JP2008502889A - 結腸直腸癌のマーカーとしての無機ピロホスファターゼの使用 - Google Patents

結腸直腸癌のマーカーとしての無機ピロホスファターゼの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、結腸直腸癌の診断に関する。本発明は、結腸直腸癌の診断におけるタンパク質IPYR (無機ピリホスファターゼ)の使用を開示する。本発明は、個体由来の液体試料について、該試料中のIPYRを測定することにより結腸直腸癌を診断するための方法に関する。IPYRの測定は、例えば、結腸直腸癌の早期検出または診断に使用され得る。

Description

本発明は結腸直腸癌の診断に関する。本発明は結腸直腸癌の診断におけるIPYR(=無機ピロホスファターゼ)の使用を開示する。さらに本発明は特に、個体から得た液体試料中のIPYRを測定することによる結腸直腸癌の診断方法に関する。IPYRの測定は、例えば、結腸直腸癌の早期発見または手術を受けた患者のサーベイランスに用いられ得る。
癌は、検出や治療法の発展にもかかわらず、未だ主要な公衆衛生課題のままである。様々な種類の癌の中で、結腸直腸癌(=CRC)は西洋では最も頻出する癌の一つである。
結腸直腸癌は、腺腫(ポリープ)から悪性癌腫にもっとも頻繁に進行する。CRCの様々な病期は、以前はデュークス病期AからDによって分類された。
癌の病期分類は、程度、進行、および重症度に関する疾患の分類である。癌の病期分類は、予後および治療法の選択について総括できるように癌患者を分類する。
今日、TNMシステムは最も広く用いられる、癌の解剖学的程度の分類法である。TNMシステムは国際的に認められた一律病期分類システムに相当する。3つの基本的な変数:T(原発腫瘍の程度)、N(局所リンパ節の状態)、およびM(遠隔転移の有無)がある。TNM基準はUICC (International Union Against Cancer), 編, 1997 (Sobin, L.H.およびFleming, I.D., TNM 80 (1997) 1803-4)に発表されている。
特に重要なことはCRCの早期診断がはるかに良い予後に転換することである。結腸直腸の悪性腫瘍は、良性腫瘍から、すなわち腺腫から、起こる。従って、最も良い予後は腺腫の病期で患者が診断されることである。早くも病期Tis, N0, M0またはT1-3; N0; M0に診断された患者は、もし適切に治療されれば、診断後5年生存する可能性が90%を上回るのに比べ、既に遠隔転移がある時に診断された患者は5年後の生存率がたった10%しかない。
本発明の意味におけるCRCの早期診断は、悪性の状態の前(腺腫)、または転移が全く(近位にも遠位にも)ない腫瘍病期、すなわち、腺腫、Tis, N0, M0またはT1-4; N0; M0がある時の診断をいう。Tisは上皮内癌を意味する。
CRCがまだ腸壁を貫通して完全に大きくなっておらず、従って臓側腹膜に穴が開いたり他の臓器もしくは組織が侵害されたりすることはない時にCRCが診断される、すなわち病期Tis, N0, M0またはT1-3; N0; M0 (=Tis-3; N0; M0)で診断される、ことがさらに好ましい。
癌が発見/診断され得るのが早いほど、全体的な生存率はよくなる。この事は特にCRCに当てはまる。腫瘍の進行した段階での予後は芳しくない。1/3を上回る患者が診断後5年以内に、これは5年間の生存率で約40%に相当するが、進行性疾患で死亡するであろう。現在の治療は、わずかな患者が治癒するだけで、疾患の早期段階で診断された患者が明らかにもっとも良い結果を出している。
公衆衛生課題のCRCに関しては、より効果的なスクリーニング、および結腸直腸癌が発生しないための予防措置が開発されることが不可欠である。
現在利用できる結腸直腸癌の最も早い発見手段は、糞便の血液の検査または内視鏡によるやり方を用いたものを含む。しかしながら通常は、糞便の血液が検出される前に、顕著な腫瘍の大きさが存在していなければいけない。グアヤクを基礎とした便潜血検査の感度は約26%以下で、これは悪性病変をもつ患者の74%は検知できないままであろうことを意味する(Ahlquist, D.A., Gastroenterol. Clin. North Am. 26 (1997) 41-55)。前癌状態および癌の病変の視覚化は早期発見の最も良いやり方に相当するが、結腸内視術はかなりの費用、リスク、および複雑さがあり、侵襲性である(Silvis, S.E.ら, JAMA 235 (1976) 928-930; Geenen, J.E.ら, Am. J. Dig. Dis. 20 (1975) 231-235; Anderson, W.F.ら, J. Natl. Cancer Institute 94 (2002) 1126-1133)。
臨床的有効性のために、単独のマーカーとしての新しい診断マーカーは、少なくとも当該分野で公知の最も優れた単独のマーカー程度であるべきである。または、新しいマーカーは、単独でもしくは1つ以上の他のマーカーと併用してそれぞれ用いられたいずれの場合にも、診断の感度および/または特異性において、進歩をもたらすべきである。診断の感度および/または検査の特異性は、下記に詳細に記載される受信者動作特性で最も良く評価される。
結腸直腸癌における生化学マーカーの臨床的有効性は腫瘍マーカーの欧州グループ(European Group on Tumor Markers)(EGTM)によって最近再検討されている(Duffy, M.J.ら , Europ. J. of Cancer 39 (2003) 718-727)。
現在、腫瘍に関連する糖タンパクである癌胎児抗原(CEA)の検出に基づく診断血液検査は第一に、CRCの領域における診断を助けることが可能である。CEAは結腸直腸癌、胃癌および膵臓癌、ならびに大部分の胸、肺、ならびに頭および首の癌腫を持つ患者から得た組織試料の95%において増加する(Goldenberg, D.M.ら, J. Natl. Cancer Inst. (Bethesda) 57 (1976) 11-22)。上昇したCEAレベルはまた、悪性でない疾患の患者でも報告されており、結腸直腸癌をもつ多くの患者が、特に疾患の早期段階に、血清中で正常なCEAレベルを有する(Carriquiry, L.A.およびPineyro, A., Dis. Colon Rectum 42 (1999) 921-929; Herrera, M.A.ら, Ann. Surg. 183 (1976) 5-9; Wanebo, H.J.ら, N. Engl. J. Med. 299 (1978) 448-451)。再発検出において血清または血漿で測定されたCEAの有用性は、伝えるところによれば、賛否両論で、まだ広くは利用されていない(Martell, R.E.ら, Int. J. Biol. Markers 13 (1998) 145-149; Moertel, C.G.ら, JAMA 270 (1993) 943-947)。
得られるデータを踏まえると、血清CEA測定方法は、無症候集団における結腸直腸癌のスクリーニング試験としての使用を可能にする感度も特異性も持たない(Reynoso, G.ら, JAMA 220 (1972) 361-365; Sturgeon, C., Clinical Chemistry 48 (2002) 1151-1159)。
全血、血清または血漿は、臨床的業務において最も広く用いられる試料の源である。信頼性のある癌発見の助けとなる、または早期の予後情報を提供する、早期のCRC腫瘍マーカーの同定は、診断において、および疾患の管理において大いに助けになる診断分析をもたらし得る。従って、インビトロでのCRCの評価を改善する緊急の臨床的必要性が存在する。早期に診断された患者の生存可能性は、疾患の進行した段階に診断された患者に比べるとはるかに高いので、CRCの早期診断を改善することが特に重要である。
CRCを評価する際に用いられ得る生化学マーカーが同定され得るかどうかを、調査することが本発明の課題であった。
驚いたことに、マーカーIPYRの使用は、当該分野の水準で公知の課題を少なくとも部分的に克服し得ることが見出されている。
本発明は従って、試料中のa)IPYRの濃度を測定し、およびb)結腸直腸癌の評価において、工程a)で測定された濃度を用いることを含む、生化学マーカーによるインビトロでの結腸直腸癌の評価方法に関する。
本発明の別の好ましい態様は、a) IPYRに特異的な結合剤とIPYR間の複合体の形成に適当な条件下で、個体から得られた液体試料を結合剤に接触させる工程、およびb)(a)で形成された複合体の量を結腸直腸癌の評価と相互に関連付ける工程を含む、結腸直腸癌の評価方法である。
本発明のさらに別の好ましい態様は、試料中のIPYRの濃度および結腸直腸癌の1つ以上の他のマーカーの濃度を測定し、結腸直腸癌の評価において、測定された前記濃度を用いることを含む、生化学マーカーによるインビトロでの結腸直腸癌の評価方法に関する。
本発明はまた、CRCの評価において、少なくともIPYRおよびCYFRA 21-1を含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、CRCの評価において、少なくともIPYRおよびNSEを含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、CRCの評価において、少なくともIPYRおよびCEAを含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、CRCの評価において、少なくともIPYRおよびNNMTを含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、CRCの評価において、少なくともIPYRおよびCA 19-9を含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、CRCの評価において、少なくともIPYRおよびCA 72-4を含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、少なくとも特にIPYRおよびCYFRA 21-1をそれぞれ測定するために必要な試薬、および任意に測定を実施するための補助試薬を含む、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。
本発明はまた、少なくとも特にIPYRおよびNSEをそれぞれ測定するために必要な試薬、および任意に測定を実施するための補助試薬を含む、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。
さらに好ましい態様において、本発明は、試料中のa)IPYRおよびb) 任意に結腸直腸癌の1つ以上の他のマーカーの濃度を測定し、c)結腸直腸癌の評価において、工程(a)および任意に工程(b)で測定された前記濃度を用いることを含む、インビトロでの結腸直腸癌の評価方法に関する。
本明細書中において、以下の用語のそれぞれはこの項中でそれと関連する意味を有する。
冠詞「a」および「an」は本明細書中では、冠詞の文法的目的語の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)をいうのに用いられる。一例として、「マーカー(a marker)」は1つのマーカーまたは1つより多いマーカーを意味する。
本明細書中で用いられる、用語「マーカー」または「生化学マーカー」は、患者の検査試料を分析するための標的として用いられる分子をいう。かかる分子標的の例は、タンパク質またはポリペプチドそれら自身、ならびに試料中に存在する抗体である。本発明でマーカーとして用いられるタンパク質もしくはポリペプチドは、該タンパク質の任意の変異体ならびに該タンパク質もしくは該変異体の断片、特に免疫学的に検出可能な断片を含むことを意図される。当業者は細胞によって遊離した、または例えば炎症の間に損傷した細胞外基質に存在していた、タンパク質がかかる断片に分解または開裂され得ることを理解するだろう。ある特定のマーカーは不活性な形態で合成され、引き続いてタンパク質分解によって活性化され得る。当業者はタンパク質またはそれらの断片もまた複合体の一部として存在し得ることを認識するであろう。かかる複合体もまた、本発明の意味ではマーカーとして用いられ得る。マーカーポリペプチドの変異体は同じ遺伝子によってコードされるが、PIもしくはMW、または両者において異なり(例えば、選択的mRNAまたはmRNA前駆体プロセシング、例えば、選択的スプライシングまたは制限タンパク質分解、の結果として)および、さらに、もしくは代わりに、特異な翻訳後修飾(例えば、糖化、アシル化、および/またはリン酸化反応)から起こり得る。
用語「結腸直腸癌の評価」は、本発明の方法(単独で、または他のマーカーもしくは変数、例えばUICC (UICC (International Union Against Cancer), Sobin, L.H., Wittekind, Ch. (編), TNM Classification of Malignant Tumours, 第5版, 1997)により示された基準、と共に)が、例えば医師がCRCの有無の確証または確認する助けとなったり、予後の再発検出(術後患者の追跡調査)および/もしくは、治療の、特に化学療法のモニタリングにおいて医師の助けとなったりすることを示すのに用いられる。
用語「試料」は、本明細書中において、インビトロでの評価の目的のために得た生物学的試料をいう。本発明の方法において、試料または患者試料は好ましくは任意の体液を含み得る。好ましい検査試料としては、血液、血清、血漿、尿、唾液、および滑液が挙げられる。好ましい試料は、全血、血清、血漿、または滑液で、血漿もしくは血清が最も好ましい。当業者は、任意のかかる評価がインビトロでできることを認識するであろう。患者試料はその後、廃棄される。患者試料は、単にインビトロでの本発明の方法に用いられるだけのためのもので、患者試料の物質は患者の身体には戻されない。通常は、試料は液体試料で、例えば、全血、血清、または血漿である。
好ましい態様において、本発明は、試料中のIPYRの濃度を測定し、CRCの評価において、測定された前記濃度を用いることを含む、生化学マーカーによるインビトロでのCRCの評価方法に関する。
タンパク質IPYR(無機ピロホスファターゼ、ピロリン酸ホスホヒドロラーゼ(PPアーゼ)(PPase)としても公知; HSPC124; MGC49850; PPA2; PPase; SID6 306)は、所定の配列番号NO:1、配列番号NO:2、またはそのイソ型の配列を特徴とする。
タンパク質無機ピロホスファターゼは、PPアーゼの触媒活性に不可欠である。PPアーゼはピロリン酸塩から無機リン酸塩への加水分解を触媒し、細胞のリン酸代謝にとって重要である。
当業者には自明のように、本発明は、配列番号1のタンパク質IPYR全長に限られると解釈されるべきではない。IPYRの生理学的な、または人工の断片、IPYRの二次修飾、ならびにIPYRの対立遺伝子変異体もまた、本発明によって包含される。人工断片は好ましくは、合成的に、または組換え技術によって生成されたペプチドを含み、配列番号 NO: 1において開示される配列から由来する少なくとも6つの連続的なアミノ酸からなる診断の目的の少なくとも1つのエピトープを含む。かかる断片は、抗体の生成のために、またはイムノアッセイにおける標準として有利に用いられ得る。より好ましくは人工的な断片は、サンドイッチイムノアッセイをするのに適当な、少なくとも2つの目的のエピトープを含む。好ましくは、IPYR全長またはこのマーカーの生理学的変異体は本発明の方法において検出される。
本発明の評価方法は、個体から得られる液体試料に基づく。当該技術に公知の方法とは異なり、IPYRは特異的な結合剤の使用により、この液体試料から特異的に測定される。
特異的な結合剤は、例えばIPYRのレセプター、IPYRに結合したレクチン、またはIPYRに対する抗体である。特異的な結合剤は、対応する標的分子に対して少なくとも107l/molの親和力を有する。特異的な結合剤は、標的分子に対して、好ましくは108 l/molの親和力、更により好ましくは109l/molの親和力を有する。当業者には認識されるように、特異的という用語は試料に存在する他の生体分子がIPYRに特異的な結合剤に著しくは結合しないことを示すのに用いられる。好ましくは、標的分子以外の生体分子に結合する度合いは、標的分子の親和力のたった10%以下、より好ましくはたった5%以下の結合親和力という結果になる。最も好ましい特異的結合剤は、親和力ならびに特異性、両者の上記最低基準を満たすであろう。
特異的結合剤は好ましくは、IPYRに結合する抗体である。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、かかる抗体の断片、ならびに抗体の結合ドメインを含む遺伝子構築物をいう。
特異的結合剤の上記基準を保持する任意の抗体断片が用いられ得る。抗体は、例えばTijssen (Tijssen, P., Practice and theory of enzyme immunoassays 11 (1990) 全編、特に43-78ページ; Elsevier, Amsterdam)に記載されるような、当該分野の水準の手段により生成される。また、当業者は、抗体の特異的な単離に用いられ得る免疫吸着剤に基づく方法についてよく承知している。これらの方法によって、ポリクローナル抗体の品質および従ってイムノアッセイにおけるそれらの性能が高められ得る(Tijssen, P., 上記、108-115ページ)。
本発明に開示される成果のために、ウサギにおいて産生されたポリクローナル抗体が用いられている。しかしながら、異なる種、例えばネズミまたはモルモットからのポリクローナル抗体もまた明らかに、ならびにモノクローナル抗体もまた、用いられ得る。モノクローナル抗体は一定の性質で必要な任意量で生成され得るので、臨床的業務のための検定法の開発における理想的なツールの代表である。本発明の方法において、IPYRへのモノクローナル抗体の生成および使用は、さらに別の好ましい態様である。
ここで、当業者にはIPYRがCRC診断において有用なマーカーとして同定されていることが認識されるように、代替的方法が本発明の成果に相当する結果に至るのに用いられ得る。例えば、抗体を生成する代替的戦略が用いられ得る。かかる戦略は、数ある中でも、免疫付与にIPYRのエピトープを示す合成ペプチドの使用を含む。あるいは、DNAワクチンとしてもまた知られるDNA免疫付与が用いられ得る。
測定のために、個体から得られた液体試料はIPYRの特異的結合剤と共に結合剤とIPYRとの複合体の形成に適当な条件下で、インキュベートされる。かかる条件は特異的である必要は無く、当業者は独創的な努力をすることなく、容易にかかる適当な培養条件を同定できる。
本発明に開示される方法の最終工程として、複合体の量が測定され、CRCの診断と相互に関連付けられる。当業者には認識されるように、特異的結合剤IPYR複合体の量を測定する方法が非常に多くあり、全て関連した教則本(例えばTijssen P., 上記、またはDiamandisら, 編. (1996) Immunoassay, Academic Press, Boston参照)に詳細に記載されている。
好ましくは、IPYRはサンドイッチ型検定方式で検出される。かかる検定において、第一の特異的結合剤はIPYRを一方の側面に補足するのに用いられ、直接的または間接的に検出できるように標識される第二の特異的結合剤はもう一方の側面に用いられる。
上述の通り、驚くべきことに、IPYRが個別の試料から得られた液体試料から測定され得ることが見出さている。CRCの評価においてマーカーIPYRを適用するために、組織および生検試料は必要でない。
好ましい態様において、本発明の方法は液体試料物質として血清を用いて実施される。さらに好ましい態様において、本発明の方法は液体試料物質として血漿を用いて実施される。さらに好ましい態様において、本発明の方法は液体試料物質として全血を用いて実施される。
さらに排泄物を、同様な液体試料となるようにして、当業者に公知の様々な方法で調製され得る。排泄物から得られたかかる試料液体もまた、本発明の好ましい態様に相当する。
驚くべき事に、本発明の発明者は体液試料中にタンパク質IPYRを検出できた。さらにより驚くべき事に、個体から得られたかかる流動体試料におけるIPYRの存在が、結腸直腸癌の評価と相互に関連付けられ得ることを立証できている。好ましくは、IPYRへの抗体は、定性的な(IPYRの有無)または定量的な(IPYRの量が測定される)イムノアッセイに用いられる。
タンパク質IPYRのレベルの測定はCRCの領域で非常に有利であると証明されている。従って、さらに好ましい態様において本発明は、結腸直腸癌の評価におけるマーカー分子として、個体から得られた液体試料からのタンパク質IPYRの使用に関する。
診断のため理想的なシナリオは、例えば、感染性疾患において、単一事象または経過がそれぞれの疾患を引き起こす状況であろう。全ての他の症例において、特に疾患の病因が、CRCの症例として完全には理解されていない時、正確な診断は非常に困難であり得る。当業者には認識されるように、例えばCRCの領域において、所定の疾患について100%の特異性および同時に100%の感度で診断する生化学マーカーはない。むしろ、生化学マーカーは、疾患の有無を一定の可能性または予測値で評価するために用いられる。従って、日々の臨床診断では、様々な臨床的症状および生物学的マーカーは、診断、治療、および潜在的な疾患の管理において、一般的に一緒に考慮される。
生化学マーカーは個々に測定され得るか、または本発明の好ましい態様においては、チップ、もしくはビーズ系のアレイ技術を用いて同時に測定され得るかのいすれかである。バイオマーカーの濃度はその後、各マーカーの個別のカットオフ(cut-off)を用いて単独で解釈されるか、解釈のために組み合わされる。
本発明のさらに好ましい態様において、本発明の結腸直腸癌の評価が、試料中のa)IPYR、b)任意に結腸直腸癌の1つ以上の他のマーカーの濃度を測定し、c)結腸直腸癌の評価において、工程(a)および任意に工程(b)で測定された前記濃度を用いることを含む方法で実施される。
好ましくはCRCの評価方法は、IPYRおよび1つ以上の他のマーカーの濃度を測定し、CRCの評価において、IPYRおよび1つ以上の他のマーカーの濃度を用いることによって実施される。
また、本発明は、試料中のIPYRおよびCRCの1つ以上の他のマーカーの濃度を測定し、CRCの評価において、測定された前記濃度を用いることを含む、生化学マーカーによるインビトロでのCRCの評価方法に関する。
実施例の項で示されるデータによると、単変量解析におけるマーカーIPYRはCRCについて(約90%の特異性において)54.7%の感度を有する。CRCの評価において、マーカーIPYRは以下:スクリーニング;診断補助;予後;化学療法のモニタリング;および追跡調査、の一つ以上の側面において有利であろう。
スクリーニング:
CRCは先進国において男性および女性の両方で、二番目によくみられる悪性腫瘍である。その高い有病率、長い無症候期および前癌病変の存在のために、CRCはスクリーニング基準の多くに合う。明らかに、許容範囲の感度および特異性を有する血清腫瘍マーカーは、FOB検査または内視鏡検査のどちらかよりもスクリーニングのためにより適しているであろう。
実施例の項で与えられるデータが示すように、IPYR単独では、例えばCRCの危険性のある集団などの、全般的なスクリーニングを可能にするには十分ではないだろう。スクリーニングの目的に必要な感度および特異性の基準にいつも合う単独の生化学マーカーは多分、循環血液中にないだろう。むしろ、CRCスクリーニングにおいてマーカーパネルが用いられる必要があるだろう事が、予想される。本発明で立証されたデータは、マーカーIPYRがスクリーニング目的に適したマーカーパネルのなくてはならない部分を形成するであろう事を示す。本発明は従って、CRCスクリーニング目的のためのCRCマーカーパネルの一つのマーカーとしてのIPYRの使用に関する。現状のデータはさらにCRCのスクリーニングに有利であろうマーカーのある組み合わせを示す。従って、本発明はまた、CRCスクリーニングの目的のためのIPYRおよびCYFRA 21-1を含むマーカーパネル、またはIPYRおよびNSEを含むマーカーパネル、またはIPYRおよびCYFRA 21-1およびNSEを含むマーカーパネル、の使用に関する。
診断補助:
術前のCEA値の診断価値は限られている。それでもなお、対腫瘍マーカー欧州委員会(European Committee on Tumor Markers (ECTM))は、基準値の確立および予後の評価のため、手術前にCEA(CFA)を測定することを推薦する。本発明のデータによる単独のマーカーとしてのIPYRは少なくともCEAと同じくらいまたはさらに良い単独のマーカーであり得るので、IPYRは診断補助として、特に手術前の基準値を確立することによって、用いられるであろうと予測される必要がある。
本発明は従ってまた、CRCの手術前の基準値を確立するためのIPYRの利用に関する。
予後:
CRCを持つ患者の予後を判断する判断基準は、デュークス、TNM、または他の病期分類システムによって定義される疾患の程度(extend)である。CEA等のマーカーが結果を予測するために用いられるなら、そのマーカーは、既存の病期分類システムによって提供されるよりも強力な予後情報を提供するか、既存のシステムから独立した情報を提供するか、または、例えばデュークスのBもしくは節陰性患者など、既存の基準によって定義される特定下位集団中の予後データを提供しなければならない。
最近、対癌米国合同委員会(American Joint Committee on Cancer (AJCC))合意会議(Consensus Conference)は、CEAは結腸直腸癌のTNM病期分類システムに加えられるべきであると提案した。CEA段階は以下のように指定されるべきである:CX, CEAが評価され得ない;CO, CEAが上昇していない(5μg/l未満)、またはCEA1, CEAが上昇している(5μg/lを超えて)(Compton, C.ら, Cancer 88 (2000) 1739-1757)。
IPYRは単独で、健康対照群または悪性でない結腸大腸の疾患を持つ健康対照群からのCRC患者の差別化に著しく寄与するため、IPYRはCRCを患う患者の予後を評価する助けとなると予想される必要がある。AJCCによりCEAについて推奨されるように、術前のIPYRのレベルは、おそらくCRCの一つ以上の他のマーカーおよび/またはTNM病期分類システムと組み合わされるであろう。好ましい態様において、IPYRはCRCを持つ患者の予後に用いられる。
化学療法のモニタリング:
いくつかの報告では、進行したCRCの患者の治療のモニタリングにおけるCEAの使用が記載されている(概略は、 Refs. Duffy, M.J., Clin. Hem. 47 (2001) 625-630; Fletcher, R.H., Ann. Int. Med. 104 (1986) 66-73; 匿名, J. Clin. Oncol. 14 (1996) 2843-2877を参照)。これらのほとんどは、遡及的でランダムではなく、少数の患者を含んだ。これらの試験は、a) 化学療法を受けている間にCEAレベルが減少した患者は、一般的に、CEAレベルが減少しなかった患者よりも良好な結果を有し、(b) ほぼすべての患者で、CEAレベルの増加は疾患の進行と関連したことを示した。
実施例の項に示すデータにより、IPYRはCEAと少なくとも同等の化学療法のモニタリング用マーカーであることが期待されるべきである。したがって、本発明はまた、化学療法を受けているCRC患者のモニタリングにおけるIPYRの使用に関する。
追跡調査:
治癒を目的とした外科的切除を受ける患者のおよそ50%は、後に転移性疾患の再発が起こる(Berman, J.M.ら, Lancet 355 (2000) 395-399)。これらの再発のほとんどは、診断から最初の2〜3年以内に起こり、通常、肝臓、肺または局所領域(locoregional)の部分に限定される。再発性/転移性疾患は、常に致死的であるため、相当な研究が、その初期ひいては潜在的に治療可能な段階での同定に焦点を当てている。その結果、これらの患者の多くは、多くの場合CEAの定期的モニタリングを含む、術後の調査プログラムを受ける。
CEAの連続モニタリングにより、再発性/転移性疾患が、およそ80%の感度およびおよそ70%の特異性で検出されることが示されており、5ヶ月の平均リードタイム(lead-time)を提供する(概略は、上記のDuffy, M.J.らおよび上記のFletcher, R.Hを参照のこと)。さらにまた、CEAは、無症候の患者において最もよく見られる再発のインジケーターであり(Pietra, N.ら, Dis. Colon Rectum 41 (1998) 1127-1133およびGraham, R.A.ら, Ann. Surg. 228 (1998) 59-63)、潜在的に治癒可能な再発性疾患の検出には、放射線使用よりもコスト効率が高かった。再発/転移の部位に関しては、CEAは、肝臓転移の検出に最も感度が高かった(ほぼ100%)。他方、CEAは、局所領域(locoregional)での再発の診断では信頼性が低く、感度は、わずかおよそ60%であった(Moertel, C.G.ら, JAMA 270 (1993)943-7)。
患者の利便性、コストおよび疾患検出の効率間の妥協策として、IPYRO Panel (匿名, J. Clin. Oncol. 14 (1996) 2843-2877)などのEGTM Panelは、CEA試験を最初の診断後、2〜3ヶ月ごとに少なくとも3年間行なうことを示唆する。3年後は、より低頻度で、例えば6ヶ月ごとに試験を行ない得る。しかしながら、試験のこの頻度を支持する証拠はない。
当該技術分野の技術水準の議論が示すように、術後のCRC患者の追跡調査は、適切な生化学マーカーの使用の最も重要な領域の1つである。調査されたCRC患者におけるIPYRの高感度さにより、IPYRは、単独または1つ以上の他のマーカーとの組合せで、CRC患者、特に、術後のCRC患者の追跡調査において非常に有用であることが期待される。IPYRおよびCRCの1つ以上の他のマーカーを含むマーカーパネルの使用は、CRC患者の追跡調査において、本発明のさらに好ましい態様を表す。
本発明は、CRC診断分野またはCRCの評価のそれぞれにおけるIPYRの使用を開示し、したがって、好ましい態様において、該使用に関する。
またさらなる好ましい態様では、本発明は、個体から得た液体試料からの結腸直腸癌の評価において、1つ以上の結腸直腸癌用マーカー分子との組合せでの結腸直腸癌用マーカー分子としてのIPYRの使用に関する。この点に関し、「1つ以上」という表現は、1〜20、好ましくは1〜10、好ましくは1〜5、より好ましい3または4を示す。IPYRおよび1つ以上の他のマーカーがCRCマーカーパネルを形成する。
したがって、本発明の好ましい態様は、個体から得た液体試料からの結腸直腸癌の評価において、1つ以上の結腸直腸癌用マーカー分子との組合せでの結腸直腸癌用マーカー分子としてのIPYRの使用である。IPYRの測定と組み合せ得る他のCRCマーカーで好ましく選択されるものは、NSE、CYFRA 21-1、NMMT、CA 19-9、CA 72-4および/またはCEAである。またさらに好ましくは、CRCの評価に使用されるマーカーパネルは、IPYR、およびNSE、CYFRA 21-1およびNMMTからなる群より選択される少なくとも1つの他のマーカー分子を含む。
好ましくはIPYRと組み合わせるか、またはIPYRを含むCRCマーカーパネルの一部を形成するマーカーを、それぞれ、以下により詳細に議論する。
NSE(ニューロン-特異的エノラーゼ)
解糖酵素エノラーゼ(2-ホスホ-D-グリセリン酸ヒドロラーゼ、EC 4.2.1.11、分子量およそ80kD)は、α、βおよびγと称する3つの免疫学的に異なるサブユニットを含む種々の二量体イソフォームで存在する。エノラーゼのα-サブユニットは、哺乳動物の数々の型の組織に存在するが、β-サブユニットは、主に、心臓および横紋筋組織に見られる。エノラーゼイソフォームαγおよびγγは、ニューロン-特異的エノラーゼ(NSE)またはγ-エノラーゼと呼ばれ、主に、ニューロンおよび神経内分泌細胞ならびにこれらに由来する腫瘍において高濃度で検出され得る(Lamerz, R., NSE (Neuronen-spezifische Enolase), γ-Enolase, 於: Thomas L (編) Clinical Laboratory Diagnosis, TH-Books, Frankfurt, 英語版第1版 1998: 979-981, 5. deutsche Auflage 1998:1000-1003).
NSEは、気管支の小細胞癌のモニタリングにおけるマーカーの第1選択肢として記載されているが(Lamerz, R., 上記)、気管支の非小細胞癌では、CYFRA 21-1がNSEよりも優れている(Ebert, W.ら, Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem 32 (1994) 189-199)。
NSE濃度の上昇が、気管支の小細胞癌の症例の60〜81%において見られる。
NSEについて、転移部位または脳(cerebal)転移との相関性はないが、臨床病期、すなわち疾患の程度とは充分な相関性がある。
化学療法に応答して、最初の治療周期の24-72時間後、腫瘍細胞の細胞溶解の結果としてNSEレベルの一時的な上昇がある。その後、1週間以内または最初の治療周期の終了までに、血清値(治療前は上昇していた)は急速に低下する。対照的に、治療に応答しない人は、常に高いか、または参照範囲に入らないレベルを示す。寛解の間、患者の80〜96%が正常値を有する。NSE値の上昇は、再発の場合において見られる。この上昇は、場合によっては、1〜4ヶ月の潜伏期に起こり、しばしば指数関数的であり(倍加時間は10〜94日間である)、生存期間と相関する。NSEは、気管支の小細胞癌における治療および疾患経過のモニタリング中の単独の予後因子および活性マーカーとして有用である。診断感度93%、陽性反応的中度92% (Lamerz, R., 上記)。
神経芽細胞腫において、30 ng/mlより上のNSE血清値が、罹患小児の62%に見られる。中央値は、疾患の病期に従って上昇する。病理学的NSE値の大きさまたは頻度と疾患の病期との間に有意な相関性があり、病気なしの生存と逆相関性がある。
精上皮腫の患者の68〜73%は、臨床的に有意な NSE上昇を有する(Lamerz, R., 上記)。疾患の臨床経過との利用可能な相関性がある。
また、NSEは他の腫瘍でも測定されている。非肺悪性疾患は、症例(すべての病期における癌腫)の22%において25 ng/mlより上の値を示す。神経膠腫、髄膜腫(miningioma)、神経線維腫、および神経鞘腫などの脳腫瘍は、時々上昇血清NSE値を伴うにすぎない。原発性の脳腫瘍または脳転移ならびに悪性黒色腫および褐色細胞腫では、上昇NSE値は、CSF(脳脊髄液)において生じ得る。増大したNSE濃度は、臓器限局の癌の14%および転移性の腎臓癌の46%で報告されており、独立した予後因子として悪性度分類(grade)との相関性を有する。
良性疾患では、上昇した血清NSE濃度(>12 ng/ml)が、良性肺疾患および大脳疾患の患者において見られている。上昇した値は、主に体液(liquor)中で、脳血管髄膜炎、播種性脳炎、脊髄小脳性変性、脳虚血、脳梗塞、脳内血腫、クモ膜下出血、頭部外傷、炎症性脳疾患、器質性癲癇、統合失調症およびクロイツフェルト‐ヤーコプ病(Lamerz, R., 上記)において見られている。
NSEは、Elecsys(登録商標)解析装置において、Roche製品番号12133113を用い、製造業者の使用説明書に従って測定されている。
CA 19-9糖鎖抗原19-9
測定されたCA 19-9値は、モノクローナル抗体1116-NS-19-9の使用によって規定(define)される。およそ10,000ダルトンの分子量を有する糖脂質上の1116-NS-19-9-反応性決定基が測定される。このムチンはルイス血液型A決定基のハプテンに相当し、いくつかの粘膜細胞の成分である(Koprowski, H.ら, Somatic Cell Genet 5 (1979) 957-971)。
人口の3〜7%は、ルイスA陰性/B陰性血液型構成を有し、反応性決定基CA 19-9を有するムチンを発現することができない。これは、所見を解釈するときに考慮されなければならない。
ムチンは、胎児の胃、腸および膵臓の上皮に存在する。低濃度でもまた、肝臓、肺および膵臓の成体組織において見られ得る(Stieber, P.およびFateh-Moghadam, A., Boeringer Mannheim, Cat. No. 1536869 (engl), 1320947 (dtsch), ISBN 3-926725-07-9 dtsch/engl. Juergen Hartmann Verlag Marloffstein-Rathsberg (1993); Herlyn, M.ら, J. Clin. Immunol 2 (1982) 135-140)。
CA 19-9 アッセイ値は、膵臓癌腫の患者の鑑別診断およびモニタリングを補助し得る(感度70-87%) (Ritts, R.E., Jr.ら, Int. J. Cancer 33 (1984) 339-345)。腫瘍質量とCA 19-9 アッセイ値との間に相関性はない。しかしながら、CA 19-9 血清レベルが10,000 U/mLを超える患者は、ほぼ常に遠位の転移を有する。
CA 19-9の測定は、膵臓癌腫の初期検出には使用され得ない(Steinberg, W.M.ら, Gastroenterology 90 (1986) 343-349)。
肝胆道癌腫では、CA 19-9値は、50〜75%の感度をもたらす。胃癌の場合は、CA 72-4およびCEAの同時測定が推奨される。結腸直腸癌では、CEA単独の測定で充分である。ほとんどないがCEA陰性の場合でのみ、CA 19-9の測定が有用であり得る。
ムチンは、肝臓を介して排他的に排出され、わずかな胆汁うっ滞でさえ、場合によっては、明らかに上昇したCA 19-9血清レベルをもたらし得る。上昇したCA 19-9値はまた、胃腸管および肝臓のいくつかの良性および炎症性疾患ならびに嚢胞性線維症でも見られる。
CA 19-9は、Elecsys(登録商標)解析装置において、Roche製品番号11776193を用い、製造業者の使用説明書に従って測定した。
CEA癌胎児抗原
CEAは、およそ45〜60%の変動的糖鎖成分を有する単量体糖蛋白(分子量およそ180.000ダルトン)である(Gold, P.およびFreedman, S.O., J. Exp. Med. 121 (1965) 439-462)。
AFPなどのCEAは、胚および胎児期の間に産生される癌胎児性抗原の群に属する。CEA遺伝子ファミリーは、2つのサブグループの約17個の活性な遺伝子からなる。第1の群は、CEAおよび非特異的交差反応性抗原(NCA)を含み、第2の群は、妊娠特異的糖蛋白(PSG)を含む。
CEAは、主に、胎児の胃腸管および胎児の血清に見られる。また、微量で、健常成体の腸、膵臓および肝臓組織にも存在する。CEAの形成は、出生後は抑制され、したがって、血清CEA値は、健常成体ではほとんど測定され得ない。
高CEA濃度は、結腸直腸腺癌の症例で高頻度で見られる(Stieber, P.およびFateh-Moghadam, A., 上記)。微量から中程度のCEA上昇(稀に>10 ng/mL)が、腸、膵臓、肝臓および肺の良性疾患(例えば、肝硬変、慢性肝炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気腫)の20〜50%に起こる(Stieber, P.およびFateh-Moghadam, A., 上記)。喫煙者も上昇したCEA値を有する。
CEA測定の主な適応は、結腸直腸癌の追跡調査および治療マネージメントである。
CEA測定は、一般集団の癌スクリーニングには推奨されない。正常範囲内のCEA濃度は、あり得る悪性疾患の存在を排除しない。
Roche Diagnosticsが製造したアッセイ用抗体は、CEAおよび(ほぼすべてのCEA法の場合のように)胎便中の(meconium)抗原 (NCA2)と反応する。NCA1との交差反応性は0.7%である(Hammarstrom, S.ら, Cancer Research 49 (1989) 4852-4858およびBormer, O.P., Tumor Biol. 12 (1991) 9-15)。
CEAは、Elecsys(登録商標)解析装置において、Roche製品番号11731629を用い、製造業者の使用説明書に従って測定した。
CYFRA 21-1
「CYFRA 21-1」のアッセイでは、循環系内に存在するサイトケラチン19の可溶性断片が特異的に測定される。CYFRA 21-1の測定は、典型的には2つのモノクローナル抗体に基づく(Bodenmueller, H.ら, Int. J. Biol. Markers 9 (1994) 75-81)。Roche Diagnostics, GermanyのCYFRA 21-1アッセイでは、2つの特異的モノクローナル抗体(KS 19.1およびBM 19.21)が使用され、およそ30,000ダルトンの分子量を有するサイトケラチン19の可溶性断片が測定される。
サイトケラチンは、上皮中間フィラメントのサブユニットを形成する構造タンパク質である。これまでに、20種の異なるサイトケラチンポリペプチドが同定されている。その特異的分布パターンにより、これらは、腫瘍病理学における分化マーカーとしての使用に非常に適している。完全なサイトケラチンポリペプチドは、可溶性が低いが、可溶性の断片は血清中で検出され得る(Bodenmueller, H.ら, 上記)。
CYFRA 21-1は、非小細胞肺癌(NSCLC)の充分確立されたマーカーである。CYFRA 21-1の主な適用は、非小細胞肺癌 (NSCLC)の経過をモニタリングすることである(Sturgeon, C., Clinical Chemistry 48 (2002) 1151-1159)。
高CYFRA 21-1血清レベルは、非小細胞肺癌の患者において進行した腫瘍段階および良好でない予後を示す(van der Gaast Aら, Br. J. Cancer 69 (1994) 525-528)。正常またはわずかにのみ上昇した値は、腫瘍の存在を排除しない。
良好な治療は、CYFRA 21-1 血清レベルの正常範囲内への急速な低下によって示される。一定のCYFRA 21-1値またはCYFRA 21-1値のわずかな減少、もしくはごく低速での減少は、腫瘍の不完全な除去または多数の腫瘍の存在を示し、対応する治療結果および予後結果を伴う。疾患の進行は、しばしば、臨床症候学および画像形成手順によってよりもCYFRA 21-1値の増加によっての方が早く示される。
肺癌腫の一次診断において(in)、臨床症候学、画像形成または内視鏡手術および術中所見に基づいて行なわれるべきであることは受け入れられている。>30 ng/mLのCYFRA 21-1値を伴う肺中の不明確な円形病巣は、高い確率で、原発気管支癌腫の存在を示す。
CYFRA 21-1はまた、膀胱の筋浸潤癌の経過モニタリングに好適である。良好な特異性は、良性肺疾患(肺炎、サルコイドーシス、結核、慢性気管支炎、気管支喘息、気腫)に関連のあるCYFRA 21-1によって示される。
わずかに上昇した値 (10 ng/mLまで)は、顕著な良性肝臓疾患および腎不全ではほとんど見られない。性別、年齢または喫煙との相関性はない。CYFRA 21-1の値はまた、妊娠によって影響されない。
最近、CYFRA 21-1はまた、乳癌に分野において、疾患再発の検出および治療効果の評価に有用であることがわかっている(Nakata, B.ら, British J. of Cancer (2004) 1-6)。
CYFRA 21-1 は、Elecsys(登録商標)解析装置において、Roche製品番号11820966を用い、製造業者の使用説明書に従って測定されている。
上記にさらに記載したように、CYFRA 21-1は、NSCLCの分野において確立されたマーカーである。NSCLC用のCYFRA 21-1を開発および確立する際、特定の肺非悪性疾患の患者由来の非悪性疾患対照が用いられている。これは、良性と悪性の肺疾患を区別するために重要であると考えられている(H. Bodenmuellerら, 上記)。
ごく最近以来、相当な割合のCRC患者由来の試料中においてマーカーCYFRA 21-1を検出することが可能である。また、個体から得たかかる液体試料におけるCYFRA 21-1の存在は、結腸直腸癌の評価に使用され得る。特に、他のマーカーとの組み合わせで、CYFRA 21-1は、CRCの分野において非常に有用なマーカーである考えられる。
NMMT
タンパク質ニコチンアミドN-メチルトランスフェラーゼ(NNMT; Swiss-PROT: P40261)は、29.6 kDaの見かけ分子量および5.56の等電点を有する。
NNMTは、ニコチンアミドおよび他のピリジン類のN-メチル化を触媒する。この活性は、多くの薬物および生体異物化合物の生体内変化に重要である。このタンパク質は、主に肝臓内で発現され、細胞質内に位置することが報告されている。NNMTは、ヒト肝臓由来のcDNAからクローン化し、29.6 kDaの計算分子量を有する264個のアミノ酸のタンパク質をコードする792-ヌクレオチドオープンリーティングフレームを含んだ(Aksoy, S.ら, J. Biol. Chem. 269 (1994) 14835-14840)。ヒト癌における該酵素の潜在的役割については、文献ではほとんど知られていない。ある論文では、肝臓NNMTの酵素活性の増大が、マウスにおいて、癌悪液質のマーカーであると報告された (Okamura, A.ら, Jpn. J. Cancer Res. 89 (1998) 649-656)。最近の報告では、放射線感受性細胞株内の放射線に応答したNNMT遺伝子の下方調節が示された (Kassem, H.ら, Int. J. Cancer 101 (2002) 454-460)。
最近 (WO 2004/057336)、NMMTが、CRCの評価において重要であろうことがわかった。WO 2004/057336に記載されたイムノアッセイは、本研究の試料(CRC、健常対照および非悪性結腸疾患)を測定するために使用した。
当業者には認識されるように、検査中の診断上の疑問点を改善するために2種類以上のマーカーの測定値を使用する方法はたくさんある。それでもなお多くの場合有効なアプローチであるが、簡単に言うと、検査中マーカーの少なくとも1つに対して試料が陽性である場合、陽性結果とみなされる。これは、例えば、AIDSなどの感染性疾患の診断の場合であり得る。
しかしながら、しばしば、マーカーの組合せが評価される。好ましくは、マーカーパネルのマーカー、例えば、IPYR、CYFRA 21-1およびNSEについて測定された値は、数学的に合わせ、合わせた値を、内在する診断上の疑問点と相関させる。マーカー値は、任意の適切な当該技術分野の水準の数学的方法によって組み合わせられ得る。マーカーの組合せを疾患と相関させるための周知の数学的方法、例えば、discriminantanalysis (DA) (すなわちlinear-, quadratic-, regularized-DA)、Kernel Methods (すなわちSVM)、Nonparametric Methods (すなわちk-Nearest-Neighbor Classifiers)、PLS (Partial Least Squares)、Tree-Based Methods (すなわちLogic Regression, CART, Random Forest Methods, Boosting/Bagging Methods)、Generalized Linear Models (すなわちLogistic Regression)、Principal Components based Methods (すなわちSIMCA)、Generalized Additive Models, Fuzzy Logic based Methods、Neural NetworksおよびGenetic Algorithms based Methodsなどの方法が使用される。当業者は、本発明のマーカーの組合せを評価するために、問題なく適切な方法を選択するだろう。好ましくは、本発明のマーカーの組合せを、例えばCRCの有無と相関させるのに使用される方法は、DA (すなわちLinear-, Quadratic-, Regularized Discriminant Analysis)、Kernel Methods (すなわちSVM)、Nonparametric Methods (すなわちk-Nearest-Neighbor Classifiers)、PLS (Partial Least Squares)、Tree-Based Methods (すなわちLogic Regression, CART, Random Forest Methods, Boosting Methods)、またはGeneralized Linear Models (すなわちLogistic Regression)から選択される。これらの統計的方法に関する詳細は、以下の参考文献:Ruczinski, I.ら, J. of Computational and Graphical Statistics, 12 (2003) 475-511; Friedman, J. H., J. of the American Statistical Association 84 (1989) 165-175; Hastie, Trevor, Tibshirani, Robert, Friedmann, Jerome, The Elements of Statistical Learning, Springer Series in Statistics, 2001; Breiman, L., Friedman, J. H., Olshen, R. A., Stone, C. J. (1984) Classification and regression trees, California: Wadsworth; Breiman, L., Random Forests, Machine Learning, 45 (2001) 5-32; Pepe, M. S., The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction, Oxford Statistical Science Series, 28 (2003); および Duda, R. O., Hart, P. E., Stork, D. G., Pattern Classification, Wiley Interscience, 第2版 (2001)に見られる。
生物学的マーカーの潜在的な組合せに対して最適な多変量カットオフ(cut-off)を使用し、状態Aを状態Bと、例えば、疾患状態を健常と区別することは、本発明の好ましい態様である。この型の解析では、マーカーは、独立的ではなくマーカーパネルを形成する。IPYR、NSEおよびCYFRA 21-1の測定を組み合わせることで、健常対照と比べて、または同様に評価された健常対照+非悪性疾患対照と比べて、CRCの診断の精度を、特に改善することが確立され得る。特に、後者の所見は、非悪性疾患の患者が、CRCの患者と相当異なる治療を必要とし得るため非常に重要である。
試験の精度は、その受信者動作特性(ROC)によって最もよく示される(特にZweig, M.H.およびCampbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577を参照のこと)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって判定閾値を連続的に変えることにより得られる全ての感度/特異性の組のプロットである。
実験室試験の臨床的成績は、その診断の精度または被験体を臨床的に関連する亜群へと正確に分類する能力に依存している。診断の精度は、検査を受けた被験体の2つの異なる状態を正確に区別する試験の能力を評価するものである。かかる状態は、例えば健康と疾患または良性疾患対悪性疾患である。
各場合において、ROCプロットは、判定閾値の全範囲で1−特異性に対して感度をプロットすることにより2つの分布間の重複を示す。Y軸上は感度、または真陽性の割合[(真陽性試験結果の数)(真陽性の数+偽陰性試験結果の数)として定義される]である。これはまた、疾患または症状の存在下において陽性と称されている。それは罹患した亜群単独から算出される。X軸上は偽陽性の割合、すなわち1−特異性[(偽陽性結果の数)/(真陰性の数+偽陽性結果の数)として定義される]である。これは特異性の指標であり、罹患していない亜群単独から算出される。真陽性および偽陽性の割合は、2つの異なる亜群由来の試験結果を用いて全く別々に算出されるため、ROCプロットは試料中の疾患の罹患率から独立している。ROCプロット上の各点は、特定の判定閾値に対応する感度/1−特異性の組を表している。完全な区別を伴う試験は(結果の2つの分布に重複がない)、左上の角を通るROCプロットを有し、この場合、真陽性の割合は1.0または100%(完全な感度)であり、偽陽性の割合は0(完全な特異性)である。区別を伴わない試験の理論的プロット(2つの群の結果の分布が同一)は、左下の角から右上の角に向かって45度の斜め線となる。ほとんどのプロットはこれらの両極間に含まれる。(ROCプロットが45度の斜め線の下方に完全に含まれる場合、これは「陽性度(positivity)」についての基準を「より大きい」から「より少ない」に入れ換えることにより容易に修正される。逆も同じ)。定性的には、プロットが左上の角に近づくにしたがって、試験の全体的な精度は高くなる。
実験室試験の診断の精度を定量化するためのある都合のよい最終目標は、単独の数によりその成績を表すことである。最も一般的な世界的尺度はROCプロットの下の面積である。慣例により、この面積は常に≧0.5である(もしそうでなければ、そうなるように決定基準を入れ換え得る)。数値は1.0(2群の試験値の完全な分離)と0.5(2群間の試験値に明らかな分布の差が無い)の間の範囲である。該面積は、該斜め線に最も近い点または90%特異性における感度などのプロットの特定の部分だけでなく、全プロットにも依存する。これは、ROCプロットが完全なもの(面積=1.0)にどれだけ近いかということの定量的で説明的な表現である。
IPYRと、CYFRA 21-1もしくはNMMTなどの他の最近見出されたマーカー、またはCEAおよびNSEなどの公知のマーカー、またはまだ見出されていないCRCの他のマーカーの測定を組み合わせることは、それぞれ、CRCの評価のさらなる改善をもたらすか、またはもたらすだろう。
以下の実施例、参考文献、および配列表は、本発明の理解を補助するために提供され、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載する。本発明の精神から逸脱せずに、手順において変更がなされ得ることを理解されたい。
略語
ABTS 2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリンスルホネート(6)]ジアンモニウム塩
BSA ウシ血清アルブミン
cDNA 相補DNA
CHAPS (3-[(3-コラミドプロピル)-ジメチルアンモニオ]-1-プロパン-スルホネート)
DMSO ジメチルスルホキシド
DTT ジチオトレイトール
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ELISA 酵素免疫測定法
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
IAA ヨードアセトアミド(iodoacetamid)
IgG 免疫グロブリンG
IEF 等電点電気泳動
IPG 固定化pH勾配
LDS ドデシル硫酸リチウム
MALDI-TOF マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法−飛行時間型質量分析
MES メシチル-2,4,6-トリメチルフェニル
OD 光学濃度
PAGE ポリアクリルアミドゲル電気泳動
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PI 等電点
RTS ラピッドトランスレーションシステム
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
実施例1
潜在的な結腸直腸癌のマーカーとしてのIPYRの同定
組織源
結腸直腸癌の潜在的な診断的マーカーとしての腫瘍特異的タンパク質を同定するために、プロテオミクス法を用いて3つの異なる種類の組織の分析を行う。
総計で結腸直腸癌を患う10人の患者からの組織標本を分析する。各患者から治療的切除に由来する3つの異なる組織の種類:腫瘍組織(>80%腫瘍)(T)、近隣の健康な組織(N)、および近隣の健康な粘膜からのはぎ取った粘膜(M)を収集する。後者の2つの組織の種類は適合(matched)する健康対照標本とする。組織を切除の直後、即座に凍結させ、処理の前に-80℃で貯蔵する。腫瘍を組織病理学的基準によって診断する。
組織の調製
0.8〜1.2 gの凍結組織を乳鉢に入れ、液体窒素により完全に凍結させる。組織を乳鉢の中で微粉状にし、10倍容量(w/v)の溶解緩衝液(40 mMクエン酸Na(Na-citrate)、5 mM MgCl2、1%ゲナポール(Genapol) X-080、0.02%アジ化Na(Na-azide)、Complete(登録商標) EDTA非含有 [Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号1 873 580] )に溶解し、その後Wheaton(登録商標)ガラスホモジナイザー(20 x ゆるいフィッティング(loose fitting)、20 x きつい(tight)フィッティング)でホモジナイズする。3 mlのホモジネートを1時間、4,500 x gで、ショ糖密度遠心分離(10〜60%のショ糖)に供する。この遠心分離工程の後、3つの画分を得る。勾配の頂部の画分は、可溶性タンパク質を含有し、さらなる分析に用いる。
LC-ESI-MSMS分析のための試料の調製
供給業者のマニュアルの指示に従い、可溶性タンパク質画分のタンパク質濃度をBio-Rad(登録商標)タンパク質アッセイ(カタログ番号500-0006、Bio-Rad Laboratories GmbH, Muenchen, Germany)を用いて測定する。200 μgのタンパク質に相当する容積に、4 mlの還元緩衝液(9 M 尿素、2 mM DTT、100 mM KH2PO4、pH 8.2 NaOH)を加え、1時間インキュベートする。溶液をAmicon(登録商標) Ultra 10 kD デバイス(Millipore GmbH, Schwalbach, Germany)で250 μlに濃縮する。アルキル化のために、該250 μlを1 mlのアルキル化緩衝液(9 M 尿素、4 mM ヨードアセトアミド、100 mM KH2PO4、pH 8.2 NaOH)に移し、6時間インキュベートし、その後Amicon(登録商標) Ultra 10 kD デバイスで250 μlに濃縮する。洗浄のために1 mlの9 M 尿素を加え、再度Amicon(登録商標) Ultra 10 kD デバイスで250 μlに濃縮する。洗浄を3回繰り返す。
プロテアーゼ消化のために、濃縮した溶液を希釈して2.5 M 尿素にし、4 μgのトリプシン(プロテオミクスグレード、Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)と共に一晩インキュベートする。1 mlの1% ギ酸を加えることにより消化を止め、分析する。
LC-ESI-MSMS分析
トリプシン消化産物 (500 μl) を、SCXおよびRP Pepmep C18カラム (LC Packings, Idstein, Germany) からなる2次元Nano-HPLC-System (Ultimate, Famos, Switchos; LC Packings, Idstein, Germany) で分離する。90分のグラジエント(5〜95%のアセトニトリル)を用い、RPカラムで、連続的にさらに分離し、ESI-MSイオントラップ (LCQ deca XP; Thermo Electron, Massachusetts, USA; パラメーターについては表2参照) で、データ依存的スキャンを用いてオンライン分析する、11個のSCX画分(0、5、10、25、50、100、200、300、400、500、1,500 mM NH4Acを用いる段階溶離)を得る。各試料について、3回のランを行う。表2に記載されたパラメーターを用いて、生のデータをBioworks 3.1ソフトウェア(Thermo Electron, Massachusetts, USA)で処理する。反復ランから得られる同定されたペプチドおよびタンパク質の併せたリストを得る。
タンパク質IPYRは、表1に与えた配列を用いて同定する。
結腸直腸癌の潜在的マーカーとしてのIPYRの検出
各患者について、腫瘍試料から同定されたタンパク質、および対応するペプチドの数を、近隣の正常な組織、およびはぎ取った正常な粘膜組織に由来する対応する結果と比較する。この手段によって、タンパク質IPYRは、腫瘍組織において、特異的に発現されているか、または強く過剰発現されており、健康な対照組織においては、検出し得ない、もしくは少しは検出し得るか、または少し強く発現されていることがわかる。したがって、多くの他のタンパク質の中で、IPYRは、結腸直腸癌の診断における使用のための候補マーカーとして適する。
タンパク質IPYRは、結腸直腸癌を患う患者に由来する腫瘍組織において過剰に提示される(over-represented)。表1に記載したタンパク質IPYRのペプチド配列は、腫瘍組織についてBioworks 3.1形式LCQ-MS2-dataを用いて同定した。
実施例2
結腸直腸癌のマーカータンパク質IPYRに対する抗体の産生
免疫検出アッセイ、例えばウエスタンブロッティングおよびELISAによる、IPYRの血清中濃度、および血漿中濃度、ならびに血中濃度の測定における、抗体のさらなる使用のために、結腸直腸癌のマーカーのタンパク質IPYRに対するポリクローナル抗体を産生させる。
大腸菌(E. coli)における組み換えタンパク質の発現
IPYRに対する抗体を産生させるために、免疫原を得るために、タンパク質の組み換え発現を行う。RTS 100発現系および大腸菌の組み合わせを適用することにより発現させる。最初の段階において、「ProteoExpert RTS E.coli HY」システムを用いて、該DNA配列を分析し、高収率のcDNAサイレント突然変異体、およびそれぞれのPCRプライマー配列についての推奨を得る。これは商業的なウェブに基づくサービス(www.proteoexpert.com)である。推奨されるプライマー対を用い、cDNAから線状PCR鋳型を産生させるための、ならびにIPYRタンパク質をコードするヌクレオチド配列のインビトロの転写および発現のための、「RTS 100大腸菌線状鋳型産生セット、His標識(RTS 100 E. coli Linear Template Generation Set, His-tag)」(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号3186237)を用いる。ウエスタンブロット検出および後の精製のために、発現されるタンパク質はHis標識を含む。最もよく発現する変異体を同定する。PCRから発現および検出までのすべての工程は、製造業者の使用説明書に従って行う。すべての必要なT7調節領域(プロモーター、リボソーム結合部位、およびT7ターミネーター)を含むそれぞれのPCR産物を、製造業者の使用説明書に従い、pBAD TOPO(登録商標)ベクター(Invitrogen, Karlsruhe, Germany, カタログ番号K 4300/01)の中にクローン化させる。T7調節配列を用いる発現のために、該構築物を大腸菌BL 21 (DE 3) に形質転換させ (Studier, F.W.,ら, Methods Enzymol. 185 (1990) 60〜89) 、形質転換された細菌をタンパク質発現のために1 lのバッチで培養する。
His-IPYR融合タンパク質の精製を、Niキレートカラムで、標準的な手順に従って行う。手短に言えば、His-IPYR融合タンパク質の発現ベクターを含有する1 lの細菌培養物を遠心分離によりペレット状にする。pH 8.0のリン酸塩、7 Mグアニジニウムクロリド(guanidium chloride)、イミダゾール、およびチオグリセロールを含有する溶菌緩衝液に、細胞ペレットを再懸濁させ、その後にUltra-Turrax(登録商標)を用いてホモジナイズする。不溶性物質を高速遠心分離によりペレット状にし、上澄みをNiキレートクロマトグラフ用カラムに与える。数カラム床体積の溶菌緩衝液でカラムを洗浄し、その後pH 8.0のリン酸塩、および尿素を含有する緩衝液で洗浄する。最後に、酸性条件下でSDSを含有するリン酸塩緩衝液を用いて、結合抗体を溶出する。
IPYRに対するモノクローナル抗体の産生
a)マウスの免疫化
最初に100 μgのIPYRで12週齢のA/Jマウスを腹腔内で免疫する。これに続いて6週間後に、1箇月間隔で2回さらに腹腔内で免疫する。この方法において、各マウスに、水酸化アルミニウムに吸着された100 μgのIPYR、および細菌数109の百日咳菌(Bordetella pertussis)を投与する。その後、最後の2回の免疫化を、各々についてPBS緩衝液中の100 μgのIPYRを用いる融合の3日前、および2日前に、静脈内で行う。
b)融合およびクローニング
a)に従って免疫したマウスの脾臓細胞を、Galfre, G.およびMilstein, C., Methods in Enzymology 73 (1981) 3〜46による骨髄腫細胞と融合させる。この方法において、免疫したマウスの約1*108の脾臓細胞を2x107の骨髄腫細胞(P3X63-Ag8-653, ATCC CRL1580)と混合し、遠心分離する(300 x g で10分、および4℃)。次いで細胞をウシ胎児血清(FCS)なしのRPMI 1640培地で一度洗浄し、50 mlの円錐管で、400 x gで再度遠心分離する。上澄みを捨て、細胞沈降物を軽くたたくことにより穏やかに緩め、1 mlのPEG(分子量4,000, Merck, Darmstadt)を加え、ピペッティングにより混合する。1分間37℃の水浴の中に入れた後、FCSなしの5 mlのRPMI 1640を室温で4〜5分の時間内で一滴ずつ加える。その後、10%のFCSを含有する5 mlのRPMI 1640を、約1分以内で一滴ずつ加え、完全に混合し、培地(RPMI 1640+10% FCS)を満たして50 mlにし、続いて400 x g で10分間、および4℃で遠心分離する。沈降した細胞を10%のFCSを含有するRPMI 1640培地で溶かし、ヒポキサンチン-アザセリン選択培地(RPMI 1640+10% FCS中の100 mmol/l ヒポキサンチン、1 μg/ml アザセリン)中に広める。成長因子として100 U/mlのインターロイキン 6を培地に加える。
約10日後に初代培養物を特異的抗体に対して試験する。IPYR陽性初代培養物を、蛍光活性化セルソーターによって、96ウェル細胞培養プレートでクローン化させる。この方法において、再度成長添加物として100 U/mlのインターロイキン 6を培地に加える。
c)細胞培養物上澄みからの免疫グロブリンの単離
得られたハイブリドーマ細胞を、10%のFCSを含有するRPMI 1640培地に、1 mlあたり1x105細胞の密度で播種し、発酵槽(Thermodux Co., Wertheim/Main, Model MCS-104XL, 注文番号144-050)の中で7日間増殖させる。培養物上澄みにおいて、平均して1 mlあたり100 μgのモノクローナル抗体の濃度が得られる。培養物上澄みからのこの抗体の精製を、タンパク質化学における常套の方法(例えばBruck, C.ら, Methods Enzymol. 121 (1986) 587〜695による)により行う。
ポリクローナル抗体の作製
a)免疫化
免疫化のために、タンパク質溶液の新鮮なエマルション(100 μg/mlのタンパク質IPYR)および1:1の比のフロイント完全アジュバントを調製する。各ウサギを1日目、7日目、14日目、ならびに30日目、60日目、および90日目に1 mlのエマルションで免疫する。血液を取り、生じた抗IPYR血清を、実施例3および実施例4に記載したように、さらなる実験に用いる。
b)カプリル酸および硫酸アンモニウムを用いた連続的沈殿によるウサギ血清からのIgG(免疫グロブリン G)の精製
ウサギ血清1容を酢酸塩緩衝液(60 mM、pH 4.0)4容で希釈する。pHを2 M Tris塩基で4.5に調節する。カプリル酸(25 μl/mlの希釈した試料)を激しい攪拌のもとで1滴ずつ加える。30分後、試料を遠心分離し(13,000 x g、30分、4℃)、ペレットを捨て、上澄みを収集する。2 M Tris塩基を加えることにより上澄みのpHを7.5に調節し、濾過する(0.2 μm)。
上澄みの中の免疫グロブリンを、激しい攪拌のもとで、4 M硫酸アンモニウム溶液を1滴ずつ添加して沈殿させ最終濃度を2 Mにする。沈殿した免疫グロブリンを遠心分離(8,000 x g、15分、4℃)により収集する。
上澄みを捨てる。ペレットを10 mM NaH2PO4/NaOH、pH 7.5、30 mM NaClに溶解し、完全に透析する。透析物を遠心分離し(13,000 x g、15分、4℃)、濾過する(0.2 μm)。
ポリクローナルウサギIgGのビオチン化
ポリクローナルウサギIgGを10 mM NaH2PO4/NaOH、pH 7.5、30 mM NaClで10 mg/mlにする。IgG溶液1 mlあたり50 μlのビオチン-N-ヒドロキシスクシンイミド(DMSO中の3.6 mg/ml)を加える。室温で30分放置した後に、試料をSuperdex 200でクロマトグラフィーによって分離する(10 mM NaH2PO4/NaOH、pH 7.5、30 mM NaCl)。ビオチン化IgGを含有する画分を収集する。モノクローナル抗体を、同じ手順によってビオチン化する。
ポリクローナルウサギIgGのジゴキシゲニン化(Digoxygenylation)
ポリクローナルウサギIgGを10 mM NaH2PO4/NaOH、30 mM NaCl、pH 7.5で10 mg/mlにする。IgG溶液1 mlあたり50 μlのジゴキシゲニン-3-O-メチルカルボニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany, カタログ番号1 333 054)(DMSO中3.8 mg/ml)を加える。室温で30分放置した後に、試料をSuperdex(登録商標) 200でクロマトグラフィーによって分離する(10 mM NaH2PO4/NaOH、pH 7.5、30 mM NaCl)。ジゴキシゲニン化IgGを含有する画分を収集する。モノクローナル抗体を、同じ手順によってジゴキシゲニンで標識する。
実施例3
実施例2で生成させたポリクローナル抗体を用いたヒト結腸直腸癌組織におけるIPYRの検出のためのウエスタンブロッティング
腫瘍試料および健康対照試料からの組織溶解物を実施例1「組織の調製」に記載されるように調製する。
SDS-PAGE、およびウエスタンブロッティングをInvitrogen, Karlsruhe, Germanyの試薬、および装置を用いて行う。試験した各組織試料について、10 μgの組織溶解物を還元性(reducing)NuPAGE(登録商標) (Invitrogen) SDS試料緩衝液で希釈し、10分間95℃で加熱する。試料をMES泳動(running)緩衝液系中で4〜12%のNuPAGE(登録商標)ゲル (Tris-グリシン) において泳動させる。Invitrogen XCell IITM Blot Module (Invitrogen) およびNuPAGE(登録商標)移行緩衝液系を用いて、ゲルで分離したタンパク質混合物をニトロセルロース膜にブロットする。膜をPBS/0.05% Tween-20で3回洗浄し、Roti(登録商標)-Blockブロッキング(blocking)バッファー(A151.1; Carl Roth GmbH, Karlsruhe, Germany)で2時間ブロックする。一次抗体、ポリクローナルウサギ抗IPYR血清(実施例2で記載した産生)をRoti(登録商標)-Blockブロッキングバッファーで1:10,000で希釈し、1時間膜とともにインキュベートする。膜をPBS/0.05% Tween-20で6回洗浄する。特異的に結合した一次ウサギ抗体をPOD結合ポリクローナルヒツジ抗ウサギIgG抗体で標識し、0.5 x Roti(登録商標)-Blockブロッキングバッファーで希釈して10 mU/mlにする。1時間のインキュベーションの後、膜をPBS/0.05% Tween-20で6回洗浄する。結合したPOD結合抗ウサギ抗体の検出のために、膜をLumi-LightPLUSウエスタンブロッティング基質(Western Blotting Substrate) (注文番号2015196, Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)とともにインキュベートし、オートラジオグラフのフイルムに露光させる(exposed)。
実施例4
ヒト血清および血漿試料におけるIPYRの測定のためのELISA
ヒト血清および血漿におけるIPYRの検出のために、サンドイッチ型ELISAを展開(developed)する。抗原の捕捉および検出のために、抗IPYRポリクローナル抗体のアリコート(実施例2参照)をビオチンおよびジゴキシゲニンとそれぞれ結合させる。
ストレプトアビジン被覆96ウェルマイクロウェルプレートを、10 mMリン酸塩、pH 7.4、1% BSA、0.9% NaCl、および0.1% Tween 20で10 μg/mlにした、100 μlのビオチン化抗IPYRポリクローナル抗体とともに、60分間インキュベートする。インキュベーションの後、プレートを0.9% NaCl、0.1% Tween 20で3回洗浄する。次いで、標準抗原としての組み換えタンパク質の連続希釈物(実施例2参照)、または患者から得られた希釈した液体試料のいずれかとともに、ウェルを2時間インキュベートする。IPYRの結合の後、プレートを0.9% NaCl、0.1% Tween 20で3回洗浄する。結合したIPYRの特異的検出のために、10 mMリン酸塩、pH 7.4、1% BSA、0.9% NaCl、および0.1% Tween 20で10 μg/mlにした、100 μlのジゴキシゲニン化抗IPYRポリクローナル抗体とともにウェルを60分間インキュベートする。その後プレートを3回洗浄し、結合した抗体を除去する。次の工程において、10 mMリン酸塩、pH 7.4、1% BSA、0.9% NaCl、および0.1% Tween 20中の20 mU/mlの抗ジゴキシゲニン-POD結合体 (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号1633716)とともにウェルを60分間インキュベートする。その後プレートを同じ緩衝液で3回洗浄する。抗原抗体複合体の検出のために、100 μlのABTS溶液 (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号11685767)とともにウェルをインキュベートし、30〜60分後ELISAリーダーを用い405 nmでODを測定する。
実施例5
診断の正確さの点からの臨床的有用性を評価するためのROC解析
十分に特性付けがなされた患者のコホート、すなわち結腸鏡検査を受け、腺腫、またはCRCを有さないことがわかった50人の患者、CRCのTis-3、N0、M0と診断され、病期分類がなされた50人の患者、および少なくとも1つの近位リンパ節において少なくとも腫瘍浸潤物を有する、またはより重篤な形態の転移を有する進行したCRCと診断された50人の患者それぞれから得られた個々の液体試料を分析することにより正確さを評価する。市販されているアッセイ (Roche Diagnostics, CEAアッセイ (Elecsys(登録商標) Systems イムノアッセイアナライザーについてのカタログ番号1 173 1629) によって測定されるようなCEA、および上記のように測定されるIPYRをこれらの個体の各々から得られた血清で定量する。上掲のZweig, M. H.およびCampbellに従ってROC解析を行う。RCN1と確立されたマーカーCEAとの組み合わせについて健康な個体とTis-3、N0、M0のグループの患者とを区別する識別能力を正規化(regularized)判別分析により算出する(Friedman, J.H., Regularized Discriminant Analysis, Journal of the American Statistical Association 84 (1989) 165〜175)。
予備的なデータは、IPYRが手術後の患者の追跡調査においてもまた非常に有用であり得ることを示す。
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Claims (10)

  1. 試料中の
    a)IPYR(=無機ピロホスファターゼ)
    b)任意に、結腸直腸癌の1つ以上の他のマーカー
    の濃度を測定すること、および
    c)結腸直腸癌の評価において、工程(a)、および任意に工程(b)において測定された濃度を用いることを含む、
    インビトロで結腸直腸癌を評価する方法。
  2. 前記試料が血清であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 前記試料が血漿であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
  4. 前記試料が全血であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
  5. 前記1つ以上の他のマーカーがNSE、CYFRA 21-1、NNMT、CA 19-9、CA 72-4、およびCEAからなる群より選択されることをさらに特徴とする、請求項1〜4いずれか記載の方法。
  6. 結腸直腸癌の評価におけるマーカー分子としてのタンパク質IPYRの使用。
  7. 結腸直腸癌の評価における、IPYR、および結腸直腸癌の1つ以上の他のマーカーを含むマーカーパネルの使用。
  8. 1つ以上の他のマーカーがNSE、CYFRA 21-1、NNMT、CA 19-9、CA 72-4、およびCEAからなる群より選択される、請求項7記載のマーカーパネルの使用。
  9. IPYRを測定するために必要とされる試薬を含む、請求項1記載の方法を行うためのキット。
  10. IPYRおよび結腸直腸癌の1つ以上の他のマーカーを測定するために必要とされる試薬を含む、請求項5記載の方法を行うためのキット。
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