JP2008185666A - 液晶装置および電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】ベンド配向とツイスト配向とを安定して共存させることにより、高速応答性と高コントラストを兼ね備えた液晶装置を提供する。
【解決手段】本発明の液晶装置1は、第1の基板(TFTアレイ基板2)と液晶層5との界面での液晶分子の配向方向と第2の基板(対向基板3)と液晶層5との界面での液晶分子の配向方向とが、第1の基板および第2の基板の基板面内の方位角方向において異なり、第1の基板と液晶層との界面での液晶分子のプレチルト方向と第2の基板と液晶層との界面での液晶分子のプレチルト方向との関係で規制される液晶分子のツイスト方向とは逆向きのツイストを付与するカイラル剤が液晶層に添加されている。これにより、ベンド転移閾値電圧以上の電圧を液晶層に印加したときに、液晶分子がツイスト配向状態を呈しつつベンド配向状態を呈することを特徴とする。
【選択図】図4
【解決手段】本発明の液晶装置1は、第1の基板(TFTアレイ基板2)と液晶層5との界面での液晶分子の配向方向と第2の基板(対向基板3)と液晶層5との界面での液晶分子の配向方向とが、第1の基板および第2の基板の基板面内の方位角方向において異なり、第1の基板と液晶層との界面での液晶分子のプレチルト方向と第2の基板と液晶層との界面での液晶分子のプレチルト方向との関係で規制される液晶分子のツイスト方向とは逆向きのツイストを付与するカイラル剤が液晶層に添加されている。これにより、ベンド転移閾値電圧以上の電圧を液晶層に印加したときに、液晶分子がツイスト配向状態を呈しつつベンド配向状態を呈することを特徴とする。
【選択図】図4
Description
本発明は、液晶装置および電子機器に関し、特にベンド配向とツイスト配向の2つの配向状態を併せ持った表示モードを用いる液晶装置に関するものである。
液晶装置の分野においては、近年、動画の画質向上を目的として応答速度の速いOCB(Optical Compensated Birefringence)モードの液晶装置が脚光を浴びている。OCBモードにおいて、初期状態では液晶分子が2枚の基板間で扇状に開いたスプレイ配向状態を呈し、表示動作時には液晶分子が弓なりに曲がったベンド配向状態を呈している。したがって、表示動作時にはベンド配向の曲がりの度合いで透過率を変調することによって高速応答性を実現している。OCBモードの液晶装置は高速応答性を特徴とする一方、所定の駆動電圧範囲内で高いコントラストを実現するためには、位相差板を用いて位相差補償を行う必要がある。そのため、液晶パネルのセルギャップや位相差板の面内リタデーション値を高精度に合わせ込まなければならない。
OCBモードの液晶表示装置の使用を前提として、広視野角で明るい表示を得るための手法が下記の特許文献1に提案されている。特許文献1では、液晶分子の配向方向が一方の基板側の液晶層との界面と他方の基板側の液晶層との界面とで略90°の角度をなしており、かつ液晶層の厚さ方向にベンド配向を呈した表示モードを提案している。また、ここでは液晶層に2色性色素を添加したゲストホスト型液晶モードを用いている。この種の配向を採った場合、ベンド配向による高速応答性が得られるとともに、入射光の旋光性を表示に利用できるため、位相差補償を不要とすることができる。
特開平9−166793号公報
特許文献1では、ベンド配向を得る手段として、液晶分子のプレチルト角を40°程度にまで高くする方法が開示されている。しかしながら、このような高いプレチルト角を得るには基板表面の配向処理方法に制約が生じ、実現が難しい。また、プレチルト角が高くなる程、液晶層のリタデーション値が小さくなるため、明るさを得るのに不利である。また、実施例には、プレチルト角が5°程度であってもベンド配向を得られたと記載されているが、特許文献1の技術ではカイラル剤による液晶分子のねじれ方向が指定されておらず、安定して一方向にツイスト配向させつつベンド配向させるのは困難である、といった問題がある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ベンド配向とツイスト配向とを安定して共存させることにより、高速応答性と高コントラストを兼ね備えた液晶装置、およびこの種の液晶装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の液晶装置は、第1の基板と第2の基板との間に液晶層が挟持され、前記液晶層の液晶分子の配向状態をスプレイ配向からベンド配向へと転移させて表示を行う液晶装置であって、前記第1の基板における配向方向と、前記第2の基板における配向方向とが、前記第1の基板および前記第2の基板の基板面内の方向において異なり、前記第1の基板側の前記液晶分子のプレチルト方向と、前記第2の基板側の前記液晶分子のプレチルト方向と、の関係で規制される前記液晶分子のツイスト方向とは逆回りのツイストを付与するカイラル剤が、前記液晶層に添加され、前記液晶分子が、ベンド転移閾値電圧以上の電圧を前記液晶層に印加したときに、ツイスト状態を呈しつつベンド配向状態を呈することを特徴とする。
本発明の構成によれば、第1の基板上の液晶分子の配向方向と第2の基板上の液晶分子の配向方向とが、各基板の基板面内の方位角方向で異なっている、すなわち、第1、第2の基板の配向方向はねじれの関係にある。ここで、本発明においては、第1の基板側の液晶分子のプレチルト方向と第2の基板側の液晶分子のプレチルト方向との関係で決まる液晶分子のツイスト方向とは逆向きのツイストを付与するカイラル剤が液晶層に添加されているので、カイラル剤によって規制される液晶分子のねじれを解いて考えるとスプレイ配向と等価になる。なお、この部分の詳細な説明は[発明を実施するための最良の形態]の項で図面を用いて行う。よって、ベンド転移閾値電圧以上の電圧を液晶層に印加すると、液晶分子がツイスト状態を呈しつつベンド配向状態を呈する状態を得ることができる。このようにして、本発明では、ベンド配向とツイスト配向とを安定して共存させることができ、高速応答性と高コントラストを兼ね備えた液晶装置を実現することができる。
また、前記液晶層の層厚をd、前記液晶分子の固有ねじれピッチをpとしたとき、d/pの値が、0.25≦d/p≦1の範囲内にあることが望ましい。
d/pの値が0.25未満であると、カイラル剤によって規制される液晶分子のねじれが不十分であるため、液晶分子によるらせん構造が不完全になる。そのため、偏光面の回転角度が小さくなり、透過率が低下してしまう。また、d/pの値が1を超えると、ベンド配向に対してツイスト配向の影響が大きくなるため、応答速度が遅くなってしまう。なお、d/pの値とこれら特性値との詳細な相関関係については、[発明を実施するための最良の形態]の項で詳述する。
d/pの値が0.25未満であると、カイラル剤によって規制される液晶分子のねじれが不十分であるため、液晶分子によるらせん構造が不完全になる。そのため、偏光面の回転角度が小さくなり、透過率が低下してしまう。また、d/pの値が1を超えると、ベンド配向に対してツイスト配向の影響が大きくなるため、応答速度が遅くなってしまう。なお、d/pの値とこれら特性値との詳細な相関関係については、[発明を実施するための最良の形態]の項で詳述する。
また、前記第1の基板および前記第2の基板のうちのいずれか一方の基板において、配向方向が異なる複数の領域が設けられた構成としても良い。
この構成によれば、液晶層に電圧を印加した際に液晶分子のツイスト方向が異なる領域ができ、各領域の境界に、液晶層の初期状態であるスプレイ配向から駆動時のベンド配向へと転移するきっかけとなる核(以下、ベンド転移核と呼ぶ)が生成され、ベンド転移核からベンド転移が周囲に伝播する。これにより、本発明の液晶装置を使用する際の初期転移操作を短時間に済ますことができる。
この構成によれば、液晶層に電圧を印加した際に液晶分子のツイスト方向が異なる領域ができ、各領域の境界に、液晶層の初期状態であるスプレイ配向から駆動時のベンド配向へと転移するきっかけとなる核(以下、ベンド転移核と呼ぶ)が生成され、ベンド転移核からベンド転移が周囲に伝播する。これにより、本発明の液晶装置を使用する際の初期転移操作を短時間に済ますことができる。
さらに、1つの画素内に、配向方向が異なる複数の領域が設けられた構成としても良い。
この構成によれば、各画素毎にベンド転移核が生成される確率が高くなるため、初期転移操作をより短時間に済ますことができる。
この構成によれば、各画素毎にベンド転移核が生成される確率が高くなるため、初期転移操作をより短時間に済ますことができる。
本発明の電子機器は、上記本発明の液晶装置を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、上記本発明の液晶装置を備えたことによって高速応答性と高コントラストを兼ね備えた液晶表示が可能な電子機器を実現することができる。
本発明によれば、上記本発明の液晶装置を備えたことによって高速応答性と高コントラストを兼ね備えた液晶表示が可能な電子機器を実現することができる。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図12を参照して説明する。
本実施形態では、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を画素スイッチング素子として用いたアクティブマトリクス方式の液晶装置の例を挙げて説明する。
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図12を参照して説明する。
本実施形態では、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を画素スイッチング素子として用いたアクティブマトリクス方式の液晶装置の例を挙げて説明する。
図1は本実施形態の液晶装置を各構成要素とともに対向基板の側から見た平面図、図2は図1のH−H’線に沿う断面図、図3は同液晶装置の等価回路図、図4〜図9は同液晶装置における液晶分子の配向状態を説明するための図、図10は同液晶装置における印加電圧と明るさ(透過率)との関係を示す図、図11はd/pと透過率との関係を示す図、図12はd/pと応答時間との関係を示す図、である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
図1および図2に示すように、本実施形態の液晶装置1は、TFTアレイ基板2(第1の基板)と対向基板3(第2の基板)とがシール材4によって貼り合わされ、このシール材4によって区画された領域内に液晶層5が封入されている。液晶層5は、正の誘電率異方性を有する液晶材料から構成されており、初期状態ではスプレイ配向、表示動作時にはベンド配向を呈する。シール材4の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる遮光膜(周辺見切り)6が形成されている。シール材4の外側の周辺回路領域には、データ線駆動回路7および外部回路実装端子8がTFTアレイ基板2の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路9が形成されている。TFTアレイ基板2の残る一辺には、表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路9の間を接続するための複数の配線10が設けられている。また、対向基板3の角部においては、TFTアレイ基板2と対向基板3との間で電気的導通をとるための基板間導通材11が配設されている。
図3は、本実施形態の液晶装置の等価回路図である。液晶装置の表示領域を構成すべくマトリクス状に配置された複数の画素には、画素電極13がそれぞれ形成されている。また、画素電極13の側方には、当該画素電極13への通電制御を行うための画素スイッチング素子であるTFT素子14が形成されている。このTFT素子14のソースには、データ線15が電気的に接続されている。各データ線15には画像信号S1、S2、…、Snがそれぞれ供給される。なお画像信号S1、S2、…、Snは、各データ線15に対してこの順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線15に対してグループ毎に供給してもよい。
また、TFT素子14のゲートには、走査線16が電気的に接続されている。走査線16には、所定のタイミングでパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmが供給される。なお、走査信号G1、G2、…、Gmは、各走査線16に対してこの順に線順次で印加される。また、TFT素子14のドレインには、画素電極13が電気的に接続されている。そして、走査線16から供給された走査信号G1、G2、…、Gmにより、スイッチング素子であるTFT素子14を一定期間だけオン状態にすると、データ線15から供給された画像信号S1、S2、…、Snが、各画素の液晶に所定のタイミングで書き込まれる。
液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極13と後述する共通電極との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画像信号S1、S2、…、Snがリークするのを防止するため、画素電極13と容量線17との間に蓄積容量18が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶分子のベンド配向状態が変化する。これにより、液晶に入射した光が変調されて階調表示がなされる。以上、等価回路図を用いて画像表示を行う際の動作を説明したが、初期転移(スプレイ配向からベンド配向への転移)のための電圧印加動作を行う際にも、画像表示動作の場合と同様、データ線に初期転移用信号を供給するとともに走査線に走査信号を供給し、表示領域内の複数の画素を駆動する。
本実施形態の液晶装置1において、TFTアレイ基板2と対向基板3に対して、図4に示すような配向処理(ラビング処理)がなされている。図4では、TFTアレイ基板2のガラス基板20、画素電極13、配向膜21、対向基板3のガラス基板22、共通電極23、配向膜24のみを図示するが、対向基板3上の配向膜24には図4中の奥から手前に向かう矢印Cの方向にラビング処理が施されている。TFTアレイ基板2上の配向膜21には図4中の右から左に向かう矢印Dの方向にラビング処理が施されている。したがって、対向基板3側の液晶分子の配向方向と、TFTアレイ基板2側の液晶分子の配向方向とが基板面内の方位角方向において異なっており、TFTアレイ基板2側と対向基板3側の配向方向が90°の角度をなしている。
TFTアレイ基板2と対向基板3との間には、誘電率異方性が正の液晶材料からなる液晶層5が封入されている。また、液晶材料中には、液晶層5の層厚をd、液晶分子の固有ねじれピッチをpとしたとき、液晶層5の層厚と液晶分子の固有ねじれピッチとの比(d/p)の値が0.75となるように、液晶分子が右回りとなるカイラル剤が添加されている。本実施形態の場合、TFTアレイ基板2と対向基板3との間隔(セルギャップ)を5.3μmとする。よって、dが5.3μmであるから、pが概ね7.1μmとなるようにカイラル剤が添加されている。
なお、本明細書で言うところの「d/p」とは、あくまでも液晶材料を水平配向させたときの値である。すなわち、水平配向では、液晶層の層厚dと液晶分子の固有ねじれピッチpとが等しいとき、すなわち、d/p=1のとき、液晶層中で液晶分子が1回転ねじれていることになる。本実施形態では、d/p=0.75であるから、本実施形態で用いる液晶材料を水平配向させたとすれば、液晶層中で液晶分子が0.75回転ねじれている、という意味になる。本発明の特徴は後述するが、各基板のプレチルト方向の関係で規制される液晶分子のツイスト方向とは逆回りのツイストを付与するカイラル剤を添加し、カイラル剤によるツイスト方向の方に液晶分子を強制的にツイストさせる、という特殊なものである。したがって、本実施形態の場合は、d/p=0.75であっても、実際には液晶層5中で液晶分子が0.75回転(270°)ねじれているわけではなく、90°ねじれているのである。
また、図5に示すように、対向基板3側の液晶分子25aのプレチルト方向は、液晶分子25aの長軸方向の両端(A側、A’側)のうち、A側(図5の左側)が基板面から立ち上がっている。TFTアレイ基板2側の液晶分子25bのプレチルト方向は、液晶分子25bの長軸方向の両端(B側、B’側)のうち、B側(図5の左側)が基板面から立ち上がっている。TFTアレイ基板2と対向基板3のそれぞれの外面側(液晶層5と反対側)には、図示しない偏光板が配置されている。一方の偏光板の透過軸はいずれか一方の基板のラビング方向に対して平行もしくは垂直に配置されるとともに、他方の偏光板の透過軸に対して垂直に配置(クロスニコル配置)されている。なお、図5は、液晶分子25a,25bの配向方向を見やすくするため、対向基板3側を90°ねじった状態で描いてある。
ここで、本発明の特徴である液晶分子のツイスト方向について説明する。
液晶分子のツイスト方向が右回り、左回りのいずれになるかは、各基板上の液晶分子にプレチルト角を付与し、右回りのツイストと左回りのツイストのそれぞれに要するエネルギーに差を付けることによって規制することができる。例えば図4、図5に示す方向でラビング処理を行った場合には、液晶分子25a,25bは(対向基板3(上側の基板)側から見て)左回りのツイストを呈する。もしくは、液晶分子のツイスト方向を規制する簡便な手段として、液晶材料にカイラル剤を添加する方法がある。添加するカイラル剤の種類や量によって、ツイストの方向と量を制御することができる。一般的に、液晶分子のツイストの制御は、プレチルト角よりもカイラル剤の方に支配される傾向が強い。
液晶分子のツイスト方向が右回り、左回りのいずれになるかは、各基板上の液晶分子にプレチルト角を付与し、右回りのツイストと左回りのツイストのそれぞれに要するエネルギーに差を付けることによって規制することができる。例えば図4、図5に示す方向でラビング処理を行った場合には、液晶分子25a,25bは(対向基板3(上側の基板)側から見て)左回りのツイストを呈する。もしくは、液晶分子のツイスト方向を規制する簡便な手段として、液晶材料にカイラル剤を添加する方法がある。添加するカイラル剤の種類や量によって、ツイストの方向と量を制御することができる。一般的に、液晶分子のツイストの制御は、プレチルト角よりもカイラル剤の方に支配される傾向が強い。
ところで、通常のTN(Twisted Nematic)モードでは、液晶分子のツイスト方向を均一にして配向が乱れないようにするために、プレチルト角によって規制されるツイスト方向とカイラル剤によって規制されるツイスト方向を同じ方向に合わせる。このとき、90°ツイストした液晶分子のねじれを解いたと仮定し、その状態を図示したとすると、図6(a)に示すようになる。すなわち、この図に示すように、液晶分子25はTFTアレイ基板2と対向基板3とで同じ方向のプレチルトを示す。
これに対して、本実施形態においては、プレチルト角によって規制される液晶分子25のツイスト方向とカイラル剤によって規制される液晶分子25のツイスト方向とが逆回りになるようにしている。このとき、90°ツイストした液晶分子25のねじれを解いたと仮定し、その状態を図示したとすると、図6(b)に示すようになる。すなわち、この図に示すように、液晶分子25はTFTアレイ基板2と対向基板3とで逆方向のプレチルトを示す。このように、液晶分子25が上下の基板間で逆方向のプレチルトを示す関係は、いわゆるスプレイ配向である。したがって、この配向状態がねじれていても液晶分子25は同様の動作を示し、この状態から電圧を印加していくことによって、図6(c)に示すようなベンド配向に転移させることができる。
本発明者は、このようにすれば、TNモードのように液晶分子25がツイスト配向しながらもベンド配向を呈するような液晶層5の状態を安定して作り出せることを見い出した。
本発明者は、このようにすれば、TNモードのように液晶分子25がツイスト配向しながらもベンド配向を呈するような液晶層5の状態を安定して作り出せることを見い出した。
また、本実施形態の液晶分子25の配向状態を他の表現方法で表すと、図8、図9に示すようになる。すなわち、図7に示すように、例えばTFTアレイ基板2の基板面内で直交する2方向をX方向、Y方向、液晶層5の厚さ方向をZ方向とし、液晶分子25の長軸LのXY面内への射影像がX軸となす角度をφ(°)、液晶分子25の長軸LがXY平面となす角度をθ(°)とすると、XY面内については、図8に示すように、z/dが0から1に変化するにつれてφが0°から90°まで変化する(90°ねじれた状態となっている)。また、Z方向については、図9に示すように、z/dが0から1に変化するにつれてφが180°近傍から90°を経て0°近傍まで変化する(ベンド状態となっている)。なお、zは液晶層5の厚さ方向(Z方向)の座標、dは液晶層5の厚さである。
図10は、本実施形態の液晶装置1において液晶層5に印加する電圧と明るさ(透過率)との関係を示す図である。印加電圧がベンド転移閾値電圧(Vb)以下のときには、液晶分子25はねじれた状態でスプレイ配向を呈しているが、Vbを超えるとねじれた状態でベンド配向が維持されている。本発明者は、本実施形態の液晶装置1において全ての画素電極13と共通電極23との間に5Vの電圧を印加したところ、各画素の周辺からベンド転移核が発生し、そのベンド転移核を中心として表示領域全体にベンド配向領域が広がっていくことを確認した。さらに、表示領域全体がベンド配向状態となったところで通常の映像表示を行った。このとき、応答速度については、一般的なOCBモードの液晶装置と同等の高速応答性を示した。また、一般的なOCBモードの液晶装置と比べて高いコントラストの表示が得られた。
本実施形態の場合、液晶層5の層厚と液晶分子25の固有ねじれピッチとの比(d/p)を0.75としたが、d/pの値を0.25≦d/p≦1の範囲内に設定することが望ましい。図11はd/pの値と白表示時の透過率の関係を示すグラフであり、横軸がd/p、縦軸が透過率(%)である。0.25≦d/p≦1の範囲では透過率は80%以上を維持しているが、d/pの値が0.25未満では透過率が急激に低下する傾向を示している。この理由は、d/pの値が0.25未満になると、カイラル剤によって付与されるねじれが不十分で液晶分子25のらせん構造が不完全になり、偏光面が90°以下の回転となる結果、透過率が低下するためと考えられる。
また、図12はd/pの値と応答速度の関係を示すグラフであり、横軸がd/p、縦軸が応答速度(msec)である。0.25≦d/p≦0.75の範囲では応答速度は4〜5msec程度を維持している。d/p=1になると応答速度は遅くなる傾向を示すが、未だ10msec未満であり、一般的な液晶装置の応答速度のレベルとしては良好である。ところが、d/pが1を超えると、10msecを超えると考えられる。この理由は、d/pの値が1を超えると、ベンド配向に対してツイスト配向の影響が大きくなるため、応答速度が遅くなるためと考えられる。
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態を図13,図14を参照して説明する。
本実施形態の液晶装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、一方の基板に異なる方向のラビング処理を施した複数の領域を形成した点のみが異なっている。
図13は本実施形態の液晶装置における液晶分子の配向方向を示す図、図14は異なる方向のラビング処理を施した複数の領域を形成する方法を説明するための図である。これらの図において第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
以下、本発明の第2の実施の形態を図13,図14を参照して説明する。
本実施形態の液晶装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、一方の基板に異なる方向のラビング処理を施した複数の領域を形成した点のみが異なっている。
図13は本実施形態の液晶装置における液晶分子の配向方向を示す図、図14は異なる方向のラビング処理を施した複数の領域を形成する方法を説明するための図である。これらの図において第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
本実施形態の液晶装置30においては、図13に示すように、TFTアレイ基板2上の1つの画素内に、互いに異なる方向のラビング処理が施された2つの領域R1,R2が形成されている。これら2つの領域R1,R2のラビング方向は平行でかつ逆向きである。すなわち、TFTアレイ基板2上の配向膜21のうち、領域R1においては図13中の右から左に向かう矢印Dの方向にラビング処理が施されている(第1実施形態と同様)。一方、領域R2においては図13中の左から右に向かう矢印Eの方向にラビング処理が施されている。領域R2は領域R1に比べて十分狭い面積となっており、画素の1辺に沿って形成されている。なお、ここでは、TFTアレイ基板2側にラビング方向が互いに異なる2つの領域R1,R2を形成したが、対向基板3側に形成しても良い。
TFTアレイ基板2に対してこのようなラビング処理を行うには、例えば図14(a)〜(c)に示すような方法で実現することができる。まず、図14(a)に示すように、ガラス基板20上に配向膜21を成膜し(画素電極等は省略)、1回目のラビング処理を施す。次に、配向膜21上にフォトレジストを塗布し、図14(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術により画素内の一部にフォトレジスト31を残すようにパターニングした後、1回目のラビング処理と平行かつ逆向きに2回目のラビング処理を施す。その後、フォトレジストを除去すると、フォトレジストに覆われていなかった箇所は2回目のラビング処理の配向方向が現れ、フォトレジストに覆われていた箇所は1回目のラビング処理の配向方向が現れるため、互いに異なる方向のラビング処理が施された2つの領域R1,R2を形成することができる。
一方、対向基板3上の配向膜24には図13中の奥から手前に向かう矢印Cの方向にラビング処理が施されている(第1実施形態と同様)。したがって、向きは異なるものの、領域R1,R2のいずれにおいても、対向基板3側の液晶分子の配向方向と、TFTアレイ基板2側の液晶分子の配向方向とが基板面内の方位角方向において異なり、TFTアレイ基板2側と対向基板3側の配向方向が90°の角度をなしている。
TFTアレイ基板2と対向基板3との間には、誘電率異方性が正の液晶材料からなる液晶層5が封入されている。液晶材料中には、液晶層5の層厚と液晶分子の固有ねじれピッチとの比(d/p)の値が0.75となるように、液晶分子に右回りのツイストを付与するカイラル剤が添加されている。また、本実施形態の液晶装置30のセルギャップの値は5.3μmに設定されている。d/pの値は0.25≦d/p≦1の範囲内に設定することが望ましい。これらの点は第1実施形態と同様である。
本実施形態の場合、TFTアレイ基板2はラビング方向が異なる2つの領域R1,R2を有しているが、領域R1については、TFTアレイ基板2側の配向方向と対向基板3側の配向方向との関係が第1実施形態と同様であるため、液晶分子がツイスト配向しながらベンド配向を呈することになる。一方、領域R2については、TFTアレイ基板2側のプレチルト方向と対向基板3側のプレチルト方向との関係で規制される液晶分子のツイスト方向は(対向基板3(上側の基板)側から見て)右回りとなる。液晶材料中に添加されているカイラル剤によるツイスト方向も右回りであるから、領域R2は通常の(ベンド配向を伴わない)TNモードを示す領域となる。
本実施形態の液晶装置30において、第1実施形態と同様、全ての画素電極13と共通電極23との間に5Vの電圧を印加したところ、各画素内の領域R1と領域R2との境界近傍から多くのベンド転移核が発生し、そのベンド転移核を中心として表示領域全体にベンド配向領域が広がっていくことを確認した。初期のスプレイ配向からベンド配向に転移するまでに要する時間は第1実施形態よりも短くすることができた。これは、液晶分子の配向状態が異なる領域の境界では配向の乱れが生じやすく、ベンド転移核が発生しやすくなるからである。
本実施形態の液晶装置30においても、一般的なOCBモードの液晶装置と同等の高速応答性と一般的なOCBモードの液晶装置と比べて高いコントラストとを兼ね備えた表示が得られる、という第1実施形態の液晶装置と同様の効果を得ることができた。ただし、そのためには領域R1の面積を領域R2の面積よりも広く取っておくことが望ましい。TNモードを呈する領域よりも、液晶分子がツイスト配向しながらベンド配向を呈する領域の方を優勢にするためである。
[電子機器]
以下、本発明の電子機器の一実施形態を図15を用いて説明する。
図15は上記実施形態の液晶表示装置を備えた携帯電話機の斜視図である。同図に示すように、携帯電話機1300は、複数の操作ボタン1302、受話口1303、送話口1304とともに、上記実施形態の液晶表示装置からなる表示部1301を備えている。
本実施形態によれば、上記実施形態の液晶表示装置が備えられたことで高速応答性と高コントラストを兼ね備えた液晶表示部を備えた電子機器を実現することができる。
以下、本発明の電子機器の一実施形態を図15を用いて説明する。
図15は上記実施形態の液晶表示装置を備えた携帯電話機の斜視図である。同図に示すように、携帯電話機1300は、複数の操作ボタン1302、受話口1303、送話口1304とともに、上記実施形態の液晶表示装置からなる表示部1301を備えている。
本実施形態によれば、上記実施形態の液晶表示装置が備えられたことで高速応答性と高コントラストを兼ね備えた液晶表示部を備えた電子機器を実現することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態ではベンド転移の際に全画素電極と対向電極との間に5Vの電圧を印加したが、5V以上の高電圧を印加したり、画素電極と配線(ソース線、ゲート線)との間に発生する横電界を利用しても良い。また、上記実施形態では液晶分子がツイスト配向しながらベンド配向する際のツイスト角を90°としたが、必ずしも90°でなくても良い。また、第2実施形態では互いに配向方向の異なる領域を各画素毎に設けたが、必ずしも画素毎に設けなくてもよく、少なくとも一方の基板上に配向方向の異なる領域がありさえすれば、領域の境界でベンド転移核を発生させることができる。その他、上記実施形態で例示した液晶装置の各部の具体的な構成については適宜変更が可能である。
1,30…液晶装置、2…TFTアレイ基板(第1の基板)、3…対向基板(第2の基板)、5…液晶層、25,25a,25b…液晶分子。
Claims (5)
- 第1の基板と第2の基板との間に液晶層が挟持され、前記液晶層の液晶分子の配向状態をスプレイ配向からベンド配向へと転移させて表示を行う液晶装置であって、
前記第1の基板における配向方向と、前記第2の基板における配向方向とが、前記第1の基板および前記第2の基板の基板面内の方向において異なり、
前記第1の基板側の前記液晶分子のプレチルト方向と、前記第2の基板側の前記液晶分子のプレチルト方向と、の関係で規制される前記液晶分子のツイスト方向とは逆回りのツイストを付与するカイラル剤が、前記液晶層に添加され、
前記液晶分子が、ベンド転移閾値電圧以上の電圧を前記液晶層に印加したときに、ツイスト状態を呈しつつベンド配向状態を呈することを特徴とする液晶装置。 - 前記液晶層の層厚をd、前記液晶分子の固有ねじれピッチをpとしたとき、d/pの値が、0.25≦d/p≦1の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
- 前記第1の基板および前記第2の基板のうちのいずれか一方の基板において、配向方向が異なる複数の領域が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶装置。
- 1つの画素内に、配向方向が異なる複数の領域が設けられたことを特徴とする請求項3に記載の液晶装置。
- 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007017435A JP2008185666A (ja) | 2007-01-29 | 2007-01-29 | 液晶装置および電子機器 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2007017435A JP2008185666A (ja) | 2007-01-29 | 2007-01-29 | 液晶装置および電子機器 |
Publications (1)
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JP2008185666A true JP2008185666A (ja) | 2008-08-14 |
Family
ID=39728782
Family Applications (1)
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JP2007017435A Withdrawn JP2008185666A (ja) | 2007-01-29 | 2007-01-29 | 液晶装置および電子機器 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2008185666A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9696596B2 (en) | 2014-03-11 | 2017-07-04 | Samsung Display Co., Ltd. | Liquid crystal display panel |
-
2007
- 2007-01-29 JP JP2007017435A patent/JP2008185666A/ja not_active Withdrawn
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