JP2008211979A - ポリエステル化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酵素触媒を用いて多価カルボン酸と多価ヒドロキシ化合物とを反応させることによりポリエステル化合物を製造する方法において、反応速度の低下、或いは停止を抑制しつつ、短時間で、高い反応転化率でポリエステル化合物を製造する方法の提供。
【解決手段】加水分解酵素の存在下、密閉した系内で減圧しつつ不活性気体を供給しながら、小型攪拌翼を使用し、溶剤の非存在下に多価カルボン酸と多価ヒドロキシル化合物とを反応させることによるポリエステル化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、加水分解酵素を触媒として多価カルボン酸と多価ヒドロキシル化合物とをエステル化反応させることによるポリエステル化合物の製造において、小型翼を有する攪拌式反応装置を用いることを特徴とするポリエステル化合物の製造方法に関する。
多価カルボン酸と多価ヒドロキシル化合物、またはヒドロキシカルボン酸をモノマーユニットとしてなるポリエステルは、それ単独として成形材料として用いられているだけでなく、ウレタン樹脂や塗料樹脂の原料として用いられている。
通常のポリエステル製造方法は、エステル化触媒としてパラトルエンスルホン酸などの有機酸、硫酸や塩酸などの無機酸、ナトリウムメトキシドなどの塩基、テトラアルコキシチタンや無機スズなどルイス酸系触媒等が使用されている。しかし、これらの触媒を用いてもエステル化反応は比較的高い反応温度を要し、かつ反応終了後には必要に応じて触媒の除去が必要であった。特に、ポリエステルの製造では、典型的には、200℃以上の高温で長時間反応する必要があった。
従来のエステル化触媒を用いる製造方法では、高温で長時間反応を行う必要があり、また、反応の途中で、反応速度の低下、或いは反応の停止等が起こる問題点があった。
このような問題点を解決する試みとして、近年、生体触媒である加水分解酵素を利用して低温でポリエステル化合物を合成する試みが行われてきた。例えば、
には、無溶媒下で触媒としてリパーゼ(加水分解酵素の一種)を用いてジカルボン酸(またはその誘導体)とグリコールからポリエステルの製造方法が開示されている。本文献には、ジカルボン酸とグリコールの酵素触媒反応により生成する縮合水を減圧下脱水する方法が記載されている。この方法では、反応時の減圧度を10mbar(1000Pa)ないし5mbar(500Pa)の比較的高減圧条件下で減圧脱水操作を行っているが、エステル化反応が途中で停止するか、反応を完結しようとすると非常に長時間が必要である等の問題点がある。
一般に、酵素触媒を利用したポリエステル化合物の製造においては、反応開始から長時間にわたり、固体である多価カルボン酸が多価ヒドロキシル化合物に分散したスラリー状態で反応が進行する。続いて、反応の進行に伴い、反応系は均一な液体状態へと変化し、更なる反応の進行に伴い粘度の上昇による粘度変化を伴う。
また、固定化酵素触媒を用いた反応においては、反応開始から終了まで、固体−液体の不均質での反応となるために、大型翼を用いて分散状態を良好に維持する必要がある。
こうした状況に鑑み、低粘度から中高粘度までの粘度変化を伴う酵素反応に対応するため、大型翼の一種であるフルゾーン翼の使用が報告されている(
および )。
また、
には、粘度が著しく異なり、混合しにくい有機溶媒と糖類とを良好に混合撹拌し、糖類に酵素を効率良く反応させることを目的として、ゲート翼を用いた酵素触媒反応が記載されている。
には、固体と液体の二相をできるだけ均一に混合するために、複数の櫛状翼を組み合わせる大型翼の使用が記載されている。本撹拌翼は、局所的な剪断力の発生を抑えつつ、上下方向の流れを発生させる特徴を有する。
一方、
には、反応で生成する縮合水を除去するために、密閉した系内で減圧しつつ不活性気体を供給すると、酵素触媒反応のような比較的低温条件化においても高い反応転化率でポリエステル化合物を製造できるとの記載がある。しかしながら、用いられる撹拌翼の反応に及ぼす効果についての記載は一切ない。
また、小型撹拌翼の効果については、蒸留時に使用される場合について、以下の文献がある。
には、蒸留等の操作において、反応系内から有機溶剤を効率よく除去するのに適した攪拌翼として、タービン翼やコンケーブ翼が記載されている。
および には、同様の目的に使用される撹拌翼として、関西化学機械製作株式会社から市販されているウォールウェッター翼などが記載されている。以上のように、加水分解酵素の存在下に、多価カルボン酸と多価ヒドロキシ化合物とを反応させることによりポリエステル化合物を製造する工程において、本発明に係る小型撹拌翼が、反応により生成する縮合水の除去に極めて優れた効果を発揮し、ポリエステルの製造において、特に好ましいことは、これまで全く知られていなかった。
国際公開第94/12652号 特開平11−28096号 特開2003−265941号 特開2005−224143号 特開2003−210903号 特開平6−335627号 特開平11−235522号 徳岡洋由、神鋼パンテック技報、第38巻、第1号、第11−14頁、1994年 高田一貴、岡本幸道、菊池雅彦、伊藤久善、ながれ、第22巻、第201−207頁、2003年
本発明によって解決しようとする課題は、酵素触媒を用いて多価カルボン酸と多価ヒドロキシ化合物とを反応させることによりポリエステル化合物を製造する方法において、反応速度の低下、或いは停止を抑制しつつ、短時間で、高い反応転化率でポリエステル化合物を製造する方法を提供することである。
一般的なポリエステル化合物の製造において、モノマー転化率を向上させるためには反応によって生成する副生成物を除去する操作は重要な鍵となる。工業的に安価な原料である多価カルボン酸と多価ヒドロキシル化合物から直接的にポリエステル化合物を製造しようとした場合には原料(多価カルボン酸と多価ヒドロキシル化合物)と生成物(ポリエステル化合物と縮合水)との間に平衡状態が存在するために、縮合水を除去することは非常に重要な操作となる。
このような観点から、本発明者らは、反応で生成する縮合水を可能な限り、反応系外に除去することが、ポリエステル化合物を製造する工程において、反応の転化率向上に効果的であると考えた。
そして、酵素触媒を用いたポリエステル製造工程において生成する縮合水の除去について、従来全く知見のなかった撹拌翼の効果について着目し、検討を行ったところ、小型攪拌翼を使用し、かつ、密閉した系内で減圧しつつ不活性気体を供給すると、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、加水分解酵素の存在下、密閉した系内で減圧しつつ不活性気体を供給しながら、小型攪拌翼を使用し、溶剤の非存在下に多価カルボン酸と多価ヒドロキシル化合物とを反応させることを特徴とするポリエステル化合物の製造方法を提供するものである。
本発明のエステル化合物の製造方法により、反応速度の低下、或いは停止を抑制しつつ、短時間で、高い反応転化率でポリエステル化合物を製造することが可能となる。
次に、本発明の製造方法をさらに詳しく説明する。
本発明は、触媒として加水分解酵素を用い、カルボン酸とヒドロキシ化合物とを反応させてエステル化合物を製造する工程において、小型攪拌翼を有する反応装置にて、エステル化反応の進行によって生じる縮合水を、減圧下に不活性気体を供給しながら除去するものである。
撹拌翼について以下に説明する。
フルゾーン翼やマックスブレンド翼のような大型撹拌翼を用いた場合、翼面積が大きいために回転によって生じる翼の裏面側の負圧状態の領域が広くなるため、発生した縮合水の気泡は負圧領域に捕獲されて液体表面への移動が困難となり、反応系内からの除去効率が低下する。
これに対し、小型撹拌翼を用いた場合には、翼面積が小さいために回転によって生じる翼の裏面側の負圧状態の領域が狭くなり、気泡の負圧領域への捕獲が低減できるため縮合水の除去効率を向上させることができる。
かかる小型攪拌翼としては、例えば、タービン翼、コンケーブ翼、プロペラ、ファウドラー型羽根およびブルマージン型羽根などの撹拌翼を挙げることができる。特に、反応副生成物である縮合水を効率的に除去するためには、板状のブレードを撹拌軸を中心として放射状となるように直接撹拌軸に取り付けた一例を図1に示すファン・タービン翼(平羽根タービン翼)が好ましい。また、撹拌軸と円盤とのなす角が直角となるように撹拌軸に円盤を取り付け、その円盤に板状のブレードを撹拌軸を中心として放射状となるように取り付けた一例を図2に示すディスクタービン翼(平羽根ディスクタービン翼)も好ましく用いることができる。
これらの撹拌翼におけるブレードと撹拌軸を垂直に切る面とのなす角度は、反応系内の上下循環を行うことにより効率的に縮合水の除去を行うことが可能となるように適宜選択することができる。当該ブレードと撹拌軸を垂直に切る面とのなす角度が直角でない撹拌翼としては、一例を図3に示すピッチド・ファン・タービン翼またはピッチド・ディスクタービン翼を挙げることができる。
本発明におけるポリエステル合成は低温反応である特徴を有しているために、一般的には高温で行われるポリエステル合成に比べ反応系内の粘度が高くなる。そのため、ファン・タービン翼のうち、攪拌動力の低減化を目的として、平板状のブレードを回転方向に対し後退するように湾曲させた形状の湾曲平羽根タービン翼を用いても良い。また、ブレードの回転によって生じる負圧領域を低減させ縮合水の除去効率を向上させる目的で、回転方向に凹状の形状となる半円形状のブレードを取り付けた一例を図4に示すコンケーブ翼を用いることもできる。
小型攪拌翼に取り付けるブレードの枚数は2〜8枚、好ましくは4〜6枚である。また、必要に応じて反応槽内壁に邪魔板(バッフル)などを設けても良い。
小型撹拌翼の翼径は反応槽内径の30%〜90%の長さにすることが一般的である。翼径がこれより小さい場合には十分な流動が得られないために混合不十分となり、また翼径が大きい場合には反応槽内壁に設ける邪魔板に接触したり、反応混合物の流路を狭めることによって混合が不十分になるためである。
反応器の容量、液量などに合わせて単独または複種類の攪拌翼を1個ないし複数個用いても良い。通常、タービン翼のような小型撹拌翼は、翼径の10%〜100%にあたる距離を反応槽底部からとって、まず、第一段目の撹拌翼を設置し、反応液の液面がこれより高くなる場合には、この一段目の撹拌翼設置位置から翼径の10%〜100%に相当する長さ分を離して設置、更に液面が高い場合にはこれと同じ考え方で上部方向に多段にしていくのが一般的である。
かかる減圧装置としては、一般に用いられている減圧装置を使用することができる。例えば、ダイヤフラム式減圧ポンプ、油回転減圧ポンプ、油拡散減圧ポンプ、ドライポンプ、ターボ分子ポンプ、水流アスピレーター等が挙げられる。水流アスピレーターを用いる場合には、減圧装置の構造上、発生する飽和水蒸気により反応系内の水蒸気圧が飽和し脱水能力が低下することがあるので、減圧装置と反応器の間に(水蒸気)トラップを用いることが好ましい。
本発明に有効な減圧度は、酵素触媒反応における反応温度、使用するモノマーの沸点等により適宜調整することができるが、10〜80000Paの範囲であることが好ましい。
本発明の製造方法は、縮合水の脱水工程を減圧下で行いながら、かつ不活性気体を密閉した反応系内に供給することを特徴としている。不活性気体を反応系内へ供給することで反応系中の水分量を通常の減圧脱水方法に比べ効率的に除去することが可能となる。このことにより、エステル化反応の平衡を大きく反応生成側に進行させることが可能となり、高い反応転化率でのエステル化反応が可能となる。
前記不活性気体は、エステル化反応に用いる原料および生成物であるエステル化合物、および酵素に対して不活性であれば特に制限されない。通常窒素ガス、アルゴンガス、空気などが挙げられる。これらの不活性気体は、乾燥状態で、あるいは前処理として必要であれば乾燥塔を通じて供給することが好ましい。
不活性気体の供給量としては、0.03slm/l以上であることが好ましい。この場合の「slm/l」とは、反応系内の容量(リットル)当たりの、1気圧、0℃での1分間におけるガス流量をリットルで表示した単位を意味する。
不活性気体の供給量の上限は、減圧装置の排気量および反応系内の減圧度によって規定されるが、不活性気体の供給量が大きければ大きいほど、前記効果を発揮することができる。
不活性気体の供給は、例えばニードルバルブ、サーマルマスフローコントローラー等を用いて制御することが好ましい。
本発明の製造方法において、不活性気体は、エステル化反応の開始時より供給しても、エステル化反応の途中に供給してもよい。
エステル化反応の初期過程では、原料であるカルボン酸とヒドロキシ化合物の含水量が少なく、エステル化反応における平衡が大きく生成物側へ偏っている、つまりエステル化反応の進行に有利な条件であるために大きな脱水を必要としない。このため不活性気体は、エステル化反応の後期に反応系内へ供給することが好ましい。また一方、不活性気体を供給することにより反応初期における反応速度の低下を抑制できる点からは、反応の開始時より反応系内に供給することが好ましい。
本発明の製造方法における反応温度は、酵素触媒反応に適した反応温度を適宜選択することができる。かかる反応温度は、用いる酵素の熱的安定性などによって異なるが、通常0〜100℃であり、好ましくは30〜80℃である。一般にこの温度範囲であれば反応に用いる原料や生成物の沸点や融点によって最適の反応温度を設定することができる。
本発明の製造方法における反応時間は、用いる酵素及び使用量、反応条件、使用原料等により異なり、適宜選択することができる。
本発明を実施するために好ましい反応装置(反応釜)の略図を図5に示した。この反応釜には小型撹拌翼が設置してある。更には、減圧操作を行いながら、かつ不活性気体を反応装置内へ供給することが可能である。この反応装置を用いることにより、エステル化反応の進行によって生じた縮合水を効率的に除去することができるため酵素触媒を用いたポリエステルの製造を効率よく行うことが出来る。
次に、図5の反応装置を用いてエステル化合物を製造する方法をさらに具体的に説明する。
反応釜1は、内部に小型攪拌翼2が取り付けられている。また反応釜1の一方の側管には、減圧操作に関わる装置(減圧装置)3〜7が取り付けられ、またもう一方の側管には、不活性気体導入のための装置(不活性ガス供給装置)8および9が取り付けられている。
多価カルボン酸と多価ヒドロキシ化合物および酵素をまず反応釜1に入れ、水浴や油浴、マントルヒーター、あるいはジャケットを介して加温し、さらに小型攪拌翼2にて攪拌する。この後、前記減圧装置3〜7で反応釜1内を減圧し、前記不活性ガス供給装置8及び9で不活性気体を反応釜1内に供給する。減圧度は減圧制御コントローラー6により設定された減圧度に制御される。また不活性気体はガス流量制御コントローラー9にて設定されたガス量が反応釜1へ供給される。このように減圧装置3〜7および不活性ガス供給装置8および9を備える反応装置内で多価カルボン酸と多価ヒドロキシ化合物とを反応させることにより、効率的にポリエステル化合物を製造することが可能になる。
本発明の製造方法は、加水分解酵素を触媒として用いてエステル化反応を行うことを特徴とするものであり、分子量分布が狭いポリエステルを得ることができる等の点で、ポリエステルを製造するのに好ましい方法である。
かかる加水分解酵素は、エステル化反応を触媒するものであれば特に制限はないが、特に、カルボキシル基(例えば、エステル結合やペプチド結合)に作用するものが、酵素反応機構上好ましい。かかる加水分解酵素としては、例えば、国際生化学・分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology(IUBMB))によって定義される酵素番号(Enzyme Commission Number)EC3.1群に分類されるカルボキシエステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、モノアシルグリセロールリパーゼ、ラクトナーゼ、リポプロテインリパーゼ等のエステル加水分解酵素類、EC3.4群に分類されるアミノペプチダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、ズブチリシン等のペプチド結合に作用する加水分解酵素類等を挙げることができる。
上記の加水分解酵素のうち、EC3.1群に分類されるエステル加水分解酵素類は、酵素本来の機能であるエステル加水分解反応の触媒作用を行うだけでなく、エステル加水分解反応の逆反応である種々のエステル化反応をも効率よく行う点、反応効率および収率も良い点からエステル加水分解酵素を用いることが好ましい。
エステル加水分解酵素としては、次の酵素を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
すなわち、エステル加水分解酵素の一種であるリパーゼとして、例えばアスペルギルス(Aspergillus oryzae)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、バシラス(Bacillus)属、カンジダ(Candida)属、クロモバクター(Chromobacter)属、フザリウム(Fusarium)属、フミコラ(Humicola)属、ハイフォザイマ(Hyphozyma)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾムーコル(Rhizomucor)属、リゾプス(Rhizopus)属、またはテルモマイセス(Thermomyces)属の微生物から得られるリパーゼが挙げられる。更に、植物種子から得られるリパーゼ、動物組織から得られるリパーゼ、さらにパンクレアチン、ステアプシン等を挙げることができる。
またエステル加水分解酵素の一種であるクチナーゼとして、例えばアスペルギルス(Aspergillus)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、アルテルナリア(Alternaria)属、フザリウム(Fusarium)属、ヘルミントスポルム(Helminthosporum)属、フミコラ(Humicola)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾクトニア(Rhizoctonia)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、またはウロクラジウム(Ulocladium)属の微生物から得られるものが挙げられる。
本発明のエステル化合物の製造方法においては、酵素の安定化や反応後の回収を容易にするために、公知の方法で固定化した酵素を用いることも可能である。
一般に、酵素触媒は、反応中の熱履歴やグリコール、酸などの影響により徐々に失活する。酵素触媒を用いたポリエステル製造においては、反応によって生成する縮合水との接触による失活や高粘度のポリエステルを攪拌するときに生じる攪拌応力に起因した失活も起きる。固定化酵素を用いた場合においても、上記の失活要因以外に固定化酵素と攪拌翼の衝突による微粉末化などが起きる。このような酵素の失活や固定化酵素の微粉末化は、酵素触媒の回収・再利用において酵素触媒の寿命が短くなり経済性を損なう。
しかしながら、本発明による小型撹拌翼を用いた場合、反応により生成する縮合水の除去に極めて優れるため、反応速度の低下を抑制しつつ短時間でポリエステルを製造することが可能となり、酵素の失活を抑制することができる。また、小型攪拌翼を用いることから、固定化酵素と攪拌翼の衝突による粉砕化を最小限に抑えることで酵素触媒の回収・再利用を容易にし、酵素触媒の使用回数を伸ばすことができるなどの効果を有する。
本発明に用いる多価カルボン酸は、特に限定されず、種々の多価カルボン酸を使用することができる。例えば脂肪族多価カルボン酸(具体的には、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの炭素原子数が2〜20の飽和多価カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和多価カルボン酸)、脂環族多価カルボン酸(シクロブタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸など)、芳香族多価カルボン酸(フタル酸、イソフタル酸など)等が挙げられる。
本発明に用いる多価ヒドロキシル化合物は、特に限定されず、種々の多価ヒドロキシ化合物を使用することができる。2価のヒドロキシル化合物としては、例えばエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、1、4−ブタンジオール、2、2−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、2−メチルー1、3プロパンジオール、3−メチルー1、5−ヘプタンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどが挙げられる。また3価のヒドロキシル化合物としては、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられ、4価のヒドロキシ化合物としては、ペンタエリスリトールが挙げられ、その他の多価ヒドロキシ化合物として種々の糖類が挙げられる。
また、多価カルボン酸又は多価ヒドロキシ化合物の代わりに、一分子中にカルボキシル基とヒドロキシル基とを有する化合物を用いることもできる。一分子中にカルボキシル基とヒドロキシル基を有する化合物としては、例えばグリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、クエン酸、リンゴ酸などが挙げられる。
以下、本発明を実施例にて説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実施例1)
三方コック(一方は、縮合水トラップを介して減圧ポンプと、他方は減圧ゲージと結合している)および不活性気体導入管(片側はガス流量制御コントローラーに結合している)を取り付けた四ツ口セパラブルフラスコ(反応器容量0.3リットル)に、
アジピン酸 146.1g (1.00mol)
1、4−ブタンジオール 100.6g (1.116mol)
ノボザイム435 (Candida antarctica由来のリパーゼを多孔質アクリル系樹脂上に固定化した固定化リパーゼ ノボザイムス社製、商標) 2.5g (モノマー全量に対し1重量%)
を入れ、油浴にて60℃に加温した。湾曲平羽根タービン型小型攪拌翼1個を取り付けた機械式攪拌器を用い200rpmで攪拌を行った。反応開始より1時間後、反応系内を3000Paに減圧した。反応開始より6時間後、不活性気体として塩化カルシウム管を通じて乾燥した空気を0.10slm(0.33slm/l)で供給した。酸価(AN)による反応追跡を行いながら反応開始より28時間反応させた。このときのポリエステルの酸価(AN)は0.47、反応系内の水分量は265ppmであった。反応系内の減圧および空気の吹き込みを停止し、得られた粘調な液体を200メッシュ金網により固定化酵素を濾別した。室温にて白色ワックス状ポリエステル樹脂が得られた。
(実施例2)
実施例1と同様の反応装置を用い、酵素触媒としてクリプトコッカス(Cryptococcus sp.)由来の固定化クチナーゼを用いて反応を行った。反応開始より28時間後のポリエステルの酸価(AN)は0.58、反応系内の水分量は190ppmであった。
(比較例1)
実施例1で用いた小型攪拌翼の代わりとして大型攪拌翼であるマックスブレンド翼(住友重機械工業株式会社製、商標)を用いた以外は全く同様の方法にて反応を行った。28時間後の反応系内の水分量は1795ppmであった。このときの酸価(AN)は8.32であった。
(実施例3)
実施例1と同様の反応装置(ただし、反応器容量2リットル)に、
アジピン酸 981.9g (6.72mol)
ジエチレングリコール 746.5g (7.03mol)
グリセリン 32.6g (0.35mol)
ノボザイム435 35.2g (モノマー全量に対し2重量%)
を入れ、油浴にて60℃に加温した。湾曲平羽根タービン型小型攪拌翼を一段目と三段目に設置し、二段目には平羽根ディスクタービン翼を設置し、合計で3個の小型撹拌翼を取り付けた機械式攪拌器を用い300rpmで攪拌を行った。30分後、反応系内を徐々に減圧し、減圧開始から1時間後に2500Paに達した。不活性気体として窒素を0.10slm(0.05slm/l)で供給した。反応開始より1時間経過後から脱水が顕著に観測された。反応開始より9.5時間後、窒素供給量を0.25slm(0.13slm/l)に増やした。酸価(AN)による反応追跡を行いながら反応開始より52時間反応させた。このときのポリエステルの酸価(AN)0.85、反応系内の水分量は220ppmであった。反応系内の減圧および窒素の吹き込みを停止し、得られた粘調な液体を200メッシュ金網により固定化酵素を濾別した。室温にて粘稠な液状ポリエステル樹脂が得られた。
(比較例2)
実施例2で用いた小型攪拌翼の代わりとして大型攪拌翼であるフルゾーン翼(神鋼パンテック株式会社製、商標)および4枚のバッフル翼(邪魔板)を用い、攪拌翼の回転数を250rpmで攪拌を行った以外は全く同様の方法にて反応を行った。56時間後の反応系内の水分量は460ppmであった。このときの酸価(AN)は1.47であった。さらに16時間(反応開始より72時間)反応を継続し、酸価(AN)0.95のポリエステルが得られた。このときの反応系内の水分量は420ppmであった。
(比較例3)
実施例2で用いた小型攪拌翼の代わりとしてウォールウェッター翼(関西化学機械製作株式会社製、商標)を用い、攪拌翼の回転数を250ppmで行った以外は全く同様の方法にて反応を行った。52時間後の反応系内の水分量は370ppmであった。このときの酸価(AN)は1.21であった。
実施例1〜2および比較例1における酸価(AN)による反応追跡結果を図6に示す。
図6から明らかであるように、実施例1、2において、反応速度の低下が観測されなかった。また、得られたポリエステルの酸価(AN)も1以下であり高い転化率であることが示された。一方、比較例1では反応開始より15時間あたりより反応速度の低下が観測され、転化率も低い結果であった。
実施例1〜2および比較例1における反応系内水分量による反応追跡結果を図7に示す。図7より反応速度は反応初期の反応系内水分量は大きな影響を受けず、反応後半における反応系内水分量に影響を受けていることが明らかである。また、反応中の酸価(AN)と反応系内水分量の相関図を図8に示す。図8に図示した曲線は実施条件下における1、4−ブタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルの熱力学的平衡曲線(このときの平衡定数Kは10〜20と見積もられる)を表す。すなわち、酵素触媒反応における反応状態は、図8中の曲線の右側の領域においてのみ存在することができる。図8より、実施例1〜2では反応系内から反応の進行によって生成する縮合水が小型撹拌翼を用いることで効率よく除去され、高い転化率で反応が進行していることを示している。一方、比較例1では大型撹拌翼を用いているために縮合水の除去効率が低下し、反応が平衡状態に達しているために反応速度の低下および反応転化率の低下が起きていることが明らかである。
以上の結果より、実施例で示したように小型撹拌翼を用いることで反応系内より効率よく縮合水を除去でき、反応速度の低下なく高い転化率でポリエステルを製造することが可能となる。
本発明に用いられるファン・タービン翼の一例を模式的に示す図面である。 本発明に用いられるディスクタービン翼の一例を模式的に示す図面である。 本発明に用いられるピッチド・ディスクタービン翼の一例を模式的に示す図面である。 本発明に用いられるコンケーブ翼の一例を模式的に示す図面である。 本発明を実施するための好ましい反応器の略図である。 実施例1、2および比較例1に記載した反応例における酸価(AN)と反応時間との関係を示す図である。 実施例1、2および比較例1に記載した反応例における反応系内水分量と反応時間との関係を示す図である。 実施例1、2および比較例1に記載した反応例における酸価(AN)と反応系内水分量との関係を示す図である。
符号の説明
1 反応槽
2 小型攪拌翼
3 三方コックまたは三方バルブ
4 減圧ゲージ
5 トラップ
6 減圧制御コントローラー
7 減圧ポンプ
8 不活性気体導入管
9 ガス流量制御コントローラー

Claims (4)

  1. ファン・タービン翼、ディスクタービン翼およびコンケーブ翼からなる群から選ばれる1以上の小型撹拌翼を有する反応器を用い、加水分解酵素の存在下、密閉した系内で減圧しつつ不活性気体を供給しながら、溶剤の非存在下に多価カルボン酸と多価ヒドロキシル化合物とを反応させることを特徴とするポリエステル化合物の製造方法。
  2. 前記加水分解酵素が、エステル加水分解酵素である請求項1記載のエステル化合物の製造方法。
  3. 前記エステル加水分解酵素が、リパーゼである請求項2に記載のポリエステル化合物の製造方法。
  4. 前記エステル加水分解酵素が、クチナーゼである請求項2に記載のポリエステル化合物の製造方法。
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