JP2008197852A - 塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置、解析システムおよび記録媒体 - Google Patents

塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置、解析システムおよび記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】圧延、押出し、引抜き、鍛造、プレス加工などの主に金属材料の塑性加工プロセスにおいて、被加工材の着目部位の加工集合組織など材料組織の発展を迅速に予測できる装置を提供する。
【解決手段】塑性加工における被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段2、変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに収束条件を満たす変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段3、着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段4、変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分から結晶塑性モデルの境界条件を生成する手段5、境界条件に基づき結晶塑性モデルの解析を実施する手段6、所望により結晶塑性モデルの解析結果から組織状態を推定する手段7、所望によりデータの入力手段1および/または解析結果の出力手段8、から構成される塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧延、押出し、引抜き、鍛造、プレス加工などの主に金属材料の塑性加工プロセスにおいて、変形解析により被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得した後、当該変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴に基づき結晶塑性解析を行うことにより、加工集合組織などの組織の発展を迅速に予測できる装置に関する。
自動車や家庭用電化製品などを構成する高強度部品の多くは、圧延、押出し、引抜きなどの1次加工による板や棒・線・管などの金属材料から切り出された素材に鍛造、プレス加工などの2次加工で塑性変形(永久変形)を付与する塑性加工プロセスにより製造される。
塑性加工プロセスは、ロールや金型などの工具の間で素材を圧下して流動させながら工具の隙間に強制的に閉じ込めることにより素材を工具に馴染ませて形状を転写するので、短時間に成形できる特徴を活かして大量生産に適用されてきた。
また、塑性加工プロセスの多くは金属材料などの素材が静水圧応力を受けながら延伸されるので、製品が鍛錬効果により強靭化される特徴がある。そのため塑性加工製品は自動車などの足回り部品やエンジン部品などの強度と靭性が要求される重要保安部品に多く利用されている。
さらに、代表的な塑性加工プロセスである車体外板の板プレス成形では、近年ハイテンと呼称される高張力鋼板が用いられるようになり、部品の比強度向上による車体の軽量化を通じて、省エネルギー化の有効な手法として注目されている。
このように、塑性加工プロセスでは形状の造り込み機能だけでなく、材質特性の造り込み機能が重要視されつつある。ものづくりの底辺を支える塑性加工プロセスは、’形を作りこむ技術(創形技術)’と’材質を作りこむ技術(創質技術)’の両輪を回しながら、時代の要請に応えるべく技術の高度化が図られている。
その課題の一つとして、本発明の対象とする塑性加工プロセスのCAEによる材質予測技術が挙げられる。以下に塑性加工プロセスのCAEと材質予測技術の現状について概観する。
21世紀に入って世界的なグローバル競争化が顕著になり、業界の優勝劣敗が明確になってきた。競争の激化とともに製品寿命が短縮化される傾向にあり、市場で勝ち組と認識された企業は市場動向に適する製品を短期間に企画、製造、販売できる生産システムを確立している場合が多い。
製造業では、いわゆるコンカレントエンジニアリング、アジルエンジニアリングなどと呼ばれるように企画、設計、製品開発、プロセス開発、製造などを従来の逐次的なシステムから並列処理性のより高いシステムへの転換が行われた。その特徴は急速に普及した情報通信技術(IT技術)を背景にCAD/CAM/CAE/CATなどの一連の計算機援用技術が開発され適用されたことである。このような技術的な成果により、例えば自動車の新車開発期間は一昔前では3〜4年程度であったが、最近では1年程度にまで短縮されるようになった。
CAE(Computer
Aided Engineering)では3次元CADデータを利用して、各種工程の計算機シミュレーションが迅速に実施されるようになった。これらのシミュレーションの結果は過去の実験結果と比較されてプログラムの改良や計算条件の合わせ込みが行われた。また多くの知見がデータベースに蓄積されて有効に利用できるようになったため、シミュレーションの予測精度が格段に向上した。そして従来手間と時間と設備などのリソースを投入して行っていた試作の多くをCAEによる計算機シミュレーションで代替できるようになった。
創形技術としての塑性加工プロセスの変形シミュレーションでは、設計で仮定したプロセス条件で狙った製品形状を造り込むことができるか否か、形状不良や割れなどの欠陥発生が生じないかなどについて、主に有限要素法(FEM)による材料の変形解析を繰り返すことで検証できるようになった。そのためCAEにより机上で工程条件の最適化が実施できるようになった。
例えば設計したCADの形状データからCAEデータへの変換を行うことにより迅速に金型の計算モデルを作成する。別途作成した被加工材のモデルに対して所定の境界条件を適用して有限要素法などのCAEでシミュレーションを行う。そして製品の形状や変形状態、金型への負荷などを予測してポストプロセッサーなどで図形表示することにより迅速な評価と判断を行う。
シミュレーションにおいて形状不良の発生が予測された場合には、対策として金型モデルの形状を一部変更して再度シミュレーションを行うことにより、対策の効果を把握することができる。同様に金型への局部的な負荷、例えば金型と材料間の面圧と相対すべり速度の両者が高い部分は型の損耗が激しいことが経験的に予想されるため型寿命に関する対策が必要になる。そこで型表面の角部の面取りや素材の粗地の変更など設計変更を行い、これに基づき金型モデルや素材モデルを修正変更して再度シミュレーションを行うことにより、設計変更の効果を知ることができる。
このように計算機シミュレーションで最適化した成形条件で金型を作成し実際に成形を行い、予測結果と実験結果を比較することにより、シミュレーションの予測精度を検証する。そのためシミュレーションによる最適設計では、不具合の発生が少ない。たとえ不具合が発生しても金型を廃棄して設計し直すことは殆ど無く、金型の一部を手直しする程度で対策ができるようである。また、この対策の知見をデータベースに登録することにより、次回からのシミュレーションに反映できるので、形状や工具負荷の予測精度はますます向上する。
このように材料の変形シミュレーションにより製品形状の造り込みが十分な精度で予測できるようになり、時間とコストのかかる試作をかなり削減できるようになった。
しかし、創質技術としての塑性加工プロセスの材質予測シミュレーションは、変形解析をベースに構築するのでシステムの複雑化が避けられずシミュレーションツールの完成度が一般に不足しており、また予測精度も低いようである。そのため現状の材質予測シミュレーションでは、製品の機械的特性を保証するための試作を完全には省略出来ない問題があった。
しかし、安価で高性能な計算機の普及にともない、マクロスケールの塑性加工CAEとミクロスケールの材質予測技術の両者を関連付けるマルチスケール解析が実施されるようになり、材質予測シミュレーションの精度向上の可能性が出てきた。
図19は代表的な塑性加工プロセスの解析システムを示す説明図で、図19a)はマクロスケールとミクロスケールを直接解析するマルチスケール(multi scale)解析、図19b)は従来実施されているマクロスケールを直接解析するシングルスケール(single scale)解析である。
図19b)のシングルスケール解析では多くの実験結果から変形中の材料の応力とひずみの関係を複雑な構成関係式で近似してマクロな変形を予測する。そのため、マクロな製品の寸法形状の製造可否の判断を効率良く行うことが可能になった。しかし、製品の材料組織に大きく依存する機械的特性に関しては、材料組織を直接解析で予測出来ないので信頼性が低く、そのため実験や試作を実施しなければならなかった。
図19a)のマルチスケール解析は図19b)のシングルスケール解析をベースにさらにミクロ変形解析を追加してミクロ組織を直接予測できるようにしたものである。そのため、ミクロ組織から製品の機械特性を予測して製品の製造可否を判断できる。このシステムの特徴として材料の応力とひずみの関係である構成関係として比較的単純な単結晶材料の結晶塑性構成関係をベースにしているので、図19b)の シングルスケール解析に比べて取り扱いが単純である。但し、ミクロ組織の発展を考慮するためにマクロ変形解析とミクロ変形解析を図19a)の矢印で構成される閉ループで示すように練成して取り扱う必要が生じた。
創質技術としての塑性加工プロセスの材質予測シミュレーションを実施する際に、マルチスケール解析とシングルスケール解析の特徴を詳細に把握する必要がある。
塑性加工のCAEについて非特許文献1後藤氏の展望『塑性力学21世紀への展望』に開示されている。’塑性’の階層構造に着目して図20の模式図を示し、通常のマクロスコピックな塑性力学に基づく上記の変形シミュレーションが大略1mmオーダー以上の寸法範囲での現象を対象にして構築されてきた。また、メゾスコピック塑性の領域である結晶組織のオーダー(概ね0.01mm前後のオーダー)を対象として構築された結晶塑性論の導入が不可欠であるとした。これらは何れも材料を連続体と見なす理論であるが、これに対して0.1nm前後のオーダーで分子や原子などの非連続体として扱う物理学的な領域があることが指摘された。現状の鉄鋼などの金属材料の開発では、メタラジスト(冶金学研究者)と呼ばれる専門家がメゾスケールの顕微鏡組織とマクロスケールの製品の材料特性との相関を調べながら開発を行っている。特に基本的製品特性である材料強度と材料加工性(延性)に対する結晶粒オーダーの組織制御が重要視されることを考慮すると、上記の材質特性の造り込み機能に関するシミュレーションではメゾスコピック塑性の領域の材料挙動を予測することが不可欠であると結論される。その方法の一つとして、結晶塑性論に基づく製品の材質予測シミュレーションとこれに基づく試作工程の合理化が考えられる。
結晶塑性論に関して、非特許文献2後藤氏の解説『結晶塑性論の歩み』で全体像が把握できる。また、具体的な理論定式化は非特許文献3黒田氏と志澤氏の解説『結晶塑性の理論と応用』に詳しい。これらを参考に結晶塑性論の対象とする分野について以下に説明する。
鉄鋼や非鉄金属などの実用材料では顕微鏡観察などによると微細な結晶粒が種々の形態で分布していることが知られており、これを多結晶材料と呼称する。また特別な条件で一個の結晶粒を成長させることにより全体が単結晶からなるバルク材を得ることが可能であり、これを単結晶材料と呼称する。単結晶材料では材料の原子配列が規則的であり、概ね3種類の結晶構造に分類される。稠密六方格子(HCP)、面心立法格子(FCC)、体心立法格子(BCC)である。このような基本格子が周期的に3次元配置することによって単結晶のバルクを構成する。そのため、金属材料は微視的に原子が密に並んだ稠密面が規則的に積層された構造と見なすことができる。
弾性変形は材料に荷重を負荷することにより原子配列が無負荷時の配置から若干ずれた状態であり、除荷により元の原子配列に戻る。一方、塑性変形はさらに大きな荷重を負荷した場合に生じる状態で、稠密な原子面同士が相対的にずれることにより除荷しても元に戻らない永久変形を生じる。このようなすべり変形の生じやすい原子面をすべり面、面がすべる方向をすべり方向、両者をあわせてすべり系と呼称する。
前記の3種類の結晶構造ですべり面やすべり方向の数や配置が異なり、例えばすべり面の数はHCP、FCC、BCCの順に増加するのでそれに従って加工性が向上する。また、種々の単結晶材料の機械特性試験によりすべり面に作用するせん断応力が材料毎の臨界値を超えた場合に塑性変形が生じるとされている。そして、単結晶バルク材料では結晶面に対して負荷の方向が異なると活動するすべり系が変化して力学的な応答が異なることが知られており、どのすべり系が活動するかを把握することが重要である。
単結晶材料の塑性変形予測に関しては、結晶方位を仮定して負荷される荷重から予測した分解せん断応力が臨海せん断応力を超えるすべり面で塑性変形が生じるという比較的単純なモデルを利用することができる。
一方、実用材料の多くが多結晶であり、多数の結晶粒子(各結晶粒子は単結晶)が規則的または不規則的に配置された状態である。多くの塑性加工プロセスにおいて加工前にランダムな結晶方位を持つ材料が加工による塑性流動に応じて結晶方位が偏った方向に変化して集合組織を形成することが知られている。
例えば、冷間圧延を受けた鋼板は板圧方向、圧延方向、幅方向で引張り試験の変形状態が変化し、この変形の異方性を利用してプレス加工工程での深絞り特性が改善される。この例のように実用材料である多結晶材料では塑性加工プロセスで付与されたひずみによる集合組織とその材料特性をその材料を構成する多くの結晶の体積平均的な特性として予測することが重要である。
結晶塑性論に関して、非特許文献2後藤氏の解説『結晶塑性論の歩み』から特に重要な個所を引用する。結晶塑性は集合組織のような材料内部の組織が主題の場合、塑性異方性の生成・発達が主要な役割を果たす問題などで利用される。巨視連続体的理論(通常のマクロスコピックな塑性力学に基づく変形シミュレーション)では、塑性特性の特に変形履歴依存性を合理的に十分表現出来ない問題がある。結晶塑性論は、多結晶金属材料の塑性挙動を、その構成要素である単結晶の塑性的特性をベースとして論ずるものである。
単結晶の塑性特性をある程度近似表現してもそれをベースとして構築する多結晶塑性は十分精度が高い場合がある。このような場合に結晶塑性論を積極的に活用した事例を蓄積することが実用化に対して重要である。端的に言えば、Schmid則とTaylorの線形硬化および等方硬化則を用いても、かなりの成果が期待される。
集合組織には変形集合組織と再結晶集合組織がある。変形集合組織は結晶塑性論という力学的アプローチで相当評価可能である。高橋らはLinモデルを用いた定式化および初期ひずみ法による弾性係数法を示し、板材成形や押出しなどの塑性加工プロセスにおける集合組織形成を論ずるまでになった。
以上のように後藤氏は、現状の結晶塑性論に関して硬化則に改善の余地が多いとしながらも、結晶塑性論は集合組織予測に十分利用できるとしている。’単結晶のすべり臨海条件や硬化則’は変形荷重の予測に影響するものであり、変形自体の予測にさほど影響を与えない場合が多いからである。
以上のことから上記’塑性加工プロセスの材質予測シミュレーション’として高橋氏の多結晶塑性モデルによる集合組織形成の予測技術が有望視される。そこで、従来技術として非特許文献4高橋氏による著書『多結晶塑性論』から重要な記述を要約する。
高橋氏はLin-Takahashiモデルを用いて多結晶の応力ひずみ関係を単結晶の応力ひずみ関係から予測することに成功した。しかし、特異性処理など式の展開に困難性がありLin-Takahashiモデルは一般的でないとした。
その対策として図21に示す六面体弾塑性有限要素で構造格子状に分割した立方体ブロック状の解析領域に対して、個々の要素に単結晶のすべり系を付与し、その結晶方位を乱数によりランダムに決定する有限要素多結晶モデルFEPM(finite element polycrystal model)を開示した。初期ひずみ法による弾性係数法とこれによる逐次累積法を採用し、立方体解析領域の境界面に一様な変位の境界条件を与えることにより近似的に周期境界条件を実現して、初期に等方的な(ランダムな)結晶方位を有する多結晶体の組織発展を求めるとともに巨視的な応力ひずみ関係を得た。
有限要素モデルは結晶粒のスケール、即ちミクロスケール(後藤氏はメゾスケールと呼称した)であるが、近似的に周期構造の境界条件を適用することによりマクロスケールの引張り試験と整合する。即ち、ミクロスケールとマクロスケールの両者を考慮したマルチスケール理論に基づく解析であり、モデルに不自然さがなく精度の高い予測結果が期待される。
非特許文献4『多結晶塑性論』に図21に示す立方体ブロックの引張り数値材料試験を行うためのプログラムのソースコードが開示された。表4はプログラムの仕様、図22はフローチャートを示す。立方体ブロックを構成する有限要素に結晶方位を付与することにより、引張り試験における応力ひずみ関係を取得することができる。
Figure 2008197852
以下この手法を’FEPMによる数値材料試験’と呼称する。そして、高橋氏はLin-Takahashiモデルによる結果と比較し両者が良く一致することを確認した。その際、有限要素分割数を6×6×6分割以上に設定することにより、事実上等方的な結晶方位を有する多結晶体と見なすことができるとした。
また、FEPMにおいて各有限要素のひずみとスピンの履歴から結晶方位の回転則を利用して、加工前後の各結晶の方位変化を推定した。また、その表示に極点図や逆極点図を利用して、視覚的に集合組織の発展を表示できるようにした。
さらに、圧延したアルミニウム板と引抜き加工によるアルミニウム円管の場合において、種々の方向の引張り試験結果と解析結果を比較して引張り応力やひずみの異方性が定性的に良く一致することを確認した。但し、定量的には実験結果で加工度が増した場合に結晶回転が飽和するのに対して、解析結果は飽和しないため加工度の大きな条件で過大な異方性の発展を予測する傾向が判明した。
そして、これらの知見を元に、非特許文献5『有限要素多結晶モデルによる塑性変形解析』において、素材メーカーのニーズである初期の等方性(結晶方位がランダム)を仮定した材料が圧延加工により集合組織を形成する様子を追跡することで集合組織制御を行うこと、組み立て加工メーカーのニーズである材料メーカーが提供する集合組織のデータに基づいて材料の変形挙動を予測すること、の両者に対応した’材料の塑性変形解析のシステム’を提案した。
材料を有限要素分割し、各要素にX線回折法の散乱強度の測定結果に基づく結晶方位を割り付ける。そのために通常は複数の極点図に結晶方位分布関数(CODF)を適用して求めるプログラムを用いるが、高橋氏は非特許文献4でX線反射法とX線透過法の測定データを統合した極点図にパターンマッチングを適用する独自の方法を開示した。そして、圧延、押出し、板成形などの塑性加工プロセスにおいてマクロスケールの被圧延材の個々の有限要素を1つの結晶粒子と見なす大胆な近似解法を提案してこれに適用した。この手法を便宜上’シングルスケールのFEPM’と呼称する。通常の板圧延解析では二次元平面ひずみ問題としてモデル化するが、’シングルスケールのFEPM’の場合は二次元平面ひずみであっても三次元問題として取り扱う必要がある。結晶方位を設定した三次元の被圧延材料に対して静的弾塑性有限要素法により圧延解析を行う。
’シングルスケールのFEPM’による圧延解析後の材料に対して、’FEPMによる数値材料試験’を適用して引張り数値材料試験を行うことにより、マクロな異方性パラメータであるr値などを評価することができる。また、’シングルスケールのFEPM’を適用して圧延板の簡易深絞り解析を行うことにより、フランジ部の耳の発生挙動を調査することができる。さらに初期の圧延方向に対して、圧延方向を変化させて多パス圧延解析を行い結晶方位分布を測定することができる。
以上のシミュレーションで得られた集合組織の発展状況は実験で観察された結果と定性的に良く一致した。但し、計算時間の制約から要素分割数は’FEPMによる数値材料試験’の立方体モデル(6×6×6要素分割)と同程度である。’シングルスケールのFEPM’を適用する場合には材料の代表寸法に対して結晶粒のサイズが同程度のスケールと極めて大きいので、もはや等方的な多結晶体と見なす事が困難であると考えられる。事実、圧延後の有限要素の変形形状は個々の有限要素の結晶方位の影響を受けて、局所的な異方性を生じている。
また、押出しプロセスのように摩擦を考慮すると表面の局部変形が大きくなって有限要素がひずむため解析出来なくなるような問題に対して、定常解析の剛塑性有限要素法による解決策を適用出来ない問題があった。事実、高橋氏は非定常押し出し解析の場合に摩擦を考慮していない。
以上のように高橋氏の提案した’材料の塑性変形解析のシステム’は、’塑性加工プロセスの材質予測シミュレーション’として極めて優れたコンセプトのモデルであった。ただし、工業的な実用化のためには以下の課題があることも判明した。(1)’シングルスケールのFEPM’では変形解析の要素が粗いため初期等方性の仮定が成り立たないのでの解析精度が低い、(2)弾塑性解析であり処理時間が大である、(3)剛塑性有限要素法や動的陽解法弾塑性有限要素法などの市販の製品で直接利用出来ない。
前記の高橋氏の研究開発の多くは1990年代中頃までに実施された。その後、計算機の性能が大幅に向上しパソコンで実用的なシミュレーションが可能になった。そのため従来計算時間やメモリーの制約から線形問題にしか適用出来なかった手法が、非線形問題でも適用されつつある。以下にマルチスケール解析手法を中心に近年の技術について概観する。
前記の高橋氏の塑性加工プロセスの結晶塑性解析では、後藤氏が指摘した結晶粒オーダーのミクロスケール解析と通常のマクロスケールの塑性加工プロセス解析を区別せず同一のマクロスケールのメッシュで実施する’シングルスケールのFEPM’を採用し定性的な傾向の模擬解析を試みた。
一般にマルチスケール解析ではマクロスケールとミクロスケールのモデルを区別し、両者を階層的に関連付けてより合理的なシミュレーションを行うことに特徴がある。
有限要素法による均質化法はマルチスケール解析の代表的な手法の一つであると考えられる。均質化法のパイオニアである寺田氏と菊地氏の著書である非特許文献6『均質化法入門』で線形問題に対する理論とプログラムが開示されている。均質化法では例えば高橋氏の行った押出しの解析を例にすれば、通常のマクロスケールの押出し加工プロセスのモデルシミュレーションを行って、その場合の応力ひずみ関係をミクロスケールモデルにより各積分点で評価する。ミクロスケールモデルは図21とほぼ同様の立法体ブロック状の均質化有限要素解析モデルを用いる。そして通常のマクロスケールの解析とミクロスケールの解析を交互に行い、それぞれの結果を次のスケールの解析に反映することによりマルチスケール連成解析を行う。そのため、各スケールで合理的な解析を行うことができるので得られた解はかなり信頼性の高いものと期待される。
但し、通常のマクロスケールの各有限要素内の積分点の情報を得るために、ミクロスケールの有限要素解析を行う必要がある。計算機の処理量はこのミクロスケールの有限要素解析の処理量にマクロスケール解析の積分点の数を乗じたものになるので、要素数が増加すると計算量が指数関数的に増大する。そのため、塑性加工解析のように正解が得られるまで同じ解析を繰り返す非線形解析では事実上解析できる問題が2次元問題に限られる。
この問題に対して寺田氏は非特許文献7『均質化法とその工学的応用』で次の対策を開示した。ミクロとマクロの境界値問題を計算上分離することが必須である。具体的には、まずマクロ構成則の形式を仮定し、非線形の局所化問題を数ケース解くことでそのパラメータを同定し、こうして確定したマクロ構成モデルを用いてマクロ境界値問題を解き、さらに必要に応じてマクロ構造内の変形履歴を局所化問題のデータとしてミクロ境界値問題(局所化問題)を解けば、直接ミクロ・マクロ連成問題を解いたものと同等の結果が得られるはずである。この非連成解析の計算コストはシングルスケールの解析と同等であるとした。
そして、渡邊氏と寺田氏は非特許文献8『非連成近似解法による多結晶金属のマルチスケール解析』において非線形均質化理論から導かれる2変数境界値問題の解をスケールごとに別々に解きながら近似するミクロ・マクロ非連成近似解法を用いて、鋼管継ぎ手の拡径加工に対して多結晶金属のマルチスケール解析を実施して、継ぎ手近傍の残留応力分布を求めた。
渡邊氏と寺田氏が開示したミクロ・マクロ非連成近似解法は、塑性加工を伴う構造解析であり、圧延や鍛造などの大変形の塑性加工ではない。大変形の塑性加工解析では一般に剛塑性有限要素法や動的陽解法弾塑性有限要素法が適用される。ミクロ・マクロ非連成近似解法ではミクロ・マクロとも静的陰解法弾塑性定式のみが開示されている。大変形の塑性加工解析に静的陰解法弾塑性定式を適用する場合、処理時間が増加する問題が避けられない。
また、寺田氏らのミクロ・マクロ非連成近似解法は図23に示すように応力や荷重を予測するために最初の手順としてミクロ解析による構成式の同定が必須条件である。しかし前記の後藤氏の解説で示したように、結晶塑性の加工硬化モデルはまだ検討の余地が多く精度的な問題がある。寺田氏らの方法では結晶塑性に基づくミクロモデルから構成式を同定するので、通常の実験結果から同定する方法に比べて構成式の精度が低い場合が多い。また、余分な計算コストもかかる。また、前記の鋼管の例では結果はマクロ解析からの情報だけで得られる。ミクロ解析を行うメリットは特にない。
さらに、高橋氏の開示した集合組織の発展に関する理論が開示されていない。そのため、寺田氏らのミクロ・マクロ非連成近似解法では、集合組織の発展の予測が困難であった。
特許文献1(特表2002―530197号広報)に『異方性金属板成形のモデル化法』として結晶塑性を利用した有限要素解析法が開示されている。図24は開示されたフロー図である。これはマルチスケール解析の欠点である計算量の増大のために計算処理が困難になる問題に関して、ミクロスケール解析を非連成化してメインのルーチンから外すことにより解決するものである。即ち、外部ルーチンで板材の異方性特性をミクロスケール解析により材料の応力―ひずみ曲線として抽出する。そして、通常のマクロスケール解析において積分点での応力ひずみ関係をこの応力―ひずみ曲線から評価する。そのため通常のマクロスケールの解析とほぼ同様の処理時間で擬似的にマルチスケール計算処理を実施する。
この方法は非特許文献8に開示の非練成マルチスケール解析と基本原理が共通している。マクロスケールの板変形シミュレーションの結果がミクロスケールの結晶塑性計算で全く考慮されないため、最終的な結果は板のマクロな変形シミュレーション結果だけで、材料組織の発展に関する情報が得られない。また、材料の構成関係式を近似する方法を採用せずに直接応力―ひずみ曲線を用いるので、利用できるプログラムが限定される問題があった。
特許文献2(特開2006−285381号広報)には『構造体の設計法』と題してタイヤの最適設計の基礎データを生成するためにマルチスケール解析が利用された。この解析ではタイヤ全体をモデル化したマクロスケールモデル、タイヤの局部的な接地部位をモデル化した中間のスケールモデル、タイヤの不均質材料をモデル化したミクロスケールモデルの3階層のモデルから構成される。各スケールの解析にゴムが扱える非定常の非線形弾性有限要素法が共通して利用される。3つのスケールの解析は基本的に非連成であるが、各スケールの解析結果から得られた情報は他のスケールの解析にフィードバックされるので擬似的な連成解析と見なすことができる。具体的にはミクロスケールで材料の物性値が得られ、中間のスケールではタイヤの局部的な特性値が得られ、これらを基にマクロスケールでタイヤ全体の応力やひずみが求められる。
しかし、タイヤに生じる応力やひずみが中間のスケールやマクロスケールの解析に影響を与えるので、これらをフィードバックして整合性をとることにより擬似的な連成を行う。そのため条件が厳しい場合などには、多数回ループをまわすことになるので、各スケールの解析が繰り返し実施されることになり処理の複雑化や計算時間の増加が問題であった。
阿部氏、長岐氏、古野氏により、非特許文献9『すべりを考慮した剛塑性有限要素法による面心立法多結晶金属の変形の解析』が行われた。またShigeru Nagakiによる非特許文献10『Analysis of plastic deformation and
Taylor slips in FCC polycrystals by rigid-plastic finite element method』では剛塑性FEAによるFCCの結晶塑性解析が実施された。加工条件により実際に活動するすべり系の組み合わせを決定する際に、最大塑性仕事の原理を利用している。
しかし、前記の高橋氏の方法では臨海せん断応力に達したすべり系が活動して応力緩和が生じるので、次に活動するすべり系はその影響を考慮しなくてはならないとしている。そのため、繰り返し計算により順番に活動すべり系を決定して高精度な予測を行っている。しかし、長岐氏らの剛塑性有限要素法では非特許文献4の高橋氏による弾塑性解析をベースに開発されたFEPMや後述の非特許文献16の結晶粘塑性モデルが有する活動すべり系選択のロジックが組み込まれていないので、予測精度が低下するものと考えられる。事実、現状では剛塑性有限要素法による組織予測シミュレーションは採用されていない。
尚、近年の有限要素法に関する技術が非特許文献11日本塑性加工学会編『静的解法FEM−バルク加工』に詳しい。
近年、塑性加工プロセス解析において動的陽解法弾塑性有限要素法がしばしば用いられるようになった。この方法で大規模な自動車の衝突試験をシミュレーション出来ることが判明し、板のプレス成形や管などの成形などで実績が増えている。静的解法と比べて連立一次方程式を解く必要がないので1ステップ当たりの解析時間が極端に短い。そのため、工具と材料の接触判定を頻繁に行うので接触問題に適している。但し、収束条件に厳しい制約があるため1ステップ当たりの時間増分幅が極端に小さくなり、総合的な処理時間はかなり必要である。この欠点を補うために材料の密度を実際よりかなり大きくして収束条件を緩和する対策が実施されるようであるが、解析のノウハウを得るための実験データが必要である。
仲町氏らは動的陽解法結晶均質化有限要素法によるマルチスケール解析により、加工プロセスの集合組織発展の解析を実施した。特に、有限要素の数を増加できる特徴を活かして周期境界条件を適用した動的陽解法とデジタルイメージに基づくモデルを組合せた。
デジタルイメージ(またはディジタルイメージ)に基づくモデル(digital image based modeling)と周期境界条件については非特許文献6『均質化法入門』に詳しい。以下では簡単な原理を二次元の場合に説明する。尚、‘デジタルイメージに基づくモデル’はボクセル有限要素法と呼称されるもので、2Dではピクセル(PIXEL:picture element)、3Dではボクセル(VOXEL:volume picture element)と呼ばれるデジタルイメージ(画像)における画素を有限要素と同一視して解析を行うことを特徴とする有限要素法である。以下では簡略化のためデジタルイメージモデルと表記する場合もある。
最も基本的なグレー諧調のデジタルイメージに基づくモデルを適用して顕微鏡写真から有限要素モデルを作成する場合の手順を以下に示す。(1)組織写真をスキャナー処理するかデジタルカメラ等のCCDを用いてデジタルイメージファイルを生成する。 (2)パソコンに付属の画像処理ソフトを用いて解析領域を矩形状に切り取り、これを適当な名称のビットマップ形式に保存する。(3)このファイルを専用の画像処理ソフトに読み込んで、カラーをグレイに変換し適当な名称のCCM(P2)形式のファイルに出力する。(4)このファイルを専用の画像処理ソフトに読み込んで、指定画素サイズの正方形領域(画素並びがFEAの要素並びと対応)に切り取った後、指定階数の階調に変換し適当な名称のテキスト形式のCCM(P2)ファイルに画像を出力する。(5)表計算ソフト等によりCCM(P2)ファイルの階調に対応する材料番号を指定したテキスト形式の材料ファイルを作成する。(6)専用のメッシュ生成ソフトにCCM(P2)ファイルと材料ファイルを読み込んでFEAのデータ(節点座標、要素コネクティビティー、材料、境界条件など)を生成する。(7)FEAデータを読み込んでFEAの計算処理を実行する。尚、カラーイメージの場合はR、G、Bに対応した3種類の諧調のデジタルイメージであり、多少複雑になるが同様の手順で処理ができる。
図25はデジタルイメージに基づくモデルにより作成した楕円介在物を有する材料の有限要素メッシュ(90×90の要素分割数)の例である。格子間隔を狭くすることで解像度を向上している。
図26は介在物の写真から生成した有限要素メッシュ(32×32の要素分割数)の例である。要素分割数が少ないので図25に比べて介在物の境界に大きな凹凸が生じている。但し、図25に比べて有限要素数が少ない分、解析処理の時間が少ない。
図27は図26のユニットセル(均質化法の解析領域)に対して周期境界条件を適用した場合の有限要素モデルを示す説明図である。具体的な境界条件の設定方法は図26のユニットセルの対向する辺の対応する節点対の変位が周期的な変位を生じるとする。これにより境界辺の変位の自由度が多結晶材料の場合の自由度に近似される。但し、周期境界条件を適用することにより、新たにコネクティビティー(各要素に属する節点番号)が発生するので処理時間が増加する問題があった。
仲町氏らは非特許文献12『SEM・EBSD計測による3次元微視結晶均質化モデルの導出』において純鉄多結晶体、自動車用軟鋼板、高張力鋼板から切り出した試料に対して、層状研磨およびSEM・EBSD計測を繰り返すことで結晶形状を忠実に再現した3次元微視結晶計測モデルを作成した。
この場合、解析領域の各有限要素に指定する物性は結晶方位であり、具体的には結晶の局所座標の傾きを示す3個のオイラー角(Euler angles)である。結晶のオイラー角を測定するために操作型電子顕微鏡(SEM)とEBSD(Electron Backscatter Diffraction)またはEBSP(Electron Backscatter Diffraction Pattern)と呼称される結晶方位の機器分析により試料の表面をプローブで走査して2次元イメージを測定・記録する。奥行き方向の情報を得るために毎回試料表面を層状に研磨して新生面を露出させ測定を繰り返す。
たかだか1辺が100μm程度のこれら3種類のモデルを作成するために卒論生が1年間かけて作成したものと推定される。そのため、この方法はコストパフォーマンスが極端に悪く、研究には使えても実際に生産現場で使うことは困難である問題があった。
また、仲町氏らは非特許文献13『動的陽解法結晶均質化有限要素法による板成形マルチスケール解析』において上記の3次元微視結晶均質化モデルを用いて板成形の代表的なスプリングバック特性試験であるハット曲げ試験の解析を行った。均質化法により周期境界条件が適用され、図21に示す三次元的にブロック状のユニットセルが上下左右前後に周期配置された条件が付与される。
マクロスケールの板の変形解析では約40×10程度のシェル要素分割を行い、ミクロスケール解析では3×3×3要素分割の8節点アイソパラメトリック要素(1要素当たりの積分点は8個)で各積分点に3次元微視結晶均質化モデルの結晶方位を付与した。そして動的陽解法結晶均質化有限要素法のプログラムを用いて変形と結晶方位角の発展を解析し、変形後のすべり面(1,1,1)の極点図を示した。
さらに、仲町氏らは非特許文献14『結晶均質化マルチスケール有限要素法による異周速圧延過程の集合組織発展解析』において前記の板成形マルチスケール解析とほぼ同様の手法により厚さ6mmのアルミニウム合金の圧延解析を行った。その際、上下のワークロールの周速が同じ場合と下ワークロールの周速が上ワークロールより大の場合を比較して、異周速圧延を適用した場合の圧延集合組織にせん断集合組織が生じることを指摘した。
しかし、ミクロ解析の要素分割が3×3×3、即ち積分点の分割数で6×6×6であり、高橋氏のFEPMの場合とほぼ同様の解像度である。図26の2次元の場合(32x32要素分割)の場合に比べてかなり粗いので、デジタルイメージに基づくモデルとして物理的意味が不明である。即ち、折角高解像度の3次元微視結晶均質化モデルを生成したにも関わらず、たかだか6×6×6積分点の情報しか利用出来ない問題点があった。
また、マクロスケールの圧延解析とミクロスケールの結晶塑性解析を練成させるため解析時間が膨大となる問題があった。その解決策としてPCクラスタ型の並列計算機を用いたが、管理コストが増加する問題があった。そのため計算機システム専門の管理者が不足する小企業では使いにくい。
仲町氏らは非特許文献15『準陰解法・結晶均質化法に基づく多結晶弾塑性有限要素解析』において鉄系の材料で弾塑性有限要素解析法を開示した。準陰解法と結晶均質化法を取り入れて前記の課題の解決を模索していると考えられる。今後もこのような新しい取り組みが継続されると考えられる。
非特許文献16『圧延における集合組織予測シミュレーション』で前田氏らは図28に示す定常法による剛塑性有限要素圧延解析と図29に示す速度依存型の結晶粘塑性モデルを組み合わせた圧延集合組織予測シミュレーションを開示した。そして、彼らは非特許文献17『アルミ合金板の集合組織予測シミュレーション―圧延条件の影響―』で集合組織形成に及ぼす摩擦係数、ロール径の影響を検討した。また、彼らのグループは非特許文献18『アルミ板材の成形性シミュレーション』で詳細に実際の塑性加工プロセスの結果と比較検討した。さらに、前田氏は非特許文献19『アルミニウム板における集合組織予測技術の現状』において実際の塑性加工プロセスへの適用とその課題について展望を行った。
アルミニウムは結晶塑性モデルが適用できる代表的なFCC金属であり、高橋氏らによって塑性加工プロセスのモデル解析が検討された。彼らのシングルスケールのFEPMによる圧延解析では計算処理量が膨大となり、実機で必要な詳細解析を行う上で大きな問題となっていた。前田氏らはこの問題の解決を図るために図28に示すマルチスケールによる逐次解析を提案した。
圧延の場合、変形量が十分大きく圧延ロールによる幅流れの拘束も大きいため、圧延中に成長する集合組織を原因とする材料の異方性の影響は少ないとした。そして、定常解析法の3次元剛塑性有限要素法を適用して圧延によるマクロスケールの変形解析を実施し、得られた変形速度場から所望の着目部位の変形履歴を抽出して多結晶の変形集合組織予測モデルを用いて結晶の回転による集合組織を予測した。変形履歴として解析の流線に沿った要素ごとの時間とひずみ速度を用いた。また、変形集合組織予測モデルはODF(Orientation Distribution Function)データによる結晶方位分布の指定方法と、この分野のデファクトスタンダードとなりつつある速度依存型の結晶粘塑性モデルを組合わせたものである。この方法に関して高橋氏は非特許文献4で結晶粘塑性モデルと高橋氏らの多結晶有限要素モデル(FEPM)の比較を行い、結晶粘塑性モデルは定式化が煩雑であるが、繰返し計算を必要としないのに対して、FEPMでは定式化が容易であるが、繰返し計算を必要とするとした。それぞれ一長一短があるので、問題に応じて便利なほうを選ぶことができる。
前田氏らは繰返し計算が不要で一つの要素に多数の結晶方位を付与できる結晶粘塑性モデルを選択して解析時間の短縮を図った。その結果、動作周波数が200MHzのエンジニアリングワークステーションでマクロスケールの圧延解析が約30分、1200個程度の結晶粒子を配置したミクロスケールの結晶粘塑性解析に約1時間の処理時間を要したと報告している。
また、前田氏らは非特許文献18において、降伏曲面予測モデルとして圧延後の集合組織を記述したODFデータとTaylor-Bishop-Hillによる結晶塑性モデル(TBHモデル)を用いて集合組織から降伏曲面を予測する手法を開示した。また、2次加工のFEM解析に用いるために圧延後の材料の降伏曲面からBarlatらによって提案されたアルミ合金特有の挙動を表す6成分の異方性降伏関数のモデル変数を最小二乗法で同定する手法を開示した。この同定された降伏関数を組み込んだ有限要素解析により円筒深絞り試験の変形状態を予測して実験結果と比較した。その結果、妥当な結果が予測できることを報告した。
但し、前田氏らの一連の報告は結晶粒子を最小単位とする解析であり、結晶粒子内部の不均一変形を取り扱う事ができない。また、ODFデータは結晶の位置情報を持たないのデジタルイメージを作成できない問題があった。仮に結晶の位置情報を付与しても、1個の要素または積分点に多数の結晶方位を付与するモデルの場合にデジタルイメージの生成方法が開示されていない。そのため、前記の仲町氏らの場合と同様にEBSPなどの機器分析による情報を十分に活用することができない問題があった。
特許文献3(特開2000−225405号広報)には『熱間圧延材の組織予測方法及び組織制御方法』が開示されている。これは、通常のマクロスコピックなスケールの変形シミュレーションだけを実施して、これから得られるパラメータを媒介にして実験により得られた加工度と組織発展の関係式を用いて組織を予測する。このモデルのパラメータとして相当塑性ひずみを利用している。ミクロスケールのシミュレーションを行わないので、予測精度を向上するためには実験データを増加しなければならない問題があった。
上記のように再結晶温度以上の高温域における再結晶による集合組織の予測において、このような半実験手法が比較的多く利用されるようである。このような問題において組織発展に影響する因子が極めて多くあり、ミクロスケールのシミュレーションを行うためのモデルが不十分であることが考えられる。現状では塑性加工プロセスを再現できるような精度の高い半実験式を用いて、マクロスケールのシミュレーションに組み込んで利用することが現実的と考えられている。
特表2002―530197号広報 特開2006−285381号広報 特開2000−225405号広報 後藤学:『塑性力学21世紀への展望』、塑性と加工、第35巻400号(1994)429−435 後藤学:『結晶塑性論の歩み』、塑性と加工、第37巻424号(1996)460−469 黒田充紀、志澤一之:『結晶塑性の理論と応用』、塑性と加工、第43巻495号(2002)33−43 高橋寛:『多結晶塑性論』、(1999)、コロナ社 本橋元、高橋寛、土田信:『有限要素多結晶モデルによる塑性変形解析』、塑性と加工、第37巻421号(1996)201−206 寺田賢二郎、菊池昇:『均質化法入門』、(2003)、丸善 寺田賢二郎『均質化法とその工学的応用』、日本機会学会誌2005.10 Vol.108 No.1043,40-43 渡邊育夢、寺田賢二郎:『非連成近似解法による多結晶金属のマルチスケール解析』、第55回応用力学講演会論文集、平成18年1月、335−336 阿部武治、長岐滋、古野光昭:『すべりを考慮した剛塑性有限要素法による面心立法多結晶金属の変形の解析』、日本機会学講演論文集、(1984)15 ShigeruNagaki:『Analysis ofplastic deformation and Taylor slips in FCC polycrystals by rigid-plasticfinite element method』Bulletin of the JSME (Bull. JSME) ISSN0021-3764 Bulletin of the JapanSociety of Mechanical Engineers 1986, vol. 29, no250, pp. 1111-1116 (21 ref.) 日本塑性加工学会編:『静的解法FEM−バルク加工』、(2003)、コロナ社 仲町英治、上辻靖智、倉前宏行、前田喬之:『SEM・EBSD計測による3次元微視結晶均質化モデルの導出』、日本機械学会第18回計算力学講演会講演論文集、(2005)281−282 岡田健二、NguyenNgoc TAM、上辻靖智、倉前宏行、仲町英治:『動的陽解法結晶均質化有限要素法による板成形マルチスケール解析』、日本機械学会第18回計算力学講演会講演論文集、(2005)283−284 倉前宏行、NguyenNgoc TAM、仲町英治:『結晶均質化マルチスケール有限要素法による異周速圧延過程の集合組織発展解析』、日本機械学会第19回計算力学講演会講演論文集、(2006)123−124 藤田宏平、辻本佳孝、滑田直愛、萩里雄大、仲町英治:『準陰解法・結晶均質化法に基づく多結晶弾塑性有限要素解析』、日本機械学会第17回計算力学講演会講演論文集、(2004)713−714 前田恭志、StephenTighe、服部重夫:『圧延における集合組織予測シミュレーション』、平成8年度塑性加工春季講演会論文集、(1996)62−63 前田恭志、StephenTighe、服部重夫:『アルミ合金板の集合組織予測シミュレーション―圧延条件の影響―』、第47回塑性加工連合講演会論文集、(1996)61−62 前田恭志、服部重夫、林田康宏、柳川正洋、松井邦明、吉澤成則:『アルミ板材の成形性シミュレーション』、R&D神戸製鋼技法/Vol.48No.1(Apr.1998)31−34 前田恭志:『アルミニウム板における集合組織予測技術の現状』、塑性と加工、第40巻467号(1999)36−42
上記のように塑性加工プロセスでは、製品の材質特性の予測を迅速かつ高精度化することによって、試作工程をCAEで完全に代替するニーズがあった。特に製品特性に直結する二次加工において、受け入れ材の集合組織を初期条件として結晶塑性論に基づくミクロスケールのシミュレーションにより材料の集合組織形成に及ぼす製造条件を明確化し、最適化する必要性があった。また、EBSPなどの分析機器の解像度が高くなるに従って、マルチスケール理論とデジタルイメージに基づくモデルにより結晶粒内の不均質変形を取り扱うニーズがあった。さらに、圧延などの一次加工プロセスにおける材料の集合組織形成機構の解明と材料の機械特性など諸特性の最適化のニーズがあった。しかし、現状ではこれを阻害する以下の諸問題の解決が必要である。
1)結晶塑性理論を塑性加工プロセス解析に適用する場合に形状予測精度と集合組織予測精度の両者を兼ね備えた高速に処理できる解析装置が実用化されていない問題があった。
従来、形状予測と集合組織予測は全く別の技術分野で発展したため、現在でも前者は変形解析のCAEとして塑性加工の専門家が、後者は結晶塑性のモデルとしてメタラジーの専門家が個別に利用している。塑性加工プロセスの変形解析では巨視的に材料全体が解析対象となることが多く、処理効率を向上するために微小な弾性ひずみを無視した剛塑性解析が適用されてきた。
一方、結晶塑性解析では単結晶の物理的な構造をモデル化することが基本であった。そして実際の多結晶材料ではこれらを構成する個々の結晶粒が単結晶の性質を持つと仮定して、多結晶材料の物理的な特性を個々の結晶粒子の特性について解析領域全体で積分して求める。複雑化を避けるために結晶粒子の周期構造などを考慮して解析領域の単純化を図ることにより解析が行われてきた。即ち、顕微鏡観察オーダーの限られた領域を対象にしているので、このままでは複雑な塑性加工プロセスの解析は原理的に困難であった。
長岐氏らは処理量が削減できる剛塑性有限要素解析に結晶塑性モデルを直接組み込むことにより解決を図ろうとした。しかし、結晶のすべり系が作動するか否かを判定するために必要な活動すべり系の選択に関する有効なロジックを持たないため、モデルの精度が低く実用されないという本質的な問題があった。
一方、高橋氏らは、塑性加工プロセス解析において有限要素1個1個を結晶とみなす厳密な弾塑性の有限要素多結晶モデル(FEPM)を適用した。変形が単純な板材などの引張り数値材料試験ではマルチスケール理論を考慮したため、少ない要素分割数6×6×6分割程度でも理論的な解とほぼ同じ結果を得る事ができるとした。FEPMは一個の有限要素に1個の結晶方位を付与するため、非特許文献16で開示された1個の要素に多数個の結晶粒子を付与する結晶粘塑性モデルでは取り扱いが困難なデジタルイメージに基づくモデルとの親和性が良い特徴がある。
一般にマルチスケール理論解析では、マクロ有限要素モデルとミクロ有限要素モデルが設定され、前者の着目点に関して後者を割り付けるとともに後者の体積平均特性が前者の着目点の特性であると仮定することにより異なるスケール間の連成解析を実現できる。
しかし、高橋氏らは、変形が複雑な塑性加工プロセスのFEPMによる解析において、計算量の削減のためにマクロスコピックなシングルスケール解析を採用した。そのため巨視的な観点から材料全体を要素分割しなければならず、1個の要素のサイズが実際の結晶粒子の1000倍以上大であるため変形解析の精度の確保が困難であった。また、定量的に得られた解の信頼性が保証されないという致命的な問題があった。
これらの問題の解決のためには変形予測と集合組織予測の両者に関して、現状の計算機の能力の範囲内で所望の解析精度を確保する新たな技術の開発が必要であった。
仲町氏らは動的陽解法結晶均質化有限要素法によるマルチスケール練成解析によりモデルの精度向上を図った。しかし、粗い有限要素メッシュの場合(3×3×3)においてさえ解析時間が増加して並列計算を行う必要が発生した。そのため練成解析を行わないで精度向上を図る新たな技術の開発が必要であった。
定常圧延解析の場合に、前田氏らによるマクロスケールの剛塑性有限要素解析とミクロスケールの結晶粘塑性モデルを組合わせた非練成のマルチスケール解析が周波数200MHzの計算機により実施され、約1.5時間程度で解が得られるようになった。彼らは図28に示すマクロスケールの剛塑性有限要素解析からミクロスケールの結晶粘塑性モデル解析への変形履歴の受け渡しに関して、非特許文献18においてマクロスケール解析の流線に沿った要素ごとの時間とひずみ速度を用いた旨を開示している。
しかし、一般に異なるモデル間でデータを授受する場合には、両者の情報量や質が異なるため何らかの変換が必要になる。特に、解析時間を削減するためにはミクロスケール解析で最小の計算処理量になるようにマクロスケールのデータを最適化して変換する必要がある。前田氏らは定常圧延解析の場合に変換処理機能の必要性の有無を含めて情報を一切開示していない。また、一般に剛塑性有限要素法では微小変形理論を適用するため大変形理論で必要なスピンテンソルを用いない。これらのデータを授受しないで良いのか、市販の剛塑性有限要素法との組み合わせで使えるのかなど不明であった。そのため、彼らが実施したのと同様の高速な圧延の集合組織予測を実施できない問題があった。また、彼らが達成した解析の処理時間が最適なのか、さらに改善の余地はないのかなどについて全く不明であった。
2)高橋氏らは冷間圧延の集合組織を有する板材料の異方性変数を求める方法として、板の冷間圧延のFEPM解析を行って板材料を作成し、引続きFEPMによる冷間引張り数値材料試験を行う方法を提案した。しかし、前述のように巨視的な板圧延解析の変形予測精度が低いため、マルチスケール理論による引張り試験で得られた異方性変数自体の予測精度が低いという問題があった。これらの問題解決のためには前記の1)の場合と同様に新たな技術開発を行う必要があった。
3)異なるモデルによるマルチスケール解析では、マクロスケールの変形解析からミクロスケールの結晶粘塑性モデル解析への変形履歴の受け渡しに際して、データの最適な変換が必要である。最適化の主な目的は2点あり、1点目は解析が正常終了するための収束条件を満たす事、2点目は計算ステップ数の無駄を省いて計算処理時間を短縮することである。しかし、種々のモデルの組合わせ条件や解析対象とする問題の性質および境界条件設定に関して、具体的な最適条件が不明であった。そのため、これらの条件が変化するごとにシステムの修正変更を行う必要があった
4)前記のようにFEPMによるシングルスケールの塑性加工プロセスの変形解析では実際の複雑な境界条件を考慮するために解析領域を十分広く確保する必要があり、そのため被加工材の有限要素メッシュの平均寸法を結晶粒サイズの1000倍程度以上に設定する必要があった。見方を変えると板圧方向に数個の結晶粒からなる材料を圧延加工するようなマイクロ加工の解析であった。そのため板圧方向に何千何万個の結晶粒からなる実用材料の加工と見なす事が困難であり、このような仮定で得られた解の信頼性が低い問題があった。
一方、FEPMによる引張り数値材料試験の場合には、ミクロとマクロを区別するマルチスケール理論を用いたので、理論的にも解析結果からもその精度はかなり高いことが実証された。
そこで、塑性加工プロセス解析に関してマルチスケール理論を適用することにより解析結果の精度向上が期待される。但し、大変形を伴う塑性加工プロセス解析では前記のように剛塑性有限要素法が主に利用される。また、ミクロスケールの結晶塑性解析では静的陽解法の結晶塑性モデル解析、静的陰解法の結晶塑性モデル解析、動的陽解法の結晶塑性モデル解析、準陰解法の結晶塑性モデル解析などが利用される。即ち、マクロ解析に剛塑性有限要素法などの既存の変形解析、ミクロ解析に静的陽解法FEPMなどの種々のモデルを用いる組み合わせがうまく機能すれば問題解決に近づく。
しかしこのような組み合わせによるハイブリッド解析はほとんど前例が無く、またハイブリッド解析でマクロ解析の結果を直接ミクロ解析の境界条件に適用しても収束解が得られない致命的な問題があった。特に、剛塑性有限要素解積では非定常解析以外にも、非特許文献16で開示された定常解析と呼称される主に1次加工プロセスの解析に利用される方法がある。定常法は変位勾配増分の時間変化を直接定義しないため、ミクロ解析で必要な変位勾配増分の時間変化の取得が困難である。非特許文献16では流線に沿って積分する手法が開示されたが、マクロスケールの変位場をミクロスケールに受け渡すための具体的な方法が未開示であるため利用できない問題があった。
また、剛塑性有限要素解析では体積弾性変化を考慮しないので、これを厳密に考慮する弾塑性有限要素解析のFEPMとの間でモデルの差に起因する誤差が発生するが、この影響の定量評価が実施されていない問題があった。非特許文献16に開示の方法ではミクロスケール解析に結晶粘塑性モデルを採用したため体積弾性変形の影響は無視されたが、ミクロスケール解析に弾塑性多結晶有限要素モデル(FEPM)を用いた場合には体積弾性変形の影響が全く不明であり、このままでは利用できない問題があった。
一方、マクロ解析に動的陽解法有限要素解析、ミクロ解析にFEPMを組み合わせるハイブリッド解析の場合においても、剛塑性有限要素解析の場合と同様の問題があった。
さらに、マクロ解析の着目部位のひずみが集中する部分とひずみが少ない部分でミクロ解析の処理方法を最適化して処理時間を短縮する方法の開発が必要であった。
5)FEPMでは結晶粒1個を有限要素1個に対応させる方法であった。これは結晶粒内の変形が均一であるとの前提で成り立つモデルであり、X線回折による極点図から結晶塑性モデルを作成する場合には好適な方法である。
一方、高橋氏が指摘したように結晶粒内の不均一変形が観察されており、またEBSPなどの高解像度の機器分析により二次元の画像として直接不均一な方位分布を表示できるようになった。そのためEBSPなどの機器分析による実際の材料の結晶方位分布イメージを初期状態として入力し、塑性加工プロセスの変形履歴を付与した後の組織発展を予測するニーズがあった。しかし、従来の高橋氏のシングルスケール解析ではEBSPなどの機器分析によるイメージデータの利用方法が開示されていないため、結晶粒内の不均一変形の影響を取り扱えない問題があった。
6)FEPMでは三次元のバルクモデルが必要であり、EBSPによる二次元の結晶方位分布イメージから三次元のバルクモデルを安価に迅速に生成する方法が不明であった。そのため、EBSPの情報を十分活用出来ない問題があった。また、EBSPの画像イメージに対応するような詳細な解析では、メッシュ分割数が大幅に増加して計算機の処理能力を容易に超えるため解像度不足が発生してEBSPの画像データを有効利用出来ない本質的な問題があった。
7)マルチスケール解析における結晶塑性解析の処理時間を短縮するニーズがあった。しかし、非特許文献4に開示のオリジナルのFEPMでは連立一次方程式の解法として通常の直接解法が用いられており一般疎行列の解法を有効に利用する方法が不明であった。特に、EBSPの画像に対応するような詳細な解析では、メッシュ分割数が大幅に増加するので直接法では限界があり、反復解法の適用が望まれるが、FEPMでこれが適用できるか否かの検討は行われていなかった。そのため、EBSPの画像データを利用出来ない問題があった。
8)塑性加工プロセスにおいて被加工材の特定部位の集合組織変化を冶金的な手法で直感的に把握するために極点図または逆極点図が便利である。しかし上記のようにハイブリッド解析方法が確立されていないため、精度の高い極点図または逆極点図を予測することが出来なかった。また、FEPMでは結晶粒と有限要素が1対1対応するのでEBSPの画像データに対応する特定の結晶粒子内部の局所的な結晶方位変化などが予測出来ない。そのため、塑性加工プロセスの詳細な組織予測解析が実施されない問題があった。
9)非特許文献4に開示のオリジナルのFEPMでは結晶粒子と有限要素が1対1対応するのでEBSPなどの結晶粒子内の不均一変形を反映した集合組織の異方性パラメータを迅速に同定する方法が不明であった。原理的には均質化法などで利用されるデジタルイメージに基づくモデル化が可能であるが、その場合解像度を高くすると計算処理が膨大となって処理出来ない問題があった。
10)実験室などで利用するための組織発展の解析装置のシステム構成が不明であった。特に塑性加工プロセスではプロセス毎に境界条件が変化して複雑になるので、変形解析を実施する際に困難性があった。そのため、専門家に変形解析を依頼することが考えられるが、そのために有効なインターネットやLANなどの高付加価値通信網で利用するための組織発展の解析装置のシステム構成が不明であった。
11)顧客にハイブリッドシステムを配布するためには組織発展の解析装置のシステム構成を明確にして記録する方法が必要であった。
塑性加工プロセスの組織発展を高精度に予測するためには、マクロスケールの変形解析とミクロスケールの結晶塑性解析を行うマルチスケール解析を行うことが望ましい。しかし、これらを練成して解析すると膨大な計算処理が必要になるので、境界条件が複雑な実際の製造プロセスの解析に適用出来ない問題があった。
また、変形解析と結晶塑性解析は異なる分野で発展したため、前者は剛塑性有限要素解析または動的陽解法弾塑性解析が主流であり、後者は弾塑性有限要素解析が主に用いられてきた。そのため、マルチスケール解析を弾塑性解析だけで行うことは、従来の変形解析で蓄えられたプログラム、ノウハウ、データベースなどの資産を有効利用出来ない問題があった。即ち、結晶塑性解析は研究分野を超えて製造現場で使われることはなかった。
発明者は同じ塑性加工プロセスの解析を異なった定式化で行っても同じ結果が得られるはずであると考え、それぞれ異なった定式よるマクロスケールの変形解析とミクロスケールの結晶塑性解析からなるハイブリッドシステムを発案し、過去に蓄積された資産を利用することにより高精度化と高効率化を追求した。マクロスケールの結果をミクロスケールの境界条件に適用する方法に取り組んだが、当初ミクロスケール解析が異常終了する問題に遭遇した。
絨毯爆撃的に種々条件を変更しながら解決の糸口を模索した結果、偶然にも途中まで解析が実施される条件に遭遇した。この条件を徹底的に分析することにより解析が継続する条件を発見した。そして解析が継続する条件を常に保つためのインターフェースを考案して以下の発明を行った。
即ち、第1の本発明は、塑性加工における被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段、変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに収束条件を満たす変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段、着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段、変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分から結晶塑性モデルの境界条件を生成する手段、境界条件に基づき結晶塑性モデルの解析を実施する手段、所望により結晶塑性モデルの解析結果から組織状態を推定する手段、所望によりデータの入力手段および/または解析結果の出力手段、から構成されることを特徴とする塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
また、第2の本発明は、単数または複数のパスからなる第1段階塑性加工の履歴に基づき被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段、変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに収束条件を満たす変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段、着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段、第1段階塑性加工の変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分と第1段階塑性加工に続く第2段階塑性加工の加工条件から結晶塑性モデルの境界条件を生成する手段、境界条件に基づき第1段階塑性加工および第2段階塑性加工の結晶塑性モデルの解析を実施する手段、第2段階塑性加工の結晶塑性モデルの解析結果から所望の簡易材料モデルのモデル変数を同定する手段、所望により単数または複数のパスからなる第3段階塑性加工の履歴に基づき簡易材料モデルを組み込んだ塑性加工解析を実施する手段、所望によりデータの入力手段および/または解析結果の出力手段、から構成されることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
さらには、第3の本発明は、変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段が、β1を変位勾配もしくはひずみおよびスピンの適合増分の成分の内所望に選択された結晶塑性モデルの解析の収束を支配する成分の絶対値、βを収束限界のβ1の閾値として、少なくとも収束条件1(α1×β<β1<α2×β、α1=0、α2=1)を満たし、さらに望ましくは収束条件2(α1×Ω×β<β1<α2×Ω×β、0.3<Ω<1、α1=0.5、α2=1.0)を満たすように変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに時間に関する補間により適合増分の全ての成分を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
また、第4の本発明は、被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段が、非定常解析法の弾塑性有限要素解析、非定常解析法の結晶塑性モデル解析、定常解析法の剛塑性有限要素解析、非定常解析法の剛塑性有限要素解析、非定常解析法の動的弾塑性有限要素解析の何れかを含むものであり、所望により静水圧応力の履歴を取得する機能を有するとともに、解析を実施する手段が、静的陽解法の結晶塑性モデル解析、静的陰解法の結晶塑性モデル解析、動的陽解法の結晶塑性モデル解析、準陰解法の結晶塑性モデル解析の何れかによるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
また、第5の本発明は、着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段が機器分析から得られた被加工材の結晶粒子の位置および方位のデータもとにデジタルイメージに基づくモデルにより三次元の結晶構造を再構築することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
また、第6の本発明は、結晶塑性モデルの解析による第1段階塑性加工の履歴に基づき被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段、変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに収束条件を満たす変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段、被加工材の結晶粒子の位置および方位のデータもとにデジタルイメージに基づくモデルにより再構築された三次元の結晶構造を有する結晶塑性モデルを生成する手段、変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分から結晶塑性モデルの境界条件を生成する手段、境界条件に基づき結晶塑性モデルの解析を実施する手段、結晶塑性モデルの解析結果から所望の簡易材料モデルのモデル変数を同定する手段、所望により単数または複数のパスからなる第2段階塑性加工の履歴に基づき簡易材料モデルを組み込んだ塑性加工解析を実施する手段、所望によりデータの入力手段および/または解析結果の出力手段、から構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
また、第7の本発明は、結晶塑性モデルの解析を実施する手段が一般疎行列の不完全前処理付反復解法もしくは一般疎行列の直接解法を利用する有限要素解析であり、結晶塑性モデルの解析の各変形ステップの初期においてのみ不完全または完全な行列の分解を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
また、第8の本発明は、解析結果から組織状態を推定する手段が結晶塑性モデルの任意の有限要素の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴から結晶の方位を示すオイラー角を求める変換手段であり、解析結果を出力する手段がオイラー角に基づく所望の結晶すべり面の極点図または逆極点図として出力する機能および/または結晶塑性モデルの所望の断面の結晶すべり面の分布図として出力する機能を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
また、第9の本発明は、請求項2に記載の第2段階塑性加工の結晶塑性モデルおよび請求項6に記載の第1段階塑性加工の結晶塑性モデルが引張り試験モデルであり、簡易材料モデルが異方性構成式に基づくモデルであり、同定するモデル変数に異方性パラメータが含まれることを特徴とする請求項2乃至請求項8に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置である。
また、第10の本発明は、請求項1乃至請求項9に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置のプログラムが高付加価値通信網に接続された計算機の記憶装置に記録され、高付加価値通信網に接続された所望の計算機、携帯端末、携帯電話、移動体通信装置、ゲーム機、計算処理手段から利用されることを特徴とする塑性加工における被加工材の組織発展の解析システムである。
また、第11の本発明は、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
図1は本発明の第1の装置の実施形態を示すフローチャートである。
入力手段1は装置に設定された基準条件のデータファイルに対して、設定条件の変更や必要なデータを取り込むための機能である。入力ファイルの書き換えによる変更機能と対話式のユーザーインターフェースによる変更機能からなり、必要に応じて利用する。
変位勾配増分の履歴を取得する手段2は塑性加工プロセスにおける被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する機能であり、主に有限要素解析による変形解析機能を意味する。ここで変位勾配は対称成分と反対称成分に分離することで前者がひずみ、後者がスピンに対応しており、ひずみとスピンの和で変位勾配に変換できる。そこで以下では説明の簡単化のため変位勾配増分を用いることとするが、これはひずみおよびスピンの増分と置き換えてもよい。本発明の顕著な特徴である変形解析機能と後述の結晶塑性モデルによる組織予測機能の明確な分離により、変形解析機能の独立性を確保することが可能になった。
その長所としては塑性加工プロセスの複雑な変形解析に対して、実績が多く信頼性に優れる非定常剛塑性有限要素解析や動的陽解法有限要素解析を利用できることがあげられる。また、対象の塑性加工プロセスが変化しても変形解析の部分を変更することにより対応できるので、組織予測機能の変更が少ない点である。さらに、処理量が格段に多い連成解析を行わないので、計算機のメモリーの節約と高速処理が可能である。
一方短所としては、変形解析と組織予測解析の連成解析を行わないので、組織予測結果から変形解析への修正(フィードバック)が出来ない点である。しかし、主要な塑性加工プロセスである1次加工プロセスの解析では、構成方程式や境界条件などの改善により従来技術のマクロスケールの変形解析の予測精度が高いため、組織予測結果から変形解析への修正の効果が小なので、その誤差は小であり、総合的には短所が隠れて長所が顕在化する場合が多い。
変位勾配の適合増分を生成する手段3は手段2で生成した変位勾配増分の履歴をもとに手段6の収束条件を満たす変位勾配の適合増分の履歴を生成する手段である。ここで適合増分とは結晶塑性モデルの解析で正常な処理が可能な限界の増分(最大の増分)に対して、絶対値が小でかつ限界値に近いように調整された増分を意味する。一般に非定常剛塑性有限要素解析ではFEPMによる組織予測における限界の増分に対して増分が10倍以上であることが多く、変換手段3を用いない場合に結晶塑性モデルの解析で正常な解析が実施出来ない。
実際に発明者は変換手段3を組み込まない状態で解析を実施したため原因不明のエラーで解析が中断する現象に悩まされた。境界条件を種々変更した場合に、たまたま途中まで正常に解析された後中断した条件があった。この中断のタイミングと変位勾配の増分、具体的にはひずみ成分6個およびスピン成分3個の9個の変数の内、伸び縮みに関する3個のひずみ成分の絶対値が一定値以上になると収束計算が発散することが判明した。そこで、手段3を組み込んで変位勾配の増分、特に伸び縮みに関する3個のひずみ成分の絶対値が組織予測における限界の増分より小になる変換を検討した。この変換は無数に存在するが、ポイントは変換にともなう誤差をできるだけ排除すること、変換後の増分ステップ数を少なくして計算処理量を削減すること、変換方法をできるだけ単純化することである。
そこで、変換手段3は手段2による変形解析における各ステップの増分の中で最大の成分値と組織予測解析の限界増分を比較し、少なくとも前者が後者より大きい場合は必ず変換を実施する。変換方法は前者を後者で除して得られた小数点以上の商に1を付加した数を分割数とした。そして手段2で取得した9個の成分の増分を分割数で除した値を変換後の増分として用い、ステップ数を新たな分割数に設定した。この方法の特徴は比較的単純な手順にも関わらず、手段2の増分の最初と最後で手段3と変位勾配が一致するなど近似度が高い点にある。
この変換3を組み込んだことにより、組織予測の解析で異常停止が全く発生しなくなった。また、上記変換のロジックは単純であるが、変換後の増分が解析の限界増分を超えない条件で最も近い値になるのでステップ数が最小化される。
一方、手段2に動的陽解法弾塑性解析を用いた場合には、手段2の増分がクーラン条件のために組織予測解析の限界の増分に比べて数桁小である。クーラン条件は動的陽解法弾塑性解析の解が発散しない条件であり、問題の設定により変化するので増分を一概に決められないが、例えば結晶塑性モデルの解析の限界増分の100分の1であると仮定すれば、本来1ステップで処理できることを100ステップで行う無駄が発生する。そのため変換手段3を用いない場合には組織予測解析でステップ数が膨大となり計算時間が増加するため実用にならない問題があった。
そこで変形解析が動的陽解法弾塑性解析の場合には手段2で取得した変位勾配の増分を積分して適合増分を生成する。積分区間の最初と最後を手段2の増分の開始または終了位置に合わせることとし、手段2で取得した変位勾配の増分に対して3方向の伸び圧縮ひずみ成分(垂直ひずみ成分)の中で最大の増分が適合増分になる区間数で全ての成分の積分を行った。尚、積分の処理は簡単のため対象となる区間の各増分の線形結合として処理することができる。この方法の特徴は比較的単純な手順にも関わらず、手段2の増分の最初と最後で手段3と変位勾配が一致するなど近似度が高いことにある。
非特許文献16から19に開示の前田氏らの3D剛塑性有限要素解析ではC断面(材料の中心軸に垂直な平面)内の部位によって圧下率が分布する。そのため、流線に沿って変形の履歴を取得する際にC断面位置によらず一律に一定時間毎に変形勾配増分を取得すると、圧下率が大の場所では解析の収束条件を超える可能性があり、また圧下率が小の場所では殆ど変形が生じないため無駄な変形ステップによるロスが発生する可能性がある。手段3を用いることによりこれらのリスクは顕在化せず、最適な適合増分が生成される。そのため、途中異常終了の発生を防止し、かつ処理時間が短縮される。例えば、圧下率の高い流線では必要最小限の変形ステップでそれなりに長い計算時間をようするが、解の発散は生じないので安心して解析できる。また、圧下率の低い流線では少ない変形ステップで短い計算時間で処理が終了する。これは、形鋼圧延などの場合に特に顕著に生じる。
以上のように本発明の際立った特徴として、手段3の導入によるハイブリッドモデルの実用化があげられる。手段3を考案しなかったならば本発明は完成されなかった。
結晶塑性モデルを生成する手段4は変形解析の着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段である。結晶塑性モデルは従来技術の種々のモデルを利用することができる。ここではその代表としてソースコードと理論展開が開示された図22と表4に示す高橋氏の数値材料試験のFEPMを用いることにする。
尚、材料は代表的なFCC材料であるアルミニウムを用いたが、他の材料でも実験値に合わせてデータを変更することで同様に利用できる。特に、鋼の熱間加工ではFCCの結晶構造であるため、アルミニウムとほぼ同様の理論が適用できるものと期待される。詳細は高橋氏のテキスト『多結晶塑性理論』に譲る。
境界条件を生成する手段5は手段3で生成した変位勾配の適合増分に解析対象領域(基本は図21に示す立方体ブロック)の表面上の節点座標を乗じることにより、節点の変位境界条件を導出する。
即ち、節点の速度を表わす数1の式の左辺の速度ベクトルは、節点の座標を表わす右辺右側の位置ベクトルに右辺左側の3×3のマトリックスを作用させることにより求められる。そして3×3のマトリックスは変位勾配の速度成分を表わしており、各成分は垂直ひずみEとせん断ひずみΓおよびスピンΩに関する速度成分の線形和からなる。数1の式の両辺に各変形ステップの時間増分を乗じることにより、左辺は変位増分ベクトル、右辺は3×3の変位勾配増分のマトリックスと節点の位置ベクトルの積になる。各変形ステップで3×3のマトリックスに手段3で生成した変位勾配の適合増分を代入する。境界条件を指定する解析領域の表面節点の座標を位置ベクトルに代入することにより、境界節点に指定する適合変位増分が得られる。
Figure 2008197852
この方法は近似的な周期境界条件であるが、その長所は直感的に理解しやすいこと、余分なコネクティビティーの発生が無いこと、変形後の解析領域に対しても全く同じ処理を適用できることなどである。また、マクロスケールの解析を分離することにより工具との接触などを一切考慮しないこと、単純な格子状のメッシュを利用することなどで処理を単純化できる。そのため、この方法を利用することにより、同じプログラムで全ての条件に対応できる汎用性を確保できるので、システムの開発と保守の両面でメリットが得られる。手段2のマクロスケールの解析における境界条件が工具接触や複雑形状定義などのため対象とする塑性加工プロセス毎に修正変更が必要なことに比べて、際立った特徴である。
解析を実施する手段6は境界条件にもとづき結晶塑性モデルの解析を実施する手段である。
組織状態を推定する手段7は結晶塑性モデルの解析結果、即ち個々の結晶モデルの結晶方位を示すオイラー角の変化から組織状態を推定する手段である。実験では結晶方位をX線回折法と同様に着目する結晶面の法線ベクトルをステレオ投影した極点図により表示することが一般的である。そこで、幾何的な関係を考慮して結晶塑性モデルの解析結果より得られた各結晶のオイラー角を基に極点図を作成する。この変換の詳細は高橋氏のテキスト『多結晶塑性理論』に譲る。
出力手段8はテキストファイルに結果を書き出すのが一般的である。また、結果を表計算や図形表示のために種々のフォーマットに変換して出力することも可能である。また、対話式のプログラムとして、直接グラフ、表、図形などの表示を行っても良い。必要に応じて利用する。
図2は本発明の第2の装置の実施形態を示すフローチャートである。
図2の装置と図1の装置の大きな相違点は、図2の装置が第1、第2、第3の3段階の塑性加工履歴に基づき解析を行うのに対して、図1の装置は1段階の塑性加工が基本である。ここで第1段階塑性加工を1次加工プロセス、第2段階塑性加工を引張り数値材料試験、第3段階塑性加工を第1段階塑性加工の材料を用いた2次加工プロセスとして想定することができる。また1次加工プロセスを板の冷間圧延、2次加工プロセスを板の深絞り成形とすれば高橋氏のシステムと比較できるので理解し易い。
図1の塑性加工と図2の第1段階塑性加工が対応し、これから手段1と手段11、手段2と手段12、手段3と手段13、手段4と手段14、手段5と手段15、手段8と手段18が対応する。即ち、図1の説明と全く同様なので詳細は省略するが、手段15までの解析で第1段階塑性加工、即ち1次加工プロセスによる被加工材の組織発展モデルが構築される。
そして、手段15で初めて第2段階の塑性加工が適用され、対応する境界条件が設定される。この第2段階の塑性加工は上述のようにFEPMによる引張り数値材料試験に相当する。この境界条件は比較的単純であり、高橋氏のテキスト『多結晶塑性理論』に式として与えられているので、第1段階塑性加工のように手段2で境界条件設定に必要な変位勾配の増分を求める必要はないことに注意が必要である。
解析を実施する手段16は境界条件に基づき第1段階塑性加工および第2段階塑性加工の結晶塑性モデルの解析を実施する手段である。この段階で1次加工プロセスの組織発展が予測され、所望の方向の引張り数値材料試験で変形の異方性による引張り方向と垂直な2方向のひずみが求められる。
簡易材料モデルの変数を同定する手段17は第2段階塑性加工の結晶塑性モデルの解析結果から所望の簡易材料モデルのモデル変数を同定する手段である。例えば、板成形の異方性を示すr値(Lankford値)である。これは上記の引張り方向と垂直な2方向のひずみで定義されるもので、板幅方向のひずみを板厚方向のひずみで除した値である。この値は引張り方向により変化するので、所望により第2段階塑性加工を複数の方向の引張り試験として行うことにより評価が可能である。
簡易材料モデルを組み込んだ第3段階塑性加工の解析を実施する手段19は単数または複数のパスからなる第3段階塑性加工の履歴に基づき簡易材料モデルを組み込んだ塑性加工解析を実施する手段である。
手段17によりr値が求まると市販のプログラムなどを用いて第3段階塑性加工が実施できるので、板の深絞り成形における成形性を評価することが可能になる。尚、この場合の素材として第1段階塑性加工の終了時の材料を用いること、その場合のr値以外の特性は手段12の変形解析により取得できることに注意が必要である。
尚、簡易材料モデルとして非特許文献18で前田氏が開示したBarlatらの異方性降伏関数モデルを用いることも可能である。手段15で簡易モデルの境界条件を生成し、手段16でBarlatらの異方性降伏関数モデルについて解き、手段17でモデルパラメータを同定する。手段19ではBarlatらの異方性降伏関数を組み込んだ有限要素法により板成形などの加工プロセスの解析を実施することができる。特に材料がアルミ合金の場合にはこの手法を選択することにより解析処理時間を短縮できる。
本発明の第2の装置により、机上で最終製品の成形に必要な素材の加工条件などが予測できる。この装置により材料設計における最適化が容易になることは自明である。
次に本発明の第3の装置の実施態様について説明する。請求項1に記載の装置では結晶塑性のモデルの境界条件に関する数1の式において3×3の行列の変位勾配速度に変形ステップの時間増分を乗じた変位勾配増分の成分を変形ステップ毎に指定する必要がある。FEPMの場合には図22のフローチャートにおいて外側のループで示す変形ステップに対して合計で9成分の変位勾配増分を指定する事になる。
高橋氏は非特許文献4においてFEPMのプログラムのソースコードを開示した。その際、一軸引張りの軸方向の変位勾配増分を0.0005と設定したが、発明者がこれを種々変更した結果0.0015以上に設定すると解が発散して途中異常終了することが判明した。この場合、収束を支配する成分として引張り軸方向の変位勾配増分の絶対値をβ1とすれば、収束限界βは0.0015と容易に定義できる。
しかし、請求項1に記載の装置では一般に多軸応力場での変形であるから、9成分の内どの成分に着目して変位勾配β1を定義するかは自明でない。そこで、前記3×3の行列の対角成分に関連する垂直ひずみ増分の内で絶対値の最大値をβ1として定義し、その場合の収束限界βを一軸引張りの場合の0.0015として代用した。この場合には解が発散しない収束条件1として(α1×β<β1<α2×β、α1=0、α2=1)と記述することができる。具体的には(0<β1<0.0015)である。尚記号<は不等号であり右辺は左辺より大であることを示す。
しかし、収束条件1の設定ではβ1=βの場合に不安定要因などで解の発散の危険性がある。また、β1=0付近で変形ステップ数が無駄に設定される可能性がある。そこで、これらの問題を回避するより好ましい設定を検討した。
高橋氏は前記の収束限界β=0.0015に対して1/3倍の0.0005を設定したが、これは問題による微妙な収束限界の変化に対して解が発散しないで対処できるように余裕代を考慮したためである。この余裕代に関する変数をΩで定義して不等号に関する設定値をΩ×βと定義する。Ωの上限は収束限界を考慮して1、下限は高橋氏の設定値の1/3から0.3に設定した。そして、Ω=1の場合に、β1が収束限界β内に入るようにα2=1とした。また、前記の区間分割による変換方法に従って、変形解析における各変形ステップの増分の中で最大の成分値を組織予測解析の限界増分βで除して得られた小数点以上の商に1を付加した数を分割数とした場合に得られる下限値0.5に着目し、α1=0.5と設定した。即ち収束条件1よりも好適な収束条件2として(α1×Ω×β<β1<α2×Ω×β、0.3<Ω<1、α1=0.5、α2=1.0)を満たすように設定する。
また、動的弾塑性有限要素解析に関して、例えば手段2で得られたβよりかなり小さな変位勾配増分の和による変換方法の場合でも、収束条件2として(α1×Ω×β<β1<α2×Ω×β、0.3<Ω<1、α1=0.5、α2=1.0)をそのまま適用することができる。
図3は本発明の第4の装置の実施形態を示すフローチャートである。
図3に示すように本発明の第4の装置は被加工材の着目部位の変位勾配増分の履歴35を取得する手段として、非定常解析法の弾塑性有限要素解析30、非定常解析法の結晶塑性モデル解析31、定常解析法の剛塑性有限要素解析32、非定常解析法の剛塑性有限要素解析33、非定常解析法の動的弾塑性有限要素解析34の何れかを選択できる。また、所望によりその組み合わせでもかまわない。
塑性加工プロセスの変位解析は個々のプロセスの特徴を反映して種々の複雑な境界条件に対応しなければならない。1)非定常解析法の弾塑性有限要素解析は多くのマルチスケール解析に用いられる方法であり、非特許文献8などで用いられている。2)非定常解析法の結晶塑性モデル解析は請求項1で開示された結晶塑性解析モデルと同様のモデルである。結晶塑性解析モデルに擬似的ズーミング手法を取り入れて詳細解析を行うことができる。3)定常解析法の剛塑性有限要素解析は圧延や押し出しなどの塑性加工プロセスにおいて素材の長手方向の中央部付近を定常変形状態と仮定することにより、解析を簡易化できる。計算機の処理の負担が大幅に軽減できるので複雑なシームレス管の傾斜圧延解析などに適用されており、解析対象の塑性加工プロセスを大幅に拡大できる長所がある。4)非定常解析法の剛塑性有限要素解析は素材の先後端部や鍛造などの解析に適用され、柔軟な解析が可能になる。また、近年専用解析システムが市販されており、CADとユーザーフレンドリーなGUIを併用することによって複雑な解析を比較的簡単に操作できるようになった。5)非定常解析法の動的弾塑性有限要素解析は自動車の衝突解析などの変形が激しい場合にも適用できる頑健な解析(ロバストな解析)に特徴がある。近年は板成形や管成形などの2次加工の解析に広く利用されている。
図1または図2の装置において、30から34の何れかの変形解析を行うことにより、従来の変形解析を分離しない結晶塑性モデルでは解析出来なかった種々の塑性加工プロセスに対して、比較的容易に結晶塑性モデルを適用できるようになった。また、手段3を通じて手段4で処理量の最小化を実施することが可能になった。
一方、定常解析法の剛塑性有限要素解析は変位勾配増分が直接定義されない。この場合、着目点に関する材料の流線に沿って積分を行うことによって任意の時刻の変位勾配を求めることが可能である。そして異なる時刻の変位勾配の差から所望の変位勾配増分を生成することができる。このような変換を行うことによって、定常解析法の剛塑性有限要素解析の場合も比較的容易に結晶塑性モデルを適用できるようになった。
また、剛塑性有限要素解析で取得した変位勾配増分は体積弾性変化を考慮しないので、弾塑性有限要素解析のFEPMの境界条件に適用する際に、両者のモデルの差に起因する誤差が発生する。一般に塑性変形の降伏条件は最大せん断応力が材料固有の臨界値を超えた場合に発生することが知られている。そのため体積弾性変形の有無による誤差は直接せん断応力には影響しないため変形の解には影響が少ない。しかし、静水圧応力には直接影響する。そこで剛塑性有限要素解析で静水圧応力の履歴を取得することにより、FEPMの静水圧および体積弾性変形の修正を行うことができる。
ミクロスケール解析を実施する手段が、静的陽解法の結晶塑性モデル解析36、静的陰解法の結晶塑性モデル解析37、動的陽解法の結晶塑性モデル解析38、準陰解法の結晶塑性モデル解析39の何れかを選択できる。また、所望によりその組み合わせでもかまわない。
ミクロスケール解析では解析対象の特性に応じて様々なモデルが提案されている。図3のハイブリッド解析ではマクロスケール解析の変位勾配増分の履歴35から手段5により境界条件を生成するため、手段5を最適化することで各種のミクロスケールの結晶塑性モデル解析を利用することができる。
本発明では結晶塑性モデル解析を主に非特許文献4『多結晶塑性論』に開示のFEPMを用いて説明している。FEPMは静的陽解法の結晶塑性モデル解析36に分類されるものであるが、その主な機能は境界条件を入力して有限要素解析により組織状態などの結果を出力する。これは基本的に同様の機能を有する静的陰解法の結晶塑性モデル解析37、動的陽解法の結晶塑性モデル解析38、準陰解法の結晶塑性モデル解析39により代替できる。本発明を実施する際には解析を実施する手段として所望の結晶塑性モデルを選択して適用することができる。
その際、数1の式に示すようにミクロ境界条件を適用する。これは非特許文献6『均質化法入門』に開示された周期境界条件と異なり単純であるため、直感的な理解が容易であり、また境界条件を付与することで余分なコネクティビティーを生じない特徴がある。そのため、周期境界条件を適用する際に比べて計算処理を確実に効率良く行うことができる。しかし、本発明ではミクロスケールの結晶塑性モデル解析に均質化法を適用することも可能である。その場合は境界条件として数1の式を用いないで、結晶塑性モデル解析のユニットセルの体積平均の変形勾配増分として変位勾配の適合増分を指定する。
図4は本発明の第5の装置の実施形態を示すフローチャートである。
図21に示すFEPMの結晶塑性モデルは立方体ブロックを6面体の有限要素で構造格子状に分割し、各要素を結晶とみなして結晶方位を付与する。結晶塑性モデルを解析することにより有限要素が変形し、そのため結晶も同様に変形して組織変化が生じる。組織変化は各結晶の結晶方位の変化として観察される。この結晶方位の変化は初期の結晶方位分布、即ち結晶塑性モデルの初期の結晶構造に依存するので、精度の高い予測をするためには実際の材料の特徴に合わせて初期の結晶方位分布を有する結晶塑性モデルを生成する必要がある。
塑性加工プロセスでは素材の結晶方位がランダムで等方性を有するものと、素材の製造履歴の影響で結晶方位の偏った分布のため異方性を有するものがある。前者の場合は乱数を生成してこれに従って結晶方位をランダムに配置する手法が用いられる。この場合は素材の結晶方位の測定をしなくても結晶塑性モデルが作成できるので便利である。後者の場合は、実際の材料の結晶粒子の位置と方位を測定して結晶塑性モデルを作成する必要がある。
代表的な結晶方位分布の測定方法として、X線回折法がある。これは材料の測定部位にX線を照射してその反射X線または透過X線が材料の結晶方位に起因して回折する性質を利用する。測定結果は非特許文献3や非特許文献16で開示されたODF(orientation distribution function)データ、即ち、オイラー空間にある一定の角度ごと(5度程度刻み)の方位密度を示した数表として通常ファイルに出力される。このデータから必要個数の結晶粒数の離散的方位を決定して極点図にプロットされるので、ODFデータもしくはその極点図を基に変換手段を用いて結晶塑性モデルを作成する。変換には非特許文献3に紹介された市販のプログラムを利用することが可能である。また、非特許文献4の『多結晶塑性論』には高橋氏らの変換のためのプログラムが紹介されている。ただし、この変換では結晶粒子の配置は考慮されず、また解像度は結晶単位であり、結晶粒内は均一な方位であると仮定される。そのため、デジタルイメージに基づくモデルには直接利用できない。
近年、走査型電子顕微鏡(SEM)が発達し、例えば電界放射型の走査型電子顕微鏡(FESEM)では10万倍の高倍率の観察が容易に行えるようになった。また、付属装置としてEBSP(またはEBSD)と呼称される結晶方位分析装置が開発されたので、観察した画像に結晶方位を色分けで表示することができるようになった。この場合、解像度は結晶粒内の局所点を表示するのに十分である。また、各測定点の位置(画素の並び位置)と結晶方位をファイルに記録することも可能である。そのため2Dのデジタルイメージモデルを作成することが可能である。また、結晶方位分布を極点図に変換することも可能である。
図4はEBSPによる実測結果を用いて結晶塑性モデルを生成する方法を示したものである。右側は結晶方位のデータから極点図を生成してこれを基に生成する場合である。極点図から結晶塑性モデルへの変換は従来のX線回折による極点図からの変換と同様に行うことができる。この場合は結晶粒界に関する情報を持たないので結晶方位は結晶粒内で一定であるとみなす。
図4の左側はEBSPの画像と結晶方位の両方を利用する方法で、結晶の位置情報を有するため結晶粒内の結晶方位分布をデジタルイメージモデル化できるものである。CRTなどのディスプレイに表示された結晶方位分布を色分けした電子顕微鏡の画像を参照して、この画像イメージ41から所望によりモデル化する部位を選択する。尚、近年は計算機を用いた画像処理技術が発達したので、結晶方位データから結晶粒界を抽出できる。このようにして抽出された画像から所望の条件の結晶粒子を検索してモデル化する部位を選択すれば自動処理が可能になる。また結晶方位のデータは画像の各部位(実際にはピクセル)に対応付けされているので、選択した部位の画像に対応する結晶方位データをファイルから抽出する。
これはファイルのデータをCRTなどのディスプレイに表示する場合の逆のデータ処理であり、EBSPの仕様を理解すれば適切に実行できる。そして、選択したデータからCRTなどのディスプレイに画像を生成する手順で2次元(2D)のデジタルイメージに基づくモデル42のファイルを生成する。これは碁盤目状(格子状)に配置され自然な節点番号付けがなされたピクセルに対して、結晶方位のデータを割り付けたものである。結晶方位データはオイラー角であらわすことができるので、1ピクセル当たり3個の方位角が割り付けられる。次にピクセルに対応するように碁盤目状に2Dの有限要素分割を行い、各有限要素に対してピクセルに関係付けられた3個の方位角を割り付ける。
FEPMでは3次元(3D)の有限要素分割を行う必要があるため、2Dの有限要素分割から3Dの有限要素分割に変換する必要がある。厳密には非特許文献12のように厚さ方向に複数の2Dイメージを採取して重ねる必要がある。しかし、コストが高いのでここでは1枚のデジタルイメージから作成することにする。種々の方法が考えられるが、発明者が非特許文献20『塑性加工有限要素データ作成ツール』で開示した介在物を有する材料のデジタルイメージ化で行ったようにスライスを積層する方法による2Dから3Dの変換装置43を適用する。先ず2Dの有限要素分割の要素に厚さを付与して3Dの有限要素に置き換えることにより板状の3Dの有限要素分割を生成する。この3Dの有限要素分割から複数の矩形の部分有限要素分割を切り出す。複数の部分有限要素分割を厚さ方向に重ね合わせることによりブロック状の3Dの有限要素分割を作成する。このようにして得られた3D拡張デジタルイメージ結晶モデル44はEBSPで取得された結晶方位分布を保持しながら結晶粒内の局所部位を識別する解像度を有する。比較的単純な方法であるが、確実にモデル化ができる特徴がある。
3D拡張デジタルイメージ結晶モデル44は所望により拡張機能を用いて3Dの有限要素の各積分点に複数個の結晶方位を対応付けすることも可能である。この場合、個々の有限要素領域を複数個の領域に分割し、この分割領域を個々の有限要素の積分点に対応付ける。解析領域にデジタルイメージを重ね合わせて、有限要素の分割領域に対応するピクセルに関連付けされた結晶方位を、各分割領域に関連付けされた積分点に割り付けることができる。この拡張機能を利用することにより非特許文献3に開示の各積分点に複数個の結晶方位を対応付ける場合にも、デジタルイメージに対応した結晶方位分布を有する3D拡張デジタルイメージ結晶モデルの生成が可能になる。この拡張機能を適用することにより、FEPM以外の結晶モデルに対しても3Dデジタルイメージモデルの生成および適用が可能である。
図5は本発明の第6の装置の基本形態を示す説明図である。
図5は図2の装置を拡張してEBSPの実測データから異方性パラメータを求めるとともに、所望の結晶粒内の局所変形状態を詳細に調査するための装置を示す。図2の装置番号に10を加算した装置番号が概ね対応している。
結晶塑性モデルによる第1段階塑性加工の変位勾配増分の履歴を取得する手段22は請求項1に記載の結晶塑性モデルと基本的に同様のものを用いることができる。即ち、第1段階塑性加工として所望の方向の引張り試験を想定する。結晶塑性モデルの結晶方位はEBSPの実測データを利用して与えるものとし、図4右側に示す極点図から非特許文献4に開示の高橋氏の結晶方位のマッピング方法を用いて各有限要素にそれぞれ1個の結晶方位を付与する。
引張り数値材料試験の境界条件を用いて解析を実施する。
そして、解析領域内の所望の位置における着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する。結晶塑性モデルを生成する際に、着目部位の有限要素の結晶方位を特定の結晶方位に置き換えることにより設定することも可能である。このように設定することで所望の解析が期待される。
変換手段23により変位勾配の適合増分を生成する。この場合、変位解析と組織発展解析をほぼ同じ定式の結晶塑性モデルとするので、手段22で取得した増分をそのまま用いても組織発展解析で解が発散するような不都合は生じない。しかし、一般に変形解析では解析領域内で不均一な変形が生じるので、着目部位のひずみが全体の平均のひずみより極端に小さい可能性がある。その場合には、変換手段23により複数の増分を積分することでまとめて変形ステップ数を減らすことが可能になる。
デジタルイメージモデリングによる結晶塑性モデルを生成する手段24は被加工材の着目部位の材料組織イメージの結晶方位分布に関する情報に基づき再構築された三次元(3D)のデジタルイメージによる結晶方位分布を有する結晶塑性モデルを生成する。これは図4の3Dデジタルイメージ結晶モデルを生成する手段が利用できる。但し、この場合に2Dイメージモデルから生成された板状の3Dイメージモデルをそのまま結晶モデルとして利用することが可能である。厚さ方向の要素数を減らして板面内の要素数を増加することにより、全体の要素数を増加させずに解像度の高いデジタルイメージに基づくモデルを生成できる。この場合、EBSPの結晶粒内局所部位を識別する高い解像度を有効に利用できるので、粒内の変形不均一分布を解析することが可能になる。
手段25により第1段階塑性加工の境界条件を生成する。解析領域が板状であっても請求項1で用いた同じ方法で境界条件を生成することができる。
手段26で解析を実施することにより、バルクの変形履歴に応じた着目部位の詳細な変形状態を求めることができる。また、有限要素数の増加を制限できるので実用的な時間で処理できる特徴がある。
簡易材料モデルの変数を同定する手段27は結晶塑性モデルの解析結果から所望の簡易材料モデルのモデル変数を同定する。ここで、手段22と手段26で解析結果を求めるので、モデル変数の同定に際して所望の結果を用いることができる。手段22はバルクの平均的な特性、手段26は着目部位の特性であり、両者は一般に異なる値を示す。
このようにして引張り試験を行うことにより、引張り方向に垂直な直行する2方向のひずみを求めて、想定した幅方向ひずみを厚さ方向ひずみで除すことにより異方性パラメータを取得することができる。
所望により手段26で求めた異方性パラメータを用いて簡易材料モデルを組み込んだ第2段階塑性加工の解析を手段29により実施する。即ち、市販の専用プログラムなどを用いて深絞り加工に対してr値がどのように影響するかなどを調査する事ができる。
実際に材料試験が困難な微小試験材に対してEBSP測定結果を用いて仮想の材料試験および2次加工試験が可能になる。
図6は本発明の第7の装置の実施形態を示すフローチャートである。
FEPMによる結晶塑性モデルの解析では収束条件の制限から増分を小にするのでステップ数が増加する。また、各ステップで処理量の多い収束解析を実施するのでさらに処理量が増加する。そのため結晶塑性モデルの解析が処理時間のほぼ全体を占めることになり、処理待ち時間を減らして性能を向上する必要がある。また、結晶塑性モデルの解析の中で最も処理時間を要しているのは連立1次方程式の解法である。そこで、連立1次方程式の解法を高速化して全体の処理時間の削減を検討した。
連立1次方程式の解法として直接解法と反復解法がある。また、連立1次方程式を行列表記してその係数を剛性行列と呼称すれば、剛性行列は密行列、帯行列、スカイライン行列、一般疎行列などに分類される。
図6の左側に示すのがFEPMのプログラムで開示された直接解法に関するフローの一部分である。図示しないがこのフローの外側に適合増分のステップ数の処理ループが設定されている。各ステップで剛性行列が作成され、図中の剛性行列の分解の機能でコレスキー法による行列の分解が行われる。その後、活動すべり面を決定する収束ループがあり、通常10回程度のループである。このループの中で後退代入により解が求められる。この処理は行列の分解に比べて無視できる程度の処理量である。
FEPMのプログラムでは剛性行列が帯行列であるため、行列の分解によってfill-inと呼称される行列要素が多く発生して処理量が大幅に増加する問題があった。特に、結晶塑性モデルの有限要素分割数が増加すると指数関数的に処理量が増加するため、高橋氏の報告では要素分割数を6×6×6=216個に制限して対応した。
特許文献4(特開2006−164219号広報)には多重スカイライン法による一般疎行列の直接解法によるfill-in発生量の低減と処理速度の向上対策が開示された。これは有限要素分割の節点番号付けを高橋氏の用いた自然な節点番号付けと異なる解剖法順序に変更することが必要である。また、解剖法順序を利用するための前処理が必要であり、この処理量が多いため実際に組み込んで比較しないとメリットがあるか判断出来ない。そこで、多重スカイライン法による一般疎行列の直接解法を組み込んで実際に処理時間の短縮効果を確認して次の発明を完成させた。
図6の左側に示すFEPMのプログラムのフローの外側に図示しない変形ステップの処理ループが設定されている。このループに入る前で解剖法順序を利用するための前処理を1回だけ行う。剛性行列の分解を多重スカイライン法による一般疎行列の直接解法を適用したものに変更する。また剛性行列の後退代入も多重スカイライン法による一般疎行列の直接解法に対応したものに置き換える。
その結果、解剖法順序を利用するための前処理の追加により無視出来ない処理時間が発生した。剛性行列の分解ではfill-in発生量が低減されたので処理時間がかなり短縮された。剛性行列の後退代入では若干処理時間が増加した。これらを総合した処理時間は高橋氏が用いた6×6×6分割より大きい場合に、高橋氏の開示した方法より処理時間が短縮された。また、図6のように処理量の最も多い剛性行列の分解を各変形ステップの初期に1回だけ実施するので総合処理時間の短縮に大きな効果があることも確認された。
図6の右側は連立1次方程式の解法として不完全分解による前処理付き行列の反復解法を適用したFEPMのプログラムのフローを示す説明図である。この図の外側に図示しない適合増分のステップ数の処理ループが設定されている。各ステップで剛性行列が作成され、図中の剛性行列の不完全分解による前処理で不完全修正コレスキー法による行列の分解が行われる。その後、活動すべり面を決定する収束ループがあり、通常10回程度のループである。このループの中で不完全分解前処理行列のCG法による反復解法により解が求められる。図示しないがCG法による反復解法の中で解の収束ループが設定されており、活動すべり面を決定する収束ループ全体で不完全修正コレスキー法と同程度の処理時間を要する。但し、不完全修正コレスキー法は高橋氏の開示した直接法による剛性行列の分解に比べてfill-in発生を完全に防止するので処理量が大幅に削減される。特にデジタルイメージに基づくモデルを適用して有限要素数の増加による高解像度を達成する際に計算時間の短縮方法として有効である。
また、図6のように処理量の多い剛性行列の不完全分解による前処理を各変形ステップの初期に1回だけ実施するので総合処理時間の短縮に大きな効果があることも確認された。通常の不完全行列分解による前処理付反復解法では前処理と反復処理が一体となっているので、FEPMではこれらを分離して適用することが処理速度の向上のために重要である。
尚、図6のフローをFEPMの場合について説明したが、非特許文献16に開示の結晶粘塑性モデルなどでは収束計算は発生しないので、その場合は図6の各フローチャートで収束ループが1回として当該サブプログラムの変更なしにそのまま利用できる。
本発明の第8の装置についてその特徴を以下に説明する。
図1の装置では手段4で結晶塑性モデルを生成し、手段5で境界条件を生成し、手段6で解析を実施することによって、各ステップの有限要素節点の速度を求める。節点速度が求められると各ステップの時間増分を乗じて節点変位増分が求められるので、手段4で設定した初期の節点位置に加算することにより各ステップの節点位置が求められる。
また、要素の形状関数(要素内の変数を節点の変数から内挿する関数)を用いることによって、各要素で変位勾配増分もしくはひずみおよびスピン増分が得られる。手段4で生成した初期の結晶格子の方位角に対して各変形ステップで結晶格子の方位角の増分を加算することによって各変形ステップの結晶格子の方位角を得る。そのために変位勾配増分もしくはひずみおよびスピン増分を結晶格子の方位角の増分に変換する結晶格子の回転モデルを利用する。FEPMでは数学的回転則が用いられている。本発明の装置においても解析結果から組織状態を推定する手段として結晶格子に関する数学的回転則を利用することによって結晶の方位を示すオイラー角を求めることができる。尚、所望により非特許文献4に開示のバイアスローテション法や非特許文献16に開示の交差すべり方法など任意の結晶回転則に変更することが可能である。
高橋氏は非特許文献4『多結晶塑性論』で結晶格子の方位を示すオイラー角から任意のすべり面に関する極点図の生成方法を開示している。また、各結晶のローカル座標に対して圧延方向などの特定の方位をプロットする逆極点図についても生成方法を開示した。本発明の装置では図1、図2、図5の装置を用いることによって各結晶格子のオイラ―角が求まるので、解析結果を出力する手段としてオイラー角に基づく所望の結晶すべり面の極点図または逆極点図として出力することができる。
同様にEBSPのように、所望の結晶塑性モデルに関する断面の結晶すべり面の分布図として出力することができる。
これらの出力手段により直感的に組織変化を把握することができる。
本発明の第9の装置についてその特徴を以下に説明する。
図2の第1段階塑性加工の変位勾配増分の履歴を取得する手段12または図5の結晶塑性モデルによる第1段階塑性加工の変位勾配増分の履歴を取得する手段22の第1段階塑性加工の結晶塑性モデルが引張り試験である。また、図2の簡易材料モデルの変数を同定する手段17または図5の簡易材料モデルの変数を同定する手段27において簡易材料モデルが異方性構成式であり、同定するモデル変数に異方性パラメータが含まれる。
圧延による加工集合組織の積極的な利用がプレス成形用の板材の製造において行われている。板のプレス成形では張り出し成形や深絞り成形などのように、工具で材料を引張り変形させて型に転写する場合に、板幅方向の変形を板厚方向の変形に優先させて行うことにより材料の破断を防止する。そのためには材料の引張り変形において生じる板幅方向のひずみが板厚方向のひずみより大であることが望ましい。材料の異方性を表すr値は前者を後者で除した値で定義される。そこで、第1段階塑性加工として引張り試験とし、結晶塑性モデルに種々の材料の結晶方位を付与すれば、これらの材料のr値を求めることができる。r値は引張り方向にも依存するので、種々の方向の引張り試験を行うことによりその特性を調べることができる。
実際の引張り試験では試験片の掴み部などが必要になるのでかなり大きな材料が必要になるが、本発明の装置であればそのような制約がないので便利である。極端な場合、電子顕微鏡で観察できる程度の材料でも異方性を調べることが可能である。
本発明の第10の装置についてその特徴を以下に説明する。
図1、図2、図5の装置は各構成手段が電気信号による通信を行うので、各構成手段間で信号を授受する任意の手段が設けられていれば、各手段が分散して設置されていても機能する。通常各手段は計算機の記憶装置に実行可能なプログラムとして記録されており、ユーザーがこのプログラムを起動して計算機のメモリーに読み込んで記憶することにより動作する。通常、変位勾配増分の履歴を取得する手段2、簡易材料モデルを組み込んだ第3段階塑性加工の解析を実施する手段19などは結晶塑性モデルを生成する手段4を中心とする他の手段と異なるプログラムとして設定される。その際、全ての手段が同一の計算機に設定されれば他の計算機と全く独立にスタンドアローン型の装置として機能する。その際、ユーザーは各手段を十分正確に利用できるスキルを有する必要がある。
ユーザーは塑性加工プロセスの開発者か材料開発者が想定される。材料開発者の場合は手段2の塑性加工プロセスの変形解析に対して、正確な操作を行うために多くの情報を必要とすることが予想される。その場合、塑性加工プロセスの開発者に依頼して所望の変形解析を実施してもらい、その結果である変位勾配増分の履歴をファイルとして受け取ることが出来れば手間が省けて問題の多くが解決される。
同様のことが、手段4の結晶塑性モデルの生成についても該当する。対象とする材料の結晶構造や加工硬化のパラメータなどを実験によって得るためには、多くの手間と時間、そしてスキルが必要になる。少なくとも規格化された材料に関しては共通のデータベースから取得出来れば、短時間に信頼できるデータを得ることが可能になる。
インターネット網が発達し、分散データベースを検索する技術や分散サーバーの利用技術が普及した。そこで、各構成手段を高付加価値通信網(代表例としてインターネット、LAN、WAN)に接続された計算機(サーバー機)の記憶装置にプログラムを記録してこれを専門家が管理する。ユーザーは高付加価値通信網に接続された計算機(クライアント機)、携帯端末、携帯電話、移動体通信装置、ゲーム機などの所望の計算処理手段を用いてサーバー機の提供するプログラムを利用する。その際必要な情報を有償で授受することも考えられる。
また、全くの初心者がこのような解析を実施する際、従来は講習会などに参加してスキルアップを図っていた。しかし、Eラーニングシステムが普及し、そのシステムを構築するためのフリーのプログラムが複数開発されているので、これらを利用して解析の手順を対話式の学習システムとして構築することが可能である。また、種々の解析事例や関連データなどのポータルサイトを構築すれば、初心者でも容易に解析を実施することが可能になる。
本発明の第11の記録媒体についてその特徴を以下に説明する。
図1、図2、図5の装置は各構成手段が計算機のプログラムとして記録できる。そこで、この装置を普及させるためにインターネットのサーバーにプログラムを登録しておき、必要なユーザーがインターネットを通じてダウンロードするシステムを構築することができる。計算機のシステムに通暁したユーザーであれば、このダウンロードしたプログラムを用いて図1、図2、図5の装置を構築することが可能になる。
また、プログラムの機能向上やバグ処理などでバージョンアップする際に、同様のダウンロードするシステムを構築すれば、保守管理が一括してできるので便利である。
さらに、DVD、CD、FD(フレキシブルな磁気記録ディスク)、MO、磁気テープ、半導体メモリーなどにプログラムを記録すれば、これを製品として種々の方法により配布することが容易にできる。
特開2006−164219号広報 吉田忠継:『塑性加工有限要素データ作成ツール』、プレス技術、44-11(2006)、39
本発明の装置は、塑性加工プロセスの組織発展のCAEシミュレーションをマクロ変形解析とミクロ多結晶有限要素解析を用いてハイブリッドのマルチスケール解析で行うことに特徴がある。
図7は生産工場における塑性加工プロセスの解析システムの説明図である。3つの破線の四角枠の内、上段はマクロ変形解析、中段はミクロ変形解析、下段は解析結果の評価を示す。そして各枠は右側の実線の枠で示す生産関連の部門に対応している。これらの部門は専門技術を有しており独立性が高いので従来のように製品寿命が長い場合には良く機能していた。そのため各部門に対応する破線の四角枠内の範囲についてはそれぞれ信頼性の高い従来法による解析システムが構築されている。しかし、製品寿命の短縮化に伴い製造可否の判断を迅速に行う必要があるため、各部門間で情報を迅速に授受し共有する必要がある。その際、これらの部門間の情報の伝達速度と信頼性の問題が顕在化した。
図7の解析システムでは破線四角枠の間の矢印で示す情報の流れが上から下への一方通行で単純化されていることが極めて重要である。この情報が十分に信頼できるものであれば、既存の信頼性の高いシステムを用いることにより、シミュレーションを通じて各部門間の情報伝達および共有と最終的な判断の迅速化に寄与するからである。
ところで、塑性加工プロセスと一言でいっても材料メーカーの1次加工プロセスから顧客に近い部品加工メーカーの2次加工プロセスへ裾野が広がるにつれて製品や加工プロセスが多様化する。その場合に図7のような単純な模式図がそのまま成り立つかは検証が必要である。
1次加工プロセスでは被加工材の表面の多くが工具に拘束されて変形が物性よりも主に境界条件で決まることに着目すれば、変形に対するミクロ組織の発展の影響を無視しても大きな誤差は生じない。また、実験による構成関係を用いるので、ミクロ組織以外の因子の影響も考慮できる。経験的にマクロ変形の結果の信頼性はかなり高いと認識されている。少なくとも材料の多くを製造する1次加工プロセスにおいては、上から下への一方向の情報伝達のフローが成り立つ場合が多い。
一方、ミクロ組織に関する評価は主に実験で行われていた。JISなどの規格に基づいた材料開発では絨毯爆撃的な開発方法で対応できたからである。ミクロ組織の評価に際して塑性加工プロセスの特徴を再現できる加工シミュレータと呼ばれる実験装置が利用されてきた。加工シミュレータは圧延の変形を特徴付けるのは材料の圧縮試験変形であるという経験則に基づき、圧縮加工による組織変化を抽出するものである。加工シミュレータで有望なプロセス条件を抽出し、実際の圧延で確認することでメタラジー技術の開発が行われている。
処理の迅速化を図るためにはこれらの実験を出来るだけ多く組織発展の予測解析で代替することが有効である。
そこで、図7の加工プロセスとして円柱の圧縮試験を想定し、ミクロ解析を行って材料の集合組織の発展を予測すれば、過去の実験結果による知見を用いて検証が可能である。この方法が妥当であれば、図7のように圧延のマクロ変形解析の結果を用いて組織発展の予測解析も有効である。
圧延などの1次加工プロセスや加工シミュレータなどの大変形の解析では通常剛塑性有限要素法が利用される。剛塑性有限要素法では大変形の場合であっても計算負荷の少ない微小変形理論が適用できるので短時間に信頼性の高い解を得ることができる。最良の形態として、以下に実施態様例を示す。
本発明の装置の一実施態様例として種々の1次加工プロセスの代表的な模擬試験方法である円柱の一軸据え込みによる圧縮試験の解析を行う。工具と材料間の接触界面の潤滑条件に関して、摩擦係数を種々変化させてシミュレートし、その影響の様子から結果の妥当性を検証する。
表1はマクロ解析条件を示す説明表である。非定常圧縮特性剛塑性有限要素法を適用する。直径8mm高さ12mmのアルミニウム(FCC金属)円柱を軸方向に一対の平行工具で圧下率70%の加工を加える。工具と円柱端面の接触界面のクーロン摩擦係数を0〜0.5(固着)まで変化させる。着目要素で平均した各変形ステップの変位勾配増分(ひずみとスピンの増分)をファイルに書き出す。
Figure 2008197852
表2は変位勾配増分を適合増分に変換する条件を示す説明表である。剛塑性有限要素法によるマクロ解析では比較的詳細な解析条件として70%の圧下を120ステップで行った。この変位勾配増分をそのままミクロ変形解析の境界条件設定に用いた結果、全ての条件で解析が異常終了したため、正常なミクロ変形解析結果を得ることが出来なかった。ミクロ解析では変位勾配増分の絶対値を0.002とすると異常終了し、0.0015にすると異常終了が解消された。そこで、ひずみ増分の絶対値が若干の裕度を考慮して設定した閾値0.001を超える場合にその増分を0.001以下に等区間分割して全体のステップ数を増加させた。マクロ解析でひずみの集中が小の個所と大の個所でマクロ解析の増分値が大きくことなり、そのためミクロ解析の適合増分への変換後のステップ数は少ない場合で299ステップ、多い場合で1975ステップと非常に大きなばらつきが発生した。
Figure 2008197852
表3はミクロ変形解析条件を示す説明表である。非特許文献4の高橋氏のFEPMに倣って初期に有限要素毎にランダムな結晶方位を有する数値材料試験の立方体ブロック(図21に示す6×6×6の要素分割)の変位境界条件として前記の変位勾配増分から導出された節点変位を用いた。また、初期ひずみ法と逐次累積法を用いて非定常弾塑性の収束解析を行った。
加工前後の要素毎のオイラー角(φ、θ、ψ)の変化量から結晶の回転角を求めるとともに、FCC金属の主要なすべり面(1,1,1)の法線ベクトルに関するステレオ投影図(極点図)を作成した。
Figure 2008197852
図8はマクロ変形解析においてクーロン摩擦係数が0.3の場合に中心軸断面内の変形前後の材料の1/4形状を□で変形前、●で変形後の節点位置として示す。工具より材料端面に作用するせん断摩擦力により材料の側面部が工具に接触するフォールディングが発生しており、要素の形状が大きく変化している。
剛塑性有限要素法では理想的な円柱の据え込みの場合を仮定して通常の軸対称変形問題として処理する。そのため密な要素分割を行っても解析時間が少なくて済む特徴がある。本解析では上下対称性を仮定して中心軸を通る断面の1/4領域を8×12=96個の要素に分割した。450MHzで約88Mflopsのパソコンによる120ステップの解析において約15秒程度で解を得ることが出来た。
非特許文献4および非特許文献5に開示のオリジナルのFEPMでは平面ひずみ問題や軸対称問題であっても三次元問題として処理しなければならない。特に、シングルスケールのFEPMでは工具との摩擦の影響を考慮する場合には粗い要素分割の条件であっても数時間程度の処理時間が必要と考えられる。
マクロ変形解析に計算処理量が少ない剛塑性有限要素法を適用できるため複雑な境界条件の塑性加工プロセスの解析を短時間に実施できることは本発明の装置の際立った特徴の一つである。
6×6×6=216個の結晶粒子を含むFEPMのミクロ組織発展解析では着目するマクロ変形解析の位置により解析ステップが299から1975まで大幅に変化した。解析の処理時間はこのステップ数に概ね比例する。そして、450MHzで約88Mflopsのパソコンで1975ステップの場合、約1時間であった。非特許文献16で前田氏らがほぼ同じ加工率の場合の約1200個の結晶粒子を有する結晶粘塑性モデルではほぼ同じ処理能力のワークステーションを用いて約1時間と報告している。このことから、ミクロ組織発展解析を高速化することが重要な課題である。FEPMの場合には請求項7に記載の装置により、高速化を図ることができる。
図9はミクロ組織発展解析において工具と材料間のクーロン摩擦係数が0.5と固着を想定した場合に、加工による円柱端面角部P96の各結晶粒の回転をオイラー角の変化量で示す。フォールディングのため中心軸を通る断面内の回転角θは平均で約1程度(約57°)と大きく回転する。一方、φとψは平均が0で回転を生じない。図示しないが、良潤滑で摩擦係数が0の場合は平均値が全て0であった。これらはマクロな有限要素の変形と良く対応するものであった。塑性変形はせん断応力成分が影響するので、体積弾性ひずみの影響を無視しても差し支えないためと推定される。
図10は図8のP01〜P96で示す要素のミクロ解析による平均回転角と摩擦係数の関係である。対称面に接するP01、P08、P89は殆ど回転が生じないが、側面に接するP48とP96では摩擦係数が増加するに従って剛体回転が発生し、角部のP96で最大1程度(約57°)に達する。
図11は図10と同じ条件で各粒子の回転角の標準偏差を求めた。各結晶粒子の回転角のばらつきは材料が圧縮変形によりファイバー状に潰されて伸びるため、活動すべり面ですべり変形が生じて結晶粒が回転するために生じる。側面に接する要素では摩擦係数によりフォールディング状態が変化するため変動が観察される。素材端面の中心であるP89では摩擦係数の増加とともにデッドメタルとなって延伸が抑制されるので回転が減少する。一方、素材の中心部であるP01ではデッドメタルに押し潰され選択的に大ひずみ変形となるため摩擦係数の増加とともに回転が著しく増加する。
図12はP48要素の各結晶の(1,1,1)すべり面の極点図を上下に高さ方向、左右に半径方向をとり、図12a)加工前、図12b)摩擦係数0の加工後、図12c)摩擦係数0.2の加工後で示す。初期に等方であった組織が、摩擦0の均一圧下により顕著な集合組織を形成することが分る。しかし、摩擦係数が増加するとフォールディングによる剛体回転とせん断変形により、圧縮変形による集合組織が弱まることが分る。これより圧縮の集合組織形成に潤滑が重要であることが示唆される。
また、高橋氏らが非特許文献5でFEPMの圧延の解析と据え込みの解析を実施して集合組織の極点図を比較した。その結果圧延集合組織は表層の一部を除いてほぼ平面ひずみ圧縮(据え込み)の集合組織と同じであることを調べた。このことから、上記の知見は圧延集合組織の形成に際してもそのままあてはまると考えられる。
図13は図6の左側に示す連立一次方程式の直接解法として多重スカイライン法と帯行列法の計算時間を比較した説明図である。多重スカイライン法による一般疎行列の直接解法ではfill-in発生量の低減により処理速度の向上が可能になる。図13に示すようにミクロ組織発展解析に適用した場合に、□印で示す提案の方法は●印で示す従来の方法に比べて要素分割数の増加に伴い高速な演算(16×16×16で約6倍スピードアップ)が可能となる。
以上の円柱の圧縮成形の解析結果がこれまでに実験で観察された特徴に矛盾しないことから、図7の塑性加工プロセスの解析システムは期待通り有効に作動することが確認された。また、本実施例の境界条件を変更して平面ひずみ圧縮試験の解析とすることにより板圧延の組織発展の簡易モデルとして利用できる。
図14は塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置の基本形態を示す説明図である。入力手段1は入力ファイルの書き換えによる変更機能と対話式のユーザーインターフェースによる変更機能からなり、必要に応じて利用する。手段2、手段4の入力ファイルの設定、手段2から8の条件設定、手段8の出力ファイルの設定条件を入力する。
被加工材の着目部位のひずみ経路およびスピン経路を取得する手段2は理論的に種々のマクロ変形解析の手段が利用できる。特に、非定常解析法の弾塑性有限要素解析、非定常解析法の結晶塑性モデル解析、定常解析法の剛塑性有限要素解析、非定常解析法の剛塑性有限要素解析、非定常解析法の動的弾塑性有限要素解析の何れかを利用することにより、材料加工試験、圧延プロセス、押出し、引抜きプロセス、鍛造プロセス、板や管成形プロセス、棒材、線材や型プロセス、および種々の塑性加工プロセスの解析を容易に実施することが可能である。
変位勾配の適合増分を生成する手段3は、図7の塑性加工プロセスのマクロ変形解析とメタラジープロセスのミクロ変形解析に関するインターフェースである。ミクロ変形解析で収束条件を満たす適合変位勾配増分を生成する。
着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段4は主に図21に示す数値材料試験立方体ブロックの有限要素メッシュモデルに結晶方位を付与して結晶塑性モデルを生成する。所望により乱数による等方性結晶方位または機器分析EBSPやX線回折による集合組織の入力を選択できる。
手段5によりひずみ経路およびスピン経路から結晶塑性モデルの境界条件を生成する。
境界条件に基づき結晶塑性モデルの解析を実施する手段6は、通常の連立一次方程式の解法を利用できることは言うまでもない。特に一般疎行列対応の連立一次方程式解法を用いて各ステップの始めに剛性行列の分解を実施することにより、処理時間の短縮を図る。
解析結果から組織状態を推定する手段7は、極点図(全体座標系に基づく結晶面のステレオ投影図)、逆極点図(結晶座標系に基づく加工方位の投影図)、結晶面分布図(EBSPと同様のイメージ)などを所望により選択できる。
解析結果を出力手段8でファイルなどに書き出すことができる。
異形断面の圧延解析における集合組織の発展の解析を実施した。そして、図14に示す被加工材の着目部位のひずみ経路およびスピン経路を取得する手段2として剛塑性有限要素法の定常解析法と非定常解析法を比較検討した。両者の特徴は非特許文献11に詳しく記述されている。定常解析は流線法とも呼称され剛塑性有限要素法において計算処理量と計算時間を削減できる特徴がある。
特許文献5(特開2002−288240号公報)は大変形による非線形性が発生するだけでなくさらに工具と材料の接触など強度の非線形性を伴う圧延解析システムの例である。この場合、定常解析法の剛塑性有限要素解析を採用することにより、棒材および線材の汎用圧延解析プログラムを実現した。
汎用解析プログラムを実現するには、有限要素モデルを生成するためのプリ処理プログラムとの組み合わせが重要である。特に、大変形解析の非定常解析では材料の変形とともに局部的に有限要素の形状が大きくゆがむために計算処理が困難になる問題があった。そのため、ある程度有限要素が変形した段階で再度有限要素分割を行うリメッシュという技術が適用される。しかし、リメッシュはプログラムを複雑にするだけでなく解析誤差の要因になるため、開発コストが大幅に増加する問題があった。
しかし、流線法では空間を有限要素分割するため、材料が変形しても有限要素が大きくゆがむことがないので、リメッシュの必要がない。
汎用解析プログラムを実現するには、計算処理による待ち時間を削減する必要がある。非定常大変形解析では被圧延材の先頭を圧延ロールに噛み込ませて変形が定常状態になるまで解析する必要がある。定常状態に達するまで少なくとも材料のC断面(材料の中心軸に垂直な断面)の代表寸法の数倍程度の長さを圧延する必要があるため、極めて多くの処理時間を要する問題があった。
しかし、流線法では定常変形状態を収束解析で実現するために、初期条件が正解に近い場合はすぐに収束解を得られるという特徴がある。一般に圧延解析では初期解を精度良く近似する方法が工夫されているので、処理時間が少ない。特許文献5では剛塑性有限要素法の流線法を採用したため、リメッシュを廃止し、少ない処理時間を実現して汎用プログラムの開発に成功した。
本実施例では、圧延試験によりメタルフローを検討した結果、非定常圧延解析では有限要素の変形が大きい条件でリメッシュが必要になることが判明した。そのため、図14の被加工材の着目部位のひずみ経路およびスピン経路を取得する手段2として特許文献5と同様に定常剛塑性有限要素解析の流線法を採用した。
定常解析では収束解として上流から下流に節点を結ぶ流線が生成され、各節点の速度ベクトルが得られる。速度ベクトルは節点での流線の接線ベクトルであるから、流線に沿って速度を積分することにより入り口からの時間と位置が求められる。同様に流線に沿ってひずみ速度、スピン速度を積分することにより、入り口からの時間とひずみおよびスピンが求められる。
被加工材の組織発展はこの流線に沿って各時刻の組織発展を求めることと同じである。そこで、上記の流線に沿う経路で任意のステップの終了点と開始点の入り口からの時間とひずみおよびスピンの差分から、当該ステップの時間増分とひずみおよびスピンの増分を求めることができる。この機能を手段2に付与することにより、図14の変位勾配増分の履歴を取得することが可能となった。
変位勾配の適合増分を生成する手段3は、図7の塑性加工プロセスのマクロ変形解析とメタラジープロセスのミクロ変形解析に関するインターフェースである。ミクロ変形解析で収束条件を満たす適合変位勾配増分を生成する。また、型材、棒材、管材などの異形断面を圧延する際には、圧下率の大小に応じて最小の変形ステップ数でミクロ変形解析を実施するため処理時間が短縮される。
着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段4は主に図21に示す数値材料試験立方体ブロックの有限要素メッシュモデルに結晶方位を付与して結晶塑性モデルを生成する。所望により乱数による等方性結晶方位または機器分析EBSPやX線回折による集合組織の入力を選択できる。
手段5によりひずみ経路およびスピン経路から結晶塑性モデルの境界条件を生成する。
境界条件に基づき結晶塑性モデルの解析を実施する手段6は、通常の連立一次方程式の解法を利用できることは言うまでもない。特に一般疎行列対応の連立一次方程式解法を用いて各ステップの始めに剛性行列の分解を実施することにより、処理時間の短縮を図る。
解析結果から組織状態を推定する手段7は、極点図、逆極天図、結晶面分布図などを所望により選択できる。
解析結果を出力手段8でファイルなどに書き出すことができる。
本実施例は非特許文献16から19で未開示の変位勾配の適合増分を生成する手段3に関して、FEPMによる集合組織モデルの場合に具体的な技術を開示することにより発明の技術を完成させた。この技術はFEPM以外のモデル、例えば非特許文献16から19に採用のモデルにおいても適用できる可能性が高い。
図15は塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置の基本形態を示す説明図である。図14の解析装置を発展させて塑性加工後の被加工材の集合組織による簡易材料モデルの変数を同定する装置とした。
手段11から15までは図14とほぼ同様であり説明は省略する。但し、簡易材料モデルの変数の同定のために、手段15では1%程度のひずみを与える数値材料試験のための境界条件を設定する。結晶塑性モデルは手段14で生成した変形後のものをそのまま用いることができる。また、手段14で生成した変形前のモデルに変形後の結晶方位を付与して生成することもできる。
手段16で解析を実施する。
手段17で簡易材料モデルの変数を同定する。例えば引張り数値材料試験を実施して、引張り方向に垂直な直行する2方向のひずみの比を求めることにより異方性変数であるr値を測定できる。r値とマクロな異方性構成式を用いることにより種々の塑性加工解析が可能になる。
例えば手段19により簡易材料モデルを組み込んだ第3段階塑性加工の解析を実施することができる。第3段階塑性加工として板材や管材などの成形プロセスを設定し、r値とマクロな異方性構成式によりプレス成形試験などをマクロ変形解析により実施できる。
手段18で所望の出力を行う。
図16は塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置の基本形態を示す説明図である。図14の解析装置を発展させて所望の材料の集合組織パターンから簡易材料モデルの変数を同定する装置とした。
図17は結晶塑性モデルによる第1段階塑性加工の変位勾配増分に関する履歴を取得する手段のフローチャートである。変位勾配増分は種々の方法で取得可能であるが、図1を発展させた図17を用いることができるので、以下では図17を用いて説明する。
手段50により被加工材をEBSP(またはEBSD)で測定し、拡大組織写真および結晶方位の二次元マップを取得する。これらはデジタル情報としてファイルに出力される。
手段54によりファイルの結晶方位データに基づき、図4の右側の3D結晶モデル(結晶単位の解像度)によりバルクモデルを生成できる。これはEBSPの測定結果から極点図を作成して、非特許文献4の高橋氏の開示方法や非特許文献3で紹介された市販ソフトなどにより極点図から3D結晶モデル(結晶単位の解像度)を生成する。別の方法として、測定点に番号を付与し、各有限要素で乱数を生成して測定点の番号に関連付けることによりモデル化することも可能である。そのため、多数の測定点から所望の解像度(または要素分割数)の3Dのバルクモデルを作成できる。
手段55により数値材料試験の境界条件を生成する。
手段56の数値材料試験により平均的な変位勾配増分を取得する。
手段57により着目部位の変位勾配増分を取得する。
手段58により変位勾配増分を出力する。
再び、図16に基づいて説明する。
手段23により変位勾配増分を適合増分に変換する。この処理により収束条件よりも大きい変位勾配増分を収束条件の適合増分に変換する。
手段24のデジタルイメージモデリングにより結晶塑性モデルを生成する。通常図4の左側に示す3Dデジタルイメージ結晶モデル(結晶粒内局所部位を識別する高解像度)を直接適用して、デジタルイメージに基づくモデルにより数値材料試験立方体ブロックの要素毎に結晶方位を割り付ける方法を用いる。しかし、この方法であると解像度を増して数結晶粒子を配置すると要素数が増加するため計算処理の負荷の増大が発生する。また、数値材料試験では6×6×6程度以上の結晶粒子が含まれないと解の信頼性が低下する。これを解決するために並列計算機の利用が考えられる。但し、計算機環境の関係で利用出来ない場合が発生する。
そこで、擬似的ズーミングの手法とデジタルイメージモデリングを組合せた方法を提案する。手段22で取得した変位勾配増分はEBSPによる当該デジタルイメージから抽出した三次元結晶塑性モデルの所望の着目点の変位勾配増分である。着目点の結晶方位と同じ結晶方位を持つ当該デジタルイメージの結晶粒子との対応を考慮すると、生成する結晶塑性モデルの数値材料試験のブロックに着目点と同じ結晶方位を付与すればズーミングとほぼ同じ効果を得ることができる。これを擬似的ズーミング法として採用する。但し、着目点の結晶粒子とデジタルイメージの対応する結晶粒子の各結晶粒子に隣接する結晶粒子の方位は一般的に一致しないと考えられる。そこで、数値材料試験のブロックに付与するデジタルイメージを着目点に対応する結晶粒子の周囲まで拡大する。これにより、着目点の結晶粒子の変位勾配増分の変形履歴の下で、対応する着目点を含む隣接結晶粒子の影響を考慮できるようになる。
尚、対応する着目点の結晶方位が着目点と異なるように設定することも可能であり、その際には擬似的ズーミングの効果は期待できないが、平均的な変形状態を変化させる効果を検討することができる。
手段25により第1段階塑性加工である数値材料試験の境界条件を生成する。
手段26により解析を実施する。一般疎行列対応の連立一次方程式解法(各ステップの始めに剛性行列の分解を実施)を適用するので6×6×6よりも多い要素分割数にも対応が可能である。実用的な処理時間の範囲で要素分割数を増加してデジタルイメージに基づくモデルの解像度を向上することができる。
手段27で簡易材料モデルの変数を同定する。例えば引張り数値材料試験を実施して、引張り方向に垂直な直行する2方向のひずみの比を求めることにより異方性変数であるr値を測定できる。r値とマクロな異方性構成式を用いることにより種々の塑性加工解析が可能になる。
例えば手段29により簡易材料モデルを組み込んだ第3段階塑性加工の解析を実施することができる。第3段階塑性加工として板材や管材などの成形プロセスを設定し、r値とマクロな異方性構成式によりプレス成形試験などのマクロ変形解析を実施できる。
手段28で所望の出力を行う。
図18は塑性加工における被加工材の組織発展の解析システムの基本形態を示す説明図である。
塑性加工における被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段、変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに収束条件を満たす変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段、着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段、変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分から結晶塑性モデルの境界条件を生成する手段、境界条件に基づき結晶塑性モデルの解析を実施する手段、所望により結晶塑性モデルの解析結果から組織状態を推定する手段、所望によりデータの入力手段および/または解析結果の出力手段、から構成される塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置70のプログラムがインターネット、LAN、WAN等の高付加価値通信網73に接続された計算機の記憶装置71に記録され、高付加価値通信網73に接続された所望の計算機、携帯端末、携帯電話、移動体通信装置、ゲーム機などの計算処理手段72から利用される。
インターネットの普及にともない計算機、携帯端末、携帯電話、移動体通信装置、ゲーム機などの計算処理手段が固定回線だけでなく無線通信で繋がれるようになった。また、計算処理を行うマイクロプロセッサの小型化、高性能化によりパソコンと同程度の機能を有する計算処理手段が身のまわりに多く存在するようになった。また、CCDやスキャナーなどの入力装置、グラフィックス処理の高度化、WEB2.0と呼称されるようにインターネットやLAN上の分散データベースや各種オンラインアプリケーションの高度化と普及により各種のサービスをいつでもどこでも利用することが可能になった。
塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置70の機能を提供する実態である実行プログラムは計算機の記憶装置に記録され、必要なときに計算機のメモリーに読み込まれて各種の手段の機能がユーザーに提供できるようになる。また、これらの手段を機能させるために必要なデータや制御情報も計算機で処理できる信号として供給され、処理の結果も同様にデータ信号として送信される。
このことから、インターネット73に接続されたサーバーと呼称される計算機71に塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置70の実行プログラムを記録して常時利用できるようにすれば、インターネットに接続された計算機、携帯端末、携帯電話、移動体通信装置、ゲーム機などのクライアントと呼称される計算処理手段72を介してユーザーは塑性加工における被加工材の組織発展の解析を実施することができる。
また、インターネットやLAN上に分散して設置された各種アプリケーションや情報を提供するホームページやサイト74を統合して各種サービスを一元的に管理するポータルサイト75を設置することができる。ユーザーはこのポータルサイトにアクセスすることにより、Eラーニング、入力データ、HELP、掲示板、情報、ニュース、メーリングリストやブログなどの付加価値サービスを提供するアプリケーションや情報を提供するホームページなどのサイト74と通信して各種サービスを利用できる。また、最近ではインターネット上の検索機能76を利用することにより世界中のサイトを巡回して収集された膨大な情報に簡単にアクセスすることができる。
このようにインターネットを利用することによりユーザーはいつでもどこでも必要なサービスを受けることができるので、塑性加工における被加工材の組織発展の解析を効率良く実施することが可能になる。
特開2002−288240号公報
本発明の第1の装置の実施形態を示すフローチャートである。 本発明の第2の装置の実施形態を示すフローチャートである。 本発明の第4の装置の実施形態を示すフローチャートである。 本発明の第5の装置の実施形態を示すフローチャートである。 本発明の第6の装置の実施形態を示すフローチャートである。 本発明の第7の装置の実施形態を示すフローチャートである。 生産工場における塑性加工プロセスの解析システムの説明図である。 マクロ変形解析においてクーロン摩擦係数が0.3の場合に中心軸断面内の変形前後の材料の1/4形状を節点により示す。 ミクロ組織発展解析において工具と材料間のクーロン摩擦係数が0.5と固着を想定した場合に、加工による円柱端面角部P96の各結晶粒の回転をオイラー角の変化量で示す。 図8のP01〜P96で示す要素のミクロ解析による平均回転角と摩擦係数の関係である。 図10と同じ条件で各粒子の回転角の標準偏差を示す。 P48要素の各結晶の(1,1,1)すべり面の極点図を上下に高さ方向、左右に半径方向をとり、a)加工前、b)摩擦係数0の加工後、c)摩擦係数0.2の加工後で示す。 図6の左側に示す連立一次方程式の直接解法として多重スカイライン法と帯行列法の計算時間を比較した説明図である。 塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置の基本形態を示す説明図である。 塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置の基本形態を示す説明図である。 塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置の基本形態を示す説明図である。 結晶塑性モデルによる第1段階塑性加工の変位勾配増分の履歴を取得する手段のフローチャートである。 塑性加工における被加工材の組織発展の解析システムの基本形態を示す説明図である。 代表的な塑性加工プロセスの解析システムを示す説明図で、a)はマクロスケールとミクロスケールを直接解析するマルチスケール解析、b)は従来実施されているマクロスケールを直接解析するシングルスケール解析である。 塑性の階層構造を示す説明図である。 弾塑性有限要素で構造格子状に分割した立方体解析領域を示す説明図である。 多結晶塑性有限要素モデル(FEPM)によるシミュレーションの流れ図である ミクロ・マクロ非連成近似解法のフローチャートである。 異方性金属板成形のモデル化法として結晶塑性を利用した有限要素解析法を示す説明図である。 デジタルイメージに基づくモデルにより作成した楕円介在物を有する材料の有限要素メッシュ(90×90の要素分割数)の例である。 介在物の写真から生成した有限要素メッシュ(32×32の要素分割数)の例である。 図26のユニットセルに対して周期境界条件を適用した場合の有限要素モデルを示す説明図である。 従来技術のシミュレーションの概念を示す説明図である。 従来技術の変形集合組織予測シミュレーションのフローチャートである。
符号の説明
1 入力手段
2 変位勾配増分の履歴を取得する手段
3 変位勾配の適合増分を生成する手段
4 結晶塑性モデルを生成する手段
5 境界条件を生成する手段
6 解析を実施する手段
7 組織状態を推定する手段
8 出力手段
11 入力手段
12 第1段階塑性加工の変位勾配増分の履歴を取得する手段
13 変位勾配の適合増分を生成する手段
14 結晶塑性モデルを生成する手段
15 第1および第2段階塑性加工の境界条件を生成する手段
16 解析を実施する手段
17 簡易材料モデルの変数を同定する手段
18 出力手段
19 簡易材料モデルを組み込んだ第3段階塑性加工の解析を実施する手段
21 入力手段
22 結晶塑性モデルによる第1段階塑性加工の変位勾配増分の履歴を取得する手段
23 変位勾配の適合増分を生成する手段
24 デジタルイメージモデリングによる結晶塑性モデルを生成する手段
25 第1段階塑性加工の境界条件を生成する手段
26 解析を実施する手段
27 簡易材料モデルの変数を同定する手段
28 出力手段
29 簡易材料モデルを組み込んだ第2段階塑性加工の解析を実施する手段
30 非定常解析法の弾塑性有限要素解析
31 非定常解析法の結晶塑性モデル解析
32 定常解析法の剛塑性有限要素解析
33 非定常解析法の剛塑性有限要素解析
34 非定常解析法の動的弾塑性有限要素解析
35 変位勾配増分の履歴
36 静的陽解法の結晶塑性モデル解析
37 静的陰解法の結晶塑性モデル解析
38 動的陽解法の結晶塑性モデル解析
39 準陰解法の結晶塑性モデル解析
40 材料の機器分析、EBSPなど
41 画像イメージ(ディスプレイ)
42 2Dデジタルイメージモデル
43 2Dから3Dの変換装置(スライスを積層する方法)
44 3D拡張デジタルイメージ結晶モデル(結晶粒内局所部位を識別する高解像度)
45 結晶方位のデータ(ファイル)
46 極点図
47 変換装置(市販ソフトなど)
48 3D結晶モデル(結晶単位の解像度)
50 機器分析による結晶方位分布を取得する手段
51 入力手段
54 数値材料試験の結晶塑性モデルを生成する手段
55 数値材料試験の境界条件を生成する手段
56 数値材料試験の解析を実施する手段
57 着目部位の変位勾配増分を取得する手段
58 出力手段
60 ステップの開始
61 剛性行列の分解
62 剛性行列の後退代入
63 収束判定
64 ステップの終了
65 ステップの開始
66 剛性行列の不完全分解による前処理
67 不完全分解前処理行列のCG法による反復解法
68 収束判定
69 ステップの終了
70 塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
71 計算機(サーバー)
72 計算処理手段(クライアント)
73 高付加価値通信網
74 アプリケーション、情報提供のホームページやサイト
75 ポータルサイト
76 検索機能

Claims (11)

  1. 塑性加工における被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段、該変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに収束条件を満たす変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段、該着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段、該変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分から該結晶塑性モデルの境界条件を生成する手段、該境界条件に基づき該結晶塑性モデルの解析を実施する手段、所望により該結晶塑性モデルの解析結果から組織状態を推定する手段、所望によりデータの入力手段および/または該解析結果の出力手段、から構成されることを特徴とする塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
  2. 単数または複数のパスからなる第1段階塑性加工の履歴に基づき被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段、該変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに収束条件を満たす変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段、該着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段、該第1段階塑性加工の該変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分と該第1段階塑性加工に続く第2段階塑性加工の加工条件から該結晶塑性モデルの境界条件を生成する手段、該境界条件に基づき該第1段階塑性加工および該第2段階塑性加工の該結晶塑性モデルの解析を実施する手段、該第2段階塑性加工の該結晶塑性モデルの解析結果から所望の簡易材料モデルのモデル変数を同定する手段、所望により単数または複数のパスからなる第3段階塑性加工の履歴に基づき該簡易材料モデルを組み込んだ塑性加工解析を実施する手段、所望によりデータの入力手段および/または該解析結果の出力手段、から構成されることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
  3. 該変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段が、β1を該変位勾配もしくはひずみおよびスピンの適合増分の成分の内所望に選択された該結晶塑性モデルの解析の収束を支配する成分の絶対値、βを収束限界のβ1の閾値として、少なくとも収束条件1(α1×β<β1<α2×β、α1=0、α2=1)を満たし、さらに望ましくは収束条件2(α1×Ω×β<β1<α2×Ω×β、0.3<Ω<1、α1=0.5、α2=1.0)を満たすように該変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに時間に関する補間により適合増分の全ての成分を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
  4. 該被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段が、非定常解析法の弾塑性有限要素解析、非定常解析法の結晶塑性モデル解析、定常解析法の剛塑性有限要素解析、非定常解析法の剛塑性有限要素解析、非定常解析法の動的弾塑性有限要素解析の何れかを含むものであり、所望により静水圧応力の履歴を取得する機能を有するとともに、該解析を実施する手段が、静的陽解法の結晶塑性モデル解析、静的陰解法の結晶塑性モデル解析、動的陽解法の結晶塑性モデル解析、準陰解法の結晶塑性モデル解析の何れかによるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
  5. 該着目部位に関する結晶塑性モデルを生成する手段が機器分析から得られた該被加工材の結晶粒子の位置および方位のデータもとにデジタルイメージに基づくモデルにより三次元の結晶構造を再構築することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
  6. 結晶塑性モデルの解析による第1段階塑性加工の履歴に基づき該被加工材の着目部位の変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴を取得する手段、該変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴をもとに収束条件を満たす変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分を生成する手段、該被加工材の結晶粒子の位置および方位のデータもとにデジタルイメージに基づくモデルにより再構築された三次元の結晶構造を有する結晶塑性モデルを生成する手段、該変位勾配の適合増分もしくはひずみおよびスピンの適合増分から結晶塑性モデルの境界条件を生成する手段、該境界条件に基づき該結晶塑性モデルの解析を実施する手段、該結晶塑性モデルの該解析結果から所望の簡易材料モデルのモデル変数を同定する手段、所望により単数または複数のパスからなる第2段階塑性加工の履歴に基づき該簡易材料モデルを組み込んだ塑性加工解析を実施する手段、所望によりデータの入力手段および/または該解析結果の出力手段、から構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
  7. 該結晶塑性モデルの解析を実施する手段が一般疎行列の不完全前処理付反復解法もしくは一般疎行列の直接解法を利用する有限要素解析であり、該結晶塑性モデルの解析の各変形ステップの初期においてのみ不完全または完全な行列の分解を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
  8. 該解析結果から組織状態を推定する手段が該結晶塑性モデルの任意の有限要素の該変位勾配増分もしくはひずみおよびスピンの増分の履歴から結晶の方位を示すオイラー角を求める変換手段であり、該解析結果を出力する手段が該オイラー角に基づく所望の結晶すべり面の極点図または逆極点図として出力する機能および/または該結晶塑性モデルの所望の断面の結晶すべり面の分布図として出力する機能を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
  9. 請求項2に記載の該第2段階塑性加工の該結晶塑性モデルおよび請求項6に記載の該第1段階塑性加工の該結晶塑性モデルが引張り試験モデルであり、該簡易材料モデルが異方性構成式に基づくモデルであり、同定する該モデル変数に異方性パラメータが含まれることを特徴とする請求項2乃至請求項8に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置
  10. 請求項1乃至請求項9に記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置のプログラムが高付加価値通信網に接続された計算機の記憶装置に記録され、該高付加価値通信網に接続された所望の計算機、携帯端末、携帯電話、移動体通信装置、ゲーム機、計算処理手段から利用されることを特徴とする塑性加工における被加工材の組織発展の解析システム
  11. 請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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