JP2008516893A - 多層錠剤および生体接着性剤形 - Google Patents

多層錠剤および生体接着性剤形 Download PDF

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Abstract

生体接着性コーティングは、経口摂取される薬物の胃腸管における滞留時間を増加させる。ある生体接着性コーティングは、薬物の経口投与用の医薬品剤形の少なくとも1表面に施されたとき、ラット腸での測定で、少なくとも100N/mの破壊強度を生成し、その結果、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間、胃腸管に滞留し、その間に薬物が前記剤形から放出される。多層錠剤、特に、疎水性添加剤を含んだ物は、吸湿性および/または潮解性の薬物の投与を投与するのに有用である。さらに、多層錠剤の薬物量を変化させることによって、薬物の放出速度を制御させることができる。

Description

関連出願
関連出願
本願は、米国仮特許出願第60/604,990号(2004年8月27日付出願)、第60/604,991号(2004年8月27日付出願)、第60/605,198号(2004年8月27日付出願)、第60/605,199号(2004年8月27日付出願)、第60/605,200号(2004年8月27日付出願)、第60/605,201号(2004年8月27日付出願)、第60/607,905号(2004年9月8日付出願)、第60/635,812号(2004年12月13日付出願)、第60/650,191号(2005年2月4日付出願)、第60/650,375号(2005年2月4日付出願)、および第60/676,383号(2005年4月29日付出願)の便益を主張する。本願は、米国出願第11/009,327号(2004年12月9日付出願)の一部継続出願および国際出願第PCT/US2005/007525(2005年3月3日付出願、言語:英語、指定国:米国)の一部継続出願である。その全ての内容を、本明細書中に引用により援用する。
薬物送達のための制御された放出システムは、生体の特定の領域に薬物を投与するために設計されることが多い。胃腸管に対して、または胃腸管を経て薬物を送達する場合、薬物が、局所的効果を発揮する、もしくは血流を通る機会を持つ前に、所望の活性部位もしくは吸収部位をそれぞれ実質的に超えて送達されないようにすることが重要である。適切な内蔵の裏打ちに接着する薬物の送達システムは、近接および接触の持続性の機能として、その含有物を標的組織に送達する。
経口摂取される生成物は、胃腸管の上皮表面、または粘膜の裏打ちに接着される。生理活性物質を送達するためには、上皮または粘膜層に、ポリマー性の薬物送達デバイスを接着させることが有利である。胃腸管における生体接着性は、(1)合成物質が粘膜基質に接触する時点での粘弾性変形、ならびに(2)接着性合成物質と粘膜または上皮細胞との結合の形成、といった2つの段階を進む。一般に、ポリマーの組織への接着は、(i)物理的もしくは機械的結合、(ii)一次結合もしくは共有化学結合、および/または(iii)二次化学結合(すなわち、イオン結合)によって達成される。物理的もしくは機械的結合は、粘膜の裂け目や粘膜の襞への接着物質の沈澱、封入の結果生じうるものである。二次化学結合は、生体接着性特性をもたらすものであり、分散的相互作用(すなわち、ファン−デル−ワールス相互作用)および、水素結合をはじめとした、より強力な特異的相互作用などを含む。主に水素結合を担う親水性の官能基は、ヒドロキシル基およびカルボン酸である。
Ducheneらは、Drug Dev. Ind. Pharm.、14:283−318(1988)の中で、薬物送達のための、生体接着性システムの薬学的および医学的局面を考察している。ポリカルボフィルポリマーおよびアクリル酸ポリマーは、最も高い接着特性を持つことがわかっている。他にも生体接着性ポリマーの使用を考察しているものもあるが、そのような研究においては、達成された生体接着性の範囲が限定されていた。さらに、これらの研究は、生体接着性の薬物の送達デバイス(例えば、錠剤)をどのようにして調製すべきかを実証していない。国際公開WO93/21906号は、生体接着性マイクロスフェアの製造方法および、マイクロスフェアと胃腸管の選択された部分との間の生体接着性をin vitroで測定する方法を開示している。Lehrらは、in vitroシステムを用いて、アクリル酸のコポリマーからなる微粒子をスクリーニングし、該コポリマー「カルボフィル」が接着性を高めることを明らかにした。
生体接着性コーティング微粒子は知られているが、錠剤などの、胃腸管粘膜に適切に接着することができるより大きな経口製剤は知られていない。より大きな経口製剤、錠剤、カプセル剤および薬物溶出デバイスなどの剤型は粘膜に陥入することができるが、一方、微粒子は通常、陥入するには小さい点で、微粒子はより大きな経口製剤とは異なる。その結果、より大きな経口製剤は、胃腸管(特に、接触表面積と製造体積との比率の関数として)のより小さな表面積に接触する。このことによって、より大きな製剤と胃腸管との間の相互作用を弱めることが期待される。
薬物が放出される位置を制御する必要性とは別に、またはそれに加えて、薬物が医薬品製剤から放出される持続性を制御することも必要である。特に、特定の薬物、特に神経刺激性薬物などは、血清濃度が大きく変われば、副作用を示し、有効性が低くなる。標準的な速放性の放出製剤は、一度に大量の薬物が患者の胃腸管に入るため、一般的に血清濃度にそのような変化をもたらすことがある。
したがって、錠剤などの薬物の送達システムによる、医薬物質の粘膜からの吸収を制御または増加させるための方法が必要である。医薬品製剤の胃腸管通過を遅らせる方法も必要である。
ある局面において、本発明は、薬物の経口送達のための医薬品剤形を提供する。それは、胃腸管に送達される薬物、および剤型の表面の少なくとも一部に投与される生体接着性のポリマーコーティングを含む。該コーティングは、剤形に対して、ラット腸での測定によれば、少なくとも100N/mの破壊強度を付与し、該剤形は、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間の腸管保持時間を持ち、その間、薬物が剤形から放出される。
第1の態様において、本発明は、薬物の経口送達用の錠剤に関する。それは、胃腸管に送達される薬物を含むコアと、錠剤の少なくとも1表面に塗布されるポリマーコーティングとを含む。コーティングによって、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度が錠剤に付与され、該錠剤は、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間の腸管滞留時間を持ち、その間、薬物が剤形から放出される。いくつかの態様において、該生体接着性ポリマーコーティングは、さらに、合成ポリマーコーティングの粘膜接着性を高める金属化合物、低分子量オリゴマー、またはそれらの組み合わせを含む。好ましい態様において、該生体接着性ポリマーコーティングは、水和作用によって実質的に膨潤しない。
ある態様において、本発明は、薬物の経口投与用の錠剤に関する。それは、胃腸管に送達される薬物を含むコアと、錠剤の少なくとも1表面に塗布される生体接着性ポリマーコーティングとを含む。コーティングによって、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度が錠剤に付与され、該錠剤は、絶食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも3時間の腸管保持時間を持ち(実施例1を参照されたい)、その間、薬物が錠剤から放出される。いくつかの態様において、該生体接着性ポリマーコーティングは、さらに、合成ポリマーコーティングの粘膜接着性を高める金属化合物、低分子量オリゴマー、またはそれらの組み合わせを含む。好ましい態様において、該生体接着性ポリマーコーティングは、水和作用によって実質的に膨潤しない。
別の態様において、本発明は、薬物の経口投与用の薬物溶出デバイスに関する。それは、その中に薬物含有コアを含む貯蔵層、コアの薬物がデバイスから溶出する1以上のオリフィス、すなわち、出口ポート、およびデバイスの少なくとも1つの表面に塗布される生体接着性ポリマーコーティングを含む。コーティングによって、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度が錠剤に付与され、該デバイスは、絶食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも3時間の腸管保持時間を持ち、その間、薬物が錠剤から放出される。好ましい態様において、該生体接着性ポリマーコーティングは、水和作用によって実質的に膨潤しない。
さらに別の態様において、本発明は、薬物の経口送達用の薬物溶出デバイスに関する。それは、その中に薬物含有コアを含む貯蔵層、コアの薬物がデバイスから溶出する1以上のオリフィス、すなわち、出口ポート、およびデバイスの少なくとも1つの表面に塗布される生体接着性ポリマーコーティングを含む。コーティングによって、デバイスに、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度が付与され、該デバイスは、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間の腸管保持時間を持ち、その間、薬物がデバイスら放出される。好ましい態様において、該生体接着性ポリマーコーティングは、さらに、合成ポリマーコーティングの粘膜接着性を高める、金属化合物、低分子量オリゴマーまたはそれらの組み合わせを含む。好ましい態様において、該生体接着性ポリマーコーティングは、水和作用によって実質的に膨潤しない。
本発明は、錠剤、カプセル剤および薬物溶出デバイスといった薬物の送達システムの生体接着性特性を高めるための方法を提供する。本発明はまた、薬物の送達システムの、胃腸管を含む粘膜への接着性を高めるための方法を提供する。本発明のポリマー性の薬物の送達システムは、粘膜への結合の可能性を高め、したがって、広範な治療的適用において、広範な薬物もしくは診断薬を送達するのに使用することができ、および/または、活性物質の粘膜への取り込みを高めることができる。いくつかの態様において、この薬物の送達システムは、0.1〜10μmの大きさの粒子を持つ。
本発明の生体接着性剤形は、一般的に、投与量レベルおよび/または薬物の投薬回数を減らすという利点を持つ。一般的に、治療薬の局所的放出および徐放のための生体接着性および/または粘膜接着性システムは、胃腸管の管腔表面の必要な部位へ、より有効に標的化することができる。投与量レベルおよび/または投薬回数が減少することによって、抗菌物質に関連するいくつかの潜在的な問題点を減らすことができる。または、患者によっては、胃腸管刺激などを避けることができる。投与量レベルおよび/または投薬回数の減少によって、いくつかの薬物によって引き起こされ、薬剤耐性細菌性腸炎や細菌性重複感染を引き起こしうる腸内細菌叢の障害を減少させることができる。または避けることもできる。副作用の潜在的減少および全体的な投与の容易さから、患者のコンプライアンスは大いに上がるはずであり、さらに治療成果が向上することが期待される。
別の態様において、本発明は、経口投与が可能であり、内層および1以上の外層を有し、それぞれが、添加剤を混合した薬物(例えば、バルプロ酸ナトリウム、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸等のバルプロ酸部分を含む薬物)を含んでいる多層の薬学的錠剤に関する。少なくとも1つの添加剤は疎水性である。もっとも、そのような添加剤は、各層に必要なわけではない。追加された外層(すなわち上記内層および外層の他の層)は、任意に薬物を含まなくてもよい。
発明の詳細な説明
生体接着性医薬品剤形
ある局面において、本発明は、胃腸管における滞留時間を増加させた医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)に関する。本発明の目的において、胃腸管残留時間とは、医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)が胃から幽門括約筋へ移動するのに必要な時間である。例えば、本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)の胃腸管残留時間は、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、または、少なくとも12時間である。この時間は、摂食状態もしくは、絶食状態のいずれでも測定できるが、一般的には、絶食状態で測定する。本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)は、小腸および/もしくは大腸、または医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)を含有する薬物を吸収する胃腸管の領域においての滞留時間を増やすこともできる。例えば、本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)は、小腸(または、十二指腸、空腸および回腸から選択される小腸の1または2の部分)において、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、例えば、16〜18時間、滞留させることができる。腸溶性のコーティングもしくはその等価物を持つ医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)としては、剤形が小腸もしくはその下部に入るまで、生体接着性が曝露されているように、胃腸管残留時間を増加させたものを用いることができる。これらの医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)は、全体として、該剤形の少なくとも1つの表面に塗布される生体接着性ポリマーコーティングを含む。
「生体接着」は、物質が長期間生物の組織に接着することができる能力と定義する。生体接着は、胃を空にすることおよび腸の蠕動運動および繊毛活動による移動の結果生じる不十分な残留時間に対する解決方法の1つである。生体接着を十分にするためには、生体接着とレセプター組織との間に緊密な接触が存在しなければならず、生体接着は、組織表面および/または粘膜の裂け目を貫通するものでなければならず、そして、機械的、静電的、もしくは化学的な結合が形成されなければならない。ポリマーの生体接着性の特性は、ポリマーの性質と、その周りの培地の性質の双方の影響を受ける。
本発明の生体接着性送達システムの一例として、ヘリコバクター・ピロリを絶滅させる殺菌薬および酸低下剤の局所送達用のものが挙げられる。ヘリコバクター・ピロリの根絶は、胃や十二指腸潰瘍を治療するのみならず、胃の悪性腺腫やリンパ腫の大部分を予防する可能性を有している。ある態様において、酸抑止剤(ラニチジンクエン酸ビスマス、ランソプラゾール)、粘膜防御増進剤(ビスマス塩)および/または粘液溶解薬(メガルドレード(megaldrate))を含む1以上の治療薬を生体接着性送達システムに組み込み、そして、ヘリコバクター・ピロリ感染または潰瘍の危険のある患者に投与する。生体接着性の製剤は、生体接着性のコーティングによって包まれた多層コアであることが好ましい。
ポリマー
好適な生体接着性ポリマー性のコーティングが、米国特許第6,197,346号、第6,217,908号、および第6,365,187号に開示されている。これらの内容を本明細書中に引用によって援用する。これらのコーティングは、可溶性および不溶性、生分解性および非生分解性ポリマーを含む。これらは、ヒドロゲル、または熱可塑性、ホモポリマー、コポリマーもしくはそのブレンド、および/または、天然もしくは合成ポリマーであることができる。好ましいポリマーは、制御された合成および崩壊の特徴を有する生合成ポリマーである。特に好ましいポリマーは、フマル酸およびセバシン酸の無水コポリマーであり(P(FA:SA))、それは、胃腸管に投与されたとき、非常に良好な生体接着性の特性を示す。P(FA:SA)コポリマーの例としては、フマル酸とセバシン酸の比率が1:99乃至99:1、例えば、5:95乃至75:25、例えば、10:90乃至60:40、または少なくとも15:85乃至25:75のものがあげられる。そのようなコポリマーの具体的な例としては、フマル酸とセバシン酸の比率が20:80または50:50のものがあげられる。
本発明の生体接着性の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)に用いられるポリマーは、ラット腸の粘膜表面に投与されたとき、少なくとも100N/m(10mN/cm)の生体接着性相互作用(破壊強度)を生み出す。医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)の破壊強度は、少なくとも250N/m、少なくとも500N/m、少なくとも1000N/mであることが有利である。例えば、ポリマー含有医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)の破壊強度は、100N/m乃至500N/mとすることができる。ここに記載の力は、他に特に記載がなければ、ラット腸粘膜で測定されたものを示している。他の動物種について行った同様の接着性の測定値は、ラットを用いて得たものとは異なるかもしれない。この違いは、他の動物種の粘液層の組成上および幾何学上の違い、ならびに粘液上皮の細胞の違いに寄与するものである。しかしながら、このデータは、研究に用いた全ての種において、同様の一般的な傾向が認められることを示している(すなわち、P(FA:SA)は、ラット、ヒツジ、ブタなどにおいてポリ乳酸(PLA)より強い接着性を示す)。例えば、本発明の、ラット腸に対する医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)の破壊強度は、一般的に少なくとも125N/m、例えば、少なくとも150N/m、少なくとも250N/m、少なくとも500N/mもしくは少なくとも1000N/mである。
医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)の破壊強度は、Duchene et al.によって記載されている方法によって測定することができる。簡単に述べれば、錠剤を引張試験機の片面に付着させ、反対側の試験表面(例えば、粘膜、ラット腸、またはブタ腸)に接触させる。該引張試験機は、試験表面から、医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)を移動させるのに必要な力を測定するものである。一般的な引張試験機の例としては、テクスチャーアナライザー(Texture Analyzer)やイントロン(Instron)引張試験機があげられる。
粘膜接着性の好ましい方法においては、錠剤を、直径0.3750”(9.525mm)の平面の型押しを用いて押圧する。錠剤の重量は組成物によって異なるが、たいていの場合、錠剤の最終的な重量は、200mgである。次いでこれらの錠剤を、一般的には、シアノアクリレート系の接着剤を用いて、直径10mmのプラスチックプローブに貼り付ける。錠剤を一旦強くプローブに貼り付け、該プローブを、テクスチャーアナライザーに貼り付ける。テクスチャーアナライザーは、1kgの荷重のセルで、最大の感受性を示すように固定される。以下の表1に用いた設定を示す。
Figure 2008516893
試験および試験後速度は、データ点の最大数を入手可能とするために、機器にとって可能な限り低いことが有利である。該試験前速度は、プローブがトリガー作用を起こすまでに、すなわち、組織に接触する前に用いられる。
比例、積分、微分利得をゼロに設定する。これらの設定は、最適であれば、接触時間の持続している間、付与された力でシステムを維持する。しかしながら、基質として軟組織を用いた場合、プローブおよび錠剤は、絶えず、変形可能な表面へ動かされることになり、これによって組織に損傷が認められる。したがって、これらのパラメーターをゼロに設定することによって、プローブおよび錠剤では、付与された力が徐々に緩和される。フィードバックがどのように速く調整されるかを示す測定値であるトラッキング速度もゼロに設定される。
錠剤が試験される組織は、粘膜接着性リッグに固定される。次いでリッグを375mLのPBSを含有する600mLパイレックス(登録商標)(Pyrex)ビーカー中に完全に固定化する。該組織を約37℃にして試験を持続させる。機械が攪拌棒からの振動を検出することができるように攪拌を行う。
Smartらは、J. Pharm. Pharmacol.、36:295−299(1984)において、ポリマーコーティングされた粘膜の皿に接触しているガラスプレートを用いた粘膜への接触を試験するための別の方法を報告している。アルギン酸ナトリウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、ペクチン、およびポリビニルピロリドンを含む種々のポリマー材料を試験した。
Gurneyらは、Biomaterials、5:336−340(1984)の中で、接着が物理的結合もしくは機械的結合;二次的化学結合;および/または、一次的、イオン性、もしくは共有結合によって影響を受けるかもしれないことを報告している。Parkらは、"Alternative Approaches to Oral Controlled
Drug Delivery: Bioadhesives and In-Situ Systems," (「経口用の制御された薬物送達に対する別のアプローチ:生体接着性およびin-situシステム」)、J. M. AndersonとS. W. Kim, Eds., "Recent Advances in Drug
Delivery," (「薬物送達における最近の進歩」)Plenum Press, New York, 1984, pp. 163-183で、細胞中に螢光プローブを用いて、ポリマーのムチン/上皮表面へ接着性を測定する研究を報告している。それは、接着性ポリマーとして高い電荷密度をもつアニオン性ポリマーが好ましいことを示している。Mikosらは、J. Colloid Interface Sci., 143:366−373(1991)において、また、Lehrらは、J. Controlled Rel. Soc.、13:51−62(1990)において、それぞれ、薬物の送達における、ポリ無水物およびポリアクリル酸の生体接着性の性質の研究を報告している。
過去において、2つのクラスのポリマーが有用な生体接着性を示すことがわかっている。水性のポリマーとヒドロゲルである。大きなクラスの親水性のポリマーの中で、カルボキシル基(例えば、ポリ[アクリル酸])を含有するものが最もよい生体接着性の特性を示している。したがって、カルボキシル基の濃度が最も高いポリマーが、軟組織上の生体接着にとって好ましい物質であると予測される。他の研究においては、最も有望なポリマーは、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびメチルセルロースであった。これらの物質には水溶性のものもあれば、ヒドロゲルもある。
急速に生体分解性を示すポリマーは、
ポリ[ラクチド−co−グリコリド]、ポリ無水物、およびポリオルトエステルのような、それらの平滑な表面が腐食するとき、外表面上にそのカルボキシル基が剥き出る迅速生分解性のポリマーは、生体接着性薬物送達システムとして特に好適である。さらに、ポリ無水物およびポリエステルのような不安定な結合を含むポリマーは、それらの加水分解反応性について周知である。それらの加水分解分解速度は、一般に、ポリマー骨格中の簡単な変化によって改変され得る。
代表的な天然ポリマーは、ゼイン、改変ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、またはコラーゲンのようなタンパク質(例えば、親水性のタンパク質)、およびセルロース、デキストラン、ポリヒアルロイン酸のようなポリサッカライド類、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルおよびアルギン酸のポリマーを含む。これらは一般的に、生体接着性コーティングで使用するには、最終生成物の特徴のばらつき、ならびに投与後の崩壊のレベルが高いため、それほど好適ではない。合成により改変された天然ポリマーは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、およびニトロセルロースを含む。
生体接着性コーティングに用いられる代表的な合成ポリマーは、ポリホスファゼン(polyphosphazine)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン、およびそれらのコポリマーを含む。本発明に用いるのに好適な他のポリマーとしては、限定されないが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテート ブチラート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローススルフェートナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルクロリド、ポリエチレン, ポリビニルピロリドン、およびポリビニルフェノールが挙げられる。生体接着性コーティングに用いられる代表的な生体分解性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリドおよびそれらのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ[ラクチド−co−グリコリド]、ポリ無水物(例えば、ポリ(アジピン無水物))、ポリオルトエステル、それらのブレンドおよびコポリマーを含む。
ポリ無水物は、生体接着性送達システムに用いるのに特に好適である。加水分解が進行するにつれて、表面侵食を引き起こし、ますます多くのカルボキシル基が該表面に剥き出しになるからである。しかしながら、ポリラクチドはバルク侵食によって、よりゆっくりと侵食する。このことは、より長い持続時間の間、生体接着性コーティングを保持することが望ましい本願において有利である。ポリラクチドに基づいて生体接着性ポリマー系システムを設計する際、高濃度のカルボン酸を持つポリマーが好ましい。高濃度のカルボン酸は、低分子量ポリマー(MW:200以下)を用いて達成することができる。なぜなら、低分子量ポリマーは、高濃度のカルボン酸を末端基に含有しているからである。
上記リストに示したポリマーは、Sigma
Chemical Co., St. Louis, Mo., Polysciences, Warrenton, Pa., Aldrich, Milwaukee,
Wis., Fluka, Ronkonkoma, N.Y., やBioRad, Richmond, Calif.などの供給元から入手可能である。あるいは、これらの供給元から入手したモノマーを、標準的な技法を用いて合成することによって利用することもできる。
生体接着性ポリマーコーティングが合成ポリマーコーティングである場合、該合成ポリマーは、一般的に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエチレン、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルおよびアルギン酸のポリマー、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(フマル酸)、ポリ(マレイン酸)、ならびに、それらのブレンドおよびコポリマーから選択される。一実施例において、合成ポリマーは、ポリ(フマル酸−co−セバシン酸)無水物である。
生体接着性ポリマー性コーティングとして使用することが好適なポリマーの別のグループは、少なくとも1つの疎水基が骨格からぶら下がっている、疎水性の骨格を持つポリマーである。好適な疎水基は、一般的に無極性である。そのような疎水基の例としては、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基が挙げられる。好ましくは、疎水基は、ポリマーの生体接着性を高めるのではなく、阻害するために選択される。
生体接着性ポリマーコーティングとして用いられるのに好適なポリマーのさらに別のグループは、少なくとも1つの親水基が骨格からぶら下がっている、疎水性の骨格を持つポリマーである。そのような親水基は、他の官能基と水素結合もしくは静電気的な結合をすることが可能な基である。そのような親水基の例としては、カルボン酸、スルホン酸およびホスホン酸(phosponic acids)などの負に荷電した基、(プロトン付加)アミンなどの正に荷電した基、アミドおよびイミンなどの中性、極性基が挙げられる。好ましくは、親水基は、ポリマーの生体接着性を高めるのではなく、阻害するために選択される。親水基は、疎水性のポリマー骨格に直接付着させることもできるし、または、スペーサ基を介して付着させることもできる。一般的には、スペーサ基は、アルキレン基、特に、C−Cアルキル基、例えば、C−Cアルキル基である。1以上の親水基を含有する好ましい化合物としては、アミノ酸(例えば、フェニルアラニン(phenyalanine)、チロシン、およびそれらの誘導体)、ならびにグルコサミンなどのアミン含有カーボハイドレート(糖質)が挙げられる。
ポリマーは、生分解の間またはポリマー表面上で接近可能なカルボキシル基の数を増加することにより改変され得る。これらポリマーはまた、ポリマーにアミノ基を結合することにより改変され得る。これらポリマーはまた、リガンド分子を、生体接着性の性質でポリマー性微粒子の表面に剥き出た分子に共有結合する任意の数の異なるカップリング化学物質を用いて改変され得る。
ポリマーに共有結合し、それらをムチンおよび粘膜細胞層に対して特異的に標的し得るレクチンは、生体接着物として用いることができる。有用なレクチンリガンドは以下から単離されるレクチンを含む:Abrus
precatroius、Agaricus
bisporus、Anguilla
anguilla、Arachis
hypogaea、Pandeiraea
simplicifolia、Bauhinia
purpurea、Caragan
arobrescens、Cicer
arietinum、Codium
fragile、Datura stramonium、Dolichos biflorus、Erythrina corallodendron、Erythrina cristagalli、Euonymus europaeus、Glycine max、Helix aspersa、Helix pomatia、Lathyrus
odoratus、Lens
culinaris、Limulus
polyphemus、Lysopersicon
esculentum、Maclura
pomifera、Momordica
charantia、Mycoplasma
gallisepticum、Naja
mocambique、ならびにレクチンコンカナバリンA、スクシニルコンカナバリンA、Triticum
vulgaris、Ulex
europaeus I、II and III、Sambucus nigra、Maackia amurensis、Limax fluvus、Homarus
americanus、Cancer
antennarius、およびLotus
tetragonolobus。
ポリエチレンイミンまたはポリリジンのような任意の正に荷電したリガンドの、任意の粒子への付着は、ビーズをコーティングするカチオン基の静電的誘引力に起因する粘液の正味の負荷電への生体接着を改善し得る。ムチン層のムコ多糖およびムコタンパク質、特にシアル酸残基は、負荷電コーティングの原因である。ムチンに対する高い結合親和性を有する任意のリガンドはまた、カルボジイミダゾール(CDI)のような適切な化学物質で大部分の粒子に共有結合され得、そして腸への粒子の結合に影響することが期待され得る。例えば、ムチンの成分あるいはインタクトなムチンに対して惹起されたポリクローナル抗体は、粒子の共有結合するとき、増加した生体接着を提供し得る。同様に、腸管の管腔表面上に剥き出た特異的細胞表面レセプターに対して惹起された抗体は、適切な化学物質を用いてポリマーに結合されるとき、残留時間を増加し得る。このリガンド親和性は、静電気的荷電のみに基づく必要はなく、ムチン中の安定性あるいは炭水化物基に対する特異的親和性のような、有用なその他の物理的パラメーターである。
純粋または部分的に精製された形態のいずれかである、ムチンの任意の天然成分のポリマーへの共有結合は、ポリマーのムチン層への溶解性を高める。有用なリガンドとしては、限定されないが以下が挙げられる:シアル酸、ノイラミン酸、n−アセチル−ノイラミル酸、n−グリコリルノイラミン酸、4−アセチル−n−アセチルノイラミル酸、ジアセチル−n−アセチルノイラミン酸、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクトース、グルコース、マンノース、フコース、天然に存在するムチンの化学的処理により調製された任意の部分的に精製されたフラクション、例えば、ムコタンパク質、ムコ多糖およびムコ多糖−タンパク質複合体、および粘膜表面上のタンパク質または糖構造に対して免疫反応性の抗体。
余分のペンダントカルボン酸側鎖基を含有するポリアミノ酸、例えば、ポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸の付着はまた、生体接着性を増加させる。このポリアミノ鎖は、ムチン鎖における鎖の絡み合いにより、および増加したカルボン酸荷電により生体接着性を増加し得るはずである。
ポリマー-金属錯体
米国特許第5,985,312号、第6,123,965号、および第6,368,586(その内容を引用によって本明細書に援用する)に開示されているように、上で述べたような、金属化合物が組み込まれているポリマーは、粘膜などの組織表面への接着可能性がさらに向上し、本発明に好適に用いられる。ポリマーに組み込まれている金属化合物としては、例えば、水不溶性の金属酸化物をあげることができる。金属化合物の、通常生体接着性で無いものまで含めた、広範囲の異なるポリマーへの組み込みは、粘膜などの組織表面へ接着する可能性を高めることが多い。
生体接着性の性質を向上させるためにポリマーに組み込まれ得る金属化合物は、好ましくは、ポリマーに組み込まれ、それに結合して、ポリマーの生体接着性を高めることが可能な、水不溶性の金属酸化物や金属水酸化物などの水不溶性金属化合物が挙げられる。本明細書において、水不溶性金属化合物は、水に少ししか溶解しない、もしくは不溶の(例えば、約0.0〜0.9mg/ml未満)、金属化合物であると定義される。
この水不溶性金属化合物は、限定されないが、カルシウム、鉄、銅、亜鉛、カドミウム、ジルコニウムおよびチタンを含む広範囲の金属に由来し得る。水不溶性金属化合物は、好ましくは、金属酸化物もしくは水酸化物である。多価金属の水不溶性金属化合物が好ましい。本明細書に記載の組成物に使用するのに好適な、代表的な金属酸化物には、酸化コバルト(II)(CoO)、酸化コバルト(III)(Co)、酸化セレン(SeO)、酸化クロム(IV)(CrO)、酸化マンガン(MnO)、酸化チタン(TiO)、酸化ランタン(La)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化スカンジウム(Sc)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化タンタル(Ta)、セリウム酸化物(CeO)、酸化ネオジム(Nd)、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(Mo)、酸化タングステン(WO)、三酸化タングステン(WO)、酸化サマリウム(Sm)、酸化ユウロピウム(Eu)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化テルビウム(Tb)、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化エルビウム(Er)、酸化ツリウム(Tm)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ルテチウム(Lu)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(InO)、酸化ゲルマニウム(GeO)、酸化アンチモン(Sb)、酸化テルル(TeO)、酸化ニッケル(NiO)、および酸化亜鉛(ZnO)が含まれる。他の酸化物としては、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ニッケル(III)(Ni)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(III)(Fe)、酸化銅(II)(CuO)、酸化カドミウム(CdO)、および酸化ジルコニウム(ZrO)が挙げられる。
金属化合物を定義づける好ましい特性としては、(a)酸性または塩基性の水溶性環境といった水溶性環境(例えば、胃管腔内に存在するもの)において、実質的に不溶性である;(b)水溶性環境のpHに表面がイオン化されている、といったことが挙げられる。
水不溶性金属化合物は、以下のメカニズムの1つを用いて、ポリマーに組み込むことができる。(a)物理的混合の結果としての金属化合物の封入;(b)金属化合物とポリマーの間のイオン的相互作用;(c)ポリマーの表面改変によって表面に金属化合物を露出させる;(d)流動床、パンコーティング、または当該技術分野の当業者に公知の、あらゆる類似の方法といったコーティング技法を用いて、表面上を金属化合物の多い層にすること。ある態様において、水不溶性金属化合物のナノ粒子、微粒子をポリマーに組み込んでいる。
ある態様において、金属化合物は、例えば、ポリマー全体に組み込まれた、もしくは、組織表面に接着されるポリマー表面に配置された水不溶性の金属酸化物として提供される。金属化合物は、ポリマーの内層に組み込むこともできるし、「保護」外層が崩壊もしくはその他の溶解をした後にのみ、露出させることもできる。例えば、ポリマーを含有する錠剤コアおよび金属は、胃液に触れたとき溶解するように設計された腸溶性のコーティングで覆ってもよい。次いで、金属化合物を多く含んだコアを露出させ、GI粘膜に結合できる状態にする。
金属酸化物微粒子は、例えば、金属酸化物を、乳鉢と乳棒を用いた処理によって微粒化することによって、例えば、10.0〜300nmの粒子を作製することができる。該金属酸化物粒子は、例えば、ポリマー中に溶解または分散させることによって、ポリマーに組み込むことができる。
ポリマーに組み込んで生体接着性を高めた金属化合物は、米国食品薬品局(FDA)によって既に食物もしくは医薬品添加物、例えば、酸化亜鉛として承認されている金属化合物とすることができれば有利である。
金属化合物を組み込むことができる使用可能な、好適なポリマーとしては、金属化合物と混合したとき、必要な破壊強度を有していれば、ヒドロゲル、熱可塑性樹脂、ならびに天然および合成ポリマーのホモポリマー、コポリマーおよびブレンドを包含する、可溶性および水不溶性ならびに生分解性および非生分解性ポリマーが挙げられる。上で挙げたものに加えて、金属化合物と組み合わせて使用することができる代表的なポリマーとしては、ポリアクリル酸を包含するカルボキシル基含有ポリマーのような、親水性ポリマーが挙げられる。ポリ酸無水物、ポリ(ヒドロキシ酸)およびポリエステル、ならびにそれらのブレンドおよびコポリマーを包含する生体分解性ポリマーも使用できる。使用しうる代表的な生体分解性ポリ(ヒドロキシ酸)およびそのコポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシ−酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチドーコ−カプロラクトン)、およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を包含する。不安定結合を含有するポリマー、例えばポリ無水物およびポリオルトエステルを、加水分解反応性を減少させた任意修飾形態で、使用することができる。正に帯電したヒドロゲル、例えばキトサン、および熱可塑性ポリマー、例えばポリスチレンも、使用できる。
使用しうる代表的天然ポリマーとしては、タンパク質、例えば、ゼイン、修飾ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、またはコラーゲン、ならびにポリサッカライド類、例えば、デキストラン、ポリヒアルロン酸、およびアルギン酸を包含する。代表的な合成ポリマーは、ポリホスファゼン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリシロキサン、ポリウレタン、およびそれらのコポリマーが挙げられる。セルロースも使用できる。本明細書において定義される「セルロース」には、天然および合成セルロース、例えば、アルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ヒドロキシアルキルセルロース、およびニトロセルロースが挙げられる。セルロースの例としては、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチラート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、およびセルローススルフェートナトリウム塩が挙げられる。
アクリルおよびメタクリル酸またはエステルのポリマー、およびそれらのコポリマーを使用することができる。使用しうる代表的なポリマーとしては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)が挙げられる。
使用しうる他のポリマーとしては、ポリアルキレン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン;ポリアリールアルキレン、例えば、ポリスチレン;ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリ(エチレングリコール);ポリ(アルキレンオキシド)、例えば、ポリ(エチレンオキシド);および、ポリ(アルキレンテレフタレート)、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)が挙げられる。さらに、ポリビニルポリマーも使用でき、本明細書において定義されるポリビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステルおよびハロゲン化ポリビニルが挙げられる。ポリビニルポリマーの例としては、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルフェノールおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。
水溶性ポリマーを用いることもできる。好適な水溶性ポリマーも代表的な例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリエチレングリコール、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、およびその混合物を挙げることができる。非水溶性ポリマーを使用することもできる。好適な非水溶性ポリマーも代表的な例としては、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート(低、中、もしくは高分子量)、セルロースアセテートプロピオナート、セルロースアセテートブチラート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、ポリ(エチレン)高密度、ポリ(エチレン)高密度、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリウレタン、およびそれらの混合物を挙げることができる。ある態様において、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーを混合物として一緒に用いる。そのような混合物は、放出速度を水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーの比率を変えることによって制御することができる、徐放性製剤において有用である。
温度または剪断力または他の物理的力の関数として粘度を変化させるポリマーも使用しうる。ポリ(オキシアルキレン)ポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)(PEO−PPO)、またはポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ブチレンオキシド)(PEO−PBO)コポリマー、ならびに、これらのポリマーと、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)(乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトンおよびポリバレロラクトンを包含するがそれらに限定されない)のようなポリマーとのコポリマーおよびブレンドを、合成しうるか、商業的に入手しうる。例えば、ポリオキシアルキレンコポリマーは、米国特許第3,829,506号;第3,535,307号;第3,036,118号;第2,979,578号;第2,677,700号;および第2,675,619号に開示されている。ポリオキシエチレンコポリマーは、例えば、PLURONICS(登録商標)の商標でBASFから販売されている。これらの物質は、常温以下では粘性溶液として存在するが、高い体温では凝固する。この振る舞いをする他の物質が当該技術分野において公知であり、本明細書に記載している。これらとしては、KLUCEL(登録商標)(ヒドロキシプロピルセルロース)や精製されたコンニャクグルコマンナンゴムが挙げられる。
他の好適なポリマーは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを基剤としたポリマー性のラッカー物質、通常EUDRAGIT(登録商標)ポリマーと呼ばれている(Rohm America, Inc.より販売されている)。具体的なEUDRAGIT(登録商標)ポリマーは、pH依存性またはpH非依存性となりうる多様な浸透性および水溶性を持つように選択することができる。例えば、EUDRAGIT(登録商標)RLおよびEUDRAGIT(登録商標)RSは、四級アンモニウム基の含有量が低い、塩として存在してラッカーフィルムに浸透性を付与するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのコポリマーを含むアクリル樹脂である。また、EUDRAGIT(登録商標)RLは無制限の浸透性を有しているが、EUDRAGIT(登録商標)RSは、わずかに浸透性、pH依存性を示している。対照的に、EUDRAGIT(登録商標)Lの浸透性は、pH依存性である。EUDRAGIT(登録商標)Lは、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルから合成っされたアニオン性ポリマーである。それは酸および純粋には不溶性であるが、アルカリ塩で塩を作製することによって、中性から弱アルカリ性溶液に対して溶解性を増す。pH5.0で、ポリマーは、ますます透過性になる。
高温では液体であるが体温では固体もしくはゲル状であるポリマー溶液を用いることもできる。種々の熱可逆的なポリマーが知られている。これらのポリマーとしては、上記したようにアガロース、寒天、フルセララン、ベータ−カラゲナン、ベータ−1,3−グルカン、例えば、カードラン、ゼラチン、もしくはポリオキシエチレン含有化合物などの天然のゲル作製物質が挙げられる。in vivoで使用するための熱硬化性生分解性ポリマーの具体的な例が、米国特許第4,938,763号に記載されている。その内容を引用によって本明細書に援用する。
モノマーおよび/またはオリゴマーとのポリマーブレンド
増加した生体接着性をもつポリマーはまた、無水物モノマーまたはオリゴマーを上記ポリマーの1つへ、米国特許第5,955,096号および第6,156,348号に教示されているようにして、溶解、分散、または混合することによって、取り込んで得ることができる。これらのポリマーは、粘膜のような組織表面に接着する、改良された能力を有する薬物送達システムを形成するために用いられ得る。無水物オリゴマーは、有機二酸モノマー、好ましくは、Krebs解糖サイクル中に通常見出される二酸から形成される。ポリマーの生体接着性を増大する無水オリゴマーは、約5000以下、代表的には約100〜5000ダルトンの間の分子量を有するか、または無水結合により連結され、そしてカルボン酸モノマーとの無水結合で終わる20以下の二酸単位を含む。
オリゴマーは、タンパク質、ポリサッカライドおよび合成の生体適合性ポリマーを含む広い範囲の親水性および疎水性ポリマー(上記のものを含む)中にブレンドされる、または取り込まれ得る。ある態様において、無水物オリゴマーは、上記のものなどの金属酸化物粒子と組み合せられ得、有機添加物を単独で用いたときより、多く生体接着性を改善し得る。有機色素は、それらの電気的荷電および疎水性/親水性のために、ポリマー中に取り込まれるとき、ポリマーの生体接着性を増加または減少し得る。
本明細書に使用される「無水物オリゴマー」という用語は、無水物結合によって結合し、酢酸のような一酸に無水物結合によって結合したカルボキシ末端基を有する、二酸または多酸を意味する。無水物オリゴマーは、分子量約5000未満、一般的に約100〜5000ダルトンを有するか、無水物結合によって結合した1〜約20の二酸単位を有するものとして定義される。ある態様において、二酸は、通常クレブスグリコリシスサイクルに見い出される。
オリゴマーは、二酸と過剰の無水酢酸との還流反応において生成することができる。過剰の無水酢酸を真空下に蒸発し、無水物結合によって結合した二酸単位約1〜20を含有する種の混合物である得られたオリゴマーを、例えば、トルエンまたは他の有機溶媒から、結晶化することによって精製する。オリゴマーを濾過によって収集し、例えばエーテルで、洗浄する。その反応は、無水物結合によって互いに結合した、末端カルボン酸基を有する一酸および多酸の無水物オリゴマーを生じる。
無水物オリゴマーは加水分解的に不安定である。ゲル透過クロマトグラフィーによって分析すると、分子量は、例えば、無水フマル酸オリゴマー(FAPP)については200〜400程度、セバシン酸オリゴマー(SAPP)については2000〜4000程度である。無水物結合は、一般に1700cm−1におけるカルボン酸ピークの対応する消失を伴う1750cm−1および1820cm−1における特徴的二重ピークによって、フーリエ変換赤外線分光分析法によって検出することができる。
ある態様において、オリゴマーは、例えば、米国特許第4,757,128号、第4,997,904号および第5,175,235号(それらの開示は参照として本明細書に組み入れられる)に開示されている二価酸から生成しうる。例えば、セバシン酸、ビス(p−カルボキシ−フェノキシ)プロパン、イソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸またはドデカン二酸のようなモノマーを使用しうる。
有機色素は、それらの電荷および親水性/疎水性のゆえに、ポリマーマトリックスに組み込むか、ポリマー表面に結合した際に、種々のポリマーの生物接着特性を変化させることができる。生物接着特性に影響を及ぼす色素の例は、下記のものが挙げられるがそれらに限定されない:酸性フクシン、アルシアンブルー、アリザリンレッドs、オーラミンo、アズールaおよびb、ビスマルクブラウンy、ブリリアントクレシルブルーald、ブリリアントグリーン、カルミン、シバクロンブルー3GA、コンゴーレッド、酢酸クレシルバイオレット、クリスタルバイオレット、エオシンb、エオシンy、エリトロシンb、ファストグリーンfcf、ギームザ、ヘマトイリン、インジゴカルミン、ヤーヌスグリーンb、ジェンナー染料、蓚酸マラカイトグリーン、メチルブルー、メチレンブルー、メチルグリーン、メチルバイオレット2b、ニュートラルレッド、ナイルブルーa、オレンジII、オレンジG、オルセイン、塩化パラオサニリン、フロキシンb、ピロニンbおよびy、反応性ブルー4および72、反応性ブラウン10、反応性グリーン5および19、反応性レッド120、反応性イエロー2、3、13および86、ローズベンガル、サフラニンo、スダンIIIおよびIV、スダンブラックB、およびトルイジンブルー。
ヒドロキシ置換芳香族基によって感応化されたポリマー
個別のモノマーにグラフトした、もしくは結合させた1以上のヒドロキシル基を含有する芳香族基を持つポリマーも、米国仮特許出願第60/528,042(2003年12月9日付出願)、米国特許出願第11/009,327号(2004年12月9日付出願)、および国際公開第WO2005/056708号(その内容を本明細書中に引用によって援用する)に記載のように本発明の生体接着性コーティングとして使用するのに好適である。そのようなポリマーは、生分解性ポリマーであっても非生分解性ポリマーであってもよい。該ポリマーは、疎水性とすることができる。好ましくは、芳香族基は、カテコールもしくはその誘導体であり、ポリマーは、反応性官能基を含む。その結果、ヒドロキシル置換芳香族基を容易に付着させることができる。一般的には、該ポリマーは、ポリ無水物であり、芳香族化合物は、カテコール誘導性DOPAである。これらの物質は、治療や診断に適用されていた従来の生体接着性よりも優れた生体接着性の特性を示す。
好適なポリマーの分子量とポリマーが芳香族基に置換する割合は、大いにばらつきがあってもよい。置換度は、所望の接着強度に基づいて変化する。それは10%、25%もしくは50%、または最大100%の置換である。通常、ポリマー骨格の約10乃至約40%、例えば、約20乃至約30%のモノマーが、少なくとも1つの芳香族基と置換する。得られたポリマーは、一般的に約1〜2000kDaの分子量を有している。
生体接着性物質の骨格を形成するポリマーは、生分解性ポリマーとすることができる。好ましい生分解性ポリマーの例としては、ポリヒドロキシ酸などの合成ポリマー、例えば、乳酸、グリコール酸、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、およびポリ(ラクチドーコ−カプロラクトン)、ならびに天然ポリマー、例えば、アルギン酸塩および他のポリサッカライド、コラーゲンおよびそれらの化学的誘導体(化学基、例えばアルキル、アルキレンの置換、付加、ヒドロキシル化、酸化、および当該技術分野においてルーチンで行われている他の改変)、アルブミンおよび他の親水性タンパク質、ゼインおよび他のプロラミン、ならびに疎水性タンパク質、それらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。一般に、これらの物質は、酵素的加水分解またはin vivoでの水への接触によって、また、表面もしくは大量の侵食によって分解される。前述の物質は、単独で用いてもよいし、物理的混合物(ブレンド)として、もしくはコポリマーとして用いてもよい。
好適なポリマーは、まず芳香族化合物とモノマーを結合させ、次いでポリマー化することによって作製することができる。本実施例においては、モノマーをポリマー化して、ポリマー骨格を形成することもできる。これらは生分解性ポリマーおよび非生分解性を含む。好適なポリマー骨格としては、限定されないが、ポリ無水物、ポリアラミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリスチレン、ポリエチレンポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシ酸、ポリシロキサン、ポリウレタン、およびそれらのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルエーテルおよびメタクリルエーテルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチラート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローススルフェートナトリウム塩、およびポリアクリレート、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)を挙げることができる。
好適なポリマー骨格は、公知の親水性または疎水性の生体接着性ポリマーとすることができる。親水性のポリマーとしては、CARBOPOL(登録商標)、カルボフィル、セルロースエステル、およびデキストランが含まれる。
非生分解性ポリマー、特に疎水性ポリマーは、ポリマー骨格としても好適である。好ましい非生分解性ポリマーの例としては、エチレンビニルアセテート、ポリ(メタクリル酸)、無水マレイン酸と他の不飽和ポリマー化モノマーとのコポリマー、例えば、ポリ(ブタジエン無水マレイン酸)、ポリアミド、それらのコポリマーおよび混合物、ならびにデキストラン、セルロースおよびそれらの誘導体を挙げることができる。
疎水性ポリマー骨格としては、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、およびポリエステル、例えば、ポリカプロラクトンが挙げられる。好ましくは、該ポリマーは、容易に水に溶解しないように十分疎水性である。例えば、ポリマーは、約1%w/w未満の水に、好ましくは室温もしくは体温で、0.1%w/wの水に溶解し得る。最も好ましい態様において、ポリマーは、ポリ無水物、例えば、(ブタジエン無水マレイン酸)もしくは無水マレイン酸の他のコポリマーであってもよい。ポリ無水物は、Dombらの米国特許第4,757,128号(その内容を引用によって本明細書援用する)に記載の方法で、ジカルボン酸から作製することができる。好適な二酸としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族−脂肪族ジカルボン酸、芳香族の組み合わせ、脂肪族および芳香族−脂肪族ジカルボン酸、芳香族および脂肪族複素環式ジカルボン酸、ならびに脂肪族ジカルボン酸、芳香族−脂肪族ジカルボン酸、および複数のフェニル基の芳香族ジカルボン酸との組み合わせにおける芳香族および脂肪族複素環式のジカルボン酸が含まれる。好適なモノマーとしては、セバシン酸(SA)、フマル酸(FA)、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)、イソフタル酸(IPh)、およびドデカンジオン酸(DD)が含まれる。
広範囲の分子量が生体接着性物質の骨格を形成するポリマーにとって好適である。分子量は、約200Da(オリゴマーの場合)としてもよく最大約2,000kDaとしてもよい。好ましくは、ポリマーは、少なくとも1,000Daの分子量、より好ましくは、2,000Da、最も好ましくは、ポリマー最大20kDaもしくは200kDaの分子量を持つことができる。ポリマーの分子量は、最大2,000kDa(例えば、20kDa乃至1,000kDaもしくは2,000kDa)とすることもできる。
ポリマー上の置換の範囲は、用いられるポリマーおよび所望の生体接着性強度によって大いに変わり得るし、それに依存する。例えば、DOPAで100%置換されたブタジエン無水マレイン酸コポリマーは、鎖長ごとに、67%置換エチレン無水マレイン酸コポリマーと同数のDOPA分子を持つ。一般的に、ポリマーの置換パーセンテージは、10%〜100%、より一般的には、20%〜30%である。
生体接着性物質の骨格を形成するポリマーとコポリマーは、一般的に、官能基と反応する反応性官能基を芳香族化合物上に有している。
骨格を形成するポリマーまたはコポリマーは、芳香族化合物中に含まれる分子と容易に反応もしくは相互作用する接触可能な官能基、例えばアミンおよびチオールを含有していることが重要である。好ましい態様において、ポリマーは、アミノ反応部分、例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸誘導体、環状無水物、アルキルハライド、アリールアジド、イソシアネート、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、またはそれらの組み合わせを含む。
好ましくは、1以上のヒドロキシル基を含有する芳香族化合物は、カテコールまたはその誘導体である。任意に、該芳香族化合物は、ポリヒドロキシ芳香族化合物、例えば、トリヒドロキシ芳香族化合物(例えば、フロログルシノール)、または多ヒドロキシ芳香族化合物(例えば、タンニン)である。カテコール誘導体は、アミノ、チオール、もしくはハライド基などの反応基を含んでいてもよい。好ましいカテコール誘導体は、1級アミンを含有する3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)である。DOPAの直接的なプレカーサであるチロシンを用いることもできる。それは、芳香族環中の1つのヒドロキシル基が欠如している点のみが異なるものである。チロシンは、DOPAの形態に変換することができる(例えば、ヒドロキシル化による)。特に好ましい芳香族化合物は、アミノ含有カテコール誘導体(例えば、ドーパミン)などのアミン含有芳香族化合物である。
2つの一般的な方法を用いてポリマー生成物を作製する。一例において、ヒドロキシル基を含有するを含む化合物をポリマーにグラフトする。この例では、ポリマー骨格は、生分解性ポリマーである。第2の例では、芳香族化合物を個別のモノマーに結合して、次いでポリマー化する。
1以上のヒドロキシル基を含有する芳香族化合物へのポリマーまたはモノマーの結合を可能にするあらゆる化学的性質を用いることができる。例えば、芳香族化合物がアミノ基を含有している場合、ポリマーまたはモノマーは、アミノ反応基を含有する。ポリマーまたはモノマーへのこの修飾は、求核付加もしくは求核置換反応、例えば、芳香族化合物中のアミノ基とポリマーまたはモノマーとの間のMichael型付加反応によって行われる。結合反応において、さらに別の手順を用いることもできる。例えば、カルボジイミドと混合無水物に基づく手順は、カルボン酸またはリン酸塩とアミノ基との間の安定したアミド結合を作製する。二官能アルデヒドは、一級アミノ基と反応し、ジビニルスルホンは、アミノ、チオール、ヒドロキシ基との反応を促進する。
芳香族化合物を標準的な技法を用いてポリマーにグラフトし、生体接着性物質を作製する。1つの例においては、L−DOPA中の遊離アミンとコポリマー中の無水マレイン酸結合とを反応させることによって、L−DOPAを無水マレイン酸コポリマーにグラフトする。
種々の異なるポリマーを、上記のように生体接着性物質の骨格として用いることができる。さらに代表的なポリマーとしては、無水マレイン酸とエチレン、ビニルアセテート、スチレン、もしくはブタジエンとの1:1ランダムコポリマーが挙げられる。さらに、チロシンもしくはカテコールの誘導体などの、ヒドロキシ置換基をもつ、芳香環を含有する他の多くの化合物もこの反応に用いることができる。
別の態様において、ポリマーは、アミンに付着した芳香族基を含有する化合物の、アミノ反応基を含有する1以上のモノマーへの接合付加によって作製される。好ましい態様において、モノマーはアクリレートであり、または、ポリマーはアクリレートである。例えば、モノマーは、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、または1,3−プロパンジオールジアクリレートなどのジアクリレートとすることができる。結合反応の例としては、モノマーと芳香族基を含有する化合物は、それぞれ有機溶媒(例えば、THF、CHCl、メタノール、エタノール、CHCl、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、CCl、グライム、ジエチルエーテル、など)に溶解させる。得られた溶液を結合し、反応混合物を加熱し、所望のポリマーを得る。合成されたポリマーの分子量は、合成に用いる反応条件(例えば、温度、開始物質、濃度、溶媒など)によって制御することができる。
例えば、1.6Mの濃度を持つ1,4−フェニレンジアクリレートまたは1,4−ブタンジオールジアクリレートなどのモノマー、およびDOPAまたは他の芳香族分子を含有する一級アミンをそれぞれDMFもしくはDMSOなどの非プロトン溶媒に溶解して、2つの溶液を作製する。該溶液を混合して、1:1モル比ジアクリレートとアミン基の混合物を得る。そしてアミン基を56℃まで加熱し、生体接着性物質を作製する。
コーティング
好ましい生体接着性コーティングは、水和作用によって容易に膨潤しないので、Duchene et al.によって開示されているポリマーと比較して、胃腸管を通しての運動(例えば、消化した食物の運動)を実質的に阻害したり、遮断したりしない。一般的に、水和作用によって容易に膨潤しないポリマーは、1以上の疎水性の領域、例えば、ポリメチレン領域(例えば、(CH、但し、nは4以上である)を含む。ポリマーの膨潤は、ポリマーが水溶液に曝されたときの体積の変化を測定することによって調べることができる。水和作用によって容易に膨潤しないポリマーは、十分に水和したとき、体積の膨潤は50%以下である。好ましくは、そのようなポリマーは、体積の膨潤は25%未満、20%未満、15%未満、10%、または5%未満である。さらにより好ましくは、生体接着性コーティングは、好粘液性(mucophilic)である。
ある態様において、水和作用によって容易に膨潤しないポリマー(例えば、疎水性ポリマー)は、膨潤量またはポリマー中の水和作用が実質的に生体接着性を妨害しない場合、膨潤するポリマー、または親水性基剤(例えば、Carbopol(商標登録)、ポリ(アクリル酸)、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、親水性の薬物、イオン化および非イオン化界面活性剤、糖類、NaCl、崩壊剤などの小有機酸)と混合またはブレンドする。一般的に、膨潤可能なポリマーの量、または親水性の基剤は、膨潤可能なポリマーを十分に水和して、その生体接着性を高めるように選択される。膨潤可能なポリマーの、膨潤可能でないポリマーもしくは親水性物質に対する比率は、所望の量の膨潤(例えば、より速く接着させるために)と、持続性の長い接着を組み合わせるコーティングとするために変化させることができる。例えば、5:1乃至1:5、または2:1乃至1:2とすることができる。例えば、膨潤可能ポリマーおよび/または親水性の物質は、約1重量%〜約30重量%の生体接着性コーティングを含むことができる。
ある態様において、生体接着性ポリマーコーティングは、水和作用によって実質的に膨潤しない内側の生体接着性の層、および容易に水和し、任意に生体侵食され得る外側の生体接着性の層(例えば、Carbopol(商標登録)を含むもの)の2層からなる。
上記生体接着性ポリマーは、1以上の可塑剤または熱可塑性ポリマーと混合することができる。そのような糖類は一般に、ポリマーコーティングの脆弱性を高めたり、および/または減少させたりする。可塑剤の例としては、セバシン酸ジブチル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、アジピン酸ジプチル、ジブチルフマレート、ジエチルフタレート、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマー、例えば、Pluronic(登録商標)F68、およびジ(セク−ブチル)フマレートが挙げられる。熱可塑性ポリマーの例としては、ポリエステル、ポリ(カプロラクトン)、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、メチルメタクリレート(例えば、EUDRAGIT(登録商標))、セルロース、およびそれらの誘導体、例えば、エチルセルロース、セルロースアセテートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および大分子量ポリ無水物が挙げられる。可塑剤および/または熱可塑性ポリマーを生体接着性ポリマーと混合して、所望の特性を達成する。存在する場合、可塑剤と熱可塑性ポリマーの比率は、一般的に約0.5重量%乃至40重量%である。
ある態様において、生体接着性ポリマーコーティングは、ドライパッケージの状態の錠剤で、硬化シェルである。
医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)は、生体接着性ポリマーコーティングに加えて、1以上のコーティングを持つことができる(例えば、生体接着性コーティングの表面を被覆する)。これらのコーティングおよびそれらの厚みは、例えば、生体接着性コーティングが接触する胃腸管の場所を制御するために使用することができる。ある例において、更なるコーティングは、生体接着性コーティングが口または食道に接触するのを防ぐ。さらに別の例において、更なるコーティングは、小腸にいたるまで、インタクトな状態である(例えば、腸溶性のコーティング)。
コーティングの例としては、メチルメタクリレート、ゼイン、セルロースアセテート、セルロースフタレート、HMPC、糖類、腸溶性のポリマー、ゼラチン、およびシェラックが挙げられる。親水性のポリマー(例えば、HPMCもしくはゼラチン)の層またはコーティングによって、生体接着性の層の早期の曝露、または錠剤の口中での溶解を防ぐことができる。
本発明の錠剤に用いられるコーティングは、一般的に、コーティングが薬物を透過し得るように孔形成を含んでいる。
本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)は、種々の方法によってコーティングすることができる。好適な方法としては、圧縮コーティング、流動床もしくはパンでのコーティング、およびホットメルト(押し出し)コーティングが含まれる。そのような方法は、当該技術分野の当業者に公知である。
多層錠剤
本発明はまた、第1、第2、および第3の層を含む多層錠剤を含む。各層は、1以上の薬物および1以上の添加剤を含んでいる。第1層は、錠剤(table)のコアを形成し、第2層は、第1層の一方の面に隣接し、第3層は、第1層の反対側の面に隣接している。錠剤の少なくとも1層は、疎水性の添加剤を含み、錠剤の少なくとも1つの薬物は、吸湿性、潮解性、またはその両方を示す。好ましくは、錠剤の少なくとも1つの層には、少なくとも1つの吸湿性および/または潮解性の薬物および少なくとも1つの疎水性の添加剤が存在する(例えば、一緒にブレンドする)。
例示する疎水性の添加剤は、セルロース、特にセルロースアセテートおよびエチルセルロース、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセロール、脂肪酸およびそれらの塩、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、油脂、コロイド状2酸化ケイ素、およびタルクを含む。
そのような錠剤は、錠剤からの薬物の放出を少なくとも部分的に律速するのに有効な量で、任意に1つの添加剤を含む。一般的には、律速添加剤(例えば、律速ポリマー)を含む錠剤は、約30重量%乃至約60重量%の律速添加剤を含有している。別法として、律速添加剤の量は、錠剤中の薬物の量に対して関連付けて選択される。そのようなケースにおいて、律速添加剤の量は、薬物の重量の約2倍乃至約5倍、例えば、約2倍乃至約3倍である。
一般的に、内層および外層は、各成分(薬物を含む)を異なる比率で含有している。それによって、グラジエントタイプの組成を形成している。ある態様において、第1(内)層が最大の重量パーセントの薬物を含んでいる。したがって、第2および第3層、およびさらに別の層は、より少ない量の薬物を含むことになる。3層以上をもつ多層錠剤(例えば、第4および任意に第5層)、更なる層は、例えば、薬物を含有しないようにすることもできる。または、連続的に少なくした量の薬物を含有することもできる。一般に、第1層、すなわち、内層から同じだけ離れた層は、ほぼ等しい量の薬物を含むことになる。その結果、錠剤は、内層に対して、ほぼ対照である。2以上の薬物を含む錠剤の場合は、薬物は1以上の層に存在することができる。または異なる層が別々の層に存在することができる(すなわち、薬物は1つの層において混合される)。
GITの頬側および舌下領域における吸収を必要とする薬物の場合、生体接着性の錠剤および特に生体接着性のマルチ粒子およびナノ粒子が望ましい。これらの部位で吸収される薬物は、肝臓によるファーストパスメタボリズム、およびGIT酵素や、胃および小腸の厳しいpH条件での崩壊を回避する。頬側および舌下領域で吸収される薬物は、吸収開始直後、一般的に投与の数分内から効果を発揮する。特に好適な生体接着性粒子は、高速に溶解する剤形中の粒子、例えば、投与後30秒で崩壊して、生体接着性粒子を放出するOraSolv(Cima Labs)である。標的放出プロファイルは、速放(IR)およびゼロ次徐放(CR)カイネティクスおよび一次CRカイネティクスの混合物を含む。頬側および舌下領域を標的とする医薬品製剤を、食道を通る前に崩壊するように構築することが好ましい。
GITの胃および小腸上部における吸収、および/またはこれらの部位への局所送達を必要とする薬物の場合、特に狭い吸収ウインドウをもつ薬物、生体接着性、胃で保持される薬物の送達システムが選択肢となる。生体接着性錠剤およびマルチ粒子を製剤して、摂食状態で、3時間を超えて、任意に4、5または5時間を超えて持続するように製剤される。これらのシステムからの薬物放出プロファイルを胃で残留時間に合うように調整して、カプセル化された薬物の85%より多くが胃での残留時間内に放出されるようにした。標的化放出プロファイルは、標的放出プロファイルは、速放(IR)およびゼロ次徐放(CR)カイネティクスおよび一次CRカイネティクスの混合物を含む。
小腸のみでの吸収または局所送達を必要とする薬物の場合、腸溶性のコーティングが施された生体接着性薬物の送達システムが好ましい。このようなシステムは、クローン病患者の治療薬の局所送達に特に好適である。腸溶性のコーティングが施された生体接着性錠剤およびマルチ粒子は、腸溶性のコーティングによって、胃での持続時間を摂食状態で3時間未満、絶食状態で1時間未満とし、そこではカプセル化された薬物の10%未満が放出されるようにする。胃を空にした後、腸溶性のコーティングが放散され、下にある生体接着性コーティングが現れる。腸溶性のコーティングの放散は、一般的にpHおよび/または持続時間によって制御される。制御にpHを利用した一般的な腸溶性のポリマーは、Rohm America社製造のEudragitポリマーである。Eudragit L100−55は、pH5.5以上で溶解し、一般的に十二指腸で認められる。Eudragit L100は、pH6.0より大きいときに溶解し、一般的に空腸で認められる。Eudragit S100は、pH7.0より大きいときに溶解し、一般的に回腸および回盲結合部で認められる。
生体接着性コーティングを剥き出しにすることを制御するために時間を用いてもよい。摂食状態で剤形を投与後3時間、絶食状態で剤形を投与後1〜2時間で溶解するコーティングが小腸への生体接着性送達システムとして好適である。可溶性ポリマー層の侵食は、タイムトリガーな腸管溶解を達成するための1つの手段である。HPMC、HPC、PVP、PVAなどのポリマー、または上記組み合わせは、遅延させた腸溶性のコーティングとして使用することもできる。そして、コーティングが溶解するタイミングは、コーティング重量をより大きくすることによって増加させることができる。
別法として、コーティング(例えば、PEG、PVA、糖類、塩類、界面活性剤類、クエン酸トリエチル、トリアセチンなど)に可溶性の孔形成を、0.5〜50%w/wの範囲のコーティングのレベル、最も好ましくは5〜25%w/wの範囲のコーティングのレベルで導入することによって、不溶性のポリマー、例えば、セルロースアセテート、エチルセルロースの不透過コーティングを、徐放/修正化放出(DR/MR)のための腸溶性のコーティングとして使用することができる。
破裂可能なコーティングシステム、例えば、Pulsincapも好適である。これは、親水性ポリマーの膨潤の浸透力を用いて、腸溶性の膜を破裂させ、下にある生体接着性コーティングを剥き出しにするものである。
小腸の標的放出プロファイルは以下のとおりである。投与後3時間で薬物放出10%以下。IRカイネティクス、ゼロ次CRカイネティクス、一次CRカイネティクス、およびIRカイネティクスとCRカイネティクスの組み合わせ。
小腸下部および結腸のみにおける吸収または局所送達を必要とする薬物の場合、腸溶性のコーティングが施された生体接着性薬物の送達システムが好ましい。そのようなシステムは、クローン病や潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患(IBD)の患者の治療薬の局所送達に特に好適である。腸溶性のコーティングが施された生体接着性錠剤およびマルチ粒子は、腸溶性のコーティングによって、胃での持続時間を摂食状態で3時間未満、絶食した状態で1時間未満とし、そこではカプセル化された薬物の放出が10%未満となるようにする。胃を空にした後、腸溶性のコーティングが放散され、下にある生体接着性コーティングが現れる。放散を制御する好適な手段としては、pH、持続時間、結腸細菌の酵素活性が含まれる。pHを用いて、胃腸管下部へ送達するための一般的な腸溶性のポリマーは、Rohm America社製造のEudragitポリマーである:Eudragit L100およびFSは、pH7.0より大きいときに溶解し、一般的に回腸および回盲結合部で認められる。
生体接着性コーティングを剥き出しにすることを制御するために時間を用いてもよい。絶食状態で剤形を投与した場合4〜5時間、摂食状態で剤形を投与した場合5〜8時間で溶解するコーティングが小腸株および結腸への生体接着性送達システムとして好適である。可溶性ポリマー層の侵食は、タイムトリガーな腸管溶解を達成するための1つの手段である。HPMC、HPC、PVP、PVAなどのポリマー、または上記組み合わせは、遅延させた腸溶性のコーティングとして使用することもできる。そして、コーティングが溶解するタイミングは、コーティング重量をより大きくすることによって増加させることができる。
別法として、不溶性のポリマー、例えば、セルロースアセテート、エチルセルロースの不透過コーティングを、コーティング(例えば、PEG、PVA、糖類、塩類、界面活性剤類、クエン酸トリエチル、トリアセチンなど)に可溶性の孔形成を、0.5〜50%w/wの範囲のコーティングのレベル、最も好ましくは5〜25%w/wの範囲のコーティングのレベルで導入することによって、徐放/修正化放出(DR/MR)のための腸溶性のコーティングとして使用することができる。
また、結腸細菌による酵素的な分裂に感受性のあるポリマーのコーティングもまた、回腸遠位部および上行結腸への放出を確実にするためのである。カルシウムペクチネート(calcium pectinate)などの物質を錠剤およびマルチ粒子へのコーティングとして塗布し、細菌活性によって胃腸管下部で崩壊するようにすることができる。生体接着性マルチ粒子をカプセル化するためのカルシウムペクチネートカプセル剤を利用することもできる。
胃腸管下部の標的放出プロファイルは以下のとおりである。投与後4〜5時間(絶食状態)および5〜8時間(摂食状態)で薬物放出10%以下。IRカイネティクス、ゼロ次CRカイネティクス、一次CRカイネティクス、およびIRカイネティクスとCRカイネティクスの組み合わせ。
いくつかの局面において、本発明の多層錠剤は、in vitro 試験および/またはin vivo 投与において、ほぼゼロ次の薬物放出を示す。胃への送達が望ましい製剤の場合、ゼロ次の放出は、平均約6〜12時間、特に、8〜10時間生じる。胃および小腸への送達が望ましい製剤の場合、ゼロ次の放出は、平均約8〜16時間、特に、10〜14時間生じる。小腸および結腸への送達が望ましい製剤の場合、ゼロ次の放出は、平均約16〜30時間、特に、22〜26時間生じる。
多層またはグラジエント錠剤は、いくつかの方法で作製することができる。ある態様において、錠剤は、少なくとも1層の固体内層および2層の固体外層を含み、各層は、1以上の薬物および1以上の医薬品ポリマーおよび/または医薬品添加剤を含んでいる。グラジエント効果を出すために、薬物および/または添加剤の量を内層と外層の間で変える。例えば、1以上の内層は、錠剤中の薬物の総量の少なくとも34%および1以上のポリマーおよび/または添加剤を含み、2つの外層のそれぞれは、錠剤中の薬物の総量の33%以下および1以上のポリマーおよび/または添加剤を含むことができる。そのような錠剤を用いて、別々の層に異なる薬物を導入することによって、異なる薬物を異なる時間に放出を開始させることもできる。
別の態様において、多層錠剤は、固体内層と2つの固体外層を持ち、各層は、1以上の薬物および1以上の医薬品ポリマーまたは医薬品添加剤を含んでおり、少なくとも1つのポリマーまたは添加剤は疎水性である。この実施例の錠剤は、ほぼゼロ次または線形の放出カイネティクスを提供することが好ましい。さらに別の態様において、多層錠剤は、腸溶性のコーティングが施されている。
1層以上の錠剤は、薬物の胃腸管(GIT)粘膜裏打ちへの透過性を高めるために透過エンハンサーを含むことができる。吸収エンハンサーは、薬物の胃腸管上皮への取り込みを促進する。吸収エンハンサーは、薬物が、もともと放出される水溶性環境、および/または、腸壁の粘膜層の裏打ちの親油性環境において溶解する能力を高める化合物を含む。吸収エンハンサーは、腸管細胞の膜外部の疎水性領域の障害を増加させ、膜タンパク質の濾過を増加させ、その結果、経細胞輸送を増加させ、または、傍細胞輸送を増加させるために細胞間の孔の半径を広げる化合物をさらに含む。吸収エンハンサーの例としては、カプリン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ(酢酸)(EDTA)、クエン酸、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、酒石酸、およびGI透過を増進することが知られている他の物質が含まれる。他の好適な吸収エンハンサーとしては、サリチル酸ナトリウム、ナトリウム5−メトキシサルチレート、インドメタシン、ジクロフェナク、ポリオキシエチレンエーテル、ラウリル硫酸塩ナトリウム、4級アンモニウム化合物、デオキシコール酸塩ナトリウム、コール酸塩ナトリウム、オクタン酸、デカン酸、グリセロール−1−モノオクタノエート、グリセロール−1−モノデカノエート、DL−フェニルアラニン、アセト酢酸エチルエナミン、クロルプロマジン、D−ミリストイル−L−プロピル−L−プロリル−グリシネート、コンカナバリンA、DL−α−グリセロホスフェート、および3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ジホスホネートが挙げられる。
別法として、または、追加として、薬物の拡散または錠剤の胃腸管への露出に対する更なる制御を提供するために錠剤をコーティングする(例えば、腸溶性コーティングによる)。拡散限定コーティングは、薬学的に受け入れられたポリマーコーティング材料、例えば、メチルメタクリレート(Eudragits(登録商標)、Rohm and Hass;Kollicoat(登録商標)、BASF)、ゼイン、セルロースアセテート、セルロースフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースとすることができる。該コーティングは、流動床コーティング、パンコーティングおよび浸漬コーティングを含む種々の技法を用いて塗布することができる。
本発明の多層錠剤は、上記したように、生体接着性コーティングを含むことができる。
別々に、または、生体接着性コーティングと組み合わせて、生体接着性(例えば、上記のもの)を錠剤の1以上の層に含むことができる。
本発明の多層錠剤は、容易に調製される。ある実施例において、薬物を、圧縮できる糖と混合し、圧縮できる糖を純粋に溶解して得たバインダー溶液を用いて粒状にする。乾燥させて、粒剤を異なる量のコロイド状2酸化ケイ素(Cabosil(登録商標))およびステアリン酸マグネシウムと混合する。粒剤を、比率を変えたステアリン酸またはモノステアリン酸(例えば、30、50、70%)と混合し、次いで多層錠剤成形機(例えば、KorschまたはFette錠剤成形機)に投入して、三層錠剤を産出する。薬物粒剤の量を変えた(中心層の濃度を高くし、それに続くそれぞれの外層において濃度を減らしていく)更なる層を容易に追加することができる。いくつかの態様において、最外層は薬物を含まない。
図1は、第1層(14)、第2層(16)および第3層(18)を含む、三層のカプセル形状の錠剤(10)を示す。カプセル形状の錠剤(10)を生体接着性ポリマー性プラグ(12)で部分的に被覆し、薬物層端部(20aおよび20b)が薬物放出用に残るようにしている。3層間の薬物濃度勾配によって、所定の混合放出プロファイルが達成される。
一般的な特徴
添加剤
本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)は、1以上の添加剤、担体または希釈剤を含有している。これらの添加剤、担体または希釈剤は、例えば、医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)の崩壊率を制御するために選択することができる。特に、生体接着性錠剤の場合、錠剤の含有物を放出させる時間を、胃腸管での滞留時間未満、または小腸および/または大腸での滞留時間未満にすることが有利である。ある態様において、錠剤の放出時間は、胃腸管、小腸および/または大腸滞留時間の少なくとも25%、胃腸管、小腸および/または大腸滞留時間の少なくとも50%、胃腸管、小腸および/または大腸滞留時間の75%である。
本発明の医薬品組成物を調製および投与するために、従来用いられていた、活性物質に対して不活性であり、好ましくは、望ましい特性をもつ各態様における生体接着性を妨害しない、あらゆる賦形剤または担体を使用してもよいことを当該技術分野の当業者は理解するであろう。そのような賦形剤および担体の例が、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版(1990)に記載されている。その開示を引用により本明細書に援用する。
患者に使用される本発明の製剤は、任意に1以上の許容される担体もしくはその希釈剤とともに、また、任意に他の治療成分とともに薬物を含む。担体もしくはその希釈剤は、他の成分と共溶性があり、レシピエントにとって有害でないという意味において、「許容できる」ものでなければならない。製剤は、単位剤形で存在することが好都合であり、それは、薬学の技術分野において公知のあらゆる方法で調製することができる。全ての方法は、薬物と、1以上の副成分を構成する担体もしくは希釈剤とを結合するステップを含む。一般に、該製剤は、薬物と担体とを均一かつ緊密に接触させ、ついで必要であれば、生成物を単位用量に分けることによって調製される。
担体および希釈剤の例としては、薬学的に許容されるヒドロゲル、例えば、アルギン酸塩、キトサン、メチルメタクリレート、セルロースおよびそれらの誘導体(微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース)、アガロースおよびPovidone(登録商標)、カオリン、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、スクロース、密度コントロール物質、例えば、硫酸バリウムおよび油脂類、溶解エンハンサー、例えば、アスパラギン酸、クエン酸、グルタミン酸、酒石酸(tartartic acid)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、グリシン、トリシンおよびTRISをあげることができる。
特定の多層錠剤の場合、錠剤は一般的に、少なくとも1つのポリマーまたは添加剤を含む。ポリマーは、分解可能なものであってもよいし、または分解可能でなくてもよい。好適な分解可能なポリマーの例としては、ポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)(p[LA])、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(p[LGA])、ポリ(カプロラクトン)、(p[CL]);ポリ無水物、例えば、ポリ(フマル酸−co−セバシン酸無水物)(p[FASA])(モル比20:80乃至90:10)、ポリ(カルボキシフェノキシプロパン−co−セバシン酸無水物)(p[CPPSA])、ポリ(アジピン無水物)(p[AA]);ポリオルトエステル;ポリアミド;およびポリイミドが挙げられる。他の好適なポリマーとしては、ヒドロゲルベースのポリマー、例えば、アガロース、アルギン酸塩およびキトサンが挙げられる。好適な分解可能でないポリマーとしては、ポリエチレン、ポリビニルフェノール、およびポリメチルメタクリレート(Eudragits(登録商標)が挙げられる。
添加剤、担体または希釈剤は、医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)が粘膜から剥がれるまでの時間を制御して選択することができる。特に、1以上の崩壊剤を添加することによって、医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)が剥がれる時間が短縮される。別法として、または崩壊剤との組み合わせて用いることによって、粘膜−錠剤/デバイス接着を阻害する薬剤を用いて、剤形が剥がれるまでの時間を制御することができる。
好適な添加剤としては、安定剤、 可塑剤、湿潤剤、粘着防止剤、粘着剤、発泡剤、消泡剤、バインダー、フィラー、増量剤、風味付剤、分散剤、表面活性剤、可溶化剤、溶解阻害剤、グリダント(glidants)、潤滑剤、接着防止剤、接着剤、コーティング、保護剤、溶媒、懸濁化剤、結晶化インヒビター、再結晶化インヒビター、崩壊剤、酸味添加剤、希釈剤、アルカリ化剤、酸化防止剤、保存料、着色料、電解液、溶媒、逆溶剤、促進剤、および/または遅延剤が挙げられる。例としては、アルギン酸塩、キトサン、メチルメタクリレート(Eudragits(登録商標)、セルロース(特に微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースなど)、アガロース、Povidone(登録商標)、ラクトース、微結晶性セルロース、カオリン デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセロール、スクロース、圧縮可能な糖、ラクトースおよび硫酸バリウムが挙げられる。
薬物および活性物質
本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)には、種々の薬物が含まれる。そのような医薬品剤形は、一般的には、少なくとも1mgの薬物を含有する。これらの医薬品剤形は、少なくとも2mg、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも25mg、少なくとも50mg、少なくとも100mg、少なくとも500mg、または少なくとも1000mg(例えば、2mg乃至1000mg)の薬物を含むことができる。
本明細書において用いるのに好適な薬物は、小有機分子(例えば、2000Da以下、例えば、1000Da以下の分子量を持つ非ポリマー分子)、ペプチド、またはポリペプチド、および核酸とすることができる。
薬物をバイオ医薬品分類システム(Biopharmaceutical Classification System:BCS)を用いて分類することができる。それによれば、経口投与の医薬品を、腸管細胞へのその溶解性および吸収性に従って、4つのクラスに分類している。BCSによれば、薬物は以下のように分類される:
クラスI−高透過性、高溶解性
クラスII−高透過性、低溶解性
クラスIII−低透過性、高溶解性
クラスIV−低透過性、低溶解性
これら4つのクラスの薬物を本発明において用いることができる。
この分類システムの関心は、薬物開発の早期およびライフサイクルを通しての生成物の変化への管理に適用されるものに大いに依存している。薬物開発の初期段階で、特定の薬のクラスに関して知ることは、その開発を続けていくか、中止するかを決める上で重要なファクターとなる。
PCBシステムのクラスIの薬物は、胃腸(GI)管で高溶解性、高透過性を示す。ときに、BCSクラスIの薬物は、溶解速度を増加させるために、2ミクロン未満の大きさに微細化されることがある。
クラスIIの薬物は、特に不溶性、もしくは溶解が遅いが、胃および/または腸の裏打ちによって、着実に溶液から吸収される薬物である。したがって、吸収を達成するためには、GI管の裏打ちへ長時間曝露されている必要がある。
クラスIIの薬物として知られるものの多くは、疎水性であり、歴史的に投与が難しかった。さらに、疎水性ゆえに、薬物服用時に患者が接触状態であるか、絶食状態であるかによって、吸収に有意なばらつきが認められる傾向がある。このことが、血漿濃度のピークレベルに影響を来たし、用量の計算や容量レジメンを複雑なものにしていた。
クラスIIIの薬物は、良好な水溶性と不良なGI透過性をもつ、タンパク質、ペプチド、ポリサッカライド、核酸、核酸オリゴマーおよびウイルスといった生物学的薬剤を含む。
クラスIVの薬物は、GI透過性の悪い親油性薬物である。クラスIIIおよびクラスIVの薬物は、持続的な放出または制御された放出にとっては、問題のある場合、または好適でない場合がある。クラスIIIおよびクラスIVの薬物は、生物膜の透過性が悪いことを特徴とし、通常非経口投与される。低溶解性の薬物の非経口送達の伝統的な方法は、大量の水溶性希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、非水溶性溶媒、もしくは非生理的pH溶液用いる。しかしながら、これらの製剤は、薬物組成物の全身性の毒性を高めることになり得、または、投与部位で、体組織に損傷を与えることになり得る。
ある例において、薬物は、ホルモン類、酵素類、抗原類、消化補助剤、潰瘍治療薬(例えば、ヘリコバクター・ピロリに対して有効な抗生物質と任意に組み合わせた次サリチル酸ビスマス)、血圧降下剤、酵素インヒビター、抗寄生虫薬(例えば、抗マラリア薬、例えば、アトバコン)、殺精子剤、痔疾治療薬、および放射性薬用化合物から選択することができる。別の例において、薬物は、抗真菌剤(例えば、イトラコナゾール、フルオコナゾール(fluoconazole)、テトラコナゾール、ケトコナゾール、サペルコナゾール(saperconazole)、グリセオフルビン、グリセオヴェルディン(griseoverdin))である。さらに別の例では、薬物は、抗悪性腫瘍薬である。さらに別の例では、薬物は抗ウイルス薬(例えば、アシクロビア)である。本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)に導入するのに好適な他のクラスの薬物としては、ステロイド(例えば、ダナゾール)、免疫抑制剤(例えば、サイクロスポリン)、CNS活性物質、心臓血管作用薬、抗抑うつ剤、抗精神病薬、抗てんかん薬(例えば、カルバマゼピン)、運動障害治療薬(例えば、バルプロ酸およびそれらの塩)および抗片頭痛薬(トリプタン、例えば、サブトリプタン)が挙げられる。
生体接着性の医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)に組み込まれる好ましい物質は、薬物および造影剤である。薬物は、抗体、抗ウイルス剤(特に、プロテアーゼインヒビター、単独、またはHIVもしくはB型肝炎もしくはC型肝炎の処置のためのヌクレオシドと組み合せたような抗ウイルス剤)、抗寄生虫(蠕虫、原生動物)剤、抗癌剤(本明細書では、「化学的治療剤」とも呼ばれ、シスプラチンおよびカルボプラチン、BCNU、5FU、メトトレキセート、アドリアマイシン、カンプトテシン、およびタキソールのような細胞傷害性薬物を含む)、抗体およびその生物活性フラグメント(ヒト化抗体、単鎖抗体、およびキメラ抗体を含む)、抗原およびワクチン製剤、ペプチド薬物、抗炎症剤、オリゴヌクレオチド薬物(アンチセンス、アプタマー、リボザイム、リボヌクレアーゼPのための外部ガイド配列、および三重鎖形成薬剤)を組み込むことが有利である。
生体接着性の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)に用いるのに有用な他の薬物の例としては、Marion PharmacuticalsからのCarafate(登録商標)のような潰瘍処置剤、L−DOPAのような神経伝達物質、Searle PharmaceuticalsからのMetolazoneのような抗過敏性剤または塩排泄剤、Lederle PharmaceuticalsからのAcetazolamideのようなカルボニックアンハイドラーゼインヒビター、グリブリドのようなインシュリン様薬物、スルホニルウレアクラスの血液グルコース低下薬物、Brown PharmaceuticalsからのAndroid FおよびICN
PharmaceuticalsからのTestred(メチルテストステロン)のような合成ホルモン、ならびにメベンドゾール(Vermox(登録商標)、Jannsen Pharmaceutical製)のような駆虫薬が挙げられる。
抗原は、ワクチンを提供するために、1つ以上のタイプの生体接着性ポリマー中にカプセル化され、続いて、圧縮されて錠剤とされたり、または、カプセル剤もしくは薬物溶出デバイスの貯蔵層に封入され、ワクチンを形成し得る。これらワクチンは、胃腸管中で異なる滞留時間を有するように生成され得る。異なる滞留時間は、その他の因子の中でとりわけ、1つ以上のタイプの抗体(IgG、IgM、IgA、IgEなど)の産生を刺激し得る。
造影のための好ましい方法では、バリウムのような放射線不透過性物質がポリマーで被覆される。その他の放射線活性物質または磁性物質が、放射線不透過性物質の代わりに、またはそれに加えて用いられ得る。その他の物質の例は、放射線不透過性である、ガスまたはガス発生化合物を含む。
本発明の生体接着性の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)は、潰瘍性大腸炎やクローン病のような炎症性腸疾患の治療に特に好適である。潰瘍性大腸炎では、炎症は結腸に限定されている。一方、クローン病は、炎症病変は、口から直腸まで胃腸管全体に認められる。スルファサラジンは、上記疾患の治療に用いられる薬物の1つである。スルファサラジンは、結腸中で細菌によって分裂され、スルファピリジン、抗生物質、おおび5−アミノサルチル酸、抗炎症薬となる。5−アミノサルチル酸は、活性物質であり、局所的に必要とされる。この崩壊生成物(5−アミノサルチル酸)は、直接投与することがより有効である。生体接着性の薬物の送達システムを用いれば、腸管により長い時間滞留させることによって、治療効果を高めることができるであろう。クローン病の場合、細菌が結腸においてスルファサラジンを分裂させるので、5−アミノサルチル酸を腸上部に滞留させることが重要である。腸上部の炎症を治療する唯一の方法が、5−アミノサルチル酸の局所投与なのである。
ヘリコバクター・ピロリの治療に特に有用な薬物としては、アモキシシリン、テトラサイクリン、メトロニダゾール、およびクラリスロマイシンなどの抗生物質;シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、およびニザチジンなどのHブロッカー;オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール(rabeprazole)、エソメプラゾール(esomeprazole)、およびパントプロゾール(pantoprozole)などのプロトンポンプ阻害薬;ならびにサブサリチル酸ビスマスなどの胃裏打ち保護剤が含まれる。
本発明の多層錠剤は、大量の異なる薬物と適合性があるので、薬物送達に広く有用である。好適な薬物としては、バルプロ酸ナトリウム、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、抗生物質、サリチル酸メチルのような非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)を含む抗炎症剤、サブサリチル酸ビスマスのような抗潰瘍剤の単独もしくはヘリコバクター・ピロリなどの微生物に有効な抗生物質との組み合わせ、消化補助剤およびコファクター、ならびにビタミンが含まれる。
好ましい態様において、薬物は、バルプロ酸部分を含有する。バルプロ酸ナトリウムは、全身的、部分的もしくはその他のてんかんの治療に用いられる。バルプロ酸は、全身的、部分的もしくはその他の発作の治療に用いられる。バルプロ酸およびバルプロ酸ナトリウムは、一般的に1:1の用量関係を有している。治療の副作用として、不定期の鎮静状態(特に、ポリセラピーの一部として投与された場合)、運動失調および振戦および肝臓機能障害がある;体重増加を伴う食欲増進が最も一般的な副作用である。吐き気が報告されているが、食後に服用することで軽減される。成人における通常の単独療法の用量は、600mg/日を複数回に分けて投与し、最大2.5g/日に達するまでコントロールしながら、3日ごとに200mgずつ増量する。通常の用量範囲は、1〜2g/日を複数回投与する。20kg以上の小児における通常の用量は、体重に関わらず、400mg/日を複数回に分けて投与し、する。最大35mg/kg/日(複数回に分けて投与)に達するまでコントロールしながら増量する。通常の用量は、20〜30mg/kg/日(複数回に分けて投与)である。20kg以上の小児における通常の用量は、20mg/kg/日(複数回に分けて投与)である。好ましくは、本発明の多層錠剤(任意に生体接着性でコーティングする)は、バルプロエート薬物の多数日用量の投与の必要性を減らすか、またはなくす。一般的に、バルプロエート薬物は、血漿濃度をモニターする場合のみ、増量する。フェニトイン、カルバマゼピンおよびフェノバルビタールといった薬物は、バルプロ酸ナトリウムの代謝をよくするので、必要とされる用量は、5〜10mg/kg/日より多くなるであろう。これらの薬剤の投与を中止すると、発作のコントロールを続けている限り、バルプロ酸ナトリウムをわずかに減らすことができる。徐放性のバルプロ酸ナトリウム製剤は、発作をコントールができた場合のみ、1日の合計投与量が同じである限り、他の剤形に変えることが可能である。
本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤および薬物溶出デバイス)、特に多層錠剤に用いるのに好適な、疎水性の添加剤を含む薬物のクラス、吸湿性および/または潮解性薬物である。本明細書で用いられている「吸湿性」という語は、通常の相対湿度(RH)の条件、例えば、10〜50%RHにおかれたとき、有意な量の大気中の水分を吸収する物質を意味する。用語「潮解性」は、これらの条件にさらされたとき、大気中の水分を吸引および/または吸収することによって、徐々に分解および/または液状化される物質の傾向を言う。当業者は、通常の常温以上で、薬物を製造すると、吸湿性と潮解性は、大いに温度依存性を示し、吸湿性と潮解性の程度が変化することを予期するであろう。
本発明において用いるのに好適な吸湿性および/または潮解性薬物の非限定的な例としては、塩化アセチルコリン、アセチルカルニチン(acetylcamitine)、アクチノボリン、アルミニウムメチオニナト、アミノペンタミド、アミノピリンヒドロクロリド、臭化アンモニウム、吉草酸アンモニウム、アモバルビタールナトリウム、アンチオリミン、アンチモニー酒石酸ナトリウム、アンチモニーチオグリコール酸ナトリウム、アプロバルビタール、アルギニン、アスピリン、アトロピンN−オキシド、アボパルシン、アジスロマイシンモノヒドラート、メシル酸ベタヒスチン、ベタイン、塩化ベタネコール、次硝酸ビスマス、ブプロピオン、ブタミレート(butamirate)、ブタリタールナトリウム、ブトクタミド、カコジル酸、塩化カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、カルバコール、カルニチン、カスポファンギン、セルレチド、クロロフィリンナトリウム銅塩、コリンアルフォセラート(choline alfoscerate)、サリチル酸コリン、コリンテオフィリネート、シスプラチン、シチコリン、コバルトジクロライド、クロモリンジナトリウム、硫酸銅5水和物、シアノコバラミン、シクロブチロール、システインヒドロクロリド、デアミノオキシトシン(L−アイソマー、無水形)、デアノールヘミスクシナート、臭化デメカリウム、デキサメタゾンリン酸ジナトリウム塩、DL−デクスパンテノール、塩酸ジブカイン、塩酸ジクロロフェナルシン、ジクロフェナクナトリウム、クエン酸ジエチルカルバマジン、ジメチルスルホキシデム(dimethyl sulfoxidem)、ドロテバノール、エキノマイシン、エフェドリン(無水形)、エルゴタミン、エタノールアミン、フェンカミンヒドロクロリド、塩化第二鉄、ヨウ化第一鉄、フィシン、ガドベネートジメグルミン(gadobenate dimeglumine)、ゲンタマイシンC複合サルフェート、グアニジン、ヘパリン、ヘキサジメトリンブロマイド、ヘキサメトニウム酒石酸塩、ヘキソバルビタールナトリウム、ヒスタミン、ヒドラスチンヒドロクロリド、臭化水素酸ヒオスシアミン、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン、イミプラミンN−オキシド、イソメテプテンヒドロクロリド、イソソルビド、レボチロキシンナトリウム、リケニフォニンス(lichenifonnins)、硫酸ロベリン、塩化マグネシウム六水和物、3ケイ酸マグネシウム、メナジオン、メルカプトメリンナトリウム、メルサリル、メタラミノール、塩化メタコリン、臭化メタンテリン、塩化メタンテリン、メチツラールナトリウム、L−メチルドーパセスキ水和物、メチルメチオニンスルホニウムクロリド、ミリジオマイシン、ミノサイクリンヒドロクロリド、ミトキサントロンジヒドロクロリド、モルホリン、ムスカリンクロリド、シュウ酸ナフロニル、ナルセイン、ニコチン、ニコチニルアルコール、ノラトレックスド(nolatrexed)ジヒドロクロリド、オメプラゾール、オリザシジン(oryzacidin)、シュウ酸、オキソフェナルシンヒドロクロリド、パンテノール、パントテン酸(ナトリウム塩)、パパイン、ペニシラミンヒドロクロリド、ペニシリンG(カリウム塩)、ペンタメトニウムブロマイド、ペンタミジンイセチオネート、ペプシン、ペラジンジヒドロクロリド、フェノバルビタール、ナトリウム5,5−ジフェニルヒダントイン塩、フェセニレートナトリウム、ホスホクレアチン(カルシウム塩テトラハイドレート)、硫酸フィゾスチグミン、ピロカルピンヒドロクロリド、ピペミド酸、ポドフィロトキシン−ベータ−D−グルコシド、炭酸カリウム、ヨウ化カリウム、プラリドキシムメシレート、プレドニソロンリン酸ナトリウム、プロカインアミドヒドロクロリド、プロカインブチラート、L−プロリン、プロマジンヒドロクロリド、プロパミジンイセチオン酸塩、プロスタサイクリンナトリウム、臭化ピリドスチグミン、ピロナリジン(pyronaridine)、キナシリンジナトリウム(quinacillin disodium)、キノリン、放射性ヨウ化ナトリウム、レセルピン酸ジメチルアミノエチルエステルジヒドロクロリド、セコバルビタールナトリウム、フッ化銀、酢酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ナトリウムプロピオナート、ナトリウムジブネート、重クロム酸ナトリウム(VI)、亜硝酸ナトリウム、ナトリウムペントサンポリサルフェート、バルプロ酸ナトリウム、可溶性スルファメラジン、スチボカプチート、ストレプトマイシン、臭化スクシニルコリン、ヨウ化スクシニルコリン、スルファキノキサリン、スリサチンジナトリウム(sulisatin disodium)、スラミンナトリウム、クエン酸タモキシフェン、タウロコール酸、テラゾシンヒドロクロリド、チオブタバルビタールナトリウム、チオペンタールナトリウム、チカルシリンジナトリウム、2,2,2−トリクロロエタノール、トリエンチン(trientine)、トリエタノールアミン、トリファタジン(triftazin)、トラゾリンヒドロクロリド、ビンバルビタールナトリウム、バイオマイシン、ビタミンB12、ヨウ化亜鉛、およびこれらの組み合わせ、ならびに薬学的に許容されるこれらの吸湿性および/または潮解性塩およびこれらの変形が含まれる。
本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤または薬物溶出デバイス)は、複数のタイプの薬物を含むことができる。該薬物は、医薬品全体にわたって均一に分散することができ、あるいは、医薬品中に不均一に分散することもある。その結果、1つの薬物の全て、もしくは一部が第2の薬物の前に放出される。
医薬品剤形
本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、薬物溶出デバイス)は、一般的に少なくとも5mgの重さである。錠剤、カプセル剤、薬物溶出デバイスはまた、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも50mg、少なくとも100mg、少なくとも500mg、または少なくとも1000mgとすることもできる。一般に、そのような対象の重さは、10mg〜500mgである。
医薬品剤形(例えば、カプセル剤または錠剤)は、一般的に、剤形の10重量%ないし70重量%、または剤形のコアの30重量%ないし90重量%の治療的、診断的または予防的物質(一般に「薬物」と呼ぶ)を含有している。各コーティングは、1〜10重量%、好ましくは5〜6重量%、最大30重量%を構成している。該コーティングは、保持比率を制御しながら、例えば、コーティングの5〜50重量%、好ましくは20〜40重量%の比率で薬物を含む。
本発明の医薬品剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、薬物溶出デバイス)は、一般的に1方向において、少なくとも2mmの測定値である。例えば、医薬品剤形は、一方向において、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、または少なくとも20mmの測定値である。一般的に、医薬品剤形の直径は、2〜40mm、好ましくは、10〜30mm、例えば、20〜26mmである。小型の錠剤では、直径は2mm〜約5mmである。そのような医薬品剤形は、第2の方向、任意に第3の方向において、少なくとも2mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm,または少なくとも20mmの測定値を示す。例えば、本発明の医薬品剤形の大きさは、長さ約2mm〜約50mm、深さ約2mm〜約15mm、幅2mm〜約15mmである。医薬品剤形は、患者が容易に飲み込める大きさであることが好ましい。
本発明の一般的な医薬品剤形の体積は、少なくとも0.008mL、少なくとも0.01mL、少なくとも0.05mL、少なくとも0.1mL、少なくとも0.125mL、少なくとも0.2mL、少なくとも0.3mL、少なくとも0.4mL、少なくとも0.5mL、例えば、0.008mL〜0.5mLである。
好適なタイプの錠剤が、米国仮特許出願第60/605,199号(2004年8月27日出願)、第60/605,198号(2004年8月27日出願)、および第60/635,812(2004年12月13日出願)に開示されている。その内容を本明細書において引用によって援用する。
ある例において、錠剤は、1以上の適切な添加剤(例えば、HPMC、MCC、ラクトース)マトリックスを含んだ内側コアを持ち、その2つの側面を1以上の薬物を混合した生体接着性ポリマーコーティングで挟んだ三層錠剤である。好ましい生体接着性ポリマーコーティングは、DOPA−BMA(ポリ(ブタジエン−co−マレイン酸))ポリマー、およびポリ(フマル酸−co−セバシン酸)無水物とEudragit(登録商標)RS POとの混合物である。
別の例において、錠剤は、予備圧縮された薬物のインサートを含有する、長手方向に圧縮された錠剤と添加剤、任意に透過エンハンサーを含んでいる。薬物は、この錠剤の端部においてのみ放出される。それは、ゼロ次カイネティクスの結果と言える。
さらに別の例において、錠剤は、多数の生体接着性コーティングマイクロスフィアからなる。それは錠剤コアに圧縮され、次いで、生体接着性コーティングおよび1以上の更なるコーティング(例えば、腸溶性コーティング)でコーティングされている。
さらに別の例において、錠剤は、その錠剤の全ての部分を通るキャビティーを含んでいる。錠剤全体に延びるキャビティーは、両端が開いたチャネルを形成している。そのような錠剤は、例えば、圧縮コーティング(例えば、腸溶性と生体接着性を併せ持つ)を選択された全ての表面に施している。1つの例が、錠剤全体を通る、コーティングされていないチャネルを持つ錠剤である。
別の例において、対象となる製剤は、内側コアを含み、それは、1以上の薬物、添加剤および/または吸収エンハンサーを含み、圧縮されて固形、例えば、錠剤とされる。例えば、本発明の粉末薬剤を圧縮して固形とすることもできる。別の態様において、常温で純粋な形態で用いられる薬物は、液体である。いくつかの態様において、本発明の圧縮内側コアに組み込まれる液体薬物は、遊離塩基もしくは遊離酸として存在する。薬物が液体薬物(例えば、ニコチン、バルプロ酸)であるいくつかの態様においては、該薬物は、カオリン粘土もしくはCabosil(コロイド状2酸化ケイ素)といった吸収物質に組み込まれた後に、剤形に組み込まれることが好ましい。.
別の態様において、不溶性の薬物の溶解形状を、本発明の剤形に組み込む。不溶性の薬物の溶解形状は、水性ベースもしくは油性ベースである。例えば、水不溶性薬物は、有機溶媒に溶解し、その後、固体の特徴を残しながらも、特定の有機溶媒を溶解する溶媒物質、例えば、合成アルミノケイ酸塩もしくはケイ酸塩に吸収させることができる。
本発明のカプセル剤は、多くの方法で作製することができる。例えば、カプセル剤に液剤、ペースト剤、粉末剤、粒剤および/またはビーズを充填することができる。ビーズは、任意に生体接着性および/または本明細書に記載の他のコーティングで被覆することができる。生体接着性を持つカプセル剤は、表面に生体接着性を有するか、または、生体接着性を周囲状況に対して遅らせて曝露する1以上の層を用いて(例えば、カプセル剤が上部もしくは胃腸管の上部に付着するのを防ぐために)、生体接着性コーティングを施すことができる。カプセル剤は、本明細書に記載の1以上の添加剤を含むことができる。
カプセル剤または錠剤は、ゼラチンカプセル剤や錠剤といった標準的な医薬品剤形に組み込むことができる。ゼラチンカプセル剤は、000、00、0、1、2、3、4、および5の大きさで、Capsugel(登録商標)などの製造元から入手可能であるが、カプセル剤または錠剤に封入したり、経口投与することができる。同様に、カプセル剤または錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、コロイド状2酸化ケイ素(例えば、Cabosil(登録商標))などの希釈剤およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのバインダーと、乾燥ブレンドしたり、または湿潤顆粒化することもできるし、また、直接圧縮して錠剤とすることもできる。
種々の薬物溶出デバイスについて、米国特許出願第4,290,426号、第5,256,440号、第5,378,475号、第5,773,019号および第6,797,283号に記載されている。その内容を本明細書に引用によって援用する。
ある例において、薬物溶出デバイスは、有効物質を含む内側貯蔵層、本質的に有効物質を透過させない第1コーティング層、および有効物質を透過させる第2コーティング層を含む。第1コーティング層は、貯蔵層の少なくとも1部を覆うが、内側貯蔵層の少なくとも小部分は第1コーティング層で被覆されていない(例えば、第1コーティング層には1以上の孔が存在する)。第2コーティング層は、本質的に完全に第1コーティング層とコーティングされていない貯蔵層の部分を被覆する。一般的に、第1コーティング層は、非生体分解性もしくは生体分解の遅いポリマー(例えば、ポリメチレン骨格を持つポリマー)である。本発明に関しては、第2コーティングは、生体接着性ポリマーコーティングまたは、第1コーティングと生体接着性ポリマーコーティングの間のコーティングである。
別の例において、薬物溶出デバイスは、胃液と接触して膨潤するポリマーマトリクスで形成された多層コア(多くの場合、二層)を含む。多層コアの少なくとも1層は薬物を含む。ポリマーマトリクスの一部は、ポリマーマトリクスの被覆部分が膨潤するのを防ぎ、胃の収縮に耐えうるのに十分な硬さの剤形の部分を提供する不溶性物質の帯で囲まれている。その結果、薬物の放出は、デバイスにおいて1以上の孔からの薬物の漏れによって制御されている。一般的に、可溶性物質のコアおよび帯は、生体接着性ポリマーコーティングで被覆されている。
さらに別の例において、薬物溶出デバイスは、浸透性送達システムである。一般的に、そのような装置の貯蔵層は、制御された速度で半透膜および膨潤ポリマーを介して水を引き、薬物を押し出すための浸透性の物質を含有する。
本発明の薬物溶出デバイスは、そこに含有された薬物をゼロ次カイネティクスで放出させることが好ましい。
実施例
実施例1
生体接着性ポリマー外層をもつバリウム含浸三層錠剤の蛍光透視研究
三層錠剤を、0.3287X0.8937「00カプセル剤」ダイ(Natoli Engineering)に、Spheromer(登録商標)IまたはSpheromer(登録商標)IIIのいずれかの生体接着性ポリマー(333mg)、次いで、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)4000cpsと100mgの硫酸バリウムのブレンド(233mg)、次いで、Spheromer(登録商標)IまたはSpheromer(登録商標)IIIのいずれかの生体接着性ポリマー(333mg)の外層を注入して、調製した。三層錠剤は、Globepharma Manual Tablet
Compaction Machine(MTCM−1)を用いて2000psiで1秒間直接圧縮することによって調製した。錠剤を24時間絶食させたメスビーグルに投与した。該錠剤を、投与30分前に固形飼料を与えていた絶食ビーグルにも投与した(摂食群)。錠剤を蛍光透視で6時間のクールで連続的に撮像した。一般的な結果を以下に示す。生体接着性の層中にSpheromer(登録商標)IもしくはIIIを有する三層錠剤は、図2A〜Dに示されているように、絶食イヌの胃には最大3.5時間存在し、摂食イヌの胃には6時間を超えて存在した。錠剤は、食物の含有物と混合せず、それらが小腸に移動するまで、胃粘膜の同じ位置に接触して存在していた。
実施例2
外層中にSpherome(登録商標)Iを持つバリウム含浸5層構造の錠剤の蛍光透視研究
5層構造の錠剤を、0.3287X0.8937「00カプセル剤」ダイ(Natoli Engineering)に、以下の混合物を用いて調製した。
Figure 2008516893
100mgのイトラコナゾールを含有する5層構造の錠剤を、Globepharma Manual Tablet Compaction Machine(MTCM−1)を用いて3000psiで5秒間直接圧縮することによって調製した。錠剤を24時間絶食させた2匹のメスビーグルに投与した。該錠剤を、次いで投与30分前に固形飼料を与えていた(摂食)。錠剤を蛍光透視で8時間のクールで連続的に自由な状態のイヌにおいて撮像した。錠剤は、摂食イヌの胃には6時間を超えて存在し、最終的に剥がれて、投与8時間後に小腸に移動した。錠剤は、食物の含有物と混合せず、それらが小腸に移動するまで、胃粘膜のほぼ同じ位置に接触して存在していた。薬物速度論的な結果を以下に示す。
Figure 2008516893
比較によれば、イノベータ薬Sporanox(登録商標)(Johnson & Johnson)は、100mgのイトラコナゾールを含有する速放性剤形である。同じビーグルモデルで試験したところ、AUC:22,000ng/ml*hr−1、Cmax:1200ng/mlおよびTmax:1.5時間の結果が得られた。イトラコナゾールは、バイオ医薬品分類システムクラス2の薬物であり、それは無視し得るほどの溶解性と良好なGI透過性を有している。それは、pH<3.5で水にわずかに溶解し、GIの十二指腸および上部空腸への吸収の部位を限定する。
明らかに、本実施例に記載の胃で保持される生体接着性製剤は、十二指腸および上部空腸の吸収部位へ、イトラコナゾールを、時間を延長して送達する。蛍光透視で認められた8時間の胃腸管残留時間は、イトラコナゾールの血漿濃度がTmax:8時間に達成することと一致する。
実施例3
バルプロ酸ナトリウム錠剤
2つの異なるロットのバルプロ酸ナトリウム生体接着性錠剤の製剤を、濃度勾配に基づいて、調製した。第1のロットの錠剤は、生体接着性ポリマーとしてL−Dopa/BMA(Spheromer(登録商標)III)を用いた。一方、第2のロットの錠剤は、p(FA:SA)生体接着性ポリマーを基礎とした。エチルセルロースを生体非接着性ポリマーとして用いた更なる錠剤ロットも調製した。以下の顆粒形成ステップと混合ステップを用いて3つのロットを作製した。
顆粒形成
180.0gのバルプロ酸ナトリウム(Katwijk Chemie BV)を、10gのエチルセルロース(10−FP、NF Premium)と10gのポリビニルピロリドン、K−15を667mLのエタノールに溶解することによって調製しておいたバインダー溶液を用いて顆粒状にした。バインダー溶液をベンチトップ流動床スプレーコーティングユニット(Vector Corp.モデルMFL.01)中で薬物上に塗布した。以下のプロセスパラメータを用いた。流体床Nガス流=60〜140LPM;スプレーノズル圧力=15psi;インレット温度=50℃;排気温度=21〜26℃;ポンプスピード=40rpm;スクリーンサイズ=「I」;ビュルスター区画(Wurster partition)=中;スプレー=下スプレー;およびスプレーノズル=中。顆粒を乾燥させ、1%コロイド状2酸化ケイ素とブレンドした。顆粒を、DesiPak乾燥剤を含有した1リットルのガラスポット内に使用するまで保存した。
混合
顆粒状にされたバルプロ酸ナトリウムを種々の添加剤とブレンドし、バルプロ酸ナトリウムの内層および外層組成物を下記のようにして達成した。顆粒形成は、まず、混合器中で5分間、エチルセルロースまたはSpheromer(登録商標)I(p(FA:SA))またはSpheromer(登録商標)III(BMAにDOPAをグラフトした)とブレンドした後、ステアリン酸マグネシウムとさらに5分間ブレンドした。
Figure 2008516893
Figure 2008516893
三層錠剤
三層錠剤を、GlobePharma
MCTM-1手動錠剤プレス上で0.328”x0.8937”カプセル形状の深い凹状パンチを用いて圧縮した。まず、200mgの外側ブレンドをダイキャビティに添加し、圧縮した。次いで、987.2mgの内側ブレンドをダイキャビティに添加し、予備圧縮した。最後に、200mgの外側ブレンドを添加し、3000psiで1秒間圧縮した。
In vitro溶解試験
三層錠剤の溶解をUSP I装置中で、pH6.8のPBSバッファーを用いて、100rpm、37℃で試験した。Spheromer(登録商標)IおよびIIIを含むロットの溶解プロファイルを図4Aおよび4Bにそれぞれ示す。これらの溶解プロファイルは、バルプロ酸ナトリウムが2段階、すなわち、速放(外層)および徐放(内層)で、錠剤から放出されることを示している。.
水分吸収試験
バルプロ酸ナトリウムの三層錠剤(n=6)、および三層錠剤のコア層のみからなる単層のマトリックス錠剤(n=6)を、45℃で相対湿度60%で最大56時間インキュベートし、一定間隔で重量の増加を測定した。その結果を図5に示す。三層錠剤は、保護のないコア層錠剤と比較して水分の吸収がかなり少なかった。L−DOPA−BMA(Spheromer(登録商標)III)およびエチルセルロースを外層に含有する錠剤による水分の吸収は、ほぼ同様であった。一方、p[FA:SA]ポリマー(Spheromer(登録商標)I)を外層に持つ錠剤による水分の吸収は、他の三層錠剤と比較してほぼ30%低かった。したがって、多層錠剤中の疎水性ポリマーは、吸湿性の薬剤を水分吸収から保護する上で重要な利点を提供するものである。
実施例4
カルビドーパ/レボドーパ錠剤
上記バルプロ酸ナトリウム錠剤と同様に、カルビドーパおよびレボドーパを含有する三層錠剤を調製した。内層および外層は以下のとおりとする。
Figure 2008516893
Figure 2008516893
内層および外層の成分について、ステアリン酸マグネシウムを除く全ての成分の重量を測定し、混合器中で5分間、完全に混合した。混合した成分をさらに5分間、ステアリン酸マグネシウムと合わせてブレンドした。800mgの三層錠剤を、実施例3に記載のようにして、標準的な0.3287x0.8937”パンチを備えたGlobePharma Manual Tablet Compaction Machine(MTCM−1)を用いて調製した。錠剤を3000psiの圧縮力で1秒間圧縮した。
生体接着性錠剤の放出プロファイルを、0.1NのHCl中で37±0.5℃で、USP II溶解装置中で、50rpmで試験した。三層錠剤のレボドーパのin vitroでの放出プロファイルを図6に示す。これにより、レボドーパ(外層から)が速放され、その後レボドーパ(内層から)が徐放されることが確認される。
実施例5
アシクロビア三層錠剤とゾビラックス(登録商標)錠剤の比較性能
アシクロビアは、中等度の溶解性と低いバイオアベイラビリティー(10〜20%)をもつことから、バイオ医薬品分類システムによればクラス3薬物に分類される。該薬物は、酸性pH(pKa2.27)でのみ可溶性となり、胃腸管から十二指腸および空腸での吸収に限定される。薬物吸収に対する食物の影響はない。経口投与3〜4時間後に、ピーク血漿濃度に達する。投与量の増加に伴い、バイオアベイラビリティーは減少する。血漿からの除去は、2.5〜3.3時間のターミナル半減期を有している。ゾビラックス(登録商標)は通常、ウイルス性の指標に基づいて、4時間ごとに200mg、または12時間ごとに400mg投与される。
三層錠剤の徐放性(CR)製剤は、内側のコアと外側の生体接着性コーティングを含む。徐放内側コアブレンドは、グルタミン酸とブレンドされた、酸味料としての機能を果たすアシクロビア(400mg)およびEthocelを含有する。外側の生体接着性コーティングは、Spheromer(登録商標)IIIおよび添加剤を含有する。内側のコアブレンドを外側の生体接着性層で挟み、直接圧縮して生体接着性の三層錠剤を作製する。
三層錠剤は、摂食状態で胃に6時間より長く滞留し、アシクロビアを下に向かって、十二指腸および空腸上部の主な吸収部位に徐放で放出するように設計されている。
6匹のメスビーグル(10〜12kg)からなるコホートに、標準的な餌を与えた30分後にゾビラックス(登録商標)または三層錠剤のいずれかを投与した。200mgのゾビラックス(登録商標)カプセル剤を6時間ごとに4回投与し、400mgのアシクロビアを含有する三層錠剤を12時間ごとに2回投与した場合と比較した。両ケースとも合計の投与量は800mgとし、24時間以上かけて投与した。48時間まで延長した適切な間隔で1mlの血液サンプルを採取した。3000rpm、4℃で10分間遠心分離を行った後、血漿を採取した。サンプルは、分析を行うまでの間、−20℃で冷凍保存した。
血清アシクロビアをLC/MS/MSによって測定した。大気圧イオン化(API)チャンバーを持つPerkin Elmer SCIEX API 365 (Sciex,
Concord, Ontario, Canada)の3段階クォッドルプル(quadropole)で、2300HTLCTMシステム(Cohesive Technologies, Franklin, MA)を用いた乱流クロマトグラフィーとタンデムマススペクトロメトリー(MS/MS)をあわせて行った。イヌ血漿におけるアシクロビアの検出の限界値は10ng/mlであった。
各イヌについて、その親イヌの下記のファーマコキネティックパラメータを計算した。アシクロビア:最大観察濃度(Cmax)、Cmaxが観察された時間(tmax)、および48時間まで行われた血漿濃度vs時間曲線(AUC)の領域(AUC0−t)。
投与が血漿の薬物レベルに及ぼす影響を図7に示す。速放性ゾビラックス(登録商標)カプセル剤および三層錠剤のAUCは、ほぼ同じであった(ゾビラックス(登録商標)で167ug/ml*hrであるのに対して、三層錠剤で164ug/ml*hrであった。n=6匹/研究)。
これらのデータから、三層錠剤の2回の投与は、ゾビラックス(登録商標)カプセル剤の2回の投与と本質的に同様に有効な、アシクロビア血漿濃度を維持することがわかる。したがって、三層錠剤は、Zorivaxカプセル剤のように頻回投与する必要がない。
実施例6
生体接着性添加剤を含有する生体接着性イトラコナゾール錠剤の薬物動態
100mgのイトラコナゾールをその中央コア層に含有する生体接着性の三層錠剤を0.3287X0.8937”カプセル形状のダイ(Natoli Engineering)を用いて、 Globepharma
Manual Tablet Compaction Machine(MTCM−1)中で、上記のように3000psiで3秒間圧縮した。錠剤の組成は以下のとおりとした。
Figure 2008516893
Figure 2008516893
三層錠剤の溶解放出プロファイルを、900mLのシミュレート胃液(SGF)中、pH1.2のUSP II装置中で、100rpmで試験した。その結果を図8に示す。ほぼ50%のイトラコナゾールが8時間以内に放出され、85%が16時間以内に放出された。対照的にSporanox(登録商標)の溶解性(約85%の薬物が放出)が60分以内に起こった。
Sporanox(登録商標)カプセル剤および生体接着性の三層錠剤(それぞれ100mgのイトラコナゾールを含有している)を、6匹の摂食状態のビーグルコホートに投与し、イトラコナゾールの血漿濃度をLC/MS/MSを用いて測定した。2つの製剤のファーマコキネティックプロファイルを図9に示す。
血漿中イトラコナゾールvs時間曲線(AUC)、最大濃度(Cmax)、およびCmaxに達するのに必要な時間(Tmax)を計算する領域およびその結果を以下の表に示している。
Figure 2008516893
生体接着性の三層錠剤は、Sporanox(登録商標)カプセル剤と類似のAUCを達成することができた。バイオ医薬品分類システムによれば、イトラコナゾールは、クラスIIの薬物であり、小腸上部でのみ吸収されることがわかっている。Sporanoxカプセル剤と比較して、生体接着性Spherazole製剤のTmaxが長いのは、徐放性製剤の特徴を示しているものであり、胃腸管での滞留を示すものである。
実施例7
コーティングされた錠剤の生体接着性
Spheromer(登録商標)II、Spheromer(登録商標)III、Gantrez(登録商標)AN−119BF(2,5−フランジオンおよびメトキシエテン)、ならびにナイロンサポート上で浸漬コーティングを行って調製した水和Carbopol(登録商標)934P NF(架橋ポリアクリル酸ホモポリマー)フィルムの生体接着性を、テクスチャーアナライザー(Texture Analyzer)TA XT II 引張試験機を用いて試験した。生物学的基剤としてブタ腸を用いた。測定したパラメーターは、破壊強度(分離のピーク力を断面積に正規化したもの)および引張作用(変形vs負荷曲線の領域)とした。
サポート上のポリマーフィルムを、濃縮ポリマー溶液で浸漬コーティングを行って乾燥させることによって調製した。Carbopol(登録商標)934P(これについては、2%(w/v)の水溶液とした)を除く全ての試験物質の20%(w/v)溶液を作製した。Spheromer(登録商標)IIを、等量のジクロロメタン中Eudragit(登録商標)RL100で溶解した。サポート上の該フィルムを浸漬後24時間空気乾燥させ、一晩凍結乾燥し、残留溶媒を除去した。
ブタ腸を少なくとも1in断面に切断し、粘膜側を上に向けて、穿孔されたプラスチックホルダー上に載せ、リン酸緩衝塩水(PBS、pH6.8)に浸漬した。各試験では、組織の新鮮な断片を用いた。ポリマーコーティングしたサポートをテクスチャーアナライザーに載せて、ブタ腸サンプルに接触させた。対照としてコーティングしていないサポートを用いた。7分後、サポートをサンプルから持ち上げ、負荷vs変形曲線をプロットした。機器の設定を以下の表に記載する。
Figure 2008516893
アッセイの結果を図10および11に示す。
本発明は、好ましい実施形態を用いて特に示し、説明したが、当該技術分野の当業者なら、種々の変形および詳細が本発明および添付の請求項の範囲を逸脱しないで成され得ることを理解するであろう。
図1は、生体接着性コーティングを有する三層錠剤を示す図である。 図2A〜2Dは、実施例1に示す三層錠剤がビーグルの胃の中に保持されている状態を示す図である。A)2.5時間(絶食状態の動物。Spheromer(登録商標)III、DOPAによって機能化されたポリ(ブタジエン−co−マレイン酸)、外層を含む錠剤)、B)3.5時間(絶食状態の動物。Spheromer(登録商標)III、外層を含む錠剤、C)5.25時間(摂食状態の動物。Spheromer(登録商標)I、ポリ(フマル酸−co−セバシン酸無水物、20:80)、外層を含む錠剤)、ならびにD)6時間(摂食状態の動物。Spheromer(登録商標)I、外層を含む錠剤)。 図3は、実施例2に示すように、摂食状態のビーグル中の、5層構造の錠剤の薬物動態を示す図である。 図4Aおよび4Bは、実施例3で調製された錠剤からのバルプロ酸ナトリウムの放出プロファイルを示す図である。 図5は、実施例3で調製されたバルプロ酸ナトリウム三層錠剤(n=6)、三層錠剤のコア層のみを含む単層のマトリックス錠剤(n=6)を用いた実験で、45℃、相対湿度60%で、最大56時間インキュベートした場合の、体重の増加を示す図である。 図6は、実施例4で調整した錠剤からのレボドーパの放出プロファイルを示す図である。 図7は、実施例5の三層錠剤(400mgアシクロビア、12時間ごとに投与、2回投与)の反復投与の効果を、ゾビラックス(登録商標)(200mg、6時間ごとに投与、4回投与)の場合と比較して示した図である。 図8は、実施例6で調製された錠剤からのイトラコナゾールの放出プロファイルを示す図である。 図9は、実施例6で調製された錠剤およびSporanox(登録商標)を、摂食状態のビーグルに投与した後のイトラコナゾールの血漿レベルを示す図である。LC/MS/MSを用いて測定したものである。 図10は、生体接着性材料、Spheromer(登録商標)IIおよびSpheromer(登録商標)IIIによる結合の破壊強度(mN/cm)を、Carbopol 934PおよびGantrez ANポリマーおよび対照(コーティングしていない基剤)の場合と比較して、示した棒グラフである。 図11は、生体接着性材料、Spheromer(登録商標)IIおよびSpheromer(登録商標)IIIによる結合を破断させるのに必要な張力作用性(nJ)を、Carbopol 934PおよびGantrez ANポリマーおよび対照(コーティングしていない基剤)の場合と比較して示した棒グラフである。

Claims (63)

  1. 薬物を経口送達するための医薬品剤形であって、胃腸管に送達される薬物と、前記剤形の少なくとも一表面に施される生体接着性ポリマーコーティングとを含み、前記コーティングは、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度を前記剤形に付与し、前記剤形は、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間、胃腸管に滞留し、その間に前記薬物が前記剤形から放出される、医薬品剤形。
  2. 薬物の経口送達のための錠剤であって、胃腸管に送達される薬物を含むコアと、前記錠剤の少なくとも一表面に施される生体接着性ポリマーコーティングとを含み、前記コーティングは、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度を錠剤に付与し、前記錠剤は、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間、胃腸管に滞留し、その間に前記薬物が前記錠剤から放出される、錠剤。
  3. 前記生体接着性ポリマーコーティングは、水和作用によって実質的に膨潤しない、請求項2に記載の錠剤。
  4. 前記錠剤は、胃腸管滞留時間未満の時間、薬物を放出する、請求項2に記載の錠剤。
  5. 前記錠剤は、少なくとも1mgの薬物を含有する、請求項2に記載の錠剤。
  6. 前記錠剤は、少なくとも5mgの重さである、請求項2に記載の錠剤。
  7. 前記錠剤は、少なくとも1つの寸法が少なくとも2mmである、請求項2に記載の錠剤。
  8. 前記錠剤は、少なくとも0.008mlの体積を有する、請求項2に記載の錠剤。
  9. 前記錠剤は、少なくとも250N/mの破壊強度を有する、請求項2に記載の錠剤。
  10. 前記生体接着性ポリマーコーティングは、合成ポリマーコーティングである、請求項2に記載の錠剤。
  11. 前記合成ポリマーコーティングは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエチレン、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのポリマー、ポリラクチド、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(フマル酸)、ポリ(マレイン酸)、ならびに、それらのブレンドおよびコポリマーから選択される、請求項10に記載の錠剤。
  12. 前記合成ポリマーコーティングは、ポリ(フマル酸−co−セバシン酸)無水物である、請求項10に記載の錠剤。
  13. 前記生体接着性ポリマーコーティングは、親水性のタンパク質を含む、請求項2に記載の錠剤。
  14. 前記生体接着性ポリマーコーティングは、ポリサッカライドを含む、請求項2に記載の錠剤。
  15. 前記生体接着性ポリマーコーティングは、疎水性の骨格と、その骨格にぶら下がる親水基を持つポリマーを含む、請求項2に記載の錠剤。
  16. 前記生体接着性ポリマーコーティングは、疎水性の骨格と、その骨格にぶら下がっている疎水基を持つポリマーを含む、請求項2に記載の錠剤。
  17. 薬物の経口送達用の錠剤であって、胃腸管に送達される薬物を含むコアと、前記錠剤の少なくとも一表面に施される生体接着性ポリマーコーティングとを含み、前記コーティングは、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度を錠剤に付与し、前記錠剤は、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間、胃腸管に滞留し、その間に前記薬物が前記錠剤から放出され、また前記生体接着性ポリマーコーティングは、前記ポリマーコーティングの粘膜接着を高める金属化合物をさらに含む、錠剤。
  18. 薬物の経口送達用の錠剤であって、胃腸管に送達される薬物を含むコアと、前記錠剤の少なくとも一表面に施される生体接着性ポリマーコーティングとを含み、前記コーティングは、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度を錠剤に付与し、前記錠剤は、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間、胃腸管に滞留し、その間に前記薬物が前記錠剤から放出され、また、生体接着性ポリマーコーティングは、前記ポリマーコーティングの粘膜接着を高める低分子量オリゴマーをさらに含む、錠剤。
  19. 前記ポリマーコーティングは、ポリマーコーティングの粘膜接着を高める金属化合物をさらに含む、請求項18に記載の錠剤。
  20. 薬物の経口送達用の錠剤であって、胃腸管に送達される薬物を含むコアと、前記錠剤の少なくとも一表面に施される生体接着性ポリマーコーティングとを含み、前記コーティングは、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度を錠剤に付与し、前記錠剤は、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間、胃腸管に滞留し、その間に前記薬物が前記錠剤から放出され、また前記生体接着性ポリマーコーティングは、1以上のヒドロキシル基と置換された芳香族基を含む、錠剤。
  21. 薬物の経口送達用のカプセル剤であって、胃腸管に送達される薬物と、前記カプセル剤の少なくとも一表面に施される生体接着性ポリマーコーティングとを含み、前記コーティングは、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度をカプセル剤に付与し、前記カプセル剤は、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間、胃腸管に滞留し、その間に前記薬物が前記カプセル剤から放出される、カプセル剤。
  22. 前記生体接着性ポリマーコーティングは、熱可塑性ポリマー、可塑剤、またはその組み合わせを含む、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  23. 前記生体接着性ポリマーコーティングは、錠剤の乾燥パッケージの形態で、硬化シェルである、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  24. 前記薬物は、小有機化合物である、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  25. 前記薬物は、ペプチドまたはポリペプチドである、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  26. 前記薬物は、核酸である、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  27. 前記薬物は、ホルモン類、酵素類、抗原類、消化補助剤、潰瘍治療薬、血圧降下剤、酵素インヒビター、抗寄生虫薬、殺精子剤、痔疾治療薬、および放射性薬用化合物から選択される、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  28. 前記薬物は、抗真菌剤である、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  29. 前記薬物は、抗悪性腫瘍薬である、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  30. 前記薬物は、抗ウイルス薬である、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  31. 前記薬物は、免疫抑制剤である、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  32. 前記薬物は、CNS活性物質である、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  33. 前記CNS活性物質は、抗抑うつ剤、抗精神病薬、抗てんかん薬、および/または運動障害治療薬である、請求項32に記載の錠剤。
  34. 前記薬物は、抗片頭痛薬である、請求項1乃至21のいずれかに記載の、剤形、錠剤、またはカプセル剤。
  35. 薬物の経口送達用の薬物溶出デバイスであって、
    そこに含有された薬物含有コア、およびそこを通ってコアからの薬物がデバイスから溶出し得る1以上のオリフィスまたは出口ポートを備えた貯蔵層と、
    前記デバイスの少なくとも一表面に施され、ラット腸で測定したところによると、少なくとも100N/mの破壊強度を前記デバイスに付与する、生体接着性ポリマーコーティングとを含み、
    前記デバイスは、摂食状態のビーグルモデルにおいて、少なくとも4時間、胃腸管に滞留し、その間に前記薬物が前記デバイスから放出される、薬物溶出デバイス。
  36. 生体接着性ポリマーコーティングは、水和作用によって実質的に膨潤しない、請求項35に記載の薬物溶出デバイス。
  37. 第1層、第2層および第3層を含み、各層は1以上の薬物および1以上の添加剤を含む錠剤であって、前記第1層は、錠剤(table)のコアを形成し、前記第2層は、前記第1の層の一方の側に隣接し、前記第3層は、前記第1層の反対側に隣接し、少なくとも1層は、疎水性の添加剤を含み、また、少なくとも1つの薬物は、吸湿性、潮解性、またはその両方である、錠剤。
  38. ある層の薬物の重量パーセントは、別の層の薬物の重量パーセントと異なる、請求項37に記載の錠剤。
  39. 第1層は、薬物の最大の重量パーセントを含む、請求項38に記載の錠剤。
  40. 第2層および第3層は、ほぼ等しい薬物の重量パーセントを含む、請求項37に記載の錠剤。
  41. 薬物および疎水性の添加剤の双方は、少なくとも1つの層に存在する、請求項37に記載の錠剤。
  42. 前記薬物は、バルプロ酸ナトリウム、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、抗生物質、非ステロイド系抗炎症剤、消化補助剤およびコファクター、ならびにビタミンから選択される、請求項37に記載の錠剤。
  43. 前記薬物は、バルプロエートおよびバルプロ酸である、請求項42に記載の錠剤。
  44. 前記疎水性の添加剤は、セルロースである、請求項37に記載の錠剤。
  45. 前記セルロースは、エチルセルロースである、請求項44に記載の錠剤。
  46. 前記疎水性の添加剤の量は、前記薬物の錠剤からの放出を部分的または完全に制御するのに十分な量である、請求項37に記載の錠剤。
  47. 前記錠剤は、in vitro試験、および/または in vivo投与において、ほぼゼロ次の薬物放出を行う、請求項46に記載の錠剤。
  48. 前記錠剤は、2以上の薬物を含む、請求項37に記載の錠剤。
  49. 少なくとも1層は、薬物を1つだけ含む、請求項48に記載の錠剤。
  50. 第4層および第5層をさらに含む、請求項37に記載の錠剤。
  51. 第4層および第5層は、実質的に薬物を含まない、請求項50に記載の錠剤。
  52. 生体接着性コーティングをさらに含む、請求項37に記載の錠剤。
  53. 1以上の層が生体接着性を含む、請求項52に記載の錠剤。
  54. 拡散バリアまたは腸溶性コーティングをさらに含む、請求項37に記載の錠剤。
  55. 第1層、第2層および第3層を含み、各層は薬物および1以上の添加剤を含む錠剤であって、前記第1層は、錠剤(table)のコアを形成し、前記第2層は、前記第1の層の一方の側に隣接し、前記第3層は、前記第1層の反対側に隣接し、前記第1層は、前記錠剤中の前記薬物の合計量の少なくとも34%を含み、前記第2および前記第3層のそれぞれは、前記錠剤中の前記薬物の合計量の33%以下をそれぞれを含む、錠剤。
  56. 錠剤は、長さ約2mm〜約50mm、深さ約2mm〜約15mm、幅2mm〜約15mmである、請求項55に記載の錠剤。
  57. 拡散バリアまたは腸溶性コーティングをさらに含む、請求項55に記載の錠剤。
  58. 生体接着性コーティングをさらに含む、請求項55に記載の錠剤。
  59. 前記錠剤は、少なくとも1つの疎水性の添加剤層を含む、請求項55に記載の錠剤。
  60. 前記疎水性の添加剤層は、少なくとも部分的に薬物に対して律速である、請求項59に記載の錠剤。
  61. 前記錠剤は、in vitro試験、および/または in vivo投与において、ほぼゼロ次の薬物放出を行う、請求項60に記載の錠剤。
  62. 前記薬物は、バルプロ酸ナトリウム、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、抗生物質、非ステロイド系抗炎症剤、消化補助剤およびコファクター、ならびにビタミンから選択される、請求項55に記載の錠剤。
  63. 前記薬物は、バルプロエートおよびバルプロ酸である、請求項62に記載の錠剤。
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