JP2008212148A - 所定の植物の花器の花香成分を利用してハナバチをその花器に誘導することを含む植物の受粉を促進する方法 - Google Patents

所定の植物の花器の花香成分を利用してハナバチをその花器に誘導することを含む植物の受粉を促進する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ハナバチを送粉昆虫としてより効率的に利用することによって、低コストかつ低労力であって、実用的な受粉効率が得られる手段を提供すること、特に、通常のハナバチを用いた場合では実用的な受粉効率を得難い植物や、放虫後に実用的な受粉効率が得られるまでの期間が長過ぎて実用的とはいえない植物に対しても、ハナバチを用いた受粉手段を適用可能にすること目的とする。
【解決手段】所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分が配合されたハナバチの餌素材を含有する前記植物の受粉促進用餌組成物を用いることを特徴とする。本発明における花香成分が、合成された花香成分であることが特に好ましい。
【選択図】図4

Description

本発明は、植物の受粉促進用餌組成物や、植物の受粉促進用餌添加剤や、植物の受粉促進方法に関する。より詳細には、送粉昆虫として利用するハナバチに、授粉目標となる植物の花器の花香成分を添加した餌組成物を与え、この植物の花の香りを餌と結びつけてハナバチに学習させることにより、該ハナバチをより早くより安定的より効率的に授粉目標植物の花に誘導して授粉させ、この植物の受粉を促進する方法に関する。
ミツバチ、マルハナバチ、マメコバチ等のハナバチは、様々な農作物の果実生産に不可欠な受粉を補助又は遂行する送粉昆虫として利用されている。なかでも、ミツバチは養蜂業が発達していることから広く流通し、施設栽培においてはイチゴ、メロン、スイカ等の授粉に利用され、野外栽培ではリンゴ、ナシ等の果樹類の授粉に利用されている。しかし、ミツバチ等のハナバチは、様々な植物の花を均等に好むのではなく、ハナバチの餌となる花粉や花蜜の量が多く、かつ花粉や花蜜を採取しやすい構造の花を好む一方、花粉や花蜜の量が少なかったり、花粉や花蜜を採取しにくい構造の花にはほとんど興味を示さない。そのため、ハナバチがあまり好まない種類の植物の場合、ハナバチを用いても十分な送粉効率が得られない場合や、不安定な送粉効率しか得られない場合があり、さらには、ハナバチを用いた授粉がほとんど期待できない場合もある。
例えば、イチゴの場合、その花には花蜜が少なく、ミツバチがあまり好まないため、イチゴの栽培温室(栽培ハウス)にミツバチを放虫しても、ミツバチはハウスの外を目指してハウスの天井付近を飛び回り、イチゴの花には速やかに訪花しない。放虫当日に訪花することもあるが、通常、2、3日かかることが多く、長い場合は1週間程度かかることもある。一方、イチゴの花の寿命は3〜4日程度であることから、この間にミツバチが訪花しなければ、授粉はなされず、この花は受精不良による奇形果になってしまう。
また、ナスの場合、その花には花蜜がなく、花粉も少ない上、葯は縦裂せずに先端部が開葯するだけであるので、ミツバチがナスの花から花粉を採集するためには、イチゴの花の場合のように花の上を周回するだけではなく、葯を揺さぶって花粉を葯の内部から落下させる必要があり、ミツバチにとっては餌が少ない上に餌を採取しづらい花型といえる(図1)。そのため、ミツバチがナスの栽培ハウスに放虫されてから、ナスの花を餌資源として認め、訪花して授粉行動を行うまでの日数は、3日間程度を要するが、4日間以上要することも珍しくなく、3週間程度も要する場合さえあった。一方で、ナスの花は開花から3日間ほど経過すると枯れてしまうため、ミツバチが訪花して授粉行動を行うまでの期間が長いほど、より多くの花が受粉せずに枯れてしまう危険性があった。受粉せずに花が枯れるということは、得られるナスの数が少なくなることを意味し、農家の収入への影響は甚大である。
そのため、ミツバチを放虫しても、ミツバチが授粉活動を開始するまでの期間は、農家の人がナス畑を毎日回って、花を目視で探し出し、筆等を用いて授粉させたり、着果促進ホルモン剤を散布するなどの地道で労力を要する作業が必要であった。しかも、ナスの花は、一斉に開花するわけではなく、五月雨式に開花するため、農家の人はナスの開花シーズンになると毎日ナス畑全体を回っては、花を探し出し、一つ一つ手作業で授粉させたり、着果促進ホルモン剤を散布しなければならず、多大な労力負担を強いられていた。なお、ナスの他にミツバチが花粉を採集しづらい花型の花をもつ植物として、トマトが挙げられるが、国内のトマト栽培では上記の理由等からミツバチの利用はなされていない。
また、ミツバチ等のハナバチを野外の果樹類で利用する場合、ミツバチは果樹園の外にまで活動範囲を広げてしまうため、目的とする果樹類の花への送粉効率が低下してしまう。
一方、ナスとトマトに対するハナバチの訪花性も、ハナバチの種類によってある程度の差がある。例えば、マルハナバチは一般的にミツバチよりも訪花性が高いことが知られている。そのため、マルハナバチはナス、トマトの栽培農家で最も多く用いられている送粉昆虫である。しかし、マルハナバチは1匹当たりの価格が高い上、コロニーの生存期間が短期間(50日程度)であることから、栽培期間の長さに応じて、再三、購入しなければならず、飼育増殖技術の確立しているミツバチに比べるとコストがかなり割高である。にもかかわらず、少しでも受粉作業を軽減させるため、マルハナバチを利用する農家が多い状況である。また、マルハナバチには、外国産のもの(セイヨウオオマルハナバチ)と国産のもの(クロマルハナバチ等)があるが、送粉効率に優れていることから、外国産のマルハナバチが広く利用されている。しかし、セイヨウオオマルハナバチは、特定外来生物に指定され、その飼育、譲渡、野外への放出等が禁じられたことから、農家はセイヨウオオマルハナバチを温室で利用するにあたり、野外への逃亡を防止するための設備を完備しなければならない。そのため、設備投資ができずにセイヨウオオマルハナバチを使用できなくなる農家も多い。
ミツバチを授粉目標植物の花に誘導する方法として、ヨーロッパ、アメリカ等では、ミツバチが生得的に好むゲラニオールやシトラール等の匂い物質を混ぜた砂糖水や、女王蜂の合成フェロモンを授粉目標植物の畑に散布する方法が行われている。しかしこの方法は、花蜜を有し、かつミツバチが元々好む花を持つリンゴやセイヨウナシ、オウトウ等の植物を目標植物とする場合には効果を発揮するが、花蜜がなく、ミツバチが元々好まない花を持つナス等の植物を目標植物とした場合、上記の砂糖水や合成フェロモンを目標植物に散布すると、ナスの植物体へのミツバチの飛翔数は多くなるものの、ミツバチがナスの花を餌として認識し花粉を採取する効果は認められず、授粉は促進されない。
ミツバチを授粉目標植物の花に誘導する他の方法として、ロシアでは、赤クローバーの花を何個か切り取って砂糖水に浸し、赤クローバーの花の匂いを砂糖水に移し、その砂糖水をミツバチに吸わせて、赤クローバーの花の匂いと餌(砂糖水)とを結びつけてミツバチに学習させることによって、ミツバチを赤クローバーの花に誘導する方法が知られている(非特許文献1)。しかし、切り取った花を砂糖水に浸した場合、その花の花香成分は短期間のうちに変化して別の成分に変化してしまったり、他の香気物質が発生してしまうなど、当初の花香成分とは別の香気成分を含んだ砂糖水となってしまうため、目標植物の花への誘導効果は安定して得られず、本方法は一般的な手法となっていない。また、花は種々の花香成分を含むのが一般的であり、花香成分によっては、複数種の植物の花に共通しているため、切り花を用いる本方法では、目標植物の花のみに誘導されるミツバチを得ることはできない。
なお、ミツバチの花に対する採餌方法について以下に概略を述べる。ミツバチのコロニーは、巣の周囲約100平方キロメートルの広大な地域を採餌行動圏とし、各地に点在する豊かな花畑を見つけだすことができる。ミツバチは餌として主に花蜜と花粉を収集する。働きバチは花粉や花蜜の豊かな花畑等を発見すると、その花畑の餌を巣箱に持ち帰り、尻振りダンスを行い、花畑の方向と距離を仲間の働きバチに伝達する。さらに、その尻振りダンスをする蜂が後ろ脚につけた花粉団子や吐き戻す蜜は、その花畑の花の匂いに関する情報を仲間の働きバチ達に伝達する。採餌を担当する働きバチは、先ほどのダンスの情報に基づいて花畑への方向と距離に見当をつけて花畑に向かい、先ほどの花粉団子等から得られた花の匂いの情報に基づいて、花畑の位置を絞り込む。そのため、1匹の探索蜂(働きバチ)が発見した餌場は、そのコロニー全体の餌場になり、そこに多くの採餌蜂(働きバチ)が向かう。
一般に、ハナバチとされる膜翅目(ミツバチ科、ムカシハナバチ科、コハナバチ科、ヒメハナバチ科、ハキリバチ科、ケアシハナバチ科等)の送粉昆虫は、過去の訪花経験から、花の特徴や場所の記憶に基づいて、採餌としての訪花を行っている。花の香りは花から送粉昆虫への化学的な情報伝達手段であり、送粉昆虫は匂いを触角で感知する。
カール・フォン・フリッシュ著「ミツバチの不思議」、法政大学出版局出版、2005年7月、p.98
本発明は、ハナバチを送粉昆虫としてより効率的に利用することによって、低コストかつ低労力であり、かつ、放虫後により短期間でより実用的な受粉効率が得られる手段を提供すること、特に、通常のハナバチを用いた場合では実用的な受粉効率を得難い植物や、放虫後に実用的な受粉効率が得られるまでの期間が長過ぎて実用的とはいえない植物に対しても、ハナバチを用いた受粉手段を適用可能にすることを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分が配合されたハナバチの餌素材を含有する前記植物の受粉促進用餌組成物を用いることにより、ハナバチの送粉効率を向上させることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分を含有する植物の受粉促進用餌添加剤や、(2)植物が、ハナバチが授粉可能な植物群から選ばれる1種又は2種以上の植物である上記(1)に記載の植物の受粉促進用餌添加剤や、(3)植物が、ナス科、バラ科及びウリ科からなる群から選ばれる1又は2以上の科に含まれる植物である上記(1)に記載の植物の受粉促進用餌添加剤や、(4)植物が、ナス、トマト及びイチゴからなる群から選ばれる1種又は2種以上の植物である上記(1)に記載の植物の受粉促進用餌添加剤や、(5)1種類又は2種類以上の花香成分が、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ノナナール、サリチル酸メチル、ドデカン、デカナール、トリデカン、テトラデカン、ドデカナール、ゲラニルアセトン、β−ヨノン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、リモネン、酢酸cis-3-ヘキセニル、ミルテノールから選ばれる1種類又は2種類以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤や、(6)花器が花粉である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤や、(7)花香成分が、合成された花香成分である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤や、(8)ハナバチが、ミツバチ科、ムカシハナバチ科、コハナバチ科、ヒメハナバチ科、ハキリバチ科、ケアシハナバチ科からなる群から選ばれる科に含まれるハナバチである上記(2)〜(7)のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤や、(9)ミツバチ科に含まれるハナバチが、ミツバチ又はマルハナバチである上記(8)に記載の植物の受粉促進用餌添加剤や、(10)ミツバチが、セイヨウミツバチ又はトウヨウミツバチである上記(9)に記載の植物の受粉促進用餌添加剤や、(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤が配合されたハナバチの餌素材を摂取したハナバチを用いることを特徴とする植物の受粉促進方法に関する。
また本発明は、(12)植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分が配合されたハナバチの餌素材を含有する前記植物の受粉促進用餌組成物や、(13)花香成分が、合成された花香成分である上記(12)に記載の植物の受粉促進用餌組成物や、(14)ハナバチの餌素材が、糖質、脂質及びタンパク質からなる群から選ばれる1種類又は2種類以上を含有する物質である上記(12)又は(13)に記載の植物の受粉促進用餌組成物や、(15)ハナバチの餌素材が砂糖である上記(12)又は(13)に記載の植物の受粉促進用餌組成物や、(16)上記(12)〜(15)のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌組成物を摂取したハナバチを用いることを特徴とする植物の受粉促進方法や、(17)上記(12)〜(15)のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌組成物を摂取したハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に存在させることを特徴とする上記(16)に記載の植物の受粉促進方法や、(18)上記(12)〜(15)のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌組成物を摂取したハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に放つことを特徴とする上記(17)に記載の植物の受粉促進方法や、(19)花器を有する植物が存在する空間内に存在するハナバチに、上記(12)〜(15)のいずれかに記載の前記植物の受粉促進用餌組成物を摂取させることを特徴とする上記(17)に記載の植物の受粉促進方法や、(20)花器を有する前記植物が存在する空間内が、花器を有する前記植物が存在する栽培ハウス内であることを特徴とする上記(17)〜(19)のいずれかに記載の植物の受粉促進方法に関する。
さらに本発明は、(21)植物の花器の花香成分を分析する工程、分析により存在が確認された花香成分の1種類又は2種類以上を入手する工程、入手した1種類又は2種類以上の花香成分を、ハナバチの餌素材に配合する工程、花香成分を配合したハナバチの餌素材をハナバチに摂取させる工程、及び、該餌素材を摂取したハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に存在させる工程を有することを特徴とする植物の受粉促進方法や、(22)植物の花器の花香成分を分析する工程、分析により存在が確認された花香成分の1種類又は2種類以上を入手する工程、入手した1種類又は2種類以上の花香成分を、ハナバチの餌素材に配合する工程、ハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に存在させる工程、花香成分を配合した前記餌素材を、前記植物が存在する空間内のハナバチに摂取させる工程を有することを特徴とする植物の受粉促進方法や、(23)入手した1種類又は2種類以上の花香成分が、合成された花香成分であることを特徴とする上記(21)又は(22)に記載の植物の受粉促進方法に関する。
本発明によれば、特に、ハナバチが受粉目標である植物の花をより早期かつより確実に餌として認識する可能性を向上させることができ、受粉目標の植物の多くの花の受粉可能期間が経過してしまう前にハナバチを授粉目標植物の花に誘導して、ハナバチに授粉を開始させることができる。本発明の受粉促進方法を用いることによって、ハナバチを送粉昆虫としてより効率的に利用することができ、その結果、受精不良果の発生率を低減させたり、農家の人々の手作業による人工授粉や着果促進ホルモン剤の散布作業が軽減又は不要になるなど、より低労力であって、かつ、放虫後により短期間でより実用的な受粉効率が得られる受粉手段を提供することができる。特に、本発明により、通常のハナバチを用いた場合では実用的な受粉効率を得難い植物や、放虫後に実用的な受粉効率が得られるまでの期間が長過ぎて実用的とはいえない植物に対しても、ハナバチを用いた受粉手段を適用することが可能となる。その結果、栽培農家が負担するコスト及び労力を著しく軽減することができる。
本発明の植物の受粉促進用餌添加剤は、所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分を含有することを特徴とする。所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分を含有する本発明の植物の受粉促進用餌添加剤を、ハナバチの餌素材に添加し、該餌素材をハナバチに摂取させることにより、目標植物の花に対するハナバチの送粉効率を向上させることができる。
本明細書における「所定の植物の花器の花香成分」とは、所定の植物の花器の花香成分のほか、該花香成分の誘導体であって該花香成分と同様の効果を発揮する化合物も含まれるが、花器又はその一部自体は除かれる。花器の花香成分とは、花粉、雌しべ、花弁等の花器に由来する香気成分である限り特に制限されないが、ハナバチの餌である花粉に由来する香気成分であることが好ましい。各種の植物の属・種名及び科名、並びに、その植物の花器の具体的な花香成分を表1に例示する。

表1において、ナス(Solanum melongena)、トマト(Lycopersicon esculentum)以外の花香成分については、Knudsenら(Phytochemistry, Vol.33, No. 2, pp.253-280(1993))に記載された花香成分のリストを参照した。一方、ナス(Solanum melongena)、トマト(Lycopersicon esculentum)の花香成分については、本発明者らが後述の実施例で分析した結果を示した。また、表1の各成分について、その成分を花香成分として含む植物の属の数を、Knudsenらに記載された174の植物の属について調べた。その結果を表2に示す。また、表1中に記載された植物のうち、その成分を含む植物を示す記号を表2に示す。

A:ヒマワリ B:ニセアカシア C:アカクローバー D:ユリノキ E:イチゴ F:コウシンバラ G:Rosa setate×rugosa H:ダイダイ I:シトロン J:タバコ K:ナス L:トマト
表1に記載された植物以外の植物の受粉を促進する場合であっても、例えば、後述の実施例に記載されたのと同様の方法によってその植物の花器の花香成分を分析することにより、その植物の受粉促進に用いる花香成分を同定することができる。
前述したように、本発明に用いる花香成分としては、所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分を例示することができる。温室内で栽培された植物を受粉対象とする場合のように所定の植物以外の花が無い状況下では、例えば所定の植物の花器に特徴的な花香成分でなくとも、その所定の植物の花器の主要な花香成分を使用しさえすれば、ハナバチにその花の匂いを餌として速やかに認識させ、その花への授粉効率を高めることができるが、特に露地栽培された植物を受粉の対象とする場合は、ハナバチが他の植物の花ではなく、所定の対象植物の花を授粉する率を向上させる観点から、所定の植物の花器に特徴的な1種類又は2種類以上の花香成分を含むことが好ましく、所定の植物の花器に特異的な1種類又は2種類以上の花香成分を含むことがより好ましく、所定の植物の花器に特徴的な1種類又は2種類以上の花香成分と、所定の植物の花器の主要な1種類又は2種類以上の花香成分とを併用することがさらに好ましく、所定の植物の花器に特徴的であってかつ主要な1種類又は2種類以上の花香成分であることがさらにより好ましく、所定の植物の花器に特異的な1種類又は2種類以上の花香成分と、所定の植物の花器の主要な1種類又は2種類以上の花香成分とを併用することがよりさらに好ましく、所定の植物の花器に特異的であってかつ主要な1種類又は2種類以上の花香成分であることがさらにより好ましい。ここで、所定の植物の花器に特徴的な花香成分とは、上記のKnudsenらの花香成分のリストにおいて、その花香成分を含む花器を持つ植物の属の数が、25以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である花香成分をいう。
また、所定の植物の花器に特異的な花香成分とは、上記Knudsenらの花香成分のリストにおいて、その花香成分を含む花器を持つ植物が他にないことをいう。さらに、所定の植物の花器の主要な花香成分とは、その花器の花香成分全量に対して、5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、さらにより好ましくは40重量%以上含まれる花香成分をいう。
表1及び表2に記載された花香成分のうち、その花香成分を有する他の植物が少ない点で好ましい花香成分としては、例えば、ナス(Solanum melongena)の場合は、ゲラニルアセトン(Geranylacetone)、ドデカナール(Dodecanal)、ドデカン(Dodecane)、ヘプタデカン(Heptadecane)、ヘキサデカン(Hexadecane)等を例示することができ、ヒマワリ(Helianthus annuus)の場合は、1-ヘプテニルベンゼン(1-Heptenylbenzene)、2,3,4-トリメチルヘキサン(2,3,4-Trimethylhexane)、メチルシクロペンタン(Methylcyclopentane)等を例示することができ、ニセアカシア(Robinia pseudoacacia)の場合は、(z)-3-安息香酸ヘキセニル((z)-3-Hexenyl benzoate)、1-ニトロ-2-フェニルエタン(1-Nitro-2-phenylethane)、ヘキサヒドロファルネシルアセトン(Hexahydrofarnesylacetone)を例示することができ、アカクローバー(Trifolium pratense)の場合は、(Z)-and (E)-けい皮酸メチル ( (Z)-and (E)-Methyl cinnamate)、1-フェニルエタノール(1-Phenylethanol)、ブタン-2,3-ジオール(Butan-2,3-diol)等を例示することができ、ユリノキ(Liriodendron tulipifera)の場合は、β-Elemeneを例示することができ、イチゴ(Fragaria×ananassa)の場合は、酢酸cis-3-ヘキセニル((Z)-3-Hexenyl acetate)、4-メトキシベンズアルデヒド(4-Methoxybenzaldehyde)、ゲルマクレン D (Germacrene D)を例示することができ、コウシンバラ(Rosa chinensis)の場合は、1-エチル-4-エチルベンゼン(1-Ethenyl-4-ethylbenzene)、2,3-ジメチル-2-ブテン (2,3-Dimethyl-2-butene)、 しょうのう(Camphor)等を例示することができ、Rosa setate×rugosaの場合は、(E)-2-メチルシクロペンタノールアセタート((E)-2-Methylcyclopentanol acetate)、2,5-ジメチルトリデカン(2,5-Dimethyltridecane)、アロマデンドレン(Aromadendrene)等を例示することができ、ダイダイ(Citrus aurantium)の場合は、2-Methylbutyraldoximeを例示することができ、シトロン(Citrus medica)の場合は、ε-テルピネン(ε-Terpinene)を例示することができ、タバコ(Nicotiana tabacum)の場合は、(Z)-and (E)-β-ファルネセン((Z)-and (E)-β-Farnesene)、ベンジル3-メチルブタン酸(Benzyl 3-methylbutanoate)、ベンジルペンタン酸(Benzyl pentanoate)等を例示することができ、トマト(Lycopersicon esculentum)の場合は、ゲラニルアセトン(Geranylacetone) 、ペンタデカン(Pentadecane)、オクタデカン(Octadecane)等を例示することができる。これらに代表される、所定の植物の花器に特徴的な花香成分をハナバチに学習させることにより、そのハナバチにその植物の花をより早く餌として認識させることができ、本来はそのハナバチがあまり好まない花であっても、その花により早く誘導することができる。また、屋外において、同じ花香成分を含む数種の植物の花がある場合は、それらの数種の植物のうち、目標とする植物の花のみが有する花香成分をハナバチに学習させることにより、そのハナバチを目標とする植物の花に誘導することが可能となる。
なお、改めてイチゴの花香成分を確認したところ、後述の実施例11に記載されているように、ミルテノール (Myrtenol)がイチゴの花香成分の主要成分として同定された。また、ミルテノールはKnudsenらの花香成分のリストにおいて、その花香成分を含む花器を持つ植物の属の数が2であることから、イチゴの特徴的な花香成分のひとつであり、好ましい花香成分といえる。そのため、イチゴの花へハナバチを誘導するうえで、ミルテノールはハナバチに学習させる花香成分のひとつとして、有効な成分と考えられる。
本発明における花香成分としては、受粉促進の対象となる植物の花器から抽出した花香成分であってもよいが、より簡便に高濃度の成分を入手できることから、合成された花香成分であることが好ましい。花香成分の花器からの抽出は、公知の手法を組み合わせることにより適宜なし得る。また、花香成分の合成についても、適当な原料化合物を用いて適当な化学反応を行うことにより適宜なし得る。
本発明の受粉促進用餌添加剤中の花香成分の含有量は、本発明におけるハナバチの誘導効果が得られる限り特に制限されず、例えば、受粉促進用餌添加剤全量に対して、花香成分の合計が、1×10−6重量%以上、好ましくは1×10−4重量%以上、より好ましくは1×10−2重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上とすることができる。また、本発明の受粉促進用餌添加剤中の花香成分の含有量は、受粉促進用餌添加剤を用いて受粉促進用餌組成物を作製する際に、授粉促進用餌組成物中の花香成分の濃度を調整し易く、かつ、餌素材の濃度が極端には変化しないような含有量とすることができる。例えば、受粉促進用餌組成物を作製する際に添加する受粉促進用餌添加剤が、受粉促進用餌組成物全量に対して1重量%以下で済むように、受粉促進用餌添加剤中の花香成分の含有量を設定することが好ましい。例えば、受粉促進用餌組成物中の花香成分の含有量を1.0×10−7重量%〜1.0×10−3重量%と設定した場合は、受粉促進用餌添加剤中の花香成分含有量は、1.0×10−5重量%〜0.1重量%以下とすることができる。より具体的には、砂糖水500g(餌素材である砂糖を水に溶解したもの)に、2.0×10−4重量%の花香成分を含む受粉促進用餌組成物を作製する場合、例えば、受粉促進用餌添加剤全量に対して0.1重量%の花香成分を含む受粉促進用餌添加剤を作製し、該受粉促進用餌添加剤1gに砂糖水を加えて500gに増量することで、目的とする花香成分を2.0×10−4重量%含む受粉促進用餌組成物500gを作製することができる。
本発明における所定の植物としては、ハナバチが授粉可能な植物群から選ばれる1種又は2種以上の植物である限り特に制限されないが、ナス科、バラ科及びウリ科からなる群から選ばれる1又は2以上の科に含まれる植物であることが好ましく、ナス科ナス属、ナス科トマト属、バラ科イチゴ属、ウリ科スイカ属及びウリ科キュウリ属からなる群から選ばれる1又は2以上の属に含まれる植物であることがより好ましく、ナス、トマト、イチゴ、スイカ及びメロンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の植物であることがさらに好ましく、ナス、トマト及びイチゴからなる群から選ばれる1種又は2種以上の植物であることがさらにより好ましい。
なお、本発明における所定の植物としては、送粉効率が向上するように特に処理されていない通常のハナバチを用いても、ある程度実用的な送粉効率が得られる植物であってもよいが、通常のハナバチを用いた場合では実用的な受粉効率を得難い植物や、放虫後に実用的な受粉効率が得られるまでの期間が長過ぎて実用的とはいえない植物を受粉対象とすることが、本発明の利益をより多く享受できる点で一般的に好ましい。
ここで、上記のハナバチとは、花の匂いを感知できる膜翅目の送粉昆虫であり、ミツバチ科、ムカシハナバチ科、コハナバチ科、ヒメハナバチ科、ハキリバチ科、ケアシハナバチ科からなる群から選ばれる1つ又は2つ以上の科に含まれるハナバチを例示することができ、量販されていることや、または、伝統的に飼養されていること等から、容易に入手することができる点で、ミツバチ科に含まれるハナバチを好ましく例示することができ、中でもセイヨウミツバチ、トウヨウミツバチ(亜種:ニホンミツバチ)等のミツバチや、セイヨウオオマルハナバチ、クロマルハナバチ等のマルハナバチをより好ましく例示することができ、中でもより低コストであるセイヨウミツバチと国内在来種のトウヨウミツバチ(亜種:ニホンミツバチ)がさらにより好ましい。ミツバチがマルハナバチよりも低コストであるのは、セイヨウミツバチは、コロニーの生存期間が50日程度のマルハナバチに対して、セイヨウミツバチはコロニーの飼育増殖技術が確立していること、及び、コロニーあたりの市価もマルハナバチに対して5〜8割程度と安価であることによる。トウヨウミツバチ(亜種:ニホンミツバチ)はハチミツの生産力がセイヨウミツバチよりも劣ることから、養蜂業としての飼養はわずかであるが、国内在来種で野生しており、現在も各地で伝統的に飼養されている。なお、本発明の効果をより多く享受する観点からは、給餌した受粉促進用餌組成物をより多く摂取するハナバチ(餌の要求量が高いハナバチ)を用いることが好ましい。餌の要求量が高いハナバチとしては、その巣に蓄えている餌(蜜等)が必要量に満たないハナバチを例示することができる。
なお、通常のミツバチでは実用的な受粉効率が得難いナスやトマトでは、高コストのマルハナバチを用いることで一定の受粉効率が得られる。ナスやトマトのように、通常のミツバチでは実用的な受粉効率が得難く、高コストのマルハナバチを用いなければならない植物に対して、マルハナバチの代わりに、安価なミツバチを実用的に用いることが本発明により可能になる。このような植物に用いる場合、本発明の利益を特に享受することができる。
本発明の植物の受粉促進用餌添加剤は、所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分のみからなってもよいし、本発明におけるハナバチの誘導効果を損なわない限り、他に任意の成分を含んでいてもよい。任意成分としては例えば、個体担体、液体担体、安定剤、酸化防止剤等を例示することができる。本発明の植物の受粉促進用餌添加剤の剤型は、特に制限されず、液剤であってもよいし固形剤であってもよいが、ハナバチの餌素材に混合したり溶解させたりし易いことから液剤であることが好ましい。
本発明の植物の受粉促進用餌添加剤の製造方法は特に制限されず、例えば所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分を前述の花器から抽出したり、該1種類又は2種類以上の花香成分を合成するなどして入手し、入手した花香成分に必要に応じて他の任意成分を配合するなどして、本発明の植物の受粉促進用餌添加剤を製造することができる。
本発明の植物の受粉促進用餌添加剤は、例えば、受粉の対象となる所定の植物の授粉に用いるハナバチの餌素材に添加し、該受粉促進用餌添加剤を添加した餌素材をそのハナバチに摂取させ、摂取したそのハナバチを、花器を有する前述の所定の植物が存在する空間内に存在させるなどして用いることができる。
ここで、ハナバチの餌素材としては、本発明の植物の受粉促進用餌添加剤が有するハナバチの誘導効果を損なわず、かつ、ハナバチが摂食する限り特に制限されないが、例えば、糖質、脂質及びタンパク質からなる群から選ばれる1種類又は2種類以上を含有する物質を例示することができ、中でも砂糖(スクロースを主体とする)、フルクトース、マルトース、グルコース等の糖類や、ダイズ粉を主体としたハナバチ飼育用の代用花粉等を好ましく例示することができる。糖類を用いる場合は、水を添加して水溶液の状態で用いることが好ましい。
本発明の植物の受粉促進用餌組成物は、所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分が配合されたハナバチの餌素材を含有することを特徴とする。「所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分」及び「ハナバチの餌素材」については前述のとおりである。本発明の植物の受粉促進用組成物中における前述の花香成分の含有量は、本発明におけるハナバチの誘導効果が得られる限り特に制限されないが、例えば、受粉促進用餌組成物全量に対して、前述の花香成分の合計を、1.0×10−8重量%以上、好ましくは1.0×10−5重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、1重量%以下とすることができ、また、本発明の植物の受粉促進用組成物中における前述のハナバチの餌素材の含有量は、本発明におけるハナバチの誘導効果が得られ、かつ、ハナバチが摂食する限り特に制限されないが、例えば、受粉促進用餌組成物全量に対して、前述の餌素材の合計を30重量%〜70重量%(乾燥重量)、好ましくは40重量%〜60重量%(乾燥重量)とすることができる。例えば、餌組成物として砂糖を用いる場合、40重量%〜60重量%の濃度の砂糖水を用い、そこに微量(前述の砂糖水全量に対して例えば1.0×10−8重量%〜1重量%)の花香成分を添加する場合を好ましく例示することができる。
本発明の植物の受粉促進用餌組成物は、所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分とハナバチの餌素材のみからなってもよいし、本発明におけるハナバチの誘導効果を損なわない限り、他に任意の成分を含んでいてもよい。任意成分としては例えば、個体担体、液体担体、安定剤、酸化防止剤等を例示することができる。本発明の植物の受粉促進用餌組成物の剤型は、特に制限されず、液剤であってもよいし固形剤であってもよい。
本発明の植物の受粉促進用餌組成物の製造方法は特に制限されず、例えば所定の植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分を前述の花器から抽出したり、該1種類又は2種類以上の花香成分を合成するなどして入手し、入手した花香成分にハナバチの餌素材に配合し、さらに他の任意成分を必要に応じて配合するなどして、本発明の植物の受粉促進用餌組成物を製造することができる。
本発明の植物の受粉促進方法は、本発明の植物の受粉促進用餌添加剤が配合されたハナバチの餌素材、又は、本発明の植物の受粉促進用餌組成物(以下、本明細書において「受粉促進用餌組成物等」ともいう)を摂取したハナバチを用いる限り特に制限されないが、例えば、受粉促進用餌組成物等を摂取したハナバチを、花器を有する植物(受粉促進用餌組成物に含まれる花香成分を含む花器を有する植物)が存在する空間内に放つことや、花器を有する所定の植物が存在する空間内に存在するハナバチに、受粉促進用餌組成物等を摂取させること等によって、受粉促進用餌組成物等を摂取したハナバチを、花器を有する植物が存在する空間内に存在させることが好ましく、所定の植物の花器の花香成分を分析する工程、分析により存在が確認された花香成分の1種類又は2種類以上を入手する工程、入手した1種類又は2種類以上の花香成分を、ハナバチの餌素材に配合する工程、花香成分を配合したハナバチの餌素材をハナバチに摂取させる工程、及び、該餌素材を摂取したハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に存在させる工程を有することや、所定の植物の花器の花香成分を分析する工程、分析により存在が確認された花香成分の1種類又は2種類以上を入手する工程、入手した1種類又は2種類以上の花香成分を、ハナバチの餌素材に配合する工程、ハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に存在させる工程、花香成分を配合した前記餌素材を、前記植物が存在する空間内のハナバチに摂取させる工程を有することがさらに好ましい。受粉促進用餌組成物等を摂取したハナバチを用いることにより、摂取していないハナバチを用いる場合に比べて、対象とする花器への訪花活動を開始するまでに費やす日数を短縮することができ、より効率的な授粉が可能となる。
前述の「花器を有する植物が存在する空間内」としては、花器を有する植物が存在する空間内であれば特に制限されず、ハウス栽培の場合のようにハウスの空間内であってもよいし、露地栽培の場合のように開放系の空間内であってもよいが、本発明の利益をより多く享受できる点で、ハウスの空間内であることが好ましい。
上記の、所定の植物の花器の花香成分を分析する方法としては、花器の花香成分を分析し得る限り特に制限されないが、例えば、花粉等の花器を試料として、固相マイクロ抽出法(SPME法)とガスクロマトグラフィー/質量分析装置を組み合わせた分析方法により、花香成分を分析する方法を好ましく例示することができる。また、上記の、分析により存在が確認された花香成分の1種類又は2種類以上を入手する方法は、本発明の植物の受粉促進用餌添加剤の製造方法において述べたとおりである。さらに、上記の、花香成分を配合したハナバチの餌素材をハナバチに摂取させる方法としては、花香成分を配合したハナバチの餌素材をハナバチが摂取する限り特に制限されないが、砂糖などの餌素材を液体に溶解して溶液としたものを用いる場合であれば、ハナバチの巣箱内の給餌器を使って与えるのが一般的であるが、前述の溶液を小皿に流し込んで、ハナバチの巣箱の外に設置して、ハナバチに摂取させてもよい。また、餌素材がダイズ粉であれば、ダイズ粉をペースト状に練り込み、巣箱の内部に投与して、摂取させることが好ましい。また、上記の、受粉促進用餌組成物等を摂取したハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に存在させる方法については特に制限されない。なお、本発明の効果をより確実に享受するためには、受粉促進用餌組成物を給餌した後、ハナバチがその受粉促進用餌組成物を十分摂取しているかを確認することが好ましい。
本発明の植物の受粉促進方法に用いるハナバチの数は、受粉対象となる植物の種類やその植物が存在する空間の広さ等により左右されるため、特に制限されず、受粉対象となる植物の花の受粉可能期間や、受粉促進用餌組成物等を摂取したハナバチのその花への誘導効率等を考慮して、用いるハナバチの数を適当に選択することができる。受粉促進用餌組成物等を摂取したハナバチは、受粉促進用餌組成物等を摂取していないハナバチに比べて、受粉対象となる植物の花に対するハナバチの誘導効率が優れているため、受粉促進用餌組成物等を摂取していないハナバチでは実用的な受粉効率を得難い植物や、放虫後に実用的な受粉効率が得られるまでの期間が長過ぎて実用的とはいえない植物と特定のハナバチの組み合わせであっても、本発明の受粉促進用餌組成物等を用いることによって、実用的な受粉効率を得ることが可能となったり、実用的な受粉効率が得られるまでの期間が短縮したり、本発明の受粉促進用餌組成物等を用いない場合に比べてより少ない匹数のハナバチで同等以上の受粉効率を得ることが可能となる。
なお、本発明の効果を特に奏し得る、花香成分と植物の具体的な組み合わせとして、ナスに対するゲラニルアセトン、トマトに対するペンタデカン、イチゴに対するミルテノール等を例示することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[ナスの花香成分の分析]
ナス(品種「式部」)を用意し、このナスの花香成分を固相マイクロ抽出法(Solid phase microextraction:SPME法)とGC/MS分析(gas chromatography−mass spectrometry)を組み合わせた方法で解析した。具体的には以下のような方法で行った。
13.5mlの容量のスクリュー管に、ナスの花器を1つ入れ、スクリュー管の開口部をアルミホイルで覆った。覆ったアルミホイルからスクリュー管内に、スペルコ社の固相マイクロ抽出器「SPMEファイバー」(固定相は膜厚100μmのポリジメチルシロキサン(PDMS))を挿し込んだ。スクリュー管内の花器から効率良く香気成分(揮発成分)を採取するために、SPMEファイバーを差し込んだスクリュー管を、70℃に保ったウォーターバスに浸漬させて30分間温めた。これにより、ナスの花器から発せられる花香成分をSPMEファイバーに吸着させた。SPMEファイバーに吸着した花香成分を分析するために、SPMEファイバーをGC/MS(GC−5050A:株式会社 島津製作所製)の注入口に挿入して化学物質を加熱脱着させた。GCのカラムオーブン内の初期温度は50℃とし、SPMEファイバーを挿入後、直ちに5℃/min→250℃の昇温条件で、SPMEファイバーに吸着させた花香成分を分析(分析時間40分)した。
このようにして行った、ナス(「式部」)の花香成分の分析結果をまとめたものを表3に示す。なお、花香成分の同定は、標準品のリテンションタイム、マススペクトルと比較して行った。
つづいて、13.5ml容量のスクリュー管に、ナスの花粉のみを入れ、同様に花粉の香気成分を分析した。
表3に示されているように、ナスの花香成分を解析した結果、18種類の花香成分が、標準品との比較分析により同定された(表3及び図2)。花香成分のうち、サリチル酸メチル(Methyl salicylate)、α−ベルガモテン(α-bergamotene)、ゲラニルアセトン(Geranylacetone)などが主要成分として同定された(表3)。また、花粉から発散される揮発成分については、3種類の主要な揮発成分が検出され(図3)、標準品との比較分析の結果、3種類のうちの1種類はゲラニルアセトンと同定された。
[14種類のナス花香成分を用いた、ミツバチの訪花促進試験]
開花期のナス(「式部」)が栽培されているフッ素樹脂展張鉄骨ハウス(100m)を2棟用意し、これら2棟のハウスの全ての開口部を防虫ネット(目合い2mm)で遮蔽した。用意した2棟のハウスのうち、1棟のハウスを学習処理区用とし、別の1棟のハウスを対照区用とした。一方、ナスの花香成分であるベンズアルデヒド(Benzaldehyde)、フェニルアセトアルデヒド(Phenylacetaldehyde)、ノナナール(Nonanal)、サリチル酸メチル(Methylsalicylate)、ドデカン(Dodecane)、デカナール(Decanal)、トリデカン(Tridecane)、テトラデカン(Tetradecane)、ドデカナール(Dodecanal)、ゲラニルアセトン(Geranylacetone)、β−ヨノン(Beta-Ionone)、ペンタデカン(Pentadecane)、ヘキサデカン(Hexadecane)、及び、ヘプタデカン(Heptadecane)の14種類の合成品をもとに受粉促進用餌添加剤1(花香成分濃度;ベンズアルデヒド:0.12μl/l、1.2×10−5重量%;フェニルアセトアルデヒド:0.09μl/l、9.1×10−6重量%;ノナナール:0.24μl/l、1.9×10−5重量%;サリチル酸メチル:0.29μl/l、3.5×10−5重量%;ドデカン:0.12μl/l、8.8×10−6重量%;デカナール:0.12μl/l、9.7×10−6重量%;トリデカン:0.12μl/l、8.9×10−6重量%;テトラデカン:0.12μl/l、9.0×10−6重量%;ドデカナール:0.09μl/l、7.4×10−6重量%;ゲラニルアセトン:0.29μl/l、2.6×10−5重量%;β−ヨノン:0.12μl/l、1.1×10−5重量%;ペンタデカン:0.12μl/l、9.0×10−6重量%;ヘキサデカン:0.09μl/l、6.8×10−6重量%;ヘプタデカン:0.09μl/l、6.8×10−6重量%)を作製した。受粉促進用餌添加剤1をミツバチの餌である砂糖水(60重量%の砂糖を含む砂糖水)(以下、「砂糖水(60%)」等と表す)に、100倍希釈となるように添加して、受粉促進用餌組成物1(花香成分濃度;ベンズアルデヒド:1.18nl/l、9.6×10−8重量%;フェニルアセトアルデヒド:0.88nl/l、7.1×10−8重量%;ノナナール:2.35nl/l、1.5×10−7重量%;サリチル酸メチル:2.94nl/l、2.7×10−7重量%;ドデカン:1.18nl/l、6.9×10−8重量%;デカナール:1.18nl/l、7.6×10−8重量%;トリデカン:1.18nl/l、6.9×10−8重量%;テトラデカン:1.18nl/l、7.0×10−8重量%;ドデカナール:0.88nl/l、5.7×10−8重量%;ゲラニルアセトン:2.94nl/l、2.0×10−7重量%;β−ヨノン:1.18nl/l、8.7×10−8重量%;ペンタデカン:1.18nl/l、7.0×10−8重量%;ヘキサデカン:0.88nl/l、5.3×10−8重量%;ヘプタデカン:0.88nl/l、5.3×10−8重量%)を得た。
学習処理区においては、ハウスへセイヨウミツバチ(以下ミツバチと略す)を放虫する前日(2005年11月9日)に、約8,000匹のミツバチを内部に収容した巣箱をハウス内に設置し、巣箱内の給餌器に上記受粉促進用餌組成物1を200ml給餌した(図4)。対照区においては、受粉促進用餌組成物1に代えて、単なる砂糖水(60%)を200ml給餌したこと以外は、学習処理区と同様とした。2005年11月10日8時に両区の巣箱を開放してミツバチを放虫し、ミツバチのナスの花への訪花までの日数を調査した。ミツバチの観察は、毎日8時、12時及び15時に定期的に行った。複数のミツバチのナスの花への訪花、及び、花粉団子の作製が観察された日時をミツバチの訪花開始日時とし、「(訪花開始日時−放虫日時)/24時間」を「放虫日時から訪花までの日数」とした。学習処理区及び対照区における「放虫日時から訪花までの日数」の調査結果を表4に示す。
表4の結果から分かるように、学習処理区のミツバチは放虫日時からわずか0.2日で訪花を開始したのに対し、対照区では訪花までに放虫日時から7日以上を要した。このことから、ナスの花香成分を用いることにより、それを用いない場合に比べて、ミツバチの訪花までの期間を著しく短縮することが可能であることが示された。なお、給餌した受粉促進用餌組成物および単なる砂糖水は、給餌翌日には全て摂取されていた。
[1種類のナス花香成分(花粉香気成分)を用いた、ミツバチの訪花促進試験]
開花期のナス(「式部」)が栽培されているポリフィルム展張ハウス(300m)を5棟、及び、開花期のナス(「式部」)が栽培されているポリフィルム展張ハウス(600m)を1棟用意した。ハウスの開口部は全て防虫ネット(目合い2×4mm)で遮蔽した。用意した6棟のハウスのうち、300mのハウス3棟を学習処理区用とし、300mのハウスを2棟と600mのハウス1棟とを対照区用とした。一方、ナスの花粉の主要な香気成分の1種類であるゲラニルアセトンの合成品をもとに、受粉促進用餌添加剤2(花香成分濃度;ゲラニルアセトン:200μl/l、1.7×10−2重量%)を作製した。受粉促進用餌添加剤2をミツバチの餌である砂糖水(50%)に、100倍希釈となるように添加して、受粉促進用餌組成物2(花香成分濃度;ゲラニルアセトン:2μl/l、1.4×10−4重量%)を得た。
学習処理区においては、ハウスへミツバチを放虫する前日(2006年4月6日)に、約6,000匹のミツバチを内部に収容した巣箱を各ハウス内に設置し、翌日(2006年4月7日)の7時に両区の巣箱を開放してミツバチを放虫した。放虫後の同日10時に、学習処理区の巣箱内の給餌器に受粉促進用餌組成物2を200ml給餌した。対照区においては、受粉促進用餌組成物2に代えて、単なる砂糖水(50%)を200ml給餌したこと以外は、学習処理区と同様とした。両区における「放虫日時から訪花までの日数」の調査は、実施例2と同様に行った。学習処理区及び対照区における「放虫日時から訪花までの日数」の調査結果を表5に示す。
表5の結果から分かるように、学習処理区のミツバチは対照区のミツバチに対して、ナスの花へ訪花するまでの期間が有意に短く、放虫当日から翌日にかけてナスの花へ訪花を開始した。なお、対照区のミツバチは放虫当日には、その多くがハウスの天井に向かって飛翔し続けたが、学習処理区のミツバチは放虫後しばらくするとナスの花の周りを飛翔するところが観察された。なお、給餌した受粉促進用餌組成物および単なる砂糖水は、給餌翌日には全て摂取されていた。
[ナス花粉香気成分を用いた、ミツバチの訪花促進試験]
開花期のナス(「式部」)が栽培されているガラスハウス(150m)の中央を、目合い3.6mmの防虫ネットで2区画に分けた。2区画のうち、1区画を学習処理区用とし、別の1区画を対照区用とした。ハウスへミツバチを放虫する前日に、約8,000匹のミツバチを内部に収容した巣箱を各区画内に設置し、学習処理区においては、実施例3に記載された受粉促進用餌組成物2を巣箱内の給餌器に300ml給餌した。対照区においては、受粉促進用餌組成物2に代えて、単なる砂糖水(50%)を300ml給餌したこと以外は、学習処理区と同様とした。給餌の翌日の8時に両区の巣箱を開放してミツバチを放虫し、ミツバチのナスの花への訪花までの日数を調査した。両区における「放虫日時から訪花までの日数」の調査は、実施例2と同様に行った。この放虫及び調査は、それぞれ4回繰り返した。放虫日はそれぞれ2006年3月25日、4月5日、4月10日、4月18日とした。処理区画は放虫日ごとに交互に変え、ミツバチの群は実験日ごとにそれぞれ更新した。学習処理区及び対照区における「放虫日時から訪花までの日数」の調査結果を表6に示す。
表6の結果から分かるように、学習処理区のミツバチは、4群全てで放虫翌日には訪花を開始しており、訪花までの期間が対照区に比べて短かかった。また、学習処理区では、対照区に比べ、訪花までの日数の分散が有意に小さくなり、安定して訪花を開始した。なお、給餌した受粉促進用餌組成物および単なる砂糖水は、給餌翌日には全て摂取されていた。
[開放された開口部を有するハウスにおけるナス花粉香気成分を用いた、ミツバチの訪花促進試験]
開花期のナス(「式部」)が栽培されているガラスハウス(150m)の天窓、側窓、戸口を開放し、防虫ネット等の遮蔽をせずにミツバチが自由にハウス外に飛び出せる状態のハウスとした。約8,000匹のミツバチを内部に収容した巣箱を2つ用意し、1つを学習処理区用、もう1つを対照区用とした。上述の開放したガラスハウス内に、両区のミツバチの巣箱を放虫前日に6m程度離して設置した。学習処理区においては、実施例3に記載された受粉促進用餌組成物2を放虫前日の18時に巣箱内の給餌器に300ml給餌した。対照区においては、受粉促進用餌組成物2に代えて、単なる砂糖水(50%)を300ml給餌したこと以外は、学習処理区と同様とした。給餌の翌日の8時に両区の巣箱を開放してミツバチを放虫し、ミツバチがナスの花粉の採集を開始することが確認された日と、その日における花粉の採集量を調べた。この調査は、各処理区の巣箱に花粉採集器を9時〜12時及び13時〜16時にそれぞれ設置し、花粉の有無を調べることにより行った。この放虫及び調査は、3回繰り返した。放虫日は2006年6月1日、6月6日、6月28日とした。ミツバチの群は実験日ごとにそれぞれ更新した。学習処理区及び対照区における、ミツバチがナスの花粉の採集を開始したことが確認された日(花粉採集確認日)と、その日における花粉の採集量(花粉採集量(g))の調査結果を表7に示す。
表7の結果から分かるように、学習処理区のミツバチは、開口部を開放したナス栽培ハウスにおいて、ナスの花から花粉を採集することが認められた。なお、対照区においても、学習処理区と同時期に花粉の採集が確認されているが、これは、学習処理区のミツバチがナスの花を餌として認識し、ナサノフ腺から分泌するフェロモン物質をナスの花につけて、対照区のミツバチ等の他のミツバチに対してナスの花が餌であることを示すサインを送ったことによるものと考えられた。6月1日および6月6日に放虫した群において、対照区に比べ採集花粉量が多い傾向が認められたのも、学習処理区のミツバチは対照区よりも早く、ナスの花の花粉を餌として早く認識し、採餌行動を始めたことによるものと考えられる。これらの結果から、ミツバチが自由に飛び回れる環境においても、本発明の受粉促進方法は誘導効果を発揮することが示された。このことから、本発明の受粉促進方法は、例えば野外等においても誘導効果を発揮するであろうと考えられる。なお、給餌した受粉促進用餌組成物および単なる砂糖水は、給餌翌日には全て摂取されていた。
[ミツバチの訪花促進効果の確認]
上記実施例で得られたミツバチの訪花促進効果が、その花の花香成分を含む餌を摂取し、ミツバチがその花香成分と餌とを結びつけて認識したことによるものであることを確認するために、以下の実験を行った。
何の植物も栽培されていないガラスハウス(150m)を2棟用意し、ガラスハウスの開口部を目合い2mmの防虫ネットで遮蔽した。用意した2棟のハウスのうち、1棟を学習処理区用とし、別の1棟を対照区用とした。学習処理区においては、ハウスへミツバチを放虫する前日の18時に、約8,000匹のミツバチを内部に収容した巣箱をハウス内に設置し、実施例3に記載された受粉促進用餌組成物2を巣箱内の給餌器に300ml給餌した。対照区においては、受粉促進用餌組成物2に代えて、単なる砂糖水(50%)を300ml給餌したこと以外は、学習処理区と同様とした。翌日、9時に各ハウス内に、単なる砂糖水(50%)、ゲラニルアセトンの濃度を2μl/lとした砂糖水(50%)、リナロール(Linalool)の濃度を2μl/lとした砂糖水(50%)を、それぞれ100mlずつ別々のシャーレ(直径9cm)に入れて、これらのシャーレを、ミツバチの巣箱から2m離れた位置であって、かつ、各シャーレ間が2mずつ離れるように設置した後、各ハウス内にミツバチを放虫した。放虫したミツバチの学習行動の調査は、放虫日の10時から17時までの1時間ごとに5分間ずつ、各種シャーレで各種の砂糖水を摂取しているミツバチの個体数(摂取個体数)を計測することにより行った。これらの実験及び調査をそれぞれ3回繰り返して行った。各実験の放虫日は2006年6月26日、6月29日、7月4日とした。ミツバチの群は各実験日ごとに更新した。その結果を表8に示す。
リナロールは多くの花に含まれる花香成分であり、また、ミツバチが生得的に好む香気成分として知られている。そのため、表8の結果でも、対照区では、リナロールを添加した砂糖水を摂取する個体数が最も多かった。それに対して、学習処理区では、ゲラニルアセトンを添加した砂糖水の摂取個体数が多い傾向にあった。以上の結果から、学習処理区のミツバチは、ナスの花粉香気成分のひとつであるゲラニルアセトンと餌とを結びつけて認識したと考えられた。また、学習処理区のミツバチは、ミツバチが生得的に好むリナロール等の他の花の花香成分が存在しても、学習した花香成分に誘導されることが示されたことから、本発明の方法によるミツバチの誘導効果の高さがうかがえる。なお、給餌した受粉促進用餌組成物および単なる砂糖水は、給餌翌日には全て摂取されていた。
[ナスの花に訪花しているミツバチが誘導される香気の比較]
ナスの花にゲラニルアセトンが含まれているならば、ナスの花に訪花しているミツバチは本発明の方法によってゲラニルアセトンと餌とを結び付ける学習をしなくても、すでにゲラニルアセトンの香気を認識しているはずである。また、従来技術に記載したロシアの事例のように、生花を浸漬させた砂糖水を用いた学習方法が安定した手法であるとすれば、ナスの花に訪花しているミツバチは、ナスの花粉を浸漬させた砂糖水におけるナスの花粉の香気成分も認識するはずである。そこで、ナスの花に訪花活動を行っているミツバチ群が、どのような香気成分を含有した餌に誘導されるかを、以下のように、ゲラニルアセトンを添加した砂糖水、ナスの花粉を浸漬させた砂糖水、単なる砂糖水を用いた実験により比較した。
開花期のナス(「式部」)が栽培されているフッ素樹脂展張鉄骨ハウス(100m)を2棟用意した。ハウスの開口部は全て防虫ネット(目合い2mm)で遮蔽した。約8000匹のミツバチを内部に収容した巣箱を3つ用意し、2006年8月10日にこれら3つの巣箱を1棟のハウス内に設置し、巣箱内のミツバチを放虫した。その後、これら3つの巣箱のミツバチは、ナスの花に訪花し、花粉を採集していた。ハウス内に設置した3つの巣箱のうち1つの巣箱を8月24日の日没後にそのハウスから取り出した。取り出したその巣箱をもう1棟のハウス内に移動させ、そのハウス内に設置して放虫した。8月25日(実験日)の9時に、移動先のハウス内に、ゲラニルアセトンの濃度を2μl/lとした砂糖水(50%)、ナスの花粉を浸漬させた砂糖水(50%)、単なる砂糖水(50%)をそれぞれ100mlずつ別々のシャーレ(直径9cm)に入れた。ナスの花粉を浸漬させた砂糖水は、実験前日にナスの葯を12個(花2つ分)採集し、その葯を裂いて、100mlの砂糖水(50%)に一晩浸漬させ、花粉を砂糖水に溢流させた後、葯残渣を除去することによって作製した。前述の3種類のシャーレを、ミツバチの巣箱から10m離れた位置であって、かつ、各シャーレ間が2mずつ離れるように設置した。ミツバチの行動の調査は、実験日の10時から17時までの1時間ごとに5分間ずつ、各種シャーレで各種の砂糖水を摂取しているミツバチの個体数(摂取個体数)を計測することにより行った。同様の実験をさらに、8月30日(実験日)と9月1日(実験日)に2回行った。これらの各実験では、2006年8月10日に設置した上述の3つの巣箱を順に1箱ずつ用いた。なお、3回の実験のいずれにおいても、実験に用いたミツバチは、実験日に移動させた先のハウスでもナスの花に訪花していることを確認した。上記実験の結果を表9に示す。
表9中の砂糖水への処理間の分散分析は、砂糖水への処理および調査日を要因とする二元配置の分散分析(繰り返しなし)により行った。表9の結果から分かるように、砂糖水への処理が同種である場合は、調査日間での比較では有意な差は認められなかったが、砂糖水への処理間での比較では、5%水準で有意差が認められた。すなわち、ゲラニルアセトンの濃度を2μl/lとした砂糖水(50%)を用いた場合は、ナスの花粉を浸漬させた砂糖水(50%)を用いた場合や単なる砂糖水(50%)を用いた場合よりも、摂取個体数が多かった。このことから、ナスの花への訪花を経験しているミツバチは、ナスの花粉を採集するにあたり、ナスの花粉の香気成分のひとつであるゲラニルアセトンを学習していたと考えられた。また、ナスの葯を浸漬させた砂糖水に対する摂取個体数が少なかったことは、砂糖水に浸漬させた葯の香気成分が時間の経過と共に別の成分に変化してしまったり、他の香気成分が発生してしまうなどして、本来のナスの花粉の香気ではなくなっていたためと考えられた。
[ナスの切り花における花香成分の経時的変化]
前述の実施例7の結果のとおり、ナスの葯を浸漬させた砂糖水に対する摂取個体数が少なかったことは、砂糖水に浸漬させた葯の香気成分が時間の経過と共に別の成分に変化してしまったり、他の香気成分が発生してしまうなどして、本来のナスの花粉の香気ではなくなっていたためと考えられた。そこで、ナスの切り花の花香成分が実際にどのような経時的変化を生じるか調べるために、以下の実験を行った。
2006年7月10日に播種したナス苗(「式部」)の花の根元を切り花用ハサミで2006年9月25日に切断して切り花を得た。切断当日、1日後、2日後にこの切り花の花香成分を、上記実施例1に記載の固相マイクロ抽出法とGC/MS分析を組み合わせた方法で解析した。表10に、ガスクロマトグラフィーにより得られた結果を経時的にまとめたものを示す。
表10の結果から分かるように、切断当日の切り花では、ゲラニルアセトン(Geranylacetone)が主要成分として存在していたが、切断1日後や2日後の切り花ではわずかとなっていた。また、検出された成分の種類にも変化が見られ、切断当日の切り花からは検出されなかったエレモール(Elemol)や、トランス−ネロリドール(trans-nerolidol)が
、切断2日後の切り花では主要成分となっていた。以上の結果から、切り花は花香成分が極めて変化し易く、切り花を浸漬させた砂糖水等を利用した方法では、本発明の方法のようなミツバチに対する優れた誘導効果が得られないことが明らかとなった。
[トマトの花香成分の分析]
トマト(品種「麗容」)を用意し、このトマトの花香成分を前述のナスと同じ方法で解析した。花器全体の香気成分および花粉の香気成分のうち、同定された成分のみを表11および12に示す。
表11に示されているとおり、トマトの花香成分を解析した結果、12種類の揮発成分が、標準品との比較分析により同定され、ペンタデカン(Pentadecane)が主要成分として同定された。表12に示されているとおり、トマトの花粉香気成分を解析した結果、9種類の揮発成分が、標準品との比較分析により同定され、ゲラニルアセトン(Geranylacetone)、ペンタデカン(Pentadecane)が主要成分として同定された。
[3種類のトマト花香成分を用いた、ミツバチの訪花促進試験]
開花期のトマト(「麗容」)が栽培されているガラス温室(150m)を3棟用意し、これら3棟の温室の内部を防虫ネット(目合い3.6mm)でそれぞれ温室中央部を境界に2区画に仕切って計6区画を用意した。この区画は天井部と周囲を防虫ネットで囲んでいるため、ミツバチは区画の外に出ることができない。用意した6区画の内、2区画を花香成分の合成品による学習処理区用とし、2区画をトマトの切り花による学習処理区用、2区画を対照区用とした。一方、トマトの花香成分であるリモネン(Limonene)、ペンタデカン、ゲラニルアセトンの合成品をもとに受粉促進用餌添加剤3(花香成分濃度;リモネン:2μl/l、1.7×10−4重量%;ペンタデカン:10ml/l、0.77重量%;ゲラニルアセトン:10μl/l、8.7×10−4重量%)を作製した。受粉促進用餌添加剤3をミツバチの餌である砂糖水(50%)に、1000倍希釈となるように添加して、受粉促進用餌組成物3(花香成分濃度;リモネン:0.002μl/l、1.4×10−7重量%;ペンタデカン:10μl/l、6.3×10−4重量%;ゲラニルアセトン:0.01μl/l、7.1×10−7重量%)を得た。
ミツバチを放虫する前日に、約8,000匹のミツバチを内部に収容した巣箱を各区画内に設置した。花香成分の合成品による学習処理区では受粉促進用餌組成物3を巣箱内の給餌器に1000mlを給餌した。トマトの切り花による学習処理区では、トマトの切り花の20花を砂糖水(50%)1000mlに8時間浸し、その後、切り花を取り除き、この砂糖水を巣箱内の給餌器に1000ml給餌した。対照区においては、単なる砂糖水(50%)を1000ml給餌した。給餌の翌日の8時に両区の巣箱を開放してミツバチを放虫し、ミツバチのトマトの花への訪花までの日数を調査した。訪花までの日数=訪花確認日−放虫日 とした。訪花の確認は、実施例2と同様に観察によって行うとともに、花粉採集器を取り付けて、ミツバチの花粉の採集を確認した。この放虫及び調査は、2回繰り返した。放虫日はそれぞれ2006年11月6日、11月17日とした。処理区画は放虫日ごとにずらし、ミツバチの群は実験日ごとにそれぞれ更新した。訪花までの日数の調査結果を表13に示す。
表13の結果から分かるように、花香成分の合成品による学習処理区のミツバチは、6日かかった群が一群のみ有ったが、他の群は2、3日後に訪花を開始し、他の処理に比べて、訪花までの日数が短い傾向であった。切り花による学習処理区と対照区は、それぞれ1群ずつ放虫後10日以上をついやした事例も得られた。切り花による学習処理区は、対照区と比較して訪花促進効果はみられなかった。これらのことから、トマトの花においても、花香成分の合成品による学習処理による訪花促進効果が認められた。また、切り花を砂糖水に浸して花香を学習させる方法は安定した誘導方法ではないことが示唆され、花香成分の合成品によるハナバチの学習は安定した効果を得ることができることが示された。なお、11月6日の実験に供試したミツバチ群(特に、表13の11月6日の下段のミツバチ群)は巣箱内の貯蜜量が全体的に多かったため、給餌した砂糖水に対する摂取が悪く、給餌の翌日になっても、未だ9割程度以上の砂糖水が残っていた。中でも、「花香成分の合成品による学習処理区において、訪花までに6日かかった群」では給餌した砂糖水(受粉促進用餌組成物3)の摂取がとりわけ悪く、ほとんど砂糖水は摂取されておらず、学習の効果が発現しづらかったと考えられる。給餌した受粉促進用餌組成物をミツバチが摂取しなければ、本発明の効果は得られないため、効果を効率的に得るためには餌の要求量が高いミツバチ群を使用することが好ましく、また、受粉促進用餌組成物の給餌後、ミツバチが摂取しているか否かの確認も必要である。一方、11月7日の実験に供試したミツバチ群では給餌した砂糖水は、給餌翌日にはいずれも半分以上が摂取されていた。
[イチゴの花香成分の分析]
イチゴ(品種「やよいひめ」、群馬県育成品種)を用意し、このイチゴの花香成分を前述のナスと同じ方法で解析した。花器全体の香気成分および花床部のみの香気成分のうち、同定された成分および類似度検索により検出された成分を表14(花香成分)および表15(花床部香気成分)に示す。
表14に示されているとおり、イチゴの花香成分を解析した結果、酢酸cis-3-ヘキセニル((Z)-3-Hexenyl acetate)やGermacrene D等、Knudsenらの花香成分のリストに記載の成分(表1)と共通する成分が検出されたが、主要成分としてはミルテノール(Myrtenol)が同定された。なお、前述のナス、トマトと同様にイチゴの花粉のみの香気成分を解析したところ、ミルテノールの発散はわずかであり、一方、花床部のみの香気成分を解析した結果、同成分(ミルテノール)が主要成分として強く発散されていた(表15)。
[2種類のイチゴ花香成分を用いた、ミツバチの訪花促進試験]
開花期のイチゴ(「やよいひめ」)が栽培されているビニルハウス(50m)を2棟用意した。これら2棟のハウスの全ての開口部を防虫ネット(目合い2mm)で遮蔽した。用意した2棟のハウスのうち、1棟のハウスを学習処理区用とし、別の1棟のハウスを対照区用とした。一方、イチゴの花香成分であるミルテノールおよび酢酸cis-3-ヘキセニルの合成品をもとに受粉促進用餌添加剤4(花香成分濃度;ミルテノール:100μl/l、9.8×10−3重量%; 酢酸cis-3-ヘキセニル:0.2μl/l、1.8×10−5重量%)を作製した。なお、酢酸cis-3-ヘキセニルについては、上記実施例11の花香成分分析実験において同定作業までは行っていないが、Knudsenらの花香成分のリストと共通する成分であったことから、混合した。受粉促進用餌添加剤4をミツバチの餌である砂糖水(50%)に、100倍希釈となるように添加して、受粉促進用餌組成物4(花香成分濃度;ミルテノール:1μl/l、8.0×10−5重量%; 酢酸cis-3-ヘキセニル:0.002μl/l、1.5×10−7重量%)を得た。
ミツバチを放虫する前日に、約8,000匹のミツバチを内部に収容した巣箱を各区画内に設置した。花香成分の合成品による学習処理区では受粉促進用餌組成物4を巣箱内の給餌器に500mlを給餌した。対照区においては、単なる砂糖水(50%)を500ml給餌した。給餌の翌日の8時に両区の巣箱を開放してミツバチを放虫し、ミツバチのイチゴの花への訪花までの日数を調査した。訪花までの日数は、「訪花までの日数=訪花確認日−放虫日」の式により算出した。訪花の確認は、実施例2と同様に観察によって行うとともに、花粉採集器を取り付けて、ミツバチの花粉の採集を確認した。この放虫及び調査は、4回繰り返した。放虫日はそれぞれ2007年2月16日、2月22日、3月7日、4月24日とした。処理区(ハウス)は放虫日ごとに交換し、ミツバチの群は実験日ごとにそれぞれ更新した。訪花までの日数の調査結果を表16に示す。
表16の結果から分かるように、学習処理区のミツバチは、4群全てで放虫の当日もしくは翌日に訪花を開始しており、訪花までの期間が対照区に比べて短かった。また、学習処理区では、対照区に比べ、訪花までの日数の分散が有意に小さくなり、ばらつきが少なく安定して訪花を開始した。これらのことから、イチゴの花においても、花香成分の合成品による学習処理によって、訪花促進効果が認められた。なお、給餌した受粉促進用餌組成物および単なる砂糖水は、給餌翌日にはほとんど摂取されていた。
ミツバチのナス花への採餌行動を示す図である。ミツバチは前脚と口器を使ってナスの葯の先端を上下に動かしながら花粉を落下させ、落下した花粉を腹面側の体毛で受け止めるという一連の行動を繰り返し、花粉団子を作製する。この花粉団子を作製する過程でミツバチの体毛に保持された花粉が柱頭に付着し、授粉が行われる。 ナス(「式部」)の花の花香成分のクロマトグラムを示す図である。 ナス(「式部」)の花粉の香気成分のクロマトグラムを示す図である。 受粉目標植物の花の花香成分を利用したハナバチの受粉促進方法のフローチャートを示す図である。

Claims (23)

  1. 植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分を含有する植物の受粉促進用餌添加剤。
  2. 植物が、ハナバチが授粉可能な植物群から選ばれる1種又は2種以上の植物である請求項1に記載の植物の受粉促進用餌添加剤。
  3. 植物が、ナス科、バラ科及びウリ科からなる群から選ばれる1又は2以上の科に含まれる植物である請求項1に記載の植物の受粉促進用餌添加剤。
  4. 植物が、ナス、トマト及びイチゴからなる群から選ばれる1種又は2種以上の植物である請求項1に記載の植物の受粉促進用餌添加剤。
  5. 1種類又は2種類以上の花香成分が、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ノナナール、サリチル酸メチル、ドデカン、デカナール、トリデカン、テトラデカン、ドデカナール、ゲラニルアセトン、β−ヨノン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、リモネン、酢酸cis−3−ヘキセニル、ミルテノールから選ばれる1種類又は2種類以上である請求項1〜4のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤。
  6. 花器が花粉である請求項1〜4のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤。
  7. 花香成分が、合成された花香成分である請求項1〜6のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤。
  8. ハナバチが、ミツバチ科、ムカシハナバチ科、コハナバチ科、ヒメハナバチ科、ハキリバチ科、ケアシハナバチ科からなる群から選ばれる科に含まれるハナバチである請求項2〜7のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤。
  9. ミツバチ科に含まれるハナバチが、ミツバチ又はマルハナバチである請求項8に記載の植物の受粉促進用餌添加剤。
  10. ミツバチが、セイヨウミツバチ又はトウヨウミツバチである請求項9に記載の植物の受粉促進用餌添加剤。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌添加剤が配合されたハナバチの餌素材を摂取したハナバチを用いることを特徴とする植物の受粉促進方法。
  12. 植物の花器の1種類又は2種類以上の花香成分が配合されたハナバチの餌素材を含有する前記植物の受粉促進用餌組成物。
  13. 花香成分が、合成された花香成分である請求項12に記載の植物の受粉促進用餌組成物。
  14. ハナバチの餌素材が、糖質、脂質及びタンパク質からなる群から選ばれる1種類又は2種類以上を含有する物質である請求項12又は13に記載の植物の受粉促進用餌組成物。
  15. ハナバチの餌素材が砂糖である請求項12又は13に記載の植物の受粉促進用餌組成物。
  16. 請求項12〜15のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌組成物を摂取したハナバチを用いることを特徴とする植物の受粉促進方法。
  17. 請求項12〜15のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌組成物を摂取したハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に存在させることを特徴とする請求項16に記載の植物の受粉促進方法。
  18. 請求項12〜15のいずれかに記載の植物の受粉促進用餌組成物を摂取したハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に放つことを特徴とする請求項17に記載の植物の受粉促進方法。
  19. 花器を有する植物が存在する空間内に存在するハナバチに、請求項12〜15のいずれかに記載の前記植物の受粉促進用餌組成物を摂取させることを特徴とする請求項17に記載の植物の受粉促進方法。
  20. 花器を有する前記植物が存在する空間内が、花器を有する前記植物が存在する栽培ハウス内であることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載の植物の受粉促進方法。
  21. 植物の花器の花香成分を分析する工程、分析により存在が確認された花香成分の1種類又は2種類以上を入手する工程、入手した1種類又は2種類以上の花香成分を、ハナバチの餌素材に配合する工程、花香成分を配合したハナバチの餌素材をハナバチに摂取させる工程、及び、該餌素材を摂取したハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に存在させる工程を有することを特徴とする植物の受粉促進方法。
  22. 植物の花器の花香成分を分析する工程、分析により存在が確認された花香成分の1種類又は2種類以上を入手する工程、入手した1種類又は2種類以上の花香成分を、ハナバチの餌素材に配合する工程、ハナバチを、花器を有する前記植物が存在する空間内に存在させる工程、花香成分を配合した前記餌素材を、前記植物が存在する空間内のハナバチに摂取させる工程を有することを特徴とする植物の受粉促進方法。
  23. 入手した1種類又は2種類以上の花香成分が、合成された花香成分であることを特徴とする請求項21又は22に記載の植物の受粉促進方法。
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