JP2008188791A - 抗菌・防塵生地 - Google Patents

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直一 佐々木
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Masamitsu Iizuka
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Abstract

【課題】ウイルス等を効率的に遮断できるとともに、捕集したウイルス等を不活性化または死滅し得る、抗菌生地およびこれから得られるマスク等の衛生製品を提供すること。
【解決手段】無機多孔質物質を含み、平均繊維径1〜100μmのマイクロファイバーからなる繊維構造物層と、この繊維構造物層に積層された、平均繊維径1nm以上1000nm未満のナノファイバー不織布層と、を備える抗菌・防塵生地。
【選択図】なし

Description

本発明は、ナノファイバー不織布を含む抗菌・防塵生地に関する。
近年、抗菌性を有する繊維構造物や、ウイルスなどの微小粒子を高度に分離可能な繊維構造物が開発されている。
例えば、特許文献1(特開2003−166155号公報)には、ポリエステル系繊維等の合成繊維からなり、所定量の防カビ剤が付着した不織布が開示されている。
特許文献2(特開2005−270965号公報)には、繊維の平均直径が1〜150nmであり、重量比率の60%以上が直径1〜150nmの繊維からなる濾過層を有するフィルタが開示されている。
特許文献3(特表2005−527344号公報)には、不織布などから構成された支持層と、フィブリル化ナノ繊維からなる濾材とからなるフィルタが開示されている。
上記特許文献1の不織布は、良好な抗菌性や抗かび性を有しているものの、細菌やウイルス等の捕集能は十分でないため、ウイルス等は当該不織布を通過できる。このため、ウイルス等の捕集能を高めるためには、不織布を何層にも重ねる必要が生じる。
特許文献2のフィルタは、80nm程度以上の微小なウイルスを極めて高度に分離できるものであるが、このフィルタに用いられているナノ繊維は、ポリマーアロイチップを溶融紡糸して海島構造のポリマーアロイ繊維とし、その海成分を溶解させるという特殊な手法で作られており、製造法が煩雑、かつ、汎用性に乏しいという問題がある。しかも、分離したウイルスなどを不活性化させる作用は不十分である。
特許文献5の濾材も、数百ナノメートルの微小粒子の捕集能に優れているものの、この濾材はフィブリル化ナノ繊維を必須とし、ナノ繊維の製造工程で、フィブリル化処理が必要であるため、製造法が煩雑になるという問題がある。
特開2003−166155号公報 特開2005−270965号公報 特表2005−527344号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ウイルスや細菌、粉塵等を効率的に遮断できるとともに、捕集したウイルス、細菌を不活性化または死滅し得る、抗菌・防塵生地を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、無機多孔質物質を含むマイクロファイバーからなる繊維構造物層と、ナノファイバー不織布層とを積層してなる生地が、細菌やウイルス、粉塵等の捕集・吸着能に優れるとともに、吸着した細菌やウイルス等を効率的に死滅または不活性化でき、かつ、大気圧下で水蒸気は通過させるが、水等の液体を透過させないことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1. 無機多孔質物質を含み、平均繊維径1〜100μmのマイクロファイバーからなる繊維構造物層と、この繊維構造物層に積層された、平均繊維径1nm以上1000nm未満のナノファイバー不織布層と、を備えることを特徴とする抗菌・防塵生地、
2. 前記ナノファイバー不織布が、ポリ乳酸および/またはポリアミドからなるナノファイバーを含む1の抗菌・防塵生地、
3. 前記ナノファイバー不織布が、厚み1μm以上である1または2の抗菌・防塵生地、
4. 前記ナノファイバー不織布の最小細孔径が0.1μm以下、最大細孔径が0.1μm超1μm以下である1〜3のいずれかの抗菌・防塵生地、
5. 前記無機多孔質物質が、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、活性炭、珪藻土、シリカゲルおよび粘土鉱物類から選ばれる1種または2種以上である1〜4のいずれかの抗菌・防塵生地、
6. 前記無機多孔質物質が、銅、銀、亜鉛、鉄、鉛、ニッケル、コバルト、パラジウムおよび白金から選ばれる1種または2種以上の金属を担持する1〜5のいずれかの抗菌・防塵生地、
7. 前記無機多孔質物質が、銅、銀および亜鉛から選ばれる1種または2種以上の金属を担持するゼオライトである6の抗菌・防塵生地、
8. 前記繊維構造物層上に、静電紡糸法により直接ナノファイバー不織布層が形成されてなる1〜7のいずれかの抗菌・防塵生地
を提供する。
本発明の抗菌・防塵生地は、無機多孔質物質を含むマイクロファイバーからなる繊維構造物層で、細菌、ウイルス等を捕集・吸着してこれらを死滅または不活性化させる効果と、ナノファイバー不織布層で、これらウイルス等を高度に遮断する効果とを併せ持つ。
また、ナノファイバー不織布層は撥水性が高く、大気圧下において、空気や水蒸気は通過させる一方、有機溶剤、消毒用アルコール液等の液体は浸透させないという効果を有する。
したがって、当該生地を、医療用衣服などの衛生製品用の生地に用いることで、粉塵花粉や真菌の胞子等の有害粒子を除去し得るだけでなく、空気中に浮遊するウイルスや、血液、吐瀉物等に含まれる各種の細菌、ウイルスなどに起因する各種の感染症への罹患を防止できる。
さらに、従来の生地に比べ、薄いナノファイバー不織布層を採用することで軽量化でき、しかも通気性が良好になるため、長時間作業しても蒸れが少なく、装着感、着心地が良好になる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る抗菌生地は、無機多孔質物質を含み、平均繊維径1〜100μmのマイクロファイバーからなる繊維構造物層と、この繊維構造物層に積層された、平均繊維径1nm以上1000nm未満のナノファイバー不織布層と、を備えるものである。
本発明における繊維構造物には、不織布、織布、フェルト、編物、紙、シート状物などの繊維から構成される構造物が全て含まれる。
繊維構造物を構成する繊維としては、平均繊維径1〜100μm、好ましくは、1〜60μmの繊維であれば、特に限定はなく、天然繊維、合繊繊維、これらの混合繊維を用いることができる。
天然繊維としては、綿,麻等の植物繊維、毛,絹等の動物繊維のいずれでもよいが、綿が好適である。
合成繊維としては、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアクリロニトリル系繊維等が挙げられるが、ポリオレフィン系繊維が好適であり、特に、ポリプロピレン繊維が好ましい。
繊維構造物層の厚みは特に限定されるものではないが、0.01〜5mm程度とすることが好適である。
無機多孔質物質としては、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、活性炭、珪藻土、シリカゲル、粘土鉱物類、多孔質泥、セピオライト、アロフェン、イモゴライト、活性白土、パーライト、多孔質ガラス、アルミナ多孔体等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性、安全性、安定性等に優れるという点から、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、活性炭、珪藻土、シリカゲル、粘土鉱物類が好ましく、最も用途が広いという点からゼオライトが好適である。
繊維構造物中に含まれる無機多孔質物質の含有量は特に限定はなく、例えば、0.1〜60質量%程度とすることができる。
また、無機多孔質物質には、金属が担持されていてもよい。
金属としては、銅、銀、亜鉛、鉄、鉛、ニッケル、コバルト、パラジウムおよび白金が挙げられ、これらは1種単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、生地の抗菌・抗ウイルス性を向上させるという点から、銅、銀、亜鉛が好ましく、銅、銀がより好ましい。銅、銀を担持した無機多孔質物質を用いることで、インフルエンザウイルスを死滅させる効果、および硫化水素やアンモニアを吸着・分解する防臭効果を高めることができる。
特に、本発明の抗菌・防塵生地においては、銅ゼオライト、銀ゼオライト、亜鉛ゼオライトを担持した不織布が好適である。
無機多孔質物質に金属を担持させる方法としては、例えば、使用する金属塩の水溶液を調製し、これに無機多孔質物質を浸漬させる方法、使用する金属を含有するエマルジョン溶液を調製し、無機多孔質物質をコーティングする方法などを用いることができる。特に、無機多孔質物質全体に無駄なく金属を担持できることから、浸漬法が好適である。
浸漬法に用いる金属塩水溶液中の金属濃度に特に制限はないが、好ましくは、1.0〜100mmol/Lである。
無機多孔質物質を含む繊維構造物を製造する手法としては、(1)樹脂溶液あるいは樹脂エマルジョンに無機多孔質物質粒子を分散させてなる液状組成物を、繊維構造物に付着または含浸させ、これを乾燥し、繊維構造物を構成する繊維の表面に無機多孔質物質粒子を結着させる方法、(2)無機多孔質物質の原料溶液を、繊維構造物に含浸させた後、繊維構造物を構成する繊維の表面および内部で無機多孔質物質粒子を析出させる方法が挙げられる。
また、金属を担持した無機多孔質物質を繊維構造物に含有させる場合は、結着させる無機多孔質物質として、金属を担持した無機多孔質物質を用いる、無機多孔質物質粒子を析出させる際に金属を担持させる、あるいは繊維の表面・内部に結着・析出した無機多孔質物質粒子に金属を担持させればよい。
本発明の抗菌・防塵生地において、ナノファイバー不織布を構成する樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、でんぷん、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。中でも、ポリアミドや、生分解性に優れるポリ乳酸が好ましく、ポリ乳酸のみ、ポリアミドのみ、およびポリ乳酸とポリアミドのみの組み合わせをナノファイバー不織布用樹脂として用いることが好適である。
ポリ乳酸としては、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸等のオキシ酸の重合体、またはこれらの共重合体等のポリラクチド類が挙げられ、具体的にはポリ乳酸、ポリ(α−リンゴ酸)、ポリグリコール酸、グリコール酸−乳酸共重合体などが挙げられる。特に、ポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルが好適である。
ポリアミドとしては、アミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミンとジカルボン酸とを重合または重縮合して得られるものが挙げられ、具体的には、6ナイロン、4.6ナイロン、6.6ナイロン、6.10ナイロン、6.12ナイロン、11.6ナイロン、11ナイロン、12ナイロンが挙げられる。
本発明において、ナノファイバー不織布を構成する繊維の平均繊維径は、1nm以上1000nm未満であり、好ましくは10〜800nm、より好ましくは50〜700nmである。平均繊維径が1000nm以上であると、ウイルスの捕集能が低下する虞がある。
また、ナノファイバー不織布の厚みは、1μm以上が好ましい。厚みが1μm未満であると、ハンドリング性および加工性が低下する場合がある。また厚すぎてもナノファイバー不織布を用いる軽量化や、蒸れ防止などの効果が損なわれることから、その上限は200μm程度、特に150μm程度とすることが好適である。好ましくは10〜100μmである。
さらに、上記ナノファイバー不織布は、最小細孔径が0.1μm以下、最大細孔径が0.1μm超1μm以下であることが好ましい。最大細孔径が1μmを超えたり、最小細孔径が0.1μmを超えたりする場合、汚染源(ウイルス、バクテリア、粉塵など)の捕集効率が低下する虞がある。
汚染源の捕集効率をより高めるためには、最大細孔径が0.1μ超0.9μm以下、特に0.3〜0.8μmが好ましい。また、生地の十分な通気性を確保することを考慮すると、最小細孔径は0.03〜0.1μm、特に0.03〜0.08μmが好ましい。
以上のような構成を有する本発明の抗菌・防塵生地は、0.06μmの塩化ナトリウム粒子を90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上捕集する性能を有する。
本発明の抗菌・防塵生地を構成するナノファイバー不織布は、微細な凹凸を有しているため撥水性が高い。このため、本発明の抗菌・防塵生地において、ナノファイバー不織布層は、汚染物質(有機溶剤、消毒用アルコール液、血液、体液、病原菌、雑菌)を浸透させない効果を有する。
ナノファイバー不織布は、静電紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等により製造することができる。中でも、ナノファイバー層を直接繊維構造物層に積層させる場合、熱の影響が少ない静電紡糸法が好ましい。
静電紡糸法は、電界中で、帯電した樹脂溶液を曳糸しつつ、その電荷の反発力により樹脂溶液を破裂させ、樹脂からなる極微細な繊維状物を形成する方法である。
静電紡糸を行う装置の基本的な構成は、樹脂溶液を排出するノズルを兼用し、樹脂溶液に数千から数万ボルトの高電圧で印加する一方の電極と、その電極に対向する他方の電極とからなる。一方の電極から吐出あるいは振出された樹脂溶液は、2つの対向する電極間の電界中で高速ジェットおよびそれに引き続くジェットの折れ曲がりや膨張によってナノファイバーになり、他方の電極表面上に堆積し、ナノファイバー不織布が得られる。
この場合、樹脂溶液に使用される溶媒は、使用する樹脂によって異なるため一概に規定することはできないが、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、蟻酸、乳酸、酢酸等が挙げられる。
ナノファイバー不織布を構成する繊維は、単独樹脂からなる繊維でも2種類以上の樹脂からなる複合繊維でもよい。複合繊維の形状は、サイドバイサイド型複合繊維、芯鞘繊維、複合中空繊維などが挙げられる。
また、繊維の単糸断面形状は、円形、三角形、扁平、多葉、多孔などが挙げられ、これらの中から用途等に合わせて適宜選択すればよい。
無機多孔質物質を含む繊維構造物層と、ナノファイバー不織布層とを積層する方法としては、(1)無機多孔質物質を含む繊維構造物層とナノファイバー不織布層とをそれぞれ作製して積層する方法、(2)無機多孔質物質を含む繊維構造物層に、電解紡糸法などにより、直接ナノファイバー層を積層させる方法が挙げられ、本発明ではいずれの方法を用いても構わない。
ナノファイバー不織布層の厚みが40μm以下である場合、薄さのため取扱にくくなることから、無機多孔質物質を含む繊維構造物層に直接ナノファイバー層を積層させる方法が好ましい。また、静電紡糸法で、繊維構造物上に直接ナノファイバー不織布を形成することで、ナノファイバーとマイクロファイバーとの接触部分が増加して、汚染源の捕集およびその死滅・不活性化の効率が高まる場合がある。
繊維構造物層とナノファイバー不織布層とを積層する場合、これらを単に重ね合わせるだけでもよいが、これらをニードリングして絡合一体化してもよいし、熱処理して融着一体化してもよい。
また、本発明の抗菌・防塵生地は、無機多孔質物質を含む繊維構造物層とナノファイバー不織布層とを、それぞれ1層以上有していればよく、繊維構造物層およびナノファイバー不織布層の双方またはどちらか一方を複数層有していてもよい。この場合、積層する順序は任意であるが、3層構造とする場合、繊維構造物層/ナノファイバー不織布層/繊維構造物層の構成とすることが好ましい。
さらに、繊維構造物とナノファイバー不織布との積層体を1単位としてこれを2枚積層してもよく、この場合、ナノファイバー不織布同士を内側にして積層し、繊維構造物/ナノファイバー不織布層/ナノファイバー不織布層/繊維構造物の4層構造とすることが好ましい。
なお、上記繊維構造物層およびナノファイバー不織布層は、無機多孔質物質を含むマイクロファイバーと、ナノファイバーとの混紡不織布で構成されていてもよい。ただし、この場合、繊維構造物層では、平均繊維径1〜100μmとなるように、ナノファイバー不織布層では、平均繊維径1nm以上1000nm未満となるように各層を構成する。
また、本発明の抗菌・防塵生地においては、繊維構造物層だけでなく、ナノファイバー不織布層に無機多孔質物質を担持させることもできる。
上述した本発明の抗菌・防塵生地の使用にあたっては、細菌、ウイルス、真菌の胞子、粉塵などの汚染源側に無機多孔質物質を含む繊維構造物が位置する態様とすることが好ましい。このような態様で使用すると、汚染源を含む空気などが、まず無機多孔質物質を含む繊維構造物と接触し、これを通過する際に汚染源が強固に捕集・吸着され、さらに続いてナノファイバー不織布で残った汚染源が捕集され、汚染源の飛散を効率的に防止することができる。
また、上述の3層構造および4層構造の態様にすれば、いずれの側にも無機多孔質物質含有繊維構造物層が位置するため表裏を考慮せずに使用できるようになり、また、汚染源の捕集と、汚染源の飛散防止に対応することができるため、本発明の抗菌・防塵生地の使用にあたって、万一、当初汚染源が存在しなかった側に汚染源が発生したり、本発明の生地を通らない別のルートから汚染源が侵入したりした場合でも、汚染源の拡散防止効果、感染症の拡大防止効果や予防効果が良好に発揮される。
本発明の抗菌・防塵生地は、それ単独で製品にしてもよく、その他の繊維不織布、織物、編物、樹脂フィルム、樹脂シート、フェルトなどと組み合わせて製品にしてもよい。
特に、直接肌に接する製品(マスク、手袋、帽子)に用いる場合は、内層(肌側)に毛羽の発生しにくい天然繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維などからなる織布または不織布層などを用いることが好ましい。
以上説明した本発明の抗菌・防塵生地は、無機多孔質物質を含むマイクロファイバーからなる繊維構造物層で、細菌、ウイルス等を捕集・吸着してこれらを死滅または不活性化させる効果と、ナノファイバー不織布層で、これらウイルス等を高度に遮断する効果とを併せ持つ。
したがって、当該生地は、救命作業の救急隊員、警察関係者、各種防災組織のコミュニティー員、特殊作業現場における作業従事者、クリーンルーム作業員、医療従事者などの衣類、手袋、マスク、帽子、包帯をはじめとした各種衛生製品に使用できる。また、放射)性汚染物質等がある原子力関連施設の汚染物質の除去、一般建築物等におけるアスベストの除去、農薬散布等の各種作業にも使用できる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の各実施例、比較例における評価項目は下記手法にて実施した。また、以下において、「部」は「質量部」を意味する。
[1]平均繊維径
試料表面を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製「S−4800I」)により撮影倍率5000倍で撮影して得た写真から、無作為に20箇所を選んで繊維径を測定した。全ての繊維径の平均値(n=20)を求めて平均繊維径とした。
[2]不織布の厚み
デジタルシックネスゲージ((株)テクロック製「SMD−565」)を用いて、測定力1.5Nにより無作為に5箇所を選んで厚みを測定した。全ての厚みの平均値(n=5)を求めて、不織布の厚みとした。
[3]不織布の目付
試料の質量を測定し、平方メートル当たりに換算した。
[4]捕集試験
NaCl粒子の捕集効率試験方法(防じんマスクの規格第6条)に準じ、以下の条件でウイルスを模したNaCl粒子を、生地の特定側から累積試験粒子量が100mgに達するまで通気させ、初期吸気抵抗を求めた。また光散乱式粉じん計により連続的に捕集効率を測定し、その間の1分毎の平均捕集効率を測定した。
試験サンプル:130φ(有効面積100cm2)の大きさ
測定装置:柴田科学製AP-9000(光散乱方式AP−632F)
試験粒子:NaCl粒子(柴田科学製AP−9000Gにより発生)
試験粒子平均粒子径:60nm〜100nm
試験濃度:約28mg/m3
試験流量率:85L/min
粒子供給量:試料に供給したNaCl粒子の累積量が100mgに達した時点で終了
[5]抗菌性能測定試験(菌数測定法)
繊維製品衛生加工協議会が策定した抗菌防臭加工製品の加工効果評価試験マニュアルに記載された以下の菌数測定法を採用した。
黄色ぶどう球菌を試験菌体とし、これを予め普通ブイヨン培地で106〜107個/mlになるように培養調整し、試験菌懸濁液とした。この懸濁液0.2mlを減菌処理したネジ付きバイアル瓶中の試料0.4gに均一に接種し、36〜38℃で18時間静置培養後、容器内に減菌緩衝生理食塩液を20ml加え、振幅30cmで手により25〜30回強く振とうして試験中の生菌を液中に分散させた後、減菌緩衝生理食塩液で適当な希釈系列を作り、各段階の希釈液1mlをシャーレ2枚に入れ、さらに標準寒天培地約15ml入れた。これを36〜38℃で24〜48時間培養した後、生育コロニー数を計測し、その希釈倍率に応じて試料中の生菌数を算出した。そしてその効果の判定は、増殖値が1.5を超える場合、試験成立を判定した。また、下記式により静菌活性値Sおよび殺菌活性値Lを求めた。静菌活性値が2.2以上の場合を「○」、静菌活性値が2.2未満の場合を「×」とした。
静菌活性値S=B−C
殺菌活性値L=A−C
A:標準布の試験菌接触直後の3検体の生菌数の常用対数値の平均値
B:標準布の18時間培養後の3検体の生菌数の常用対数値の平均値
C:抗菌加工試料の18時間培養後の3検体の生菌数の常用対数値の平均値
[6]透水性試験
直径3.0cmのステンレス製透水セル下部に、直径2.2cmの試料を載置し、圧力0MPaで、純水20mlをステンレス製透水セルに入れた。1分経過した後に透水した水量(mg)を求め、単位時間、単位面積当たりの透水量(L/m2・min)に換算した。測定は、室温23℃の室内で行った
[7]最小細孔径、最大細孔径測定試験
バブルポイント法(ASTM F316、JISK3832)に基づき、以下の手法により細孔径を測定・評価した。
PMI社製パームポロメーター(型式CFP−1200A)を用い、サンプル試料の測定径φ25mmで乾燥空気をサンプル試料に通し、段階的に気体圧力を増加させてその時の気体流量を観測した。(Dry流量曲線)
次に、サンプル試料を表面張力16dynes/cmのPMI社製Galwickに浸液し、浸液したサンプル試料を真空乾燥機にて脱気してサンプル試料内に泡が残らないように前処理した。前処理したサンプル試料に乾燥空気を通じ、段階的に気体圧力を増加させてその時の気体流量を観測した。(Wet流量曲線)
この2つのDry、Wet流量曲線から最大細孔径、最大細孔径を求めた。
[実施例1]
綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)に、尿素と85%のリン酸のDMF溶液中で150℃でリン酸基を導入した後、得られた綿不織布を、飽和水酸化カルシウム水溶液中に浸漬した。この不織布を、さらにナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩素、炭酸、リン酸、硫酸イオンを含む水溶液に浸漬し、綿不織布の表面に水酸化アパタイトを析出させ、厚さ約25μmの水酸化アパタイト被膜が形成された綿不織布を得た。次いで水酸アパタイト皮膜を形成した綿不織布を、0.05モル%の硝酸銀水溶液中、室温で24時間浸漬した後、取り出して純水でよく洗浄し、真空中、80℃で乾燥し、10質量%の銀アパタイトが担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60g/m2)を得た。
一方、ポリ乳酸樹脂(LACEA H280、三井化学社製)100部とジメチルホルムアミド570部とを60℃で混合し、ジメチルホルムアミド中にポリ乳酸樹脂を溶解させて紡糸溶液を作成した。この紡糸溶液を内口径0.4mmの吐出口を有するシリンジに入れ、印加電圧30KV、室温、大気圧下、吐出口に対向して配置されたアルミニウム製の繊維状物質捕集電極までの距離15cmの条件で静電紡糸を行い、厚み0.06mmのナノファイバー不織布を得た。得られたナノファイバー不織布の平均繊維径は500nmであり、繊維径2μm以上の繊維は観察されなかった。
以上のようにして作製した銀アパタイト担持マイクロファイバー綿不織布とポリ乳酸ナノファイバー不織布とを積層して抗菌・防塵生地を得た。
[実施例2]
銀ゼオライト粉末10部(ゼオミックAJ−10N、A型ゼオライト、株式会社シナネンゼオミック製)をポリウレタンエマルジョン(NeoRezR−966、ゼネカ株式会社製)100部に分散させた分散液を綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)にスプレー噴霧した後、真空中、60℃で乾燥して10質量%の銀ゼオライトが担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60g/m2)を得た。
得られた銀ゼオライト担持マイクロファイバー綿不織布を繊維状物質捕集電極上に載せ、6.6ナイロン(マラニール A125、ユニチカ社製)100部と蟻酸570部とを室温で混合し、蟻酸中に6.6ナイロンを溶解させて調製した紡糸溶液を、内口径0.4mmの吐出口を有するシリンジに入れ、印加電圧30KV、室温下大気圧、吐出口に対向させて配置した繊維状物質捕集電極までの距離15cmの条件で静電紡糸を行い、マイクロファイバー綿不織布上に、厚み0.04mmのナイロンナノファイバー不織布を直接積層し、抗菌・防塵生地を得た。なお、ナノファイバー不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1μm以上の繊維は観察されなかった。
[実施例3]
綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)を、アルミ、ケイ素、ナトリウムを含む水溶液に浸漬し、ゼオライト結晶を析出させて繊維内部にゼオライトが担持された綿不織布を得た。このゼオライト担持綿不織布を0.1モル%の塩化亜鉛水溶液に、室温で24時間浸漬した後、取り出して純水でよく洗浄し、真空中、80℃で乾燥し、10質量%の亜鉛ゼオライトが担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60g/m2)を得た。
この亜鉛ゼオライト担持マイクロファイバー綿不織布と、上記実施例1と同様にして別途製造したポリ乳酸ナノファイバー不織布(厚み0.04mm)とを積層し、抗菌・防塵生地を得た。
[実施例4]
平均粒径20μmの活性炭微粒子(白鷺、日本エンバイロケミカルズ株式会社製)10部を60%アクリル系樹脂水溶液(ファイレックスRC−104、明成化学株式会社製)に分散した分散液に、綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)を浸漬した後、真空中、60℃で乾燥して、活性炭微粒子を含有した綿不織布を得た。この活性炭微粒子を含有した綿不織布を、0.1モル%の塩化亜鉛水溶液中、40℃で10時間浸漬した後、1時間自然乾燥して、10質量%の亜鉛活性炭が担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60/m2)を得た。
この亜鉛活性炭担持マイクロファイバー綿不織布を繊維状物質捕集電極上に載せ、実施例2と同様の手法で静電紡糸を行い、マイクロファイバー綿不織布上に、厚み0.02mmのナイロンナノファイバー不織布を直接積層し、抗菌・防塵生地を得た。
[実施例5]
実施例3で得られたゼオライトが担持された綿不織布を0.1モル%の硫酸銅水溶液中に室温で24時間浸漬した後、取り出して純水でよく洗浄し、真空中、80℃で乾燥し、10質量%の銅ゼオライトが担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60g/m2)を得た。
この銅ゼオライト担持マイクロファイバー綿不織布と、実施例1と同様にして別途製造した厚み0.02mmのポリ乳酸ナノファイバー不織布とを積層し、抗菌・防塵生地を得た。
[実施例6]
実施例5で得られた銅ゼオライト担持マイクロファイバー綿不織布を繊維状物質捕集電極上に載せ、実施例1と同様にして静電紡糸を行い、マイクロファイバー綿不織布上に、厚み0.02mmのポリ乳酸ナノファイバー不織布を直接積層し、抗菌・防塵生地を得た。
[実施例7]
実施例5で得られた銅ゼオライト担持マイクロファイバー綿不織布と、実施例2において繊維状物質捕集電極上に綿不織布を載せずに静電紡糸を行って別途製造した厚み0.02mmのナイロンナノファイバー不織布とを積層し、抗菌・防塵生地を得た。
[実施例8]
実施例4で得られた活性炭微粒子を含有した綿不織布を、0.1モル%の硫酸銅水溶液中に室温で24時間浸漬した後、1時間自然乾燥し、10質量%の銅活性炭が担持されたマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60/m2)を得た。
この銅活性炭担持マイクロファイバー綿不織布を繊維状物質捕集電極上に載せ、実施例1と同様の手法で静電紡糸を行い、マイクロファイバー綿不織布上に、厚み0.01mmのポリ乳酸ナノファイバー不織布を直接積層し、抗菌・防塵生地を得た。
[実施例9]
実施例5で得られた抗菌・防塵生地の両面にメルトブロー不織布(材質ポリプロピレン、平均繊維径10μm、厚み0.13mm、目付20g/m2)をそれぞれ積層し、4層構造の抗菌・防塵生地を作製した。
[実施例10]
実施例7で得られた抗菌・防塵生地を用いた以外は、実施例9と同様にして4層構造の抗菌・防塵生地を作製した。
[比較例1]
綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)をそのまま使用した。
[比較例2]
実施例1で得られた銀担持アパタイトマイクロファイバー綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.3mm、目付60g/m2)のみを使用した。
[比較例3]
綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)を3枚重ねて使用した。
[比較例4]
実施例5で得られた抗菌・防塵生地に換えて、綿不織布(平均繊維径10μm、厚み0.28mm、目付60g/m2)を用いた以外は、実施例9と同様にして3層構造の生地を作製した。
[比較例5]
実施例5で得られた抗菌・防塵生地に換えて、実施例8で調製した銅担持活性炭マイクロファイバー綿不織布を用いた以外は、実施例9と同様にして3層構造の生地を作製した。
上記実施例1〜10および比較例1〜5で得られた抗菌・防塵生地について、捕集試験、抗菌性能測定試験、および透水性試験を行った。捕集試験および抗菌性能試験の結果を表1に、透水性試験の結果を表2に示す。
なお、実施例1〜10における捕集試験は、無機多孔質物質含有マイクロファイバー不織布側から試験粒子含有空気を通して行った。
Figure 2008188791
Figure 2008188791
表1,2に示されるように、実施例1〜10で得られた抗菌・防塵生地は、試験粒子の捕集効率および抗菌性に優れているとともに、透水性が低く耐水性に優れていることがわかる。

Claims (8)

  1. 無機多孔質物質を含み、平均繊維径1〜100μmのマイクロファイバーからなる繊維構造物層と、この繊維構造物層に積層された、平均繊維径1nm以上1000nm未満のナノファイバー不織布層と、を備えることを特徴とする抗菌・防塵生地。
  2. 前記ナノファイバー不織布が、ポリ乳酸および/またはポリアミドからなるナノファイバーを含む請求項1記載の抗菌・防塵生地。
  3. 前記ナノファイバー不織布が、厚み1μm以上である請求項1または2記載の抗菌・防塵生地。
  4. 前記ナノファイバー不織布の最小細孔径が0.1μm以下、最大細孔径が0.1μm超1μm以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の抗菌・防塵生地。
  5. 前記無機多孔質物質が、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、活性炭、珪藻土、シリカゲルおよび粘土鉱物類から選ばれる1種または2種以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の抗菌・防塵生地。
  6. 前記無機多孔質物質が、銅、銀、亜鉛、鉄、鉛、ニッケル、コバルト、パラジウムおよび白金から選ばれる1種または2種以上の金属を担持する請求項1〜5のいずれか1項記載の抗菌・防塵生地。
  7. 前記無機多孔質物質が、銅、銀および亜鉛から選ばれる1種または2種以上の金属を担持するゼオライトである請求項6記載の抗菌・防塵生地。
  8. 前記繊維構造物層上に、静電紡糸法により直接ナノファイバー不織布層が形成されてなる請求項1〜7のいずれか1項記載の抗菌・防塵生地。
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