JP2008545405A - 齧歯類幹細胞及びその用途 - Google Patents

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Abstract

本発明は、Sca1+細胞において遺伝子の発現を指示するプロモーターに機能的に結合されるヒト癌に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含むDNA構築物をそのゲノムに含有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を含む、動物固形腫瘍モデルに関する。本発明は、ヒト病理に関連するヒト遺伝子異常を幹細胞に特異的に発現することができる幹細胞にも関する。ヒトの疾患の診断、治療及び予防の用途のようなこれらのモデル及び幹細胞の用途、生成物及び方法が提供される。

Description

本発明は、ヒト病理に関連するヒト遺伝子異常を幹細胞に特異的に発現することができる齧歯類幹細胞に関する。ヒトの疾患の診断、治療及び予防の用途のような前記幹細胞の用途、生成物及び方法が提供される。
幹細胞(SC)は、それら自体が自己複製を介して永続化する能力、及び分化を介して特定の組織の成熟細胞を生成する能力を有する細胞として定義される。SCの例には、造血幹細胞、神経幹細胞、癌幹細胞などが挙げられる。
現在、癌は、繁殖する能力及び新たな腫瘍を形成する能力が著しく異なる癌細胞の異種個体群から構成されると考えられている。大多数の癌細胞は限定された分裂能力を有するが、広範囲に繁殖し新たな腫瘍を形成する排他的能力を有する癌幹細胞(CSC)の個体群は、マーカー発現に基づいて同定することができる。
正常な幹細胞の自己複製を調節する経路がCSCにおいて調節解除され、自己複製癌細胞及び腫瘍形成の連続的な拡大をもたらすことを、ますます多くの証拠が示唆している。このことは、癌細胞における欠損自己複製経路を標的にする作用物質が、これらの疾患の治療において改善された治療転帰をもたらす可能性を示唆している。
この戦略は、腫瘍形成の生物学、並びに癌の診断及び治療において意味を持つ。癌を有効に治療するためには、CSCを排除しなければならない。そうでなければ、治療が非腫瘍形成癌細胞を排除するが、CSCの相当数の個体群を残した場合、腫瘍は急速に再形成する。伝統的には、癌の治療は、腫瘍を小さくする能力に依存してきた。多くの場合においてCSCが腫瘍の小規模な細胞個体群に存在するので、CSCを選択的に死滅させる作用物質は、腫瘍サイズの急速な低減に依存する現行のスクリーニング法において見逃される可能性がある。
作用物質が相当数のCSCを残してしまう場合、残存細胞は、腫瘍を急速に再形成することができる。現行の治療の効力についての理解に対するその影響に加えて、癌の幹細胞モデルは、将来の治療標的の同定に対して影響を及ぼす可能性がある。発現分析を腫瘍形成癌細胞の濃縮物個体群へ向けると、新規診断マーカー及び新規治療標的の同定がより効果的となるはずである。加えて、CSCの維持に関連する経路を直接標的とする治療が、成功する著しく大きな可能性を有するであろうことが明白となる。
癌発症に関与する遺伝子改変がCSCで発生すると想定される場合、この問題に基づくマウスモデルを設計することができる。新たな戦略は、CSC表現型の維持に関与する過程を決定することに焦点を合わせるべきである。このことが、新たな標的を同定して、それらに対して薬剤を設計する目的である。したがって、この方法で生成したマウスモデルは、この状況において、CSCの維持に対して向けられる薬剤を設計するための基本的なツールである。
多くの新しい抗癌剤は、癌発症の従来と異なった局面を標的にし、予測不可能な方法で他の薬剤と相互作用する。これらは、患者の小規模な亜集団にしか臨床利益を示さないと予測される。
加えて、現行の治療の効力を改善するために、癌の幹細胞モデルも潜在的な治療標的の同定の助けになる。発現分析を腫瘍形成癌細胞の濃縮物個体群へ向けると、新規診断マーカー及び新規治療標的の同定がより効果的となる。最近の証拠は、CSCの維持に関与する経路を直接標的にする治療が、成功する著しく大きな可能性を有することも示している。
癌発症に関与する遺伝子改変がCSCで発生するという理解に基づいて、この遺伝子改変を正確に再現するマウスモデルを設計することが可能である。第1に、CSC表現型の維持に何が関与しているかを決定しなければならず、それは、標的の同定、及びそれらに対して使用する潜在的な薬剤の基本になるからである。したがって、この戦略に従って生成されたマウスモデルのような動物モデルは、CSCの維持を阻害する薬剤を設計する基本的なツールを表す。
一つの態様において、本発明は、Sca1+細胞において遺伝子の発現を指示するプロモーターに機能的に結合されるヒト病理に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含むDNA構築物をそのゲノムに含有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を含む、動物癌モデルに関する。遺伝子異常によって作り出される及び/又は活性化される遺伝子は、本明細書において活性化されうる遺伝子と呼ばれる。この構築物によって、トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、活性化されうる遺伝子を含み、かつ発現する幹細胞(SC)を含有する。
本発明の一つの態様は、ヒト病理に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含む、そのようなトランスジェニック非ヒト哺乳動物から場合により単離される幹細胞(SC)に関する。特定の実施態様において、前記SCは癌幹細胞(CSC)である。SC又はCSCは、とりわけ、齧歯類SC又はCSCであることができる。
好ましくは、本発明の上記の態様によると、ヒト病理は、癌、好ましくは固形腫瘍である。固形腫瘍の幾つかの例には、間葉癌、例えば肉腫;上皮癌、例えば癌腫;リンパ腫などが挙げられる。
発明者たちは、動物モデルにおいて、CSC生成癌が同等のヒト癌表現型を忠実に複製することを発見した。現行の動物モデル、主にマウスモデルは、ヒト癌と相関する遺伝子型−表現型を再現することに失敗している。これらのモデルにおいて、マウスに導入されたヒト癌遺伝子欠損は、癌遺伝子欠損が全ての細胞又は特定の分化細胞のいずれかに存在する動物モデルをもたらす。そのようなマウスモデルは、癌幹細胞モデルを考慮することなく生成され、したがって、正確なヒト癌標的細胞の性質を考慮していない。したがって、これらのモデルは、ヒト癌遺伝型−表現型相関関係をあまり再現しておらず、ヒト癌患者において見られる反応パターンと異なって薬剤に反応する。事実、そのような従来のモデルにおいて標的及び薬剤候補を選択すること及び/又は試験することは、ヒトの反応を予測し得ないことが、発明者たちの論点である。
例えば、H−RasV12Gがマウスで発現する場合、黒色腫を反映するマウス表現型をもたらす。対照的に、ヒト表現型は、膀胱癌、腎癌及び甲状腺癌である。例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤を使用するマウスの遺伝子欠失は、癌のマウスモデルを治癒する。対照的に、同じ産物はヒトでは緩和をもたらさない。
第2の例は、マウスモデルでB細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)をもたらすBCR−ABLp210により提供することができる。ヒトにおいて、表現型は、全く異なっている(慢性骨髄性白血病、CML)。マウスB−ALLモデルにおいて、Gleevec(商標)は、癌を治癒するが、ヒトにおいて、この生成物は、症状の緩和しかもたらさない。したがって、マウスモデルへの癌に関連している遺伝子欠損の単なる非標的化導入は、どのような方法によっても、ヒトの状態を映す疾患状態の確立をもたらさないことが明かであり、おそらくそれは、遺伝子が、疾患を生じることに関与するマウス中の細胞を正確に標的にしていないからである。
癌の新たな動物モデルの緊急の必要性は、この分野における専門家の意見により支持されており、現在、現行の動物モデルが、不適切であること、及び新たなマウスモデルが癌治療におけるあらゆる基本的な改善の鍵であることが十分に実証された事実である。例えば、Robert Weinbergは、「全体的な癌研究の努力において依然として未解決である基本的な問題は、ヒト癌の前診療モデルが必須であるということである」と記載している(2004年3月)。フォーチュン誌において、彼は、「戦いに勝つためには、ヒトの反応をより良好に模倣する動物モデル及び癌発症を予測するバイオマーカーが必要である」と記載している(2004年3月22日)。
本発明者たちにより求められた疑問は、なぜそれほど多くの癌のマウスモデルが不適切であるかということを問うていた。その答えは、癌が繁殖性疾患ではないこと及び癌幹細胞がヒトの癌の真実の細胞標的を提供することに答えがあると発明者たちは信じている。CSCは、特有であり、かつ腫瘍の大部分を形成する細胞と異なっている特性及び経路を有すると考えられる。体幹細胞中で、ヒト病理に関連する遺伝子異常を標的にすることによって、ヒト病理状態を正確に映す動物モデルを確立することが、発明者たちによって確立された。白血病に加えて、これらの動物モデルは、固形腫瘍を生成する。このことは極めて驚くべきことであり、最も有益である。
癌幹細胞動物モデルの望ましい特性は、その動物においてヒト癌を反復しなければならないことである。そのような望ましい特性には、ヒト癌と同様な組織学的特徴の確立;同じ疾患ステージを通して進行しなければならないこと;宿主に対して同じ全身的効果を引き起こさなければならないこと;腫瘍開始/進行において同じ遺伝子経路を生じなければならないこと;現行の治療手法に対してヒトと同じように反応しなければならないことが挙げられる。
この知識を持ちながら、発明者たちは、ヒト腫瘍遺伝子を幹細胞に発現する複数の動物モデルを生成した。これらのモデルは、組織病理学と治療剤への反応の両方でヒト癌を模倣することが見出された。これらのモデルを、新規の治療手法を発見するため、治療効力を評価する新たな方法を発見するため、新たな診断ツールを発見し、最適化するため、スクリーニングするCSCの供給源として、新規及び現存の薬剤/薬剤候補を試験するための組織化された手法で使用することができる。これらの手法及びモデルの全ては、本発明の実施態様を形成する。
本発明の記載の理解を促進するために、本発明の文脈における幾つかの用語及び表現の意味を下記で説明する。
用語「幹細胞」(SC)は、それ自体が自己複製を介して永続化する能力、及び分化を介して特定の組織の成熟細胞を生成する能力を有する細胞を意味する。これらは、多能性であり厳密に制御されている自己複製組織細胞である。SCの例には、造血幹細胞、神経幹細胞、肉腫幹細胞、乳房幹細胞、肺幹細胞、能幹細胞、前立腺幹細胞、膵臓幹細胞などが挙げられる。
癌幹細胞(CSC)は、腫瘍再発と転移の両方に関与しており、新規分子標的を提供する新規細胞標的を提供することが、発明者たちの論点である。癌幹細胞は、細胞に特徴的である特定のマーカーを幹細胞区画において発現し、そのことは当業者には知られている。例えば、幹細胞はSca1+である。幹細胞は、また、Lin-である。
用語「癌幹細胞」(CSC)は、広範囲に繁殖し、新たな腫瘍を形成し、癌の進展を維持する能力を有する細胞、すなわち腫瘍の形成及び増殖を駆動する無限の繁殖潜在能力を有する細胞を意味し、前記用語には、SCにおける遺伝子改変と、CSCになる細胞における遺伝子改変の両方が含まれる。好ましい実施態様において、前記CSCはSca1+である。
用語「被験者」は、哺乳動物の種のメンバーを含む脊椎動物を意味し、愛玩動物、齧歯類(特に、ネズミ科の動物(murine animal))、霊長類及びヒトが挙げられるが、これらに限定はされず、被験者は、好ましくは、男性又は女性、任意の年齢又人種のヒトである。
用語「齧歯類」としては、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどが挙げられ、好ましい実施態様において、齧歯類動物はマウスである。
表現「ヒト病理に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子」は、本明細書以降、「活性化されうる遺伝子」と呼ばれ、哺乳動物のゲノムに組み込まれたとき、遺伝子、改変遺伝子又は遺伝子融合が関連するヒト病理を再現する、遺伝子、改変遺伝子(突然変異、欠失、挿入、複製などを含む)又は遺伝子融合を意味する。好ましくは、本発明の活性化されうる遺伝子は、腫瘍遺伝子である。多くの腫瘍遺伝子は既知であり、特定の型の癌に関連している。例えば、BCR−ABLp210は、慢性骨髄性白血病に関連している。BCR−ABLp190、TEL−AML1、E2A−HLF及びE2A−Pbx1は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)に関連している。他の例が下記に提示されており、更なる例も当業者に知られている。例えば、腫瘍遺伝子の包括的なリストは、http://www.infobiogen.fr/services/chromcancer/Genes/Geneliste.htmlで提供されており、Cooper G. Oncogenes. Jones and Bartlett Publishers, 1995; Vogelstein B, Kinzler KW. The Genetic Basis of Human Cancer. McGraw-Hill: 1998; http://cancerquest.org/index.cfm?page=780も参照すること。
用語「ヒト病理」には、幹細胞由来のヒト病理、並びに非幹細胞由来のヒト病理が含まれる。特定の実施態様において、ヒト病理は、幹細胞由来のヒト病理である。別の特定の実施態様において、前記活性化されうる遺伝子は、ヒト腫瘍病理又はヒト非腫瘍病理のような幹細胞由来のヒト病理に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子である。
更なる特定の実施態様において、前記ヒト病理は固形腫瘍である。ヒト病理は、上皮又は間葉の癌から選択することができる。そのような癌の特定の例には、骨髄増殖性疾患、ヒトリンパ腫(例えば、バーキット様リンパ腫、広汎性大B細胞リンパ腫(DLBCL)及び辺縁層リンパ腫)、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)を含む白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫を含むリンパ球増殖性症候群、白血球減少症、血小板減少症、血管形障害;カポジ肉腫、脂肪肉腫、ユーイング肉腫を含む任意の肉腫、任意の間葉癌;肺癌(例えば、小型細胞肺癌(SCLC)、非小型細胞肺癌(NSCLC))を含む任意の癌腫、並びにリンパ腫、乳癌、皮膚癌及び腎癌が挙げられる。他の例には、新生物;黒色腫;並びに固形腫瘍、例えば、肺、結腸直腸、乳房、子宮、前立腺、膵臓、頭部及び頸部、脳の固形腫瘍が挙げられる。
別の特定の実施態様において、前記活性化されうる遺伝子は、造血又は胎児幹細胞移動のようなヒト病理に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子である。別の特定の実施態様において、前記活性化されうる遺伝子は、神経障害、奇病、代謝疾患、免疫疾患、心血管疾患のようなヒト病理に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子である。
したがって、本発明は、ヒト病理が動物モデル、特にマウスモデルで生成される、ヒト癌のモデルを包含する。この態様に関連する本発明の別個の実施態様は、上皮又は間葉の癌のモデルを提供する。そのようなモデルの例には、本明細書で記載されている、ヒトリンパ腫、白血病、肉腫及び癌腫、特に慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、リンパ球増殖性症候群、多発性骨髄腫、肉腫、例えば脂肪肉腫、ユーイング肉腫、癌腫、例えば肺癌、乳癌、皮膚癌及び腎癌のモデルが挙げられる。
動物モデルは、本発明のこの態様に従って、ヒト病理に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含む幹細胞(SC)を動物において生成することによって生成することができる。発明者たちは、これらのモデルが、ヒト癌と同様な組織学的特徴の確立;同じ疾患ステージを通した進行;宿主に対する同じ全身的効果を引き起こすこと;腫瘍開始/進行において同じ遺伝子経路を活性化/抑制すること;多様な治療手法に対してヒトと同じように反応することを含む、癌状態のあらゆる忠実な再現に必要な特徴を全て共有することを確立した。
本発明の癌モデルを生成するために、ヒト病理に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子(活性化されうる遺伝子)は、好ましくは、Sca1+細胞において前記遺伝子異常の発現を指示するプロモーターに機能的に結合される。そのようなプロモーターは、転写の開始に関与し必要である核酸の配列であり、前記細胞において活性化されうる遺伝子の発現を指示し、RNAポリメラーゼの結合部位を含む。本発明の文脈内において、用語「プロモーター」は、転写調節タンパク質が結合できる他の部位も含むことができる。
本発明の好ましい実施態様において、このプロモーターは、Sca1+細胞において遺伝子異常の発現を指示する任意の真核細胞プロモーター、すなわち、幹細胞区画でのみ活性であり、細胞が幹細胞の状態を越えて分化すると不活性である任意のプロモーターであることができる。幹細胞区画で活性であるが、分化細胞でも活性であることができるプロモーターは、本発明での使用には不適切である。幹細胞にのみ特異的なプロモーターの活性は、本発明の重要な態様である。好ましくは、プロモーターは、Sca1を発現する細胞で活性であり、場合により、ヒト上皮抗原(HEA)又はヒトの癌胎児性抗原(CEA)、CD133;α2βlインテグリンなどを発現する細胞においても活性であるものである。プロモーターは、好ましくはLin+である細胞において不活性である。
例えば、プロモーターは、任意の真核細胞Sca1プロモーター、特に脊椎動物、動物、哺乳動物、齧歯類又はマウスから誘導されるSca1プロモーターである。適切なプロモーターの別の例には、musashi−1及びmusashi−2プロモーター、並びにその機能的同等物が挙げられる(Siddall NA et al. Proc. Natl Acad. Sci.USA 103: 8402-8407, 2006)。マウスmusashi−1遺伝子の詳細は、GeneID: 17690 Primary source: MGI:107376 in Entrez Gene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で見出すことができる。
発明者たちが本発明を実証するために使用する特定の実施態様では、活性化されうる遺伝子の発現をSca1+細胞において指示するプロモーターは、マウスのpLy−6E1プロモーター又はその機能的フラグメント若しくはその機能的同等物であることができる。換言すると、動物モデルにおいて、例えばこの場合はマウスにおいて、異なる導入遺伝子の組織特異的発現を指示することができる。pLy−6E1プロモーターは、十分に特徴決定されており、Sca1+細胞における選択的発現に必要な全ての要素を含んでいる[Miles C., Sanchez M-J, Sinclair A, and Dzierzak, E. (1997) "Expression of the Ly-6E.1 (Sca-1) transgene in adult haematopoietic stem cells and the developing mouse embryo". Development 124:537-547]。したがって、特定の実施態様では、前記活性化されうる遺伝子の発現をSca1+細胞において指示するプロモーターは、マウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物である。このプロモーターの機能的同等物は、当業者に周知であり、pLy6A遺伝子、Tmtsp遺伝子、c−kit遺伝子、マウスCD34遺伝子、Thy1遺伝子などのプロモーターが挙げられる。
表現「機能的に結合される」は、活性化されうる遺伝子の配列に対するプロモーターの方向付けに関する。プロモーターは、活性化されうる遺伝子の発現を制御又は調節することができるように配置されている。
前記活性化されうる遺伝子の例示的な非限定例には、BCR−ABLp210、BCR−ABLp190、Slug、Snail、HOX11、RHOM2/LMO−2、TAL1、Maf−B、FGFR、c−maf、MMSET、BCL6、BCL10、MALT1、cyclin D1、cyclin D3、SCL、LMO1、LMO2、TEL−AML1、E2A−HLF、E2A−Pbx1、TEL−ABL、AML1−ETO、FUS−DDIT3、EWS−WT1、EWS FLI1、EWSR1−DDIT3、FUS−ATF1、FUS−BBF2H7、K−RASv12、Notch1などとして当該技術で同定されている遺伝子が挙げられる。BCR−ABLp210、BCR−ABLp190、Slug、Snail、HOX11、RHOM2/LMO−2及びTAL1遺伝子に関する情報は、WO03/046181に見出すことができる。これら全ての遺伝子及び遺伝子融合の配列は、当業者により現存のデータベース、例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=geneから簡単に入手することができる。当業者が理解するように、使用されるこれらの遺伝子のいずれか1つの正確な配列は変わることができる。好ましくは、哺乳類の活性化されうる遺伝子、例えばマウス配列、より好ましくはヒト配列が使用される。しかし、本発明は、例えば多型変種、突然変異体及び野生型と考慮されない他の遺伝子型を含むように、変種の活性化されうる遺伝子の使用を含む。例えば、そのような遺伝子を、疾患のパターンの差を反映し、患者群にわたる治療に反応するなどの可能性があるような遺伝子の腫瘍形成潜在能力における差を調査するのに使用できる。したがって、上記で参照された各遺伝子に対する参照には、その範囲内で、例えば、上記で表された受入番号で表される配列と80%、85%、90%、95%、98%、99%又はそれ以上の有意な相同性又は配列同一性を共有するような遺伝子の変種への参照が含まれる。遺伝子は、cDNAであることができるか、又はゲノム配列を含むことができる。cDNAが好ましい。
固形組織Sca1+細胞における腫瘍遺伝子活性化は、固形組織癌腫をもたらすことが、本明細書で示されている。この研究は、AdenoCreを条件的に使用して腫瘍遺伝子(この場合、一つの好ましい例として、ヒトKRASv12)を活性化する条件系を使用して、マウスにおいて例示されている。この系において、非小型細胞肺癌(NSCLC)の肺癌が、AdenoCre感染、すなわち腫瘍遺伝子活性化の約3〜5か月後に観察された。
したがって、固形組織中のSca1+細胞を、ヒト造血性癌に関連する遺伝子欠損について標的化すると、固形腫瘍発症をもたらすことが、本明細書で実証される。
例えば、発明者たちのCMLのモデル(下記を参照すること)は、79%のマウスでCML疾患のみを生成することを示した。残りは、CMLと、肺腺癌(肺ADC)(12%)、肝腺癌(肝ADC)(3%)、線維性組織球腫(2%)、骨肉腫(2%)及びセルトリ細胞腫(2%)から構成される。
したがって、本発明のこの態様は、Sca1+細胞において遺伝子異常の発現を指示するプロモーターに機能的に結合される活性化されうる遺伝子(すなわち、ヒト病理に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子)を含むDNA構築物をそのゲノムに含有し、固形腫瘍を生成するか又は生成する潜在能力を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物に関する。固形腫瘍の例には、骨髄増殖性疾患、ヒトリンパ腫(例えば、バーキット様リンパ腫、広汎性大B細胞リンパ腫(DLBCL)及び辺縁層リンパ腫)、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫を含むリンパ球増殖性症候群、白血球減少症、血小板減少症、血管形障害;カポジ肉腫、脂肪肉腫、ユーイング肉腫を含む任意の肉腫、任意の間葉癌;肺癌(例えば、小型細胞肺癌(SCLC)、非小型細胞肺癌(NSCLC))を含む任意の癌腫、乳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、子宮癌、前立腺癌、膵癌、頭部及び頸部、脳、並びに腎臓の癌、新生物;黒色腫などが挙げられる。
Sca1+Rhom2マウスを使用する発明者たちのT−ALLモデルは、74%でT細胞又はHSC疾患のみを生成し、残りは、造血性疾患と、肺腺癌(16%)、肝腺癌(5%)及び他(5%)から構成される。Sca1+Hox11マウスも同様なパターンを有する。
Sca1+BCL6マウスを使用する発明者たちのB細胞リンパ腫モデルは、86%でリンパ腫疾患のみを生成し、残りは、リンパ腫と、肺腺癌(9%)及び肝腺癌(3%)から構成される。
BCR−ABLp210は、慢性骨髄性白血病に関連している。発明者たちは、特定の場合に固形腫瘍の発症ももたらすCMLの動物モデルを、BCR−ABLp210を動物の幹細胞区画に組み込むことによって生成できることを確立した。BCR−ABLp210をコードする構築物を、BCR−ABLp210転写物が幹細胞区画、特にSca1+Lin-細胞で生成されるように配置するべきである。
そのようなモデルは、ヒトCMLの病理の多様な特徴を反復することが見出された。例えば、発明者たちにより生成され、本明細書に記載されているマウスモデルは、慢性(骨髄増殖性)期及び急性転化を示す。造血幹細胞の大きさは正常である。更に、Gleevec(商標)はCMLを治療するのに効果的ではなく、ヒトの状態の場合では、症状の緩和しか提供しない。このことは予想外ではあったが、ヒトCMLの病理の関連する特徴を再現する現実的なモデルとして、このモデルの信頼性についての良好な証拠を提供する。
本発明のCMLモデルは、BCR−ABLp210を動物の幹細胞区画に導入することによって確立することができる。BCR−ABLp210の配列は、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに機能的に結合されることができる。マウスモデルの生成に適切なそのようなプロモーターの例は、マウスプロモーターpLy−6E.1又は機能的フラグメント若しくはその同等物である。他の例は、本明細書を読むことによって当業者に明らかになる。
そのようなモデルにおいて、幹細胞が幹細胞状態を越えて分化した後では、Sca1+Lin-細胞でのBCR−ABLp210転写物の割合は高く、Sca1-Lin+細胞では低いことが見出されている。本発明者たちにより提唱されているCSC理論を支持するように、BCR−ABLp210転写物のパターンは、Sca1+Lin-細胞とSca1-Lin+細胞の両方でCMLの発症の前後で異なっていないことも見出されている。このことは、BCR−ABLp210それ自体は、癌の状態に直接的な役割を演じないが、実際には癌疾患の真の原因である更に下流の(癌細胞の刷込みを課すことによる)発生的/後成的修飾を引き起こすという論点を支持する。
発明者たちの知る限りにおいて、この幹細胞駆動CML発症は、ヒトCML及び急性転化を再現する最初のマウスモデルである。ヒトの状態で見られる疾患のパターンと同様に、これらのモデルは、CMLから急性転化へ自発的に進行する。更に、これらの動物の脾臓及び肝臓における巨核球が、骨髄化生を定義する。FACS分析も末梢血における成熟骨髄細胞の蓄積を示す。更に、マウスモデルは、ヒトにおける悪性形質転換に関連するDNAメチル化変化を反映する。
BCR−ABLp190、TEL−AML1、E2A−HLF及びE2A−Pbx1は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)に関連している。発明者たちは、特定の場合に固形腫瘍の発症ももたらすこの疾患の動物モデルを、BCR−ABLp210、TEL−AML1、E2A−HLF又はE2A−Pbx1のいずれか1つを動物の幹細胞区画に組み込むことによって生成できることを確立した。これらの遺伝子のいずれか1つを含有するトランスジェニックマウスの創造に基づくモデルは、ヒトB−ALLの病理の多様な特徴を忠実に反復することが見出された。腫瘍遺伝子配列は、上記で考察されたように、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに、例えばマウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物に機能的に結合されることができる。
B−ALLモデルのプロトタイプの例が本明細書においてマウスで示されており、ヒト病理の特性がマウス系で反映されている。特に、末梢血、肝臓、脾臓及び肺への広範囲なヒトB細胞芽細胞の浸潤が実証されている。
SCL、HOX11、LMO1及びLMO2は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)に関連している。発明者たちは、特定の場合に固形腫瘍の発症ももたらすT−ALLの動物モデルを、SCL、HOX11、LMO1又はLMO2のいずれか1つを動物の幹細胞区画に組み込むことによって生成できることを確立した。これらの遺伝子のいずれか1つを含有するトランスジェニックマウスの創造に基づくモデルは、ヒトT−ALLの病理の多様な特徴を忠実に反復することが見出された。例えば、LMO2配列は、上記で考察されたように、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに、例えばマウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物に機能的に結合されることができる。
T−ALLモデルのプロトタイプの例が本明細書においてマウスで示されており、ヒト病理の特性がマウス系で反映されている。特に、組織及び末梢血でのT細胞白血病の発症及びそれらへの芽球播種が示され、ヒト病理と同一である。
Maf−B、FGFR、c−maf及びMMSET遺伝子は、多発性骨髄腫に関連する。発明者たちは、特定の場合に固形腫瘍の発症ももたらす多発性骨髄腫の動物モデルを、Maf−B、FGFR、c−maf又はMMSETのいずれか1つを動物の幹細胞区画に組み込むことによって生成できることを確立した。これらのモデルは、全て、ヒトB−ALLの病理の多様な特徴を忠実に反復することが見出された。例えば、Maf−B、FGFR、c−maf又はMMSETのいずれか1つの配列は、上記で考察されたように、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに、例えばマウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物に機能的に結合されることができる。
多発性骨髄腫モデルのプロトタイプの例が本明細書においてマウスで示されており、ヒト病理の特性がマウス系で反映されている。特に、形質細胞の浸潤が脾臓及び腎臓で示されており、腎不全の病理的徴候が見られる。形質細胞は、また、骨髄及び末梢血において、ヒトで見られるものと非常に類似した病理を示す。
BCL6、BCL10、MALT1、cyclin D1及びcyclin D3は、バーキット様リンパ腫、広汎性大B細胞リンパ腫(DLBCL)又は辺縁層リンパ腫のようなリンパ球増殖性障害に関連する。発明者たちは、特定の場合に固形腫瘍の発症ももたらすこれらの疾患の動物モデルを、BCL6、BCL10、MALT1、cyclin D1又はcyclin D3のいずれか1つを動物の幹細胞区画に組み込むことによって生成できることを確立した。これらの遺伝子のいずれか1つを含有するトランスジェニックマウスの創造に基づくモデルは、ヒトリンパ腫の多様な特徴を忠実に反復することが見出された。例えば、これらの配列のうちのいずれか1つは、上記で考察されたように、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに、例えばマウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物に機能的に結合されることができる。
そのようなモデルのプロトタイプの例は、Sca1+において配列の発現を指示するプロモーターの機能的な制御下で動物の幹細胞区画に組み込まれるBCL6遺伝子を使用して生成された。幹細胞が幹細胞状態を越えて分化した後では、Sca1+Lin-細胞でのBCL6転写物の割合は高く、Sca1-Lin+細胞では低いことが見出されている。本発明者たちにより提唱されているCSC理論を支持するように、BCL6転写物のパターンは、Sca1+Lin-細胞とSca1-Lin+細胞の両方でリンパ腫の発症の前後で異なっていないことも見出されている。このことは、BCL6それ自体は、癌の状態に直接的な役割を演じないが、実際には癌疾患の真の原因である更に下流の(癌細胞の刷込みを課すことによる)発生的/後成的修飾を引き起こすという論点を支持する。
この疾患モデルは、ヒトで見出される疾患の病理を反映する。例えば、モデルでの脾臓における広汎性大B細胞リンパ腫は、ヒトで見られるものを正確に模倣する。Pax5及びCD21+veB細胞は、肺及び腎臓に浸潤する。事実、Sca1+BCL6マウスにおけるこれらのB細胞はBCL6を発現せず、BCL6を標的にすることは、癌治療の過剰な実施であるという論点に更に重みを加える。更に、Sca1+BCL6マウスとBcl6欠損マウスとの交配は、表現型を救出しないことが見出された。
さらにより興味深いことに、マウスで生成されたB細胞リンパ腫は、ヒトB細胞リンパ腫と分子的に類似している。例えば、ヒトDLBCLを分類するために使用される伝統的な分子予後マーカーは、本明細書で生成され記載されているDLBCLモデルに存在する。そのようなマーカーには、Mdm2、Bcl−2、p27−Ccnd3、Ezh2−Bmi1、c−Myc、Foxp1及びPde4bが挙げられる。このパターンのB細胞リンパ腫を有することによって特徴付けられる動物モデルは、本発明の更なる態様を形成する。
更に、本発明のモデルにおけるB細胞リンパ腫は、ヒトABC−DLBCLと同様な分子サインを有する。ヒト(Alizadeh, AA. et al. Nature, 2000; 403:503)においてもこれらのマウスモデにおいてもABC−DLBCLは、BCL6を発現しない。加えて、Sca1+Bcl6マウスは、ヒトABC−DLBCLで観察されるものと同様な形質細胞分化阻止を示す。
TEL−ABL、AML1−ETO及びFUS−ERGは、急性骨髄性白血病に関連している。発明者たちは、これらの疾患の動物モデルが、動物の幹細胞区画へTEL−ABL、AML1−ETO又はFUS−ERGを組み込むことによって生成できることを確立した。これらの遺伝子のいずれか1つを含有するトランスジェニックマウスの創造に基づくモデルは、ヒト骨髄性白血病の病理の多様な特徴を忠実に反復することが見出された。例えば、これらの配列のうちのいずれか1つは、上記で考察されたように、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに、例えばマウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物に機能的に結合されることができる。
EWS−WT1及びEWS FLI1は、ユーイング肉腫に関連する。発明者たちは、ユーイング肉腫の動物モデルが、動物の幹細胞区画へEWS−WT1又はEWS FLI1を組み込むことによって生成できることを確立した。これらの遺伝子のいずれか1つを含有するトランスジェニックマウスの創造に基づくモデルは、ヒトユーイング肉腫の病理の多様な特徴を忠実に反復することが見出された。例えば、これらの配列のうちのいずれか1つは、上記で考察されたように、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに、例えばマウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物に機能的に結合されることができる。
FUS−DDIT3及びEWSR1−DDIT3は、粘膜様脂肪肉腫に関連する。発明者たちは、粘膜様脂肪肉腫の動物モデルが、動物の幹細胞区画へFUS−DDIT3又はEWSR1−DDIT3を組み込むことによって生成できることを確立した。これらの遺伝子のいずれか1つを含有するトランスジェニックマウスの創造に基づくモデルは、ヒト粘膜様脂肪肉腫の病理の多様な特徴を忠実に反復することが見出された。例えば、これらの配列のうちのいずれか1つは、上記で考察されたように、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに、例えばマウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物に機能的に結合されることができる。
FUS−ATF1は、血管腫様線維性組織球腫に関連する。発明者たちは、血管腫様線維性組織球腫の動物モデルが、動物の幹細胞区画へFUS−ATF1を組み込むことによって生成できることを確立した。この遺伝子を含有するトランスジェニックマウスの創造に基づくモデルは、ヒト血管腫様線維性組織球腫の病理の多様な特徴を忠実に反復することが見出された。例えば、この配列は、上記で考察されたように、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに、例えばマウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物に機能的に結合されることができる。
FUS−BBF2H7は、低悪性線維粘液肉腫(LGFMS)に関連する。発明者たちは、LGFMSの動物モデルが、動物の幹細胞区画へFUS−BBF2H7を組み込むことによって生成できることを確立した。この遺伝子を含有するトランスジェニックマウスの創造に基づくモデルは、ヒトLGFMSの病理の多様な特徴を忠実に反復することが見出された。例えば、この配列は、上記で考察されたように、Sca1+細胞において配列の発現を指示するプロモーターに、例えばマウスプロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメント若しくは同等物に機能的に結合されることができる。
本発明に従って生成されたモデルは、ヒトにおける薬剤反応で予測されるような方法で薬剤に反応する。
例えば、ヒト多発性骨髄腫の治療に成功していないメルファラン−プレドニゾンレジメンは、本明細書に記載されている多発性骨髄腫モデルにおいても成功していない。ヒト肺癌の治療に成功していないドキソルビシンは、本明細書に記載されている肺癌モデル、例えばSca1+hKRASマウスにおいても成功していない。この薬剤については、本発明のマウスにおけるヒト及びDLBCLモデルにおいても同じである。ドキソルビシンは、ヒトリンパ腫の治療において最も活発に使用されている薬剤の一つである。これは、実質的に全てのヒトリンパ腫患者がドキソルビシン再発により治療されている現実にも関わらずである。
ヒトBcrAbl白血病の治療に成功していないGleevec(商標)(イマチニブ)は、本明細書に記載されているBcrAbl白血病モデルにおいても成功していない。Gleevecは、ヒトCMLに症状の緩和をもたらすが、この場合でも、本明細書に記載されているCMLのマウスモデルにおいてCMLを治癒しない。発明者たちにより提唱されている明快な仮説は、この有効な治療に失敗したのは、GleevecがCSCを死滅させなかったからということである。本明細書に記載されているモデルを使用して、CSCを死滅させ、したがって癌を治癒する次世代のGleevecを開発することができる。
更に、ヒト精巣癌の成功した治療レジメンは、本明細書に記載されているマウスモデルでも成功している。SNAILがSca1+細胞で発現するモデルにおいて、BEP(ブレオマイシン、VP16=エトポシド、シス−プラチン)で処置されたマウスは、7週間以内に腫瘍がなくなっている。BEPはヒト精巣癌を治癒し、毒性が高いが、癌を治癒することが知られている唯一の癌治療である。
したがって、CSCの同定は、癌治療のパラダイムシフトを表すことが明確である。本明細書に含まれるデータは、CSCが細胞の真実の個体群であり、かつ癌疾患の生成に関与していることに疑う余地のないことを実証している。しかし、CSCを(標的同定、薬剤発見などのため)標的として治療プログラムで使用する前に、2つのことを示すことが重要である。第1には、これらの除去が、動物全身における腫瘍形成の後、インビボで癌を排除することを意味すること。第2には、CSCがどのように正常な幹細胞と異なるかを知る必要があり、それによってこれらを選択的に標的化できることである。
当然のことながら、CSCが癌疾患を維持できることが本明細書において示されている。例えば、本明細書に開示されている実験は、Sca1Bcl6マウスの骨髄から精製されたSca1+Lin-細胞が、再構成されたマウスの100%でヒトB細胞リンパ腫を生成することを示している。対照的に、脾臓誘導腫瘍B細胞は、リンパ腫を全く生成しない。
加えて、CSCの除去後の癌の排除が、pLy6−HSVtk−IRES−BCRABLp210マウスのガンシクロビル処置を使用して本明細書において初めて実証されている(実施例1を参照すること)。この場合、HSVtk−IRES−BCRABLp210構築物が、pLy6プロモーターの機能的制御下でSca1+遺伝子に導入される。予測されたように、上記に記載されたCMLモデルにおいてBCRABLp210構築物の発現パターンをもたらすと、BCR−ABLp210及びTK転写物のパターンは、Sca1+Lin-細胞において高く、Sca1-Lin+細胞では非常に低いことが見出された。HSV−tkの発現は、プロドラッグヌクレオシドガンシクロビルの、リン酸化塩基類似体としてのその薬剤形態への変換を誘導する。リン酸化ガンシクロビルは複製細胞のDNAに組み込まれ、G2/Mチェックポイントで非可逆的停止を引き起こし、続いてアポトーシスを引き起こす(Rubsam LZ et al. Cancer Res 1998, 58: 3873-3882)。発明者たちは、Sca1+細胞の除去を治療標的として使用できるか、及びCSCの死滅が癌治療の有効な治療戦略であるかを決定するために使用できるかという疑問に対処するためにこのモデルを開発した。100%のマウスが腫瘍を有する出発時点から、30匹のマウスを対照として使用し、毎日、生理食塩水に付した。残りの60匹のマウスには、毎日、GCVを注射した。この期間の間で、癌は完全に消滅した。更に、GCV処置後に消滅した癌を担持していたこれらのマウスを、更に3か月間観察して、腫瘍の再発は観察されなかった。したがって、これらのマウスにおけるガンシクロビル処置は、腫瘍量の完全なる低減をもたらす。
HSVtk−IRES−Bcl6構築物を含むマウスで実施された研究においても、全く同じことが事実であると示された。
この研究は、CSCの死滅が、癌治療の有効な治療戦略であり、その潜在的な用途が広いことを初めて実証する。
したがって、本発明は精製されたCSCに部分的に関連する。これらのCSCは、単離され、精製され、特徴決定された。これらの精製CSCを、上記に記載された本発明の態様のうちのいずれか1つのモデルから、特に上記に記載されたマウスモデルから単離することができる。実施態様において、本発明により提供されるSC(例えば、mSC)又はCSC(例えばmCSC)は、マーカーを、例えば、癌幹細胞の特定の単離及び/若しくは同定のために、又は癌幹細胞の獲得のために、又は健康な幹細胞から癌幹細胞を分化させるために有用なマーカーを更に含む。前記の目的を達成することができるSCから又はCSSからの実質的にあらゆる産物、例えば、遺伝子、タンパク質などを使用することができる。前記マーカー関する情報を、SC及び/若しくはCSCを単離する及び/若しくは同定するアッセイを設計するため、又はSC及び/若しくはCSCを獲得するため、又は健康なSCからCSCを分化するために使用することができる。マウスゲノムとヒトゲノムとの類似性のために、上記に記述した目的に有用なマーカーを、ヒトSC(hSC)及び/又はヒトCSC(hCSC)において同じ目的を達成するために使用することもできる。
したがって、本発明の一つの態様は、癌幹細胞の実質的に純粋な培養物に関する。好ましくは、前記CSCはSca1+である。そのような細胞は、Sca1抗原を有意なレベルで発現することができる。他の有用なバイオマーカーの例には、ヒトにおけるヒト上皮抗原(HEA)、CD133;α2βlインテグリンが挙げられる。1、2、3、4、5、6個又はそれ以上のこの型のマーカーを、本発明の幹細胞により発現することができる。CSCは好ましくはLin−である。CSCは、CD38-であることもできる。
本発明のCSCは、癌を繁殖及び維持する潜在能力を有する。この能力を、本明細書で記述されるアッセイのどれかを使用して試験することができる。例えば、健康なマウスへのCSCの移植は癌を引き起こし、適切な機能確認アッセイをもたらす。適切なアッセイの特定の例は、実施例13に提示されている。
本発明のCSCは、例えば、前立腺癌幹細胞、脳、乳房、腸、結腸、肺、卵巣、白血病、上皮、固形腫瘍、又は任意の上皮及び間葉癌のようなあらゆる種類の癌幹細胞であることができる。CSCは、任意の脊椎動物癌幹細胞であることができるが、最も興味深いものはヒトと非ヒトの両方の癌幹細胞、哺乳類及び特にマウス細胞を含む齧歯類を含む動物幹細胞である。好ましくは、実質的に純粋な培養中の細胞の少なくとも50%が癌幹細胞であり、この割合はより多くなることができ、例えば、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上であることができる。癌幹細胞の実質的に純粋な培養物は、好ましくは、癌幹細胞ではない癌細胞の50%未満を含有し、この割合はより少なくなることができ、例えば、25%、10%、5%、1%又はそれ以下であることができる。
本発明の癌幹細胞は、他の型の細胞に対して、例えば患者又は細胞の培養から直接得られた未処理生物学的試料と比較して、5倍濃縮、25倍濃縮、50倍濃縮又はそれ以上のCSCであることができる。そのような他の細胞型には、体内又はインビボ培養に存在する非幹癌細胞、非癌性幹細胞及び他の健康な細胞が挙げられる。
加えて、本発明の癌幹細胞は、好ましくは、ヒトにおけるCD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD31、CD45、CD56、CD64、CD140b及びグリコホリンA(GPA)からなる群i)より選択される1つ以上の成熟系列マーカーの有意なレベルを発現しない。本発明の癌幹細胞は、好ましくは、CD24を発現しないか、低レベルのCD24を発現する。本発明の癌幹細胞は、Lin−であり、成熟系列マーカーを発現しない。
本明細書で使用されるとき、「有意なレベル」とは、好ましくは、例えばウエスタンブロッティングのようにブロッティング手順で抗体を使用して、マーカータンパク質を検出可能なレベルで発現させることを意味する。
本発明の特定の態様によると、多様な遺伝子及びそれらのコードタンパク質が、CSC癌状態に関与している。これらの発見は多数の開発を可能にする。例えば、CSCを、これらの遺伝子及びタンパク質の同定に応じて、実施された個別及び関連する治療介入において同定することができる。腫瘍を、癌治療により有利に反応するような分類に層別化することができる。特定の評価を、これらの遺伝子の1つ以上について患者の発現プロフィールを作ることができ、これらの評価に基づいて、診断を、患者が治療に適切な候補者であるか、そうであれば、どのような治療剤が適切であるかについて処方することができる。そのような場合は、どのような形態の治療(例えば、投与量、投与時間及び方法、薬剤の組み合わせ)を行うことが最適であるべきかについてより詳細な評価を行うことができる。
例えば、マイクロアレイを使用して、発明者たちは、健康なSCと比較して、Bmi−1、Nanog、PU.1、Pax−5、E2A、GATA3、c−Kit、CEBPg/z、R−IL3、Bcl2、Bid、Bak、PCDC2、p21、p53、mdm2、P27及びCCND2の発現レベルがCSCで異なることを発見した。更に、これらの遺伝子の発現レベルは、癌発症の前及び癌発症の後のCSCで異なっている。このことは、リンパ腫の疾患で例示された。特に、マイクロアレイの結果の分析データは、3個のマーカー:Bcl−2、mdm2及びGATA−3で特に有意な差を示す。Bcl−2マーカーは、対照レベルと比較して、リンパ腫の発症の後の遺伝子発現に有意な減少を表した。一方、後者の2個のマーカー、mdm2及びGATA−3は、対照と比較して、リンパ腫の発症の後で増加した反応を示した。これらの結果は、臨床的に検出できる癌の前のCSCは、癌が臨床的に検出されたときのCSCと異なることを示す。これらの結果は、CSCの情報を、i)健康なヒトにおける癌の発症を予測すること、及びii)予防治療により癌の発症を防止することなどに使用できることを示す。そのような情報は、癌患者又は従来のマウスモデルから得られる研究されたCSCから得ることはできない。したがって本発明のマウスモデルは、この分野で提起された多様な挑戦に対処する独特の供給源を表す。
したがって本発明のこの態様は、癌を発症し易い又は癌に罹患している個人を診断する方法であって、前記患者からの組織において、Bmi−1、Nanog、PU.1、Pax−5、E2A、GATA3、c−Kit、CEBPg/z、R−IL3、Bcl2、Bid、Bak、PCDC2、p21、p53、mdm2、P27及びCCND2又はこれらの発現産物の群からの遺伝子のいずれか1つの配列、又は発現レベル、又は活性を検出すること、及び前記配列、発現レベル又は活性を基準と比較することを含み、前記基準と異なる配列、発現レベル又は活性が、疾患又は疾患に対する罹病性を示す方法を提供する。一般に、Bmi−1、PU.1、Pax−5a、CEBPg/z、Bcl2、Bid、Bak、PCDC2及びp21では、基準レベルよりも有意に高いレベルは、個人が罹病している又は罹病し易いことを示す。「有意に」とは、発現又は活性のレベルが、基準レベルよりも10%、25%、50%、100%、250%、500%、1000%又はそれ以上高いことを意味する。一般に、Nanog、E2A、GATA3、c−Kit、R−IL3、p53、mdm2及びCCND2では、基準レベルよりも有意に低いレベルは、個人が罹病している又は罹病し易いことを示す。基準レベルは、患者の健康な幹細胞における発現レベルである。
更なる実施態様において、本発明により提供されるSC(例えば、mSC)又はCSC(例えばmCSC)は、更にレポーターを含む。本発明によると、レポーターは、細胞膜の表面に結合される又はSC若しくはCSCの内部に導入されている産物であり、発症、進行、播種、及び更なる生理病理学的過程の空間時間的同定を可能にし、並びに分子画像技術による効果的な治療を可能にする。適用できる例示的な非限定的分子画像技術には、陽電子射出断層撮影法(PET)、コンピューター断層撮影法(TAC)、核磁気共鳴(NMR)、高性能X腺など、酵素反応に基づく生物発光シグナルの発信に基づいた方法、緑色蛍光タンパク質(GFP)のような標識を含有する遺伝子構築物の挿入に基づいた方法などが挙げられる。前記の目的を達成することができる実質的にあらゆるレポーターを使用することができる。前記レポーターを、診断アッセイ(例えば、ヒトの疾患の分子フィンガープリント法など)、薬剤発見及び開発法、標的同定、並びに薬剤耐性又は個別化医療の臨床開発の全段階及びその使用での効力及び信頼性の改善において役割を果たすこともできる。
本発明のCSCを、例えば患者からの試料中で単離、濃縮及び精製することができる。患者は、癌と診断された個人、癌を罹患する危険性があると考えられる個人、癌を有すると疑われる個人、又は癌を有するとは疑われず、良好な健康状態であるという外観を与える個人であることができる。本発明で使用されるとき、用語「試料」は、液体試料、例えば血液、精液、血漿、唾液、尿など又は固形試料、例えば組織試料のような、SC又はCSCを含有し易い任意の生物学的試料であることができる。適切な固形組織の例には、骨髄、脾臓、肝臓、肺などが挙げられる。試料は、固形試料の場合では外科的除去を含む、あらゆる従来の方法によって得ることができる。試料は、幹細胞由来のヒト病理、例えば癌を有すると以前に診断された若しくは診断されていない被験者から、又は治療を受けている、若しくは幹細胞由来の前記ヒト病理のために以前治療された被験者からも得ることができる。
本発明のこの態様は、患者又は患者の集団からCSCの単離、濃縮及び精製を可能にする。このことは、癌幹細胞における癌性増殖に影響を与える因子を同定するため、遺伝子発現又はタンパク質発現のパターンについて癌幹細胞の個体群を分析するため、新たな抗癌剤標的を同定するため、現存の又は新たな治療に対する癌幹細胞の感受性を予測するため、並びに癌発症及び治療の一般的なモデル化を行うためのアッセイを開発することを可能にする。
代替案において、本発明のCSCを培養中で増殖することができる。細胞を、本明細書で記載されている型のマウスモデルのような動物モデルから単離することができる。Sca1の発現に加えて、癌モデル動物から単離したCSCは、癌に関連する染色体異常(本明細書において、活性化されうる遺伝子と記載される)を含むことができる。前記染色体異常の例示的な非限定例には、BCR−ABLp210、BCR−ABLp190、Slug、Snail、HOX11、RHOM2/LMO−2、TAL1、Maf−B、FGFR、c−maf、MMSET、BCL6、BCL10、MALT1、cyclin D1、cyclin D3、SCL、LMO1、LMO2、TEL−AML1、E2A−HLF、E2A−Pbx1、TEL−ABL、AML1−ETO、FUS−DDIT3、EWS−WT1、EWS FLI1、EWSR1−DDIT3、FUS−ATF1、FUS−BBF2H7、hKRASv12として同定されている遺伝子が挙げられる。上記に記述されたものを含む適切な活性化されうる遺伝子の配列は、従来技術において既知である。
本発明は、CSCを単離する方法も包含する。そのような方法は、本明細書に記載されているCSCのバイオマーカーを発現する癌幹細胞の選択的濃縮を伴う。マーカーを発現する細胞の濃縮に適切な方法には、蛍光活性化細胞選別、免疫親和性交換などのような免疫学に基づく系が挙げられる。他の同等な例は当業者に既知であり、密度調整細胞選別、磁気細胞選別、抗原パニングなどが挙げられる。
本発明は、本発明の癌幹細胞を繁殖させる方法にも関する。そのような方法は、培養中の癌幹細胞を、少なくとも1つの選択される分化細胞型の細胞から産生された可溶化液の濃縮物に暴露し、濃縮物が、分裂した各癌幹細胞が2つの同一の娘癌幹細胞を産生する対称有糸分裂か、又は分裂した各癌幹細胞が1つの同一の娘癌幹細胞を産生し、癌幹細胞よりも分化している1つの娘癌幹細胞を産生する非対称有糸分裂のいずれかを優先的に起こすことによって癌幹細胞を繁殖させることができることを含む。
特定の実施態様において、ヒト病理は、幹細胞由来のヒト病理である。ヒト病理の例は、前に記載されている。説明のために、以下の遺伝子、改変遺伝子及び遺伝子融合が本明細書において特にヒト病理に関連している:多発性骨髄腫:maf−B、fgf−R、c−maf、MMSET;リンパ球増殖性症候群:Bcl−6、Bcl−10、MALT1、CYC D1、CYC D3;T細胞急性白血病:SCL、Hox11、LMO2、LMO1;B細胞急性白血病:Bcr−ablp190、tel、E2A−HLF、E2a−Pbx1;急性骨髄性白血病:Tel−abl、AML1−ETO;慢性骨髄性白血病:Bcr−ablp210;脂肪肉腫:FUS−CHOP;ユーイング肉腫:EWS−WT1、EWS−FLI1;及び肺癌:K−RasG12V(Creリコンビナーゼ誘発性)。
本発明により提供されるSC(mSCを含む)及び/又はCSC(mCSCを含む)を、多数の戦略において、例えば、
−癌の過程を調査及び研究するため;又は
−CSC個体群を同定、分類、単離、精製若しくは記述するため;又は
−被験者におけるヒト病理に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/若しくは活性化される遺伝子の存在を検出するため;又は
−被験者においてヒト病理を発症する被験者の危険性若しくは素因を評価するため;又は
−被験者においてヒト病理のステージ若しくは重篤度を決定するため;又は
−被験者においてヒト病理を有する被験者に与えられる治療の効果をモニタリングするため;又は
−被験者においてヒト病理に罹患している被験者のために個別的な治療を設計するため;又は
−治療効果の治療的なモニタリング及び評価のため;又は
−ヒト臨床試験を設計するため及び臨床予後を予測するため;又は
−癌の診断、及び/若しくは癌播種のような癌進展の特別な過程及び影響の診断のため;又は
−個別化治療のための患者の選択のため;又は
−新たな将来の薬剤による薬剤再配置の確認のため;又は
−薬剤発見及び薬物動態指針のため;又は
−先行/早期癌検出のため及び臨床的再発の可能性を予測するため
にバイオマーカーとして使用することができる。
上記で記述された戦略においてバイオマーカーとして本発明により提供されるSC(例えば、mSC)及び/又はCSC(例えば、mCSC)の使用は、本発明の追加的な態様を構成する。
更に、本発明により提供されるSC(例えば、mSC)及び/又はCSC(例えば、mCSC)を、ヒト病理の標的を発見する、スクリーニングする、探索する、同定する、評価する及び検証するために、又は癌幹細胞の自己複製能力に関連する特定の遺伝子を同定するために使用することもできる。有利には、自己複製能力の(上方又は下方)制御に関連する前記遺伝子は、癌幹細胞だけに特異的である(健康な幹細胞には特異的ではない)。すでに上記で記述された目的において本発明により提供されるSC(例えば、mSC)及び/又はCSC(例えば、mCSC)の使用は、本発明の追加的な態様を構成する。
別の態様において、本発明は、被験者におけるヒト病理に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/若しくは活性化される遺伝子の存在を検出する方法、又は前記ヒト病理を発症する被験者の危険性若しくは素因を評価する方法であって、前記被験者からの試料中でSCを同定することを含み、前記SCが、前記ヒト病理に関連する遺伝子異常を含む方法に関する。特定の実施態様において、前記SCはCSCである。したがって、本発明のこの態様は、癌を診断する方法を提供する。そのような方法は、癌のために又は癌の素因に関して被験者をスクリーニングすることを含むことができ、被験者からの試料をCSCの存在のために試験することを含む。この種類の方法は、CSCで発現される遺伝子の産物を発現する細胞を検出することを含むことができ、その例は、本明細書に記載されている。例えば、この方法は、(a)抗体のようなリガンドを、生物学的試料によって、リガンド−タンパク質複合体の形成に適切な条件下でCSCマーカータンパク質と接触させること、及び(b)前記複合体を検出することを含むことができる。対照レベルと異なる、細胞に対する発現レベルは、癌幹細胞の存在を示す。そのような診断方法は、比較的多数の細胞を必要とする血液試験及び放射線研究のような従来の癌診断方法よりも有利である。したがって、これらの診断試験は、現在可能なものよりもさらに早期に腫瘍の検出を可能にする。
発現産物は、好ましくはタンパク質であるが、代替的には、mRNA発現産物を検出することもできる。mRNA発現産物を検出する場合、それは、例えば、mRNAとプローブとの間にハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、組織試料をプローブと接触させること、及び複合体の形成を検出することによって検出することができる。
mRNA発現産物を使用する場合、それは、好ましくは、mRNAとプローブとの間にハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、組織試料をプローブと接触させること、及び複合体の形成を検出することによって検出することができる。好ましい方法は、形成された複合体の量を、対照組織が使用されたときに形成された量と比較することを含み、対照と試料との形成された複合体の量の差が癌の存在を示す。好ましくは、正常な組織と比較した、試験組織により形成された複合体の量の差は、増加又は減少である。より好ましくは、形成された複合体の量における2倍の差が有意であると認められる。さらにより好ましくは、形成された複合体の量における3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍又はさらには100倍の増加又は減少が、有意である。
この代替的な方法論において、方法は、a)CSCバイオマーカーをコードする核酸分子とプローブとの間にハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、患者からの組織試料を核酸プローブと接触させること;b)基準試料をプローブとことa)で使用した同じ条件下で接触させること:及びc)前記試料中にハイブリッド複合体の存在を検出することを含むことができ、基準試料中のハイブリッド複合体のレベルと異なる、患者試料中のハイブリッド複合体のレベルの検出が、疾患又は疾患に対する罹病性を示す。
この方法は、a)CSCバイオマーカーをコードする核酸分子とプライマーとの間にハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、患者の組織からの核酸の試料を核酸プライマーと接触させること;b)基準試料をプライマーとことa)で使用した同じ条件下で接触させること:c)試料採取した核酸を増幅すること;及びd)患者試料と基準試料の両方からの増幅核酸のレベルを検出することを含むことができ、基準試料中の増幅核酸のレベルと有意に異なる、患者試料中の増幅核酸のレベルの検出が、基準状態と比べた疾患又は疾患に対する罹病性を示す。
この方法は、a)疾患について試験された患者から組織試料を得ること;b)組織試料からのCSCバイオマーカーをコードする核酸分子を単離すること;及びc)癌に対する改変罹病性に関連する突然変異の存在を検出することによって患者を診断することを含むことができる。この方法は、核酸分子を増幅して増幅産物を形成すること、及び増幅産物中の突然変異の存在又は不在を検出することを更に含むことができる。患者における突然変異の存在又は不在は、罹病性プロフィールと関連する突然変異に対応する任意の部分で核酸プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分を有するハイブリッド二本鎖分子を形成するストリンジェントな条件下で、核酸分子を、核酸分子とハイブリダイズする核酸プローブと接触させること、及びプローブ鎖の非ハイブリダイズ部分の存在又は不在を、罹病性関連突然変異の存在又は不在を示すものとして検出することによって検出することができる。
本発明は、抗体のようなリガンドも含み、これはCSC細胞に発現するタンパク質に特異的に結合し、好ましくはその活性を阻害する。そのようなリガンドを、癌のような繁殖性疾患、又は細胞分化若しくは増殖速度の変化に関与する疾患若しくは状態の診断又は治療のための薬剤の製造に使用することができる。
上記の方法をインビトロ又はインビボで実施することができる。したがって、被験者からの試料中の前記SC又はSCSの同定は、前記被験者においてヒト病理の診断と予後の両方であることができる。例えば、被験者からの試料中の前記SC又はCSCの同定は、ヒト病理、又は前記病理のいずれかを発症する被験者の重大な危険性若しくは素因を示す。
前記SC又は前記CSCを、本明細書に記載されている、同定されるマーカー及び/又はレポーターの観点から従来の技術により同定することができる。実施態様において、前記細胞を、抗原−抗原交差反応、リガンド−レセプター相互反応、分子画像技術などにより同定することができる。上記の方法をインビトロ又はインビボで実施することができる。
特定の抗原−抗体複合体の形成を検出及び定量化するために入手可能な多種多様な免疫学的アッセイが存在し、多数の競合及び非競合タンパク質結合アッセイが以前に開示されており、これらのアッセイの多数が市販されている。
したがって、検出されるマーカー又はレポーターは、抗原として作用し、前記産物を抗体で定量化することができる。本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、無処置分子、並びにそのフラグメントを意味し、例えば、Fab、F(ab′)2及びFvであり、これらは該当の抗原決定要因に結合する、好ましくは特異的に結合することができる。用語「特異的に結合する」は、抗体が、その標的ポリペプチドに対して、他の関連するポリペプチドに対する親和性よりも著しく大きな親和性を有することを意味する。抗体は、CSC関連タンパク質に特異的であることができる。例えば、CSCで発現される癌関連タンパク質のグリコシル化パターンは、健康な幹細胞のような非癌性細胞に発現している同じタンパク質におけるグリコシル化パターンと異なることができる。
好ましくは、目的のCSC標的に、他の非関連タンパク質よりも著しく大きな親和性で結合される抗体が使用される。「著しく大きな親和性」とは、本発明の標的ポリペプチドへの親和性が、他の関連するポリペプチドへの親和性と比較して測定可能に増加していることを意味する。好ましくは、親和性は、標的ポリペプチドに対して少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍又はそれ以上である。
好ましくは、抗体は、高い親和性、好ましくは10-4M以下、好ましくは10-7M以下、最も好ましくは10-9M以下の解離定数で標的と結合し、ナノモル以下の親和性(0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1nM又はさらにそれ以下)が好ましい。
目的の標的ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を、当業者は容易に産生することができる。ハイブリドーマ技術を使用してモノクローナル抗体を作製する一般的な方法論は、よく知られている(例えば、Kohler, G. and Milstein, C., Nature 256: 495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983); Cole et al., 77-96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985)を参照すること)。他の関連する文献には、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103; Waldmann, T. A. (1991) Science 252:1657-1662が挙げられる。
非ヒト可変部領域がヒト定常部領域と結合又は融合しているキメラ抗体(例えば、Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 3439 (1987)を参照すること)を使用することもできる。
抗体を、例えばヒト化により個人において免疫原性を低くすることができる(Jones et al., Nature, 321, 522 (1986); Verhoeyen et al., Science, 239, 1534 (1988); Kabat et al., J. Immunol., 147, 1709 (1991); Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 10029 (1989); Gorman et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 88, 34181 (1991); and Hodgson et al., Bio/Technology, 9, 421 (1991)を参照すること)。本明細書で使用されるとき、用語「ヒト化抗体」は、非ヒトドナー抗体の重及び/又は軽鎖の可変部ドメインにおけるCDRアミノ酸及び選択された他のアミノ酸が、ヒト抗体の同等なアミノ酸の位置で置換されている抗体分子を意味する。したがってヒト化抗体は、ヒト抗体と酷似しているが、ドナー抗体の結合能力を有する。
更なる代替案において、抗体は、「二重特異性」抗体であることができ、これは、2つの異なる抗原結合ドメインを有する抗体であり、各ドメインは、異なるエピトープに対して向けられている。本発明の場合、結合特異性のうちの一方は、標的ポリペプチド又はそのフラグメントに対してであり、他方は、他の任意の抗原に対して、好ましくは、同様に癌幹細胞で発現している細胞表面タンパク質又はレセプター若しくはレセプターサブユニットに対してである。
したがって本発明で使用される抗体は、前記産物に特異的な、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、それらの無処理又は組み換えフラグメント、「組み合わせ体(“combibodies”)」及びFab又はscFv抗体フラグメントであることができ、これらの抗体は、ヒト、ヒト化又は非ヒト由来である。これらのアッセイで使用される抗体を標識するか又はしないことができ、非標識抗体を凝集アッセイで使用することができ、標識抗体を多種多様なアッセイで使用することができる。抗体を標識するのに使用できるマーカー分子には、放射性ヌクレオチド(radionucleotide)、蛍光体、化学ルミネセンス試薬、酵素基質又は補助因子、酵素阻害剤、粒子、着色剤及び誘導体が挙げられる。
非標識抗体(一次抗体)及び標識抗体(二次抗体)を使用する本発明に使用できる広範囲な周知のアッセイが存在し、それらのうち含まれるものは、ウエスタンブロット又はウエスタントランスファー、ELISA(酵素結合免疫吸着検査法)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、競合的EIA(競合的酵素免疫測定法)、DAS−ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、免疫細胞化学又は免疫組織化学技術、特定の抗体を含むタンパク質のバイオチップ又はマイクロアレイの使用に基づく技術、又はディップスティックのようなフォーマットにおけるコロイド沈殿に基づくアッセイである。前記産物(マーカー又はレポーター)を検出し定量化する他の方法には、アフィニティークロマトグラフィー技術、リガンド結合アッセイなどが挙げられる。
癌関連遺伝子それ自体を、CSCで発現される遺伝子をコードする核酸発現産物とプローブとの間にハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、生物学的試料を核酸プローブと接触させること、及び生物学的試料からプローブと核酸発現との間の複合体の形成を検出することによって検出することができる。
好ましい方法は、形成された複合体の量を、対照組織、例えば健康な幹細胞が使用されたときに形成された量と比較することを含み、対照と試料との形成された複合体の量の差が癌の存在又は癌の素因を示す。好ましくは、正常な組織と比較した、試験組織により形成された複合体の量の差は、増加である。より好ましくは、形成された複合体の量における2倍の増加が疾患を示す。さらにより好ましくは、形成された複合体の量における3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍又はさらには100倍の増加が、疾患を示す。
別の態様において、本発明は、被験者においてヒト病理のステージ又は重篤度を決定する方法、又は前記病理を有する被験者に与えられた治療の効果をモニタリングする方法であって、前記被験者からの試料中のSCの濃縮物を同定及び定量化し(前記SCは、ヒト病理と関連する遺伝子異常により作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含む)、前記濃縮物を、対照試料と、又は前記被験者からの以前の試料と、又は治療が与えられる前に前記被験者から取られた以前の試料と比較することを含む方法に言及する。特定の実施態様において、前記SCはCSCである。前記SC又は前記CSCを、前に記述したように、任意の適切な従来の技術により同定及び定量化することができる。上記の方法をインビトロ又はインビボで実施することができる。この方法は、前記被験者からの試料中のSCの濃縮物を(前記SCは、ヒト病理と関連する遺伝子異常により作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含む)、対照試料と、又は前記被験者からの以前の試料と、又は治療が与えられる前に前記被験者から取られた以前の試料と比較することを更に含む。対照試料は、ヒト病理のない被験者から得ることができる。この方法によると、被験者においてヒト病理のステージ又は重篤度を決定すること、又は前記病理を有する被験者に与えられた治療の効果をモニタリングすることが可能である。
本発明は、また、患者において癌の進行を評価する方法であって、第1の時点の生物学的試料中のCSCで発現される遺伝子の発現産物を、第2の時点の同じ発現産物の発現と比較することを含み、第1の時点に対する第2の時点での発現の増加又は発現の増加速度の増加が、癌の進行を示すことを含む方法を提供する。
別の態様において、本発明は、ヒト病理を治療する薬剤を発見、スクリーニング、探索、同定、開発及び/若しくは評価する、又は既知若しくは将来の薬剤、若しくは化合物の組み合わせを再配置する方法であって、候補化合物を、本発明により提供されるSC(例えば、mSC)又はCSC(例えば、mCSC)と接触させ、反応をモニタリングすることを含む方法に関する。前記細胞の繁殖を破棄するか若しくは遅くする化合物、又は前記細胞を死滅させる化合物を、更なるアッセイのために選択することができる。この方法を、インビトロ又はインビボで、例えばSC又はCSCを免疫不全マウスなどに異種移植することによって実施できる。
具体的には、本発明は、癌性幹細胞の増殖を調節する候補作用物質を同定するアッセイであって、
a)候補作用物質の存在下でCSCで発現される遺伝子の発現産物の発現レベルを検出すること;及び
b)その発現レベルを候補作用物質の不在下での発現レベルと比較することを含み、発現の低減が、CSCで発現される遺伝子の発現産物の発現レベルを候補作用物質が調節したことを示す、
アッセイを提供する。
本発明は、また、CSCで発現される遺伝子の発現レベルを修飾する作用物質を同定する方法であって、
a)遺伝子を発現している細胞を候補作用物質と接触させること、及び
b)細胞に対する候補作用物質の効果を決定することを含み、発現レベルの変化が、候補作用物質が発現を調節できることを示す、
方法を提供する。
好ましくは、作用物質は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体又は小型有機分子である。
分子又は薬理学的治療薬を開発して、ヒト病理、例えば癌のような幹細胞由来の病理を首尾良く治療及び予防することは、ヒトの治療への適用の前にあらゆる戦略の治療上の潜在能力を正確に評価することを可能にすることを記述することが重要である。
別の態様において、本発明は、SC又はCSC、例えばマウス由来の細胞の生存、分裂、若しくは繁殖を破棄する若しくは遅くするか、又は分化を誘導する化合物を提供するか、或いは前記細胞を死滅させる化合物を提供する。前記化合物は、上記の方法のいずれか1つにより同定及び評価することができ、ヒト病理の治療に潜在的に有用である。実施態様において、前記化合物は、下記:
a)前記SC又はCSC、例えばmSC又はmCSCに存在する1つ以上のエピトープの特異的な抗体又は抗体の組み合わせ;及び
b)SC又はCSC、例えばmSC又はmCSCの繁殖を破棄するか若しくは遅くする、又は前記細胞を死滅させる、小型有機及び無機分子、ペプチド、リンペプチド、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、三重らせん分子などが挙げられるが、これらに限定はされない、抗体、毒素、放射性原子を有する化合物又は化学療法剤のような細胞毒性剤
から選択されるか又はこれらにより形成される。
(b)の細胞毒性剤の例には、CSCバイオマーカーに特異的なsiRNAが挙げられる。
本発明の別の態様は、ヒト病理の治療用の医薬組成物の製造における、SC又はCSC、例えばmSC又はmCSCの繁殖を破棄する若しくは遅くするか、又は前記細胞を分化する若しくは死滅させる上記で記述された化合物の使用に関する。
特に、本発明は、癌幹細胞の根絶方法を提供する。そのような方法は、i)外部若しくは内部抗原又はそのコード遺伝子を標的にすることによって癌細胞へ向けられた免疫療法、ii)指数関数的から非指数関数的な細胞増殖への変化を行うか又は分化若しくはアポトーシスプログラムを誘発するために癌幹細胞で切り替えを誘導することを含む。そのような方法は、これらの変化に関与する因子を標的にすることができるが、CSCにも特異的であるべきである。
したがって、本発明は、患者に、上記で記載されたタンパク質、核酸分子又はリガンドの治療有効量を投与することによって、癌疾患の治療を、そのような治療の必要な患者において行う方法を提供する。そのような化合物を、医薬組成物の形態で投与することができる。そのような組成物は、化合物を、当業者に既知の薬学的に許容される担体と一緒に含む。
したがって、本発明は、例えば上記で記載された型の化合物を使用してCSCを除去することによる、患者における癌の治療に関する。そのような方法は、好ましくは多数のCSCを低減する。そのような方法は、好ましくは、患者に、癌幹細胞を標的にして破壊するのに十分な治療有効量の抗体、核酸、小型分子薬剤、又はポリペプチドを投与することを含む。
CSCに選択的に発現し、健康な細胞に発現しない特定のバイオマーカーの本明細書における同定は、癌幹細胞区画を選択的に破壊するように向けられた治療のための標的を提供する。そのような治療は、癌幹細胞に存在するマーカーを、これらの細胞を破壊する目的で、例えば患者の現存する免疫系を利用して標的にすることができる。これは、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発して実施することができる。あるいは、これは、最終分化、アポトーシス又はプログラム細胞死を誘発して実施することができる。これは、おそらく、対称繁殖性有糸分裂プログラムから非対称繁殖性有糸分裂へ、又は最終分化/アポトーシスプログラムへの切り替えを誘発して実施することができる。腫瘍内で細胞の不死個体群を標的化することによって、これらの治療は、癌細胞の数を低減することについて従来の治療よりも成功する可能性があり、患者が再発に苦しむ可能性も少なくなる。
したがって、別の態様において、本発明は、SC又はCSC、例えばmSC又はmCSCの繁殖を破棄する若しくは遅くするか、又は前記細胞を分化若しくは死滅させる、1つ以上の前記の化合物の治療有効量を、1つ以上の賦形剤及び/又は担体物質と一緒に含む医薬組成物に関する。前記医薬組成物は、ヒト病理を治療するのに有用な任意の他の活性成分を含有することもできる。特定の実施態様において、前記ヒト病理は、幹細胞由来のヒト病理である。
賦形剤、担体物質及び補助物質は、製剤又は調合剤の他の成分と組み合わせることができ、かつ治療される生物体に悪影響を与えないように、薬学的及び薬理学的耐性がなければならない。医薬組成物又は製剤には、経口又は非経口投与(皮下、皮内、筋肉内及び静脈内を含む)に適したものが挙げられるが、最適な投与経路は、被験者の状態によって決まる。製剤は、単一用量形態であることができる。製剤は、薬理学の分野で既知の方法に従って調製される。投与される活性物質の量は、治療の特殊性によって変わることができる。
本発明の別の目的は、本発明を実施するキットにある。したがって、本発明の実施態様は、SC又はCSCに最終的に存在するマーカー又はレポーターに特異的な抗体と担体とを適切な包装の中に含むキットを提供し、前記抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、それらの無処理又は組み換えフラグメント、組み合わせ体(“combibody”)」又はFab若しくはscFv抗体フラグメントであり、前記抗体は、ヒト、ヒト化又は非ヒト由来である。前記抗体を標識するか又はしないことができ、非標識抗体を凝集アッセイで使用することができ、標識抗体を多種多様なアッセイで使用することができる。抗体を標識するのに使用できるマーカー分子には、放射性ヌクレオチド(radionucleotide)、酵素、蛍光体、化学ルミネセンス試薬、酵素基質又は補助因子、酵素阻害剤、粒子、着色剤及び誘導体が挙げられる。キットは、前記抗体の組み合わせを含むこともできる。キットは、前記抗体とマーカー又はレポーターポリペプチドとの結合反応の検出に有用な試薬を含むこともできる。
更に、本発明はCSCにおける遺伝子発現にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブ、そのような遺伝子を増幅するのに有用なプライマー、場合により、疾患の診断を助けるためのプローブ及びプライマーの使用説明書を含む、癌診断に有用なキットを提供する。
本発明のキットは、他の使用のうちで、SC又はCSCの存在を検出するため(前記細胞は、幹細胞由来のヒト病理に関連する遺伝子異常により作り出される及び/若しくは活性化される遺伝子を含む);又は被験者において幹細胞由来のヒト病理を発症する被験者の危険性又は素因を評価するため;又は被験者において幹細胞由来のヒト病理のステージ若しくは重篤度を決定するため;又は幹細胞由来のヒト病理を有する被験者に与えられた治療の効果をモニタリングするため(例えば、治療効果の治療モニタリング又は評価のため);又は幹細胞由来のヒト病理に罹患する被験者に個別的な治療を設計するため;又はヒト臨床試験を設計するため;又は 癌の診断、及び/若しくは癌播種のような癌進展の特別な過程及び影響の診断のため;又は個別化治療のための患者の選択のため;又は薬剤発見及び薬物動態指針のため;又はヒト病理の標的を発見する、スクリーニングする、探索する、同定する、評価する及び検証するため;又は癌幹細胞の自己複製能力に関連する特定の遺伝子を同定するために用いることができる。
別の態様において、本発明は、ヒト病理に罹患している被験者のために個別的な治療を設計する方法であって、前記で同定された化合物を選択することを含み、前記化合物が、SC又はCSCの繁殖を破棄する若しくは遅くするか又は前記細胞を死滅させ、前記化合物が、前記被験者に投与される医薬組成物に活性成分として使用されうる方法に言及する。この方法をインビトロ又はインビボの両方で実施することができる。
別の態様において、本発明は、ヒト臨床試験を設計する方法であって、
a)本発明により提供されるSC(例えば、mSC)又はCSC(例えば、mCSC)のための標的を選択すること、又は前記細胞の分子プロファイリングをすること;
b)疾患状態における前記標的又は前記分子プロフィールを検証すること;及び
c)特定の治療における非反応者に対して反応者を選択すること
を含む方法に関する。
別の態様において、本発明は、Sca1+細胞において遺伝子異常の発現を指示するプロモーターに機能的に結合される活性化されうる遺伝子(すなわち、ヒト病理に関連する遺伝子異常よって作り出される及び/又は活性化される遺伝子)を含むDNA構築物(本明細書以降、本発明のDNA構築物)を提供する。好ましくは、遺伝子異常は、(i)BCL6遺伝子のような腫瘍遺伝子を含む核酸;(ii)キナーゼでコードされる1番目のヌクレオチド及びヒト病理に関連する遺伝子異常を含む2番目のヌクレオチド配列を含む核酸(そのような遺伝子異常の例には、BCR−ABLp210及び本明細書上記で記載された腫瘍遺伝の他の例が挙げられる);(iii)HSVtk−IRES−BCRABLp210をコードする核酸;(iv)LMO2/RHOM2遺伝子配列を含む核酸から選択される。
上記の特定の実施態様(iii)において、本発明のDNA構築物は、単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSV−tk)をコードする1番目のヌクレオチド配列、BCR−ABLp210を含む2番目のヌクレオチド配列及び配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む3番目のヌクレオチド配列を含む核酸を含み、前記1番目のヌクレオチド配列の3′末端が前記3番目のヌクレオチド配列の5′末端と結合しており、前記3番目のヌクレオチド配列の3′末端が前記2番目のヌクレオチド配列の5′末端と結合される。
本発明のDNA構築物は、制限及び結合酵素を用いる、並びにSambrook, Fitsch and Maniatis, eds., (1989) "Molecular Cloning: A Laboratory Manual". Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor NYに記載されている同様の酵素を用いる従来の消化方法によって容易に得ることができる。
望ましい場合、本発明のDNA構築物を、上記で引用したSambrookらにより記載されたような従来の方法を使用して哺乳動物の胚を形質転換するため及びトランスジェニック動物を生成するために有用なベクターの産生に使用することができる。
あるいは、本発明のDNA構築物を、トランスジェニック動物を生成するため、DNAを精卵母細胞へマイクロインジェクションするのに有用なDNAの直鎖状フラグメントを得るために使用することができる。マイクロインジェクションに有用なDNAの前記直鎖状フラグメントは、活性化されうる遺伝子を含む直鎖状フラグメントを得るために、制限酵素により切断することによって得ることができる。
別の態様において、本発明は、上記に記載された実施態様のいずれか1つにおいて、本発明のDNA構築物をそのゲノムに含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。哺乳動物は、特定の実施態様において、これらの構築物の1つ以上、好ましくは2、3、4、5個又はそれ以上を含む。本発明により提供されるトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、その結果、非トランスジェニック動物と比較して、(例えば、幹細胞由来、あるいは非幹細胞由来の)癌のようなヒト病理を発症するより大きな傾向を付与する遺伝子型を有する。前記非ヒト哺乳動物は、とりわけ他の目標のうちで病理を研究するのに有用であり、前記病理を治療及び/又は予防する潜在的に有用な化合物を評価するのに有用である。好ましくは、ヒト病理は固形腫瘍である。
本記載で使用されるとき、表現「非ヒト哺乳動物」には、好ましくは哺乳動物の分類に属する任意の非ヒト動物、例えば齧歯類、特にマウスが挙げられる。上記及び下記に記載されているように、本発明の好ましい実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物及び組織又はそれらから誘導される細胞は、好ましくは、マウスであるが、別の哺乳類の種、例えば別の齧歯類、例えばラット、ハムスター若しくはモルモット、又は別の種、例えばチンパンジー、サル、ブタ、ウサギ、又はイヌ科若しくはネコ科、又は有蹄類の種、例えばヒツジ、ヤギ、ウマ科、ウシ、又は非哺乳類動物の種であることができる。より好ましくは、トランスジェニック非ヒト動物又は哺乳動物及び組織又は細胞は、齧歯類、より好ましくはマウスから誘導される。
トランスジェニック動物の使用が倫理的な性質の問題を提示するが、本明細書で記載されている種類の研究から人類が得られる利益は、トランスジェニック動物の創造及び試験により課される可能性のあるあらゆる苦痛を大きく越えていると考えられる。当業者には明白であるが、薬剤治療は、臨床試験をヒトにおいて開始できる前に動物試験を必要とし、現行の規制及び現在利用可能な動物モデル系では、動物試験を省くことはできない。あらゆる新たな薬剤は、生存している哺乳動物の少なくとも2つの異なる種で試験しなければならず、そのうちの一方は、大型の非齧歯類でなければならない。専門家は、体内で非常に特異的な方法で作用する、現在開発中の新たな部類の薬剤は、さらに多くに動物が将来的に使用される原因となる可能性があり、より多くの霊長類の使用をもたらす可能性があると考えている。したがって、本明細書に記載されているトランスジェニックモデルからの人類への利益は、一般にマウス又は齧歯類に限定されることは何もなく、霊長類を含む他の哺乳動物も包含する。
特定の実施態様において、本発明により提供される非ヒトトランスジェニック動物は、記載に附随している実施例で記載されているものである。
本発明により提供されるトランスジェニック非ヒト哺乳動物の生成では、本発明のDNA構築物が、前記哺乳動物に、又は胚状態の、例えば細胞若しくはその受精卵母細胞の状態の、一般にはG細胞状態より後期ではない状態の先祖に導入されている。
したがって、本発明は、幹細胞由来のヒト病理に関連する遺伝子異常を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の調製手順であって、
(i)本発明のDNA構築物を非ヒト哺乳動物の受精卵母細胞に導入すること;
(ii)前記受精卵母細胞を、偽妊娠性の乳母に移植し、子孫を産生すること;及び
(iii)前記子孫を分析して、幹細胞由来のヒト病理に関連する遺伝子異常により活性化された遺伝子及び/又は作り出された遺伝子の存在を評価すること
を含む手順を提供する。
この方法は、
(i)非ヒトトランスジェニック哺乳動物の受精卵母細胞に、Sca1+細胞において遺伝子の発現を指示するプロモーターに機能的に結合される固形腫瘍の発症に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含むDNA構築物を導入すること;
(ii)前記受精卵母細胞を、偽妊娠性の乳母に移植し、子孫を産生すること;及び
(iii)前記子孫を分析すること
を含むことができる。
特定の実施態様において、ヒト病理に関連する前記遺伝子異常は、幹細胞由来のヒト病理であり、その場合、子孫は、当該の幹細胞由来のヒト病理に関連する遺伝子異常により活性化された遺伝子及び/又は作り出された遺伝子の存在を評価することによって分析される。
核酸配列を、遺伝子的に活性な状態で組み込むことができるように動物の胚に導入することができる、現在の技術で考えられる異なる方法が存在し、その全てを、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の生成に適用することができる。方法は、自然に起こるように、核酸の前記配列により胚に形質移入すること、及び前記配列が、結果的に前記配列の活性化をもたらす座位で染色体に組み込まれたトランスジェニック動物を選択することから構成される。別の方法は、核酸配列又はその制御配列の、胚へ導入する前の修飾を意味する。別の方法は、導入される核酸配列を含むベクターを使用した胚への形質移入から構成される。
特定の実施態様において、本発明のDNA構築物の、非ヒト哺乳動物の菌株への導入は、非ヒト哺乳動物の受精卵母細胞におけるSca1+細胞で発現を指示するプロモーターに機能的に結合される活性化されうる遺伝子を含む直鎖状DNAフラグメントのマイクロインジェクションによって実施される。
受精卵母細胞を従来の方法、例えば雄との交尾に対する反応によって又は黄体化ホルモンでの処置による誘発によって雌の排卵を刺激することにより単離することができる。一般に、過剰排卵がホルモン作用により雌で誘発され、雄と交配する。適切な時間の後、雌を殺処理して受精卵母細胞を輸卵管から単離し、適切な培地に保持する。受精卵母細胞を前核の存在により顕微鏡下で認識することができる。直鎖状DNAフラグメントのマイクロインジェクションは、雄前核により有利に実施される。
本発明の動物モデルを生成する代替的な方法は、上記で記述されたDNA構築物を、例えばES細胞を介した相同組み換えにより、マウスゲノムの不活性座位内に導入することを含む。
受精卵母細胞に本発明のDNA構築物を含む直鎖状DNAフラグメントを導入した後、これらは、インビトロで適切な時間インキュベートされるか、又は偽妊娠性の乳母(雌を不妊雄と交尾させることにより得られる)に再移植される。移植は、従来の方法、例えば雌に麻酔をかけ、十分な数の胚、例えば10〜20個の胚を偽妊娠性の乳母の輸卵管に外科的に挿入することによって実施される。妊娠が終わると、幾つかの胚は、妊娠を終了させ、非ヒトトランスジェニック哺乳動物を生じ、これらは、理論的には、ゲノムに組み込まれ、かつ生物体の全ての細胞に存在している本発明のDNA構築物を有するはずである。この後代は、G0世代であり、この個体は、「初代トランスジェニック」である。個体には注入核酸が組み込まれていること及びトランスジェニックであることの確認は、後代の個体を分析することによって得られる。これを実施するために、動物材料の試料から、例えば動物の尾(例えば、マウスの場合)からの少量の試料又は血液試料から、DNAをそれぞれ個別に抽出し、従来の方法により、例えば特定の開始剤を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PRC)により、又は例えば導入遺伝子の少なくとも一部と相補的であるプローブを使用するサザンブロット若しくはノーザンブロット分析により、そうでなければ、導入遺伝子によりコードされているタンパク質に対する抗体を使用するウエスタンブロット分析により分析する。導入遺伝子の存在を評価する他の方法には、限定することなく、酵素的及び/又は免疫学的アッセイ、特定のマーカーの組織学的染色、酵素活性などのような適切な生化学的アッセイが挙げられる。
一般に、トランスジェニック動物において、挿入された導入遺伝子はメンデル特性として伝達され、それによってそれぞれ個別に安定した系統を確立することが困難ではない。G0個体が親株と交配(逆交配)し、導入遺伝子がメンデル特性で挙動する場合、後代の50%が挿入された導入遺伝子の異型接合体である(半接合体)。これらの個体は、無限に維持することができるG1後代及びトランスジェニック系列を構成し、G1世代の異型接合体と正常な個体が交配する。あるいは、G1世代の個体はそれら自体で交配して、導入遺伝子が子孫の生存率に影響を与えないのであれば、挿入された導入遺伝子の同型接合体を25%、異型接合体を50%、導入遺伝子のないものを25%産生することができる。
したがって、本発明により提供される非ヒト哺乳動物の後代、例えば本発明のより提供されるトランスジェニックマウスの後代は、トランスジェニック動物と適切な個体との交尾によって、又はトランスジェニック動物の卵及び/若しくは精子のインビトロ受精によって得ることができる。本記載で使用されるとき、用語「後代」又は「非ヒトトランスジェニック哺乳動物の後代」は、最初に形質転換された非ヒトトランスジェニック哺乳動物の前の世代の全ての子孫に関する。後代を、前記で記述された方法のいずれかにより分析して導入遺伝子の存在を検出することができる。
本発明は、また、そのゲノムに本発明のDNA構築物を含む非ヒトトランスジェニック哺乳動物細胞株に関する。特定の実施態様において、前記細胞株は齧歯類細胞株である。
本発明により提供されるトランスジェニック非ヒト哺乳動物、本発明により提供されるその後代又は細胞株は、他の用途のうち、幹細胞由来又は非幹細胞由来の新生物性又は非新生物性のヒト病理に関連する遺伝子異常を治療する及び/又は予防するのに潜在的に有用な化合物の評価に有用である。したがって、本発明は、また、本発明により提供される非ヒトトランスジェニック哺乳動物、その後代又は細胞株の使用、ヒト病理に関連する遺伝子異常を治療及び/又は予防するのに潜在的に有用な化合物の評価における使用に言及する。特定の実施態様において、前記ヒト病理は、幹細胞由来のヒト病理である。
トランスジェニック動物の場合では、幹細胞由来の前記ヒト病理を治療及び/又は予防するのに潜在的に有用な化合物の評価は、試験される化合物を異なる用量でトランスジェニック動物に投与し、動物の生理学的反応を経時的に評価することにより実施することができる。アッセイされる化合物の投与は、評価される化合物の化学的性質に応じて経口又は非経口であることができる。幾つかの場合において、当該の化合物を、化合物の効果を増強する補助因子と併せて投与することが適切である場合がある。
本発明の細胞株の場合では、幹細胞由来の前記ヒト病理を治療及び/又は予防するのに潜在的に有用な化合物の評価は、アッセイされる化合物を、細胞培地に異なる濃度で適切な時間加え、適切な生化学的及び/又は組織学的アッセイを使用して化合物に対する細胞の反応を経時的に評価することにより実施することができる。時々、当該の化合物を、化合物の効果を増強する補助因子と併せて細胞培地に添加する必要がある場合もある。
以下の実施例は、本発明を例示し、その範囲を制限するものとして考慮されるべきではない。本発明の実施は、特に指示のない限り、分子生物学、微生物学、組み換えDNA技術及び免疫学の従来の技術を用い、それらは当業者の技能の範囲内である。
最も一般的な分子生物学、微生物学、組み換えDNA技術及び免疫学の技術は、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2001) Cold Harbor-Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. or Ausubel et al., Current protocols in molecular biology (1990) John Wiley and Sonsにおいて見出すことができる。
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、発明が属する当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書で引用される文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
材料及び方法
トランスジェニックPLy6−HSVtk−IRES−BCRABLp210マウスの産生
本発明により提供されるトランスジェニック非ヒト哺乳動物の生成のために、HSVtk−IRES−BCRABLp210のようなDNA構築物を、前記哺乳動物に、又は胚状態の、例えば細胞若しくはその受精卵母細胞の状態の、一般にはG細胞状態より後期ではない状態の先祖に導入した。
幹細胞由来のヒト病理に関連するこの染色体異常を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の調製手順は、以下である:
(i)本発明のDNA構築物を非ヒト哺乳動物の受精卵母細胞に導入すること;
(ii)前記受精卵母細胞を、偽妊娠性の乳母に移植し、子孫を産生すること;及び
(iii)前記子孫を分析して、幹細胞由来のヒト病理に関連する染色体異常により活性化された遺伝子及び/又は作り出された遺伝子の存在を評価すること。
(ガンシクロビル(GVC)処置)
PLy6−HSVtk−IRES−BCRABLp210マウスを使用して、BCR−ABLを発現するCSCにおけるGCV誘発細胞死の効果を試験した。予備試験の後、GCVを、腹腔内注射により100mg/kg/日の用量で14日間投与した。この用量は、トランスジェニックマウスにおいてHSV−tkを発現する細胞を死滅させたことが報告されている(Bush TG. Cell 1998, 93: 189-201)。マウスが白血病になったときに投与を開始した。対照群には、生理食塩水の注射を与えた。
(RNA抽出)
全RNAを、製造者のRNAクリーンアッププロトコールに従い、場合によりOn-column Dnase処理を用いて、TRIzol(Life Technologies, Inc., Grand Island, NY)を使用し、続いてRneasy Mini-Kit(Qiagen Inc., Valencia, CA)による精製の2工程で単離した。RNAの完全性及び品質を、電気泳動により確認し、その濃度を測定した。
(標的の調製)
cDNAプローブのT−7−based RNA増幅及び調製を、以前に記載されたように実施した(Van Gelder RN, von Zastrow ME, Yool A, Dement WC, Barchas JD, Eberwine JH: Amplified RNA synthesized from limited quantities of heterogeneous cDNA. Proc Natl Acad Sci USA 1990, 87:1663-1667. Eberwine J: Amplification of mRNA populations using aRNA generated from immobilized oligo(dT)-T7 primed cDNA. Biotechniques 1996, 20:584-591)。簡潔に、全RNAの最大量の5μgを、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを含むoligo−dTプライマーを使用するスーパースクリプトチョイスシステム(Life Technologies)を使用して、二本鎖cDNAに変換した。二本鎖cDNAをクリーンアップし、T7のインビトロ転写を、製造者の説明書に従ってMegascriptT7インビトロ転写キット(Ambion, Austin, TX)を使用して実施した。
(マイクロアレイ法)
各試料から2回目に増幅された2.5μgのRNAを、シアニン3結合dUTP(Cy3)により直接標識し、Universal Mouse Reference RNA(Stratagene)からの2回目に増幅された2.5μgのRNAを、シアニン5結合dUTP(Cy5)により基準として標識した。全てのマイクロアレイ研究では、マウスcDNAアレイを使用した。ハイブリダイゼーションを記載されているように実施した。洗浄した後、スライドをScanarray 5000 XL(GSI Lumonics Kanata, Ontario, Canada)を使用して走査し、画像をGenePix 4.0プログラム(Axon Instruments Inc., Union City, CA)により分析した。
(データ解析)
各ハイブリダイゼーションから得られたデータを解析のためにデータベースに保存した。Cy3:Cy5比率を、アレイの全てのスポットの中央比率値に正規化した。正規化の後、両方のチャンネルの強度(中央値の合計)がローカルバックグラウンドよりも低いスポットを除いた。残りのスポットの比率を対数変換し(ベース2)、マウスチップ上の重複スポットを中央値に平均化した。癌幹細胞(CSC)の発現プロフィールを得るために、発明者たちは、CSCと対照造血幹細胞との比率を参照した。比率の差が少なくとも2倍である場合、遺伝子を上方制御又は下方制御で選択した。クラスター分析のため、SOTAクラスタープログラム(Yuspa SH et al. Cancer Res 1980; 40:4694-703)を使用して、ツリーを、TreeViewプログラムを使用して観察した。
(フローサイトメトリー)
有核細胞を、抹消血細胞懸濁液から調製した。フローサイトメトリー用に細胞を更に調製するために、汚染された赤血球を、8.3%塩化アンモニウムで溶解し、次に残りの細胞を、2%ウシ胎児血清(FCS)を有するPBSで洗浄した。染色した後、全ての細胞を、2μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)を含有する2%FCSを有するPBSで1回洗浄して、死亡細胞を分析と選別の両方の手順から除外した。モノクローナル抗体を、Pharmingenから得て、含まれている、B系列染色のためにCD45R/B220、CD19、Ly51、CD43、IgM及び/又はIgDに対する抗体;T系列染色のためにCD4、CD8及びCD3に対する抗体;骨髄系のためにCD11b及びGr1に対する抗体、並びに日常的な技術により得られる異なる組織試料からの単一細胞懸濁液を染色する幹細胞のためのSca1を、Fcレセプターを介した結合を阻止するために、精製抗マウスCD32/CD16(Pharmingen)と共に、それぞれ異なる抗体の適切な希釈と共に室温又は4℃でインキュベートした。試料及びデータを、CellQuestソフトウエアを使用するFACScan装置(Becton Dickinson, FACS-sorter apparatus)で解析した。イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)及びPE(フィコエリトリン)の特異的な蛍光は、それぞれ488nm(0.4W)及び633nm(30mW)で励起した。マウス細胞の既知の前方及び直交光散乱特性を、確立されたゲートを用いて使用した。それぞれの分析において、少なくとも5000個の生存(PI-)細胞を評価した。
(抗癌剤による動物の処置)
抗癌剤による動物の処置を以下のように実施した。
BEF(ブレオマイシン、エトポシド/VP16、シス−プラチン):BEPプロトコールによる精巣癌の治療において、ブレオマイシンを3mg/日(1〜5日)、VP16を100mg/m2(1〜5日)及びシス−プラチンを40mg/m2(1〜5日)で3週間投与した。水をプラセボとして使用した。薬剤を水に溶解し、静脈内に送達した。
DXR(ドキソルビシン)を7mg/kgで投与した。投与スキームは、毎7日目、3回−q7d×3−を4〜5週間であった。薬剤を水に溶解し、静脈内に送達した。水をプラセボとして使用した。
Gleevec(商標):貯蔵溶液5mg/ml及び10mg/mlを濾過した滅菌の水で新たに作製し、1日2回、胃管栄養法により250mlの容量でマウスに投与した。Gleevec(商標)レジメンは、胃管栄養法による毎朝50mg/kg、毎晩100mg/kgであった。Gleevec(商標)を、滅菌水の250マイクロリットルの容量で投与した。水をプラセボとして使用した。
ガンシクロビル:貯蔵溶液をSIGMAの指示に従って調製した。レジメンは、腹腔内注射により100mg/kg/日を14日間であった。プラセボは、等量の希釈水/生理食塩水であった。
メルファラン及びプレドニゾン:2週間の間、メルファラン(2.5mg/kg/日)を静脈内に送達し、プレドニゾン(10mg/kg/日)を1日経口用量で送達した。プラセボは、等量のPBSであった。
(リアルタイムPCR定量化)
発現レベルを定量化するために、逆転写(RT)を、50ngのランダム六量体、3μgの全RNA及び200単位のSuperscript II RNase H-free(RNase H-)逆転写酵素(GIBCO BRL)を含有する20μlの反応で、製造者のプロトコールに従って実施した。リアルタイム定量化PCRを、BCR−ABLp210の定量化のために実施した。蛍光発生PCRを、TaqMan PCR Core Reagent kit(PE Biosystems)を使用して、50μlの反応容量で設定した。cDNA増幅を、PE Applied Biosystems 5700 Sequence Detectorで96ウエル反応プレートフォーマットにより同じプライマーを使用して実施した。熱サイクルを、95℃で10分間の最初の変性工程により開始した。続く熱プロフィールは、95℃で15秒間、56℃で30秒間、72℃で1分間の40サイクルであった。マルチプルネガティブウオーターブランク(multiple negative water blank)を試験し、較正曲線を各分析と並行して決定した。Abl内因性対照(PE Biosystems)を含めて、それぞれの試料においてBCR−ABLp210を全cDNAに関連づけた。
特異的なプライマー及びプローブの配列は以下である:
BCR−ABLp210、センスプライマー5′−TTCTGAATGTCATCGTCCACTCA−3′、
アンチセンスプライマー5′−AGATGCTACTGGCCGCTGA−3′及び
プローブ5′−CCACTGGATTTAAGCAGAGTTCAAAAGCCC−3′;
c−Abl、センスプライマー5′−CACTCTCAGCATCACTAAAGGTGAA−3′、
アンチセンスプライマー5′−CGTTTGGGCTTCACACCATT−3′及び
プローブ5′−CCGGGTCTTGGGTTATAATCACAATG−3′。
実施例1 ガンシクロビル(GCV)治療後の齧歯類CSC
PLy6−HSVtk−IRES−BCRABLp210マウスにおいて(材料及び方法を参照すること)、チミジンキナーゼ及びBCR−ABLp210の導入遺伝子発現をSca1+Lin-及びSca1-Lin+株で研究した。結果は、Sca1+Lin-株においてのみ両方の導入遺伝子の高い発現レベルを示した(図1を参照すること)。この発現パターンは、癌幹細胞(Sca1+Lin-)における選択的な導入遺伝子発現を確認した。
表1において、PLy6−HSVtk−IRES−BCRABLp210マウスで発症した異なる型の癌を示す。結果は、前記トランスジェニックマウスが、BCRABLp210遺伝子異常により影響を受けたヒトで観察されたものと同じ腫瘍パターンを発症したことを実証する。
Figure 2008545405
30匹のマウスを対照として使用して、食塩水に毎日付し、一方、残りの60匹には、方法のセクションで記載したように、GCVを毎日注射した。この期間の間に、癌は完全に消滅した。治療後に癌が消滅したマウスを、更に3か月観察すると、腫瘍の再発は観察されなかった(CML及び固形腫瘍)(図2)。
実施例2 マウスCSCの遺伝子プロフィール
マイクロアレイ分析は、リンパ腫発症の前と後での癌幹細胞の異なる発現プロフィールを明らかにした。これらのデータは、3個のマーカー:Bcl−2、mdm2及びGATA−3で有意な差を示す。Bcl−2マーカーは、対照レベルと比較して、リンパ腫の発症の後の遺伝子発現に有意な減少を表した。一方、後者の2個のマーカー、mdm2及びGATA−3は、対照と比較して、リンパ腫の発症の後で増加した反応を示した(表2を参照すること)。
Figure 2008545405
図4は、Bcl6マウス(Sca1+Lin-)からの癌幹細胞に対応する遺伝子発現パターンを示す。一方、BCL6導入遺伝子を持つ齧歯類幹細胞は、リンパ腫ヒトB細胞と同様な発現プロフィール(図5)を示す(Alizadeh AA, Eisen MB, Davis RE, Ma C, Lossos IS, Rosenwald A, Boldrick JC, Sabet H, Tran T, Yu X, Powell JI, Yang L, Marti GE, Moore T, Hudson J Jr, Lu L, Lewis DB, Tibshirani R, Sherlock G, Chan WC, Greiner TC, Weisenburger DD, Armitage JO, Warnke R, Levy R, Wilson W, Grever MR, Byrd JC, Botstein D, Brown PO, Staudt LM. 2000. Distinct types of diffuse large B-cell lymphoma identified by gene expression profiling. Nature. Feb 3;403(6769): 503-11)。これは、Bcl6導入遺伝子を持つ齧歯類癌幹細胞を、ヒトリンパ腫を模倣するモデルとして使用できることを示す。
実施例3 CSC系マウス癌モデルの創造
発明者たちは、腫瘍遺伝子(ヒト遺伝子とそのマウス対応物の両方)がSca1(幹細胞抗原1)遺伝子の5′未翻訳領域(5′−UTR)に挿入されている(図29)多数の更なるマウス癌モデルを開発した。以下の実施例で更なる詳細が記載されるように、これらのマウスモデルを続いて使用して、CSCの特異的死滅が、癌治療の効果的な治療戦略となりうるかという疑問、並びに他の関連する疑問に対処するために使用した。
表3は、マウスモデルが得られた幾つかのヒト癌を提示する。
Figure 2008545405
本発明のマウスモデルの構築に使用された本発明の構築物には、図29に示されている HVTK−IRES−BCR−ABLp210、又は、例えばBCL6(BCL6−IRES−HVTK)若しくはhKRASの同等な構築物、及び表3に提示されている他の腫瘍遺伝子の構築物が含まれた。
HVTKは、HSV−tkの代替的な略語であり、HSVは、単純ヘルペスウイルスを意味し、tk(又はTK)は、チミジンキナーゼを意味する。IRESは、配列内リボソーム進入部位の略語である。
HVTK(TK)及び特定の腫瘍遺伝子、例えばBCR−ABLp210の転写物は材料及び方法で記載された定量的リアルタイムPCRにより確認された。Sca1+Lin−細胞(すなわち、Sca1を発現するが、Linは発現しない細胞)において、HVTK(TK)及びBCR−ABLp210の発現は、Sca1−Lin+細胞よりも有意に高かった(図1、図29)。興味深いことに、これは、疾患の発症の前と後の両方で事実であることが見出され、腫瘍遺伝子それ自体が癌の維持に関与していないことを示した(実施例14も参照すること)。同様の観察が、例えば、HVTK及びBCL6転写物に関してSca1−BCL6−IRES−HVTKマウスで見られた。
実施例4 SCA1/BCR−ABLp210 CSCマウスは、ヒトCMLの病理及び急性転化を再現する最初のマウスモデルを表す
実施例3のCSCマウスモデルの1つにおいて、BCR−ABLp210遺伝子をSCA1遺伝子の5′−UTRに挿入した。これらのマウスは、SCA1/BCR−ABLp210とも呼ばれる。
これらのマウスは、慢性(骨髄増殖性)期、急性転化、HSCの大きさ及びGleevec(商標)による治療に対する反応に関して、ヒトCMLの症状及び病理を正確に再現した癌を発症したことが見出された。
これらのSCA1/BCR−ABLp210マウスにおいて、BCR−ABLp210転写物の割合は、CMLの前と後の両方で、Sca1+Lin−細胞において高く(0.20〜0.35%)、Sca1−Lin+細胞において低い(<0.1%)ことが見出された(図6)。
これらのマウスからの脾臓及び肝臓の組織学的及び組織化学的分析は、骨髄化生に特徴的な巨核球を明らかにした(図7)。
これらのマウスからの末梢血試料のフローサイトメトリーによる分析(流動活性化細胞選別、FACS)は、成熟骨髄細胞の蓄積を明らかにした(図7)。
CSCマウスモデルからの芽細胞を、DNAメチル化(5−メチルシチジン、5−MeCyd)について分析した。5−MeCyd検出によるDAPI染色細胞の比較は、ヒトCMLと同様に、悪性形質転換に特徴的であるDNAメチル化がCSCマウスモデルにおいて起こることを示した(図8)。
SCA1/BCR−ABLp210マウスは、ヒトにおける疾患の進行と似たように、CMLから急性転化へ自発的に進行することが見出された。フローサイトメトリー分析は、これらのCSCマウスモデルにおいて芽細胞の存在と顆粒球の不在が同時にあることを実証した。そのような分析の結果は、B細胞白血病及び骨髄性白血病について図9で示されている。更に、組織化学的分析は、芽細胞による肝臓及び末梢血への浸潤を明らかにした(図9)。
肝臓及び脾臓試料を、マッソン三色プロトコールを使用して染色し、ヒトCML/急性転化患者においても観察される肝臓及び脾臓の線維症を、SCA1/BCR−ABLp210マウスにおいて明らかにした(図10)。
実施例5 SCA1/BCR−ABLp190 CSCマウスは、ヒトB−ALLの病理を再現する
ACR−ABLp190をCSCマウスモデルにおいて腫瘍遺伝子として使用したとき、マウスは、ヒトにおけるB−ALLに相当する病理を発症した。マウスの末梢血、肝臓、脾臓及び肺への広範囲なB細胞芽細胞の浸潤が、フローサイトメトリー及び組織化学的分析により観察された(図11)。
実施例6 SCA1/LMO2−RHOM2 CSCマウスは、ヒトT−ALLの病理を再現する
LMO2−RHOM2をCSCマウスモデルにおいて腫瘍遺伝子として使用したとき、マウスは、ヒトT−ALLに相当する病理を発症した。組織及び末梢血でのT細胞白血病の発症及びそれらへの芽球播種は、ヒト病理と同一であった。図12において、胸腺腫、肝臓、腎臓、精巣及び脾臓組織からの試料の組織化学的分析の結果、並びに末梢血及び骨髄試料のフローサイトメトリーの結果は、T−ALLのこの典型的な発症を実証することを示す。
実施例7 SCA1/Maf−B CSCマウスは、ヒト多発性骨髄腫の病理を再現する
Maf−BをCSCマウスモデルにおいて腫瘍遺伝子として使用したとき、マウスは、ヒト多発性骨髄腫に相当する病理を発症した。組織化学的分析は、脾臓及び肝臓への形質細胞の浸潤を明らかにし、腎不全の病理的徴候を有することを明らかにした(図13)。更に、形質細胞が骨髄及び末梢血において同定された(図14)。
実施例8 SCA1/BCL6 CSCマウスは、ヒトリンパ腫の病理を再現する
BCL6をCSCマウスモデル(マウスモデルは、C57BL×CBAマウスから得た)において腫瘍遺伝子として使用したとき、マウスは、ヒトリンパ腫に相当する病理を発症した。SCA1/BCL6マウスは、約5〜7か月後にリンパ腫を発症した。BCL6転写物の割合は、Sca1+Lin−細胞において高く(0.2〜0.3%)、Sca1−Lin+細胞において低かった(<0.1%)(図15)。
脾臓組織試料の組織化学分析は、CSCマウスモデルにおける広汎性大B細胞リンパ腫が、ヒト病理を正確に模倣することを実証した(図16)。肺及び腎臓組織へのPax5+及びCD21+B細胞の浸潤も、組織化学的染色によって観察された(図17)。B細胞(PAX5+、B220+、CD21+)は、脾臓組織試料の組織化学的染色によって示されたように、このCSCマウスモデルにおいてBCL6を発現しなかった(図17)。
SCA1/BCL6(B細胞リンパ腫)マウスとBCL6−/−との交配は、後者のマウスにおいてBcl6−/−表現型の救出をもたらさなかった(図18)。SCA1/BCL6×BCL6−/−の後代において、B細胞の発生は正常であった。更に、後代マウスは、胚中心を形成することができず、広範囲な炎症反応により特徴付けられた。
分子レベルでは、CSCマウスモデルのB細胞リンパ腫も、ヒトB細胞リンパ腫と非常に類似していた。CD22+B220+細胞をフローサイトメトリーにより単離した。RNA抽出及び増幅、並びにハイブリダイゼーションを、材料及び方法で記載したように実施した。図19で示されているように、ヒトDLBCLを分類するのに一般的に使用される分子予後マーカー、例えば、Pde4b、Foxp1、Mdm2、c−Myc、Bcl2、p27−Ccnd3又はEzh2−Bmi1も、DLBCLのSCA1/BCL6 CSCマウスモデルに存在する。
しかし、特にSCA1/BCL6 CSCマウスモデルのDLBCL細胞(B220+CD22+)はBCL6を発現しないことが見出された。この観点から、前記CSCマウスモデルは、「胚中心B細胞様」(GCB)CD19+CD22+DLBCL細胞ではなく、ヒト「活性化B細胞様」(ABC)CD19+CD22+DLBCL細胞に似ている(図20)。
ヒトABC DLBCLの病理と同様に、SCA1/BCL6マウスは、形質細胞分化の阻止を示したことが更に見出された。SCA1/BCL6マウスからの胚中心B細胞及び形質細胞に対する、材料及び方法で記載したRNAハイブリダイゼーションアッセイは、Xbp1及びp27が上方制御され、Pax5及びBcl6が下方制御されることを明らかにした(図21)。
実施例9 固形組織Sca1+細胞の腫瘍遺伝子活性化がマウスに固形組織癌腫をもたらす
loxP−Stop−loxP−hK−Rasv12遺伝子構築物を、図22で示されているように、トランスジェニックマウスのSCA1遺伝子の5′−UTRに挿入した。したがって腫瘍遺伝子を、Adeno−Creによる感染で活性化することができた。このCSCマウスモデルは、非幹細胞肺癌(NSCLC)型の肺癌を発症し、それはAdeno−Cre感染の3〜5か月後に観察された。
実施例10 造血性CSCマウスモデルは、固形腫瘍も発症する
造血性癌の多様なCSCマウスモデルの評価は、これらのマウスが固形腫瘍も発症することを明らかにした。
CMLのCSCマウスモデルにおいて(実施例3及び実施例4を参照すること)、合計89匹のマウスのうち79%がDMLのみを発症した。しかし、これらのマウスの全試料において、肺腺癌(ADC)は12%、肝臓ADCは3%、線維性組織球腫は2%、骨肉腫は2%及びセルトリ細胞腫は2%で観察された(図23)。
T−ALLのSCA1/RHOM2 T CSCマウスモデルにおいて(実施例3及び実施例6を参照すること)、合計43匹のマウスのうち74%(32匹のマウス)がT−ALLのみを発症した。しかし、全SCA1/RHOM2試料において、肺ADCは16%(7匹のマウス)、肝癌は5%(2匹のマウス)で観察された。他の癌は、5%(2匹のマウス;図24を参照すること)で観察された。
B細胞リンパ腫モデルにおいて(実施例8を参照すること)、合計33匹のマウスの試料のうち88%(29匹のマウス)がB細胞リンパ腫のみを発症した。しかし、肺ADCは9%(3匹のマウス)で観察され、肝癌は3%(1匹のマウス;図25を参照すること)で観察された。
T−ALLのSCA1/Hox11 CSCマウスモデルにおいて(実施例3を参照すること)、合計37匹のマウスのうち75%がT−ALLのみを発症した。しかし、肺ADCはこれらの場合の16%で観察された。肝癌及びセルトリ細胞腫は、それぞれこれらのマウスの3%で観察された。他の癌は、これらのマウスの更に3%で観察された(図26を参照すること)。
実施例11 SCA1の再プログラムによる癌発症のモデル化
CreリコンビナーゼをSca1遺伝子の5′−UTRに挿入して、マウスを生成した。これらのマウスを、Bgal活性/発現がloxP部位で「loxPが導入された(floxed)」ストップカセットにより防止されているROSA26レポーター株と交配した。このように生成されたRosa26×Sca1−CREマウスの皮膚及び精巣の切片を、B−gal染色に付した。青色に染色された領域は、幹細胞が正常に位置している領域であった(図27及び図28)。
実施例12 CSC除去が癌の有効な治療戦略であるという証拠
CSCマウス癌モデル(Sca1−HVTK−IRES−BCR−ABLp210及びSca1−BCL6−IRES−HVTKマウス)を、Sca1陽性細胞の選択的除去が癌の治療に有効であるかという疑問に対処するために使用した。
HVTKを含むトランスジェニック構築物を伴うマウスモデルを、以下の論理的根拠:HVTKの発現が、ヌクレオシド類似体ガンシクロビルのプロドラッグ形態の、薬剤の活性なリン酸化形態への変換を誘導する、に基づいて生成した。Rubsam L.Z. et al., (1998) Cancer Res 58 3873-3882で記載されているように、リン酸化ガンシクロビルを複製細胞のDNAに組み込むと、G2/Mチェックポイントで前記細胞の非可逆的停止を引き起こし、続いてアポトーシスを引き起こす。
このCSCマウス癌モデルにおいてHVTKがCSCで特異的に発現するので、ガンシクロビル治療によりこれらのマウスで特異的にCSCを除去することが可能である。
これは、CSCが癌の発生及び再発の源であるという仮説を試すことを可能にし、それはこの仮説は、CSCを選択的に死滅させることにより、癌を有効的にかつ持続的な効果を持って治療することができると予測するからである。
マウスを、材料及び方法で記載したように、ガンシクロビル(GCV)又はプラセボのいずれかにより治療した。各マウスモデルにおいて、60匹のマウスにガンシクロビルを毎日注射し、30匹のマウスは、対照として使用し、食塩水(プラセボ)を毎日注射した。
Sca1−BCL6−IRES−HVTKマウスにおいて、ガンシクロビルによる治療は、10週間後に全ての腫瘍の排除をもたらし(図30)、一方、プラセボ治療では、腫瘍を有するマウスの数は変化しないままであった(100%)。腫瘍が消滅したマウスを更に11週間モニタリングし、その間、腫瘍の再発は観察されなかった。
Sca1−IRES−HVTK−BCR−ABLp210マウスにおいて、同等の結果が得られた(図31)。ガンシクロビルで治療された60匹のSca1−IRES−HVTK−BCR−ABLp210マウスにおいて、腫瘍は治療の8週間後に完全に消滅し、更にモニタリングした8週間の間に再発しなかった。対照として食塩水プラセボで治療した30匹のマウスでは、腫瘍の数の低減は観察されなかった。
この実験は、CSCの仮説を確認し、CSCの死滅が、癌治療の有効な治療戦略であり、広い潜在的な用途を持つことを初めて実証した。
実施例13 癌がCSCにより維持されている証拠
癌の維持に関与する細胞個体群を同定するために、Sca1+Lin−細胞を、骨髄から精製し(これらの細胞は、未分化細胞、CSCに相当する)、B220+CD22+細胞を、SCA1/BCL6マウスの脾臓から精製した(これらの細胞は、分化腫瘍細胞に対応する)。
これらの細胞を、尾静脈注射により同系の健康なマウスに移植した。SCA1/BCL6表現型及び対照のそれぞれにおいて、6匹の同系の健康な動物に、10,000個のSca1+Lin−細胞を移植し、6匹には1,000個のSca1+Lin−細胞を移植した。B220+CD22+細胞では、同じ数の試験動物を使用したが、105個及び106個の細胞を移植した。
B220+CD22+細胞により再構成されたマウスは、リンパ腫を発症しなかった。しかし、Sca1+Lin−細胞で再構成されたマウスは、B細胞リンパ腫を発症した。疾患は、10,000個の細胞を受けた6匹のマウスでは移植後平均して74(±11)日後に発症し、1,000個の細胞を受けた6匹のマウスでは移植後平均して81(±9)日後に発症した。対照マウスのいずれにおいてもリンパ腫は検出されなかった。
これらの結果は、疾患がSca1+Lin−細胞(CSC)により維持され、繁殖したことを示した。
実施例14 BCR−ABLを標的にしても癌幹細胞を死滅させない
発明者たちは、BCR−ABLp210が腫瘍悪性のために必要とされるかを調査した。
この目的を達成するために、SCA1遺伝子の5′−UTRにおいてBCR−ABLp210遺伝子がLoxP部位の間に配置され、その後にGFP(緑色蛍光タンパク質)の遺伝子が続くマウス株を構築した。したがってBCR−ABLp210遺伝子を、Cre仲介LoxP突然変異誘発により不活性化することができる。第2(下流)LoxP部位の下流のGFP遺伝子の位置は、GFPがLoxP座位でのCreリコンビナーゼの作用によるBCR−ABLp210遺伝子の除去によってのみ発現するような位置である(図32を参照すること)。
骨髄(BM)細胞を、上記で記載されたBCR−ABL構築物を担持する8〜10週齢の雄ドナーCSCマウスモデルから単離し、図32で概略的に表した。単離された骨髄細胞を細胞培養で繁殖させ、Creリコンビナーゼを発現するアデノウイルス(Adeno−Cre)で感染した。GFPもこれらの細胞から精製した。
緑色蛍光タンパク質を発現している培養し感染した骨髄細胞(GFP+)を、フローサイトメトリーにより単離し(材料及び方法を参照すること)、内在性脊髄細胞を死滅させるのに十分な線量(約960ラド)で予め照射されている同系の健康な雌野生型マウスに移植した。
遺伝子Adeno−Cre手法によりBRC−ABLp210遺伝子が排除されている、移植された骨髄細胞(GFP発現細胞)は、Gleevec(商標)が100%の効力で作用している細胞に相当する。それにもかかわらず、レシピエントマウスは白血病を発症し、フローサイトメトリー(FACS)により実証されている(図33のダイアグラム)。
BCR−ABLp210は癌治療にとって適切な標的ではないことが結論づけられた。これは、遺伝子の除去がCSCを排除しないという事実によって説明することができる。
実施例15 マウスモデル及び患者における幹細胞駆動癌は、Gleevec(商標)による治療と同様に反応する
BCR−ABLp210マウスからの骨髄細胞を、致死的に照射したマウスに移植した。全てのレシピエントマウスは、慢性骨髄性白血病(CML)を発症した。
第2の研究において、BCR−ABLp190マウスからの骨髄細胞を、致死的に照射したマウスに移植した。この場合、レシピエントマウスは、B細胞急性白血病(B−ALL)を発症した。
疾患は、骨髄とB細胞の両方のマーカーを共に発現する芽細胞の存在によりモニタリングした。BCR−ABLp210及びBCR−ABLp190発現を、材料及び方法で記載されたリアルタイムPCRによりモニタリングした。
Gleevec(商標)(イマチニブ、STI571とも呼ばれる)は、ABLチロシンキナーゼ阻害剤である。ヒトにおいて、Gleevec(商標)は分化癌細胞を枯渇させ、したがって最初は症状の緩和をもたらす場合もあるが、Gleevec(商標)は、白血病幹細胞を枯渇させないことが示唆されている(Michor F et al. Nature (2005) 435, 1267-70)。CSCの仮説と一致しており、したがってGleevec(商標)により治療されている患者は典型的には再発する。
CMLを有するBCR−ABLp210骨髄レシピエントマウスと、B−ALLを有するBCR−ABLp210骨髄レシピエントマウスの両方を、Gleevec(商標)で治療した。Gleevec(商標)の貯蔵溶液を、濾過した滅菌の水で新たに調製し、材料及び方法で記載したように、1日2回、胃管栄養法によりマウスに投与した。Gleevec(商標)又はプラセボによるマウスの治療を、白血病が確認された日(0日)の後に開始した。Gleevec(商標)を、直線又は曲線の動物摂取用針により投与した。マウスの治療耐性は良好であり、治療の中断は必要なかった。マウスを1週間に3回臨床的に調べ、周期的な末梢血のカウントを、示されているように、尾静脈の採血から得た。この研究の生存分析の部分では、死亡終点は、動物の自然死により、又は疼痛又は苦痛の徴候のため、確立された基準に従った選択的殺処理により決定した。
Gleevec(商標)による治療は、マウスにおいて白血病を治癒しなかった(BCR−ABLp210 CMLモデルは図35、BCR−ABLp190 B−ALLモデルは図36を参照すること)。CMLマウスでは、14週間後には、Gleevec(商標)により治療されたマウスで生存しているものはなかった。プラセボで治療されたマウスでは、20%が15週間生存した(図35)。B−ALLでは、プラセボにより治療されたマウスで15週目まで生存したものはなく、Gleevec(商標)により治療されたマウスで17週目まで生存したものはなかった。
いずれの研究においても、癌幹細胞がGleevec(商標)治療により影響を受けているとは認められなかった。したがって、Gleevec(商標)によるヒト治療の全体的な効力は、CSCマウスモデルに反映されている。このことは、また、Gleevec(商標)による治療後のヒト癌患者での再発は、Gleevec(商標)がマウスにおいて有効ではないという同じ理由に起因すること、すなわち、通常の癌性B細胞と異なり、CSCは、Gleevec(商標)治療よって影響を受けないことを発明者たちに示唆した。これはCSC理論と一致する。
したがって、発明者たちは、本発明のマウスモデルを使用して、Gleevec(商標)に相当するが、CSCを死滅させることに向けられている新世代の薬剤を開発できると結論づけた。
実施例16 マウスモデル及び患者における幹細胞駆動癌は、ドキソルビシンによる治療と同様に反応する
ドキソルビシンは、ヒトリンパ腫の治療における最も効果的な治療の一つである。しかし、特に広汎性大B細胞リンパ腫(DLBCL)において、ドキソルビシン治療は、実質的に全ての患者がドキソルビシン再発により治療されているので、多くの場合に全体として成功していないと考えられる。
図37は、ドキソルビシン治療の3〜5か月間にわたる癌幹細胞モデルマウス(Sca1/BCL6)におけるCSC又はB細胞の数を示す。B細胞の数は僅かに減少又は増加したが、CSCの数は、3か月の間に7〜8倍急激に増加した。
図38では、CSCモデル肺癌マウスの生存を、治療期間の20週間にわたってプロットした。プラセボで治療したマウスのうち、18週間後に生存したものはなく、ドキソルビシンで治療したマウスのうち、20週間を過ぎて生存したものはなかった。
したがってドキソルビシンによる治療は、CSCマウスで成功しなかった。CSC理論と一致するので、発明者たちは、最も可能性のある説明は、これらのマウスにおいてドキソルビシンがCSCを死滅させなかったことであると結論づけた。
したがって、Gleevec(商標)と同様に、ドキソルビシンについては、ヒトにおける治療の無効力がCSCマウスモデルにおいて反映されている。
実施例17 マウスモデル及び患者における幹細胞駆動癌は、メルファラン−プレドニゾンによる治療と同様に反応する
メルファラン−プレドニゾンレジメンは、ヒト多発性骨髄腫の治療に一般的に成功していない。
図39では、CSCモデル肺癌マウスの生存を、治療期間の20週間にわたってプロットした。プラセボで治療したマウスのうち、17週間後に生存したものはなく、メルファラン−プレドニゾンで治療したマウスのうち、22週間を過ぎて生存したものはなかった。
したがってメルファラン−プレドニゾンによる治療は、CSCマウスで成功しなかった。CSC理論と一致するので、発明者たちは、最も可能性のある説明は、これらのマウスにおいてメルファラン−プレドニゾンがCSCを死滅させなかったことであると結論づけた。
したがって、ドキソルビシン及びGleevec(商標)と同様に、メルファラン−プレドニゾンについては、ヒトでの治療効力がCSCマウスモデルにおいて反映されている。
実施例18 BEP治療は、CSCマウスモデルとヒトの両方において成功している
BEP(ブレオマイシン、エトポシド/VP16、シス−プラチン)はヒト精巣癌を治癒する。この治療は毒性が高いが、癌を完全に治癒できることが知られている唯一の癌治療である。
実施例3のマウスモデルと同様に、Sca1陽性細胞(幹細胞)をゲノム挿入及び腫瘍細胞Snailの発現により癌幹細胞に形質転換した、癌幹細胞マウスモデルを構築した。
これらのマウスが発生した腫瘍をBEPにより治療することは、大きな成功を収め、図40で示されているように、マウスの3つの異なる系列(1系列あたり10匹の動物)において、治療は7週間後に腫瘍量をゼロに低減した。未治療動物モデルにおいて、腫瘍量は変わらないままであった。
この実験は、CSCマウスモデルが、陰性(例えば、Gleevec(商標)及びドキソルビシンそれぞれによるCML及びDLBCLの治療について上記で報告されている)の場合だけでなく、陽性の場合でもヒトにおける癌治療の反応を反映することを確認した。
実施例19 正常な幹細胞に対する癌幹細胞の示差遺伝子発現分析
細胞発現ScaIを、材料及び方法で記載されたようにフローサイトメトリーにより分析及び単離した。そのように単離した幹細胞から、RNAを抽出した。増幅アンチセンスRNA(aRNA)を、例えば、Van Gelder et al. (1990) Proc Natl Acad Sci USA 87: 1663-1667の方法に基づいて、材料及び方法で示されたように、抽出RNAから調製した。
RNAによるハイブリダイゼーション実験によって、以下の観察及び結果がもたらされた。
CSCは、Bmi1、Tel/Etv6、Tert、Gfi1、Notch1、β−カテニン及びMeis1のような遺伝子の相対的な発現レベルに関して、正常な幹細胞と著しく異なる。これらの遺伝子、並びにBcl6、p300、Stat5、Stat3及びGata2は、一般にCSCにおいて上方制御された。
CSCを、許容されない副作用を引き起こす除去を行うことなく、標的にし、除去することができる。
異なる腫瘍からのCSCにおいて、同じ遺伝子及び/又は遺伝子群が正常な幹細胞に対し上方又は下方制御される傾向があるほど、CSCは、同種細胞個体群を形成する。異なる腫瘍間の遺伝子発現の類似性によって、発明者たちは、CSCを標的にし除去する治療手法を広い範囲、すなわち異なる癌の範囲で使用できると結論づけた。
例えば、一つのマウスモデルのCSCにおけるBcl6の発現は、広汎性大B細胞リンパ腫(DLBCL)をもたらす。別のマウスモデルにおいて、BCR−ABLp210 CSCの発現は、慢性骨髄性白血病をもたらす。しかし、これらの2つのマウスモデルは、類似している遺伝子がそのCSCにおいて上方制御及び下方制御されるので、ある程度類似した遺伝子発現プロフィールを示す。
以下の記述は、本発明の追加的な態様に関連する。
1.ヒト病理に関連する遺伝子異常により作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含む齧歯類幹細胞。
2.前記幹細胞が癌幹細胞である、態様1に記載の幹細胞。
3.前記ヒト病理が幹細胞由来のヒト病理である、態様1に記載の幹細胞。
4.前記ヒト病理が、ヒト上皮又は間葉癌である、態様1に記載の幹細胞。
5.前記ヒト病理が、リンパ腫、白血病、肉腫及び癌腫から選択される、態様4に記載の幹細胞。
6.前記ヒト病理が、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球増殖性症候群、多発性骨髄腫、脂肪肉腫、ユーイング肉腫、肺癌、乳癌、皮膚癌、脳癌、直腸癌、膵癌、前立腺癌、腎癌などから選択される、態様5に記載の幹細胞。
7.マーカーを更に含む、態様1に記載の幹細胞。
8.前記マーカーが、癌幹細胞の特定の単離及び/若しくは同定のために、又は癌幹細胞の獲得のために、又は健康な幹細胞から癌幹細胞を分化させるために有用なマーカーである、態様7に記載の幹細胞。
9.レポーターを更に含む、態様1に記載の幹細胞。
10.前記レポーターが、発症、進行、播種、及び更なる生理病理学的過程の空間時間的同定のために、分子画像技術により治療の効果を評価するために、診断アッセイ、薬剤発見及び開発過程のために、標的同定のために、臨床開発の全段階での効力及び信頼性の改善のために有用であるレポーターである、態様9に記載の幹細胞。
11.以下:
−被験者におけるヒト病理に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/若しくは活性化される遺伝子の存在を検出するため;又は
−被験者においてヒト病理を発症する被験者の危険性若しくは素因を評価するため;又は
−被験者においてヒト病理のステージ若しくは重篤度を決定するため;又は
−ヒト病理を有する被験者に与えられる治療の効果をモニタリングするため;又は
−ヒト病理に罹患している被験者のために個別的な治療を設計するため;又は
−ヒト臨床試験を設計するため;又は
−癌の診断、及び/若しくは癌播種のような癌進展の特別な過程及び影響の診断のため;又は
−個別化治療のための患者の選択のため;又は
−治療効果の治療的なモニタリング及び評価のため;又は
−薬剤発見及び薬物動態指針のため
のバイオマーカーとしての態様1〜10のいずれか1つに記載の齧歯類幹細胞の使用。
12.ヒト病理の標的を発見する、スクリーニングする、探索する、同定する、評価する及び検証するため、又は癌幹細胞の自己複製能力に関連する特定の遺伝子を同定するための、態様1〜10のいずれか1つに記載の齧歯類幹細胞の使用。
13.被験者におけるヒト病理に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/若しくは活性化される遺伝子の存在を検出する方法、又は前記ヒト病理を発症する被験者の危険性若しくは素因を評価する方法であって、前記被験者からの試料中で幹細胞を同定することを含み、前記幹細胞が、幹細胞由来の前記ヒト病理に関連する遺伝子異常を含む方法。
14.被験者においてヒト病理のステージ又は重篤度を決定する方法、又は前記病理を有する被験者に投与された治療の効果をモニタリングする方法であって、前記被験者からの試料中の幹細胞の濃縮物を同定及び定量化し(前記幹細胞は、ヒト病理と関連する遺伝子異常により作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含む)、前記濃縮物を、対照試料と、又は前記被験者からの以前の試料と、又は治療が与えられる前に前記被験者から取られた以前の試料と比較することを含む方法。
15.前記幹細胞が癌幹細胞である、態様13又は14に記載の方法。
16.前記ヒト病理が幹細胞由来のヒト病理である、態様13〜15のいずれか1つに記載の方法。
17.ヒト病理を治療する薬剤をスクリーニング、探索、同定、開発及び/若しくは評価する、又は既知の薬剤若しくは化合物の組み合わせを再配置する方法であって、候補化合物を態様13〜10のいずれか1つに記載の齧歯類幹細胞と接触させ、反応をモニタリングすることを含む方法。
18.ヒト病理に罹患しているヒトのために個別的な治療を設計する方法であって、態様17で同定された化合物を選択することを含み、前記化合物が、前記癌幹細胞の繁殖若しくは分化をなくする若しくは遅くするか又は前記細胞を死滅させ、前記化合物が、前記被験者に投与される医薬組成物に活性成分として使用される方法。
19.以下:
(i)態様1〜10のいずれか1つに記載の齧歯類幹細胞の標的を選択すること、又は前記齧歯類幹細胞の分子プロファイリングをすること;
(ii)疾患状態における前記標的又は前記分子プロフィールを検証すること、場合により最適化すること;及び
(iii)非反応者に対して反応者を選択すること
を含む、ヒト臨床試験を設計する方法。
20.Sca−1+細胞において遺伝子異常の発現を指示するプロモーターに機能的に結合されるヒト病理に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含み、前記遺伝子異常が、(i)BCL6遺伝子を含む核酸、及び(ii)キナーゼでコードされる1番目のヌクレオチド配列と、BCR−ABLp210を含む2番目のヌクレオチド配列とを含む核酸から選択されるDNA構築物。
21.遺伝子異常により作り出される及び/又は活性化される前記遺伝子が、単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSV−tk)をコードする1番目のヌクレオチド配列、BCR−ABLp210を含む2番目のヌクレオチド配列及び配列内リボソーム進入部位(IRES)配列を含む3番目のヌクレオチド配列を含む核酸を含み、前記1番目のヌクレオチド配列の3′末端が前記3番目のヌクレオチド配列の5′末端と結合しており、前記3番目のヌクレオチド配列の3′末端が前記2番目のヌクレオチド配列の5′末端と結合される、態様20に記載のDNA構築物。
22.Sca−1+細胞における遺伝子異常により作り出される及び/又は活性化される前記遺伝子の発現を指示する前記プロモーターが、齧歯類プロモーターpLy−6E.1又はその機能的フラグメントである、態様20又は21のいずれか1つに記載のDNA構築物。
23.態様20〜22のいずれか1つに記載のDNA構築物をそのゲノムに含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
24.前記哺乳動物が齧歯類、好ましくはマウス又はラットである、態様23記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
25.態様23又は24のいずれか1つに記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の後代。
26.細胞株が態様20〜22のいずれか1つに記載のDNA構築物をそのゲノムに含む、態様23又は24のいずれか1つに記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の細胞株。
27.細胞株が齧歯類細胞株である、態様26記載の細胞株。
28.幹細胞由来のヒト病理に関連する遺伝子異常を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の調製方法であって、
a.態様20〜23のいずれか1つに記載のDNA構築物を非ヒトトランスジェニック哺乳動物の受精卵母細胞に導入すること;
b.前記受精卵母細胞を、偽妊娠性の乳母に移植し、子孫を産生すること;及び
c.前記子孫を評価して、幹細胞由来のヒト病理に関連する遺伝子異常の存在を評価すること
を含む方法。
29.前記非ヒト哺乳動物が齧歯類、好ましくはマウス又はラットである、態様28記載の方法。
図1は、Sca1+Lin-及びSca1-Lin+株に発現する導入遺伝子、チミジンキナーゼ及びBCR−ABLp210を示す。 図2は、 ガンシクロビル治療及び食塩水治療(対照)後に腫瘍を発症したマウスの割合を示す。 図3は、(a)正常な脾臓、(b)DLBCLを発症した脾臓、(c)攻撃性の小さいバーキットリンパ腫を発症した脾臓、及び(d)攻撃性の大きいバーキットリンパ腫を発症した脾臓の3つ代表的な画像を示す。 図4は、Sca1+Bcl6マウスの骨髄癌幹細胞における既知の標的遺伝子の発現データの図示である。遺伝子(右側で確認)は、それぞれ着色ボックスの単一横列で表され、マウスは、それぞれ単一縦列で表される。 図5は、Bcl6マウスモデルにおける、ヒト広汎性大b細胞リンパ腫(DLBCL)で上方/下方制御されている記載された幾つかの遺伝子の発現パターンの図示である。 図6は、CMLマウスモデルの構築に使用される、SCA1へのSCA1/BCR−ABLp210遺伝子挿入の概略図、並びにCML前後のSca+Lin−及びSca−Lin+細胞におけるBCR−ABLp210転写物レベルの測定をまとめたグラフである。 図7は、SCA1/BCR−ABLp210 CSCマウスがヒトCMLの病理を再現したことを示す。巨核球が脾臓及び肝臓における骨髄化生を定義し、成熟骨髄細胞が末梢血に蓄積する。 図8は、SCA1/BCR−ABLp210 CSCマウスが、悪性形質転換に関連しヒトCMLにも見出されるDNAメチル化を示すことを示す、染色体を染色した光学顕微鏡画像を表す。 図9は、SCA1/BCR−ABLp210 CSCマウスが、CMLから急性転化へ自発的に進行し、ヒトCMLの病理を再現することを示す。フローサイトメトリーによる分析は、末梢血に芽細胞は存在するが、成熟顆粒球は存在しないことを示す。組織化学的分析は、芽細胞が肝臓と末梢血の両方に浸潤することを示す。 図10は、SCA1/BCR−ABLp210 CSCマウスが、ヒトCMLで見られる脾臓及び肝臓の線維症を再現することを示す(マッソン三色染色プロトコールによる肝臓及び脾臓切片の緑色染色)。 図11は、SCA1/BCR−ABLp190 CSCマウスが、ヒトB−ALLの病理を再現することを示す。血液塗抹標本、脾臓、肝臓及び肺の試料のフローサイトメトリーの結果及び/又は組織化学的分析は、末梢血、脾臓、肝臓及び肺への広範囲なB細胞芽細胞の浸潤を示す。 図12は、SCA1/LMO2−RHOM2 CSCマウスが、ヒトT−ALLの病理を再現することを示す(脾臓、胸腺腫、肝臓、腎臓及び精巣のフローサイトメトリーデータ及び組織化学データ)。組織及び末梢血でのT細胞白血病の発症及びそれらへの芽球播種は、ヒト病理と同一である。 図13は、SCA1/Maf−B CSCマウスが、ヒト多発性骨髄腫の病理を再現することを示す(組織化学データ)。形質細胞が脾臓及び肝臓に浸潤し、腎不全の病理的徴候を有する。 図14は、SCA1/Maf−B CSCマウスが、ヒト多発性骨髄腫の病理を再現することを示す。フローサイトメトリー及び組織化学的分析は、ヒト多発性骨髄腫と同様に、骨髄及び末梢血における形質細胞を明らかにする。 図15は、SCA1/BCL6 CSCマウスがヒトリンパ腫の病理を再現することを示す実験を要約する。SCA1遺伝子の5′−UTRへのBCL6挿入の概略図が提供される。リンパ腫のSCA1/BCL6マウスモデルを構築するのに使用されるC57BL/6×CBAマウスが、5〜7か月後にリンパ腫を発症した。BCL6転写物レベルの測定は、BCL6がSca1+Lin−細胞で転写されるが、Sca1−Lin+細胞では転写されないことを示す。 図16は、SCA1/BCL6 CSCマウスがヒトリンパ腫の病理を再現することを示す(脾臓組織の組織化学的分析)。このCSCマウスモデルの脾臓で見出される広汎性大B細胞リンパ腫(BLBCL)は、ヒトで見られるDLBCLを模倣する。 図17は、SCA1/BCL6 CSCマウスがヒトリンパ腫の病理を再現することを示す。脾臓、肺及び肝臓組織の組織化学的分析は、(1)Pax5+及びCD21+B細胞が肺及び肝臓組織に浸潤すること、及び(2)B細胞はBCL6で発現しないことを明らかにする。 図18は、ヒトB細胞リンパ腫と同様に、SCA1/BCL6 CSCマウスはB細胞においてBCL&を発現しないという観察を要約する。BCL6−/−表現型は、SCA1/BCL6×BCL6−/−マウスにおいて救出されない。 図19は、SCA1/BCL6 CSCマウスが分子レベルでもヒトリンパ腫と同様の病理を示すことを示す、FACS及びハイブリダイゼーション分析の結果を要約する。単離したCD22+B220+細胞によるハイブリダイゼーション実験は、ヒトDBCLを分類するのに使用される、図で提示されているような分子予後マーカーが、CSC癌マウスモデルに存在することを示す。 図20は、SCA1/BCL6 CSCマウスが、「胚中心B細胞様」(GCB)DLBCLではなく、ヒト「活性化B細胞様」(ABC)DLBCLに類似しているという観察を要約する。ヒトABC DLBCLにおけるCD19+CD22+細胞の場合にように、SCA1/BCL6 CSC DLBCLマウスモデルにおけるB220+CD22+細胞は、BCL6を発現しない。 図21は、制御、遺伝子発現のレベル及び関連する細胞分化の観点から、SCA1/BCL6 CSCマウスとヒト「活性化B細胞様」(ABC)DLBCLとの類似性を更に要約する。Sca1−Bcl6マウスは、ヒトABC DLBCLで観察されるものと同様な形質細胞分化阻止を示す。 図22は、肺癌モデルで使用されるloxP−Stop−loxP−hK−Rasv12構築物の概略図、並びに、このモデルにおいて、固形組織Sca1+細胞での腫瘍遺伝子活性化が、マウスに固形組織癌をもたらすことを示す組織化学的分析を提供する。非小型細胞肺癌(NSCLC)の肺癌が、Adeno−Cre感染の3〜5か月後に観察された。 図23は、CMLのCSCマウスモデルにおける固形腫瘍の発症を要約する。 図24は、T−ALLのSCA1/RHOMB2 CSCマウスモデルにおける固形腫瘍の発症を要約する。 図25は、B細胞リンパ腫のCSCマウスモデルにおける固形腫瘍の発症を要約する。 図26は、T−ALLのSCA1/HOX11 CSCマウスモデルにおける固形腫瘍の発症を要約する。 図27は、Sca1遺伝子の5′−UTRにCreリコンビナーゼを担持するマウスと、Bgal活性/発現がloxP部位で「loxPが導入された(floxed)」ストップカセットにより防止されているROSA26レポーター株との交配の結果を示す。このように生成されたRosa26×Sca1−CREマウスの皮膚及び精巣の切片を、B−gal染色に付した。青色に染色された領域は、幹細胞が正常に配置されている領域であった。ROSA26×SCA1/CRE後代の皮膚試料が示されている。 図28は、ROSA26×SCA1/CRE後代の精巣試料が示されている以外は、図27と同じ実験の結果を示す。 図29は、CMLマウスモデルの構築に使用される、SCA1へのHVTK−IRES−BCR−ABLp210遺伝子挿入の概略図、並びにSca+Lin−及びSca−Lin+細胞におけるBCR−ABLp210転写物レベルの測定をまとめたグラフを提供する。これは、CSC除去が癌の有効な治療戦略であることを証明するために使用されたCSCマウスモデルの一つであった。 図30は、SCA1/BCL6 CSCマウス癌モデルにおける癌を、再プログラム幹細胞(CSC)を死滅させることによって有効に治療できることを示す。治療開始の10週間後に検出可能な腫瘍はなく、更なる11週間の観察の間、検出可能な腫瘍はなかった。 図31は、SCA1/BCR−ABLp210 CSCマウス癌モデルにおける癌を、再プログラム幹細胞(CSC)を死滅させることにより有効に治療できることを示す。治療開始の8週間後に検出可能な腫瘍はなく、更なる8週間の観察の間、検出可能な腫瘍はなかった。 図32は、「loxPが導入された(floxed)」BCR−ABLp210/GFP構築物の概要を提供する。loxPが導入されたとは、BCR−ABLp210が、loxP座位でフランクされていることを意味する。したがって、この構築物におけるBCR−ABLp210−又は同じ方法でloxPが導入された他の遺伝子−を、Cre仲介LoxP突然変異誘発により不活性化することができる。GFPは、loxPが導入されたBCR−ABLp210の下流及び/又はそれに隣接して配置されている。このことは、loxPが導入された遺伝子−この図ではBCR−ABLp210−がCre仲介LoxP突然変異誘発により不活性化される場合、GFPの発現を可能にする。この構築物を使用して、BCR−ABLp210が腫瘍悪性のために必要とされるかを試験した。BCR−ABLp210の代わりに他の腫瘍遺伝子を含む同等の構築物は、前記の他の腫瘍遺伝子が腫瘍悪性のために必要とされるかを試験することを可能にする。 図33は、実施例14に記載されている、BCR−ABLp210と腫瘍悪性との関係を試験する実験を要約する。 図34は、SCA1/BCR−ABLp210 CSCモデルとヒトCMLにおけるCSC駆動癌が、Gleevec(商標)による治療に同じように臨床反応するという観察を要約する。ABLチロシンキナーゼ阻害剤のイマチニブ/Gleevec(商標)は、マウスにおいてCSCを死滅させない。 図35は、Gleevec(商標)によるBCR−ABLp210骨髄レシピエントマウスの治療の結果を表すグラフである。治療は、実施例15で記載されているように効果がなかった。 図36は、癌幹細胞マウスモデルにおけるGleevec(商標)によるBCR−ABLp190白血病の治療が、成功しなかったことを示すグラフである。治療は、実施例15で記載されているように効果がなかった。 図37は、ヒトと同様に、ドキソルビシンによる広汎性大B細胞リンパ腫の治療が、CSCマウスモデルにおいて効果がないことを示す(細胞カウントデータ、実施例16を参照すること)。 図38は、ヒトと同様に、ドキソルビシンによる広汎性大B細胞リンパ腫の治療が、Sca1/hKRAS CSCマウスモデルにおいて効果がないことを示す(生存研究、実施例16を参照すること)。 図39は、ヒトと同様に、メルファラン−プレドニゾンによる多発性骨髄腫の治療が、Sca1/MAF−B CSCマウスモデルにおいて効果がないことを示す(生存研究、実施例17を参照すること)。 図40は、ヒト精巣癌の成功したBEP治療レジメンが、対応するSCA1/SNAIL CSCマウスモデルにおいても成功することを示す。BEP(ブレオマイシン、エトポシド/VP16、シス−プラチン)により治療されたマウスは、7週間以内に腫瘍がなくなった(実施例18を参照すること)。

Claims (35)

  1. Sca1+細胞において遺伝子の発現を指示するプロモーターに機能的に結合されるヒト癌に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含むDNA構築物をそのゲノムに含有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を含む、動物固形腫瘍モデル。
  2. 前記固形腫瘍が間葉癌又は上皮癌である、請求項1記載の動物モデル。
  3. 前記固形腫瘍が肉腫、癌腫、多発性骨髄腫又はリンパ腫である、請求項2記載の動物モデル。
  4. 遺伝子異常により作り出される及び/又は活性化される前記遺伝子がBCR−ABLp210、BCR−ABLp190、Slug(SNAI2)、Snail、HOX11、RHOM2/LMO−2、TAL1、Maf−B、FGFR、c−maf、MMSET、BCL6、BCL10、MALT1、cyclin D1、cyclin D3、SCL、LMO1、LMO2、TEL−AML1、E2A−HLF、E2A−Pbx1、TEL−ABL、AML1−ETO、FUS−DDIT3、EWS−WT1、EWS FLI1、EWSR1−DDIT3、FUS−ATF1、FUS−BBF2H7、K−RASv12及びNotch1からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の動物モデル。
  5. Sca1+細胞において遺伝子の発現を指示するプロモーターが、幹細胞区画でのみ活性であり、細胞が幹細胞の状態を越えて分化すると不活性である、請求項1〜4のいずれか1項記載の動物モデル。
  6. プロモーターがpLy−6E.1プロモーター、Sca1プロモーター、musashi−1プロモーター、musashi−2プロモーター、pLy6A遺伝子プロモーター、Tmtsp遺伝子プロモーター、c−kit遺伝子プロモーター、CD34遺伝子プロモーター又はThy1遺伝子プロモーターである、請求項5記載の動物モデル。
  7. 遺伝子を活性化するためにリコンビナーゼが条件的に使用される条件系を使用する、請求項1〜6のいずれか1項記載の動物モデル。
  8. リコンビナーゼがCreリコンビナーゼである、請求項7記載の動物モデル。
  9. 前記活性化されうる遺伝子がKRASv12である、請求項1〜8のいずれか1項記載の動物モデル。
  10. 動物モデルが動物が肺腺癌又は肝癌を発症するT−ALLモデルである、請求項1〜9のいずれか1項記載の動物モデル。
  11. 活性化されうる遺伝子が、Rhom2又はHox11である、請求項10記載の動物モデル。
  12. 動物モデルが、動物が肺腺癌又は肝癌を発症するB細胞リンパ腫モデルである、請求項1〜11のいずれか1項記載の動物モデル。
  13. 活性化されうる遺伝子がBCL6である、請求項12記載の動物モデル。
  14. 動物モデルが、動物が肺腺癌(ADC)、肝腺癌(ADC)、線維性組織球腫、骨肉腫又はセルトリ細胞腫を発症するCMLモデルである、請求項1〜13のいずれか1項記載の動物モデル。
  15. 活性化されうる遺伝子がBCR−ABLp210である、請求項14記載の動物モデル。
  16. 動物モデルが多発性骨髄腫モデルである、請求項1〜15のいずれか1項記載の動物モデル。
  17. 活性化されうる遺伝子がMaf−B、FGF−R、c−maf及びMMSETからなる群より選択される、請求項16記載の動物モデル。
  18. 活性化されうる遺伝子がMaf−Bである、請求項16記載の動物モデル。
  19. 癌幹細胞(CSC)の実質的に純粋な培養物。
  20. 前記CSCがSca1+Lin−である、請求項19記載の培養物。
  21. 前記CSCが癌、特に固形腫瘍を繁殖及び維持する潜在能力を有する、請求項20記載の培養物。
  22. 請求項1〜18のいずれか1項記載の動物モデルから単離される、請求項19〜21のいずれか1項記載の培養物。
  23. 選択的濃縮により請求項1〜18のいずれか1項記載のトランスジェニックモデルからSca1+細胞を単離することを含む、請求項19〜22のいずれか1項記載の幹細胞の培養物を単離する方法。
  24. 培養中の癌幹細胞を少なくとも1つの選択される分化細胞型の細胞から産生される可溶化液の濃縮物に暴露し、濃縮物が、各々の分裂癌幹細胞が2つの同一の娘癌幹細胞を産生する対称有糸分裂か、又は非対称有糸分裂のいずれかを優先的に起こすことによって癌幹細胞を繁殖させることができることを含む、請求項19〜22のいずれか1項記載の幹細胞の培養物を繁殖させる方法。
  25. 以下:
    ・癌の過程を調査及び研究するため;
    ・CSC個体群を同定、分類、単離、精製又は記述するため;
    ・被験者におけるヒト病理に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/又は活性化される遺伝子の存在を検出するため;
    ・被験者においてヒト病理を発症する被験者の危険性又は素因を評価するため;
    ・被験者においてヒト病理のステージ又は重篤度を決定するため;
    ・被験者においてヒト病理を有する被験者に与えられる治療の効果をモニタリングするため;
    ・被験者においてヒト病理に罹患している被験者のために個別的な治療を設計するため;
    ・治療効果の治療的なモニタリング及び評価のため;
    ・ヒト臨床試験を設計するため及び臨床予後を予測するため;
    ・癌の診断、及び/又は癌播種のような癌進展の特別な過程及び影響の診断のため;
    ・個別化治療のための患者の選択のため;
    ・新たな将来の薬剤による薬剤再配置の確認のため;
    ・薬剤発見及び薬物動態指針のため;又は
    ・先行/早期癌検出のため及び臨床的再発の可能性を予測するため
    のいずれか1つのための、請求項1〜18のいずれか1項記載の動物モデルの使用及び/又は請求項19〜22のいずれか1項記載のCSCの培養物の使用。
  26. 被験者からの試料を請求項19〜22のいずれか1項記載のCSCの存在のために試験することを含む、癌のために又は癌の素因に関して被験者をスクリーニングする方法。
  27. ヒト固形腫瘍を治療する化合物を発見、スクリーニング、探索、同定、開発及び/若しくは評価する方法、又は薬剤を再配置する方法であって、候補化合物を、請求項1〜18のいずれか1項記載の動物モデルと、又は請求項1〜22のいずれか1項記載のCSCの培養物と接触させ、反応をモニタリングすることを含む方法。
  28. a)候補作用物質の存在下でCSCで発現される遺伝子の発現産物の発現レベルを検出すること;及び
    b)その発現レベルを候補作用物質の不在下での発現レベルと比較することを含み、発現の低減が、CSCで発現される遺伝子の発現産物の発現レベルを候補作用物質が調節したことを示す、請求項27記載の方法。
  29. 患者において癌を治療する方法であって、請求項19〜22のいずれか1項記載のCSCを除去することを含む方法。
  30. 固形腫瘍の発症に関連する遺伝子異常を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の調製方法であって、
    a)非ヒトトランスジェニック哺乳動物の受精卵母細胞に、Sca1+細胞において遺伝子の発現を指示するプロモーターに機能的に結合される固形腫瘍の発症に関連する遺伝子異常によって作り出される及び/又は活性化される遺伝子を含むDNA構築物を導入すること;
    b)前記受精卵母細胞を、偽妊娠性の乳母に移植し、子孫を産生すること;及び
    c)前記子孫を分析すること、
    を含む方法。
  31. 上記の請求項1記載のDNA構築物をマウスゲノムの確定した不活性座位内に導入することを含む、動物モデルを生成する方法。
  32. 前記DNA構築物がES細胞を介して相同組み換えにより導入される、請求項31記載の方法。
  33. 前記DNA構築物が、請求項5若しくは6記載のプロモーターを含む、及び/又は請求項7若しくは8記載のリコンビナーゼの使用を可能にする、請求項31又は32記載の方法。
  34. 請求項19〜21記載のCSCに対して免疫反応を刺激する方法であって、
    a)CSCの濃縮物個体群を得ること;
    b)個体群を処理して、細胞の分裂又は複製を防止すること;
    c)処置済み細胞を、癌及び/又はCSCに対する免疫反応を誘発するのに有効な量でヒト又は動物被験者に与えること、
    を含む方法。
  35. 請求項19〜22記載のCSCの個体群を、CSC標的及びバイオマーカーの供給源として遺伝子及びタンパク質発現パターンについて分析する方法。
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