JP2008528642A - 免疫治療の安全性を高めるためのマイナーアレルゲンコントロール - Google Patents

免疫治療の安全性を高めるためのマイナーアレルゲンコントロール Download PDF

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Abstract

本発明は、メジャーアレルゲンの含量及びマイナーアレルゲンの含量に関してアレルゲン抽出物を標準化する方法を開示する。該方法は、与えられた抽出物中のアレルゲンの相対量を決定し、続いてメジャーアレルゲンの含量及びマイナーアレルゲンの含量を、予め規定した範囲に合うように調整することを含む。また、アレルギー性の対象をプロファイリングする手段と、本発明に従って得られる抽出物又は一連の抽出物とを含む抗アレルギーキットも開示される。
【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明は、免疫学及びアレルギー学の分野に関する。特に、本発明は、免疫原性組成物中のメジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの含量の定量及び調節にとりわけ依拠する新規な製造方法によるアレルゲンワクチンの安全性の向上に関し、そのことにより該組成物が、アレルギー患者が感作されているアレルゲンのプロフィールに適合する。
発明の背景
アレルギー、すなわちI型過敏症は、世界中で何百万人もの人に影響を与え、その発生率は先進国において過去数年間にわたって増加しており、人的及び経済的経費の増加を導いている(1)。アレルギーの重要な臨床症状発現は、喘息、枯草熱、湿疹及び胃腸障害を含む。一般的にアレルギーは生命を脅かす疾患とはみなされないが、喘息は、年間にかなりの数の死者の原因となっている。
アレルギーは、外来の、通常は非病原性の物質に対する不適切な免疫反応により引き起こされる。アレルギー反応は、特定の個体があるアレルゲンに感作されるという意味において特異的であるが、該個体は、アレルギー疾患を引き起こすことが知られているその他の物質に対してアレルギー反応を必ずしも示さない。アレルギーの表現型は、標的器官の粘膜の著しい炎症と、血流中並びに肥満細胞及び好塩基性顆粒球(「好塩基球」)の表面上でのIgEクラスのアレルゲン特異的抗体の存在とを特徴とする。
IgE媒介アレルギー疾患は、一般的にはアレルゲンと呼ばれるタンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質及び多糖類により惹起される。アレルゲンへの曝露は吸入、接触、経口摂取又は注射により起こり得る。最も重要なアレルゲンの源は、環境空気中のあるサイズの最も優勢な(prevalent)粒子の中から見出される。これらの源は、著しく一般的であり、イネ科草本花粉(grass pollens)及びチリダニ類(house dust mite)の糞粒子を含むが、これらは合わせて全てのアレルギーの約50%の原因である。世界的には、動物の鱗屑、すなわちネコ及びイヌの鱗屑、その他の花粉、例えばヨモギ花粉(mugwort pollens)、並びに微小の菌類(micro-fungi)、例えばアルテルナリア属(Alternaria)のものも重要である。地方によってはその他の花粉、例えば北及び中央ヨーロッパではカバ(birch)の花粉、南ヨーロッパではオリーブ及びヒカゲミズ(pellitory-of-the-wall)、アメリカ合衆国の東及び中央ではブタクサ(ragweed)、及び日本ではニホンスギ(Japanese cedar)花粉が優勢であり得る。昆虫及びその生産物、とりわけミツバチ及びスズメバチの毒素、並びに食物は、それぞれ、全てのアレルギーの約2%を占める。
アレルギー疾患の管理は、診断と予防的治療を含む治療とを含む。アレルギーの診断は、アレルゲン特異的IgEの証明とアレルゲンの源の同定に関する。多くの場合、注意深い既往歴が、アレルギー診断及び原因(offending)アレルゲン源物質の同定に充分であり得る。しかし、しばしば、診断は客観的な方法、例えば皮膚穿刺試験、血液検査又は誘発試験により支持される。
アレルギー疾患のための現在の治療は、主に症状の緩和である。患者は、IgE抗体の形成を抑制せず、しばしば有害な副作用を有する薬剤、例えば抗ヒスタミン剤及びステロイド剤を用いて治療される。WHOのポジションペーパー(2)に記載されているように、免疫療法は、アレルギー疾患の自然経過に影響でき、アレルギー性鼻炎の患者における喘息の発生を予防し得る唯一の治療である(2)。免疫療法は、適切なアレルゲン性抽出物の漸増量を投与することにより患者における免疫応答を変調する。
治療に用いられるアレルゲン性抽出物は、天然の源から単離したタンパク質及び非タンパク質成分の粗混合物である。1966年にIgE分子が発見されると(3、4)、70年及び80年代には科学的方法が導入されて、アレルゲン性抽出物を標準化した(5)。これらの方法は、新しく生産されたバッチを、その力価について選択された患者で皮膚試験により予め測定された参照抽出物と比較することに基づいていた。相対的アレルゲン性力価のインビトロでの評価のためにほとんど用いられる方法は、RAST阻害又はそれに関連する方法である(6)。これらの方法における必須の試薬は、アレルギー性患者のパネルからの血清プールであり、力価は、固相に結合させた参照抽出物への血清プールからの特異的IgEの結合に対して試験された抽出物による阻害を、参照抽出物により達成された阻害と比較することにより測定される。このようにして、アレルゲン抽出物の力価は、アレルゲン抽出物中のいずれの分子上のいずれのエピトープに対して特異的ないずれの個別のIgE分子からのアレルゲン性活性への貢献の合計である。よって、力価測定は、常に、血清プール又は選択される患者パネル、及び参照抽出物に依存することになる。さらに、これらの方法は、抽出物の質的な組成、つまり個別のアレルゲンの相対的濃度についての情報を全く提供しない。近年、ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体技術の出現と共に、モノクローナル抗体に基づくイムノアッセイによるメジャーアレルゲン含量の決定を介して、アレルゲン性抽出物の標準化において著しい進歩がなされている。いくつかの種について、ただ1つのメジャーアレルゲン、例えばネコ(Felis domesticus) (7)又はヘラオオバコ(Plantago lanceolata) (8)を用いて、メジャーアレルゲンの濃度と抽出物の力価との間の良好な相関関係が観察され、これらの技術は、決定された力価についてアレルゲン濃度を定義することを可能にするだけでなく、ある種について、例えばヒョウヒ属(Dermatophagoides)のダニ(9)についての2つのメジャーアレルゲンの間の最適な比を定義することも可能にした。これらの著しい進展は広く承認され、メジャーアレルゲン用量は、最近では、免疫療法の効能の予測における鍵となるパラメータであると考えられている(10)。
にもかかわらず、アレルゲン抽出物を用いた免疫療法にアレルギー患者を供するときに、予期せぬ有害作用がいまだに大きな問題となっている。
よって、その効果にもかかわらず、主にアレルギー性副反応の危険性のために、特異的なアレルギーのワクチン接種は広く用いられてはいない。従来の特異的アレルギーワクチン接種は、長期間にわたって与えられる複数の皮下免疫化を用いて行われる。各注射の後に、アナフィラキシー副反応の危険性のために、患者は、30分間の医療手当てを受けなければならないが、その副反応が生命を脅かすことは非常に希である。さらに、診療所は、緊急治療を補助する備えがなければならない。アレルギーワクチンの安全性を高めることが、より広く普及した使用を促進し、主要な健康及び経済的な問題の解決に貢献し、同時に、アレルギー患者の生活の質を改善することは疑いがない。
結果として、安全性が改善されたアレルゲン抽出物を提供する必要性が存在する。
発明の要約
「メジャーアレルゲン」の用語は、定められたアレルゲン抽出物にアレルギー性の患者の一般的な個体群中での特定のアレルゲンに対する感作の罹患率の統計学的推定に基づく。つまり、患者の>50%において感作を引き起こすアレルゲンのみが、「メジャーアレルゲン」とよばれる(11)。にもかかわらず、本発明者らは、非常に重要な臨床的に関係する因子、すなわち、個々の患者が産生し得るメジャー又はマイナーのいずれかの特定のアレルゲンに対するIgE抗体の量及び親和性が、現在の標準化方法では考慮されていないことに注目した。
非常に最近、本発明者らのグループは、医療従事者においてラテックス免疫療法での最大耐量と、Hev b 6.01 (プロヘバイン)に対する特異的IgEの血清濃度との間の著しい負の相関関係を見出している(r=−0.72、p= 0.012、Sastre Jら, 2006, Allergy 61:206〜210を参照)。この結果は、他のアレルゲンにも広げることができ、それにより特定のアレルゲンに対する高いIgEレベルが免疫治療計画におけるこの特定のアレルゲンについての耐量をより低くすることを意味し得る可能性が高い。血清プールを用いるIgEイムノアッセイ又はメジャーアレルゲンイムノアッセイに基づく現在の標準化方法は、妥当な方法でメジャーアレルゲンのレベル及びそれらの安全用量を制御できる。しかし、普及していないアレルゲンについては、主に、2つの条件:感作された患者におけるアレルゲンに対する特異的IgEの高いレベルと、入手可能な原材料におけるアレルゲン含量の重要な変動性(variability)とが満たされているかについていくらか不確定である。統計的にマイナーなアレルゲンは、これらの特定のアレルゲンに対する高いレベルの特異的IgEを結局は有しているある患者にとっては潜在的に有害であり得るにもかかわらず、最近、所定のアレルゲン性抽出物に対して感受性がある全ての患者は、より優勢なアレルゲンの濃度に関してのみ量的に制御されているが、統計的にマイナーなアレルゲンの濃度は無視されている抽出物の構成成分の全てを含有する同じ複合混合物を与えられ続けている。現在市場にある最高品質のアレルゲン性抽出物は、品質管理のための定性的方法、例えばSDS-PAGE/ウェスタンブロット又は免疫電気泳動に単純に供されて、マイナーアレルゲンの存在が試験されている。
本発明によると、マイナーアレルゲンの濃度の量的な制御の欠如が、免疫療法の処置を投与するときに観察される副作用の割合の原因であろう。アナフィラキシーは、これらの処置に関連する主要な危険性である。例えば、本発明者らは、アレルゲン抽出物の決められたバッチに明らかに連結する、有害反応の周期的な集団を観察している。しかし、詳細な分析によると、品質管理について確立された方法で分析すると、抽出物の質との関連は確立できず、このことは、有害反応は制御されていないパラメータにより引き起こされているであろうことを示唆する。そして、本発明者らは、このパラメータが、通常は「マイナー」であるとされるアレルゲンの濃度であろうと考える。
上記と同じ考え方は、診断に現在用いられているアレルゲン性抽出物についても適用できる。つまり、統計学的にマイナーなアレルゲンに対してもっぱら感作された患者は、用いた抽出物中で彼らが感作されているマイナーアレルゲンの濃度が低すぎるか、又は高すぎる場合に正確でない診断を受け、彼らは試験の間に望ましくない副作用を受ける可能性がある。
本発明は、臨床での使用を意図する、アレルゲン抽出物の安全性を増大させるための手段を提供する。本発明は、よって、アレルギー患者のアレルゲン感作プロフィールの定義、及びそのようなアレルゲン感作プロフィールに適合したアレルギーワクチンの作製方法の実行に関する。これらの作製方法は、マイナーアレルゲンについての定量方法を含むことが好ましい。
アレルゲンワクチンの製造に現在用いられている標準化方法は、抽出物中に存在するアレルゲンに対する個別の患者のIgE抗体応答を考慮に入れていない。各アレルギー患者は、その他の因子の中でも遺伝、曝露の経路及びアレルゲンの源に対する曝露の強さに依存する、原因アレルゲン源物質に対する独特の免疫応答を増す。結局、患者が反応するアレルゲン性源のタンパク質、並びに産生されるIgE抗体の濃度及び親和性は、各患者で異なる。特に、ある患者は、アレルギー個体群の大部分を感作しないアレルゲンに対して強く反応することができ、つまり、これらの患者はマイナーアレルゲンに対して強く反応する。よって、より安全な免疫療法処置は、制御された手順に従って、メジャー及びマイナーのアレルゲンの適切なバランスを確かにし、それらの濃度の変動(variation)を最小限にし、及び/又は一般的に「マイナー」とみなされるいくつかのアレルゲンがメジャーアレルゲンとして機能する特定の部分個体群に対してアレルゲン濃度を合わせて製造されたアレルゲン性ワクチンの投与に基づくべきである。よって、所望により原料の選択及び混合を含む製造手順は、ワクチンが投与されるアレルギー患者を感作するマイナーアレルゲンの制御に基づいて確立されなければならない。
よって、本発明は、3つの重要で新規な実現を提供する。1) アレルゲン抽出物を用いるときに、メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの相対量を量的に制御することが有利である。なぜなら、個別のバッチ間で大きい変動が存在し得るからである。2) 同じアレルゲン性物質に対してアレルギー性の異なる個体群又は部分個体群(sub-populations)は著しく異なるアレルゲン性プロフィールを有することができ、このことは、アレルゲン抽出物及びアレルゲン組成物を各個体群に適応させることができることを意味する。3) 後者の実現は、天然の源からの抽出物ではなく、種々のアレルゲンがそれらの相対濃度に関してバランスが取れているアレルゲン組成物の作製を可能にもするので、いくつかの(several)(メジャー)アレルゲンにアレルギー性であることにより特徴付けられる個体群又は個体が1種の組成物(その個体群の全てのメジャーアレルゲンに富む)を用いて免疫化できるが、2、3の(a few)アレルゲン又は1つの単一アレルゲンにアレルギー性であることにより特徴付けられる個体群は別の組成物を用いて免疫化できる。後者の知見は、組換え生産されるアレルゲン組成物の設計における新規なストラテジを切り開く。
本発明は、例えば、現存するアレルゲン抽出物/ワクチン、例えば本願の譲受人であるアルク−アベッロにより市販される以下の製品のいずれの1つを改良するのに適する。
抽出物をベースとするアレルゲンワクチンは、よって、すでに市場に存在する。例えば本願の譲受人は、以下のアレルゲンワクチン製品を市販している。
・Alutard SQ:皮下投与用のアレルゲン抽出物のミョウバンデポー製剤。
・Aquagen:皮下投与用のミョウバンを含まない水性凍結乾燥アレルギーワクチン。
・Pharmalgen:皮下投与用の、再構成用の希釈剤と共に包装された凍結乾燥製品。
・SLITOne:単回用量で経口投与用の単回用量容器に入った液体アレルゲン抽出物。
・Pangramin SLIT:経口滴下投与用の液体グリセロール処方アレルゲン抽出物。
これらの全ての製品は、メジャーアレルゲン含量を制御するための現存する標準に従って現在制御されているアレルゲン抽出物を含有するが、安全性を高めるために本発明の方法に供することができる。
発明の詳細な開示
定義
本発明の境界を明確に理解するために、本明細書において用いられるいくつかの用語を、以下で定義する。
「アレルゲン」の用語は、アレルギー、すなわちアレルゲンへの繰り返しの曝露に際してIgE媒介反応を誘導し得るいずれの分子のことをいう。天然に存在するアレルゲンの例は、花粉アレルゲン(木本(tree)、雑草(weed)、ハーブ及びイネ科草本の花粉アレルゲン)、ダニアレルゲン(例えばチリダニ類及び貯蔵庫ダニ(storage mite))、昆虫アレルゲン(吸入性、唾液及び毒素起源のアレルゲン)、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、鳥類などからの例えば唾液、尿、毛髪及び鱗屑、羽毛からの動物アレルゲン、真菌(fungal)又はかび(mould)のアレルゲン及び食物アレルゲンを含む。ほとんどのアレルゲンは、タンパク性であるが、本発明はタンパク性アレルゲンに限定されない。アレルゲンは、アレルゲン抽出物の部分を形成し得るか、又は精製アレルゲン、改変アレルゲン若しくは組換えアレルゲン若しくは組換え変異アレルゲン又は30アミノ酸を超えるいずれのタンパク性アレルゲンフラグメントを構成し得る。
天然に存在するアレルゲンの例は、花粉アレルゲン(木本、ハーブ、雑草及びイネ科草本の花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(吸入性、唾液及び毒素のアレルゲン、例えばダニアレルゲン、ゴキブリアレルゲン及びユスリカアレルゲン、膜翅類毒素アレルゲン)、尿、動物の毛及び鱗屑アレルゲン(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウス、モルモット、ウサギなど)、皮膚及び羽毛のアレルゲン(鳥類から)、ゴム、蠕虫(worms)及び食物アレルゲンを含む。木本、イネ科草本及びハーブからの重要な花粉アレルゲンは、分類学上の、ブナ目(Fagales)、シソ目(Lamiales)、マツ目(Pinales)及びスズカケノキ科(Platanaceae)(例えばカバ(Birch)(カバノキ属(Betula))、ハンノキ(alder)(ハンノキ属(Alnus))、セイヨウハシバミ(hazel)(ハシバミ属(Corylus))、セイヨウシデ(hornbeam)(クマシデ属(Carpinus))及びオリーブ(olive)(オリーブ属(Olea))、シーダー(cedar)(スギ属(Cryptomeria)及びビャクシン属(Juniperus))、プラタナス(Plane tree)(プラタナス属(Platanus))を含む)、イネ目(Poales)(例えば、ドクムギ属(Lolium)、アワガエリ属(Phleum)、イチゴツナギ属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、シラゲガヤ属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)及びモロコシ属(Sorghum)のイネ科草本を含む)、キク目(Asterales)、イラクサ目(Urticales)及びバラ目(Rosales)(例えばブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)及びヒカゲミズ属(Parietaria)のハーブを含む)に由来するものである。
その他の重要な吸入性アレルゲンは、ヒョウヒ属(Dermatophagoides)及びユーログリファス属(Euroglyphus)のチリダニ、貯蔵庫ダニ(storage mite)(例えば、レピドグリフィス属(Lepidoglyphys)、ニクダニ属(Glycyphagus)及びケナガコナダニ属(Tyrophagus))及びブロミア(Blomia)のようなダニに由来するもの、ゴキブリ、ユスリカ及びノミ(flea)(例えば、チャバネゴキブリ属(Blatella)、ペリプラネタ属(Periplaneta)、キロノムス属(Chironomus)及びクテノケファリデス属(Ctenocephalides))に由来するもの、及び哺乳動物(例えば、ネコ(ネコ属(Felis))、イヌ(イヌ属(Canis))、ウシ(ウシ属(Bos))、ウマ(ウマ属(Equus))、ラット(クマネズミ属(Rattus))、マウス(ハツカネズミ属(Mus))及びモルモット(テンジクネズミ属(Cavia))に由来するもの、毒素アレルゲン(刺すか又は噛み付く昆虫(分類学上のハチ目(Hymenoptera)(ミツバチ(ミツバチ上科(superfamily Apidae))、スズメバチ(スズメバチ上科(superfamily Vespidea))及びアリ(アリ上科(superfamily Formicoidae))を含む)に由来するもの)である。真菌に由来する重要な吸入性アレルゲンは、例えばアルテルナリア属(Alternaria)及びクラドスポリウム属(Cladosporium)に由来するものである。
アレルゲンの例は、Bet v 1、Bet v 2、Aln g 1、Cor a 1及びCar b 1、Cas s 1、Cas s 5、Que a 1、Cry j 1、Cry j 2、Cup a 1、Cup s 1、Jun a 1、Jun a 2、Jun a 3、Jun o 4、Jun s 1、Jun v 1、Ole e 1、Ole e 2、Ole e 5、Ole e 8、Ole e 9、Syr v 1、Lig v 1、Pla l 1、Pla a 2、Pla a 3、Amb a 1、Amb a 2、Amb a 3、Amb a 5、Amb a 6、Amb a 7、Amb t 5、Art v 1、Art v 2、Art v 3、Art v 4、Par j 1、Par j 2、Par j 3、Par o 1、Sal k 1、Ave e 1、Cyn d 1、Cyn d 7、Cyn d 12、Dac g 1、Dag g 2、Dag g 3、Fes p 1、Fes p 4、Hol l 1、Lol p 1、Lol p 5、Lol p 3、Lol p 2、Pha a 1、Pas n 1、Phl p 1、Phl p 2、Phl p 3、Phl p 4、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Sec c 1、Sec c 5、Sor h 1、Der f 1、Der f 2、Der f 3、Der f 7、Der f 10、Der f 11、Der f 14、Der p 1、Der p 2、Der p 3、Der p 4、Der p 5、Der p 6、Der p 7、Der p 8、Der p 10、Der m 1、Eur m 2、Eur m 14、Gly d 1、Gly d 2、Lep d 2、Lep d 5、Lep d 7、Lep d 10、Lep d 13、Blo t 1、Blo t 3、Blo t 6、Blo t 10、Tyr p 2、Bla g 1、Bla g 2、Bla g 4、Bla g 5、Bla g 6、Per a 1、Per a 3、Per a 7、Per f 1、Fel d 1、Fel d 2、Can f 1、Can f 2、Can f 3、Bos d 2、Bos d 4、Bos d 8、Equ c 1、Equ c 2、Equ c 3、Mus m 1、Rat n 1、Cav p1、Cav p 2、Apis m 1、Api m 2、Apis m 4、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Dol m 1、Dol m 2、Dol m 5、Pol a 1、Pol a 2、Pol a 5、Sol i 1、Sol i 2、Sol i 3及びSol i 4、Alt a 1、Alt a 2、Alt a 3、Alt a 6、Cla h 1、Cha l 2、Cha l 3、Asp f 1、Asp f 2、Asp f 3、Mal d 1、Gly m 1、Gly m 2、Gly m 3、Ara h 1、Ara h 2、Ara h 3、Ara h 4、Ara h 5を含む。同定された単一アレルゲンの総合的なリストについては、ウェブサイト"The official 'List of Allergens'" (Allergen Nomenclature. International Union of Immunological Societies, Allergen Nomenclature Sub-Committee) http://www.allergen.org/を参照。
本発明の好ましい実施形態において、アレルゲンは、木本花粉アレルゲン又はイネ科草本花粉アレルゲン又はチリダニアレルゲン又はブタクサアレルゲン又はシーダー花粉又はネコアレルゲン又はゴキブリアレルゲンである。別の好ましいアレルゲンは、オリーブ木本花粉アレルゲンである。
「アレルゲン感作プロフィール」の用語は、本明細書の関係において、アレルゲン性物質由来の個別のアレルゲンに対して個体又は場合により個体群により示されるIgE反応性のパターンを意味することを意図する。個体において、プロフィールは、あるアレルゲンに対する個体におけるIgE反応性の情報のみを与えるが、個体群においては、個体群における与えられたアレルゲンに反応する個体のパーセンテージの情報を与えるさらなる次元(dimension)を含む統計的な表示(readout)も提供する。
本明細書において用いられる「アレルゲン抽出物」の表現は、"Allergenic extracts", H. Ipsenら, Allergy, principle and practise (S. Manning編) 1993, Mosby-Year Book, St. Louisの第20章に一般的に記載されるような生物学的アレルゲン源物質の抽出により得られる抽出物のことである。このような抽出物は、水溶性物質の水性抽出、続いてろ過のような精製工程により溶液、すなわち抽出物を得ることにより得ることができる。抽出物は、次いで、さらなる精製及び/又は実質的に全ての水分を除去する凍結乾燥のような加工に供することができる。一般的に、アレルゲン抽出物は、タンパク質及びその他の分子の混合物を含む。
アレルゲンタンパク質は、しばしば、「メジャーアレルゲン」又は「マイナーアレルゲン」に分類される。アレルゲン抽出物は、一般的に、メジャーアレルゲンとマイナーアレルゲンの両方を含む。メジャーアレルゲンは、平均的なアレルゲン抽出物の約5〜15%、より頻繁には約10%を構成する。アレルゲンの分類は、特定のアレルゲンの臨床的重要性の評価に基づき、以下のように与えられる。抽出物中に見出される重要なメジャーアレルゲンの例は、イネ科草本グループ1及び5及び6アレルゲン(例えばPhl p 1、5及び6)、チリダニグループ1及び2アレルゲン(例えばDer p 1、Der p 2)、木本花粉アレルゲン1 (例えばBet v 1、Ole e 1)、シーダー花粉アレルゲン1及び2 (例えばCry j 1、Cry j 2)、ブタクサ花粉1及び2 (Amb a 1、Amb a 2)、ネコアレルゲン1 (すなわちFel d1)、ゴキブリアレルゲン(例えばPer a 1又はPer f 1)を含む。平均的なアレルギー性の人は、1又は複数種のアレルゲンに対して感作されかつ反応し、1又は複数種のアレルゲンに対しても感作され反応し得る。
本明細書で言及するアレルゲン抽出物の量は、そのようなアレルゲン抽出物の乾燥物質含量をいう。
好ましくは、乾燥物質の水分含量は10%を超えず、より好ましくは5重量%を超えない。
本明細書において用いられる「生物学的アレルゲン源物質」の表現は、1又は複数種のアレルゲンを含むいずれの生物学的物質のことをいう。このような物質の例は、コナダニ(acarids) PMB (ダニの純体(Pure Mite Body))又はWMC (全ダニ培養物(Whole Mite Culture))、例えばイネ科草本、ハーブ、雑草及び木本からの脱脂又は非脱脂花粉、動物の毛及び鱗屑、裸皮(pelt)、真菌の菌糸及び胞子、昆虫の体、毒素又は唾液、並びに食物である。「生物学的アレルゲン源物質」の用語は、本明細書において、用語「アレルゲン性物質」と入れ替え可能である。
「メジャーアレルゲン」は、上記で定義されるアレルゲンであり、これは、与えられた個体群において、該アレルゲンが由来するアレルゲン性物質にアレルギー性であるアレルギー患者の50%より多くで感作を引き起こす。メジャーアレルゲンとしてのアレルゲンの分類は、いくつかの試験の主題であり得る。アレルゲンは、患者の少なくとも25%が強いIgE結合(スコア3)を示し、患者の少なくとも50%が中程度の結合(スコア2)を示せば、通常は、メジャーアレルゲンと分類される。該結合は、CRIE (交差放射性免疫電気泳動(Crossed Radio Immune Electrophoresis))により決定される(CRIEの強い結合は、すなわち1日後のX線フィルムにおいて目に見えるIgE-結合;CRIEの中程度の結合は、すなわち3日後の結合;CRIEの弱い結合は、すなわち10日後の結合)。その他の全てのアレルゲンは、結局は「マイナーアレルゲン」とよばれる。
IgE結合を決定するのに、例えばIgE-ブロットのようなその他の方法を用いることもできる。
一般的に認識されるメジャーアレルゲンは、イネ科草本グループ1アレルゲン、例えばphl p 1、lol p 1、sor h 1、dac g 1、cyn d 1、hol l 1、pha a 1、イネ科草本グループ2/3アレルゲン、例えばphl p 2/3、lol p 2/3、イネ科草本グループ5アレルゲン、例えばphl p 5、lol p 5、dac g 5、poa p 5、イネ科草本グループ6アレルゲン、例えばphl p 6、poa p 6、木本花粉グループ1アレルゲン、例えばbet v 1、aln g 1、cor a 1、car b 1、ole e 1、ダニグループ1アレルゲン、例えばder p 1、der f 1、eur m 1、ダニグループ2アレルゲン、例えばder p 2、der f 2、eur m 2、Blo t 1、ネコアレルゲン、例えばfel d 1、シーダーグループ1及びグループ2アレルゲン、例えばcry j 1、cry j 2、ブタクサ又はオオブタクサ(short or giant ragweed)花粉アレルゲン、例えばamb a 1、amb a 2、amb t 1、amb t 2、その他の雑草アレルゲン、例えばpar j 1、par o 1、par j 2、昆虫アレルゲン、例えばper a 1、bla g 1、per f 1、ves v 1、ves v 5、pol a 1、dol m 1を含む。
本明細書の記載から明らかになるように、マイナーアレルゲンは、アレルギー性の個体群の部分集合についてのみ考慮する場合に、「メジャーアレルゲン」を構成する(なぜなら、ある個体はマイナーアレルゲンに反応し、これらの個体は、必然的に、より大きいアレルギー性個体群の部分集合を構成するからである)。このことは、用語「メジャーアレルゲン」及び「マイナーアレルゲン」が、研究しているアレルギー性個体群に関連し、それに依存するという事実を強調する。しかし、本明細書の開示及び請求の範囲内においてあるアレルゲンをメジャーアレルゲンとみなすためには、「メジャーアレルゲン」と反応する個体群があるサイズ、典型的には少なくとも30個体を有し、かつ個体群を容易に同定可能にする少なくとも1つのさらなる一般的な人口パラメータに関してより大きいアレルギー性個体群において他の患者から区別可能でなければならない。このようなパラメータは地理的(個体群中の全ての患者は、規定された地理的領域に居住している)、遺伝的(個体群中の全ての患者は、同じ起源を有するか又は共通の遺伝又は表現型のマーカーを共有している)、環境的(例えば、全ての個体は共通の曝露履歴を共有している)、又はいずれのその他の人口パラメータであり得る。
本明細書における「標準化(standardized)アレルゲン抽出物」は、特定のアレルゲン性物質からのアレルゲン抽出物のことをいい、ここで抽出物中のアレルゲン成分は、メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの間の適切なバランス、並びに個別のアレルゲンの適切で安全な量を得るために調節されている。特に、本発明の標準化アレルゲン抽出物は、抽出物が所定の個体群のアレルゲン感作プロフィールに対して、このような個体群のメンバーを免疫化したときに有害な影響を最小限にするように適合されているものである。
用語「免疫学的有効量」は、単一用量又は漸増用量で1回又は繰り返し摂取する場合に、例えば、適応免疫応答をもたらし、よってアレルギー性患者を脱感作する手段として働くアレルゲンの用量を意味するべきである。好ましくは、この用語は、治療計画に従って投与形態を繰り返し投与した後に(2、3回の適用から数ヶ月にわたる1日当たり少なくとも1回の適用にわたる期間)、適応免疫応答を誘導するのに必要な各投与形態中のアレルゲンの量を意味するべきである。好ましくは、脱感作は、該用量を投与してアレルギー症状が緩和されることを含む。臨床的アレルギー症状は、鼻炎、結膜炎、喘息、蕁麻疹、湿疹を含み、一般的な症状、例えば眼及び鼻の発赤及び痒み、鼻の痒み及び鼻水、コーチング(coaching)、喘鳴、息切れ、痒み及び組織の腫脹を有する皮膚、眼、鼻、上下気道の反応を含む。
「最大限に許容できる」量又は用量は、熟練した医師が患者に投与する特定の物質の最大限に安全な用量とみなす用量である。アレルゲンについて、該量は、アレルゲン的に非常に小さい(マイクログラム範囲以下(in the lower microgram range))であるが、感作は、通常、安全性の理由から最大限に許容できるとみなされる、より低い用量で開始する。
用語「単回投与形態」は、本発明に従って作製されるアレルゲン抽出物に由来する/から単離される1回用量製剤(one-dose formulation)を示すことを意図する。投与形態は、抽出物を濃縮又は抽出物を希釈し、当該技術において知られるいずれの適切な投与形態に従って単回投与形態を処方することにより得ることができる。このことは、単回投与形態中のアレルゲンの全濃度が、抽出物中の濃度とは異なり得るが、抽出物中の個別のアレルゲンの量同士の比は、単回投与形態中の同じ個別のアレルゲンの量同士の比と本質的に同一であることを意味する。
生物学的アレルゲン源物質/アレルゲン性物質は、混入物質、例えばアレルゲン花粉源物質についての異質の(foreign)花粉並びに植物及び花の破片を含み得る。
混入の程度は最小限にするべきである。好ましくは、混入物質の含量は、生物学的源物質の10% (W/W)を超えないはずである。
通常、アレルゲン抽出物は、BCA又はローリーのような標準的なタンパク質アッセイで測定して、アレルゲン抽出物の乾燥物質含量の少なくとも10%のタンパク質を含有し、残りは他の「非タンパク質物質」で構成される。非タンパク質物質は、生物学的アレルゲン源から生じる脂質、炭水化物又は結合水のような成分であり得る。
アレルゲン抽出物は、液体アレルゲン抽出物を800マイクロバール未満の圧力で100時間までの期間凍結乾燥して水を除去することにより得ることができる凍結乾燥物質の形で製剤化して貯蔵できる。
本発明に導く知見についての簡単な考察
本発明者らは、アレルギー性有害反応が、時間的に集中する傾向があり、規定された地理的領域に限定された空間に集中する場合もあることを観察している。通常、有害反応の原因についての調査は、アレルゲンワクチンの特定のバッチの組成の調査に焦点を当て、一般的に、これらのバッチは確立された品質管理規格を充足している。
よって、本発明者らは、これらの有害反応についての代替の説明について探索することを目的とした。まず、アレルゲン性抽出物の変動性に、次いで、統計的にマイナーなアレルゲンに対する患者の異なる応答に焦点を当てた。本発明を説明する実施例において、アレルゲン抽出物の組成及び患者のIgE抗体応答における驚くべきかつ極めて大きい変動性が観察される。
実施例において示されるアレルゲン性抽出物のほとんどが、現在の標準化の基準に従って確立された品質管理、すなわち全アレルゲン性力価及びメジャーアレルゲン含量を充足して市販できることに注目することに価値がある。さらに、本発明者らは、通常はマイナーアレルゲンと定義されるアレルゲンに対して非常に強いIgE応答を示すいくらかの患者を検出している。
このことは、以下に示すアルテルナリア属のアレルゲンについての実施例に関する図8でも明らかである。オリーブ花粉への感作に関する実施例でもみられるように、異なる環境花粉レベルに曝露された患者が異なる感作プロフィールを示すことの証拠が示される場合もある。つまり、オリーブの木が大規模に生息している地理的領域に居住している患者は、これらの領域外に居住している患者からのIgEによってはほとんど認識されないアレルゲン(Ole e 9)に対して、高いIgEレベルを示す。メジャー及びマイナーアレルゲンの定義によると、このアレルゲンは、オリーブ木本花粉に感作された患者の50%を超えては認識されないので、マイナーアレルゲンとみなされるべきである。しかし、オリーブの木が大規模に生息しているこれらの特定の領域では、このアレルゲンは、患者の高い割合により認識されるので、メジャーアレルゲンとみなされるはずである。さらに、本発明者らは、Ole e 9に感作された患者の全てが、「伝統的な」オリーブ木本アレルゲンOle e 1にも感作され、Ole e 9に対するIgEレベルの中央値が高いことを見出した。このことが、高度に曝露されたアレルギー患者を、Ole e 9の含量が適切に制御されていないアレルゲンワクチンで治療することがアナフィラキシー反応の危険性の上昇を意味することの証明であると考えられる。
既知の含量のこのアレルゲンを含むオリーブ木本アレルゲン性生成物の製造方法を確立することを目的として、本発明者らは、Ole e 9を定量するELISAを開発した。このELISAを用いてオリーブ木本花粉の異なるバッチを試験することにより、このアレルゲンの含量の大きく予期しない変動性が明らかになり、また、Ole e 1とOle e 9の比における高い変動性も明らかになった。
現在の標準化方法を用いると、重篤な有害反応の危険性が高い、Ole e 9の濃度において160倍の変動を有するアレルゲンワクチンのバッチが発売され得ることに注目する価値がある。結局、本発明の方法を用いることにより、アレルゲン抽出物の変動性を大きく減少でき、メジャーアレルゲンとマイナーアレルゲンとの間のバランスを、有害反応の危険性を最小限にする適切な範囲内に維持できる。
この開発された技術は、製造中(in-process)の管理、並びに中間生成物及び最終生成物の分析のためだけでなく、より重要なことには、原材料の選択のためにも適用できる。アレルゲン源物質の生物学的起源、例えば花粉、カビ、ダニなどは、それらに固有の変動性を与える。特に、花粉は、種、地理的な位置及び花粉の季節に応じてバッチ間の高い変動性を示す。メジャーアレルゲンとマイナーアレルゲンの適切なバランスを有する単一の花粉バッチを見出して、アレルゲンワクチンの一定のバッチの生産のために類似のバッチの供給を確実にすることは、ほとんどありそうにない。しかし、本明細書における知見及び開発されたイムノアッセイを用いて、予め分析されたいくつかの花粉バッチからの混合物を製造して、メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの適切な比を得ることができる。
本発明において考慮されるマイナーアレルゲンに関するその他の態様は、いくつかのマイナーアレルゲンは、同じ源からのメジャーアレルゲンと交差反応し得る可能性である。このような場合、メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの両方におけるIgE-交差反応性エピトープは、患者からのIgE抗体の結合に対する付加的な影響を有するだろう。よって、メジャーアレルゲン含量が抽出物中で定量されるが、制御されていない高含量のマイナーアレルゲンは、交差反応性エピトープに感作された患者における有害反応の危険性の上昇を意味するであろう。この状況の例は、実施例に示す。本発明者らは、メジャーアレルゲンPhl p 5と交差反応するチモシー(Phleum pretense)の花粉中のマイナーアレルゲン(Phl p 6)を定量するイムノアッセイを開発した。チモシーのいくつかのバッチの分析により、アレルゲンワクチンの製造する場合に考慮に入れなくてはならないこのマイナーアレルゲンの著しい変動性が示されている。
まとめると、統計的にマイナーなアレルゲンは、アレルギー患者のわずか(a fraction of allergic patients)に非常に関係するアレルゲンであり、決定されたアレルゲン感作プロフィールと、関与するマイナーアレルゲンの含量が高いアレルギーワクチンの投与との組み合わせは、重篤な有害反応を導き得る。結局、アレルゲンワクチンの安全性を増加させるためには、マイナーアレルゲン含量の変動を最小限にすることが重要である。このことは、マイナーアレルゲンの含量を制御する方法を用いることにより達成できる。
抽出物の製造に関連する本発明の態様
第一の態様において、本発明は、
- アレルゲン性物質由来のアレルゲン含有抽出物を得て、
- 該アレルゲン含有抽出物中のメジャーアレルゲンの相対濃度及びマイナーアレルゲンの相対濃度を決定し(ここで、該メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンは、アレルゲン性物質にアレルギー性である個体群から得られたアレルゲン感作プロフィールに従って定義される)、
- 該メジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度を調節して、標準化抽出物を得て、1a) 該標準化抽出物から単離される1つの単回投与形態が、該アレルゲン性物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えないメジャーアレルゲンの総量を含み、及び/又は1b) 標準アレルゲン抽出物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) 該標準化抽出物から単離される1つの単回投与形態が、該メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むこととなる
ことを含む、アレルゲン性物質の標準化抽出物の製造方法に関する。
よって、本発明のこの態様は、その中のアレルゲンの相対量に関してあるアレルギー性個体群に適合したアレルゲン抽出物の作製に関する。上記のように、本発明は、このようなアレルゲン抽出物を特定のアレルギー性個体群に適応させることを可能にし、それにより免疫化プロセスにおける有害な影響の危険性を最小限にする。特に、メジャーアレルゲンの全体濃度が同じにされることが確実になるので、その他のメジャー及びマイナーアレルゲンによる有害な影響の危険性、並びにメジャーアレルゲンの交差反応が最小限になる。本発明者らの知る限りでは、このような様式で抽出物中のアレルゲン含量を制御することを試みたこと又は示唆されたことは、今までにない。
第二の態様において、本発明は、アレルゲン性物質の少なくとも2つの相互に異なる標準化抽出物を含む組を作製する方法に関し、該標準化抽出物はそれぞれ、アレルゲン性物質にアレルギー性である異なるアレルギー性個体群の免疫化に適合されており、該方法は、
- 該アレルギー性物質由来のアレルゲン含有抽出物を得て、
- 該アレルゲン含有抽出物中のアレルゲンの相対濃度を決定し、
- 該決定に基づいて、該アレルゲン性物質にアレルギー性の少なくとも2つの異なる個体群のそれぞれのについて上記の組のメンバーを製造し、該少なくとも2つの異なる個体群は異なるメジャーアレルゲンを定義し、ここで、各メンバーにおける該アレルゲンの濃度は、1a) メンバーから単離される1つの単回投与形態が、該アレルゲン性物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えないメジャーアレルゲンの総量を含み、及び/又は1b) 該標準化アレルゲン抽出物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) 上記のメンバーから得られる1つの単回投与形態が、該メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むように調整される
ことを含む。
よって、この態様は、同じアレルゲン性物質に対してアレルギー性である異なるアレルギー性個体群の免疫化に適する、異なる構成のアレルゲン抽出物の作製の可能性を提供し、それにより1) 1つの単一アレルゲンのみにアレルギー性である個体群(又は個体)の治療を最適化し、かつ2) アレルゲン性物質からの2種又はそれより多いアレルゲンに対してアレルギー性の患者における有害な影響の危険性を最小限にする。
第三の態様において、本発明は、アレルゲン性物質からの標準化アレルゲン抽出物の作製方法に関し、該方法は、該アレルゲン性物質由来のアレルゲン抽出物を得て、個別の抽出物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度を決定し、所望により抽出物中のメジャーアレルゲンの相対量及びマイナーアレルゲンの相対量を調整して、メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの相対量が予め規定された範囲内である標準化アレルゲン抽出物を得て、標準化アレルゲン抽出物から、1) メジャーアレルゲンの総量が該アレルゲン性物質からのいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超過せず、及び/又はメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンが免疫学的有効量で存在する単回投与形態の単離を可能にすることを含む。
この第三の態様は、与えられたアレルゲン抽出物がその組成について試験されるという、本発明のより単純な部分を提供する。該抽出物が、適切なアレルギー性個体群に対するアレルゲン含量の基準を充足していれば、アレルゲン抽出物は「試験に合格」して、修飾されないが、基準を充足しないアレルゲン抽出物は、本明細書において詳細に説明するアレルゲン含量の調節に供される。
本発明のある態様は、
- アレルゲン物質からアレルゲン含有抽出物を得て、
- 該アレルゲン含有抽出物中のアレルゲンの相対濃度を決定し(ここで、該アレルゲンは、アレルギー性の対象のアレルゲン感作プロフィールにより定義される)、
- 該アレルゲンの濃度を調整して、1) 該抽出物の1つの単回投与形態が、該アレルゲン性物質のいずれの1つの単一アレルゲンの最大許容量を超えないアレルゲンの総量を含み、及び/又は標準化アレルゲン抽出物中の全てのアレルゲンの濃度が量的に調節され、かつ2) 該抽出物の1つの単回投与形態が、該アレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むこととなる
ことを含む、アレルゲン性物質の標準抽出物を製造する方法である。
よって、アレルゲンの抽出物中のアレルゲン含量における大きい変動の可能性についての本発明の知見に基づくこの態様は、本発明の最も「個別にした」形である。この特定の態様において、用語「メジャー」及び「マイナー」アレルゲンは関連しないにもかかわらず、結局は免疫化される対象を危険にさらさないために、所定の抽出物のアレルゲン含量を調整することは重要である。
典型的には、アレルゲン抽出物を作製するための本発明の方法は、組成が同様の一連の抽出物を製造するために、時間の経過と共に繰り返され、時間の経過と共に患者の均一な治療計画を可能にする。よって、本発明の方法は、複数の抽出物が作製されることも必然的に伴う。この場合、該複数の抽出物のいずれの1つの中のアレルゲン濃度(例えばメジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの濃度)は、該複数の抽出物のいずれのその他の1つに比べて最大で50%の変動を有する。しかし、より小さい変動、例えば最大で40%、最大で30%、最大で25%、最大で15%、最大で5%、最大で2%、最大で1%が好ましい。
しかし、単一アレルゲンは、一般的に、メジャー及び/又はマイナーアレルゲンについて許容される変動よりも比較的大きく変動することが可能である。例えば、欧州薬局方のアレルゲン製品についてのモノグラフ(Monograph on Allergen Products of the European Pharmacopoeia)によると、規格値の50%〜200%の間のアレルゲン濃度の変動は認められる。例えば、オリーブの木(Olea europaea)抽出物中のOle e 1含量についての規格値が60μg/mlである場合、許容される変動は30〜120μg/mlである。
よって、複数の抽出物を製造する場合、本発明によると、複数の抽出物のいずれの1つの中のいずれの1つのメジャーアレルゲン及び/又はいずれの1つのマイナーアレルゲンの濃度が、複数の抽出物のいずれのその他の1つの中の濃度を6を超える係数で超過しないことが許容される。該係数は、もちろんより低くてもよく、5又は4 (これは上記のモノグラフに記載される上記の限界に従う)又は3又は2を超えない。
標準化抽出物中のアレルゲン含量がいくつかの方法により調整できることは、当業者には明確である。最も単純な方法は、当業者に知られる手段により得られた多数のアレルゲン抽出物中の関係するアレルゲンの相対量を決定し、次いでアレルゲン抽出物の2又はそれより多いバッチの適切にバランスが取れた混合物を製造するためにこれらの異なるバッチを用いて、適切にバランスが取れた標準抽出物を得る。
あるいは、あるアレルゲンは、当該技術において知られる精製方法により除かれ(最も簡便には、その高い親和性により、抗体親和性精製)、低すぎる濃度の1又は2、3のアレルゲン以外についてはアレルゲンのバランスが適切であるという希な場合には、抽出物は、関係するアレルゲンとスパイクされる。
本発明により得られる標準化抽出物は、濃縮(乾燥でさえあり得る)又は希釈のどちらも行うことができるが、本発明によると、これらはまだ、アレルゲンの相対濃度が変化しない限りは「標準化抽出物」とみなされる。
その他のアレルゲン組成物
本発明者らは、本発明の根本的な概念、すなわち「メジャー」及び「マイナー」アレルゲンが個体群に依存すると考えている。よって、例えば組換え生成物によりアレルゲンワクチンを製造する当該技術で認識されるその他の方法は、伝統的なアレルゲン抽出と同じ問題のいくつかに苦しむであろう。なぜなら、それらは、与えられたよく定義された個体群について最適化されるようには構成されていないからである。
よって、本発明は、標準アレルゲン組成物を製造する方法に関し、該方法は、個体群において反応性のメジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンを同定するように個体群のアレルゲン感作プロフィールを決定し、その後、そのようにして同定されたメジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンを混合して、1a) 標準アレルゲン組成物から単離される1つの単回投与形態中の該メジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が、アレルゲン物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えないメジャーアレルゲンの総量を含み、及び/又は1b) 標準化アレルゲン組成物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) 該アレルゲン組成物から単離される1つの単回投与形態が、該メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むこととなることを含む。標準化アレルゲン組成物は、その後、濃縮又は希釈してよい。
このような組成物中のアレルゲンは、天然の起源から単離されるか、及び/又は組換えにより生産されるか、及び/又は合成により製造されるのが好ましい。後者のオプションは、液相又は固相ペプチド合成の方法により合成できるタンパク性アレルゲン、特に小さいアレルゲンに適する。
医薬調製物(ワクチン)の製造
本発明の方法に付されるアレルゲン抽出物のバルク製造は、当該技術において公知であり、例えばAllergenic extracts (Allergy Principles and Practice, 第20章, Ipsenら, Mosby-Year Book, 1993)を参照されたい。抽出物は、ほとんどの場合、冷却若しくは凍結された抽出物又は乾燥若しくは凍結乾燥された抽出物のいずれかの形で、全体的な要件に応じて貯蔵でき、例えばWO2005/058474を参照されたい。
本発明に従って製造されるアレルゲン抽出物は、それ自体で医薬及びワクチンとして適切であるが、(当該技術において知られる方法により)さらに加工して特定の医薬調製物を製造することもできる。医薬の製造を目的とするアレルゲンの製剤に関する以下の考察を参照されたい。
よって、本発明は、アレルゲンに対する寛容を誘導するための医薬組成物を製造する方法にも関し、該方法は、本発明の方法に従って標準化抽出物又は組成物を製造し、その後、このようにして得られた標準化抽出物を、医薬的及び免疫学的に許容される担体、ビヒクル又は希釈剤とともに処方することを含む。よって、標準化抽出物は、希釈及び濃縮(例えば凍結乾燥)の両方を行うことができるので、アレルゲンのいずれの適切な濃度及び量を有する組成物を製造することが可能である。
有効成分としてペプチド配列及びポリペプチドを含むワクチンの製造は、本明細書中に参照として全て組み込まれる米国特許第4,608,251号;4,601,903号;4,599,231号;4,599,230号;4,596,792号及び4,578,770号、PCT/DK2005/000601及びWO 2004/075875に例示されるように、通常、当該技術においてよく理解されている。典型的には、このようなワクチンは、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして注射可能に製造される。注射の前に液体中に溶液又は懸濁液とするのに適する固体の形も製造できる。調製物は、乳化もできる。ワクチンは、局所、例えば粘膜投与のための液体としてもさらに調製できる。免疫学的有効成分は、医薬的に許容されかつ有効成分と共存できる賦形剤と、ワクチンの最終処方の前又はその過程においてしばしば混合される。適切な賦形剤は、例えば水、塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びそれらの組み合わせである。さらに、所望により、ワクチンは、少量の補助物質、例えば湿潤若しくは乳化剤、pH緩衝剤又はワクチンの効率を増大させるアジュバントを含み得る。以下のアジュバントの詳細な考察を参照されたい。
ワクチンは、さらに、固体投与形態、例えば圧縮又は非圧縮錠剤、カプセル及びロゼンジとして製造できる。ワクチンは、当該技術において公知の固体中間物、例えば固体投与形態にさらに処方するための顆粒、マイクロ若しくはナノ粒子又は粉末として製造できる。固体形態のワクチンは、例えばWO 2004/075875に記載され、特に速分散性固体のワクチンはUS 6,709,669、EP 1 024 824、EP 1 154 757、WO 2005/120464及びWO 2004/047794に例示され、これらの全ては参照として本明細書に組み込まれる。
ワクチンは、通常、例えば皮下、皮内(intracutaneously)、真皮内(intradermally)、真皮下(subdermally)又は筋肉内の注射による非経口で投与される。その他の投与の方法に適するさらなる製剤は、口腔粘膜製剤、すなわち経口、頬側、舌下、胃腸の製剤、坐剤を含み、腹腔内、膣内、肛門、硬膜外、脊髄及び頭蓋内の製剤も含む場合がある。坐剤について、伝統的な結合剤及び担体は、例えばポリアルカレングリコール又はトリグリセリドを含み得る。このような坐剤は、0.5%〜10%、好ましくは1〜2%の範囲の有効成分を含む混合物から作ることができる。経口及び口腔粘膜の製剤は、通常用いられる賦形剤、例えば医薬グレードのゼラチン(哺乳動物又は非哺乳動物由来)、マンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含む。非経口でない組成物は、溶液、懸濁剤、錠剤、非圧縮速分散性製剤、例えばロゼンジ、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、又は粉剤の形をとり、アレルゲンについては有効成分の含量は1‰、多くの場合は0.01〜25%、好ましくは0.1%〜10%の範囲であり得る。
アレルゲンは、中性(neutral)又は塩の形としてワクチンに処方できる。医薬的に許容される塩は、酸付加塩(ペプチドの遊離のアミノ基を用いて形成される)を含み、これは無機酸、例えば塩酸又はリン酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を用いて形成される。遊離のカルボキシル基を用いて形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄のような無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導されてもよい。化学修飾された、例えばグルタルアルデヒドで修飾されたアレルゲンも考えられる。
特にアジュバントがアレルギー性IgE応答をIgG応答に変えるためにT細胞の正しいサブセットを刺激できる場合に、ワクチンがアジュバント物質も含むことが有利であり得る場合もある。
ワクチンについてアジュバント効果を達成する種々の方法が知られている。一般的な原理及び方法は、ともに本明細書に参照として組み込まれる"The Theory and Practical Application of Adjuvants", 1995, Duncan E.S. Stewart-Tull編, John Wiley & Sons Ltd, ISBN 0-471-95170-6、及び"Vaccines: New Generation Immunological Adjuvants", 1995, Gregoriadis Gら編, Plenum Press, New York, ISBN 0-306-45283-9に説明される。
適切なアジュバントの限定しない例は、免疫標的アジュバント;免疫変調アジュバント例えばトキシン、サイトカイン及びマイコバクテリア由来成分;油製剤(oil formulation);ポリマー;ミセル形成アジュバント;サポニン;粒子;DDA;アルミニウムアジュバント;DNAアジュバント、Cpgアジュバント;γ-イヌリン;糖脂質アジュバント;非病原性細菌及びカプセル化アジュバント(encapsulating adjuvant)からなる群より選択される。
アジュバントの適用は、緩衝生理食塩水中の0.05〜0.1%溶液として通常は用いられる水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム(ミョウバン(alum))のような物質の使用を含み、0.25%溶液として用いられる糖の合成ポリマー(例えばCarbopol (登録商標))との混合、70〜101℃の範囲の温度で30秒〜2分間の加熱処理によるワクチン中のタンパク質の凝集及び架橋剤による凝集も可能である。ペプシン処理した抗体(Fabフラグメント)を用いる再活性化によるアルブミンへの凝集、シー・パルヴム(C. parvum)のような細菌細胞又はグラム陰性細菌のエンドトキシン又はリポ多糖類成分との混合、マンニドモノオレエート(Aracel A)のような医薬的に許容される油のビヒクル中での乳化又はブロック置換基として用いられるペルフルオロカーボン(Fluosol-DA)の20%溶液との乳化も行うことができる。スクアレン及びIFAのような油との混合も好ましい。
リポソーム製剤も、アジュバント効果を与えることが知られているので、リポソームアジュバントは、本発明によると好ましい。また、免疫刺激複合体マトリックスタイプ(immunostimulating complex matrix type) (ISCOM (登録商標)マトリックス)アジュバントは、本発明によると好ましい選択である。なぜなら、特に、このタイプのアジュバントがAPCによるMHCクラスII発現をアップレギュレートできることが示されているからである。ISCOM (登録商標)マトリックスは、キラヤ(Quillaja saponaria)からの(任意に分別された)サポニン(トリテルペノイド)、コレステロール及びリン脂質からなる。免疫原性タンパク質と混合したときに、得られる粒状(particulate)製剤は、サポニンが60〜70% w/w、コレステロールとリン脂質が10〜15% w/w、及びタンパク質が10〜15% w/wを構成するISCOM粒子として知られるものである。免疫刺激複合体の組成及び使用に関する詳細は、例えば、アジュバントを扱う上記の参考書に見出すことができるが、Morein Bら, 1995, Clin. Immunother. 3: 461〜475及びBarr IG及びMitchell GF, 1996, Immunol. and Cell Biol. 74: 8〜25 (ともに本明細書に参照として組み込まれる)は、完全免疫刺激複合体の調製について有用な教示を与える。
その他の可能性は、標的化及び免疫変調物質(targeting and immune modulating substances) (すなわちサイトカイン)の使用を含む。この関係において、サイトカインの合成された誘導物質、例えばポリI:Cも可能である。
適切なマイコバクテリア由来成分は、ムラミルジペプチド、完全フロイントアジュバント、RIBI、及びトレハロースのジエステル、例えばTDM及びTDEからなる群より選択される。
適切なDNAアジュバントは、免疫刺激性配列(ImmuneStimulatory Sequences) (例えばCpGモチーフ含有DNA配列)及び類似の物質を含む。
適切な糖脂質アジュバントは、US 4,803,070、US 4,806,352、US 4,866,034、US 4,,987,237、US 5,762,943、EP 0 729 473及びWO 01/46127に記載されるようなLPS (リポ多糖)化合物及び組成物及びMPL (モノホスホリルリピドA)及びそれらの誘導体 である。
適切な免疫標的アジュバントは、例えばCD40リガンド及びCD40抗体又はその特異的結合フラグメント、マンノース、Fabフラグメント及びCTLA-4からなる群より選択される。
適切なポリマーアジュバントは、デキストラン、PEG、スターチ、マンナン及びマンノース;プラスチックポリマー;並びにラテックスビーズのようなラテックスからなる群より選択される。
ワクチンのマイクロ粒子及びナノ粒子の製剤は、多くの場合、タンパク質抗原の免疫原性を増加させることが示されているので、本発明の別の好ましい実施形態である。マイクロ粒子は、ポリマー、脂質、炭水化物又は粒子をつくるために適切なその他の分子との抗原の共同製剤(co-formulations)として作られるか、マイクロ粒子は抗原自体のみからなる均質な粒子であり得る。
ポリマーベースのマイクロ粒子及びナノ粒子の例は、PLGA及びPVPベースの粒子(Gupta RKら, 1998)であり、ここでポリマーと抗原とは固体粒子に凝縮されている。脂質ベースの粒子は、ミセル内に抗原を取り込む脂質のミセル(いわゆるリポソーム)として作ることができる(Pietrobon PJ, 1995)。炭水化物ベースの粒子は、典型的には、スターチ又はキトサンのような適切な分解可能な炭水化物で作られる。炭水化物及び抗原を混合し、ポリマー粒子について用いたものと類似のプロセス(Kas HSら, 1997)で、粒子に凝縮する。US 5,219,577及びWO03/051394に記載されるリン酸カルシウム粒子も例として挙げられる。
アレルゲンのみからなる粒子は、種々の噴霧及び凍結乾燥の方法により作ることができる。本発明の目的に特に適するものは、制御されたサイズの非常に均一な粒子を作るのに用いられる臨界超過流体技術である(York P, 1999 & Shekunov Bら, 1999)。
抽出物中のアレルゲン成分の含量の制御
本発明に従って用いられかつ製造される標準化アレルゲン抽出物又は組成物中のメジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの両方の濃度を、予め決められた範囲内になるように量的に制御することが好ましい。すでに上述したように、いわゆるマイナーアレルゲンは、現在の抽出物製造方法を用いる場合は、かなり変動し得るので、臨床的に許容され、かつ臨床的に許容される医薬の製造を可能にするメジャーアレルゲンとマイナーアレルゲンとの相対濃度を定義することに対して興味がある。典型的には、標準化抽出物又は組成物中の各マイナーアレルゲンの濃度は、標準化抽出物又は組成物中の最低濃度のメジャーアレルゲンの濃度よりも低くなるように調整されるべきであるが、あるマイナーアレルゲンについては、マイナーアレルゲンが、メジャーアレルゲンの濃度よりも高いまたは低い濃度よりもむしろ、規定された濃度を有することがより重要である。実際に、マイナーアレルゲンの濃度が制御されている限りは、事実上の問題を構成することなく、マイナーアレルゲンがメジャーアレルゲンよりも豊富に存在する場合があり得る。例えば、ネコの鱗屑抽出物において、通常はマイナーアレルゲンであるアルブミンが、メジャーアレルゲンであるFel d 1よりもはるかに豊富に存在するが、ほとんどの個体群において、このことは臨床上の問題を構成しない。
にもかかわらず、単回投与形態中の最も豊富に存在するマイナーアレルゲンといずれのメジャーアレルゲンとの重量比又はモル比は、1:50を超えないが、より低い量のマイナーアレルゲンがしばしば所望され、よって、いずれのマイナーアレルゲンと最も豊富に存在するメジャーアレルゲンとの重量比又はモル比は、1:100又は1:200であっても超えるべきではない。
同様に、標準化抽出物又は組成物中の最も豊富に存在するメジャーアレルゲンと単回投与形態中のいずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比又はモル比は、30:1を超えるべきではないが、メジャーアレルゲンが可能な限り豊富な割合で存在することが所望される。よって、最も豊富に存在するメジャーアレルゲンといずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比又はモル比は、15:1を超えないことが好ましい。最も豊富に存在するメジャーアレルゲンといずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比又はモル比は、10:1を超えないことがより好ましく、5:1又は2.5:1でさえも超えないことがより好ましい。
いずれにしても、標準化アレルゲン抽出物又は組成物を製造するか又は用いる場合、これは、該アレルゲン性物質からの全てのメジャーアレルゲンを含むことが好ましい。このことは、アレルゲン性物質に対して寛容を最も効率よく誘導することを当然に確実にする。
アレルゲン性抽出物の標準化
アレルギー抽出物の分野において、国際的に受け入れられている標準化方法はない。抽出物の強さ、すなわち生物学的力価(bio-potency)のいくつかの異なる単位が存在する。用いられる方法及び用いられる単位は、通常、アレルゲン含量及び生物学的活性を測定する。その例は、SQ単位(標準化質的単位(Standardised Quality units))、BAU (生物学的アレルゲン単位(Biological Allergen Units))、BU (生物学的単位(biological units))、UM (質量単位(Units of Mass))、IU (国際単位(International Units))及びIR (反応性指数(Index of Reactivity))である。よって、抽出物は、それらの力価をSQ単位又はいずれの上記の単位で決定するために、よく定義された抽出物に対して標準化する必要がある。この内容は、"Allergenic extracts", H. Ipsenら, Allergy, principle and practise (S. Manning編) 1993, Mosby-Year Book, St. Louisの第20章、及びLowenstein H. (1980) Arb Paul Ehrlich Inst 75:122で扱われている。さらに、アレルゲンの生物学的力価を測定する通常用いられる許容される試験についての手引きは、例えばNote for Guidance on Allergen Product; The European Agency for the Evaluation of Medicinal Product, CPMP_BWP_243_96, London, 1996に見出される。
アレルゲンの特徴決定のためのいくつかの実験室試験を利用できる。最も広く用いられる技術は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、等電点電気泳動(IEF)、交差免疫電気泳動(CIE)、及びロケット免疫電気泳動(Rocket Immuno Electrophoresis) (RIE)である。個別のアレルゲンの定量は、定量免疫電気泳動法(QIE)、放射免疫拡散(Radial Immune Diffusion) (RIE)の変法によるか、又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により行うことができる。全アレルゲン活性の決定は、最も頻繁には、放射線アレルギー吸着試験(RAST)、Magic Liteアッセイ(LIA)又は関連する技術により行われる。ELISAベースの技術も用いることができる。
本発明による単回投与形態のアレルゲン含量は、よって、通常のイムノアッセイ、例えばCIE (交差免疫電気泳動)、RIE (放射性同位元素免疫電気泳動)及びSDS-PAGE (ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)、並びにメジャー及び/又はマイナーアレルゲンのような抽出物の成分に対するイムノアッセイ、例えばELISA及びMagic Like Specific IgEアッセイ(LIA)により決定できる。
与えられた抽出物の生物学的力価、すなわちインビボでのアレルゲン性活性は、いくつかの因子に依存し、その最も重要なものは、抽出物中のメジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの含量であり、これは生物学的源物質の組成とともに変動する。
所望の生物学的力価を得るために用いられるアレルゲン抽出物のグラム数での量は、問題の抽出物の種類により変動し、与えられた抽出物の種類について、アレルゲン抽出物の量は、抽出物の実際の生物学的力価と共にバッチごとに変動する。
与えられたバッチの抽出物について、所望の生物学的力価を得るために用いられるアレルゲン抽出物のグラム数での量は、以下の手順を用いて決定できる。
a) 参照抽出物の種々の量の生物学的力価を、1種又は複数のインビボ免疫学的試験を用いて決定して、生物学的力価と参照抽出物量との関係を確立する。該インビボ免疫学的試験の例は、皮膚穿刺試験(SPT)、眼粘膜誘発試験(CPT)、アレルゲンでの気管支負荷(Bronchial Challenge with Allergen) (BCA)及び1種又は複数のアレルギー症状を監視する種々の臨床試験である。例えばHaugaardら, J Allergy Clin Immunol, Vol. 91, No. 3, pp 709〜722, March 1993を参照されたい。
b) 生物学的力価と参照抽出物の確立された関係に基づいて、本発明の投与形態で用いるための1つ又は複数の関連する用量の生物学的力価を、i) アレルギー症状を治療又は緩和する効果、ii) インビボ免疫学的試験において記録される副作用、及びiii) 個体間のi)とii)の変動性の各因子のバランスを充分に考慮して選択される。バランスをとることにより、許容できないレベルの副作用を経験することなく、最大限の適切な治療効果を得る。因子のバランスをとる方法は、当業者に公知である。
見出される1つ又は複数の関連する用量の生物学的力価は、利用可能ないずれの生物学的力価の単位、例えばSQ単位、BAU、IR単位、IUで表すことができる。上記を参照されたい。
c) 参照抽出物から1種又は複数の生物学的力価参照基準抽出物を作製し、用いる場合は、参照標準抽出物の生物学的力価の単位値を、1つ又は複数の関連する用量に割り当てられている生物学的力価の単位値に基づいて算出する。例えば、BAUについてのこのような基準は、以下に説明するFDAから得ることができる。
d) 各抽出物の種類の参照基準抽出物について、抽出物の生物学的力価を評価するためのいくつかのパラメータを選択する。このような評価パラメータの例は、全アレルゲン性活性、定義されたメジャーアレルゲンの量及び抽出物の全体的な分子組成である。全アレルゲン性活性は、インビトロ競合イムノアッセイ、例えば、標準的な方法を用いて得られる抽出物に対して得られた標準化抗体混合物、例えばマウス若しくはウサギで得られた抗体、又はアレルギー患者の血清のプールを用いるELISA及びMagicLite (登録商標) 蛍光イムノアッセイ(LIA)を用いて測定できる。メジャーアレルゲンの含量は、例えばロケット免疫電気泳動(RIE)により定量し、参照基準と比較できる。全体的な分子組成は、例えば交差免疫電気泳動(CIE)及びドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を用いて調べることができる。
e) 未知の生物学的力価の与えられたバッチの抽出物(試験抽出物)について、所望の生物学的力価レベルを得るために用いられる抽出物の量(本発明による固体投与形態で用いられる有効用量)は、次のようにして決定できる。選択された評価パラメータの各々について、試験抽出物を、上記の関連する測定方法を用いて、参照基準抽出物と比較し、測定結果に基づいて、所望の生物学的力価を有する抽出物の量を算出する。
溶液中の異なるアレルゲンについての最適pHは、ほぼ全pH範囲に及び、それらの等電点(pI)も同様である。抽出物のようなアレルゲン混合物は、抽出物中の個別のアレルゲンの濃度のような因子により決定される溶解性及び安定性についての最適pHを等しく有する。よって、本発明による製剤についての可能なpH範囲を個別に決定することが構想できる。問題のアレルゲンについての最適pHは、異なるpHの製剤を用いて加速安定性試験を行うことにより決定される。このような試験の設計は、当業者に知られている。
アレルゲン抽出物は、好ましくは3.5〜10の間、より好ましくは4〜9、最も好ましくは6〜9のpHに調整される。
SQ単位:SQ単位は、アルク−アベッロ エイ/エスの"SQ biopotency"標準化法に従って決定でき、ここで、100,000 SQ単位は、基準皮下維持量に等しい。通常、1 mgの抽出物は、それが由来するアレルゲンの源と用いられる製造プロセスに依存して、100,000〜1,000,000 SQ単位を含有する。このことは、1,000,000 SQが1 mgの抽出物〜10 mgのアレルゲン抽出物に含有され、100,000 SQが0.1 mgの抽出物〜1 mgのアレルゲン抽出物に含有されることを意味する。同様に、いずれのSQ用量もアレルゲン抽出物用量の範囲に変換できる。このことに基づいて、上記のSQでの用量範囲は、mg又はμgのアレルゲン抽出物の用量範囲に再計算でき、ここで、範囲の下限SQについて、対応するアレルゲン抽出物の範囲の下限を用い、範囲の上限SQについて、対応するアレルゲン抽出物の範囲の上限を用いる。正確なアレルゲン量は、イムノアッセイ、すなわち全メジャーアレルゲン含量及び全アレルゲン活性により決定できる。
質量単位標準化法は、質量単位(例えばμg)でのアレルゲン含量が知られている調製物を参照として用いるアレルゲン特異的イムノアッセイ、主にモノクローナル抗体に基づく2サイトELISAによる、臨床での使用を意図するアレルゲン性抽出物に存在するメジャーアレルゲンの定量からなる。
BAU (生物学的アレルゲン単位)は、"Quantitative determination of relative potency of allergenic extracts" ("Methods of the allergen products testing Laboratory" "ELISA competition assay". 第15頁, #49N-0012, FDA, October 1993)に記載される、アレルゲン産物についてのFDAの要件に従って決定される生物学的力価単位である。100,000 SQ単位含有イネ科草本抽出物の用量は、上記の方法によると2600〜4700 BAUの含量に等しい。同様に、その他の抽出物は、上記の方法に従って評価できる。
本発明の治療方法
本発明は、アレルゲン性物質に対してアレルギー性である対象において寛容を誘導する方法にも関し、該方法は、該アレルゲン性物質由来のアレルゲンを含む標準化アレルゲン抽出物から単離される単回投与形態の反復投与を含み、ここで、該単回投与形態中の個別のアレルゲンの相対量は、時間の経過とともに実質的に一定に保たれる。
この態様の実施形態は、単回投与形態が、対照のアレルゲン感作プロフィール又はアレルギー性個体群のアレルゲン感作プロフィールのいずれかに適合するアレルゲン抽出物に由来するので、1) 対象においてアレルゲンを構成するか又はアレルギー性個体群においてメジャーアレルゲンを構成するアレルゲンの総量が、該アレルゲン性物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えず、及び/又は標準化アレルゲン抽出物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) 該アレルゲン抽出物の1つの単回投与形態が、該アレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むものである。すなわち、この実施形態は、本明細書に開示される標準化抽出物を合理的な様式で利用し、このことは、医師が特定の標準化抽出物及び標準化抽出物のそれぞれ及びそれから製造される医薬に適合する最も適切な標的個体群についての知見を利用できるので、可能である。
関連する態様において、本発明は、アレルゲン性物質に対してアレルギー性である対象において寛容を誘導する方法にも関し、該方法は、該対象又は該対象が属するアレルギー性個体群のアレルゲン感作プロフィールを得て、対象がアレルギー性であるアレルゲンに適合するか又はアレルゲン性個体群において反応性のメジャーアレルゲンに適合する標準化アレルゲン抽出物又はアレルゲン組成物を選択し、その後、標準化アレルゲン抽出物又はアレルゲン組成物から単離される単回投与形態を繰り返し投与して、アレルゲン物質に対する寛容を誘導することを含み、ここで、標準化アレルゲン抽出物及びアレルゲン組成物は、1) その1つの単回投与形態が、該アレルゲン物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えない、該個体群において見出されるメジャーアレルゲンの総量を含み、及び/又は標準アレルゲン抽出物及びアレルゲン組成物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) その1つの単回投与形態が、メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むものである。
治療において用いられる標準化アレルゲン抽出物は、広く適用可能であることが理解される(なぜなら、全てのアレルギー性対象が同じメジャーアレルゲンに反応し、抽出物は、メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンについて制御された組成物を有するからである)。しかし、本発明に従って、異なる抽出物を用いて異なる個体群において寛容を誘導することが適切である場合には、本発明の治療方法は、標準アレルゲン抽出物が少なくとも2つの異なるアレルゲン抽出物の組の部分であることを意味し、ここで、該異なる抽出物のそれぞれは、該個体群において反応性のメジャーアレルゲンによる個体群に適合する。異なる標準化抽出物の数は、2よりかなり大きいことができ、例えば少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9又は少なくとも10であり得る。
一般的に、本発明の治療方法は、他の変数に関して、当該技術において一般的に受け入れられている方法に従って行われる。典型的には、患者は、投与量が時間の経過につれて増加して維持量に到達するような様式でアレルゲン抽出物の単回投与量を受け、これは、通常、治療の残りにおいても投与される。典型的には、皮下免疫療法における効率についてのメジャーアレルゲン維持量は、注射当たり5〜20μgの範囲であるが、開始用量は、維持量よりも約10倍低い(10)。
よって、ワクチンは、通常は、例えば皮下、皮内、真皮内、真皮下又は筋肉内の注射により非経口的に投与される。その他の投与様式に適する付加的な製剤は、口腔粘膜、すなわち経口、頬側、胃腸の製剤、坐剤及びある場合には腹腔内、膣内、肛門、硬膜外、脊髄及び頭蓋内の製剤を含む。
ワクチンは、投与製剤に矛盾しない様式で、治療的に有効で免疫学的な量で投与される。投与される量は、例えば免疫応答を載せる(mount)個体の免疫系の能力を含む、治療される対象に依存する。適切な投与量の範囲は、ワクチン接種当たり数百マイクログラム程度であり、好ましい範囲は、約0.1μg〜2,000μg (1〜10 mgの範囲のより高い量が考えられるが)、例えば約0.5μg〜2,000μg又は0.5μg〜1,000μgの範囲、好ましくは1μg〜500μgの範囲、特に約2.5μg〜100μg及び2.5〜75μgの範囲である。適切な投与計画は、初回の投与、それに続く注射又は別の投与が典型的であり、典型的にはプラトーレベルに達するまでアレルゲンの投与量を増加させ、その後、免疫化をプラトーレベルに維持する。ある経口投与は、毎日の免疫化を含む。
投与の様式は広く変動可能である。ワクチンの通常の投与方法のいずれも用いることができる。これらは、固体の生理的に許容される基体上又は生理的に許容される懸濁液中の口腔粘膜塗布、注射などによる非経口を含む。ワクチンの投与量は、投与経路に依存し、ワクチン接種される人の年齢及び抗原の処方に応じて変動する。上記のように、典型的な抗アレルギー治療計画は、投与当たりの量が少ないアレルゲンを用いる早期の免疫化、続いて時間経過と共にアレルゲン用量を増加させることを含む。その他に、好ましくは異なるアレルゲン用量を用いるいずれの用量増加なしに、1用量(mono-dose)を含有する固体投与形態の口腔粘膜投与を含む。第三の可能性は、好ましくは異なるアレルゲン用量を用いるいずれの用量増加なしに、液体の1用量の口腔粘膜又は舌下の投与である。
本発明のキット
本発明の実施は、アレルゲンワクチン中に存在するアレルゲンと免疫化される個体群/個体との間の相互作用に常に依存することが理解されるであろう。この関係において、本発明の一部分である非常に重要な製品は、抗アレルギーキットであり、該キットは
- アレルギー性の対象をプロファイリングして、アレルゲン性物質に由来するどのアレルゲンが対象においてアレルゲン性であるか決定するための診断手段と、
- 異なる標準化アレルゲン抽出物の組とを含み、ここで、該異なる標準化アレルゲン抽出物のそれぞれが該アレルゲン性物質由来のアレルゲンを含み、該異なる標準化アレルゲン抽出物がアレルギー性個体群に対して定義されて、1) 各標準化アレルゲン抽出物が各個体群において反応性のメジャーアレルゲンを含むので、最も豊富に存在するメジャーアレルゲンと個体群において反応性のいずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比が30:1を超えず、かつii) いずれのマイナーアレルゲンと最も豊富に存在するメジャーアレルゲンとの比が1:50を超えないか、又はマイナーアレルゲンの濃度が規定された範囲内である。
診断手段は、当該技術において知られるいずれの適切な診断手段であってよいが、典型的には、いくつかの異なるアレルゲンに対して反応する対象においてIgE抗体を検出できるイムノアッセイを行うことによる手段である。好ましいイムノアッセイは、ELISA、例えば固体支持体を被覆するアレルゲンを含むサンドイッチELISAであり、その後、被覆アレルゲンに対するIgEの結合を、標識抗IgE抗体により検出する。
しかし、本明細書に記載されるアレルギー性の対象のプロファイリングのためのいずれの種類のアッセイも用いることができる。
同様に、本発明は、抗アレルギーキットを意図し、該キットは、
- アレルギー性の対象をプロファイリングして、アレルゲン性物質に由来するどのアレルゲンが該対象においてアレルゲン性であるかを決定するための診断手段と、
- 異なるアレルゲン組成物の組とを含み、ここで、該異なるアレルゲン組成物のそれぞれが、該アレルゲン性物質由来のアレルゲンを含み、該異なるアレルゲン組成物が、アレルギー性個体群に対して定義されて、各アレルゲン組成物は、各個体群において反応性のメジャーアレルゲンを含み、i) 最も豊富に存在するメジャーアレルゲンと個体群において反応性のいずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比が30:1を超えず、かつii) いずれのマイナーアレルゲンと最も豊富に存在するメジャーアレルゲンとの比が1:50を超えないか、又はマイナーアレルゲンの濃度が規定された範囲内である。
好ましい実施形態において、本発明のキットは、異なるアレルゲン組成物又は標準化抽出物の中に該アレルゲン性物質の全てのメジャーアレルゲンを含む。
一般的に、キットの標準化アレルゲン組成物及び抽出物は、標準化アレルゲン抽出物及び組成物について本明細書にすでに記載した全ての特徴を共有し、このことは、標準化アレルゲン抽出物及び組成物について本明細書に記載される全ての特徴が、必要な変更を加えて、キットのアレルゲン組成物及び抽出物に適用されることを意味する。
本発明は、以下の限定しない実施例により、説明される。
実施例
以下の特定の実施例を参照すれば、本発明をより完全に理解できる。これらの実施例は、説明のためにのみ記載され、本発明の範囲を限定することを意図しない。特定の用語をここでは記載するが、このような用語は、説明の意味であることを意図し、限定の目的ではない。
実施例1
この実施例は、空中浮遊オリーブ木本花粉に高レベル又は低レベルで曝露される領域に居住する患者により示される、オリーブ木本花粉からの2つのアレルゲン(メジャーアレルゲンOle e 1及びマイナーアレルゲンOle e 9)への感作の異なるパターン、及びこれらのアレルゲンの濃度に関するオリーブ木本花粉のバッチの変動性について記載し、オリーブ木本花粉抽出物中のOle e 9の濃度の測定の新規な方法についても記載する。
オリーブ木本花粉は、地中海領域及び北アメリカのある領域において、吸入アレルギーの最も重要な原因の一つである(12、13)。10種の異なるアレルゲンが、現在までに、オリーブ木本花粉において同定されている(14、15)。Ole e 1が最も重要なアレルゲンであると同定されることは、全ての著者が同意するところである(14、16、17、18)。しかし、多くの因子、例えば試験を行うために選択された個体群、分析方法及び用いた試薬が得られる結果に影響し得るので、残りのアレルゲンについての罹患率のデータには議論の余地がある(14)。特に、花粉抽出物を用いて行われるこれらの試験は、オリーブ木本花粉の変動性のために(14、19)、いくつかのアレルゲンの濃度がアッセイの検出限界以下であり得るので、不正確な結果に導き得る。
この問題点を克服するために、本発明者らは、以下に記載するようにしてADVIA-Centaur装置において既知の濃度で精製タンパク質を用いて、感作の頻度及び血清特異的IgEレベルを分析した。試験したタンパク質は、Ole e 1及びOle e 9であった。Ole e 1は、145アミノ酸残基のタンパク質(18〜20 kDa)であり、これはグリコシル化形及び非グリコシル化形からなる(20)。該アレルゲンは、花粉発芽、筒成長(tube growth)及び/又は花粉発芽に関連することが示唆されるタンパク質のファミリーに属する(21)。Ole e 9は、1,3-β-グルカナーゼ活性を有するグリコシル化ポリペプチド単鎖からなり(434アミノ酸残基、46 kDa) (22)、これはグループ2 発病関連タンパク質ファミリーに属する。Ole e 9は、2つのよく定義されたドメインからなる:触媒部位を含むN末端部分(約340残基)と、その機能は現在のところわかっていないC末端ドメイン(約100残基)からなる(23、24)。両方のOle e 9ドメインは、酵母Pichia pastorisにおいて組換えタンパク質として別々に生産されている。これらの組換えタンパク質は、正しく折り畳まれ、それらの天然の対応物に類似の免疫化学的特性を示した(23、24)。
この研究のために、本発明者らは、オリーブ木本花粉に対する感作の頻度が類似であると報告されているが、環境花粉曝露のレベルが非常に異なる領域(マドリッド及びハエン)に居住する患者からの血清で得られた結果を比較した(25)。よって、例えば、マドリッドにおける2004年のオリーブ木本花粉の季節の間の1日の最大ピークは70粒(grains)/m3であったが、ハエンでの値は3354粒/m3であった(Spanish Society of Allergy and Clinical Immunologyのウェブページ:http://www.seaic.esからのデータ)。
さらに、本発明者らは、花粉抽出物中のOle e 1及びOle e 9のアレルゲン含量を、モノクローナル抗体(mAb)に基づく特定の方法を用いて分析した。Ole e 1を測定するのに用いた方法は、元の放射性イムノアッセイ法(18)のELISA (酵素結合免疫吸着アッセイ)フォーマットへの適応である。Ole e 9決定について、新規な抗Ole e 9抗体を作製し、ELISA法を開発した。このELISAは、以下に記載するように、固相に吸着させた1種の抗Ole e 9モノクローナル抗体、及び二次抗体として抗Ole e 9ウサギポリクローナル血清を用いる。
以下の段落において、方法について説明し、次いで、得られた最も関連する結果を示す。
方法
抗Ole e 9モノクローナル抗体
以前に記載されたようにして(22)オリーブ木本花粉から精製されたOle e 9アレルゲンは、ロドリゲス博士(Universidad Complutense, Madrid, Spain)から提供を受けた。雌性BALB/cマウス(CRIFFA, Barcelona, Spain)に、フロイントの完全アジュバント中の16μgのこのアレルゲンを腹腔内注射した。注射の15日及び30日後に、マウスを、フロイントの不完全アジュバント中の同量の抗原を用いてブースター注射した。42日目に、マウスを、PBS中の同量の抗原を用いて静脈内でブースター注射し、その3日後に、免疫されたマウスからの脾臓細胞を、Galfre及びMilsteinの方法(26)に従って、P3.X63.Ag8.653骨髄腫細胞と融合させた。融合の10日後に、細胞培養物上清を、固相上のアレルゲンを用いるELISAにより、抗Ole e 9特異的抗体についてスクリーニングした。P3.X63.Ag8マウス骨髄腫培養上清を、ネガティブコントロールとして用いた。陽性のハイブリドーマを限界希釈によりクローニング及びサブクローニングした。選択されたモノクローナル抗体を、プロテインGセファロースアフィニティカラム(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を製造業者の指示書に従って用いて、ハイブリドーマ培養上清から精製した。抗体のアイソタイプは、抗マウスサブクラス抗血清(Nordic, Tilburg, The Netherlands)を用いてELISAにより決定した。
モノクローナル及びポリクローナル抗体の産生(以下に記載)は、OECDの医薬性安全性試験実施基準の原則(1997改正版)及び欧州理事会指令(European Council Directive) No. 609 (1986)に準拠して行った。
オリーブ木本花粉抽出物の調製
この実施例のために、数種の供給業者からのオリーブ木本花粉の異なるバッチを、リン酸バッファー、pH 6.5中で1:10 (w/v)の比で4℃にて磁気攪拌しながら抽出した。可溶性画分は、4℃にて22,000 gで20分間の遠心分離により分離し、0.22μmのフィルタ(Sartorius AG, Gottingen, Germany)を通してろ過した。
アフィニティクロマトグラフィーによるOle e 9の精製
免疫吸着カラムを、製造業者の推奨に従って、抗Ole e 9 mAb 1.18をCNBr活性化セファロース4Bゲル(Amersham Biosciences)に結合させることにより作製した。オリーブ木本花粉抽出物をカラムに通し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で充分に洗浄した後に、Ole e 9を、100 mMグリシン、pH 2.5を用いて溶出した。1-mlのフラクションを、50μlの中和バッファー(1M Trisバッファー、pH 9.0)を含むチューブに回収した。フラクションを、タンパク質含量に基づいてプールし、蒸留水に対して透析し、使用するまで-40℃にて一定量のサンプルとして貯蔵した。アフィニティ精製したOle e 9の純度はSDS-PAGEにより評価し、IgE結合能力は、オリーブ木本アレルギー性患者からの血清のプールを用いるSDS-PAGE/イムノブロットにより評価した。アミノ酸分析は、Biochrom Ltd. (Cambridge, UK)からの試薬及び装置を用いて行った。
Ole e 9に対するポリクローナル抗血清
Ole e 9に対するポリクローナル抗体は、ニュージーランドラビットにおいて産生させた。各ウサギに、500μlのPBSに溶解し同容量のフロイントのアジュバント(最初の注射については完全アジュバント、残りの注射については不完全アジュバント)と混合した150μgのアフィニティ精製したOle e 9を筋肉内注射した。注射を15日毎に繰り返し、各注射の10日後に血清を回収した。2匹の動物からのウサギ血清のプールは、3回の連続する出血で構成された。
Ole e 9-ELISA
ELISAプレート(Costar, リファレンス3590, Cambridge, MA, USA)を、PBS中の10μg/mlの100μlの抗Ole e 9 mAb 18.1で4℃にてコートした。PBS中の1% (w/v) BSA、0.05% (v/v) Tween 20 (PBS-BSA-Tween)でブロックした後に、ウェルをサンプル及び参照、抗Ole e 9ウサギ血清(1/1000希釈)、並びにセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン抗体(1/10000希釈;Calbiochem, San Diego, CA, USA)と連続的にインキュベートした。サンプル、コントロール及び試薬は、PBS-BSA-Tweenで希釈し、全てのインキュベーションは室温にて1時間行い、連続する工程の間の洗浄はPBS中の0.05% (v/v) Tween 20を用いて行った。検出は、ペルオキシダーゼ基質バッファー(0.012% H2O2、0.66 mg/ml o-フェニレンジアミンOPD;DAKO, Glostrup, Denmark)を用いて30分間、暗所でのインキュベーションにより行った。呈色反応は、100μlの2N HClの添加により停止し、650-nmの参照フィルタを用いて、光学密度を492 nmにて読み取った。アッセイは、二重に行った。ブロッキングバッファーをネガティブコントロールとして用いた。サンプルのOle e 9含量は、15.7μg/mlから開始するアフィニティ精製Ole e 9の8つの連続3倍希釈を用いて作成した標準曲線からの補間により得た。
Ole e 1-ELISA
Ole e 1の定量は、Ole e 1特異的mAbに基づく2サイト固相ELISAにより行った(18)。ELISAプレート(Costar, リファレンス3590)を、PBS中の5μg/mlの100μlの抗Ole e 1 mAb OL7を用いて4℃にて一晩コートした。PBS中の1% BSAで室温にて30分間ブロッキングした後に、ウェルを、サンプル及び参照、ビオチン標識抗Ole e 1 mAb OL2 (1/1000希釈)及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(1/1000希釈, Amersham Biosciences)と連続的にインキュベートした。全てのインキュベーションは、室温にて1時間行い、連続する工程の間の洗浄は、PBS中の0.1% Tween-20を用いて行った。最後に、ウェルを、Ole e 9-ELISAと同様のペルオキシダーゼ基質バッファーと室温にて暗所でインキュベートした。反応を、50μLの2M H2SO4で30分後に停止し、ウェル当たりの光学密度を、650 nmの参照フィルタを用いて492 nmで測定した。アッセイは、二重に行った。ブロッキングバッファーをネガティブコントロールとして用いた。サンプルのOle e 1含量は、既知のOle e 1濃度の参照の連続2倍希釈を用いて作成した標準曲線(0.435μg/ml〜0.006μg/mlの範囲)から補間することにより得た(18)。
SDS-PAGE及びIgEイムノブロッティング
SDS-PAGEは、非還元条件を用いて10〜20%トリシン-ポリアクリルアミドランニングゲル(Novex, San Diego, CA, USA)にて行った。SDS-PAGEにより分離したタンパク質を、Towbinら(27)に記載されるようにして、ニトロセルロースメンブレン(0.4×7 cm)に移した。ブロッキングの後に、IgE-結合タンパク質の免疫検出を、患者の血清の1/3希釈を用いてインキュベーションし、その後、1/3000希釈のマウス抗ヒトIgE mAb HE-2腹水(28)、及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウス免疫グロブリン抗体(1/5000希釈、DAKO)を用いて連続的にインキュベーションすることにより達成した。IgE-結合タンパク質は、製造業者の指示書に従う高感度化学発光(ECL, Amersham Biosciences)により検出した。ネガティブコントロールとして、トランスファーしたタンパク質のブロットを、患者の血清の代わりに希釈バッファーを用いてインキュベートした。
RAST-阻害
オリーブ木本花粉抽出物のアレルゲン性活性を、RAST-阻害により決定した。ペーパーディスクをCNBrを用いて活性化し、オリーブ木本花粉の社内での参照抽出物(バッチT272)を用いて、記載されたようにして感作させた(6)。オリーブ木本花粉抽出物に対する特異的IgEを含有する20人の患者からのヒト血清のプールを、実験を通じて用いた。患者は、皮膚穿刺試験が陽性であり、オリーブ木本花粉に対する過敏症の病歴を有していた。血清プールの1/3希釈50μlの容量を、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar, リファレンス3370)のウェル当たりに加え、同じ容量のサンプル(オリーブ木本花粉抽出物)及び社内の参照T272の3倍連続希釈とともに、37℃にて30分間インキュベートした。ウェル当たり1つのアレルゲンディスクを加え、室温にてさらに3〜4時間インキュベートした。ディスクをPBS中の0.1% Tween-20を用いて3回洗浄した後に、約125,000 cpm/ウェルの125I-標識抗ヒトIgE mAb HE-2 (28)を加え、室温にて一晩インキュベートした。最後に、ディスクを洗浄し、結合した放射活性をガンマカウンタにて測定した。オリーブ木本花粉抽出物のアレルゲン性活性は、社内参照T272との比較によりBU/mlで表すが、社内参照T272は、皮膚穿刺試験によりBU/mlで予め校正されていた(29)。
アレルゲンのビオチン標識
この実施例のためにビオチン標識されたアレルゲンは、天然のOle e 1、及びPichia pastorisで発現されたOle e 9の組換えC-末端ドメイン及びN-末端ドメインであった。これらのアレルゲンは、以前に記載されたようにして(17、23、24)精製され、R.ロドリゲス博士(Universidad Complutense, Madrid, Spain)より提供を受けた。アレルゲン(250μg)を0.1M NaHCO3、pH 8.5 (500μl)に溶解し、5 mg/mlの5μlのBiotin EZ-Link NHS-LC-LC (Pierce, Rockford, IL, USA)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液を加え、4℃にて2時間反応させた。その後、反応混合物を、PBSで予め平衡化されたNAP5カラム(Amersham Biosciences)に通すことにより、過剰の試薬をビオチン標識アレルゲンから分離した。溶出はPBSで行った。ビオチン標識アレルゲンを含有する1-mlのフラクションを、同容量のグリセロールで希釈し、一定量を-20℃にて保存した。
特異的IgE測定
ヒトの血清中のアレルゲン特異的IgEを、ADVIA Centaur-特異的IgEアッセイにより決定した。血清サンプルは、病歴及び市販のインビボ診断キット(アルク−アベッロ エス.エー.)に対する陽性の皮膚穿刺試験により証明されるように、オリーブ木本花粉に過敏症のマドリッド(n=49)又はハエン(n=40)に居住するアレルギー性患者からであった。ビオチン標識アレルゲンを、上記のようにして得た。Ole e 9特異的IgEの決定について、等モル量のOle e 9の組換えC-末端ドメイン及びN-末端ドメインを混合した。ADVIA Centaurアッセイについてのビオチン化アレルゲンの最適用量は、標識した調製物の滴定により決定した。試験当たり20 ngの最適用量が見出された。キャリブレータ、コントロール及びユニバーサル試薬パック(URP)は、アルク−アベッロ(Stenloese, Denmark)から得た。機器及びその他の試薬及び消耗品は、Bayer Diagnostics (Tarrytown, NY, USA)から得た。
ADVIA Centaur-特異的IgEアッセイは、Bayer DiagnosticsからのADVIA Centaurプラットフォームに基づく、ダイレクト化学発光技術を用いるリバースサンドイッチイムノアッセイであり、これは連続的な完全自動化システムで、実際に行う労働は、常磁性粒子及びlite試薬を含むURP、洗浄バッファー、酸、塩基、キュベット、ピペットチップ、ビオチン標識アレルゲン及びキャリブレータ並びにバーコード付加されたコントロール及び血清サンプルを装着することに限られている。図1は、アッセイの構成を示す(30)。血清サンプル(25μl)は、キュベット内に供給され(工程1)、次いでIgEが、常磁性粒子(固相)に結合した抗IgEに結合することが可能になる(工程2)。磁性分離の後に、結合しなかった血清物質が洗浄除去され(工程3)、その後、ビオチン標識アレルゲンが、患者の特異的IgEに結合することが可能になる(工程4)。アクリジニウムエステル標識ストレプトアビジンを含有するLite試薬は、結合したアレルゲンに結合し(工程5)、洗浄(工程6)の後に、得られた複合体から放射される化学発光フラッシュの活性化を、ルミノメータで測定する(工程7)。血清サンプル中のアレルゲン特異的IgEの量と、システムにより検出される相対的光単位の量との間には、直線関係が存在する。
ADVIA Centaur特異的IgEアッセイにおいて用いられる校正システムは、記載されるような直線アルゴリズムに基づく(30)。各アレルゲンについての勾配校正係数は、1に等しいと仮定されている。
結果
抗Ole e 9モノクローナル抗体の産生及びアフィニティクロマトグラフィーによるOle e 9の精製
Ole e 9に特異的な、IgGクラスの40のモノクローナル抗体を、Ole e 9で免疫化したマウスの脾臓細胞とP3.X63.Ag8.653骨髄腫細胞との融合から得た。これらのmAbの1つ(18.1)を、免疫親和性クロマトグラフィーに用い、Ole e 9を定量するELISAを開発するために選択した。アフィニティクロマトグラフィーにより、オリーブ木本花粉抽出物からOle e 9を精製することができた。以前に記載された方法よりも簡便なこの方法により、Ole e 9の純度が高いレベルになった。免疫親和性精製されたOle e 9の電気泳動パターン(図2A)は、46及び92 kDaに2つのバンドを示し、これらはそれぞれタンパク質のモノマー及びダイマーの形に相当する(22)。両方のバンドは、ウェスタンブロットにおいて、オリーブ木本アレルギー患者からの血清を用いて免疫染色され(図2B)、このことはアレルゲンが精製プロセスの後もそのIgE結合能力を維持することを示した。この親和性精製Ole e 9を用いて、ウサギにおけるポリクローナル抗血清を生成した。
Ole e 9定量のためのELISA
Ole e 9定量のために本発明者らが開発した方法は、固相上のmAb 18.1と二次抗体としての抗Ole e 9ウサギ血清とを用いるサンドイッチELISAである。結合したウサギ抗体の検出は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン抗体を用いて達成される。
方法の特異性は、イネ科草本、木本及び雑草の花粉からの多くの一連の抽出物に対して評価した。モクセイ科(Oleaceae)に属する花粉(セイヨウトネリコ(Fraxinus excelsior)、ライラック(Syringa vulgaris)及びセイヨウイボタ(Ligustrum vulgare))からの抽出物のみが、ELISA法において著しい応答を示したが、残りはアッセイでは陰性であった(データ示さず)。これらの結果は、Ole e 9に相同なタンパク質がその他のモクセイ科植物に存在することの証明となる。
親和性精製されたOle e 9及びオリーブ木本花粉抽出物を用いたELISAで得られた用量応答曲線は、平行であり(図3)、このことは、アレルゲンが精製プロセスの間に変化せず、アッセイが、異なる調製物中の同じ分子を測定したことを示した。親和性精製されたOle e 9の濃度は、定量的アミノ酸分析により正確に測定し、この調製物をELISA法における一次標準として用いた。
オリーブ木本花粉の変動性
オリーブ木本花粉の変動性を、Ole e 9定量について上述したELISA、Ole e 1定量についてのELISA及びアレルゲン性活性についてのRAST-阻害を用いて、12の異なるバッチで研究した。得られた結果を表1にまとめる。
Figure 2008528642
アレルゲン性活性について、高い変動性が観察された。最も強力な抽出物の活性は、最も活性が低い抽出物の活性の約10倍であった。このもの(バッチサンプル1)は、本願の譲受人の生産部門の規格に従うと、その低い活性から、オリーブ木本アレルギーワクチンの生産としては却下されるべきである(図4)。
Ole e 1含量について、より高い変動性が観察された(図5A)。つまり、最高のOle e 1含量のサンプル(バッチサンプル11)と最低含量のサンプル(バッチサンプル1)との間に見積もられる比は、25であった。60μgのOle e 1/mlの濃度が100 BU/mlの活性について確立されている(許容範囲は30〜120μg/ml) (9)ので、さらに4つのバッチ(サンプル2、4、5及び8)は、規格外であることが判明した(図5B)。
さらに、そして予期せぬことに、サンプルをOle e 9含量について分析したときに、非常に高い変動性が見出された。サンプル3のOle e 9の濃度は、バッチサンプル12での濃度の161倍高かった(図6A)。現在の標準化方法によると、161倍もの高いOle e 9含量の違いがあるバッチが販売可能であったことに注目すべきである。なぜなら、両方のバッチは、以前の基準に従うと規格内であったからである。
両方のアレルゲンの濃度の比を評価すると、さらにより高い変動性が観察された(図6B)。さらに、オリーブ木本花粉のバッチにおけるOle e 1含量とOle e 9含量との間に著しく逆の相関関係が観察された(rS = -0.7203, p = 0.0082)。Ole e 1/Ole e 9の比は、幾何平均値17.5で0.6〜390.4であった。8.75〜35.0の許容される範囲で合格基準をこの値に基づいて確立すれば、さらに5つのバッチが却下される(サンプル3、9、10、11及び12)。よって、2つのバッチのみ(サンプル6及び7)が、合格基準を満たす。
結果として、開発された新規な方法は、オリーブ木本花粉のバッチ間の変動性の未知の原因を検出することを可能にした。以前は気づいていなかったOle e 9含量におけるこの高い変動性は、オリーブ木本免疫治療処置における重篤な有害反応の原因であったのだろう。
オリーブ木本花粉に対する曝露レベルが異なる領域におけるOle e 1/Ole e 9への感作のパターン
オリーブ木本に対するアレルギーの罹患率が類似であるが、曝露の強度のレベルが非常に異なる領域、すなわちマドリッドとハエンに居住する患者の感作を、方法に記載するようにして、Ole e 1及びOle e 9のアレルゲンに対する特異的IgEのレベルを測定することにより研究した。各領域からの患者で見出された感作の罹患率及び特異的IgEレベルの中央値について得られた結果を、表2に示す。
Figure 2008528642
このデータは、Ole e 9はマドリッドでは優勢なアレルゲンではないが、ハエンではかなり優勢であることを明確に示す。よって、患者は、曝露の強度が増加する場合に、Ole e 9に対するIgE抗体を産生する傾向にあると結論付けることができる。さらに、ハエン及びマドリッドからの両方の感作された患者におけるこのアレルゲンに対する特異的IgEレベルは、Ole e 1について見出されたものと同様であり、このことは、Ole e 9がこれらの患者に対して大きい臨床上の関係を有することを示す。さらに、Ole e 9に対して同時に感作されることなくOle e 9に対して感作された患者はみられなかった。このことは、オリーブ木本花粉に対するアレルギーの臨床上の重篤度のマーカーとしてOle e 9をみなすことができることを示唆する。明らかに、このパターンのアレルゲン認識を有する患者は、Ole e 9含量が高いアレルギーワクチンが投与された場合、有害反応に苦しむ危険性が高い。上記のように、オリーブ木本抽出物のOle e 9含量の変動性が大きく、ある患者においては特異的IgEのレベルが高いので、このアレルゲンは、おそらく、ハエンにおいて時々報告されていた有害反応の集団の原因である物質であったのであろう。
結果として、マイナーであるとみなされていたアレルゲンが、患者のある個体群について非常に関係がある臨床上の重要性を有し得ることが証明された。これらの患者に免疫療法を施す場合に有害反応を惹起する危険性を最小限にするには、本発明者らは、メジャーアレルゲン定量及び全アレルゲン性活性のための方法との組み合わせで、マイナーアレルゲンの濃度を測定する方法を行うことにより、患者の感作プロフィールに適切なアレルゲンの比を有する原材料の適切な選択及び抽出物の製造が可能になることを提案する。マイナーアレルゲンの濃度が制御されたこれらの抽出物は、アレルゲンワクチンの安全性と、おそらく、その効率を向上させる。
実施例2
この実施例は、チモシー(Phleum pretense)花粉からの抽出物中のアレルゲンPhl p 6の濃度の変動性と、このアレルゲンの、交差反応性メジャーアレルゲンであるPhl p 5との免疫化学的に近い関係について記載する。アレルゲンワクチン中のこのアレルゲンの制御に適用し得る、花粉抽出物中のPhl p 6濃度を測定する新規なELISA法を示す。
イネ科草本花粉は、世界的に最も重要な空中浮遊アレルゲンの源の1つである。イネ科草本花粉アレルギー感作は、一般的な個体群の20%ほど、及びアトピー性の個体の40%までに影響を与え得る(31)。現在までに、1種又は複数種からのイネ科草木花粉アレルゲンの11の異なる群が同定され、特性決定されている。グループ5イネ科草本花粉アレルゲンは、イネ科草木花粉の最も顕著なアレルゲンであるグループ1アレルゲンと共にイチゴツナギ亜科(Pooideae)の多くのメンバーで同定されている(31)。グループ6イネ科草本花粉アレルゲンは、現在までに、チモシー及びケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis)でのみ同定されている。チモシーからのPhl p 6は、酸性の非グリコシル化13-kDaタンパク質であり、これは最初に、Phl p 5とともに精製され、Phl p 5と交差反応性のタンパク質として最初に観察され、Ag19とよばれていた(32)。Phl p 6アレルゲン及びPhl p 5アレルゲンの配列比較により、N-末端及びC-末端の領域に高い相同性が示され(33)、イネ科草本アレルギー患者からの血清を用いた免疫吸着実験は、Phl p 5とPhl p 6が、1つ又は複数のIgE結合エピトープを共有することを証明した(34)。
Phl p 6に対する感作罹患率について、文献においては、非常に異なる値が報告されている。すなわち、Vrtalaらは、75%のイネ科草本花粉アレルギー患者からの血清IgEが、大腸菌(E. coli)で発現された組換えアレルゲンと反応したことを見出した(35)。対照的に、Westritschnigらは、ジンバブエで行った研究において、15%の罹患率を報告した(36)。イタリアで行われた2つの研究について、中間の値:77人の患者のコーホートを用いた研究において68% (37)、及び749人の患者を用いた研究において44% (38)が報告されている。同様に、Ghunaimらは、彼らのIgE抗体プロフィールに従う3つの群に分類される58人のイネ科草本花粉アレルギー性患者における感作の罹患率を研究した:イネ科草本花粉のみの群(組換えPhl p 6に対して27%の感作)、イネ科草本及び木本花粉の群(24%)、及びイネ科草本、木本及びキク科(compositae)花粉の群(57%) (39)。罹患率における高い値に加えて、Phl p 6に対する特異的IgEの値の中央値は、最後の群においてより高かった。興味深いことに、最近の文献において、フィンランド及びロシアのカレリアに居住する、チモシーに感作された対象からの血清中の個別アレルゲンに対するIgE反応性が研究され、rPhl p 6に対する感作の罹患率における非常に著しい違いが開示されている(フィンランドのカレリアでは47%であるのに対して、ロシアのカレリアでは0%) (40)。Ole e 9の場合、Phl p 6に対する感作の罹患率におけるこれらの違いは、ある個体群においてこのアレルゲンに対して特により高い応答を引き起こす曝露のレベル、多重感作(polysensitization)又はその他の因子における違いを反映しているであろう。結局、Phl p 6及びメジャーアレルゲンであるPhl p 5の共通のIgE結合エピトープの存在に関する上記のことを考慮すると、患者のこれらの個体群に投与されるワクチンは、Phl p 6の濃度に関して制御するべきである。
この実施例において、本発明者らは、天然及び組換えのPhl p 6に対するモノクローナル抗体の産生を記載する。rPhl p 5に対するこれらのmAbの交差反応性を評価し、Phl p 6を認識するがPhl p 5を認識しない1つのmAbを選択して、Phl p 6を定量するELISA法を開発した。この方法を用いて、チモシー抽出物中のPhl p 6含量の変動性を評価する。
以下の段落において、用いた方法について記載し、次いで、得られた最も関係する結果を示す。
方法
抗Phl p 6モノクローナル抗体の産生
抗Phl p 6モノクローナル抗体を、実施例1に記載されたものと同じ手順に実質的に従って産生させた。マウスの免疫化は、花粉から単離した天然Phl p 6及びPichia pastorisで発現させた組換えPhl p 6を用いて行った(41)。細胞培養上清は、固相上の天然又は組換えのアレルゲンを用いるELISAにより、抗Phl p 6特異的抗体についてスクリーニングした。抗Phl p 6 mAbによるPhl p 5の認識を試験するために、類似のアッセイを、固相に吸着したPhl p 5を用いて行った(41)。選択されたモノクローナル抗体を、ハイブリドーマ培養上清から、プロテインGセファロースアフィニティカラム(Amersham Biosciences)を製造業者の指示書に従って用いて精製した。
チモシー抽出物に対するポリクローナル抗血清
チモシー花粉抽出物に対するポリクローナル抗体を、ニュージーランドラビットで産生した。各ウサギに、500μlのPBSに溶解し、等容量のフロイントのアジュバント(最初の注射について完全アジュバント、残りについて不完全アジュバント)と混合した2 mgの抽出物を筋肉内注射した。注射を15日毎に繰り返し、血清を各注射の10日後に採取した。4匹の動物からのウサギ血清プールは、3回の連続的な出血から構成された。
チモシー花粉抽出物の調製
いくつかの供給業者からのチモシー花粉の異なるバッチを、実施例1においてオリーブ木本花粉抽出物について記載したようにして抽出した。Phl p 5含量は、以前に記載されたようにしてELISAにより決定した(42)。
Phl p 6-ELISA
ELISAプレート(Costar, リファレンス3590)は、PBS中の10μg/mlの100μlの抗Phl p 6 mAb R1.11を用いて、4℃にて一晩コートした。PBS中の1% (w/v) BSA、0.05% (v/v) Tween 20 (PBS-BSA-Tween)でブロッキングした後に、ウェルを、サンプル及び参照、抗チモシーウサギ抗体(1/5000希釈)、及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン抗体(1/15000希釈; Calbiochem)と連続的にインキュベートした。サンプル、コントロール及び試薬はPBS-BSA-Tweenで希釈し、全てのインキュベーションは、室温にて1時間行い、連続する工程の間の洗浄は、PBS中の0.05% (v/v) Tween 20を用いて行った。検出は、ペルオキシダーゼ基質バッファー(0.012% H2O2、0.66 mg/ml OPD; DAKO)と暗所にて30分間インキュベーションすることにより行った。呈色反応は、100μlの2N HClの添加により停止し、光学密度は、650-nmの参照フィルタを用いて492 nmにて読み取った。アッセイは、二重に行った。ブロッキングバッファーをネガティブコントロールとして用いた。サンプルのPhl p 6含量は、127 ng/mlから開始するnPhl p 6の10個の連続2倍希釈を用いて作成した標準曲線から補間することにより得た。
結果
抗Phl p 6モノクローナル抗体の産生及びそれらの特異性の研究
nPhl p 6に対する19のmAb及びrPhl p 6に対する20のmAbを、天然又は組換えのアレルゲンでそれぞれ免疫化したマウスの脾臓細胞とP3.X63.Ag8.653骨髄腫細胞との融合から得た。これらのmAbの特異性を、両方の形のPhl p 6及びPhl p 5に対するELISAにより試験した。全てのmAbが、組換え及び天然のPhl p 6を等しく認識し、このことは組換え形が正しく折り畳まれていることを確実にする(表3)。
Figure 2008528642
同様にして、ほとんどの抗Phl p 6 mAbも、高い親和性でPhl p 5に結合し、このことは、これらのタンパク質同士の抗原性が類似していることを支持する。39のうち14のmAbだけがPhl p 5に結合せず、その他の3つは弱く結合した(表3)。Phl p 5と共有していないPhl p 6のエピトープを認識する1つのmAb (mAb R1.11)を選択して、Phl p 6を定量するELISA法を開発した。
Phl p 6定量のためのELISA
Phl p 6を定量するための本発明者らにより開発された方法は、固相上のmAb R1.11と二次抗体としての抗チモシーウサギ血清とを用いるサンドイッチELISAである。結合したウサギ抗体の検出は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン抗体を用いて達成される。
Phl p 5に対する方法の特異性を評価し、mAb R1.11の特異性アッセイから予測されたように、Phl p 5の濃度が10μg/mlの高さでも光学密度は観察されなかった(図7)。一次基準として用いる天然アレルゲンと、チモシー花粉抽出物とを用いるELISAで得られた用量応答曲線は平行であり(図7)、このことは、アレルゲンが精製プロセスの間に変化せず、アッセイが異なる調製物中の同じ分子を測定したことを示す。結局、この方法は、その抗原性の類似性にもかかわらず、Phl p 5の存在に干渉されることなくPhl p 6を測定するのに有用であることが証明された。
チモシー花粉の変動性
チモシー花粉の変動性に関する予備的な研究を、チモシーの異なるバッチからの6つの抽出物を用いて行った(表4)。
Figure 2008528642
グループ5及びグループ6の両方のアレルゲンの濃度について観察された変動性は、同じオーダーの大きさであった(約12.5倍)。グループ5に対するグループ6の比の変動性は、0.51〜1.05の範囲であった。現在までのところ分析されたサンプルの数は明確な結論を得るのに充分ではないが、Phl p 6の変動性は、Ole e 9について示されたデータほど高くはないようである。にもかかわらず、Phl p 6上のIgE結合エピトープがPhl p 5と交差反応性であるという事実をさらに考慮に入れると、濃度における12.5倍の変動は、有害反応を引き起こすのに充分であろう。よって、これら2つのアレルゲンの濃度の変動のさらなる影響は、チモシーアレルギーワクチンに対する有害反応を惹起する危険性を上昇させることを示すであろう。結局、本発明者らは、マイナーアレルゲンPhl p 6の濃度を測定し、Phl p 6/Phl p 5の比をある範囲内に調整して、そのような有害反応の危険性を最小限にすることを提案する。本明細書に示されるELISA法は、その効果に有用であることが示されている。つまり、これは、適切な原料を選択し、異なる花粉バッチを混合して所望の組成物を得ることにより作製され得るアレルゲン生成物の品質管理を行うために用い得る。
実施例3
この実施例は、カビであるアルテルナリア・アルテルナタ(Alternaria alternate)に対してアレルギー性の患者の個別の応答における変動性について記載する。この実施例は、上記の実施例で記載したこととは別に、個別の患者が、いくつかの異なるアレルゲン性抽出物中のマイナーアレルゲンに対して強いIgE応答を発生し得ることを示すために記載するだけである。結局、このようなアレルゲンの濃度は、適切な定量法により制御して、有害反応の危険性を最小限にするべきである。
アレルゲン性カビ抽出物は、それらの固有の複雑さのために、高い変動性を示す。真菌株のタイプ、異なる培養条件及び異なる抽出手順は、このような不均質性の最も重要な原因である。10の異なるアレルゲンが、現在までに同定されている(43)。50%より高い感作頻度が記載されている唯一のアレルゲンは、Alt a 1である(43)。本発明者らは、このアレルゲンを定量するmAbベースのELISA法を開発した(44)。にもかかわらず、示された結果から、本発明者らは、ある患者について臨床的に関係があり得るこれらの抽出物中におけるマイナーアレルゲンの制御の簡便性を支持する。
方法及び結果
アルテルナリア・アルテルナタ(Alternaria alternate)原料は、いくつかの株の培養から得られた菌糸及び胞子からなり、これらの株は、アレルゲン性活性及びタンパク質プロフィールに基づいて、予め選択されていた。
アルテルナリア原料は、実施例1のオリーブ木本花粉材料と同様に抽出して、IgE-イムノブロッティング実験を行った。結果を、図8に示す。6人の患者全てが、Alt a 1に対するIgEを有していた(非還元条件下でのm.w.は約33 kDa)。しかし、2人の患者が(33%)、約22 kDaのタンパク質(これはおそらくAlt a 7に相当する)を認識し、3人の患者が(50%)、20 kDa未満のm.w.のタンパク質を認識した(おそらくAlt a 6)。特異的IgEレベルの指標である染色強度が、これらの患者において非常に高く、Alt a 1バンドの強度に匹敵することが注目する。このことは、マイナーアレルゲンがアルテルナリアの免疫治療に対する有害反応に関与し、結果として、その濃度が臨床使用を意図する製品において制御されるべきであることを意味する。
参考文献のリスト
Figure 2008528642
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Claims (42)

  1. - アレルゲン性物質由来のアレルゲン含有抽出物を得て、
    - 前記アレルゲン含有抽出物中のメジャーアレルゲンの相対濃度及びマイナーアレルゲンの相対濃度を決定し、ここで該メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンは、前記アレルゲン性物質に対してアレルギー性である個体群から得られるアレルゲン感作プロフィールに従って定義され、
    - 前記メジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度を、1) 標準化抽出物から単離される1つの単回投与形態が、前記アレルゲン性物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えないメジャーアレルゲンの総量を含むか、及び/又は標準化アレルゲン抽出物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) 標準化抽出物から単離される1つの単回投与形態が、前記メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むように調整して標準化抽出物を得る
    ことを含む、アレルゲン性物質の標準化抽出物を作製する方法。
  2. アレルゲン性物質の少なくとも2種の相互に異なる標準化抽出物を含む組を作製する方法であって、
    該標準化抽出物がそれぞれアレルゲン性物質に対してアレルギー性である異なるアレルギー性個体群の免疫化に適合されており、
    - 前記アレルゲン性物質由来のアレルゲン含有抽出物を得て、
    - 前記アレルゲン含有抽出物中のアレルゲンの相対濃度を決定し、
    - 前記決定に基づいて、アレルゲン性物質にアレルギー性の少なくとも2つの異なる個体群のそれぞれについて前記組のメンバーを作製し、ここで前記少なくとも2つの個体群のそれぞれが異なるメジャーアレルゲンを定義し、ここで各メンバー中の前記アレルゲンの濃度が、1) メンバーから単離される1つの単回投与形態が、前記アレルゲン性物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えないメジャーアレルゲンの総量を含むか、及び/又は標準化アレルゲン抽出物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) 前記メンバーから得られる1つの単回投与形態が、前記メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むように調整される
    ことを含む方法。
  3. アレルゲン性物質からアレルゲン抽出物を得て、
    個別の抽出物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度を決定し、
    所望により、抽出物中のメジャーアレルゲンの相対量及びマイナーアレルゲンの相対量を調整して標準化アレルゲン抽出物を得る
    ことを含み、
    メジャーアレルゲンの相対量及びマイナーアレルゲンの相対量が、標準化アレルゲン抽出物から単回投与形態を単離することを可能にするように予め定義された範囲内であり、ここで、
    1) メジャーアレルゲンの総量が、前記アレルゲン性物質からのいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えないか、及び/又はメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンが、免疫学的有効量で存在する
    アレルゲン性物質から標準化アレルゲン抽出物を作製する方法。
  4. 複数の抽出物が作製され、該複数の抽出物のいずれの1つの中のメジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの濃度が、前記複数の抽出物のいずれのその他の1つに比べて最大で50%の変動を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記変動が、最大で40%、例えば最大で30%、25%、15%、5%、2%及び最大で1%である請求項4に記載の方法。
  6. 複数の抽出物が作製され、該複数の抽出物のいずれの1つの中のいずれの1つのメジャーアレルゲン及び/又はいずれの1つのマイナーアレルゲンの濃度が、前記複数の抽出物のいずれのその他の1つの濃度を6より多い係数で超えない請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記係数が5、例えば4、3及び2を超えない請求項6に記載の方法。
  8. アレルゲン性物質由来のアレルゲンを含む標準化アレルゲン抽出物から単離される単回投与形態の反復投与を含み、該単回投与形態中の個別のアレルゲンの相対量が時間の経過とともに実質的に一定に保たれる、アレルゲン性物質にアレルギー性である対象において寛容を誘導する方法。
  9. 前記単回投与形態が、対象のアレルゲン感作プロフィール又はアレルギー性個体群のアレルゲン感作プロフィールのいずれかに適合し、それにより1) 対象においてアレルゲンを構成するか又はアレルギー性個体群においてメジャーアレルゲンを構成するアレルゲンの総量が前記アレルギー性物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えないか、及び/又は標準化アレルゲン抽出物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) 前記アレルゲン抽出物の1つの単回投与形態が前記アレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含む、請求項8に記載の方法。
  10. アレルゲン性物質にアレルギー性である対象又は該対象が属するアレルゲン性個体群のアレルゲン感作プロフィールを得て、該対象がアレルギー性であるアレルゲンに適合するか又は該アレルゲン性個体群において反応性のメジャーアレルゲンに適合する標準化アレルゲン抽出物又はアレルゲン組成物を選択し、その後、該標準化アレルゲン抽出物又はアレルゲン組成物から単離される単回投与形態を繰り返し投与してアレルゲン性物質に対する寛容を誘導することを含み、
    前記標準化アレルゲン抽出物及びアレルゲン組成物が、1) その1つの単回投与形態が、前記アレルゲン性物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えない、前記個体群において見出されるメジャーアレルゲンの総量を含むか、及び/又は標準化アレルゲン抽出物及びアレルゲン組成物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) その1つの単回投与形態が前記メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むものである、
    アレルゲン性物質にアレルギー性である対象において寛容を誘導する方法。
  11. 前記標準化アレルゲン抽出物が、少なくとも2種の異なるアレルゲン抽出物の組の一部分であり、該異なる抽出物のそれぞれが、個体群において反応性のメジャーアレルゲンによる個体群に適合する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記アレルゲン抽出物の単回投与量が、時間の経過とともに増加して維持量に到達する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記単回投与形態が、注射可能な形態、固体形態、例えば圧縮又は非圧縮錠剤、カプセル及びロゼンジからなる群より選択される請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記単回投与形態が、非経口経路、例えば皮下経路、皮内経路及び筋肉内経路;口腔粘膜経路、例えば経口、頬側、舌下及び胃腸の経路から選択される経路を介して投与される請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記標準化アレルゲン抽出物中のメジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの両方の濃度が、予め定義された範囲内になるように量的に制御される請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記標準化抽出物中の各マイナーアレルゲンの濃度が、定められた抽出物中の最少濃度のメジャーアレルゲンの濃度よりも低いことを特徴とする請求項15に記載の方法。
  17. 単回投与形態中のいずれのマイナーアレルゲンと最も豊富に存在するメジャーアレルゲンとの重量比が、1:50を超えない請求項15又は16に記載の方法。
  18. いずれのマイナーアレルゲンと最も豊富に存在するメジャーアレルゲンとの重量比が、1:100を超えない請求項17に記載の方法。
  19. いずれのマイナーアレルゲンと最も豊富に存在するメジャーアレルゲンとの重量比が、1:200を超えない請求項17に記載の方法。
  20. 単回投与形態中の最も豊富に存在するメジャーアレルゲンといずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比が、30:1を超えない請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 最も豊富に存在するメジャーアレルゲンといずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比が、15:1を超えない請求項20に記載の方法。
  22. 最も豊富に存在するメジャーアレルゲンといずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比が、10:1を超えない請求項20に記載の方法。
  23. 最も豊富に存在するメジャーアレルゲンといずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比が、5:1を超えない請求項20に記載の方法。
  24. 最も豊富に存在するメジャーアレルゲンといずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比が、2.5:1を超えない請求項20に記載の方法。
  25. 前記標準化アレルゲン性抽出物が、前記アレルゲン性物質からの全てのメジャーアレルゲンを含む請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
  26. - アレルゲン性物質からアレルゲン含有抽出物を得て、
    - 該アレルゲン含有抽出物中のアレルゲンの相対濃度を決定し、ここで該アレルゲンはアレルギー性対象のアレルゲン感作プロフィールにより定義され、
    - 前記アレルゲンの濃度を、1) 前記抽出物の1つの単回投与形態が、前記アレルゲン性物質のいずれの1つの単一アレルゲンの最大許容量を超えないアレルゲンの総量を含むか、及び/又は標準化アレルゲン抽出物中の全てのアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) 前記抽出物の1つの単回投与形態が前記アレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むように調整する
    ことを含む、アレルゲン性物質の標準化抽出物を作製する方法。
  27. 標準化抽出物を濃縮又は希釈する工程をさらに含む、請求項1〜3及び請求項1〜3に従属する限りは請求項15〜26のいずれか1項に記載の方法。
  28. 請求項1〜3及び請求項1〜3に従属する限りは請求項15〜27のいずれか1項に従って標準化抽出物を作製し、その後、該標準化抽出物を医薬的及び免疫学的に許容される担体、ビヒクル又は希釈剤とともに製剤化することを含む、アレルゲンに対する寛容を誘導するための医薬組成物を製造する方法。
  29. 個体群のアレルゲン感作プロフィールを決定して該個体群において反応性のメジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンを同定し、その後、このようにして同定されたメジャーアレルゲンとマイナーアレルゲンとを、1) アレルゲン組成物から単離される1つの単回投与量中の前記メジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が、前記アレルゲン性物質のいずれの1つの単一メジャーアレルゲンの最大許容量を超えないメジャーアレルゲンの総量を含むか、及び/又はアレルゲン組成物中のメジャーアレルゲンの濃度及びマイナーアレルゲンの濃度が量的に制御され、かつ2) アレルゲン組成物から単離される1つの単回投与形態が前記メジャーアレルゲン及び任意にマイナーアレルゲンのそれぞれの免疫学的有効量を含むように混合することを含む、アレルゲン組成物を製造する方法。
  30. メジャーアレルゲンの相対濃度及びマイナーアレルゲンの相対濃度が、請求項15〜24のいずれか1項の標準化アレルゲン性抽出物について定義されるとおりである請求項29に記載の方法。
  31. アレルゲンが、天然の源から単離されるか及び/又は組換え産生されるか及び/又は合成により作製される、請求項29又は30に記載の方法。
  32. アレルゲン組成物を濃縮又は希釈する工程をさらに含む請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法。
  33. 請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法に従ってアレルゲン組成物を作製し、その後、該アレルゲン組成物を医薬的及び免疫学的に許容される担体、ビヒクル又は希釈剤とともに製剤化することを含む、アレルゲンに対する寛容を誘導するための医薬組成物を製造する方法。
  34. 前記アレルギー性個体群が、前記アレルゲン性物質にアレルギー性である対象のより大きい個体群の部分集合を構成する請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
  35. 前記アレルゲンが、花粉アレルゲン、真菌又はカビアレルゲン、昆虫アレルゲン、チリダニアレルゲン及び食物アレルゲンから選択される請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
  36. メジャーアレルゲン又はマイナーアレルゲンが、Bet v 1、Bet v 2、Aln g 1、Cor a 1及びCar b 1、Cas s 1、Cas s 5、Que a 1、Cry j 1、Cry j 2、Cup a 1、Cup s 1、Jun a 1、Jun a 2、Jun a 3、Jun o 4、Jun s 1、Jun v 1、Ole e 1、Ole e 2、Ole e 5、Ole e 8、Ole e 9、Syr v 1、Lig v 1、Pla l 1、Pla a 2、Pla a 3、Amb a 1、Amb a 2、Amb a 3、Amb a 5、Amb a 6、Amb a 7、Amb t 5、Art v 1、Art v 2、Art v 3、Art v 4、Par j 1、Par j 2、Par j 3、Par o 1、Sal k 1、Ave e 1、Cyn d 1、Cyn d 7、Cyn d 12、Dac g 1、Dag g 2、Dag g 3、Fes p 1、Fes p 4、Hol l 1、Lol p 1、Lol p 5、Lol p 2、Lol p 3、Pha a 1、Pas n 1、Phl p 1、Phl p 2、Phl p 3、Phl p 4、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Sec c 1、Sec c 5、Sor h 1、Der f 1、Der f 2、Der f 3、Der f 7、Der f, 10、Der f 11、Der f 14、Der p 1、Der p 2、Der p 3、Der p 4、Der p 5、Der p 6、Der p 7、Der p 8、Der p 10、Der m 1、Eur m 2、Eur m 14、Gly d 1、Gly d 2、Lep d 2、Lep d 5、Lep d 7、Lep d 10、Lep d 13、Blo t 1、Blo t 3、Blo t 6、Blo t 10、Tyr p 2、Bla g 1、Bla g 2、Bla g 4、Bla g 5、Bla g 6、Per a 1、per a 3、per a 7、Fel d 1、Fel d 2、Can f 1、Can f 2、Can f 3、Bos d 2、Bos d 4、Bos d 8、Equ c 1、Equ c 2、Equ c 3、Mus m 1、Rat n 1、Cav p1、Cav p 2、Apis m 1、Api m 2、Apis m 4、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Dol m 1、Dol m 2、Dol m 5、Pol a 1、Pol a 2、Pol a 5、Sol i 1、Sol i 2、Sol i 3及びSol i 4、Alt a 1、Alt a 2、Alt a 3、Alt a 6、Cla h 1、Cha l 2、Cha l 3、Asp f 1、Asp f 2、Asp f 3、Mal d 1、Gly m 1、Gly m 2、Gly m 3、Ara h 1、Ara h 2、Ara h 3、Ara h 4及びAra h 5からなる群より選択される請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
  37. - アレルギー性の対象をプロファイリングしてアレルゲン性物質由来のどのアレルゲンが該対象においてアレルゲン性であるかを決定するための診断手段と、
    - 異なる標準化アレルゲン抽出物の組と
    を含み、該抽出物のそれぞれが前記アレルゲン性物質由来のアレルゲンを含み、前記異なるアレルゲン標準化アレルゲン抽出物が、異なる標準化アレルゲン抽出物のそれぞれが各個体群において反応性のメジャーアレルゲンを含むようにアレルギー性個体群に対して定義され、それによりi) 最も豊富に存在するメジャーアレルゲンと個体群において反応性のいずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比が30:1を超えず、かつii) いずれのマイナーアレルゲンと個体群において反応性の最も豊富に存在するメジャーアレルゲンとの比が1:50を超えないか又はマイナーアレルゲンの濃度が定義された範囲内であることとなる、抗アレルギーキット。
  38. - アレルギー性の対象をプロファイリングしてアレルゲン性物質由来のどのアレルゲンが該対象においてアレルゲン性であるかを決定するための診断手段と、
    - 異なるアレルゲン組成物の組と
    を含み、該異なるアレルゲン組成物のそれぞれが前記アレルゲン性物質由来のアレルゲンを含み、前記異なるアレルゲン組成物が、各アレルゲン組成物が各個体群において反応性のメジャーアレルゲンを含むようにアレルギー性個体群に対して定義され、それによりi) 最も豊富に存在するメジャーアレルゲンと該個体群において反応性のいずれのその他のメジャーアレルゲンとの重量比が30:1を超えず、かつii) いずれのマイナーアレルゲンと最も豊富に存在するメジャーアレルゲンとの比が1:50を超えないか又はマイナーアレルゲンの濃度が定義された範囲内であることとなる、抗アレルギーキット。
  39. 前記アレルゲンが、単離アレルゲン又は組換え産生されたアレルゲンのいずれかである請求項38に記載のキット。
  40. 前記アレルゲン性物質の全てのメジャーアレルゲンを含む請求項37〜39のいずれか1項に記載のキット。
  41. メジャーアレルゲンとマイナーアレルゲンとの比が、請求項18又は19で定義されるとおりである請求項37〜40のいずれか1項に記載のキット。
  42. メジャーアレルゲン同士の比が、請求項19〜24のいずれか1項で定義されるとおりである請求項35〜39のいずれか1項に記載のキット。
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