本発明は、輻射エネルギを用いてガス化対象物を熱化学的に吸熱反応させてガス化させる装置に係り、特にガス化対象物の主成分が有機化合物と水であり、より具体的には該有機化合物が、草本類や木本類等の所謂バイオマスや農業系乃至食品系有機廃棄物或いは廃プラスチックや廃油等の有機系廃棄物であって、それらの有機系化合物を輻射吸熱反応によってガス化することで、水素及び一酸化炭素を主成分とする生成ガスを得るための輻射吸熱反応装置若しくは輻射吸熱反応炉に関するものである。
元来、固体系バイオマスのエネルギ変換は、直接燃焼による熱利用が主であった。しかしながらこのような固体系バイオマスを燃料とする直接燃焼によるエネルギ変換の場合、高度なエネルギ利用は困難であった。
例えば、固体系バイオマス燃料の直接燃焼による熱を利用して発電する場合、木質チップ・ボイラで水蒸気を発生させ、その水蒸気のエネルギでタービンを回動させて発電する方式の水蒸気タービン発電が採られるが、実プラントでは1000〜3000kW規模で8〜12%の発電効率に止まり、100kW程度の小規模プラントにあっては電力出力は得られないというのが実状である。
また、固体系バイオマス燃料は、吸湿による乾度変化があって保存性が悪い上、占有容積が大きく輸送や保管に不向きであって汎用性に欠ける。
これらのことからも明らかな通り、バイオマス系エネルギの高度利用のためには、固体系バイオマスを液体系燃料へ転換することが不可欠であり、バイオマスの液体系燃料化は、燃料性状の均一化や安定化、減容化や軽量化、輸送性や保管性の向上、並びに自動車やバイク或いは発電機等の各種内燃機関系原動機用の燃料化等による汎用性の向上などの観点から望ましい。
それらのような観点から固体系バイオマスを直接燃焼用の固体燃料とせず、固体系バイオマスを直接的に液体燃料化するバイオマスの液体燃料化技術が開発されている。そのような従来のバイオマスの液体燃料化技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2を挙げることができる。それら特許文献1や特許文献2に開示されている技術は、原料とするバイオマスの中でも糖質や澱粉質等の成分のみを利用し、それらの成分を醗酵させることによってエタノールを主成分とする液体燃料を得るというものである。
しかしながら、原料として用いられるバイオマスの糖質や澱粉質等の成分以外の部分は、燃料化不能な廃棄物とされるという問題がある。また、糖質や澱粉質を効率的に得るための原料バイオマスとしては、主としてサトウキビやトウモロコシ等に代表される食用植物が適していることから食料利用との競合が問題となる上、耕作面積当りの収穫量が少ないという問題がある。これらの点においては、植物油にメタノールを添加することによってエステル化して成るバイオディーゼル油燃料も同様の問題を抱えている。
これらのような従来の問題、即ち、バイオマス系エネルギの変換効率の低さや汎用的利用性の無さ、或いは、原料バイオマスの食用との競合や耕作面積当量収量の少なさといった諸問題に鑑み、現在までにバイオマス系エネルギの高度利用のための技術の中核を成すガス化技術の開発が、本発明者等を中心として進められてきた。そのガス化技術は、各種バイオマスを原料としてそれらのガス化を行なうものであって、燃料ガスとして使用することが可能な生成ガスを得たり、所要の液体燃料を合成することが可能な生成ガスを得るためのものである。
そのガス化技術の従来例としては、特許文献3や特許文献4の技術を挙げることができる。それらの従来のガス化技術の核心は、空気又は酸素の理論量以下でバイオマスを半燃焼させる部分酸化法を採用している点にある。しかしながら、この方法によれば、煤やタールの発生量が多く、発熱に使われた排ガスが生成ガスに混入するため、高品質の生成ガスを得ることはできなかった。
他方、本発明者等によって、近年、バイオマスを利用する発電用ガスエンジンに適合する高カロリでクリーンな燃料ガスが得られる浮遊外熱式ガス化方法が開発された。その内容は、特許文献5乃至7に開示されている。それら特許文献5乃至7に開示されている技術は、バイオマスを燃料及び原料として、燃料バイオマスを燃焼させて高温ガスを得つつ、その熱を利用して原料バイオマスを加熱してガス化することで所要の生成ガスを得ることを主たる目的とするものである。
特許文献5に開示の技術は、バイオマスの燃焼空間と、バイオマスのガス化空間とを分離して有し、該燃焼空間から得られる燃料バイオマスを完全燃焼させて成る完全燃焼高温ガスを、複数の透孔を通じて該ガス化空間に均一に供給することによって、該ガス化空間中の原料バイオマスを均一にガス化させるものである。
これによって、燃焼空間における燃料バイオマスと酸素との発熱反応と、ガス化空間における原料バイオマスの吸熱反応とを、各々に制御してバイオマスをガス化することが可能となり、従来に無い高品質の燃料ガスを得ることが可能となった。
しかし、このガス化技術においては、微細な透孔を多数加工しなければならない上、原料バイオマスの均一なガス化が、複数の透孔を通じてガス化空間に供給する完全燃焼ガスに依存するものであるため、生成ガス中に、炭酸ガスと窒素ガスが量的制御を出来ないまま多量に混入して該生成ガスの品質を低下させるという問題がある。
特許文献6及び特許文献7に開示の技術は、特許文献5の技術の問題点を概ね解決しているものの、以下の点を含む解決乃至改善すべき技術的課題を抱えている。
特許文献6及び特許文献7の技術における第一の欠点は、ガス化するためのバイオマス原料が3mm以下の粉末でなければならず、必要な粉砕動力が大きいということの他、10〜20mm以上の粗粉ではトラブルの原因となるという点である。
特許文献6及び特許文献7の技術における第二の欠点は、ガス化空間に供給される水蒸気が、原料バイオマス粉体を該ガス化空間に供給するための粉体供給口から洩出し、該粉体供給口に連通した粉体供給ホッパに結露して、原料バイオマス粉体を高含水化し、粉体の平滑な供給を困難にすると共に、水の潜熱の大きさからガス化反応室のガス化能力を著しく低下させるという点である。
特許文献6及び特許文献7の技術における第三の欠点は、得られる生成ガスの組成は、水素分の比率が低く、燃料ガスとして不向きであり、且つ、そのままメタノールやGTLなどを合成するための原料ガスとして用いるには不十分であるという点である。
特開2004−208667号公報
特開2004−337099号公報
特開平9−263776号公報
特開2001−240878号公報
特開2002−88379号公報
特開2004−51717号公報
特開2004−51718号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、バイオマス系エネルギの変換効率の向上と汎用的利用性の向上などのバイオマス系エネルギの高度利用を可能とするべく、或いは、現代社会の化石燃料依存の現状から脱皮するための化石燃料代替エネルギの供給を可能とする技術を欲する時代の強いニーズに応えるべく創作されたものであり、雑草などに代表される草本類或いは間伐材や廃木材を含む木本類等の固体系バイオマスをはじめとする有機化合物を、所要の生成ガスを得るための原料として利用することが可能な輻射吸熱反応装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、従来有用視されてこなかった上記の如くの有機化合物を原料としつつ、それらを微粉化することなく使用することを可能とすると共に、煤やタールを殆ど含まず純度の高い水素と一酸化炭素を主成分とする生成ガスを得ることが出来る輻射吸熱反応装置を提供することを目的とする。更に、本発明は、比較的小型な装置でありながらも、得られた生成ガスをそのままガスエンジンやガスタービンの駆動源として利用することも可能で、その際の発電効率を、木質チップを燃料とする蒸気タービンを用いた大型の蒸気タービン発電装置よりも高効率に出来る輻射吸熱反応装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の輻射吸熱反応装置は、適宜の加熱手段によって加熱して、ガス化対象物をガス化するためのガス化室と、このガス化室内側に存在させる適宜の固体とを備え、上記ガス化対象物が、有機化合物を主成分とする第一のガス化物と、水を主成分とする第二のガス化物とから成り、ガス化室内に第一のガス化物を存在させると共に、適宜の加熱手段によってガス化室を加熱することで、第二のガス化物を気相状態にしてガス化室内を水蒸気で満たし、且つ、ガス化室内側に存在する固体から輻射エネルギをガス化室内に放出させ、第一のガス化物をガス化室内の水蒸気雰囲気下において加熱し、第一のガス化物と第二のガス化物とを熱化学的に吸熱反応させることによって、所要のガスを生成するように構成したことを特徴としている。
加熱手段は、ガス化室内において燃料を燃焼させることなく適宜の熱量を得ることが出来るものであることが好ましい。加熱手段によるガス化室内の加熱は、好ましくは、輻射乃至熱伝導によるものである。この加熱手段によるガス化室の加熱は、該ガス化室の外部から行われるものであってもよい。また、加熱手段は、好ましくは、草本類乃至木本類を燃焼させて燃焼系の高温ガスを生成する高温ガス発生装置から得られる該高温ガスである。
ガス化室は、その室内外の熱の出入りを抑制するように構成される断熱室内に配設されていてもよい。
ガス化室の内側に存在する固体は、ガス化室の内壁を構成する物質であってもよく、または、ガス化室を上下に画成する多穴体であって、多穴体が上下に連通した複数の穴乃至孔を有していてもよい。
ガス化室は、このガス化室内に第一のガス化物を導入するための第一ガス化物導入手段を備えることができる。また、ガス化室は、ガス化室内に第二のガス化物を導入するための第二ガス化物導入手段を備えていてもよい。
第一ガス化物導入手段は、第一のガス化物をガス化室内に導入するための第一ガス化物導入口を有し、第一ガス化物導入口が、ガス化室の上部に配設されていてもよい。また、第一のガス化物が、第一ガス化物導入口を通じて、ガス化室の上方から下方に向かって該ガス化室内に導入されていてもよい。
第二ガス化物導入手段は、第二のガス化物をガス化室内に導入するための第二ガス化物導入口を有し、第二ガス化物導入口が、ガス化室の下部に配設されていてもよい。第二のガス化物は、好ましくは、第二ガス化物導入口を通じて、ガス化室の下方から上方に向かってガス化室内に導入される。
第二のガス化物は、好ましくは、予め所定温度に加熱され、過熱水蒸気としてガス化室内に導入される。
ガス化室に導入する第二のガス化物の導入量は、ガス化室に導入される第一のガス化物の乾燥重量に対する重量比で、0.6以上となるように制御されていれば好ましい。
ガス化室内の温度は、好ましくは800℃以上、より好ましくは1000℃以上に保持されて吸熱反応を生じさせる。
ガス化室は、好ましくは、ガス化室に導入する無灰の第一ガス化物の導入量1kg/hに対して、該ガス化室内壁の温度を800℃とする場合、ガス化室内壁の表面積が0.008m2以上に設定され、ガス化室内壁の温度を1000℃とする場合、該ガス化室内壁の表面積が0.004m2以上に設定される。
ガス化室は、上流側に配設される第一のガス化室と、この第一のガス化室の下流側に配設される第二のガス化室とから成り、これら第一のガス化室と第二のガス化室とが互いに連通していてもよい。第二のガス化室は、好ましくは筒状をなす。
ガス化対象物は、二酸化炭素を主成分とする第三のガス化物を含んで成っていてもよい。
生成ガスは、好ましくは、水素、一酸化炭素、メタン、エチレンから選ばれる1つ以上の物質を主成分とする。
本発明の輻射吸熱反応装置は、過熱水蒸気雰囲気下且つ積極的に酸素を導入しない無酸素乃至低酸素状況下において、原料をガス化するようにしたことによって、雑草や間伐材等の従来有用視されていなかった有機化合物をはじめとするバイオマスのみならず、廃プラスチック、廃油、廃紙、糞尿、残飯、豆腐殻や酒粕等の食品系搾り滓等に代表される広範な有機系廃棄物等の多様な有機化合物を、ガス化の原料即ちガス化対象物として採用することを可能とすると共に、それらの有機化合物をガス化原料としながらも煤やタールの極めて少ない生成ガスを得ることが出来るという効果がある。
本発明の輻射吸熱反応装置は、ガス化室内の表面積を適宜に設定すると共に、これに対応してガス化室内を適宜温度に保持し、第一のガス化物の乾燥重量に対する第二のガス化物の重量比を所定値に制御することによって、水素、一酸化炭素、メタン、エチレン、二酸化炭素、水等を主成分とする所要の組成の生成ガスを、原料とする適宜の有機化合物から得ることが可能であって、ガス化室を、第一のガス化室とその下流側に連通配置した第二のガス化室とから構成したことにより、煤やタールがほぼ完全に分解若しくはガス化され、不純物の極めて少ない生成ガスを得ることが出来るという効果がある。
また、得られた生成ガスは、その燃焼時の運動エネルギ乃至熱エネルギを利用するガスエンジンに使用したり、或いはその生成ガスの廃熱を熱源とするボイラ等に利用することが可能である。更に、その後の生成ガスは、化石燃料並みの高温燃焼を可能とする燃料ガスとして利用したり、或いは、メタノールやGTL等の液体燃料を合成するための原料ガスとして採用することも可能である。
本発明の輻射吸熱反応装置は、ガス化室に、上下に連通した複数の穴を有してなる多穴体をガス化室内に配設してガス化室内の上下を画成し、第一のガス化物をガス化室の上部から導入すると共に、第二のガス化物を多穴体の下部より上昇流として供給するように構成できる。
この場合、第一のガス化物を直径約2cm以下に設定し且つ第二のガス化物を過熱水蒸気とすれば、第一のガス化物が室内において落下中にガス化しきれずに残留した際にも多穴板上に保留し得、この第一のガス化物の残留分は、長秒時間でガス化して行くが、生成ガス組成は、微粉化した第一のガス化物を原料とした場合の生成ガスに劣らず、高い水素濃度の生成ガスを得ることが出来る。従って、ガス化対象物である有機化合物を微粉化しなくてもほぼ完全にガス化することが可能であって微粉砕が要求されず、粉砕コストを軽減することが出来る。
本発明の輻射吸熱反応装置は、高熱伝導性を有し且つ高輻射性を有する材料でガス化室を構成し、ガス化室を断熱室内に配設したことにより、熱効率を向上させつつ、ガス化室内におけるガス化対象物のガス化に伴う熱化学的な吸熱反応に必要なエネルギを、ガス化室内側に存在する内壁やその他の固体からの輻射エネルギ及びそれら内壁や固体表面との接触による熱伝導によって伝達すること、及び、このエネルギの伝達に必要な熱量を、外部の加熱手段によって供給することが可能となる。
これによって、本発明の輻射吸熱反応装置は、熱電効果を利用した電気的加熱手段或いは化石燃料の燃焼によって得られる熱を利用する化石燃料燃焼加熱手段或いは廃プラスチックや廃紙を燃焼させて得られる熱を利用する廃棄物燃焼加熱手段或いはバイオマス系燃料を燃焼させることで得られる熱を利用するバイオマス燃焼加熱手段などの適宜の加熱手段を、ガス化室を加熱するための加熱手段として採用することが出来る。
また、本発明の輻射吸熱反応装置においては、ガス化室内におけるガス化対象物のガス化に係る化学反応が吸熱反応であるために、加熱手段によって外部から供給される熱エネルギの一部は、生成ガスの化学ポテンシャルとして該生成ガスに蓄えることが出来るという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図1を参照しながら詳細に説明する。本実施形態における輻射吸熱反応装置1は、バイオマスや有機系廃棄物等の有機化合物と水とをガス化対象物即ち主原料として、それらを熱化学的に吸熱反応させることによって、それらの原料から水素や一酸化炭素或いはメタンやエチレン等を主成分とする生成ガス2を得るための装置であって、その基本構成及び運転原理を表す概念図を図1に示す。
図1に示すように、本実施形態の輻射吸熱反応装置1の基本構成は、その内部においてガス化対象物をガス化するためのガス化室3と、このガス化室3内側に存在させる固体とを備える。尚、図1乃至図3においては、ガス化室3内における輻射エネルギ4を、細黒矢印(→)にて模式的に表し、第一のガス化物5、第二のガス化物6、ガス化室3に供給される熱7、生成ガス2、灰分8、高温ガスを、太白矢印(⇒)にて模式的に表すものとする。
ガス化対象物は、第一のガス化物5と、第二のガス化物6とから成る。第一のガス化物5は、雑草等に代表される草本類や間伐材を含む木本類等の所謂バイオマス或いは廃プラスチック、廃油、廃紙、糞尿、残飯、豆腐殻や酒粕等の食品系搾り滓等に代表される農業系乃至食品系或いはその他の有機系廃棄物等の広範な有機化合物を含むものであり、それらに含有される有機化合物を主成分とするものである。第二のガス化物6は、水を主成分とするものである。
ガス化室3は、外部と隔壁9で隔絶されて成り、その内部には所定の容積及び表面積のガス化空間10と、ガス化室3の外部からガス化室3の内部にガス化対象物を導入するためのガス化対象物導入口(図示せず)と、ガス化室3の内部において生成した生成ガス2をガス化室3の内部から排出するための生成ガス排出口(図示せず)と、ガス化室3内においてガス化対象物のガス化に伴って微量ながら生じた灰分8を排出するための灰分排出手段(図示せず)とを有する。
ガス化室3を成す隔壁9は、耐熱性や熱衝撃性に優れた素材から成り、所要の温度や温度変化に耐え得るように構成する。この隔壁9を構成する素材としては、例えば、コージェライトよりも耐熱性が高く、炭化ケイ素よりも熱衝撃に強いチタン酸アルミニウム等のセラミックスを用いることが出来る。このようなセラミックスを採用した場合には、耐熱性と対熱衝撃性が実用性あるレベルで両立出来、輻射吸熱反応装置1の運転可能温度範囲を向上させることが出来て好ましい。また、チタン酸アルミニウム等のセラミックス材の表面に、金属を主成分とする表面コーティングを施すことも可能である。この表面コーティング材としては、例えば高クロム/高ニッケル合金等の高耐熱性の合金を採用することが出来る。
ガス化室3内のガス化空間10の容積及び形状は、所要のガス化処理量に応じて適宜設定することが可能であるが、ガス化空間10はガス化の対象である第一のガス化物5を適宜量存在させることが出来る大きさ及び形状の空間に設定することが必要である。
ガス化室3内の表面積は、所要のガス化処理量に応じて適宜設定することが可能であるが、例えば、無灰乾燥バイオマスを第一のガス化物5として、その供給量を1kg/h、ガス化室3内における隔壁9の壁温を800℃とする場合、ガス化室3内の表面積を少なくとも0.008m2以上とし、また、壁温を1000℃とする場合には表面積を少なくとも0.004m2以上に設定することが好ましい。
ガス化対象物導入口は、第一のガス化物5をガス化室3内に導入するための第一ガス化物導入口と、第二のガス化物6をガス化室3内に導入するための第二ガス化物導入口との二つの導入口に分けて配設することが出来る。それら第一ガス化物導入口及び第二ガス化物導入口は、所要のガス化処理量に応じて、口径や形状等を適宜設定することが可能である。勿論、それら第一ガス化物導入口及び第二ガス化物導入口は、それぞれ第一のガス化物5及び第二のガス化物6を適宜量、ガス化室3内に導入することができるものであればよく、それ以外特に限定されるものではないが、ガス化処理能力を向上すべく、それぞれの配設位置や構成を工夫することが好ましい。
生成ガス排出口は、所要のガス化処理量に応じて、口径や形状等を適宜設定することが可能である。勿論、生成ガス排出口は、ガス化室3内において生成した所要の生成ガス2をガス化室3外に排出することが出来るものであればよく、それ以外特に限定されるものではないが、ガス化処理能力を向上すべく、或いは、より一層純度を高めるべく、その構成を工夫することが好ましい。
灰分排出手段は、所要のガス化処理量に応じてガス化室3に設定されるものであり、ガス化室3内においてガス化対象物のガス化に伴って微量ながら生じた灰分8をガス化室3の外部に排出するためのものである。灰分排出手段としては、ガス化室3内において発生した灰分8を効率よくガス化室3の外部に排出若しくは取り出すことが出来るものであればよく、それ以外特に限定されるものではない。
以上のように構成した本発明の輻射吸熱反応装置1を使用する場合には、適宜の加熱手段によってガス化室3を加熱する。
この加熱手段としては、従来公知の多様な加熱手段を用いることが出来る。例えば、ガス化室3を、ガス化室3の外部から加熱する場合には、熱電効果を利用して加熱する電気的加熱手段、或いは、化石燃料の燃焼によって得られる熱を利用して加熱する化石燃料燃焼加熱手段、或いは、廃プラスチックや廃紙を燃焼させて得られる熱を利用して加熱する廃棄物燃焼加熱手段、或いは、バイオマス系燃料を燃焼させることで得られる熱を利用して加熱するバイオマス燃焼加熱手段等の適宜の加熱手段等から選ばれる1つ以上の加熱手段を、ガス化室3を加熱するための加熱手段として採用することが可能である。また、加熱手段は、ガス化室3の外部からの加熱のみならず、ガス化室3の内部からの加熱を行なうことが出来るように構成することも可能である。
ガス化室3内は、加熱手段によるガス化室3の加熱によって、所要の温度、好ましくは800℃以上、より好ましくは1000℃以上に保持する。この際、ガス化室3を成す隔壁9を、上記説明のように、チタン酸アルミニウム等のセラミックスや高クロム/高ニッケル合金等の高耐熱合金等で構成すれば、ガス化室3内の温度をより一層上昇させ得るようになり、ガス化室3内においてガス化対象物をガス化するための熱化学的な反応温度を高めることが可能になって、運転温度変動上の余裕を持たせることが可能になり、ガス化反応温度をより自由に選択し得るようになる。
従って、例えば、生成ガス2組成における水素の比率を高めて水素発生量を増加させる場合には、より高温下においてガス化対象物をガス化反応させることが求められるが、金属の耐熱温度限界に拘束されることなく、輻射吸熱反応装置1の運転可能温度を、より高温に設定することが可能となり、結果的に水素生成量を増加させることが出来る。
ガス化室3内には、このガス化室3内を所要の温度に保持しつつ、第一のガス化物5を第一ガス化物導入口から導入する。尚、第一のガス化物5は、2cm以下程度に粗粉砕しておくことがガス化処理上好ましい。また、ガス化室3には、第一のガス化物5を効率よくガス化室3内に導入するための第一ガス化物導入手段を配設することが出来、第一のガス化物5として粗粉砕乃至微粉砕した物を採用する場合には、第一ガス化物導入手段として、例えば、スクリュフィーダを採用することが出来る。
ガス化室3内には、第一ガス化物導入手段等を利用するような適宜の方法によって、第一のガス化物5を存在させると共に、ガス化室3内に第二ガス化物導入口から第二のガス化物6を導入する。この際、第二のガス化物6は、第二ガス化物導入口を通じてガス化室3内に導入する事前に、予熱して過熱水蒸気としておき、過熱水蒸気をガス化室3内に導入することで熱効率を改善出来、ガス化処理能力を著しく向上させることが出来て好ましい。
尚、本発明の輻射吸熱反応装置1においては、ガス化対象物導入口を、第一ガス化物導入口と、第二ガス化物導入口とのように、それぞれ分けて導入口を配設することが出来、これによって、ガス化室3内に導入する第一のガス化物5の導入量や第二のガス化物6の導入量をそれぞれ個別に制御することが出来る。
第二のガス化物6が導入されたガス化室3内は、過熱水蒸気雰囲気となる。また、第一のガス化物5をガス化室3内に導入する際には、酸素や空気が混入しないようにすることが好ましく、例えば、第一のガス化物5を第一ガス化物導入口からガス化室3内に導入する際に、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガスをフィードしてもよい。このようにして、ガス化室3内は、過熱水蒸気で満たされると共に、ガス化室3内には酸素或いは空気を積極的に導入せず、寧ろ酸素や空気をガス化室内に入り込まないようにすることで、ガス化室3内を無酸素乃至低酸素状態とする。尚、炭酸ガスをフィードガスとして用いる場合には、これを第三のガス化物とみなすことが出来る。
ガス化室3が、適宜の過熱手段によって加熱されることによって、ガス化室3内側に存在する固体の表面、即ち、ガス化室3を構成する隔壁9の表面からは、ガス化室3内に向かって輻射エネルギ4が放出される。従って、ガス化室3内に導入された第一のガス化物5は、ガス化室3内の過熱水蒸気雰囲気下に存在して所要の温度、好ましくは800℃以上に加熱されつつ、ガス化室3内に放出された輻射エネルギ4を受ける。過熱水蒸気下において輻射エネルギ4を受けた第一のガス化物5は、第二のガス化物6である過熱水蒸気と熱化学的に吸熱反応して所要の生成ガスに変化する。
この吸熱反応では、導入される第一のガス化物5の性状によって、第二のガス化物6としての水蒸気の必要量が異なる。例えば、第一のガス化物5を一般木質系とする場合には、下添字を原子数とする略式分子式をC1.3H2O0.9と表現すると、この吸熱反応に必要な最少の第二のガス化物6である水蒸気の量は、0.4H2Oであり、実用運転では3 H2O以上に設定することが好ましい。
しかしながら、ガス化室3内に対する過剰な水分供給は、熱効率を低下させるので、第一のガス化物5に対する第二のガス化物6の重量比は0.6以上好ましくは2以上にする。第一のガス化物5に対する第二のガス化物6のガス化室3内への導入量を、対バイオマスモル比を3とした場合の典型的な吸熱反応は、次の化学式で表される。
C1.3H2O0.9(s)+3H2O(g)=q1H2(g)+q2CO(g)+q3CH4(g)+q4C2H4(g)+q5CO2(g)+q6H2O(g)−92kJ
上記化学式に表されるように、その生成ガス2は、水素、一酸化炭素、メタン、エチレン、二酸化炭素、水等を主成分とする組成となる。尚、上記化学式の右辺におけるq1、q2、q3、q4、q5、q6は、それぞれ対応する分子の分子数を表す適当な実数係数である。
また、上記化学式に表されるように、この吸熱反応においては、乾燥無灰バイオマス1kgに対し、約700kcal/kg−Bioの反応熱を与える必要があり、適宜の加熱手段を利用することによってこの吸熱反応に与えた熱エネルギは、水素、一酸化炭素、メタン等を主成分とする生成ガス2に蓄えられる。
例えば、ガス化室3の内壁から900℃の輻射熱を受けるものとすると、1kg/hのバイオマスのガス化には、ガス化室3の内壁の表面積を0.008m2以上、好ましくは0.01m2以上とすることによってガス化反応を成立させる。本吸熱反応によって、液体燃料等の化学合成原料として用いる生成ガス2を得ることを目的とする場合には、ガス化室3内の温度は高い方が有利で、ガス化室3内壁の温度を1100℃とした場合には、バイオマス1kg/hに対して該ガス化室3内壁の表面積は0.004m2以上、好ましくは0.005m2以上とすることが出来る。
ガス化室3内において生成した生成ガス2は、生成ガス排出口を通じて、ガス化室3外に排出される。水素や一酸化炭素、メタン等を主成分とする生成ガス2は、それら水素、一酸化炭素、メタン等のガス組成やそれらの構成比を、生成ガス2の用途に応じて、ガス化室3内部の温度や第一のガス化物5と第二のガス化物6との重質比、或いは、第一のガス化物5の供給量やその含水率、並びに、第一のガス化物5の粉砕度等を制御することによって調整することが出来る。
生成ガス排出口の下流には、生成ガス2中に微量ながらも含まれる灰やすす等の不純物を除去するためのサイクロン等を連結してもよい。或いは、生成ガス排出口の下流には、生成ガス2が担持する熱エネルギを熱源として過熱水蒸気を生成する廃熱ボイラを連結して廃熱利用することによって熱効率を改善することも出来る。或いは、生成ガス排出口の下流には、生成ガス2に混在する余剰水分を除去するための水スプレ・スクラバを連結して、生成ガス2をこれに通過させて余剰水分を除去するようにしてもよい。
次に、本発明の輻射吸熱反応装置101の具体的な一実施例を図2を用いて説明する。尚、上記実施形態において説明した詳細については省略して説明するものとする。図2は、実施例1の輻射吸熱反応装置101の構成を示す概念図である。また、本実施例におけるガス化対象物である第一のガス化物105は、有機化合物を主成分とするものであり、第二のガス化物106は、水を主成分とするものである。
本実施例における輻射吸熱反応装置101は、図2に示すように、内外の熱の出入りを遮断するための断熱室111と、この断熱室111内に配設されるガス化室103と、このガス化室103内に第一のガス化物105を導入するための第一ガス化物導入手段112と、ガス化室103内に第二のガス化物106を導入するための第二ガス化物導入手段113とを備える。ガス化室103内の適当な高さ位置には、上下に連通した複数の貫通穴114を有しガス化室103内を上下に画成する多穴体115が配設される。またガス化室103には、ガス化室103内に生じた灰分108を外部に排出するための灰分排出手段116と、ガス化室103内において生成した生成ガス102を外部に排出するための生成ガス排出手段117とを備える。
断熱室111は、その内外の熱の出入りを遮断するためのものであり、特に断熱室111の内側を高温にして所要の温度、好ましくは800℃以上に保持することが出来るように構成する。断熱室111は、断熱室111内に配設されるガス化室103を囲繞することが出来るものであれば従来公知の断熱材を利用して構成することが出来、形状や大きさ等は適宜設定することが可能である。ガス化室103を加熱するための加熱手段の形態に応じて、図2に示すように、断熱室111の内面とガス化室103の外面との間に間隙を持たせてもよい。
特に、加熱手段として高温ガスを、ガス化室103の外面に供給してガス化室103をその外部から加熱する方式の高温ガス利用系の加熱手段を採用する場合には、断熱室111とガス化室103との間に間隙を持たせるように構成することが望ましい。
断熱室111には、第一ガス化物導入手段112や第二ガス化物導入手段113、生成ガス排出手段117或いは灰分排出手段116を断熱室111の外部に繋げるための内外に連通した連通口122,131,133,135を、必要に応じてそれぞれ第一ガス化物導入手段112、第二ガス化物導入手段113、生成ガス排出手段117、灰分排出手段116等に密接させて熱が洩れないように形成する。
また、図示しないが、ガス化室103を加熱するための加熱手段によっては、必要に応じて断熱室111に、その内外に連通した連通口を適宜量形成し、外部から該断熱室111内に熱107を供給したり、或いは排出したりすることが出来るように構成してもよい。
ガス化室103は、その外部と隔壁109で隔絶され、その内部に所定の容積及び表面積のガス化空間110を有し、ガス化室103を構成する隔壁109の外面は断熱室111の壁面によって囲繞される。このガス化室103には、外部からガス化室103内に第一のガス化物105を導入するための第一ガス化物導入口118と、外部からガス化室103内に第二のガス化物106を導入するための第二ガス化物導入口119とが形成され、それぞれ第一ガス化物導入手段112、第二ガス化物導入手段113に連結され、第一のガス化物105と第二のガス化物106とを含むガス化対象物を、ガス化室103内に導入することが出来るように構成される。
第一ガス化物導入口118は、ガス化室103の上部に形成され、第一ガス化物導入口118を通じて外部からガス化室103内に導入される第一のガス化物105が、ガス化室103内において落下し、その落下過程においてガス化することが出来るように構成される。
第二ガス化物導入口119は、ガス化室103の下部に形成され、第二ガス化物導入口119を通じて外部からガス化室103内に導入される第二のガス化物106が、ガス化室103内において上昇流として導入することが出来るように構成される。
また、ガス化室103には、その内部において生成した生成ガス102をガス化室103から排出するための生成ガス排出口120と、ガス化室103内においてガス化対象物のガス化に伴って微量ながら生じた灰分108を排出するための灰分排出口121とを有し、それぞれ生成ガス排出手段117、灰分排出手段116に連結され、ガス化室103内において生成した生成ガス102や灰分108を外部に排出することが出来るように構成される。
生成ガス排出口120は、ガス化室103の側面の適当な高さ位置、好ましくは、多穴体115の配設高さ位置よりも上部位置に形成される。これに対して、灰分排出口121は、ガス化室103の底部に形成し、多穴体115よりも下側であり且つ灰分108の堆積時には自重で落下して外部に取り出すことが出来るように構成される。
ガス化室103を成す隔壁109は、熱伝導性や耐熱性や熱衝撃性に優れた素材から成り、ガス化室103の外部から内部に熱107を伝達し易くすると共に、所要の温度や温度変化に耐え得るように構成する。ガス化室103内のガス化空間110の容積及び形状は、所要のガス化処理量に応じて適宜設定することが可能であるが、ガス化空間110はガス化の対象である第一のガス化物105を適宜量存在させることが出来る大きさ及び形状の空間に設定する。ガス化室103内の表面積は、所要のガス化処理量に応じて適宜設定することが可能である。
ガス化室103内は、上下方向の適当な高さ位置に配設される適当な厚さの多穴体115によって上下に画成される。この多穴体115は、所要の高温に耐え得る金属若しくはセラミックス製で全体として略板状を成し、その上下に貫通した多数の貫通穴114を有して成る。この貫通穴114の大きさは、水蒸気が難なく通過し得、未ガス化状態の第一のガス化物105が通過し難い程度の直径に設定することが好ましい。また、多穴体115は、若干水平から傾斜させて配設してもよい。
第一ガス化物導入手段112は、ガス化室103に形成される第一ガス化物導入口118に連通し、断熱室111に形成される連通口122を通して断熱室111の外部までほぼ垂直に延出した所定の内径及び長さの、耐熱素材から成るパイプ123と、この上端に出口124が連結され、ほぼ水平に延びたスクリュ125を内装して成るスクリュフィーダ126と、このスクリュフィーダ126に第一のガス化物105を供給するためのホッパ129とを備える。
このスクリュフィーダ126は、ほぼ水平方向に所定の長さ延びた円筒体127と、この円筒体127の内部に回転自在に内装される円筒体127とほぼ同等の長さを有するスクリュ125と、このスクリュ125の一端に配設され、スクリュ125を駆動するアクチュエータ128とを備える。アクチュエータ128を配設した逆側の先端部付近には、スクリュ125の回動によって送給された第一のガス化物105をスクリュフィーダ126から排出するための出口124が円筒体127に形成され、円筒体127におけるアクチュエータ128付近の上部には、ホッパ129から第一のガス化物105をスクリュフィーダ126に取り込むための入口130が形成されるて成る。勿論、ホッパ129は、この入口130に連設される。
第二ガス化物導入手段113は、ガス化室103に形成される第二ガス化物導入口119に連通し、断熱室111に形成される連通口131を通して断熱室111の外部まで延出した所定の内径及び長さの、耐熱性及び耐水蒸気性を有する素材から成るパイプ132を備える。このパイプ132の下流には、適宜の方法によって加熱することで生成する過熱水蒸気を得るためのボイラ(図示せず)を連結して、第二のガス化物106をガス化室103に導入する事前に予め加熱して過熱水蒸気とすることが好ましい。より好ましくは、このボイラの熱源として廃熱を利用することによって熱効率を向上させるように構成する。
生成ガス排出手段117は、ガス化室103に形成される生成ガス排出口120に連通し、断熱室111に形成される連通口133を通して断熱室111の外部まで延出した所定の内径及び長さの、耐熱性や耐食性を有する素材から成るパイプ134を備える。このパイプ134の下流には、図示しないが、サイクロンや水噴霧器等を連結して、生成ガス102をそれらサイクロンや水噴霧器内を通過させることで、生成ガス102に微量ながらも混在する灰分108や煤、タール或いは水分を除去するようにすることが好ましい。
灰分排出手段116は、ガス化室103に形成される灰分排出口121に連通し、断熱室111に形成される連通口135を通して断熱室111の外部まで延出した所定の内径及び長さの、耐熱性を有する素材から成るパイプ136を備える。このパイプ136の下流には、パイプ136を自在に開閉し得、パイプ136におけるガス化室103内外の連通状態を開通状態にしたり、不通状態にしたりするためのバルブ(図示せず)を配設する。
以上説明したように構成される実施例1の輻射吸熱反応装置101を運転する場合には、先ず適宜の加熱手段によって、輻射吸熱反応装置101の外部から断熱室111内における断熱室111とガス化室103との間の間隙に、熱107を供給してガス化室103を所要の温度、好ましくは800℃以上に加熱する。そして、ホッパ129に第一のガス化物105をその上部から投入し、スクリュフィーダ126を操作して適宜の速度で第一のガス化物105を、ホッパ129からスクリュフィーダ126内に取り込みつつ、その出口124に向かって送給する。尚、ホッパ129に投入する第一のガス化物105は、予め2cm以下の小片に粗粉砕しておくことがガス化の効率上好ましい。
また、本実施例の輻射吸熱反応装置101においては、第一のガス化物105の含水量に応じて、ガス化室103内に導入する第一のガス化物105の導入量を調整することで、生成ガス102組成を適正化することが好ましく、このような調整を行なうための調整手段を設けてもよい。例えば、ガス化室103に導入する第一のガス化物105の水分量が20重量%である場合には、導入量を乾燥状態の第一のガス化物105を導入するケースに比べて30%減じて導入するべく、スクリュフィーダ126による第一のガス化物105の送給量を、スクリュフィーダ126のスクリュ125の回転数等で調整するようにして、運転時の第一のガス化物105の水分量に応じて送給量を制御するように構成する。
また、スクリュフィーダ126によって第一のガス化物105をガス化室103内に導入する際には、第一のガス化物105が貯留されているホッパ129の内部に、窒素ガス或いは炭酸ガス又は空気を併走ガス(図示せず)として送り込み、この併走ガスを第一のガス化物105と共にスクリュフィーダ126を経由してガス化室103へ供給するようにしてもよい。この併走ガスを全く併給しない場合には、スクリュフィーダ126を経由して、ガス化室103内に多量に導入された水蒸気の一部が、ホッパ129へ洩出することがある。これによって、第一のガス化物105が貯留されているホッパ129や該第一のガス化物105に結露が生じて、多量の水分が第一のガス化物105に吸収されてしまうことがある。
第一のガス化物105に吸収された水分は、ガス化室103の内部で加熱されて蒸発し高温になるが、蒸発潜熱も含め大きな熱損失となり、ガス化処理能力を低下させる結果となる。これによる輻射吸熱反応装置101の能力低下は著しい。つまり、輻射吸熱反応装置101のガス化処理能力は、ガス化の原料である第一のガス化物105の含水量に大きく左右される。
この問題は、上述のように、第一のガス化物105と共に併走ガスを、スクリュフィーダ126を経由してガス化室103内に併給することで解決され、ガス化処理能力を高く維持することを可能にする。この併走ガスによる結露防止効果は、その併給量が、第一のガス化物105に対する併走ガスの重量比で、炭酸ガスの場合2〜15%程度、窒素ガスの場合2〜10%で効果が認められている。併走ガスとして空気を用いる場合には、生成ガス102の一部が燃焼し発熱量を低下させるので2〜5%程度とする。
尚、二酸化炭素は、水素と化合させてメタノールにすることができるので、本実施例の輻射吸熱反応装置101によって得られた生成ガス102を、メタノール合成に用いる場合、第一のガス化物105と併走する併走ガスとしては、二酸化炭素を選択することが好ましく、これによって経済的にメタノール合成量を増やすことができる。
ガス化室103内には、上述のようにしてガス化室103内に導入された第一のガス化物105の導入量に応じて、第二ガス化物導入手段113を利用し、第二ガス化物導入口119から第二のガス化物106を導入する。この際、第二のガス化物106は、予め加熱して過熱水蒸気としてガス化室103内に導入することが可能であり、このようにすることによって熱効率を向上させることが出来る。
ガス化室103の下部から第二ガス化物導入口119を通じて、ガス化室103内に導入された第二のガス化物106は、上昇流を形成すると共に、ガス化室103内を過熱水蒸気で満たし、過熱水蒸気雰囲気にする。勿論、この過熱水蒸気は、ガス化室103内に配設された多穴体115の各貫通穴114を通じてその下部から上部へ抜けて、多穴体115によって画成された上下の空間の何れも過熱水蒸気雰囲気とする。
また、ガス化室103内に導入する第二のガス化物106には、二酸化炭素を適宜量混合して、過熱水蒸気と二酸化炭素とから成る混合ガスを採用してもよい。この場合には、生成ガス102中の二酸化炭素の組成比が大きくなり、二酸化炭素は水素と化合してメタノールになるので、生成ガス102をメタノール合成等に用いる場合に経済的に有利である。
ガス化室103の上部の第一ガス化物導入口118からガス化室103内に導入された第一のガス化物105は、ガス化室103中を落下する。この落下過程において、第一のガス化物105の一部は、外部からの加熱によってガス化室103の内壁や多穴体115から発せられる高温の輻射エネルギ104を受けつつ、ガス化室103を満たしている第二のガス化物106と衝接することで、熱化学的に吸熱反応を起こしてほぼ完全にガス化して生成ガス102となる。
その落下過程においてガス化しきれなかった未ガス化状態の第一のガス化物105は、ガス化室103内に配設される多穴体115上に保留される。この多穴体115上に保留された第一のガス化物105は、長秒時間でガス化する。これは、微粉状態の第一のガス化物105が、浮遊状態で過熱水蒸気と反応して瞬時にガス化するのに比べて不利なようであるが、実際には、多穴体115上に保留された第一のガス化物105から得られる生成ガス102組成は、高い水素濃度となる上、原料とする第一のガス化物105に微粉砕が要求されないことから原料の適用範囲が拡がり、且つ粉砕動力コストも軽減されるので効果的である。
こうしてガス化室103内において生成した生成ガス102は、水素、一酸化炭素、メタン、エチレン、二酸化炭素、水を主成分とするものであり、ガス化室103に形成された生成ガス排出口120及び生成ガス排出手段117を通じて外部に排出される。
本実施例の輻射吸熱反応装置101は、化石燃料並の高温燃焼を可能にする燃料ガスを、バイオマスや有機系廃棄物を原料として生成させる技術であると同時に、液体燃料等を合成するための化学合成原料にも適用し得るものである。
この化学合成原料として適用するための生成ガス102を得る場合には、生成ガス102組成中の水素と一酸化炭素の組成比が重要となる。例えば、生成ガス102を用いてメタノールを合成する場合には、水素と一酸化炭素の該ガス組成に占める割合を高めると共に、水素/一酸化炭素のモル比を凡そ2にすることが望ましく、このような適正な組成比の水素及び一酸化炭素を、輻射吸熱反応装置101によって得るには、次のよな操作で達成することが出来る。
水素の組成比を増やす場合には、ガス化室103内の温度を高温に保持し、ガス化室103内を浮遊してガス化する粒径を小さくした粉状の第一のガス化物105の導入量を少なめにすると共に、多穴体115上において長秒時間でガス化する10mm乃至20mmの粗片状の第一のガス化物105の導入量を多めにしつつ、これら第一のガス化物105の導入量に対する第二のガス化物106の導入量を多めにする。
一酸化炭素の組成比を増やす場合には、ガス化室103内の温度を800℃程度の低温に保持し、第一のガス化物105の粒径を大径化すると共に、第一のガス化物105の導入量を増量しつつ、第一のガス化物105のガス化室103内における滞留時間の短縮化を図る。
本実施例の輻射吸熱反応装置101における、微粒状の第一のガス化物105が、第二のガス化物106中を浮遊しながらガス化する浮遊ガス化反応では、その粒径が小さい程ガス化し易く、粒径が大きくなる程ガス化反応が進み難くなる。浮遊しながらガス化する微粒状の第一のガス化物105の浮遊ガス化反応が1秒以下で完結するものであるのに対して、多穴体115上における粗片状の第一のガス化物105のガス化反応は、長秒時間を要するものの、多穴体115上に載置した状態でガス化させることによって、浮遊ガス化以上のガス化反応を生じせることが出来る。
次に、本発明の輻射吸熱反応装置201の別の実施例を図3を用いて説明する。尚、上記実施形態及び実施例1において説明した詳細については説明を省略する。図3は、実施例2の輻射吸熱反応装置201の構成を示す概念図である。また、本実施例におけるガス化対象物である第一のガス化物205は、有機化合物を主成分とするものであり、第二のガス化物206は、水を主成分とするものである。
本実施例における輻射吸熱反応装置201は、その外部における適宜の高温ガス発生装置(図示せず)によって生成し十分に大きな熱エネルギを担持して成る所要の温度の高温ガス207を加熱手段として、該輻射吸熱反応装置201内に導入し、これを熱源として利用することで、原料であるガス化対象物のガス化を行なうものである。
図3に示すように、輻射吸熱反応装置201は、内外の熱の出入りを遮断するための断熱室211と、この断熱室211内に配設されるガス化室203とを備える。このガス化室203は、上流側を成す第一のガス化室203aと、下流側を成す第二のガス化室203bとから成り、これらの第一のガス化室203aと第二のガス化室203bとが互いに連通して成る。
第一のガス化室203aは、第一のガス化物205を導入するための第一ガス化物導入手段212と、第二のガス化物206を導入するための第二ガス化物導入手段213とを備える。第一のガス化室203a内の適当な高さ位置には、上下に連通した複数の貫通穴214を有し第一のガス化室203a内を上下に画成する多穴体215が配設される。また第一のガス化室203aには、第一のガス化室203a内に生じた灰分208を外部に排出するための灰分排出手段216と、第一のガス化室203a内において生成した生成ガス202を第一のガス化室203aの外部に排出すると共に、生成ガス202を第二のガス化室203bに送給するための生成ガス送出口237とを備える。
第二のガス化室203bは、生成ガス202を導入するための生成ガス導入口238と、高純度化した生成ガス202を外部に排出するための生成ガス排出口220とを備える。そして、第一のガス化室203aの生成ガス送出口237には、第二のガス化室203bの生成ガス導入口238が連結され、第一のガス化室203aと第二のガス化室203bとが互いに連通するように構成される。
また、断熱室211内に配設される第一のガス化室203aと、第二のガス化室203bとの間には、この断熱室211内を第一のガス化室203a側と、第二のガス化室203b側とに仕切って、それぞれの側の輻射エネルギ204が他方の側との間で行き来することを抑制する遮蔽板239が配設される。
断熱室211は、その内外の熱の出入りを遮断するためのものであり、特に断熱室211の内側を高温にして所要の温度、好ましくは800℃以上に保持することが出来るように構成する。断熱室211は、従来公知の断熱材を利用して構成することが出来、該断熱室211内に配設される第一のガス化室203a及び第二のガス化室203bを共に囲繞することが出来るものであればよく、形状や大きさ等は適宜設定することが可能であるが、図3に示すように、断熱室211の内面と第一のガス化室203aの外面及び第二のガス化室203bの外面との間には間隙を持たせる。
断熱室211には、第一ガス化物導入手段212や第二ガス化物導入手段213、生成ガス排出口220或いは灰分排出手段216を該断熱室211の外部に繋げるための内外に連通した連通口222,231,233,235を、必要に応じてそれぞれ第一ガス化物導入手段212、第二ガス化物導入手段213、生成ガス排出口220、灰分排出手段216等に密接させて熱が洩れないように形成する。
また、断熱室211は、該断熱室211内を加熱するための高温ガス207を導入するための、該断熱室211の内外に連通した高温ガス導入口240と、該断熱室211内に導入して使用済となった高温ガス207を、断熱室211の外部に排出するための高温ガス排出口241とを備える。
ここで言う高温ガス207は、輻射吸熱反応装置201の外部において、適宜の高温ガス発生装置(図示せず)によって生成されるものであり、好ましくは800℃以上の温度を有するものである。高温ガス発生装置としては、従来公知の技術を採用することが可能であり、例えば、化石燃料を燃焼させたり、或いは天然ガスを燃焼させることによって燃焼系の高温ガスを発生させる装置を用いることも可能である。或いは、廃紙や廃プラスチックや廃木材等の廃棄物を燃焼させることで、それら廃棄物由来の燃焼系の高温ガス207を得てもよい。この他、例えば、雑草や間伐材等に代表される所謂バイオマスを燃焼させることで、バイオマス由来の燃焼系の高温ガス207を得ることが出来る装置を採用してもよい。
遮蔽板239は、断熱室211内を上流側と下流側とに仕切るものであって、上流側における輻射エネルギ204と、下流側における輻射エネルギ204とが、それぞれ互いの側に行き来することを抑制するように配設される耐熱性及び高輻射性を有する素材から成る略板状の部材である。ただし、ここで言う上流側及び下流側は、断熱室211に形成される外部から高温ガス207を断熱室211内に導入するための高温ガス導入口240から、断熱室211に形成される断熱室211内を流下して使用済となった高温ガス207を断熱室211の外部に排出するための高温ガス排出口241までの流れの向きにおける上流と下流とにほぼ一致して対応するものである。
遮蔽板239の適宜の部位には、高温ガス207が上流側から下流側に向かって流下し得る流路242が形成され、高温ガス207を流下させることが出来るように構成される。遮蔽板239は、上流側に配設される第一のガス化室203aと、下流側に配設される第二のガス化室203bとの間に介在させるものであり、第二のガス化室203bを下流側から上流側に連通させるための連通口243を有する。
第一のガス化室203aは、その外部と隔壁209で隔絶され、その内部に所定の容積及び表面積の一次ガス化空間210aを有し、第一のガス化室203aを構成する隔壁209の外面は断熱室211の壁面及び遮蔽板239によって囲繞される。この第一のガス化室203aには、外部から第一のガス化室203a内に第一のガス化物205を導入するための第一ガス化物導入口218と、外部から第一のガス化室203a内に第二のガス化物206を導入するための第二ガス化物導入口219とが形成され、それぞれ第一ガス化物導入手段212、第二ガス化物導入手段213に連結され、第一のガス化物205と第二のガス化物206とを含むガス化対象物を、第一のガス化室203a内に導入することが出来るように構成される。
第一ガス化物導入口218は、第一のガス化室203aの上部に形成され、第一ガス化物導入口218を通じて外部から第一のガス化室203a内に導入される第一のガス化物205が、第一のガス化室203a内において落下し、その落下過程においてガス化することが出来るように構成される。
第二ガス化物導入口219は、第一のガス化室203aの下部に形成され、第二ガス化物導入口219を通じて外部から第一のガス化室203a内に導入される第二のガス化物206が、第一のガス化室203a内において上昇流として導入することが出来るように構成される。
また、第一のガス化室203aには、その内部において生成した生成ガス202を第一のガス化室203aから第二のガス化室203bに送給するための生成ガス送出口237と、第一のガス化室203a内において、ガス化対象物のガス化に伴って微量ながら生じた灰分208を排出するための灰分排出口221とを有し、それぞれ第二のガス化室203b、灰分排出手段216に連結され、第一のガス化室203a内において生成した生成ガス202や灰分208を外部に送出若しくは排出することが出来るように構成される。
生成ガス送出口237は、第一のガス化室203aの側面の適当な高さ位置、好ましくは、多穴体215の配設高さ位置よりも上部位置に形成される。これに対して、灰分排出口221は、第一のガス化室203aの底部に形成し、多穴体215よりも下側であり且つ灰分208の堆積時には自重で落下して外部に取り出すことが出来るように構成される。
第一のガス化室203aを成す隔壁209は、熱伝導性や耐熱性や熱衝撃性に優れた素材から成り、第一のガス化室203aの外部から内部に熱を伝達し易くすると共に、所要の温度や温度変化に耐え得るように構成する。第一のガス化室203a内の一次ガス化空間210aの容積及び形状は、所要のガス化処理量に応じて適宜設定することが可能であるが、一次ガス化空間210aはガス化の対象である第一のガス化物205を適宜量存在させることが出来る大きさ及び形状の空間に設定する。第一のガス化室203a内の表面積は、所要のガス化処理量に応じて適宜設定することが可能である。
第一のガス化室203a内は、上下方向の適当な高さ位置に配設される適当な厚さの多穴体215によって上下に画成される。この多穴体215は、所要の高温に耐え得る金属若しくはセラミックス製で全体として略板状を成し、その上下に貫通した多数の貫通穴214を有して成る。この貫通穴214の大きさは、水蒸気が難なく通過し得、未ガス化状態の第一のガス化物205が通過し難い程度の直径に設定する。また、多穴体215は、若干水平から傾斜させて配設してもよい。
第一ガス化物導入手段212は、第一のガス化室203aに形成される第一ガス化物導入口218に連通し、断熱室211に形成される連通口222を通して断熱室211の外部までほぼ垂直に延出した所定の内径及び長さの耐熱素材から成るパイプ223と、この上端に出口224が連結され、ほぼ水平に延びたスクリュ225を内装して成るスクリュフィーダ226と、このスクリュフィーダ226に第一のガス化物205を供給するためのホッパ229とを備える。
このスクリュフィーダ226は、ほぼ水平方向に所定の長さ延びた円筒体227と、この円筒体227の内部に回転自在に内装される円筒体227とほぼ同等の長さを有するスクリュ225と、このスクリュ225の一端に配設されスクリュ225を駆動するアクチュエータ228とを備える。アクチュエータ228を配設した逆側の先端部付近には、スクリュ225の回動によって送給された第一のガス化物205をスクリュフィーダ226から排出するための出口224が円筒体227に形成され、円筒体227におけるアクチュエータ228付近の上部には、ホッパ229から第一のガス化物205をスクリュフィーダ226に取り込むための入口230が形成され、この入口230にホッパ229が連設される。
第二ガス化物導入手段213は、第一のガス化室203aに形成される第二ガス化物導入口219に連通し、断熱室211に形成される連通口231を通して断熱室211の外部まで延出した所定の内径及び長さの、耐熱性及び耐水蒸気性を有する素材から成るパイプ232を備える。このパイプ232の下流には、適宜の方法によって加熱することで生成する過熱水蒸気を得るためのボイラ(図示せず)を連結して、第二のガス化物206を第一のガス化室203aに導入する事前に予め廃熱を利用して加熱して過熱水蒸気とする。
生成ガス送出口237は、第一のガス化室203aの下流側の第一のガス化室203aを構成する側壁に形成される。ここで言う下流側は、断熱室211に形成される外部から高温ガス207を該断熱室211内に導入するための高温ガス導入口240から、該断熱室211に形成される断熱室211内を流下して使用済となった高温ガス207を断熱室211の外部に排出するための高温ガス排出口241までの流れの向きにおける下流側に一致して対応するものである。
灰分排出手段216は、第一のガス化室203aに形成される灰分排出口221に連通し、断熱室211に形成される連通口235を通して断熱室211の外部まで延出した所定の内径及び長さの、耐熱性を有する素材から成るパイプ236を備える。このパイプ236の下流には、パイプ236を自在に開閉し得、パイプ236における第一のガス化室203a内外の連通状態を開通状態にしたり、不通状態にしたりするためのバルブ(図示せず)を配設する。
第二のガス化室203bは、耐熱性及び高輻射性を有する素材から成る所定の長さ及び内径を有するパイプ材を、全体として略蛇行状に形成して成り、その内部に二次ガス化空間210bを有する。この第二のガス化室203bの大部分は、断熱室211内における下流側に配設され、遮蔽板239と断熱室211の内壁によって囲繞される。第二のガス化室203bを成すパイプ材の上流側の先端は、第一のガス化室203aの生成ガス送出口237に連結される生成ガス導入口238を成し、パイプ材の下流側の先端は、第二のガス化室203b内部においてより一層高純度化された生成ガス202を輻射吸熱反応装置201の外部に排出するための生成ガス排出口220を成す。
このように構成される第二のガス化室203bは、遮蔽板239に形成された連通口243を通して断熱室211内の上流側と下流側とに跨って配設され、生成ガス導入口238が第一のガス化室203aの生成ガス送出口237に連結され、生成ガス排出口220が断熱室211の下流側の側壁の適宜の部位に形成される連通口233に連結される。この連通口233の更に下流には、図示しないが、サイクロンや水噴霧器等を連結することが出来、生成ガス202をそれらサイクロンや水噴霧器内を通過させることで、生成ガス202に微量ながらも混在する灰分208や煤、タール或いは水分を除去することが可能である。
以上説明したように構成される実施例2の輻射吸熱反応装置201を運転する場合には、先ず適宜の高温ガス発生手段によって所要の温度の高温ガス207を生成させ、この高温ガス207を加熱手段として、断熱室211の高温ガス導入口240から高温ガス207を導入する。これによって、断熱室211内における断熱室211と第一のガス化室203a及び第二のガス化室203bそれぞれとの間の間隙に、熱を供給して、断熱室211内の間隙を800℃以上の高温に保持し、第一のガス化室203a及び第二のガス化室203bを800℃以上に加熱する。
そして、ホッパに第一のガス化物205を投入し、スクリュフィーダ226を操作して適宜の速度で第一のガス化物205をホッパ229からスクリュフィーダ226内に取り込みつつ、その出口224に向かって送給する。尚、ホッパ229に投入する第一のガス化物205は、予め2cm以下の小片に粗粉砕しておく。
また、本実施例の輻射吸熱反応装置201においては、第一のガス化物205の含水量に応じて、第一のガス化室203a内に導入する第一のガス化物205の導入量を調整することで、生成ガス202組成を適正化することが可能であり、例えば、運転時の第一のガス化物205の水分量に応じて、スクリュフィーダ226による第一のガス化物205の送給量を、スクリュフィーダ226のスクリュ225の回転数等で調整して送給量を制御するように構成する。
また、スクリュフィーダ226によって第一のガス化物205を第一のガス化室203a内に導入する際には、第一のガス化物205が貯留されているホッパ229の内部に、窒素ガス或いは炭酸ガス又は空気を併走ガス(図示せず)として送り込み、併走ガスを第一のガス化物205と共にスクリュフィーダ226を経由して第一のガス化室203aへ供給するようにしてもよく、この併走ガスによれば、ホッパ229内における第一のガス化室203aからの水蒸気の洩出による結露を防止することが出来る。その結露防止効果は、その併給量が第一のガス化物205に対する併走ガスの重量比で、炭酸ガスの場合2〜15%程度、窒素ガスの場合2〜10%で効果が認められている。併走ガスとして空気を用いる場合には、生成ガス202の一部が燃焼し発熱量を低下させるので2〜5%程度とする。
尚、二酸化炭素は、水素と化合させてメタノールにすることができるので、本実施例の輻射吸熱反応装置201によって得られた生成ガス202を、メタノール合成に用いる場合、第一のガス化物205と併走する併走ガスとしては、二酸化炭素を選択すれば経済的にメタノール合成量を増やすことができる。
第一のガス化室203a内には、上述のようにして第一のガス化室203a内に導入された第一のガス化物205の導入量に応じて、第二ガス化物導入手段213を利用し、第二ガス化物導入口219から第二のガス化物206を導入する。この際、第二のガス化物206は、予め加熱して過熱水蒸気として第一のガス化室203a内に導入することが可能であり、こうすることによって熱効率を向上させることが出来る。
第一のガス化室203aの下部から第二ガス化物導入口219を通じて、第一のガス化室203a内に導入された第二のガス化物206は、上昇流を形成すると共に、第一のガス化室203a内を過熱水蒸気で満たし、過熱水蒸気雰囲気にする。勿論、この過熱水蒸気は、第一のガス化室203a内に配設された多穴体215の各貫通穴214を通じてその下部から上部へ抜けて、多穴体215によって画成された上下の空間の何れも過熱水蒸気雰囲気とする。
また、第一のガス化室203a内に導入する第二のガス化物206には、二酸化炭素を適宜量混合して、過熱水蒸気と二酸化炭素とから成る混合ガスを採用してもよい。この場合には、生成ガス202中の二酸化炭素の組成比が大きくなり、二酸化炭素は水素と化合してメタノールになるので、生成ガス202をメタノール合成等に用いる場合に経済的に有利である。
第一のガス化室203aの上部の第一ガス化物導入口218から第一のガス化室203a内に導入された第一のガス化物205は、この第一のガス化室203a中を落下する。この落下過程において、第一のガス化物205の一部は、外部からの加熱によって第一のガス化室203aの内壁や多穴体215から発せられる高温の輻射エネルギ204を受けつつ、第一のガス化室203aを満たしている第二のガス化物206と衝接することで、熱化学的に吸熱反応を起こしてほぼ完全にガス化して生成ガスと成る。
その落下過程においてガス化しきれなかった未ガス化状態の第一のガス化物205は、第一のガス化室203a内に配設される多穴体215上に保留される。この多穴体215上に保留された第一のガス化物205は、長秒時間でガス化する。これは、微粉状態の第一のガス化物205が、浮遊状態で過熱水蒸気と反応して瞬時にガス化するのに比べて不利なようであるが、実際には、多穴体215上に保留された第一のガス化物205から得られる生成ガス202組成は、高い水素濃度となる上、原料とする第一のガス化物205に微粉砕が要求されないことから原料の適用範囲が拡がり、且つ粉砕動力コストも軽減されるので効果的である。
第一のガス化室203a内において生成した生成ガス202は、第一のガス化室203aに形成された生成ガス送出口237を通じて第二のガス化室203bに送給される。第二のガス化室203b内に導入された生成ガス202は、第二のガス化室203b内における二次ガス化空間210b中を蛇行しながら流下し、二次ガス化空間210b中において、生成ガス202中に微量ながらも混在していた煤やタール或いは水分等の不純物や成分が分解乃至ガス化され、より一層の高純度化が図られる。
こうして第二のガス化室203b内において高純度化された生成ガス202は、煤やタールや水分を殆ど含まない水素、一酸化炭素、メタン、エチレン、二酸化炭素を主成分とするものとなり、該第二のガス化室203bの下流端の生成ガス排出口220を通じて外部に排出される。
この際、第一のガス化室203aにおいては、比較的高温且つ多量の熱量が要求され、第一のガス化室203aを上流側に配置すると共に、遮蔽板239で第一のガス化室203aと第二のガス化室203bとを画成したことによって熱効率を下げることなく、ガス化効率を改善することが可能となる。
本発明は特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更又は改変が可能である。例えば、本実施例の輻射吸熱反応装置201は、化石燃料並の高温燃焼を可能にする燃料ガスを、バイオマスや有機系廃棄物を原料として生成させる技術であると同時に、液体燃料等を合成するための化学合成原料にも適用し得るものである。
この化学合成原料として適用するための生成ガス202を得る場合には、生成ガス202組成中の水素と一酸化炭素の組成比が重要となる。例えば、生成ガス202を用いてメタノールを合成する場合には、水素と一酸化炭素のガス組成に占める割合を高めると共に、水素/一酸化炭素のモル比を凡そ2にすることが望ましい。
例えば、生成ガス202中における水素の組成比を大きくする必要がある場合には、第一のガス化室203aを比較的高温にする必要があるが、遮蔽板239を配設することによって、第一のガス化室203aを比較的高温に保って水素の組成比を大きくしつつも、第二のガス化室203bを備えて生成ガス202の高純度化を図ることが可能となる。この際、第二のガス化室203bは、第一のガス化室203aよりも若干温度が低くても生成ガス202の高純度化を図ることが出来る。
本発明の輻射吸熱反応装置の実施形態の基本構成及び運転原理を表す概念図である。
実施例1の輻射吸熱反応装置の構成を示す概略断面図である。
実施例2の輻射吸熱反応装置の構成を示す概略断面図である。
符号の説明
1 輻射吸熱反応装置
2 生成ガス
3 ガス化室
4 輻射エネルギ
5 第一のガス化物
6 第二のガス化物
7 熱
8 灰分
9 隔壁
10 ガス化空間
101 輻射吸熱反応装置
102 生成ガス
103 ガス化室
104 輻射エネルギ
105 第一のガス化物
106 第二のガス化物
107 熱
108 灰分
109 隔壁
110 ガス化空間
111 断熱室
112 第一ガス化物導入手段
113 第二ガス化物導入手段
114 貫通穴
115 多穴体
116 灰分排出手段
117 生成ガス排出手段
118 第一ガス化物導入口
119 第二ガス化物導入口
120 生成ガス排出口
121 灰分排出口
122 連通口
123 パイプ
124 出口
125 スクリュ
126 スクリュフィーダ
127 円筒体
128 アクチュエータ
129 ホッパ
130 入口
131 連通口
132 パイプ
133 連通口
134 パイプ
135 連通口
136 パイプ
201 輻射吸熱反応装置
202 生成ガス
203 ガス化室
203a 第一のガス化室
203b 第二のガス化室
204 輻射エネルギ
205 第一のガス化物
206 第二のガス化物
207 高温ガス
208 灰分
209 隔壁
210a 一次ガス化空間
210b 二次ガス化空間
211 断熱室
212 第一ガス化物導入手段
213 第二ガス化物導入手段
214 貫通穴
215 多穴体
216 灰分排出手段
218 第一ガス化物導入口
219 第二ガス化物導入口
220 生成ガス排出口
221 灰分排出口
222 連通口
223 パイプ
224 出口
225 スクリュ
226 スクリュフィーダ
227 円筒体
228 アクチュエータ
229 ホッパ
230 入口
231 連通口
232 パイプ
233 連通口
235 連通口
236 パイプ
237 生成ガス送出口
238 生成ガス導入口
239 遮蔽板
240 高温ガス導入口
241 高温ガス排出口
242 流路
243 連通口