JP2008211985A - Il−17産生抑制物質及びそのスクリーニング方法 - Google Patents

Il−17産生抑制物質及びそのスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】IL-17に起因する炎症を改善する物質、IL-17遺伝子発現抑制物質、およびCD4陽性T細胞の増殖抑制物質、並びにそれらのスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】NR4A2遺伝子の発現を抑制することができる物質を同定することにより、多発性硬化症や自己免疫性脳炎などのIL-17に起因する炎症を改善する物質、IL-17遺伝子発現抑制物質、およびCD4陽性T細胞の増殖抑制物質等をスクリーニングすることができる。また、同定されたNR4A2遺伝子発現抑制物質は、IL-17に起因する炎症の改善、IL-17遺伝子の発現抑制、およびCD4陽性T細胞の増殖抑制等に有用である。
【選択図】なし

Description

本発明は、IL-17産生抑制物質、IL-17を産生するCD4陽性T細胞の増殖抑制物質、および、IL-17に起因する炎症を改善する物質、並びにそれらのスクリーニング方法などに関する。
多発性硬化症(MS)の病態形成に関する最近の知見として、MSの動物モデルであるマウスEAE(実験的自己免疫性脳炎:Experimental autoimmune encephalomyelitis)モデルを用いた詳細な解析から、IFN-γを産生するTh1細胞よりも中枢神経領域に浸潤したIL-17産生性T細胞(Th17細胞)が重要であることが報告されている(非特許文献1参照)。また、IL-17をノックアウトしたマウスを用いた実験からも、EAEの発症にIL-17が関与していることが明らかになり、さらに、EAEが悪化するIFN-γノックアウトマウスでは、CD4陽性T細胞においてIL-17の産生が亢進することが報告された(非特許文献2参照)。
一方、IL-1 レセプターアンタゴニストノックアウトマウスは自己免疫性関節炎を自然発症するが、このマウスとIL-17 ノックアウトマウスを掛け合わせた二重欠損マウスではこの関節炎の発症が抑制される(非特許文献3参照)。
さらに、IL-17 ノックアウトマウスを用いた解析から、接触型過敏症、遅延型過敏症、気道過敏症といった様々な炎症性疾患の発症にもIL-17 が深く関与していることが明らかになっている(非特許文献4参照)。
これらの結果から、IL-17が、自己免疫性脳炎、自己免疫性関節炎、過敏症のような炎症性疾患の発症の重要な一要因であることが明らかになると同時に、IL-17の産生を抑制すれば、これらの炎症を抑制できることが明らかになった。
Current Opinion in Immunology 2006, vol.18: p.349-356 The Journal of Immunology 2006, vol.177: p.566-573 Ernst Schering Res Found Workshop. 2006, vol.56: p.129-153 Immunity. 2002, vol.17: p.375-87
そこで、IL-17に起因する上記炎症を改善するため、IL-17産生抑制物質やIL-17を産生するCD4陽性T細胞の増殖抑制物質等の新規開発が求められていた。
本発明は、IL-17産生抑制物質、およびCD4陽性T細胞の増殖抑制物質、並びにそれらのスクリーニング方法を提供し、さらにIL-17に起因する炎症を改善する物質を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、多発性硬化症(MS)患者由来の末梢血T細胞において特異的に発現亢進するNR4A2遺伝子を同定し、このNR4A2遺伝子の発現亢進が、MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis:EAE)を誘導したマウスの中枢神経領域(CNS)に浸潤したT細胞においても認められることを見出した。
また、NR4A2遺伝子の発現と、IFN-γ、TNFα、IL-10、IL-4、IL-2、IL-17等のサイトカインの産生とが正の相関を示すことが明らかになり、NR4A2遺伝子が直接的あるいは間接的にこれらのサイトカイン遺伝子の発現制御に関わることを見出した。
さらに、NR4A2遺伝子の発現を抑制することにより、IFN-γ、TNFα、IL-10、IL-4、IL-2、IL-17等のサイトカインの産生、および、CD4陽性T細胞の増殖等を抑制できることを見出した。
このようにして、本発明者らは本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るスクリーニング方法は、IL-17産生T細胞によるIL-17の産生を抑制する物質をスクリーニングする方法であって、前記IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制することができる物質を同定する工程を含む。前記物質は、IL-17に起因する炎症を改善するものであってもよい。前記炎症としては、例えば、自己免疫性関節炎、リウマチ様関節炎、接触型過敏症、遅延型過敏症、気道過敏症、多発性硬化症、自己免疫性脳炎等を挙げることができる。
また、本発明に係るスクリーニング方法は、CD4陽性T細胞の増殖を抑制する物質をスクリーニングする方法であって、IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制することができる物質を同定する工程を含む。
なお、前記物質は、例えば、NR4A2遺伝子の発現を抑制する物質である。
本発明に係るスクリーニング方法は、脊椎動物に対して被検物質を投与し、前記被検物質を投与した前記脊椎動物の前記IL-17産生T細胞におけるNR4A2遺伝子の発現量の変化を評価する工程を含む。
本発明に係る治療剤は、IL-17に起因する炎症の治療剤であって、IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制する抑制物質を有効成分として含有する。前記抑制物質は、例えば、siNAなどのNR4A2遺伝子の発現を抑制する物質である。前記炎症としては、例えば、自己免疫性関節炎、リウマチ様関節炎、接触型過敏症、遅延型過敏症、気道過敏症、多発性硬化症、自己免疫性脳炎等を挙げることができる。
本発明に係る発現抑制剤は、細胞におけるIL17遺伝子の発現抑制剤であって、前記細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制する抑制物質を有効成分として含有する。前記抑制物質は、例えば、siNAなどのNR4A2遺伝子の発現を抑制する物質である。
本発明に係る細胞増殖抑制剤は、CD4陽性T細胞に対する細胞増殖抑制剤であって、IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制する抑制物質を有効成分として含有する。前記抑制物質は、例えば、siNAなどのNR4A2遺伝子の発現を抑制する物質である。
本発明によれば、IL-17産生抑制物質、およびCD4陽性T細胞の増殖抑制物質、並びにそれらのスクリーニング方法を提供し、さらにIL-17に起因する炎症を改善する物質を提供することができる。
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
==スクリーニング方法==
上述のように、NR4A2遺伝子の発現と、IL-17、IFN-γ、IL-2、TNFα、IL-10、IL-4等のサイトカイン遺伝子の発現、すなわちこれらのサイトカイン産生とが正の相関を示すことが明らかになり、NR4A2遺伝子が直接的あるいは間接的にこれらのサイトカイン遺伝子の正の発現制御に関わる可能性が示唆された。また、NR4A2遺伝子の発現を抑制することによりIL-17、IFN-γ、IL-2、TNFα、IL-10、IL-4等のサイトカインの産生、および、CD4陽性T細胞の増殖等を抑制できることが明らかになった。従って、IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制することができる物質を同定することにより、IL-17に起因する炎症を改善する物質、IL-17産生を抑制する物質(IL-17遺伝子の発現抑制物質を含む。)、およびCD4陽性T細胞の増殖を抑制する物質等をスクリーニングすることができる。
ここで、IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制するとは、その細胞におけるNR4A2タンパク質の全体的機能レベルを抑制することを意味し、そのための方法として、例えば、NR4A2タンパク質の機能阻害化合物や機能阻害抗体等をNR4A2タンパク質に結合させてNR4A2タンパク質が固有に有する機能レベルを減少させてもよく、あるいはNR4A2タンパク質やNR4A2タンパク質をコードするmRNAを分解したり、NR4A2遺伝子の発現を抑制したりしてもよく、その方法は特に限定されないが、技術上の簡便さから、RNAi法により発現を抑制するのが好ましい。
NR4A2タンパク質の果たす機能を抑制することができる物質の同定は、例えば、NR4A2遺伝子発現細胞に被検物質を作用させた後、NR4A2遺伝子の発現量に関し、被検物質を作用させていない細胞、あるいは、被検物質を作用させる前と比較・評価することにより行うことができる。
別法として、例えば、NR4A2遺伝子のエンハンサー/プロモーターをもつ発現ベクターに、GFP、ルシフェラーゼ、ベータ・ガラクトシダーゼなどのマーカーをコードする遺伝子を挿入した組換えベクターを、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法、又はカルシウムを用いたトランスフェクション法等によって適切な宿主細胞(例えば、T細胞など)に導入し、マーカーの発現に関して、被検物質を作用させた細胞と、被検物質を作用させていない同種の細胞、あるいは、被検物質を作用させる前と比較・評価してもよい。なお、組換えベクターがファージDNAやウイルスDNAである場合、適切な宿主細胞(例えば、T細胞など)に感染させることにより、遺伝子を導入してもよい。
ここで、被検物質を細胞に作用させるとは、in vitroあるいはin vivoで被検物質を細胞に作用するように、その細胞に直接又は間接に添加または投与することにより、その細胞に対して被検物質の効能を発揮させることをいい、対象となる細胞は、NR4A2遺伝子プロモーターによって人為的にNR4A2遺伝子またはマーカー遺伝子を導入し発現するようになった細胞であっても、内在的にNR4A2遺伝子を発現している細胞であってもよく、また、培養細胞であっても個体内の細胞であってもよい。
動物個体を用いる場合、例えば、IL-17に起因する炎症性疾患を発症した脊椎動物に対して被検物質を投与し、その個体のIL-17産生T細胞におけるNR4A2遺伝子の発現量に関し、被検物質を投与していない同種の動物、あるいは、被検物質を投与する前と比較・評価することにより行うことができる。ここで、IL-17産生T細胞としては、特に制限されるものではなく、例えば、末梢血T細胞、CNS浸潤T細胞などを挙げることができる。また、脊椎動物に対する被検物質の投与は、患部の近傍に直接投与してもよいが、経口または静脈内、腹腔内等の非経口に投与してもよい。
NR4A2遺伝子の発現量の測定は、例えば、定量的RT-PCR(quantitative reverse transcription-polymerase chain reaction)法、ノーザンブロット法、ドットブロット法などによってmRNA量を測定することにより行うことができるが、微量のRNA(血液から単離)を用いてmRNA量を測定することができる点で定量的RT-PCR法を用いて行うことが好ましい。
定量的RT-PCR法に用いるプライマーとしては、NR4A2遺伝子発現を特異的に検出することができるものであれば特に制限されるものではないが、12〜26塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましい。その塩基配列は、対象となる脊椎動物のNR4A2遺伝子の配列常法に基づいて決定することができる。そして、決定した配列を有するプライマーは、例えば、DNA合成機を用いて作製することにより得ることができる。具体的には、例えば、動物がヒトである場合にはX75918、AB017586、AB019433、BC009288、およびS77154、動物がラットである場合にはU01146、L08595、U72345、NM_019328、動物がマウスである場合にはNM_013613で登録されている配列情報に基づいてプライマーを作製することができる。
==NR4A2タンパク質機能抑制物質==
上述のように、NR4A2タンパク質の果たす機能を抑制することによりIL-17、IFN-γ、IL-2、TNFα、IL-10、IL-4等のサイトカインの産生、および、CD4陽性T細胞の増殖等を抑制できることから、IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制する物質は、IL-17に起因する炎症の改善、IL-17の産生抑制、CD4陽性T細胞の増殖抑制などに有用である。
NR4A2タンパク質の果たす機能を抑制する物質とは、その細胞におけるNR4A2タンパク質の全体的機能レベルを抑制する物質を意味し、例えばNR4A2遺伝子の発現を抑制する物質であってもよく、その具体例としては、RNAi法によってNR4A2遺伝子の発現を抑制するsiNA(本明細書では、siRNA及びsiDNA、あるいは、siDNAとsiRNAのキメラ分子を総称するものとする。)、あるいは、そのsiNAを発現する組換えベクターなどを用いることができる。NR4A2遺伝子の発現を抑制するsiNAとしては、例えば、5’-GGACAGCAGUCUCCAUUAUU-3’(配列番号1)、5’-GGUUCGCACAGACAGUUUAAUU-3’(配列番号2)、若しくは5’-GGCGAACCCUGACUAUCAAAUU-3’(配列番号3)、またはそれらの塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドなどを挙げることができる。なお、本発明においては、これらのオリゴヌクレオチドは、糖鎖、核酸塩基、またはバックボーンが修飾されたリボヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドを含む)であってもよい。
糖鎖が修飾されたリボヌクレオチドとしては、例えば、リボースの2’-OH基が、H、OR、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2またはCNから選択される基で置換されたもの(但し、Rは、C1-C6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、BrまたはIである。)を挙げることができる。核酸塩基が修飾されたリボヌクレオチドとしては、例えば、5位が置換されたウリジンまたはシチジン(例えば、5-(2-アミノ)-プロピルウリジン、5-ブロモウリジンなど)、8位が置換されたアデノシンまたはグアノシン(例えば、8-ブロモグアノシンなど)、デアザヌクレオチド(例えば、7-デアザアデノシンなど)、O-またはN-アルキル化ヌクレオチド(例えば、N6-メチルアデノシンなど)等を挙げることができる。また、バックボーンが修飾されたリボヌクレオチドとしては、例えば、リン酸基がチオリン酸基などの修飾基で置換されたものを挙げることができる。
上述のオリゴヌクレオチドは、DNA/RNA合成機、あるいは、in vitro転写反応、酵素合成法、固相合成法等の常法により合成することができる。
上述のsiNAを発現する組換えベクターとしては、例えば、siNAが非修飾RNAである場合、そのsiNAをコードするDNAを組み込んだウイルスベクターまたはプラスミドなどの発現ベクターウイルスなどを挙げることができる。
なお、前記DNAをウイルスベクターに組み込んだ発現ベクターをin vitroで感染させた細胞株、その細胞株から産生されるウイルス等もNR4A2遺伝子の発現を抑制する物質として有用である。ウイルスを薬剤や医薬組成物として用いる場合には、毒性や副作用が生じないようにするために、ウイルスを遺伝子操作等の公知の方法により、増殖しないように変異させておくことが好ましい。例えば、感染はするが、複製しないように改変されたレトロウイルスやアデノウイルスに、上述のsiNAを発現することができる発現ベクターに組み込んだものを用いればよい。前記ウイルスベクターは、例えば、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ファージベクターなどである。
また、上述のsiNAを封入したリポソームもNR4A2遺伝子の発現を抑制する物質として有用である。この場合、Trans IT In Vivo Gene Delivery System(TaKaRaの商品名)などを用いることにより、生体内標的部位にこれらのオリゴヌクレオチドを導入することができる。
さらに、上述のsiNAを内包した高分子ミセルも、薬物キャリアとして優れた特性を有し、NR4A2遺伝子の発現を抑制する物質として有用である。
また、上述のsiNAを細胞に発現させるためのプラスミドと、高分子キャリアとの複合体も、標的組織にプラスミドを運び、そこでsiNAを発現させることが可能であることから、NR4A2遺伝子の発現を抑制する物質として有用である。なお、高分子キャリアとしては、前記プラスミドを細胞内に導入することが可能な物質であればどのようなものを用いてもよく、例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポロタミン、キトサン、合成ペプチド、又はデンドリマーなどを用いることができる。
なお、遺伝子の発現抑制のためには、siNA法の代わりに、miNA法(miRNA、miDNA、及び一部のヌクレオチドをデオキシヌクレオチドに置換したキメラ分子を含む。)を用いてもよく、miNAを細胞内で発現させる方法は、siNAに関する上記方法に準ずる。
==本発明に係る薬剤・医薬組成物==
NR4A2タンパク質の果たす機能を抑制する物質を有効成分として含有する組成物は、医薬品として、ヒト、ヒト以外の脊椎動物に投与してもよいし、試薬として実験用に用いてもよい。このような医薬品は、患部に直接投与してもよいし、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの製剤にして経口投与してもよいし、注射剤などの製剤にして腹腔内や静脈内への注射により非経口投与してもよい。なお、医薬品の製剤化は、従来使用されている製剤添加物(例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、溶剤、安定剤など)を用いて常法により行うことができる。
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。
[実験例1]
まず、健常人との比較において、多発性硬化症(MS)患者由来の末梢血T細胞で選択的に高い発現亢進を示す遺伝子を同定した。
57人のMS患者および19人の健常人から30mlずつ採血し、フィコール密度勾配遠心によりPBMCs(peripheral blood mononuclear cells)をそれぞれ単離した。各PBMCsを抗CD3抗体がコートされた磁気マイクロビーズと反応させ、AutoMACS (Miltenyi Biotec, Auburn, CA)によりCD3+ T細胞を分離した。その後、RNeasy Mini Kit (Qiagen, Valencia, CA)を用いて各CD3+ T細胞から総RNAをそれぞれ単離し、Superscript II RNaseH- Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)により、Random primer(Invitrogen)を用いてaminoallyl-dUTP(Sigma)存在下で逆転写反応を行った。その後、Cy5 mono-reactive dye(現GE Healthcare)を用いて蛍光色素Cy5を取り込ませて、cDNAを標識した。なお、本実験では、健常人から得たmRNAに対し、逆転写反応の際Cy3(Cy3 mono-reactive dye(現GE Healthcare))を取り込ませて標識したcDNAを準備し、遺伝子発現レベルを標準化するために用いた。
Cy3-またはCy5-で標識したcDNAを等量混合したハイブリダイゼーション溶液をcDNAマイクロアレイと62℃で10時間ハイブリダイズさせ、ScanArray 5000 scanner (GSI Lumonics, Boston, MA)を用いてスキャンし、QuantArray software (GSI Lumonics)によりデータ解析を行った(グローバル補正)。なお、Cy3とCy5とのシグナル強度の補正は、グローバルノーマライゼーションにより行い、遺伝子発現レベルは、(MS患者のシグナル強度)/(健常人のシグナル強度)を指標とした。統計分析は、Cyber-Tソフトウェア(http://www.genomics.uci.edu)により行った。また、上述のcDNAマイクロアレイとしては、文献(F. Koike et al., 2003)に記載の方法により、発癌遺伝子、転写因子、情報伝達物質、細胞周期関連遺伝子、及びアポトーシス関連遺伝子、並びに、サイトカイン/成長因子及びそれらのレセプター、並びに、ハウスキーピング遺伝子などの1263の遺伝子のcDNAをポリ-L-リジンをコートしたスライドガラス(Hitachi Life Science, Saitama, Japan)に固定したものを用いた。
その結果、解析した1263遺伝子中286遺伝子に有意な変動が認められ、このうち87遺伝子がMS患者由来末梢血T細胞において有意に発現亢進しており、このうちもっとも高い発現亢進を認めた遺伝子の一つとして、転写因子をコードするNR4A2遺伝子を同定した。次に、MS患者と健常人におけるNR4A2遺伝子の発現レベルを定量するため、定量RT-PCRを行った。
57人のMS患者及び19人の健常人のCD3+ T細胞から単離した総RNA 1 μgをDNaseで処理し、プライマーとしてランダムヘキサマーを用いてSuperScript II RNaseH- reverse transcriptase (Invitrogen, Carlsbad, CA)によりcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型とし、NR4A2cDNAに特異的なプライマー(フォーワードプライマー5’-CGACATTTCTGCCTTCTCC-3’:配列番号4、リバースプライマー5’-GGTAAAGTGTCCAGGAAAAG-3’:配列番号5)とLight Cycler-FastStart DNA Master SYBR Green I kit (Roche)を用いて、Light Cycler ST300 (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)によるPCR法でNR4A2cDNAを増幅し、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)を内部標準としてNR4A2遺伝子の発現レベルを定量した。その結果を図1に示す。
図1に示すように、MS患者のCD3+ T細胞では、健常人のものと比べ、NR4A2遺伝子の発現レベルがおよそ5倍高いことがわかった。
[実験例2]
本実験例では、マウスに実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis:EAE)を誘導し、誘導後のEAEの病態の発症と、脾臓(SPL)T細胞、所属リンパ節(dLN)T細胞、および中枢神経領域(CNS)に浸潤したT細胞におけるNR4A2遺伝子の発現レベルとの相関を調べた。
8〜12週齢のメスのC57BL/6 (B6)マウス(CLEA Laboratory Animal Corp, Tokyo, Japan)の皮下にMOG35-55ペプチド 100 μg、および熱処理されたMycobacterium tuberculosis H37RA (Difco)を乳状化した完全フロイントアジュバンド 1 mgを投与して免疫した。免疫当日(0日目)および免疫2日後に、百日咳毒素(200 ng in PBS; List Biological Laboratories)を腹腔内に投与してEAEを誘導し(0日目:d0)、EAEの臨床症状を以下のようにスコア化し、毎日記録した(図2A)。
0:臨床症状なし、1:尾の緊張減少、2:尾の弛緩、3:後足の部分的な麻痺、4:後足全体の麻痺、5:、前足及び後足の麻痺
また、EAEを誘導してから0、9、15、および21日後(d0, d9, d15, およびd21)にマウスを殺し、SPL細胞、dLN細胞、およびCNSに浸潤した単核細胞を、パーコール密度勾配遠心分離法によってそれぞれ回収した。これらの細胞を抗CD3-PE抗体 (2C11; BD Pharmingen)で標識し、EPICS ALTRA Cell Sorting System (Beckman Coulter, Tokyo, Japan)によりCD3+ T細胞を分離し(CD3+ T細胞の純度は93%以上)、実験例1に記載の方法と同様に、NR4A2遺伝子の発現レベルを定量RT-PCRにより測定した(図2B)。
図2に示すように、EAEを誘導したマウスの脾臓および所属リンパ節のCD3+ T細胞におけるNR4A2遺伝子の発現は、病態の発症に関わらず変動しなかったが、CNSに浸潤したCD3+ T細胞ではNR4A2遺伝子の発現が病態の発症時に高値を示し、その後減少することがわかった。
[実験例3]
多発性硬化症(MS)の病態形成において、中枢神経領域に浸潤したIL-17産生性T細胞(Th17細胞)が病原性T細胞の本体であることが報告されている(Current Opinion in Immunology 2006, 18:349-356)。そこで、上述の脾臓細胞やCNS浸潤細胞において、IL-17が産生されているかどうかを調べた。
実験例2に記載の方法と同様に、EAE誘導後17日目にSPL細胞およびCNS浸潤単核細胞からCD3+ T細胞を分離した。その後、細胞表面のFcを抗CD16/32抗体(2.4G2)(BD Bioscience社製)でブロックし、抗CD4-PerCP抗体(L3T4; BD Pharmingen)で染色した。染色後、細胞をCytofix/Cytoperm溶液(TC11-18H10; BD Pharmingen)で洗浄・固定し、細胞膜を浸透化した後、細胞内サイトカインを抗IL-17-PE抗体(BD Pharmingen)で染色し、FACScaliber flow cytometer (BD bioscience)によりIL-17の産生を分析した。その結果を図3に示す。
図3に示すように、EAEの誘導によってNR4A2遺伝子の発現が変動しなかったSPL CD3+ T細胞においては、IL-17の産生がほとんどみられなかったが、EAEの誘導によってNR4A2遺伝子の発現が亢進したCNS浸潤CD3+ T細胞の多くはIL-17を産生していることが明らかになった。
[実験例4]
次に、NR4A2遺伝子の発現とIL-17産生との相関をレポーターアッセイにより解析した。
ヒトNR4A2 cDNAの全てのオープンリーディングフレーム(ORF)をPCRで増幅し、pcDNA4/HisMax vector (Invitrogen)のBamHI/XhoI siteに遺伝子導入した。なお、PCRでは、ベクター領域に相補的な配列を用い、フォーワードプライマーとして、BamHI認識サイトを含むプライマー5’-AGTCGGATCCCCTTGTGTTCAGGCGCAG-3’(配列番号6)を、リバースプライマーとして、XhoIサイトを含むプライマー5’-AGTCCTCGAGTTAGAAAGGTAAAGTGTCCAG-3’(配列番号7)をそれぞれ用いた。
また、レポーター遺伝子プラスミドとしては、IL-17、IL-2、またはIFN-γの転写開始部位の上流のDNA(IL-17:1125bp、IL-2:568、IFN-γ:538 bp)を含むフラグメントをpGL3-basic plasmids (Promega)に導入することにより作製した。なお、IL-17の転写開始部位の上流のDNAを含むフラグメントは、SacI部位を含むIL-17プロモーター領域に対するフォーワードプライマーとして、5’-ATGCGAGCTCGGATCTCAGGACAAACAGGTTC-3’(配列番号8)を、HindIII部位を含むIL-17プロモーターの領域に対するリバースプライマーとして、5’-ATGCAAGCTTGACTCACCACCAATGAGGTCTT-3’(配列番号9)をそれぞれ用いてPCRにより増幅することにより得た。また、IL-2およびIFN-γの転写開始部位の上流のDNAを含むフラグメントとしては、IL-2プロモーターのHindIIIフラグメント(-568〜+50)およびIFN-γプロモーターのXbaI-BamHIフラグメント(-538〜+64)をそれぞれ用いた(J Exp Med Vol.178 1483-1496, 1993)。
次に、10% FCS(ウシ胎児血清)、2mM L-グルタミン、100 U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM ピルビン酸ナトリウム、および50 μM β-メルカプトエタノール(complete medium)を添加したRPMI 1640培地に、マウスEL4細胞を懸濁した(1×107 cell/0.5 ml)。この細胞懸濁液0.5 mlに、IL-17、IL-2、またはIFN-γの転写開始部位の上流のDNAフラグメントを有するレポーター遺伝子プラスミド10μg、ウミシイタケルシフェラーゼプラスミド0.1μg、および、pcDNA4-NR4A2 10μgまたはpcDNA4-LacZ 10μgをそれぞれ加え、GenePulser electroporator II (Bio-Rad)を用いてDEAE(ジエチルアミノエチル)-デキストラン存在下で上記プラスミドをEL4細胞に導入した。6時間後、50 ng/ml PMAおよび1μg/ml イオノマイシンを添加してDNA導入細胞を刺激し、さらに18時間培養した。また、コントロールとして、PMAおよびイオノマイシンを加えないで各DNA導入細胞を24時間培養したものを準備した。
培養後、各細胞を回収し、1XPLB 50μlで細胞を溶解した後、Dual-Luciferase Reporter Assay System (Promega)によりルシフェラーゼ活性を測定し(Luminometer TD-20/20, Turner Designs)、ウミシイタケのルシフェラーゼ活性でノーマライズして標準偏差(S.D. values)を求めた(図4A)。
また、IL-17遺伝子の転写開始部位の上流のDNAフラグメントを有するレポーター遺伝子プラスミドを用い、pcDNA4-NR4A2またはpcDNA4-LacZの添加量(0, 4, 8, 12, 16, または20 μg)を変え、刺激をしない他は、上述の方法と同様に、ルシフェラーゼ活性を測定した(図4B)。
図4Aに示すように、NR4A2遺伝子導入細胞では、PMAおよびイオノマイシンの刺激の有無に関わらず、IL-17、IFN-γ、及びIL-2等の炎症性サイトカインの遺伝子のプロモーター領域を含むレポーター遺伝子の転写を活性化することがわかった。また、図4Bに示すように、刺激しなくてもpcDNA4-NR4A2の量を増加することによって、IL-17遺伝子のプロモーター領域を含むレポーター遺伝子の転写活性を増強できることがわかった。
[実験例5]
また、NR4A2タンパク質と感染の指標となるeGFPとを共発現するbicistronicレトロウイルスベクターを用いて、NR4A2遺伝子の発現とIL-17産生との相関を解析した。
Bgl II部位を含むフォーワードプライマー(5’-ATGCAGATCTATGGGGGGTTCTCATCATCA-3’:配列番号10)、および、上述のXho I部位を含むリバースプライマー(配列番号7)を用いて、ヒトNR4A2 cDNAのORFを、pMIG-Φ(pMIG-W bicistronic retrovirus vector; L. Van Parijis(Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Massachusetts, USA)から供与;図5A)のBamHI/XhoI部位に遺伝子導入し、pMIG-NR4A2を作製した。なお、図5A中の「LTR」はlong terminal repeatを、「IRES」はinternal ribosome entry siteを、「eGFP」はenhanced green fluorescence proteinをそれぞれ意味する。
次に、mouse CD4 T isolation kit (BD pharmingen)を用いたAUTOMACSにより、脾臓からマウスCD4 T細胞を精製した。その後、IL-2 (100 U/ml)を添加した完全培地において、抗CD3抗体(2C11)および抗CD28抗体(37.51)で24-48時間刺激した。この活性化したCD4 T細胞に、293T細胞にpMIG retroviral vector(pMIG-NR4A2またはpMIG-Φ)およびpCL-Eco Retrovirus Packaging Vectorをコトランスフェクションすることにより調製したレトロウイルスを、2回感染させた。その後、30 U/ml IL-2を含む完全培地で3日間培養し、CD4 T細胞を2μM モネンシンの存在下でPMA (20 ng/ml)およびイオノマイシン (1 mg/ml)で再び4時間刺激し、抗CD4-PerCP抗体、および、抗IL-17-PE抗体または抗IFN-γ-PE抗体 (XMG1.2; BD Pharmingen)を用いて細胞内サイトカインを検出した。それらの結果を図5Bおよび図5Cにそれぞれ示す。なお、図5Bおよび図5C中のR1およびR3はGFP- CD4 T細胞を、R2およびR4はGFP+ CD4 T cellsをそれぞれ示す。
図5Bおよび図5Cに示すように、NR4A2遺伝子を強制発現させてPMAおよびイオノマイシンで刺激すると、GFP陽性細胞ではIL-17およびIFN-γの産生が有意に亢進した(それぞれ10.3 %、31.1 %)が、GFP陰性細胞ではこれらの炎症性サイトカインの産生の亢進がほとんどみられなかった。従って、活性化CD4 T細胞においてNR4A2遺伝子を発現させることにより、IL-17およびIFN-γが産生されるようになる。
[実施例1]
本実施例では、ヒトNR4A2タンパク質が炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響を解析するため、まず、ヒトNR4A2遺伝子の発現を抑制することができるsiRNAをスクリーニングした。
10% FCS、2 mM L-グルタミン、100 U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン、2 mM ピルビン酸ナトリウム、および50μM β-メルカプトエタノールを添加したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)4 mlに、293T細胞(0.8×106 cells)を懸濁した後、Lipofectamine 2000 (Invitrogen)を用いてリポフェクション法により、候補のsiRNA(20, 50, 100 pmol)をpcDNA4-NR4A2(0.2 μg)とともに293T細胞に導入した。なお、コントロールとして、pcDNA4-NR4A2だけを導入したもの、siRNAおよびpcDNA4-NR4A2を導入していないものを準備した。24時間培養した後、実験例1に記載の方法に準じて、NR4A2遺伝子の発現レベルを定量RT-PCRにより測定し、NR4A2遺伝子の発現抑制に有用なsiRNAをスクリーニングした。
その結果、NR4A2遺伝子の発現抑制に有用な3つのsiRNA[siRNA-1のセンス配列:5’-GGACAGCAGUCUCCAUUAUU-3’(配列番号1)、siRNA-2のセンス配列:5’-GGUUCGCACAGACAGUUUAAUU-3’(配列番号2)、および、siRNA-3のセンス配列:5’-GGCGAACCCUGACUAUCAAAUU-3’(配列番号3)]を同定した(図6Aおよび図6B)。
次に、これらのsiRNAのうち最も効果が優れていたsiRNA-1を用いてNR4A2遺伝子の発現を抑制し、ヒト末梢血T細胞からのサイトカイン産生能やCD4陽性T細胞増殖に与える影響を調べた。
human CD4 T cell isolation kit (Milteniyi Biotech GmbH, Bergisch Gladbach, Germany)を用いて、AUTOMACS cell purification systemにより健常人PBMCからヒトCD4 T細胞を分離した。得られたCD4 T細胞を、200 pmol siRNA-1(siRNA)またはコントロールRNA[コントロールRNAのセンス配列:-UU-3’-オーバーハングを含む5’-CCGAACGUUAAUCCCGGAUAUU-3’(配列番号11)]とともに100 μl Nucleofector solution (Human T cell Nucleofector Kit; Amaxa Biosystems, Cologne, Germany)に懸濁し、Amaxa Nucleofector II apparatusを用いてヌクレオフェクトした。その後、完全培地にCD4 T細胞を移し、8時間培養した。その後、CD4 T細胞を抗CD3抗体(OKT-3)でさらに刺激した。なお、コントロールとして、抗CD3抗体(OKT-3)を含まない培地で培養した細胞を準備した。
48時間培養後、上清に産生されたIL-17およびIFN-γの量をELISA (Human IL-17 DuoSet; R&D Systems, Minneapolis, USA)またはCBA Human Th1/2 cytokine II kit (BD Pharmingen)により測定し、サイトカイン産生能の変化を定量解析した。また、培養後、CD4 T細胞を[3H]チミジン (1 μCi / well)の存在下でさらに16時間培養し、β-1205 counter (Pharmacia, Uppsala, Sweden)で放射能を測定することにより、細胞増殖の変化を定量解析した。それらの結果を図7に示す。
図7に示すように、NR4A2cDNAに特異的なsiRNAによりNR4A2遺伝子の発現を抑制することによって、抗CD3抗体の刺激によるIL-17産生、IFN-γ産生、およびCD4陽性T細胞増殖を有意に抑制できることがわかった。
[実施例2]
次に、MS患者由来末梢血T細胞にsiRNA-1(siRNA)を作用させてNR4A2遺伝子の発現を抑制することによって、各種サイトカイン産生量が減少するかどうかを調べた。
実施例1に記載の方法と同様に、健常人PBMCおよびMS患者PBMCからそれぞれ末梢血T細胞を単離し、siRNAまたはコントロールRNA(コントロール)とともにヌクレオフェクトした後培養し、CD4 T細胞を固定化抗CD3抗体(OKT-3)でさらに48時間刺激して、各種サイトカイン産生量(IFN-γ、TNFα、IL-10、IL-4、IL-2、IL-17等)を測定した。なお、TNFα、IL-10、IL-4、IL-2の量は、CBA Human Th1/2 cytokine II kit (BD Pharmingen)により定量した。それらの結果を図8および図9に示す。
図8および図9に示すように、健常人由来末梢血T細胞だけでなく、MS患者由来末梢血T細胞においても、siRNAを作用させることにより、IFN-γ、TNFα、IL-10、IL-4、IL-2、IL-17等のサイトカインの産生量を減少できることがわかった。特に、IL-17およびIL-10の産生量においては、MS患者由来末梢血T細胞にsiRNAを作用させることにより、健常人由来末梢血T細胞のレベルまで減少できることがわかった。
以上のことから、NR4A2遺伝子の発現とIL-17、IFN-γ、及びIL-2等の炎症性サイトカインの産生は正の相関を示すことが明らかとなり、NR4A2タンパク質が直接的あるいは間接的にこれらのサイトカイン遺伝子の発現制御に関わる可能性が示された。
本発明の一実施例において、MS患者と健常人におけるNR4A2遺伝子の発現レベルを調べた結果を示す図である。 本発明の一実施例において、EAEの疾病経過におけるSPL、dLN、またはCNS浸潤単核細胞由来のCD3+ T細胞におけるNR4A2遺伝子の発現の変化を調べた結果を示す図である。図2AはEAE誘導後の臨床スコアを、図2Bは、EAE誘導後0、9、15、および21日目にSPL、dLN、またはCNS浸潤単核細胞から単離した各CD3+ T細胞におけるNR4A2遺伝子の発現レベルを調べた結果を、それぞれ示す。 本発明の一実施例において、EAEの発症後にCNS浸潤T細胞またはSPL T細胞が産生するIL-17の変化量を調べた結果を示す図である。 本発明の一実施例において、NR4A2遺伝子の発現とIL-17産生との相関をレポーターアッセイにより解析した結果を示す図である。図4Aは、NR4A2遺伝子の発現による各サイトカイン遺伝子のプロモーター活性の誘導を調べた結果を、図4Bは、細胞に導入するプラスミド量を変化させた場合のIL-17遺伝子のプロモーター活性の誘導を調べた結果を、それぞれ示す。 本発明の一実施例において、NR4A2タンパク質とeGFPとを共発現するbicistronicレトロウイルスベクターを用いて、NR4A2遺伝子の発現とIL-17産生との相関を解析した結果を示す図である。図5AはpMIG-ΦとpMIG-NR4A2のベクター構築図を、図5BはNR4A2遺伝子の過剰発現後にCD4 T細胞で産生されるIL-17の変化を調べた結果を、図5CはNR4A2遺伝子の過剰発現後にCD4 T細胞で産生されるIFN-γの変化を調べた結果を、それぞれ示す。 本発明の一実施例において、ヒトNR4A2遺伝子の発現を抑制することができるsiRNAをスクリーニングした結果を示す図である。図6AはsiRNA1の導入量を変化させた場合のNR4A2遺伝子の発現レベルを調べた結果を、図6BはsiRNA2およびsiRNA3の導入量を変化させた場合のNR4A2遺伝子の発現レベルを調べた結果を、それぞれ示す。 本発明の一実施例において、siRNA1を用いて、ヒトNR4A2タンパク質が炎症性サイトカイン産生及び細胞増殖に及ぼす作用を調べた結果を示す図である。 本発明の一実施例において、siRNA1を用いて、ヒトNR4A2タンパク質がIFN-γ、TNFα、IL-10等のサイトカイン産生に及ぼす作用を調べた結果を示す図である。 本発明の一実施例において、siRNA1を用いて、ヒトNR4A2タンパク質がIL-4、IL-2、IL-17等のサイトカイン産生に及ぼす作用を調べた結果を示す図である。

Claims (16)

  1. IL-17産生T細胞によるIL-17の産生を抑制する物質をスクリーニングする方法であって、
    前記IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制することができる物質を同定する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法。
  2. 前記物質がIL-17に起因する炎症を改善することを特徴とする請求項1に記載のスクリーニング方法。
  3. 前記炎症が、自己免疫性関節炎、リウマチ様関節炎、接触型過敏症、遅延型過敏症、気道過敏症、多発性硬化症または自己免疫性脳炎であることを特徴とする請求項2に記載のスクリーニング方法。
  4. CD4陽性T細胞の増殖を抑制する物質をスクリーニングする方法であって、
    IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制することができる物質を同定する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法。
  5. 前記物質がNR4A2遺伝子の発現を抑制することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスクリーニング方法。
  6. 脊椎動物に対して被検物質を投与し、
    前記被検物質を投与した前記脊椎動物の前記IL-17産生T細胞におけるNR4A2遺伝子の発現量の変化を評価する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載のスクリーニング方法。
  7. IL-17に起因する炎症の治療剤であって、
    IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制する抑制物質を有効成分として含有することを特徴とする治療剤。
  8. 前記抑制物質が、NR4A2遺伝子の発現を抑制することを特徴とする請求項7に記載の治療剤。
  9. 前記抑制物質が、NR4A2遺伝子の発現を抑制するsiNAであることを特徴とする請求項7または8に記載の治療剤。
  10. 前記炎症が自己免疫性関節炎、リウマチ様関節炎、接触型過敏症、遅延型過敏症、気道過敏症、多発性硬化症または自己免疫性脳炎であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の治療剤。
  11. 細胞におけるIL17遺伝子の発現抑制剤であって、
    前記細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制する抑制物質を有効成分として含有することを特徴とする発現抑制剤。
  12. 前記抑制物質が、NR4A2遺伝子の発現を抑制することを特徴とする請求項11に記載の発現抑制剤。
  13. 前記抑制物質が、NR4A2遺伝子の発現を抑制するsiNAであることを特徴とする請求項11または12に記載の発現抑制剤。
  14. CD4陽性T細胞に対する細胞増殖抑制剤であって、
    IL-17産生T細胞においてNR4A2タンパク質の果たす機能を抑制する抑制物質を有効成分として含有することを特徴とする細胞増殖抑制剤。
  15. 前記抑制物質が、NR4A2遺伝子の発現を抑制することを特徴とする請求項14に記載の細胞増殖抑制剤。
  16. 前記抑制物質が、NR4A2遺伝子の発現を抑制するsiNAであることを特徴とする請求項14または15に記載の細胞増殖抑制剤。
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