JP2008513551A - 高全酸価(tan)原油のエマルジョンの中和 - Google Patents

高全酸価(tan)原油のエマルジョンの中和 Download PDF

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Abstract

この発明は、有機酸を含む石油の全酸価の低減方法である。本方法は、第VIIA族金属水酸化物水溶液またはスラリー/炭化水素油の油中水エマルジョンを形成し、その際前記油中水エマルジョンは、水性液滴粒子サイズ直径1〜25μを有する工程、油中水エマルジョンを、有機酸を含む石油へ添加する工程、および混合物を、石油中の有機酸を中和させるのに十分な時間静置させる工程を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、石油中に含まれる有機酸を中和して、これらの油の酸性度および腐食性を低減することに関する。
高い有機酸含有量を有する多くの石油原油(ナフテン酸を含む全原油など)は、原油を抽出、輸送、および処理するのに用いられる装置(パイプスチルおよび輸送ラインなど)に対して腐食性がある。
ナフテン酸腐食を最小にする努力には、多数の提案が含まれている。特許文献1には、より高いナフテン酸含有量の油を低いナフテン酸含有量の油と混合するなどの公認された提案が引用される。加えて、問題に対処するための種々の試みが、炭素鋼または低合金鋼を、より高価な高度合金ステンレススチールに置き換えること、腐食防止剤を酸に暴露される装置の金属表面に用いること、または酸を中和し、それを油から除去することによってなされた。いくつかの防止剤製造業者は、特定の硫黄およびリンベースの有機腐食防止剤の使用は、ナフテン酸による腐食を低減するのに効果的であることができることを主張している。これらの技術の例には、ポリ硫化物(特許文献1)またはアルキンジオールおよびポリアルケンポリアミンの油溶性反応生成物(特許文献2)などの腐食防止剤による金属表面の処理、および希薄アルカリ水溶液(特に希薄水性NaOHまたはKOH)(特許文献3)による液体炭化水素の処理が含まれる。特許文献3には、しかし、問題が、水性塩基をより高濃度で含む水溶液を用いることにより発生することが注目される。これらの溶液は、希薄塩基水溶液のみを用いることを必要とする、油とエマルジョンを形成する。特許文献4には、液体(アルコールまたは水)中の四級塩基(水酸化テトラメチルアンモニウムなど)を用いる、酸性官能基を有する炭素質物質、特に石炭およびその生成物(重質油、減圧ガス油、および石油残油など)の処理が開示される。アルカリ水酸化物水溶液を用いる更なるプロセスには、非特許文献1、同様に特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献3および特許文献9;特許文献10および特許文献11;特許文献12;特許文献13;特許文献14;並びに特許文献15に開示されるものが含まれる。ある処理は、鉱油留出油および炭化水素油について(例えば、ライム、溶融NaOHまたはKOH、キャリヤー媒体に懸濁されたカルボン酸のある高度多孔質焼成塩を用いて)行われている。全原油は処理されなかった。
特許文献16および特許文献17(Honeycutt)には、「重質鉱油留分」および「石油蒸気」が、それぞれ処理されるプロセスが開示される。特許文献16には、更に、「フラッシングされた蒸気」が、とりわけ、アルカリ金属水酸化物および「液体油」を含む「液体アルカリ物質」と接触されることが開示される。それぞれに溶融形態のNaOHおよびKOHの混合物は、好ましい処理剤として開示される。しかし、「他のアルカリ物質(例えばライム)はまた、少量で用いられることができる」とも開示される。重要なことには、特許文献16には、全原油、また1050゜F(565℃)で沸騰する留分の処理は開示されない。むしろ、特許文献16は、単に、蒸気、および1050゜F(565℃)留分の凝縮蒸気、即ち特許文献16に開示される条件で蒸発可能な留分を処理する。石油残油、およびナフテン酸を含む他の非蒸発性留分(特許文献16の条件で)は、前記プロセスによって処理可能でないであろう。ナフテン酸は、全ての原油留分(その多くは蒸発可能でない)に亘って分配されることから、および原油は、ナフテン酸含有量が広く異なることから、特許文献16には、多様な沸点を有する原油の広範なスレートを、成功裏に処理することができるであろうという期待は示されない。
特許文献18には、ナフテネートが石油スチールの腐食を防止するのに用いられたことが開示される。前記特許は、ナフテン酸カルシウムを、石油へ添加して、塩酸および硫酸などの強遊離酸と反応され、それが除去されることを教示する。これは、それらの強酸による蒸留装置の腐食を防止するものであり、ナフテン酸に関して全く請求しない。実際には、ナフテン酸は、強酸が塩に転化される場合に形成されたであろう。いくつかの先行技術には、カルボン酸カルシウム(特許文献19(Chengら))または酸化マグネシウム(特許文献20(Chengら)、特許文献21および特許文献22)の分散物を、燃料生成物および潤滑油生成物(しかし全原油または抜頭原油でない)の腐食防止剤として添加するか、またはそれを形成することが含まれた。同様に、非特許文献2には、潤滑油におけるカルシウム、バリウム、および亜鉛水酸化物の添加剤の向上された清浄性および耐腐食性が報告された。アミンナフテネート(特許文献23(Wassonら))および亜鉛ナフテネート(特許文献24(Johnsonら);特許文献25(Rouault);および特許文献26(Zismanら))はまた、種々の潤滑油生成物における耐腐食剤として請求された。カルシウム化合物と石油との他の使用には、ライム石/ガラス引抜き(特許文献27(Elkinら))によるか、またはハイドロタルサイト類似の金属酸化物(特許文献28(Gillespieら))によるナフテン酸の炭化水素油からの除去が含まれる。最後に、水酸化カルシウム(特許文献29(Kessick))は、重質原油廃棄物からの水分離に資する。
特許文献30には、水酸化テトラアルキルアンモニウムによる酸性原油の処理が教示され、特許文献31は、トリアルキルシラノレートを用いる。特許文献32および特許文献33には、第IA族および第IIA族の酸化物および水酸化物を用いて、全原油および原油留分を処理し、ナフテン酸含有量が低減されることが教示される。
特許文献7には、ナフテン酸を含む重質石油留出油の処理が教示される。これは、苛性アルカリ溶液を、水性アルカリ金属水酸化物/不活性または非反応性キャリヤー炭化水素の微細液滴分散(水性液滴サイズ約1〜10μ)の形態で用いることによる。この分散は、重質留出油と、混合手段を通過させることによって通常の導管内で混合されて、水性アルカリ金属水酸化物/キャリヤー炭化水素が、ナフテン酸を含む重質石油留出油ストリーム全体に均一に分散され、この混合物は、混合後直ちに、かついかなる実質的な分離も生じる前に電界に付されて、精製された重質炭化水素留出油相が、過剰のアルカリ金属水酸化物、およびナフテン酸のアルカリ金属水酸化物塩の水性混合物から分離される。
特許文献34には、酸性原油またはその留分を処理して、その酸性度および腐食性が低減または除去されるプロセスが教示される。これは、一実施形態においては、金属カルボキシレートを原油中に直接添加することによる。金属カルボキシレートは、アルカリ土類金属水酸化物を、少量の処理されるべき原油または他の炭化水素油に添加することによって調製されて、アルカリ土類金属ナフテネートを含む処理原油が製造される。これは、次いで処理されるべき原油の全量に組合わされる。実際には、処理原油を、金属ナフテネート塩源として用いる場合には、ナフテネート塩含有量は、処理されるべき酸性原油の酸含有量を基準として、0.025:1〜1:1(金属モル数)の範囲である。処理されるべき酸性原油、および金属ナフテネート塩を含む処理原油は、類似の沸点および特性を当然に有する。従って、処理原油を製造するのに好ましい炭化水素油は、少量の同一の中和されるべき原油である。異なる炭化水素油が用いられる場合には、それは、中和されるべき原油と適合性がなければならない。前記特許は、原油−水性エマルジョン(即ち、油中水または水中油のいずれか)の形成が、原油および水相の効果的な分離を、従って処理された原油の回収を妨げる傾向があることを、明確に述べている。エマルジョンの形成は、望ましくなく、水性塩基によるナフテン酸含有原油の処理を通して経験される特別の問題である。
水性−油エマルジョンの形成を回避することは、石油精製における一般的な実務である。これは、しばしば、エマルジョンが、安定化され、次いで油および水相に「破壊」または分離するのに常に困難となるからである。しばしば、高勾配遠心分離、マイクロ波等などの特別かつ高価な方法が、これらのエマルジョンを分離するのに必要とされ、そのためにそれらは、最も良好に回避される。
例えば、標準的な脱塩操作においては、洗浄水は、原油と、通常混合バルブを通して混合されて、エマルジョンが製造される。これは、次いで脱塩槽へ送られ、そこで洗浄水は、原油中に存在する塩水液滴と合体する。槽内の静電界は、合体を強化するのに資し、大きな合体液滴は、重力よって沈積し、廃水として槽底部で排出される。脱塩された原油は、槽頂部から出る。混合バルブの圧力降下、および従って混合エネルギーは、注意深く制御されて、非常に厳密にエマルジョン(次いで、静電気的に分離するのが困難になることができる)の形成が回避されなければならない。これは、天然界面活性剤、または微分割された固形物(そのいずれもエマルジョンを安定化することができる)を含むある原油については、特に重要である。しばしば、特定の脱塩化学薬品または助剤が、エマルジョンの安定性を抑制するのに用いられるか、または抗乳化剤が、エマルジョンを破壊するのに添加される。特許文献34は、そのプロセスの利点が、エマルジョンの形成がないか、またはそれが実質的にないことを述べる。
特許文献35には、原油およびその留分のナフテン酸含有量を、酸素の実質的に非存在下に、第IA族および第IIA族水酸化物、水酸化アンモニウム、並びにそれらの混合物から選択される水性塩基、相間移動剤(四級アンモニウム塩である)の存在下に、(10−5〜10−1)の量で低減するための方法が教示される。これは、低減されたナフテン酸含有量、並びにナフテネート塩、相間移動剤、および塩基を含む水相を有する処理された石油原料を製造するのに効果的な温度および圧力で低減される。原料は、液体状態にある。原料を、水性塩基−相間移動剤の混合物と混合する際には、油は、液滴形態にあり、油滴は、ナフテン酸を含む成分が、水相との完全な接触を達成するのを可能にするのに十分なサイズのものである。平均液滴サイズ約1〜100ミクロン(直径)を有する油滴が典型的であり、1〜20ミクロンが好ましい。接触は、混合物の成分を激しく混合することによって達成されることができる。従って、この場合には、油中水エマルジョン/混合物が形成されることが判る。
特許文献36には、原油および/またはその留分の脱酸方法が教示される。前記方法は、原油および/またはその留分を、第IIA族金属水酸化物と、水の存在下に接触させ、その際水は、原油および/またはその留分の0.01〜100%の濃度で存在する工程、および抗乳化剤を、原油および/またはその留分、第IIA族金属水酸化物、並びに水の混合物へ、混合物を油リッチ相、水相、および界面相(油リッチ相および水相の間に位置される)に分離させるのに効果的な量で導入する工程を含む。原油および/またはその留分、並びに第IIA族金属水酸化物は、超音波撹拌装置の機械流を用いるかき混ぜまたは撹拌によって、または不活性ガスを反応混合物を通してバブリングすることによって混合されてもよい。
エマルジョンの形成を回避する必要性を排除する方法が開発されるなら、それは有益である。
米国特許第5,182,013号明細書 米国特許第4,647,366号明細書 米国特許第4,199,440号明細書 米国特許第4,300,995号明細書 米国特許第2,302,281号明細書 米国特許第3,806,437号明細書 米国特許第3,847,774号明細書 米国特許第4,033,860号明細書 米国特許第5,011,579号明細書 ドイツ特許第2,001,054号明細書 ドイツ特許第2,511,182号明細書 カナダ特許第1,067,096号明細書 日本特許第59−179588号公報 ルーマニア特許第104,758号明細書 中国特許第1,071,189号明細書 米国特許第2,795,532号明細書 米国特許第2,770,580号明細書 米国特許第2,068,979号明細書 米国特許第4,164,472号明細書 米国特許第4,163,728号明細書 米国特許第4,179,383号明細書 米国特許第4,226,739号明細書 米国特許第2,401,993号明細書 米国特許第2,415,353号明細書 米国特許第2,430,951号明細書 米国特許第2,434,978号明細書 ソヴィエト連邦特許第1,786,060号明細書 米国特許第5,389,240号明細書 カナダ特許第1,249,760号明細書 米国特許第5,683,626号明細書 米国特許第5,643,439号明細書 US/13689号明細書(公報第97/08271号明細書、1997年3月6日) US/13690号明細書(公報第97/08275号明細書、1997年3月6日) 米国特許第6,022,494号明細書 米国特許第6,627,069号明細書 国際公開第00/75262号パンフレット KalichevskyおよびKobe著「化学物質による石油精製」(第4章、1956年) Mustafaevら著(Azerb.Inst,Neft.Khim.、第64〜6頁、1971年)
酸の中和は、エマルジョンの形成を回避しない方法で達成されることができることが発見された。実際には、エマルジョンの形成および保持を、化学抗乳化剤を必要としない処理の一部として行う方法である。
本発明は、酸を含む腐食性原油の酸性度および腐食性を低減するための方法であって、前記方法は、アルカリ土類金属水酸化物水溶液またはスラリーを確保する工程、アルカリ土類金属水酸化物水溶液またはスラリー/炭化水素キャリヤー油(好ましくは少量の処理されるべき同じ腐食性原油)の油中水エマルジョンを形成し、その際油中水エマルジョンは、水相液滴サイズ約0.5〜50μ、好ましくは約1〜25μ、より好ましくは約1〜10μを有する工程、油中水エマルジョンを、処理されるべき原油と、エマルジョン約0.2〜10容量/処理されるべき原油100容量、好ましくはエマルジョン約0.5〜5容量/処理されるべき原油またはその留分100容量の比で混合する工程、並びに油中水エマルジョンが添加された原油またはその留分を、アルカリ土類金属水酸化物および処理されるべき原油中のナフテン酸の間の相互作用が促進されるのに十分な温度(好ましくは約20℃〜150℃、より好ましくは約20℃〜100℃、最も好ましくは約20℃〜60℃)で、処理されるべき原油中に含まれるナフテン酸が、ナフテン酸をアルカリ土類金属ナフテン酸塩(原油中に溶解されて残る)へ転化することによって、部分的にまたは完全に中和されるのに十分な時間(例えば少なくとも約30分、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間、更により好ましくは少なくとも約4時間)保持する工程を含む。抗乳化剤を添加することなく処理された原油は、次いで、製油所における標準的な技術を用いて、更なる処理に送られることができる。それは、脱水および脱塩され、次いで蒸留およびその後の標準的な処理に送られることができる。
いくつかの全原油は、精油所装置の腐食またはファウリングの一因となるカルボン酸などの有機酸を含む。これらの有機酸は、一般に、ナフテン酸および他の有機酸の部類に属する。ナフテン酸は、石油材中に存在する有機酸の混合物を識別するのに用いられる総称である。ナフテン酸は、約65℃(150°F)〜420℃(790°F)の範囲の温度で、腐食をもたらすことができる。ナフテン酸は、酸を含む原油に、広範囲の沸点(即ち留分)に亘って分配される。本発明は、これらの酸を、最も望ましくはより重質(より高沸点)の液体留分(これらの酸が、しばしば凝縮される)から広く除去するための方法を提供する。ナフテン酸は、単独または他の有機酸(フェノールなど)との組合せのいずれかで存在してもよい。
腐食性の酸性原油、即ちナフテン酸を、単味または他の有機酸(フェノールなど)との組合せで含むものは、本発明に従って処理されてもよい。
酸性原油は、好ましくは全原油である。しかし、抜頭原油などの全原油の酸性留分、および他の高沸点留分もまた、処理されてもよい。従って、例えば、500°F(260℃)留分、650°F(343℃)留分、減圧ガス油、最も望ましくは1050°F(565℃)留分および抜頭原油は、処理されてもよい。
本発明の方法は、望ましくは、原油またはその留分中に存在する油溶性汚染物を抑制または制御するか、もしくは除去するプロセスで有用である。反応接触方法は、微細な油中水エマルジョンに特徴的な非常に大きな界面面積、および微細な水性液滴が凝集および沈積するであろう前に利用可能な長い時間を活用する。これは、二相間の十分な物質移動、および反応を、界面で生じさせる。従って、前記方法は、次の点で用途を有する。即ち、酸性化合物を、アルカリ土類金属炭化水素/キャリヤー油の油中水エマルジョンを用いることによって原油および/またはその留分から除去する点、窒素化合物を、硫酸処理によって油から除去する点、および元素硫黄および硫黄化合物を、水酸化ナトリウムを用いて、パイプラインで送られた生成物(例えば自動車用ガソリン、ディーゼル、原油等)から除去する点である。より詳しくは、本発明は、酸性度の低減(酸性原油またはその留分の中和価の減少によって明示される)が、典型的に有益であろう用途で用いられてもよい。
原油の酸濃度は、典型的には、酸中和価または酸価として表される。これは、油1グラムの酸性度を中和するのに必要なKOHミリグラム数である。それは、ASTM D−664に従って決定されてもよい。典型的には、酸含有量の減少は、中和価、または約1708cm−1における赤外スペクトルのカルボキシルバンドの強度の減少によって決定されてもよい。全酸価(TAN)約1.0mgKOH/g以下を有する原油は、中〜低腐食性のものと考えられる(TAN0.2以下を有する原油は、一般に、低腐食性のものと考えられる)。全酸価1.5超を有する原油は、腐食性と考えられる。遊離カルボキシル基を有する酸性原油は、効果的に、本発明の方法を用いて処理されてもよい。IR分析は、特に、中和価の減少が塩基を用いて処理した際に明らかでない場合に有用である。これは、KOHより弱い塩基を用いて処理した際に生じることが見出されている。
用いられてもよい原油は、本発明が行われる温度で液体または液化可能であるいかなるナフテン酸含有原油またはその留分でもある。
本明細書で用いられる際には、用語「全原油」は、未精製の未蒸留原油を意味する。
本明細書で用いられる際には、用語「化学量論量」は、原油中の酸官能基のモルを中和するのに十分な量のアルカリ土類金属水酸化物(モルベース)を意味する。モルにおいては、第IIA族水酸化物の場合、化学量論比は、金属/酸官能基が0.5:1(モル)である。化学量論について用語「超える」、「より大きい」、または「過剰」は、前記のものに類似に定義される。これは、用語「亜化学量論量」である。亜化学量論量は、第IIA族については、0.025:1(モル)〜化学量論量未満、好ましくは0.25:1〜0.5以下:1(即ち化学量論量)の範囲である。化学量論量超は、〜10:1(モル)、好ましくは〜5:1の範囲であることができる。本方法においては、しかし、好ましくは、アルカリ土類金属水酸化物の化学量論量/亜化学量論量が、金属/原油中の処理されるべき酸として用いられる。好ましい金属は、カルシウム、マグネシウム、バリウム、およびストロンチウムであり、カルシウムおよびマグネシウムが好ましく、カルシウムが最も好ましい。
接触は、アルカリ土類金属水酸化物、および処理されるべき原油またはその留分中の酸性成分の間の反応を促進するのに十分ないかなる好都合な温度でもあることができる。典型的には、約20℃〜150℃、好ましくは約20℃〜100℃、より好ましくは約20℃〜60℃である。
本発明を実施するに際しては、一種以上のアルカリ土類金属水酸化物が、水中固形物スラリーの形態で用いられる。水性スラリーが、その際、油中水エマルジョン(0.5〜50μ、好ましくは1〜25μ、より好ましくは約1〜10μの範囲の水性液滴サイズを有する)として用いられる限り、用いられるアルカリ土類金属水酸化物は、油中水エマルジョン中の平均水性液滴サイズの範囲の(好ましくはそれより小さい)粒子サイズの微粉末の形態であることが望ましい。
用いられる油中水エマルジョンは、アルカリ土類金属水酸化物水溶液またはスラリー約5〜45vol%/炭化水素キャリヤー油連続相、好ましくは水性アルカリ土類金属水酸化物スラリー20〜33vol%/炭化水素油連続相を含む。最高濃度が、経済的に好ましく、一方油中水エマルジョンを保持して、大量の未処理原油とのその後の混合が可能にされる。
油中水エマルジョンは、水性アルカリ土類金属水酸化物スラリーを炭化水素相と激しく混合することによって形成されて、エマルジョンが製造される。その際、水性液滴サイズは、約0.5〜50μ、好ましくは1〜25μ、より好ましくは約1〜10μである。この激しい混合は、インペラー、パドル、または他の機械混合手段(ソニックミキサー、エア−ジェットミキサー、高速でのスタティックミキサー等)を用いることによって達成されることができる。特に、高剪断高速ローター−ステーターミキサーは、低い必要滞留時間で、所望の水性液滴サイズを得ることが可能である。用いられる技術に係らず、しかし、水性液滴サイズは、0.5〜50μ、好ましくは1〜25μ、より好ましくは1〜10μの範囲にある。
本明細書の実施例で報告される全てのエマルジョンは、実験室において、室温度および圧力で作製されたものの、温度および圧力のいかなる組合せも、上記に列挙されたサイズの液滴が得られる限り用いられてもよい。高剪断ローター−ステーターミキサーは、ほとんどの原油の粘度範囲に対して、周囲温度で適切な液滴サイズを提供すると思われる。しかし、より高粘度に対しては、高温を用いることが、上記に列挙されたサイズの液滴を得るのに有利であろう。
油中水エマルジョンを製造する際に用いられる炭化水素油は、酸を除去するために処理されるべき原油またはその留分と適合性のある(沸点、粘度、混和性等を有する)いかなる炭化水素または石油でもあることができる。最も好ましくは、それは、処理されるべき高TAN原油またはその留分と同じものであることができる。
油中水エマルジョン、および処理されるべき原油またはその留分は、処理されるべき原油またはその留分に添加されるエマルジョン約0.2〜10vol%、好ましくは約1〜5vol%で混合される。添加される量は、エマルジョンの塩基度、および処理されるべき原油またはその留分の酸性度による。
処理されるべき原油またはその留分と組合されるべきエマルジョンの量を決定するに際しては、添加されるエマルジョン量のアルカリ土類金属水酸化物含有量は、処理されるべき原油およびその留分量の全酸含有量を中和するのに必要な金属の亜化学量論量〜過化学量論量の範囲であることができる。添加されるエマルジョン量のアルカリ土類金属水酸化物含有量は、処理されるべき原油およびその留分の全酸含有量を中和するのに必要な金属の化学量論量の過剰量でないことが、最も望ましい。好ましくは、エマルジョン量は、アルカリ土類金属水酸化物含有量が、金属約0.375〜0.5モル/中和されるべき酸の1モルであるように用いられる。亜化学量論量濃度での操作は、好ましい条件が確実ではないとしても、未反応のアルカリ土類金属水酸化物が、処理された原油中に全く残存しない可能性を増大する。
油中水エマルジョン、および処理されるべき原油またはその留分の混合は、油中水エマルジョン、および処理されるべき原油またはその留分の完全かつ徹底的な混合を確実にする条件下で行われる。この工程には、より強力なミクロ混合よりもむしろマクロ混合が含まれる。
混合物の個別の混合は、静置または保持期間中に行われることができるものの、余分な混合は、用いられないことが好ましく、保持域への導入時の初期混合が十分であることが見出された。
油中水エマルジョン、および処理されるべき原油またはその留分の混合物は、処理されるべき油を所望に一部または完全に中和させるのに十分な時間静置される。アルカリ土類金属水酸化物の亜化学量論量が用いられる場合には、用いられる保持時間は、典型的には、アルカリ土類金属水酸化物を完全に消費するのに必要なものである。少なくとも約30分、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間、更により好ましくは少なくとも約4時間程度の保持時間が望ましく、その上限は、単に、実用性および貯蔵性の観点で設定されるものである。
保持は、中和工程が、精油所または油輸送槽の貯蔵区画(即ちタンカー、タンクトラック、バレル等)において行われる場合には、および前記工程が、油井口、または生産設備の近くにおいて行われる場合には、精油所の原油貯蔵タンクにおいて達成されることができる。原油が、長距離をパイプラインで送られるものである場合には、なお更に、油中水エマルジョン+処理されるべき原油またはその留分によって、輸送中にパイプライン内で経験される保持時間は、適切な反応時間および所望レベルの中和を確実にするのに十分であってもよい。
原油貯蔵タンクまたは上流(油井口、導管等)における処理の更なる利点は、添加されるアルカリ土類金属水酸化物中の汚染物(商業グレードのこれらの物質に必然的に存在する)、または未反応アルカリ土類金属水酸化物は、効果的に、精油所の標準的な脱塩操作で除去されることができることである。最新の脱塩装置は、効果的に、未溶解の未反応微粒子を、脱塩装置の廃水に除去することができ、それにより処理装置(熱交換器、加熱炉、塔内部構造物等など)における潜在的な下流のデポジットおよびファウリングが防止される。
静置/保持段階における強力または余分な混合は、必要とされない。小さな水性液滴サイズのために、水相は、長時間、油連続相中に分配されたままである。沈積は、非常にゆっくりと生じ、小さな液滴はまた、質量移動および反応に対して、非常に大きな界面表面積を提供する。処理されるべき原油またはその留分中の酸性種(例えばナフテン酸)は、油を通って水性液滴の表面に拡散し、そこで溶解されたアルカリ土類金属水酸化物に接触する。酸およびアルカリ土類金属水酸化物の反応は、このエマルジョン界面で、非常に急速であり、酸の中和がもたらされる。
前述されるように、油中の酸の完全な中和は、化学量論量のアルカリ土類金属水酸化物、および十分に長い保持または接触時間を用いて達成されることができる。しかし亜化学量論量のアルカリ土類金属水酸化物を用いて、一部の中和が達成され、スラリー中の全てのアルカリ土類金属水酸化物が消費されることが、より望ましい。混合物の更なる取扱いは、いかなる添加される抗乳化剤も使用する必要なく達成される。
実施例1
原油中(液滴サイズ1〜5μmのCa(OH)スラリー)エマルジョンを実験室で調製した。これは、Ca(OH) 5g、HO 20cc、およびグリホン[Gryphon]原油140ccを、19000rpmのバッチ単段ローター/ステーター混合装置を有するビーカー中で、室温で混合することによった。
油中(Ca(OH)スラリー)エマルジョンの化学量論量(29.5ml)を、次いで、グリホン[Gryphon]原油(440ml)と混合し(容量比6.7%)、2インチd×10インチhのメスシリンダー中で、室温で終夜静置した。これは、周囲温度の原油貯蔵タンク条件を模擬した。類似の実験を、チャド[Chad]原油を用いて50℃で行った。これは、50℃で加熱された貯蔵タンクを模擬した。
翌朝のTAN分析は、二回の繰返し実験に対して、それぞれTAN減少75%および76%を示した。原油のカルシウム分析により、両者に対して、TAN中和80%が示された。これは、TAN減少のデータを確認する。
実施例2
水性水酸化カルシウム/グリホン[Gryphon]原油のエマルジョンを、室温で、高速(19000rpm)せん断ミキサーを用いて調製した。20秒程度の短い混合時間は、小さな液滴サイズの油中水エマルジョンを調製するのに非常に効果的であった。これは、水滴サイズ分布1〜10ミクロン(偶々の液滴は25ミクロン以下)を示した。TAN中和100%に等しい測定量のこのエマルジョンを、15秒未満の緩やかな手振盪によって、原油(別々に、グリホン[Gryphon]およびチャド[Chad])中に分散した。混合物を、原油混合物を定期的に試料採取しながら、縦長槽(H/W〜6)中に終夜静置した。グリホン[Gryphon]およびチャド[Chad]の両原油について、効果的なTAN減少:時間を、次に要約する。
(a)1〜10μの液滴を用いるグリホン[Gryphon]原油(TAN=3.14)(室温20℃):エマルジョン29.5mlをグリホン原油440mlへ添加して(容量比6.7%)、完全な化学量論中和が達成された。
Figure 2008513551
(b)1〜10μの液滴を用いるチャド[Chad]原油(TAN=4.22)(高温水浴50℃):エマルジョン39.7mlをチャド原油440mlへ添加して(容量比9.03%)、完全な化学量論中和が達成された。
Figure 2008513551

Claims (17)

  1. (a)アルカリ土類金属水酸化物の水溶液またはスラリーを確保する工程;
    (b)アルカリ土類金属水酸化物の水溶液またはスラリー/炭化水素キャリヤー油の油中水エマルジョンを形成する工程であって、前記油中水エマルジョンは、水相液滴サイズ0.5〜50μを有する工程;
    (c)前記油中水エマルジョンを、処理されるべき酸を含む原油と混合する工程であって、前記エマルジョンおよび原油の量は、その量の添加される前記エマルジョンにおけるアルカリ土類金属水酸化物の含有量が、その量の処理されるべき前記原油またはその留分の全酸価を中和するのに必要な金属の量に対して亜化学量論量〜過剰化学量論量である工程;
    (d)混合物を、前記処理されるべき原油またはその留分の中和を所望レベルで行うのに十分な温度および時間で保持する工程;および
    (e)処理された原油またはその留分を更なる処理に送る工程
    を含むことを特徴とする酸を含む原油の酸性度の低減方法。
  2. 前記油中水エマルジョンは、水相液滴サイズ1〜25μを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記油中水エマルジョンは、水相液滴サイズ1〜10μを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 油中水エマルジョンと処理されるべき原油またはその留分の前記混合物は、温度20℃〜150℃で保持されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  5. 油中水エマルジョンと処理されるべき原油またはその留分の前記混合物は、温度20℃〜100℃で保持されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  6. 油中水エマルジョンと処理されるべき原油またはその留分の前記混合物は、温度20℃〜60℃で保持されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  7. 油中水エマルジョンと処理されるべき原油またはその留分の前記混合物は、少なくとも2時間保持されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  8. 前記アルカリ土類金属水酸化物の水溶液またはスラリーは、アルカリ土類金属水酸化物の微粉末を水に混合することによって調製され、前記微粉末は、その後の油中水エマルジョンにおける平均水性液滴サイズの範囲の粒子サイズを有することを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  9. 前記アルカリ土類金属水酸化物は、水酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  10. 前記油中水エマルジョンは、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液またはスラリー5〜45vol%/炭化水素キャリヤー油を含むことを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  11. 油中水エマルジョンと処理されるべき原油またはその留分の前記混合は、タンク内でなされることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  12. 前記タンクは、タンカー内にあることを特徴とする請求項11に記載の方法。
  13. 前記タンクは、原油貯蔵タンクであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
  14. 油中水エマルジョンと処理されるべき原油またはその留分の前記混合は、原油輸送パイプライン内でなされることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  15. 処理されるべき原油またはその留分へ添加される前記油中水エマルジョンの量は、アルカリ土類金属水酸化物の含有量が、金属0.375〜0.5モル/中和されるべき酸1モルである量であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  16. 前記処理された原油またはその留分は、脱水および脱塩されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
  17. 前記油中水エマルジョンと処理されるべき原油またはその留分は、エマルジョン0.2〜10容量/処理されるべき原油またはその留分100容量の比で混合されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。
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