伝子の発現(遺伝子の転写、およびメッセンジャーRNAの翻訳、スプライシング、安定性等を含む)に影響を及ぼすコーディング領域からもっと離れていてもよい。
「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」には、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方のRNA、cDNA、ゲノムDNA、合成型、および混合ポリマーが含まれ、そして当業者には容易に理解されるように、化学的または生化学的に修飾することができ、または非天然もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含有する可能性がある。そのような修飾には、例えば、標識、メチル化、1以上の天然型ヌクレオチドの類似体との置換、非荷電連鎖(例、ホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)・荷電連鎖(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、ペンダント部分(例、ポリペプチド)、および修飾連鎖(例、αアノマー核酸等)等のヌクレオチド間修飾が含まれる。同様に、水素結合および他の化学的相互作用を介して指定の配列に結合する能力において核酸を模倣する合成分子も含まれる。
「突然変異(mutation)」は、野生型に比較した調節配列における遺伝子内または遺伝子外のヌクレオチド配列における変化である。変化は、発現および機能性が通常発生する範囲にある場合に、機能的細胞内で正常に発現した遺伝子の核酸もしくはタンパク質配列とその核酸もしくはタンパク質配列とに差異を生じさせる、欠失、置換、点突然変異、複数のヌクレオチドの突然変異、転位、逆位、フレームシフト突然変異、ナンセンス突然変異、またはその他の異常の形態であってよい。
「対象(subject)」とは、ヒトを含む哺乳類を含む動物を意味する。
「野生型FANCD2(wild type FANCD2)」とは、細胞内のFANCD−SからFANCD2−Lを生成するためにモノユビキチン化され得るタンパク質または発現タンパク質をコードする遺伝子を意味する。
本発明者らは、一部のファンコニ貧血が毛細血管拡張性運動失調症(AT)、色素性乾皮症(XP)、コケーン症候群(CS)、ブルーム症候群、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、癌感受性症候群およびHNPCC(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)を含む1群の症候群との類似性を有することを見いだした(表2を参照)。これらの症候群は、DNA修復における基礎的欠陥を有しており、染色体完全性の維持における欠陥と関連している。DNA修復および染色体完全性の維持に関連する経路における欠陥は、ゲノム不安定性、および、鎖間架橋を誘発する二官能性アルキル化剤等のDNA損傷剤に対する細胞感受性を引き起こす。さらに、DNA修復機構における欠陥は、遺伝子再配列によりある範囲の癌を開始する確率を実質的に増加させると思われる。この観察は、マイトマイシンC、シスプラチン、シクロホスファミド、ソラレンおよびUVA照射を含む、DNA架橋薬の臨床使用に関して妥当である。
ファンコニ貧血はまれな疾患であるが、FAの多形質発現作用は、ゲノム安定性、アポトーシス、細胞周期制御およびDNA架橋への耐性を含む、様々な細胞プロセスのための経路におけるFAタンパク質の野生型機能の重要性を表している。FAにおける細胞異常には、架橋剤への感受性、細胞周期のG2期の延長;周囲Oでの不良な増殖、Oラジカルの過剰産生、不十分なOラジカル防衛、スーパーオキシドジスムターゼの欠損を含む酸素への感受性;電離放射線への感受性(G2期特異的);腫瘍壊死因子の過剰産生、DNA付加物の蓄積を含むDNA修復における直接的欠陥、およびDNA架橋の修復における欠陥、自発性染色体切断を含むゲノム不安定性、および欠失機序による超突然変異性、アポトーシス増加、欠陥のあるp53誘導、インビトロでのコロニー増殖低下を含む内因性幹細胞欠陥;および性腺幹細胞生存の減少が含まれる。
これらの特徴は、造血幹細胞および性腺幹細胞の維持、ならびに骨格系および泌尿生殖器系を含む多数の様々な構造の正常胚発達にFAが関与することを反映している。患者由来細胞サンプルは、FA−D相補性群における欠陥を決定するために分析された。患者1例由来のリンパ芽球はPD20細胞系を産生したが、PD20細胞系は、D相補性群における欠陥を有する別の患者由来のHSC62からの相違する遺伝子においては突然変異していることが見いだされた。両方の患者からの突然変異はD相補性群ではあるが相違する遺伝子へマッピングされたので、2つのFANCDタンパク質の名称−FANCD1(HSC62)およびFANCD2(PD20)が生じた(Timmersら,(2001)Molecular Cell、vol.7、p241〜248)。本発明者らは、FANCD2がFA経路の終点であり、FA核複合体の一部ではなく、さらにそのアセンブリーのためにも安定性のためにも必要でないこと、そしてFANCD2はFANCD2−SおよびFANCD2−Lの2種のアイソフォームで存在することを示した。本発明者らはまた、FA複合体に反応して短鎖型タンパク質(FANCD2−S)から長鎖型タンパク質(FANCD2−L)への形質転換が発生することも示した(図8)。FA経路に関連する特定のタンパク質における欠陥は、FANCD2−Lであると同定されたFANCD2の重要な翻訳後修飾型の作成の失敗を生じさせる。FANCD2の2種のアイソフォームは、短鎖型および長鎖型であると同定されている。
FANCD2−Lの作成の失敗は、上記に列挙した疾患に関連するDNA修復および細胞周期異常におけるエラーと相関している。
上述した症候群におけるFANCD2の役割についてより詳細に理解するために、本発明者らは、FANCD2遺伝子をクローニングしてタンパク質配列を決定した。FANCD2遺伝子は、予想分子量が166kDである新規の1,451アミノ酸核タンパク質をコードする、4,353塩基対および44個のエクソンからなるオープンリーディングフレームを有する。ウェスタンブロット分析により、162および155kDの2つのタンパク質アイソフォームの存在が明らかになった。44イントロン/エクソン接合部に対応する配列は表6に示した(配列番号9〜94)。
以前にクローニングしたFAタンパク質とは相違して、数種の無脊椎動物真核細胞由来のFANCD2タンパク質は、D.メラノガスター(キイロショウジョウバエ)、A.タリアーナ(シロイヌナズナ)、およびC.エレガンス(線虫の一種)におけるタンパク質と高度に有意なアラインメントスコアを示した。ショウジョウバエ相同物は、FANCD2との28%アミノ酸同一性および50%類似性を有するが(図および配列番号1〜3)、それぞれの種において機能的研究は実施されていない。大腸菌(E.coli)またはS.セレビジエでは、FANCD2と類似するタンパク質は見いだされなかった。
本発明者らは、PD20およびVU008における染色体3P遺伝子座を分析することによりFANCD2 DNA配列(配列番号5)を得たが、2つのFA細胞系はFANCD2遺伝子において二対立遺伝子突然変異を有する(図10)。これらの細胞系は、患者由来のリンパ芽球がD群に対する基準細胞系であるHSC62を相補化できなかったので、D相補性群とした。FANCD2突然変異はこのD群基準細胞系では検出されなかったが、これはHSC62内で突然変異した遺伝子がFANCD1をコードする遺伝子であり、PD20およびVU008内ではFANCD2であることを表している(図11)。突然変異を同定するために、マイクロセル媒介染色体導入法を使用した(Whitneyら,Blood,(1995)、vol.88、p49〜58)。遺伝子座を含む小さな重複欠失を含有する5つのマイクロセルハイブリッドの詳細な分析により、FANCD2遺伝子の候補領域は200kbに狭まった。FANCD2遺伝子を以下の通りに単離した:3つの候補ESTは、このFANCD2臨界領域内またはその近くに局在していた。完全長cDNAを得るために5’および3’RACEを使用して遺伝子を配列決定し、各々の発現パターンをノーザンブロット法により分析した。EST SCC34603は、以前にクローニングしたFA遺伝子に類似する5kbおよび7kbのmRNAの、偏在性かつ低レベルの発現を有した。TIGR−A004X28、AA609512およびSGC34603に対するオープンリーディングフレームが見いだされ、長さは各々234,531および4413bpであった。3つすべてを、クローニングしたRT−PCR産物を配列決定することにより、PD20細胞における突然変異について分析した。TIGR−A004X28およびAA609512において配列変化は検出されなかったが、SGC34603では5つの配列変化が見いだされた。次に、本発明者らは、臨界領域由来のBAC 177N7上のcDNAシーケンシングプライマーを使用することにより、SGC34603遺伝子の構造を決定した。
ゲノム配列情報に基づいて、PCRプライマー対を設計し(表7)、推定される突然変異を含有するエクソンを増幅させ、PD20ファミリーならびに568コントロール染色体をスクリーニングするために、対立遺伝子特異的アッセイを開発した。3つの対立遺伝子は共通の多型であった;しかしながら、対照では2つの変化は見いだされず、したがって潜在的突然変異を示していた(表3)。第1はnt376での母系遺伝A→G変化であった。アミノ酸(S126G)を変化させることに加えて、この変化はミス・スプライシングおよびイントロン5からmRNAへの13bpの挿入と関連していた。母性突然変異を含む43/43(100%)の独立してクローン化されるRT−PCR産物はこの挿入を含有していたが、対照cDNAクローン中の3%(1/31)だけがミススプライスmRNAを示した。13bpの挿入はフレームシフトを生成し、長さがわずかに180アミノ酸の重度に短いタンパク質を予測させる。第2の変化は、位置1236(R1236H)での父性遺伝ミスセンス変化であった。PD20コアファミリーにおける突然変異の分離は図10に示した。PD20のSGC34603遺伝子は568コントロール染色体上に存在しない母性および父性両方の対立遺伝子を含有しており、そして母性突然変異は分析したcDNAの100%においてミス・スプライシングと関連していたので、本発明者らは、SGC34603がFANCD2遺伝子であると結論づけた。
FANCD2によってコードされたタンパク質はPD20には不在である:SGC34603がFANCD2であるとの同一性をさらに確認するために、前記タンパク質に対して抗体を生じさせ、ウェスタンブロット分析を実施した(図11)。抗体の特異性は、PD20細胞におけるレトロウイルス形質導入およびFANCD2の安定的発現によって証明された(図11)。野生型細胞では、この抗体によって、本発明者らがFANCD2−Sおよび−Lと呼ぶ2つのバンド(155および162kD)を検出した(図11において最も明白である)。FANCD2タンパク質レベルは、患者PD20由来のすべてのMMC感受性細胞系では顕著に低下していたが(図11a、レーン2、4)、野生型細胞系および他の相補性群由来のFA細胞では存在した。さらに、染色体3のマイクロセル媒介導入により補正したPD20細胞もまた、正常量のタンパク質を生成した(図11a、レーン3)。
FANCD2 cDNAを用いたFA−D2細胞の機能的相補化:次に本発明者らは、クローン化FANCD2 cDNAがFA−D2細胞のMMC感受性を相補化する能力を評価した(図12)。完全長FANCD2 cDNAは、以前に記載されたように、レトロウイルス発現ベクターであるpMMP−puro内にサブクローニングした(Pulsipherら,(1998),Mol.Med.,vol.4、p468〜479)。形質導入されたPD−20細胞は、FANCD2タンパク質の両方のアイソフォームであるFANCD2−SおよびFANCD2−Lを発現した(図12c)。pMMP−FANCD2によるPA−D2(PD20)細胞の形質導入は細胞のMMC感受性を補正した。これらの結果はさらに、クローン化FANCD2 cDNAが、翻訳後修飾してFANCD2−Lアイソフォームにすることができる、FANCD2−Sタンパク質をコードすることを証明している。この重要な修飾については、下記においてより詳細に検討する。
表現型復帰突然変異PD20クローンの分析:次に本発明者らは、PD20細胞中の配列変化が機能的に中立な多型ではないことを証明する、追加の証拠を生成した。このような目的で、本発明者らは、もはやMMCに対して感受性ではない、患者PD20由来の復帰突然変異リンパ芽球クローン(PD20−cl.1)の分子分析を実施した。表現型復帰突然変異および体細胞モザイク現象はFAにおいてたびたび見られる所見であり、有糸分裂組換えまたは代償性フレームシフト等の遺伝子内事象と関連していた。実際に、母性由来SGC34603 cDNAの〜60%は、通常観察される13bpではなく36bpのイントロン5配列を挿入する新規スプライス変異体を有していた(図13)。このインフレーム・スプライス変異体の発生は、位置IVS5+6におけるGからAへの新規塩基変化と相関しており、正確なリーディングフレームの回復はウェスタンブロット分析により確認された。患者PD20由来のすべてのMMC感受性線維芽細胞およびリンパ芽球とは対照的に、PD20−cl.1は、正常タンパク質よりわずかに大きな分子量を持つ、容易に検出可能な量のFANCD2タンパク質を産生した。
他の「FANCD」患者由来の細胞系の分析:抗体はまた、FA−D群についての基準細胞系、HSC、および欧州ファンコニ貧血登録(EUFAR)によってD群と同定された他の2つの細胞系を含む、追加のFA患者細胞系をスクリーニングするために使用した。VU008はFANCD2タンパク質を発現せず、どちらもエクソン12にあるミスセンスおよびナンセンス突然変異を含む、化合物の異型接合体であることが見いだされたが、370コントロール染色体上では見いだされなかった(表3、図11)。ミスセンス突然変異は、VU008細胞からの溶解物中ではFANCD2タンパク質が検出不能であるので、FANCD2タンパク質を不安定化させると思われる。第3の患者由来のPD733もまた、FANCD2タンパク質を欠如しており(図11b、レーン3)、エクソン17の欠如および前記タンパク質の内部欠失を導くスプライス突然変異が見いだされた。突然変異とこれらの患者由来の細胞溶解物中におけるFANCD2タンパク質の欠如との相関は、FANCD2のFA遺伝子との同一性を実証している。これとは対照的に、HSC62中では、容易に検出可能な量のFANCD2タンパク質の両方のアイソフォームが見いだされ(図11a、レーン8)、そして、両方の細胞系からのVU423 cDNAおよびゲノムDNAが突然変異について広範囲に分析されたが、何も見いだされなかった。さらに、VU423とPD20線維芽細胞との間の全細胞融合は、染色体切断表現型の相補性を示した(表5)。これらのデータをまとめると、FA−D群は遺伝的に異質であり、HSC62およびVU423において欠損している遺伝子はFANCD2とは別個であることが証明されている。
FANCD2遺伝子およびタンパク質の同定および配列決定は、表2に列挙したものを含むがそれらに限定されないDNA修復不全および細胞周期異常に関連する疾患のための、治療薬開発、診断学的検査およびスクリーニングアッセイにとっての新規標的を提供する。
以下の説明は、上記の症候群を診断および治療するための基盤となる、FA経路におけるFANCD2の生物学的役割に関する新規かつ有用な洞察を提供する。
FA細胞が細胞周期調節における基礎的な分子的欠陥を有することの証拠には、次のものが含まれる:(a)FA細胞は、化学的架橋剤による処置によって強化される、4N DNA含量を含む細胞周期遅延を示す;(b)細胞周期停止およびFA細胞の増殖低下は、タンパク質のサイクリンファミリーのメンバーであるタンパク質SPHARの過剰発現によって、部分的に補正できる;および(c)カフェインはFA細胞のG2期停止を取り消す。これらの結果と一致して、カフェインは構成的にcdc2を活性化し、FA細胞内の正常G2期細胞周期チェックポイントを無効にする可能性がある。最後に、FANCCタンパク質はサイクリン依存性キナーゼのcdc2へ結合する。本発明者らは、FA複合体がサイクリンB/cdc2複合体の基質または調節因子である可能性があると提案する。
さらに、FA細胞がDNA修復において基礎的欠陥を有するという証拠は、(a)架橋DNAの修復または二本鎖切断における特異的欠陥を示唆する、DNA架橋剤および電離放射線(IR)に対して感受性のFA細胞;(b)欠陥のある修復ではあるが無傷のチェックポイント活動が存在することを示唆する、非常に活発なp53応答を生じさせるFA細胞のDNA損傷;および(c)非相同末端結合の適合度における欠陥および相同組換えの比率増加を伴うFA細胞、によって示唆されている(Garcia−Higueraら,Mol.Cell.,(2001)、vol.7、p249〜262)、(Grompeら,Hum.Mol.Genet.,(2001)、vol.10、p1〜7)。
細胞周期およびDNA修復におけるこれらの一般的異常にもかかわらず、FA経路がこれらの活動を調節する機序についてはこれまで理解しがたかった。本発明者らは、本明細書において、FANCD2タンパク質がFAタンパク質複合体の下流で機能することを証明する。集合したFAタンパク質複合体の存在下では、FANCD2タンパク質は、S期特異的DNA修復反応を調節すると思われる高分子量のモノユビキチン化アイソフォームへと活性化される。活性化FANCD2タンパク質は、DNA損傷剤に反応して核内フォーカス内に集積し、既知のDNA修復タンパク質であるBRCA1と共局在化および共免疫沈降する。これらの結果は、以前の矛盾するFA経路モデル(D’Andreaら,1997)を解決し、FAタンパク質がDNA修復への細胞応答において協働することを示している。
FA経路には、本発明者らが証明したA/C/Gに加えて複合体のサブユニットとしてFANCFをもまた含む、FAマルチサブユニット核複合体の形成が含まれる(図8)。FA経路は、S期中に「活性」になり、S期特異的修復反応またはチェックポイント反応を生じさせる。FAマルチサブユニット複合体に依存するFA経路の正常な活性化は、リン酸化ステップを介して、FANCD−2Lと同定された高分子量活性化アイソフォームへのリンタンパク質−FANCD2の調節モノユビキチン化を生じさせる(図1)。モノユビキチン化は細胞トラフィッキングと関連している。FANCD2−LはS期特異的DNA修復反応を調節すると思われる(図3)。FA細胞によるFANCD2のS期特異的活性化の活性化の失敗は、細胞周期特異的異常と関連している。活性化FANCD2タンパク質は、DNA損傷剤、MMCおよびIRに反応して核内フォーカス内に集積し、既知のDNA修復タンパク質であるBRCA1とともに共局在化および共免疫沈降する(図4〜6)。これらの結果は、以前のFAタンパク質機能の矛盾するモデル(D’Andreaら,1997)を解決し、DNA修復においてFA経路が果たす役割を強力に支持する。
本発明者らは、初めて、FA経路に関わるFANCD2アイソフォームと様々な癌について知られている診断分子であるタンパク質との関連を同定した。S期においてまたはDNA損傷に反応して高分子量の翻訳後修飾アイソフォームへと活性化されるBRCA1タンパク質についてのDNA損傷に関する類似の経路は、活性化FANCD2タンパク質がBRCA1と相互作用することを示唆している。より詳しくは、FANCD2の調節モノユビキチン化は、FANCD2タンパク質の標的を、BRCA1を含有する核内フォーカスにすると思われる。FANCD2はBRCA1と共免疫沈降し、そしてさらにRAD50、Mre11、NBS、またはRAD51等の他の「ドット(dot)」タンパク質と結合しうる。近年の研究は、BRCA1フォーカスが大きな(2メガダルトン)のマルチタンパク質複合体から構成されることを証明している(Wangら,Genes Dev.,(2001)vol.14、p927〜939)。この複合体には、ATM、DNA修復機能に関係するATM基質(BRCA1)、およびチェックポイント機能に関係するATM基質(NBS)が含まれる。さらに、FA経路の損傷認識および活性化には、ATM、ATR、CHK1、またはCHK2を含むDNA損傷に反応するキナーゼが関係することが示唆されている。
本発明者らは、DNA損傷剤、IRおよびMMCがFANCD2の独立した翻訳後修飾を活性化させ、その結果として別個の機能的結果を生じさせることを見いだした。IRは、セリン222でFANCD2のATM依存性リン酸化を活性化してS期チェックポイント反応を生じさせる。MMCは、リジン561でFANCD2のBRACA−1依存性およびFA経路依存性のモノユビキチン化を活性化し、FANCD2/BRCA1核内フォーカスのアセンブリーおよびMMC耐性を生じさせる。このためFANCD2は、共通経路内で2つの追加の癌感受性遺伝子(ATMおよびBRCA1)間の連結を提供する2つの別個の翻訳後修飾の結果として生じる染色体安定性の維持において、2つの独立した機能的役割を有している。いくつかの追加の証拠は、FANCD2とBRCA1との相互作用を支持している。第1に、BRCA1(−/−)細胞系であるHCC1937(Scullyら,Mol.Cell,(1999)、vol.4、p1093〜1099)は、染色体不安定性ならびに三放射線および四放射線染色体形成の増加とともに、「ファンコニ貧血様」表現型を有する。第2に、FA細胞は、通常IRに反応してBRCA1フォーカス(およびRAD51フォーカス)を形成するが、BRCA1(−/−)細胞は検出可能なBRCA1フォーカスを有しておらず、正常細胞と比較してFANCD2フォーカスの数が大きく減少している。BRCA1(−/−)細胞の機能的相補性は、BRCA1フォーカスおよびFANCD2フォーカスを正常レベルへ回復させ、そして正常MMC耐性を回復させた。
FANCD2−Lの量は、部分的にはfancd2遺伝子から合成されたFAND2−Sの量によって、そして部分的にはFANCD2−Lを形成するためのモノユビキチン化FANCD2−SへのFA複合体の利用可能性によって決定される。FANCD2−LとBRCAおよびATMを含む核内フォーカスとの関連、ならびにDNA修復におけるFANCD2−Lの役割を決定することは、このタンパク質を広範囲の癌について患者における潜在的癌発症を考察するための強力な標的にする。そのような癌には、染色体3p上の損傷により発生する癌、ならびに、突然変異がFANCG、FANCCまたはFANCA等のFA経路の上流メンバーの産生の妨害を生じさせるような、他の染色体上の癌が含まれる。癌細胞系および腫瘍生検組織を含む癌患者由来の初代細胞は、FANCD−Lについてスクリーニングされ、このタンパク質の異常レベルは疾患の早期診断と相関すると予想されている。FANCD2タンパク質はDNA修復への経路における最終ステップであるので、FANCD2−SからFANCD−Lへの転換を引き起こす1以上の経路におけるタンパク質の何らかの異常は、FANCD2のレベルを測定することによって容易に検出されると考えられる。さらに、FANCD2のレベルは、BRCAおよびATMのような他のタンパク質がいかに核内で機能的に相互作用するかに影響を及ぼし、患者にとって重大な結果をもたらす。患者におけるFANCD2のレベルの分析は、前記患者が示す癌のクラスの理解に関して医師が臨床決定を下すのに役立つと予想される。例えば、癌細胞がモノユビキチン化FANCD2−Lアイソフォームを生成できない場合、その細胞は染色体不安定性の増加を有しており、おそらく放射線照射または化学療法薬への感受性の増加を有する可能性がある。この情報は、医師が患者の治療を改善する際に助けとなるであろう。
ファンコニ貧血は、広範囲のスペクトルの様々な癌だけではなく先天性異常とも関連している。胎児の発達は複雑ではあるが秩序立ったプロセスである。ある種のタンパク質は、この秩序立った発達の進行を崩壊させるため、特に広範囲のスペクトルの作用を及ぼす。FA経路は、FA経路の発達および崩壊に重大な役割を果たし、数多くの有害作用を引き起こす。FA経路におけるエラーは、胎児細胞由来のFAND2−Lタンパク質の分析を通して検出できる。FANCD2は、正常胎児発達の診断マーカーであり、治療的介入にとって可能性のある標的である。
上記と一致して、本発明者らは、FANCD2が生育可能な精子の産生においてある役割を果たすことを証明した。FANCD2は、後期太糸期および複糸期マウス精母細胞におけるXY二価染色体の不対軸上でフォーカスを形成する(図7)。興味深いことに、FANCD2フォーカスは複糸期における常染色体テロメアでも見られる。FA患者およびFA−Cノックアウトマウスにおいて知られている生殖能力の欠陥と結び付けて考察すると、本発明者らの観察は、減数分裂第I期を通しての精母細胞の正常な発達のためには活性化FANCD2タンパク質が必要であることを示唆している。XY軸上で見られるFANCD2フォーカスの大半はBRCA1フォーカスと共局在することが見いだされており、これは、2つのタンパク質が減数分裂細胞中で一緒に機能することを示唆している。BRCA1と同様に、FANCD2は、発達中のシナプトネマ構造の軸(非接合(unsynapsed))エレメント上で検出された。組換えはシナプス領域で発生するので、FANCD2は、おそらくシナプシスのために染色体を準備するのに役立つように、またはその後の組換え事象を調節するために、組換えが開始される前に機能できる。それによりFANCD2が減数分裂染色体上で集合し、減数分裂細胞中でドット構造を形成する、比較的同調的な方法は、FANCD2が有糸分裂期および減数分裂期両方の細胞周期制御において役割を果たすことを示唆している。
本発明の実施形態は、FA経路の完全性を決定するための診断的標的としての翻訳後修飾アイソフォームであるFANCD−2Lの使用を指向する。FANCD2のユビキチン化およびFANCD2核内フォーカスの形成は、FA経路における下流事象であり、いくつかのFA遺伝子の機能を必要とする。本発明者らは、上流FA遺伝子(FANCA、FANCB、FANCC、FANCE、FANCFおよびFANCG)のいずれかの二対立遺伝子突然変異が、非ユビキチン化FANCD2(FANCD2−S)型からユビキチン化FANCD2(FANCD2−L)型へのFANCD2の翻訳後修飾を阻止することを見いだした。これらの上流欠陥のいずれも、FANCD2 cDNAを用いて細胞をトランスフェクトすることにより取り消すことができる(図1a)。
本発明者らは、初めて、FANCD2の存在およびFA経路におけるそれの果たす役割を証明した。本発明者らは、FANCD2がBRCA1およびATM等の他のDNA修復タンパク質と関連している場合、FANCD2はDNA損傷剤に反応して核内フォーカス内に集積することを証明した。本発明者らはまた、FANCD2が細胞中で2つのアイソフォームで存在しており、これら2つのアイソフォームの1つであるFANCD2−Lの低下がファンコニ貧血および癌感受性の増加と相関することも証明した。本発明者らは、これらの所見を使用して、患者のケアに役立つように臨床使用するための多数の診断学的検査を提案してきた。
これらの検査には:(a)将来の子孫または現在の妊娠において遺伝性ファンコニ貧血について懸念がある親たちに対する遺伝学的および出生前カウンセリング;(b)欠陥のあるFA経路に相関する癌感受性の増加を決定するためのヒト成人のための遺伝学的カウンセリングおよび免疫学的診断検査;および(c)副作用を最小限に抑えながら対象にとって最も有効である治療プロトコールを開発する機会を提供するために対象においてすでに存在する癌の診断をすること、が含まれる。
ここに記載する診断学的検査は、当技術分野において知られている標準プロトコールに基づいており、このため本発明者らは、FANCD2タンパク質およびヌクレオチド配列について検査するための新規試薬を提供した。これらの試薬には、FANCD2アイソフォームに特異的な抗体、FANCD2遺伝子内の遺伝的変化を検出するためにベクター、プローブおよびプライマーがそれに由来するヌクレオチド配列、ならびにFA経路における欠陥を保存および検査するための細胞系および組換え細胞が含まれる。
本発明者らは、FANCD2−LおよびFANCD2−Sタンパク質に対して特異的である、実施例1に記載したモノクローナルおよびポリクローナル抗体調製物を調製した。さらに、FANCD2アイソフォーム特異的抗体フラグメントおよび一本鎖抗体は、標準的な技術を使用して調製できる。本発明者らは、例えばウェスタンブロット法のような免疫沈降アッセイ等の湿式化学的アッセイにおいてこれらの抗体を使用して、生物学的サンプル内でFANCD2アイソフォームを同定した(図1)。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射定量測定法(IRMA)および免疫酵素アッセイ(IEMA)を含み、さらにサンドイッチアッセイを含む、従来型イムノアッセイもまた使用できる。その他のイムノアッセイは、溶液中の抗体と反応させられ、場合によってはリザーバー内の液状で分析される、全細胞または溶解細胞のサンプルを利用できる。FANCD2のアイソフォームは、免疫蛍光細胞を検出するために、例えば蛍光活性化セルソーティング、およびレーザーまたは光線顕微鏡を使用する免疫学的技術によって、細胞系、生検組織および血液を含む無傷細胞中においてin situで同定することができる(図1〜7、9〜14)。例えば、パラフィン中に包埋された、または凍結組織切片等の保存された状態でスライド上において調製された生検組織または細胞単層は、FANCD2−Lを検出するために抗体に曝露させ、その後に蛍光顕微鏡によって検査することができる。
本発明の実施形態では、患者由来の細胞系または癌細胞系が、FANCD2アイソフォームの量の変化を検出するための新規の単純な診断学的検査を提供するために、免疫ブロッティング法および免疫蛍光法によって分析される。診断学的検査はまた、FA経路における上流にある欠損についてスクリーニングするための手段および現在使用されているFAについてのDEB/MMC染色体切断検査の実際的代替法を提供するが、それはFA経路における上流にある欠損を有する個人はFANCD2をユビキチン化できないからである。表2に記載した症候群のいずれか、特にFAであると新規に診断された患者の迅速なサブタイプ分析を提供するために、形質転換した患者由来細胞系を形成するためのレトロウイルス遺伝子導入を、FANCD2免疫ブロッティングと一緒に組み合わせるアッセイ(Pulsipherら,Mol.Med.,(1998)vol.4、p468〜79)を含む、他のアッセイを使用できる。
上記のアッセイは、診断研究所によって実施すること、または診断キットを製造して医療提供者または自己診断のために個人へ販売することができる。これらの検査の結果およびその解釈から得られる情報は、医療提供者が患者の病態を診断および治療する際に有用である。
遺伝学的検査は、対象について、疫学的ベースラインに比較して特定状態についての迅速で確実なリスク分析を提供できる。本発明者らのデータは、FANCD2相補性群内のFAを有する患者において遺伝的異質性が発生することを示唆している。本発明者らは、遺伝的異質性と疾患との間、ならびに遺伝的異質性とFANCD2−Lの存在または不存在を生じさせる異常な翻訳後修飾との間に相関関係を見いだした。この相関は、異常なDNA修復を特徴とする症候群のいずれかについての予後の検査ならびに診断学的検査および治療の基盤を提供する。例えば、採血から入手した細胞サンプルまたは対象由来の他の細胞からの核酸をFANCD2遺伝子内の突然変異について分析し、そして対象は癌への感受性の増加を有すると診断されうる。
本発明者らは、癌の高頻発と相関する領域における染色体3p上の3p25.3においてFANCD2遺伝子の局在を確認した。細胞遺伝学的研究およびヘテロ接合性消失(LOH)研究は、染色体3pの欠失がすべての形態の肺癌において高頻度で発生することを証明している(Toddら,Cancer Res.、vol.57、p1344〜52)。例えば、ホモ接合性欠失は、3p21の領域内の3つの扁平上皮細胞系で見いだされた。ホモ接合性欠失はまた、小細胞癌において3p12および3p14.2で見いだされた(Franklinら,Cancer Res.(1997)、vol.57、p1344〜52)。本発明でのFANCD2のマッピングは、この染色体領域が重要な腫瘍サプレッサー遺伝子を含有するという理論を支持している。これについてのまた別の支持は、家族性卵巣癌についての新規感受性遺伝子の染色体3p22−p25への局在化を報告している、Sekineらの最近の出版物、Human Molecular Genetics,(2001)、vol.10、p1421〜1429によって提供されている。FANCD2−Lの減少または欠如は、本明細書においては、FANCD2部位(3p25.3)だけではなく、環境作用物質への曝露および正常な加齢プロセスから発生する細胞損傷後のDNA修復における欠陥からおそらく発生する染色体の他の部位においても、突然変異の結果として生じる腫瘍のリスクの増加について診断的であると提案されている。
FANCD2遺伝子内の遺伝的欠陥についてより多数の個人および家系がスクリーニングされるにつれて、様々な突然変異に対する集団頻度が収集されたデータベースが開発され、遺伝的分析の予測値が引き続き改善されるように、これらの突然変異と個人にとっての健康プロフィールとの相関付けが行われるであろう。FANCD2についての対立遺伝子特異的家系分析の例は、図10において2つの家系について提供されている。
FANCD2遺伝子内の突然変異の診断は、最初は、FANCD2−Lタンパク質の量の低下を検出するために迅速な免疫学的アッセイによって検出できる。陽性のサンプルは、その後、PA経路におけるいずれかの遺伝子内の欠陥について利用できるプローブおよびプライマーを用いてスクリーニングできる。FANCD2遺伝子内の欠陥が関係している場合は、表7に示したようなプライマーまたはプローブを使用して突然変異を検出できる。それらのサンプル内では、そのようなプライマーまたはプローブによって突然変異が検出されない場合、前記遺伝子内の突然変異の存在および局在位置を決定するために全FANCD2遺伝子を配列決定することができる。
FANCD2遺伝子座における遺伝的欠陥を同定するために使用する核酸スクリーニングアッセイには、突然変異を検出するためのPCR型および非PCR型アッセイが含まれうる。特定の対立遺伝子内の突然変異の存在について細胞ゲノムを分析するためには、多数のアプローチ法がある。例えば、点突然変異、欠失または挿入のいずれであっても、野生型FANCD2対立遺伝子の変化は、プローブを使用する標準的な方法を用いて検出できる(米国特許第6,033,857号)。標準的な方法には:(a)全無傷細胞上で使用できる蛍光in situ・ハイブリダイゼーション(FISH);および(b)単離された核酸上でハイブリダイゼーション技術を使用して突然変異を検出するのに使用できる、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)が含まれる(Connerら,Hum.Genet.,(1989)、vol.85、p55〜74)。その他の技術には、(a)非変性ポリアクリルアミドゲル上で一本鎖DNAの電気泳動度における変化を観察する方法、(b)組織サンプルから単離したゲノムDNAへFANCD2遺伝子プローブをハイブリダイズさせる方法、(c)組織サンプルのゲノムDNAへ対立遺伝子特異的プローブをハイブリダイズさせる方法、(d)増幅配列を作成するために組織サンプルからのFANCD2遺伝子の全部または一部を増幅させ、増幅配列を配列決定する方法、(e)特異的FANCD2突然変異体対立遺伝子についてのプライマーを使用して、組織サンプル由来のFANCD2遺伝子の全部または一部を増幅させる方法、(f)クローン化配列を作成するために組織サンプル由来FANCD2遺伝子の全部または一部を分子クローニングし、クローン化配列を配列決定する方法、(g)(i)組織サンプルから単離したFANCD2遺伝子またはFANCD2 mRNAと(ii)ヒト野生型FANCD2遺伝子配列と相補的である核酸プローブとの間のミスマッチを、分子(i)および(ii)が二本鎖を形成するために相互にハイブリダイズされた場合に同定する方法、(h)組織サンプル内のFANCD2遺伝子配列の増幅、および野生型FANCD2遺伝子配列を含む核酸プローブヘの増幅配列のハイブリダイゼーション、(i)組織サンプル内のFANCD2遺伝子配列の増幅、および突然変異FANCD2遺伝子配列を含む核酸プローブヘの増幅配列のハイブリダイゼーション、(j)組織サンプル内の欠失突然変異についてのスクリーニング、(k)組織サンプル内の点突然変異についてのスクリーニング、(l)組織サンプル内の挿入突然変異についてのスクリーニング、ならびに(m)FANCD2遺伝子を含む核酸プローブを用いた組織サンプルのFANCD2遺伝子のin situハイブリダイゼーションが含まれる。
点突然変異については、遺伝子またはゲノムの比較的に短い領域を調べるのがしばしば望ましい:配列内のすべての潜在的部位を検査するために必要とされる多数のオリゴヌクレオチドは、効率的なコンビナトリアル法によって作成できる(Southern,E.Mら、Nucleic Acids Res.,(1994)vol.22、p1368〜1373)。標的配列におけるすべての部位で突然変異について探索するために、リガーゼまたはポリメラーゼと組み合わせて、アレイを使用できる(米国特許第6,307,039号)。ハイブリダイゼーションによる突然変異の分析は、例えばゲル、アレイ、またはドット・ブロットによって実施できる。
全遺伝子は、配列決定して突然変異を同定することができる(米国特許第6,033,857号)。FANCD2遺伝子座の配列決定は、標的配列に付着させたときに固相支持体上の補体に付着する最小限クロスハイブリダイジングセットからのオリゴヌクレオチドタグを使用して達成できる(米国特許第6,280,935号)。
FANCD2遺伝子内の突然変異を検出するための他の方法には、米国特許第6,297,010号、米国特許第6,287,772号および米国特許第6,300,076号に記載された方法が含まれる。さらにまた、これらのアッセイにおいて核酸マイクロチップ・テクノロジーまたはラボ・オン・チップを使用した複数サンプルの分析を使用できることも考えられている。その後、これらの突然変異と、乳癌、卵巣癌または前立腺癌患者に関する遺伝学的研究の結果との相関を使用すると、FANCD2遺伝子内で同定された欠陥が本発明による癌関連性欠陥であるかどうかを決定することができる。
腫瘍を発症した対象は、FANCD2−Lタンパク質におけるFANCD2遺伝子突然変異または欠損症を検出するために、核酸診断学的検査または抗体に基づく検査を使用してスクリーニングすることができる。このようなスクリーニングに基づき、サンプルは、黒色腫、白血病、星細胞腫、グリア芽腫、リンパ腫、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病ならびに膵臓癌、乳癌、甲状腺癌、卵巣癌、子宮癌、精巣癌、下垂体癌、腎臓癌、胃癌、食道癌および直腸癌を含む広範囲の癌を有する患者から入手できる。臨床医は、前記患者のための治療有益性を最大化するために適切な治療プロトコールを選択する向上した能力を有する。特に、FANCD2−Lタンパク質における遺伝的損傷または欠損症の存在は、様々な現行の化学療法薬および放射線療法への反応性と相関付けることができる。
新規治療法は、細胞アッセイ(実施例11〜12)およびノックアウトマウスモデル(実施例10)においてFANCD2−Lを産生するFANCD2−Sのモノユビキチン化を調節する分子をスクリーニングすることによって開発することができる。そのような分子には、FANCD2、または順にFANCD2によって活性化されると思われるBRACA−1と相互作用すると思われるBRACA−2等の分子に直接結合する分子が含まれる。
FANCD2遺伝子またはタンパク質における欠陥に基づくスクリーニングアッセイに加えて、FANCD2−S自体を含むFANCD2の翻訳後修飾に先行するいずれかの時点でのFA経路における欠陥の結果として、FANCD2−Lの形成のために必要なユビキチン化反応の失敗が観察されることがある。反応における最終ステップが明らかになると、破損した経路を修復させる分子が見いだされるまで、「破損したFA経路」を含有する低分子が細胞内またはインビトロでスクリーニングされるスクリーニングアッセイを調製することが可能になる。その後この分子は、欠陥の性質を同定するためのプローブとして利用できる。この分子は、欠陥を修復するための治療薬としてさらに使用できる。例えば、本発明者らは、細胞周期停止およびFA細胞の増殖低下が、一部にはタンパク質のサイクリンファミリーのメンバーであるタンパク質SPHARの過剰発現によって補正できることを証明した。これは、治療的低分子を同定するためのスクリーンとして適切であるアッセイの基礎を形成できる。
翻訳後修飾されたFANCD2が不十分である細胞は、DNA損傷に対して特に感受性である。これらの細胞は、化合物(毒性分子を含む)がDNAを損傷させる能力を有するかどうかを決定するための感受性スクリーンとして機能できる。逆に言えば、これらの細胞はまた、化合物がDNA損傷から細胞を保護できるかどうかを決定するための感受性スクリーンとしても機能できる。
FA患者およびDNA修復欠陥に関連する症候群に罹患している患者は、骨髄不全の合併症のために死亡する。遺伝子導入は、この欠陥を補正するための治療選択肢である。FA経路を通して多数の欠陥が発生することがある。本発明者らは、細胞および生体が適正に機能するために最終ステップが極めて重要であることを証明した。本発明の実施形態では、FA経路のいずれかでの欠陥の修正は、この形質転換が首尾よく達成されるようにFANCD2−LへのFANCD2−Sの形質転換を標的とする遺伝子療法または治療薬によって、十分に達成できる。
遺伝子療法は、例えばFriedmanが「遺伝疾患の治療(Therapy for Genetic Disease)」、T.Friedman編集、Oxford University Press(1991)、p105〜121で記載したような、一般に容認された方法によって実施できる。エクスビボ(ex vivo)またはインビボ遺伝子療法の標的とする組織には、たとえば骨髄、貧血発症前の造血幹細胞、および発達異常に関係している胎児組織が含まれる。遺伝子療法は、突然変異FANCD2対立遺伝子を有する細胞に野生型FAND2−L機能を提供することができる。そのような機能の提供は、レシピエント細胞の腫瘍増殖を抑制する、またはファンコニ貧血の症状を改善するはずである。
野生型FANCD−2遺伝子または前記遺伝子の一部は、前記遺伝子が染色体外にとどまるようにベクターで細胞に導入することができる。そのような状況では、遺伝子は染色体外の位置からの細胞によって発現させることができる。遺伝子の一部分が突然変異FANCD−2対立遺伝子を有する細胞に導入されてその中で発現する場合、前記遺伝子の一部分は、細胞の非腫瘍増殖のために必要なFANCD−2タンパク質の一部をコードすることができる。あるいは、野生型FANCD−2遺伝子または前記遺伝子の一部は、それが細胞内に存在する内因性突然変異FANCD−2遺伝子と再結合するような方法で、前記突然変異細胞内に導入することができる。
ウイルスベクターは、遺伝子療法を達成するための1クラスのベクターである。ウイルス媒介性遺伝子導入は、リポソーム送達を使用する直接的インビボ遺伝子導入と組み合わせることができ、周囲の細胞分裂しない細胞内にではなく腫瘍細胞にウイルスベクターを差し向けることが可能になる。あるいは、ウイルスベクタープロデューサー細胞を腫瘍内へ注入することができる(Culverら,1992)。プロデューサー細胞の注入は、その後、ベクター粒子の持続的な供給源を提供するであろう。この技術は、手術不能の脳腫瘍を有するヒトにおける使用のために承認されている。
ベクターは、腫瘍部位へ局所的に、または(他の部位へ転移した可能性があるあらゆる腫瘍細胞に到達するために)全身性のいずれかで、患者に注入することができる。トランスフェクトされた遺伝子が標的腫瘍細胞各々のゲノム内に永久的に取り込まれなければ、治療は定期的に繰り返されなければならない。
組換えまたは染色体外での維持の両方のための遺伝子導入用ベクターは、当技術分野において知られており(たとえば、米国特許第5,252,479号、国際特許出願第93/07282号および米国特許第6,303,379号)、レトロウイルス、ヘルペスウイルス(米国特許第6,287,557号)もしくはアデノウイルス(米国特許第6,281,010号)等のウイルスベクターまたはFANCD2−Lを含有するプラスミドベクターが含まれる。
治療遺伝子配列、または遺伝子もしくは遺伝子の部分をコードするDNAを有するベクターは、腫瘍の部位で局所的に、または転移した腫瘍細胞に到達できるように全身性のいずれかで、患者に注入することができる。ターゲティングは、ベクターをそれ以上操作することなく達成でき、あるいは、ベクターは、腫瘍に対して結合特異性を有する分子に結合させることができ、ここで、そのような分子は受容体アゴニストもしくはアンタゴニストである可能性があり、そして、ペプチド、脂質(リポソームを含む)またはオリゴ多糖もしくは多糖を含む糖、ならびに合成ターゲティング分子をさらに含むことができる。DNAはポリリジンを介して結合リガンドに結合させることができる。トランスフェクトされた遺伝子が標的腫瘍細胞各々のゲノム内に永久的に取り込まれなければ、治療は定期的に繰り返されなければならない。
患者への導入前に細胞内にDNAを導入する方法は、当技術分野において記載されているように(米国特許第6,033,857号)、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈法およびウイルス形質導入法等の技術を使用して遂行でき、そしてその方法の選択は当業者の能力の範囲内にある。
野生型FANCD2遺伝子または突然変異FANCD2遺伝子を用いて形質転換された細胞は、欠陥のあるDNA修復の結果として生じる疾患の寛解およびそのような寛解を促進する薬物療法について研究するためのモデル系として使用できる。
上記で一般的に検討したように、FANCD2遺伝子、またはフラグメント(適用できれば)は、異常な細胞内のそのような遺伝子の発現産物の量を増加させるために、遺伝子療法において使用できる。そのような遺伝子療法は、FANCD2−Lポリペプチドのレベルが正常細胞と比較して欠如または減少している場合、そしてFANCD2−Lのレベルの増強が欠陥のあるDNA修復から発生する欠陥の蓄積を遅延化させ、したがって癌状態の開始を延期できる場合には、前癌細胞において使用するために特に適切である。このような遺伝子療法はまた、突然変異遺伝子が「正常」レベルで発現しているが、FANCD2−Lアイソフォームのレベルが低下している細胞においてさえ、FANCD2遺伝子の発現レベルを増加させるために有用なことがある。正常DNA修復におけるFANCD2−Lの極めて重要な役割は、FANCD2−Lのレベルにおける減少を誘発する欠陥を補正する治療薬を開発するための機会を提供することにある。新規治療薬を開発するための1つのアプローチは、合理的な薬物デザインを通してのアプローチである。合理的な薬物デザインは、生物学的に活性な対象となるポリペプチドまたはそれと相互作用する低分子(例、アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤または増強剤)の構造的類似体を、前記ポリペプチドのより活性または安定性の形態を作成するために、またはインビボでのポリペプチドの機能を増強または妨害する低分子を設計するために、提供することができる。合理的な薬物デザインは、FANCD2−L活性もしくは安定性を改善した、またはFANCD2−L活性の増強剤、阻害剤、アゴニスト、またはアンタゴニストとして機能する、低分子または修飾ポリペプチドを提供することができる。クローン化FANCD2配列の入手可能性によって、X線結晶学等の分析試験を実施するために十分な量のFANCD2−Lポリペプチドを利用できるようにすることができる。さらに、ここに提供したFANCD2−Lタンパク質配列に関する知識により、X線結晶学の代わりに、またはそれに加えて、コンピュータ支援モデリング法を使用する方法が導かれる。
FANCD2−L活性を有するペプチドまたはその他の分子は、治療調製物においてタンパク質が不足している細胞に供給することができる。FANCD2−Lタンパク質の配列は、数種の生物(ヒト、ハエおよび植物)について開示されている(配列番号1〜3)。FANCD2は、例えば追加の翻訳後修飾を用いて既知の発現ベクターを使用して、細菌においてcDNA配列を発現させることにより産生できる。あるいは、FANCD2−LポリペプチドはFANCD2−L産生哺乳類細胞から抽出できる。さらに、合成化学の技術を使用してFANCD2−Lタンパク質を合成することができる。FANCD2−L活性を備える他の分子(例えば、ペプチド、薬物または有機化合物)を治療薬として使用することもできる。ペプチド療法には、実質的に類似する機能を有する修飾ポリペプチドもまた使用される。
同様に、変異体FANCD2対立遺伝子を有する、または不十分なレベルのFANCD2−Lを産生する、細胞および動物は、治療薬としての可能性を有する物質について研究および試験するためのモデル系として使用できる。体細胞系または生殖細胞系のいずれであってもよい細胞は、FANCD2−Lのレベルが低下している個人から単離できる。あるいは、上記に記載したように、FANCD2−Lのレベルが減少している細胞系を遺伝子工学的に作成することができる。試験物質が細胞に適用された後、DNA修復が損なわれている、細胞の形質転換表現型が決定される。
新規の候補治療分子の有効性は、有効性および毒性の欠如について実験動物において試験できる。標準的な技術を使用すると、全動物の突然変異誘発後に、または生殖細胞系細胞もしくは接合体の遺伝子操作後に、トランスジェニック動物を形成するために動物を選択できる。そのような処理には、通常は第2動物種からの突然変異FANCD2対立遺伝子の挿入、ならびに破壊した相同遺伝子の挿入が含まれる。あるいは、動物の内因性FANCD2遺伝子は、従来型技術を使用して、挿入もしくは欠失突然変異またはその他の遺伝的変化によって破壊することができる(Capecchi,Science,(1989)、vol.244、p1288〜1292)(Valancius and Smithies,1991)。試験物質を動物に投与した後、腫瘍の増殖を評価しなければならない。試験物質が、欠陥のあるDNA修復から発生した病理を防止または抑制した場合は、前記試験物質はここで同定した疾患を治療するための候補治療薬である。
本発明は、患者が癌を有するかどうか、または患者において癌のリスクが増加しているかどうかを決定するための、ファンコニ貧血/BRCAに基づく診断アッセイを提供する。本発明はまた、ファンコニ貧血/BRCA経路の阻害剤である新規癌治療薬を発見するためのスクリーニング方法を特徴とする。最後に、本発明は、1以上の化学療法化合物に対して耐性となっている腫瘍細胞の化学的感作方法、ならびに化学療法薬の有効性を決定するためのアッセイを提供する。
本発明の実施には、他に特に指示しない限り、分子生物学、細胞生物学、微生物学の従来型技術および当技術分野の範囲内にある組換えDNA技術が使用されるであろう。そのような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,1989,「分子クローニング:実験マニュアル、第2版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition)」;「オリゴヌクレオチドの合成(Oligonucleotide Synthesis)」(M.J.Gait編集,1984);「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」(B.D.Harnes & S.J.Higgins編集,1984);「分子クローニングの実践ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」(B.Perbal,1984);(Harlow,E. and Lane,D.)「抗体の使用:実験マニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)(1999),Cold Spring Harbor Laboratory Press;および「酵素学における方法(Methods in Enzymology)(Academic Press,Inc.)シリーズ;「分子生物学におけるショートプロトコール(Short Protocols In Molecular Biology)(Ausubelら編集,1995)を参照されたい。上記および下記のどちらにおいても、本明細書で言及したすべての特許、特許出願、および出版物は、参照されることによりそれらの全体が組み込まれる。
生検組織
本発明は、脳、心臓、肺、リンパ節、眼、関節、皮膚およびこれらの器官と関連する腫瘍を含むがそれらに限定されない、患者の生検組織由来の細胞抽出物の調製を提供する。「生検組織(tissue biopsy)」にはまた、血液、血漿、痰、尿、脳脊髄液、洗浄液および白血球泳動サンプルを含むがそれらに限定されない、生物学的液体の収集物も含まれる。好ましい実施形態では、本発明による「生検組織」は、乳癌、卵巣癌、または前立腺癌から採取される。「生検組織」は、針吸引および皮膚のパンチ生検を含む当技術分野においてよく知られている技術を使用して入手される。
シスプラチン
シスプラチンは、転移性の精巣癌もしくは卵巣癌、進行性の膀胱癌、頭頸部癌、子宮頸癌、肺癌またはその他の腫瘍等の癌を治療するために広く使用されてきた。シスプラチンは、臨床用途において使用される有効量である15〜20mg/mで、単独でまたは他の薬剤と併用して、3週間毎に5日間ずつ合計3コースにわたり使用できる。典型的な用量は、0.50mg/m、1.0mg/m、1.50mg/m、1.75mg/m、2.0mg/m、3.0mg/m、4.0mg/m、5.0mg/m、10mg/mであってよい。当然ながら、これらの用量はすべて例であり、これらのポイント間のあらゆる用量は本発明で使用できると予想されている。シスプラチンは、経口吸収されないため、静脈内、皮下、腫瘍内、または腹腔内への注射を介して送達しなければならない。抗癌剤の適切な取扱いおよび処分の手順を考慮に入れなければならない。この問題に関するいくつかのガイドラインは公表されており、当技術分野においてよく知られている。
例えば、PLATINOL−AQ,(シスプラチン注射)NDC 0015−3220−22(Bristol Myers Squibb社)は、保存料を含まない無菌の多用量バイアルとして供給されている。それぞれの多用量バイアルは50mgのシスプラチンNDC 0015−3221−22を含有しており、15〜25℃で遮光して保管しなければならない。初回使用後にアンバーバイアル内に残留しているシスプラチンは、遮光下では28日間、室内蛍光灯下では7日間安定性である。
PLATINOL−AQ,(シスプラチン注射)NDC 0015−3220−22に関する処方情報は、Bristol Myers Squibb社から入手できる。血漿中シスプラチン濃度は、50または100mg/mの用量でのボーラス投与後には、約20〜30分間の半減期で単一指数関数的に減少する。100mg/mの2時間または7時間注射の後にも、単一指数関数的減少および約0.5時間の血漿中半減期が見られる。後者の後、シスプラチンの全身クリアランスおよび定常状態での分布量は、約15〜16L/h/mおよび11〜12L/mである。
シスプラチンの用量および適用
癌治療のためのシスプラチンの用量および適用は、当技術分野においてよく知られている。PLATINOL−AQ(Bristol Myers Squibb社)の処方情報は、用量および適用について次のガイドラインを推奨している:「調製または投与には、PLATINOL−AQと接触する可能性があるアルミニウムパーツを含有する注射針または静注セットを使用しないこと。アルミニウムはPLATINOL−AQと反応して、沈殿物生成および有効性の消失を引き起こす」。
転移性精巣癌:他の承認された化学療法薬と併用して精巣癌を治療するためのPLATINOL−AQの常用量は、1サイクルにつき5日間にわたり1日20mg/m(I.V.)である。
転移性卵巣癌:CYTOXAN(シクロホスファミド)と併用して転移性卵巣癌を治療するためのPLATINOL−AQの常用量は、4週間毎に1回(第1日)、1サイクルにつき75〜100mg/m(I.V.)である。PLATINOL−AQと併用する場合のCYTOXANの用量は、4週間毎に1回(第1日)、600mg/m(I.V.)である。CYTOXANの投与方法については、CYTOXANの添付文書を参照されたい。併用療法では、PLATINOL−AQおよびCYTOXANは連続投与すること。単剤療法では、PLATINOL−AQは4週間毎に1回、1サイクルにつき100mg/m(I.V.)の用量で投与しなければならない。
進行性膀胱癌:PLATINOL−AQ(シスプラチン注射)は、照射療法への事前の曝露および/または事前の化学療法の程度に依存して、3〜4週間毎に1回、1サイクルにつき50〜70mg/m(I.V.)の用量で単剤として投与すべきである。多量に前治療を受けていた患者については、4週間毎に1サイクルにつき50mg/mの初期用量を繰り返すことが推奨されている。PLATINOL−AQ投与の8〜12時間前に1〜2リットルの液体を輸注することによる前処置である水分負荷(hydration)が推奨される。その後、37.5gのマンニトールを含有する1/2もしくは1/3生理食塩水中の2リットルの5%デキストロース中に薬剤を希釈し、6〜8時間をかけて注入する。希釈液を6時間以内に使用しない場合は、溶液を遮光すること。5%ちょうどのデキストロース注射液中にPLATINOL−AQを希釈しないこと。その後24時間中は、適正な水分負荷および尿量を維持しなければならない。血清クレアチニンが1.5mg/100mL未満になるまで、および/またはBUNが25mg/100mL未満になるまでは、PLATINOL−AQの反復コースを実施してはならない。反復コースは、循環血液要素が容認できるレベルになるまでは実施してはならない(血小板>100,000/mm、WBC>4,000/mm)。聴力分析結果が聴力が正常限界内にあることを表示するまでは、引き続いてのPLATINOL−AQの投与を実施してはならない。他の潜在的毒性化合物を用いる場合と同様に、水溶液の取扱いにおいては注意を払わなければならない。シスプラチンへの偶発的曝露に関連する皮膚反応が発生することがある。手袋の使用が推奨される。この水溶液は静脈内投与でのみ使用すべきで、6〜8時間をかけたIV注射で投与しなければならない。
化学感作剤の用量および用法
癌化学感作の方法は、米国特許第5,776,925号で報告されており、その全体が本明細書に組み込まれる。本発明による癌治療は、それ自体は必ずしも細胞毒性ではないが抗癌療法を強化できるように宿主または腫瘍を修飾する化合物と併用する、1以上の抗腫瘍剤の使用を構想している。そのような薬剤は化学感作剤と呼ばれている。
化学感作剤を用いた治療は、本発明によると、抗腫瘍剤および対応する化学感作剤の存在下において、抗腫瘍剤存在下ではあるが対応する化学感作剤が存在しない場合における治療の後の腫瘍サイズに比較して、腫瘍サイズが10%、好ましくは25%、好ましくは50%、より好ましくは75%、最も好ましくは100%低下した場合には、癌患者において治療的に有効である。
本発明は、本明細書に開示したように、治療有効量の化学感作剤を医薬上許容される担体または賦形剤と組み合わせて含む、医薬組成物を提供する。本発明による化学感作剤は、局所的に、または静脈内、皮下、筋肉内、非経口的、腹腔内もしくは経口的のいずれかの全身性の方法で患者へ投与することができる。好ましくは、投与は、1以上の抗腫瘍剤の投与と共にまたはその投与前に全身性で行われる。好ましい実施形態では、抗腫瘍剤は、当技術分野においてよく知られており、そして本明細書に記載したようなプロトコールによって投与されるシスプラチンである。
経口投与のためには、本発明において有用な化学感作剤は一般に、錠剤もしくはカプセル剤の形態で、粉剤もしくは顆粒として、または水溶液もしくは懸濁液として、提供できる。経口投与のための錠剤には、不活性の希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、甘味剤、矯味剤、着色剤および保存剤等の医薬上許容される賦形剤と混合された活性成分を含むことができる。適切な不活性希釈剤には、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、および乳糖が含まれ、適切な崩壊剤はコーンスターチおよびアルギン酸である。結合剤にはでんぷんおよびゼラチンが含まれ、潤沢剤は、存在する場合には、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。錠剤は、所望であれば、消化管内での吸収を遅延させるために、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリン等の物質でコーティングされてよい。
経口投与するためのカプセル剤には、活性成分が固形希釈剤と混合されている硬質ゼラチンカプセル、および活性成分が水またはピーナッツ油、液状パラフィンもしくはオリーブ油等の油脂と混合されている軟質ゼラチンカプセルが含まれる。
皮下および静脈内使用のためには、本発明の化学感作剤は、適切なpHおよび等張性に緩衝剤で処理された無菌水溶液もしくは懸濁液に溶解させて提供できる。適切な水性賦形剤には、リンゲル液および等張性塩化ナトリウムが含まれる。本発明による水性懸濁液には、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドンおよびトラガカントゴム等の懸濁化剤、ならびにレシチン等の湿潤剤が含まれうる。水性懸濁液のための適切な保存剤には、p−ヒドロキシ安息香酸エチルおよびp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルが含まれる。
本発明による有用な化学感作剤はまた、リポソーム製剤として提示することもできる。
一般に、適切な用量は、1日当たりレシピエントの体重1kg当たり0.01〜100mgの範囲内、好ましくは1日当たり体重1kg当たり0.2〜10mgの範囲内である。所望の用量は、好ましくは1日1回提供されるが、1日を通して適切な間隔をあけて2、3、4、5、6回以上の分割用量として投与することもできる。これらの分割用量は、例えば単位用量の剤形につき10〜1,500mg、好ましくは20〜1,000mg、および最も好ましくは50〜700mgの活性成分を含有する、単位用量剤形で投与できる。本発明による有用な化学感作剤の用量は、治療または予防される状態および使用される化学感作剤の性質に依存して変動するであろう。本発明に含まれる個別の化合物についての有効用量およびインビボ半減期の推定値は、本明細書に記載したマウスモデル等の動物モデルを使用したインビボ試験またはより大型の哺乳類への当該方法の適合に基づいて見積もられうる。
それらの個々の投与に加えて、本発明による有用な化合物は、本明細書に記載したように、他の知られている化学感作剤および抗腫瘍剤と併用して投与することができる。いずれにせよ、薬剤を投与する医師は、当技術分野において知られている癌活性の標準尺度を使用して観察された結果に基づいて、薬物投与の用量および時期を調整できる。
抗腫瘍剤
抗腫瘍剤の非限定的例には、例えば抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、挿入剤、シグナル伝達経路を妨害できる薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、放射線療法、および他の腫瘍関連抗原に対する抗体(裸の抗体、免疫毒素および放射性コンジュゲート(radioconjugates)を含む)が含まれる。特定のクラスの抗癌剤の例を以下の通り詳細に提供する:例えばパクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、タキソテレ等の抗チューブリン剤/抗微小管剤;例えばトポテカン、カンプトテシン、ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、テニポシド、アムサクリン、エピルビシン、メルバロン、塩酸ピロキサントロン等のトポイソメラーゼI阻害剤;例えば5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、シタラビン/Ara−C、トリメトレキセート、ゲムシタビン、アシビシン、アラノシン、ピラゾフリン、N−ホスホルアセチル−L−アスパラギン酸(すなわちPALA)、ペントスタチン、5−アザシチジン、5−アザ2’−デオキシシチジン、ara−A、クラドリビン、5−フルオロウリジン、FUDR、チアゾフリン、N−[5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル]−L−グルタミン酸等の代謝拮抗剤;例えばシスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、BCNU(すなわちカルムスチン)、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、クロラムブシル、プリカマイシン、ダカルバジン、リン酸イホスファミド、シクロホスファミド、ナイトロジェン・マスタード、ウラシル・マスタード、ピポブロマン、4−イポメノール等のアルキル化剤;例えばジヒドロレンペロン、スピロムスチンおよびデシペプチド等の他の作用機序を介して作用する薬剤;例えばインターフェロン等の抗腫瘍反応を強化する生物学的反応修飾剤;アクチノマイシンD等のアポトーシス剤;および、例えばタモキシフェン等の抗エストロゲン剤、または4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド等の抗アンドロゲン剤のような抗ホルモン剤。
抗腫瘍剤は、本発明によると、抗腫瘍剤による治療開始前の腫瘍サイズに比較して、腫瘍サイズが10%、好ましくは25%、好ましくは50%、より好ましくは75%、最も好ましくは100%低下した場合には、癌患者において治療に役立つ。
また別の実施形態では、抗腫瘍剤は、本発明によると、癌患者が癌から解放されたままであれば、すなわち癌治療の開始後、好ましくは6ヵ月間、好ましくは1年間、より好ましくは2年間、および最も好ましくは5年間以上検出可能な腫瘍がなければ、治療的に有効である。
本発明によるファンコニ貧血/BRCA経路の阻害剤
ファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的な阻害剤には、本明細書において定義したように、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子またはタンパク質の発現または機能を崩壊させる生体分子が含まれるがそれらに限定されない。ファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的な阻害剤には、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子アンチセンス核酸(アンチセンス・ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子RNA、オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、RNAi)、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子の優性ネガティブ突然変異体、ならびにファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子の転写、mRNAプロセシング、mRNA輸送、タンパク質翻訳、タンパク質修飾、タンパク質輸送、核輸送およびファンコニ貧血/BRCAタンパク質複合体形成の阻害剤が含まれるが、それらに限定されない。
最も好ましい実施形態では、本発明はFANC−D2ユビキチンE3リガーゼの低分子阻害剤を提供する。
本発明によるマイクロアレイ
癌治療薬または化学感作剤を同定するために、本発明はマイクロアレイの使用を提供する。
ある実施形態では、本発明のマイクロアレイは、化学感作剤を同定するために使用される。
別の実施形態では、本発明のマイクロアレイは、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子内の癌関連性欠陥の存在について生検組織サンプルを試験するために使用される。
別の実施形態では、本発明のマイクロアレイは、ファンコニ貧血/BRCA遺伝子経路の阻害剤についてスクリーニングするために使用される。
別の実施形態では、本発明のマイクロアレイは、FANC−D2ユビキチンE3リガーゼの阻害剤についてスクリーニングするために使用される。
別の実施形態では、本発明は、本明細書において定義したように、ファンコニ貧血/BRCA遺伝子経路内の癌関連性欠陥の存在についてスクリーニングする、癌を有するかまたは癌のリスクがある可能性がある患者に由来する生検組織サンプルを含む、組織マイクロアレイを提供する。好ましい実施形態では、本発明の組織マイクロアレイは、モノユビキチン化FANCD2−Lの存在についてスクリーニングするために使用される。
また別の実施形態では、本発明は、BRCA−1およびBRCA−2/FANCD−1癌関連性欠陥を有する患者由来の生検組織サンプルを含む、組織マイクロアレイを提供する。
また別の実施形態では、本発明は、BRCA−1およびBRCA−2/FANCD−1癌関連性欠陥を有していない患者由来の生検組織サンプルを含む、組織マイクロアレイを提供する。
「配列決定アレイ(sequencing array)」は、臨床サンプル内の突然変異を探索するために、当該遺伝子の全オープンリーディングフレームの領域を含有する。「転写プロファイリングアレイ(transcriptional profiling array)」は、臨床サンプル内のmRNAの発現を測定するために、当該遺伝子の3’末端からの配列を有することができる。
転写プロファイリングアレイを使用して、経路における遺伝子各々に対応するmRNAレベルを調べることができる。例えば、例えばFANCFに対応する転写産物の1つが低下する乳癌または卵巣癌は、FANCF発現の低下に起因するファンコニ貧血/BRCA経路における欠陥があることを示す。
マイクロアレイの構築
マイクロアレイの基質
本発明のある実施形態では、マイクロアレイまたはアレイは、様々な分子的手法を通してマイクロアレイの取扱いを容易にする基質を含んでいる。本明細書で使用するように、「分子的手法(molecular procedure)」とは、マイクロアレイを抗体、核酸プローブ、酵素、色原体、標識等の検査試薬または分子プローブと接触させることを意味する。ある実施形態では、分子的手法は、複数のハイブリダイゼーション、インキュベーション、固定ステップ、温度の変化(4℃から100℃まで)、溶媒への曝露、および/または洗浄ステップを含む。
本発明のまた別の実施形態では、マイクロアレイは、生検組織サンプルをファンコニ貧血/BRCA経路の様々な潜在的阻害剤、癌治療薬または化学感作剤に曝露させることを容易にするための基質を含む。
本発明のある実施形態では、マイクロアレイの基質は溶媒耐性である。本発明の別の実施形態では、基質は透明である。基質は、粒子、ストランド、沈降物、ゲル、シート、チューブ、球、ビーズ、容器、キャピラリー、パッド、スライス、フィルム、プレート、スライド、チップ等として存在する、生物学的、非生物学的、有機、無機、またはこれらのいずれかの組み合わせであってよい。基質は、好ましくは平坦または平面状であるが、別の様々な表面構造を取ってもよい。基質は、重合化ラングミュア・ブロジェット(Langmuir Blodgett)膜、機能化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、Si0、SIN4、変性シリコン、またはその他の非多孔性基質;ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリアクリルエステル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル等のプラスチック;ならびに、充填剤(ガラス充填剤等)、増量剤、安定剤、および/または酸化防止剤を含有するプラスチック組成物;セルロイド、セロファンもしくはウレアホルムアルデヒド樹脂、または酢酸セルロース、エチルセルロース等の他の合成樹脂、または他の透明ポリマーであってよい。他の基質材料は、本開示を検討すれば当業者には容易に明白になるであろう。
ある実施形態では、マイクロアレイ基質は剛性である;しかしながら、別の実施形態では、プロファイルアレイ基質は半剛性または柔軟性である(例えば、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル等)。また別の実施形態では、アレイ基質は光学的に不透明であり、実質的には非蛍光性である。ナイロン(商標)またはニトロセルロース膜もまたアレイ基質として使用でき、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン、セルロースとニトロセルロースの混合エステル等が含まれる。
基質のサイズおよび形状は、一般に様々であってよい。基質は、円板形、四角形、球形、円形等の便宜的な形状を有していてよい。しかしながら、好ましくは、基質は顕微鏡のステージ上に完全に適合する。1つの実施形態では、プロファイルアレイ基質は平面状である。本発明のある実施形態では、マイクロアレイ基質は1インチ×3インチ、77×50mm、または22×50mmである。本発明の別の実施形態では、マイクロアレイ基質は少なくとも10〜200mm×10〜200mmである。
基質の追加的な特徴
本発明のある実施形態では、基質は、識別因子(例、色鉛筆またはクレヨンのマーク、エッチングされたマーク、標識、バーコード、無線信号または電気信号を送信するためのマイクロチップ等)を配置するための場所を含む。1つの実施形態では、その場所はすりガラスを含む。ある実施形態では、マイクロチップは、同一性およびアレイ上のサブ位置のアドレスに関連する保存された情報、および/または、例えば予後、診断、病歴、家族の病歴、薬物療法、死亡年齢および死因等の組織が採取された個人に関する情報を含む保存された情報を含んでいるか、またはそれらにアクセスすることができるプロセッサーと連絡している。
サブ位置
マイクロアレイは複数のサブ位置を含んでいる。各サブ位置は、それらと安定性に結び付いている(例えば、少なくとも1つの分子的手法に曝露させた後に別のサブ位置に比較してその位置を保持することができる)組織を含んでいる。ある実施形態では、組織は、細胞レベル下の特徴(例えば、核、無傷細胞膜、オルガネラ、および/または他の細胞学的特徴)を識別するために少なくとも顕微鏡下で視認できる、すなわち組織が溶解していない、実質的に無傷の形態学的特徴を有する組織である。
本発明のある実施形態では、マイクロアレイは2〜1,000個のサブ位置を含む。また別の実施形態では、マイクロアレイは2、5、10、20、25、30、45、50、55、60、65、75、100、150、200、250、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1,000個以上のサブ位置を含む。本発明のある実施形態では、各サブ位置は2〜10mm離れている。本発明のまた別の実施形態では、各サブ位置は、20〜600mmである少なくとも1つの寸法を含んでいる。サブ位置は、あらゆるパターンで構成されてよく、そして各サブ位置は一般にあらゆる形状(四角形、円形、楕円形、長円形、円板形、長方形、三角形等)であってよい。
好ましい実施形態では、サブ位置は、組織タイプに関する各サブ位置の同定がアレイ探知装置の使用によって確実にできるように、規則的な繰り返しパターン(例、行および列)で配置されている。ある実施形態では、アレイ探知装置は、各形状がアレイ内の各サブ位置の形状に対応する複数の形状を有しており、アレイ上の各サブ位置と同一の関係を維持しているテンプレートである。アレイ探知装置は、使用者が固有の座標によってアレイ上のサブ位置を容易に同定できる座標によってマークされる。本発明のある実施形態では、アレイ探知装置は透明なシート(例、プラスチック、アセテート等)である。本発明の別の実施形態では、アレイ探知装置は、それぞれの穴が形状およびアレイ上の各サブ位置への位置に対応する、複数の穴を含むシートである。
ある態様では、本発明はアレイを提供するが、ここで、このアレイを含む化合物は、例えばロボット型GMS417アレイヤー(Affymetrix社、カリフォルニア州)を使用してスポッティングされるように、固体支持体上にスポッティングされる。あるいは、スポッティングは、コンタクトプリンティング技術または当技術分野において知られている他の方法を使用して実施できる。
本発明によるマイクロアレイのタイプ
低分子アレイ
本発明の低分子マイクロアレイまたはアレイでは、低分子は固体支持体の表面と安定的に結び付いており、このとき支持体は柔軟性または剛性の固体支持体であってよい。「安定的に結び付いている(stably associated)」とは、各低分子が結合および洗浄条件下で固体支持体に比して固有の位置を維持することを意味する。そこで、サンプルは支持体表面と非共有的または共有的に安定的に結び付いている。非共有的結合の例には、非特異的吸着、静電的相互作用(例、イオン対相互作用)に基づく結合、疎水性相互作用、水素結合相互作用、支持体表面に共有的に付着した特異的結合対メンバーを介しての特異的結合などが含まれる。共有結合の例には、低分子と剛性支持体の表面上に存在する官能基(例、−−OH)との間で形成された共有結合が含まれ、このとき前記官能基は天然型であってよい。基質の表面には、好ましくはリンカー分子の層を備えることができるが、リンカー分子は本発明の要求される要素でないことが理解されるであろう。リンカー分子は、好ましくは、本発明のおよび基質上の低分子が低分子に結合および前記基質に曝露された分子と自由に相互作用するために十分な長さである。
各組成物中に存在する低分子の量は、前記アレイが使用されるアッセイ中に標的低分子の適正な結合および検出を提供するのに十分であろう。一般に、アレイの固体支持体と安定的に結び付いている各低分子の量は、少なくとも約0.1pg、好ましくは少なくとも約0.5pg、およびより好ましくは少なくとも約1pgであるが、このときこの量は1,000pg以上と多くてもよいが、通常は約100pgを超えない。好ましい実施形態では、マイクロアレイは1、2、5、7、10、15または20低分子/cm以上を超える密度を有する。
組織マイクロアレイ
本発明の好ましい実施形態では、マイクロアレイもしくはアレイは、ヒト組織サンプルを含む。本発明によるマイクロアレイは、各サブ位置が少なくとも1つの既知の生物学的特徴(例、組織タイプ等)を有する組織サンプルを含む、複数のサブ位置を含む。本発明の好ましい実施形態では、複数のサブ位置は様々な腫瘍病期にある癌性組織を含む。
本発明のある実施形態では、個々のサブ位置にある癌性細胞は基礎をなす癌または癌を有する素因を有する個人由来である。
本発明のある実施形態では、個々のサブ位置にある癌性細胞は、BRCA−1および/またはFANCD1/BRCA−2遺伝子内の癌関連性欠陥を有する個人由来である。
ある実施形態では、マイクロアレイは、単一患者由来の癌性細胞を含む少なくとも1つのサブ位置を含み、そして同一患者由来の他の組織および器官からの細胞を含む複数のサブ位置を含む。別の実施形態では、全員が同一の病理が原因で死亡した複数の個人由来、または同一薬剤を用いて治療されている個人(疾患から回復した、および/または回復していない個人を含む)由来の細胞を含むマイクロアレイが提供される。
本発明の別の実施形態では、マイクロアレイは癌に加えて、形質を共有する個人由来の細胞を含む複数のサブ位置を含む。本発明のある実施形態では、共有する形質は性別、年齢、病理、病理への素因、感染性疾患(例、HIV)への曝露、血縁関係、同一疾患に起因する死亡、同一薬剤による治療、化学療法または照射療法への曝露、ホルモン療法への曝露、手術への曝露、同一環境条件への曝露、同一の遺伝的変化または変化群、同一遺伝子または同一遺伝子群の発現である。
本発明のまた別の実施形態では、マイクロアレイの各サブ位置は癌の家族歴を共有する家系の様々なメンバー(例えば兄弟姉妹、双生児、従兄弟(従姉妹)、母親、父親、祖母、祖父、伯父(叔父)、伯母(叔母)等からなる群から選択される)由来の細胞を含む。本発明のまた別の実施形態では、「家系マイクロアレイ(pedigree microarray)」は環境が適合した対照(例、夫、妻、養子、継父・継母等)を含む。本発明のさらにまた別の実施形態では、マイクロアレイは、例えば過体重の喫煙者、末梢血管疾患のある糖尿病患者、疾患(例、鎌状赤血球貧血、テイ・サックス病、重症複合型免疫不全症)への特定素因を有する個人等の、対象となる特定患者の人口統計上の集団を表す複数の形質の反映であるが、このとき各群に含まれる個人は癌を有する。
本発明の好ましい実施形態では、マイクロアレイはヒト生検組織を含む。
本明細書に開示したFANCD2−/−。1つの実施形態では、マイクロアレイはそのようなマウス由来の複数の組織を含んでいる。本発明の別の実施形態では、マイクロアレイは、本明細書に開示したFANCD2−/−であり、そして癌治療(例、薬物、抗体、タンパク質療法、遺伝子療法、アンチセンス療法等)で治療されている、マウス由来の組織を含む。
化学感作剤および新規癌治療薬のスクリーニング
本発明のマイクロアレイは、化学感作剤および癌治療薬をスクリーニングするために使用される。使用されるスクリーニング方法は、実施例15および16に開示した。
化学感作剤への耐性の測定
シスプラチンにより治療される腫瘍細胞内のFANCF遺伝子のメチル化は、FANCF遺伝子発現の抑制を生じさせ、そしてこれにより腫瘍細胞のDNA損傷修復機構の崩壊を引き起こし、シスプラチンへの耐性を生じさせる。このため本発明は、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子のいずれかのメチル化状態の決定方法を提供する(実施例19を参照)。好ましい実施形態では、本発明は、1以上の化学療法用化合物への腫瘍の耐性の程度の測定値としてファンコニ貧血/BRCA遺伝子のメチル化状態を決定するために、1以上の化学療法用化合物を用いて治療されている患者由来の生検組織サンプルのマイクロアレイを提供する。遺伝子のDNAメチル化を測定する方法は、当技術分野においてよく知られている(米国特許第6,200,756号;第6,331,393号;第6,251,594を参照)。
本発明によるキット
本発明は、化学感作剤および癌治療薬についてスクリーニングするために有用なキット、ならびにファンコニ貧血/BRCA遺伝子経路における癌関連性欠陥に関係する、癌または癌に対する素因について診断するために有用なキットを提供する。本発明による有用なキットには、ファンコニ貧血/BRCA経路の単離FANCD2ポリヌクレオチドプライマー対、プローブおよび阻害剤ならびにFANCD2−特異的抗体が含まれる。さらに、このキットは対照の非メチル化FANCD2遺伝子を含有することができる。また別の実施形態では、本発明によるキットは卵巣癌の腫瘍細胞系を含有することができる。本発明によるすべてのキットは、上記の品目または品目の組み合わせおよびそのためのパッケージング材料を含む。キットにはまた、取扱説明書が含まれる。
本発明は以下の実施例を参照しながら説明するが、これらの実施例は例示するために提供するものであり、決して本発明を限定することを意図していない。当技術分野において知られている標準的な技術または以下に詳細に記載する技術を利用した。
実施例
実施例1:実施例2〜8で使用した実験プロトコール
細胞系および培養条件。エプスタイン・バーウイルス(EBV)形質転換リンパ芽球は15%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)を添加したRPMI培地中で維持し、5%COを含有する37℃の加湿大気中で増殖させた。対照リンパ芽球系(PD7)およびFAリンパ芽球系(FA−A(HSC72)、FA−C(PD−4)、FA−D(PD−20)、FA−F(EUFA121)、およびFA−G(EUFA316))については以前に記載されている(de Winterら,Nat.Genet.,(1998)、vol.20、p281〜283)(Whitneyら,Nat.Genet.,(1995)vol.11、341〜343)(Yamashitaら,P.N.A.S.,(1994)vol.91、6712〜6716)(de Winterら,Am.J.Hum.Genet.,(2001)、vol.57、1306〜1308)。PD81は、FA−A患者由来のリンパ芽球細胞系である。SV40形質転換FA線維芽細胞のGM6914、PD426、FAG326SVおよびPD20FならびにHeLa細胞は、15%FCSを添加したDMEM中で増殖させた。FA細胞(リンパ芽球および線維芽細胞の両方)は、対応するFANC cDNAを含有するpMMPレトロウイルスベクターを用いて機能的に相補化し、そして機能的相補性はMMCアッセイによって確認した(Garcia−Higueraら,Mol.Cell.Biol.,(1999)vol.19、p4866〜4873)(Kuangら,Blood,(2000),vol.96、p1625〜1632)。
細胞周期の同調化。HeLa細胞、GM6914細胞、およびpMMP−FANCAレトロウイルスを用いて補正したGM6914細胞は、小さな変更を加えて、以前に記載された二重チミジンブロック法によって同調化した(Kupferら,Blood,(1997)、vol.90、p1047〜1054)。簡単に言えば、細胞は、G1/S境界期で細胞周期を停止させるために、2mMチミジンを用いて18時間、チミジン無含有培地を用いて10時間、および追加の2mMチミジンを用いて18時間処理した。細胞はPBSを用いて2回洗浄し、次にDMEM+15%FCS中に遊離させ、種々の時間間隔で分析した。
あるいは、HeLa細胞は、後期G1期において同調化させるために0.5mMミモシン(Sigma)を用いて24時間処理し(Krude,1999)、PBSを用いて2回洗浄し、DMEM+15%FCS中に遊離させた。M期における同調化のためには、ノコダゾールブロック法を使用した(Ruffnerら,Mol.Cell.Biol.,(1999)、vol.19、p4843〜4854)。細胞は0.1μg/mLノコダゾール(Sigma)を用いて15時間処理し、そして非付着性細胞はPBSを用いて2回洗浄し、DMEM+15%FCS中で再プレーティングした。
細胞周期の分析。トリプシン処理細胞を0.5mLのPBS中に再懸濁させ、5mLの氷温エタノールを加えることにより固定した。次に細胞は1%ウシ血清アルブミン分画V(1%BSA/PBS)(Sigma)を含むPBSを用いて2回洗浄し、0.24mLの1%BSA/PBS中に再懸濁させた。38mMクエン酸ナトリウム(pH7.0)および30μLの10mg/mL DNaseフリーRNaseA(Sigma)中に溶解させた30μLの500μ/mLヨウ化プロピジウム(Sigma)を加えた後、サンプルを37℃で30分間インキュベートした。FACScan(Beckton Dickinson)によりDNA含量を測定し、データをCellQuestおよびModfit LTプログラム(Becton Dickinson)によって分析した。
抗FANCD2抗血清の生成。FANCD2に対するウサギポリクローナル抗血清は、抗原源としてGST−FANCD2(N末端)融合タンパク質を使用して生成した。5’フラグメントは、プライマー(配列番号95)DF4EcoRI(5’AGCCTCgaattcGTTTCCAAAAGAAGACTGTCA−3’)および(配列番号96)DR816Xh(5’−GGTATCctcgagTCAAGACGACAACTTATCCATCA−3’)を用いて、完全長FANCD2 cDNAからポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅させた。結果として生じた、FANCD2ポリペプチドのアミノ末端272アミノ酸をコードする841bpのPCR産物は、EcoRI/XhoIを用いて消化し、プラスミドpGEX4T−1(Pharmacia)のEcoRI/XhoI部位内にサブクローニングした。予想サイズが(54kD)のGST−FANCD2(N−末端)融合タンパク質を大腸菌(E.coli)株DH5γ中で発現させ、グルタチオン−S−セファロースで精製し、ニュージーランドホワイト・ウサギを免役するために使用した。FANCD2特異的免疫抗血清は、GSTタンパク質を装填したAminoLink Plusカラム(Pierce)を通過させ、そしてGST−FANCD2(N−末端)融合タンパク質を装填したAminoLink Plusカラムを通過させることによりアフィニティー精製した。
抗FANCD2 MoAbsの生成。2つの抗FANCD2モノクローナル抗体を以下の通りに生成した。Balb/cマウスはGST−FANCD2(N−末端)融合タンパク質を用いて免役したが、これはFANCD2に対するウサギポリクローナル抗血清(E35)を生成するために使用したものと同一の融合タンパク質であった。動物は融合前4日間にわたり免疫原を用いて追加免役し、脾細胞を採取し、骨髄腫細胞を用いたハイブリダイゼーションを実施した。ハイブリドーマ上清を収集し、初期スクリーンとして標準ELISAアッセイを使用し、二次スクリーンとしてFANCD2の免疫ブロット分析法を使用してアッセイした。その後の研究のために、2つの抗ヒトFANCD2モノクローナル抗体(MoAbs)(FI17およびFI14)を選択した。2つの陽性細胞系由来のハイブリドーマ上清は、遠心により清澄化した。上清はウェスタンブロット法のためのMoAbsとして使用した。MoAbsはIgGに対するアフィニティーカラムを使用して精製した。MoAbsは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.5mg/mLストックとして保管した。抗HA抗体(HA.11)はBabco製であった。
免疫ブロッティング。細胞は1×サンプルバッファー(50mMのTris−HC1(pH6.8)、86mMの2−メルカプトエタノール、2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))を用いて溶解させ、5分間沸騰させ、そして7.5%ポリアクリルアミドSDSゲル電気泳動にかけた。電気泳動後、タンパク質は、25mMのTrisベース、200mMグリシン、20%メタノールを充填したサブマージドトランスファー装置(BioRad)を使用してニトロセルロースへ移した。TBS−T(50mMのTris−HC1(pH8.0)、150mMのNaCl、0.1%のTween 20)中の5%脱脂粉乳を用いてブロックした後、TBS−T(アフィニティー精製抗FANCD2ポリクローナル抗体(E35)もしくは抗HA(HA.11)に対して1:1000の希釈率、抗FANCD2マウスモノクローナル抗体FI17に対して1:200の希釈率)中に希釈した一次抗体と一緒に膜をインキュベートし、しっかりと洗浄し、適切なホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体(Amersham)と一緒にインキュベートした。検出には化学ルミネセンスを使用した。
DNA損傷の生成。Gamma cell 40装置を使用してγ線照射を行った。UV曝露は、培養培地を静かに吸引した後にStratalinker(Stratagene)を使用して達成した。マイトマイシンC処理のために、細胞は、表示した時間にわたり持続的にこの薬剤に曝露させた。ヒドロキシウレア(Sigma)を最終濃度が1mMとなるまで24時間にわたり添加した。
モノユビキチン化FANCD2の検出。HeLa細胞(またはFA−G線維芽細胞、FAG326SV)は、FuGENE6(Roche)を用いて、製造業者のプロトコールにしたがってトランスフェクトした。HeLa細胞を15cm組織培養皿上でプレーティングし、培養皿1枚につき15μgのHA−タグ標識ユビキチン発現ベクター(pMT 123)(Treierら,Cell,(1994)、vol.78、p787〜798)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの12時間後、細胞は表示した濃度のMMC(0、10、40、160ng/mL)または表示した線量のIR(0、5、10、10、20Gy)を用いて処理した。MMCを用いた24時間のインキュベーション後、またはIR処理2時間後、全細胞抽出物は、プロテアーゼ阻害剤(1μg/mLのロイペプチンおよびペプスタチン、2μg/mLのアプロチニン、1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド)およびホスファターゼ阻害剤(1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム)を添加した溶解バッファー(50mMのTris−HCl(pH7.4)、150mMのNaCl、1%(v/v)TritonX−100)中で調製した。FANCD2(E35)に対するポリクローナル抗体を使用して、免疫沈降(IP)は、各IPが4mgのタンパク質を含有するように標準化したことを除き、本質的には以前に記載された(Kupferら,1997)通りに実施した。IP反応における陰性対照として、同一ウサギからの免疫前血清を使用した。免疫ブロッティングは、抗HA(HA.11)または抗FANCD2(FI17)モノクローナル抗体を使用して実施した。
ユビキチンアルデヒド処理。HeLa細胞は1mMのヒドロキシウレアを用いて24時間処理し、全細胞抽出物はプロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤を添加した溶解バッファー中で調製した。DMSO中6.7μLの25μMユビキチンアルデヒド(Boston Biochem)または6.7μLのDMSOを含む67μLの反応液中の200μgの細胞溶解物を、表示した期間にわたり30℃または37℃でインキュベートした。各サンプルに67μLの2×サンプルバッファーを添加し、これらのサンプルを5分間沸騰させ、7.5%SDS−PAGEによって分離し、FI17モノクローナル抗ヒトFANCD2抗体を使用してFANCD2に対して免疫ブロッティングした。
免疫蛍光顕微鏡検査。細胞は、PBS中の2%パラホルムアルデヒドを用いて20分間かけて固定し、続いてPBS中の0.3%のTriton−X−100を用いて透過化処理した(10分間)。PBSに溶解した10%のヤギ血清、0.1%のNP−40(ブロッキングバッファー)中でブロックした後、ブロッキングバッファー中の適切な希釈率で特異的抗体を添加し、室温で2〜4時間インキュベートした。FANCD2は、アフィニティー精製E35ポリクローナル抗体(1/100)を使用して検出した。BRCA1を検出するためには、市販のモノクローナル抗体(D−9、Santa Cruz)を2μg/mLで使用した。引き続いて細胞をPBS+0.1% NP−40中で3回洗浄し(各洗浄につき10〜15分間)、種特異的フルオレセインまたはテキサスレッド複合二次抗体(Jackson Immunoresearch)をブロッキングバッファー中に希釈し(抗マウス1/200、抗ウサギ1/1000)、添加した。室温に1時間おいた後、さらに10〜15分間の洗浄を3回実施し、Vectashield(Vector laboratories)にスライドを載せた。Nikon製顕微鏡で画像を記録し、Adobe Photoshopソフトウェアを使用して画像処理した。
減数分裂染色体の染色。16〜28日齢のオスのマウス由来の太糸期および複糸期精母細胞の表面塗抹標本は、(Petersら,1997)が記載した通りに調製した。マウスSCP3タンパク質に対するポリクローナルヤギ抗体を使用して、減数分裂調製物中の軸状構造およびシナプトネマ構造を視覚化した。マウスBRCA1に対するM118マウスモノクローナル抗体は、マウスをマウスBRCA1タンパク質により免役することによる標準的な技術によって生成した。FANCDを検出するために、アフィニティー精製E35ウサギポリクローナル抗体を1:200の希釈率で使用した。抗体インキュベーションおよび検出方法は、(Keeganら,Genes Dev.,(1996)、vol.10、p2423〜2437)によって記載された通りに、(Moensら,J.Cell.Biol.,(1987)、vol.105、p93〜103)のプロトコールの変法であった。検出のためには、ロバ−抗マウスIgG−FITC−複合、ロバ−抗ウサギIgG−TRITC−複合、およびロバ−抗ヤギIgG Cy5−複合二次抗体の組み合わせを使用した(Jackson ImmunoResearch Laboratories)。すべての調製物は、4’,6’ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI、Sigma)を用いて対比染色し、DABCO(Sigma)アンチフェード液中に置いた。調製物は、Nikon E1000顕微鏡(60X CFIプランアポクロマートおよび100X CRプランフルオール油浸対物レンズ)で検査した。各蛍光色素(FITC、TRITC、Cy5およびDAPI)画像は、冷却CCDカメラ(Princeton Instruments MicroMax)を制御するIPLabソフトウェア(Scanalytics)を介して800×1000ピクセル12−ビットのソース画像として個別に記録し、個別の12ビットのグレースケール画像をリサンプルし、24−ビット疑似カラー画像化し、Adobe Photoshopを使用して結合した。
実施例2:FA遺伝子は共通細胞経路において相互作用する
正常リンパ芽球は、短鎖型(FANCD2−S、155kD)および長鎖型(FANCD2−L、162kD)の、FANCD2タンパク質の2つのアイソフォームを発現する。図1には、全細胞抽出物をリンパ芽球系から調製し、抗FANCD2抗血清を用いて細胞タンパク質を免疫沈降させたときに何が起こるのかを示した図である。正常野生型細胞は、FANCD2タンパク質の2つのアイソフォームである低分子量アイソフォームFANCD2−S(155kDアイソフォーム)および高分子量アイソフォームFANCD2−L(162kDアイソフォーム)を発現する。FANCD2−Sは、クローン化FANCD2 cDNAの一次翻訳産物である。本発明者らは、次にFANCD2アイソフォームの発現について一連の大規模なFAリンパ芽球および線維芽細胞を評価した(表5)。対応するFA cDNAを用いたこれらのFA細胞系の補正は、高分子量アイソフォームFANCD2−Lの機能的相補化および修復を生じさせた。
以前に記載されたように、FA細胞はDNA架橋剤であるMMCに、そして一部の場合には電離放射線(IR)に感受性である。興味深いことに、複数の相補性群(A、C、G、およびF)由来のFA細胞は、FANCD2−Sアイソフォームしか発現しなかった(図1A、レーン3、7、9、11)。BおよびE相補性群由来のFA細胞もまたFANCD2−Sしか発現しない。対応するFANC cDNAを用いたこれらのFA細胞のMMCおよびIR感受性の機能的補正は、FAタンパク質複合体を回復させ(Garcia−Higueraら,1999)、そして高分子量アイソフォーム(FANCD2−L)を回復させた(図1A、レーン4、8、10、12)。これらを総合すると、これらの結果は、FANCA、FANCC、FANCF、およびFANCGを含有するFAタンパク質複合体がFANCD2の2つのアイソフォームの発現を直接的または間接的に調節することを証明している。このため、6つのクローン化FA遺伝子が共通経路で相互作用すると思われる。
実施例3:FAタンパク質複合体はFANCD2のモノユビキチン化のために必要である
FANCD2の高分子量アイソフォームは、FANCD2 mRNAの選択的スプライシングまたはFANCD2タンパク質の翻訳後修飾を含む、1以上の機序から生じさせることができた。ホスファターゼを用いた処理はFANCD2−LをFANCD2−Sへと転換させず、これはリン酸化だけではそれらの分子量において観察された差の原因とはならないことを証明している。
FANCD2の他の可能性のある翻訳後修飾を同定するために、本発明者らは最初に、FANCD2−SからFANCD2−Lへの転換を調節する細胞条件を探った(図1B、C)。FA細胞はMMCおよびIRに対して感受性であるので、これらの物質が正常細胞中でのFANCD2−SからFANCD2−Lへの転換を調節する可能性があると推論した。興味深いことに、MMC(図1B、レーン1〜6)またはIR(図1C、レーン1〜6)を用いて処理したHeLa細胞は、FANCD2−Lアイソフォームの発現において用量依存性増加を示した。
FANCD2−LがFANCD2−Sのユビキチン化アイソフォームであるかどうかを決定するために、本発明者らは、HA−ユビキチンをコードするcDNAを用いてHeLa細胞をトランスフェクトした(Treierら,1994)。MMC(図1B、レーン7〜10)またはIR(図1C、レーン7〜10)への細胞の曝露は、FANCD2のHA−ユビキチン結合における用量依存性増加を生じさせた。FANCD2−Lアイソフォームだけが抗HA抗体と免疫反応性であり、FANCD2−Sアイソフォームは免疫反応性ではなかった。FANCD2はFA細胞中でユビキチン化されなかったが、これらの細胞が機能的に相補化されるとFANCD2ユビキチン化が回復した。FANCD2はFA細胞中でユビキチン化されなかったが、これらの細胞が機能的に相補化されるとFANCD2ユビキチン化が回復した。FANCD2−SアイソフォームおよびFANCD2−Lアイソフォームは7kD相違するので、FANCD2−LはおそらくFANCD2の内部のリジン残基へのアミド結合によって共有的に結合した単一のユビキチン部分(76アミノ酸)を含有している。
モノユビキチン化を確認するために、本発明者らは、HeLa細胞からFANCD2−Lタンパク質を単離し、質量分析によってそのトリプシンフラグメントを分析した(Wuら,Science,(2000)、vol.289、p11a)。ユビキチン・トリプシンフラグメントは明確に同定でき、さらにモノユビキチン化部位(FANCD2のK561)も同定できた。興味深いことに、このリジン残基はヒト、ショウジョウバエ、およびC.エレガンス(線虫の一種)由来のFANCD2配列間で保存されており、これはこの部位のユビキチン化が複数の生物におけるFA経路に重要であることを示唆している。このリジン残基、FANCD2(K561R)の突然変異は、FANCD2モノユビキチン化の消失を生じさせた。
実施例4:FANCD2を含有する核内フォーカスの形成は無傷FA経路を必要とする
本発明者らは、補正されていないMMC感受性FA線維芽細胞および機能的相補化線維芽細胞中でのFANCD2タンパク質の免疫蛍光パターンを試験した(図2)。
補正されたFA細胞はFANCD2−SアイソフォームおよびFANCD2−Lアイソフォームのどちらも発現した(図2A、レーン2、4、6、8)。内因性FANCD2タンパク質は、ヒト細胞の核内でもっぱら観察され、細胞質染色は明白ではなかった(図2B、a〜h)。PD−20(FA−D)細胞は、免疫ブロッティングによるこれらの細胞中のFANCD2タンパク質の発現低下(図2A、レーン7)に一致して、核の免疫蛍光を低下させた(図2B、d)。染色体導入法によりFANCD2遺伝子を用いて機能的に補正したPD20細胞では、FANCD2タンパク質は2つの核パターンで染色した。補正された大多数の細胞は、染色の拡散性核パターンを有しており、細胞の小さな分画は核内フォーカスについて染色した(ドットを参照、パネルh)。両方の核パターンは、3つの独立して得られた抗FANCD2抗血清を用いて観察された(1つはポリクローナル、2つはモノクローナル抗血清)。サブタイプA、G、およびCからのFA線維芽細胞は、FANCD2核免疫蛍光の拡散性パターンだけを示した。FANCA、FANCG、またはFANCC cDNAを用いたこれらの細胞の機能的相補化は、それぞれ、これらの細胞のMMC耐性を回復させ(表6)、そして一部の細胞における核内フォーカスを回復させた。このため、高分子量FANCD2−Lアイソフォームの存在はFANCD2核内フォーカスの存在と相関しており、これはモノユビキチン化FANCD2−Lアイソフォームだけがこれらのフォーカスに選択的に局在することを示唆している。
実施例5:FANCD2タンパク質は細胞周期のS期中に核内フォーカスへ局在化する
FANCD2核内フォーカスを含有していたのは非同調化機能的相補化細胞の1分画だけであるので、本発明者らは、これらのフォーカスが細胞周期中の不連続の時点に集合する可能性があると推測した。この仮説を試験するため、本発明者らは、同調化細胞内のFANCD2−LアイソフォームおよびFANCD2核内フォーカスの生成について試験した(図3)。HeLa細胞はG1/S境界期で同調化させ、S期へ遊離させ、そしてFANCD2−Lアイソフォームの生成について分析した(図3A)。FANCD2−Lアイソフォームは、後期G1期中およびS期を通して特異的に発現した。同調化した、相補化されていないFA細胞(FA−A線維芽細胞、GM6914)は正常レベルから増加レベルのFANCD2−Sタンパク質を発現したが、細胞周期中のいずれの時点においてもFANCD2−Lを発現することはできなかった。FANCA cDNAを用いた安定性トランスフェクションによるこれらのFA−A細胞の機能的相補化はFANCD2−LのS期特異的発現を回復させた。FANCD2−LアイソフォームのS期特異的発現は、HeLa細胞がノコダゾール停止(図3B)またはミモシン曝露(図3B)等の他の方法によって同調化されたときに確認された。有糸分裂期に停止した細胞はFANCD2−Lを発現しなかったが、これはFANCD2−Lアイソフォームが細胞分割前に取り除かれているか、または分解されていることを示唆している(図3B、有糸分裂)。これをまとめると、これらの結果は、FANCD2タンパク質のモノユビキチン化が細胞周期中に高度に調節されること、そしてこの修飾には無傷FA経路が必要とされることを証明している。
FANCD2−Lアイソフォームの細胞周期依存性発現はまた、FANCD2核内フォーカスの生成と相関していた(図3C)。ノコダゾール停止(有糸分裂期)細胞はFANCD2−Lアイソフォームを発現せず、FANCD2核内フォーカスを示さない(図3C、0時間)。これらの同調化細胞にS期を超えさせると(15〜18時間)、FANCD2核内フォーカスの増加が観察された。
実施例6:FANCD2タンパク質はDNA損傷に反応して核内フォーカスに局在化する
本発明者らは、DNA損傷に反応したFANCD2−LアイソフォームおよびFANCD2核内フォーカスの蓄積について試験した(図4)。以前の研究は、FA細胞はDNA鎖間架橋(MMC)または二本鎖切断(IR)を惹起する物質に感受性であるが、紫外線(UV)および単官能性アルキル化剤に対しては比較的耐性であることを証明している。MMCは、非同調化HeLa細胞中でのFANCD2−SからFANCD2−Lへの転換を活性化させた(図4A)。FANCD2−Lへの最高の転換はMMC曝露の12〜24時間後に発生し、これは最高FANCD2核内フォーカス生成の時間と相関していた。FANCD2−Lの増加に対応するFANCD2核内フォーカスの増加が生じた。電離放射線はまた、FANCD2フォーカスにおける対応する増加とともに、HeLa細胞中のFANCD2−Lにおける時間依存性および用量依存性増加を活性化した(図4B)。意外にも、紫外(UV)光線は、FANCD2フォーカスにおける対応する増加とともに、FANCD2−SからFANCD2−Lへの時間依存性および用量依存性増加を活性化した(図4C)。
本発明者らは、DNA損傷がFA細胞に及ぼす効果を試験した(図4D)。複数の相補性群(A、C、およびG)由来のFA細胞は、MMCまたはIR曝露に反応してFANCD2−Lアイソフォームを活性化できず、さらにFANCD2核内フォーカスを活性化できなかった。これらのデータは、FA細胞の細胞感受性は、少なくとも一部には、それらがFANCD2−LおよびFANCD2核内フォーカスを活性化するのに失敗することから生じることを示唆している。
実施例7:活性化FANCD2およびBRCA1タンパク質の共局在化
FANCD2と同様に、乳癌感受性タンパク質であるBRCA1は増殖性細胞中でアップレギュレートされ、S期中の翻訳後修飾によって、またはDNA損傷に反応して活性化される。BRCAは、高度に酸性のHMG様ドメインを含有するカルボキシ末端20アミノ酸を有しており、これはクロマチン修復について可能性のある機序を示唆している。BRCA1タンパク質は、RAD51またはNBS/Mre11/RAD50複合体等のDNA修復に関係する他のタンパク質と共に、IR誘導性フォーカス(IRIF)に共局在化する。BRCA1における二対立遺伝子突然変異をもつ細胞は、DNA修復における欠陥を有しており、IRおよびMMC等のDNA損傷剤に感受性である(表5)。これらをまとめると、これらのデータは、FANCD2タンパク質とBRCA1タンパク質との間の可能性のある機能的相互作用を示唆している。BRCAフォーカスは、DNA修復(BRCA1)およびチェックポイント機能(NBS)に関係するATMおよびATM基質を含む、大きな(2mDa)複数タンパク質複合体である。
活性化FANCD2タンパク質がBRCA1タンパク質と共局在化するかどうかを決定するために、本発明者らは、HeLa細胞の二重免疫標識法を実施した(図5)。電離放射線の不存在下では、約30〜50%の細胞がBRCA1核内フォーカスを含有していた(図5A)。これとは対照的に、FANCD2ドットを含有していたのは、S期を超えるまれな細胞だけであった(b、e)。これらの核内フォーカスはまた、BRCA1およびFANCD2の両方に対する抗血清と免疫反応性でもあった(c、f)。IR曝露後には、核内フォーカスを含有する細胞数および1細胞当たりのフォーカスの数の増加が生じた。これらの核内フォーカスは、IRの不存在下で観察されたフォーカスより大きく、より蛍光性であった。さらに、これらの核内フォーカスはBRCA1およびFANCD2タンパク質の両方を含有していた(i、l)。FANCD2−LとBRCA1との相互作用は、IRに曝露された指数関数的に増殖するHeLa細胞からのタンパク質の共免疫沈降反応(図5B)によってもさらに確認された。
本発明者らは、BRCA1発現がFANCD2−Lおよび核内フォーカスの生成に及ぼす効果について試験した(図6)。BRCA1(−/−)細胞系であるHCC1937は、カルボキシ末端切断を含むBRCA1タンパク質の突然変異型を発現する。これらの細胞は低レベルのFANCD2−Lを発現したが(図6A)、IRはFANCD2−Lレベルの増加を活性化できなかった。さらに、これらの細胞はIR誘導性FANCD2フォーカスの数を低下させた(図6B、パネルc、d)。BRCA1 cDNAを用いた安定性トランスフェクションによるこれらのBRCA1(−/−)細胞の補正は、IR誘導性FANCD2ユビキチン化および核内フォーカスを回復させた(図6B、パネルk、l)。これらのデータは、野生型BRCA1タンパク質がIR誘導性FANCD2ドット生成の「形成体(organizer)」として必要であることを示唆しており、さらに、これらのタンパク質間の機能的相互作用を示唆している。
実施例8:FANCD2およびBRCA1の減数分裂染色体上における共局在化
減数分裂細胞中のFANCD2とBRCA1との結び付きは、これらのタンパク質がまた、減数分裂前期中に共局在化する可能性があることを示唆した。以前の研究は、BRCA1タンパク質が接合期および太糸期精母細胞中のヒト・シナプトネマ構造の非シナプス/軸状構造上に集中していることを証明した。減数分裂細胞中のFANCD2およびBRCA1の可能性のある共局在化について試験するために、本発明者らは、FANCD2およびBRCA1タンパク質の存在について後期太糸期および早期複糸期のマウス精母細胞の表面塗抹標本を試験した(図7)。本発明者らは、ウサギポリクローナル抗FANCD2抗体E35が後期太糸期(図7a)および複糸期(図7d、7eおよび7g)におけるXおよびY染色体の不対軸を特異的に染色することを見いだした。同一実験条件下で、免疫前血清はシナプトネマ構造を染色しなかった(図7bおよび7c)。M118抗BRCA1抗体はマウス太糸期および複糸期精母細胞中の不対性染色体を染色した(図7fおよび7h)。性染色体の非シナプス軸のFANCD2 Ab染色は中断され、数珠玉構造の外観を示した(図7g)。20の太糸期核の連続試験は、これらの抗FANCD2フォーカスの大半(〜65%)が強度の抗BRCA1染色の領域と共局在することを示し、さらにこれらのタンパク質間の相互作用を支持している(図7g、7h、および7i)。これらの結果は、クロマチンに結合するFANCタンパク質(活性化FANCD2)の最初の例を提供する。
実施例9:FANCD2についてDNAおよびタンパク質配列を入手および分析するための実験プロトコール
ノーザンハイブリダイゼーション。ヒト成人および胎児複数組織mRNAブロットは、Clontech(Palo Alto、カリフォルニア州)から購入した。ブロットは、ESTクローンSGC34603由来の32P標識DNAを用いて調査した。標準的なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を使用した。アクチンcDNAプローブを用いてブロットを再ハイブリダイズすることにより同等の負荷を確認した。
突然変異分析。全細胞RNAは市販キット(Gibco/BRL)を使用して逆転写させた。FANCD2の5’末端部分は、ネステッドPCRプロトコールを用いて、結果として生じた患者および対照cDNAから増幅させた。第1ラウンドは、プライマー(配列番号97)MG471 5’−AATCGAAAACTACGGGCG−3’および(配列番号98)MG457 5’−GAGAACACATGAATGAACGC−3’を用いて実施した。このラウンドからのPCR産物は、プライマー(配列番号99)MG492 5’−GGCGACGGCTTCTCGGAAGTAATTTAAG−3’および(配列番号100)MG472 5’−AGCGGCAGGAGGTTTATG−3’を用いた次のラウンドのために1:50で希釈した。PCR条件は次の通りであった:94℃で3分間、その後94℃で45秒間、50℃で45秒間、72℃で3分間を25サイクルおよび最後に72℃で5分間。この遺伝子の3’部分は、プライマー(配列番号101)MG474 5’−TGGCGGCAGACAGAAGTG−3’および(配列番号102)MG475 5’−TGGCGGCAGACAGAAGTG−3’を用いた以外は上記の通りに増幅させた。第2ラウンドは、(配列番号103)MG491 5’−AGAGAGCCAACCTGAGCGATG−3’および(配列番号104)MG476 5’−GTGCCAGACTCTGGTGGG−3’を用いて実施した。PCR産物をゲル精製し、pT−Advベクター(Clontech)内にクローニングし、内部プライマーを用いて配列決定した。
対立遺伝子特異的アッセイ。対立遺伝子特異的アッセイは、PD20ファミリーおよび290の対照サンプル(=580染色体)中で実施した。PD20ファミリーは混合北欧家系のファミリーであり、VU008はオランダのファミリーである。対照DNAサンプルはCEPHファミリーの非血縁個人(n=95)由来サンプル、外胚葉性異形成(n=95)またはファンコニ貧血(n=94)のどちらかの非血縁の北米ファミリー由来のサンプルであった。このPD20ファミリーにおける母性nt376a→g突然変異は、新規MspI制限部位を作り出した。ゲノムDNAについては、このアッセイは、エクソン4に局在するプライマー(配列番号105)MG792 5’−AGGAGACACCCTTCCTATCC−3’およびイントロン5にあるプライマー(配列番号106)M0803 5’−GAAGTTGGCAAAACAGACTG−3’を使用してゲノムDNAを増幅させるステップを含んでいた。PCR産物のサイズは340bpであり、突然変異が存在する場合はMspI消化後に2つのフラグメントである283bpおよび57bpを産生した。復帰突然変異cDNAクローンを分析するために、PCRはプライマー(配列番号107)MG924 5’−TGTCTTGTGAGCGTCTGCAGG−3’および(配列番号108)MG753 5’−AGGTTTTGATAATGGCAGGC−3’を用いて実施した。PD20における父性エクソン37突然変異(R1236H)およびVU008におけるエクソン12ミスセンス突然変異(R302W)を、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーションによって試験した(Wuら,DNA,(1989)、vol.8、p135〜142)。エクソン12アッセイのために、ゲノムDNAはプライマー(配列番号109)MG979 5’−ACTGGACTGTGCCTACCCACTATG−3’および(配列番号110)MG984 5’−CCTGTGTGAGGATGAGCTCT−3’を用いて増幅させた。エクソン37のためには、プライマー(配列番号171)MG818 5’−AGAGGTAGGGAAGGAAGCTAC−3’および(配列番号172)MG813 5’−CCAAAGTCCACTTCTTGAAG−3’を使用した。野生型(配列番号111)(R302Wのためには5’−TTCTCCCGAAGCTCAG−3’およびR1236Hのためには(配列番号112)5’−TTTCTTCCGTGTGATGA−3’)、ならびに突然変異型(配列番号111)(R302Wのためには5’−TTCTCCCAAAGCTGAG−3’およびR1236Hのためには(配列番号112)5’−TYTCTTCCATGTGATGA−3’)オリゴヌクレオチドは、γ32P−[ATP]を用いて末端標識し、以前に記載した新規のDdeI部位としてドット・ブロットされた標的PCR産物にハイブリダイズした。野生型PCR産物は117および71bp産物へと消化するが、他方、突然変異型対立遺伝子は長さ56、61および71bpの3つのフラグメントを産生する。上記のアッセイすべてにおけるPCRは、94℃で25秒間、50℃で25秒間および72℃で35秒間からなる37サイクルについて50ngのゲノムDNAを用いて実施した。
抗FANCD2抗血清の生成。FANCD2に対するウサギポリクローナル抗血清は、抗原源としてGST−FANCD2(N末端)融合タンパク質を使用して生成した。5’フラグメントは、プライマー(配列番号113)DF4EcoRJ(5’−AGCCTCgaattcGUTCCAAAAGAAGACTGTCA−3’)および(配列番号114)DR816Xh(5’−GGTATCctcgagTCAAGACGACAACTTATCCATCA−3’)を用いて、完全長FANCD2 cDNAからポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅させた。結果として生じた、FANCD2ポリペプチドのアミノ末端272アミノ酸をコードする841bpのPCR産物は、EcoRI/XhoIを用いて消化し、プラスミドpGEX4T−1(Pharmacia)のEcoRI/XhoI部位内にサブクローニングした。予想サイズが(54kD)のGST−FANCD2(N−末端)融合タンパク質を大腸菌株DH5中で発現させ、グルタチオン−S−セファロースで精製し、ニュージーランドホワイト・ウサギを免役するために使用した。FANCD2特異的免疫抗血清は、GSTタンパク質を装填したAminoLink Plusカラム(Pierce)を通過させ、GST−FANCD2(N−末端)融合タンパク質を装填したAminoLink Plusカラムを通過させることによりアフィニティー精製した。
免疫ブロッティングは、実施例1に記載の通りである。
細胞系およびトランスフェクション。PD20iは不死化されたFA線維芽細胞系、PD733は一次FA線維芽細胞系であって、Oregon Health Sciencesファンコニ貧血細胞貯蔵所によって生成されたものである(Jakobsら,Somat.Cell.Mol.Genet.,(1996)、vol.22、p151〜157)。PD20リンパ芽球は骨髄サンプル由来であった。VU008はリンパ芽球であり、VU423は線維芽細胞系であって、欧州ファンコニ貧血登録(EUFAR)によって生成されたものである。VU423iは、SV40 T−抗原(Jakobsら,1996)およびテロメラーゼ(Bodnarら,Science,(1998)、vol.279、p349〜352)を用いたトランスフェクションにより誘導された、不死化細胞系であった。他のFA細胞系については以前に記載されている。ヒト線維芽細胞は、MEMおよび20%ウシ胎仔血清中で培養した。形質転換リンパ芽球は、15%熱不活化ウシ胎仔血清を添加したRPMI1640中で培養した。
FANCD2発現構築物を生成するために、完全長cDNAはpBluescript内のクローン化RT−PCR産物から構築し、PCR誘導性突然変異の欠如は配列決定により確認した。発現ベクターpIRES−Neo、pEGFP−Nl、pRevTREおよびpRevTet−offは、ClonTech(Palo Alto、カリフォルニア州)から入手した。FANCD2は、これらのベクターの適切なマルチクローニング部位内へ挿入した。発現構築物は、標準的な条件を使用して細胞系PD20および正常対照線維芽細胞系GM639内にエレクトロポレートした(van den Hoffら,1992)。ネオマイシン選択は、400μg/mLの活性G418(Gibco)を用いて実施した。
全細胞融合。全細胞融合試験のために、ヒグロマイシンBに対して耐性で、HPRT遺伝子座が欠失しているPD20細胞系(PD20i)を使用した(Jakobsら,Somat.Cell.Mol.Genet.,(1997)、vol.23、p1〜7)。対照はPD24(PD20の感染した姉妹細胞由来の一次線維芽細胞)およびPD319i(Jakobsら,1997)(非A、C、DまたはG型FA患者由来の不死化線維芽細胞)を含んでいた。各細胞系由来の2.5×10個の細胞をT25フラスコ内で混合し、24時間にわたり回復させた。細胞は無血清培地を用いて洗浄し、次に50%PEGを用いて1分間融合させた。PEGの除去後、細胞は無血清培地を用いて3回洗浄し、選択せずに完全培地中で一晩回復させた。翌日、細胞は、400μg/mLのヒグロマイシンB(Roche Molecular)および1×HATを含有する選択培地内に1:10で分割した。選択が完了した後、ハイブリッドを1回培養し、その後以下に記載した通りに分析した。
FA−D2細胞のレトロウイルス形質導入および相補性分析。完全長FANCD2 cDNAをベクターpMMP−puro(Pulsipherら,1998)内にサブクローニングした。レトロウイルス上清を使用してPD20Fに形質導入し、ピューロマイシン耐性細胞を選択した。細胞をクリスタルバイオレットアッセイ(Nafら,1998)によってMMC感受性について分析した。
染色体切断の分析。染色体切断の分析は、Cytogenetics Core Lab at OHSU(Portland、オレゴン州)によって実施された。分析(Cohenら,1982)のために、細胞をT25フラスコ内にプレーティングし、回復させ、その後2日間にわたり300ng/mLのDEBを用いて処理した。処理後、細胞はコルセミドに3時間曝露させ、0.075MのKClおよび3:1のメタノール:酢酸を用いて採取した。スライドはライト染色液を用いて染色し、50〜100の(有糸分裂の)中期をラジアルについてスコア付けした。
実施例10:潜在的治療薬をスクリーニングする際に使用するFAのためのマウスモデル
FANCD2のマウスモデルは、D’Andreaら,(1997)90:1725〜1736およびYangら,Blood,(2001)、vol.98、p1〜6に記載された、胚性幹細胞における相同組換えまたは標的破壊を使用して作成できる。マウスにおけるFANCD2遺伝子座のノックアウトは致死性突然変異ではない。これらのノックアウト動物は癌に対する感受性が増大しており、さらにFAに特徴的な他の症状を示す。ノックアウトマウスに一定の治療薬を投与するとそれらの癌への感受性が減少すると予想される。さらに、特定の遺伝的欠陥の結果として癌を発症したノックアウトマウスを治療するためにより有効である一定の確立した化学療法薬が同定されることが予想され、これは、癌に対する感受性を有する、またはFANCD2遺伝子座における突然変異の結果として癌を発症した、ヒト対象を治療する際にも有用であろう。
本発明者らは、例えばFANCCについて、遺伝子のエクソンにおける破壊を作り出したChenら,Nat.Genet.,(1996)、vol.12、p448〜451、および相同組換えを使用して遺伝子のエクソンの破壊を作り出したWhitneyら,(1996)、vol.88、p49〜58によって記載されたアプローチを使用すると、FANCD2の標的破壊を用いて実験用マウスモデルを作成することができる。どちらの動物モデルでも、二官能性アルキル化剤に反応して、脾リンパ球における自発性染色体切断、および染色体切断の増加が観察される。どちらのモデルでも、FANCD2−/−マウスは生殖細胞の欠陥および生殖能力の低下を有する。FANCD2マウスノックアウトモデルは、(1)DNA損傷への造血性細胞の生理的反応におけるFANCD2遺伝子の役割、(2)FA骨髄細胞に阻害性サイトカインが及ぼすインビボの効果、および(3)遺伝子療法の有効性を試験する際に、および(4)候補治療分子をスクリーニングするために有用である。
他のFA遺伝子破壊の利用可能性は、複数のFA遺伝子ノックアウトを用いたマウスの生成および特徴づけを可能にするであろう。例えば、2つのFA遺伝子が同一細胞経路においてもっぱら機能する場合、二重ノックアウトは単一FA遺伝子ノックアウトと同一の表現型を有しているはずである。
マウスFANCD2遺伝子は、129/SvJae胚性幹細胞における相同組換えを介して、エクソンをFRTが側面に位置するネオマイシンカセットと置換することにより破壊させることができる。129/SvおよびC57BLの混合された遺伝的バックグラウンド内のFANCD2突然変異のためのマウスホモ接合体は、標準プロトコールにしたがって生成できる。マウス尾ゲノムDNAは、以前に記載された通りに調製でき、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による遺伝子型特定のためのテンプレートとして使用できる。
脾細胞は、既知のFANCD2遺伝子型の6週齢マウスから調製できる。脾臓を切開し、RPMI培地中で粉砕して単細胞懸濁液とし、70μmフィルターを通して濾過した。赤血球は低張性塩化アンモニウム中に溶解させた。残りの脾リンパ球はリン酸緩衝生理食塩水中で洗浄し、RPMI/10%ウシ胎仔血清+フィトヘマグルチニン中に再懸濁させた。細胞をトリパンブルー色素排除試験により生存能力について試験した。細胞は培地中で24時間培養し、さらに48時間MMCまたはDEBに曝露させた。あるいは、細胞は50時間培養し、IRに曝露させ(表示されたように、2または4Gy)、染色体切断またはトリパンブルー色素排除試験(生存性)分析の前12時間にわたり回復させた。
単核細胞は、以前に記載されたように、4〜6週齢のFANCD2+/−またはFANCD2−/−マウスの大腿骨および脛骨から単離できる。計2×10個の細胞は、MMC処理を施した、または施していない1mLのMethoCult M343培地(StemCell Technologies、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州)中で培養した。大多数のコロニーが顆粒球―マクロファージコロニー形成単位または赤芽球バースト形成単位系統に属する、第7日にコロニーをスコア付けした。各数値は、2枚のプレートから平均し、データは2回の独立した実験から引き出した。
胸腺、脾臓、および末梢リンパ節から単離したリンパ球は、フルオレセイン・イソチオシアネート結合抗CD3、CD4、およびCD19ならびにPE結合抗CD8、CD44、CD45B、免疫グロブリンM、およびB220(BD PharMingen、カリフォルニア州)を用いて、Tリンパ球またはBリンパ球表面分子について染色した。染色した細胞は、Counter Epics XLフローサイトメトリーシステムで分析した。
マウス卵巣および精巣は、単離して4%パラホルムアルデヒド中で固定し、さらにマサチューセッツ総合病院病理部の中央施設にて処理した。
実施例11:ヒト対象における癌感受性の増加を検出するための抗体試薬を用いたスクリーニングアッセイ
FANCD2−Lに比較したFANCD2−Sの相対量ならびにFANCD2−Lの存在または不存在について試験するために、血液サンプルまたは組織サンプルを対象から採取することができる。FANCD2−Sタンパク質およびFANCD2−Lタンパク質に特異的な抗体試薬(実施例1)を使用すると、陽性サンプルを図14に示したようにウェスタンブロット法で同定することができる。例えば第5,654,162号および第5,073,484号に記載されたワンステップ移動結合バンドアッセイ等の他の抗体アッセイを利用できる。酵素免疫測定法(ELISA)、サンドイッチアッセイ、ラジオイムノアッセイおよびその他の当技術分野において知られている免疫診断アッセイを使用して、FANCD2−SおよびFANCD2−Lの相対結合濃度を決定することができる。
このアプローチの実現可能性を以下の記載によって説明する:
ヒト癌細胞系をスクリーニングするためのFANCD2診断的ウェスタンブロット法
ヒト癌細胞系は電離放射線を用いて、または用いずに処理し(図14に示した通り)、総細胞タンパク質を電気泳動にかけ、ニトロセルロースへ移し、実施例1の抗FANCD2モノクローナル抗体を用いて免疫ブロッティングした。卵巣癌細胞系(TOV21G)はFANCD2−Sを発現したが、FANCD2−Lを発現しなかった(レーン9、10を参照)。この細胞系はFANCD2遺伝子にオーバーラップしているヒト染色体3pの欠失を有し、FANCD2に対してヘミ接合性であり、そして、第2FANCD2対立遺伝子において突然変異を有しており、このために第2FANCD2対立遺伝子についてPA複合体によってモノユビキチン化できず、それ故FANCD2−Lを有しない(レーン9、10)と予想されている。この実施例は、癌感受性の増加を引き起こすFANCD2遺伝子における損傷を測定するために、抗体に基づく試験が適することを証明している。
実施例12:ヒト対象における癌感受性の増加を検出するための核酸試薬を用いたスクリーニングアッセイ
対象のゲノム内に存在する場合、遺伝子病変のサイズおよび位置を決定するために、血液サンプルまたは組織サンプルを対象から採取し、配列決定技術または核酸プローブを使用してスクリーニングできる。このスクリーニング法は、全遺伝子を配列決定するステップ、または病変を同定するためにプローブセットまたは単一プローブを使用するステップを含んでいてよい。単一病変は集団において優勢でありうるが、他の病変は、嚢胞性線維症およびP53癌抑制遺伝子等の他の遺伝的状態の場合と同様に、低頻度で前記遺伝子の至る所に発生しうると予想されている。
このアプローチの実現可能性を以下の記載によって説明する:
末梢血リンパ球はフィコール・ハイパック (Ficoll−Hypaque)勾配法を使用して患者から単離し、ゲノムDNAはこれらのリンパ球から単離する。本発明者らは、ゲノムPCRを使用して、ヒトFANCD2遺伝子の44のエクソンを増幅させ(プライマーの表7を参照)、突然変異を同定するために2つのFANCD2対立遺伝子を配列決定する。そのような突然変異が見いだされた場合、本発明者らは、FA−D2指標細胞系の機能的相補化を取り除くそれらの能力によって、これらを良性多型から識別した。
実施例13:生検組織中のモノユビキチン化FANCD2−Lの測定
生検組織は、針吸引または皮膚穿刺生検によって入手した。マイクロタイタープレート内の適切な培養培地に再懸濁させた細胞は、その後、表示した濃度のMMC(0、10、40、160ng/mL)または表示した線量のIR(0、5、10、10、20 Gy)を用いて処理した。MMCを用いた24時間のインキュベーション後、またはIR処理の2時間後、全細胞抽出物は、プロテアーゼ阻害剤(1μg/mLのロイペプチンおよびペプスタチン、2μg/mLのアプロチニン、1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド)およびホスファターゼ阻害剤(1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、10mMのフッ化ナトリウム)を添加した溶解バッファー(50mMのTris−HCl(pH7.4)、150mMのNaCl、1%(v/v)Triton X−100)中で調製した。その後、本明細書で開示したように、抗FANCD2−L特異的モノクローナル抗体、そして細胞サンプル内のタンパク質レベルを定量するために一般に使用される酵素免疫測定法(ELISA)等の従来型イムノアッセイを使用して、FANCD2−Lアイソフォームの存在についてサンプルを試験した(Harlow,E. and Lane,D.、「抗体の使用:実験マニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)」(1999)Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
実施例14:ファンコニ貧血/BRCA遺伝子またはタンパク質中の癌関連性欠陥の診断
ヒトFANCD2遺伝子−cDNAおよびゲノムDNAテンプレートのPCR増幅および配列決定
ゲノムDNA配列決定
FANCD2遺伝子を配列決定している間に、ヒトゲノム内にはFANCD2に対する少なくとも8個の偽遺伝子配列があって、それらはすべてヒト染色体3pに局在することが明らかになった(添付した表8を参照)。したがって、FANCD2配列を特異的に増幅させ、そして偽遺伝子を排除するように設計された、特異的ゲノムPCRアッセイを設計することが重要であった。それらのエクソンの1以上の非機能的コピーをもまた増幅しない機能的FANCD2遺伝子のエクソン1、2、3、7〜14、19〜22、23〜29、30〜32、33〜36および43〜44に近接するPCRプライマーを設計することは、不可能であった。機能的遺伝子のこれらの領域に固有の大きなPCR産物を最初に生成し、その後に、機能的遺伝子に固有ではないプライマーを用いてエクソンのPCR産物を産生するための引き続く増幅反応におけるテンプレートとしてそれらの固有産物を使用することによって、それらのコピーからのPCR産物を超える機能的遺伝子からの極めて過剰なPCR産物を生成した。この方法により、機能的遺伝子内の突然変異が検出可能になった。
スーパーアンプリコンPCR
上記で指摘したように、これらのPCR反応の目的は、機能的FANCD2遺伝子の一定領域に固有である大きなアンプリコン(スーパーアンプリコン)を生成することである。PCRの構成要素は次の通りであった:60mMのTris−S0(pH8.9)、18mMの(NHSO、2.0mMのMgS0、各々0.2mMのdATP、dCTP、dGTP、TTP、0.1μMの各プライマー、5ng/μLのDNA、0.05units/μLのPlatinum Taq DNA Polymerase High Fidelity(GIBCO BRL、Gaithersburg、メリーランド州)。
熱サイクル条件は次の通りであった:94℃で4分間;その後に各々のサイクルが94℃で20秒間の変性ステップおよび72℃で300秒間の伸長ステップ、および初回サイクルは64℃で開始して第11サイクルでは54℃へ低下するように1℃/サイクルで温度を低下させる20秒間のアニーリングステップを含む11サイクル;その後、第11サイクルを25回繰り返した;72℃で6分間インキュベートし、その後4℃での浸漬でプログラムを完了した。
プライマーの同一性は次の通りであった(プライマー配列は表9に示した):
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エクソンPCR
これらのPCRには2つのタイプがある:(1)スーパーアンプリコンPCRはDNAテンプレートとして使用する:1〜3、7〜14、19〜22、23〜29、30〜32、33〜36および43〜44はこのグループに含まれる、および(2)非増幅ゲノムDNAはDNAテンプレートとして使用する;エクソン4〜6、15〜18および37〜42はこのグループに含まれる。
それぞれの対における1つのプライマー(「−F」と表示)は、その5’末端で18塩基のM13〜21フォワード配列(TGTAAAACGACGGCCAGT)を用いて合成し、もう1つのプライマー(「−R」と表示)は、その5’末端で18塩基のM13〜28リバース配列(CAGGAAACAGCTATGACC)を用いて合成した。エクソン15については、2つの重複アンプリコンを設計した。
10μLのPCR反応液の構成要素は次の通りである:20mMのTris−HCl(pH8.4)、50mMのKCl、1.5mMのMgC1、各々0.1mMのdATP、dCTP、dGTP、TTP、0.1μMの各プライマー、1μLの1:100希釈率のスーパーアンプリコンPCRまたは5ng/μLの非増幅ゲノムDNAのどちらか、0.05units/μLのTaq ポリメラーゼ(Taq Platinum、GIBCO BRL、Gaithersburg、メリーランド州)。熱サイクル条件は次の通りである:94℃で4分間;その後に各々のサイクルが94℃で30秒間の変性ステップおよび72℃で20秒間の伸長ステップ、および初回サイクルは60℃で開始して第11サイクルでは50℃へ低下するように1℃/サイクルで温度を低下させる20秒間のアニーリングステップを含む11サイクル;その後、第11サイクルを25回繰り返した;72℃で6分間インキュベートし、その後4℃での浸漬でプログラムを完了した。
cDNA配列決定
2μgの総RNAは、RT−PCRのためのSuperscript First−Strand Synthesis System(GIBCO/BRL)を使用して、製造業者の取扱説明書にしたがって、cDNAに転換した。RT−PCR反応液の20分の1を18のPCR反応各々でDNAテンプレートとして使用した;これらのPCR反応液は、重複フラグメントにおいてcDNAのコード領域を増幅させる。プライマーは以下の表に示した。
それぞれの対における1つのプライマー(「−F」と表示)は、その5’末端で18塩基のM13〜21フォワード配列(TGTAAAACGACGGCCAGT)を用いて合成し、もう1つのプライマー(「−R」と表示)は、その5’末端で18塩基のM13〜28リバース配列(CAGGAAACAGCTATGACC)を用いて合成した。
10μLのPCR反応液の構成要素は次の通りである:20mMのTris−HCl(pH8.4)、50mMのKCl、1.5mMのMgC1、各々0.1mMのdATP、dCTP、dGTP、TTP、0.1μMの各プライマー、1μLの1:100希釈率のスーパーアンプリコンPCRまたは5ng/μLの非増幅ゲノムDNAのどちらか、0.05units/μLのTaq ポリメラーゼ(Taq Platinum、GIBCO BRL、Gaithersburg、メリーランド州)。
熱サイクル条件は次の通りである:94℃で4分間、その後に各々のサイクルが94℃で30秒間の変性ステップおよび72℃で20秒間の伸長ステップ、および初回サイクルは60℃で開始して第11サイクルでは50℃へ低下するように1℃/サイクルで温度を低下させる20秒間のアニーリングステップを含む11サイクル;その後、第11サイクルを25回繰り返した;72℃で6分間インキュベートし、その後4℃での浸漬でプログラムを完了した。
Figure 2009039100
Figure 2009039100
DNA配列決定
各PCR反応液の分液は水を用いて1:10に希釈した。希釈したPCR産物は、M13フォワードおよびM13リバースBig Dyeプライマーキット(Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア州)を使用して、製造業者の推奨にしたがって、両方の鎖について配列決定した。配列決定産物は、蛍光シーケンサー(377型、Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア州)で分離した。ベースコールは機器ソフトウェアにより行い、目視検査により精査した。各配列は、Sequencher 3.0ソフトウェア(LifeCodes)を使用して、対応する正常配列と比較した。
実施例15:化学感作剤のスクリーニング方法
FA/BRCA経路のモデルで示したように、FANCD2の酵素モノユビキチン化は重要な調節事象である。この事象は無傷FAタンパク質複合体(A/C/E/F/G複合体)を必要とし、BRCA1およびBRCA2を必要とする。FANCD2モノユビキチン化のために必要な実際の触媒サブユニットは依然として不明であるが、モノユビキチン化のアンタゴニストをスクリーニングすることはまだ可能である。本明細書の他のところで記載したように、大体において、FA経路の阻害剤は、卵巣癌または他の癌の治療においてシスプラチンの化学感作剤として機能することができる。FANCD2モノユビキチン化の阻害剤のスクリーニングは、単純な哺乳類細胞に基づくスクリーンとして実施できる。例えばHeLa細胞のような哺乳類組織培養細胞系は、最初に無作為の候補低分子を用いてプレインキュベートされる。次に細胞クローンは、抗FANCD2ウェスタンブロット法を使用してスクリーニングする。FA経路の阻害剤(アンタゴニスト)はFANCD2モノユビキチン化をブロックする。
Garcia−Higueraら,2001に記載されたように、BRCA1は実際上FANCD2をモノユビキチン化する酵素である可能性がある。したがって、BRCA1はユビキチンリガーゼ(Ring Finger)触媒ドメインを有する。このため、FANCD2のBRCA1媒介性モノユビキチン化についてスクリーニングするために、インビトロアッセイが考案される。阻害剤は、このインビトロ反応を阻害する能力について直接にスクリーニングされる。阻害剤が同定されると、そのような薬剤は動物試験または第1相ヒト試験において、シスプラチン感作剤としてのそれらの機能を決定するために使用することができる。
実施例16:潜在的癌治療薬のスクリーニング方法
1以上の癌関連性欠陥を有するファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子を有する細胞および動物は、治療薬としての可能性を有する物質について研究および試験するためのモデル系として使用できる。細胞は、典型的には培養上皮細胞である。これらは、1以上の癌関連性欠陥を有するファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子をもつ個人から単離することができ、体細胞性または生殖細胞性のいずれかである。あるいは、1以上の癌関連性欠陥を有するファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子に突然変異をもつ細胞系を、遺伝子工学的に作成できる。
試験物質が細胞に適用された後、腫瘍により形質転換された細胞の表現型が決定される。足場非依存性増殖、ヌードマウスにおける腫瘍原性、細胞の侵襲性、および増殖因子依存性を含む、腫瘍により形質転換された細胞のあらゆる形質を評価できる。これらの形質各々についてのアッセイは当技術分野において知られている。
治療薬を試験するための動物は、全動物の突然変異誘発後に、または生殖細胞系細胞もしくは接合体の処理後に選択できる。そのような処理には、通常は第2動物種からの1以上の癌関連性欠陥を有する突然変異ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子の挿入、ならびに、崩壊した相同遺伝子の挿入が含まれる。あるいは、動物の内因性ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子は、実施例10に略述したように、従来型技術を使用して挿入もしくは欠失突然変異または他の遺伝的変化によって破壊することができる(Capecchi,1989;Valancius and Smithies,1991;Hastyら,1991;Shinkaiら,1992;Mombaertsら,1992;Philpottら,1992;Snouwaertら,1992;Donehowerら,1992)。試験物質を動物に投与した後は、腫瘍の増殖を評価しなければならない。試験物質が腫瘍の増殖を防止または抑制した場合は、前記試験物質は本明細書にて同定した癌を治療するための候補治療薬である。
実施例17:抗腫瘍剤に耐性である癌の治療方法
本実施例では、シスプラチン等の抗腫瘍剤に耐性である癌を有する患者の治療について説明する。このプロトコールは、化学感作剤としてのFANCD2タンパク質のユビキチン化阻害剤を用量増加させて併用する、本明細書に記載したようなシスプラチンの投与を提供する。シスプラチンおよび化学感作剤は、静脈内、皮下、腫瘍内または腹腔内に投与することができる。薬剤を投与する医師は、当技術分野において知られている癌活性の標準尺度を使用して観察された結果に基づいて、薬物の投与量および投与時期を調整できる。腫瘍の増殖および転移の抑制は、癌の有効な治療を表示するものである。
実施例18:治療薬の将来の有効性を測定する方法
治療薬を用いて治療されている癌患者由来の腫瘍の生検組織は、針吸引または皮膚穿刺生検によって入手した。マイクロタイタープレート内の適切な培養培地に再懸濁させた細胞は、その後、表示した濃度のMMC(0、10、40、160ng/mL)または表示した線量のIR(0、5、10、10、20Gy)を用いて処理した。MMCを用いた24時間のインキュベーション後、またはIR処理の2時間後、全細胞抽出物は、プロテアーゼ阻害剤(1μg/mLのロイペプチンおよびペプスタチン、2μg/mLのアプロチニン、1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド)およびホスファターゼ阻害剤(1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム)を添加した溶解バッファー(50mMのTris−HCl(pH7.4)、150mMのNaCl、1%(v/v)Triton X−100)中で調製した。その後、本明細書で開示したように、抗FANCD2−L特異的モノクローナル抗体、そして細胞サンプル内のタンパク質レベルを定量するために一般に使用される酵素免疫測定法(ELISA)等の従来型イムノアッセイを使用して、FANCD2−Lアイソフォームの存在についてサンプルを試験した(Harlow,E. and Lane,D.、「抗体の使用:実験マニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)」(1999)Cold Spring Harbor Laboratory Press)。モノユビキチン化FANCD2−Lアイソフォームの検出は、癌患者を治療するために使用されている治療薬の有効性の低下を表示すると考えられる。
実施例19:化学療法剤への耐性を決定する方法
ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子のメチル化状態を決定するために使用されるプロトコールを記載したフローチャートは図21に示した。
FANCFメチル化の分析
FANCF遺伝子におけるDNAメチル化パターンは、メチル化特異的PCRまたはPCRに基づくHpaII制限酵素アッセイによって決定した。ゲノムDNAは、QIAamp DNA血液ミニキット(QIAGEN)を使用して、表示した細胞系から単離した。
PCRに基づくHpaII制限酵素アッセイ
250ngのゲノムDNAは、30単位のHpaIIまたはMspIを用いて37℃で12時間消化した。各消化物からの12.5ngのDNAは、1×PCRバッファー、各200μMの4つのデオキシヌクレオチド三リン酸、0.5単位のAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Roche)、および各0.2μMのプライマーを含有する10μLの反応液中でPCRによって分析した。PCRは33サイクル実施し、各サイクルは変性(94℃で45秒間、第1サイクルは4分45秒間)、アニーリング(61℃で1分間)、および伸長(72℃で2分間、最終サイクルは9分間)から構成した。PCR反応液は臭化エチジウムを含有する1.2%アガロースゲル上で電気泳動にかけた。使用したプライマーは、FPF6(5’−GCACCTCATGGAATCCCTTC−3’)(フォワード)およびFR343(5’−GTTGCTGCACCAGGTGGTAA−3’)(リバース)であった。これらのプライマーは、フォワードプライマーのためにはnt−6−14およびリバースプライマーのためにはnt 403〜432を使用して設計した。
メチル化特異的PCR
ゲノムDNAの重亜硫酸塩修飾は、以前に記載されたように実施した(Herman JGら,Proc Natl Acad Sci USA 93(18),9821−6(1996))。重亜硫酸塩処理DNAは、メチル化特異的または非メチル化特異的プライマーセットのどちらかを用いて増幅させた。PCRは40サイクル実施し、各サイクルは変性(94℃で45秒間、第1サイクルは4分45秒間)、アニーリング(65℃で1分間)、および伸長(72℃で2分間、最終サイクルは9分間)から構成した。PCR反応液は臭化エチジウムを含有する3%セパライド(Separide)(Gibco)ゲル上で電気泳動にかけた。メチル化特異的プライマーは、FF280M(5’−TTTTTGCGTTTGTTGGAGAATCGGGTTTTC−3’)(フォワード)およびFR432M(5’−ATACACCGCAAACCGCCGACGAACAAAACG−3’)(リバース)であった。非メチル化特異的プライマーは、FF280U(5’−TTTTTGTGTTTGTTGGAGAATTGGGTTTTT−3’)(フォワード)およびFR432U(5’−ATACACCACAAACCACCAACAAACAAAACA−3’)(リバース)であった。これらのプライマーは、フォワードプライマーのためにはnt 280−309およびリバースプライマーのためにはnt 403〜432を使用して設計した。
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本明細書で引用したすべての特許、特許出願、および出版物はこれによりそれらの全体が参照により組み込まれる。本発明はそれの好ましい実施形態を参照しながら特別に示して記載してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲によって含まれる本発明の範囲から逸脱することなく形態および詳細を様々に変化させることができることは理解されるであろう。
本発明の上記の特徴は、添付の図面を参照しながら詳細に記した説明を参照することでより容易に理解できるであろう。
図1Aは、ファンコニ貧血タンパク質複合体がFANCD2のモノユビキチン化のために必要であることを示している、ウェスタンブロットの図である。正常(WT)細胞(レーン1)は、FANCD2タンパク質の2つのアイソフォームである低分子量アイソフォーム(FANCD2−S)(155kD)および高分子量アイソフォーム(FANCD2−L)(162kD)を発現する。レーン3、7、9、11は、タイプA、C、G、およびFの患者由来のFA細胞系がFANCD2−Sアイソフォームだけを発現ことを示している。レーン4、8、10、12は、対応するFAcDNAを用いた細胞系のトランスフェクション後の高分子量アイソフォームFANCD2−Lの回復を示している。 図1Bは、HA−ユビキチンをコードするcDNAを用いてHeLa細胞をトランスフェクトした後に入手したウェスタンブロットを示した図である。トランスフェクション後、細胞は表示した量のマイトマイシンC(MMC)を用いて処理した。細胞タンパク質は、表示したように、FANCD2に対するポリクローナル抗体(E35)を用いて免疫沈降させた。FANCD2を免疫沈降させ、免疫複合体は抗FANCD2または抗HAモノクローナル抗体を用いてブロッティングした。 図1Cは、HA−ユビキチンをコードするcDNAを用いてHeLa細胞をトランスフェクトした後に入手したウェスタンブロットを示した図である。トランスフェクション後、細胞は表示した線量の電離放射線(IR)を用いて処理した。FANCD2を免疫沈降させ、免疫複合体は抗FANCD2または抗HAモノクローナル抗体を用いてブロッティングした。 図1Dは、HA−Ub cDNAを用いてPA−G線維芽細胞系(FAG326SV)または補正した細胞(FAG326SV+FANCG cDNA)をトランスフェクトした後、FANCD2を免疫沈降させ、そして抗FANCD2または抗HA抗血清を用いてブロットした。 図1Eは、1mMのヒドロキシウレアを用いたHeLa細胞の24時間の処理後に入手したウェスタンブロットを示した図である。HeLa細胞溶解物を抽出し、2.5μMユビキチンアルデヒドを用いて、または用いずに、表示した時間にわたり表示した温度でインキュベートした。FANCD2タンパク質は、モノクローナル抗FANCD2(F117)を用いた免疫ブロット法により検出した。 図2は、ファンコニ貧血経路がFANCD2核内フォーカスを形成するために必要であることを示した図である。上方のパネルは、全細胞抽出物として調製したSV40形質転換線維芽細胞の抗FANCD2免疫ブロットを示している。パネルa〜hは、アフィニティー精製抗FANCD2抗血清を用いた免疫蛍光法を示している。補正されていない(突然変異体、M)FA線維芽細胞はFA−A(GM6914)、FA−G(FAG326SV)、FA−C(PD426)、およびFA−D(PD20F)であった。FA−A、FA−G、およびFA−C線維芽細胞は、対応するFA cDNAを用いて機能的に相補化された。FA−D細胞は、ネオマイシン標識ヒト染色体3pを用いて相補化した(Whitneyら,1995)。 図3は、FANCD2タンパク質の2つのアイソフォームの細胞周期依存性発現を示した図である。(a)HeLa細胞、FA−A患者由来のSV40形質転換線維芽細胞(GM6914)、およびFANCA cDNAを用いて補正したGM6914細胞は、二重チミジンブロック法によって同調化した。細胞周期の表示した期に対応する細胞を溶解させ、FANCD2免疫ブロット法のために処理した。(b)ノコダゾールブロックによる同調化。(c)ミモシンブロックによる同調化。(d)HeLa細胞はノコダゾールまたは(e)ミモシンを使用して細胞周期において同調化し、細胞周期の表示した期に対応する細胞は抗FANCD2抗体を用いて免疫染色し、免疫蛍光により分析した。 図4は、MMC、電離放射線、または紫外線への細胞曝露後の活性化FANCD2核内フォーカスの形成を示した図である。指数関数的に増殖するHeLa細胞は、未処理とするか、または表示したDNA損傷剤である(a)マイトマイシンC(MMC)、(b)γ線照射(IR)、または(c)紫外線(UV)へ曝露させ、FANCD2免疫ブロット法またはFANCD2免疫染色法のために処理した。(a)細胞は表示した通りに0〜72時間、40ng/mLのMMCに連続的に曝露させるか、または24時間処理し、免疫蛍光法のために固定した。(b)および(c)細胞はγ線(10Gy、B)またはUV線(60J/m、C)に曝露させ、表示した時間後に収集するか(上方パネル)、または表示した線量で照射して1時間後に採取した(下方パネル)。免疫蛍光分析のためには、細胞は処理(B、10Gy、C、60J/m)の8時間後に固定した。(d)正常個人(PD7)または様々なファンコニ貧血患者由来の表示したEBV形質転換リンパ芽球系を、40ng/mLのマイトマイシンCを用いて連続的に処理するか(レーン1〜21)、または15Gyのγ線(レーン22〜33)に曝露させ、FANCD2免疫ブロット法のために処理した。MMCまたはIR処理後のFANCD−Lのアップレギュレーションは、PD7(レーン2〜5)および補正されたFA−A細胞(レーン28〜33)で見られたが、突然変異ファンコニ貧血細胞系のいずれでも観察されなかった。同様に、IR誘導FANCD2核内フォーカスは、PA線維芽細胞では検出されなかったが(FA−G+IR)、機能的相補化後には回復した(PA−G+FANCG)。 図5は、DNA損傷後の離散性核内フォーカスにおける活性化FANCD2およびBRCA1の共局在化を示した図である。HeLa細胞は、未処理とするか、または表示したように電離放射線(10Gy)に曝露させ、8時間後に固定した。(a)細胞はD−9モノクローナル抗BRCA1抗体(緑色、パネルa、d、g、h)およびウサギポリクローナル抗FANCD2抗体(赤色、パネルb、e、h、k)を用いて二重染色し、染色した細胞を免疫蛍光法により分析した。緑色および赤色シグナルが重複する(マージ(Merge)、パネルc、f、i、l)場合には黄色パターンが見られ、これはBRCA1とFANCD2の共局在化を表す。(b)FANCD2およびBRCA1の共免疫沈降。HeLa細胞は、未処理(−IR)とするか、15Gyのγ線照射(+IR)に曝露させ、12時間後に回収した。細胞溶解物を調製し、そして、モノクローナルFANCD2抗体(FI−17、レーン9〜10)、またはヒトBRCA1に対する3つの独立して得られたモノクローナル抗体のいずれか1つ(レーン3〜8)のどちらかを用いて免疫沈降させた:D−9(Santa Cruz)、Ab−1およびAb−3(Oncogene Research Products)。対照サンプル(レーン1〜2)では同一量の精製マウスIgG(Sigma)を使用した。免疫複合体をSDS−PAGEにより分離させ、抗FANCD2または抗BRCA1抗血清を用いて免疫ブロットした。FANCD−Lアイソフォームは、BRCA1と優先的に共免疫沈降した。 図6は、S期中の離散性核内フォーカスにおける活性化FANCD2およびBRCA1の共局在化を示した図である。(a)HeLa細胞は後期G1期においてミモシンを用いて同調化し、S期に遊離させた。S期細胞は、モノクローナル抗BRCA1抗体(緑色、パネルa、d)およびウサギポリクローナル抗FANCD2抗体(赤色、パネルb、e)を用いて二重染色し、染色した細胞を免疫蛍光法により分析した。緑色および赤色シグナルが重複する(マージ、パネルc、f)場合には黄色パターンが見られ、これはBRCA1とFANCD2の共局在化を表す。(b)S期において同調化したHeLa細胞は、未処理とするか(a、b、k、l)、または表示した通りにIR(50Gy、パネルc、d、m、n)、MMC(20μg/mL、パネルc、f、o、p)、もしくはUV(100J/m、パネルg、h、q、r))に曝露させ、1時間後に固定した。引き続き、FANCD2またはBRCA1に対して特異的な抗体を用いて細胞を免疫染色した。 図7は、FANCD2がマウス精母細胞中の減数分裂I期中にBRCA1と共局在化できるシナプトネマ構造上でフォーカスを形成するのを示した図である。(a)後期太糸期マウス核中でのシナプトネマ構造の抗SCP3(白色)および抗FANCD2(赤色)染色。(b)後期太糸期染色体のSCP3染色。(c)抗FANCD2 E35抗体に対する免疫前血清を用いたこの塗抹標本の染色。(d)マウス複糸期核中でのシナプトネマ構造の抗SCP3染色。(e)E35 抗FANCD2抗体を用いたこの塗抹標本の共染色。抗FANCD2を用いた不対の性染色体および常染色体のテロメアの両方の染色に注目。(f)抗BRCA1抗体を用いたこの塗抹標本の共染色。性染色体が優先的に染色される。(g)後期太糸期の性染色体シナプトネマ構造の抗FANCD2染色。(h)同一複合体の抗BRCA1染色。(i)抗FANCD2(赤色)および抗BRCA1(緑色)共染色(黄色領域によって反映される共局在化)。 図8は、細胞経路内でのFAタンパク質の相互作用を略図で示した図である。FAタンパク質(A、C、およびG)は機能的核複合体中で結合する。S期進行またはDNA損傷のいずれかによってこの複合体が活性化されると、この複合体はDタンパク質を酵素的に修飾(モノユビキチン化)する。このモデルによると、活性化Dタンパク質は、引き続いて、それがDNA修復に関係するBRCA1タンパク質および他のタンパク質と相互作用する場所である、核内フォーカスの標的とされる。 図9は、完全長FANCD2 cDNAを用いて調べ、そして24時間曝露させた、ヒト成人由来の心臓、脳、胎盤、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、子宮、小腸、結腸および末梢血リンパ球ならびにヒト胎児由来の脳、肺、肝臓および腎臓からの細胞のノーザンブロットを示した図である。 図10は、2つのFANCD2ファミリーの突然変異分析のための対立遺伝子特異的アッセイを示した図であり、対応する突然変異分析が問題となっている個人の下方にあるように、ファミリー系図(a、d)ならびにパネルb、c、eおよびfを垂直に配列した。パネルa〜cはPD20を描出し、パネルd〜fはVU008ファミリーを描出している。パネルbおよびeは、新規MspI部位(PD20)またはDdeI部位(VU008)の作成によって検出された母性突然変異の分離を示している。両ファミリーにおける父性遺伝性突然変異は、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーションを用いて検出された(パネルcおよびf)。 図11は、ヒトファンコニ貧血細胞系におけるFANCD2タンパク質のウェスタンブロット分析を示した図である。全細胞溶解物は、表示した線維芽細胞系およびリンパ芽球系から生成した。タンパク質溶解物(70g)は、抗FANCD2抗血清を用いた免疫ブロッティングによって直接調べた。FANCD2タンパク質(155kDおよび162kD)は矢印で表示した。免疫ブロットにおける他のバンドは非特異的である。(a)試験した細胞系には、野生型細胞(レーン1、7)、PD20線維芽細胞(レーン2)、PD20リンパ芽球(レーン4)、復帰突然変異体MMC耐性PD20リンパ芽球(レーン5、6)、および染色体3P補体結合PD20線維芽細胞(レーン3)が含まれた。HSC62(レーン8)およびVU008(レーン9)を含む数種の他のFA−D群細胞系を分析した。FA−A細胞はHSC72(レーン10)、FA−C細胞はPD4(レーン11)、そしてFA−G細胞はEUFA316(レーン12)であった。(b)第3のFANCD2患者の同定。FANCD2タンパク質は、野生型およびFA−G群細胞中では容易に検出できたが、PD733細胞中では検出できなかった。(c)抗体の特異性。レトロウイルスFANCD2発現ベクターを用いて形質導入したPD20i細胞は、空ベクター対照(レーン3)およびトランスフェクトされていないPD20i細胞(レーン2)とは対照的に、FANCD2タンパク質の両方のアイソフォームを表示した(レーン4)。野生型細胞では、内因性FANCD2タンパク質(2つのアイソフォーム)もまた、抗体と免疫反応性であった(レーン1)。 図12は、クローン化FANCD2 cDNAを用いたFA−D2細胞の機能的相補化を示した図である。SV40形質転換FA−D2線維芽細胞系であるPD20iは、pMMP−puro(PD20+ベクター)またはpMMP−FANCD2(PD20+FANCD2wt)を用いて形質導入した。ピューロマイシン選択細胞についてMMC感受性分析を実施した。分析した細胞は、親PD20F細胞(△)、ヒト染色体3Pを用いて補正したPD20(○)、およびpMMP−puro(□)またはpMMP−FANCD2(wt)−puro(◆)のいずれかを用いて形質導入したPD20細胞であった。 図13は、PD20リンパ芽球の復帰突然変異についての分子的基盤を示した図である。(a)cDNAを増幅させるためにエクソン5および6へのPCRプライマーを使用した。対照サンプル(右のレーン)は114bpの単一バンドを産生したが、他方、PD20 cDNA(左のレーン)は2つのバンドを示し、大きい方のバンドは母性対立遺伝子内への13bpのイントロン配列の挿入を反映している。PD20から復帰突然変異したMMC耐性リンパ芽球(中央のレーン)は、114+36bpの第3のインフレーム・スプライス変異体を示した。(b)FANCD2 エクソン5/イントロン5境界でのスプライシングの略図。野生型cDNAでは、スプライス事象の100%が適当なエクソン/イントロン境界で発生するが、他方、母性A→G突然変異(矢印によって表示した)は、同様に100%で異常なスプライシングをもたらす。復帰突然変異細胞では、母性突然変異を有するすべてのcDNAはまた、第2配列変化(太い矢印)を有し、13bp(〜40%のmRNA)または36bp(〜60%のmRNA)のどちらかの挿入を伴う混合スプライシングパターンを示した。 図14は、卵巣癌患者由来の癌細胞系のFANCD2ウェスタンブロットを示した図である。 図15は、ヒトFANCD2のアミノ酸配列についての配列表およびBEAUTYアルゴリズム(Worleyら,(1995),Genome Res.、vol.5、p173〜184)を使用した、ハエおよび植物相同物とのアラインメント。(配列番号1〜3)黒い囲みはアミノ酸同一性を、灰色の囲みは類似性を表示する。最高のアラインメントスコアは、D.メラノガスター(キイロショウジョウバエ)(p=8.4×10−58、受託番号AAF55806)およびA.タリアーナ(シロイヌナズナ)(p=9.4×10−45、受託番号B71413)中の仮想タンパク質を用いて観察した。 図16は、FANCD cDNA配列の63〜5127ヌクレオチド(配列番号5)、およびアミノ酸1〜1472のこの配列によってコードされたポリペプチド(配列番号4)の図である。 図17は、FANCD cDNA(配列番号188)と比較したFANCD−S.ORF(配列番号187)についてのヌクレオチド配列の図である。 図18は、ヒトFANCD2−Lについてのヌクレオチド配列(配列番号6)の図である。 図19は、ヒトFANCD2−Sについてのヌクレオチド配列(配列番号7)の図である。 図20は、マウスFANCD2についてのヌクレオチド配列(配列番号8)の図である。 図21は、FANCF遺伝子のメチル化状態を分析するために使用したプロトコールを示した図である。 図22は、ファンコニ貧血/BRCA経路を示した図である。

Claims (41)

  1. 患者が癌を有するかどうか、もしくは患者の発癌リスクが増加しているかどうかを診断または決定する方法であって、前記方法が癌関連性欠陥の存在についてファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子を検査するステップを含み、このとき1以上の前記癌関連性欠陥の存在が前記患者における癌または癌のリスクの増加を示す方法。
  2. 前記癌が乳癌、卵巣癌、または前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記癌関連性欠陥が、ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子内の1以上の癌関連性欠陥を有していない患者における比率に比較してFANCD2−Sに対するFANCD2−Lの比率の低下を生じさせる、請求項1に記載の方法。
  4. 患者が癌を有するかどうか、もしくは患者の発癌リスクが増加しているかどうかを診断または決定する方法であって、前記方法が癌関連性欠陥の存在についてファンコニ貧血/BRCA経路タンパク質を検査するステップを含み、ここで、前記癌関連性欠陥の存在が前記患者における癌または癌のリスクの増加を示す方法。
  5. 前記癌が乳癌、卵巣癌、または前立腺癌である、請求項4に記載の方法。
  6. 患者の発癌リスクが増加しているかどうかを診断または決定する方法であって:
    (a)前記患者由来の組織サンプルを提供するステップと;
    (b)前記組織サンプルの細胞内でDNA損傷を誘発するステップと;
    (c)前記細胞内のFANCD2−SおよびFANCD2−Lタンパク質の存在についてアッセイするステップと;
    を含み、ここで、FANCD2−L対FANCD2−Sの比率の低下が前記患者の発癌リスクの増加を示す方法。
  7. 前記癌が乳癌、卵巣癌、または前立腺癌である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記患者が、BRCA−1またはBRCA−2遺伝子内に既知の癌関連性欠陥を有していない、請求項6に記載の方法。
  9. 前記患者が、BRCA−1またはBRCA−2遺伝子内に1以上の癌関連性欠陥を有している、請求項6に記載の方法。
  10. 複数の前記組織サンプルがアレイに分配されている、請求項6に記載の方法。
  11. 患者が癌を有するかどうか、または患者の発癌リスクが増加しているかどうかを決定する方法であって、ここで、前記患者がBRCA−1またはBRCA−2遺伝子内に既知の癌を誘発する欠陥を有しておらず、前記方法が:
    (a)前記患者からDNAサンプルを提供するステップと;
    (b)前記患者由来のFANCD2遺伝子を、配列番号115〜186のFANCD2遺伝子特異的ポリヌクレオチドプライマーを用いて増幅させるステップと;
    (c)増幅したFANCD2遺伝子を配列決定するステップと;
    (d)前記患者由来のFANCD2遺伝子配列を対照標準FANCD2遺伝子配列と比較し、ここで、2つの遺伝子配列間の不一致が癌関連性欠陥の存在を示すステップと、
    を含み、ここで1以上の癌関連性欠陥の存在が、前記患者が癌であること、または患者の発癌リスクが増加していることを示す方法。
  12. 前記癌が乳癌、卵巣癌、または前立腺癌である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記患者が、BRCA−1またはFANC−D1/BRCA−2遺伝子内に既知の癌関連性欠陥を有していない、請求項11に記載の方法。
  14. 前記患者が、BRCA−1またはFANC−D1/BRCA−2遺伝子内に1以上の癌関連性欠陥を有している、請求項11に記載の方法。
  15. 複数の前記DNAサンプルがマイクロアレイに分配されている、請求項11に記載の方法。
  16. 化学感作剤をスクリーニングする方法であって、前記方法が:
    (a)ファンコニ貧血/BRCA経路の潜在的阻害剤を提供するステップと;
    (b)1以上の抗腫瘍剤に耐性である腫瘍細胞系を提供するステップと;
    (c)前記腫瘍細胞系およびファンコニ貧血/BRCA経路の前記潜在的阻害剤および前記1以上の抗腫瘍剤を接触させるステップと;および
    (d)ファンコニ貧血/BRCA経路の前記阻害剤および前記抗腫瘍剤の存在下で前記腫瘍細胞系の増殖率を測定するステップと;
    を含み、このとき前記抗腫瘍剤の存在下およびファンコニ貧血/BRCA経路の前記阻害剤の不存在下における腫瘍細胞系の細胞に比較した前記腫瘍細胞系の増殖率の低下が、前記潜在的阻害剤が化学増感剤であることを示す方法。
  17. ファンコニ貧血/BRCA経路の前記潜在的阻害剤がマイクロアレイでスクリーニングすることができ、このとき前記マイクロアレイが、1以上の抗腫瘍剤に耐性である1以上の細胞を含有するアドレスを含有する、請求項16に記載の方法。
  18. ファンコニ貧血/BRCA経路の前記潜在的阻害剤が、FANCD2タンパク質のユビキチン化の阻害剤である、請求項16に記載の方法。
  19. 前記抗腫瘍剤がシスプラチンである、請求項16に記載の方法。
  20. 前記腫瘍細胞系が卵巣癌細胞系である、請求項16に記載の方法。
  21. 癌を有する患者を治療する方法であって、前記癌が抗腫瘍剤に耐性であり、前記方法が治療的有効量のファンコニ貧血/BRCA経路阻害剤を前記抗腫瘍剤と一緒に投与するステップを含む方法。
  22. 前記抗腫瘍剤がシスプラチンである、請求項21に記載の方法。
  23. ファンコニ貧血/BRCA経路の前記潜在的阻害剤がFANCD2タンパク質のユビキチン化の阻害剤である、請求項21に記載の方法。
  24. 前記腫瘍細胞系が卵巣癌細胞系である、請求項21に記載の方法。
  25. 癌治療薬をスクリーニングする方法であって、前記方法が:
    (a)1以上の癌関連性欠陥を有するファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子を含有する1以上の細胞を提供するステップと;
    (b)潜在的癌治療薬の存在下で前記細胞を増殖させるステップと;
    (c)前記潜在的癌治療薬の不存在下で増殖した同等の細胞の増殖率に比較した、前記潜在的癌治療薬の存在下における前記細胞の増殖率を決定するステップと;
    を含み、このとき前記潜在的癌治療薬の不存在下で増殖した同等の細胞の増殖率に比較した前記潜在的癌治療薬の存在下における前記細胞の増殖率の低下が、前記潜在的癌治療薬が癌治療薬であることを示す方法。
  26. 1以上の癌関連性欠陥を有するファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子を含有している前記細胞がアレイにおいて分配されている、請求項26に記載の方法。
  27. 癌患者における治療薬の有効性を予測する方法であって、前記方法が:
    (a)前記治療薬を用いて治療されている前記癌患者由来の組織サンプルを提供するステップと;
    (b)前記組織サンプルの細胞内でDNA損傷を誘発するステップと;
    (c)前記細胞内のFANCD2−Lタンパク質の存在を検出するステップと;
    を含み、ここで、FANCD2−Lの存在が前記癌患者における前記治療薬の有効性の低下を表す方法。
  28. 前記治療薬がシスプラチンである、請求項27に記載の方法。
  29. 抗腫瘍剤に対する腫瘍細胞の耐性を決定する方法であって:
    (a)抗腫瘍剤を用いて治療されている患者由来の組織サンプルを提供するステップと;
    (b)前記組織サンプルの細胞内でDNA損傷を誘発するステップと;
    (c)ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子のメチル化状態を測定するステップと;
    を含み、このときファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子のメチル化が抗腫瘍剤に対する腫瘍細胞の耐性を示す方法。
  30. 前記ファンコニ貧血/BRCA遺伝子がFANCF遺伝子である、請求項29に記載の方法。
  31. 前記抗腫瘍剤がシスプラチンである、請求項29に記載の方法。
  32. FANCD2遺伝子における欠陥を検出するためのキットであって、FANCD2遺伝子に対して特異的なポリヌクレオチドプライマー対、対照標準FANCD2遺伝子配列およびそのためのパッケージング材料を含むキット。
  33. FANCD2−Lの存在を検出するためのキットであって、FANCD2−L特異的抗体およびそのためのパッケージング材料を含むキット。
  34. ファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子のメチル化状態を測定するためのキットであって、FANCD2ポリヌクレオチドプライマー対およびプローブ、対照非メチル化標準FANCD2遺伝子配列およびそのためのパッケージング材料を含むキット。
  35. 化学感作剤についてスクリーニングするためのキットであって、1以上の抗腫瘍剤に耐性である腫瘍細胞系およびそのためのパッケージング材料を含むキット。
  36. 前記腫瘍細胞系が卵巣癌細胞系である、請求項35に記載のキット。
  37. 前記卵巣癌細胞系がシスプラチン耐性卵巣癌細胞系である、請求項36に記載のキット。
  38. 前記抗腫瘍剤がシスプラチンである、請求項36に記載のキット。
  39. 1以上のファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子からの1以上の核酸配列を含有するマイクロアレイ。
  40. 前記遺伝子が、ATM、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCFおよびFANCGからなる群より選択される、請求項39に記載のマイクロアレイ。
  41. 患者が癌を有するかどうか、または患者の発癌リスクが増加しているかどうかを決定する方法であって、前記方法が:
    (a)請求項39のマイクロアレイを提供するステップと;
    (b)前記患者から核酸サンプルを提供するステップと;
    (c)前記核酸サンプルを前記マイクロアレイにおけるファンコニ貧血/BRCA経路からの前記核酸配列にハイブリダイズさせるステップと;
    (d)前記患者由来の核酸サンプルにおけるファンコニ貧血/BRCA経路遺伝子内の突然変異の存在を検出するステップと;
    を含み、ここで、突然変異の存在についての前記検出が、癌を有する患者であるか、または発癌リスクが増加している患者を示す方法。
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