JP2008530046A - 感染症の治療のための物質 - Google Patents

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Abstract

本発明は、体腔を殺菌するために使用される医薬を製造するための、二塩素酸およびその誘導体の使用に関する。

Description

本発明は、感染症の治療のための物質および、その使用に関する。
外部身体開口部/体腔(例えば、膣、口、眼、耳および鼻の腔)の粘膜は、健康な微生物微小環境にとってまったく必須の、多数の微生物の天然の生息場所である。例えば、乳酸細菌は膣の粘膜上で生存し、それらの代謝物である乳酸は、周囲の環境を酸性化し、病原体による粘膜の感染症を防止する助けをする。しかしここで、多数の異なる原因の結果として、病原性微生物の侵入がなおも生じ得る。
内部体腔中に存在する全ての微生物は、本来病原性であるとみなすべきである。なぜなら、ヒト身体の内部腔は、通常微生物を含まないからである。
抗生物質に対する原因微生物の耐性の増大に起因して、内部および外部体腔の感染症の治療はしばしば無効である。
例えばヒト膀胱の感染症の原因は通常、尿道を介した膀胱空間への細菌の侵入に起因する。膀胱自体はこのような病原体には比較的感受性が低いが、尿道を上って腎臓に達する膀胱感染症のリスクに起因して、この状況は非常に問題となり得る。
このリスクは、失禁患者および高齢者、ならびに排尿障害にも罹患していることがしばしばである中枢神経系の外傷性の変化を有する患者において、特に高い。多くの場合、これらの配列は慢性の尿路感染症を引き起こし、これは一般的に、永続的な薬物療法を必要とするので、次いで、抗生物質に対する原因病原体の耐性のさらなる進行を導く。次いで感染症は、上行して腎臓を侵し、最終的に腎不全を引き起こす。
経験的に、これらの患者の治療は非常に長引き、費用がかかることが示されている。入院患者にとって、尿路感染症は入院期間を大きく長引かせ、このことが患者の精神的負担および医療システムにおける大きな経済的負担の両方となる。
腎臓損傷の中期リスクおよび高い治療経費の長期リスクは、尿道を通って膀胱に侵入した病原体を排除することによって低下させることができる。腎臓の機能不全は、臓器移植とはならなくとも、透析治療を最終的に導くので、これは特に重要である。
気道感染症に次いで、尿路感染症は2番目に最も重要な感染性疾患である。たった1年間で、20歳から54歳にある全ての女性の少なくとも20%が、尿路感染症に罹患する(これは、女性にとって労働できない最も一般的な理由である)。女性は、男性よりも4倍罹患する頻度が高い。また、II型糖尿病の過程において、尿路感染症はいちじるしく増加している。
一般的な法則として、小児の尿路感染症は通常、腎実質における瘢痕組織形成のリスクを伴い、後の成年期での後遺症(例えば、高血圧および腎不全)の可能性がある。したがって、小児の全ての尿路感染症は、速やかに治療すべきである。治療期間は通常、7日から14日の間続く。
いわゆる院内感染症が非常に大きな問題となっている(感染症は、病院への入院後48時間を超えてから発生し、入院の時点ではインキュベーション期になかった場合、院内感染であると言われる)。入院中、全てのカテーテル装着者の90%が尿路感染症を発症する。他の群の患者もまた、院内感染症に罹患し、それにより、尿路感染症は約40%を占める。
病原体に対する耐性の発生は現在、通常の抗生物質治療において非常に重要な問題である。克服されたとみなされた感染症が、多剤耐性病原体/株の発生に起因して、再度問題となっている。この多剤耐性は特に、抗生物質の的確でない適用に起因している。
より多数の高齢患者およびより深刻な根本的状態と共に、近年の現代医療の進歩には、感染症の危険の増大が伴っている。1990年にはドイツの病院の患者の30%が60歳を超えていた(360万人)。
今日、感染症は、高齢患者の治療および介護において最も頻発する合併症の最たるものである。
介護ホームにおける感染症の発症のリスクは、若者と比較して、高齢者では3倍高い。65歳を超えると、院内感染症の発症のリスクは20%を超える高い率で高まり、75歳を超えると40%を超える高い率で高まる。これらの型の感染症は、老人患者用のホームで、しばしば過小評価される問題である。発生率は、10%から16%の間であると報告されている。最も一般的な感染症は、下気道(気管支炎、肺炎)で49.7%および尿路で33.7%と考えられる。
問題の細菌、例えば、抗生物質耐性ブドウ球菌(MRSA=メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、重要な因子となっている。395箇所の老人用介護ホームでの研究において、MRSA株は、入院患者の12%において見出された。MRSAを有する患者は一般に、より困窮した条件下におかれ、より看護を必要とした。しかし、高率のMRSA保菌者にもかかわらず、実際に疾患に罹患した患者数は、3%から4%の間にすぎなかった。介護ホームで獲得された感染症は費用(特に、抗生物質の費用およびしばしば必要となる長期にわたる集中的な入院の費用)を増大させ、罹患率および死亡率の上昇を導く。
失禁で看護の必要な高齢患者の数は着実に増大している。これらの患者を世話するための費用の増大の観点から、これらの患者を治療するための有効な活性物質(耐性を発生させないもの)の必要性が、次第に重要になってきている。
別の標的群はまた、オムツを着用している若年の小児である。ここに、長期危険となり得るかなりの量の尿路感染症が存在する。抗生物質を用いない治療が特にここで望まれる。
一般に、女性は尿路感染症に罹患する頻度が高い。
さらなる危険は院内感染症であり、症例の40%が尿路疾患を引き起こす。例えば手術後の尿を排出するための特定のカテーテルがしばしば、尿路の問題を長引かせる。
慢性的に病気の患者、特に糖尿病を有する患者は、しばしば尿路感染症に罹患する。年齢が上がるにつれ、男性患者数もまた急に増加し、それにより、全ての年齢群の女性は、一般にかなり多くの数が罹患する。さらなる患者群は、尿路感染症に比較的頻繁に罹患する妊娠女性である。ここで、伝統的な治療方法のいくつかは、問題を有するとみなされている。
二塩素酸およびそれらの製造は、公開前ではない特許出願番号PCT/EP2004/013212に記載された。創傷治癒を促進するための対応する二塩素酸の使用もまた、そこに記載されている。殺菌剤としての使用もまた、一般に記載されている。体腔(特に、泌尿生殖系、膀胱、眼、耳、鼻、首、喉の腔および手術中の開放腹部空間)を殺菌するための薬剤としての特定の使用は、明らかになっていなかった。
したがって、本発明の目的は、体腔中の/体腔の炎症と闘う可能性を発展させることであった。特に、これは、抗生物質耐性病原体と闘得ることを助ける可能性からなるべきである。この関連において、治療は、その適用について単純かつ安全であるべきである。
驚くべきことに、上記目的は、請求項1に記載の剤の使用によって簡単かつ確実に満たすことができる。本発明のさらなる実施形態は、独立項および従属項2および3に示される。
本発明による有用な二塩素酸は、以下の表1に示される。これらの二塩素酸のうち、二塩素酸1番〜3番は、本発明の特に好ましい実施形態である。
Figure 2008530046
価の対+3/+5(WO00/48940)と同様に+4/+4(Bogdanchikovら)もすでに記載されているが、塩素について価+6/+4および+5/+5を有する、本発明による使用可能な二塩素酸1番〜3番は、本発明による方法で初めて製造された。4番の酸のアニオンは、WO00/48940に記載されている。しかし、そこに記載された製造方法は機能しない。
WO00/48940は、デオキソ二量体が、反応
-OOClO2→Cl26 2-+O2
を介して、2分子の反応性塩素−酸素種(ペルオキソ塩素酸塩)から形成され、それにより、塩素原子が酸化数+3および+5で存在することを前提としている。しかし、薬事法の態様において望ましい、WO00/48940の実施形態6による安定な化合物の製造は、成功していない。

-OOClO2→Cl26 2-+O2
に従う2分子のペルオキソ塩素酸塩からの二量体誘導体の形成は、すなわち、非常に高濃度のペルオキソ塩素酸塩(約2〜3mol/l)でのみ期待できる。しかし、化合物の高い不安定性に起因して、このような高い濃度は実際に達成することが不可能である。
しかし、試験により、ペルオキソ塩素酸塩イオンO2ClOO-の塩素酸イオン(ClO2 -)との反応は、驚くべきことに、「二量体」Cl26 2-種の範囲を直接導くことが示される:
2ClOO-+ClO2 -→Cl26 2-−>−>および異性体。
イオンが本開示において言及される限り、必要な対イオンの存在(特に溶液中の)もまた含まれる。表示「アニオン」は、溶液中で、プロトン化された酸と比較して二塩素酸塩形態がより安定であるという事実を強調するために特に使用される。
本発明はまた、二塩素酸ならびにそれらの誘導体、アニオンおよび/または塩を含む製剤の製造のための方法に関する。
すなわち:
(a)二酸化塩素は、過酸化水素または別のヒドロペルオキシドもしくはペルオキシドの水溶液または水含有溶液と、6.5以上のpHで反応する、
(b)pHが、酸を添加することによって低下される、
(c)気体の遊離プロトン化ペルオキソ塩素化合物を冷却気体と共に放出し、アルカリ性溶液中に収集する、
(d)収集したペルオキソ塩素化合物を、6乃至8のpH、好ましくは約7のpHで、100倍過剰まで、好ましくは10倍過剰までの亜塩素塩と共にインキュベートする、
すると、この驚くほど簡単な方法で、本発明による使用可能な二塩素酸を製造することができる。
したがって、本発明による使用可能な二塩素酸およびまた生理学的pH値で存在するアニオンは、本発明による、溶液中にペルオキソ塩素酸塩および亜塩素酸塩との混合物として存在することもできる。したがって、本発明による使用可能な、二塩素酸、ペルオキソ塩素酸塩および亜塩素酸塩を含むこのような溶液は、本発明の特に好ましい実施形態の1つを提示する。
対照的に、WO00/48940において、本発明の二塩素酸が含まれない、亜塩素酸塩を含まない溶液が生成され、あるいは、製剤を医薬での使用に適さないものにする亜塩素酸塩のみしか事実上含まない、亜塩素酸塩含有製剤が生成された。
しかし、大量の亜塩素酸塩は、本発明による医薬領域での二塩素酸の使用によって有害である。したがって、本発明による溶液の最終製品は、溶液の総重量に対して、重量%で20倍過剰を超える亜塩素酸塩を含まず、好ましくは5倍過剰以下、なおより好ましくは3倍過剰以下の亜塩素酸塩を含むことが特に好都合である。
特に、本発明による使用可能な二塩素酸は、この溶液中に、使用されるClO2の重量%に対して、約0.1〜20重量%、好ましくは3〜5重量%の容量で存在する。質的同定は、ラマン分光法で成功している。この型の分光法を実施することは、当業者にとって当然のことである。得られるスペクトログラムは、WO99/48940に記載される方法で得られたものとは明らかに異なる。二塩素酸の定量的シェアの決定は、酸−塩基滴定で実施され得る。
さらなる質的検出が、ヘム鉄との反応を介して可能である。本発明による使用可能な二塩素酸の存在下で、ソレー帯の強度変化の時間的進行は、WO00/48940に記載される方法で得られた溶液での結果とは、明らかに異なる。
本発明による方法は、6.5以上のpH値、好ましくはpH10乃至12での、二酸化塩素の、水性または水含有の過酸化水素(あるいは当業者に公知の別のヒドロペルオキシドもしくはペルオキシド(例えば、ペルオキソ炭酸塩)、または過ホウ酸塩もしくは過酸化水素の尿素付加物)との反応からなる。所望される一定のpHレベルを維持することが好ましい。
さらに、驚くべきことに、中間体生成物として生じるペルオキソ塩素酸ならびにそのアニオンおよび誘導体は、ペルオキソ基を含む他の酸化剤との二酸化塩素の反応によっても得ることができることが明白である。
反応は、水性または水含有の環境で実施できる。例えば、水同様、水と混和性の溶媒(例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノールなどのアルカノールまたは同様のもの、あるいはこれらの混合物))が存在し得る。
代替法として、他の塩素酸化物が出発物質として使用され得る。例えば、好ましくは二量体形態(Cl22)の一酸化塩素も、ヒドロペルオキシド(好ましくは過酸化水素)で変換されて、所望の生成物を生じ得る。この反応は、二酸化塩素について述べたものと同じpH範囲で成功する。
反応温度は、例えば約50℃まで上昇させることができる;純粋に水性の系では、最低温度は好ましくは約0℃であるべきである。さらに、+10℃未満の温度で二酸化塩素を使用すべきではない。二酸化塩素気体は、この温度未満の温度では液化し、爆燃が生じ得る。さらなる有機溶媒および/または高濃度の活性試薬が存在する場合、より低い温度、すなわち水の凝固点未満の温度でも作業できる。室温が好ましい作業温度である。
反応に必要な二酸化塩素は当業者に入手可能であり、通常の方法で製造できる。例えば、これは、亜塩素酸塩の酸との(例えば、亜塩素酸ナトリウムの硫酸との)反応によって、あるいは塩素酸塩の還元(例えば、亜硫酸による)によって、製造できる。
こうして得られた二酸化塩素は、必要に応じて微量の塩素の除去後、通常の方法で遊離させることができる(Granstrom,Marvin L.;and Lee,G.Fred,J.Amer.Water Works Assoc.50,1453−1466(1958)。
ClO2を生成するのに使用される亜塩素酸塩に炭酸塩が混入している場合、WO00/48940に記載されるCO2および/または炭酸付加物が混入したClO2の形成が生じる。二酸化炭素を吸収するために、二酸化塩素および二酸化炭素を含有する気体流を、苛性アルカリ溶液を満たした洗浄瓶に通じさせなければならない。短い接触時間だけで、ClO2でなくCO2が、この苛性アルカリ溶液に吸収されよう。しかし、使用される亜塩素酸ナトリウムの分別結晶化によって炭酸塩混入物を除去するほうがよい。ペルオキソ塩素酸塩への炭酸塩の混入は、ラマン分光法によって容易に認識できる。1051/cm-1での鋭いバンドの代わりに、本発明の範囲内である1051/cm-1での重要なバンド(鋭い)と同様に、1069/cm-1での広いバンド(幅広)が得られる。
二酸化塩素は、窒素などの不活性気体またはアルゴンなどの希ガスと共に輸送され得るが、ペルオキソ化合物もしくはヒドロペルオキシド(例えば、過酸化水素)、または過炭酸塩もしくは過ホウ酸塩との反応のために空気または酸素と共に輸送され得る。例えば、第1の反応容器中に二酸化塩素を準備し、次いで、水溶液または水含有溶液中のペルオキソ化合物(ペルオキシドまたはヒドロペルオキシド)を含む第2の反応容器中に、上記気体またはそれらの混合物と共にそれを導入することができる。
反応混合物のpH値は、塩基を添加することによって、6.5以上に維持される。pH値は一定に維持することが好ましい。これは、手動または「pHスタット」を使用することのいずれかにより実施できる。
アルカリ性の苛性アルカリ溶液(例えば、苛性ソーダ溶液もしくは苛性カリ溶液)またはアルカリ土類水酸化物ならびにアンモニア、あるいは窒素含有塩基などの有機塩基といった、通常の有機または無機の塩基が使用できる。また、特定のアルキル中の4級アンモニウム塩由来の水酸化物(例えば、トリアルキルまたはテトラアルキルアンモニウム水酸化物)または水酸化亜鉛も使用できる。
反応混合物中のヒドロペルオキシド含量は、例えば、塩酸などの酸を用いた電位差測定滴定を使用して決定できる。
上記方法に従って得られた溶液は、作成時の形態で、または部分的にバリエーションで使用できる。例えば、過剰な過酸化水素は、通常の方法で、例えば二酸化マンガンなどの重金属化合物を用いて除去できる。類似の方法で、過剰の他の酸化剤もまた除去され得る。
過剰の二酸化塩素(ClO2)は、H22で除去できる。これは、可能な限り迅速に行うべきであり、そうでなければ、
2ClO2+2OH-−>ClO2 -+ClO3 -+H2
により、系を乱すClO3-が形成されるであろう。しかし、塩素酸塩を含む生成物は望ましくない。
反応生成物の保存寿命を改善するために、上昇したpH値(例えば、pH10以上)での保存が推奨される。このpH値の調整は、製造方法において以前に記載したように、適切な塩基を用いて実施され得る。
二塩素酸および/またはこれらの酸の塩を含む溶液の製造について、驚くべきことに、pHを6未満、例えばpH5以下に低下させたままで、不活性気体(例えば、アルゴンなどの希ガス)または窒素または気体酸素もしくは空気と共に亜塩素酸イオンを含む混合物から、遊離酸HOOClO2、二塩素酸またはペルオキソ塩素酸を追い出し捕捉することが可能である。驚くべきことに、気体流の路が非常に短く維持され、流れが冷却されている場合、収率は大きく増大され得ることが明らかになっている。
上記の製造手順において、ステップ(a)の開始後に形成される混合物は、最初、非常に高い濃度の亜塩素酸イオン(ClO2 -)を含む。しかし、亜塩素酸塩含量は、塩基性溶液中を気体流で「通り過ぎる」ことによって、かなり減少させることができる。このプロセスにおいて、全ての型の塩素酸が、プロトン化(中性)形態で揮発性化合物として追い出される。しかし、これらは非常に不安定である。塩基が受容容器中に含まれ、それにより塩素酸が脱プロトン化され、アニオンが形成される。溶液をpH6〜8に調整し、特定の容量の亜塩素酸塩(例えば、亜塩素酸ナトリウム)を添加した後、二塩素酸のアニオンが形成される。
収集は、例えば、塩基(例えば、アルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基もしくは亜鉛塩基または窒素含有塩基(例えば、アンモニアまたは有機アミン))中で実施できる。冷却トラップ(例えば、−100〜−190℃)中で気体の酸を凍結することも可能である。
問題となる対イオンは全て金属カチオンおよび有機カチオン(例えば、窒素含有塩基、特に4級アンモニウム塩由来のもの)である。最も適切なカチオンの選択は、個々の使用目的によって決定される。アルカリ土類金属またはアルカリ金属、好ましくはNa+、K+またはZn2+は、医薬適用に最も適切である。技術的応用において、有機カチオン、例えば、窒素含有塩基由来のカチオン、特にアルキルアンモニウムカチオン(例えば、トリアルキルアンモニウムカチオンまたは特に4級アンモニウムカチオン)が使用できる。
長い保存寿命を確実にするために、酸および塩を暗中で保存し、それらから高いpH値(例えば、10、11または12以上のpH値、特にpH10〜pH13の範囲)の水溶液を作製することは、実際的であり好ましい。必要であればいつでも、以前に記載した様式でこのような溶液から遊離酸を回復することが可能であり、必要に応じて、所望のpH値で溶液に変換するか、塩に変換できる。
本発明はまた、活性物質として、本発明による二塩素酸またはアニオン、その誘導体および塩を含み、導入部において記載した炎症/感染症の治療に特に使用され得る、医薬製剤および剤形に関する。これらの製剤は、活性物質を単独で、または好ましくは1種以上の医薬的に適用可能な担体媒体もしくは溶媒(生理的食塩水、リンゲル溶液など)と共に含む。活性物質の投薬量は、特に、治療される感染症の位置(膀胱、眼、腹部空間)、ならびに患者の種、年齢、体重および個々の条件、個々の薬物動態的要因、ならびに適用方法、治療の長さおよび治療間隔に依存する。
好ましい実施形態において、二塩素酸塩および/またはその誘導体の塩の0.025〜1M溶液が、10以上、好ましくは10〜13、特に12.5のpHで二回蒸留水中に溶解される。投与の直前に、この溶液を、一般的な塩、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウム、リン酸塩緩衝液および二回蒸留水で希釈して、約0.01mMの濃度で等張にし、ほぼ生理学的なpHに調整する。このとき、投与のための最終濃度は使用に依存する。
本発明による使用可能な二塩素酸のアニオンは安定であるが、酸自体は比較的迅速に分解し、その効力は約14日後低下する。したがって、活性物質の安定化は、主に、pHを調整することによって実施できる。耐性を改善するために、活性物質溶液を、投与直前に緩衝液希釈によってほぼ生理学的pHまで低下させることができる。これは、体中での薬理学的作用の配置に適切である。なぜなら、この作用は、従来の薬物のレセプター−リガンド相互作用には依存しないが、以前に記載されたように、迅速かつ不可逆的な酸化反応に関連するからである。その薬理学的作用は、細胞および/またはその化学的に変化した構造が維持される限り有効であり続ける、すなわち、レセプターからの活性物質の拡散後にもそれは終わらない。
炎症を治療するために、この剤の適用の技術は当業者に公知である。このとき、身体中の疾患の位置に依存して、いくつかの可能性が存在する。本発明に従う剤は溶液であるので、最も簡単な適用技術はリンスである。例えば、当業者は、この目的のためにカテーテルを使用するであろう。泌尿生殖系、特に膀胱の感染症の場合、点滴注入が好ましい方法である。
例えば胃腸管に対する手術の合併症として頻繁に生じる腹部空間感染症の予防/防止のために、溶液が、腹壁の閉鎖前に開放創傷に適用される。これはそこに留まり(殺菌持続性剤(デポ))、古典的な意味での腹腔注液が生じないように、簡単に「消化」される。
本発明に従う剤の特に有利な点は、耐性が生じない、実際には耐性が生じ得ないことである。
さらに、最も驚くべきことに、本発明に従う剤ならびにその非常に良好な効力は、どんなものであれ不耐性反応およびアレルギー反応を示さなかった。
本発明に従う点滴注入は、身体(中空器官、体腔および開口部)における液体医薬の1滴ずつの適用である。膀胱点滴注入は、尿路感染症の化学療法的治療である。これは、留置カテーテルを介して(その前のカテーテル留置後に)シリンジまたはアプリケータで実施できる。
一般に、本発明による剤は、殺菌目的に優れている:例えば、鼻および耳の灌注ならびに任意の体腔のリンス、ならびに「殺菌持続性製剤(デポ)」の形態での適用(例えば、腹部空間)。
さらに、本発明による剤は、体腔の感染症の標準的な治療において、援用的な測定としても優れている:例えば、ドイツ国特許出願WO2004/034930 A2で明らかにされた膀胱インプラント。
以下の実施形態の実施例は、本発明についてのさらなる詳細を提供するが、これらは決して限定的な意味で理解されるべきではない。
実施例1
二塩素酸の調製
注意深く、200mlの水中100gの無水亜塩素酸ナトリウムの溶液に、硫酸(96%)を1滴ずつ撹拌していく。形成される二酸化塩素を、強い気体流(Ar、N2またはO2もしくはCO2を含まない空気)を使用して追い出す。この気体流は、ClO2含量が5%を超えないように(爆発の危険)強くなければならない。塩素元素を捕捉するために、ClO2を含む気体流を、各々、4Mの苛性ソーダ溶液を添加することでpH12に予め調整した水35ml中30%の過酸化水素溶液15ml中、30mlの2M NaClO2溶液(pH11)を満たした、一連の3つの洗浄瓶中に導入する。過ホウ酸ナトリウムまたは過炭酸ナトリウムまたは別のペルオキソ化合物(例えば、尿素のH22付加物)の溶液を過酸化水素の代わりに使用できる。気体の導入の間、pH値をガラス電極で制御する。4M NaOHを添加することによって、反応の間のpH値を12に維持できる。ヒドロペルオキシドまたはペルオキソ化合物が枯渇すると、気体の流入により、永続的な黄色の着色が生じる。次いで、1滴の酸化剤(例えばH22)溶液が、黄色溶液を再度脱色するであろう。
撹拌しながら、反応性塩素を含む溶液を、2Mの苛性ソーダ溶液で予めpH4.5に調整した水3リットル中、500gのクエン酸の溶液中に滴下する。このステップの間、形成される反応性塩素化合物を、強い気体流(N2またはO2)で追い出す。好ましくは、この気体流は冷却すべきである。管の接続は可能な限り短くすべきである。気体を、例えば各々50mlの0.1M NaOHを満たした一連の3つの洗浄瓶中に収集する。
3つの洗浄瓶の内容物を合わせ、10を超えるpHを維持する。
本発明による使用可能な二塩素酸を形成するために、pHを、例えば塩酸を用いて7に調整し、10倍モル過剰の亜塩素酸ナトリウムを添加する。
反応性塩素アニオンの総含量を、当業者に公知の通常の方法を用いて、0.1M HClでの電位差測定滴定によって決定する。
形成される二塩素酸は、規定された容量の亜塩素酸塩ならびにさらなる反応性塩素化合物との混合物として溶液中に存在する。
二塩素酸の存在は、ラマン分光法で検出する。
実施例2
本発明に従う医薬製剤の製造、その投薬量および適用
本発明による医薬製剤は、好ましくは1:100〜1:5,000の比で、医薬担体媒体(例えば、0.9%NaCl溶液、リンゲル溶液、リン酸塩緩衝液など)中に実施例1から得た溶液を希釈することによって製造する。
このとき、医薬的に適切な添加剤を含めることもできる。
実施例3
治療耐性膀胱感染症の治療
徹底的に試験した多剤耐性細菌スペクトルを有する、例えばSCI運動麻痺に起因する神経原性排尿障害を有する患者の治療
これらの患者の治療は、恥骨上留置カテーテルを介した溶液の点滴注入により実施する。このとき、50mlの1:2,000希釈溶液が1日2回点滴注入され、約30分間膀胱中に残留する。この後、灌流溶液を、再度カテーテルを介して排出する。しかし、治療の長さ、濃度および容量は変動し得、患者の疾患の重大性および全身状態ならびに他の因子に関して、医師によって決定される。
1日の灌流サイクルを、医師の判断で5〜7日間にわたって実施する。治癒の進行は、試験および膀胱鏡検査によって制御し、感染症のさらなる証拠が検出できなくなるまで治療が継続される。

Claims (9)

  1. 体腔、好ましくは腹腔、鼻腔、副鼻腔、耳、口腔および特に好ましくは膀胱の抗感染症治療用の医薬および/または医薬製剤を製造するための二塩素酸、あるいはその生理的に許容される誘導体または塩の使用であって、
    (a)二酸化塩素を、6.5以上のpH値で、過酸化水素または別のヒドロペルオキシドもしくはペルオキシドの水溶液または水含有溶液と反応させる;
    (b)pH値を、酸を添加することによって3ないし6に低下させる;
    (c)気体の遊離反応性ペルオキソ塩素化合物を、冷却気体を用いて追い出し、10を超えるpH値を有する塩基性溶液中に捕捉する;
    (d)該捕捉されたペルオキソ塩素化合物を、100倍過剰まで、好ましくは10倍過剰までの亜塩素酸塩と共に、6乃至8、好ましくは約7のpH値でインキュベートする
    ことで製造される二塩素酸、あるいはその生理学的に許容される誘導体または塩の使用。
  2. 灌流または持続性製剤の形態での治療を特徴とする、請求項1に記載の使用。
  3. 活性物質として使用される二塩素酸が、H2Cl26の実験式および構造式
    Figure 2008530046
    のアニオンを有し、構造式I乃至IIIが好ましいとう事実を特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
  4. 水溶液が、少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、特に好ましくは少なくとも0.05M、非常に特に好ましくは少なくとも0.075M、なおより好ましくは少なくとも0.1M、最も好ましくは少なくとも0.5Mの濃度の二塩素酸を含む、請求項1から3の一項に記載の使用。
  5. 二塩素酸が、それらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、亜鉛塩、アンモニア塩および/もしくはアミン塩またはそれらの誘導体の形態で存在する、請求項1から4の一項に記載の使用。
  6. ステップ(c)の遊離二塩素酸またはその誘導体が、冷却トラップ中で収集される、請求項1から5の一項に記載の使用。
  7. ステップ(d)からの遊離二塩素酸またはその誘導体が、アルカリ性水溶液中に導入される、請求項1から6の一項に記載の使用。
  8. アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、または窒素含有塩基、または4級アンモニウム塩の水酸化物が、ステップ(c)の塩基性溶液中で塩基として使用される、請求項1から7の一項に記載の使用。
  9. ステップ(d)から得られた溶液が、pH値を増大させることによって安定化される、請求項1から8の一項に記載の使用。
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