本発明の選択的な実施形態を、図面を用いて説明する。以下の本発明にかかる実施形態の説明は単なる例示であって、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義される本発明を限定するものではない。
−第1実施形態−
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態にかかるハブ12を備える自転車10を示す。
図2に示すように、ハブ12は、爪制御部材18(図3〜図5、図7および図8参照)およびクラッチリング20の移動を制御するシフト機構16(シフト制御機構)を有する動力伝達アッセンブリ14を備える。図59〜図66に示すとともに以下により詳細に説明する複数の動力伝達経路に沿ってトルクを伝達する動力伝達アッセンブリ14の種々のエレメントを構成するために、爪制御部材18およびクラッチリング20は、所定の位置に選択的に移動可能である。さらに、本発明のシフト機構16は、爪制御部材18を、サイクリストによって選択可能な動力伝達経路に対応する別々の位置へ、正確に配置するよう構成されるインデックスリングすなわち位置決め部材22を備える。
図2に示すように、ハブ12は、基本的に、ハブ軸24と、駆動体25と、ハブシェル26と、動力伝達アッセンブリ14と、シフト機構16と、を備える。
次に、図3、図4、図6および図46を特に参照して、ハブ軸24を、簡単に説明する。ハブ軸24は、基本的に、従来と同様に自転車10のリアフレームに回転不能に装着される長いシャフトである。ハブ軸24は、シフト制御サポート部27と、変速サポート部28と、を備える。
ハブ軸24のシフト制御サポート部27は、概ね均一な直径を有し、そして、シフト制御サポート部27の一部に形成された、1組の軸方向に延びる溝30(図3および図4において一方の溝30のみが見えている)を有する。また、シフト制御サポート部27は、図45から明らかなように、3つの凸部32,34,36を有する。図3および図4では、凸部32,34のみが見えている。さらに、シフト制御サポート部27は環状凹部38を有する。
図2に示すとともに、図3および図6から明らかなように、ハブ軸24の変速サポート部28は、動力伝達アッセンブリ14の種々の部分を受けて保持するように構成されている。ハブ軸24の変速サポート部28は、基本的に、シフト制御サポート部27の外径より大きい最大径を有するローブすなわち凸状部を備える。変速サポート部28は、互いに交わる、一連の、周方向に延びる凹部と、軸方向に延びる溝と、をさらに有している。具体的には、図3および図6に示すように、変速サポート部28は、以下の周方向に延びる凹部を有する。すなわち、変速サポート部28は、スプリング保持凹部40と、第1爪制御アーム収容凹部42と、第2爪制御アーム収容凹部44と、スプリング収容凹部46,48と、第3爪制御アーム収容凹部50と、スプリング収容凹部52と、を有する。さらに、変速サポート部28は、以下の軸方向に延びる溝を有する。すなわち、第1ロック溝60と、第2ロック溝62と、第1、第2および第3部分64a,64b,64cを有する爪収容溝64と、図46に示されるコントロールアーム収容溝68と、を有する。変速サポート部28のこれらの溝および凹部は、後述する動力伝達アッセンブリ14のエレメントを収容する。
図2から明らかなように、駆動体25は、従来と同様に従来のベアリングB1によって、ハブ軸24回りに回転可能に支持されており、ハブシェル26は、従来と同様に従来のベアリングB2,B3によって、ハブ軸24および駆動体25に回転可能に支持される。駆動体25は、動力伝達アッセンブリ14によって、ハブシェル26に選択的に連結可能であり、これにより、駆動体25に伝達されたトルクが、後述する複数の選択される動力伝達経路のうちのいずれか1つで、ハブシェル26に伝達される。駆動体25については後述する。
ハブシェル26は、第1トルク変速ギア歯26a(図2の右側)と、第2トルク変速ギア歯26b(図2の左側)と、を備える。その機能を、以下に、より詳細に説明する。
動力伝達アッセンブリ14は、多段内装ハブ変速である。動力伝達アッセンブリ14は、基本的に、(とりわけ)爪制御部材18と、クラッチリング20と、駆動体25と、リング状シフトキー部材70と、第1太陽ギア72と、第2太陽ギア74と、第3太陽ギア76と、第4太陽ギア78と、第2太陽ギア爪80と、第3太陽ギア爪82と、第4太陽ギア爪84と、遊星ギアキャリヤ86と、第1セットの遊星ギア88と、第2セットの遊星ギア90と、爪92と、第1リングギア94と、第2リングギア96と、爪98と、シフト機構16と、を備える。動力伝達機構14は、駆動体25とハブシェル26との間に機能的に配置されて、回転力を駆動体25からハブシェル26へと、後述する複数の異なるトルク動力伝達経路を介して伝える。
次に、特に図2、図3および図4を参照して、爪制御部材18を説明する。爪制御部材18は、ベーススリーブ100と、第1制御スリーブ102と、第2制御スリーブ104と、第3制御スリーブ106と、ベーススリーブ100の遠端部108と、を基本的に有するシフト制御部材である。ベーススリーブ100は、ハブ軸24の変速サポート部28のほぼ全長さにわたって延びる直線状の部分である。図5に示すように、ハブ12が完全に組み立てられた状態では、ベーススリーブ100は、ハブ軸24の変速サポート部28の制御アーム収容溝68内に配置されており、第1制御スリーブ102は第1爪制御アーム収容凹部42内に配置され、第2制御スリーブ104は第2爪制御アーム収容凹部44内に配置され、第3制御スリーブ106は第3爪制御アーム収容凹部50内に配置されている。
シフトプロセスにおいて、第1制御スリーブ102、第1爪制御アーム収容凹部42、第2制御スリーブ104、第2爪制御アーム収容凹部44、第3制御スリーブ106および第3爪制御アーム収容凹部50は、支持面として機能する。より具体的には、第1制御スリーブ102は第1爪制御アーム収容凹部42内で周方向にスライド可能であり、第2制御スリーブ104は第2爪制御アーム収容凹部44内で周方向にスライド可能であり、第3制御スリーブ106は第3爪制御アーム収容凹部50内で周方向にスライド可能である。さらに、爪制御部材18がハブ軸24回りに周方向に移動されるとき、図47および図48に示すように、その周方向移動が、制御アーム収容溝68の周方向側部のいずれかの面と当接するベーススリーブ100によって制限されている。図47において、爪制御部材18は、一のポジションへと回転され、また、図48において、爪制御部材18は、他のポジションへと回転されている。
図7および図8から明らかなように、爪制御部材18の第1制御スリーブ102は爪制御凹部102a,102bを有している。ハブ12を完全に組み立てた状態では、図5に示すように、第1制御スリーブ102はハブ軸24の第1爪制御アーム収容凹部42内に配置される。爪制御凹部102a,102bは、第4太陽ギア爪84の凸部84aと相互作用するように構成されている。例えば、爪制御部材18が動力伝達経路を選択するよう移動されるとき、第4太陽ギア爪84の凸部84aは爪制御凹部102a,102bの一方あるいは他方へと移動でき、そして、第4太陽ギア爪84は径方向外側へ移動できる。その結果、第4太陽ギア爪84は第4太陽ギア78の内面と係合し、これにより、第4太陽ギア78はハブ軸24に対して相対的に回転しなくなる。
図7および図8から明らかなように、爪制御部材18の第2制御スリーブ104は爪制御凹部104a,104bを有している。ハブ12を完全に組み立てた状態では、図5に示すように、第2制御スリーブ104はハブ軸24の第2爪制御アーム収容凹部44内に配置される。爪制御凹部104a,104bは第3太陽ギア爪82の凸部82aと相互作用するように構成されている。例えば、爪制御部材18が動力伝達経路を選択するよう移動されるとき、第3太陽ギア爪82の凸部82aは爪制御凹部104a,104bの一方あるいは他方へと移動でき、そして、第3太陽ギア爪82は径方向外側へ移動できる。その結果、第3太陽ギア爪82は第3太陽ギア76の内面と係合し、これにより、第3太陽ギア76はハブ軸24に対して相対的に回転しなくなる。
図7および図8から明らかなように、爪制御部材18の第3制御スリーブ106は爪制御凹部106a,106bを有している。ハブ12を完全に組み立てた状態では、図5に示すように、第3制御スリーブ106はハブ軸24の第3爪制御アーム収容凹部50内に配置される。爪制御凹部106a,106bは第2太陽ギア爪80の凸部80aと相互作用するように構成されている。例えば、爪制御部材18が動力伝達経路を選択するよう移動されるとき、第2太陽ギア爪80の凸部80aは爪制御凹部106a,106bの一方あるいは他方へと移動でき、そして、第2太陽ギア爪80は径方向外側へ移動できる。その結果、第2太陽ギア爪80は第2太陽ギア74の内面と係合し、これにより、第2太陽ギア74はハブ軸24に対して相対的に回転しなくなる。
爪制御部材18の位置決めにより、どの動力伝達経路すなわちどのギア比がハブ12内で係合状態となるかが決定される。ここで説明する発明の実施形態においては、8つの動力伝達経路(後述)がある。本発明を、任意の数の動力伝達経路を有するハブに用いることができ、本発明が8つの動力伝達経路を有するハブに用いることに限定されない。例えば、本発明を、2つの動力伝達経路あるいはそれより多い動力伝達経路、またあるいは10以上もの動力伝達経路を有するハブに用いることができる。
図3、図4および図5に示すように、爪制御部材18のベーススリーブ100の遠端部108は、ハブ軸24の軸中心に対して相対的に径方向に延びている1つのギア歯110を有する。以下に、ギア歯110の機能を説明する。
図2および図10に示すように、クラッチリング20は、外周に、第1セットのギア歯120と、第2セットのギア歯122と、を備える環状の部材である。クラッチリング20の内周面は、保持クリップ124と、径方向内側への延設部126と、を備える。シフトキー部材70は、保持クリップ124と径方向内側への延設部126との間で、軸方向に移動制限されている。クラッチリング20は、ハブシェル26および駆動体25から径方向内側に、かつシフト機構16から径方向外側に配置される。図53および図54に示すように、クラッチリング20は、ハブ軸24に対して相対的な軸方向の移動の制限を受けることができ、かつ、ハブ軸24の回りに回転可能である。
次に、図2を参照して駆動体25を説明する。駆動体25は、従来と同様にベアリングB1によってハブ軸24回りに回転可能に支持される、いくつかの異なる直径部を有する概ね環状の部材である。駆動体25は、ハブシェル26を支持するベアリングB3をさらに支持する。
駆動体25は、径方向内面のギア歯134と、チェーンスプロケットサポート部136と、径方向外側部の爪係合部138と、径方向内側部のシフトアシストギア歯140と、を備える。ギア歯134はクラッチリング20の第1セットのギア歯120と噛み合うよう設けられており、これにより、クラッチリング20は、常に駆動体25とともに回転する。しかしながら、クラッチリング20は、後述の通り、軸方向にギア歯134の長さに沿って移動可能である。駆動体25のチェーンスプロケットサポート部136は、駆動体25とともに回転するよう駆動体25に固定的に取り付けられているチェーンスプロケット142を支持する。駆動体25、クラッチリング20、およびチェーンスプロケット142は、単一ユニットとしてともに回転する。爪係合部138およびシフトアシストギア歯140の目的を以下に説明する。
クラッチリング20は、図54および図59〜図62に示す第1ポジションから、図2、図53および図63〜図66に示す第2ポジションへと移動可能である。図54および図59〜図62に示す第1ポジションにおいて、クラッチリング20は、アイドル状態にあり、駆動体25とともに回転する。したがって、クラッチリング20が第1ポジションにある状態では、駆動体25からのトルクは、以下に詳細に説明するように、図59〜図62に示す第1動力伝達経路の第1グループにおいては、爪92を介して第1リングギア94に伝達される。図2、図53および図63〜図66に示す第2ポジションにおいては、クラッチリング20の第2のセットギア歯122は、遊星ギアキャリヤ86のギア歯と係合し、噛み合っており、駆動体25からのトルクは、以下に詳細に説明するように、図63〜図66に示す動力伝達経路の第2グループにおいては、駆動体25から遊星ギアキャリヤ86へと伝達される。後述する通り、クラッチリング20は、第1および第2ポジション間で、シフト機構16によって移動される。以下により詳細に説明するように、シフトキー部材70は、クラッチリング20をシフト機構16の一部分に連結するよう機能し、これにより、クラッチリング20がクラッチリング20の第1ポジション(図54)と第2ポジション(図53)との間で移動する。
次に、特に図2、図4および図10を参照して、シフトキー部材70を説明する。シフトキー部材70は、環状のリング状部材であり、1組の径方向内側に延設されるカム従動部144を有する。上述の通り、図2および図10に示すように、シフトキー部材70の外側環状部は、クラッチリング20の保持クリップ124と径方向内側への延設部126との間で移動が制限されている。
次に、特に図2を参照して、第1太陽ギア72を説明する。第1太陽ギア72は、従来と同様にハブ軸24に回転不能に支持される。第1太陽ギア72は、従来と同様に、第1セットの遊星ギア88の小径ギア歯と噛み合う径方向外側に延設されるギア歯を有する。
図2に示すように、カム部152は第1太陽ギア72に隣接して配置される。カム部152はハブ軸24の変速サポート部28に回転不能に組み付けられる。図4から明らかなように、カム部152は、1組の第1カム面154、第2カム面156および第3カム面158を有する。以下により詳細に説明する通り、カム部152は、シフトキー部材70およびクラッチリング20を、図53および図54に示す第1および第2ポジション間で移動させるよう構成される。シフトキー部材70は、第1太陽ギア72のカム部152の外径より少し大きい全体的な内径(1組の径方向内側に延設されるカム従動部144がない部分)を有する。しかしながら、シフトキーガイド170の説明において以下にさらに説明するように、1組の径方向内側に延設されるカム従動部144は、カム部152の内面を越えて径方向内側に延びている。
次に、特に図2および図3を参照して、第2太陽ギア74、第3太陽ギア76、および第4太陽ギア78を説明する。第2太陽ギア74、第3太陽ギア76、および第4太陽ギア78は、すべて、ハブ軸24に対して相対的に選択的に回転可能である。第2太陽ギア74、第3太陽ギア76、および第4太陽ギア78は、それぞれ従来の内部爪ラチェットおよび外側ギア歯を有する。
図3に示すように、第2太陽ギア爪80は、制御部80aと、スプリング80bと、を備える。第2太陽ギア爪80の制御部80aは、ハブ軸24の凹部64の第3部分64c内に回動可能に保持されており、これにより、第2太陽ギア爪80が径方向外側に選択的に回動することができ、そして、第2太陽ギア74の内部爪ラチェット歯に対して段階的に移動することができる。スプリング80bは、スプリング収容凹部52に組み付けられ、第2太陽ギア爪80を外側へ付勢する。第2太陽ギア爪80は、ハブ軸24に対して相対的なポジションに留まり、爪制御部材18の位置決めに応じて第2太陽ギア74の内側ラチェット歯と選択的に係合する。より具体的には、第3制御スリーブ106の爪制御凹部106a,106bのうちの一方が、第2太陽ギア爪80の制御部80aと並ぶとき、第2太陽ギア爪80は径方向外側に移動して第2太陽ギア74の内側ラチェット歯と当接し、これにより第2太陽ギア74が一方の回転方向にのみ回転可能となる。言いかえれば、第2太陽ギア爪80は一方向クラッチとして機能する。それ以外のとき、制御部80aと第3制御スリーブ106の他の残りの部分との当接により、第2太陽ギア爪80が径方向内側に引っ張られ、第2太陽ギア74は従来と同様にハブ軸24回りにフリーホイール状態である。
同様に、第3太陽ギア爪82は、制御部82aと、スプリング82bと、を備える。第3太陽ギア爪82の制御部82aは、ハブ軸24の凹部64の第2部分64b内に回動可能に保持されており、これにより、第3太陽ギア爪82が、径方向外側に選択的に回動することができ、そして、第3太陽ギア76の内部爪ラチェット歯に対して段階的に移動することができる。スプリング82bは、スプリング収容凹部48に組み付けられ、第3太陽ギア爪82を外側へ付勢する。第3太陽ギア爪82は、ハブ軸24に対して相対的なポジションに留まり、そして、爪制御部材18の位置決めに応じて、第3太陽ギア76の内側ラチェット歯と選択的に係合する。より具体的には、第2制御スリーブ104の爪制御凹部104a,104bのうちの一方が第3太陽ギア爪82の制御部82aと並ぶとき、第3太陽ギア爪82は径方向外側に移動して第3太陽ギア76の内側ラチェット歯と当接し、これにより第3太陽ギア76が一方の回転方向にのみ回転可能となる。言いかえれば、第3太陽ギア爪82は一方向クラッチとして機能する。それ以外のとき、制御部82aと第2制御スリーブ104の他の残りの部分との当接により、第3太陽ギア爪82が径方向内側に引っ張られ、第3太陽ギア76は従来と同様にハブ軸24回りにフリーホイール状態である。
同様に、第4太陽ギア爪84は、制御部84aと、スプリング84bと、を備える。第4太陽ギア爪84の制御部84aは、ハブ軸24の凹部64の第1部分64a内に回動可能に保持されており、これにより、第4太陽ギア爪84が、径方向外側に選択的に回動することができ、そして、第4太陽ギア78の内部爪ラチェット歯に対して段階的に移動することができる。スプリング84bは、スプリング収容凹部46に組み付けられ、第4太陽ギア爪84を外側へ付勢する。第4太陽ギア爪84は、ハブ軸24に対して相対的なポジションに留まり、爪制御部材18の位置決めに応じて、第3太陽ギア76の内側ラチェット歯と選択的に係合する。より具体的には、第1制御スリーブ102の爪制御凹部102a,102bのうちの一方が第4太陽ギア爪84の制御部84aと並ぶとき、第4太陽ギア爪84は、径方向外側に移動して第4太陽ギア78の内側ラチェット歯と当接し、これにより第4太陽ギア78が一方の回転方向にのみ回転可能となる。言いかえれば、第4太陽ギア爪84は一方向クラッチとして機能する。それ以外のとき、制御部84aと第1制御スリーブ102の他の残りの部分との当接により、第4太陽ギア爪84が径方向内側に引っ張られ、第4太陽ギア78は従来と同様にハブ軸24回りにフリーホイール状態である。
図2に示すように、遊星ギアキャリヤ86は、第1セットの遊星ギア88および第2セットの遊星ギア90を支持するシャフトを備える従来のケージ状部材である。より具体的には、遊星ギアキャリヤ86は、ハブ軸24回りに回転可能に支持される環状部を有する。遊星ギアキャリヤ86は、従来と同様に、第1および第2セットの遊星ギア88,90を支持し保持するよう構成されている。遊星ギアキャリヤ86は、小径部160と、大径部162と、を有する。図2の左側に示すように、小径部160は、ベアリングアッセンブリB2に隣接して配置される。遊星ギアキャリヤ86の大径部162は、第1および第2遊星ギア88,90のセットを支持する複数のシャフト164を備えており、これにより、第1および第2遊星ギア88,90は、遊星ギアキャリヤ86のシャフト164の回りに自由に回転する。また、大径部162は、図2、図53および図63〜66に示すクラッチリング20が第2ポジションにある状態では、クラッチリング20の第2セットのギア歯122と係合するように構成されている、クラッチリング20に隣接するギア歯を有する。
遊星ギアキャリヤ86は、好ましくは、3つの第1セットの遊星ギア88(図2では1つのみを図示)と、3つの第2セットの遊星ギア90(図2では1つのみを図示)と、を支持する。それぞれの第1セットの遊星ギア88は、小径セットのギア歯88aと、大径セットのギア歯88bと、を有する。小径セットのギア歯88aは第1太陽ギア72の外側ギア歯と噛み合う。第1太陽ギア72の大径セットのギア歯88bは第1リングギア94の内側ギア歯と噛み合う。
それぞれの第2セットの遊星ギア90は、小径セットのギア歯90aと、中間径セットのギア歯90bと、1セットの大径セットのギア歯90cと、を有する。小径セットのギア歯90aは、第2太陽ギア74の外側ギア歯および第2リングギアの内側ギア歯96と噛み合う。中間径セットのギア歯90bは、第3太陽ギア76の外側ギア歯と噛み合う。大径セットのギア歯90cは、第4太陽ギア78の外側ギア歯と噛み合う。
爪92は、駆動体25の爪係合部138と第1リングギア94の一部との間に配置される。爪92は、駆動体25から第1リングギア94へトルクを伝達する一方向クラッチとして機能する。
図2に示すように、第1リングギア94は、第1遊星ギア88と、遊星ギアキャリヤ86の大径部162の一部と、爪928と、を取り囲む環状部材である。第1リングギア94は、ハブ軸24、ハブシェル26および遊星ギアキャリヤ86に対して相対的に回転可能である。第1リングギア94は複数の内側ラチェット歯94aおよび内側ギア歯94bを有する。内側ギア歯94bは第1遊星ギア88の大径ギア歯88aと噛み合う。内側ラチェット歯94aは爪92と係合するよう構成されている。爪98は、第1リングギア94が駆動体25に対して一方向にのみ回転することを可能にする一方向クラッチとして機能する。
図2に示すように、第2リングギア96は、ハブシェル26に、複数の従来のローラおよびカム面を有するローラクラッチ166の態様の一方向クラッチを介して連結される。
図2に示すように、爪98は、遊星ギアキャリヤ86の小径部100の一部に、従来と同様に保持される。爪98は遊星ギアキャリヤ86からハブシェル26へトルクを伝達する一方向クラッチとして機能する。
第2、第3および第4太陽ギア80,82,84、遊星ギアキャリヤ86、および第1および第2セットの遊星ギア88の全体的な動作および機能は、例えば米国特許6,607,465号に開示された内容と同様である。
次に、図4をまず参照して、シフト機構16を説明する。シフト機構16は、基本的に、以下のエレメントを備える。すなわち、爪制御部材18と、シフトキー部材70と、シフトキーガイド170と、周方向付勢スプリング172と、位置決め部材22と、軸方向付勢スプリング174と、クリップ176と、スプリングワッシャ178と、爪サポート180と、1組の爪182と、1組の爪シャフト184と、シフトスリーブ186と、爪制御ワッシャ188と、保持プレート190と、ベアリングコーン191と、アクチュエータプレート192と、スペーサ194と、カップリングプレート196と、スプリング198と、回転可能なケーブルブラケット200と、固定ケーブルブラケット202と、を備える。
図4に示したエレメントの相対的な寸法は、必ずしも一定の縮尺ではないことは、以下の説明から理解されよう。例えば、種々のエレメントの内径および外径は、隣接したエレメントと、正確に一定の縮尺ではない場合もある。むしろ、シフト機構16の種々のエレメント間の相対的な寸法関係は、図2、図53および図54において、同じく後述する種々のエレメント間の動作関係によって明らかにされている。
シフト機構16の爪制御部材18およびシフトキー部材70は、上述の通りである。ここでは、爪制御部材18およびシフトキー部材70を、爪制御部材18と、シフトキー部材70と、シフト機構16の種々の他のエレメントと、の動作関係を説明することを目的として、以下に追加説明する。
次に、図11〜図14および図49〜図51を参照して、シフトキーガイド170を説明する。図49〜図51に示すように、シフトキーガイド170はハブ軸124回りに回転可能に配置される。
図11〜図14を参照して、シフトキーガイド170は、中央ディスク部210と、周囲に円弧状壁部212,214,216の組と、を有する全体的にカップ形状である。中央ディスク部210は、切り欠きすなわち凹部222と、3つのギア歯状凸部223と、を有する中央ボア220(中央ハブ軸収容アパーチャ)を有する(図11、図12、図49および図50参照)。中央ボア220は、ハブ軸24の一部の周辺にフィットするように形成されている。具体的には、図49および図50に示すように、中央ボア220は、それぞれの凸部32,34,36の最も外側の面によって定義される直径とほぼ同じかあるいは少し大きい直径を有する。したがって、シフトキーガイド170は、ハブ軸24回りに、凸部32,34,36より外側で回転可能である。
図49および図50に示すように、シフトキーガイド170の中央ディスク部210の凹部222は、爪制御部材18の遠端部108を収容可能である。したがって、シフトキーガイド170が回転されると、すなわちハブ軸24回りに周方向変位を受けると、爪制御部材18は、ハブ軸24回りにシフトキーガイド170と一体に移動する。言いかえれば、シフトキーガイド170および爪制御部材18は、ハブ軸24に対して相対的に単一ユニットとして回転する。
それぞれのシフトキーガイド170のギア歯状凸部223は、逆V字形状を形成する傾斜平面を有する。このV字形状は、爪制御部材18の遠端部108のギア歯110の形状と一致する相補状である。また、ギア歯状凸部223の径方向内側部(図51では破線で示す)は、爪制御部材18の遠端部108のギア歯110と周方向に並ぶ。
図11〜図13および図52から明らかなように、シフトキーガイド170の円弧状壁部212は、中央のディスク部210から円弧状壁部214,216のどちらよりも、より離れて延設される。円弧状壁部212の端部は当接部224を有する。当接部224は、後述する通り、爪サポート180の一部と当接するように形成されている。
円弧状壁部212,214,216の最小内径は、付勢スプリング172,174、および位置決め部材22より大きい。また、図53および図54に示すように、付勢スプリング172の一方の端部、付勢スプリング174の一方の端部、および位置決め部材22は、シフトキーガイド170内へと延びている。
上述の通り、シフトキー部材70の1組の径方向内側に延設されるカム従動部144は、カム部152の内部へと径方向内側に延びている。図55および図56に示すように、1組の径方向内側に延設されるカム従動部144は、円弧状壁部212,214の組の間に形成されたギアップへと、さらに延びている。第1太陽ギア72、および第1太陽ギア72のカム部152は、ハブ軸24に対して相対的に回転できない。したがって、シフトキーガイド170がハブ軸24に対して相対的に回転されると、カム従動部144は、第1太陽ギア72のカム部152のカム面156との当接によって軸方向に移動される。より具体的には、図55に示すように、第1回転ポジションにおいて、カム従動部144は第1太陽ギア72のカム部152のカム面154と当接する。図56に示すように、シフトキーガイド170が回転されると、カム従動部144はカム面156と当接し、カム面158へと移動される。
シフトキー部材70が、クラッチリング20内に移動制限されるので、クラッチリング20はシフトキー部材70とともに軸方向に移動する。例えば、シフトキー部材70のカム従動部144がカム面154と当接している状態では(図55)、クラッチリング20は図53および図57に示すポジションにある。シフトキー部材70がシフトキーガイド170の回転によって回転すると、シフトキー部材70のカム従動部144がカム面158と当接するまで(図56)、シフトキー部材70のカム従動部144はカム面156に沿ってスライドする。したがって、クラッチリング20は図54および図58に示すポジションに移動される。図53および図54に示すように、付勢スプリング225は、クラッチリング20を図53および図57に示すポジションに向かって付勢する。
図4、図53および図54を参照して、付勢スプリング172を説明する。付勢スプリング172は、基本的に、位置決め部材22の直径より大きい直径を有するが、シフトキーガイド170へと少なくとも部分的に延びるのに十分に小さいコイルばねである。付勢スプリング172は、第1端部226と、第2端部228と、を有する(図4参照)。図53および図54に示すように、第1端部226は、シフトキーガイド170の隣接した円弧状壁部214,216間に形成されたギアップに係止するように形成されている。第2端部228は、スプリングワッシャ178の外周に形成された凹部178aに係止するように形成されている。シフト機構16の動作に際し、付勢スプリング172は、シフトキーガイド170および爪制御部材18を、後述するより低い速度動力伝達経路の方向に付勢する。
次に、図15〜図20を特に参照して、位置決め部材22を説明する。後述する通り、位置決め部材22は、ハブ軸24に対して相対的に回転方向に移動不能な円筒状部材である。位置決め部材22は、爪制御部材18を、ハブ軸24に対して相対的な爪制御部材18位置の選択されたいずれか1つに強制的に留めるよう構成される。より具体的には、爪制御部材18が、ハブ軸24の周辺の種々のポジション(変速段1〜8に対応する)に移動されると、位置決め部材22は、爪制御部材18を強制的に所定位置すなわち周方向配置へと高精度に位置づける。これらの周方向配置は、動力伝達アッセンブリ14の動力伝達経路(変速段1〜8)のそれぞれに対応する。
位置決め部材22は、基本的に、外側環状部230と内側円筒部232とを有する環状リング形状である。外側環状部230は、外側環状部230の軸方向面上に軸方向に延設される複数のギア歯234を有する。図51に示すように、外側環状部230(ギア歯234を有している)は、爪制御部材18のベーススリーブ100(シフト制御スリーブ)のギア歯110(凸部)と当接するよう配列される。また、図51に示すように、外側環状部230(ギア歯234を有している)は、シフトキーガイド170の3つのギア歯状凸部223と当接するよう配列される。
図15〜図20に示すように、位置決め部材22のギア歯234は、爪制御部材18のギア歯110およびシフトキーガイド170の3つのギア歯凸部223の形状と相補状の傾斜平面を有する。爪制御部材18のベーススリーブ100のギア歯110(凸部)、シフトキーガイド170の3つのギア歯状凸部223、および位置決め部材22のギア歯234間の相互作用により、第2、第3および第4太陽ギア爪80,82,84に対して相対的な、爪制御部材18の高精度な位置決めが提供される。
図52に示すように、外側環状部230は、シフトキーガイド170の内径未満である外径を有しており、これにより、位置決め部材22がシフトキーガイド170内に配置される。内側円筒部232は、ハブ軸24のシフト制御サポート部27とほぼ等しいかあるいは少し大きい内径を有する。内側円筒部232は、2つの小さい凹部236と、1つの大きい凹部238と、を有する。小さい凹部236は、ハブ軸24のシフト制御サポート部27の凸部34,36を収容するよう形成されている。大きい凹部238は、ハブ軸24のシフト制御サポート部27の凸部32を収容するよう形成されている。その結果、図2および図52に示すように、位置決め部材22は、高精度にハブ軸24に組み付けられ、ハブ軸24に対して相対的に回転できない。しかしながら、位置決め部材22は、スプリング174によって付勢され、ハブ軸24に対して相対的な軸方向の移動の制限を受けることが可能である。
図4、図53および図54に示すように、シフトキーガイド170は、ハブ軸24の変速サポート部28と位置決め部材22との間に配置される。クリップ176は、ハブ軸24のシフト制御サポート部27の環状凹部38内に組み付けられる。スプリング174は、クリップ176と位置決め部材22との間で移動制限される。したがって、スプリング174は、位置決め部材22のギア歯234を軸方向に付勢し、これにより、爪制御部材18のベーススリーブ100のギア歯110およびシフトキーガイド170の3つのギア歯状凸部223と当接する。
図21および図22に示すように、スプリングワッシャ178は凹部178aを有するディスク状部材である。スプリングワッシャ178は、円筒部244と、中間部246と、外側径方向延設部248と、を有する。円筒部244は1組の凹部250(図4において図示)を有する。中間部246は環状スペースを形成する。ハブ12が完全に組み立てられた状態では、クリップ176は、図53および図54に示すように、中間部246によって形成された環状スペース内に配置される。外側径方向延設部248は、1組の円弧状凸状部252と、凹部178aと、を有する。
スプリングワッシャ178の外側径方向延設部248(円弧状凸状部252がない部分)は、シフトキーガイド170の円弧状壁部212の当接部224の内面間の距離と同じかあるいは少し小さい外径を有する。外側径方向延設部148の円弧状凸状部252によって定義される外径は、シフトキーガイド170の最大外径と同じかあるいは少し大きい。ハブ12が組み立てられた状態では、円弧状凸状部252はシフトキーガイド170の当接部224と当接することができる。したがって、シフトキーガイド170は、スプリングワッシャ178に関して相対的な回転の制限を受けることが可能である。
後述する通り、スプリングワッシャ178は、ハブ軸24のシフト制御サポート部27の回りに自由に回転可能であるが、シフト機構16の他のエレメントとの相互作用によって、回転が制約されることが可能である。具体的には、スプリング172の第2端部228は、凹部178aに係止し、そして、円弧状凸状部252が、シフトキーガイド170の当接部224と当接することができる。また、シフトスリーブ186および爪制御ワッシャ188は、後述する通り、スプリングワッシャ178と機能的に相互作用する。
次に、図4および図23を参照して、爪サポート180、爪182、および爪シャフト184を説明する。図23に示すように、爪サポート180は、中央開口部260と、爪シャフトサポートアパーチャ262と、1組の内側凹部264と、1組の外側縁端凹部266と、を有するディスク状部材である。中央開口部260は、スプリングワッシャ178の円筒部244へ組み付けられるように形成されている。具体的には、スプリングワッシャ178の円筒部244の外径は、中央の開口部260の内径よりほんの少し小さく、これにより、爪サポート180が、スプリングワッシャ178の円筒部244回りの相対的な回転の制限を受けることが可能である。
図53および図54に示すように、爪シャフトサポートアパーチャ262は、爪シャフト184を収容するよう形成されている。さらに後述する通り、内側凹部264は、シフトスリーブ186の一部を収容するよう形成されている。爪サポート180の外側縁端凹部266は、シフトキーガイド170の円弧状壁部212の当接部224を収容するよう形成されている。より具体的には、シフトキーガイド170の円弧状壁部212の当接部224の直径および円弧幅は、爪サポート180の外側縁端凹部266内にぴったりとフィットするよう形成されている。したがって、シフトキーガイド170および爪サポート180は、一体的に単一ユニットとして両方の周方向に回転する。
次に、図4、図24および図25を参照して、シフトスリーブ186を説明する。シフトスリーブ186は、基本的に、どちらの軸方向端部からも延設される互いに対になっている組の凸状部を有する円筒状部材である。図24および図25から明らかなように、シフトスリーブ186は、円筒状部272と、第1凸状部274と、第2凸状部276と、を有する。第1凸状部274は、スプリングワッシャ178の凹部250に対応する直径および円弧幅で形成されている。また、第1凸状部274は、スプリングワッシャ178の凹部250にぴったりとフィットするよう形成されている。その結果、スプリングワッシャ178およびシフトスリーブ186は、一体的に単一ユニットとして回転する。第2凸状部276は第1凸状部274と同じ直径を有する。しかしながら、第2凸状部276は第1凸状部274より狭い円弧幅を有する。第2凸状部276は、第1凸状部274よりも軸方向にかなり長い。第2凸状部276の遠端部は当接部278を有する。
次に、特に図4、図26および図27を参照して、爪制御ワッシャ188を説明する。爪制御ワッシャ188は、中央開口部280と、中央開口部280から延びる1組の凹部282と、爪制御ワッシャ188の外周から軸方向における延設される1組の凸部284と、を有するディスク状部材である。中央開口部280は、ハブ軸24のシフト制御サポート部27回りに回転可能にフィットするよう形成されている。凹部282は、シフトスリーブ186の第2凸状部276に対応する円弧幅および直径で形成されている。具体的には、シフトスリーブ186の第2凸状部276は、爪制御ワッシャ188の凹部282を通って延びる。その結果、爪制御ワッシャ188、シフトスリーブ186、およびスプリングワッシャ178は、すべて一体的に単一ユニットとして回転する。
図67〜図69に示すように、凸部284は、爪182と当接し、爪182の動作を制御するように形成されている。より具体的には、爪サポート180、爪182、爪制御ワッシャ188、および駆動体25のシフトアシストギア歯140は、すべてシフトアシスト機構としてともに作用する。シフトアシスト機構の動作を、ハブ12のさらなるエレメントの説明の後、図67〜図69を参照して以下に説明する。
次に、特に図28および図29を参照して、保持プレート190を説明する。保持プレート190は、1組の同一の凸部290を有する環状のリング状部材である。それぞれの凸部290は、第1部292と、第2部294と、を有する。凸部290は保持プレート190から内側へ延設される。第1部292間の距離は、ハブ12が完全に組み立てられた状態で、第1部292がハブ軸24の軸方向に延びる溝30へと延びるように設定されている。したがって、保持プレート190はハブ軸24に対して相対的に回転することができない。しかしながら、保持プレート190の外側環状部は、ハブ軸24から、第2部294の厚さと等しい距離、間隔をあけて配置されている。こうして、ギアップが、ハブ軸24のシフト制御サポート部27の外面、保持プレート190の外側環状部の内面、および凸部290の第2部294の間に形成される。
凸部290の第2部294は、シフトスリーブ186の第2凸状部276の直径と等しい直径の位置で配置される。より具体的には、ハブ12が完全に組み立てられた状態では、シフトスリーブ186の第2凸状部276は、図53および図54に示すように、保持プレート190の凸部290の第2部294間に形成されたギアップを通って延びる。シフト機構16の動作に際し、シフトスリーブ186は、凸部290の第2部294の面との当接によって、ハブ軸24回りに180度より少し小さく回転することができる。より具体的には、シフトスリーブ186の回転は凸部290の第2部294によって制限されている。
次に、特に図4を参照して、ベアリングコーン191を説明する。ベアリングコーン191は、ベアリングB1を支持する外面と、保持プレート190の凸状部290の第1部292と同様な1組の内側に延設される凸状部298と、を有する。具体的には、凸状部298は、ハブ12が完全に組み立てられた状態で、ハブ軸24の軸方向に延びる溝へと延びるよう形成されている。したがって、ベアリングコーン191は、ハブ軸24に対して相対的に回転することができない。しかしながら、ベアリングコーン191の外側環状部の他の残りの部分の内面は、ハブ軸24から、シフトスリーブ186の第2凸状部276の厚さと等しい距離、間隔をあけて配置されている。したがって、シフトスリーブ186の第2凸状部276は、図53および図54に示すように、ベアリングコーン191の内部を通って延びる。また、ベアリングコーン191はシフトスリーブ186の回転とは干渉しない。
次に、特に図30および図31を参照して、アクチュエータプレート192を説明する。アクチュエータプレート192は、外側凸状部300と、内側凸状部302と、を有するリング状部材である。6つの外側凸状部300と、4つの内側凸状部302と、が備えられている。後述する通り、外側凸状部は、カップリングプレート196の部分と噛み合うあるいは係合するよう形成されている。内側凸状部302は互いに組になっており、内側凸状部302のそれぞれの組は、間にギアップ304を形成する。図53および図54に示すように、ギアップ304は、シフトスリーブ186の第2凸状部276の当接部278を収容するよう形成されている。より具体的には、シフトスリーブ186の第2凸状部276は、保持プレート190およびベアリングコーン191を通って延び、これにより当接部278がギアップ304へとフィットする。したがって、アクチュエータプレート192およびシフトスリーブ186は、一体的に単一ユニットとして回転する。また、アクチュエータプレート192、シフトスリーブ186、爪制御ワッシャ188、およびスプリングワッシャ178は、すべて一体的に単一ユニットとして回転する。
次に、特に図32および図33を参照してスペーサ194を説明する。スペーサ194は、中央開口部310と、1組の内側に延設される凸部312と、1組の凸部314を形成する外径縮径セクションと、を有する環状のリング状エレメントである。内側に延設される凸部312は、ハブ軸24のシフト制御サポート部26の溝30へと延びるよう形成されている。その結果、スペーサ194はハブ軸24に対して相対的に回転することができない。
次に、特に図34および図35を参照してカップリングプレート196を説明する。カップリングプレート196は、中央開口部320と、第1凹状部322と、第2凹状部324と、外側リップ326と、を有するディスク状部材である。中央開口部320は、スペーサ194の外径とほぼ同じ直径を有する。したがって、図53および図54に示すように、カップリングプレート196はスペーサ194の外周の回りに回転することができる。
カップリングプレート196の第1凹状部322は複数の凹部328を有している。凹部328は、アクチュエータプレート192の外側凸状部300と、ギア歯のように噛み合うよう形成されている。より具体的には、カップリングプレート196およびアクチュエータプレート192は、一体的に単一ユニットとして回転する。第2凹状部324は、起伏がなく、概ねフラットである。外側リップ326は、後述する通り、ギア歯として機能する3つの凹部330を有しており、これにより、回転可能なケーブルブラケット200の一部と係合する。
図44および図45に示すように、スプリング198は、第1取付端部334と、第2取付端部336(図45のみ)と、を有する。図53および図54に示すように、スプリング198は、回転可能なケーブルブラケット200より少し小さい直径を有する。図53および図54に示すように、第1取り付け端部334は、回転可能なケーブルブラケット200の一部の回りに係止する。スプリング198の第2取り付け端部336は、固定ケーブルブラケット202の一部の回りに係止される。したがって、スプリング198は、回転可能なケーブルブラケット200を付勢し、これにより、固定ケーブルブラケット202に対して相対的に一方向に回転させる。
次に、特に図36および図37を参照して、回転可能なケーブルブラケット200を説明する。回転可能なケーブルブラケット200は、基本的に、一端に3つの軸方向に延設される凸部340と、外側面上にケーブル収容溝342と、ケーブル取り付け凸部344と、1組フック状凸部346と、を有するリング状部材である。
3つの軸方向に延設される凸部340は、カップリングプレート196の外側リップ326に形成された3つの凹部330へとぴったりとフィットするよう形成されている。したがって、カップリングプレート196および回転可能なケーブルブラケット200は、一体的に1つのユニットとして回転する。ケーブル取り付け凸部344は、回転可能なケーブルブラケット200から径方向に延設されており、ケーブル取り付け開口部348を有している。1組のフック状凸部346は、まず、回転可能なケーブルブラケット200から軸方向に離れるよう延びており、そして、フック形状を形成するよう径方向外側に曲がっている。
次に、特に図38および図39を参照して、固定ケーブルブラケット202を説明する。固定ケーブルブラケット202は、2つの対向する凹部352を有する中央アパーチャ350と、環状の凹状部354と、外側環状凸部356と、ケーブル取り付け凸部358と、を有する複雑な形状の部材である。2つの対向する凹部352は、スペーサ194の凸部314と係合し、噛み合うように形成されている。スペーサ194がハブ軸24に対して相対的に回転することができないので、固定ケーブルブラケット202も、また、ハブ軸24に対して相対的に回転不能である。図53および図54に示すように、環状の凹状部354は、スプリング198の一部を収容するように備えられている。外側の環状の凸部356は、対応する径方向外側のギアップ364,366を有する円弧状凹部360,362を有する。
ケーブル取り付け凸部358は、従来のボーデンタイプケーブル380のアウタスリーブを保持するように構成されるケーブル取り付け端部370を有する。
ハブ12を完全に組み立てた状態では、図53および図54に示すように、回転可能なケーブルブラケット200のフック状凸部346は(ギアップ364,366を通って)円弧状凹部360,362内へと挿入される。円弧状凹部360,362が固定シャフト24の中心軸に対応する中心を有するので、回転可能なケーブルブラケット200は、固定ケーブルブラケット202に対して回転することができる。より具体的には、固定ケーブルブラケット202の円弧状凹部360,362の面は、回転可能なケーブルブラケット200のフック状凸部346の支持面として機能する。言いかえれば、回転可能なケーブルブラケット200のフック状凸部346は、固定ケーブルブラケット202の円弧状凹部360,362内で周方向にスライドする。
ワッシャ204(図40および図41に図示)は、固定ケーブルブラケット202をスペーサ194に保持するように形成されている。図53および図54に示すように、スペーサ206(図42および図43に図示)は、ハブ軸24の端部へとネジ締めされるナット208とともに作用して、ワッシャ204を固定ケーブルブラケット202に対して保持する。
次に、シフト機構14および動力伝達アッセンブリ14の動作を説明する。
従来のレバー作動シフト機構(図示せず)は、自転車10のハンドルバー(図示せず)上にあるいは隣接して組み付けられる。図1に示すように、従来のボーデンタイプケーブル380は、従来のレバー作動シフト機構からハブ12へと延びている。図53および図54に示すように、ボーデンタイプケーブル380のインナケーブル382は、ケーブル収容溝342内の回転可能なケーブルブラケット200の周辺に部分的に巻かれている。図示しないが、ボーデンタイプケーブル380のインナケーブル382は、回転可能なケーブルブラケット200のケーブル取り付け凸部344のケーブル取り付け開口部348に接続されている。その結果、従来のレバー作動シフト機構(図示せず)の移動によって、ボーデンタイプケーブル380のインナケーブル382にテンションがかかる。インナケーブル382へのテンションによって、インナケーブル382が移動し、その結果、図5、図47〜図51、および図67〜図69に示すように、回転可能なケーブルブラケット200が、第1ギアシフト方向U(シフトアップ方向)に回転する。インナケーブル382へのテンションが解放されると、スプリング198の付勢力によりケーブルが移動し、図5、図47〜図51、および図67〜図69に示すように、回転可能なケーブルブラケット200が第2ギアシフト方向D(シフトダウン方向)に回転する。第2ギアシフト方向Dは第1ギアシフト方向Uの反対方向である。
回転可能なケーブルブラケット200の第1ギアシフト方向Uの移動によって、シフト機構16が動力伝達アッセンブリ14内の動力伝達経路を変更し、これにより、サイクリストは自転車10の速度を上げることができる。回転可能なケーブルブラケット200の第2ギアシフト方向Dの移動によって、シフト機構16が動力伝達アッセンブリ14内の動力伝達経路を変更し、これにより、サイクリストは自転車10の速度を上げることができる。
図示した実施形態においては、8つの異なる動力伝達経路すなわち変速段(変速段1〜8)がある。以下に、シフト機構14の動作の説明に続いて、特に変速段1〜8について、より詳細に説明する。
シフト機構14は、回転可能なケーブルブラケット200の移動によって動作される。上述の通り、図53および図54に示すように、回転可能なケーブルブラケット200は、カップリングプレート196と係合し、カップリングプレート196とともに回転する。カップリングプレート196は、アクチュエータプレート192と係合し、アクチュエータプレート192とともに回転する。アクチュエータプレート192は、シフトスリーブ186と係合し、シフトスリーブ186とともに回転する。また、シフトスリーブ186は、スプリングワッシャ178および爪制御ワッシャ188の両方と係合し、スプリングワッシャ178および爪制御ワッシャ188とともに回転する。したがって、回転可能なケーブルブラケット200、カップリングプレート196、アクチュエータプレート192、シフトスリーブ186、爪制御ワッシャ188、およびスプリングワッシャ178は、すべて第1および第2ギアシフト方向U,Dの両方向に、一体的に単一ユニットとして回転する。
上述の通り、シフトスリーブ186の第1凸状部274は、爪サポート180の内側凹部264を通って延びる。内側凹部264が、シフトスリーブ186の第1凸状部274の円弧状長さよりも長い円弧状長さを有するので、後述する通り、爪サポート180は、ある状況においてのみ、シフトスリーブ186とともに移動する。
シフト機構16が動力伝達経路の指定された変速段1にあるとき、爪制御部材18は、図5に示す位置にある。具体的には、爪制御部材18が回転して、ベーススリーブ100が、固定シャフト24の変速サポート部28の制御アーム収容凹部68の一方の周方向端部に位置する。また、ギア歯110は位置決めリング22のギア歯234の第1ギア歯T1に位置する。
爪制御部材18が上記位置にある状態では、第2、第3および第4太陽ギア爪80,82,84は第1、第2、第3制御スリーブ102,104,106によって径方向内側に引っ張られ、これにより、第2、第3および第4太陽ギア74,76,78はフリーホイール状態である(自由に回転する)。その結果、後述する通り、トルクは図59に示すとともに表1,2に述べる第1動力伝達経路に沿った変速段1で伝達される。
位置決めリング22のギア歯234の第1ギア歯T1は、爪制御部材18を、変速段1を選択するよう高精度に位置決めする手段を提供する。位置決めリング22がハブ軸24に対して相対的に回転することができないので、ギア歯234は円周方向の定位置に固定される。したがって、爪制御部材18のギア歯110が位置決めリング22のギア歯234の第1ギア歯T1と整合するとき、スプリング174の付勢力によって、強制的に、位置決めリング22のギア歯234が爪制御部材18を変速段1の定位置に保持する。
インナケーブル382にテンションがかけられて、動力伝達アッセンブリ14が変速段2にされると、回転可能なケーブルブラケット200が回転され、これにより、カップリングプレート196、アクチュエータプレート192、シフトスリーブ186、爪制御ワッシャ188、およびスプリングワッシャ178が回転する。この条件(変速段1から変速段2への移動)では、シフトスリーブ186の第1凸状部274は爪サポート180の凹部264と当接する。したがって、爪サポート180はシフトスリーブ186とともに回転する。また、シフトキーガイド170の当接部224は爪サポート180の外側縁端凹部266と噛み合うので、シフトキーガイド170は変速段2に対応する配置へと回転する。図示しないが、爪制御部材18はシフトキーガイド170とともに移動し、そこで、ギア歯110がギア歯234のギア歯T2と整合するよう回転する(図5参照)。
爪制御部材18が、変速段2位置にある状態では、第4太陽ギア爪84の制御部84aは、爪制御部材18の第1制御スリーブ102の爪制御凹部102aと並ぶ。したがって、第4太陽ギア爪84は、径方向外側に自由に移動することができ、これにより、第4太陽ギア78と当接して一方向クラッチとして機能する。その結果、後述する通り、トルクは、図60に示すとともに表1,2に述べる第2動力伝達経路に沿った変速段2で伝達される。
位置決めリング22のギア歯234の第2ギア歯T2は、爪制御部材18を、変速段2を選択するよう高精度に位置決めする手段を提供する。具体的には、爪制御部材18のギア歯110が、位置決めリング22のギア歯234の第2ギア歯T2と整合するとき、スプリング174の付勢力によって、強制的に、位置決めリング22のギア歯234が爪制御部材18を変速段2の定位置に保持する。
インナケーブル382にテンションがかけられて、動力伝達アッセンブリ14が変速段3にされると、回転可能なケーブルブラケット200が回転され、これにより、スプリングワッシャ178が回転する。この条件(変速段2から変速段3への移動)では、シフトスリーブ186の第1凸状部274は爪サポート180の凹部264と当接する。したがって、爪サポート180はシフトスリーブ186とともに回転する。また、シフトキーガイド170の当接部224は、爪サポート180の外側縁端凹部266と噛み合うので、シフトキーガイド170は変速段3に対応する配置へと回転する。図示しないが、爪制御部材18は、シフトキーガイド170とともに移動し、そこで、ギア歯110がギア歯234のギア歯T3と整合するよう回転する(図5参照)。
爪制御部材18が上記位置にある状態では、第3太陽ギア爪82の制御部82aは、爪制御部材18の第2制御スリーブ104の爪制御凹部104aと並ぶ。したがって、第3太陽ギア爪82は、径方向外側に自由に移動することができ、これにより第3太陽ギア76と当接して一方向クラッチとして機能する。その結果、後述する通り、トルクは、図61に示すとともに表1,2に述べる第3動力伝達経路に沿った変速段3で伝達される。
位置決めリング22のギア歯234の第3ギア歯T3は、爪制御部材18を、変速段3を選択するよう高精度に位置決めする手段を提供する。位置決めリング22が、ハブ軸24に対して相対的に回転することができないので、ギア歯234は円周方向の定位置に固定される。したがって、爪制御部材18のギア歯110が位置決めリング22のギア歯234の第3ギア歯T3と整合するとき、スプリング174の付勢力によって、強制的に、位置決めリング22のギア歯234が爪制御部材18を変速段3の定位置に保持する。
インナケーブル382にテンションがかけられて、動力伝達アッセンブリ14が変速段4にされると、回転可能なケーブルブラケット200が回転され、これによりスプリングワッシャ178が回転する。この条件(変速段3から変速段4への移動)では、シフトスリーブ186の第1凸状部274は爪サポート180の凹部264と当接する。したがって、爪サポート180はシフトスリーブ186とともに回転する。また、シフトキーガイド170の当接部224は爪サポート180の外側縁端凹部266と噛み合うので、シフトキーガイド170は変速段4に対応する配置へと回転する。図示しないが、爪制御部材18はシフトキーガイド170とともに移動し、そこで、ギア歯110がギア歯234のギア歯T4と整合するよう回転する(図5参照)。
爪制御部材18が上記位置にある状態では、第2太陽ギア爪80の制御部80aは爪制御部材18の第3制御スリーブ106の爪制御凹部106aと並ぶ。したがって、第2太陽ギア爪80は、径方向外側に自由に移動することができ、これにより第2太陽ギア74と当接して一方向クラッチとして機能する。その結果、後述する通り、トルクは、図62に示すとともに表1,2に述べる第4動力伝達経路に沿った変速段4で伝達される。
位置決めリング22のギア歯234の第4ギア歯T4は、爪制御部材18を、変速段4を選択するよう高精度に位置決めする手段を提供する。位置決めリング22が、ハブ軸24に対して相対的に回転することができないので、ギア歯234は円周方向の定位置に固定される。したがって、爪制御部材18のギア歯110が位置決めリング22のギア歯234の第4ギア歯T4と整合するとき、スプリング174の付勢力によって、強制的に、位置決めリング22のギア歯234が爪制御部材18を変速段4の定位置に保持する。
インナケーブル382にテンションがかけられて、動力伝達アッセンブリ14が変速段5にされると、回転可能なケーブルブラケット200が回転され、これによりスプリングワッシャ178が回転する。この条件(変速段4から変速段5への移動)では、シフトスリーブ186の第1凸状部274は爪サポート180の凹部264と当接する。したがって、爪サポート180はシフトスリーブ186とともに回転する。また、シフトキーガイド170の当接部224は爪サポート180の外側縁端凹部266と噛み合うので、シフトキーガイド170は変速段5に対応する配置へと回転する。図示しないが、爪制御部材18はシフトキーガイド170とともに移動し、そこで、ギア歯110がギア歯234のギア歯T5と整合するよう回転する(図5参照)。
さらに、シフトキーガイド170の変速段4に対応する配置から変速段5に対応する配置への移動によって、シフトキー部材70が軸方向に移動する。シフトキーガイド170が、変速1,2,3,段4に対応する配置にある状態では、図56に示すように、シフトキー部材70のカム従動部144は第1太陽ギア72のカム部152の第3カム面158と当接する。その結果、図54および図59〜図62に示すように、クラッチリング20は非係合位置に留まる。しかしながら、シフトキーガイド170の変速段4に対応する配置から変速段5に対応する配置への移動の際に、カム従動部144は第1太陽ギア72のカム部152の第2カム面156に沿ってスライドする。シフトキーガイド170が変速段5に対応する配置にあると、図55に示すように、カム従動部144は第1太陽ギア72のカム部152の第1カム面154に移動する。その結果、クラッチリング20は、遊星ギアキャリヤ86と係合して、遊星ギアキャリヤ86とともに回転する。また、トルクは、駆動体25から遊星ギアキャリヤ86にクラッチリング20を介して、直接的に伝達される。
シフトキーガイド170および爪制御部材18が上記位置にある状態では、第2、第3および第4太陽ギア爪80,82,84は、第1、第2、第3制御スリーブ102,104,106によって径方向内側に引っ張られ、これにより第2、第3および第4太陽ギア74,76,78はフリーホイール状態である(自由に回転する)。その結果、後述する通り、トルクは、図63に示すとともに表1,2に述べる第1動力伝達経路に沿った変速段5で伝達される。
インナケーブル382にテンションがかけられて、動力伝達アッセンブリ14が変速段6にされると、回転可能なケーブルブラケット200が回転され、これによりスプリングワッシャ178が回転する。この条件(変速段5から変速段6への移動)では、シフトスリーブ186の第1凸状部274は爪サポート180の凹部264と当接する。したがって、爪サポート180はシフトスリーブ186とともに回転する。また、シフトキーガイド170の当接部224は爪サポート180の外側縁端凹部266と噛み合うので、シフトキーガイド170は変速段6に対応する配置へと回転する。図示しないが、爪制御部材18はシフトキーガイド170とともに移動し、ギア歯110がギア歯234のギア歯T6と整合するよう回転する(図5参照)。
爪制御部材18が変速段6位置にある状態では、第4太陽ギア爪84の制御部84aは、爪制御部材18の第1制御スリーブ102の爪制御凹部102bと並ぶ。したがって、第4太陽ギア爪84は、径方向外側に自由に移動することができ、これにより第4太陽ギア78と当接して一方向クラッチとして機能する。その結果、後述する通り、トルクは、図64に示すとともに表1,2に述べる第6動力伝達経路に沿った変速段6で伝達される。
位置決めリング22のギア歯234の第6ギア歯T6は、爪制御部材18を、変速段6を選択するよう高精度に位置決めする手段を提供する。具体的には、爪制御部材18のギア歯110が位置決めリング22のギア歯234の第2ギア歯T6と整合するとき、スプリング174の付勢力によって、強制的に、位置決めリング22のギア歯234が爪制御部材18を変速段6の定位置に保持する。
インナケーブル382にテンションがかけられて、動力伝達アッセンブリ14が変速段7にされると、回転可能なケーブルブラケット200が回転され、これによりスプリングワッシャ178が回転する。この条件(変速段6から変速段7への移動)では、シフトスリーブ186の第1凸状部274は、爪サポート180の凹部264と当接する。したがって、爪サポート180はシフトスリーブ186とともに回転する。また、シフトキーガイド170の当接部224は爪サポート180の外側縁端凹部266と噛み合うので、シフトキーガイド170は変速段7に対応する配置へと回転する。図示しないが、爪制御部材18はシフトキーガイド170とともに移動し、ギア歯110がギア歯234のギア歯T7と整合するよう回転する(図5参照)。
爪制御部材18が上記位置にある状態では、第3太陽ギア爪82の制御部82aは、爪制御部材18の第2制御スリーブ104の爪制御凹部104bと並ぶ。したがって、第3太陽ギア爪82は、径方向外側に自由に移動することができ、これにより第3太陽ギア76と当接して一方向クラッチとして機能する。その結果、後述する通り、トルクは、図65に示すとともに表1,2に述べる第7動力伝達経路に沿った変速段7で伝達される。
位置決めリング22のギア歯234の第7ギア歯T7は、爪制御部材18を、変速段7を選択するよう高精度に位置決めする手段を提供する。位置決めリング22がハブ軸24に対して相対的に回転することができないので、ギア歯234は円周方向の定位置に固定される。したがって、爪制御部材18のギア歯110が位置決めリング22のギア歯234の第7ギア歯T7と整合するとき、スプリング174の付勢力によって、強制的に、位置決めリング22のギア歯234が爪制御部材18を変速段7の定位置に保持する。
インナケーブル382にテンションがかけられて、動力伝達アッセンブリ14が変速段8にされると、回転可能なケーブルブラケット200が回転され、これによりスプリングワッシャ178が回転する。この条件(変速段7から変速段8への移動)では、シフトスリーブ186の第1凸状部274は、爪サポート180の凹部264と当接する。したがって、爪サポート180はシフトスリーブ186とともに回転する。また、シフトキーガイド170の当接部224は爪サポート180の外側縁端凹部266と噛み合うので、シフトキーガイド170は変速段4に対応する配置へと回転する。図示しないが、爪制御部材18はシフトキーガイド170とともに移動し、ギア歯110がギア歯234のギア歯T8と整合するよう回転する(図5参照)。
爪制御部材18が上記位置にある状態では、第2太陽ギア爪80の制御部80aは、爪制御部材18の第3制御スリーブ106の爪制御凹部106bと並ぶ。したがって、第2太陽ギア爪80は、径方向外側に自由に移動することができ、これにより、第2太陽ギア74と当接して一方向クラッチとして機能する。その結果、後述する通り、トルクは、図66に示すとともに表1,2に述べる第8動力伝達経路に沿った変速段8で伝達される。
位置決めリング22のギア歯234の第8ギア歯T8は、爪制御部材18を、変速段8を選択するよう高精度に位置決めする手段を提供する。位置決めリング22が、ハブ軸24に対して相対的に回転することができないので、ギア歯234は円周方向の定位置に固定される。したがって、爪制御部材18のギア歯110が位置決めリング22のギア歯234の第8ギア歯T8と整合するとき、スプリング174の付勢力によって、強制的に、位置決めリング22のギア歯234が爪制御部材18を変速段8の定位置に保持する。
サイクリストが、シフトダウンするとき、インナケーブル382へのテンションは解放され、そして、スプリング198は、回転可能なケーブルブラケット200、カップリングプレート196、アクチュエータプレート192、シフトスリーブ186、爪制御ワッシャ188、およびスプリングワッシャ178を付勢し、これにより、第2ギアシフト方向Dに移動させる。また、ある条件では、付勢スプリング172は、シフトキーガイド170および爪サポート180を付勢して、シフトスリーブ186の第2ギアシフト方向D(シフトダウン方向)の移動に追従させる。具体的には、駆動体25からハブシェル26へと伝達されるトルクがないとき、付勢スプリング172は、シフトキーガイド170および爪サポート180を付勢して、シフトスリーブ186の第2ギアシフト方向D(シフトダウン方向)の移動に追従させる。トルクフリー条件では、変速段1〜8間でのシフトダウンは、基本的に、シフトアップについて上述した動作の反転である。
しかしながら、サイクリストが強くペダルを踏んでおり、トルクが動力伝達アッセンブリ14を介して伝達されているとき、シフトダウンプロセスは、上述のものとは、異なるものになる。具体的には、トルクが伝達されている状態では、シフトキーガイド170および爪サポート180に作用する付勢スプリング172の付勢力は、シフトキーガイド170および爪サポート180を、シフトスリーブ186の第2ギアシフト方向Dの移動に追従させるには十分ではない場合がある。そのような状況では、シフトアシスト機構が動作する。具体的には、爪サポート180、爪182、およびシフトアシスト機構の駆動体25のシフトアシストギア歯140は、爪サポート180およびシフトキーガイド170への付勢力を増加するよう動作し、その結果シフトダウンプロセスが完了する。
図67〜図69を特に参照して、シフトアシスト機構は以下のように動作する。図67に示すように、トルクが伝達されていない条件では、スプリング172(図67〜図69においては図示せず)の付勢力は、爪サポート180の内側凹部264の一方の端部とシフトスリーブ186の凸状部274と間の当接を維持するのに十分である。シフトスリーブ186および爪制御ワッシャ188が1つのユニットとして回転するので、爪制御ワッシャ188の凸部284は、爪182に隣接しているままであり、その結果爪182の径方向外側への移動が制限される。
しかしながら、トルクが動力伝達アッセンブリ14を介して十分に伝達されているとき、スプリング172は、爪サポート180の内側凹部264の一方の端部とシフトスリーブ186の凸状部274との間の当接を維持するには十分ではない場合がある。具体的には、シフトスリーブ186が第2ギアシフト方向D(シフトダウン)に回転されると、シフトスリーブ186の凸状部274は回転することになるが、図68に示すように、爪サポート180は、以前に選択された動力伝達経路のままに留まる場合がある。図68に示すように、凸状部274は、もはや、爪サポート180の内側の凹部264の一方の端部と当接していない。しかしながら、シフトスリーブ186および爪制御ワッシャ188は1つのユニットとして回転する。図68に示すように、爪制御ワッシャ188の凸部284は爪182から周方向に離れるよう移動され、その結果、爪182が駆動体25のシフトアシストギア歯140と係合することができる。駆動体25が回転しているので、駆動体25のシフトアシストギア歯140と爪182との当接によって、爪サポート180が第2ギアシフト方向D(シフトダウン)に回転する。したがって、爪サポート180は図69に示す位置に移動される。図69において、爪サポート180の内側凹部264は、再び、シフトスリーブ186の凸状部274と当接し、そして、爪制御ワッシャ188の凸部284は爪182と当接し、これにより爪182を径方向内側に駆動体25から離れるよう引っ張る。
その他の場合は、シフトダウンプロセスはシフトアッププロセスの反転である。
次に、動力伝達経路(変速段1〜8)を、図59〜図66、表1,2を参照して、以下に説明する。
次に、表2に示した変速段をより詳細に説明する。第1速度(動力伝達経路の変速段1)において、チェーンスプロケット142から駆動体25へのトルクは、爪92によって第1リングギア94に伝達される。第1リングギア94は、第1遊星ギア68を固定第1太陽ギア72回りに回転させ、その結果、キャリヤ86が回転する。そして、キャリヤ86は、爪98を介してハブシェル26を回転させる。
第2速度(動力伝達経路の変速段2)において、チェーンスプロケット142から駆動体25へのトルクは、爪92によって第1リングギア94に伝達される。第1リングギア94は、第1遊星ギア68を固定第1太陽ギア72回りに回転させ、その結果、キャリヤ86が回転する。しかしながら、ここでは、第4太陽ギア78は第4太陽ギア爪84によって定位置にロックされている(一方向の回転に)。したがって、第2遊星ギア90は第4太陽ギア78の回りに回転する。第2リングギア96は第2遊星ギア90によって回転される。第2リングギア96は、ここでは、ローラクラッチ166を介してハブシェル26を回転させる。
第3速度(変速段3)において、チェーンスプロケット142から駆動体25へのトルクは、爪92によって第1リングギア94に伝達される。第1リングギア94は、第1遊星ギア68を固定第1太陽ギア72回りに回転させ、その結果、キャリヤ86が回転する。第2遊星ギア90は、ここでは、第3太陽ギア爪82によって定位置にロックされている第3太陽ギア76の回りを回転する。第2遊星ギア90の回転によって、第2リングギア96が再び回転する。第2リングギア96は、ローラクラッチ166を介してハブシェル26を回転させる。
第4速度(変速段4)において、チェーンスプロケット142から駆動体25へのトルクは、爪92によって第1リングギア94に伝達される。第1リングギア94は、第1遊星ギア68を固定第1太陽ギア72回りに回転させ、その結果、キャリヤ86が回転する。第2遊星ギア90は、ここでは、第2太陽ギア爪60によって定位置にロックされている第2太陽ギア74の回りを回転する。第2遊星ギア90の回転によって、第2リングギア96が再び回転する。第2リングギア96は、ローラクラッチ166を介してハブシェル26を回転させる。
第5速度(変速段5)において、クラッチリング20は、ここでは、駆動体25をキャリヤ86に直接的に連結する。第1リングギア94は、駆動体25および爪92ラチェットよりも高速で回転する。第5速度において、キャリヤ86は、爪98を介してハブシェル26を回転させる。
第6速度(変速段6)において、トルクは、駆動体25からキャリヤ86へとクラッチリング20を介して伝達される。第4太陽ギア78は、第4太陽ギア爪84によって定位置にロックされている(一方向の回転に)。したがって、第2遊星ギア90は第4太陽ギア78の回りに回転する。第2リングギア96は第2遊星ギア90によって回転される。第2リングギア96は、ここでは、ローラクラッチ166を介してハブシェル26を回転させる。
第7速度(変速段7)において、トルクは、駆動体25からキャリヤ86へとクラッチリング20を介して伝達される。第2遊星ギア90は、ここでは、第3太陽ギア爪82によって定位置にロックされている第3太陽ギア76の回りを回転する。第2遊星ギア90の回転によって第2リングギア96が再び回転する。第2リングギア96は、ローラクラッチ166を介してハブシェル26を回転させる。
第8速度(変速段8)において、トルクは、駆動体25からキャリヤ86へとクラッチリング20を介して伝達される。第2遊星ギア90は、ここでは、第2太陽ギア爪60によって定位置にロックされている第2太陽ギア74の回りを回転する。第2遊星ギア90の回転によって第2リングギア96が再び回転する。第2リングギア96は、ローラクラッチ166を介してハブシェル26を回転させる。
回転可能なケーブルブラケット200、カップリングプレート196、アクチュエータプレート192、シフトスリーブ186、爪制御ワッシャ188、スプリングワッシャ178、爪サポート180、およびシフト機構16のシフトキーガイド170は、基本的に動力伝達アッセンブリ14のシフト作動部として機能する。
また、上述の通り、回転可能なケーブルブラケット200、カップリングプレート196、アクチュエータプレート192、シフトスリーブ186、爪制御ワッシャ188、およびスプリングワッシャ178は、すべて一体的に単一ユニットとして回転する。回転可能なケーブルブラケット200、カップリングプレート196、アクチュエータプレート192、シフトスリーブ186、爪制御ワッシャ188、およびスプリングワッシャ178のいずれか1つあるいはすべてが、シフト作動部の第1回転可能部材として機能する。第1回転可能部材は、ハブ軸24に対して相対的に配置されており、シフトキーガイド170および爪制御部材(シフト制御器)に機能的に連結されて、時計方向および反時計方向に回転する。
固定ケーブルブラケット202は、アウタケーブル接続(ケーブル取り付け凸部358)を有するハブ軸24に回転不能に固定される固定プレートとして機能する。
爪サポート180およびシフトキーガイド170のいずれかあるいは両方は、動力伝達アッセンブリ14のシフト作動部の第2回転可能部材として機能する。具体的には、爪サポート180およびシフトキーガイド170は、両方とも、ハブ軸24回りに時計方向および反時計方向に回転可能であるとともに、第1回転可能部材に対して相対的回転が制限された状態で機能的に第1回転可能部材に接続されている。第2回転可能部材(爪サポート180および/またはシフトキーガイド170)は、ボーデンタイプケーブル380(シフトコントロールケーブル)によって少なくとも一方向に回転可能であり、また、スプリング(スプリング172)によって反対方向に回転可能である。
−第2実施形態−
次に、図70〜図77を参照して、本発明の第2実形態例にかかる位置決めリング22'およびシフトキーガイド170'を説明する。第1実施形態と第2実施形態との類似点を考慮して、第1実施形態の部材と同一の第2実施形態の部材には、第1実施形態の部材と同じ参照符号を付している。また、説明の簡略化のために、第1実施形態の部材と同一の第2実施形態の部材の説明を省略する。
第2実施形態において、位置決めリング22およびシフトキーガイド170を位置決めリング22'およびシフトキーガイド170'と置き換えている点を除いて、ハブ12のすべてエレメントを利用している。位置決めリング22’とシフトキーガイド170’との間の相互作用が、第1実施形態の位置決めリング22とシフトキーガイド170との間の相互作用と少し異なるという点を除いて、第2実施形態のすべてのエレメントは、第1実施形態のエレメントと同じように動作する。
第2実施形態においては、位置決めリング22’が8つのギア歯234’しか有していないという点を除いて、位置決めリング22’は、第1実施形態のポジションリング22と同様である。しかしながら、位置決めリング22’は、ハブ軸24と回転不能に係合する2つの小さい凹部236および1つの大きい凹部238を有する。
シフトキーガイド170’は、第1実施形態のシフトキーガイド170と同様であるが、第1実施形態のシフトキーガイド170の3つのギア歯状凸部223を有していない。
用語の概括的な説明
本発明の範囲の理解において、ここで用いられる用語「備える」およびその派生語は、記載された特徴、エレメント、コンポーネント、群、完全体、および/またはステップがあることを明記しているオープンエンドの用語を意味するのであって、記載されていない特徴、エレメント、コンポーネント、群、完全体、および/またはステップがあることを排除するものではない。上記は、用語「有する」、「含む」およびそれらの派生語など同様の意味を持つ語にも当てはまる。また、単数形的に用いられる用語「パート」、「セクション」、「部」、「部材」あるいは「エレメント」は、単一のパートあるいは複数のパーツの2つの意味を持ちうる。ここで、本発明を説明するために用いられる、次の用語、「前方、後方、上、下向き、垂直、水平、下、横」同じく他の同様な方向を示す用語が、本発明の自転車の方向を示す用語として使用されている。このように、本発明において用いられるこれらの用語は、通常のライディングポジションにおいて用いられるような、本発明が適用される自転車に対して相対的な意味で用いられる。最後に、ここでは、「実質的に」、「およそ」、「ほぼ」といった程度を示す用語は、最終結果が大きく変わらないような、妥当な変形の条件の変更量を意味するものとして用いる。
本発明の説明のためにいくつかの実施例が選択されたに過ぎず、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱することがない範囲で、種々の変更、変形ができることは、本開示から当業者には明らかであろう。さらに、前述の本発明にかかる実施例の説明は単なる例示であって、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって決められる本発明を限定するものではないことは、本開示から当業者には明らかであろう。