JP2008520734A - Pf4ファーマコフォア及びそれらの使用 - Google Patents

Pf4ファーマコフォア及びそれらの使用 Download PDF

Info

Publication number
JP2008520734A
JP2008520734A JP2007543416A JP2007543416A JP2008520734A JP 2008520734 A JP2008520734 A JP 2008520734A JP 2007543416 A JP2007543416 A JP 2007543416A JP 2007543416 A JP2007543416 A JP 2007543416A JP 2008520734 A JP2008520734 A JP 2008520734A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
groups
amino acid
seq
compound
functional group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007543416A
Other languages
English (en)
Inventor
フィリップ マニヴェ,
モニカ アレマニ,
ジョルジュ, アレクサンドル ゲラン,
Original Assignee
バイオクァンタ コーポレイション
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by バイオクァンタ コーポレイション filed Critical バイオクァンタ コーポレイション
Publication of JP2008520734A publication Critical patent/JP2008520734A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/52Cytokines; Lymphokines; Interferons
    • C07K14/521Chemokines
    • C07K14/522Alpha-chemokines, e.g. NAP-2, ENA-78, GRO-alpha/MGSA/NAP-3, GRO-beta/MIP-2alpha, GRO-gamma/MIP-2beta, IP-10, GCP-2, MIG, PBSF, PF-4, KC
    • GPHYSICS
    • G16INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS
    • G16CCOMPUTATIONAL CHEMISTRY; CHEMOINFORMATICS; COMPUTATIONAL MATERIALS SCIENCE
    • G16C20/00Chemoinformatics, i.e. ICT specially adapted for the handling of physicochemical or structural data of chemical particles, elements, compounds or mixtures
    • G16C20/40Searching chemical structures or physicochemical data
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Theoretical Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Computational Biology (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Computing Systems (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

本発明は、とりわけ、ペプチド模倣体、及びPF4活性を調節可能な他の化合物(例えば、インヒビター、アゴニスト又はアンタゴニスト)の同定に有用な、新規のPF4ファーマコフォアを提供する。また、細胞において、PF4活性を調節する、突然変異PF4ポリペプチド配列も提供する。

Description

1.発明の分野
本発明は、一般的に、PF4活性を調節するための組成物と方法に係り、より詳細には、例えば血管新生、細胞増殖、細胞遊走及び免疫系プロセスのようなPF4-媒介性プロセスを調節するための組成物と方法に関する。特に、本発明は、成熟野生型ヒトPF4分子についてファーマコフォアの三次元構造をエミュレートしたファーマコフォア分子と、かかるファーマコフォア分子の突然変異体(mutants)又は変異体(variants)、並びにPF4リガンドの構造と実質的に同一であるか、又はPF4リガンドとは機能決定面において異なるファーマコフォア又はファーマコフォア様三次元構造を有し、PF4活性を調節可能な模倣化合物(例えば、ペプチド模倣体又は小分子)に関する。また本発明は、PF4活性を調節するかかる模倣化合物の使用方法、並びに小分子を含むさらなる模倣化合物を同定するためのスクリーニング方法にも関する。
2.発明の背景
ケモカイン類は、炎症反応の間、主として白血球遊走に影響を与える、構造的に関連した分泌型走化性ペプチドのスーパーファミリーである。それらの配列は類似しており、N末端の4-システインモチーフにより特徴付けられる。構造的には、全てのファミリーメンバーは、フレキシブルなN末端領域と、それに続くループ、次に3つの逆平行βストランド及び単一C末端αヘリックスを有する。CXCと命名されているケモカイン類の一サブクラスは、第1の2つのN末端システインの間に介在残基を含む。IL-8は最も良く特徴付けられているCXCケモカインであるが、他のものは、Gro-α及びGro-β、血小板因子-4(PF4)及びIL-10を含む。CXCケモカイン類は、Rが1−6の群から選択される整数を示すCXCRと命名されるレセプターを介してシグナル伝達する。全ての既知のCXCRは、7つの膜貫通スパンαヘリックスドメインを有するGタンパク質共役型レセプターである。
CXCケモカイン類は、ヒトの急性及び慢性炎症性疾患、例えば関節炎、呼吸器疾患、及び動脈硬化、さらにはいくつかの急性疾患、例えばヘパリン誘発性血小板減少症に関与している。いくつかのCXCケモカイン類は、血小板機能のアゴニスト及び好中球の刺激剤として機能する。最近、いくつかのケモカイン類は、内皮細胞遊走及び増殖を調節することが示されており、血管新生における役割が示唆されている(Murdochら, Cytokine 1999; 9: 704-712)。
CXCL4としても知られている血小板因子4(PF4)は、血小板から誘導されるケモカイン類のCXCサブファミリーのメンバーである。好ましいPF4アミノ酸配列は記載されており(例えば、Ponczら, Blood 1987, 69:219-223を参照)、GeneBankデータベース(受託番号P02776)から入手可能である。この完全長PF4アミノ酸配列は、ここでも図1A(配列番号:32)に示す。完全長PF4アミノ酸配列には、好ましくは配列番号:32(図1A)のアミノ酸残基1−31を含むシグナルペプチド配列が含まれる。典型的には、シグナルペプチド配列は、PF4ポリペプチドが細胞により分泌される際に切断される。よって、本発明の好ましいPF4ポリペプチドは、実際には、配列番号:32(図1A)のアミノ酸残基32−101を含んでなる「成熟型」PF4ポリペプチドである。
他の「変異型」PF4ポリペプチドもまた知られている。例えば、PF4var1と称されている好ましい一変異体はGreenら(Mol. Cell. Biol. 1989, 9:1445-1451)により記載されており、GeneBankデータベース(受託番号P10720)から入手可能である。この完全長PF4var1配列は、図1B(配列番号:33)にも示している。図1A(配列番号:32)に示されている野生型PF4(WTPF4)と同様、PF4var1には、好ましくはポリペプチドが細胞から分泌される際に典型的には切断される配列番号:33(図1B)のアミノ酸残基1−34を含むシグナルペプチド配列が含まれる。よって、好ましいPF4var1ポリペプチドは、実際には、配列番号:33(図1B)のアミノ酸残基35−104を含んでなる「成熟型」ポリペプチドである。便宜上、図1A及び1B(配列番号:32−33)に示されているPF4ポリペプチドは、ここではそれぞれ野生型PF4(WTPF4)及びPF4var1と言う。しかしながら、本発明は、主として成熟WTPF4配列(すなわち、配列番号:32の残基32−101)に関して(便宜上)記載しており、双方の配列が、好ましい自然に生じるPF4ポリペプチドのポリペプチド配列を表すものと理解される。同様に、他のPF4断片、例えば国際公開第99/41283号に記載されている断片、及び国際公開第01/46218号に記載されている関連ペプチドもまた知られている。
PF4は血小板凝集中に血小板から放出され、内皮細胞への好中球の付着を刺激し、TNF等の同時刺激性サイトカイン類の存在下では、損傷に応答して好中球脱顆粒を誘導する(Kasperら, Blood 2003, 103:1602-1610)。さらに、PF4はヒトナチュラルキラー細胞を誘導して、強力な好中球化学誘引物質及び活性化因子である関連CXCL分子IL-8を合成し放出する(Martiら, J Leukoc Biol. 2002;72(3):590-7)。PF4はまた高い親和性でヘパリンと結合し、PF4、ヘパリン及びIgGを含む免疫複合体を生成する。さらにこれらの複合体により、血小板上のFcγRIIaレセプターへのIgG Fcの結合を介して血小板の活性化を生じ、ヘパリンを受容した個体において血小板減少症及び/又は血栓症を生じせしめる。
最近、PF4は、活性化T細胞に直接結合し、それらの増殖並びにIFNガンマの放出を阻害することが示されている(Fleischerら, J Immunol. 2002;169(2):770-7)。さらに、PF4のアミノ酸残基34−58を含んでなるペプチドは、マウスの造血前駆細胞の増殖を30−40%阻害した(Lecompte-Racletら, Biochemistry. 2000;39(31):9612-22)。この活性は、PF4の34−58位にあるαヘリックスモチーフに起因しており、54−56位のDLQモチーフが前駆細胞に結合するようにする。PF4によるヒト白血病性/巨核球性細胞株の阻害も、ある種のC末端残基に依存性であった(残基1−24及び13−24であり、残基16−24ではない)(Lebeurierら, J Lab Clin Med. 1996;127(2):179-85)。PF4阻害活性の抑止又は亢進は、13−24領域内の特定の残基での突然変異により改変させることができる。
PF4、特にアミノ残基47−70を含んでなるC末端断片の他の重要な阻害活性は、血管新生抑制活性である。PF4は線維芽細胞増殖因子2(FGF2)に結合し血管内皮細胞へのFGF-2の結合を防止することにより、血管新生を阻害する(Hagedornら, FASEB J. 200;15(3):550-2)。PF4はまた血管内皮細胞成長因子、内皮細胞に対する分裂促進因子の結合を破壊し、よってその活性を阻害する(Gengriniovitchら, J. Biol. Chem. 1995;270(25):15059-65)。ELR配列を含むPF4の修飾C末端断片(又は関連する修飾モチーフDLR)は、未修飾のペプチドより数倍大きい血管新生抑制活性を有する(Hagedornら, Cancer Res. 2002;62(23):6884-90)。残基52での単一アミノ酸残基突然変異(Cys52Ser)は、全ての阻害活性を無効にした(上掲のHagedornら, 2001)。溶液中におけるC末端阻害断片の立体構造は決定されており、特定の1:1複合体でFGFと相互作用する2つのヘリックスサブドメインからなることが見出されている。双方のサブドメインが、線維芽細胞成長因子誘導有糸分裂誘発の阻害に必要とされると思われる(Lozanoら, J. Biol. Chem. 2001;276(38):35723)。
最近、以前から知られているCXCレセプターのスプライスバリアント、CXCR3が、高い親和性でPF4と結合し、PF4に対する機能的レセプターとして作用することが示されている(Lasagniら, J. Exp. Med. 2003; 197: 1537-49)。ヒト微小血管内皮細胞株におけるCXCR3-Bと命名されたこの変異体の過剰発現が、DNA合成を減少させ、アポトーシスを増加させた。
PF4のNMR及び結晶構造は、分子がホモ四量体として存在していることを示している(Mayoら, Biochemistry. 1995;34(36):11399-409;及びZhangら, Biochemistry. 1994;33(27):8361-6)。上述したように、PF4の単量体形態における明白な構造的モチーフから、分子に特定の活性を付与する異なる残基が同定されている。しかしながら、当該分野では、ペプチド模倣体、並びにこれらのモチーフ内のアミノ酸残基上の官能基を模倣又は保存可能な小分子類似体、免疫応答及び血管新生の特定の調節因子としての使用に対する必要性がなお残っている。
蛍光標識されたヒト組換えPF4を使用する研究では、その分子がインビボにおいて活性な血管新生の領域で優先的に結合することが示されているらしい。Hansellら, Am. J. Physiol. (1995) 269 (3 Pt 2):H829-836。これにより、PF4がある種の腫瘍、特に乳癌における血管新生のイメージングマーカーとして有用かもしれないという示唆に至る。Borgstromら(Anticancer Res. (1998) 18(6A):4035-4041)、及びMoyerら(J. Nucl. Med. (1996) 37(4):673-679)は、PF4のヘパリン-結合領域を含むと言われる99mTc-標識ポリペプチドを使用することを記載している。MoyerらがP483Hと称しているこのペプチドは、インビボでの感染のハイコントラストな画像を提供すると言われている。しかしながら、血漿中において分子の半減期が短いことにより、造影剤としてのPF4の有用性は限られている。よって、PF4の結合活性を模倣又は保存可能で、インビボにおける有用な造影剤となりうる、ペプチド模倣体及び小分子を含む分子が必要とされている。
このような分子の開発には、PF4及び/又はPF4変異体(例えば、PF4var1)の全ファーマコフォア構造の解明と、与えられた活性に対して必須な官能基と必須でない官能基を厳密に同定することが必要となる。
このセクションと明細書全般にわたる文献の引用及び/又は考察は、本発明の説明を明確にするためだけに提供するものであり、そのようないずれの文献も、ここに記載される本発明の「先行技術」であることを自認するものではない。
3.発明の概要
PF4活性調節のための上述した必要性の一又は複数に応じて、本発明は、PF4アゴニストであり、あるいはPF4インヒビターである新規なペプチド模倣体又は小分子等の新規化合物の同定にとりわけ有用な新規ファーマコフォアを提供する。特に、本発明は、以下の表1に記載の、PF4ポリペプチドにおける対応する官能基の配置と実質的に同一である形で三次元空間に配置されている(例えば図2A−2Bを参照)少なくとも7、好ましくは10の官能基を有するPF4ファーマコフォアを提供するものである;但し、ファーマコフォアはPF4それ自体でも先に論議した先行技術にある上述のいずれのペプチドでもない。
好ましい側面では、本発明は、PF4と相互作用する、及び/又はPF4様又はPF4拮抗活性を有する新規又は既存化合物を同定する方法を提供する。このような化合物にはペプチド模倣体及び小分子が含まれる。これらの方法に従って同定される物質は、設計(例えばインシリコ)し合成するか、あるいはそれらは、例えばインシリコでのスクリーニングにより既存化合物のライブラリーから選択することもできる。これらの方法に従って同定された物質は、アゴニスト、アンタゴニスト又はインヒビターとして、PF4活性を調節するであろう。ある実施態様では、これらの方法は、PF4ファーマコフォア(好ましくは、ここに実質的に記載されているPF4ファーマコフォア)の三次元と、候補化合物の三次元構造を比較することを含む。これらの方法に従ってスクリーニング可能な多くの化合物の三次元構造は既に解明されており、例えば公に入手可能なデータベース又は他の入手源から得ることができる。あるいは、候補化合物の三次元構造が解明されていない場合、その構造はしばしば常套的な技術(例えば、X線回折又はNMR分光法)を使用して決定することができる。これらの三次元構造間の類似性と付随する分子内特性(例えば、プロトン供与体又は受容体として水素結合を形成する特性、疎水性相互作用、スルフィド結合形成特性、及び静電相互作用)により、候補化合物がPF4活性を調節する化合物であることが予測される。特に、2つの三次元の間の二乗平均平方根偏差(RMSD)は、好ましくは約1.0を越えない。また、予め選択された化合物が、ファーマコフォア分子の存在下、又は天然PF4の存在下で、所望の活性を有しているかどうかについて試験することもでき、後者はインビトロ又はインビボである。あるいは、PF4ファーマコフォアを示すPF4模倣体は、あるならばPF4調節活性を有している化合物のインビトロスクリーニングライブラリにおいてPF4の「代用(stand-in)」となりうる。
他の実施態様では、本発明は、細胞中でPF4活性を調節(亢進又は妨害)する突然変異PF4ポリペプチドであってよいPF4模倣体を提供する。本発明の突然変異PF4ポリペプチドは、好ましくは、図1C(配列番号:1)に記載の成熟PF4アミノ酸配列、又は本発明のファーマコフォアを形成する11の主要残基中に一又は複数のアミノ酸置換を有する少なくとも5から23残基を含むその断片を含む。例えば、限定するものではないが、野生型PF4(WTPF4)及びその変異体(例えばPF4var1)は、そのリジンアミノ酸を介してヘパラン硫酸と相互作用することが理解されている。この主な経路において、PF4は、内皮細胞の表面と相互作用することにより血管新生抑制剤として作用する。よって、一実施態様では、アミノ酸置換は、例えばアミノ酸置換Lys61→Gln、Lys62→Glu、Lys65→Gln及び/又はLys66→Glu等、ヘパラン硫酸へのPF4の結合性に影響を及ぼすファーマコフォア上の少なくとも一の置換を含む。ヘパラン硫酸結合は、保存、減少又は増加させることができる。この実施態様の特に好ましい例は、以下に詳細に記載するものであり、以下の実施例(特に以下の表3−4を参照)に記載され、ここではPF4-M1(配列番号:2)と称している突然変異体を含む。
PF4突然変異体の他の実施態様では、アミノ酸置換には、DLQ配列モチーフにおける置換、例えば一又は複数のアミノ酸置換Gln9→Arg、Gln9→Ala及びAsp7→Alaが含まれる。他の好ましいアミノ酸置換には、一又は複数のLeu11→Ser、Val13→Gln、Thr16→Ala、Gln18→Ala、Val19→Ser及びHis23→Alaが含まれる。これらのPF4突然変異体の模倣体も、元々の及び変異した主要残基(その修飾を含む)の三次元構造及び分子内特性が保存されている限り、また本発明内にあることを記しておくべきである。また、三次元構造が保存されている限り、PF4突然変異体又はその模倣体の主要残基間に存在するリンカー構造にかなりの自由度がある。例えば、本発明は、その範囲内において、上述した主要残基置換のいずれかに加えて、一又は複数のアミノ酸の付加又は欠失を含む突然変異PF4ポリペプチドをさらに提供する。本発明の好ましい突然変異PF4アミノ酸配列は、配列番号:2−30のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。また、以下の表3を参照。
ファーマコフォアのバリデーションに使用される突然変異体は、このような突然変異誘発の点が、活性に重要であると考えられている一又は複数の残基を、活性に重要ではないと考えられている他の残基で置き換えるものであるので(すなわち、このような残基の置き換えにより、活性が無効又は調節されると予想される)、活性ではない。突然変異体が野生型分子と比較して全ての(それともいくつかの)生物活性が奪われているならば、このことは、残基が生物活性にとって重要であり、ファーマコフォアの定義に含まれるべきであることを意味している。
また変異の種類も重要である。例えば、双方が典型的には同じタイプの相互作用に至るため、親水性残基を疎水性のもの(例えばアラニン)で置き換えることは、有益ではない場合もある。突然変異のために選択される残基の環境もまた重要である。例えば、隣接残基が、突然変異により強要又は解放される制約を(例えば立体構造変化により)補償するために、変異が誤ったポジティブな又はネガティブな結果をもたらすおそれがある。これは結果の誤った解釈に至るおそれがある。さらに変異の種類は、IL8に対してのPF4の活性のシフトを回避するように選択されるのが好ましい。さもないと、得られる突然変異体はIL-8様特性を有しうる。
突然変異体は興味ある生物活性を有していないため、ここに記載されるバリデーション突然変異体の座標は重要ではない。PF4の模倣体は、ファーマコフォアを用いて容易に決定することができる。「候補模倣体」がファーマコフォアに合致する(すなわち、三次元的に重なり合う)ならば、それは本物の模倣体である。候補剤がファーマコフォアの一部のみを含むならば、それは、タンパク質標的と結合し、PF4と競合可能であるが、標的を活性化させることはできないアンタゴニストでありうる。少なくとも一のこのような模倣体が本発明で提供され、以下に詳細に検討される。
好ましい実施態様では、本発明は、例えばPF4アゴニスト及び/又はアンタゴニストとして、PF4活性を調節する新規な物質を提供する。例えば、本発明は、次の化学式:
Figure 2008520734
を有する化合物を提供する。
本発明で提供されるさらなる他の化合物は、図8及び9A−9Bに示されている式IIからVIIIに記載されている。さらに、例えば本発明のPF4アゴニスト及び/又はアンタゴニストとして使用可能なペプチドベースの化合物が提供される。これらには、P34−56(配列番号:157)、P37−56(配列番号:158)、P34−53(配列番号:159)及びP35−53(配列番号:160)と以下の実施例において呼ばれているペプチドが含まれる。特に好ましいPF4アゴニストは、ペプチド部分P34−56(配列番号:157)であるが、ペプチド部分P34−53(配列番号:159)が特に好ましいPF4アンタゴニストである。
他の実施態様では、本発明は、PF4レセプター等の、PF4結合部位を検出するのに有用な検出可能マーカーを提供する。これらの検出可能マーカーは、一般には、そこに結合する検出可能標識を有する本発明のPF4アンタゴニストを含む。一般的に言えば、これらの検出可能マーカーは、(a)個体に検出可能マーカーを投与し;(b)個体における検出可能マーカーの存在を検出することにより、(例えばMRI等の医療用映像技術等)個体におけるPF4結合部位を検出するために使用することができる。以前の報告では、PF4が、個体の感染及び/又は血管新生の部位に好ましくは結合し、乳癌等のある種の腫瘍を検出するのに使用可能であることが示されている。よって、この発明の方法は、個体における感染及び/又は血管新生の部位を検出するために使用することもできる。
本発明のこれらの及び他の側面については、以下のセクションにおいて詳細に記載する。
5.詳細な説明
本発明は、血小板因子4すなわち「PF4」とここで呼ばれるサイトカインに対するファーマコフォア分子に関する。また、PF4サイトカインは、CXCL4としても知られている。PF4アミノ酸配列は過去に開示されている(例えば、Deuelら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1977, 74:2256-2258; Walzら, Thromb. Res. 1977, 11:893-898; 及びPonczら, Blood 1987, 69:219-223を参照)。配列はまた例えば受託番号P02776(GI No.130304)でGenBankデータベースからも入手可能である(Bensonら, Nucleic Acids Research 2003, 31:23-27)。
便宜上、本発明は、こでは主として、そのアミノ酸配列が図1C(配列番号:1)に記載されている成熟PF4ポリペプチドに関して記載している。この成熟PF4ポリペプチドは、ここでは成熟野生型PF4すなわち「WTPF4」とも言う。またPF4変異体も本発明で使用することができる。例えば、ここでPF4var1と称される既知の好ましい一変異体の完全長アミノ酸配列を図1B(配列番号:33)に示す。好ましくは、本発明で使用されるPF4ポリペプチドは「成熟」PF4ポリペプチドである。よって、変異PF4ポリペプチド、例えばPF4var1を使用する実施態様では、ポリペプチドは、好ましくはシグナルペプチド配列(例えば、配列番号:33のアミノ酸残基1−34)を含まないが、成熟ポリペプチドのアミノ酸残基(例えば、配列番号:33の残基35−104)を含む。一般に、変異PF4とWTPF4(配列番号:1)の成熟配列間のアミノ酸配列同一性のレベルは高く、例えば少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75、80、85、90又は95%である。また、(以下の実施例で記載されているPF4「突然変異体」とは異なり)変異体と野生型PF4配列との間の如何なる差も、好ましくはファーマコフォアの如何なるポイントも修飾しない。種々のPF4ポリペプチド配列を整列させ、互いの配列同一性のレベルを、種々の既知の配列アラインメントアルゴリズム、例えばBLAST、FASTA、DNA Strider、CLUSTAL等の任意のものを使用して決定できる。
WTPF4の場合、完全長PF4サイトカイン(配列番号:32)は、101のアミノ酸残基のポリペプチド鎖として表される。この「完全長」PF4アミノ酸配列の最初の31アミノ酸残基は、一般的に「シグナル配列ドメイン」と称されるドメインに相当する一方、残りのアミノ酸残基(すなわち、配列番号:32の残基32−101)は、一般に「成熟」PF4アミノ酸配列と称されるものに相当する。プロセシングの際、PF4シグナル配列ドメインが切断されて、PF4サイトカイン活性を示す「成熟」PF4ポリペプチドが細胞によって分泌される。よって、本発明のファーマコフォア分子は、成熟PF4のファーマコフォア構造を含む。便宜上、成熟野生型ヒトPF4アミノ酸配列は、図1C(配列番号:1)に提供される。しかしながら、上に説明したように、この配列の変異体も、本発明で使用することができる。一つのそのような変異体、PF4var1の完全長配列は、図1B(配列番号:33)に提供されており、そのアミノ酸残基1−34がシグナル配列に相当する。よって、好ましい成熟、変異PF4ポリペプチドは、図1B(配列番号:33)に示されているPF4var1配列のアミノ酸残基35−104の配列を含む。
また、PF4の三次元構造は、X線結晶学(Zhangら, Biochemistry 1994, 33:8361-8366) 及びNMR分光法(Mayoら, Biochemistry 1995, 34:11399-11409)により決定することができる。これらの構造の座標は、それぞれ受託番号1RHP及び1PFMでProtein Data Bank (Bermanら, Nucleic Acids Research 2000, 28:235-242)から入手可能である。便宜上、成熟ヒトPF4に対する好ましい三次元構造からの座標リストは、以下に、アペンディクスとして、PDBファイル形式にて、ここに提供する。
5.1.PF4ファーマコフォア
本発明を記述するために使用される「ファーマコフォア」なる用語は、特定の三次元立体配置における(例えば原子等の)特定の一群の官能基を有する化合物又は分子を意味する。より詳細には、ファーマコフォアなる用語は、(ここでは「プロトタイプ」タンパク質又は化合物と呼ばれる)関心あるタンパク質又は他の化合物におけるそれらの三次元配置と実質的に同一である三次元立体配置でこの官能基群を有する化合物を意味する。本発明は、プロトタイプタンパク質PF4に関する。よって、本発明のファーマコフォアは、好ましくは、PF4におけるそれらの三次元配置と実質的に同一の三次元立体配置にある官能基群を有する。例えば、ファーマコフォアと関心ある原型化合物の官能基間のRMSDは、例えばQUANTA(Molecular Simulations, Inc., San Diego, Californiaから入手可能)等の分子モデリングプログラム内のMolecular Similarityモジュールを使用して算出した場合、好ましくは約1オングストローム以下であるべきである。
好ましいファーマコフォアは、例えばX線結晶学又は核磁気共鳴(NMR)分光法により実験的に決定される関心あるタンパク質(好ましくはタンパク質の成熟又は活性型)又は他のプロトタイプ化合物の三次元構造から誘導される。しかしながら、適切なファーマコフォアは、関連化合物の構造に基づく相同性モデル、又は三次元構造-活性関係性から誘導することもできる。例えば、本発明の好ましいファーマコフォアは、PF4ポリペプチドにおける点突然変異を分析し、その突然変異がPF4活性について有する効果を評価することにより得られる。ついで、適切なPF4ファーマコフォアは、例えば、成熟PF4の三次元相同モデルにこのような変異の影響を相関させることにより、推定又は誘導することができる。
本発明の好ましい実施態様では、PF4アンタゴニストは、PF4レセプター分子、又は他のPF4結合部位を検出するために使用することができる。このようなPF4結合部位の検出の有用性当該分野でよく知られている。例えばMoyerら(J. Nucl. Med. (1996) 37(4):673-679)は、PF4のヘパリン結合ドメインを含むと言われている彼らがP483Hと呼ぶポリペプチドを記載している。このポリペプチドの99mTc標識型はインビボでの感染のハイコントラストな画像を提供すると言われている。他には、ある種の腫瘍−特に乳癌における血管新生のイメージングマーカーとしてPF4が有用かもしれないと示唆されている。Borgstromら, Anticancer Res. (1998) 18(6A):4035-4041。
従って、本発明は、PF4結合分子(例えば、PF4レセプター分子)及びPF4結合を検出するために使用可能な検出可能マーカーを提供する。このような検出可能マーカーは、一般的には、検出可能標識がそれに結合したPF4アンタゴニストを含む。PF4アンタゴニストは、レセプターを活性化させることなく、さもなければPF4媒介性活性を誘発することなく、PF4レセプター又は結合部位に結合する任意の化合物でありうる。小分子アンタゴニストの一例を図9Aに示す一方、図9Bは、アンタゴニストが、例えば磁気共鳴映像法用の造影剤として、そこに結合した検出可能標識を有する例示的な実施態様を示す。
図9A−9Bは、PF4アンタゴニストが小分子である任意の実施態様を示しているが、ペプチド、ポリペプチド又はペプチド模倣体であるPF4アンタゴニストも、これらの方法において使用することができる。よって、本発明は、PF4アンタゴニストとして、配列番号:2−30に記載のPF4ポリペプチドのいずれか、又は国際公開第99/41283号及び国際公開第01/46218号に記載されたPF4ペプチドのいずれかを含む検出可能マーカーも含む。これらには、以下に記載する配列番号:34−156に記載のペプチドのいずれかを含む。さらなる他のPF4アンタゴニストペプチドは、P35−53と命名されたペプチド(配列番号:159)を含み、以下の実施例において提供される。
PF4アンタゴニスト部分は、当業者にとってよく知られまた常套的な任意の技術に従い、検出可能標識に容易に結合させることができる。好ましい実施態様では、検出可能マーカーは、例えば医療診断又はイメージングアッセイ、特に磁気共鳴画像法(MRI)又はコンピュータ断層撮影(CAT)等において、インビボでのPF4結合部位を検出するのに使用される。PF4アンタゴニストは、金属、放射性同位体、及び放射線不透性剤(例えば、ガリウム、テクネチウム、インジウム、ストロンチウム、ヨウ素、バリウム、臭素、及びリン-含有化合物)、放射線透過性剤、造影剤、染料(例えば、蛍光染料及び発色団)、及び熱量測定又は蛍光定量反応を触媒する酵素を含む、このような使用のための様々な造影剤又は検出剤の任意のものに結合させうる。一般的に、このような薬剤は、当該分野で知られている様々な技術の任意のものを使用して任意の配向で付着させることができる。例えば、米国特許第5330742号;同第5384108号;同第5618513号;同第5804157号;同第5952464号;及び同第6797255号を参照のこと。一又は複数の水溶性ポリマー部分、例えばポリ-エチレングリコールすなわち「PEG」をまた例えば検出可能マーカーの溶解度及び/又は生物学的利用能を高めるためにPF4アンタゴニストに結合させることもできる。
上述したように、このような検出可能マーカーは、個体においてPF4レセプターの存在を含むPF4結合部位の存在を検出又は同定するために使用することができる。一般的に、このような方法は、個体に検出可能マーカーを投与し、例えば検出可能標識の存在を検出することにより、その存在を検出する工程を含む。過去の報告では、PF4が、個体における血管新生及び/又は感染の部位に好ましくは結合するであろうことが示されている。よって、これらの方法は、個体における血管新生及び/又は感染の部位を検出するのにも使用することができる。血管新生の検出方法は、特に個体における腫瘍又は他の癌の部位を検出するのに有用である。
好ましい実施態様では、これらの方法では、既知の医療画像法、例えば磁気共鳴画像法(MRI)を使用してPF4結合部位を検出する。しかしながら、本方法は、検出可能標識の存在を検出するための、当業者が利用できる任意の技術を使用して実施することができる。例えば、本方法は、例えば検出可能標識用の蛍光部分を使用し、インシトゥーで(例えば、個体からの組織サンプルにおいて)検出可能標識の存在を検出することによっても実施することができる。
本発明のファーマコフォアは、(インビトロ又はインビボのいずれかで)細胞におけるPF4活性を調節するペプチド模倣体又は小分子(すなわち、好ましくは約2kDa未満の分子量、より好ましくは約1kDa未満の分子量の有機又は無機分子)等の化合物を同定するのに特に有用である。例えば、ある種の実施態様で、本発明のファーマコフォアは、例えばPF4レセプターに結合することにより、PF4の天然活性を模倣する化合物を同定するのに使用することができる。PF4活性を増加又は亢進させることができるこのような化合物は、ここではPF4「アゴニスト」又は「アゴニスト化合物」と呼ぶ。他の実施態様では、本発明のファーマコフォアは、例えばPF4レセプターへの結合について、PF4と競合するがそれら自身では何のPF4活性も生じない化合物を同定するのに使用することができる。よって、このような化合物は、PF4活性を効果的に阻害又は低減させ、ここではPF4「アンタゴニスト」又は「アンタゴニスト化合物」と呼ばれる。
本発明のファーマコフォア分子は、分子がPF4活性に必要な独特な官能基又はエレメントから本質的になるが、そのような活性に影響を与えない官能基又はエレメントがあるとしてもごくわずかな場合に、一般的にはより効果的であり、よって、好ましい。しかして、このようなファーマコフォアにより、候補化合物とファーマコフォアとの間で比較されなければならない官能基の数が大きく低減されるため、PF4アゴニスト及びアンタゴニストの探索が簡略化される。従って、本発明は、好ましい実施態様において、少なくとも7で10を越えない官能基、又は上述した空間的関係を有する「ファーマコフォアポイント」から本質的になるPF4ファーマコフォアを提供する。好ましいファーマコフォアポイントは与えられた数であり、以下の表1に記載する。これらのポイントの各々は、図1(配列番号:1)に記載する成熟PF4ポリペプチド配列中の特定のアミノ酸側鎖に対応する。より詳細には、各ポイントは、その配列のアミノ酸側鎖上の特定の独特の原子又は官能基に対応する。従って、表1のファーマコフォアポイントは、それらが位置している箇所のアミノ酸残基と、その残基側鎖の特定の原子又は官能基の双方を特定することにより示される。表1に列挙される10の官能基の7つが血管新生抑制活性に必須である。血管新生抑制活性に必須の7つの官能基は、PF4のN末端近傍のDLQ(Asp7-Leu8-Gln9)モチーフに対応するファーマコフォアポイントI、II、III、IV及びVIII、及びLeu11及びVal13の疎水性中心に対応するファーマコフォアポイントIX及びXを含む。血管新生抑制活性のために必須ではないが好ましい官能基は、Gln18及びHis23に対応するファーマコフォアポイントV、VI及びVIIを含む。これらの後者のポイントが、他の点でファーマコフォアに一致する化合物から除外された場合、化合物は内皮細胞に結合するが、それらの細胞を活性化させない。
一貫性を保つため、表1中の原子及び官能基は、以下のアペンディクスに記載するPDBファイルで使用したものと同一の表記を使用する。
Figure 2008520734
図2A及び2Bは、成熟PF4自体上のファーマコフォアポイントを示している。特に、図2Aには、以下のアペンディクスに記載の座標に基づき、成熟PF4ポリペプチド骨格の例示的三次元構造が示されている。PF4の官能基を含むアミノ酸残基は、ファーマコフォアの各官能基が円で囲まれ、上述の表1の対応するローマ数字で標識されて示されている。図2Bには、特定の官能基に対応する各ポイントを有するPF4ファーマコフォア構造が示されている。これらの官能基間の距離は、図2Bにおける種々の官能基の間に引かれた線により示されている。これらの距離は、例えば以下のアペンディクスに記載の座標等、成熟PF4の三次元構造における対応する官能基間の距離を測定又は算出することにより、使用者によって容易に決定し評価されうる。便宜上、これらの官能基間の好ましい距離をまた以下の表2に記載する。
Figure 2008520734
好ましくは、本発明のファーマコフォアは、ファーマコフォアの各ポイントが三次元空間におけるその位置を表す及び/又は示す少なくとも3座標のセットにより記載されている座標系を使用して記述される。このようにして、ファーマコフォアの主要なポイントの配置は、(例えば、以下に記載するINSIGHT II等の、分子構造をモデリングするための様々なプログラム及びアルゴリズムを使用することにより)容易にモデル化及び/又は可視化することができる。またファーマコフォアの座標は、ペプチド模倣体又は他の候補化合物におけるポイントを用い、以下に記載するようにして、ファーマコフォア構造を比較するために容易に使用することもできる。
さらなるパラメータを、個々のファーマコフォアポイントの他の特性を記述するために使用することもできるし、使用するのが好ましい。水素結合のドナー又はアクセプターであるファーマコフォアポイントの場合には、これらには、水素結合の好ましい方向、配向、大きさ及び/又は距離を示すパラメータを含めることができる。使用可能な他のパラメータには、疎水性ファーマコフォアポイントに対しては、好ましい疎水性相互作用の大きさ(例えば距離又は体積)を示すパラメータが含まれる。
特に好ましい座標系と好ましいPF4ファーマコフォアを記述するためのその使用についての例は、以下の実施例6.2.5に示している。この系では、各ファーマコフォアポイントの位置を示すためにデカルト又は球座標のいずれかを使用することができる。当業者であれば、与えられた点のデカルト座標を、実施例にまた示されている2つの座標系間のよく知られた数学的関係を使用し、球座標のセットに、またその逆にも、容易に変換できることが分かるであろう。水素結合の好ましい大きさ及び配向を記述するため、実施例には、各水素結合のドナー及びアクセプターに対して、好ましい水素結合の方向を指す水素結合ベクトルAの座標が提供されている。好ましい水素結合ポテンシャルの表面積Sも、ファーマコフォアにおける各水素結合ドナー及びアクセプターについて提供されている。このパラメータは、水素結合の形成が好ましい面に対応する水素結合ベクトルAの周囲の球形キャップの表面を定める。各疎水性ファーマコフォアポイントについて、実施例には、所望されない相互作用(例えば、親水性又は極性残基、又は極性溶媒との相互作用)を回避すべきであるファーマコフォアポイントに最も近い距離にあるポイントを示すポイントmが提供されている。
5.2.ペプチド模倣体
上述したように、本発明のPF4ファーマコフォアは、PF4活性のアゴニスト及び/又はアンタゴニストであるペプチド模倣体及び他の化合物として特に有用である。従って、本発明は、PF4活性のアゴニスト又はアンタゴニストであるペプチド模倣体を提供する。
ペプチド模倣体は、例えばGourらの国際公開第01/5331A2号に一般的に記載されている。このような化合物は、例えば、成熟PF4ファーマコフォアにおける官能基の立体配置と立体配置が実質的に同様なファーマコフォアポイントを含むPF4アミノ酸配列(又はその類似体)の一部を含むペプチド及びペプチド類似体でありうる。しかしながら、ペプチド模倣体における一又は複数のファーマコフォアポイントは、例えば特定のファーマコフォアポイントを示すアミノ酸残基を置き換えることにより、PF4活性に影響を与えるように修飾することができる(アゴニスト又はアンタゴニストのいずれかとして)。あるいは、ペプチド模倣体の少なくとも一部は、ファーマコフォアにおける官能基の三次元構造が少なくとも部分的に保持されるように、一又は複数の非ペプチド構造に置き換えることができる。換言すれば、PF4ペプチド内の1、2、3又はそれ以上のアミノ酸残基が非ペプチド構造で置き換えられてもよい。さらに、少なくとも一の主要アミノ酸残基は、異なる特徴(例えば、疎水性、親水性、プロトンドナー又はアクセプター特性、静電特性等の異なる性質)を有する他のものによって置き換えられることもできる。また、ペプチド又はペプチド模倣体の他の部分も、非ペプチド構造で置き換えることができる。
典型的には、ペプチド模倣体(ペプチド及び非-ペプチジル類似体の双方)は、PF4ペプチドよりも、それらを製薬用組成物にさらに適切なようにする改善された特性(例えばタンパク質分解性の低減、保持率の増加、又は生物学的利用能の増加)を有し得る。また、ペプチド模倣体は、改善された経口的有用性も有し得る。本発明のペプチド模倣体は、類似した二次元構造、例えば配列及び構造式を有していても有していなくてもよい。しかしながら、同じ活性を有する本発明の全てのペプチド模倣体は、互いに共通した三次元構造及び幾何性を共有しており、全てが、天然ヒトPF4のファーマコフォアの三次元構造に近いであろう。本発明の各ペプチド模倣体は、一又は複数の独特の付加的結合エレメントをさらに有していてもよい。本発明は、ペプチド模倣体を同定するための方法(以下に記載)を提供する。
ここで提供される全てのペプチド模倣体は、上述した天然分子上に示されたファーマコフォアの三次元構造に実質的に類似した三次元構造を有する。一般的に、化合物の三次元は、2つの構造が、例えばQUANTAプログラムを用いたMolecular Similarityモジュール(Accelrys, Inc., San Diego, Californiaから入手可能なINSIGHT IIプログラムのバイオポリマーモジュール)を使用して、又は当業者に利用されている他の分子モデリングプログラム及びアルゴリズムを使用して算出した場合に、約1オングストローム以下のRMSDを有するならば、ファーマコフォアの三次元構造に実質的に類似していると考えられる。好ましい実施態様では、本発明の化合物は、約1.0オングストローム以下のRMSDを有する。本発明の化合物は、より好ましくは0.5オングストローム、さらに好ましくは約0.1オングストローム以下のRMSDを有する。特に、本発明のペプチド模倣体は、PF4ファーマコフォアの三次元構造に実質的に類似した又は類似していると予測される(例えば、アブイニシオモデリングによる)少なくとも一の低エネルギー三次元構造を有しているであろう。
低エネルギー立体構造は、例えばCHARMMプログラム(Brooksら, J. Comput. Chem. 1983, 4:187-217)を使用し、立体構造エネルギーを算出することにより同定することができる。エネルギーなる用語は、結合距離エネルギーを含む、結合及び非結合の用語を含む。また、化合物の立体構造エネルギーは、様々な他の商業的に入手可能な量子力学又は分子力学プログラムの任意のものを使用して算出可能であることは明らかである。一般的に、低エネルギー構造は、全エネルギー最小値の50kcal/mol以内である立体構造エネルギーを有する。
例として、限定するものではないが、低エネルギー立体構造は、2つの手順の組合せを使用して同定することができる。第1の手順は、シミュレーションアニーリング分子動力学的アプローチに関連している。この手順において、(設計されたペプチド模倣体と水の分子を含む)系を室温以上、好ましくは約600ケルビン度(すなわち600K)まで加熱し、約50〜100ps(例えば70ps)又はそれ以上の期間、シミュレートした。徐々に系の温度を、例えば約500Kまで低下させて、約100ps又はそれ以上の期間シミュレートし、さらに徐々に400Kまで低下させて、100ps又はそれ以上の期間シミュレートする。ついで、系の温度を再度約300Kまで低下させ、約500ps又はそれ以上の期間シミュレートする。この解析中、原子軌道を記録する。このようなシミュレーションアニーリング手順は当該分野でよく知られており、タンパク質又は他の化合物の立体配座「空間」を効果的に探査する能力のために、特に有利である。すなわち、この手順を使用すると、化合物に対して多種多様の考えられる立体構造をサンプリングし、最も低いエネルギーを有する立体構造を迅速に同定することができる。
第2の手順は、Wu & Wang, J. Physical Chem. 1998, 102:7238-7250により記載されているような、自己誘導式分子動力学(SGMD)の使用を含む。SGMD法は、極めて高められた立体構造探査能力を有することが証明されている。よって、SGMD法を使用すると、300Kで、1000ps又はそれ以上でシミュレーションが実施されてよく、解析のために原子軌道が記録される。
また、ペプチド模倣体及び他の化合物の立体構造分析は、INSIGHT II分子モデリングパッケージを使用して実施することもできる。まず、(上述したような)分子動力学的シミュレーションから生じた軌道を使用し、クラスター解析を実施することができる。各クラスターから、このクラスターの代表的な立体構造として、最も低いエネルギーの立体構造を選択し、他の立体構造クラスターと比較することができる。クラスター解析では、主要な立体構造クラスターを同定し、環状ペプチド(類)の解構造と比較することができる。
特に、ペプチド模倣体又は他のアゴニスト/アンタゴニスト化合物は、例えば、CATALYST.TM. (Molecular Simulations, Inc., San Diego, Calif)で実施されているように、当業者によく知られている計算方法を使用し、ファーマコフォアモデルに最適に重ね合わされる。構造とファーマコフォアモデルの重ね合わせは、分子とファーマコフォアの対応する特徴の重心間の二乗平均平方根距離の最小化として定められる。次に、CERIUS .TM (Molecular Simulations, Inca, San Diego, Calif.)等のコンピュータプログラムを使用し、重ね合わせた構造の周囲のファンデルワールス面を算出する。また、プログラムINSIGHT II内のMolecular Similarityモジュールを使用することにより、立体構造比較を実施してもよい。
また、構造の類似性は、図式において三次元構造を目で比較することにより、又は任意の様々な演算比較により評価することもできる。例えば、原子当量を、ペプチド模倣体及びファーマコフォアの三次元構造で定義し、フィッティング操作を使用して類似性レベルを確立することができる。ここで使用される場合、「原子当量」とは、2つの構造における保存原子セットである。「フィッティング操作」は、候補化合物の構造が環状ペプチド構造との最適フィットを得るように翻訳され、回転される任意のプロセスでありうる。フィッティング操作は剛性フィッティング操作であってよい(例えば、ファーマコフォア構造は剛性を保持して維持でき、ペプチド模倣体の三次元構造を、ファーマコフォア構造と最適フィットを得るように翻訳し、回転することができる)。あるいは、フィッティング操作では、当量原子の特定の対に対するフィットの二乗平均平方根の差が最小となるように、移動化合物構造に適応される最適な翻訳及び回転を演算する最小二乗フィッティングアルゴリズムを使用してもよい。好ましくは、原子当量は使用者により確立することができ、フィッティング操作は、多様な入手可能なソフトウエアアプリケーション(例えば、INSIGHT II (Accelrys Inc. San Diego, Californiaから入手可能)又はQUANTA(Molecular Simulationsから入手可能))の任意のものを使用して実施される。実質的な類似性の確立に使用される候補化合物の三次元構造は、(例えばNMR又はX線結晶技術を使用し)実験的に決定することもできるし、又は例えばここに提供される方法を使用し、アブイニシオでコンピュータ演算されてもよい。ペプチド模倣体を比較し同定するためのこのようなモデリング及び実験方法の使用は、当該分野においてよく知られている。例えば、それらの全てが出典明示によりここに援用される国際公開第01/5331号及び国際公開第98/02452号を参照(以下のセクション7を参照)のこと。
一例として、限定するものではないが、化学ライブラリー(例えばヒダントイン及び/又はオキソピペラジン化合物を含む)は、コンビナトリアルケミストリー技術を使用して作製され、最初にインシリコでスクリーニングして、本発明のPF4ファーマコフォアのエレメントを有し、よってPF4アゴニスト又はアンタゴニストのいずれかであると思われる化合物を同定することができる。コンビナトリアルケミストリー技術は、高信頼性の化学反応とロボット機器を用い、定まった化学成分の系統的付加を介して有機化合物の平行合成を可能にする。化合物の大きなライブラリーは、一つの部位で実施可能な全ての起こり得る反応と、第2、第3又はそれ以上の数の部位で実施可能な全ての起こり得る反応との組合せから生じる。このような方法は、固形担体に付着する混合物として、又は個々の分離化合物として、数千から何億もの新規な化学化合物を生じさせる可能性を有している。
本発明のPF4ファーマコフォアは、PF4の効果的なアゴニスト又はアンタゴニストである可能性が最もある化合物を同定するためのこのような化学ライブラリーのスクリーニングを、大きく単純化し容易にするために使用することができる。その結果、ライブラリー合成では、標的(例えば、PF4レセプター又はPF4ポリペプチドそれ自体)と最も相互作用しそうなライブラリーメンバーに焦点を合わせることが可能で、ライブラリーの可能性のある全てのメンバー(しばしば、多すぎて扱いにくい程の数の化合物になる)を合成する必要がなくなる。構造に基づいた設計とコンビナトリアルケミストリー技術の統合アプリケーションにより、薬剤開発に効果的な相乗的改善が生じる可能性がある。例を示すと、ヒダントイン及びオキソピペラジンライブラリーは、ヒダントイン又はオキソピペラジン骨格へのヒスチジン及びバリン代用物の添加のみを含む化合物に限定することができる。
また本発明のペプチド模倣化合物は、本来のPF4ペプチドに関係ないか、又は関係ないと思われる化合物も含むが、組織分布的模倣体となる非ペプチド骨格上に位置する官能基を含む。このようなペプチド模倣体は、ここでは「非ペプチジル類似体」と称される。非ペプチジル類似体は、例えば大きな化学データベースのライブラリースクリーニングを使用して同定することができる。このようなスクリーニングではファーマコフォアの三次元立体構造を使用して、三次元空間におけるこのようなデータベースを探査する。単一の三次元構造をそのような探査のファーマコフォアモデルとして使用することができる。あるいは、ファーマコフォアモデルは、複数の三次元構造内に存在する重要な化学構造的特徴を考慮することにより、作成されてもよい。
様々な三次元構造のデータベースのいずれかを、このような探査に使用することができる。また、三次元構造のデータベースは、化合物の三次元構造を生じさせ、機械読み取り可能データでコードされるデータ保存材料の形態で三次元構造を保存することにより、作成することができる。三次元構造は、三次元グラフ描写表示を示すことが可能な機械に表示され、データを使用するための説明書と共にプログラムされうる。好ましい実施態様においては、三次元構造は、三次元構造を定義する座標セットとして提供される。
好ましくは、三次元(3D)構造データベースは、特に好ましい比較的単純な化学構造を有する小さな非ペプチジル分子と共に、少なくとも100000の化合物を含む。また、データベース中の化合物の3D座標は、正確かつ的確に表されていることが重要である。国立癌研究所(NCI)3Dデータベース(Milneら, J. Chem. Inf. Comput. Sci. 1994, 34:1219-1224)及びAvailable Chemicals DIrector (ACD; MDL Information Systems, San Leandro, Californiaから入手可能)は、上述したもの等の分子モデリング方法を使用し、三次元構造のデータベースを作製するために使用可能な2つのデータベース例である。いくつかの低エネルギー立体構造を有しうるフレキシブルな分子に対しては、複数の立体構造を保存し探査することが望ましい。Chem-Xプログラム(Oxford Molecular Group PLC, Oxford, United Kingdom)により、フレキシブルな化合物に対しての数千又は数百万の立体構造を探査することができる。Chem-Xのこの性能は、複数の立体構造を採用可能な化合物を扱う際に真の利点をもたらす。このアプローチを使用すると、何億もの立体構造を、3Dファーマコフォア探査プロセスで探査することができる。
典型的には、ファーマコフォアの探索は、少なくとも3つの工程を含む。これらの第1は、ファーマコフォアクエリーの作成である。このようなクエリーは、ファーマコフォアの三次元構造における距離の評価から開発することができる。例えば、図2Aには、以下のアペンディクスに記載の座標に基づく、成熟PF4ポリペプチド骨格の例示的三次元構造が示されている。PF4ファーマコフォアの官能基を含むアミノ酸残基は、ファーマコフォアの各官能基が円で囲まれ、上述の表1に使用されている番号付けに対応するローマ数字で標識されて示されている。図2Bには、PF4ファーマコフォア構造が示されている。特に、図2Bにおける各ポイントは、(上述の表1に使用されている番号付けに対応するローマ数字により示されている)PF4ファーマコフォアの特定の官能基に対応する。ファーマコフォアの探索において好ましく使用される重要なファーマコフォアの距離は、図2Bにおける種々の官能基間に引かれた線により示される。これらの距離は、(例えば以下のアペンディクスに記載の座標を使用して)例えば成熟PF4ポリペプチドの三次元構造における対応する官能基間の距離を測定することにより、使用者が容易に決定し評価することができる。
ファーマコフォアクエリーの使用により、距離ビットスクリーニングが、要求されている幾何制約を満たす化合物を同定するためにデータベースについて好ましく実施される。第1に、候補化合物がそれらの重要な物理学的ポイント(すなわち水素結合ドナー、水素結合アクセプター、疎水容積等)、及び重要な幾何学的パラメータ(すなわち重要な物理学ポイントの相対距離)を決定するためにスキャンされる。化学基(すなわち疎水性、NH 、カルボニル、カルボキシラート)が、各候補化合物の表面へのマッピングに使用される一方、相互作用場が、候補分子内の主要なポイントの数及び性質を抽出するのに有用である。候補化合物から、重要な物理的ポイント及び幾何学パラメータを自動的に抽出するGRIDプログラム(Molecular Discovery Ltd., London, United Kingdom; Goodford, 1985)等の、多くのよく知られた技術が存在する。
主要な点が候補化合物から抽出されると直ぐに、候補化合物と本発明のファーマコフォアとが重ね合わされるか又は整列される。ファーマコフォアポイントと、候補化合物の対応する主要なポイントの間の類似度合いが算出され、利用されて、2つの分子間の類似度合いが決定される。本発明のファーマコフォアと候補化合物とを比較するために利用可能な重ね合わせ法の詳細は、以下の論文、De Eschら, J Med Chem. 2001 24:1666-74 及びLemmenら, J Med Chem. 1998 41(23):4502-20に見出される。ファーマコフォア容積への化合物のフィッティングは、当該分野でよく知られている他の演算方法を使用して実施することができる。目視検査及び活性部位容積への化合物のマニュアル結合は、QUANTA (Molecular Simulations, Burlington, Mass., 1992)、SYBYL (Molecular Modeling Software, Tripos Associates, Inc., St. Louis, Mo., 1992)、AMBER (Weinerら, J. Am. Chem. Soc., 106: 765-784, 1984)、又はCHARMM (Brooksら, J. Comp. Chem., 4: 187-217, 1983)等のプログラムを使用して実施することができる。このモデリング工程には、CHARMM又はAMBER等の、標準力場を使用するエネルギー最小化を続けることができる。他のより専門化されたモデリングプログラムには、GRID(Goodfordら, J. Med. Chem., 28: 849-857, 1985)、MCSS(Miranker & Karplus, Function及びGenetics, 11: 29-34, 1991)、AUTODOCK(Goodsell & Olsen, Proteins: Structure, Function 及びGenetics, 8: 195-202, 1990)、及びDOCK (Kuntzら, J. Mol. Biol., 161:269-288 (1982))が含まれる。さらに、化合物は、 LUDI(Bohm, J. Comp. Aid. Molec. Design, 6: 61-78, 1992)、LEGEND (Nishibata & Itai, Tetrahedron, 47: 8985, 1991)、及びLeapFrog (Tripos Associates, St. Louis, Mo.)等のコンピュータプログラムを使用し、既知のインヒビターの所定の部分を含む活性部位又は空の活性部位に、新規に構築されてもよい。
重ね合わせ手順の後、高い整合スコア又は高い類似度合いを有する分子が、それらの類似性をさらに検証するために選択される。(例えば、Minitab Statistical Software (Minitab, State College, Pa)を用いて実施される)ANOVA等のプログラムは、本発明のファーマコフォアと候補分子との間の定められたp値(好ましくは、p値は0.05未満である)に対して統計的に有意な差を抽出する。定められたp値以下のp値を有する候補分子は拒絶される。
多数の異なる数学的指標を、ファーマコフォアと候補化合物との間の類似性を測定するために利用することができる。本発明に対して関心ある数学的指標は、一般的にはソフトウェアパッケージに含まれている。数学的指標の選択は、多くの因子、例えば関心あるファーマコフォア、候補分子のライブラリー、及び活性に必須であると同定された官能基に依存するであろう。この話題についての概説は、Frederiqueら, Current Topics in Medicinal Chem. 2004, 4: 589-600を参照のこと。
幾何学的要求を満足させる少なくとも一の低エネルギー立体構造を有する化合物は、「ヒット」と見なされ、PF4アゴニスト又はアンタゴニストの候補化合物である。本発明の特定の実施態様では、本発明の化合物は、PF4、PF4突然変異体、IL-8、又は:PHSPTAQLIA TLKNGQKISL DLQAP(配列番号:34); PHSPTVQLIA TLKNGQKISL DLQAP(配列番号:35); PYSPTAQLIA TLKNGQKISL DLQEP(配列番号:36); PHSPQTELIV KLKNGQKISL DLQAP(配列番号:37); PHSPTAQLIA TLKNGQKISV DLQAP(配列番号:38); AHSPTAQLIA TLKNGQKISL DLQAP(配列番号:39); AHSPTVQLIA TLKNGQQISL DLQAP(配列番号:40); AYSPTAQLIA TLKNGQKISL DLQEP(配列番号:41); AHSPQTELIV KLKNGQKISL DLQAP(配列番号:42); AHSPTAQLIA TLKNGQKISV DLQAP(配列番号:43); PHSATAQLIA TLKNGQKISL DLQAP(配列番号:44); PHSATVQLIA TLKNGQKISL DLQAP(配列番号:45); PYSATAQLIA TLKNGQKISL DLQEP(配列番号:46); PHSAQTELIV KLKNGQKISL DLQAP(配列番号:47); PHSATAQLIA TLKNGQKISV DLQAP(配列番号:48); AHSATAQLIA TLKNGQKISL DLQAP(配列番号:49); AHSATVQLIA TLKNGQQISL DLQAP(配列番号:50); AYSATAQLIA TLKNGQKISL DLQEP(配列番号:51); AHSAQTELIV KLKNGQKISL DLQAP(配列番号:52); AHSATAQLIA TLKNGQKISV DLQAP(配列番号:53); PHSPTAQLIA TLKNGQKISL DLQAPLY(配列番号:54); PHSPTVQLIA TLKNGQKISL DLQAPLY(配列番号:55); AHSATAQLIA TLKNGQKISL DLQAPLY(配列番号:56); PHSPQTELIV KLKNGQKISL DLQAPRY(配列番号:57); PHSPTAQLIA TLKNGQKISL DLQAPRY(配列番号:58); PHSTAAQLIA TLKNGQKISL DLQAPLY(配列番号:59); PHCPTAQLIA TLKNGRKICL DLQAP(配列番号:60); PHSPTPQLIA TLKNGQKISL DLQAP(配列番号:61); PHSTAPQLIA TLKNGQKISL DLQAPLY(配列番号:62); PHSPTAQLIA TLKNGQKISL(配列番号:63); PHSPTVQLIA TLKNGQKISL(配列番号:64); PYSPTAQLIA TLKNGQKISL(配列番号:65); PHSPQTELIV KLKNGQKISL(配列番号:66); PHSPTAQLIA TLKNGQKISV(配列番号:67); AHSPTAQLIA TLKNGQKISL(配列番号:68); AHSPTVQLIA TLKNGQQISL(配列番号:69); AYSPTAQLIA TLKNGQKISL(配列番号:70); AHSPQTELIV KLKNGQKISL(配列番号:71); AHSPTAQLIA TLKNGQKISV(配列番号:72); PHSATAQLIA TLKNGQKISL(配列番号:73); PHSATVQLIA TLKNGQKISL(配列番号:74); PYSATAQLIA TLKNGQKISL(配列番号:75); PHSAQTELIV KLKNGQKISL(配列番号:76); PHSATAQLIA TLKNGQKISV(配列番号:77); AHSATAQLIA TLKNGQKISL(配列番号:78); AHSATVQLIA TLKNGQQISL(配列番号:79); AYSATAQLIA TLKNGQKISL(配列番号:80); AHSAQTELIV KLKNGQKISL(配列番号:81); AHSATAQLIA TLKNGQKISV(配列番号:82); PHSPTAQLIA TLKNGRKISL(配列番号:83); PHSPTVQLIA TLKNGRKISL(配列番号:84); PYSPTAQLIA TLKNGRKISL(配列番号:85); PHSPQTELIV KLKNGRKISL(配列番号:86); PHSPTAQLIA TLKNGRKISV(配列番号:87); AHSPTAQLIA TLKNGRKISL(配列番号:88); AHSPTVQLIA TLKNGRQISL(配列番号:89); AYSPTAQLIA TLKNGRKISL(配列番号:90); AHSPQTELIV KLKNGRKISL(配列番号:91); AHSPTAQLIA TLKNGRKISV(配列番号:92); PHSATAQLIA TLKNGRKISL(配列番号:93); PHSATVQLIA TLKNGRKISL(配列番号:94); PYSATAQLIA TLKNGRKISL(配列番号:95); PHSAQTELIV KLKNGRKISL(配列番号:96); PHSATAQLIA TLKNGRKISV(配列番号:97); AHSATAQLIA TLKNGRKISL(配列番号:98); AHSATVQLIA TLKNGRQISL(配列番号:99); AYSATAQLIA TLKNGRKISL(配列番号:100); AHSAQTELIV KLKNGRKISL(配列番号:101); AHSATAQLIA TLKNGRKISV(配列番号:102); PHSPTAQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:103); PHSPTVQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:104); PYSPTAQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:105); PHSPQTELIV KLKNGQKISL ELR(配列番号:106); PHSPTAQLIA TLKNGQKISV ELR(配列番号:107); AHSPTAQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:108); AHSPTVQLIA TLKNGQQISL ELR(配列番号:109); AYSPTAQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:110); AHSPQTELIV KLKNGQKISL ELR(配列番号:111); AHSPTAQLIA TLKNGQKISV ELR(配列番号:112); PHSATAQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:113); PHSATVQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:114); PYSATAQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:115); PHSAQTELIV KLKNGQKISL ELR(配列番号:116); PHSATAQLIA TLKNGQKISV ELR(配列番号:117); AHSATAQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:118); AHSATVQLIA TLKNGQQISL ELR(配列番号:119); AYSATAQLIA TLKNGQKISL ELR(配列番号:120); AHSAQTELIV KLKNGQKISL ELR(配列番号:121); AHSATAQLIA TLKNGQKISV ELR(配列番号:122); PHSPTAQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:123); PHSPTVQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:124); DYSPTAQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:125); PHSPQTELIV KLKNGRKISL ELR(配列番号:126); PHSPTAQLIA TLKNGRKISV ELR(配列番号:127); AHSPTAQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:128); AHSPTVQLIA TLKNGRQISL ELR(配列番号:129); AYSPTAQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:130); AHSPQTELIV KLKNGRKISL ELR(配列番号:131); AHSPTAQLIA TLKNGRKISV ELR(配列番号:132); PHSATAQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:133); PHSATVQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:134); PYSATAQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:135); PHSAQTELIV KLKNGRKISL ELR(配列番号:136); PHSATAQLIA TLKNGRKISV ELR(配列番号:137); AHSATAQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:138); AHSATVQLIA TLKNGRQISL ELR(配列番号:139); AYSATAQLIA TLKNGRKISL ELR(配列番号:140); AHSAQTELIV KLKNGRKISL ELR(配列番号:141); AHSATAQLIA TLKNGRKISV ELR(配列番号:142); PHSPTAQLIA TLKNGQKISL ELRAPLY(配列番号:143); PHSPTVQLIA TLKNGQKISL ELRAPLY(配列番号:144); AHSATAQLIA TLKNGQKISL ELRAPLY(配列番号:145); PHSPQTELIV KLKNGQKISL ELRAPRY(配列番号:146); PHSPTAQLIA TLKNGQKISL ELRAPRY(配列番号:147); PHSATAQLIA TLKNGQKISL ELRAPLY(配列番号:148); PHSPTAQLIA TLKNGRKISL ELRAPLY(配列番号:149); PHSPTVQLIA TLKNGRKISL ELRAPLY(配列番号:150); AHSATAQLIA TLKNGRKISL ELRAPLY(配列番号:151); PHSPQTELIV KLKNGRKISL ELRAPRY(配列番号:152); PHCPTAQLIA TLKNGRKICL DLQAP(配列番号:153); PHSPTPQLIA TLKNGQKISL DLQAP(配列番号:154); PHSTAPQLIA TLKNGQKISL ELRAPLY(配列番号:155)又はPHSPTAQLIA TLKNGQKISL DLQAP(配列番号:156)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドではない。
当業者であれば、例えばここで提供されたスクリーニングを使用し、化合物の構造が最適化されることが分かるであろう。これらのスクリーニング内では、三次元構造に対する候補化合物の特定の改変の効果は、例えばPF4ファーマコフォアに対する三次元類似性を最適にするために評価することができる。このような改変には、例えば疎水性、立体容積、静電特性、大きさ及び結合角における変化が含まれる。これらの方法により同定される候補アゴニスト及びアンタゴニストの生物学的検査が、それらの活性を確認するためにまた好ましくは使用される。
活性なペプチド模倣体が同定されると、関連する類似体も、例えば二次元類似性探査により同定することができる。このような探査は、例えばプログラムISIS Base(Molecular Design Limited)を使用して実施することができる。二次元類似性探査により、生物活性を最適化するために容易にスクリーニングされ得る他の入手可能で密接に関連している化合物の同定も可能になる。
6.実施例
本発明はまた以下の実施例によって記載され立証される。しかしながら、明細書のいずれにおいても、これら及び他の実施例の使用は例示のみであって、本発明又は例証される任意の用語の範囲及び意義を限定するものではない。同様に、本発明は、ここに記載される任意の特定の好ましい実施態様に限定されるものではない。実際、本発明の多くの修正及び変更が、この明細書を読んだ当業者には明らかであろうし、そのような変形は、精神又は範囲において本発明を逸脱することなく、なされる。よって、本発明は、添付の特許請求の範囲と、その特許請求の範囲によって与えられるものと均等の全範囲によってのみ制限されるべきである。
6.1.実験手順
6.1.1 組換えPF4産生
組換えPF4を、PF4部分の直前の独特なメチオニン残基を含むタンパク質として、大腸菌において産生させた。より詳細には、発現プラスミドを、プラスミドpET-15b(Novagen, Fontenay-sous-Bois, Franceから入手可能)の複数の制限酵素部位領域においてNcolとXholとの間の天然配列PF4をコードする合成遺伝子をクローニングすることにより構築した。突然変異PF4遺伝子を、鋳型として野生型コンストラクトと合成オリゴヌクレオチドプライマーの標準的PCR増幅を使用して産生した。全てのコンストラクトを独立して配列決定し、検証した(Genome Express, Grenoble, France)。
PF4プラスミドを有しているBL21(DE)細菌(Novagen, Fontenay-sous-Bois, Franceから入手可能)を、1Mのグルコースと適切な抗生物質を含むEZmix 2x YT培地において37℃で培養した。タンパク質の発現を、4時間、1mMのIPTGを含有するこれらの細胞培養物において誘導した。遠心分離により細菌細胞を収集し、リゾチーム処理(1mg/ml)と超音波処理を施した。得られた融合タンパク質を、50mM、pH7.4のトリス-HClに6Mの尿素、5mMのEDTA、及び10mMのDTTを用い、溶解ペレットから抽出した。ついで、抽出物をイオン交換クロマトグラフィーを使用して精製し、PF4タンパク質を、0−1MのNaCl勾配を用い、続いて0.5NaClを含有するPBSにおいて透析することにより溶出させた。最終的なタンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイ試薬の使用により決定した。このようにして産生された組換えPF4タンパク質の均一性を、PF4に対するポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット及びSDS-PAGEにより検証した。
6.1.2 内皮細胞培養
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を過去に記載された(Jaffeら, J Clin Invest. 1973; 85(11):2745-56)ようにしてコラゲナーゼ(Roche Diagnostics)消化により単離した。
15%のウシ胎児血清(FCS)、5%のヒト血清、2mMのグルタミン、50U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、2.5μg/mlのアンホテリシンB、及び15mMのHEPESを含むM199培地で細胞を成長させた。培養物を、加湿雰囲気下、37℃、5%のCOに維持した。3−4日毎に、培養物をトリプシン処理により収集し、希釈し、再播種し、コンフルエンスになるまで成長させた。第2又は第3継代からコンフルエンスまで成長したHUVECが、ここに記載した実験に好ましく使用される。
6.1.3 内皮細胞増殖アッセイ
DNA合成の阻害を、[H]-チミジン取り込みアッセイにより測定した。細胞を、2.5%のFCSを含有する0.5mlの培地において、24ウェルプレートのウェル毎に15000細胞を蒔き、37℃で4時間、付着させておいた。ついで、10ng/mlのFGF-2、VEGF165又はVEGF121の添加により、増殖を誘導した。濃度が増加した精製組換えPF4タンパク質をいくつかのウェルに添加し、HUVECをさらに48時間インキュベートした。インキュベートの最後の20時間の間に、[H]-チミジン(1μCi/ウェル)を添加した。細胞をPBSで2回洗浄し、氷冷の10%(w/v)トリクロロ酢酸を用いて30分処理した。得られた沈殿物を1MのNaOHで可溶化させ、取り込まれた放射能を、Beckman LS-6500多目的シンチレーションカウンターで測定した。
6.1.4 HUVEC遊走アッセイ
HUVEC遊走を、修正ボイデンチャンバー(Boyden chamber)アッセイで評価した。多孔質のポリカーボネートフィルター(8μMのポアサイズ)を有するトランスウェル細胞培養チャンバー挿入物を、0.2%のゼラチンでコートした。2.5%のFCSが補填された培地に懸濁させたHUVECを、ウェル当たり4x10細胞で、挿入物に添加した。挿入物を、走化性刺激物(10ng/ml、VEGF165)を含むチャンバーに配し、COインキュベータ内において、37℃で4時間、細胞を遊走させた。阻害実験のために、組換えPF4タンパク質を、下部と上部の双方のチャンバーに添加した。インキュベート後、フィルターをPBSですすぎ、1%のパラホルムアルデヒドで固定し、Harris (EMD Chemicals Inc. Gibbstown, NJ)のヘマトキシリンで染色した。
フィルターの上面を消毒綿でこすり取り、非遊走細胞を除去した。フィルターの上面を、高倍率(x200)の光学顕微鏡で観察し、顕微鏡の可視化場内の細胞の数を記録した。それぞれの実験ポイントを三組実施し、20の視野をフィルター毎に分析した。
6.1.5 分子モデリング
IL8及びPF4ポリペプチド分子を、300ケルビン度(すなわち300K)、700psで実行した分子動態シミュレーションでモデル化した。分子を、約8000の水分子と共に62Åx62Åx62Åの箱において周期的境界条件でモデル化した。帯電を中和するために、7つのClイオンをPF4分子のシミュレーションに含ませ、4つのClイオンをIL8分子のシミュレーションに含ませた。
ペプチド類の分子動態シミュレーションを、900K、700psで実行した。ペプチド類を、約7680の水分子及び720のトリフルオロエタノール分子と共に62Åx62Åx62Åの箱において周期的境界条件でモデル化した。ペプチド類のNMR分析からのデータを、分子動態シミュレーションに含めた。結合定数、同じ分子の異なる配座異性体の相対的集団、化学シフト異方性、双極子間緩和率、及び他の実験的要因を理論データと比較した場合、NMR実験とシミュレーションプロトコルとの間の相似性が得られるように、結合定数及び速度と共に調和距離拘束を調整した。
被験ペプチドの多様性を増加させるため、ランジュバン動力学、又は明確な水溶媒を用いる周期的境界条件の使用を回避する他の迅速な技術を使用して、仮想ペプチドをモデル化した。コンピュータ操作を介して、仮想ペプチドを生物学的に活性な残基でランダムに突然変異させた。分子動態後、仮想ペプチドを、QSARフィルターを使用して推定の活性について選択し、合成し、細胞培養物で検査した(Grassy G, Calas B, Yasri A, Lahana R, Woo J, Iyer S, Kaczorek M, Floc'h R, Buelow R. Computer-assisted rational design of immunosuppressive compounds. Nat Biotechnol. 1998;16(8): 748-52)。
ランジュバン動態シミュレーションは、ペプチド骨格に対する調和拘束下、900K、700psで実行した。所定の密度システムのクエンチされた動態を、距離依存性誘電定数(ε)と共に使用し、再平衡のため、300Kまでシミュレートシステムを冷却した。クエンチされた動態の終わりに得られた最後の立体構造を、最終的に300Kでの分子動力学の500psまで提示した。
6.1.6 統計的解析
実験ポイント当たり3組の測定を、ほとんどの実験に対して実施し、その結果を別々の実験から組合せたデータに対し、平均±一つの二乗平均平方根偏差(SD)として表す。グループ間の差異の有意性は、不対データに対する標準的なスチューデントt検定により決定した。
6.2. 結果
図1Cに示された成熟PF4ポリペプチド配列(配列番号:1)のペプチド断片を生成させ、HUVEC細胞に対するそれらの血管新生効果(細胞遊走及び増殖)を、上述したセクション6.1に記載のアッセイを使用して評価した。これらのペプチドを、分子モデリング及び定量的構造活性相関(QSAR)技術を使用してさらに詳細に調べ、血管新生抑制活性を示したペプチドにどの立体構造(類)及び構造的特性が共通しているかが決定された。
完全長PF4及び関連IL8ポリペプチドの分子動力学計算もまた実施した。活性ペプチドが、完全長PF4におけるAsp-Leu-Gln3連構造と同じ立体構造を有するN末端近傍の三連構造のアミノ酸残基Asp-Leu-Gln(DLQ)を有していることが見出された。
次に、PF4表面を、部位特異的突然変異を使用してマッピングした。特に、一連の変異PF4ポリペプチドを生じさせ、HUVEC細胞におけるそれらの血管新生活性を、上述したセクション6.1に記載のもの等のアッセイを使用して詳細に調べた。以下の表3には、各ポリペプチドの名と配列同定番号(配列番号:)と共に、生じたPF4ポリペプチドのアミノ酸配列を列挙している。WTPF4と命名された最初の配列は、図1C(配列番号:1)にも表された野生型の成熟PF4アミノ酸配列に対応する。表3に表される他の配列は、アミノ酸配列において太字で下線が付されて示されている一又は複数のアミノ酸置換を含む。
Figure 2008520734
Figure 2008520734
上述の表3に記載された各突然変異の有意性を、PF4活性に対する変異の予期される効果の記載と共に、以下の表4に要約する。
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
これらの突然変異の活性を特徴付け、PF4の三次元構造と結果を相関させることにより、その分子に対してより完全なファーマコフォア構造を同定した。特に、このPF4ファーマコフォアは、本質的に少なくとも7〜10までの主要な官能基と、PF4とPF4-レセプターとの特異的相互作用にとって重要であると考えられるそれらの空間的関係からなる。このファーマコフォア構造における各ポイントは、図1C(配列番号:1)に記載の成熟PF4配列のアミノ酸側鎖上の特定の独特の原子又は官能基に対応する。これらのポイントは、上述の表1と、また以下の表5にも説明されている。特に、表5は、ファーマコフォアポイントに対応するその側鎖の特定の原子又は官能基と共に、PF4ファーマコフォアにおける各ポイントが位置しているアミノ酸残基を特定している。また表5の左端の欄には、ファーマコフォアとPF4特異的レセプターの間の可能性のある相互作用の性質を記述する注釈的記載が提示されている。
Figure 2008520734
図2A及び2Bには、プロトタイプ分子、天然の成熟ヒトPF4に対するこのファーマコフォアの例示が与えられている。特に、図2Aには、以下のアペンディクスに記載の座標に基づき、成熟PF4ポリペプチド骨格の三次元構造が示されている。PF4ファーマコフォアの官能基を含むアミノ酸残基は、ファーマコフォアの各官能基が円で囲まれ、上述の表1中の対応するローマ数字で標識されて示されている。図2Bには、特定の官能基に対応する各ポイントを有するPF4ファーマコフォア構造が示されている。これらの官能基間の距離は、図2Bにおける種々の官能基の間に引かれた線により示されている。これらの距離は、例えば以下のアペンディクスに記載の座標等、成熟PF4の三次元構造における対応する官能基間の距離を測定又は算出することにより、使用者が容易に決定し評価することができる。便宜上、これらの官能基間の好ましい距離をまた以下の表6に示す。
Figure 2008520734
6.3. 座標系可視化及び結合ポテンシャル
本発明のPF4ファーマコフォアをさらに可視化して、ファーマコフォアポイントのそれぞれの周囲の結合及び疎水性ポテンシャルを明らかにした。上述したように、各ファーマコフォアポイントは、水素結合アクセプター、水素結合ドナーのいずれかとして、又は疎水性相互作用に関与しているとして分類される。座標系上へこれらのポイントを可視化することにより、疎水性容積及び水素結合球面キャップは、アゴニスト/アンタゴニスト設計の目的に対してよりよく理解することができる。
デカルト及び球座標系の双方が描かれるところを0として原点を選択し定めた。図2Bからの三次元図形を、上述したように官能基間の臨界距離を使用して作成した。この図を、疎水性容積及び水素結合ベクトル方向を説明するためにデカルト及び球座標系に重ね合わせた。図3Aには、三次元でのこのファーマコフォアの例が提示されている。ファーマコフォアにおける各ポイントは、2つの幾何学系(デカルト座標と球座標)により定められている。当業者であれば、これら2つの座標系間のよく知られた数学的関係を使用し、与えられたポイントに対するデカルト座標を球座標に容易に転換することができ、またその逆もしかりである。特に球座標γ、θ及びψは、以下の関係:
Figure 2008520734
を使用し、与えられたデカルト座標x、y及びzから、容易に決定することができると理解される。
同様に、デカルト座標x、y及びzは、以下の関係:
Figure 2008520734
を使用し、与えられた球座標γ、θ及びψから、容易に決定することができる。
便宜上、ファーマコフォアポイントに対する好ましいデカルト及び球座標を、以下の表7に記載する。
Figure 2008520734
ポイントMを、所望しない相互作用を回避しうる疎水性ファーマコフォアポイントに最も近い点として定めた。ファーマコフォアポイントの周囲の疎水性容積は4/3π(rhy)と定められ、ここでrhyは疎水性容積の表面上のポイントMとファーマコフォアポイントとの距離である。図3Bには、ファーマコフォアポイントVIの周囲の疎水性容積の例が示されている。球ポイント(mポイント)の外側の疎水性容積に対する好ましいデカルト及び球座標を以下の表8に示す。
さらに、一又は複数の水素結合ベクトルAを、標準的な電気陰性度のデータを使用し、極性のファーマコフォアポイントのそれぞれについて算出した。図3Bには、ファーマコフォアポイントVからの一水素結合ベクトルの例が提示されている。ついで、水素結合ポテンシャルの球状キャップを、その半径が水素結合ベクトルの長さの1/2である球体において、水素結合ベクトルの長さの1/4の凹面深さを有するとして、各水素結合ベクトルに対して定めた。図4には、水素結合供与性及び水素結合受容性水素結合ポテンシャルの球状キャップ双方のグラフ表示が示されている。
水素結合キャップの表面積は2πRcaphとして定められ、ここでRcapは球体の半径であり、hは球状キャップの凹面深さである。便宜上、このファーマコフォアに対する水素結合ベクトル点(A点)の好ましいデカルト及び球座標を以下の表8に示す。同様に、このファーマコフォアに対する疎水性容積(「vol」)及び水素結合キャップ表面積(「S」)を以下の表9に示す。
Figure 2008520734
Figure 2008520734
6.4. 化合物設計におけるファーマコフォアの使用
この実施例は、PF4レセプターのアゴニスト又はアンタゴニストのいずれかとすることができる化合物を同定し、設計し、合成するために、本発明のファーマコフォアが、如何にして使用されうるかを示している。特に、ここではBQ-A01104と称されるリード化合物(式I)が開示される。
Figure 2008520734
BQ-A01104は、一アニオン性基(カルボン酸基)とカチオン性基(ピペリジニウム環中の第4級アミン)を有する中性分子である。化合物は塩化ナトリウムの水溶液に可溶性である。化合物は、上述の表5に列挙されたPF4ファーマコフォアポイントの10全てを有しており、便宜上、7つの異なるサブユニット又は「領域」を概念化可能な骨格により、構造的に剛性を保持している。BQ-A01104の化学構造は、10のファーマコフォアポイントのそれぞれが上述の表5に列挙された対応するローマ数字により示されて、図5に示されている。それぞれの構造的サブユニット又は「領域」も、対応するアラビア数字により示されている。これらの構造的サブユニットは、図6A−6Gに個々に示され、以下で検討される。水中での分子の高温分子動力学(MD)シミュレーション(900Kで1ナノ秒)により、分子が構造的に安定しており、全ての構造的拘束を保持していることが明らかになる。すなわち、骨格は全てのMD軌道に沿って剛性のままである。
領域1(図6A)、第1の化学サブユニットは、フレキシブルな化学アームにより環に結合したファーマコフォア基IないしIV及びVIIIを担持しているピペリジニウム環を含む。このサブユニットにおける第4級アミンのspハイブリッド形成により、三次元空間におけるファーマコフォアポイントの良好な提示が可能になる。領域1と領域2をつないでいる二面角D1(図6Aに示す)周囲の回転は、窒素含有環と脂肪族炭素(炭素27)とが近接しているために制限される。この二面角は約46.9°の値を有しており、ファーマコフォアポイントの良好な提示を提供する。
領域2(図6B)は、脂肪族骨格中のsp炭素(C38)を介してファーマコフォアポイントXに対応するエチルオキシ側鎖の提示を維持している。ファーマコフォアポイントXを正しく提示するために、ケトン酸素により、曲げ角度に対して望ましい屈曲性が与えられる。
領域3(図6C)は、ファーマコフォアポイントIXを有する側鎖にある程度の剛性を付与するペプチド結合を含む。このサブユニット(図6Cに示す)に対する二面角D1、D2及びD3は、それぞれ−155.6°、53.3°及び22.3°の平均値を有する。この立体配置により、ファーマコフォアポイントIXに対応する芳香環を、上述した化学サブユニットの方向に配向させることができる。
領域4(図6D)は、高温MDシミュレーション中でさえ剛性であるペプチド結合により、固定角で互いに領域3及び5に結合している。
領域5(図6E)は、一方の分枝部(分枝部2として図6Eに標識)上のファーマコフォアポイントV及びVI、他方の分枝部(分枝部3として図6Eに標識)上のファーマコフォアポイントVII、及び第3の分枝部(分枝部1として図6Eに標識)上の残ったファーマコフォアポイントI−IV及びVIII−Xの間の、エネルギー的に好ましい相対配向を維持している芳香環を含む。
領域6(図6F)は、ファーマコフォアポイントVIIを有する側鎖に剛性を付与するペプチド結合を含む。平均二面角値D1及びD2(図6Fに示す)は、それぞれ−108°と26°である。この立体配置により、ファーマコフォアポイントVIIに対応するベンゾイミダゾール環を、効果的な活性のために正しく配向させることができる。
領域7(図6G)は、ファーマコフォアポイントVIIに適合させるため、3つの窒素原子を正しく配向するベンゾイミダゾール環を含む。
ファーマコフォアポイントI、II、V、VI及びVIIIは、フレキシブルな脂肪族鎖を介して、BQ-A011004の骨格サブユニットに結合している。それに反して、ファーマコフォアポイントIII、IV、VII、IX及びXは、比較的剛性があり、拘束されている鎖により、BQ-A011004の骨格サブユニットに結合している。よって、これら後者のファーマコフォアポイントは、前者と比べて、相対的に拘束されている。このことは、PF4ポリペプチドそれ自体における種々のファーマコフォアポイントの相対的フレキシビリティを反映している。例えば、PF4(配列番号:1)のAla43及びLeu45アミノ酸残基に位置するファーマコフォアポイントX及びIXの抑制されたフレキシビリティは、PF4活性に必要なαへリックスの存在により課される。このへリックスの安定性は、N末端に存在するキャッピングボックスにより維持されている。よって、PF4ポリペプチド(配列番号:1)において、残基Val13及びLeu11の移動は、2つのジスルフィド架橋により課せられるPF4骨格の剛性のために拘束される。
6.4.1 BQ-A01104の調製
BQ-A01104及びPF4レセプターのアゴニスト又はアンタゴニストのいずれかであると同定され設計された他の化合物は、標準的なよく知られている合成法を介して得ることができる。
PF4レセプターのアゴニスト又はアンタゴニストのいずれかであると同定され設計される種々の化合物は、一又は複数のキラル中心を含んでおり、エナンチオマーのラセミ混合物又はジアステレオマー混合物として存在可能である。これらの異性体は非対称的に合成されるか、又はキラルカラム又はキラル分離剤等の標準的な技術を使用して分離されうる。例えば、Jacques, Jら, Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley-Interscience, New York, 1981); Wilen, S. Hら, Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, E. L., Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962); 及びWilen, S. H., Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E. L. Eliel編, Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, Ind., 1972)を参照のこと。
いくつかの簡便な方法を、スキーム1−4に示す。これらのスキームは、単に一つの合成経路の例示を意味しているが、これらの合成経路は、多様な化合物を生じせしめるために、当業者に明らかな方法で修正することもできる。本発明の化合物及びその中間体の調製に有用な出発物質は、商業的に入手可能であるか、又は既知の合成法及び試薬を使用して商業的に入手可能な物質から調製することができる。
本発明の化合物の合成法を次のスキームに示す。構造が化合物又は部分に対して与えられる化学命名法を使用する際に矛盾があるおそれがあるため、化学名ではなく、構造が化合物又は部分の定義を支配する。
Figure 2008520734
スキーム1においては、中間生成物5を、クロロ酢酸を含む水中において塩化アルミニウムを用いて4-フェニルブチルアミン(1)(Aldrich Chemical Co.)を先ずアルキル化させ、フェニル酢酸化合物2を生成することにより、生成させる。化合物2を塩化チオニルと反応させ、酸塩化物を生じせしめ、これをベンゾイミダゾール-5-イル-メチルアミンと反応させてアミド化合物3を生成させる。ベンゾイミダゾール-5-イル-メチルアミンは、商業的に入手可能なベンゾイミダゾールカルボン酸(Aldrich Chemical Co.)から、(1)塩化チオニルでカルボン酸を処理して酸塩化物を生成させ、(2)アンモニアと酸塩化物を反応させて対応する第1級アミドを生成させ(Beckwithら, Zabicky The Chemistry of Amides Wiley, NY, 1970, pg. 73を参照)、(3)THF中水素化アルミニウムリチウムでアミドを還元して所望するメチルアミンを生成させる(Challisら, Zabicky The Chemistry of Amides Wiley, NY, 1970, pg. 795を参照)という3工程で作製される。ついで、化合物3を、水中において3-クロロプロピオン酸及び塩化アルミニウムを用いて再度アルキル化させて三置換フェニル化合物4を生成させる。最後に、化合物4を塩化チオニル及びアンモニアと反応させてカルボン酸をアミド中間体5に転換させる。
Figure 2008520734
スキーム2において、中間体12を、四酸化オスミウムを用いてシクロペンテニルアミド化合物(6)を1,3-ジカルボニル化合物(7)に転換させた後、過ヨウ素酸ナトリウムで処理し、水と弱い還元剤、例えばNaHSOで処理することにより生成させる。化合物6は、商業的に入手可能なシクロペンタノン(Aldrich Chemical Co.)から、(1)酢酸エチルのエノラートとシクロペンタノンをアルドール反応させ、(2)得られたアルコールを酸処理により脱水し、(3)アニリンのナトリウム又はリチウム塩との反応で、得られたα,β-不飽和エステルをその対応するアミドに転換させる(Majetichら, Tetrahedron Lett. 1994, 35, 8727)という3工程で生成される。化合物7を、標準的な技術の使用、例えばKMnOで処理することにより、カルボン酸化合物8に酸化させる。化合物8を塩化ビニルマグネシウムで処理し、得られたアルコールを続いて酸で脱水してジエン化合物9を生成する。化合物9のビニルアルケンを臭化水素で臭化した後、触媒量のパラジウムカーボンの存在下、水素ガスを用いてヘプテニルオレフィンを水素化させる。最後に、1-ブロモアルカンとマグネシウムを反応させてアルキルグリニャール試薬10を生成させる。ついで、化合物10を、エーテル中の3-アミノプロパナール(propanal)と反応させ、アルコール化合物11を生成させる。最後に、化合物11を、塩基、続いて臭化エチル、ついで酸と反応させ、エチルエーテル中間体12を生成させる。
Figure 2008520734
スキーム3において、中間体19を、商業的に入手可能な3-ブテナール(butenal)ジエチルアセタール(Aldrich Chemical Co.)から、(1)BHを用いてヒドロホウ素化させ、続いてNaOH/Hを用いて酸化させ、触媒p-トルエンスルホン酸処理により、ジエチルアセタールをアルデヒドに転換させ、(3)4-ヒドロキシ-ブタナール(butanal)のアルコールを保護し、化合物13を生成させる。この合成と他の合成工程における適切な保護基の選択は、当業者により容易に決定されるであろう。適切な保護基及び保護基の選択及び合成のための標準的な技術は、T.W. Greene及びP.G.M.Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis (Wiley-Interscience, New York, 1999)に見出すことができる。ついで、化合物13をグリニャール試薬14と反応させ、(1)マルコフニコフ条件下、4-フェニル-1-ブチン(Aldrich Chemical Co.)にHBrを添加し、(2)エーテル中、得られた臭化ビニルとマグネシウムとを反応させる2工程でアルコール化合物15を生成させる。例えばNEt等の塩基の存在下、塩化トシル、又は他の適切な脱離基前駆物質と化合物15を反応させ、トシラート化合物16を生成させる。4-ブロモブタナル(4-ブロモブタナルは、4-ヒドロキシ-ブタナル(上掲)から、塩化メチレンにおいて、2,4,6-トリクロロ[1,3,5]トリアジン、NaBr及びN,N-ジメチルホルムアミドで処理することにより作製される;de Lucaら, Org. Lett., 2002, 4, 553-555)を、Pに直交する保護基で保護することにより形成されるグリニャール試薬と、化合物16とを反応させ、保護された化合物とマグネシウムとを反応させ、化合物17を生成させる。化合物17を脱保護して最初の保護基Pを除去し、続いて遊離のアルコールを、例えばCrOを用い、カルボン酸に酸化させる。酸化後、トリブロモホスフィン(phospine)及び臭素ガスを用いて、中間体を臭化させ、α-ブロモカルボン酸を生成させる。ついで、カルボン酸を塩化チオニルで処理し、得られた酸塩化物をアンモニアで処理し、アミド化合物18を生成させる。化合物18のオレフィンを臭化水素で臭化させ、第1級臭化物を得て、第2の保護基(P)を中間体から除去し、スワーン(Swern)又はデス-マーチン(Dess-Martin)試薬を用いて処理する等の標準的な方法を使用し、得られたアルコールをアルデヒドに酸化させ、中間生成物19を生成させる。
Figure 2008520734
最後に、スキーム4において、ジブロモ中間体19を、塩基とtert-ブチル-アンモニウムヨージド(TBAI)の存在下、アミン中間体12とカップリングさせることで、ピペリジン中間体20が得られる。中間体20のカルボン酸を、DCC及び触媒DMAPの存在下、中間体5のアミンとカップリングさせ、続いて、KMnO等を用いて残ったアルデヒドを酸化させることにより、表題化合物I、BQ-A01104が得られる。
6.5. 活性の最適化
化学合成及び修飾ための常套的な技術を使用し、この発明のファーマコフォアを使用して設計及び/又は同定される化合物の活性と、吸収、分布、代謝及び排出(ADME)特性の双方を、さらに最適化することができる。例えば、PF4アゴニスト又はアンタゴニストの候補化合物は、ファーマコフォアポイントに対応する一又は複数の官能基を修飾することにより、又は骨格(例えばBQ-A011004については、上述したサブユニット又は「領域」)を修飾することにより、又はその双方により修飾することができる。図7には、化合物BQ-A011004を最適化することが可能な、ある種の例示的な修飾が示されている。これらの修飾化合物(式II−VI)の完全な化学構造を、図8A−8Eに示す。よって、このような修飾とそれらを含む化合物は、それらがPF4のアゴニスト又はアンタゴニストとして使用される場合、本発明の一部であると考えられる。例えば、化合物II−VIは、スキーム1−4の派生スキームである次の合成プロトコルから調製することができる。
式IIの化合物の調製は、スキーム5−6に示されている。BQ-A011004骨格に対する主要な修飾は、ピペラジン環のシクロヘキシル環への置換と、フェニルアミド基のイソプロピルアミド基への置換である。
Figure 2008520734
ピペラジン環のシクロヘキシル断片への置換は、スキーム5a、5bに従い達成される。まず、ナトリウムエトキシド処理により、γ-カプロラクトン(Aldrich Chemical Co.)を対応する開環エステルに転換させる(スキーム5A)。中間体エステルアルコールを、スワーン条件下で対応するエステルアルデヒドに酸化させ、触媒p-TSAの存在下、エチレングリコールを用い、そのジオキソランとしてアルデヒドを保護する。ついで、LiAlHを用い、エステルをアルコールに還元し、化合物22を得る。N-ブロモスクシンイミドとメチルスルフィドを用いて化合物22を処理し、アリルアルコールをその対応する臭化アリルに転換させる(Coreyら Tetrahedron Lett. 1972, 4339)。臭化アリルとアセトアルデヒドのリチウムエノラート(アセトアルデヒドとリチウムジイソプロピルアミドから形成)を反応させ、アルケンアルデヒド化合物23を得る。
スキーム5Bに示すように、まず、3-フェニル-1-プロパノール(24, Aldrich Chemical Co.)を、スワーン条件下でアルデヒドに酸化させ、ビニルマグネシウムブロミドとアルデヒドを反応させると、反応が進行して対応するアリルアルコールが得られる。最初に、アリルアルコールをNBS及びDMSと反応させて臭化アリルが得られ、マグネシウムを用いて臭化物を対応するグリニャール試薬(25)に転換させる。ついで、化合物25をアルデヒド23に添加し、得られたアルコールを、塩基(例えばNEt)の存在下、塩化トシルを用いて対応するトシラート(26)に転換させる。保護された4-ヒドロキシブチルグリニャール試薬を用いた処理によりトシラートを置き換えてジエン27を生成させる。触媒量のホベイダ-グラブス(Hoveyda-Grubbs)第2世代触媒(28)(Hoveydaら J. Am. Chem. Soc. 121, 791, 1999)を用い、続いてPdClを用いるワッカー酸化(Tsuji, J. Synthesis 1990, 739)により、化合物27の閉環メタセシスで、環状ケトン29を得る。
Figure 2008520734
式IIの化合物の残りはスキーム6に示すようにして作製される。化合物10C(下記のスキーム9を参照)を3-ブロモプロピオンアルデヒドと反応させてアルコール30を得る。ついで、そのアルコールを塩基(例えばNEt3)の存在下で臭化エチルで処理して対応するエチルエーテルに転化させ、中間体化合物を金属マグネシウムを用いてその対応するグリニャール試薬(31)に転化させる。ついで、グリニャール試薬31を化合物29に添加し、得られたアルコールを、酸処理で対応するアルケン(32)まで脱水する(この工程でジオキソラン基がまた除去される)。ついで、化合物32を水素とカーボン担持パラジウム触媒の存在下で水素化し、アルデヒドを、1)KMnOでの酸への酸化、2)塩化チオニルでの酸の酸塩化物への転化、及び3)アンモニアとの酸塩化物の反応によって、その対応するアミドに転化させる。ついで、得られるアミド33を、DCCとDMAP触媒の存在下で化合物5とカップリングさせる(スキーム1を参照)。最後に、保護基Pを除去し、得られたアルコールをKMnOでその対応の酸に酸化させると式IIの化合物が完成する。
式IIIの化合物の調製法はスキーム7−8に示す。BQ-A011004骨格に対するキーとなる修飾はピペラジン環上に置換されているアミノカルボニル基をアミノカルボニルエチル基で置換し、アミノメチルベンズイミダゾール断片を4-[4-アミノブチル]-4,5-ジヒドロピラゾールで置換することである。
Figure 2008520734
4-[4-アミノブチル]-4,5-ジヒドロピラゾール基の置換はスキーム7に示すように断片5Aの合成によって達成される。Pechmann条件(T. L. Jacobs in R. C. Elderfield, Heterocyclic Compounds 5, 70 (New York, 1957))下でのジアゾメタンとの6-アミノヘプタイン(heptyne)(1A)の反応により4-[4-アミノブチル]ピラゾールを得て、これをカーボン担持パラジウム触媒の存在下で水素を用いて対応する4,5-ジヒドロピラゾール(2A)に還元する。ついで、ジヒドロピラゾール2Aを、化合物2の酸塩化物とカップリングさせ(つまり、スキーム1からの化合物2の塩化チオニルとの反応)、アミド3Aを生成する。ついで、水中3-クロロプロピオン酸及び塩化アルミニウムを用いて化合物3Aをアルキル化して、三置換フェニル化合物4Aを製造する。最後に、化合物4Aを塩化チオニル及びアンモニアと反応させて、カルボン酸をアミド中間体5Aに転化させる。
Figure 2008520734
アミノカルボニルエチル基の置換を(上のスキーム3で調製される)化合物17から達成する。スキーム8に示すように、化合物17を脱保護して元の保護基Pを取り除き、ついで遊離アルコールをスワーン条件下でアルデヒドに酸化する。酸化後、中間体をトリブロモホスフィン及び臭素ガスで臭素化しα-ブロモアルデヒド18Bを生成する。α-ブロモアルデヒドを、Horner Wadworth Emmons条件下で(例えばNEtの存在下でジエチルクロロホスホナートと酢酸のp-ニトロフェニルエステルから調製される)α-(p-ニトロフェノキシカルボニル)メチルジエチルホスホナートと反応させ、対応するα,β-不飽和γ-ブロモエステルを生成する。ついで、活性化エステルをアンモニアでの処理によって対応するアミド19Bに転化する(Beckwith, A.L.J., Zabicky The Chemistry of Amides; Wiley: NY, 1970, p. 96を参照)。化合物19Bのオレフィンを臭化水素で臭素化して第一級臭化物を得て、中間体から第二保護基(P)を除去し、得られたアルコールを、例えばスワーン又はDess-Martin試薬での処理のような標準的な方法を使用してアルデヒドに酸化する。最後に、α,β-不飽和アミドをカーボン担持パラジウム触媒の存在下で水素で水素化して断片20Bを得る。式IIIの合成を完了させるために、化合物20Aを上のスキーム4に記載された条件下で化合物12とカップリングさせる。ついで、得られた生成物を、DCC及びDMAP触媒の存在下で化合物5A(スキーム5参照)とカップリングさせ、アルデヒドを例えばKMnOで対応のカルボン酸に酸化する。
Figure 2008520734
式IVの化合物の調製法はスキーム9に示す。BQ-A011004骨格に対するキーとなる修飾はピペラジン環のエトキシ基を2-メチルブチル基で置換しフェニルアミド基をイソプロピルアミド基で置換することである。これらの2つの修飾を有する化合物の合成は修飾断片13Cの合成を経由して達成することができる(スキーム9)。断片13Cは、シクロペンテニルイソプロピルアミド化合物(6C)を1,3-ジカルボニル化合物(7C)に四酸化オスミウムを用い、過ヨウ素酸ナトリウムで処理、ついで水及びNaHSOのような弱い還元剤で処理して転化することによって生成させる。化合物6Cは、市販のシクロペンタノン(Aldrich Chemical Co.)から、(1)酢酸エチルのエノラートとシクロペンタノンをアルドール反応させ、(2)得られたアルコールを酸処理で脱水し、(3)得られたα,β-不飽和エステルをリチウムイソプロピルアミドと反応させてその対応するアミドへ転化させる3工程で生成する(Majetichら Tetrahedron Lett. 1994, 35, 8727)。化合物7Cは、例えばKMnOでの処理のような標準的な技術を使用しカルボン酸化合物8Cに酸化する。化合物8Cを塩化ビニルマグネシウムで処理し、続いて得られたアルコールを酸で脱水してジエン化合物9Cを得る。化合物9Cのビニルアルケンを臭化水素で臭素化した後、触媒量のカーボンパラジウムの存在下で水素ガスでヘプテニルオレフィンを水素化する。最後に、1-ブロモアルカンをマグネシウムと反応させてアルキルグリニャール試薬10Cを生成する。ついで、化合物10Cをエーテル中で3-アミノプロパナールと反応させた後、弱酸で処理してアルコール化合物11Cを生成する。化合物11Cを、例えばNEtのような塩基の存在下で塩化トシルで処理することによってその対応するトシラート12Cに転化させる。最後に(エーテル中での3-メチル-1-ブロモブタン及びマグネシウムから生成される)臭化3-メチルブチルマグネシウムでのトシラート12Cの処理により断片13Cを得る。式IVの化合物の合成の残りは、スキーム4(上掲)の化合物12を化合物13Cに置換し、化合物19及び5との適切なカップリング反応を行わしめることによって達成することができる。
Figure 2008520734
式Vの化合物の調製法はスキーム10に示す。BQ-A011004骨格に対するキーとなる修飾はフェニルアミド基をイソプロピルアミド基で置換することである。これらの2つの修飾を有する化合物の合成は修飾断片12Dの合成を経由して達成することができる。スキーム10において、中間体12Dは、シクロペンテニルイソプロピルアミド化合物(6C)を1,3-ジカルボニル化合物(7C)に四酸化オスミウムを用い、過ヨウ素酸ナトリウムで処理、ついで水及びNaHSOのような弱い還元剤で処理して転化することによって生成させる。化合物7は、例えばKMnOでの処理のような標準的な技術を使用しカルボン酸化合物8Cに酸化する。化合物8Cを塩化ビニルマグネシウムで処理し、続いて得られたアルコールを酸で脱水してジエン化合物9Cを得る。化合物9Cのビニルアルケンを臭化水素で臭素化した後、触媒量のカーボンパラジウムの存在下で水素ガスでヘプテニルオレフィンを水素化する。最後に、1-ブロモアルカンをマグネシウムと反応させてアルキルグリニャール試薬10Cを生成する。ついで、化合物10Cをエーテル中で3-アミノプロパナールと反応させた後、弱酸で処理してアルコール化合物11Cを生成する。最後に、化合物11Cを塩基とその後に臭化エチルと次に酸と反応させてエチルエーテル中間体12Dを生成する。式IVの化合物の合成の残りは、スキーム4(上掲)の化合物12を化合物12Dに置換し、化合物19及び5との適切なカップリング反応を行わしめることによって達成することができる。
式VIの化合物のBQ-A011004骨格に対するキーとなる修飾はアミノメチルベンズイミダゾール断片を4-[4-アミノブチル]-4,5-ジヒドロピラゾールで置換することである。その合成は、DMAP触媒の存在下でDCCと共に化合物20(スキーム4参照)と化合物5A(スキーム7を参照)をカップリングさせた後、例えばKMnOでアルデヒドを対応するカルボン酸に酸化することによって達成される。
本発明のファーマコフォア分子は、分子を、選択的に他のものを排除しながらPF4ファーマコフォアの所定の点を含むように選択し又は修飾することによって選択又は修飾することもできる。例えば、如何なる特定の理論又は作用機序にも拘束されるものではないが、(PF4レセプターに結合するがそれを活性化しない)リードPF4アンタゴニストは、標的(この例ではPF4レセプター)活性化に必要とされるかそのために好ましい他の点を選択的に排除しながら、PF4レセプターへの結合に必要とされ及び/又はそのために好ましい所定のファーマコフォア点を含む化合物を同定することによって選択及び/又は同定することができる。上のセクション5.1.をまた参照のこと。
そのような一つの化合物の化学構造を図9Aに示す(式VII)。この化合物はPF4ファーマコフォア点IX、X及びVI(以下の表1及び5)に対応する官能基を含む一方、残りのPF4ファーマコフォア点(つまり点IからV、VII及びVIII)に対応する官能基が存在していない。この化合物は、標的を活性化させないでPF4レセプターへの結合について野生型PF4(配列番号:1)及びBQ-A011004(式I)のような他の分子と競合することが予想される。よって、この化学構造を有する化合物は、本発明に係るPF4アンタゴニストであると予想され、PF4アンタゴニストとして使用することができる。
好ましい実施態様では、かかるPF4アゴニスト及び/又はアンタゴニスト化合物はPF4レセプターポリペプチド又はその断片を検出するために使用することができる。例えば、PF4アゴニスト又はアンタゴニストを検出可能な標識に結合させることができ、PF4レセプターへのアゴニスト分子の結合を、検出可能な標識を検出することによって検出することができる。特定の実施態様では、PF4アゴニストは、磁気共鳴映像法(MRI)のような医療画像診断用途での検出のための造影剤に結合させられる。画像診断目的では、様々な診断薬の任意のものを薬学的組成物中に、組成物内に遊離に又は調節薬に結合させて導入することができる。診断薬には、他の生理学的な機能に一般に影響を与えないで患者内のある生理学的機能を明るくするために投与される任意の物質が含まれる。診断薬には、金属、放射性同位元素及び放射線不透性薬剤(例えば、ガリウム、テクネチウム、インジウム、ストロンチウム、ヨウ素、バリウム、臭素及びリン含有化合物)、放射線透過性剤、造影剤、染料(例えば蛍光染料及び発色団)及び熱量測定又は蛍光測定反応を触媒する酵素 が含まれる。一般に、そのような薬剤は上述した様々な技術を使用して結合させることができ、任意の配向で存在しうる。そのような実施態様では、一又は複数の水溶性ポリマー(例えばポリエチレングリコール又は「PEG」)をPF4アゴニスト又はアンタゴニストに結合させることもできる。
好適な一実施態様を図9Bに示す。ここでは、リンカー部分を、造影剤又はDOTA環内に入れられたランタニド原子のような他の検出可能な標識を結合させるために使用することができる。
6.6.更なるPF4誘導ポリペプチド
更に他の実施態様において、本発明は、PF4のアミノ酸配列から誘導され、ここに記載の方法によって例えばPF4アゴニスト及び/又はアンタゴニストとして有用な更に他のペプチドを提供する。これらの他の実施態様の特に好ましいポリペプチドには、次のアミノ酸配列の何れか一又は複数を有するポリペプチドが含まれる:
Figure 2008520734
上記のP34−56(配列番号:157)と命名したペプチドは、図1Cに示す完全長成熟PF4アミノ酸配列(配列番号:1)の残基34−56に対応するアミノ酸配列からそれが誘導されているためそのように命名している。このペプチドはPF4レセプターに結合しそれを活性化させると理解され、従って本発明の方法によるPF4アゴニストとして特に有用である。如何なる特定の理論又は作用機序に限定するものではないが、P34−56(配列番号:157)の活性は、配列番号:157の残基5−13を含むαへリックス領域の残基によって少なくとも部分的に媒介されると信じられる。この配列は配列番号:1のアミノ酸残基38−46の配列を含む成熟PF4ポリペプチド(図1C)のαへリックス領域に対応している。次に、P34−56ペプチド(配列番号:157)のαへリックスは、そのペプチドのアミノ酸残基1−4の配列に対応する「キャッピングボックス」部分によって少なくとも部分的に安定化されるものと理解される。このキャッピングボックス部分は、他の点ではP34−56の配列(配列番号:157)と同一であるP37−56(配列番号:158)と命名された第二ペプチドには存在していない。このキャッピングボックスの除去は、αへリックス部分を不安定にし、よって得られるペプチドを不活性にするものと理解される。よって、上掲のP37−56ペプチド(配列番号:158)は、PF4レセプターを活性化させない点で不活性であると理解される。
P34−53(配列番号:159)と命名されたペプチドは同様に図1Cに示す完全長成熟PF4アミノ酸配列(配列番号:1)の残基34−53に対応するアミノ酸配列からそれが誘導されているためそのように命名している。P34−53ペプチド(配列番号:159)は標的結合についてP34−56(配列番号:157)と競合するが、PF4レセプターを活性化しない。よって、このペプチドは本発明の方法によるPF4アンタゴニストとして特に有用である。好ましい実施態様では、検出可能な標識をP34−53ペプチド(配列番号:159)に結合させることができ、そのペプチドを、例えば診断アッセイにおいてPF4レセプターポリペプチドを検出するために使用することができる。特に好ましい実施態様では、P34−53ペプチド(配列番号:159)は、例えば磁気共鳴映像法(MRI)又は他の医療画像処理及び/又は診断アッセイの一部として、個体においてインビボでPF4レセプターポリペプチド(又はその断片)を検出するために使用することができる。
P35−53(配列番号:160)と命名されたペプチドは、P34−53(配列番号:159)のHis2残基が除去されている点を除いて、P34−53(配列番号:159)と同一である。この修飾はPF4結合活性を無効にすることが理解され、よってP35−53ペプチド(配列番号:160)はPF4レセプターを結合したり活性化させたりしない。
如何なる特定の理論又は作用機序にも拘束されるものではないが、これらのペプチドの活性は、本願において上に記載したPF4ファーマコフォア点の必ずしも全てではないが幾らかに対応する所定のアミノ酸残基の立体配置に起因していると考えられる。これは、様々なペプチドの三次元構造をPF4ファーマコフォア立体配置と比較することによってより容易に理解することができる。二つのそのような例示的な比較を図10A−10Bにおいてここに提供する。
特に、図10Aの下半分はP34−56ペプチド(配列番号:157)骨格の三次元表示を提供するもので、それを図2Aに示すPF4ファーマコフォア構造(図10Aの上半分にも示されている)と比較する。簡単のために、P34−56ペプチド(配列番号:157)アミノ酸残基は、完全長成熟野生型PF4アミノ酸配列(配列番号:1)中の対応する残基の数を用いて図10Aにおいて標識している。
PF4ファーマコフォアはP34−56ペプチドには部分的に存在している。すなわち、P34−56(配列番号:157)中のGln23は野生型成熟PF4(配列番号:1)中のGln9の位置と配向を模倣しており、よって上掲の表1に列挙したPF4ファーマコフォア点III及びIVに対応する官能基を提供する。P34−56(配列番号:157)中のLeu22はWTPF4(配列番号:1)の位置と配向を模倣しており、よってPF4ファーマコフォア点VIIIに対応する官能基を提供する。P34−56(配列番号:157)中のAsp21は野生型PF4(配列番号:1)のAsp7位置と配向を模倣しており、よってPF4ファーマコフォア点I及びIIに対応する官能基を提供する。P34−56ペプチド(配列番号:157)残基Leu12はWTPF4(配列番号:1)中のLeu11アミノ酸残基の位置と配向を模倣しており、ファーマコフォア点Xに対応する官能基を提供する。P34−56ペプチド(配列番号:157)アミノ酸残基Ile9はWTPF4(配列番号:1)残基Val13を模倣しており、PF4ファーマコフォア点IXを提供する。最後に、P34−56ペプチド(配列番号:157)のHis2アミノ酸残基はWTPF4(配列番号:1)のGln18を模倣している。従って、この アミノ酸残基はPF4ファーマコフォアVIに対応する官能基を提供する。しかしながら、グルタミンとは異なり、ヒスチジン側鎖は酸素を含んでいない。よって、 His2と、拡大してP34−56ペプチド(配列番号:157)自体はPF4ファーマコフォア点Vに対応する官能基を含んでいない。PF4ファーマコフォア点VIIに対応する官能基はまたP34−56ペプチド(配列番号:157)には存在していない。
上で説明したように、P34−56ペプチド(配列番号:157)は、配列番号:1で示されたWTPF4アミノ酸配列のアミノ酸残基34−56の配列から誘導されそれに対応する。従って、当業者は、そのペプチド(配列番号:157)中のHis2、Ile9、Leu12、Asp21、Leu22及びGln23は配列番号:1中の残基His35、Ile42、Leu45、Asp54、Leu55及びGln56にそれぞれ対応していることを理解するであろう。従って、これらの残基は、それらが誘導されそれらが対応するWTPF4(配列番号:1)中の残基によって図10Aの下半分において特定されている。
図10Aの更なる検討はPF4ファーマコフォアの点IからIV及びVIIIの機能的な重要性に更なる洞察をもたらす。これらの点は全てWTPF4アミノ酸配列(配列番号:1)中のアミノ酸残基配列Asp7-Leu8-Gln9に位置している。P34−56ペプチド(配列番号:157)はまた残基21−23にDLQモチーフを含んでいる。如何なる特定の理論又は作用機序にも拘束されるものではないが、P34−57(配列番号:157)中のこのDLQモチーフは水素結合の網目構造によって安定化されるものと思われ、よってそのコンフォメーションはWTPF4中の残基7−9のDLQモチーフのN末端フォールディングを模倣している。
図10Bは図2AのPF4ファーマコフォアに対するP34−53ペプチド(配列番号:159)の同様の比較を示す。同様に、この図のペプチド残基は、それらが対応する完全長WTPF4のアミノ酸残基(配列番号:1)によって標識される。特に、P34−53ペプチド(配列番号:159)は配列番号:1のHis35、Ile42及びLeu45に対応するアミノ酸残基を含み、PF4ファーマコフォアの点VI、IX及びXに対応する官能基を提示する。しかしながら、DLQ残基は、P34−56ペプチド(配列番号:157)には見いだされるが、P34−53ペプチド(配列番号:159)には存在せず、そのペプチドはファーマコフォア点IからIV及びVIIIに対応する官能基は有していない。従って、P34−53ペプチド(配列番号:159)はPF4レセプターへの結合についてPF4と効果的に競合し、例えば本発明によるMRI画像処理研究に使用することができる。しかしながら、そのペプチドはPF4レセプターを活性化せず、効果的なPF4アゴニストではない。
7.引用文献
特許、特許出願及び様々な刊行物を含む数多くの文献を本発明の明細書において引用し検討している。このような文献の引用及び/又は検討は本発明の説明を明確にするためだけに提供するものであり、それらの如何なる文献もここに記載された発明に対して「先行技術」であることを自認するものではない。(例えばGenBank、PDB又は他の公的なデータベースにおける生物学的配列又は構造の引用を含む)本明細書において引用され及び/又は検討されている全ての文献は、各文献が個々に出典明示によって援用されるのと同程度でその全体が出典明示によりここに援用される。
8.アペンディックス:PF4の結晶構造座標
Zhangら, Biochemistry 1994, 33:8361-8366とプロテインデータバンクの受託番号1RHP(双方を出典明示によりその全体を援用する)をまた参照のこと。
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
Figure 2008520734
図1A−Cは、好ましいPF4ポリペプチドのアミノ酸配列を表す。図1Aは、GenBank(受託番号P02776)からの完全長PF4ポリペプチド配列のアミノ酸配列(配列番号:32)を表す。この完全長PF4ポリペプチドには、「シグナル配列」(残基1−31)と、アミノ酸残基32−101を含む「成熟」PF4配列を含む。 図1Bは、好ましい変異体、PF4var1のアミノ酸配列(配列番号:33)を表す。この変異体も、「シグナル配列」(残基1−34)と、残基35−104を含有する「成熟」配列を含む。 図1Cは、好ましい成熟ヒトPF4ポリペプチド(配列番号:32の残基32−101)のアミノ酸配列(配列番号:1)を表す。図1Cの破線は、システインアミノ酸残基の間の共有結合を示す。図1Cにおいて、配列の網掛け部は、本発明のファーマコフォアの一部であり、ヘパラン硫酸結合ドメイン(配列番号:1の残基22−23、49−50及び61−66)であるDLQ結合モチーフ(配列番号:1の残基7−9及び54−56)に相当する。 図2A−2Bは、本発明のPF4ファーマコフォアの10全ての主要な官能基の三次元配置を示す。図2Aは、以下のアペンディクスに記載されている座標に基づく、成熟PF4ポリペプチド骨格の三次元構造を示し、いくつかが同じ残基にある10の重要な官能基を強調表示している。天然の成熟PF4分子上に表示されているファーマコフォアの官能基を有するアミノ酸残基は、ファーマコフォアの各官能基を円で囲みローマ数字で標識している。 図2Bは、天然PF4ファーマコフォア(又はPF4模倣体である本発明のファーマコフォア)における種々の官能基の幾何学的配置を示しており、官能基の各対間の距離を表示する線は図2Aで使用したものと同じローマ数字で標識している。同心円で示された球は、水素結合アクセプターである官能基を表示する一方、グレーの球は水素結合ドナーを示す。これらの官能基に隣接する黒い球は、これら各官能基それぞれにおける理想的な水素結合の方向を付与する参照ポイントAを示している。説明については、上述の実施例6.2.5を参照のこと。疎水性官能基VIII、IX及びXの周囲に描かれた網目は、それらのポイントの回りの疎水性領域の好ましい容積を示している。 図3A−3Bは、同じ原点を有するデカルト及び球座標系での本発明のPF4ファーマコフォアの三次元配置及び結合ポテンシャルを示す。図3Aは、同じ原点を有するデカルト及び球座標系でのPF4ファーマコフォアの10全ての主要な官能基の三次元配置を示す。 図3Bは、図3Aの座標系におけるファーマコフォアポイントVIの周囲の疎水性容積の配置、並びにファーマコフォアポイントVからの2つの可能性のある水素結合ベクトルの一方の方向とその対応する水素結合ポテンシャル表面積を示す。 図4は、水素結合供与及び水素結合ベクトル及び可能性のある球を示す。理想的な水素結合ポテンシャルの球状キャップが算出され、極性ファーマコフォアポイントに対する理想的な水素結合表面積に対応する水素結合ベクトルの長さの1/4で分断されていることが示されている。 図5は、BQ-A01104、つまり7つの異なるサブユニット又は「領域」として概念化された骨格により構造的に剛性を保持している上の表5に列挙された10全てのPF4ファーマコフォアポイントを含む特定の化合物の化学構造を示しており、ここで10のファーマコフォアポイントのそれぞれは対応するローマ数字で表示され、構造的サブユニットのそれぞれは対応するアラビア数字で示されている。 図6Aは、BQ-A01104の骨格中の構造的サブユニット又は「領域」を示す。 図6Bは、BQ-A01104の骨格中の構造的サブユニット又は「領域」を示す。 図6Cは、BQ-A01104の骨格中の構造的サブユニット又は「領域」を示す。 図6Dは、BQ-A01104の骨格中の構造的サブユニット又は「領域」を示す。 図6Eは、BQ-A01104の骨格中の構造的サブユニット又は「領域」を示す。 図6Fは、BQ-A01104の骨格中の構造的サブユニット又は「領域」を示す。 図6Gは、BQ-A01104の骨格中の構造的サブユニット又は「領域」を示す。 図7は、化合物BQ-A01104を最適化するためになされ得る所定の例示的な修飾を示す。 図8は、修飾した化合物(式II−VI)の完全な化学構造を示す。 図9A−9Bは、例示的なPF4アゴニストの完全な化学構造を示す。図9AはPF4アゴニスト(式VII)の好ましい一例の完全な化学構造を示す。 図9Bに示す化学構造(式VIII)は、例えば磁気共鳴映像法(MRI)等の医療イメージングアッセイにおいて、PF4ポリペプチドを検出するため、そこに結合せしめられた造影剤とPF4アゴニストの好ましい例を表す。 図10A−10Bは、wtPT4(配列番号:1)におけるファーマコフォアポイントの三次元構造に対してペプチドP34−56(配列番号:157)及びP34−53(配列番号:159)の三次元構造を比較したものである。図10Aでは、P34−56ペプチド(配列番号:157)の三次元構造の描写は、図の下半分に示されている。wtPF4(配列番号:1)におけるAsp7-His23からの領域の三次元構造の描写は、ペプチドの上に示される。 図10Bにおいて、P34−53ペプチド(配列番号:159)の三次元構造の描写は、Asp7-His23からの領域のwtPF4(配列番号:1)の三次元構造の描写の下、図の下半分に示されている。P34−56及びP34−53ペプチド(それぞれ配列番号:157及び159)におけるアミノ酸残基は、それらが対応する完全長WTPF4アミノ酸配列(配列番号:1)の残基を示すように標識されている。

Claims (81)

  1. 図1C(配列番号:1)に記載のPF4配列中のアミノ酸側鎖の官能基からそれぞれが選択される複数の官能基を有するPF4活性を調節する化合物であって、該アミノ酸側鎖が:Asp7、Leu8、Gln9、Leu11、Val13、His23、Gln18を含み、PF4、IL-8、PF4突然変異体又は配列番号:34−156からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドではない化合物。
  2. ファーマコフォアの官能基が、アミノ酸側鎖Asp7のOD1及びO2原子を含む、請求項1に記載の化合物。
  3. ファーマコフォアの官能基が、アミノ酸側鎖Leu8のCG原子を含む、請求項1に記載の化合物。
  4. ファーマコフォアの官能基が、アミノ酸側鎖Gln9のNE2及びOE1原子を含む、請求項1に記載の化合物。
  5. ファーマコフォアの官能基が、アミノ酸側鎖Leu11のCG原子を含む、請求項1に記載の化合物。
  6. ファーマコフォアの官能基が、アミノ酸側鎖Val13のCB原子を含む、請求項1に記載の化合物。
  7. ファーマコフォアの官能基が、アミノ酸側鎖His23のNE2原子を含む、請求項1に記載の化合物。
  8. ファーマコフォアの官能基が、アミノ酸側鎖Gln18のNE2及びOE1原子を含む、請求項1に記載の化合物。
  9. PF4アゴニストである、請求項1に記載の化合物。
  10. PF4アンタゴニストである、請求項1に記載の化合物。
  11. 検出可能標識をさらに有する、請求項10に記載の化合物。
  12. 前記化合物が、配列番号:157及び配列番号:159からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項1に記載の化合物。
  13. 官能基I、II、III、IV、VIII、IX及びXを有するPF4活性を調節する化合物であって、三次元における官能基間の距離が、ほぼ:
    2.25±0.05Å 基IとIIの間;
    6.03±1.37Å 基IとIIIの間;
    6.92±1.60Å 基IとIVの間;
    8.57±2.60Å 基IとVIIIの間;
    14.20±1.53Å 基IとIXの間;
    12.54±1.51Å 基IとXの間;
    6.00±2.43Å 基IIとIIIの間;
    7.01±1.84Å 基IIとIVの間;
    9.09±1.22Å 基IIとVIIIの間;
    14.45±0.24Å 基IIとIXの間;
    13.28±0.37Å 基IIとXの間;
    2.31±0.07Å 基IIIとIVの間;
    9.19±1.40Å 基IIIとVIIIの間;
    10.91±1.74Å 基IIIとIXの間;
    7.06±2.49Å 基IIIとXの間;
    9.02±0.63Å 基IVとVIIIの間;
    10.46±0.46Å 基IVとIXの間;
    6.52±1.26Å 基IVとXの間;
    6.87±0.96Å 基VIIIとIXの間;
    9.84±1.05Å 基VIIIとXの間;
    7.25±0.49Å 基IXとXの間;
    であり、該化合物がPF4、IL-8、PF4突然変異体、配列番号:34−154からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドではない化合物。
  14. 官能基V、VI及びVIIをさらに有し、三次元における官能基間の距離が、ほぼ:
    30.27±2.92Å 基IとVの間;
    29.94±2.49Å 基IとVIの間;
    30.41±4.31Å 基IとVIIの間;
    30.83±1.99Å 基IIとVの間;
    30.33±1.97Å 基IIとVIの間;
    31.24±4.03Å 基IIとVIIの間;
    26.35±2.76Å 基IIIとVの間;
    26.57±2.02Å 基IIIとVIの間;
    26.31±3.05Å 基IIIとVIIの間;
    25.58±1.40Å 基IVとVの間;
    25.80±1.31Å 基IVとVIの間;
    25.34±2.81Å 基IVとVIIの間;
    3.85±1.54Å 基VとVIの間;
    10.21±2.21Å 基VとVIIの間;
    23.10±2.21Å 基VとVIIIの間;
    17.29±1.68Å 基VとIXの間;
    19.25±2.12Å 基VとXの間;
    14.07±0.94Å 基VIとVIIの間;
    21.84±2.74Å 基VIとVIIIの間;
    16.42±2.03Å 基VIとIXの間;
    19.95±2.02Å 基VIとXの間;
    25.38±4.39Å 基VIIとVIIIの間;
    20.60±3.57Å 基VIIとIXの間;及び
    18.76±3.72Å 基VIIとXの間;
    である、請求項13に記載の化合物。
  15. 官能基Iが、アミノ酸側鎖Asp7のOD1原子に対応する、請求項13に記載の化合物。
  16. 官能基IIが、アミノ酸側鎖Asp7のOD2原子に対応する、請求項13に記載の化合物。
  17. 官能基IIIが、アミノ酸側鎖Gln9のNE2原子に対応する、請求項13に記載の化合物。
  18. 官能基IVが、アミノ酸側鎖Gln9のOE1原子に対応する、請求項13に記載の化合物。
  19. 官能基VIIIが、アミノ酸側鎖Leu8のCG原子に対応する、請求項13に記載の化合物。
  20. 官能基Xが、アミノ酸側鎖Leu11のCG原子に対応する、請求項13に記載の化合物。
  21. 官能基Vが、アミノ酸側鎖Gln18のOE1原子に対応する、請求項14に記載の化合物。
  22. 官能基VIが、アミノ酸側鎖Gln18のNE2原子に対応する、請求項14に記載の化合物。
  23. 官能基VIIが、アミノ酸側鎖His23のNE2原子に対応する、請求項14に記載の化合物。
  24. 官能基IXが、アミノ酸側鎖Val13のCB原子に対応する、請求項14に記載の化合物。
  25. 官能基の距離の二乗平均平方根偏差が1.0オングストローム未満である、請求項13に記載の化合物。
  26. 官能基の距離の二乗平均平方根偏差が0.5オングストローム未満である、請求項25に記載の化合物。
  27. 官能基の距離の二乗平均平方根偏差が0.1オングストローム未満である、請求項26に記載の化合物。
  28. PF4アンタゴニストである、請求項13に記載の化合物。
  29. PF4アンタゴニストである、請求項13に記載の化合物。
  30. 検出可能標識をさらに有する、請求項29に記載の化合物。
  31. 前記化合物が、配列番号:157及び配列番号:159からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項13に記載の化合物。
  32. PF4活性を調節する化合物を同定するための方法であって、
    (a)候補化合物の三次元構造を、
    (b)PF4ファーマコフォアの三次元構造、
    と比較することを含み、
    候補化合物とPF4ファーマコフォアの間の類似性が、PF4活性を調節する候補化合物の能力の指標である方法。
  33. 候補化合物とPF4ファーマコフォアの三次元の間の二乗平均平方根偏差(RMSD)が、約1.0を越えない、請求項32に記載の方法。
  34. 候補化合物がペプチド模倣体である、請求項32に記載の方法。
  35. 候補化合物がPF4アゴニストである、請求項32に記載の方法。
  36. 候補化合物がPF4アンタゴニストである、請求項32に記載の方法。
  37. PF4ファーマコフォアが複数の官能基を有しており、各官能基が図1C(配列番号:1)に記載のPF4配列中のアミノ酸側鎖の官能基から選択され、該アミノ酸側鎖が:Asp7、Leu8、Gln9、Leu11、Val13、His23、Gln18を含み、PF4、IL-8、PF4突然変異体又は配列番号:34−156からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドではない、請求項32に記載の方法。
  38. 官能基が、アミノ酸側鎖Asp7のOD1及びO2原子を含む、請求項37に記載の方法。
  39. 官能基が、アミノ酸側鎖Leu8のCG原子を含む、請求項37に記載の方法。
  40. 官能基が、アミノ酸側鎖Gln9のNE2及びOE1原子を含む、請求項37に記載の方法。
  41. 官能基が、アミノ酸側鎖Leu11のCG原子を含む、請求項37に記載の方法。
  42. 官能基が、アミノ酸側鎖Val13のCB原子を含む、請求項37に記載の方法。
  43. 官能基が、アミノ酸側鎖His23のNE2原子を含む、請求項37に記載の方法。
  44. 官能基が、アミノ酸側鎖Gln18のNE2及びOE1原子を含む、請求項37に記載の方法。
  45. PF4ファーマコフォアが官能基I、II、III、IV、VIII、IX及びXを有し、三次元における官能基間の距離が、ほぼ:
    2.25±0.05Å 基IとIIの間;
    6.03±1.37Å 基IとIIIの間;
    6.92±1.60Å 基IとIVの間;
    8.57±2.60Å 基IとVIIIの間;
    14.20±1.53Å 基IとIXの間;
    12.54±1.51Å 基IとXの間;
    6.00±2.43Å 基IIとIIIの間;
    7.01±1.84Å 基IIとIVの間;
    9.09±1.22Å 基IIとVIIIの間;
    14.45±0.24Å 基IIとIXの間;
    13.28±0.37Å 基IIとXの間;
    2.31±0.07Å 基IIIとIVの間;
    9.19±1.40Å 基IIIとVIIIの間;
    10.91±1.74Å 基IIIとIXの間;
    7.06±2.49Å 基IIIとXの間;
    9.02±0.63Å 基IVとVIIIの間;
    10.46±0.46Å 基IVとIXの間;
    6.52±1.26Å 基IVとXの間;
    6.87±0.96Å 基VIIIとIXの間;
    9.84±1.05Å 基VIIIとXの間;
    7.25±0.49Å 基IXとXの間;
    であり、該化合物がPF4、IL-8、PF4突然変異体、配列番号:34−156からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドではない、請求項32に記載の方法。
  46. PF4ファーマコフォアが官能基V、VI及びVIIをさらに有し、三次元における官能基間の距離が、ほぼ:
    30.27±2.92Å 基IとVの間;
    29.94±2.49Å 基IとVIの間;
    30.41±4.31Å 基IとVIIの間;
    30.83±1.99Å 基IIとVの間;
    30.33±1.97Å 基IIとVIの間;
    31.24±4.03Å 基IIとVIIの間;
    26.35±2.76Å 基IIIとVの間;
    26.57±2.02Å 基IIIとVIの間;
    26.31±3.05Å 基IIIとVIIの間;
    25.58±1.40Å 基IVとVの間;
    25.80±1.31Å 基IVとVIの間;
    25.34±2.81Å 基IVとVIIの間;
    3.85±1.54Å 基VとVIの間;
    10.21±2.21Å 基VとVIIの間;
    23.10±2.21Å 基VとVIIIの間;
    17.29±1.68Å 基VとIXの間;
    19.25±2.12Å 基VとXの間;
    14.07±0.94Å 基VIとVIIの間;
    21.84±2.74Å 基VIとVIIIの間;
    16.42±2.03Å 基VIとIXの間;
    19.95±2.02Å 基VIとXの間;
    25.38±4.39Å 基VIIとVIIIの間;
    20.60±3.57Å 基VIIとIXの間;及び
    18.76±3.72Å 基VIIとXの間;
    である、請求項32に記載の方法。
  47. 官能基Iが、アミノ酸側鎖Asp7のOD1原子に対応する、請求項45に記載の方法。
  48. 官能基IIが、アミノ酸側鎖Asp7のOD2原子に対応する、請求項45に記載の方法。
  49. 官能基IIIが、アミノ酸側鎖Gln9のNE2原子に対応する、請求項45に記載の方法。
  50. 官能基IVが、アミノ酸側鎖Gln9のOE1原子に対応する、請求項45に記載の方法。
  51. 官能基VIIIが、アミノ酸側鎖Leu8のCG原子に対応する、請求項45に記載の方法。
  52. 官能基Xが、アミノ酸側鎖Leu11のCG原子に対応する、請求項45に記載の方法。
  53. 官能基Vが、アミノ酸側鎖Gln18のOE1原子に対応する、請求項46に記載の方法。
  54. 官能基VIが、アミノ酸側鎖Gln18のNE2原子に対応する、請求項46に記載の方法。
  55. 官能基VIIが、アミノ酸側鎖His23のNE2原子に対応する、請求項46に記載の方法。
  56. 官能基IXが、アミノ酸側鎖Val13のCB原子に対応する、請求項46に記載の方法。
  57. 図1C(配列番号:1)に記載のアミノ酸配列を有し、PF4とヘパラン硫酸の相互作用を調節する少なくとも一のアミノ酸置換を含むPF4ポリペプチド。
  58. 前記突然変異が:Lys61→Gln、Lys62→Glu、Lys65→Gln及びLys66→Gluからなる群から選択される、請求項57に記載のPF4ポリペプチド。
  59. 図1C(配列番号:1)に記載のアミノ酸配列を有し、Gln9→Arg、Gln9→Ala及びAsp7→Alaからなる群から選択される少なくとも一のアミノ酸置換を含むPF4ポリペプチド。
  60. 図1C(配列番号:1)に記載のアミノ酸配列を有し、Leu11→Ser、Val13→Gln及びThr16→Alaからなる群から選択される少なくとも一のアミノ酸置換を含むPF4ポリペプチド。
  61. 図1C(配列番号:1)に記載のアミノ酸配列を有し、Gln18→Ala、Val19→Ser及びHis23→Alaからなる群から選択される少なくとも一のアミノ酸置換を含むPF4ポリペプチド。
  62. 配列番号:2−30からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、突然変異PF4ポリペプチド。
  63. 配列番号:157−160からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、単離されたポリペプチド。
  64. 化学式:
    Figure 2008520734
    を有する、請求項1に記載の化合物。
  65. 前記化合物が、式II−VII(図8)のいずれかに示す化学構造を有する、請求項1に記載の化合物。
  66. 式VIII(図9A)に示す化学構造を有する、請求項1に記載の化合物。
  67. (a)PF4アンタゴニストと;
    (b)前記PF4アンタゴニストに結合した検出可能標識;
    を有する検出可能マーカー。
  68. PF4アンタゴニストが式VII(図9A)に示す化学構造を有する、請求項67に記載の検出可能マーカー。
  69. 式VIII(図9B)に示す化学構造を有する、請求項68に記載の検出可能マーカー。
  70. PF4アンタゴニストが、図1C(配列番号:1)に記載のPF4配列中のアミノ酸側鎖の官能基から選択される複数の官能基を有しており、該アミノ酸側鎖が:Asp7、Leu8、Gln9、Leu11、Val13、His23及びGln18を含む、請求項67に記載の検出可能マーカー。
  71. (a)PF4アンタゴニストが官能基I、II、III、IV、VIII、IX及びXを有し、
    (b)三次元における官能基間の距離が、ほぼ:
    2.25±0.05Å 基IとIIの間;
    6.03±1.37Å 基IとIIIの間;
    6.92±1.60Å 基IとIVの間;
    8.57±2.60Å 基IとVIIIの間;
    14.20±1.53Å 基IとIXの間;
    12.54±1.51Å 基IとXの間;
    6.00±2.43Å 基IIとIIIの間;
    7.01±1.84Å 基IIとIVの間;
    9.09±1.22Å 基IIとVIIIの間;
    14.45±0.24Å 基IIとIXの間;
    13.28±0.37Å 基IIとXの間;
    2.31±0.07Å 基IIIとIVの間;
    9.19±1.40Å 基IIIとVIIIの間;
    10.91±1.74Å 基IIIとIXの間;
    7.06±2.49Å 基IIIとXの間;
    9.02±0.63Å 基IVとVIIIの間;
    10.46±0.46Å 基IVとIXの間;
    6.52±1.26Å 基IVとXの間;
    6.87±0.96Å 基VIIIとIXの間;
    9.84±1.05Å 基VIIIとXの間;
    7.25±0.49Å 基IXとXの間;
    である、請求項67に記載の検出可能マーカー。
  72. PF4アンタゴニストが、配列番号:34−156からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる、請求項67に記載の検出可能マーカー。
  73. PF4アンタゴニストが、配列番号:159に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる、請求項67に記載の検出可能マーカー。
  74. 検出可能標識が、金属、放射性同位体、放射線不透性剤、放射線透過性剤、造影剤、染料、及び熱量測定又は蛍光定量反応を触媒する酵素からなる群から選択される、請求項67に記載の検出可能マーカー。
  75. 個体におけるPF4結合部位を検出するための方法であって、
    (a)請求項67に記載の検出可能マーカーを個体に投与し;
    (b)個体における前記検出可能マーカーの存在を検出する;
    ことを含む方法。
  76. 個体における血管新生部位を検出するための方法であって、
    (a)請求項67に記載の検出可能マーカーを個体に投与し;
    (b)個体における前記検出可能マーカーの存在を検出する;
    ことを含む方法。
  77. 個体における感染を検出するための方法であって、
    (a)請求項67に記載の検出可能マーカーを個体に投与し;
    (b)個体における前記検出可能マーカーの存在を検出する;
    ことを含む方法。
  78. PF4アンタゴニストが、式VII(図9A)に示された化学構造を有する、請求項75ないし77のいずれか1項に記載の方法。
  79. 検出可能マーカーが、式VIII(図9B)に示された化学構造を有する、請求項78に記載の方法。
  80. PF4アンタゴニストが、配列番号:34−156からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる、請求項75ないし77のいずれか1項に記載の方法。
  81. PF4アンタゴニストが、配列番号:159に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる、請求項75ないし77のいずれか1項に記載の方法。
JP2007543416A 2004-11-19 2005-11-21 Pf4ファーマコフォア及びそれらの使用 Pending JP2008520734A (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US62988304P 2004-11-19 2004-11-19
US63443304P 2004-12-08 2004-12-08
US63742804P 2004-12-17 2004-12-17
PCT/US2005/042386 WO2006055959A2 (en) 2004-11-19 2005-11-21 Pf4 pharmacophores and their uses

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008520734A true JP2008520734A (ja) 2008-06-19

Family

ID=36407874

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007543416A Pending JP2008520734A (ja) 2004-11-19 2005-11-21 Pf4ファーマコフォア及びそれらの使用

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20080305041A1 (ja)
EP (1) EP1834267A4 (ja)
JP (1) JP2008520734A (ja)
CA (1) CA2588273A1 (ja)
WO (1) WO2006055959A2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7808078B2 (en) * 2008-08-26 2010-10-05 Sanyo Electric Co., Ltd. Semiconductor device and manufacturing method thereof
US8658170B2 (en) 2010-01-06 2014-02-25 Joseph P. Errico Combination therapy with MDM2 and EFGR inhibitors
AU2011204368B2 (en) 2010-01-06 2014-11-27 Joseph P. Errico Methods and compositions of targeted drug development
WO2012028962A2 (en) 2010-09-01 2012-03-08 Bioquanta Sa Pharmacophore toxicity screening
WO2013142328A1 (en) * 2012-03-23 2013-09-26 The Trustees Of The University Of Pensylvania Small molecule antagonists of pf4 containing ultra large complexes

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02262593A (ja) * 1989-01-10 1990-10-25 Repligen Corp 血管発生病の処置に有用な薬剤及び新規な蛋白質
WO1996013587A1 (en) * 1994-10-26 1996-05-09 Repligen Corporation Chemokine-like proteins and methods of use
JP2002509079A (ja) * 1998-02-16 2002-03-26 エンスティテュ デ ヴァソー エ デュ サン 変性pf4フラグメント、及びそれを含む医薬組成物

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE3731542A1 (de) * 1987-09-17 1989-03-30 Schering Ag Neue dicarbonsaeure-bis(3,5-dicarbamoyl-2,4,6-triiod-anilide), verfahren zu deren herstellung sowie diese enthaltende roentgenkontrastmittel
US5112946A (en) * 1989-07-06 1992-05-12 Repligen Corporation Modified pf4 compositions and methods of use
US6486125B1 (en) * 1996-05-24 2002-11-26 Regents Of The University Of Minnesota Synthesis of soluble β-sheet forming peptides

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02262593A (ja) * 1989-01-10 1990-10-25 Repligen Corp 血管発生病の処置に有用な薬剤及び新規な蛋白質
WO1996013587A1 (en) * 1994-10-26 1996-05-09 Repligen Corporation Chemokine-like proteins and methods of use
JP2002509079A (ja) * 1998-02-16 2002-03-26 エンスティテュ デ ヴァソー エ デュ サン 変性pf4フラグメント、及びそれを含む医薬組成物

Also Published As

Publication number Publication date
US20080305041A1 (en) 2008-12-11
WO2006055959A3 (en) 2007-08-16
WO2006055959A2 (en) 2006-05-26
EP1834267A4 (en) 2010-02-17
CA2588273A1 (en) 2006-05-26
EP1834267A2 (en) 2007-09-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
He et al. Structure of the Nogo receptor ectodomain: a recognition module implicated in myelin inhibition
Fasman The development of the prediction of protein structure
Nordvall et al. Binding-site modeling of the muscarinic m1 receptor: A combination of homology-based and indirect approaches
Moody et al. Structure and function of a bacterial Fasciclin I Domain Protein elucidates function of related cell adhesion proteins such as TGFBIp and periostin
Kothandan et al. Structural insights from binding poses of CCR2 and CCR5 with clinically important antagonists: a combined in silico study
CN101065397B (zh) 一种细菌atp合酶的结合结构域
Ascher et al. Regulation of insulin-regulated membrane aminopeptidase activity by its C-terminal domain
JP2008520734A (ja) Pf4ファーマコフォア及びそれらの使用
WO2001021188A1 (en) Utilization of fprl1 as a functional receptor by serum amyloid a (saa)
Cai et al. Modulation of cytokine network in the comorbidity of schizophrenia and tuberculosis
Riek et al. Evolutionary conservation of both the hydrophilic and hydrophobic nature of transmembrane residues
Grant et al. Conotoxins and structural biology: a prospective paradigm for drug discovery
WO2001030808A1 (en) Methods and compounds for modulating melanocortin receptor-ligand binding
Luo et al. Molecular modeling of interleukin-8 receptor beta and analysis of the receptor-ligand interaction.
JP2003510250A (ja) スタフィロコッカス・アウレウス延長因子pの結晶化および構造決定
US20060142548A1 (en) Methods of identifying and designing cell surface receptor inhibitors
JP2003508049A (ja) Cdc25の阻害物質を同定する方法
US20050114109A1 (en) STRUCTURE OF INTEGRIN ALPHA V-beta 3 EXTRACELLULAR DOMAIN COMPLEXED WITH LIGAND
US20080064052A1 (en) Crystal of a Receptor-Ligand Complex and methods of use
AU1114399A (en) Interaction of alpha-conotoxin peptides with neuronal nicotinic acetylcho line receptors
AU2006235938B2 (en) Structure of SOCS and uses thereof
Yao et al. The Effect of Acidic Residues on the Binding between Opicalcin1 and Ryanodine Receptor from the Structure–Functional Analysis
JP2003502036A (ja) カスパーゼ−8の結晶、モデルおよび方法
Thorman Rational Design of Novel BCL2A1 Inhibitors for Treatment of Autoimmune Diseases: An Integration of Virtual Screening, Transcriptomics and Protein Biophysics
Asfarina Studies on the binding and interaction of neolactotetraosylceramide and peptides with dengue virus type 2 envelope protein/Asfarina Amir Hassan

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080806

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110412

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20110623

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20110630

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20110804

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20110811

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20120110