JP2008506724A - 経口生体内利用度を得るための薬物用の担体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)A、B、C、D、E、FまたはG型の少なくとも1つに由来する少なくとも1つのヘマグルチニンと、ポリペプチド−Hc−コンジュゲートとからなるタンパク質複合体であって、該ポリペプチド−Hc−コンジュゲートは、ボツリヌス毒素の重鎖またはそのN末端フラグメントに連結された選択されたポリペプチドからなる、タンパク質複合体に関する。
Description
本発明は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)A、B、C、D、E、FまたはG型の少なくとも1つに由来する少なくとも1つのヘマグルチニンと、ポリペプチド−Hc−コンジュゲートとからなり、該ポリペプチド−Hc−コンジュゲートは、ボツリヌス毒素の重鎖またはそのN末端フラグメントに連結した選択されたポリペプチドからなるタンパク質複合体に関する。
多くの医薬品はきわめて有効であるが、これらの物質は、経口投与することができず、非経口的投与(これは注射によることを意味する)に限られるということによって、それらの治療用途は大幅に損なわれる。特に、タンパク質物質は、経口経路によってそれらの作用部位に到達することができないため、タンパク質物質の経口投与は成功しない。経口投与後、タンパク質は、克服することが困難な2つの障害にあう:消化管内の変性条件は、タンパク質の失活を招き、多くのプロテアーゼはポリペプチドの分解を促進し、また、たとえタンパク質がこうした状態に抵抗性を示しても、高分子物質は、血中に移行して作用部位に到達するために、腸粘膜のバリヤーを乗り越えることができない。タンパク質は、プロテアーゼにより、それぞれ、胃および小腸内で切断され、切断生成物であるアミノ酸およびペプチドは、吸収されるかまたは排泄される。したがって、タンパク質薬物は、経口的に投与されると効果がない。
この不都合を克服し、タンパク物質を、経口的に生物が利用できるようにするために、多大な努力がなされてきた。この際に、幾つかの手法に言及する:プロテアーゼインヒビターの混合物によるタンパク質分解を防ぐ努力がなされてきた。この点について、たとえばアプロチニン、ベスタチン、ピューロマイシン、大豆−トリプシン−インヒビター等の、プロテアーゼインヒビターが、タンパク物質と同時に投与された;そうすることにより、分解は防止されることを意味し、タンパク物質は損傷なく吸収されることを意味する。
製剤により胃/腸内の局所pH値を調節することも試みられた。化学的修飾によりアミノ酸の安定性を高め、併せて吸収性を高めるために、タンパク物質そのものにさえ取り組んできた。後者は、親油性を高めることにより(たとえば、パルミトイル化による)達成される予定であった。1例として、インスリンと両染性オリゴマーとのカップリングが記載されている(ノベックス・コーポレーション(NOBEX Corporation)社のヘキシル−インスリンモノコンジュゲート)。さらなる手法は、たとえば、それぞれ、ラウリル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム等の、キレート剤および界面活性剤の投与による、粘膜の透過性の増強にある。このコンセプトはまた、濃縮した低分子担体分子(たとえば、4−(4−2−ヒドロキシベンゾイル)−アミノフェニル)−ブタン酸)の同時投与も含む。さらなる手法では、腸壁における特異的輸送機構の使用を試みる。この点については、ビタミンB12吸収のための輸送機構があり、これは、上記医薬品をビタミンB12にカップリングすることにより、タンパク物質に利用されることを意味する。今まで、こうした様々な手法の全てが、経口的に生物が利用可能な、承認された薬物に至っていない。
経口的に生物が利用可能なタンパク質を提供するためのさらなる手法は、WO03/101484に記述されている。その記述によれば、ボツリヌス毒素の重鎖のC末端残基が、ポリペプチドに連結される。該C末端残基は、上皮膜を通り抜ける輸送を仲介すると言われている。ハイブリッドタンパク質を経口投与するために、該ハイブリッドタンパク質を、該ボツリヌス毒素を生来包囲している補助タンパク質と混合することが可能である。
さらに、WO02/05844は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)のボツリヌス毒素複合体の少なくとも1つのヘマグルチニンと潜在的に無毒な非赤血球凝集性タンパク質(NTNH)との複合体中に組み込まれている、経口的に生物が利用可能なタンパク質および低分子薬物の提供について記述している。しかし、<50kDaの分子量を有するポリペプチドへ組み込みは、利益が上がる商品化に十分になるほど効果的ではないことが分かっている。
したがって、本発明の根底にある問題は、ポリペプチドを、経口的に生物が利用可能にする方法を提供することである。
この問題は、特許請求の範囲に規定されている主題事項によって解決される。
添付の図は、本発明を説明するものである。
用語「タンパク質複合体」は、本明細書で使用されるとき、他の選択されたポリペプチドを、ヒトおよび動物の血液系内に輸送することが可能な媒体を指す。該タンパク質複合体は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)A、B、C、D、E、FまたはG型の少なくとも1つに由来するボツリヌス毒素複合体の少なくとも1つのヘマグルチニンと、潜在的に無毒な非赤血球凝集性タンパク質(NTNH)とからなる。該ヘマグルチニンおよびNTNHは、クロストリジウムに存在するタンパク質を代表し、そのたんぱく質は、自然に、ボツリヌス毒素とボツリヌス毒素複合体を形成する。明確にするために、該タンパク質複合体は、しかしながら、ボツリヌス毒素を含まないことを言及すべきである。
用語「ボツリヌス毒素複合体」は、本明細書で使用されるとき、ボツリヌス毒素、ヘマグルチニンおよび無毒な非赤血球凝集性タンパク質(NTNH)を含む、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来のA、B、C、D、E、FまたはG型の、天然のタンパク質凝集体に関する。
用語「ポリペプチド」または「選択されたポリペプチド」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも2つのアミノ酸からなるペプチドに関する。該ポリペプチドは、線状、環状または分枝状であってもよい。さらに、該ポリペプチドは、複数のアミノ酸鎖からなってもよく、該鎖は、たとえばジスルフィド結合により、互いに連結されていてもよい。さらに、該ポリペプチドは、修飾されたアミノ酸および通常の翻訳後修飾、たとえばグリコシル化等を含んでもよい。該ポリペプチドは、薬理学的または免疫学的に活性なポリペプチドであってもよく、または診断目的に使用されるポリペプチド、たとえば抗体であってもよい。
用語「担体」は、本明細書で使用されるとき、A、B、C、D、E、FまたはG型のボツリヌス毒素複合体から選択されるボツリヌス毒素の重鎖(Hc)全体または重鎖のN末端フラグメントに関する。
用語「ポリペプチド−Hc−コンジュゲート」、「Hc−コンジュゲート」または「コンジュゲート」は、本明細書で使用されるとき、選択されたポリペプチドに共有結合されている担体に関する。たとえば、インスリン−Hc−コンジュゲートは、ボツリヌス毒素の重鎖またはそのN末端フラグメントに連結されたインスリンからなる分子に関する。
用語「ネオコンプレックス(neocomplex)」は、本明細書で使用されるとき、Hc−コンジュゲートが組み込まれているタンパク質複合体の複合体に関する。
細菌ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、タンパク質を経口経路により生体内に移行させ、その後上記タンパク質はその標的細胞により取り込まれる、能率的な機構を持つようになった。上記タンパク質は、今までに知られている最も毒性の強い物質、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)−毒素(以下、ボツリヌス毒素とも称する)を表す。自然の状況で、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)により発現される、多数のさらなるタンパク質とのボツリヌス毒素複合体中に存在する。該ボツリヌス毒素複合体が経口投与されると、高分子の神経毒ボツリヌス毒素は、腸内で吸収され、続いて標的細胞である、運動終板における運動ニューロンに到達する。その作用部位で、該神経毒は、アセチルコリンの放出を妨害し、したがってそれぞれの筋肉の麻痺を来たす。
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、7つの血清型に分けられ、それらの毒素、A、B、C、D、E、F、G型に基づいて区別される。該毒素は、約150,000ダルトン(Da)の分子量を有するタンパク質を表す。該ボツリヌス毒素複合体は通常、汚染された食物とともに摂取され、腸で吸収されてその作用部位である運動終板に到達する。
該ボツリヌス毒素は、2つのサブユニットからなる。上記各サブユニットは、異なる機能を果たす:重鎖(分子量100kDa)は、神経細胞に極めて特異的に結合し、続いて、軽鎖が、該細胞の細胞質中に転位できるようにする。天然のボツリヌス毒素では、重鎖(Hc)は、ジスルフィド架橋により軽鎖(Lc)に連結されている。該軽鎖は、神経細胞の泌小胞と膜との融合に関与するタンパク質(スネア(SNARE)タンパク質)を切断する、プロテアーゼの役割を果たす。したがって、該分泌小胞は、アセチルコリンを放出することができず、筋肉の活性化は阻止される。
両鎖はともに、元来、タンパク質分解的切断により合成されたポリペプチドに由来する。幾つかの型のクロストリジウムの場合には、該切断は、クロストリジウム自身のプロテアーゼ(A型、C型、部分的にB型)により既に行われるが、他の型の場合には、該切断は、受容者の腸管内(トリプシン)かまたは組織内のみで行われる。単離形で、軽鎖または毒素全体の混入がない重鎖は、全く無毒であり、そのままで、神経細胞におけるアセチルコリンの放出を阻止することはできない。
クロストリジウムは、酸性環境で安定であるとともに、神経毒の変性およびタンパク質分解を防止し、さらに腸粘膜を介した取り込みを可能にする、ボツリヌス毒素との複合体(ボツリヌス毒素複合体)を形成する多数のさらなるタンパク質を合成する。
以下、複合タンパク質と呼ぶ、さらなるタンパク質は、多数のヘマグルチニンおよび約120,000Daの分子量を有する無毒な非赤血球凝集性タンパク質(NTNH)を表す。該さらなるタンパク質は、タンパク質複合体を形成する。A型のボツリヌス毒素複合体の場合には、以下のヘマグルチニンが記載されている:約16,900Daを有するHa2、約21,000Daを有するHa3a、約52,000Daを有するHa3bおよび約35,000Daを有するHa1。
B〜G型のボツリヌス毒素複合体は、類似したスキームに従って構築される。1例として、B型のボツリヌス毒素複合体に言及する。この場合、該NTNHに加えて、約70,000Daの分子量を有するHA−70、約17,000Daの分子量を有するHa−17、および約33,000Daの分子量を有するHa−33が記載されている(Bhandari,M.ら(1997)Current Microbiology 35,207〜214ページ参照)。
さらに、East,A.K.ら((1994)System Appl.Microbiol.17,306〜312ページ)は、B型のHa−33の配列を、A型およびC型の配列と比較して記述している。C型およびD型に関しては−A型と同様に−Ha33(=Ha1)に加えて、記述されており約33,000Daの分子量を有するHa3b、約53,000Daを有するHa3bおよび約22〜24,000Daを有するHa3aおよび約17,000Daを有するHa2も記述されている(Inoue,K.ら、(1999)Microbiology 145,2533〜2542ページ参照)。
意外なことに、本発明者は、単独のまたはポリペプチドに連結された、ボツリヌス毒素の重鎖のみ(これは、軽鎖を含まないことを意味する)が、該タンパク質複合体中に定量的に組み込まれることを再構成実験で発見した。
該ポリペプチドは、ボツリヌス毒素の重鎖に化学的に連結させて、少なくとも1つの複合タンパク質からなるタンパク質複合体に組み込んでもよい。該タンパク質を重鎖に連結させる場合、複数の化学的方法を使用することができる。2つの異なるタンパク質の連結を可能にする広範囲の二官能性試薬がある。優先的に、カップリングパートナーのシステインとジスルフィド架橋を確立する試薬が使用される。その後、担体、重鎖への連結が、次のステップで実行される。このようなカップリングに適するのは、たとえばSPDP(N−スクシンイミジ−3−[2−ピリジルジチオ]−プロピオネート)またはDTDP(4,4′−ジチオジピリジン)等の試薬であり、その場合、タンパク質の間にスペーサーがない、単一のジスルフィド架橋が確立される。上記カップリングは、還元条件でin vivoで、たとえば細胞質内でチオレドキシン系により、切断できるという利点を有する。この場合、該カップリングは、該タンパク質複合体への重鎖の組み込みが妨げられず、また該ポリペプチドの生物学的活性が保持されるように、選択される。あるいは、重鎖と該ポリペプチドとのカップリングは、適当な発現系における組換え融合タンパク質として、両ペプチドを合成することにより得ることも可能である。
担体に連結されたポリペプチドは、優先的に、薬理学的にまたは免疫学的に活性なポリペプチドであり、治療効果または予防効果がある可能性がある、本発明によるタンパク質複合体を使用して経口投与される。選択されるポリペプチドは、たとえばホルモン類、サイトカイン類、酵素類、成長因子類、抗原類、抗体類、インヒビター類、レセプターアゴニストまたは受容体アンタゴニスト、または凝固因子であってもよい。この点に関して、該ポリペプチドが組換えで作られたか、または天然源から単離されたかは、決定的に重要ではない。好ましいポリペプチド類は、インスリン、エリスロポエチン、インターフェロン類、インターロイキン類、HIVプロテアーゼインヒビター類、GM−CSF(顆粒球/マクロファージ刺激因子)、NGF(神経成長因子)、PDGF(血小板由来成長因子)、FGF(線維芽細胞成長因子)、プラスミノーゲン活性化因子、たとえばTPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)、レニンインヒビター類、ヒト成長因子、IGF(インスリン様成長因子)、ワクチン、たとえば破傷風ワクチン、B型肝炎ワクチン、ジフテリアワクチン等、抗体たとえばハーセプチン(Her2に対する抗体)、TNF(腫瘍壊死因子)に対する抗体、EGFレセプターに対する抗体、VEGFに対する抗体、IgEに対する抗体、CD11aに対する抗体、カルシトニン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、血管新生インヒビター、第VIII因子、第Xa因子アンタゴニスト、メタロプロテイナーゼインヒビターである。
診断目的で使用されるポリペプチドは、たとえば抗体またはリガンドであってもよく、該ポリペプチドは、標識されていてもよい。標識として、ヒトまたは動物の体内で検出することが可能なあらゆる標識を考えることが可能である。好ましい標識は、同位元素、たとえばC13、または放射性標識である。標識抗体は、腫瘍の検出に使用することができ、標識リガンドは、たとえば病理的受容体の検出に使用することができる。
該ポリペプチドに連結された担体は、タンパク質複合体に組み込まれる。該タンパク質複合体は、少なくとも1つのヘマグルチニンおよび必要に応じて少なくとも1つのNTNHから構成される。この点に関して、該ヘマグルチニンおよびNTNHは、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)のA、B、C、D、E、FまたはG型の天然のボツリヌス毒素複合体から選択される。しかし、該タンパク質複合体は、その天然の組成物と異なる組成物を含んでもよく、たとえばNTNH−タンパク質を含まず、ヘマグルチニンのみで構成されていてもよい。さらに、該タンパク質複合体は、天然のボツリヌス毒素複合体より少ないヘマグルチニン種で構成されていてもよく、選択的に3つの異なるヘマグルチニン種、選択的に2つの異なるヘマグルチニン種、特に好ましくは1つのヘマグルチニン種で構成されており、いずれの場合にも、該タンパク質複合体は、NTNH−タンパク質を含んでもよく、含まなくてもよい。さらに、該タンパク質複合体は、1つまたは複数のヘマグルチニン種および/または異なる血清型のNTNH−タンパク質の混合物から構成されてもよい。
好ましいのは、A、B、C、D、E、FまたはG型のボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来の天然のタンパク質複合体(ボツリヌス毒素を含まない)に相当するタンパク質複合体、たとえばB型のボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来のHa1、Ha2、Ha3a、Ha3bおよびNTNHとのタンパク質複合体である。さらに、該タンパク質複合体は、Ha1、Ha2、Ha3aおよびNTNHを、Ha1、Ha2、Ha3bおよびNTNHを、ならびにHa1およびHa3aを、Ha3bおよびNTNHを含んでもよく、さらに、Ha2、Ha3a、Ha3bおよびNTNHを、Ha1、Ha2およびNTNHを、Ha1、Ha3aおよびNTNHを、Ha1、Ha3bおよびNTNHを、Ha2、Ha3aおよびNTNHを、Ha2、Ha3bおよびNTNHを、Ha3a、Ha3bおよびNTNHを、または列挙した複合タンパク質のさらなる任意の組み合わせを含んでもよい。さらに、該タンパク質複合体は、ヘマグルチニンの1つおよびNTNHを含んでもよく、加えて、該タンパク質複合体は、NTNHを含まない、ヘマグルチニンの列挙された組み合わせを含んでもよい。B型の典型的なタンパク質複合体によれば、A、C、D、E、FまたはG型のヘマグルチニンおよび/またはNTNHのタンパク質複合体がさらに好ましい。
本発明のさらなる態様は、本発明によるタンパク質複合体の製造方法の提供に関し、当該方法は、下記のステップ:a)少なくとも1つボツリヌス毒素複合体2.0〜約6.5の範囲のpH値で、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)からA、B、C、D、E、FまたはG型の少なくとも1つのボツリヌス毒素複合体を個別に単離するステップと、b)pH値を、約7.0〜約10.0の範囲の値に上げるステップと、c)クロマトグラフ法を使用して、該複合タンパク質からそれぞれのボツリヌス毒素を除去するステップと、d)ステップc)で得られた複合タンパク質を、選択されたポリペプチド−Hc−コンジュゲートと混合するステップ、またはe)ステップc)で得られた複合タンパク質を分離し、少なくとも1つの複合タンパク質を、ポリペプチド−Hc−コンジュゲートと混合するステップと、f)ステップd)またはe)の混合物を、約6.5〜約2.0の範囲、優先的に約4.0〜約6.0の範囲、特に好ましくは6.0の、pH値の緩衝溶液に対して透析するステップとを含む。
該複合タンパク質は、天然のボツリヌス毒素複合体から単離することが可能である。典型的な単離方法は下記の通りである:第一に、該ボツリヌス毒素複合体を、酸性のpH値で、優先的に約2.0〜約6.5の範囲のpH値で、殊に好ましくは約4.0〜約6.5の範囲、特に好ましくはpH6.0で、クロストリジウムから単離する。pH値を、約7.0〜約10.0の範囲の値、優先的に約7.0〜約8.0の範囲のpH値に上げた後、タンパク質化学でよく使用されるクロマトグラフ法で、該ボツリヌス毒素を除去する。該複合体は、pH値<6.5で安定しており、それぞれ、中性およびアルカリ性のpH値で分解して、毒素が放出されるため、上記方法は有効である。次いで、毒素を含まない複合タンパク質を、ポリペプチド−Hc−コンジュゲートと混合してもよく、そのpH値は、タンパク質化学でよく使用される緩衝液に対する、特に好ましくはリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、またはクエン酸緩衝液に対する透析により、約2.0〜約6.5の範囲のpH値に、優先的に約4.0〜約6.0の範囲、特に好ましくはpH6.0に下げてもよい。それによって、ポリペプチド−Hc−コンジュゲートを含むポリペプチドタンパク質複合体が形成され、このような方法で、選択されたポリペプチドの経口生体内利用度を提供する。
タンパク質化学でよく使用される、他のクロマトグラフ法、濃度法および沈殿もまた、該複合タンパク質の単離に使用することができる。
それらのDNA配列が知られているため、該複合タンパク質もまた、DNA組換え技術を用いて、特定の宿主生物で、組換えにより製造することが可能である。このようにして製造される複合タンパク質はさらに、修飾を示す可能性があり、これは、該複合タンパク質の誘導体である可能性があることを意味する。この点に関して、修飾は、欠失、付加、挿入または置換のみならず、アミノ酸の化学的修飾、たとえばメチル化、またはアセチル化ならびに翻訳後修飾、たとえばグリコシル化またはリン酸化リン酸化も意味する。異なる宿主における所望のタンパク質の発現は、当業者に周知であり、本明細書に別途、記載する必要はない。この点に関して、該タンパク質複合体に必要な複合タンパク質は、宿主生物で別々に発現されてもよく、同時に発現されてもよい。好ましいのは、細菌、たとえば大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)またはクロストリジウム・ディフィシル(clostridium difficile)における、あるいは、真核細胞、たとえばCHO細胞での、昆虫細胞での、たとえばバキュロウイルス系を使用した、または酵母細胞における、組換え複合タンパク質の製造である。該複合タンパク質は、上記の方法に従って、単離して選択されたポリペプチド−コンジュゲートと混合することが可能である。さらに、該選択されたポリペプチド−Hc−コンジュゲートは、複合タンパク質と一緒に融合タンパク質として、宿主生物で同時に発現させることが可能である。特に好ましいのは、酵母で、YACを使用して、該選択されたポリペプチド−Hc−コンジュゲートと一緒に、それぞれの複合タンパク質を同時に、または別々に製造することである。
さらに、本発明によるタンパク質複合体は、組換えで製造された複合タンパク質および天然のボツリヌス毒素複合体から単離された複合タンパク質の混合物を含んでいてもよい。
下記の実施例は、本発明を例証するものであって、限定するものと考えてはならない。
<実施例1:ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)毒素A型の重鎖の単離>
以下の通りに記載された修飾を示す、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)毒素A型(菌株ATCC 3502)を、公開された方法に従って培養した。(Das Gupta & Sathyamoorthy、1984、Toxicon 22、415〜424ページ参照)。72時間培養後、3Nの硫酸を加えて、該毒素を沈殿させた。沈殿を抽出し、核酸を除去した後、硫酸アンモニウムを用いて該毒素を沈殿させた。可溶化して透析した後、pH6.0でDEAE−セファロースクロマトグラフィー(2.6×15cm)を実施した。結合した毒素を、150mMのNaClで溶離し、50mMのトリス(Tris)/HClに対して透析し、セファロースQカラム(2.6×10.0cm)を使用して、さらなるイオン交換クロマトグラフィーに付した。該神経毒を、NaCl勾配(0−300mMのNaCl)で溶離した。該神経毒含有画分をプールし、10mMのリン酸ナトリウム(NaPhosphate)pH7.0に対して透析した。透析液をセファロースSカラム(1.6×11cm)に負荷し、NaCl勾配(0−300mMのNaCl)で溶離した。該クロマトグラフィーで、高純度神経毒が得られた。
以下の通りに記載された修飾を示す、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)毒素A型(菌株ATCC 3502)を、公開された方法に従って培養した。(Das Gupta & Sathyamoorthy、1984、Toxicon 22、415〜424ページ参照)。72時間培養後、3Nの硫酸を加えて、該毒素を沈殿させた。沈殿を抽出し、核酸を除去した後、硫酸アンモニウムを用いて該毒素を沈殿させた。可溶化して透析した後、pH6.0でDEAE−セファロースクロマトグラフィー(2.6×15cm)を実施した。結合した毒素を、150mMのNaClで溶離し、50mMのトリス(Tris)/HClに対して透析し、セファロースQカラム(2.6×10.0cm)を使用して、さらなるイオン交換クロマトグラフィーに付した。該神経毒を、NaCl勾配(0−300mMのNaCl)で溶離した。該神経毒含有画分をプールし、10mMのリン酸ナトリウム(NaPhosphate)pH7.0に対して透析した。透析液をセファロースSカラム(1.6×11cm)に負荷し、NaCl勾配(0−300mMのNaCl)で溶離した。該クロマトグラフィーで、高純度神経毒が得られた。
以下の通りに記載された修飾を示す、出版された文献にしたがって、該神経毒の重鎖の単離を実施した(Kozakiら、1981、J.Med.Sci.Biol.34、61〜68ページ参照)。この点に関して、高純度神経毒A型を、ホウ酸/リン酸緩衝液pH8.5に対して透析し、QAEセファデックス充填カラム(1×5cm)に結合させた。10mMのDTEをさらに含むホウ酸/リン酸緩衝液で洗浄した後、カラムを、150mMのDTEおよび2Mの尿素をさらに含むホウ酸/リン酸緩衝液3mlとともに一晩インキュベートした。次に、ホウ酸/リン酸緩衝液+10mMのDTE+2N尿素で軽鎖を溶離した後、同緩衝液と混合された重鎖を、200mMのNaClで溶離した。残存する不完全に除去された活性な神経毒を除去するために、プール画分をアフィニティーカラム上に4回ポンピングした。該アフィニティーカラムにセファロースを充填し、それにボツリヌス菌(Clostridium botulinum)毒素A型の軽鎖に対する抗体を結合させた。上記クロマトグラフィー後、軽鎖または生来の毒素を含む不純物を含まない重鎖が得られた。高濃度でも、活性テスト(マウス横隔膜アッセイ)で、活性は認められなかった。
<実施例2:ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)B型の複合タンパク質の調製>
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)B型の複合タンパク質は、一部の工程に変更を加えた、公開された方法(Evansら、1986;European Journal of Bioch.154、409〜416ページ参照)に従って、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)B型(菌株Okra)の発酵後、単離される:
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)B型の複合タンパク質は、一部の工程に変更を加えた、公開された方法(Evansら、1986;European Journal of Bioch.154、409〜416ページ参照)に従って、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)B型(菌株Okra)の発酵後、単離される:
実施例1の場合と同様に、酸沈殿バイオマスの抽出後、抽出液から核酸を沈殿させ、有毒なボツリヌス毒素複合体を、上清から硫酸アンモニウムで沈殿させた。この沈殿を0.05Mのクエン酸ナトリウム+1mMのEDTA(pH5.5)中に再懸濁させ、透析後、高分子の複合体は、カラム(5x12cm)に結合されず、カラムを定量的に通過する、DEAE−セファデックスクロマトグラフィーを使用して精製した。50mMのトリス(Tris)/HCl、1mMのEDTA(pH7.9)に対して透析後、該複合体溶離液を、セファロースQカラムを使用したクロマトグラフィーに付し、該複合タンパク質は、カラムに結合されなかったが、該神経毒は、カラムに結合されたまま残り、塩勾配のみで溶離された。同緩衝液(50mMのトリス(Tris)/HC1、1mMのEDTA)で平衡化されているQ Hyper Dカラム(2.6×13cm)で、該複合タンパク質をさらに精製した。毒素を含まないタンパク質複合体を、塩化ナトリウム勾配(0〜300mMのNaCl)で溶離した。
最後の痕跡量の神経毒を、アフィニティークロマトグラフィーで除去した。このために、アフィニティーマトリクスとして、ボツリヌス神経毒B型に対する抗体(IgG画分)に結合したセファロースが入っているカラム上に、該複合体含有溶液を4回ポンピングした。その後、活性テスト(マウス片側横隔膜アッセイ)で、生物学的活性(毒性)はもはや検出できなかった。
<実施例3:ボツリヌス菌B型のタンパク質複合体への、ボツリヌス毒素A型の重鎖の組み込み>
実施例のB型由来の高純度複合タンパク質100μg(34μl)を、実施例1のA型由来の単離された重鎖200μg(690μl)と混合した。該混合物を、150mM NaClを含む、50mMのリン酸ナトリウム(NaPhosphate)緩衝溶液pH6.0に対して、2〜8℃で3日間透析した。その後、4M硫酸アンモニウム150μlを加えて、450μlを沈殿させた。こうした沈殿条件で、該タンパク質複合体に組み込まれていない重鎖は溶液中に残るが、タンパク質複合体(組み込まれた重鎖を含むまたは含まない)は、定量的に沈殿する。一晩、再インキュベートした後、ペレットを遠心分離し、120μlのリン酸ナトリウム(NaPhosphate)、mmNaCl、2mMのEDTA(pH6.0)中に再懸濁した。バイオセプ(BioSep)S−3000を通す「ゲル濾過」で、タンパク質複合体の形成をテストした。クロマトグラムは、1つのピーク(約500,000ダルトンの分子量)のみを示した。ピーク画分は、B型由来の複合タンパク質およびボツリヌス毒素A型由来の重鎖の両者を含むことが、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動から分かった。
実施例のB型由来の高純度複合タンパク質100μg(34μl)を、実施例1のA型由来の単離された重鎖200μg(690μl)と混合した。該混合物を、150mM NaClを含む、50mMのリン酸ナトリウム(NaPhosphate)緩衝溶液pH6.0に対して、2〜8℃で3日間透析した。その後、4M硫酸アンモニウム150μlを加えて、450μlを沈殿させた。こうした沈殿条件で、該タンパク質複合体に組み込まれていない重鎖は溶液中に残るが、タンパク質複合体(組み込まれた重鎖を含むまたは含まない)は、定量的に沈殿する。一晩、再インキュベートした後、ペレットを遠心分離し、120μlのリン酸ナトリウム(NaPhosphate)、mmNaCl、2mMのEDTA(pH6.0)中に再懸濁した。バイオセプ(BioSep)S−3000を通す「ゲル濾過」で、タンパク質複合体の形成をテストした。クロマトグラムは、1つのピーク(約500,000ダルトンの分子量)のみを示した。ピーク画分は、B型由来の複合タンパク質およびボツリヌス毒素A型由来の重鎖の両者を含むことが、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動から分かった。
<実施例4:ボツリヌス毒素A型の重鎖への、インスリンの結合SPDP−インスリンの合成>
インスリン(ロシュ(Roche)、組換え)12.5mgを、緩衝液(10mM炭酸ナトリム pH=6.9)6.3mlに溶解した。このために、α−アミノ基をブロックするためにcitaconanhydride(フルカ(Fluka))3μlを正確にとり、混合物を室温でインキュベートし、pH値を観測した。1MのNaOHを加えることにより、pH値を6.8〜7.0に維持した。続いて、該反応混合物を、50mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウムpH=7.3に対して、4℃で一晩透析した。
インスリン(ロシュ(Roche)、組換え)12.5mgを、緩衝液(10mM炭酸ナトリム pH=6.9)6.3mlに溶解した。このために、α−アミノ基をブロックするためにcitaconanhydride(フルカ(Fluka))3μlを正確にとり、混合物を室温でインキュベートし、pH値を観測した。1MのNaOHを加えることにより、pH値を6.8〜7.0に維持した。続いて、該反応混合物を、50mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウムpH=7.3に対して、4℃で一晩透析した。
SPDP(N−スクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]−プロピオネート、ピアース(Pierce))6.2mgを、500μlのDMFに溶解した。上記溶液274μlを、インスリン誘導体(pH8.3に調整済)6.3mlに加え、その混合物を、ミキサー上で、室温で1時間半インキュベートした。依然として残存するSPDPを、50mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl(pH=7.3)に対する透析で除去した。保護基を除去するために、水に対して(室温で2時間)透析を実施し、次いで10mMのHClに対して室温で5時間半、透析を実施した。最後に、50mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、4mMのEDTA(pH=7.3)に対して透析を一晩実施した(SPDP溶液の最終体積:7ml)。
<インスリン−Hc−コンジュゲートの製造>
実施例1に従って単離された、ボツリヌス毒素A型由来の重鎖25mgをインスリン−SPDP8mgと混合し(最終量:41.5mg)、4℃で4日間インキュベートした(回転ミキサー)。未結合のインスリン−SPDPを除去するために、50mMのトリス(Tris)/HCl、250mMのNaCl、1mMのEDTAに対して透析を実施したが、透析ホースは、50kDという排除限界を示した。
実施例1に従って単離された、ボツリヌス毒素A型由来の重鎖25mgをインスリン−SPDP8mgと混合し(最終量:41.5mg)、4℃で4日間インキュベートした(回転ミキサー)。未結合のインスリン−SPDPを除去するために、50mMのトリス(Tris)/HCl、250mMのNaCl、1mMのEDTAに対して透析を実施したが、透析ホースは、50kDという排除限界を示した。
生成物をウェスタンブロットで分析した。インスリンに対する抗体を使用して、〜100kDの分子量を有するタンパク質を同定した。したがって、これは、重鎖およびインスリンのコンジュゲート(=インスリン−Hc−コンジュゲート)に相当する。3T3細胞を使用して、該インスリンの活性をin vitroで検出した。
<実施例5:ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)B型のタンパク質複合体へのインスリン−Hc−コンジュゲートの組み込み>
(実施例4の)インスリン−Hc−コンジュゲート7.4mgを、52ml中のタンパク質複合体(実施例2に従って精製)21mgと混合し、50mMリン酸ナトリウム、250mMのNaCl、1mMのEDTA(pH6.0)に対して、4℃で4日間、透析した。サンプル500μlを、バイオセプ(BioSep)S−3000−カラム(フェノメネックス(Phenomenex))を使用したゲル濾過で分析した。唯一の高分子ピークを、〜600kDの分子量に示した。ピーク画分のサンプルを、ウェスタンブロットで分析した。インスリンに対する抗体を使用して、インスリン(インスリン−Hc−コンジュゲートとして)が、該タンパク質複合体(ボツリヌス菌(C.botulinum)由来の複合タンパク質からなる)に組み込まれたことが明らかにされた。
(実施例4の)インスリン−Hc−コンジュゲート7.4mgを、52ml中のタンパク質複合体(実施例2に従って精製)21mgと混合し、50mMリン酸ナトリウム、250mMのNaCl、1mMのEDTA(pH6.0)に対して、4℃で4日間、透析した。サンプル500μlを、バイオセプ(BioSep)S−3000−カラム(フェノメネックス(Phenomenex))を使用したゲル濾過で分析した。唯一の高分子ピークを、〜600kDの分子量に示した。ピーク画分のサンプルを、ウェスタンブロットで分析した。インスリンに対する抗体を使用して、インスリン(インスリン−Hc−コンジュゲートとして)が、該タンパク質複合体(ボツリヌス菌(C.botulinum)由来の複合タンパク質からなる)に組み込まれたことが明らかにされた。
<実施例6:ブドウ糖負荷試験を使用した、ラットでのインスリン−ネオコンプレックスのテスト>
タンパク質複合体に組み込まれたインスリン−Hc−コンジュゲート(以下、インスリン−ネオコンプレックスと称する)の、経口投与後の効力を、ラットを用いた動物実験でテストした。
タンパク質複合体に組み込まれたインスリン−Hc−コンジュゲート(以下、インスリン−ネオコンプレックスと称する)の、経口投与後の効力を、ラットを用いた動物実験でテストした。
ラット4匹のグループに、インスリン−ネオコンプレックスかまたは非結合インスリン−Hc−コンジュゲート(複合タンパク質を含まない)のいずれかを投与した。非投与動物は、コントロールの役割をした。インスリン用量は、両群で同じであり、2U/動物であった。溶液を、経管補給により投与した。さらなるコントロールとして、0.1U、0.6Uおよび2.0Uのインスリンを腹腔内(i.p.)投与した。インスリン−ネオコンプレックスおよび非結合インスリン−Hc−コンジュゲート投与の1時間後に、動物にグルコース(2g/kg経口的)を負荷した。この時、陽性コントロール(0.1U、0.6Uおよび2.0単位のインスリン)の注射も行った。30分、60分、120分および180分後、血液を採取してグルコースレベルを測定した。60分後に、コントロール動物の場合には、約140mg/mlというグルコース最高濃度に達したが、インスリン−ネオコンプレックス投与動物の場合には、その濃度は僅かに上昇しただけであった(図1参照)。一連のグルコース濃度(曲線下面積、AUC)を考えるのであれば、インスリン−ネオコンプレックスの効果は、腹腔内(i.p.)投与されたインスリンに匹敵する(図2)。
インスリン−Hc−コンジュゲートのみを投与した動物の場合には、該グルコース濃度は、コントロールの場合と同様の挙動を示し、その濃度は60分まで大幅に上昇した。このことから、インスリン−Hc−コンジュゲート単独では、インスリンレベルに対する影響はなく、したがって、タンパク質に組み込まれていないインスリン−Hc−コンジュゲートの投与は、インスリンを、経口的に生物が利用可能にするのに適さないと結論づけることができる。
<実施例7:インスリン−Hc−コンジュゲートと、ボツリヌス毒素の重鎖のC末端に連結されたインスリンとの融合物の比較>
ボツリヌス毒素A型の重鎖(Mr〜50kD;以下、H1−フラグメントとも称する)のC末端を、大腸菌(E coli)で組換えにより発現させた。このために、His−tagに連結されたボツリヌス毒素A型のC末端フラグメントのDNA配列aa 871−1296(NIINT......ERPL)を、ベクターpBN294772にクローニングした;大腸菌(E coli N15[pREP4](キアゲン(Quiagen))を、そのベクターによって形質転換し、発現したフラグメントを、Ni−NTA−セファロースカラムを使用したアフィニティークロマトグラフィーで精製した。
ボツリヌス毒素A型の重鎖(Mr〜50kD;以下、H1−フラグメントとも称する)のC末端を、大腸菌(E coli)で組換えにより発現させた。このために、His−tagに連結されたボツリヌス毒素A型のC末端フラグメントのDNA配列aa 871−1296(NIINT......ERPL)を、ベクターpBN294772にクローニングした;大腸菌(E coli N15[pREP4](キアゲン(Quiagen))を、そのベクターによって形質転換し、発現したフラグメントを、Ni−NTA−セファロースカラムを使用したアフィニティークロマトグラフィーで精製した。
ボツリヌス菌(C.botulinum)B型由来の毒素を含まない複合タンパク質100μgを、組換えC末端フラグメント200μg(340μl)と混合し、150mMのNaClを含む50mMのリン酸ナトリウム(NaPhosphate)(pH6.0)に対して、2〜8℃で3日間、透析した。その後、反応を、H2Oとともに450μlまで貯蔵し、4M硫酸アンモニウム150μlを加えて沈殿させた。こうした沈殿条件で、該タンパク質複合体に組み込まれていないC末端フラグメントは溶液中に残るが、タンパク質複合体(組み込まれたC末端フラグメントを含むまたは含まない)は、定量的に沈殿する。一晩、再インキュベートした後、ペレットを遠心分離し、50mMのリン酸ナトリウム(NaPhosphate)150μl、150mMのNaCl、2mMのEDTA(pH6.0)中に再懸濁した。100μlを、バイオセプ(Biosep)S−3000ゲル濾過カラムで、該複合体と、混入物質として存在する可能性がある未結合のC末端フラグメントに分離した。2つのピークが溶離された:第1のピーク(12.2分)は、該タンパク質複合体を示す。非常に小さいピークは、遊離のC末端フラグメント−フラグメントを示す。SDS−PAGEを使用して、第1のピークを試験した;該複合タンパク質のみが存在し、したがって、該C末端フラグメントは、該複合体に組み込まれていなかったが、硫酸アンモニウム沈殿の間、溶液中で未結合のままであった。結論として、ボツリヌス毒素のC末端フラグメントを、該複合体に組み込むことはできない。
<実施例8:インスリン−H1−コンジュゲートとインスリン−Hc−コンジュゲートの生物学的活性の比較>
ボツリヌス毒素A型の重鎖のC末端フラグメント(H1−フラグメント)を、実施例7に記載の通りに製造した。誘導体化後、H1−フラグメント13mgを、8mgのインスリン−SPDPと混合した。インスリン−SPDPの製造は、実施例4と同様に実行した。4℃で24時間インキュベートした後、未結合のインスリン−SPDPを、50mMトリス(Tris)/HCl、250mMのNaCl、1mMのEDTAに対する透析で除去した。
ボツリヌス毒素A型の重鎖のC末端フラグメント(H1−フラグメント)を、実施例7に記載の通りに製造した。誘導体化後、H1−フラグメント13mgを、8mgのインスリン−SPDPと混合した。インスリン−SPDPの製造は、実施例4と同様に実行した。4℃で24時間インキュベートした後、未結合のインスリン−SPDPを、50mMトリス(Tris)/HCl、250mMのNaCl、1mMのEDTAに対する透析で除去した。
該重鎖の該複合体への組み込み(実施例5)の場合には、3.8mg(H1−インスリン−コンジュゲート)を、毒素を含まないタンパク質複合体(実施例2に従って精製)21mgとともに、50mMのリン酸ナトリウム(NaPhosphate)、250mMのNaCl、1mMのEDTA、pH6.0に対して、4℃で5日間、透析した。動物実験を使用して、この混合物をテストした。
ラット4匹のグループに、インスリン−Hc−コンジュゲート(実施例5)またはインスリン−H1−コンジュゲート+複合タンパク質または生理食塩水のいずれかを投与した。最初の2群の用量は、動物1匹当たりインスリン2Uであった。投与の1時間後、グルコースを負荷した(0.5g/kg i.p.)。30分後、生理食塩水を投与された動物の場合には、血糖値の測定値は、170±12mg/dlを示したが、HC−コンジュゲートネオコンプレックスを投与された群では、115±14mg/dlまで上昇しただけであった。グルコース注射の初期値は、85±14mg/dであった。結論として、該複合タンパク質を含むH1−インスリン−コンジュゲートは、動物実験で少しも影響を示さなかった。
<実施例9:C末端短縮重鎖を有するインスリン−コンジュゲートの使用>
C末端が30アミノ酸分短縮された鎖を得るために、ボツリヌス菌(C.botulinum)A型(ATCC 3502)の培養から染色体DNAを作成した。PCR増幅、を用いて、軽鎖をコードし、ループ領域にトロンビン切断部位もさらに含む遺伝子フラグメントを、プラスミドpQE60(pQE−BoNT(A)−L)にクローニングした。C末端が30アミノ酸分短縮された鎖をコードする、PCR増幅遺伝子フラグメントを、該染色体DNAから作成した。上記遺伝子フラグメントを、BoNT(A)−Lコード遺伝子フラグメントの3’末端にクローニングし、発現プラスミドpQE−BoNT(A)−L(pQE−BoNT(A)−L H30min)とした。大腸菌発現菌株M15[pREP4](キアゲン(Qiagen))を、上記プラスミドで形質転換した。500μMのIPTGで誘導(25℃、一晩)した後、該細胞を溶解し、Ni−NTA−アガロースカラムを使用したクロマトグラフィーに付した。このような方法で得て、30アミノ酸分、短縮されている毒素から、重鎖H30minを、実施例1に記載の通りに単離した。実施例4と同様に、該重鎖H30minを、インスリンとコンジュゲート形成させ、実施例5と同様に、ボツリヌス菌(C.botulinum)B型由来の無毒素複合体に融合させた。
C末端が30アミノ酸分短縮された鎖を得るために、ボツリヌス菌(C.botulinum)A型(ATCC 3502)の培養から染色体DNAを作成した。PCR増幅、を用いて、軽鎖をコードし、ループ領域にトロンビン切断部位もさらに含む遺伝子フラグメントを、プラスミドpQE60(pQE−BoNT(A)−L)にクローニングした。C末端が30アミノ酸分短縮された鎖をコードする、PCR増幅遺伝子フラグメントを、該染色体DNAから作成した。上記遺伝子フラグメントを、BoNT(A)−Lコード遺伝子フラグメントの3’末端にクローニングし、発現プラスミドpQE−BoNT(A)−L(pQE−BoNT(A)−L H30min)とした。大腸菌発現菌株M15[pREP4](キアゲン(Qiagen))を、上記プラスミドで形質転換した。500μMのIPTGで誘導(25℃、一晩)した後、該細胞を溶解し、Ni−NTA−アガロースカラムを使用したクロマトグラフィーに付した。このような方法で得て、30アミノ酸分、短縮されている毒素から、重鎖H30minを、実施例1に記載の通りに単離した。実施例4と同様に、該重鎖H30minを、インスリンとコンジュゲート形成させ、実施例5と同様に、ボツリヌス菌(C.botulinum)B型由来の無毒素複合体に融合させた。
このような方法で合成されたネオコンプレックスを、動物4匹によるブドウ糖負荷試験を使用して、複合体を含まないコントロール(実施例8による)と比較してテストした。インスリン2Uに相当する用量で、血糖値は、30分後に110±18mg/dlに上昇したが、コントロール動物の場合には、168±14mg/dlに上昇した(初期値90±5mg/dl)。
Claims (12)
- ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)A、B、C、D、E、FまたはG型の少なくとも1つに由来する少なくとも1つのヘマグルチニンと、ポリペプチド−Hc−コンジュゲートとからなるタンパク質複合体であって、前記ポリペプチド−Hc−コンジュゲートは、ボツリヌス毒素の重鎖またはそのN末端フラグメントに連結された選択されたポリペプチドからなる、タンパク質複合体。
- 前記ヘマグルチニンは、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)A、B、C、D、E、FまたはG型の少なくとも1つに由来する、ヘマグルチニンの混合物である、請求項1に記載のタンパク質複合体。
- 前記タンパク質複合体は、無毒な非赤血球凝集性タンパク質をさらに含む、請求項1または2のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
- 前記重鎖は、A、B、C、D、E、FまたはG型のボツリヌス毒素複合体の1つから単離される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
- 前記重鎖は、適当な発現系で組換えにより製造される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
- 前記ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、成長因子、抗原、抗体、インヒビター、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、または凝固因子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
- 前記選択されたポリペプチドおよび前記重鎖またはそのN末端フラグメントは、融合タンパク質として組換えにより製造される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
- 前記選択されたポリペプチドおよび前記重鎖またはそのN末端フラグメントは、化学結合により連結されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
- 前記化学結合はジスルフィド結合である、請求項8に記載のタンパク質複合体。
- 前記化学結合はペプチド結合である、請求項8に記載のタンパク質複合体。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のタンパク質複合体を製造する方法であって、
a)2.0〜6.5の範囲のpH値で、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)からボツリヌス複合体を単離するステップと、
b)ステップa)の単離されたボツリヌス複合体を、7.0〜10.0の範囲のpH値に調整するステップと、
c)前記ボツリヌス毒素を、クロマトグラフ法で前記複合タンパク質から除去するステップと、
d)ステップc)で得られた複合タンパク質を、ポリペプチド−Hc−コンジュゲートと混合するステップ、または
e)ステップc)で得られた複合タンパク質を分離して、少なくとも1つの複合タンパク質を、ポリペプチド−Hc−コンジュゲートと混合するステップと、
f)ステップd)またはe)の混合物を、6.5〜2.0の範囲のpH値の緩衝溶液に対して透析するステップと
を含む方法。 - 薬理学的に活性であり、免疫学的に活性なポリペプチドの輸送媒体としての、または診断目的に使用されるポリペプチドの輸送媒体としての、請求項1〜10のいずれか1項に記載のタンパク質複合体の使用。
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