発明の詳細な説明
エピトープ
本発明は、ペプチドエピトープに関する。
用語「ペプチド」は通常の意味で用いられ、典型的には、隣接するアミノ酸のαアミノおよびカルボキシル基同士のペプチド結合により互いに結合された、一連の残基、一般的にはL-アミノ酸を意味する。この用語は、改変されたペプチドおよび合成ペプチド類似体を含む。
T細胞エピトープは、タンパク質抗原から誘導可能な短いペプチドである。抗原提示細胞は、抗原をインターナライズして、短いフラグメントにプロセシングすることができ、該フラグメントはMHC分子に結合することができる。MHCに対するペプチドの結合の特異性は、ペプチドと、特定のMHC分子のペプチド結合溝との特異的な相互作用に左右される。
ペプチドMHCクラスI分子に結合する(と共に、CD8+T細胞により認識される)ペプチドの長さは、一般的に6〜12、さらに一般的には8〜12または8〜10アミノ酸である。典型的には、ペプチドの長さは9アミノ酸である。ペプチドのアミノ末端アミノ基は、ペプチド溝の一端の不変部位と接触し、カルボキシ末端のカルボキシレート基は、上記溝の他端の不変部位に結合する。従って、典型的には、このようなペプチドは、疎水性または塩基性カルボキシ末端と、最終アミノ末端におけるプロリンの欠失を有する。ペプチドは、前記溝に沿って延長コンホメーション(extended confirmation)で存在し、さらに主鎖原子と、溝を埋める保存アミノ酸側鎖とに挟まれて接触している。ペプチド長さの変動は、往々にしてプロリンまたはグリシン残基でのペプチドバックボーンにおける屈曲(kinking)により調整される。
MHCクラスII分子に結合するペプチドは通常、長さが少なくとも10アミノ酸、例えば、約13〜18アミノ酸であり、これよりはるかに長いこともある。これらのペプチドは、両端が開いたMHCクラスIIペプチド結合溝に沿って延長コンホメーション(extended confirmation)で存在する。ペプチドは、主に、ペプチド結合溝を埋める保存残基との主鎖原子接触によってその場所に保持されている。ペプチドとMHCクラスIIの結合は、例えば、Rammensee, H.-G. 1995 Curr. Opin. Immunol. 7:85により記載されている。
本発明のペプチドは、化学的方法を用いて作製することができる(Peptide Chemistry, A practical Textbook. Mikos Bodansky, Springer-Verlag、ベルリン)。例えば、ペプチドは、固相法(Roberge JYら(1995)Science 269: 202-204)により合成し、樹脂から切断して、分取用高性能液体クロマトグラフィー(例えば、Creighton (1983) Proteins Structures And Molecular Principles, WH Freeman and Co、ニューヨーク州ニューヨーク)により精製することができる。例えば、ABI 43 1 Aペプチド合成装置(Perkin Elmer)を用いて、製造者により提供された指示に従い、自動合成を達成することもできる。
あるいは、組換え体手段、または比較的長いポリペプチドからの切断によりペプチドを作製してもよい。例えば、全長5T4からの切断によりペプチドを取得することができる。ペプチドの組成は、アミノ酸分析または配列決定(例えば、エドマン分解法)により確認することができる。
用語「ペプチドエピトープ」は、改変ペプチドも包含する。例えば、5T4ペプチドは、野生型5T4ペプチドのMHC結合特異性が保持される限り、アミノ酸挿入、欠失または置換により突然変異させることができる。好ましい実施形態では、改変されたエピトープは、ペプチド結合溝に対し増大したアフィニティーを有する。好ましくは、ペプチドは、野生型配列由来の5以下の突然変異、さらに好ましくは3以下、最も好ましくは1または0の突然変異を含む。
これに代わり(または加えて)、ペプチドのアミノ酸配列を変えずに、改変を実施してもよい。例えば、D-アミノ酸またはその他の非天然アミノ酸を含有させたり、正常のアミド結合をエステルまたはアルキルバックボーン結合により置換したりすることができ、さらに、N-またはC-アルキル置換基、側鎖改変、ならびにジスルフィド架橋および側鎖アミドまたはエステル結合のような束縛を含有させてもよい。このような改変によって、ペプチドのin vivo安定性を高め、生物学的寿命を長くすることができる。
エピトープの改変は、K. Parkerにより考案されたプログラム「ペプチド結合予測」(NIH)を用いて得られる、さらに効率的なT細胞誘導のための推定に基づいて実施してもよく、このプログラムは、http://www-bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken_parker_comboform(また、K. Parkerら、1994. J. Immunol. 152:163も参照されたい)にみいだすことができる。
「改変された」5T4ペプチドエピトープには、免疫応答を誘発する能力を高めるために、輸送ペプチドまたはアジュバントに結合、あるいは会合させたペプチドが含まれる。例えば、HLAへの効率的輸送と、CTLエピトープを増強するようなHLAとの相互作用のために、ペプチドをTAP非依存性輸送ペプチドと融合させることができる(詳しくは、Yewdellら、1998 J Immunother 21:127-31;Fuら、(1998) J Virol 72:1469-81)。
別の実施形態では、5T4または5T4ペプチドをB型肝炎コア抗原と融合させることにより、Tヘルパーおよび抗体応答を増強する(Schodelら、1996 Intervirology 39:104-10)。
エピトープであるために、ペプチドは、MHCクラスIまたはII分子のペプチド結合溝に結合することができ、T細胞により認識される必要がある。
所与の抗原から誘導したペプチドの細胞表面提示は、ランダムではなく、少数の頻繁に発生するエピトープが大部分を占める傾向がある。特定のペプチドの優性は、多くの要因、例えば、MHC分子に結合するための相対アフィニティー、APC内での発生の時空点、および分解耐性に左右される。抗原に対するエピトープ階層は、免疫応答の進行に応じて変化すると考えられる。免疫優性ペプチドに対する一次免疫応答の後、エピトープの「拡散」がサブドミネント決定基に起こりうる(Lehmannら(1992)Nature358:155-157)。
あらゆる所与の抗原について、潜在性エピトープが存在する可能性もある。潜在性エピトープとは、ペプチドとして投与したとき、T細胞応答を刺激することができるが、全抗原として投与されたとき、このような応答を生み出すことができないものを指す。APCにおいて抗原をペプチドにプロセシング中に、潜在性エピトープが破壊されることもある。
本発明のペプチドは、5T4の免疫優性エピトープ、サブドミネントエピトープまたは潜在性エピトープのいずれでもよい。
一抗原のエピトープは、APCにより提示されたとき、該抗原の一部にまたがる重複ペプチド(以下を参照)に対するT細胞応答を測定することにより同定することができる。このような試験の結果、通常、ペプチドの「入れ子型セット(nested sets)」が得られ、特定のT細胞系/クローンに対する最小エピトープは、末端切断型ペプチドに対する応答を測定することにより評価することができる。
抗原の最小エピトープは、実用目的には最良のエピトープではない場合もある。往々にして、最小エピトープに隣接するアミノ酸がMHCとの最適な結合に必要とされることがある。
抗原提示細胞とT細胞を含む抗原提示系においてペプチドを試験する。例えば、抗原提示系は、マウス脾細胞調製物、扁桃またはPBMCからのヒト細胞の調製物でよい。あるいは、抗原提示系は、特定のT細胞系/クローンおよび/または特定の抗原提示細胞型を含むものでもよい。
T細胞活性化は、T細胞増殖(例えば、3H-チミジン取込みを用いて)またはサイトカイン産生により測定することができる。TH1-型CD4+T細胞の活性化は、例えば、IFNγ産生により検出することができ、IFNγ産生は、ELISPOTアッセイのような標準的技術により検出することができる。
ポリエピトープストリング
抗原に対する免疫応答を誘発する上で特に有効な方法は、互いに結合した、1以上の抗原に由来する複数の抗原エピトープを含むポリエピトープストリングを用いるものであることがわかっている。例えば、マラリアの場合、主にマラリア(熱帯熱マラリア原虫)CD8T細胞ペプチドエピトープからなるポリエピトープストリングが記載されており、これは、破傷風トキソイド由来の、ならびにヒト型結核菌およびウシ型結核菌の様々な菌株の38Kdミコバクテリア抗原由来のCD4T細胞エピトープも発現する。
本発明はまた、本発明の少なくとも1つのペプチドを含むポリエピトープストリングも提供する。好適には、ポリエピトープストリングは、本明細書に記載する少なくとも1、2、3、4またはそれ以上のペプチドエピトープから構成される。一実施形態では、このようなポリエピトープストリングは、複数の類似、または同一エピトープを含む組成によって、天然に存在する全長5T4と区別される。好適には、このようなエピトープを、該全長タンパク質にはない追加の配列と結合させる。このようなストリングはまた、5T4抗原から誘導可能な別のエピトープ、もしくは他の抗原(例えば、別のTAA)由来のエピトープ、またはこれらの組合せを含んでもよい。また、上記ストリングは、MHCクラスIおよびMHCクラスIIエピトープの両方を含んでもよい。ポリエピトープストリングは、随意に、5T4エピトープ間に追加の介在アミノ酸を含有してもよい。
TAAは、膜タンパク質または、糖タンパク質および糖脂質の改変炭水化物分子のいずれかを特徴とするが、その機能の多くは依然として知られていない。1つのTAAファミリーである膜貫通4スーパーファミリー(TM4SF)は、通常、4つの十分に保存された膜貫通領域と、いくつかのシステイン残基と、短い配列モチーフとを有する。TM4SF抗原が、T細胞のCD4およびCD8など、他の重要な膜受容体と密に結合して存在することが証明されている(ImaiおよびYoshie(1993)J. immunol. 151, 6470-6481)。また、TM4SF抗原は、シグナル伝達に役割を果たすと考えられ、これが細胞増殖、活性化および運動性に影響を与える。TM4SF抗原の例として、ヒト黒色腫関連抗原ME491、ヒトおよびマウス白血球表面抗原CD37、およびヒトリンパ芽球性白血病関連TALLA-1が挙げられる(Hotta, H.ら、(1988)Cancer Res. 48, 2955-2962;Classon, B. J.ら、(1988)J. Exp. Med. 169:1497-1502;Tomlinson, M. G.ら(1996)Mol. Immun. 33:867-872;Takagi, S.ら、(1995)Int. J. Cancer 61:706-715)。
また、TAAの別の例として、限定するものではないが、癌精巣抗原(HOM-MEL-40)、分化抗原(HOM-MEL-55)、過剰発現遺伝子産物(HOM-MD-21)、突然変異遺伝子産物(NY-COL-2)、スプライス変異体(HOM-MD-397)、遺伝子増幅産物(HOM-NSCL-11)および癌関連自己抗原(HOM-MEL-2.4)などのクラスに属するTAAが挙げられ、詳細は以下の文献に記載されている:Cancer Vaccines and Immunotherapy (2000)、Stern, BeverleyおよびCarroll編、Cambridge University Press, Cambridge。別の例として、以下のものが挙げられる:MART-1(T細胞-1により認識される黒色腫抗原)MAGE-A(MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A8、MAGE-A10、MAGE-A12)、MAGE B(MAGE-B1- MAGE-B24)、MAGE-C(MAGE-C1/CT7、CT10)、GAGE(GAGE-1、GAGE-8、PAGE-1、PAGE-4、XAGE-1、XAGE-3)、LAGE(LAGE-1a(1S)、-1b(1L)、NY-ESO-1)、SSX(SSX1-SSX-5)、BAGE、SCP-1、PRAME(MAPE)、SART-1、SART-3、CTp11、TSP50、CT9/BRDT、gp100、MART-1、TRP-1、TRP-2、MELAN-A/MART-1、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、ムチン(MUC-1)およびチロシナーゼ。TAAについては、Cancer Immunology (2001) Kluwer Academic Publishers(オランダ)にも記載されている。
細胞ペネトレーター(細胞侵入剤)
本発明は、細胞ペネトレーターと結合したペプチドエピトープ、またはポリエピトープストリングも提供する。
ペプチドでパルスした抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)は、抗腫瘍免疫を増強する上で有効であることが証明されている(Celluzziら(1996)J. Exp. Med. 183 283-287;Youngら(1996)J. Exp. Med. 183 7-11)。ペプチドを細胞侵入性ペプチド(CPP;cell penetrating peptide)に結合させることにより、樹状細胞によるペプチドの提示の長期持続(従って、抗腫瘍免疫の増強)が可能であることが明らかにされている(WangおよびWang (2002) Nature Biotechnology 20 149-154)。
細胞ペネトレーターは、抗原提示細胞へのペプチド/ポリエピトープストリングの細胞内送達を増強するものであれば、あらゆる実体でよい。例えば、細胞ペネトレーターは、ペプチドと結合したとき、原形質膜を貫通する能力を増強する脂質でもよい。あるいは、細胞ペネトレーターはペプチドでもよい。タンパク質から複数の細胞ペネトレーター(CPP)が同定されており、例えば、HIVのTatタンパク質(FrankelおよびPabo (1988) Cell 55 1189-1193)、HSVのVP22タンパク質(ElliottおよびO’Hare (1997) Cell 88 223-233)および繊維芽細胞増殖因子(Linら(1995)J. Biol. Chem. 270 14255-14258)などが挙げられる。
「と結合した(associated with)」という用語は、直接結合、例えば、共有結合によるものを含むものとする。アミノ酸を結合する共有結合の例として、ジスルフィド架橋およびペプチド結合が挙げられる。好ましい実施形態では、ペプチド/ポリエピトープストリングとCPPをペプチド結合により結合して、融合タンパク質を作製する。
上記用語はまた、非共有結合、例えば、静電結合、水素結合およびファンデルワールス力による結合なども包含する。細胞ペネトレーターとペプチド/ポリエピトープストリングは、共有または非共有結合なしで結合させてもよい。例えば、細胞ペネトレーターは、ペプチド/ポリエピトープストリングを封入する脂質(例:リポソーム)であってもよい。
5T4
5T4は、例えば、WO89/07947においてすでに特性決定されている。ヒト5T4の配列は、登録番号Z29083でGenBankに記載されている。ペプチドは、他の種由来の対応する5T4抗原から誘導することもでき、このようなものとして例えば、マウス5T4(WO00/29428)、イヌ5T4(WO01/36486)もしくはネコ5T4などがある。ペプチドはまた、特定の種、好ましくは哺乳動物でみいだされる5T4の天然に存在する変異体から誘導してもよい。このような変異体は、同じ遺伝子ファミリーの関連遺伝子により、特定の遺伝子の対立遺伝子変異体によりコードしてもよいし、あるいは、5T4遺伝子の別のスプライシング変異体を呈示するものでもよい。
異なる種由来の5T4またはスプライス変異体から誘導したペプチドは、類似するヒト野生型5T4ペプチドとは異なるアミノ酸配列を含んでもよい。しかし、ペプチドが、ヒトペプチドと同じ性質の結合特異性を保持する(すなわち、これが、同じハプロタイプのMHC分子のペプチド結合溝内に結合する)限り、このペプチドはやはり本発明のエピトープである。
核酸
本発明はまた、本発明の第1態様のペプチドエピトープまたはポリエピトープストリングをコードすることができる核酸配列に関する。
本明細書で称する「核酸」とは、DNAもしくはRNA、天然に存在する、もしくは合成のもの、またはこれらの組合せを意味する。本発明の核酸は、5T4ペプチドをコードする機能を果たすことにより、該ペプチドが宿主生物の細胞の機構によって翻訳されうるようにするものに限定される。従って、例えば、安定性を高めるために、天然の核酸を改変してもよい。膜のヌクレアーゼ耐性を改善するために、DNAおよび/またはRNA、しかし特にRNAを修飾してもよい。例えば、リボヌクレオチドの場合、周知の修飾として、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-NH2、および2’-O-アリルが挙げられる。本発明の改変核酸は、核酸のin vivo安定性を高め、その送達を増強もしくは仲介する、または身体からのクリアランス速度を低下させるために実施された化学修飾を含んでもよい。このような修飾の例として、所与のRNA配列のリボースおよび/またはリン酸および/または塩基位置での化学的置換が挙げられる。例えば、以下の文献を参照されたい:WO 92/03568;米国特許第5,118,672号;Hobbsら、(1973) Biochemistry 12:5138;Guschlbauerら、(1977) Nucleic Acids Res. 4:1933;Schibaharuら、(1987) Nucleic Acids Res. 15:4403;Piekenら、(1991) Science 253:314(これらは各々、参照として具体的に本明細書に組み込むものとする)。
本発明はまた、本発明の第1態様のペプチドエピトープまたはポリエピトープストリングをコードすることができる核酸配列にハイブリダイズする核酸も含む。
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーとは、ポリ核酸ハイブリッドが安定している条件を指す。このような条件は、当業者には明らかである。当業者には周知であるように、ハイブリッドの安定性は、ハイブリッドの融解温度(Tm)に反映され、この融解温度は、配列相同性が1%低減する毎に約1〜1.5℃低下する。一般に、ハイブリッドの安定性は、ナトリウムイオン濃度と温度の関数である。典型的には、ハイブリダイゼーション反応を比較的高いストリンジェンシー条件下で実施した後、様々なストリンジェンシーでの洗浄を行なう。
本明細書で用いる高ストリンジェンシーとは、65〜68℃の1M Na+において安定なハイブリッドを形成する核酸配列だけのハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。高ストリンジェンシー条件は、例えば、6x SSC、5x デンハルト溶液、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.1 Na+ピロリン酸および0.1 mg/ml変性サケ精子DNA(非特異的競合体として)を含む水溶液中でのハイブリダイゼーションによりもたらすことができる。ハイブリダイゼーション後、高ストリンジェンシー洗浄を数回のステップで実施してもよく、その際、最終洗浄(約30分)は0.2〜0.1 x SSC、0.1%SDSにおいてハイブリダイゼーション温度で実施する。
中ストリンジェンシーとは、前述の溶液を用いるが、約60〜62℃で実施するハイブリダイゼーションと同等の条件を指す。この場合、最終洗浄は、1x SSC、0.1%SDSにおいてハイブリダイゼーション温度で実施する。
低ストリンジェンシーとは、前述の溶液を用いるが、約50〜52℃で実施するハイブリダイゼーションに相当する条件を指す。この場合、最終洗浄は、2x SSC、0.1%SDSにおいてハイブリダイゼーション温度で実施する。
これらの条件を、各種バッファー(例えば、ホルムアミドベースのバッファー)および温度を用いて適合させかつ二重に実施してもよいことは理解されよう。デンハルト溶液およびSSCは、他の好適なハイブリダイゼーションバッファーと同様に、当業者には周知である(例えば、Sambrookら、編 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York or Ausubelら、編 (1990) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.参照)。最適なハイブリダイゼーション条件は、プローブの長さおよびGC含量も影響を与えることから、経験に基づいて決定しなければならない。
本明細書に記載したガイダンスによれば、本発明の核酸は、当分野で周知の方法に従い取得することができる。例えば、本発明のDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または、比較的長いポリヌクレオチド(全5T4コード配列もしくはその断片)からの直接切断を用いた化学合成により取得可能である。
目的とする核酸の合成のための化学方法は当分野では周知であり、トリエステル、亜リン酸、ホスホルアミダイトおよびH-ホスホネート方法、PCRおよびその他のオートプライマー法、ならびに固体支持体上でのオリゴヌクレオチド合成などが挙げられる。これらの方法は、核酸の全核酸配列がわかっているか、コード鎖に相補的な核酸の配列が利用可能である場合に用いることができる。あるいは、標的アミノ酸配列がわかっていれば、各アミノ酸残基に対する既知かつ好ましいコード残基を用いて、候補核酸配列を推定することができる。
また、ヌクレオチド置換、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド挿入、またはヌクレオチド鎖(stretch)の逆位、ならびにこれらいずれかの組合せにより、本発明の核酸を改変することも考えられる。これらの突然変異体を用いて、例えば、野生型5T4エピトープとは異なるアミノ酸配列を有する5T4ペプチドを作製することができる。このようなペプチドは、それがT細胞エピトープとして作用する能力を保持していれば、やはり本発明のペプチドである。突然変異誘発は、予め決定してもよいし(部位特異的)、ランダムでもよい。サイレント突然変異ではない突然変異は、リーディングフレーム外に配列を配置すべきでなく、好ましくは、ハイブリダイズして、ループまたはヘアピンのような二次mRNA構造をもたらすような相補的領域を形成しないようがよい。
変異体/断片/相同体/誘導体
本発明は、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列、ならびにこれらの変異体、相同体、誘導体および断片の使用を包含する。
用語「変異体」は、野生型配列とは異なる、天然に存在するポリペプチドまたはヌクレオチド配列を意味するのに用いる。
用語「断片」とは、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列が対象配列の画分を含むことを意味する。好ましくは、上記配列は、対象配列の少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも65%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも90%以上を含む。断片がアミノ酸の断片であれば、好ましくは、MHCクラスIペプチドの場合、断片は長さが6〜12アミノ酸である。さらに好ましくは、断片は長さが8、9または10アミノ酸である。MHCクラスIIペプチドの場合には、断片の長さは12〜25アミノ酸であるのが好適である。このような断片は、MHCクラスIまたはMHCクラスIIに結合できるのが好適である。
用語「相同体」とは、対象アミノ酸配列および対象ヌクレオチド配列と、ある程度の相同性を有する実体を意味する。ここで、用語「相同性」は、「同一性」と同等に考ることができる。
本発明において、相同性配列は、対象配列と少なくとも75、85もしくは90%、好ましくは少なくとも95または98%同一である、アミノ酸配列を含むとみなされる。典型的には、相同体は、対象アミノ酸配列と同じ活性を含む。また、相同性は、類似性に関しても考慮することができる(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)が、本発明においては、配列同一性に関して相同性を表すのが好ましい。
本発明において、相同性配列は、対象配列と少なくとも75、85もしくは90%、好ましくは少なくとも95または98%同一である、ヌクレオチド配列を含むとみなされる。典型的には、相同体は、対象配列と同じ活性を含む。また、相同性は、類似性に関しても考慮することができる(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)が、本発明においては、配列同一性に関して相同性を表すのが好ましい。
相同性の比較は、目で、またはより一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて、実施することができる。これら市販のコンピュータープログラムによって、2つ以上の配列間の相同性(%)を計算することができる。
相同性(%)は、連続する配列に対して計算することもでき、この場合、一方の配列を他方の配列と一列に並べ、一方の配列内の各アミノ酸を他方の配列内の対応するアミノ酸と直接比較する(1残基を同時に)。これは、「ギャップなし」アラインメントと呼ばれる。典型的には、このようなギャップなしアラインメントは、比較的少数の残基についてしか実施されない。
これは非常に単純で、堅実な方法ではあるが、この方法は、例えば、他の点では同じ一対の配列において、1つの挿入または欠失があるために、後続のアミノ酸残基がアラインメントから除外されることになり、その結果、全体的アラインメントを実施すると、相同性(%)が大幅に減少する可能性があることを考慮に入れていない。従って、ほとんどの配列比較方法は、全体的相同性スコアに不当にペナルティを科すことなく、起こりうる挿入および欠失を考慮に入れる最適なアラインメントを実現するよう設計されている。これは、局所相同性を最大化するために、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入することにより達成される。
しかし、より複雑なこれらの方法は、アラインメントに起こる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てるため、同じアミノ酸が同数の場合、ギャップが可能な限り少ない(比較しようとする2つの配列同士の類似性がより高いことを表す)配列アラインメントが、ギャップの多い配列より高いスコアを達成することになる。典型的には、「アファインギャップコスト」が用いられており、これは、ギャップの存在に対し比較的高いコストを課し、ギャップ内の後続の各残基には小さなペナルティを科すものである。これは、最も一般に用いられるギャップスコアリング方法である。言うまでもなく、高いギャップペナルティは、ギャップの少ない最適化されたアラインメントをもたらすことになる。多くのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティを変更可能にしている。しかし、このようなソフトウエアを配列比較に使用する際には、デフォルト値を用いるのが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを用いる場合、デフォルトギャップペナルティは1ギャップについて−12であり、各伸長について−4である。
従って、最大相同性(%)の計算は、最初に、ギャップペナルティを考慮に入れた最適アラインメントの形成を必要とする。このようなアラインメントを実施するのに好適なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(Universisty of Wisconsin、米国;Devereuxら、1984, Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実施することができる他のソフトウエアとして、限定するものではないが、BLASTパッケージ(Ausubelら、1999 同上−第18章を参照)、FASTA(Ausubelら、1990, J. Mol. Biol., 403-410)および比較ツールのGENEWORKSセットなどが挙げられる。BLASTおよびFASTAはいずれも、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(Ausubelら、1999 同上、ページ7〜58および7〜60を参照)。しかし、用途によっては、GCG Bestfitプログラムが好ましい場合もある。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる新規のツールもタンパク質とヌクレオチド配列を比較するのに利用可能である(FEMS Microbiol Lett 1999 174(2):247-50;FEMS Microbiol Lett 1999 177(1):187-8参照)。
最終相同性(%)を同一性に関して測定することもできるが、アラインメント方法自体は、一般に全か無か(all or nothing)の対比較に基づくものではない。そうではなく、化学的類似性または進化距離に基づく対毎の比較にスコアを割り当てる尺度式類似性スコアマトリックス(scaled similarity score matrix)が一般に用いられている。このようなマトリックスの例は、BLOSUM62マトリックス−BLASTセットのプログラム用のデフォルトマトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは一般に、公式デフォルト値またはカスタム記号比較表(もし供給されていれば)のいずれかを使用する(さらに詳細についてはユーザーマニュアルを参照)。用途によっては、GCGパッケージの場合、公式デフォルト値を用いるのが好ましく、また、他のソフトウエアの場合には、デフォルトマトリックス(例えば、BLOSUM62)を用いるのが好ましい。
ソフトウエアにより最適アラインメントが形成されると、相同性(%)、好ましくは配列同一性(%)を計算することができる。ソフトウエアは典型的に、これを配列比較の一部として実施し、数値結果を出す。
配列は、サイレント変異を誘発して、機能的に同等の物質をもたらすようなアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を含むこともある。物質の二次結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づき、意図的アミノ酸置換を実施してもよい。例えば、負電荷アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が;正電荷アミノ酸としては、リシンおよびアルギニンが;また、同等の親水値を有する不電荷極性頭部基としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンがそれぞれ挙げられる。
例えば、以下の表に従って、保存的置換を実施することもできる。第2列の同じブロック内、好ましくは、第3列内の同じ行にあるアミノ酸を互いに置換してもよい。
本発明は、相同置換も包含する(置換(substitutionおよびreplacement)はいずれも、存在するアミノ酸残基と別の残基の交換を意味する)。すなわち、同種同士の置換、例えば、塩基性に対し塩基性、酸性に対し酸性、極性に対し極性などの置換が起こりうる。非相同置換、すなわち、1クラスの残基から別の残基への、あるいは、非天然アミノ酸、例えば、オルチニン(以後Zと称する)、ジアミノ酪酸オルチニン(以後Bと称する)、ノルロイシンオルチニン(以後Oと称する)、ピリジルアラニン(pyriylalanine)、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリシンなどの含有を含む置換も起こりうる。
置換はまた、非天然アミノ酸により実施してもよく、このようなアミノ酸として以下のものが挙げられる:α*およびα二置換*アミノ酸、N-アルキルアミノ酸*、乳酸*、天然アミノ酸のハロゲン化物誘導体−例えば、トリフルオロチロシン*、p-Cl-フェニルアラニン*、p-Br-フェニルアラニン*、p-I-フェニルアラニン*、L-アリル-グリシン*、β-アラニン*、L-αアミノ酪酸*、L-γアミノ酪酸*、L-αアミノイソ酪酸*、L-εアミノカプロン酸#、7-アミノヘプタン酸*、L-メチオニンスルホン#*、L-ノルロイシン*、L-ノルバリン*、p-ニトロ-L-フェニルアラニン*、L-ヒドロキシプロリン#、L-チオプロリン*、フェニルアラニン(Phe)のメチル誘導体−例えば、4-メチル-Phe*、ペンタメチル-Phe*、L-Phe(4-アミノ) #、L-Tyr(メチル) *、L-Phe(4-イソプロピル) *、L-Tic(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸)*、L-ジアミノプロピオン酸#およびL-Phe(4-ベンジル)*。*印は、前文での説明(相同または非相同置換に関する)を目的として、誘導体の疎水性を示すために使用し、また、#は誘導体の親水性を示すために使用し、#*は両親媒性を示す。
変異アミノ酸配列は、アミノ酸スペーサー(例えば、グリシンまたはβアラニン残基)以外に、アルキル基(例えば、メチル、エチルもしくはプロピル基)を含む配列のいずれか2つのアミノ酸残基の間に挿入することができる好適なスペーサー基を含有してもよい。さらに別の変異の形態は、ペプトイド型における1以上のアミノ酸残基の存在を含むが、これは、当業者には十分理解されよう。疑問を解消するために言うと、ここで用いる「ペプトイド型」とは、α炭素置換基が、α炭素ではなく、残基の窒素原子上にある変異アミノ酸残基を意味する。ペプトイド型のペプチドの作製方法は当分野では周知であり、例えば、Simon RJら、PNAS (1992) 89(20), 9367-9371およびHorwell DC, Trends Biotechnol. (1995) 13(4), 132-134を参照されたい。
本発明で使用するためのヌクレオチド配列は、該配列内に合成または改変ヌクレオチドを含んでもよい。オリゴヌクレオチドに対する多種多様な改変が当分野では周知である。このような改変として、メチルホスホネートおよびホスホロチオネートバックボーンおよび/または分子の3’および/または5’末端でのアクリジンもしくはポリリシン鎖の付加が挙げられる。本発明の目的のために、当分野で利用可能などの方法でヌクレオチド配列を改変してもよいことは理解すべきである。このような改変を実施することにより、本発明で有用なヌクレオチド配列のin vivo活性または寿命を増大することができる。
ベクター系
ベクター系を用いて、本発明の核酸配列を細胞に送達してもよい。
本明細書で用いる「ベクター」とは、宿主細胞における核酸を送達または維持することができるあらゆる剤を意味し、例えば、ウイルスベクター、プラスミド、ネイキッド核酸、ポリペプチドもしくはその他の分子と複合体化した核酸、ならびに固相粒子上に固定化した核酸などが挙げられる。このようなベクターについては以下に詳しく記載する。本発明は、その最も広い範囲において、5T4ペプチドコード核酸の送達のためのいずれか特定のベクターに限定されないことを理解すべきである。
ベクターは原核生物または真核生物ベクターでよい。
ウイルスまたは非ウイルス技術により、本発明の5T4エピトープおよびポリエピトープストリングをコードする核酸を送達することができる。
非ウイルス送達方法として、限定するものではないが、DNAトランスフェクション法が挙げられる。ここで、トランスフェクションは、非ウイルスベクターを用いて5T4遺伝子を標的哺乳動物細胞に送達する方法を含む。
典型的トランスフェクション方法として、以下のものが挙げられる:エレクトロポレーション、核酸パーティクルガン、脂質媒介トランスフェクション、圧密化核酸媒介トランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、カチオン物質媒介、カチオン表面両親媒化合物(CFA)(Nature Biotechnology 1996 14;556)、多価カチオン、例えば、スペルミン、カチオン脂質またはポリリシン、1,2,-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)-コレステロール複合体(WolffおよびTrubetskoy 1998 Nature Biotechnology 16:421)ならびにこれらの組合せ。
また非ウイルス送達系には、限定するものではないが、細菌送達系も含まれる。抗癌薬として、および抗癌薬の送達剤としての細菌の使用については、Expert Opin Biol Ther 2001 Mar;1(2):291-300に記載されている。
好適な細菌として、限定するものではないが、病原菌および非病原性共生細菌が挙げられる。例として、好適な属は、サルモネラ属、ミコバクテリウム属、エルシニア属、シゲラ属、リステリア属およびブルセラ属から選択することができる。これら細菌の病因論および分子生物学における近年の進歩により、改善された新規の細菌性運搬体およびさらに有効な遺伝子発現系の開発が可能になった。これらの進歩によって、これら送達系の性能および多用性が改善されている。
上記細菌は、真核生物発現プラスミドを哺乳動物宿主細胞にin vitroおよびin vivoで輸送することができる侵入性細胞内菌である。プラスミド輸送は、組換え細菌が、代謝減衰または自己溶解の誘発のいずれかにより宿主細胞内で死滅したときに起こると考えられる。あるいは、抗生物質を用いてもよく、これにより自発的輸送が観察されており、この現象は生理学的条件下でも起こりうることを示している。プラスミド輸送は、フレキシナー菌、ネズミチフス菌、チフス菌、単球症リステリアおよび組換え大腸菌について報告されているが、他の侵入性細菌を用いてもよい。
細菌をDNAワクチン送達に用いることもできる。このような細菌は、シゲラおよびリステリア属のように、食作用後、宿主細胞の細胞質ゾルに侵入するか、あるいは、サルモネラ菌のようにファゴソームコンパートメント内に滞留するものもある。いずれの細胞内局在化も、DNAワクチンベクターの送達を達成するのに適している。
細菌送達系は、非病原性ミコバクテリウム属菌株の形態のミコバクテリウム属、クローニングおよび発現ベクターの形態の遺伝子輸送系、ならびに、例えば、非毒性免疫調節ミコバクテリウムアジュバント、様々な疾患に特異的な非毒性免疫刺激外因性抗原、およびTH-1経路を増強する非毒性量のサイトカインを含む製剤を提供する関連技術を用いてもよい(Tunis Med 2001 Feb;79(2):65-81)。
規定遺伝子欠失を含むサルモネラ菌株(例えば、弱毒株など)を好適な送達系(例えば、抗原の送達)に用いてもよい。これら菌株による送達のための多数の戦略(プラスミド使用から染色体組込み方法に到るまで)が、試みられている。例えば、Rosenkranzら、Vaccine 2003, 21(7-8), 798-801には、サイトカインをコードする真核生物発現プラスミド記載され、それらが様々な実験モデルで免疫応答をモジュレートする能力がアッセイされている。サイトメガロウイルスプロモーターの下でマウスIL-4およびIL-18をコードするプラスミドを構築し、生きた弱毒チフス菌血清型Typhi株CVD908-htrAおよびチフス菌血清型Typhimurium株SL3261に形質転換した。
有望な遺伝子送達ベクターとしての弱毒ネズミチフス菌株(Salmonella typhimurium)の使用についてはAnticancer Res 2002, 22(6A):3261-6に記載されている。
また、Vemulapalliら、Infect Immun(2000)68(6):3290-6に記載されているように、好適な送達系としてウシ流産菌(Brucella abortus)を用いることもできる。ウシ流産菌株RB51は、ウシブルセラ症の生ワクチンとして広く用いられる安定なR型弱毒突然変異体である。この菌株は、例えば、有効な予防のために強力なTh1型の免疫応答の誘導が必要な他の細胞内病原体の防御抗原を送達するのに、送達ベクターとして用いることができる。
Boydら、Eur J Cell Biol (2000) 79(10)659-71には、多様な細胞型にタンパク質を送達する目的で、エルシニア・エンテロコリチカの使用が記載されている。エルシニア・エンテロコリチカは、Yopエフェクターと呼ばれる病原性タンパク質を真核生物細胞の細胞質ゾルに輸送する。エルシニア・エンテロコリチカがYopを輸送できる真核生物細胞の範囲に対する制限については報告されていない。Yopエフェクター:YopE、YopHおよびYopTはいずれも、被検接着細胞型に対し各々細胞傷害性であったが、これは、エルシニア・エンテロコリチカが各細胞型への特定のYopエフェクターの輸送において選択的ではないことだけではなく、Yopエフェクターの作用が細胞型特異的ではないことも示している。広範な用途にエルシニア輸送系を用いるために、真核生物細胞への異種タンパク質送達のためのエルシニア・エンテロコリチカ輸送菌株およびベクターを構築した。この菌株およびベクターの組合せには、輸送されたYopエフェクターが欠失しており、YopEの最小N末端分泌/輸送シグナルと融合した異種タンパク質を真核生物細胞に送達することを可能にする。
米国特許第5965381号には、真核生物細胞へのタンパク質送達のための組換えエルシニアが記載されている。このようなエルシニアは、機能的エフェクタータンパク質の産生は欠失しているが、機能的分泌および輸送系が賦与されている。
細胞接着分子は、様々な細胞−細胞および細胞−細胞外マトリックス(ECM)相互作用に関与する大きな分子群であり、細胞進入のための受容体として、多数の病原性微生物に利用されている。これらの分子は、遺伝子および薬剤送達系両方のターゲッティングおよび取込みに用いることができる。細胞接着分子および遺伝子輸送におけるその使用については、Adv Drig Deliv Rev 2000 Nov 15;44(2-3):135-52に記載されている。
また、DNAの送達に遺伝子ガン送達系を用いてもよく、これは、筋内接種に比べ、極めて信頼度の高い方法である(Jpn J Pharmacol 2000 Jul;83(3):167-74)。
ウイルス送達系として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターもしくはバキュロウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、ポックスウイルス:例えば、カナリア痘ウイルス(Taylorら、1995 Vaccine 13:539-549)、昆虫ポックスウイルス(Li Yら、1998 XIIth International Poxvirus Symposium p144. Abstract)、ペンギンポックス(Standardら、J Gen Virol. 1998 79:1637-46)アルファウイルス、およびアルファウイルスべースのDNAベクター。
レトロウイルスの例を以下にあげるが、これらに限定するわけではない:マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、フジナミ肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、アベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球腫症ウイルス-29(MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)。
レトロウイルスの詳細なリストはCoffinらにみいだすことができる(”Retrovirus” 1997 Cold spring Harbour Laboratory Press Eds: JM Coffin, SM Hughes, He Varmus pp 758-763)。
レンチウイルスは霊長類と非霊長類の群に分類することができる。霊長類レンチウイルスの例として、限定するものではないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト自己免疫不全症候群(AIDS)を引き起こす因子、サル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルス群としては、「スローウイルス(slow virus)」、ビスナ/マエディ(visna/maedi)ウイルス(VMV)、ならびにヤギ関節炎−脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、さらには、近年記載されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。
レンチウイルスファミリーと他種のレトロウイルスとの違いは、レンチウイルスが、分裂および非分裂細胞の両方に感染する能力を有する点である(Lewisら、1992 EMBO. J 11:3053-3058;LewisおよびEmerman 1994 J. Virol. 68:510-516)。対照的に、他のレトロウイルス(例えば、MLV)は、非分裂細胞、例えば、筋肉、脳、肺および肝組織を構成する細胞などには感染できない。
本発明のベクターは、分断イントロンベクターとして構成してもよい。分断イントロンベクターは、PCT特許出願WO99/15683およびWO99/15684に記載されている。
アデノウイルスの特徴をレトロウイルス/レンチウイルスの遺伝安定性と組み合わせる場合には、主にアデノウイルスを用いて、標的細胞を形質導入することにより、隣接細胞に安定に感染することができる一過性レトロウイルスプロデューサー細胞にする。5T4抗原を発現するように作製されたこのようなレトロウイルスプロデューサー細胞は、動物またはヒトのような器官に移植して、血管新生および/または癌の治療に用いることができる。
本発明のベクターは、偽タイプ化(psuedotyped)ベクターとして構成してもよい。
レトロウイルスベクターの設計において、天然のウイルスに対して様々な標的細胞特異性を有する粒子を作製し、遺伝物質を、拡大または改変された範囲の細胞型に送達することを可能にするのが望ましい。これを達成する一方法は、その特異性を改変するようにウイルス包膜タンパク質を作製するものである。別の方法は、ベクター粒子に異種包膜タンパク質を導入することにより、ウイルスの天然の包膜タンパク質を置換または付加するものである。
偽タイプ化という用語は、ウイルスゲノムのenv遺伝子の少なくとも一部に、異種env遺伝子、例えば、別のウイルス由来のenv遺伝子を組み込む、あるいは、その一部または全部を上記異種遺伝子で置換することを意味する。偽タイプ化は、新しい現象ではなく、その例は、WO 99/61639、WO-A-98/05759、WO-A-98/05754、WO-A-97/17457、WO-A-96/09400、WO-A-91/00047およびMebatsionら、1997 Cell 90, 841-847にみいだすことができる。
偽タイプ化により、レトロウイルスベクター安定性および形質導入効率を高めることができる。リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)と一緒にパッケージングしたマウス白血病ウイルスの偽タイプが記載されており(Mileticら(1999)J. Virol. 73:6114-6116)、超遠心分離の間安定しており、様々な種由来の複数の細胞系に感染可能であることが明らかにされた。
ポックスウイルスベクター
TAAは弱い免疫原性であり、免疫系によって「自己」として認識されるため、高い割合まで許容される。ポックスウイルスベクターを用いて、抗原を提示させ、この寛容が少なくとも部分的に解消され、(特に免疫回避遺伝子が欠失している場合−以下参照)こうして、宿主が免疫応答を増強できるようにすることが可能な場合もある。
ポックスウイルスベクターは、本発明で使用するのに好ましい。ポックスウイルスは、組換え遺伝子発現のため、および組換え生ワクチンとしての使用のために作製される。これには、外来抗原をコードする核酸をポックスウイルスのゲノムに導入するための組換え技術を用いる必要がある。ウイルスのライフサイクルに非必須のウイルスDNAにおける部位に上記核酸を組み込む場合には、新しく作製した組換えポックスウイルスは感染性である、すなわち、外来細胞に感染し、組み込まれたDNA配列を発現することができる。このようにして作製した組換えポックスウイルスは、病原性および感染性疾患の予防および/または治療のためのワクチンとして用いることができる。
ワクシニアウイルスのような組換えポックスウイルスにおける5T4ペプチドの発現には、ワクシニアプロモーターと、5T4ペプチドをコードする核酸との結合が必要である。プラスミドベクター(挿入ベクターとも呼ばれる)は、ドナープラスミド内の核酸に隣接するウイルス配列と、親ウイルス内に存在する相同性配列との相同組換えにより、核酸をワクシニアウイルスに挿入するように構築されている(Mackettら、1982 PNAS 79:7415-7419)。1タイプの挿入ベクターは、以下のものから構成される:(a)転写開始部位を含むワクシニアウイルス;(b)核酸挿入のための転写開始部位から下流に位置する複数のユニーク制限エンドヌクレアーゼクローニング部位;(c)該プロモーターに隣接する非必須ワクシニアウイルス配列(チミジンキナーゼ(TK)遺伝子など)と、ウイルスゲノムの相同的非必須領域への核酸の挿入を指令するクローニング部位;ならびに(d)細菌の複製起点と、大腸菌における組換えおよび選択のための抗生物質耐性マーカー。このようなベクターの例は、Mackettにより記載されている(Mackettら、1984, J. Virol. 49:857-864)。
挿入しようとする核酸を含む単離プラスミドを、親ウイルス(例えば、ポックスウイルス)と一緒に、細胞培養物(例えば、ニワトリ胚繊維芽細胞)にトランスフェクションする。プラスミド内の相同的ポックスDNAおよびウイルスゲノム間の組換えにより、そのゲノム内の、ウイルス生存能に影響しない部位で、プロモーター−遺伝子構築物の存在により改変された組換えポックスウイルスがそれぞれ得られる。
前述したように、核酸は、得られる組換えウイルスのウイルス生存能に影響しないウイルス内の領域(挿入領域)に挿入する。このような領域は、組換え体のウイルス生存能に深刻に影響しない組換え体形成を可能にする領域について、ウイルスDNAのセグメントをランダムに試験することにより、ウイルス内で容易に確認することができる。容易に用いることができ、多くのウイルスに存在する1つの領域は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。例えば、TK遺伝子はあらゆるポックスウイルスゲノムにおいて認められている[レポリポックスウイルス:Uptonら、J. Virology 60:920 (1986)(ショープ繊維腫ウイルス);カプリポックスウイルス:Gershonら、J. Gen. Virol. 70:525 (1989) (Kenya sheep-1);オルソポックスウイルス:Weirら、J. Virol 46:530 (1983)(ワクシニア);Espositoら、Virology 135:561 (1984)(サル痘および痘瘡);Hrubyら、PNAS, 80:3411 (1983)(ワクシニア);Kilpatrickら、Virology 143:399 (1985) (ヤバサル腫瘍ウイルス);アビポックスウイルス:Binnsら、J. Gen. Virol 69:1275 (1988)(禽痘);Boyleら、Virology 156:355 (1987) (禽痘);Schnitzleinら、J. Virological Method, 20:341 (1988)(禽痘、ウズラ痘);昆虫ポックス(Lytvynら、J. Gen. Virol 73:3235-3240 (1992))]。
ワクシニアの場合には、TK領域以外に、他の挿入領域として例えば、HindIII Mがある。
禽痘の場合、TK領域以外に、他の挿入領域として、例えば、BamHI J[Jenkinsら、AIDS Research and Human Retoroviruses 7:991-998 (1991)]、EPO出願番号0 308 220 A1に記載されたEcoRI HindIIIフラグメント、BamHIIフラグメント、EcoRB-HindIIIフラグメント、BamHIフラグメントおよびHindIIIフラグメントが挙げられる。[Calvertら、J. of Virol 67:3069-3076 (1993);Taylorら、Vaccine 6:497-503 (1988);Spehnerら、(1990)およびBoursnellら、J. of Gen. Virol 71:621-628 (1990)]。
ブタポックスの場合、好ましい挿入部位として、チミジンキナーゼ遺伝子領域が挙げられる。
プロモーターは、宿主および標的細胞型に応じて容易に選択することができる。例えば、ブタポックスでは、ワクシニア7.5K、もしくは40Kまたは禽痘C1のようなポックスウイルスプロモーターを用いる必要がある。好適なポックス配列を含む人工構築物も用いることができる。エンハンサーエレメントを組み合わせて用いることにより、発現レベルを高めることもできる。さらに、実施形態によっては、当業者には周知の誘導プロモーターの使用が好ましい場合もある。
外来遺伝子発現は、酵素または免疫学的アッセイ(例えば、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ、もしくは免疫ブロッティング)により検出することができる。組換えワクシニア感染細胞から生産された天然に存在する膜糖タンパク質をグリコシル化し、細胞表面に輸送してもよい。強いプロモーターを用いることにより、高い発現レベルを達成することができる。
ワクチンに用いるウイルスベクターに対するその他の要件としては、優れた免疫原性と安全性が挙げられる。MVAは、優れた安全性の記録を有する複製欠陥ワクシニア株である。大部分の細胞型および正常なヒト組織では、MVAは複製しない。MVAの複製は、BHK21細胞のような少数の形質転換細胞型に認められる。Carrollら(1997)は、組換えMVAが、防御CD8+T細胞応答を生み出すのに、従来の組換えワクシニアベクターと同じくらい優れており、一般に用いられる複製コンピテントワクシニアウイルスの効果的代替物であることを明らかにしている。MVAから誘導されたワクシニアウイルス株、あるいは、独立に作製され、MVAをワクチンでの使用に特に適したものするMVAの特徴を備えた株も、本発明で用いるのに好適である。
好ましくは、ベクターはMVAまたはNYVACのようなワクシニアウイルスベクターである。ワクシニア株改変ウイルスアンカラ(MVA)またはこれから誘導した株が最も好ましい。ワクシニアベクターに代わるものとして、ALVACとして知られる禽痘またはカナリア痘のようなアビポックスベクター、ならびに、これらから誘導された株で、ヒト細胞に感染し、そこで組換えタンパク質を発現することができるが、複製することはできない株などが挙げられる。
本発明の一態様では、少なくとも1つの免疫回避遺伝子をポックスウイルスベクターから欠失させる。
ウイルス、特に、広範なコード能力を有し、そのため、様々な遺伝子をコードすることができるポックスウイルスのような大型ウイルスは、その宿主の免疫系を回避する多数の技術を発達させている。例えば、これらは、補体、インターフェロンおよび炎症応答などの非特異的防御を回避すると共に、サイトカインの機能を妨害または阻止することができる。左末端領域のインターフェロン抵抗タンパク質を除いて、多数のこれら免疫回避ポリペプチドがMVAから欠失されている。
ポックスウイルスは一般に、大型DNAウイルスであり、潜伏性というより、急性の感染を確立する。ポックスウイルスは、多数の抗原タンパク質をコードするため、抗原性の変動が難しく、従って、能動免疫回避に依存して、哺乳動物免疫系から自身を防御する。これらは、免疫系の様々な態様の妨害の原因となる、ポリペプチドをコードする多数の遺伝子を有する:すなわち、これらはインターフェロン作用を破壊し、補体、サイトカイン活性、炎症応答およびCTL認識を妨害する(詳細は、Smithら、(1997)Immunol Rev 159:137-154を参照)。これらタンパク質の除去は、ポックスウイルスベクターにコードされた弱い免疫原が被験者において免疫応答を誘発する能力を促進する上で有益である。
免疫回避遺伝子またはポリペプチドは、哺乳動物の免疫系を回避する上でウイルスを補助する遺伝子またはその産物である。好ましくは、遺伝子または遺伝子産物は、免疫系の作用を少なくとも1レベル妨害する。これは、多数の方法、例えば、分子をシグナル伝達するための競合体を提供して、シグナル伝達経路に介入する;可溶性サイトカイン受容体擬似物を提供するなどにより、達成することができる。
免疫回避遺伝子としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:
インターフェロン回避遺伝子:ワクシニアは、IFN作用を妨害する少なくとも3つの遺伝子を有する。E3L遺伝子は、dsRNAとの結合についてP1タンパク質キナーゼと競合する25Kdポリペプチドを発現するが、上記結合は、P1の活性化、eIF2αのリン酸化、ならびに、その結果としての翻訳開始複合体集合の失敗を引き起こす事象である。この経路は、通常、IFN活性化に対し応答性であるが、E3L発現により妨害されるため、翻訳開始を妨害なしに進行させることができる。
K3L遺伝子は、実際にeIF2α擬似物であり、P1タンパク質キナーゼの競合体として作用することから、P1活性も妨害する10.5Kdポリペプチドを発現する。従って、その作用様式はE3Lと類似している。
A18R遺伝子は、ヘリカーゼをコードすると推定され、このヘリカーゼは、2’,5’-オリゴアデニレート経路を妨害すると考えられ、次にこれがIFN応答性となる。2’,5’-AはRNAse Lを活性化するが、これはウイルス翻訳を阻止するように作用する。A18Rの発現は、感染した細胞における2’,5’-Aレベルを低下させるようである。
補体:ワクシニアのB5R遺伝子の産物は、代替補体経路の調節物質である因子Hと高度に関連することがわかっている。この経路は、古典的経路とは違い、抗原だけによって活性化することができる。従って、B5R遺伝子産物は、前記代替補体経路を妨害する可能性がある。
C21L遺伝子は、ヒトのC4b結合タンパク質に関連し、表面にC4bを担持する細胞と相互作用して、CR1補体受容体との結合を阻止する。
可溶性サイトカイン受容体:ワクシニアWR B15R遺伝子(コペンハーゲン株ワクシニア中のB16R)の産物はIL1-Rに関連する。
コペンハーゲン株ワクシニア中のWR遺伝子ORF SalF19R、A53Rは、TNF受容体をコードする。しかし、野生型ウイルスの場合、これら遺伝子のいずれも、ORFのフラグメント化によって不活性であると考えられている。
B8R遺伝子は、可溶性IFN-γ受容体をコードし、ウイルスにさらに別のIFN回避機構を賦与すると考えられる。
炎症:多数の遺伝子が、ウイルス感染に対する炎症応答の阻止に関与すると考えられている。このような遺伝子として、A44L、K2L、B13RおよびB22Rが挙げられる。
本発明の一態様では、免疫回避遺伝子の大部分を、組換えポックスウイルスベクターから欠失させる。好ましくは、すべての免疫回避遺伝子を欠失させる。従って、本発明の一態様では、組換えポックスウイルスベクターは、K3Lインターフェロン耐性タンパク質遺伝子が破壊または欠失した組換えMVAベクターである。
対象とする被験者に対し危険性のないポックスウイルスが好ましい。従って、例えば、ヒトに用いる場合には、アビポックスウイルスのように宿主範囲が限定されたものか、またはワクシニアの弱毒株(NYVACおよびMVAなど)のように弱毒化されたもの、いずれかのポックスウイルスが好ましい。弱毒ワクシニアウイルス株が最も好ましいが、既存の痘瘡免疫を有する被験者には非ワクシニア株を用いるのが有用である。
MVAゲノム内で、天然に存在する欠失、例えば、欠失IIに隣接するMVA DNA配列に挟まれた5T4エピトープをコードする少なくとも1つの核酸を含む構築物を、MVAに感染した細胞に導入することにより、相同組換えを実施することができる。
構築物を真核生物細胞に導入し、5T4エピトープDNAをウイルスDNAと結合させたら、好ましくはマーカーを用いて、所望の組換えワクシニアウイルスを単離することができる(Nakanoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 1593-1596 [1982];Frankeら、Mol. Cell. Biol. 1918-1924 [1985];Chakrabarti ら、Mol. Cell. Biol. 3403-3409 [1985];Fathiら、Virology 97-105 [1986])。
挿入しようとする構築物は線状または環状のいずれでもよい。環状DNA、特にプラスミドが好ましい。構築物は、MVAゲノム内で、天然に存在する欠失、例えば、欠失IIの両端に隣接する配列を含む(Atenburger, W., Suter, C.P.およびAtenburger J. (1989) Arch. Virol. 105, 15-27)。天然に存在する欠失の両端に隣接する配列の間に外来DNA配列を挿入する。
少なくとも1つの核酸を発現するためには、核酸の転写に必要な調節配列が、核酸の上流に存在する必要がある。このような調節配列は当業者には周知であり、例えば、欧州特許出願第198,328号に記載されているようにワクシニア11kDa遺伝子の配列、および7.5 kDa遺伝子の配列(欧州特許出願第110,385号)などが挙げられる。
構築物は、トランスフェクションによってMVA感染細胞に導入することができ、その際、例えば、以下に挙げる手段を用いる:リン酸カルシウム沈殿(Grahamら、Virol. 52, 456-467 [1973];Wiglerら、Cell 777-785 [1979])、エレクトロポレーション(Neumannら、EMBO J. 1, 841-845 [1982])、マイクロインジェクション(Graessmannら、Meth. Enzymology 101, 482-492 (1983))、リポソーム(Straubingerら、Methods in Enzymology 101, 512-527 (1983))、スフェロプラスト(Schaffner, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77, 2163-2167 (1980))、または当業者には周知のその他の方法。リポソームによるトランスフェクションが好ましい。
本発明の組換え初回免疫および追加免疫ベクターは、哺乳動物における特定の細胞型に対する向性(tropism)を有していてもよい。例えば、本発明の組換えベクターは、樹状細胞およびマクロファージのようなプロフェショナルAPCに感染するように操作することができる。樹状細胞は、良好な免疫応答のオーケストレーター(orchestrator)、特に細胞性応答のそれであることが知られている。抗原、またはこのような標的抗原を含むウイルスベクターで樹状細胞をex vivo処理すると、同系動物またはヒトに注入したとき、有効な免疫応答が誘導されることが明らかにされている(Nestle FOら、Vaccination of melanoma patients with peptide- or tumor lysate-pulsed dendritic cells, Nat Med. 1998 Mar;4(3):328-32およびKim CJら、Dendritic cells infected with poxviruses encoding MART-1/Melan A sensitize T lymphocytes in vitro. J Immunother. 1997 Jul;20(4):276-86参照)。組換えベクターはまた、腫瘍細胞にも感染することができる。あるいは、組換えベクターは哺乳動物のあらゆる細胞に感染することができる。
これ以外のベクターの例にはex vivo送達系があるが、そのようなものとして、限定するものではないが、エレクトロポレーション、DNAパーティクルガン、脂質媒介トランスフェクションおよび圧密化(compacted)DNA媒介トランスフェクションなどのDNAトランスフェクション方法が挙げられる。
ベクターはプラスミドDNAベクターでもよい。本明細書で用いる「プラスミド」とは、発現または複製のいずれかの目的で異種DNAを細胞に導入するのに用いられる個別のエレメントを意味する。このようなビヒクルの選択および使用は、当業者の技術で十分に可能である。
パルス細胞
本発明はまた、本発明の第1態様のペプチドでパルスした細胞も提供する。
好ましくは、パルスしようとする細胞はMHCクラスIまたはクラスIIを発現することができる。
MHCクラスI分子は、ほぼすべての細胞型に発現させることができるが、MHCクラスII分子は、いわゆる「プロフェショナル」抗原提示細胞(APC);B細胞、樹状細胞およびマクロファージに限定される。しかし、MHCクラスIIの発現は、IFNγで処理することにより他の細胞型に誘導することができる。
MHCクラスIまたはMHCクラスII分子の発現はまた、遺伝子工学(すなわち、パルスしようとする細胞に、当該MHC分子をコードする遺伝子を賦与すること)によって達成することもできる。この手法には、特異的にペプチドに結合する適切なMHCハプロタイプを選択するという利点がある。
好ましくは、パルスしようとする細胞は、抗原提示細胞、すなわち、正常の免疫応答において、抗原をプロセシングし、これをMHC分子と一緒に細胞表面に提示することができる細胞である。抗原提示細胞としては、B細胞、マクロファージおよび樹状細胞などが挙げられる。特に好ましい実施形態では、この細胞は樹状細胞である。
好ましくは、上記細胞は、本発明の第1態様のペプチドとそのペプチド結合溝内で結合する、MHC分子を発現することができる。例えば、この細胞は、次のHLA拘束エレメント:B7、B8、Cw7、A1、A2もしくはA3(MHCクラスIの場合)の1つを発現することができる。
ペプチドパルシングプロトコルは当業者には周知である(例えば、RedchenkoおよびRickinson (1999) J. Virol. 334-342;Nestleら、(1998) Nat. Med. 4 328-332; Tjandrawanら、(1998) J. Immunotherapy 21 149-157を参照)。例えば、樹状細胞にペプチドをロードするための標準的プロトコルでは、無血清培地において、3μg/ml のβ-2ミクログロブリンを含む50μ/mlのペプチドと一緒に細胞をインキュベートする。次に、非結合ペプチドを洗浄により除去する。
本発明のパルス細胞は、例えば、予防または治療用抗5T4免疫応答を刺激するためにワクチンとして用いることができる。
従って、本発明はまた、必要とする被験者にペプチドパルス細胞を投与するステップを含む、疾患の治療および/または予防方法も提供する。
ワクチン/医薬組成物
本発明は、本発明の前記態様のペプチドエピトープ、ポリエピトープストリング、核酸配列、ベクター系および/または細胞を含むワクチン/医薬組成物も提供する。
上記ワクチン/医薬組成物は、予防または治療のために用いることができる。加えて、本発明のワクチン/医薬組成物は、例えば、癌治療において併用療法に用いてもよいし、本発明のワクチン/医薬組成物を通常の化学療法薬と併用してもよい。
ワクチンは、溶液または懸濁液のいずれかの形態で注射可能に調製してもよいし;また、注射の前に、溶液、懸濁液、液体に導入するのに適した固体形態を調製してもよい。調製物を乳化させたり、タンパク質をリポソームに包膜したりしてもよい。活性免疫原性成分は、薬学的に許容されるもので、しかも活性成分と適合性である賦形剤と混合することが多い。好適な賦形剤として、例えば、水、塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびに、これらの組合せが挙げられる。
加えて、所望であれば、少量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの効果を高めるアジュバントをワクチンに含有させてもよい。有効と考えられるアジュバントの例として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11637、ノル-MDPと呼ばれる)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、MTP-PEと呼ばれる)、ならびにRIBI(2%スクアレン/Teewn80乳濁液中に細菌由来の3つの成分、モノフォスロリル脂質A、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含む)。
アジュバントおよびその他の薬剤のさらに別の例を以下に挙げる:水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水乳剤、水中油乳剤、ムラミルジペプチド、細菌内毒素、脂質X、コリネバクテリウム・パルブム(座瘡(ざそう)プロピオンバクテリウム)、百日咳菌、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リソレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム、レバミソール、DEAE-デキストラン、ブロックコポリマー、生分解性微小球体、免疫刺激性複合体(ISCOM)またはその他の合成アジュバント。このようなアジュバントは、様々な供給源から市販されており、例えば、メルクアジュバント(Merck Adjuvant)65(Merck and Company, Inc., ニュージャージー州ラーウェイ)またはフロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories、ミシガン州デトロイト)などが挙げられる。
典型的には、アンフィゲン(Amphigen)(水中油形)、アルハイドロゲル(Alhydrogel)(水酸化アルミニウム)、または両者の混合物を用いる。ヒトへの使用には、水酸化アルミニウムだけが認可されている。
免疫原とアジュバントの比率は、両者が有効量存在する限り、変動しうる。例えば、水酸化アルミニウムは、ワクチン混合物(Al2O3ベース)の約0.5%の量で存在することができる。最終濃度が0.2〜200μg/ml、好ましくは5〜50μg/ml、最も好ましくは15μg/mlの範囲の免疫原を含むように、ワクチンを製剤化するのが好都合である。
製剤化後、ワクチンを滅菌容器に導入してから、密封し、低温、例えば、4℃で貯蔵するか、凍結乾燥してもよい。凍結乾燥により、安定した形態で長期貯蔵が可能になる。
ワクチンは、経口、静脈内(水溶性の場合)、筋内、皮下、鼻内、皮内もしくは座薬経路または移植(例えば、徐放性分子を用いて)などの好都合な方法で投与することができる。
ワクチンは通常、注射により、例えば、皮下または筋内経路で、非経口的に投与される。これ以外の投与方法に適した別の製剤として、座薬、および場合によっては経口製剤がある。座薬の場合、伝統的結合剤および担体として、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられ;このような座薬は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲の活性成分を含む混合物から形成することができる。経口製剤には、通常用いられている賦形剤、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、カルボン酸マグネシウムなどが含まれる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、持続的放出製剤または粉末の形態をしており、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の活性成分を含む。ワクチン組成物を凍結乾燥する場合には、投与前に、例えば、懸濁液として凍結乾燥物質を再構成してもよい。再構成はバッファー中で実施するのが好ましい。
患者への経口投与のためのカプセル、錠剤および丸薬には、例えば、オイドラギット(Eudragit)”S”、 オイドラギット(Eudragit)”L”、酢酸セルロース、フタル酸酢酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶性コーティングを施してもよい。
5T4ペプチドは中性または塩形態のワクチンに製剤化してもよい。薬学的に許容される塩として、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基で形成されるもの)、ならびに、例えば、塩酸またはリン酸のような無機酸、あるいは、酢酸、シュウ酸、酒石酸およびマレイン酸のような有機酸で形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは第二鉄などの無機塩基、ならびに、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインなどの有機塩基から得られるものでもよい。
5T4ペプチドは、抗原提示細胞およびT細胞の表面に発現した受容体−リガンド対同士の相互作用に関与する分子などの共刺激分子と一緒に投与してもよい。このような共刺激分子は、タンパク質分子、またはタンパク質分子をコードする対応核酸の投与により投与することができる。好適な共刺激分子として、以下のものが挙げられる:CD40、B7-1、B7-2、CD54、ICAMファミリー(例:ICAM-1、-2、または-3)、CD58、SLAMリガンド、熱安定抗原に結合するポリペプチド、TNF受容体ファミリーのメンバー(例:4-1BBL、TRAF-1、TRAF-2、TRAF-3、OX40L、TRAF-5、CD70)に結合するポリペプチド、およびCD154。ペプチドは、以下に挙げる刺激ケモカインまたはサイトカインと一緒に投与してもよい:例えば、IL-2、IL-3、IL-4、SCF、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-16、IL-18、G-CSF、IL-1α、IL-11、MIP-11、LIF、c-キットリガンド、トロンボポエチンおよびflt3リガンド、TNF-α、ならびにIFN-αまたはIFN-γのようなインターフェロン。ケモカインは、ペプチド(例えば、CCL3またはCCL5)と併用してもよく、本発明のペプチドと融合させてもよい(例:CXCL10およびCCL7)。ペプチドをコードする核酸の投与によりペプチドを投与する場合には、共刺激分子をコードする対応核酸の投与によって共刺激分子を投与してもよい。
また、抑制または負の調節免疫機構を抑制すれば、免疫応答の増強が起こりうることも知られている。例えば、抗CTLA-4、抗CD25、抗CD4、融合タンパク質IL13Ta2-Fc、ならびにこれらの組合せ(例えば、抗CTLA-4と抗CD25)で治療すると、抗腫瘍免疫応答をアップレギュレートすることがわかっており、本発明のペプチドと併用するのに好適であろう。調節T細胞(Treg)インヒビターONTAK(IL-2ジフテリア毒素コンジュゲートDAB389IL2)は、ワクチン媒介抗腫瘍を増強することが明らかにされていることから、Tregのインヒビターもペプチドと一緒に用いるのに好適である。
異種ワクチン接種計画
本発明のワクチン/医薬組成物の投与計画は、通常の効力試験により決定することができる。しかし、連続的な初回免疫と追加免疫ステップを含む計画が特に好ましい。このような計画により、免疫寛容の優れた解消およびT細胞応答の誘導が達成されている(Schneiderら、1998 Nat Med 4:397-402)。
初回免疫−追加免疫計画は同種(この場合、後の投薬時にも同じ組成物を投与する)または異種(初回および追加免疫組成物が異なる)のいずれであってもよい。例えば、初回免疫組成物は、5T4抗原をコードする非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)で、追加免疫組成物は、5T4抗原をコードするウイルスベクター(例えば、ポックスウイルスベクター)でもよく、その際、上記「5T4抗原」のいずれかまたは両方が本発明のエピトープまたはポリエピトープストリングである。あるいは、初回免疫組成物は、1種類のウイルスから誘導したウイルスベクターであるのに対し、追加免疫組成物が、別の種類のウイルスから誘導したウイルスベクターであってもよい。
併用療法
このように、本発明は本発明のワクチンの連続的使用にも関する。従って、本発明はさらに、腫瘍の治療を目的として個別に、同時かつ個別に(simultaneous separate)、もしくは組み合わせて使用する、本発明のペプチド、または本発明のペプチドをコードするベクター、および化学療法化合物に関する。好適な化学療法薬としては、化学療法に用いられる標準的化合物、例えば、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、挿入剤、タキサン、アントラサイクリン、トポイソメラーゼインヒビター(イリノテカンなど)、ならびに白金含有化合物(オキサリプラチンおよびカルボプラチンなど)および高用量IL2などが挙げられる。
本発明はさらに、腫瘍の治療において個別に、同時かつ個別に、もしくは併用して用いる本発明のペプチド、または本発明のペプチドをコードするベクターおよびキナーゼインヒビターに関する。好適なキナーゼインヒビターとしては、抗腫瘍活性を有することがわかっているもの(例えば、ゲフィチニブ(Iressa)およびエルロチニブ(Tarceva))が挙げられ、これらはペプチドと併用することができる。受容体チロシンキナーゼインヒビター(例えば、腎細胞癌の治療に有効であることが証明されているマレイン酸スニチニブおよびソラフェニブ)も、併用するのに適している。
診断方法
本発明はまた、本発明のペプチド、および/またはこのようなペプチドをコードする核酸に特異的に結合することができる剤(agent)も提供する。
剤は、該剤の、本発明のペプチド核酸配列に対する結合と、別のペプチド/核酸配列に対する結合の間に、10倍以上の差、好ましくは25、50または100倍の差があれば、本発明のペプチド/核酸配列に「特異的に結合する」とみなす。
上記剤は、ペプチドおよび/または核酸配列に特異的に結合することができるあらゆる化合物でよい。用語「化合物」は、化学化合物(天然に存在する、または合成したもの)、例えば、生物学的高分子(例:核酸、タンパク質、非ペプチド、または有機分子)、あるいは、生物材料、例えば、細菌、植物、菌類、または動物(特に哺乳動物)細胞もしくは組織から作製した抽出物、あるいはまた無機元素または分子を意味する。
好ましくは、前記剤は、候補化合物のライブラリーをスクリーニングすることにより同定が可能である。化合物のライブラリーは、多ウェルプレート(例えば、96ウェルプレート)において、各ウェルに様々な試験化合物を入れて、スクリーニングすることができる。特に、候補化合物のライブラリーは、コンビナトリアルライブラリーでよい。ランダム配列オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、または合成オリゴマーの多様なコンビナトリアルライブラリーが提案されており、多数の小分子ライブラリーも作製されている。オリゴマーのコンビナトリアルライブラリーは、様々な溶液相または固相方法により形成することができ、その際、様々なサブユニットの混合物を段階的に添加することにより、所望のオリゴマーサイズ(典型的には、ヘキサペプチドまたはヘプタペプチド)に達するまで、オリゴマーまたは親化合物を成長させる。複雑度を増したライブラリーはこの方法で、例えば、各追加サブユニットステップと共に、複数の試薬選択候補をプールすることにより、形成することができる。あるいは、ライブラリーは、固相合成方法により形成することができ、該方法では、ライブラリーを形成する様々な配列のオリゴマーを含むビーズを交互に混合および分離するが、その際、各々のステップで、分離したビーズの各群に、選択した複数のサブユニットの1つを添加する。コンビナトリアルライブラリーを含むライブラリーは、製薬会社およびライブラリー専門供給者から市販されている。
前記剤が本発明の核酸を認識する場合には、該剤はアンチセンス配列を含んでいてもよい。
前記剤が本発明のペプチドを認識する場合には、該剤は、ペプチド結合溝を有するMHC分子またはその一部を含んでいてもよい。あるいは、前記剤は抗ペプチド抗体を含んでもよい。
本明細書で用いる「抗体」とは、全免疫グロブリン分子もしくはその一部、あるいはバイオイソスター(bioisostere)またはその擬似物もしくはその誘導体、またはこれらの組合せを包含する。その一部の例として、Fab、F(ab)’2およびFvが挙げられる。バイオイソスターの例として、一本鎖Fv(ScFv)フラグメント、キメラ抗体、二価抗体が挙げられる。
用語「擬似物」は、ペプチド、ポリペプチド、抗体でありうるいずれかの化学物質、または抗体と同じ結合特異性を有する他の有機化学物質に関する。
本明細書で、抗体に関して用いる用語「誘導体」とは抗体の化学改変を含む。このような改変の例として、アルキル、アシル、またはアミノ基による水素の置換が挙げられる。
全免疫グロブリン分子は、2つの領域:抗原と相互作用する結合(Fb)ドメインと、食作用のようなプロセスの開始をシグナルで知らせるエフェクター(Fc)ドメインに分けることができる。各抗体分子は、2つのクラスのポリペプチド鎖、すなわち軽(L)鎖と重(H)鎖からなる。単一抗体は、L鎖の2つの同じコピーと、2つのH細胞を有する。各鎖のN末端ドメインは、可変領域を形成し、この領域が抗原結合部位となる。C末端ドメインは、定常領域と呼ばれる。H(VH)およびL(VL)鎖の可変領域は、Fv単位を構成し、密接に相互作用して、一本鎖Fv(ScFv)単位を形成することができる。ほとんどのH鎖には、ヒンジ領域が存在する。このヒンジ領域は可変性であるため、Fab結合領域は残りの分子に対して自由に移動することができる。ヒンジ領域はまた、プロテアーゼの作用を最も受けやすい分子上の場所であり、プロテアーゼは、抗体を抗原結合部位(Fab)とエフェクター(Fc)領域に分断することができる。
抗体分子のドメイン構造は、タンパク質作製に都合がよく、抗原結合活性(FabおよびFv)またはエフェクター機能(Fc)を有する機能的ドメインの分子同士の交換を促進する。また、抗体の構造によって、毒素、リンパ球または増殖因子のような分子と結合した、抗原認識能力を有する抗体の生産が容易になる。
キメラ抗体技術は、ヒト抗体定常ドメインへの全マウス抗体可変ドメインの移植を含むものである。キメラ抗体は、マウス抗体より免疫原性が低いが、これらは、その抗体特異性を保持し、低いHAMA応答を提示する。
キメラ抗体では、可変領域は完全にマウスのままである。しかし、抗体の構造により、主にヒトに由来する同等特異性の可変領域を作製することができる。抗体の抗原結合部位は、重および軽鎖の可変部分の6つの相補性決定領域(CDR)から形成される。各抗体ドメインは、β鎖をつなぐループでβバレルを形成する7つの逆平行βシートから構成される。ループ同士の間にCDR領域がある。CDRおよびその関連特異性を1つのスカフォールディングβバレルから別のものへと移すことは実現可能である。これはCDR移植と呼ばれている。CDR移植抗体は、早期臨床試験で、マウスまたはキメラ抗体ほど強い免疫原性ではないことがわかっている。さらに、いわゆるヒト化抗体と同様に、CDRの外側に突然変異を実施して、その結合活性を高めることもできる。
ポリペプチドリンカーにより結合したVHおよびVLを有するFab、Fvおよび一本鎖Fv(ScFv)フラグメントは、本来のモノクローナル抗体と類似した、抗体に対する特異性およびアフィニティーを呈示する。ScFv融合タンパク質は、アミノまたはカルボキシ末端のいずれかに結合した非抗体分子と一緒に作製することができる。これらの分子では、適切な抗原を発現する細胞に対する該結合分子の特異的ターゲッティングのために、Fvを用いることができる。また、一本鎖抗体鎖に2つの異なる特異性を賦与することにより、二価抗体を作製することもできる。二価Fab、FvおよびScFv抗体は、CDR移植またはヒト化ドメインのような作製ドメインを含んでいてもよい。
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を同定、特性決定、クローニング、生産および操作するための方法は、十分に確立されており、例えば、マウスまたはトランスジェニックマウス由来のハイブリドーマ、ファージ展示ライブラリーまたはscFvライブラリーを用いたものなどがある。遺伝子コード免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子を様々な異種発現系に発現させることができる。免疫グロブリンなどの大きなグリコシル化タンパク質は、真核生物細胞、特に哺乳動物から効率的に分泌および集合させる。Fab、FvまたはScFvフラグメントのような小さな非グリコシル化フラグメントは、哺乳動物細胞または細菌細胞において機能的形態で生産させることができる。
上記剤は、本発明のペプチド/核酸だけを、または別の化合物と一緒に認識しうる。例えば、上記剤は、MHC分子により提示されるとき、ペプチドに特異的に結合することができる。この場合、本発明の剤は、T細胞受容体(TCR)分子またはその一部を含有してもよい。TCRは、スクリーニングまたは治療用途に有用である。
一本鎖TCRは、単一アミノ酸鎖を含む人工構築物であり、これは、天然ヘテロ二量体TCRと同様に、MHC−ペプチド複合体と結合する。WO2004/033685には、単一アミノ酸鎖の残基間のジスルフィド結合の存在(これは分子の安定性に寄与する)を特徴とするα/β類似体一本鎖TCRのクラスが記載されている。WO99/60119には、複数のTCR結合部位と増強された親和性(avidity)を有する合成多価TCR複合体が記載されている。
TCRは、CD4(MHCクラスIIエピトープの場合)またはCD8(MHCクラスIエピトープの場合)のような別の分子と結合させてもよい。これに代わり、または加えて、受容体をCD3と結合させてもよい。
また、キメラ免疫受容体(CIR)を表面に発現させるようにT細胞を操作することも可能であり、該受容体は、腫瘍抗原認識機能と、T細胞シグナル伝達機能(TCRのζ鎖など)を含む。抗体ベースおよびTCRベースのキメラCIRが報告されている。このように、5T4または本発明のペプチドのような腫瘍抗原を認識するモノクローナル抗体またはTCRを用いて、抗腫瘍効力が増強された上記のような操作T細胞を作製することができる。
前記剤がヒトの身体に天然に存在する場合には、本発明の剤は実質的に単離された形態をしている。
本発明はまた、被験者における本発明のペプチド、核酸または剤の存在を検出するステップを含む方法も提供する。
好ましい実施形態では、本方法を用いて、MHC分子と結合した本発明のペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞の存在を検出する。
診断方法は、例えば、被験者における疾患の進行をモニタリングする、または免疫応答の進行をモニタリングするためのものである。
前述のように、免疫応答が進行するに従い、特定のエピトープの優性が変化し、サブドミネントエピトープが優勢になる可能性がある。従って、特定のエピトープ、またはこのようなエピトープを認識することができるTCR/T細胞の存在を検出することにより、免疫応答の進行に関する情報を取得することができる。
本方法はin vivoで実施してもよく、さらに好ましくはex vivoサンプルについて実施する。
従って、本発明は、
(i)被験者からサンプルを単離するステップと;
(ii)ex vivoでサンプルにおいて、MHC分子と結合した本発明のペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞の存在を検出するステップ
を含む診断方法も提供する。
好ましい実施形態では、本方法は、癌性疾患の進行を診断またはモニタリングするためのものである。
本方法の性質は、本発明のペプチド、核酸または剤(剤の場合、その種類)のいずれを検出しようとするかに応じて変わってくる。
本発明のペプチドを検出するためには、本発明の剤(例えば、抗体またはMHC分子)を用いることができる。抗体を用いたクリーニング方法(例えば、ELISA、免疫ブロッティング、ウエスタンブロッティング、競合的アッセイ、二部位捕捉アッセイ)が当分野では周知である。
ペプチドまたは特定のT細胞を検出するためには、抗原提示アッセイを用いることができる。T細胞がMHC:ペプチド複合体を首尾よく認識すると、これは刺激される。この刺激は、T細胞の増殖により(例えば、3Hの取込みにより)、および/またはT細胞によるサイトカインの産生により(例えば、ELIPOTアッセイにより)モニタリングすることができる。従って、適切なAPCとT細胞系を用いることにより、特定のペプチドの存在を検出することができ、また、適切なAPCとペプチド/抗原を用いることにより、特定のT細胞の存在を検出することができる。
特定の細胞表面分子(例えば、TCRまたはMHC分子)の存在は、蛍光活性化細胞スキャニング(FACS)を用いて、検査することができる。
本方法が核酸の存在の検出を目的とする場合には、PCR、サザンブロッティング(DNAの場合)およびノーザンブロッティング(RNAの場合)など多数の方法が当分野において周知である。
抗体
本発明はさらに、抗体を誘発するための本発明のペプチドの使用、ならびに治療方法における抗体の使用に関する。このような治療方法として、例えば、5T4発現細胞の抗体ターゲッティングによる、例えば、放射標識などの治療用毒素の送達が挙げられる。
T細胞
本発明はまた、MHC分子と結合した本発明のペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞、例えば、T細胞クローン、または細胞系にも関する。T細胞系およびクローンを作製する複数の方法が当分野において周知である。T細胞系を作製する一方法は次の通りである:
マウスを抗原で初回免疫し(通常、後足に皮下投与)、1週間後、所属リンパ節(この場合、膝窩および鼠径部)を取出し、抗原および同系フィーダー細胞、すなわち同じ近交系のマウス由来の細胞(例えば、正常な胸腺細胞または脾細胞)との共培養に導入する。4日後、リンパ芽球を単離し、IL-2で誘導することにより増殖させる。細胞の集団が十分に成長したら、リンパ球形質転換試験でこれら細胞を抗原およびMHC特異性について確認し、抗原処理フィーダー細胞上での培養とIL-2含有培地中での培養の交互サイクルにより維持する。
最終的T細胞系マーカーはT細胞受容体(TCR)である。現在、TCRには明確な2つのタイプがあり、そのいずれも2つのジスルフィド結合ポリペプチドのヘテロ二量体である。一方のタイプはαおよびβ鎖からなり、他方のタイプはγおよびδ鎖からなる。血液T細胞の90〜95%がα/βTCRを発現し、残る5〜10%はγ/δTCRを発現する。
T細胞は、2つの明確な集団、すなわち、CD4マーカーを担持し、主に免疫応答を「助ける」または「誘導」するサブセット(TH)と、CD8マーカーを担持し、主に細胞傷害性であるサブセット(TC)とに分類することができる。CD4+T細胞はMHCクラスII分子に結合したペプチドを認識するのに対し、CD8+T細胞はMHCクラスI分子に結合したペプチドを認識することから、CD4またはCD8の存在は、T細胞が相互作用することができる細胞型を拘束する。
CD4セットは機能面から次の2つのサブセットに細分される:
(i)T細胞およびB細胞の応答に正の影響を与える(ヘルパーT細胞機能)T細胞はCD29+である。この集団のほぼすべての細胞は、CD45白血球共通抗原の低分子量イソ型(CD45ROと称する)も発現する。
(ii)CD8+細胞のサプレッサー/細胞傷害機能を誘導する細胞(サプレッサー/インデュサー機能)は、異なる型のCD45分子(CD45RA)を発現する。
機能的多様性は、サイトカイン分泌パターンについてのTHクローンの機能分析によっても明らかにされている。CD4+T細胞のTH1サブセットはIL-2およびIFN-γを分泌するのに対し、TH2サブセットはIL-4、IL-5、IL-6およびIL-10を産生する。TH1細胞は、細胞傷害性と局所炎症反応に関連する複数の機能を媒介する。その結果、これらの細胞は、ウイルス、細菌および寄生体などの細胞内病原体に対抗する上で重要である。TH2細胞は、B細胞を刺激して、抗体を増殖および産生する上で、従って、正常の免疫応答において遊離−生存生物から防御する上で、より有効である。
前記マーカーのすべての発現は、特定の抗体を用いて容易に検出することができるため、T細胞のタイプはFACSを用いて選択/決定することができる。また、ELISPOTアッセイのような当分野で周知の方法により、特定のサイトカインの発現を検出することもできる。
予防/治療方法
本発明はまた、疾患の予防および/または治療に用いる医薬の製造における本発明のワクチンの使用も提供する。
また、有効な量の本発明のワクチンを投与するステップを含む、被験者の疾患を治療および/または予防する方法も提供される。
ワクチンの投与により、被験者の免疫応答を誘発することができる。好ましい実施形態では、ワクチンの投与により、被験者の5T4に対する免疫寛容を破壊する。
ペプチドがクラスIエピトープの場合、誘発される免疫応答は、5T4特異的細胞傷害性Tリンパ球の活性化を含むこともある。ペプチドがクラスIIエピトープの場合、誘発される免疫応答は、TH1および/またはTH2細胞の活性化を含みうる。
有利なことに、応答は、被験者の腫瘍の発生を阻害、停止または逆転するのに有効な抗腫瘍免疫療法的応答である。
ターゲッティング分子
本発明はさらに、抗5T4抗体(例えば、抗5T4 scFv)のような5T4ターゲッティング分子の使用に関する。これらの抗体は、(i)天然または外因性5T4をin situでターゲッティングする、および/または(ii)B7.1のような免疫エンハンサー分子を天然または外因性5T4にin situで送達するのに用いることができる(Carrollら、(1998) J Natl Cancer Inst 90(24):1881-7)。これにより、被験者の5T4の免疫原性が増強する。
HLAクラスI拘束エピトープを用いた臨床試験により、このようなペプチドは安全に送達されて、T細胞応答を生み出すことができるため、臨床上有益でありうることが明らかにされている(Jagerら、PNAS (2000), 97, 10917-10922)。しかし、ワクチンの効力を最大にするためには、幅広い範囲のHLAクラスIおよびIIエピトープに対する免疫応答が必要である。実際、同じ抗原からの既知クラスIエピトープと一緒に投与された腫瘍抗原Her-2/neu由来のクラスIIヘルパーT細胞エピトープを用いたところ、クラスIエピトープだけを送達した場合より、強く、しかも長く持続する免疫応答が得られた(Knutsonら、J. Clin. Invest (2001) 107;477-484)。このように、本発明のクラスIIエピトープを5T4由来のクラスIエピトープと一緒に用いることができる。
従って、本発明はまた、本発明のワクチンと抗5T4抗体(例えば、抗5T4 scFv)の連続的使用にも関する。抗5T4 scFv抗体は、抗体をコードするネイキッドDNAとして(例えば、その産生を制御する短いプロモーター領域と一緒にコードDNAを含むプラスミドにおいて)、コード配列を含む発現ベクター(ウイルスまたは非ウイルスのいずれでもよい)において、またはタンパク質形態のいずれで投与してもよい。従って、本発明は、腫瘍の治療に個別に、例えば、連続的に使用するための、5T4 ペプチド抗原をコードするベクターと、5T4に結合することができる剤(これは随意に免疫刺激分子と融合させてもよい)を提供する。
別の実施形態では、本発明は、酵素/プロドラッグ療法と、5T4を用いた免疫療法とを含む併用療法を包含する。例えば、酵素/プロドラッグ療法は、P450の腫瘍内または全身送達を含んでもよく、その際、随意に、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクター、およびシクロフォスファミド(CPA)を用いて送達した後、5T4による全身免疫治療誘導を実施する。
従って、本発明はさらに、腫瘍の治療に個別、同時かつ個別、または併用して用いるための、5T4 ペプチド抗原をコードするベクターおよび酵素/プロドラッグ組合せに関する。
疾患
5T4は、腫瘍関連抗原である。癌細胞上の5T4の存在は転移に関連し、多数の様々な癌における予後の独立したインジケーターであることがわかっている。
好ましい実施形態では、疾患(本発明のワクチンを用いて、予防/治療が可能な)は癌である。具体的に、上記疾患は、例えば、乳房、肺、胃、膵臓、子宮内膜、頚部、結腸直腸、腎臓または前立腺の癌でよい。
WO89/07947には、抗5T4モノクローナル抗体(表IIおよびVI)を用いた、腫瘍組織の免疫組織化学的スクリーニングが記載されている。好ましくは、疾患は、診断試験(例えば、抗5T4抗体を用いて)により5T4陽性であることを証明できる癌であり、例えば、以下のものが挙げられる:ファーター膨大部(Ampulla of Vater)の侵襲性癌、乳房、結腸、子宮内膜、膵臓、または胃、膀胱(例えば、膀胱の扁平上皮癌)、頚部、肺または食道の癌[kh1];結腸癌(例えば、結腸の管状絨毛腺腫;子宮内膜癌(例えば、子宮内膜の悪性混合型ミュラー(Mullerian)腫瘍);腎臓癌(例えば、腎臓の明細胞癌);肺癌(例えば、未分化大細胞、巨大細胞癌、肺胞癌、転移性平滑筋肉腫などの肺癌);卵巣癌(例えば、ブレンナー腫、嚢胞腺癌、充実性奇形腫などの卵巣癌);精巣の癌(例えば、セミノーマ、成熟嚢胞性奇形腫);軟組織繊維肉腫;奇形腫(例えば、未分化胚細胞腫瘍);または栄養芽層癌(絨毛癌(例:子宮、肺または脳の))、胎盤部位の腫瘍(胞状奇胎)。
MHC多量体
本発明はまた、MHC多量体(例えば四量体および五量体)と結合した(例えば、それらとともにフォールディングされた)5T4 ペプチドエピトープ、ならびにその使用を提供する。
四量体は、抗原特異的T細胞の直接視覚化を可能にする蛍光試薬である(Altmanら、(1996)Science 271, 94-96)。これらは、HLAクラスIタンパク質と一緒に再フォールディングされた個々のペプチドエピトープからなり、特定のエピトープに特異的なT細胞に結合する。上記四量体は、抗原特異的リンパ球の直接定量を可能にし、ヒトおよびマウス免疫学に広く適用されている。
四量体は、Altmanら(1996)Science 271, 94-96に記載されている方法を用いて作製することができる。手短には、ビオチニル化タンパク質をストレプトアビジンPEに4:1の比で付加することにより、四量体を作製することができる。四量体結合細胞は、磁気活性化細胞ソーティング(MACS)を用いて選択することができる。MACSは、Radbruchら(1994)Methods in Cell Biology 42, 387-403に記載されている。
四量体を用いることにより、ワクチン接種前、中および後の5T4特異的免疫応答の追跡が可能になり;個々の患者由来のオートロガスCD4+T細胞を精製し、これらを再注入のためにex vivoで増殖/操作することができ;例えば、直腸結腸およびその他の5T4陽性癌に罹患しやすい被検出者における診断インジケーターとして上記四量体を用いることができる。従って、本発明はまた、ワクチン接種前、中および後の5T4特異的免疫応答をモニタリングするための5T4 ペプチドエピトープ四量体の使用に関する。本発明はさらに、個々の患者由来のオートロガスCD4+T細胞の精製のための5T4 ペプチドエピトープ四量体の使用に関する。本発明はさらにまた、直腸結腸癌のような5T4陽性癌に罹患しやすい被検出者における診断インジケーターとしての5T4 ペプチドエピトープ四量体の使用にも関する。
クラスII四量体については、例えば、Novak, EJら、1999 J. Clin. Invest 104:R63-R67に記載されている。
五量体
本発明はまた、五量体と結合した5T4 ペプチドエピトープ、ならびにその使用も提供する。
五量体は四量体と類似しているが、5つの再フォールディングされたペプチドエピトープを含む。好適な五量体として、Pro5(商標)MHC五量体が挙げられるが、これは、自己集合コイルドコイルドメインにより多量体化された、5つのMHC-ペプチド複合体を含む。5つのMHC-ペプチド複合体はすべて、花束のように、同じ方向に向けて保持される。従って、Pro5[RH2](商標)MHC五量体技術を用いて、5つのMHC-ペプチド複合体がすべて、T細胞受容体(TCR)との結合に利用可能であり、その結果、親和性が非常に高い相互作用が得られる。
Pro5(商標)MHC五量体はまた、5個以下の蛍光分子を含み、これにより、該複合体の蛍光強度が改善される。Pro5(商標)MHC五量体は、MHC四量体の既存の用途と十分に適合性である。これら五量体を、例えば、細胞内サイトカイン染色(例:IFNg/IL-2)および/または表面マーカー(例:CD69/CD45RO)のようなその他の技術と組み合わせて用いることにより、抗原特異的T細胞サブセットの機能的表現型の正確なプロフィールを確立することもできる。
本発明の5T4 ペプチドエピトープを含有するように、前記の好適な五量体を作製することもできる。
五量体を用いて、例えば、抗原特異的T細胞をin situで追跡することができる。例えば、Pro5(商標)MHC五量体を用いて、リンパ様器官、末梢組織および腫瘍浸潤物からの生存組織切片を染色することができる。蛍光抗CD8抗体および蛍光MHC五量体での二重染色を実施することにより、抗原特異的T細胞を同焦点顕微鏡検査により視覚化することができる(例えば、Skinner PJおよびHaase AT. (2002).In situ tetramer staining. J. Immunol. Methods 268: 29-34. [PubMedID: 12213340];Haanen JBら、(2000).In situ detection of virus- and tumor-specific T-cell immunity. Nat Med 6:1056-1060. [PubMedID:10973329]およびSkinner PJら、(2000).Cutting edge: In situ tetramer staining of antigen-specific T cells in tissues. J Immunol 165:613-617. [PubMedID:10878330]参照)。
添付の図面を参照にしながら、以下の実施例において、あくまで例示を目的として、本発明をさらに詳しく説明する。
実施例1−クラスI
本方法の概略は、含まれる段階と共に、図1に示す。
方法
ペプチド
5T4タンパク質全体にわたって7アミノ酸ずつ重複する206個の九量体は、標準的技術を用いて、JPT Technologies GmbH(Jerini)により作製および合成されたものである。
表1は、206個すべての試験ペプチドについてのデータを示す。これらのペプチドには、表示するように配列番号(SEQ ID NO)を割り当てた。
試験
使用前に、ペプチドを1×10-2MでDMSOに溶解させた。
iTopiaエピトープディスカバリーシステムを用いて、製造者の指示に従い、ペプチド結合、解離速度およびアフィニティーについて前記九量体を試験した。手短には、様々なMHC対立遺伝子を呈示するMHC分子でコーティングした96ウェルマイクロプレートを用いて、候補ペプチドを同定する。MHCクラスI対立遺伝子A*0101(A1)、A*0201(A2)、A*0301(A3)、およびB*0702(B7)を用いた。決定は、ELISAプレートリーダーを用いて二重に実施し、これには対立遺伝子特異的な正の対照も含まれる。
i)ペプチド結合−このアッセイでは、個々のペプチドが、標準化した最適結合条件下でMHC分子に結合する能力を測定する。このアッセイは、選択したMHC対立遺伝子に対しすべての試験ペプチドについて実施した。「バインダー」として同定された試験ペプチドをさらにアフィニティーおよび解離実験に関して特性決定する。
基本的結合アッセイを図2に示す。
手短に言えば、ビオチンを介して、MHCクラスI単量体をストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレートに結合させ(A)、まず、その安定化プレースホルダー(placeholder)ペプチドとβ2Mを除去した(B)後、蛍光標識した検出抗体の存在下で、試験ペプチドと新しいβ2Mで再構成する(C)。最適条件下で一定時間の結合後、過剰量の抗体を除去し、取込まれた蛍光総量を測定する(D)。
後のアッセイでの結合条件の操作により、最初のスクリーニングをパスした候補ペプチド配列の相対的結合特性をアッセイすることができ、しかも、各々について結合の全体的質の評価が可能になる。
試験ペプチドとMHC分子の結合は、最適、標準化試験条件下で、1.11×10-5Mのペプチドで実施した。試験ペプチドと同じプレート上および同じ濃度で、対照ペプチドを並行してランした。
解離速度(off-rate)アッセイ−このアッセイでは、定めた時点で、その前に結合したペプチドの解離を評価する。
手短に言えば、解離速度アッセイでは、結合を最適から準最適条件に移行させることにより、ペプチドがMHC複合体から解離する速度を決定する。その結果は、MHC複合体からのペプチドの50%解離を達成するのに要した時間量、すなわちt1/2値として表し、時間(hour)で示す。これは実質的に、MHC−ペプチド複合体の安定性を示すものであり、また、特定のMHC−ペプチド複合体が細胞表面に達し、T細胞受容体(TCR)と相互作用するのに使用できる時間の長さ、すなわち、T細胞を活性化する能力において重要であると考えられる要因に関することから、高い生体適合性を有する。このアッセイから得られた結果が、最終iScoreの大部分を占める。
iii)アフィニティーアッセイ−最初のペプチド結合アッセイで同定した候補ペプチドを、濃度を高めながら所定時間インキュベートすることにより、MHC分子の相対結合アフィニティーを決定する。アフィニティーは、50%結合を達成するのに必要なペプチドの量、すなわちED50値として表す。
手短に言えば、アフィニティーアッセイでは、低下する濃度のペプチドの結合能力を、その相対アフィニティーを決定する手段として評価し、その結果は、50%結合を達成するのに必要なペプチドの濃度、すなわちED50値として表すが、このアッセイも最終iScoreに一部寄与する。
iScore
最後に、前記アッセイから得られた結果についてマルチパラメーター分析を実施し、iScoreを生成する。iScoreは、ペプチド−MHC結合の全体的質の測度となり、結合の質の優れた順に候補ペプチドを順位付けすることができると同時に、機能的細胞追跡調査のためのペプチドの合理的な優先順位決定が可能になる。
iScoreの解釈
iTopia方法の確認の一環として、CMV pp65タンパク質由来の重複ペプチドのパネルを用いて、A*0201対立遺伝子についての結合特性を分析した。HLA A*0201によって拘束される多数のT細胞エピトープが、このタンパク質に関する他の研究者によりすでに同定されている(従来の方法で)。iTopia試験では、>0.5のiScoreが「優れた質の結合」を示し;0.25〜0.5が「中程度の質の結合」を;また<0.25が「質の低い結合」を示す。A*0201について「優れた」iScore(>0.5)をもたらした20のペプチドのうち6つは、事前に特性決定されたCMV pp65 A*0201エピトープを呈示した。「優れた」iScoreをもたらした残る14のペプチドのうち13は、ELISPOTおよび/またはCMV陽性ドナーからのPBMCを用いた四量体染色による正の応答を示したが、このことは、これらのペプチドが機能的かつ新規のCTLエピトープあることを証明している。これによって、ペプチドのiScoreにより定量したペプチドの結合特性は、機能的エピトープを正確に推定する高い確率を提供したことがわかった。
MHCクラスI対立遺伝子は各々、それらが結合するペプチドに対して様々な結合特性およびアフィニティーを有する。従って、閾値として>0.5、0.25〜0.5および<0.25を用いて、ペプチドが優れた、中程度または不良バインダーとして順位付けされた、HLA A*0201で得た情報は、対立遺伝子間で必ずしも転写可能(transferable)ではない。また、各種タンパク質は、それぞれ異なる免疫原性プロフィールを有すると思われ、ペプチドとMHCクラスI分子間のアフィニティーもタンパク質間で違ってくることになる。これは、免疫原性が外来タンパク質の場合より低いと思われる自己抗原の場合、特に当てはまると考えられる。
結果
表2は、各ペプチドの対立遺伝子による最初の結合の結果を示す。結合のレベルは各対立遺伝子に対する正の対照ペプチドの百分率として表す。対照の15%以上の値を有するペプチドを強調して示し、これらについてはアフィニティーおよび解離速度についてさらに調べた。
この最初の結合アッセイにおけるMHCクラスI対立遺伝子の各々についてスクリーニングした206個の重複九量体ペプチドから、以下の結果が得られた:
A*0101:8個のペプチドが、対照と比較して>15%の結合を示した。
A*0201:115個のペプチドが、対照と比較して>15%の結合を示した。
A*0301:19個のペプチドが、対照と比較して>15%の結合を示した。
B*0702:36個のペプチドが、対照と比較して>15%の結合を示した。
解離速度分析
最初にバインダーとして確認されたペプチドについて、それらが8時間にわたり37℃でMHC分子への結合を維持する能力に基づき、安定性を評価した。各時点で得られた値(二重反復)を正の対照の百分率として表している。GraphPad Prism(登録商標)ソフトウエアを用いて、プラトーを0に等しくした一相指数的減衰曲線を作成し、これにより、各ペプチドについてt1/2および適合度(r2により測定される)を計算した。結果を表3に示す。
アフィニティー分析
MHCに結合するペプチドの用量応答曲線をペプチド滴定により作成して、各ペプチドのED50測定値を決定する。試験(二重反復)した濃度についての値は、正の対照ペプチドの最高(9,000×)濃度の百分率として取得した。用量応答曲線は、GraphPad Prism(登録商標)曲線適合ソフトウエアを用いて作成したが、これは、各ペプチドについてED50(モル濃度)を自動的に計算した。結果を表4に示す。
マルチパラメーター分析−iScore
マルチパラメーター分析により、総和iScoreへの半減期とED50パラメーターの組込みが可能になる。これは、ペプチドが安定な複合体においてMHC分子と一緒に再構成する能力を表し、その全体的結合レベルを明確にする。すなわち、iScore値は、ペプチド−MHC結合の全体的質を示すものであり、候補ペプチドを機能的関連性のインジケーター(指標)として順位付けするのに用いられる。各対立遺伝子について主要候補エピトープを細胞機能分析のために選択し、その生物学的関連性を確認する。
図3〜5は、全試験対立遺伝子に対する全試験ペプチドについてのiScoreを視覚的にグラフで表示したものである。表5は、試験した全ペプチドから得られたiScore結果を示す。
図6は、完全なiTopiaシステムの1例を示す。
図6は、B*0702対立遺伝子に対してスクリーニングした30の5T4ペプチド(22〜52)の例を用いたiTopiaシステムの使用をグラフで示す。5つのペプチドが、最初の結合試験における正の対照ペプチドと比較して>15%結合を示し、これらを解離速度およびアフィニティーアッセイで分析した。マルチパラメーター分析を実施したところ、単一のペプチド#45が残りのものより卓越してiScoreが高かったが、これは、このペプチドに認められた低い解離速度と比較的高いアフィニティーに明らかに表れている。
表6は、この試験で得られ、対立遺伝子毎のiScoreに従い分類した結果をまとめる。
iScoreの範囲は、対立遺伝子間でかなり相違しており、A*0101について認められた最高iScoreは0.522、A*0201については1.897、A*0301については0.375、およびB*0702については1.001であった。CMV pp65タンパク質のA*0201エピトープの以前の研究でBeckmanにより割り当てられた任意閾値(>0.5=良好、0.5〜0.25=中程度、および<0.25=不良)(”Interpretaion of the iScore”、第6ページ参照)は、対立遺伝子間の変動のために前記データでの使用には適していない。
図7〜10に表示するように、iScore順位に対するiScoreのグラフを作成することにより、グラフの勾配の変化によって示される、iScoreの明瞭な集団を認めることができる。これらのシフトは、様々な結合特性を備えるペプチド群間を識別し、しかも、さらなる機能分析のための包含閾値を設定する地点を示唆するものである。図7〜10におけるグラフの勾配の変化は、さらなる機能試験のための識別の基準を形成するiScoreの集団を線引きする直線によって示される。
図7:A*0101についてのiScore順位に対するiScoreのグラフ
勾配の変化は0.06(ピンク色の直線で示す)より上で認められるが、これは、この値を超えると、ペプチドが機能分析に加えられる閾値を形成する。従って、5つのペプチドが機能分析に加えられることになる。
図8:A*0201についてのiScore順位に対するiScoreのグラフ
勾配の変化は0.285(ピンク色の直線で示す)より上で認められるが、これは、この値を超えると、ペプチドが機能分析に加えられる閾値を形成する。従って、19のペプチドが機能分析に加えられることになる。
図9:A*0301についてのiScore順位に対するiScoreのグラフ
勾配の変化は0.095(ピンク色の直線で示す)より上で認められるが、これは、この値を超えると、ペプチドが機能分析に加えられる閾値を形成する。従って、6つのペプチドが機能分析に加えられることになる。
図10:B*0702についてのiScore順位に対するiScoreのグラフ
勾配の変化は0.13(ピンク色の直線で示す)より上で認められるが、これは、この値を超えると、ペプチドが機能分析に加えられる閾値を形成する。従って、16のペプチドが機能分析に加えられることになる。
表7は、機能分析のために選択されたペプチド(図7〜10)をiScoreが高い順に示す。
ペプチドをELISpotアッセイで試験する。
ELISpotアッセイは他所に記載されている(Czerkinskyら、(1988) in "Theoretical and Technical Aspects of ELISA and Other Solid Phase Immunoassays (D.M.KemenyおよびSJ. Challacombe編) pp217-239 John Wiley & Sons、ニューヨーク)ように実施する。
ペプチドをロードした樹状細胞(DC)によるin vitro刺激を数ラウンド繰り返すことにより、健康なドナーから5T4特異的CTLを作製することができる。手短には、ドナー由来のPBMCをHLAタイピングし、HLA-A1、A2、A3またはB7陽性ドナーであるものを次の実験に用いる。サイトカインの存在下でPBMCの接着画分から作製したオートロガス樹状細胞を候補ペプチドでパルスする。次に、ペプチドでパルスしたDCと一緒にオートロガスPBMCを共培養する。新しく作製したペプチドパルスDCを用いた刺激を数ラウンド実施後、得られたバルク細胞培養物を、後述するように、ペプチド特異的細胞の存在下でELISPOTにより試験する。
あるいはまた、TroVax(登録商標)(TV)処置した患者からPBMCを回収し、試験ペプチドでインテロゲート(interrogate)する。手短には、Histopaque-1077での分離により事前に取得し、凍結しておいたPBMCを一晩解凍および回収した後、インターフェロン捕捉抗体で被覆したPVDF 96ウェルの1ウェル当たり2×105細胞の濃度で平板培養する。ペプチドをプール毎または個別に、ペプチド当たり最終濃度5μg/mlで各ウェルに添加する。DMSOおよびPHAを含むウェルは、それぞれ負および正の対照として役立つ。また、正の対照として、CEFペプチド(CD8+T細胞からのIFN-γの放出を刺激する、ヒトサイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルスおよびインフルエンザウイルス由来の23T細胞エピトープのプール)を含有させてもよい。O/Nインキュベーション後、プレートをPBS-Tweenで洗浄し、第2ステップ抗体を添加した後、第3ステップ酵素および色素原基質を添加する。自動ELISPOTプレートリーダーによりスポットの数を計数する。
適切なペプチド(すなわち、応答する患者が共有するHLA分子に結合することがわかっているペプチド)に対する既知HLAタイプの患者からの正のIFNγELISPOT応答により、該ペプチドをCTLエピトープとして確認する。さらに、特定の対立遺伝子によるエピトープの提示を妨害することができる抗体を用いて、対立遺伝子制限を証明することもできる。
十量体実験
表1に挙げた九量体に対応するが、以下に記載するように、そのカルボキシ末端に別のアミノ酸を含む十量体を試験することにより、ペプチドプールで観察された細胞応答を引き起こす個々のペプチドエピトープを同定した。
Trovax(登録商標)と共に化学治療薬であるイリノテカンおよび5FUで処置した患者TV2-018(Trovax(登録商標)第2相臨床試験TV2からの)は、次のHLAタイプ:A2、A3、B44、B60、Cw3、Cw5を有することがわかっている。
TV2臨床試験計画は、6回のTrovax(登録商標)ワクチン接種と、12サイクルの化学療法を含む。化学療法の終了はXと称し、これに続く時点をX+nと称するが、ここで、nは、化学療法の終了後経過した週数である。
IFNγELISPOTを用いたこの患者の免疫モニタリングにより、多数の十量体ペプチドプール、すなわち、プール#5、#20、および#1に対する強いex-vivo応答を確認した。
使用した抗原および試薬は以下の通りである:
・PHA(植物性赤血球凝集素−非特異的な正の対照として用いる)
・CEF(ヒトサイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルスおよびインフルエンザウイルスに由来する5つのT細胞エピトープのプール−正の対照として用いる)
・MVA(改変ワクシニアアンカラ)
・十量体ペプチドプール#1(十量体ペプチド1〜10を含む)
・十量体ペプチド#1(MPGGCSRGPA)
・十量体ペプチド#2(GGCSRGPAAG)
・十量体ペプチド#3(CSRGPAAGDG)
・十量体ペプチド#4(RGPAAGDGRL)
・十量体ペプチド#5(PAAGDGRLRL)
・十量体ペプチド#6(AGDGRLRLAR)
・十量体ペプチド#7(DGRLRLARLA)
・十量体ペプチド#8(RLRLARLALV)
・十量体ペプチド#9(RLARLALVLL)
・十量体ペプチド#10(ARLALVLLGW)
・十量体ペプチドプール#5(十量体ペプチド41〜50を含む)
・十量体ペプチド#41(NLTEVPTDLP)
・十量体ペプチド#42(TEVPTDLPAY)
・十量体ペプチド#43(VPTDLPAYVR)
・十量体ペプチド#44(TDLPAYVRNL)
・十量体ペプチド#45(LPAYVRNLFL)
・十量体ペプチド#46(AYVRNLFLTG)
・十量体ペプチド#47(VRNLFLTGNQ)
・十量体ペプチド#48(NLFLTGNQLA)
・十量体ペプチド#49(FLTGNQLAVL)
・十量体ペプチド#50(TGNQLAVLPA)
・十量体ペプチドプール#20(十量体ペプチド191〜200を含む)
・十量体ペプチド#191(IKKWMHNIRD)
・十量体ペプチド#192(KWMHNIRDAC)
・十量体ペプチド#193(MHNIRDACRD)
・十量体ペプチド#194(NIRDACRDHM)
・十量体ペプチド#195(RDACRDHMEG)
・十量体ペプチド#196(ACRDHMEGYH)
・十量体ペプチド#197(RDHMEGYHYR)
・十量体ペプチド#198(HMEGYHYRYE)
・十量体ペプチド#199(EGYHYRYEIN)
・十量体ペプチド#200(YHYRYEINAD)
ELISPOTは、前文に詳述した方法および文献に従い実施した。
結果
図11は、X+6wk(左)およびX+10wk(右)で個別ペプチドとして再試験したクラス1ペプチドプール1を示す。
図11のELISPOTから、どの細胞およびどの抗原ウェルにおいても低バックグラウンドはないことが認められ、これは、非特異的応答細胞がほとんどないこと、また、CEFとMVAがIFNγ応答を誘発したことを証明している。ペプチドプール1(十量体ペプチド1〜10を含む)は、両時点で応答を発生し、プール1のペプチドを個別に試験すると、ペプチド8(RLRLARLALV)および9(RLARLALVLL)に対する応答があるのが明らかである。
図12は、X+6wk(左)およびX+10wk(右)で個別ペプチドとして再試験したクラス1ペプチドプール5を示す。
図12のELISPOTから、どの細胞およびどの抗原ウェルにおいても低バックグラウンドはないことが認められ、これは、非特異的応答細胞がほとんどないこと、また、CEFとMVAがIFNγ応答を誘発したことを証明している。ペプチドプール5(十量体ペプチド41〜50を含む)は、両時点で応答を発生し、プール5のペプチドを個別に試験すると、ペプチド49(FLTGNQLAVL)に対する応答があるのが明らかである。
図13は、X+6wk(左)およびX+10wk(右)で個別ペプチドとして再試験したクラス1ペプチドプール20を示す(wk: weeks(週))。
図13のELISPOTから、どの細胞およびどの抗原ウェルにおいても低バックグラウンドはないことが認められ、これは、非特異的応答細胞がほとんどないこと、また、CEFとMVAがIFNγ応答を誘発したことを証明している。ペプチドプール20(十量体ペプチド191〜200を含む)は、すでに観察されたように両時点で応答を発生し、プール20のペプチドを個別に試験すると、ペプチド194(NIRDACRDHM)に対する応答があるのが明らかである。このペプチドのHLA対立遺伝子拘束は明確にされていないが、該患者により発現されたHLA対立遺伝子、すなわちHLA A2、A3、B44、B60、Cw3もしくはCw5のうちの少なくとも1つによって拘束されているに相違ない。
考察:
以上の結果から、5T4十量体ペプチド8、9、49および194が、Trovax(登録商標)で免疫した個体由来のPBMCにおいてex vivoでINFγ応答を誘導できることは明らかである。この患者のHLAタイプは、A2、A3、B44、B60、Cw3、Cw5であることから、これらの応答はこの患者におけるこれら対立遺伝子の1つに拘束されるはずである。十量体ペプチドと同じだが、単一のカルボキシ末端アミノ酸残基の分だけ短い九量体ペプチド9および49は、iTopiaエピトープディスカバリーシステムを用いて、推定HLA-A2エピトープとして同定された(ペプチド9は第4位、ペプチド49は第6位に順位付けられた)。ペプチド018はA2 HLAタイプを有するため、これらペプチドに対する応答は、HLA A2媒介の提示を介して起こる可能性があるが、これは確認する必要がある。
九量体実験
上記の実験でIFNγ生産を刺激することがわかった個々の十量体ペプチドのいくつかは、九量体ペプチドとして応答を刺激することも可能であることを確認するために、下記のペプチドを試験した:
抗原および試薬:
・A2阻止抗体クローンBB7.2 Serotec(カタログ番号:MCA2090XZ)
・MVA(改変ワクシニアアンカラ)
・十量体ペプチドプール#1(十量体ペプチド1〜10を含む)
・十量体ペプチド#1(MPGGCSRGPA)
・十量体ペプチド#8(RLRLARLALV)
・十量体ペプチド#9(RLARLALVLL)
・十量体ペプチド#10(ARLALVLLGW)
・九量体ペプチドプール#1(九量体ペプチド1〜10を含む)
・九量体ペプチド#1(MPGGCSRGP)
・九量体ペプチド#8(RLRLARLAL)
・九量体ペプチド#9(RLARLALVL)
・九量体ペプチド#10(ARLALVLLG)
・十量体ペプチドプール#5(十量体ペプチド41〜50を含む)
・十量体ペプチド#41(NLTEVPTDLP)
・十量体ペプチド#48(NLFLTGNQLA)
・十量体ペプチド#49(FLTGNQLAVL)
・十量体ペプチド#50(TGNQLAVLPA)
・九量体ペプチドプール#5(十量体ペプチド41〜50を含む)
・九量体ペプチド#41(NLTEVPTDL)
・九量体ペプチド#48(NLFLTGNQL)
・九量体ペプチド#49(FLTGNQLAV)
・九量体ペプチド#50(TGNQLAVLP)
前文に詳述した手順および文献に従いELISPOTを実施した。A2阻止抗体(クローンBB7.2)は、細胞傷害性T細胞アッセイにおける応答のA2拘束を証明するために過去に用いられたが、このアッセイでは、特定のペプチドエピトープがA2拘束されることを証明するために用いている。
結果および考察:
図14は、記載のようにA2阻止抗体(クローンBB7.2)の存在および非存在下で、九量体ペプチドおよびペプチドプールと比較した十量体ペプチドおよびペプチドプールを示す。
図14のELISPOTから、細胞なしおよび抗原なしウェルにおけるスポットの非存在によって示されるように、清浄なバックグラウンドであることがわかり、このことは、非特異的応答細胞がほとんどなく、また、MVAに対する応答があることを証明している。
A2阻止抗体の存在下でMVAに対する応答に有意な低下があることは、A2阻止抗体にはPBMCに対する有毒な作用が一切ないことを示している。
十量体プール1は応答を示し、これはA2阻止抗体により完全に除去されるが、これによって、当該患者のこのプールにおけるペプチドエピトープはA2拘束されることがわかる。十量体ペプチド1(MPGGCSRGPA)はまったく応答を示さず、同様にペプチド10(ARLALVLLGW)も示さない。ペプチド8(RLRLARLALV)および9(RLARLALVLL)は両方とも応答を示し、ペプチド9と一緒にA2阻止抗体を用いると、このペプチドがA2拘束されるのを認めることができる。
九量体プール1ペプチドは、十量体プール1ペプチドと同じ応答のパターンを示した。九量体プール1は応答を示し、これはA2阻止抗体により完全に除去されるが、これによって、当該患者のこのプールにおけるペプチドエピトープはA2拘束されることがわかる。九量体ペプチド1(MPGGCSRGP)はまったく応答を示さず、同じくペプチド10(ARLALVLLG)も示さない。ペプチド8(RLRLARLAL)および9(RLARLALVL)は両方とも応答を示し、ペプチド9と一緒にA2阻止抗体を用いると、このペプチドがA2拘束されるのを認めることができる。iTopiaを用いて、ペプチド9は推定A2エピトープ(第3位)として同定されたが、以上の結果から、このペプチドは真正クラスIエピトープとして認められ、HLA-A2拘束されることが確認される(しかし、この個体が発現したものではない他の対立遺伝子によってもこれが拘束される可能性は排除しない)。ペプチド8および9が7個のアミノ酸(RLARLAL)からなる重複配列を共有することから、これが最小エピトープを呈示することが示唆される。また、両者共に、2位および4位のアンカー残基がロイシン残基により充填される構造は、これらがいずれも応答を刺激することができることを説明している。この場合、A2阻止抗体を用いなければ、A2、A3、B44、B60、Cw3、およびCw5の1つにより提示されるはずであること以外に、ペプチド8の対立遺伝子制限を明確にすることはできない。
十量体プール5は応答を示し、これはA2阻止抗体により完全に除去されるが、これによって、当該患者のこのプールにおけるペプチドエピトープがA2拘束されることがわかる。十量体ペプチド41(NLTEVPTDLP)はまったく応答を示さず、同様にペプチド48(NLFLTGNQLA)または50(TGNQLAVLPA)も示さない。ペプチド49(FLTGNQLAVL)は応答を示し、ペプチド49にA2阻止抗体を用いると、これがA2拘束されることが認められる。隣接するペプチドのいずれも応答を誘発しないことから、エピトープがペプチド49の配列により規定されることがわかる。
九量体プール5ペプチドは、十量体プール5のペプチドと同じ応答のパターンを示した。九量体プール5は応答を示し、これはA2阻止抗体により完全に除去されるが、これによって、当該患者のこのプールにおけるペプチドエピトープはA2拘束されることがわかる。九量体ペプチド41はまったく応答を示さず、同じくペプチド48または50も示さない。ペプチド49は応答を示し、ペプチド49と一緒にA2阻止抗体を用いると、これがA2拘束されるのをが認めることができる。iTopiaを用いて、ペプチド49は推定A2エピトープ(第6位)として同定されたが、以上の結果から、このペプチドは真正クラスIエピトープとして認められ、HLA-A2拘束されることが確認される(しかし、この個体が発現したものではない他の対立遺伝子によってもこれが拘束される可能性は排除しない)。
iTopiaヒット(hits)を含む5T4ペプチドプールに対する、TroVaxワクチン接種患者由来のPBMCの反応性
序:
手短には、第2相TroVax試験TV2の一環として、TroVaxをワクチン接種しておいた結腸直腸癌患者由来のPBMCを十量体ペプチド(これらが追加のC末端アミノ酸を有する以外は九量体ペプチドと同じであった)のプールでインテロゲートした。
5T4ペプチドの2つのプールはiTopiaヒットから構成され、1つはA2ヒット(Xペプチド)を、また他方はA1、A3およびB7ヒット(Yペプチド)のすべてを含んでいた。別のペプチドプールを用いて、PBMCをインテロゲートしたが、これらは隣接5T4ペプチドを含んでいた。
材料:
ペプチドプールは、IFNγELISpotで用いたペプチドの最終濃度がペプチド当たり5μg/mlとなるように、表8a(iTopiaヒット)および8b(隣接ペプチドのプール)に詳細に示す通りに構成した。
結果:
重複5T4ペプチドのライブラリーを用いて、TroVaxをワクチン接種した患者から回収したPBMCにおけるIFNγELISpot応答をインテロゲートした。前文に詳述したように、各プールは10個の隣接ペプチドを含んでいた(ただし、2つのiTopiaペプチドプールを除く)。これらプールの多くが、HLA A1、A2、A3またはB7により拘束されたCTLエピトープであると推定される(iTopiaにより)ペプチドを含む。IFNγELISpot応答の分析から、TroVaxの接種後に(しかし接種前ではない)、多数の患者がペプチドプールに応答したことがわかった。本発明者らは、応答患者に存在するHLA対立遺伝子で拘束されることがiTopiaにより推定される推定CTLエピトープを含むペプチドプールに応答した患者を確認した。表9に、これが起こったすべての事例を挙げる。
重複ペプチドのパネルを用いて患者のPBMCをインテロゲートする以外に、iTopia A2ヒットおよび組合せA1/A3/B7ヒットを含むペプチドのプールも用いた。表10に示す結果は、これらのペプチドに対して正のIFNγELISpot応答を示し、しかも適合HLA対立遺伝子を有した患者の詳細を示している。
応答患者のPBMCが入手できた場合には、正のIFNγELISpot応答を誘導した個別のペプチドを同定する目的で、ペプチドプールをその成分に分離した(表11)。ペプチドプールからの正の応答を分離することによって、正のIFNγELISpot応答の原因となった4つの個別ペプチド(9、49、125および194)を同定した。HLA-A2に特異的な阻止抗体を用いて、この対立遺伝子によるペプチド9および49の拘束を確認することもできた。ペプチド77はHLA-A2により拘束されるとしてすでに確認されているが、iTopiaによってA2ヒットとして同定した。個々のペプチドに対する正のIFNγELISpot応答の確認後、2つのHLA-A2エピトープ(9および49)に関してMHC多量体(五量体)を合成した。患者018では両方の五量体に対し、また患者108では五量体49に対して、正の五量体応答を検出した。
結論:
TroVaxをワクチン接種した患者からのIFNγELISpot応答を分析することにより、正の応答を誘導し、患者が有するHLA対立遺伝子のiTopiaヒットを含むペプチドプールを同定することができた。患者のPBMCをインテロゲートするのに用いたペプチドプールは、すべてのiTopiaヒットペプチドを含むため、すべてのiTopiaヒットを含むペプチドのプールにおいて正の応答を検出した。従って、iTopiaヒットは細胞性応答を誘発する真正エピトープである。応答ペプチドプールの分離を実施すると、プール内に含まれるiTopiaヒットは応答を誘発することがわかった。実際、iTopiaによりCTLエピトープであると推定された5つのペプチドは、ここで、CTLエピトープであることが確認された。
iTopiaヒットの有効性の確認のための多量体MHC/ペプチド複合体(五量体)の使用
序
抗原特異的T細胞の頻度および表現型の直接ex vivo分析のために、多量体MHC/ペプチド複合体(この場合、五量体)を用いることができる。このアッセイは、MHC/ペプチド複合体と、T細胞の表面上のT細胞受容体クラスターとの相互作用を利用する。本方法は、しっかりした手法(robust)であることが知られており、1:5,000 CD8+T細胞(約1:50,000 PBMC)という低い頻度で抗原特異的集団を検出することができる。
ペプチド9(HLA-A2/9;ペプチド配列RLARLALVL)および49(HLA-A2/49;ペプチド配列FLTGNQLAVL)に特異的なHLA-A2五量体を用いて、患者TV2-018(HLAタイプ:A2、A3、B44、B60、Cw3、Cw5)およびTV2-018(HLAタイプ:A2、A3、B8、B64、Cw7、Cw8)からのPBMCの分析を実施した。結合に関する負の対照として、ミスマッチHLAタイプ(HLA-A1/43;ペプチド配列VPTDLPAYV)を含む五量体を用いた。
材料:
・-2wk、X+2wk、およびX+14wk時点での患者TV2-018、ならびに6wkおよび19wk時点での患者TV2-018からのPBMC
・クラスI .MHC Pro5五量体HLA-A2/9(RLARLALVL)、HLA-A2/49(FLTGNQLAVL)およびHLA-A1/43(VPTDLPAYV)(ProImmune製)
・蛍光標識抗CD8抗体(BD Biosciences製のCD8 FITC)
方法:
手短には、PBMCを解凍し、五量体複合体からなる一次層と一緒にインキュベートした後、蛍光(PE-標識)五量体タグと蛍光(FITC標識)抗CD8抗体からなる二次層と一緒にインキュベートした。次に、フローサイトメトリーによりサンプルを分析した。
結果
結果を図15および16に示す。
結論:
X+2wkおよびX+14wk時点での患者TV2-018について、HLA-A2/9に特異的なCD8+T細胞の明瞭な集団を認めることができる。これは、先のELISpot結果と一致するものであり、このエピトープのHLA拘束はA2として確認される。19wk時点での患者TV2-108について、HLA-A2/49に特異的なCD8+T細胞の明瞭な集団を認めることができる。これも先のELISpot結果と一致するものであり、このエピトープのHLA拘束はA2として確認される。
iTopiaヒットの有効性の確認のためのHLA-A2トランスジェニックマウスモデルの使用
HLA-A2トランスジェニックマウスにTroVax(登録商標)をワクチン接種する。接種後、脾細胞を単離する。ELISpotアッセイを用いて、iTopiaによりHLA-A2バインダーとして同定されるペプチドに対する特異性を証明するために、上記細胞を試験する。
実施例2−クラスII
5T4二十量体ペプチドに対するTroVaxワクチン接種患者由来のPBMCの反応性
序:
手短には、第2相 TroVax試験TV2の免疫モニタリングの一環として、TroVaxをワクチン接種しておいた結腸直腸癌患者由来のPBMCをELISpotアッセイにおいて2つの二十量体ペプチド、番号39.2(MVTWLKETEVVQGKDRLTCA)および41.2(LTCAYPEKMRNRVLLELNSA)で、また、細胞増殖アッセイにおいて10の個別二十量体ペプチドと、7つの二十量体ペプチドプールでインテロゲートした。
材料:
ペプチドの最終濃度が5μg/mlとなるように、TV2 ELISpotアッセイにペプチドを含有させた。表12には、個々のペプチドおよびペプチドプールの成分を表示する。
方法:
ELISpotについては既述している。
細胞増殖アッセイについて以下に簡単に説明する。Histopaque-1077での分離により新しく取得したPBMCは、96ウェルプレートの1ウェル当たり1×105細胞の濃度で平板培養する。ペプチドを個別またはプール毎に、1ペプチドにつき2μg/mlの最終濃度で各ウェルに添加する。培地のみおよびPHAを含むウェルは、それぞれ負および正の対照として役立つ。また、抗原特異的な正の対照として、破傷風毒素を含有させてもよい。6日のインキュベーション(37℃;5%CO2)後、1μCiの滴定チミジン(3H-チミジン)を各ウェルに添加し、さらに一晩インキュベートしてから、細胞を収集し、シンチレーション計数器で滴定チミジンの取込みを測定する。
結果:
クラスII 5T4二十量体ペプチド39.2および41.2を用いて、TroVax接種患者から回収したPBMCにおけるIFNγELISpot応答をインテロゲートした。IFNγELISpot応答の分析から、多数の患者が、TroVaxの接種後(しかし接種前ではない)、ペプチドに対して応答したことが明らかになった。表13に、これが起こった事例のすべてを列挙する。
同様に、個別のクラスII 5T4二十量体ペプチドと共にクラスII 5T4ペプチドのプールを用いて、TroVax接種患者から回収したPBMCにおける細胞増殖応答をインテロゲートした際には、TroVaxの接種後(しかし接種前ではない)、多数の応答が認められた。表14に、これが起こった事例のすべてを列挙する。
特定のペプチドまたはプールに応答する患者のHLAタイプを分析すると、表15に示すように、応答患者の間で特定のHLAタイプが呈示される頻度により、特定のペプチドまたはプールについて起こりそうなHLA拘束を決定することができる。単一ペプチドの場合、ペプチド36.2について最も起こりそうなHLA拘束は、DQ2、DR7、またはDR53のいずれかである(これらの各々が応答者7人のうち3人によって呈示されたことから)。ペプチド37.2について最も起こりそうなHLA拘束は、DQ2、DR52、またはDR53のいずれかである(DQ2は応答者10人のうち7人、またDR52またはDR53は各々応答者10人のうち5人によって呈示されたことから)。ペプチド38.2について最も起こりそうなHLA拘束は、DQ2、DQ6、またはDR52のいずれかである(これらの各々が応答者10人のうち5人によって呈示されたことから)。ペプチド39.2について最も起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR51、またはDR52のいずれかである(DQ6は応答者10人のうち6人、またDR51およびDR52は各々応答者10人のうち5人によって呈示されたことから)。ペプチド40.2について最も起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR15、DR51、またはDR52のいずれかである(DQ6は応答者12人のうち8人、またDR15、DR51およびDR52は各々応答者12人のうち6人によって呈示されたことから)。ペプチド41.2について最も起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR51、またはDR15のいずれかである(DQ6は応答者13人のうち9人、またDR51は応答者13人のうち7人、またDR15は応答者13人のうち6人によって呈示されたことから)。ペプチド42.2について最も起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR51、DQ5、またはDR15のいずれかである(DQ6は応答者12人のうち8人、DR51は応答者12人のうち7人、またDQ5およびDR15は応答者12人のうち6人によって呈示されたことから)。ペプチド43.2について最も起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR15、またはDR51のいずれかである(DQ6は応答者11人のうち7人、またDR15およびDR51は応答者11人のうち6人によって呈示されたことから)。ペプチド44.2について最も
起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR15、DR51、またはDR52のいずれかである(これらは各々、応答者9人のうち5人によって呈示されたことから)。ペプチド45.2について最も起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR53、DR15、またはDR51のいずれかである(DQ6およびDR53は応答者8人のうち5人、またDR15およびDR51は応答者8人のうち4人によって呈示されたことから)。プール4.2に含まれるペプチドについて最も起こりそうなHLA拘束は、DQ2、DQ6、DR52、もしくはDR53またはDQ7のいずれかである(DQ2、DQ6、DR52、もしくはDR53は各々、応答者15人のうち6人、またDQ7は応答者15人のうち5人によって呈示されたことから)。プール5.2に含まれるペプチドについて最も起こりそうなHLA拘束は、DR52、DQ2、DR17またはDQ6のいずれかである(DR52は応答者13人のうち9人、DQ2は応答者13人のうち7人、DR17は応答者13人のうち6人、DQ6は応答者13人のうち5人によって呈示されたことから)。プール6.2に含まれるペプチドについて最も起こりそうなHLA拘束は、DQ2、DR52、DQ6、DR7、またはDR17のいずれかである(DQ2およびDR52は応答者13人のうち7人、DQ6、DR7およびDR17は応答者13人のうち5人によって呈示されていることから)。プール7.2に含まれるペプチドについて最も起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR52、DQ2、DR15、またはDR51のいずれかである(DQ6は応答者13人のうち8人、DR52は応答者13人のうち6人、またDQ2、DR15およびDR51は応答者13人のうち5人によって呈示されたことから)。プール8.2に含まれるペプチドについて最も起こりそうなHLA拘束は、DQ2、DQ6、DR52、DR15、またはDR51のいずれかである(DQ2、DQ6およびDR52は応答者18人のうち8人、またDR15およびDR51は応答者18人のうち7人によって呈示されたいることから)。プール9.2に含まれるペプチドについて最も起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR15、DR51、DQ2、またはDR53のいずれかである(DQ6は応答者12人のうち8人、DR15およびDR51は応答者12人のうち7人、またDQ2およびDR53は応答者12人のうち5人によって呈示されたことから)。プール10.2に含まれるペプチドについて最も起こりそうなHLA拘束は、DQ6、DR52、DQ2、DR15、またはDR51のいずれかである(DQ2およびDR52は応答者15人のうち8人、DQ2は応答者15人のうち7人、またDR15およびDR51は応答者16人のうち6人によって呈示されたことから)。
結論:
TroVaxワクチン接種患者からのIFNγELISpot、ならびに細胞増殖応答を分析することにより、正(陽性)の応答を誘導したペプチドを同定することができた。また、起こりえるHLA拘束を決定することもできる。
本明細書に記載した刊行物はすべて、参照として本明細書に組み込むものとする。記載した本発明の方法およびシステム(又は、系)の様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、当業者には明らかであろう。好ましい具体的実施形態に関して本発明を説明してきたが、請求される本発明がこのような具体的実施形態に不当に制限されるものでないことは理解すべきである。実際、本発明を実施するための前記方法の様々な改変が分子生物学または関連分野の当業者には明らかであり、これらは本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
表の説明:
表1は、JPT Peptide Technologies GmbHにより合成された九量体ペプチドの物理的データを示す。
表2は、ペプチド結合アッセイ結果を示す。
表3は、解離速度アッセイ結果を示す。
表4は、アフィニティーアッセイ結果を示す。
表5は、試験した全ペプチドからのiScore結果を示す。
表6は、iTtopia結果のまとめを示す。
表7は、さらなる機能分析のために選択されたペプチドをiScoreの高い順に示す。
表8aは、患者のIFNγELISpot応答の免疫モニタリングで用いた5T4 iTopiaヒットペプチドプールの構成成分を示す。この表は、A2 iTopiaヒットプールおよび複合A1/A3/B7 iTopiaヒットプールの成分のペプチドIDおよびアミノ酸配列を示す。
表8bは、患者のIFNγELISpot応答の免疫モニタリングで用いた5T4ペプチドプールの構成成分を示す。この表は、各ペプチドプールの成分のペプチドIDおよびアミノ酸配列を示す・
表9は、5T4ペプチドプールでの刺激後に、PBMC(TroVax処置した患者から回収)において検出された正のIFNγELISpot応答を示す。この表には、HLA A1、A2、A3またはB7のいずれかについてのiTopiaヒットを含む5T4ペプチドプールに対する正のELISpot応答が検出され、応答患者が適合対立遺伝子を有した結果を詳細に示す。
表10は、iTopiaヒットペプチドプでの刺激後に、PBMC(TroVax処置した患者から回収)において検出された正のIFNγELISpot応答を示す。この表には、A2ペプチドプールまたはA1/A3/B7プールに対する正のELISpot応答を示し、しかも同じ対応するHLAタイプを有した患者を列挙する。
表11は、5T4ペプチドプールでの刺激後に、PBMC(TroVax処置した患者から回収)において検出された正のIFNγELISpot応答の分離を示す。この表には、5T4ペプチドプール1、5、13もしくは20、または個別ペプチド77に対する正のIFNγELISpot応答を最初に示した患者について詳細に示す。ペプチドプールをその成分に分離後、正のELISpot応答を引き起こす単一のペプチドを表にする。場合によっては、応答のMHC拘束は既知であり(阻止抗体またはすでに同定されたCTLエピトープのいずれかを用いて)、これを列挙する。また、iTopiaにより推定されるこれらのCTLエピトープのHLA拘束も示す。最後に、2つのHLA A2エピトープ(9および49)について五量体を合成し、2人の患者由来のPBMCにおける正の応答を明らかにした。
表12は、個別クラスIIペプチドおよびクラスIIペプチドプールの詳細を示す。
表13は、5T4二十量体ペプチド39.2および41.2での刺激後に、PBMC(TroVax処置した患者から回収)において検出された正のIFNγELISpot応答を示す。
表14は、5T4二十量体ペプチドプールでの刺激後に、PBMC(TroVax処置した患者から回収)において検出された正の増殖応答を示す。
表15は、PBMC(TroVax処置した患者から回収)において検出された5T4二十量体ペプチドおよびペプチドプールに対する正の増殖応答におけるHLAタイプの分布を示す。特定の抗原に応答する個体の数を、その抗原に対する応答患者総数(そのHLAタイプは既知である)の分数として示す。