以下、本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明に係る電気音響変換器用振動板の製造方法を示すフローチャート、図2及び図3は第1の実施形態の説明図である。
まず、図1に示す浸漬工程101では、図2(a)に示す如く、厚さが略0.25mmの木製シート2の一方の面に木製シート以外のシート部材(不織布)4を接着剤層3を介して貼り合わせた貼り合わせシート1を準備し、ブチルナフタレンスルホン酸ソーダを0.05重量%含む水溶液を調製し、図2(b)に示す如く、貼り合わせシート1を適当な寸法にカットして、この水溶液5中に浸漬する。そして、貼り合わせシート1にしなやかさが出てくるまで(約20分間)浸漬する。
次いで、図1に示す一次プレス加熱成形工程102では、しなやかさの出た貼り合わせシート1を、図2(c)に示す如く、予め100℃以上に加熱された金型6にてプレス加熱成形する。金型6は所定の形状に形成された雄型7と雌型8から成る雌雄タイプのもので、ヒータ9、10を有している。
ブチルナフタレンスルホン酸ソーダが木製シート2内に入り込んで木製シート2に伸縮性を与えるのに加えて、ブチルナフタレンスルホン酸ソーダが更に多くの水分を木製シート2に与える作用を発揮することにより、木製シート2の大きな伸びを実現することができるので、プレス加熱成形時に木製シート2が金型6中で破断しにくい。
また、水溶液5中には潤滑剤が入っていないため、プレスの際に金型6には付着物が発生せず、貼り合わせシート1が金型6に焼き付くこともなく、割れ等の不良もない良好な成形物12が得られる。
次いで、図1に示す熱硬化性樹脂含浸工程103では、一次プレス加熱成形工程102で得られた成形物12を、図2(d)に示すように、熱硬化性樹脂溶液11中に浸漬する。同時に超音波振動子13による振動を熱硬化性樹脂溶液11に与え、熱硬化性樹脂が充分に浸透するまで(約5分間)浸漬する。超音波を加えながらの浸漬は、超音波を加えない場合と比較して、熱硬化性樹脂が充分に浸透するのに要する時間は略10分の1で済む。
次いで、図1に示す乾燥工程104では、熱硬化性樹脂が浸透した成形物12に対して、図2(e)に示すように、常温でファン14により風を吹き付けながら強制乾燥させる。
次いで、図1に示す二次プレス加熱成形工程105では、図2(c)に示す金型6を予め150℃以上に加熱しておき、成形物12に対して再度プレス加熱成形を行う。
このように、一次プレス加熱成形工程102で振動板形状に成形された成形物12に対して、熱硬化性樹脂を含浸させてから、二次プレス加熱成形工程105において再度プレス加熱成形を行うようにすることで、成形物12の保形性が向上して成形前の形状に戻りにくくなるため、歩留まり率が向上する。
次いで、図1に示す貼り合わせ工程106では、図3(a)に示すように、吸音部材4aの一方の面に接着剤層3を配置した吸音層1aを用意する。そして、図3(b)に示す金型6において成形物12と共に三次プレス成形を行い、吸音層1aと成形物12とを貼り合わせる。なお、貼り合わせ工程106における三次プレス成形は、加熱はしなくてもよい。
次いで、図1に示す成形工程107では、所定形状の抜き型を用いて、貼り合わせ工程106にて得られた成形物に中心孔を形成すると共に成形物を所定の外径寸法に成形する打ち抜き加工を行う。そしてこの成形物に耐湿性の樹脂をコーティングする。これにより、図3(c)に示す如く、中心孔15が形成されたラッパ状の成形物12a(スピーカ用振動板)が得られる。
なお、図1に示す二次プレス加熱成形工程105の後に、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行い、中心孔が形成されたラッパ状の成形物を予め加工してもよい。この場合は、貼り合わせ工程106において、図3(a)に示す吸音部材4aと接着剤層3からなる吸音層1aを成形物12と貼り合わせるために、図3(b)に示す金型6において三次プレス成形を行った後に、図1に示す成形工程107において、再度、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行えばよい。
次に、本発明の第2の実施形態を図1、図4及び図5に基づいて説明する。
まず、図1に示す浸漬工程101では、図4(a)に示す如く、厚さが略0.25mmの木製シート17の一方の面に接着剤層18を介して和紙19を貼り合わせた貼り合わせシート16を準備し、図4(b)に示す如く、エチレングリコールを5重量%及びジ2エチルヘキシルスルホコハク酸エステルナトリウムを0.1重量%含む混合水溶液20を調製し、貼り合わせシート16を適当な寸法にカットしてこの水溶液20中に浸漬する。貼り合わせシート16にしなやかさが出てくるまで(約20分間)浸漬する。なお、ワークの乾燥時間を早めるために若干のエチルアルコールを水溶液20に溶解させた。
次いで、図1に示す一次プレス加熱成形工程102では、しなやかさの出た貼り合わせシート16を、図4(c)に示す如く、予め100℃以上に加熱された金型21にてプレス加熱成形する。金型21は所定の形状に形成された雄型22と雌型23から成る雌雄タイプのもので、ヒータ24、25を有している。このプレスの際、水溶液20中には潤滑剤が入っていないため、金型21には付着物が発生せず、貼り合わせシート16が金型21に焼き付くこともなく、割れ等の不良がない良好な成形物が得られる。
次いで、図1に示す熱硬化性樹脂含浸工程103では、一次プレス加熱成形工程102で得られた成形物26を図4(d)に示すように熱硬化性樹脂溶液27中に浸漬する。同時に超音波振動子100aによる振動を熱硬化性樹脂溶液27に与え、熱硬化性樹脂が充分に浸透するまで(約5分間)浸漬する。超音波を加えながらの浸漬は、超音波を加えない場合と比較して、熱硬化性樹脂が充分に浸透するのに要する時間は略10分の1で済む。このようにして得られた成形物26を温度60℃、相対湿度90%の雰囲気中で24時間放置して観察した結果、超音波を用いない場合と比べて変形が著しく少ないことがわかった。
次いで、図1に示す乾燥工程104では、熱硬化性樹脂が浸透した成形物26に対して、図4(e)に示すように、常温でファン101aにより風を吹き付けながら強制乾燥させる。常温の風による強制乾燥は、高温の風を用いる方法(例えば赤外線ランプや熱風強制乾燥)に比べて、次工程における二次プレス加熱成形工程105での割れの不良率は略10分の1に抑えられることがわかった。
次いで、図1に示す二次プレス加熱成形工程105では、図4(c)に示す金型21を予め150℃以上に加熱しておき、成形物26に対して二次プレス加熱成形を行う。
このように、一次プレス加熱成形工程102で振動板形状に成形された成形物26に対して、熱硬化性樹脂を含浸させてから、二次プレス加熱成形工程105において再度プレス加熱成形を行うようにすることで、成形物26の保形性が向上して成形前の形状に戻りにくくなるため、歩留まり率が向上する。
次いで、図1に示す貼り合わせ工程106では、図5(a)に示すように、吸音部材19aの一方の面に接着剤層18を配置した吸音層16aを用意する。そして、図5(b)に示す金型21において、成形物26と共に三次プレス成形を行い、吸音層16aと成形物26とを貼り合わせる。なお、貼り合わせ工程106における三次プレス成形は、加熱はしなくてもよい。
そして、図1に示す成形工程107では、所定形状の抜き型を用いて、成形物に中心孔を形成すると共に成形物を所定の外径寸法に成形する打ち抜き加工を行った後、耐湿性の樹脂をコーティングする。これにより、図5(c)に示す如く、中心孔30aが形成されたラッパ状の成形物26a(スピーカ用振動板)が得られる。
なお、図1の二次プレス加熱成形工程105の後に、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行い、中心孔が形成されたラッパ状の成形物を予め加工してもよい。この場合は、貼り合わせ工程106において、図5(a)に示す吸音部材4aと接着剤層3からなる吸音層1aを成形物26と貼り合わせるために、図5(b)に示す金型21において三次プレス成形を行い、その後、図1に示す成形工程107において、再度、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行えばよい。
次に、本発明の第3の実施形態を図1、図6及び図7に基づいて説明する。
まず、図1に示す浸漬工程101では、図6(a)に示す如く、厚さが略0.5mmの木製シート29の一方の面に接着剤層30を介して不織布31を貼り合わせた貼り合わせシート28を準備し、図6(b)に示す如く、ジ2エチルヘキシルスルホコハク酸エステルソーダを0.1重量%含む水溶液32を調製し、貼り合わせシート28を適当な寸法にカットしてこの水溶液32中に浸漬する。そして、貼り合わせシート28にしなやかさが出てくるまで(約20分間)浸漬する。
次いで、図1に示す一次プレス加熱成形工程102では、しなやかさの出た貼り合わせシート28を、図6(c)に示す如く、予め100℃以上に加熱された金型33にてプレス加熱成形する。金型33は所定の形状に形成された雄型34と雌型35から成る雌雄タイプのもので、ヒータ36、37を有している。このプレスの際、水溶液32中には潤滑剤が入っていないため、金型33には付着物が発生せず、貼り合わせシート28が金型33に焼き付くこともなく、割れ等の不良がない良好な成形物が得られた。
次いで、図1に示す熱硬化性樹脂含浸工程103では、一次プレス加熱成形工程102で得られた成形物38を、図6(d)に示すように、熱硬化性樹脂溶液39中に浸漬する。熱硬化性樹脂が成形物38に充分に浸透するまで(約60分間)浸漬する。
次いで、図1に示す乾燥工程104では、熱硬化性樹脂が浸透した成形物38に対して、図6(e)に示すように、常温でファン40により風を吹き付けながら強制乾燥させる。常温の風による強制乾燥は、高温の風を用いる方法(例えば赤外線ランプや熱風強制乾燥)に比べて、次工程における二次プレス加熱成形工程105での割れの不良率は略10分の1に抑えられることがわかった。
次いで、図1に示す二次プレス加熱成形工程105では、図6(c)に示す金型33を予め150℃以上に加熱しておき、成形物38に対して再度プレス加熱成形を行う。
このように、一次プレス加熱成形工程102で振動板形状に成形された成形物38に対して、熱硬化性樹脂を含浸させてから再度プレス加熱成形を行うようにすることで、成形物38の保形性が向上して成形前の形状に戻りにくくなるため、歩留まり率が向上する。
次いで、図1に示す貼り合わせ工程106では、図7(a)に示すように、吸音部材31aの一方の面に接着剤層30を配置した吸音層28aを用意する。そして、図7(b)に示す金型33において、成形物38と共に三次プレス成形を行い、吸音層28aと成形物38とを貼り合わせる。なお、貼り合わせ工程106における三次プレス成形は、加熱はしなくてもよい。
そして、図1に示す成形工程107では、所定形状の抜き型を用いて、成形物に中心孔を形成すると共に成形物38を所定の外径寸法に成形する打ち抜き加工を行った後、耐湿性の樹脂をコーティングする。これにより、図7(c)に示す如く、中心孔41が形成されたラッパ状の成形物38aが得られる。
なお、図1の二次プレス加熱成形工程105の後に、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行い、中心孔が形成されたラッパ状の成形物に加工してもよい。この場合は、貼り合わせ工程106において、図7(a)に示す吸音部材31aと接着剤層30からなる吸音層28aを成形物38と貼り合わせるために、図7(b)に示す金型において三次プレス成形を行い、その後、図1に示す成形工程107において、再度、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行えばよい。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
次に、本発明の第4の実施形態を図1、図8及び図9に基づいて説明する。
まず、図1に示す浸漬工程101では、図8(a)に示す如く、厚さが略0.25mmの木製シート43の両面に接着剤層44を介して不織布45を貼り合わせた貼り合わせシート42を準備し、図8(b)に示す如く、エチルアルコール10重量%を含む水溶液46(あるいはこの水溶液にさらに2エチルヘキシルスルホコハク酸エステルソーダ0.05重量%を加えても良い)を調製し、貼り合わせシート42を適当な寸法にカットしてこの水溶液46中に浸漬する。そして、貼り合わせシート42にしなやかさが出てくるまで(約20分間)浸漬する。
次いで、図1に示す一次プレス加熱成形工程102では、しなやかさの出た貼り合わせシート42を、図8(c)に示す如く、予め100℃以上に加熱された金型47にてプレス加熱成形する。金型47は所定の形状に形成された雄型48と雌型49から成る雌雄タイプのもので、ヒータ50、51を有している。このプレスの際、水溶液46中には潤滑剤が入っていないため、金型47には付着物が発生せず、貼り合わせシート42が金型47に焼き付くこともない。また、貼り合わせシート42の両面に設けた不織布45の補強効果により、割れ不良のない生産性の高い工程となった。
次いで、図1に示す熱硬化性樹脂含浸工程103では、一次プレス加熱成形工程102で得られた成形物52を、図8(d)に示すように、熱硬化性樹脂溶液53中に浸漬する。同時に超音波振動子54による振動を熱硬化性樹脂溶液53に与え、熱硬化性樹脂が充分に浸透するまで(約5分間)浸漬する。超音波を加えながらの浸漬は、超音波を加えない場合と比較して、熱硬化性樹脂が充分に浸透するのに要する時間は略10分の1で済む。
次いで、図1に示す乾燥工程104では、熱硬化性樹脂が浸透した成形物52に対して、図8(e)に示すように、常温でファン55により風を吹き付けながら強制乾燥させる。
次いで、図1に示す二次プレス加熱成形工程105では、図8(c)に示す金型47を予め150℃以上に加熱しておき、成形物52に対して再度プレス加熱成形を行う。
このように、一次プレス加熱成形工程102で振動板形状に成形された成形物52に対して、熱硬化性樹脂を含浸させてから再度プレス加熱成形を行うようにすることで、成形物52の保形性が向上して成形前の形状に戻りにくくなるため、歩留まり率が向上する。
次いで、図1に示す貼り合わせ工程106では、図9(a)に示すように、吸音部材45aの一方の面に接着剤層44を配置した吸音層42aを用意する。そして、図9(b)に示す金型47において成形物52と共に三次プレス成形を行い、吸音層42aと成形物52とを貼り合わせる。なお、貼り合わせ工程においては、三次プレス成形は、加熱はしなくてもよい。
そして、図1に示す成形工程107では、所定形状の抜き型を用いて、成形物52aに中心孔を形成すると共に成形物52aを所定の外径寸法に成形する打ち抜き加工を行った後、耐湿性の樹脂をコーティングする。これにより、図9(c)に示す如く、中心孔56が形成されたラッパ状の成形物52a(スピーカ用振動板)が得られる。なお、内面側となる不織布45の表面に予め耐熱性の木目印刷を施しておくことにより、木目調の外観を好む人々の要求に応えることもできる。
なお、図1の二次プレス加熱成形工程105の後に、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行い、中心孔が形成されたラッパ状の成形物を予め加工してもよい。この場合は、貼り合わせ工程106において、図9(a)に示す吸音部材45aと接着剤層44からなる吸音層42aを成形物52と貼り合わせるために、図9(b)に示す金型47において三次プレス成形を行い、その後、図1に示す成形工程107において、再度、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行えばよい。
次に、本発明の第5の実施形態を図1、図10及び図11に基づいて説明する。
まず、図1に示す浸漬工程101では、図10(a)に示す如く、厚さが略0.25mmの木製シート58の一方の面に不織布60を接着剤層59を介して貼り合わせ、さらに、木製シート58の接着されていない面側にスポット状の接着剤72を介して不織布73を貼り合わせた貼り合わせシート57を準備し、図10(b)に示す如く、ブドウ糖5重量%及びラウリル硫酸ソーダ0.02重量%を含む水溶液61を調製し、貼り合わせシート57を適当な寸法にカットしてこの水溶液68中に浸漬する。そして、貼り合わせシート57にしなやかさが出てくるまで(約20分間)浸漬する。
次いで、図1に示す一次プレス加熱成形工程102では、しなやかさの出た貼り合わせシート57を、図10(c)に示す如く、予め100℃以上に加熱された金型62にてプレス加熱成形する。金型62は所定の形状に形成された雄型63と雌型64から成る雌雄タイプのもので、ヒータ65、66を有している。このプレスの際、水溶液68中には潤滑剤が入っていないため、金型62には付着物が発生せず、貼り合わせシート57が金型62に焼き付くこともない。また、貼り合わせシート57の両面に設けた不織布60、73の補強効果により、割れ不良のない生産性の高い工程となった。プレス加熱成形後、内面側にスポット接着してある不織布73は木製シート58から剥離される。
次いで、図1に示す熱硬化性樹脂含浸工程103では、一次プレス加熱成形工程102で成形されると共に不織布73が剥離された成形物67を、図10(d)に示すように、熱硬化性樹脂溶液68中に浸漬する。同時に超音波振動子69による振動を熱硬化性樹脂溶液68に与え、熱硬化性樹脂が充分に浸透するまで(約5分間)浸漬する。超音波を加えながらの浸漬は、超音波を加えない場合と比較して、熱硬化性樹脂が充分に浸透するのに要する時間は略10分の1で済む。
次いで、図1に示す乾燥工程104では、熱硬化性樹脂が浸透した成形物67に対して、図10(e)に示すように、常温でファン70により風を吹き付けながら強制乾燥させる。
次いで、図1に示す二次プレス加熱成形工程105では、図10(c)に示す金型62を予め150℃以上に加熱しておき、成形物67に対して二次プレス加熱成形を行う。
このように、一次プレス加熱成形工程102で振動板形状に成形された成形物67に対して、熱硬化性樹脂を含浸させてから再度プレス加熱成形を行うようにすることで、成形物67の保形性が向上して成形前の形状に戻りにくくなるため、歩留まり率が向上する。
次いで、図1に示す貼り合わせ工程106では、図11(a)に示すように、吸音部材60aの一方の面に接着剤層59を配置した吸音層57aを用意する。そして、図11(b)に示す金型62において成形物67と共に三次プレス成形を行い、吸音層57aと成形物67とを貼り合わせる。なお、貼り合わせ工程106においては、三次プレス成形は、加熱はしなくてもよい。
そして、図1に示す成形工程107では、所定形状の抜き型を用いて、成形物に中心孔を形成すると共に成形物を所定の外径寸法に成形する打ち抜き加工を行った後、耐湿性の樹脂をコーティングする。これにより、図11(c)に示す如く、中心孔71が形成されたラッパ状の成形物67a(スピーカ用振動板)が得られる。
なお、図1の二次プレス加熱成形工程105の後に、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行い、中心孔が形成されたラッパ状の成形物を予め加工してもよい。この場合は、貼り合わせ工程106において、図11(a)に示す吸音部材60aと接着剤層59からなる吸音層57aを成形物67と貼り合わせるために、図11(b)に示す金型62において三次プレス成形を行い、その後、図1に示す成形工程107において、再度、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行えばよい。
次に、本発明の第6の実施形態を図1、図12及び図13に基づいて説明する。
まず、図1に示す浸漬工程101では、図12(a)に示す如く、厚さが略0.25mmの木製シート75の一方の面に接着剤層76を介して4軸織布77を貼り合わせた貼り合わせシート74を準備し、図12(b)に示す如く、グルコース5重量%及び2エチルヘキシルスルホコハク酸エステルソーダ0.05重量%を含む水溶液78を調製し、貼り合わせシート74を適当な寸法にカットしてこの水溶液78中に浸漬する。そして、貼り合わせシート74にしなやかさが出てくるまで(約20分間)浸漬する。
次いで、図1に示す一次プレス加熱成形工程102では、しなやかさの出た貼り合わせシート74を、図12(c)に示す如く、予め100℃以上に加熱された金型79にてプレス加熱成形する。金型79は所定の形状に形成された雄型80と雌型81から成る雌雄タイプのもので、ヒータ82、83を有している。このプレスの際、水溶液78中には潤滑剤が入っていないため、金型79には付着物が発生せず、貼り合わせシート74が金型79に焼き付くこともない。また、貼り合わせシート74の片面に設けた4軸織布77により縦横均等の補強が得られるため、よりいっそう割れ不良のない生産性の高い工程となった。
次いで、図1に示す熱硬化性樹脂含浸工程103では、一次プレス加熱成形工程102で得られた成形物84を、図12(d)に示すように、熱硬化性樹脂溶液85中に浸漬する。同時に超音波振動子86による振動を熱硬化性樹脂溶液85に与え、熱硬化性樹脂が充分に浸透するまで(約5分間)浸漬する。超音波を加えながらの浸漬は、超音波を加えない場合と比較して、熱硬化性樹脂が充分に浸透するのに要する時間は略10分の1で済む。
次いで、図1に示す乾燥工程104では、熱硬化性樹脂が浸透した成形物84に対して、図12(e)に示すように、常温でファン87により風を吹き付けながら強制乾燥させる。
次いで、図1に示す二次プレス加熱成形工程105では、図12(c)に示す金型79を予め150℃以上に加熱しておき、成形物84に対して再度プレス加熱成形を行う。
このように、一次プレス加熱成形工程102で振動板形状に成形された成形物84に対して、熱硬化性樹脂を含浸させてから再度プレス加熱成形を行うようにすることで、成形物84の保形性が向上して成形前の形状に戻りにくくなるため、歩留まり率が向上する。
次いで、図1に示す貼り合わせ工程106では、図13(a)に示すように、吸音部材77aの一方の面に接着剤層76を配置した吸音層74aを用意する。そして、図13(b)に示す金型79において成形物84と共に三次プレス成形を行い、吸音層74aと成形物84とを貼り合わせる。なお、貼り合わせ工程106では、三次プレス成形は、加熱はしなくてもよい。
そして、図1に示す成形工程107では、所定形状の抜き型を用いて、成形物に中心孔を形成すると共に成形物を所定の外径寸法に成形する打ち抜き加工を行った後、耐湿性の樹脂をコーティングする。これにより、図13(c)に示す如く、中心孔88が形成されたラッパ状の成形物84a(スピーカ用振動板)が得られる。
なお、図1の二次プレス加熱成形工程105の後に、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行い、中心孔が形成されたラッパ状の成形物84に加工してもよい。この場合は、貼り合わせ工程106において、図13(a)に示す吸音部材77aと接着剤層76からなる吸音層74aを成形物84と貼り合わせるために、図13(b)に示す金型79において三次プレス成形を行い、その後、図1に示す成形工程107を行うことによって、再度、所定形状の抜き型を用いて打ち抜き加工を行う。
次に、本発明の第7の実施形態を図1、図2及び図3に基づいて説明する。
まず、図1に示す浸漬工程101では、図2(a)に示す如く、厚さが略0.25mmの木製シート2の一方の面に接着剤層3を介して木製シート以外のシート部材(不織布)4を貼り合わせた貼り合わせシート1を準備し、ブチルナフタレンスルホン酸ソーダを0.05重量%含む水溶液を調製し、図2(b)に示す如く、貼り合わせシート1を適当な寸法にカットして、この水溶液5中に浸漬する。そして、貼り合わせシート1にしなやかさが出てくるまで(約20分間)浸漬する。なお、ブチルナフタレンスルホン酸ソーダはアルキルナフタレンスルホン酸ソーダの一種で浸透剤である。また、木製シート以外のシート部材4は、木製シート2の強度を補強する補強材の役割を持たせることができる。例えば、木製シート以外のシート部材4は、紙パルプを素材とする糸により織られて作られた紙である。
次いで、図1に示す一次プレス加熱成形工程102では、しなやかさの出た貼り合わせシート1を、図2(c)に示す如く、予め100℃以上に加熱された金型6にてプレス加熱成形する。金型6は所定の形状に形成された雄型7と雌型8から成る雌雄タイプのもので、ヒータ9、10を有している。
ブチルナフタレンスルホン酸ソーダが木製シート2内に入り込んで木製シート2に伸縮性を与えるのに加えて、ブチルナフタレンスルホン酸ソーダが更に多くの水分を木製シート2に与える作用を発揮することにより、木製シート2の大きな伸びを実現することができるので、プレス加熱成形時に木製シート2が金型6中で破断しにくい。
また、水溶液5中には潤滑剤が入っていないため、プレスの際に金型6には付着物が発生せず、貼り合わせシート1が金型6に焼き付くこともなく、割れ等の不良もない良好な成形物が得られた。
次いで、図1に示す熱硬化性樹脂含浸工程103では、一次プレス加熱成形工程102で得られた成形物12を、図2(d)に示すように、熱硬化性樹脂溶液11中に浸漬する。同時に超音波振動子13による振動を熱硬化性樹脂溶液11に与え、熱硬化性樹脂が充分に浸透するまで(約5分間)浸漬する。超音波を加えながらの浸漬は、超音波を加えない場合と比較して、熱硬化性樹脂が充分に浸透するのに要する時間は略10分の1で済む。
次いで、図1に示す乾燥工程104では、熱硬化性樹脂が浸透した成形物12に対して、図2(e)に示すように、常温でファン14により風を吹き付けながら強制乾燥させる。
次いで、図1に示す二次プレス加熱成形工程105では、図2(c)に示す金型6を予め150℃以上に加熱しておき、成形物12に対して再度プレス加熱成形を行う。
このように、一次プレス加熱成形工程102で振動板形状に成形された成形物12に対して、熱硬化性樹脂を含浸させてから、二次プレス加熱成形工程105において再度プレス加熱成形を行うようにすることで、成形物12の保形性が向上して成形前の形状に戻りにくくなるため、歩留まり率が向上する。
次いで、図1に示す貼り合わせ工程106では、図3(a)に示すように、吸音部材4aの一方の面に接着剤層3を配置した吸音層1aを用意する。そして、図3(b)に示す金型6において成形物12と共に三次プレス成形を行い、吸音層1aと成形物12とを貼り合わせる。なお、三次プレス成形においては、加熱はしなくてもよい。
次いで、図1に示す成形工程107では、所定形状の抜き型を用いて、成形物12に成形物12を所定の外径寸法に成形する打ち抜き加工を行う。そして、この成形物12に耐湿性の樹脂をコーティングする。これにより、図3(c)と異なり、中心孔15が形成されないイヤホーンやヘッドホーン用の小さい振動板804が形成される。得られた振動板804を図15(a)に示す。
次に、本発明の第8の実施形態を図1、図4及び図5に基づいて説明する。
まず、図1に示す浸漬工程101では、図4(a)に示す如く、厚さが略0.025mmの木製シート17の一方の面に接着剤層18を介して、木製シート17以外のシート部材19を貼り合わせた貼り合わせシート16を準備し、図4(b)に示す如く、エチレングリコールを5重量%及びジ2エチルヘキシルスルホコハク酸エステルナトリウムを0.1重量%含む混合水溶液20を調製し、貼り合わせシート16を適当な寸法にカットしてこの水溶液20中に浸漬する。貼り合わせシート16にしなやかさが出てくるまで(約20分間)浸漬する。なお、ワークの乾燥時間を早めるために若干のエチルアルコールを水溶液20に溶解させた。ここで、エチレングリコールおよびエチルアルコールは湿潤剤であり、ジ2エチルヘキシルスルホコハク酸エステルナトリウムはジアルキルスルホコハク酸エステル塩の一種で浸透剤である。また、他の材料19は、木製シート2の強度を補強する補強材の役割を持たせることができる。たとえば、他の材料19は、不織布あるいは4軸織物である。
次いで、図1に示す一次プレス加熱成形工程102では、しなやかさの出た貼り合わせシート16を、図4(c)に示す如く、予め100℃以上に加熱された金型21にてプレス加熱成形する。金型21は所定の形状に形成された雄型22と雌型23から成る雌雄タイプのもので、ヒータ24、25を有している。このプレスの際、水溶液20中には潤滑剤が入っていないため、金型21には付着物が発生せず、貼り合わせシート16が金型21に焼き付くこともなく、割れ等の不良がない良好な成形物が得られた。
次いで、図1に示す熱硬化性樹脂含浸工程103では、一次プレス加熱成形工程102で得られた成形物26を、図4(d)に示すように熱硬化性樹脂溶液27中に浸漬する。同時に超音波振動子100aによる振動を熱硬化性樹脂溶液27に与え、熱硬化性樹脂が充分に浸透するまで(約5分間)浸漬する。超音波を加えながらの浸漬は、超音波を加えない場合と比較して、熱硬化性樹脂が充分に浸透するのに要する時間は略10分の1で済む。このようにして得られた成形物26を温度60℃、相対湿度90%の雰囲気中で24時間放置して観察した結果、超音波を用いない場合と比べて変形が著しく少ないことがわかった。
次いで、図1に示す乾燥工程104では、熱硬化性樹脂が浸透した成形物26に対して、図4(e)に示すように、常温でファン101aにより風を吹き付けながら強制乾燥させる。常温の風による強制乾燥は、高温の風を用いる方法(例えば赤外線ランプや熱風強制乾燥)に比べて、次工程におけるプレス加熱成形での割れの不良率は略10分の1に抑えられることがわかった。
次いで、図1に示す二次プレス加熱成形工程105では、図4(c)に示す金型21を予め150℃以上に加熱しておき、成形物26に対して再度プレス加熱成形を行う。
このように、一次プレス加熱成形工程102で振動板形状に成形された成形物26に対して、熱硬化性樹脂を含浸させてから、二次プレス加熱成形工程105において再度プレス加熱成形を行うようにすることで、成形物26の保形性が向上して成形前の形状に戻りにくくなるため、歩留まり率が向上する。
次いで、図1に示す貼り合わせ工程106では、図5(a)に示すように、吸音部材19aの一方の面に接着剤層18を配置した吸音層16aを用意する。そして、図5(b)に示す金型21において成形物26と共に三次プレス成形を行い、吸音層16aと成形物26とを貼り合わせる。なお、三次プレス成形においては、加熱はしなくてもよい。
そして、図1に示す成形工程107では、所定形状の抜き型を用いて、成形物26を所定の外径寸法に成形する打ち抜き加工を行った後、耐湿性の樹脂をコーティングする。これにより、図5(c)とは異なり、中心孔30aが形成されないイヤホーンやヘッドホーン用の小さい振動板804が形成される。振動板804を図15(a)に示す。
なお、上記第1〜第7実施形態において一枚の木製シートの代わりに二枚の木製シートを貼り合わせたものでもよく、さらにこの木製シートの厚みが同じでなくてもよく、例えば、一方を0.2mm厚、もう一方を0.3mm厚にしてもよい。木製シートの厚みを上記2種類の厚みの異なる木製シートの中から同じものあるいは異なるものを二枚選択することにより3種類の厚みの電気音響変換器用振動板を製造できるためそれぞれの厚みに適した大きさで製造される電気音響変換器用振動板の種類を増やすことができる。あるいは、例えば、0.2mm厚、0.3mm厚、0.45mm厚の3種類の厚みの異なる木製シートの中から同じものあるいは異なるものを二枚選択することにより6種類の厚みの電気音響変換器用振動板を製造できるためそれぞれの厚みに適した大きさで製造される電気音響変換器用振動板の種類を増やすことができる。さらに、上記第1〜第7実施形態において二枚の木製シート2でなくてもよく、例えば、三枚の木製シート2を用いるなど複数であっても良い。
なお、また、上記第8実施形態において一枚の木製シートの代わりに二枚の木製シートを貼り合わせたものでもよく、さらにこの木製シートの厚みが同じでなくてもよく、例えば、一方を0.025mm厚、もう一方を0.035mm厚にしてもよい。木製シートの厚みを上記2種類の厚みの異なる木製シートの中から同じものあるいは異なるものを二枚選択することにより3種類の厚みの電気音響変換器用振動板を製造できるためそれぞれの厚みに適した大きさで製造される電気音響変換器用振動板の種類を増やすことができる。あるいは、例えば、0.025mm厚、0.35mm厚、0.45mm厚の3種類の厚みの異なる木製シートの中から同じものあるいは異なるものを二枚選択することにより6種類の厚みの電気音響変換器用振動板を製造できるためそれぞれの厚みに適した大きさで製造される電気音響変換器用振動板の種類を増やすことができる。さらに、上記第8実施形態において二枚の木製シート2でなくてもよく、例えば、三枚の木製シート2を用いるなど複数であっても良い。
複数の木製シートで構成した場合には、反りなどの変形を起こしにくいと共に全体にわたって厚みのばらつきが少なく強度にすぐれた電気音響変換器用振動板が得られるため、これを用いたスピーカ、イヤホーン、ヘッドホーン等の電気音響変換器の音響特性が向上する。
(スピーカの構成)
図14は、上記第1〜第6実施形態に係る電気音響変換器用振動板を用いたスピーカの断面図である。
このスピーカ700では、上記の第1乃至第6の実施形態のいずれかの製造方法により作製されたラッパ形状のスピーカ用振動板701の外周部に所定の形状のゴムエッジ702を全周にわたって接着し、スピーカ用振動板701の中心孔に所定の形状のボイスコイル703のボビン(予め所定のダンパー704が接着されている)を挿入接着してある。
これらの一体となった3点の部品が、所定のスピーカ用ハウジング705(予め所定の磁気回路706が設置されている)に接着にて取り付けてある。ボイスコイル703からは通電用の金属線(図示せず)が外部に引き出されており、これがハウジング705に取り付けてある端子(図示せず、予め金属製のハウジング705と絶縁されている)に接続されている。
磁気回路706は、ドーナツ状のプレート707、ドーナツ状のマグネット708、及びポール709等から成り、プレート707とポール709の間に形成された磁気ギャップ710にボイスコイル703が遊挿されている。マグネット708を着磁することで、スピーカとして完成する。なお、711はボイスコイル703内に異物が侵入するのを防ぐダストキャップ、712はエッジ702の端部を押さえる環状の矢紙である。
このスピーカ700は、木製シートで形成されたスピーカ用振動板701の厚みが略均一であり、歪の少ない優れた音響特性が得られた。
また、このようにプレス加熱成形により得られた成形物の一方の面に吸音部材を貼り合わせ所定形状に成形された貼り合わせシートが、振動板としての所定形状に成形されることにより振動板701がハウジング705内に取り付けられたときにハウジング705が取り付けられるスピーカボックス(図示せず)の内部で生じる共鳴を低減させるため、これを用いたスピーカの音響特性が向上する。
木製シートで形成されたスピーカ用振動板は、自然音に近い再生音が得られ、特に、人間の声、バイオリンの音等の中高音を生々しく再現することができ、また、質感の高い外観を有するものであるため、高品位な音質と高級な外観が要求される高級オーディオ装置、高級ホームシアターシステム、放送局のモニター等にも採用できるものである。
(イヤホーンまたはヘッドホーンの構成)
図15(a)は、第7及び第8実施例に係る振動板をイヤホーンまたはヘッドホーン用に適用する場合の一例を示す断面図である。
図15(a)においては、第7及び第8実施例に示すいずれかの製造方法により作製された木製シート802、木製シート以外のシート部材803及び吸音部材802aからなるドーム状の振動板804の外周部に、所定の形状のエッジ801が全周にわたって接着されている。エッジ801は、ゴムあるいは軟質プラスチックフィルムで作られている。
図15(b)は、第7及び第8実施例に係る振動板を用いたヘッドホーンの一例を示す断面図である。図15(b)に示すヘッドホーン800は、第7及び第8実施例に係る振動板の中心部分に所定の形状のボイス・コイル806を備えたボビン(ボイス・コイル・ボビン)が接着されている。背気室809の一部を構成する筐体816に振動板804の外周部分が接着され、振動板804が筐体816に固定されている。永久磁石805側のボイス・コイル806中に電流が流れることにより、ボイス・コイル806に機械的駆動力が発生し、その駆動力がボイス・コイル・ボビン815を通して振動板804に伝えられ、結局、電流の変化としての情報が振動板804の動きとなり、周辺の空気を振動させ、情報を持った音となる。音は、耳孔813を通して耳(図示せず)に届く。その際に、耳以外への音の拡散を防止し、且つ外部からの騒音を遮断するために、エア・パッド812が設けられ、顔の側面とヘッドホーン800との密着性を上げている。振動板804の振動をよりスムーズにするために、および振動板804の後面の空気の動きを制御するために、背極気室810、後部漏洩孔807、背気室809が設けられている。また、振動板804の全面の動きを制御するために、前極気室811が設けられ、保護材823と保護エッジ822には前部漏洩孔808が多数設けられている。
このようにプレス加熱成形により得られた成形物の一方の面に吸音部材を貼り合わせ所定形状に成形された貼り合わせシートが、振動板としての所定形状に成形されることにより振動板804が筐体816内に取り付けられたとき筐体816内で生じる共鳴を低減させるため、これを用いたヘッドホーンの音響特性が向上する。
図15(a)に示す振動板804をイヤホーンに適用する場合は、図15(b)の構造を変形させればよい。例えば、図15(c)に示すように、装着面の中央に耳孔に挿入される突起部917を設けるようにする。
図15(c)に示すイヤホーン900は、第7及び第8実施例に係る振動板の中心部分に所定の形状のボイス・コイル906のボビン(ボイス・コイル・ボビン)906が接着されている。背気室909の一部を構成する筐体916に振動板904の外周部分が接着され、振動板904が筐体916に固定されている。永久磁石905側のボイス・コイル906中に電流が流れることにより、ボイス・コイル906に機械的駆動力が発生し、その駆動力がボイス・コイル・ボビン915を通して振動板904に伝えられ、結局、電流の変化としての情報が、振動板904の振動としての動きとなり、周辺の空気を振動させ、情報を持った音となる。音は、耳孔913を通して耳(図示せず)に届く。また、振動板904の前にある耳孔のさらに前面に耳孔用突起部917が設けられ、その中心部分に音の通る貫通孔が設けられている。この耳孔用突起部917が外耳道の中へ挿入されることにより、耳以外への音の拡散を防ぎ、且つ外部の騒音を防ぐことができる。
振動板904の振動をよりスムーズにするために、および振動板904の後面の空気の動きを制御するために、背極気室910、後部漏洩孔907、背気室909が設けられている。また、振動板904の全面の動きを制御するために、前極気室911が設けられ、保護材923と保護エッジ922には前部漏洩孔908が多数設けられている。
このようにプレス加熱成形により得られた成形物の一方の面に吸音部材を貼り合わせ所定形状に成形された貼り合わせシートが、振動板としての所定形状に成形されることにより振動板904が筐体916内に取り付けられたとき筐体916内で生じる共鳴を低減させるため、これを用いたイヤホーンの音響特性が向上する。
なお、上記スピーカ、ヘッドホーン、イヤホーンは、電気音響変換器ともよばれる。電気音響変換器には、さらには上記実施例の他にブザー等がある。
本発明の製造方法によれば、この種の電気音響変換器用振動板をより安価に製造することが可能となるため、上記のような高価な製品だけでなく、低価格の据置型オーディオ機器や携帯型オーディオ機器等にも使用可能となる。
また、本発明の製造方法によれば、木製シートの伸縮性が向上するため、複雑な形状に加工することも可能となり、多用な形状が要求されるファッション性の高い製品や、スペース的な要求が厳しいコンパクトな製品にも採用可能となる。
したがって、あらゆる製品において大きな満足度が得られるようになるため、極めて有用であるといえる。
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記の各実施形態に種々の改変を施すことができる。