JP2008216153A - 材料加工の試験装置、解析システム及び記録媒体 - Google Patents

材料加工の試験装置、解析システム及び記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】材料加工試験では、工具と材料間の摩擦力のために変形が拘束されて材料の各部位で加工履歴が異なるため、観察部位の選定には経験技術が必要であった。
【解決の手段】材料加工試験の解析モデルにより常用範囲の試験条件の数値解析を実施する手段、材料加工試験の数値解析結果から少なくとも試験片各部の代表位置と変位勾配を含む変数の履歴を抽出しデータファイルに出力する手段、所望によりデータファイルをデータベースに登録する手段、加工プロセスの解析モデルにより所望の条件の数値解析を実施する手段、加工プロセスの数値解析結果から被加工材の着目部位の少なくとも変位勾配を含む変数の履歴を抽出する手段、データファイルを参照して変数の履歴と一致度の高いデータファイルを探索する手段、一致度の高いデータファイルに基づき試験片の観察部位を特定する手段、所望により該試験片の観察部位の極点図を算出し出力する手段から構成される材料加工の試験装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧延、押出し、引抜き、鍛造、プレス加工などの主に金属材料の塑性加工プロセスにおいて、変形解析により被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくは加工ひずみ及びスピンの増分の履歴を取得した後、当該変位勾配増分もしくは加工ひずみ及びスピンの増分の履歴に基づき結晶塑性解析を行うことにより、加工集合組織などの組織の発展を迅速に予測できる装置に関する。
鉄鋼や非鉄金属などの金属材料開発では、最終顧客の使用ニーズに適合するように材料の化学成分を決めて小型の真空溶解炉などを用いて先ず少量の複数種類の材料を溶製する。この材料に圧延や鍛伸などの加工を加えて板や棒などの所定の形状に加工した後、試験片を切り出して材料加工試験に供する。材料加工試験を実施する主な狙いは製品の冶金学的な組織と材料の機械特性を調査することである。そして、複数の試料の中から工業的に製造可能と考えられる2〜3の候補を選択し、100kg程度の鋳塊を溶製して実際の加工プロセスの条件に近いモデル加工機で加工試験を実施することにより更に詳細な試験データを採取する。最終的に一つの候補に絞り込んで実際の製造プロセスで製造試験を実施する。それぞれの試験で問題点が抽出されると、その問題を改善するため材料設計を再度実施して同様の試験を繰り返す。
材料加工試験では実際の製造プロセスを想定して主に圧縮試験が実施される。圧縮試験は一対の工具を用いて材料を挟みこんで押しつぶすので、機械加工が容易な円柱や角棒状の小型の試験片ですむため、少量の材料で実験できる特長がある。また、圧縮試験では試験片の取付け取外しが容易であり、試験サイクルが短く多数の条件の探索的な調査に適する。
一方、引張り試験では試験片の掴み部に多くの材料を要するので、かなり材料を確保しないと実験できない。また、試験片の加工コストが高い上、試験機への固定の際にアライメント調節などの余分な手間が生じる。
圧縮試験では、理想的な均一変形を狙って工具と材料間の接触界面の潤滑を行うと、例えば円柱の一軸圧縮試験の場合のように座屈と呼ばれる非軸対称の変形が生じて所望のデータが採取出来ない問題があった。その対策として潤滑を軽度にしたり、全く潤滑を行わなかったりするが、その場合には工具接触による摩擦力が発生して材料の接触界面の変形が拘束されるため、バルジングと呼称される樽状の不均一変形が発生する。バルジングの程度は接触界面の摩擦力と圧下の程度により変化するのでこれを任意に制御するのは一般的に困難であった。そのため、変形抵抗を求める際には、不均一変形を許容してこれを簡単な実験式で修正することも実施されるが、実験式に一般性が無いため誤差が発生する問題があった。
実用金属などの多結晶材料では任意の断面で切断して所望の腐食を行うことにより、多結晶金属組織に起因した腐食むらを形成できる。その際に腐食溶液の成分調整や処理手順により所望の金属組織を現出できるので、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて加工前後の材料の組織観察を行うことができる。
円柱状試験片の均一圧下の場合は、中心軸を含む任意の断面が長方形であり、全断面が均一の一軸圧縮を受けるので基本的にはどこを着目部位としても材料の加工履歴は同じである。しかし、バルジングを生じた場合は中心軸を含む観察面が長方形ではなく両側縁の中央部が外側に張り出した曲線になる。材料の内部流動はこの外側の形状に沿うように生じるので、加工前に均一な組織に調整されていても加工中の組織の発展が材料の流動状態の影響を受けるため加工後は不均一組織となる。そのため、想定する加工プロセスの組織をどの部位から推定するかは明快な理論がなく、各研究機関や個人の所有するノウハウで対処されているのが実情であった。
このような試験片の観察部位に関する選択基準の曖昧さから解析精度の低下が避けられない。信頼できるデータを得るためには実機条件により近いモデル試験に依存しなければならないので、そのための開発期間とコストの増化が避けられない問題があった。

一方、H形やアングル材などのように複雑な断面形状を有する製品の塑性加工プロセスでは、断面内の位置に依存して加工の履歴が異なる。この場合、断面を便宜的に区分し各部位から代表的な着目点を選択してこの着目点の条件により各部位の材料組織の制御が行われる。しかし一般に製造用に最適化された工場の装置を用いて着目点の変形の履歴を実験的に精度良く抽出することが困難であり、条件が曖昧であるため材料加工試験の結果を適切に反映できない問題があった。
近年、計算機や計算技術の進歩により有限要素法による加工プロセス解析が実用化段階を迎えて、圧延や押し出しなどの一次加工プロセスの変形解析や、鍛造、板成形、管成形などの二次加工プロセスの変形解析の例がかなり多く報告されるようになった。非特許文献1には、バルク加工の有限要素解析の理論と実例がプログラムとともに開示されている。
特許文献1では工場で製造される各種形状の被圧延材の加工履歴を調査するための有限要素解析の方法が開示されている。この方法によれば工場実験を行わなくても、数値解析によりかなり信頼できる被圧延材の加工履歴を抽出することが可能となる。
特許文献2には数値解析と圧縮試験を組み合わせた熱間加工または温間加工の金属組織の予測方法が開示されている。即ち、被塑性加工材の塑性加工時の温度と歪及び形状変化を数値解析により得て、次に実際の被塑性加工材と実質的に同材質の金属試験片を用いて、その温度と歪変化を基に実際の加工条件に近い条件で塑性加工を行い、塑性加工後その金属試験片の断面金属組織を観察して、熱間または温間の塑性加工に供される被塑性加工材の金属組織を予測する。
しかし、この場合塑性加工を受ける圧縮試験片の観察部位の選択基準を明確にしていないので、複雑に分布する組織のどの部分を用いて予測するか極めて曖昧であり、そのため組織の予測精度が低い問題があった。
非特許文献2にはアルミニウムや銅などの面心立方格子(FCC)材料の冷間加工における加工集合組織をFEPM(有限要素多結晶モデル)による数値解析で予測する技術がプログラムとともに開示されている。この場合、マクロスケールの引張り試験に対して着目部位の変位勾配増分を抽出し、これに基づき数1の式からミクロスケールのFEPMの境界条件を設定して集合組織を予測する。均一変形を仮定した引張り試験や圧縮試験ではマクロスケールの変形を既知として、ミクロスケール解析だけを行うことができる。但し、従来技術ではFCC材料しか信頼性がなく、鉄鋼などのBCC材料やチタニウムなどのHCP材料などに殆ど適用できない問題があった。
Figure 2008216153
また、一般的なマルチスケール解析ではマクロスケール解析とミクロスケール解析の連成解析を行うので、全体の計算処理量が大幅に増化するため、複雑な形状の解析や三次元解析が容易に実施できない問題があった。
非特許文献3には、この問題を緩和するために非連成のマルチスケール解析が開示された。しかし、非練成にした場合でもミクロスケール解析に多大な計算処理を要するFEPMを利用する場合は、複雑な解析や三次元解析の取り扱いが困難であることが判明した。
また、非特許文献4には炭素鋼の熱間加工組織を残留オーステナイト(FCC)として強制的に凍結し、常温で組織観察及びX線回折試験による集合組織の測定を行った結果が報告された。
従来、熱間加工により形成された加工集合組織はその後の再結晶と相変態により更新され消失するものとして無視されてきた。この報告は高品質の鋼板を製造するために、熱間の加工集合組織を制御して、その後の熱処理組織を最適化する新しい試みとしてなされたものである。非特許文献4では高温の加工集合組織を予測することが基本になるが、このような方法がいまだに確立されていない問題があった。
特開2002−288240号公報 特開2002−014091号公報 日本塑性加工学会編:『静的解法FEM−バルク加工』、(2003)、コロナ社 高橋寛:『多結晶塑性論』、(1999)、コロナ社 渡邊育夢、寺田賢二郎:『非連成近似解法による多結晶金属のマルチスケール解析』、第55回応用力学講演会論文集、平成18年1月、335−336 丸山直紀、杉浦夏子、吉永直樹:『炭素鋼の熱間γ域における圧延集合組織形成』、日本鉄鋼協会講演大会講演論文集、第19巻(2006)、1239
塑性加工の変形解析ではその優れた実用性から主に剛塑性有限要素解析が適用されてきた。非特許文献1に開示のように剛塑性有限要素解析では鍛造プロセスのように時間とともに被加工材の形状が変化する非定常解析と圧延のように工具に固定された座標系で被加工材の形状が変化しない定常解析が選択できるため、多くの塑性加工プロセスの変形解析が実施できる特長がある。
そこで加工プロセスと加工試験の剛塑性有限要素解析を行って両者の結果を比較することにより、加工履歴の一致度が高い部位を試験片の観察部位とすることが考えられる。しかしながら、以下の問題点のためその実用化が困難であった。
(1)二つの加工履歴を比較するために必要な具体的な比較変数が不明であった。特許文献2では加工プロセスの温度、ひずみ、形状変化に基づいて圧縮試験の条件を設定するので、これに倣ってひずみを比較変数として利用することが可能である。しかし、特許文献2で開示された実施態様例では真ひずみとして一つ変数のみが用いられておりその定義は記載されていない。非特許文献4のように熱間加工または温間加工の金属組織の予測において加工集合組織を予測する目的のためには、三次元的に複雑な結晶滑り系を特定する際に一つの変数で対応するのは困難なため、この方法は一般的でなく利用できない問題があった。
また、二つの加工履歴を比較するために必要な効率の良い探索方法が不明であった。塑性加工プロセスとその加工試験の異なる二つの加工履歴に対して影響する因子は数多いので、これらを場合分けしてマルチスケール解析を実施し探索する方法が考えられる。しかし、マルチスケール解析は処理コストが膨大になるため、これを削減しないと実用化できない。そのため、実用的なコストで処理可能な探索方法を開発する必要があった。
高温加工の加工集合組織を予測するニーズが少なかったので、比較変数として冷間加工の集合組織予測の場合に必要となる変位勾配のスピン成分を考慮したものは見受けられない。
また、非特許文献1に開示のように、剛塑性有限要素法そのものが変位勾配のスピン成分を無視して定式化されていた。そのため剛体回転の影響を考慮できない問題があった。
(2)塑性加工では円柱の圧縮試験のバルジング変形のように、一般的に不均一変形が生じる。有限要素解析では変形の時間ステップ毎に結果を得ることができるが、不均一変形のために比較変数の時間変化が測定部位によって大きく異なる場合がある。
塑性加工プロセスと加工試験のように異なる二つの加工履歴を比較する際に、時間ステップ毎のデータを利用して効率良く比較する方法が不明であった。そのため、二つの加工履歴に対して変位勾配の9次元の空間にそれぞれの軌跡を写像して、両者の距離を測定するような方法の開発が必要であった。
(3)一般に塑性加工プロセスと加工試験で主ひずみの方向が異なるため比較変数の成分で両者の比較を行う際に誤差を生じる問題があった。
また、剛塑性有限要素解析では観測する空間座標系がプログラムによって変更できない場合があり、その場合両者を直接比較できない問題があった。
一方、比較変数の9成分の全てが同じ影響度を持つことは少なく、その影響を経験的に設定できることが望ましい。
(4)従来、加工試験の観察部位を特定できなかったので加工プロセスの組織を精度良く予測できなかった。特許文献2において加工試験の変形解析を実施しないので観察部位の特定ができない問題があった。
(5)実験室などで利用するための組織発展の解析システム構成が不明であった。特に塑性加工プロセスではプロセス毎に境界条件が変化して複雑になるので、変形解析を実施する際に困難性があった。そのため、専門家に変形解析を依頼することが考えられるが、そのために有効なインターネットなどの高付加価値通信網で利用するための材料加工の試験システム構成が不明であった。
(6)顧客に複雑な解析システムを配布するためには材料加工の試験装置のシステム構成を明確にして記録する方法が必要であった。
実用材料は多数の単結晶粒子が寄り集まった多結晶材料であるから、原理的には非特許文献2に開示のように有限要素多結晶モデル(FEPM)を用いることにより変形特性を予測することができる。即ち、マルチスケール理論を考慮することにより、加工プロセスのマクロスケール解析結果をもとにミクロスケールのFEPMで加工集合組織を予測する。
この時、マクロスケール解析で加工プロセスの着目部位の変位勾配の履歴を求めて、ミクロスケール解析の境界条件として受け渡ししなければならない。
発明者は、二つの加工履歴を比較検討するための比較変数を決めるために、次のような思考実験を行った。マクロスケール解析の二つの加工履歴に基づきミクロスケール解析の境界条件を設定して初期状態が同じ材料の集合組織を予測する。もし両者の境界条件が等しければ加工集合組織も等しいが、境界条件の差が大きくなるにつれて予測される組織に差が生じる。このミクロスケールの境界条件を規定するのは非特許文献2によればマクロスケール解析の着目部位の変位勾配増分の履歴である。
そこで、二つの加工履歴として変位勾配増分の履歴を採用する。もし両者の変位勾配増分の履歴が等しければ集合組織も等しいが、両者の差が大きくなるにつれて組織に差が生じることになる。
このことから、発明者は加工履歴として変位勾配の履歴を抽出し、ミクロスケール解析を実施せずにマクロスケール解析と加工試験だけで集合組織を予測することを発案した。そして、実用的な処理コストで確実に探索する方法を検討して発明を完成させた。
即ち、第一の本発明は、材料加工試験の解析モデルにより常用範囲の試験条件の数値解析を実施する手段、材料加工試験の数値解析結果から少なくとも試験片各部の代表位置と変位勾配を含む変数の履歴を抽出しデータファイルに出力する手段、所望によりデータファイルをデータベースに登録する手段、加工プロセスの解析モデルにより所望の条件の数値解析を実施する手段、加工プロセスの数値解析結果から被加工材の着目部位の少なくとも変位勾配を含む変数の履歴を抽出する手段、データファイルを参照して変数の履歴との不一致度の低いデータファイルを探索する手段、不一致度の低いデータファイルに基づき試験片の観察部位を特定する手段、所望により該試験片の観察部位の極点図を算出し出力する手段から構成されることを特徴とする材料加工の試験装置である。
第二の本発明は、変数の履歴との不一致度の低いデータファイルを探索する手段が、変位勾配の履歴から相当ひずみの履歴を抽出する手段、プロセスおよび加工試験の変位勾配成分の差の絶対値を相当ひずみで除して変位勾配成分不一致度を求める手段、変位勾配成分不一致度を比較の開始から終了の相当ひずみの範囲で平均処理することにより平均変位勾配成分不一致度を求める手段、平均変位勾配成分不一致度に所望の重み関数を乗じて全ての成分で総合することにより総合変位勾配不一致度を求める手段、データファイルの総合変位勾配不一致度を比較して不一致度の低いデータファイルを抽出する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の材料加工の試験装置である。
第三の本発明は、変数の履歴との不一致度の低いデータファイルを探索する手段が、材料加工試験の解析モデルと加工プロセスの解析モデルの観測系の差を修正変換する手段を有することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の材料加工の試験装置である。
第四の本発明は、材料加工試験を実施する手段、特定された観察部位の組織観察、硬度分布測定、X線回折試験、EBSP解析の何れかの測定を実施する手段、所望により測定結果をデータベースに登録する手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の材料加工の試験装置である。
第五の本発明は、請求項1乃至請求項3に記載の材料加工の試験装置のプログラムが高付加価値通信網に接続された計算機の記憶装置に記録され、高付加価値通信網に接続された所望の計算機、携帯端末、携帯電話、移動体通信装置、ゲーム機、双方向端末、計算処理手段から利用されることを特徴とする塑性加工における被加工材の組織発展の解析システムである。
第六の本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の材料加工の試験装置のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
(1)本発明の第一の装置の効果について説明する。
図1は本発明の装置の構成を説明するための流れ図である。
先ず、手段1により材料加工試験の解析モデルの数値解析を実施する。材料加工試験としては、圧縮試験、据え込み試験またはアップセット試験と呼称される円柱や板の試験片を一対の平行工具に挟んで押し潰す方法が一般的である。また、押出し試験、引抜き試験、圧延試験なども実施される。
解析モデルとしては有限要素法が一般的であるので、これを用いる事ができる。特に、塑性加工解析では剛塑性有限要素法が実用化されているので、これを用いることが望ましい。また、衝撃的な加工では動的陽解法定式の有限要素法を用いることができる。試験片の形状をCADなどで定義し、これを基に有限要素のメッシュを自動的に生成する方法が便利である。もちろんテキストエディターなどで入力様式に応じたテキストデータを作成することも可能である。所望により選択すればよい。
試験片はその材料成分や加工温度、加工速度に応じて硬さが変化するので、これを変形抵抗式でモデル化するのが一般的である。良く利用されるのは変形抵抗が相当ひずみ、相当ひずみ速度および温度の関数とする変形抵抗式である。相当ひずみに関してはn値、相当ひずみ速度に関してはm値がパラメータとして利用される。これらは材料加工試験の結果に合わせて指定すればよい。
工具も同様にCADで定義して自動的にメッシュを生成するか、または手動でテキストファイルとして作成する。工具は移動して試験片に接触してこれを押し潰す。そのため工具の速度、工具と試験片間の接触面の摩擦係数などを指定する。
一般にプロセスのモデルは複雑であるからCADなどを利用することが多く、また専用の入力プログラムを用いる場合もある。材料加工試験のモデルは、形状が比較的単純であるから専用の入力プログラムを用いることが多い。
解析は形状が複雑で有限要素数が多い場合はワークステーションやスーパーコンピュータが利用されるが、最近はパソコンを用いることもある。二次元問題や簡単な三次元問題ではパソコンでもメモリーの不足や処理時間の増加などの不都合は少なくなっている。有限要素メッシュをできるだけ単純化して剛塑性有限要素法を利用すればパソコンでもかなり実用的な解析ができる。
次に、手段2により試験片各部の代表位置と変位勾配の履歴をデータファイルに出力する。変位勾配を一律に規定するには計9個の成分の特定が必要であり、具体的には垂直ひずみEに関する3成分、せん断ひずみγに関する3成分とスピンΩに関する3成分の合計9成分である。一般的に有限要素解析では変形ステップ毎に変位勾配速度と増分時間が得られるので、変位勾配速度に増分時間を乗じることにより変形勾配増分を算出できる。初期値から増分時間及び変形勾配増分を積算することにより、各変形ステップの時刻と変形勾配を算出することができる。二つの変形の履歴が等しいか否かを評価するための比較変数は各変形ステップの時刻と変形勾配である。変形勾配は数1の式のように9個の成分から構成される。
しかし、一般的に剛塑性有限要素法では微小変形理論が適用されるので、ひずみの6成分は解析結果として求められるが、スピンの3成分は定義されないので無視される問題があった。また、市販のプログラムでは出力結果としてひずみの6成分Eとγは採用されても、スピンの3成分Ωは無視されてきた。
そこで剛塑性有限要素法のプログラムにおいて数1の式に従ってスピンを求める処理を追加することで9個の成分を出力することができる。
また、市販のプログラムでは利用者は一般にユーザーサブルーチンを利用してサブプログラムを定義可能であるから、節点の変位速度から数1の式に従ってスピンを求めるように改造することができる。
次にデータファイルをコンピュータのハードディスクなどの記憶装置に保管する。材料加工試験では常用的に用いられる試験方法が特定の方法に集中しており、その条件も研究機関のノウハウでかなり制限される。そのため、予め材料加工試験の計算モデルにより各研究機関のノウハウに基づいた常用範囲の試験条件の解析を実施して試験片の各部位の変位勾配の履歴をファイルに出力し保存する。ファイルは予め決められた仕様により、入力データとして再び計算機に読み込んで処理できるものとする。ファイル名は後に解析条件に応じて参照できるように解析条件を組み合わせた名称とするか、または連続番号、日付や時間などを利用して自動的に唯一特定できる名称とし、さらに実験条件とファイル名の対応表をファイルとして持つようにする。
解析条件は大別して、試験方法、寸法形状、境界条件、材料物性値である。試験方法が決まれば研究機関のノウハウに基づき寸法形状や境界条件がほぼ決まる。材料物性は取り扱う代表的な材料とすればよい。以上のことから材料加工試験の条件は一般的に製品の種類に比べれば圧倒的に少ないので一般的な事務用の計算機やパーソナルコンピュータで十分取り扱える。また、データファイルの数が多い場合や、条件自体が複雑に変化する場合などでは、所望により手段3でデータファイルをデータベースに登録することができる。データファイルは再利用するので、登録することにより再利用性が向上する。
手段4により加工プロセスの解析モデルの数値解析を実施する。スピン成分を出力するように改造された加工プロセスの計算モデルにより、被加工材の着目する部位の変位勾配の履歴を求めることができる。スピンの3成分については剛塑性有限要素解析の中でスピンの計算処理を行うように改造する。
手段5により被加工材の着目部位の変位勾配の履歴を抽出する。
手段6により、加工プロセスの変位勾配の履歴を材料加工試験のデータベースのファイルと比較することにより、最も不一致度の低い変位勾配の履歴を有する条件及び試験片の部位を選択する。変位勾配の成分は9成分であるから、1つの成分が一致しても他の成分が異なれば不一致度が高くなる。各成分で平均的に不一致度が低い場合を抽出すれば良い。
手段7により不一致度の低い試験片の観察部位を特定することができる。不一致度が低いデータファイルが材料加工試験の有限要素モデルのどの要素に対応するかは、記録により判明する。その要素の位置は解析結果から抽出できる。
手段6や手段7はユーザーがファイルを開いて確認しながら行うこともできる。しかし、データファイル数が多い場合は効率が悪化する。
手段6や手段7の方法であれば加工プロセスの解析を行うことにより所望の条件の変位勾配の履歴を抽出するとともに、予め計算処理した材料加工試験の同様のデータファイルの中からOS付属のファイル処理手段やスクリプト言語などによるファイル処理手段を用いて自動処理が可能である。また所望によりデータベースの検索手段により自動的に最も近い条件を探索することも容易にできる。
所望により手段8を用いて試験片の観察部位の極点図を算出し出力することができる。非特許文献2に開示のように、観察部位の変位勾配の履歴を境界条件として、多結晶有限要素モデル(FEPM)の数値計算により加工集合組織を予測することが可能である。そして、予測された組織から公式により極点図の座標を求めることができる。この座標を表計算ソフトなどで図に表示することにより極点図を作成することができる。極点図はX線解析試験などで実験的に取得できるので、実験と解析の結果を直接比較できるため、便利である。
但し、多結晶有限要素モデルは処理時間が多く必要であるから、重要な結果のみ適用するとよい。
(2)本発明の第二の装置の効果について説明する。
図2は本発明の装置の構成を説明するための流れ図である。
手段11により、変位勾配の履歴から相当ひずみの履歴を抽出する。一般に、有限要素法で求められた各時間ステップにおける変位勾配の履歴から9次元の変位勾配空間の軌跡を求めて、二つの軌跡の一致度を評価するのは一般的に困難である。
そこで変位勾配のひずみに関する不変量に関連する相当ひずみを各時間ステップで求め、相当ひずみを横軸に、変位勾配の9成分を縦軸にとった線図を想定する。二つの加工履歴に対応した線図を重ね合せて、各成分で線図の一致度を調べることにより、変位勾配を比較することができる。
手段12により、プロセスおよび加工試験の変位勾配成分の差の絶対値を相当ひずみで除して変位勾配成分不一致度を求める。計算機などでは一致度よりも不一致度を定量的に扱いやすい。不一致度が低い場合を、一致度の高い場合と見なすことができる。変位勾配の成分は9個あるから、これらを同一変数で規格化すると便利である。一般に計算機ではゼロ割がエラーの原因になるので、非ゼロ変数で規格化することが望ましい。そこで、相当ひずみで規格化して変位勾配成分不一致度と定義する。これは9成分定義される。
手段13により、変位勾配成分不一致度を比較開始から終了の相当ひずみの範囲で平均処理し平均変位勾配成分不一致度を得る。塑性加工では加工が進むと変位勾配成分不一致度も変化する。そこで比較範囲で平均的な不一致度として平均変位勾配成分不一致度を定義する。平均処理の方法としては、比較範囲の有限個の比較点の変位勾配成分不一致度の和を求め、これを比較点の数で除すことができる。また、積分平均を行うこともできる。
手段14により、平均変位勾配成分不一致度に所望の重み関数を乗じて全ての成分で総合し総合変位勾配不一致度を求める。変位勾配の全ての成分が材料の組織に同等に影響することはまれである。そこで平均変位勾配成分不一致度に所望の重み関数を乗じて全ての成分で総合した総合変位勾配不一致度を定義することができる。
手段15により、データファイルの総合変位勾配不一致度を比較して不一致度の低いデータファイルを抽出する。平均変位勾配成分不一致度が同じであっても、総合変位勾配不一致度は重み関数により変化する。この重み関数を調整することにより、各研究機関などで蓄積されたノウハウを的確に不一致度の評価に反映することができる。
なお、相当ひずみは剛塑性有限要素法において材料の加工硬化を規定する変数として利用されており、非減少変数であることから変位勾配の発展を表示するための変数として適切である。
(3)本発明の第三の装置の効果について説明する。
通常材料加工試験の圧下方向は加工プロセスの圧下方向を想定して行われる。しかしH形材のユニバーサル圧延を例にすれば、水平なウェブと垂直なフランジの圧延で主な圧下の方向が異なる。
また、断面内の対称性を仮定して1/2領域や1/4領域など解析領域を決めるが、その場合せん断ひずみなどの方向が上下、左右の領域で異なる。このような観察の座標系と解析モデルの条件を材料加工試験解析のモデルと合わせることが理論的に正しい比較に重要である。
そこで、予め変形様式に応じて比較する変位勾配の成分の対応表を作成しておき、ユーザーはこの対応表に基づいて比較する部位と変位勾配の成分およびその符号などを考慮して結果の解析を行えば正確な比較が実施できて便利である。また、この対応表をプログラムしておけば、自動処理が可能になり便利である。
また、観察の座標系は加工プロセスの慣例や解析プログラムの仕様から材料加工試験の場合と異なる場合がある。その場合には想定する主ひずみの方向が両者で対応するように9個の変位勾配を座標変換することができる。
また、深絞りなどの板成形プロセスのように板面内の加工ひずみに着目し、板の面外曲げによるスピンを重要視しない場合には、面内ひずみ成分の重みをスピン成分の重みより相対的に大きく設定することで、考慮することができる。
ところで、通常二つの加工履歴の一致度を測定する方法は種々考えられるが、直感的には前記のように横軸に相当ひずみ、縦軸に各変位勾配の成分値をとり、各成分値で二つの加工履歴の線図が挟む面積の絶対値の和で評価することが考えられる。一般的に両線図で横軸の相当ひずみの値は異なるので、例えば横軸を所定の開始点から終了点でN等分割して対応する成分値を内挿で求める。面積はN個の四角形または三角形の対の面積の絶対値とし、N区間分の総和をとって求めることができる。
不一致度は各加工履歴ですべての成分の面積の総和Aをとり、その値が大きい場合に大とする。即ち、一致度は面積の総和Aが小さい程高いと見なす。これは計算機処理に適した定義であるから、データベースの検索手段に評価手段を組み込むことで、容易に所望のデータの中で自動的に一致度の順番付けを行うことができる。データベースで面積の総和Aを求めて数表とし、数値の小さい順に並べることができるソートプログラムで面積の総和Aの小さい順番に並べ替えれば容易に不一致度の低い順、即ち一致度の高い順に整理できる。
前述のように成分に重みを考慮するには、面積の総和Aを求める際に成分の面積に重みを乗じることにより、総合不一致度を評価して行うことができる。
(4)本発明の第四の装置の効果について説明する。
図3は本発明の装置の構成を説明するための流れ図である。手段1から手段8までは、図1と同様であるので、説明は省略する。
手段21により、材料加工試験を実施する。
手段22により、特定された観察部位の組織観察、硬度分布測定、X線回折、EBSP解析の何れかの測定を実施する。加工プロセスの着目部位の変位勾配の履歴と比較して不一致度が低い材料加工試験の条件と試験片の観察部位が特定される。そのため特定された試験条件で材料加工試験を実施して、得られた試験片の特定された観察部位を調査することができる。調査項目としては、組織観察、硬度分布測定、X線回折試験、EBSP解析などが選択できる。これらの測定方法は観察部位が小さい場合でも周囲の異なる材料の影響を受けにくいので、加工プロセスの組織、硬度、結晶構造や方位分布を予測することができる。
また、観察部位の周囲の材料の測定結果からその変化の勾配を調べて勾配が急であれば推定結果のばらつきが大であり、勾配が緩やかであればばらつきが小であると予測できる。この勾配は数値解析結果を等高線表示するなどして容易に調べることができる。
(5)本発明の第五の装置の効果について説明する。
本発明の装置は電気信号による通信を行うので、各構成手段間で信号を授受する任意の手段が設けられていれば、各手段が分散して設置されていても機能する。通常各手段は計算機の記憶装置に実行可能なプログラムとして記録されており、ユーザーがこのプログラムを起動してメモリーに読み込んで記憶することにより動作する。その際、全ての手段が同一の計算機に設定されれば他の計算機と全く独立にスタンドアローン型の装置として機能する。この場合、ユーザーは各手段を十分正確に利用できるスキルを有する必要がある。
ユーザーの材料開発者は塑性加工プロセスの変形解析に対して、正確な操作を行うために多くの情報を必要とすることが予想される。これは本発明の装置の導入に対する大きな障害になる。その場合、塑性加工プロセスの開発者に依頼して所望の変形解析を実施してもらい、その結果である変位勾配増分の履歴をファイルとして受け取ることが出来れば手間が省けて問題の多くが解決される。
インターネット網が発達し、分散データベースを検索する技術や分散サーバーの利用技術が普及した。そこで、各構成手段を高付加価値通信網(代表例としてインターネット)に接続された計算機(サーバー機)の記憶装置にプログラムを記録してこれを専門家が管理する。ユーザーは高付加価値通信網に接続された計算機(クライアント機)、携帯端末、携帯電話、移動体通信装置、ゲーム機、双方向端末などの所望の計算処理手段を用いてサーバー機の提供するプログラムを利用する。その際必要な情報を有償で授受することも考えられる。
また、全くの初心者がこのような解析を実施する際、従来は講習会などに参加してスキルアップを図っていた。しかし、Eラーニングシステムが普及し、そのシステムを構築するためのフリーのプログラムが複数開発されているので、これらを利用して解析の手順を対話式の学習システムとして構築することが可能である。また、種々の解析事例や関連データなどのポータルサイトを構築すれば、初心者でも容易に解析を実施することが可能になる。
(6)本発明の第六の装置の効果について説明する。
本発明の装置は各構成手段が計算機のプログラムとして記録できる。そこで、この装置を普及させるためにインターネットのサーバー(計算機)にプログラムを登録しておき、必要なユーザーがインターネットを通じてダウンロードするシステムを構築することができる。計算機のシステムに通暁したユーザーであれば、このダウンロードしたプログラムを用いて本発明の装置を構築することが可能になる。
また、プログラムの機能向上やバグ処理などでバージョンアップする際に、同様のダウンロードするシステムを構築すれば、保守管理が一括してできるので便利である。
更に、DVD、CD、フレキシブルなディスク、MO、磁気テープ、半導体メモリーなどにプログラムを記録すれば、これを製品として種々の方法により配布することが容易にできる。
本発明の装置は、塑性加工プロセスの組織発展のCAEシミュレーションをマクロ変形解析と材料加工試験で行うことに特徴がある。
図4の白四角印は軸対称円柱圧縮試験の初期の有限要素メッシュを示す説明図である。材料加工試験の計算モデル1は圧縮特性剛塑性有限要素解析を用いた。対称性を仮定して断面の1/4領域を解析領域とする。縦軸に相当する中心軸の境界は特に境界条件を設定する必要はない。横軸に相当する中央断面の境界には軸方向の変位の固定と半径方向のせん断応力0を設定する。試験片の上端で工具が接触する端面の境界には工具の摩擦接触条件を設定する。摩擦モデルとしてクーロン・アモントン摩擦モデルを設定するが、所望によりせん断摩擦モデルや混合摩擦モデルを設定できる。
試験片の高さ直径比は1.5とし、1/4解析領域を半径方向に8等分割、高さ方向に12等分割した。冷間加工を想定し、変形抵抗のひずみ速度依存性は無視し、相当ひずみのn乗則を仮定した。クーロン摩擦係数は0〜0.5(固着相当)と変化させた。但し、以下では摩擦係数が0.3の場合について説明する。工具速度は一定で圧下率は70%とした。変位ステップ数は120とし十分な精度を確保した。また、圧縮特性変数などの設定変数は開発者の推奨値とした。
図4の黒丸印は摩擦係数が0.3と無潤滑条件で変形前後の試験片の中心軸断面の1/4領域を有限要素の節点で示す。P89やP96の工具と接触する端面の要素は工具に拘束される。そのため中心軸近傍の端面のP89要素で材料はデッドメタルと呼称される変形の少ない領域を形成する。試験片の中心部のP01要素は隣接するデッドメタルに押しつぶされて最も変形の大きい領域を形成する。この部分の変形状態は主に変位勾配の垂直ひずみ成分で記述される。また、試験片の端部角部のP96要素は回転しながら工具面に張り付くため角部に接する試験片の側面の一部も回転しながら工具面に接触する。この現象をフォールディングと呼称し実際の材料加工試験でも観察される。角部近傍のフォールディングを生じた要素は剛体回転が顕著であり、このような回転は変位勾配のスピン成分で表現される。特許文献2に開示の方法では変位勾配のスピン成分を無視するので、フォールディングのような剛体回転による集合組織形成への影響を予測できないことに注意を要する。
試験片の各部位の変位勾配の履歴として、変位ステップ毎に増分時間Δtと各要素の変位勾配速度成分をファイルに出力した。各変位ステップの変位勾配増分は変位勾配速度成分に増分時間Δtを乗じて求められる。また、初期値に各変位ステップの変位勾配増分を積算することにより、所望のステップの変位勾配を求めることができる。また、この変位勾配のひずみ6成分を用いて相当ひずみを求めることができる。
図5から図9はP01からP48の5個の要素の変位勾配の履歴を示す説明図である。縦軸は変位勾配の9成分を構成する数1の式に記載のE、γ、Ωで-2から1.5の範囲、横軸は相当ひずみで0から2の範囲を示す。加工度は横軸の相当ひずみの大きさで評価できる。しかし、変位勾配は9成分あるので図5から図9の各線のパターンが重要になる。これらのパターンは試験片の場所によって全く異なることに注意が必要である。
実施例ではファイル名に摩擦係数と要素番号を組合わせたものを用いて判別した。所望によりこれらのファイルをデータベースに登録することができる。大量のデータを処理する際にはデータベースの機能を利用すると便利である。
以上で材料加工試験として円柱の圧縮試験のデータファイルを構築することができた。
次に具体的な加工プロセスの組織を予測する。先ず、加工プロセスとして円環の圧縮加工を実施する。計算モデルは材料加工試験の計算モデルと同じ圧縮特性剛塑性有限要素モデルとした。両者のモデルは変形勾配の履歴が計算できるものであれば特に制限は無いが、可能であれば同じ仕様のモデルの利用が望ましい。
図10は摩擦係数が0.3の場合の加工前後の有限要素メッシュを節点で示す。縦軸に相当する左端が中心軸で下端は固定工具、試験片の上端は移動工具と接することを示す。白抜き四角印は加工前、黒丸印は加工後の節点の位置である。材料加工試験モデルで説明したものと基本的に同様の手順により、変位勾配の履歴を抽出することができる。図11から図14は図10のP71からP150の4個の要素の変位勾配の履歴を示す説明図である。試験片の場所により相当ひずみの大きさと変形勾配の成分のパターンが異なることが分かる。
さて、図11のP71の加工履歴と似た加工履歴を図5から図9の円柱圧縮試験の結果の中から探索する。相当ひずみが1.8程度あるので対応するのは図5である。しかし、変位勾配の成分で比較すると両者のパターンが異なることが分かる。また、図14のP150加工履歴と似た加工履歴を図5から図9の中から探索する。図9のP96が相当ひずみは2/3倍程度と若干小であるが、変位勾配の成分のパターンはほぼ同じである。このことから、両者の加工履歴は相当ひずみが1程度までは良く一致することが判明した。即ち、円環の圧下を2/3倍程度で停止すれば、円柱の圧縮試験の角部とほぼ同じ組織が得られると判断される。
図15は押出しの加工プロセスの有限要素モデルの説明図である。ダイス半角は7°であり、摩擦係数は0.1とした。中心軸を含む断面で左端が中心軸、右端は工具境界、上端も工具境界である。白抜き四角印は加工前、黒丸印は加工後の節点の位置である。試験片の中心軸方向の中央部でP91からP100の3要素の加工履歴を調べた。図16はP91、図17はP95,図18はP100の要素の変位勾配の履歴を示す。図16の中心軸に相当するP91要素はほぼ直線状の履歴であるが、図17の中心軸と工具面の中間部の要素では直線から外れている。そして、工具との接触部である図18のP100要素ではかなり複雑な変化が生じている。押出しプロセスでは多パスに分けて加工するのが一般的であるから、1回のパスの加工度は小さい。しかし、このように外周部と中心部の変位勾配の変化がパス毎に蓄積されるので、ひずみの不均一によるシェブロンクラックなどの欠陥の発生要因となりうる。
押出しでは荷重の負荷方向に材料が延伸するので、荷重の負荷方向に材料が潰れる圧縮試験と異なった変位勾配成分のパターンを示すことが分かる。そのため一般に圧縮試験で同じ組織を得ることは困難であると考えられる。
実施例1および実施例2では変位勾配の履歴をグラフにして比較した。これは比較するデータファイルが多くなると実用的な方法でなくなる。
図2の計算機による比較方法であれば、変位勾配の履歴を数値データとして記録したファイルを計算機で読み込んで処理することにより、総合変位勾配不一致度として比較および評価を自動的に処理することができる。そのため、実用的である。
非特許文献4のX線回折試験による結晶方位解析によると、高温の塑性加工プロセスでは加工度の増化とともに加工集合組織が発展し形成される。その後粒界三重点や粒界上の点を核として再結晶粒が成長し、冷却過程で粒界三重点や粒界上の点を核として相変態による結晶粒が成長する。このような熱力学的な要因で熱処理集合組織が形成される。本発明の装置をこのような高温の加工集合組織の予測に適用することを考える。
材料加工試験の数値解析モデルは高温の条件を考慮する。即ち、被加工材の降伏条件式をひずみ速度依存性のモデルとし、加工温度の物性値を適用する。また、被加工材の冷却が顕著な場合は変形解析と熱伝達解析を行って加工中の被加工材の温度を更新する。この結果から少なくとも試験片の代表位置、温度、変位勾配を含む変数の履歴を抽出しデータファイルに出力する。
加工プロセスの数値解析モデルも基本的に材料加工試験の数値解析モデルと同様に高温の条件を考慮する。そして得られた結果から被加工材の着目部位の少なくとも温度、変位勾配を含む変数の履歴を抽出する。
次に加工プロセスの加工時間及びその間の温度履歴に基づいて材料加工試験のデータファイルに対して温度履歴が許容範囲内のものを抽出し母集団とする。許容範囲の基準として、加工時間の平均温度が上下5%以内、加工時間が上下20%以内などと目的により所望の設定を行える。
この母集団を用いて、請求項1と同様の流れで加工プロセスの変位勾配の履歴と一致度が高い条件及び部位を探索する。
この探索で得られた高温の加工プロセスの条件と近い材料加工試験条件は、冷間加工の場合と異なり実験的な検証がかなり困難であることが予想される。加工開始の組織を揃えることや、加工時、加工後の冷却条件などを制御して温度履歴を揃えることに技術を要する。そのため多くの誤差要因が介在し、実験データの大きなばらつきが予想されるからである。その際は、統計的に有意な程度の数の実験を実施して平均値などと比較することが望ましい。
本発明の第1の装置の実施の形態を示すフローチャートである。 本発明の第2の装置の実施の形態を示すフローチャートである。 本発明の第4の装置の実施の形態を示すフローチャートである。 軸対称円柱圧縮試験の有限要素モデルを示す説明図である。 図4の要素P01の変位勾配の履歴を示す説明図である。 図4の要素P08の変位勾配の履歴を示す説明図である。 図4の要素P48の変位勾配の履歴を示す説明図である。 図4の要素P89の変位勾配の履歴を示す説明図である。 図4の要素P96の変位勾配の履歴を示す説明図である。 円環の圧縮試験の有限要素モデルを示す説明図である。 図10の要素P71の変位勾配の履歴を示す説明図である。 図10の要素P80の変位勾配の履歴を示す説明図である。 図10の要素P141の変位勾配の履歴を示す説明図である。 図10の要素P150の変位勾配の履歴を示す説明図である。 押出しの加工プロセスの有限要素モデルの説明図である。 図15の要素P91の変位勾配の履歴を示す説明図である。 図15の要素P95の変位勾配の履歴を示す説明図である。 図15の要素P100の変位勾配の履歴を示す説明図である。
符号の説明
1 材料加工試験の解析モデルの数値解析を実施する手段
2 試験片各部の代表位置と変位勾配の履歴をデータファイルに出力する手段
3 データファイルをデータベースに登録する手段
4 加工プロセスの解析モデルの数値解析を実施する手段
5 被加工材の着目部位の変位勾配の履歴を抽出する手段
6 データファイルを参照して変数の履歴と不一致度の低いデータファイルを探索する手段
7 不一致度の低い試験片の観察部位を特定する手段
8 試験片の観察部位の極点図を算出し出力する手段
11 変位勾配の履歴から相当ひずみの履歴を抽出する手段
12 プロセスおよび加工試験の変位勾配成分の差の絶対値を相当ひずみで除して変位勾配成分不一致度を求める手段
13 変位勾配成分不一致度を比較開始から終了の相当ひずみの範囲で平均処理し平均変位勾配成分不一致度を得る手段
14 平均変位勾配成分不一致度に所望の重み関数を乗じて全ての成分で総合し総合変位勾配不一致度を求める手段
15 データファイルの総合変位勾配不一致度を比較して不一致度の低いデータファイルを抽出する手段
21 材料加工試験を実施する手段
22 特定された観察部位の組織観察、硬度分布測定、X線回折、EBSP解析の何れかの測定を実施する手段

Claims (6)

  1. 材料加工試験の解析モデルにより常用範囲の試験条件の数値解析を実施する手段、該材料加工試験の該数値解析結果から少なくとも試験片各部の代表位置と変位勾配を含む変数の履歴を抽出しデータファイルに出力する手段、所望により該データファイルをデータベースに登録する手段、加工プロセスの解析モデルにより所望の条件の数値解析を実施する手段、該加工プロセスの数値解析結果から被加工材の着目部位の少なくとも変位勾配を含む変数の履歴を抽出する手段、該データファイルを参照して該変数の履歴との不一致度の低いデータファイルを探索する手段、該不一致度の低いデータファイルに基づき該試験片の観察部位を特定する手段、所望により該試験片の該観察部位の極点図を算出し出力する手段から構成されることを特徴とする材料加工の試験装置
  2. 該変数の履歴との不一致度の低いデータファイルを探索する手段が、該変位勾配の履歴から相当ひずみの履歴を抽出する手段、該プロセスおよび該加工試験の該変位勾配成分の差の絶対値を該相当ひずみで除して変位勾配成分不一致度を求める手段、該変位勾配成分不一致度を比較の開始から終了の該相当ひずみの範囲で平均処理することにより平均変位勾配成分不一致度を求める手段、該平均変位勾配成分不一致度に所望の重み関数を乗じて全ての成分で総合することにより総合変位勾配不一致度を求める手段、該データファイルの該総合変位勾配不一致度を比較して不一致度の低いデータファイルを抽出する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の材料加工の試験装置
  3. 該変数の履歴との不一致度の低いデータファイルを探索する手段が、該材料加工試験の解析モデルと該加工プロセスの解析モデルの観測系の差を修正変換する手段を有することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の材料加工の試験装置
  4. 該材料加工試験を実施する手段、該特定された観察部位の組織観察、硬度分布測定、X線回折試験、EBSP解析の何れかの測定を実施する手段、所望により測定結果をデータベースに登録する手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の材料加工の試験装置
  5. 請求項1乃至請求項3に記載の材料加工の試験装置のプログラムが高付加価値通信網に接続された計算機の記憶装置に記録され、該高付加価値通信網に接続された所望の計算機、携帯端末、携帯電話、移動体通信装置、ゲーム機、双方向端末、計算処理手段から利用されることを特徴とする塑性加工における被加工材の組織発展の解析システム
  6. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の材料加工の試験装置のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017501465A (ja) * 2013-11-01 2017-01-12 コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェKoninklijke Philips N.V. 治療装置の使用のための患者フィードバック
JP2018025518A (ja) * 2016-08-12 2018-02-15 学校法人 芝浦工業大学 材料の変形特性値を測定する方法

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