JP2009029752A - 異常型プリオンタンパク質の形成抑制剤 - Google Patents

異常型プリオンタンパク質の形成抑制剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 異常型プリオンタンパク質の天然由来の形成抑制剤を提供すること。
【解決手段】 本発明の異常型プリオンタンパク質の形成抑制剤は、ウーロン茶や紅茶などの発酵茶から抽出された高分子ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とするものである。
【選択図】 図2

Description

本発明は、異常型プリオンタンパク質の天然由来の形成抑制剤に関する。
感染性を有する異常型プリオンタンパク質が脳内に感染すると、増殖して蓄積することにより脳機能を破壊し、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD; Creutzfeldt Jakob Disease)やゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS; Gerstmann-Straussler-Scheinker Syndrome)、牛の狂牛病(BSE; Bovine Spongiform Encephalopathy)などのプリオン病を発症させることはよく知られた事実である。従って、脳内における異常型プリオンタンパク質の形成を抑制することができれば、その増殖・蓄積を阻害することによってプリオン病の発症や症状の進展を防ぐことができることから、異常型プリオンタンパク質の形成抑制方法の探索が精力的に行われており、例えば、特許文献1には、ロイシンなどの分岐鎖を有する必須アミノ酸やトレハロースが、異常型プリオンタンパク質の形成抑制に効果があることが記載されている。
特開2004−292437号公報
しかしながら、異常型プリオンタンパク質の形成に対して優れた抑制効果を有するとともに安全な薬剤の探求は意義深いことである。
そこで本発明は、異常型プリオンタンパク質の天然由来の形成抑制剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールが細胞レベルでの異常型プリオンタンパク質の形成抑制に有効であることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の異常型プリオンタンパク質の形成抑制剤は、請求項1記載の通り、発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とする。
また、請求項2記載の形成抑制剤は、請求項1記載の形成抑制剤において、高分子ポリフェノールが、プロシアニジン構造と、カテキン類のB環同士が結合した構造を部分構造中に少なくとも含んでおり、数平均分子量が9000〜18000であることを特徴とする。
また、請求項3記載の形成抑制剤は、請求項1または2記載の形成抑制剤において、高分子ポリフェノールが、発酵茶葉中の水溶出成分を酢酸エチル抽出し、抽出されなかった酢酸エチル非溶出成分をブタノール抽出し、抽出されたブタノール溶出成分を溶媒に含水アセトンを用いて分画精製することで得られてなることを特徴とする。
また、請求項4記載の形成抑制剤は、請求項1または2記載の形成抑制剤において、高分子ポリフェノールが、発酵茶葉中の水溶出成分を酢酸エチル抽出し、抽出されなかった酢酸エチル非溶出成分をブタノール抽出し、抽出されなかったブタノール非溶出成分を酸性化した後に再びブタノール抽出し、抽出されたブタノール溶出成分を溶媒に含水アセトンを用いて分画精製することで得られてなることを特徴とする。
また、請求項5記載の形成抑制剤は、請求項1記載の形成抑制剤において、発酵茶がウーロン茶または紅茶であることを特徴とする。
本発明によれば、異常型プリオンタンパク質の天然由来の形成抑制剤を提供することができる。
本発明の異常型プリオンタンパク質の形成抑制剤は、発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とするものである。本発明において、発酵茶とは、茶葉の発酵を進行させてなる茶を意味し、その具体例としては、半発酵茶であるウーロン茶や発酵茶である紅茶などが挙げられる。また、本発明において、高分子ポリフェノールとは、分子内にフェノール性水酸基を複数個有する化合物、例えば、フラボノイド系ポリフェノールであるカテキン類が高度に重合したもの(例えば数平均分子量が5000〜30000)を意味する。カテキン類は、C−C−C骨格にフェノール系水酸基を複数個有するフラバン−3−オール骨格を持つ化合物群であり、特に、茶の葉に多く含まれることは当業者によく知られた事実である。カテキンの化学構造は下記に示す通りである。カテキンには様々な誘導体が存在する(例えばカテキンの5’位の水素が水酸基に置換されたものがガロカテキンであり、さらに3位の水酸基が没食子酸とエステル結合したものがガロカテキンガレートである)。本発明において、カテキン類とは、カテキンおよびその誘導体を意味し、その具体例としては、カテキン、カテキンガレート、エピカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートなどが挙げられる。
発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールは、発酵茶の製造過程(発酵、熟成や乾燥など)でカテキン類が高度に重合することで生成すると考えられるものであり、その取得方法としては、例えば、発酵茶葉中の水溶出成分(水、沸騰水、熱水、水蒸気などで抽出することで溶出する成分)を酢酸エチル抽出し、抽出されなかった酢酸エチル非溶出成分をブタノール抽出し、抽出されたブタノール溶出成分を溶媒に含水アセトンを用いて分画精製する方法や、発酵茶葉中の水溶出成分を酢酸エチル抽出し、抽出されなかった酢酸エチル非溶出成分をブタノール抽出し、抽出されなかったブタノール非溶出成分を酸性化した後に再びブタノール抽出し、抽出されたブタノール溶出成分を溶媒に含水アセトンを用いて分画精製する方法などが挙げられる。なお、溶媒に含水アセトンを用いた分画精製は、例えば東ソー株式会社のトヨパールHW−40Fを用いたクロマトグラフィーにより行うことができる。
また、発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールは、水や、メタノールやエタノールやアセトンなどの有機溶媒を用いた抽出操作によって得られる発酵茶葉抽出物を合成吸着剤(例えば芳香族系合成吸着剤である三菱化学株式会社のダイヤイオンHP20など)に吸着させ、吸着剤を30%メタノール溶液などで洗浄した後、70%メタノール溶液などで吸着成分を溶出し、溶出成分から酢酸エチル溶出成分を除去した後、酢酸エチル非溶出成分を溶媒に含水アセトンを用いてクロマトグラフィーにより分画精製する方法などによっても取得することができる。
発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールの具体例としては、プロシアニジン構造と、カテキン類のB環同士が結合した構造を部分構造中に少なくとも含んでおり、数平均分子量が9000〜18000であるものが挙げられる。プロシアニジン構造とは、カテキン類のC環と他のカテキン類のA環が結合した構造である。発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールは、プロシアニジン構造と、カテキン類のB環同士が結合した構造の他に、カテキン類のB環と他のカテキン類のA環が結合した構造などを含んでいてもよい。発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールが有する部分構造の具体例としては以下に示すものが挙げられる。なお、以下に示す部分構造はあくまで例示に過ぎず、発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールは、ベンゾトロポロン、ベンゾキノン、ナフトキノンなどを含む部分構造をはじめとする多種多様の部分構造を有するものと考えられる。
本発明の異常型プリオンタンパク質の形成抑制剤は、発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールを自体公知の方法によって顆粒剤や錠剤やカプセル剤などの経口製剤に製剤化したり、注射剤などの非経口製剤に製剤化したりしてヒトを含む哺乳動物に投与することで、異常型プリオンタンパク質の形成を抑制し、プリオン病の発症や症状の進展を効果的に防ぐ。その投与量は、適用対象の年齢、性別、体重、体調、症状の程度などによって適宜決定することができる。また、本発明の異常型プリオンタンパク質の形成抑制剤は、発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールを種々の形態の食品(サプリメントを含む)にプリオン病の発症や症状の進展に効果をもたらすに足る有効量を添加することで、機能性食品として食してもよい。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって何ら限定して解釈されるものではない。
実施例1:ウーロン茶から抽出される高分子ポリフェノール(その1)の異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用
(A)ウーロン茶から抽出される高分子ポリフェノールの調製
沸騰水1000mLにウーロン茶葉30gを加え、約1分間沸騰後、10分間静置した。その後、ウーロン茶葉をろ過して除去し、ろ液を得た。以上の操作を合計4回行い、ウーロン茶葉120gから水溶出成分を含む水溶液を得た。
次に、水溶出成分から低分子ポリフェノールを除去するために酢酸エチル抽出した。具体的には、水溶液500mLにつき200mLの水飽和酢酸エチルを加え、攪拌し、静置した後、酢酸エチル相を分取する操作を10回繰り返し、酢酸エチル非溶出成分を含む水相を得た。
次に、酢酸エチル非溶出成分を含む水相をブタノール抽出した。具体的には、水相を減圧濃縮することで残存する酢酸エチルを除去した後、500mLにつき200mLの水飽和n−ブタノールを加え、攪拌し、静置した後、ブタノール相を分取する操作を10回繰り返した。分取したブタノール相を集めることでブタノール溶出成分を含む抽出液を得、これを減圧濃縮することで残存するブタノールを除去し、ブタノール溶出成分を含む水溶液を得た。この水溶液を凍結乾燥し、ウーロン茶ブタノール抽出中性画分をウーロン茶葉120gあたり4.5gの収量で得た。
次に、以上の方法で得られたウーロン茶ブタノール抽出中性画分を、クロマトグラフィーを行ってさらに細かく分画した。固定相にはトヨパールHW−40F(東ソー株式会社製)を用い、移動相には含水アセトンを用いた。
まず、直径2.4cm×長さ35cmのカラムにトヨパールHW−40Fを充填した。また、移動相として20%アセトン溶液と50%アセトン溶液をそれぞれ600mL準備した。
次に、ウーロン茶ブタノール抽出中性画分0.3gを20%アセトン溶液3mLに溶解し、得られた溶液をカラムにアプライした。20%アセトン溶液と50%アセトン溶液を用いて固定相に吸着した成分を20〜50%の直線的濃度勾配をかけて0.3g/分の速度で順次溶出させ、フラクションコレクターを用いて溶出液を5gずつ試験管に分取した。
次に、各試験管に分取した溶出液の350nmにおける吸光度を測定し、溶出曲線を作成した。作成した溶出曲線に基づいてウーロン茶ブタノール抽出中性画分をさらに細かく分画し、同じ画分に属する溶出液を集めた後、減圧濃縮することでアセトンを除去し、凍結乾燥し、15個の画分サンプルを得た。
図1にウーロン茶ブタノール抽出中性画分の溶出曲線(溶出パターン)を示す(横軸:溶出液を回収した試験管番号(回収順),縦軸:350nmにおける吸光度)。また、溶出曲線に基づいて細分画して得た15個の画分を図1にあわせて示す。
(B)画分(15)の平均分子量の測定
サイズ排除クロマトグラフィー法(SEC:size exclusion chromatography)によって画分(15)の平均分子量の測定を行った。高速クロマトグラフ装置としてLC−10Aシステム(株式会社島津製作所製)を用い、カラムにはTSK−GELα−3000(カラム寸法:直径7.8mm×長さ30cm,東ソー株式会社製)を用いた。カラム温度は40℃とした。展開溶媒には塩化リチウム10mMを含有したジメチルホルムアミドを用いた。流速は0.6mL/分に設定した。検出器にはLC−10Aシステムに含まれるUV検出器を用いた。検出波長は275nmに設定した。
まず、カラムに分子量標準化合物としてTSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)をアプライし、溶出時間を横軸に、UV検出値を縦軸にしてプロットし、溶出曲線を作成し、これに基づいて較正曲線を作成した。
次に、カラムにジメチルホルムアミドに溶解した画分(15)をアプライし、溶出時間を横軸に、UV検出値を縦軸にしてプロットし、較正曲線に基づいて平均分子量を算出したところ、数平均分子量は1.52×10、重量平均分子量は2.10×10であった。
(C)画分(15)の構造解析
熱分解−ガスクロマトグラフ−マススペクトル(Py−GC−MS)分析装置を用いて画分(15)の構造解析を行った。Py−GC−MS分析装置によれば、サンプルを熱分解装置(Py)で熱分解した後、得られた熱分解生成物をガスクロマトグラフ装置(GC)に導入して分別し、さらに分別した物質をマススペクトル装置(MS)で解析することにより、サンプルの熱的性質や化学構造に関する知見を得ることができる。
最初に、熱分解装置(Py)としてキューリーポイント熱分解装置JHP−5(日本分析工業株式会社製)を用いて画分(15)の熱分解を行った。まず、炉内とガスクロマトグラフ導入部の温度を250℃にした。次に、フェロマグネティック−パイロホイル(厚さ50μm)で0.1〜0.2mgの画分(15)を包み、10%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイドのメタノール溶液5μLを加え、炉内に入れて315℃で4秒間処理することで熱分解を行った後、熱分解生成物をガスクロマトグラフ装置に導いた。なお、10%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイドのメタノール溶液は、画分(15)に含まれる化学構造をメチル化することにより質量分析の段階で揮発性や熱安定性が得られるようにする目的で用いた。
ガスクロマトグラフ−マススペクトル(GC−MS)にはガスクロマトグラフ質量分析装置JMS−600M(日本電子株式会社製)を用いた。また、データ処理装置としてTSS−2000(日本分析工業株式会社製)を用いた。ガスクロマトグラフ用カラムにはキャピラリーカラムHP−1MS(カラム寸法:直径0.25mm×長さ30m,コーティングした液層の厚さ:0.25μm,アジレント・テクノロジー製)を用いた。画分(15)の熱分解生成物とキャリアガスをカラム内に導入し、熱分解生成物中に存在する物質を分離するとともに、保持時間に関するデータを取得した。また、分離した各物質について質量分析を行い、化学構造などに関する知見を得た。なお、カラム内の温度は最初50℃で1分間保持し、次に5℃/分で300℃まで直線的に昇温させ、その後300℃で14分間保持した。キャリアガスにはヘリウムを用いた。流速は1mL/分に設定した。質量分析はイオン源温度250℃,イオン化電圧70eVの条件で行った。
ガスクロマトグラフ−マススペクトルにより得られたデータと、合成標準物質について同様の実験を行うことで得られたデータを比較した結果、画分(15)の熱分解生成物から以下に化学式を示す10種類の化合物が検出された。
なお、上記の化合物の保持時間(tR:retention time)と分子量は次の通りである。
化合物1・・・tR:23.0分,分子量:168
化合物2・・・tR:22.1分,分子量:166
化合物3・・・tR:30.3分,分子量:196
化合物4・・・tR:30.5分,分子量:226
化合物5・・・tR:31.1分,分子量:254
化合物6・・・tR:32.4分,分子量:254
化合物7・・・tR:32.9分,分子量:254
化合物8・・・tR:35.2分,分子量:284
化合物9・・・tR:36.9分,分子量:312
化合物10・・tR:46.5分,分子量:450
以上の結果から、画分(15)は、上記の10種類の熱分解生成物を与える化学構造を有する物質であることがわかった。質量分析の結果からは、この物質がカテキン類の2’位,5’位,6’位と他のカテキン類のいずれかの位置の間、例えば、カテキン類同士の8位と6’位の間,6位と6’位の間,6’位と6’位の間などに重合部位を有することが示唆された。また、別途に行った画分(15)のタンナーゼ分解の結果からは、この物質にはエピカテキンやエピガロカテキンの3位の水酸基にエステル結合していると考えられる没食子酸残基が含まれることが示された。塩酸−ブタノール分解の結果からは、この物質は部分構造中にカテキン類同士の4位と8位の間または4位と6位の間で重合したプロシアニジン構造を含むことが推測された。以上の結果を総合的に判断すると、画分(15)は、例えば、以下に示す、プロシアニジン構造と、カテキン類のB環同士が結合した構造を部分構造中に少なくとも含んでいる高分子ポリフェノールであることがわかった(なお、この高分子ポリフェノールに含まれる部分構造の種類は多種多様であると考えられ、以上の結果はベンゾトロポロン、ベンゾキノン、ナフトキノンなどを含む部分構造の存在を否定するものではない)。
(D)画分(15)の高分子ポリフェノールの異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用
(実験方法)
異常型プリオンタンパク質形成の試験管内測定法(M.R.SCOTT, R.KOHLER, D.FOSTER and S.B.PRUSINER; Chimeric prion protein expression in cultured cells and transgenic mice; Protein Sci. 1992, 1: 986-997)に従って、異常型プリオンタンパク質を保持する細胞培養株の1つであるScN2a細胞(マウス神経芽細胞株)に、MHM2配列(ヒトプリオンタンパク質のアミノ酸配列の一部を挿入したマウスプリオンタンパク質のアミノ酸配列)を標識として持つMHM2−プリオン遺伝子を導入して正常型MHM2−プリオンタンパク質を発現させ、4日間の培養によって発現した正常型MHM2−プリオンタンパク質が異常型MHM2−プリオンタンパク質に変換される過程に対する阻止作用でもって、画分(15)の高分子ポリフェノールの異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用を評価した。異常型MHM2−プリオンタンパク質であるか否かは、プロテイナーゼK処理に対して耐性獲得を有するか否かで評価した。具体的には、画分(15)の高分子ポリフェノールを所定の濃度で添加または非添加の条件で4日間培養したMHM2−プリオンタンパク質発現ScN2a細胞(1×10細胞)を、0.5%Triton−X100を含む細胞溶解液で溶解した後、遠心してその上清に1μg/mLになるようにプロテイナーゼK(Sigma社製)を加え、37℃で1時間処理した。次いで、プロテイナーゼK処理に耐性の分子・微細構造を超遠心により回収し、SDSゲル電気泳動にかけた。MHM2−プリオンタンパク質に対するモノクローナル抗体(3F4、Signet社製)を用いたウエスタンブロット法により、15−30kDaに分布する3種類のプロテイナーゼK耐性ペプチドの存在の有無をもって異常型MHM2−プリオンタンパク質形成の指標とし、実験を行った。
(実験結果)
結果を図2に示す。AはプロテイナーゼK(PK)処理前のウエスタンブロットの結果であり、BはプロテイナーゼK処理後のウエスタンブロットの結果である。図2から明らかなように、画分(15)の高分子ポリフェノールを添加せずに4日間の培養を行った場合(コントロール)、プロテイナーゼK処理後において異常型MHM2−プリオンタンパク質の指標である26,21,17kDaのペプチドが存在したが、画分(15)の高分子ポリフェノールを50μg/mLまたは12μg/mLの濃度で添加して4日間の培養を行った場合、プロテイナーゼK処理後においてこれらのペプチドは存在しなかった。この結果は、画分(15)の高分子ポリフェノールが、正常型MHM2−プリオンタンパク質の異常型MHM2−プリオンタンパク質への変換を阻止したことにより、正常型MHM2−プリオンタンパク質がプロテイナーゼKによって分解されたことを意味する。従って、画分(15)の高分子ポリフェノールは、異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用を有することがわかった。
実施例2:ウーロン茶から抽出される高分子ポリフェノール(その2)の異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用
実施例1の(A)でブタノール溶出成分を含む抽出液を得た後に残った水相を塩酸でpHを約3にした後、500mLにつき200mLの水飽和n−ブタノールを加え、攪拌し、静置した後、ブタノール相を分取する操作を5回繰り返した。分取したブタノール相を集めることでブタノール溶出成分を含む抽出液を得、これを減圧濃縮することで残存するブタノールを除去し、ブタノール溶出成分を含む水溶液を得た。この水溶液を凍結乾燥し、ウーロン茶ブタノール抽出酸性画分をウーロン茶葉120gあたり3.2gの収量で得た。このウーロン茶ブタノール抽出酸性画分を、実施例1の(A)と同様にして細かく分画し、15個の画分サンプルを得た。図3にウーロン茶ブタノール抽出酸性画分の溶出曲線(溶出パターン)を示す(横軸:溶出液を回収した試験管番号(回収順),縦軸:350nmにおける吸光度)。また、溶出曲線に基づいて細分画して得た15個の画分を図3にあわせて示す。実施例1の(B)と同様にしてサイズ排除クロマトグラフィー法により画分(14)の高分子ポリフェノールの平均分子量を測定したところ、数平均分子量は1.73×10、重量平均分子量は2.44×10であった。この画分(14)の高分子ポリフェノールの異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用を実施例1の(D)と同様にして評価したところ、実施例1の画分(15)の高分子ポリフェノールと同様の作用が認められた。
実施例3:紅茶から抽出される高分子ポリフェノール(その1)の異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用
沸騰水500mLに紅茶葉25gを加え、10分間穏やかに沸騰後、直ちにブフナーロートとで紅茶葉をろ過して除去し、ろ液を得た。以上の操作を合計4回行い、紅茶葉100gから水溶出成分を含む水溶液を得た。以降の操作を実施例1の(A)と同様にして紅茶ブタノール抽出中性画分を紅茶葉100gあたり1.5gの収量で得た。この紅茶ブタノール抽出中性画分を、実施例1の(A)と同様にして細かく分画し、16個の画分サンプルを得た。図4に紅茶ブタノール抽出中性画分の溶出曲線(溶出パターン)を示す(横軸:溶出液を回収した試験管番号(回収順),縦軸:350nmにおける吸光度)。また、溶出曲線に基づいて細分画して得た16個の画分を図4にあわせて示す。実施例1の(B)と同様にしてサイズ排除クロマトグラフィー法により画分(15)の高分子ポリフェノールの平均分子量を測定したところ、数平均分子量は1.36×10、重量平均分子量は1.89×10であった。この画分(15)の高分子ポリフェノールの異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用を実施例1の(D)と同様にして評価したところ、実施例1の画分(15)の高分子ポリフェノールと同様の作用が認められた。
実施例4:紅茶から抽出される高分子ポリフェノール(その2)の異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用
実施例2と同様にして紅茶ブタノール抽出酸性画分を紅茶葉100gあたり1.9gの収量で得た。この紅茶ブタノール抽出酸性画分を、実施例1の(A)と同様にして細かく分画し、11個の画分サンプルを得た。図5に紅茶ブタノール抽出酸性画分の溶出曲線(溶出パターン)を示す(横軸:溶出液を回収した試験管番号(回収順),縦軸:350nmにおける吸光度)。また、溶出曲線に基づいて細分画して得た11個の画分を図5にあわせて示す。実施例1の(B)と同様にしてサイズ排除クロマトグラフィー法により画分(11)の高分子ポリフェノールの平均分子量を測定したところ、数平均分子量は9.43×10、重量平均分子量は1.48×10であった。この画分(11)の高分子ポリフェノールの異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用を実施例1の(D)と同様にして評価したところ、実施例1の画分(15)の高分子ポリフェノールと同様の作用が認められた。
製剤例1:錠剤
実施例1の画分(15)の高分子ポリフェノールの凍結乾燥粉末5g、乳糖78g、ステアリン酸マグネシウム17g、合計100gを均一に混合し、常法に従って錠剤とした。
製剤例2:ビスケット
薄力粉31g、全卵16g、バター16g、砂糖24g、水10g、ベーキングパウダー1g、実施例3の画分(15)の高分子ポリフェノールの凍結乾燥粉末2g、合計100gを用い、常法に従ってビスケットとした。
本発明は、異常型プリオンタンパク質の天然由来の形成抑制剤を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
実施例1におけるウーロン茶ブタノール抽出中性画分の溶出曲線と溶出曲線に基づいて細分画して得た15個の画分を示すグラフである。 同、画分(15)の高分子ポリフェノールの異常型プリオンタンパク質の形成に対する抑制作用を示すウエスタンブロットの結果である。 実施例2におけるウーロン茶ブタノール抽出酸性画分の溶出曲線と溶出曲線に基づいて細分画して得た15個の画分を示すグラフである。 実施例3における紅茶ブタノール抽出中性画分の溶出曲線と溶出曲線に基づいて細分画して得た16個の画分を示すグラフである。 実施例4における紅茶ブタノール抽出酸性画分の溶出曲線と溶出曲線に基づいて細分画して得た11個の画分を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 発酵茶から抽出される高分子ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とする異常型プリオンタンパク質の形成抑制剤。
  2. 高分子ポリフェノールが、プロシアニジン構造と、カテキン類のB環同士が結合した構造を部分構造中に少なくとも含んでおり、数平均分子量が9000〜18000であることを特徴とする請求項1記載の形成抑制剤。
  3. 高分子ポリフェノールが、発酵茶葉中の水溶出成分を酢酸エチル抽出し、抽出されなかった酢酸エチル非溶出成分をブタノール抽出し、抽出されたブタノール溶出成分を溶媒に含水アセトンを用いて分画精製することで得られてなることを特徴とする請求項1または2記載の形成抑制剤。
  4. 高分子ポリフェノールが、発酵茶葉中の水溶出成分を酢酸エチル抽出し、抽出されなかった酢酸エチル非溶出成分をブタノール抽出し、抽出されなかったブタノール非溶出成分を酸性化した後に再びブタノール抽出し、抽出されたブタノール溶出成分を溶媒に含水アセトンを用いて分画精製することで得られてなることを特徴とする請求項1または2記載の形成抑制剤。
  5. 発酵茶がウーロン茶または紅茶であることを特徴とする請求項1記載の形成抑制剤。
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