JP2008194570A - 連続濃縮システムおよび濃縮方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】完全な閉塞系を維持した状態で被濃縮物を含有する液体を連続的に濃縮するシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】濃縮すべき液体を注入するための注入口と、濃縮された液体を取り出すための取り出し口を少なくとも有する連続濃縮システムであって、該システムの少なくとも一部が、無孔性の親水性フィルムまたは膜から構成される連続濃縮システムを用い、濃縮すべき液体を注入口から取り出し口へ連続的に移動させ、無孔性の親水性フィルムからの浸透蒸散現象により被濃縮液体を連続的に濃縮する。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶液などの連続濃縮システムおよび濃縮方法に関する。本発明は、更に詳しくは、コラーゲン等の蛋白溶液、ヒアルロン酸等の多糖類溶液、生理活性物質溶液、高分子溶液を始めとする種々の液体の濃縮、および植物細胞・組織、動物細胞・組織など、固体と液体の混合物の濃縮に好適に使用可能な連続濃縮システムおよび濃縮方法に関する。
従来より、果汁、蛋白溶液等から水分を除去し濃縮する方法として、熱を加えることによって強制的に水分を蒸発させる方法(加熱蒸発法)、真空下に強制的に水分を蒸発させる方法(真空蒸発法)、凍結した後、真空下に氷を昇華させる方法(凍結乾燥法)、および逆浸透膜や限外濾過膜を用いた膜濃縮法等が行われてきた。
これらの技術のうち、加熱蒸発法においては、熱によって成分が変質してしまう、閉鎖系でないため菌、ウィルス、異物等のコンタミネーションの危険性が高い、空気と接触し成分が酸化反応を受け易い、加熱による水の相変化を利用するためエネルギー消費量が大きい、特に微量成分の濃縮は実質的には困難である等多くの問題がある。
また、真空蒸発法においては、閉鎖系ではないため菌、ウィルス、異物等のコンタミネーションの危険性が高い、突沸を防止するために撹拌等の機械的刺激を加える必要がある、減圧による水の相変化を利用するため、エネルギー消費量が大きい等の問題がある。
更に、凍結乾燥法においては、上記の方法と同様に閉鎖系でないため菌、ウィルス、異物等のコンタミネーションの危険性が高い、凍結により成分が変質してしまう危険性がある、空気と接触して成分が酸化反応を受け易い、凍結、昇華という相変化を伴うためエネルギーコストが大きい等の問題がある。
他方、膜を利用した逆浸透膜法や限外濾過膜法に関しては加熱、凍結等による成分の変質は抑制されされ、且つ、加熱、減圧、凍結、昇華等に伴う相変換によるエネルギー消費量が少ないという大きな利点がある。しかしながら膜法についても下記に示すような問題点がある。
すなわち、逆浸透膜法や限外濾過膜法は、いずれも完全な閉塞系でなく菌、ウィルス、異物等のコンタミネーションの危険性がある。また膜法では加圧工程が必須であるため、膜をそのまま利用することができず中空系モジュール、管状モジュール等のモジュール化が必要でありコストがかかる。
更に滅菌操作、目詰まり洗浄操作等が必要で運転経費が高い等の問題がある。また、膜法は本来、膜の有する孔を用いて成分をその大きさによって分離する目的で使用されていて逆浸透膜の孔径は数Å(オングストロ−ム)〜十数Åであり、限外濾過膜の場合は数十Å〜数μmである。従ってその孔径よりも小さい成分は膜を通過してしまうために水分のみを除去する濃縮工程としては不適である。特に限外濾過法は特定の大きさ以下の成分を除去する目的で使用されていて、水分のみの除去の場合は逆浸透膜が使用されている。また膜法では液体を濾過するために大きな圧力差を加える必要があり、限外濾過膜の場合は通常0.1〜0.2Mpa(メガパスカル)の圧力が濃縮すべき液体に印加される。
しかしながら、逆浸透膜法でも水分の除去能力の高い膜を使用すると食塩等の必要成分も透過してしまうという問題がある。以上述べたように、水分を除去し濃縮するための従来法にはいくつかの重要な問題がある。特に従来法では完全な閉鎖系で濃縮することが困難であり菌、ウィルス、異物の混入の危険性があり、濃縮工程の後に滅菌あるいは殺菌工程あるいは異物除去工程を設置する必要がある。また濃縮過程で完全に空気との接触を遮断することができず、酸化反応を受け易いと同時に蛋白等で特に問題となる固液界面での変性を防止することが困難であった。
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消した連続濃縮システムおよび濃縮方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、従来技術の欠点である完全な閉鎖系を維持した状態で濃縮することが困難である点を解消し、実質的に完全な閉塞系を維持した状態で濃縮するシステムおよび方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、従来技術の欠点である成分の変質の原因である加熱、凍結、空気との接触を極力回避しつつ、目的とする成分を濃縮できる連続濃縮システムおよび濃縮方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、従来技術の欠点である濃縮に要する熱、減圧、凍結、昇華、加圧、撹拌といった外部動作を極力回避することができる連続濃縮システムおよび濃縮方法を提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、被濃縮物を含有する濃縮すべき液体を、水を透過せず水蒸気を透過する(即ち透湿性を有する)フィルムまたは膜を介して常温常圧の大気と接触させ、該フィルムまたは膜と接する濃縮すべき液体を連続的に移動させることが、上記課題の解決に極めて効果的なことを見出した。
本発明の連続濃縮システムは上記知見に基づくものであり、より詳しくは、被濃縮物を含有する濃縮すべき液体を注入するための注入口と、該注入口とは別に濃縮された液体を取り出すための取り出し口を少なくとも有する連続濃縮システムであって、濃縮すべき液体は注入口から取り出し口へ連続的に移動し、該システムの少なくとも一部が無孔性の親水性フィルムまたは膜から構成され、濃縮すべき液体は該無孔性の親水性フィルムまたは膜から浸透蒸発現象によって大気中へ気化して濃縮されることを特徴とするものである。
本発明によれば、更に濃縮すべき液体に印加される最大圧力差が0.02MPa(=150mmHg=2mH2O=2.9psi)以下であることを特徴とする連続濃縮システムが提供される。
本発明によれば、更に被濃縮物を含有する濃縮すべき液体を注入するための注入口と、該注入口とは別に濃縮された液体を取り出すための取り出し口を少なくとも有する連続濃縮システムを用い、該システムを構成する無孔性の親水性フィルムまたは膜を介して被濃縮液が接する大気の温度を50℃以下、相対湿度を80%以下として濃縮すべき液体を注入口から取り出し口へ連続的に移動させることにより、濃縮すべき液体が該無孔性の親水性フィルムまたは膜から浸透蒸発現象によって大気中へ気化して濃縮されることを特徴とする濃縮方法が提供される。
さらに本発明によれば、前記無孔性の親水性フィルムまたは膜を介して被濃縮液が接する大気を、該親水性フィルムまたは膜に対して0.1km/hr以上70km/hr以下の速度で移動させることを特徴とする濃縮方法が提供される
上記した構成を有する本発明の連続濃縮システムを用いた場合には、被濃縮体を本発明の連続濃縮システムの一部を形成する無孔性の親水性フィルムまたは膜に接触させることによって被濃縮体中の水分が該フィルムまたは膜内に吸収される。この結果、該フィルムまたは膜の表面から該連続濃縮システムの外部に蒸発(散)されることによって、被濃縮体を濃縮することができる。
上述したように本発明によれば、本発明の連続濃縮システムを用いることによって従来法のように加熱、凍結、減圧などの外部操作が必須でないため、濃縮成分の変質を有効に防止することができる。
酸化反応および固液界面による濃縮成分の変性抑制が容易である。
また、本発明の連続濃縮システムを用いた場合には、実質的な閉塞系で濃縮が行われるため、従来法と比較して細菌、ウィルス、異物等のコンタミネーション防止が容易である。
更に本発明の連続濃縮システムを用いることによって被濃縮体の濃縮倍率の制御が容易である。
さらに、本発明の連続濃縮システムを用いることによって、濃縮すべき液体を連続的に注入する一方、濃縮された液体を連続的に取り出して濃縮工程を続けることができるため、濃縮すべき液体の量に制限がない。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
(連続濃縮システム)
本発明の連続濃縮システムは、濃縮すべき成分が該システム内を通過する構造のため、被濃縮体等を注入するための注入口と、該注入口とは別に濃縮された液体を取り出すための取り出し口をそれぞれ少なくとも1個以上有し、且つ、該システムの少なくとも一部が、無孔性の親水性フィルムまたは膜から構成される。後述するような「連続濃縮システム」としての濃縮効率を示す限り、本発明の連続濃縮システムにおける無孔性の親水性フィルムまたは膜の質量、体積ないしは外気に接触すべき表面積の割合は、特に制限されない。同様に「連続濃縮システム」としての濃縮効率を示す限り、本発明の連続濃縮システム(および該器具を構成する無孔性の親水性フィルムまたは膜)の形状、サイズ、厚さ、材質等は特に制限されない。
本発明の連続濃縮システムは、実質的に上記した「親水性フィルムまたは膜」自体から構成されていてもよく、また、必要に応じて、他の部分(例えば、上記親水性フィルムまたは膜の保持、補強、被濃縮体等の出入補助の機能を有する部分)を有していてもよい。
(透湿性を有するフィルムまたは膜)
水を透過せず、水蒸気を透過する透湿性を有するフィルムには、(1)多孔性を有するタイプと(2)無孔性のタイプの2種類が知られている。前者の多孔性のタイプとして微孔を多数、付与した疎水性高分子フィルムがあるが、このタイプの場合、水蒸気は微孔を透過し、疎水性であるため水の大きな表面張力によって液体の水は該微孔の中には侵入できず、該フィルムは水を透過しない。一方、後者の無孔性タイプの場合はフィルムが親水性を有しているため水がフィルムの中に移行し、該フィルムの表面から水が蒸発(散)するという浸透蒸発(散)現象によって水を透過せず、水蒸気のみを透過するという性質が発現される。
(好適な無孔性の親水性フィルムまたは膜)
本発明において好適に使用可能な「無孔性の親水性フィルムまたは膜」は、上記した「浸透蒸発(散)」現象を示すフィルムまたは膜である(なお、本発明者らの検討によれば、親水性でないフィルムまたは膜は、「浸透蒸発(散)」現象を示さない)。
より具体的には、本発明において好適に使用可能な「無孔性の親水性フィルムまたは膜」は、水と接触している際に該フィルムまたは膜が示す蒸散速度をRc(g/m2・24hrs)とし、水と非接触の際に該フィルムまたは膜が示す蒸散速度をRn(g/m2・24hrs)とした場合に、これらの比Rr=Rc/Rnの値が、1.5以上であることが好ましい。この比Rr=Rc/Rnの値は、更には2以上であることが好ましく、とりわけ3以上(特に4以上)であることが好ましい。このようなRcおよびRnの値は、後述する実施例1の条件下で好適に測定することができる。
実施例1に無孔性の親水性フィルムと微孔性の疎水性フィルム表面からの水の蒸散速度(g/m2・24hrs)を示すが、微孔性の疎水性フィルムの場合には該フィルムが水に直接、接触していても非接触の状態でも蒸散速度はほぼ同等(約730g/m2・24hrs)であったのに対して、無孔性の親水性フィルムの場合には水と非接触の状態では約380g/m2・24hrsであるのに対して水と直接、接触した場合には約2,200g/m2・24hrsと大巾に向上する。すなわち、浸透蒸散という現象は無孔性タイプの親水性フィルムが水と直接、接触した場合にのみ発現する。
本発明の目的を達成するためには、(2)無孔性タイプのフィルムまたは膜が適している。(1)の微孔性を有する疎水性フィルムが本発明の目的の達成に不適である理由として、1)実施例1に記したように微孔性の疎水性フィルムの場合には該フィルム面が直接、水に接触したとしても水の蒸散速度が水に直接、接触した時の無孔性の親水性フィルムの場合の浸透蒸散性と比較して著しく低いことと、2)本発明の濃縮対象の成分として蛋白のような両親媒性を有する系や親水性成分と疎水性成分との混合系に於いて該成分が微孔表面に吸着し水に対する濡れ性が高まり、微孔中に水が浸入し、水自身が膜を透過してしまうという大きな問題があげられる。
(無孔性タイプのフィルム)
無孔性タイプのフィルムの材質としてはポリビニールアルコール(PVA)、セロファン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、親水性ポリエステル等が使用可能である。上記フィルムの厚さも特に制限されないが通常は500μm以下、更には300〜5μm程度、特に200〜30μm程度であることが好ましい。
(システム化)
濃縮すべき液体が連続的に通過するシステムは、その少なくとも一部が、上記した浸透蒸発(散)性を有する無孔性の親水性フィルムまたは膜によって形成される。実施例1に記載したように該無孔性の親水性フィルム表面からの水の蒸散速度が直接、水と接触した場合には非接触と比較して、最大で約6倍にまで向上するために、システムの形状としては濃縮成分と該フィルムまたは膜の接触面積が最大になるような形状が好ましい。
上記システムにおいては、通常は、濃縮成分の注入口および取り出し口がそれぞれ1個設置されている。但し、注入口および取り出し口がそれぞれ複数個であっても良い。該システムの特徴は、被濃縮液の注入速度、取り出し速度、外部環境を一定に保てば、濃縮処理した濃縮液の濃縮倍率を維持した状態で連続的に取り出せる機能を有していることである。システムの態様例を図1および図2に示すがこれに制限されるものではない。
(被濃縮体)
本発明の連続濃縮システムないし濃縮方法により濃縮可能な対象である限り、本発明の適用対象たる被濃縮体は特に制限されない。本発明のシステムに対する出入操作が容易な点からは、該被濃縮体は、室温(25℃)において、ある程度の流動性を有することが好ましいが、これに限定されない(すなわち、殆ど固体に近い程度のものでも、本発明は適用可能な場合がある)。被濃縮体の粘性が高い場合、本システム内に該被濃縮体を注入して通過させるために、ポンプ等を使用して圧入することができる。この場合でも、濃縮すべき液体に印加される最大圧力差が=0.02MPa(=150mmHg=2mH2O=2.9psi)以下であることが好ましい。
より具体的には、本発明における被濃縮体は、後述する実施例3の条件下(ただし、温度約25℃、相対湿度約50%とする)で、注入口における成分濃度(C1)と取り出し口における成分濃度(C2)の比(濃縮倍率Re=C2/C1)が、1.2以上を示すものが好ましい。この濃縮倍率は、更には1.3以上(特に1.4以上)を示すものが好ましい。
(濃縮方法)
例えば、濃縮すべき成分を含む溶液(あるいは固体と液体の混合物等の被濃縮体)を上記した、一部が無孔性の親水性フィルムから構成されるシステムの注入口からシステム内に導入する。この際、該システム内に空気が混入することを極力、防止する。該被濃縮体が滅菌あるいは殺菌されている場合にはシステム内への該被濃縮体の注入は、無菌的に行なわれることが極めて好ましい。
該被濃縮体によって該システム内が充填された後に該取り出し口が開放される。該被濃縮体が該システム(ないしその一部)を構成する無孔性の親水性フィルムまたは膜に接触し、該溶液中の水および低分子量物質(電解質、糖、アミノ酸等)が該フィルムまたは膜中に吸収され、水分のみが浸透蒸発(散)によってシステム外に放出される。この過程で被濃縮体から水分が除去され、被濃縮体成分が、実質的に何ら失われることなく濃縮される。本濃縮過程は加熱、加圧、減圧等の外部動作の必要がなく、それによる濃縮成分の変性、失活といった問題が生じないことが特徴である。
また、この濃縮過程では該被濃縮成分は該フィルムまたは膜によって空気との直接接触が阻止されるため、従来法のように濃縮成分が空気と接触した結果、生ずる変性、失活あるいは酸化反応等を受けることがない。更に本濃縮過程は完全な閉塞系で実施されるため外部からの細菌、ウィルス、異物等のコンタミネーションが有効に阻止できる。
後述する実施例7に本発明のフィルムまたは膜のヘモグロビンの透過性を示すが、ヘモグロビンは不透過であった。ヘモグロビンの大きさは約100 Åである(例えば、ニューバイオセパレーション
第2巻 応用編 P80 (株)シーエムシー発行、1988)。
したがって本発明のフィルムまたは膜の透過性の限界は、100Å以下であるものと考えられる。一方、ウィルスの大きさは数百Å、細菌の大きさは数千Å〜数μmであり((例えば、ニューバイオセパレーション
第2巻 応用編 P80 (株)シーエムシー発行、1988)、本発明のフィルムまたは膜を通過することができない。したがって本濃縮過程に於いて容器外部から細菌、ウィルス、異物の混入の危険性は全くないものと考えられる。
(ヘモグロビン不透過性)
本発明の連続濃縮システムに使用されるフィルムまたは膜は、ヘモグロビン不透過性を有することが好ましい。このヘモグロビン不透過性は、後述する実施例7の条件下で、ビーカー内のリン酸緩衝液中のヘモグロビンが、分光光度計(日立製、U−2001)による吸収波長409nm吸光度測定において定量限界以下(OD:0.01以下)であることを言う。
(濃縮効率)
一方、本発明の濃縮過程に於いて濃縮効率を高めるためには、浸透蒸発(散)性を向上させることが好ましい。例えば、1)本発明のフィルムまたは膜の吸水性を高める、即ち含水率を高めること、2)実施例2に示すように、該フィルムまたは膜の厚さを薄くすること、3)被濃縮体の容量(v)に対してフィルムとの接触面積(s)を大きくすること、即ちs/vが大きくなるようにシステム形状を設計すること、4)システムの周囲条件、例えば低湿度化、加温、減圧、フィルム面での空気流速等を制御すること、5)濃縮すべき液体と本発明のフィルムまたは膜との接触時間を長くすること等である。
特に濃縮成分の変質を防止しながら濃縮過程の効率を高めるためには上記s/vが最大になるようなシステムを用いて、加熱することなく室温以下で容器の外部条件としての湿度を低下させ、且つ空気流速を高める等の方法が最適である。具体的には温度50℃以下(より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下)、相対湿度80%以下(より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下)の条件が好適に用いられる。
本発明の連続濃縮システムにおける濃縮倍率Re=C2/C1は、被濃縮液の注入速度V1(g/分)と取り出し速度V2(g/分)およびシステムの水分蒸散速度V3(g/分)によって調節することができる。
すなわち、
注入速度:V1(g/分)
取り出し速度:V2(g/分)
注入口における成分濃度:C1(g/g)
取り出し口における成分濃度:C2(g/g)
システムの水分蒸散速度:V3(g/分)
とすると、
V2=V1−V3
V1xC1=V2xC2
Re=C2/C1=V1/V2=(V2+V3)/V2
となるので、システムの外部環境が一定で、システムの水分蒸散速度が一定であれば、濃縮倍率Reは濃縮液の取り出し速度V2のみによって決まる。
さらに本発明者らは、上記システムの水分蒸散速度(V3)が、フィルムまたは膜面での空気流速によって大きく影響されることを見出した。フィルムまたは膜面と接する空気が静止している場合には、フィルムまたは膜面と接する空気中の湿度が100%となってしまい、水分蒸散速度は著しく低下する。一方、フィルムまたは膜面と接する空気が移動する場合には、水分蒸散速度が大きくなる。水分蒸散速度(V3)を大きくして本発明の濃縮システムの濃縮効率を高めるには、該親水性フィルムまたは膜に対する空気の移動速度を0.1km/hr以上(好ましくは1km/hr以上、より好ましくは10km/hr以上)とすることが望ましい。しかしながら、空気の移動速度を大きくすると騒音の発生やシステムの破損の問題が生じるので該親水性フィルムまたは膜に対する空気の移動速度を70km/hr以下(好ましくは40km/hr以下、より好ましくは20km/hr以下)とすることが望ましい。
上記システムの水分蒸散速度(V3)を大きくして濃縮倍率を高めるためには、濃縮すべき液体と本発明のフィルムまたは膜との接触時間Tc(分)を長くすることが望ましい。本濃縮システムの大半が本発明のフィルムまたは膜で構成されている場合、濃縮すべき液体と本発明のフィルムまたは膜との接触時間Tc(分)は、本システムにおいて注入口から取り出し口の間に存在する濃縮すべき液体の量v(g)を濃縮液の取り出し速度V2(g/分)で割ったものと考えることができる。上記接触時間Tc(分)は濃縮倍率を高める観点からは、100分以上(好ましくは300分以上、より好ましくは600分以上)とすることが好ましい。
上記システムの水分蒸散速度(V3)(g/分)は、上記接触時間Tc(分)、濃縮すべき液体と本発明のフィルムまたは膜との接触面積s(m2)、フィルムまたは膜の浸透蒸散速度F(g/m2・24hrs)を用いて、V3=sxFxTc/1440と表すことができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
無孔性の親水性フィルムおよび微孔性の疎水性フィルムについて、浸透蒸散性試験を行った。無孔性の親水性フィルムとして、ポリビニールアルコール(PVA)フィルム(アイセロ化学(株)製、フィルム厚さ40μm)および親水性ポリエステルフィルム(デュポン社製、フィルム厚さ40μm)を使用した。多孔性の疎水性フィルムとして、微孔性ポリプロピレンフィルム((株)トクヤマ製、厚さ35μm)を使用した。
各種フィルム表面からの水の蒸散速度の測定は以下の方法で行った。メタクリル樹脂製コップ(上面の径9.5cm、底面の径7cm、高さ9cm)に水道水100mLを入れ、前記フィルム(20cm×20cm)をコップの上面に張り、輪ゴムで固定した。各フィルムにつき2個ずつ用意し、一方はコップの口を上向きに台に乗せ、もう一方はコップの口を下向きにし、フィルム面と台の間に空隙が出来るように浮かせた。前者の場合はコップの中の空気とフィルムが接触し、後者の場合はコップの中の水とフィルムが直接接触する。フィルムが張られたコップは温度24℃、湿度61%の室内に置き、コップ重量の経時変化を測定し、水の蒸散速度に換算し、表1に結果を示す。
表1から、無孔性の親水性フィルムの場合、フィルムが空気と接触しているケースの378〜395g/m2・24hrsに対しフィルムが水に直接接触したケースの2050〜2321g/m2・24hrsと6倍程度水分の透過が大きい。一方、微孔性の疎水性フィルムの場合、フィルムが空気と接触しているケースの729g/m2・24hrsに対しフィルムが水に直接接触したケースの734g/m2・24hrsと変化が無い。無孔性の親水性フィルムが水分と直接接触することで、より多くの水分がフィルムを透過することが示される。
実施例2
実施例1で用いた無孔性の親水性フィルムであるポリビニールアルコール(PVA)フィルム(アイセロ化学(株)製)の厚さが25μm、40μm、65μmのものの水の浸透蒸散性を実施例1と全く同様の方法で測定し、表2に示す。
表2からわかるようにフィルム面が空気接触および水接触の場合のいずれも膜厚の増加と共に水の浸透蒸散性が低下することがわかったが、その低下は大きなものではなかった。
実施例3
実施例1で用いたPVAフィルムを用いてヒートシールすることによって3cm×3cmの袋(注入口付き容器)を作製し、ヘモグロビン(和光純薬製)を0.9wt%の濃度でリン酸緩衝液(1/15M、pH7)に溶解した水溶液1mLを該袋内に注入しヒートシールによって密封した。
300mLのリン酸緩衝液(1/15M、pH7)を入れた500mLのガラス製ビーカーに、上記のヘモグロビン水溶液を封入した袋を投入し、室温(約25℃)で30分間撹拌(磁気スターラ;直径が約5mm、長さが約40mmの磁気回転子の回転数が約40rpm)した。
ビーカーから3mLのリン酸緩衝液を採取して分光光度計(日立製、U−2001)により吸収波長409nmの吸光度を測定しヘモグロビンの透過量を求めようとしたが、吸光度は定量限界以下(OD:0.01以下)であった。この実験結果から、該PVAフィルムはヘモグロビンを透過させないことがわかった。
比較例1
実施例7のPVAフィルムの替わりに孔径0.22μmのナイロンメンブレンフィルター(ミリポア製)を用いて実施例4と同様の実験を行なったところ、封入したヘモグロビンの50%以上が3分間で透過してしまうことが吸光度測定の結果から確認された。
実施例4
無孔性の親水性フィルムとして、長さ8m、幅5cmのポリビニールアルコール(PVA)フィルム(アイセロ化学(株)製、フィルム厚さ65μm)を使用し、幅方向の両端1cmずつを重ねて連続的にヒートシールすることにより長さ8mの筒状に成型した(図1における無孔性の親水性フィルムまたは膜:3)。この筒状物の両端に異径管を挿入し、輪ゴムで密着させた。片末端に流量調節用のコック(図1における流量調節弁:5)を取り付け、濃縮液取り出し口とした。筒状物のもう一方の末端を被濃縮液の注入口(図1における液体注入口:1)とし、食用色素青色1号53mgを1Lの水に溶解した溶液(被濃縮液1)300gを注入した。この水溶液の吸光度を634nmで測定したところ、0.904であった。筒状物に溶液を充填した状態で、該筒状物を直径33cm、高さ23cmのステンレス製網かご(サンヨー製オートクレーブ滅菌器用)の周囲にらせん状に巻き付けた。その周囲に、ステンレス製の網を巻き付け、上記注入口と取り出し口の高低差が50cmかつ、注入口が最上部、取り出し口が最下部となる位置に固定し、本発明の連続濃縮システムとした。
3Lの被濃縮液1を無菌的に充填した3L輸液バッグ(テルモ(株)製)(図1における液体リザーバー:4)を注入口に接続して取り出し口のコック(図1における流量調節弁:5)を開き、濃縮液の取り出し速度が36g/hrとなるように調節した。取り出し口(図1における濃縮液取り出し口:2)から流出する濃縮液の濃度を634nmの吸光度測定により経時的に観測した。該吸光度は徐々に増大して流出量500g程度で定常状態となり、吸光度は1.35となった。
実施例5
無孔性の親水性フィルムとして、長さ25cm、幅17cmのポリビニールアルコール(PVA)フィルム(アイセロ化学(株)製、フィルム厚さ65μm)2枚を図2に示すように張り合わせてヒートシールし、流路長約1.6mの本発明の連続濃縮システムとした。図2に示すように、注入口1に液体リザーバー4として、実施例1と同様に3Lの被濃縮液1を無菌的に充填した3L輸液バッグ(テルモ(株)製)を接続した。図2に示すように、取り出し口2に流量調節用のコック(図2における流量調節弁:5)を取り付け、濃縮液の取り出し速度が36g/hrとなるように調節した。取り出し口2から流出する濃縮液の濃度を634nmの吸光度測定により経時的に観測した。該吸光度は徐々に増大して流出量200g程度で定常状態となり、吸光度は1.11となった。
本発明の連続濃縮システムおよび濃縮方法は、コラーゲン等の蛋白溶液、ヒアルロン酸等の多糖類溶液、生理活性物質溶液、高分子溶液を始めとする種々の液体の濃縮、および植物細胞・組織、動物細胞・組織など、固体と液体の混合物の濃縮に好適に使用可能である。
は、本発明の連続濃縮システムの基本的な一態様の例を示す模式斜視図である。 は、本発明の連続濃縮システムの基本的な一態様の例を示す模式側面図である。
符号の説明
1 液体注入口2 濃縮液取り出し口3 無孔性の親水性フィルムまたは膜4 液体リザーバー5 流量調節弁

Claims (4)

  1. 被濃縮物を含有する濃縮すべき液体を注入するための注入口と、該注入口とは別に濃縮された液体を取り出すための取り出し口を少なくとも有する連続濃縮システムであって、濃縮すべき液体は注入口から取り出し口へ連続的に移動し、該システムの少なくとも一部が無孔性の親水性フィルムまたは膜から構成され、濃縮すべき液体は該無孔性の親水性フィルムまたは膜から浸透蒸発現象によって大気中へ気化して濃縮されることを特徴とする連続濃縮システム。
  2. 前記連続濃縮システムにおいて、濃縮すべき液体に印加される最大圧力差が0.02MPa以下であることを特徴とする連続濃縮システム。
  3. 請求項1または2に記載の連続濃縮システムを用い、該システムを構成する無孔性の親水性フィルムまたは膜を介して被濃縮液が接する大気の温度を50℃以下、相対湿度を80%以下として、被濃縮物を含有する濃縮すべき液体を連続的に濃縮することを特徴とする濃縮方法。
  4. 前記無孔性の親水性フィルムまたは膜を介して被濃縮液が接する大気を、該親水性フィルムまたは膜に対して0.1km/hr以上70km/hr以下の速度で移動させることを特徴とする請求項3記載の濃縮方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH0824585A (ja) * 1994-07-12 1996-01-30 Asahi Glass Co Ltd 水溶液の濃縮方法
JP2003531250A (ja) * 2000-04-19 2003-10-21 ポーラス・メディア・コーポレーション 石油脱水方法および装置

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