JP2008177088A - 酵素電極並びにこれを備える生物燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分な量の酵素及び電子メディエータを、酵素−電子メディエータ−電極間の電子輸送に適した状態で電極表面に固定化し、高密度電流の取り出しが可能な酵素電極及び該酵素電極を備え、優れた発電性能を発現する生物燃料電池を提供する。
【解決手段】電極と、酵素と、前記電極及び前記酵素間の電子伝達を媒介する電子メディエータと、を備える酵素電極であって、酵素及び電子メディエータを含有し、且つ、正又は負に帯電した、第一の帯電層と、前記第一の帯電層の極性に対して逆極性に帯電した第二の帯電層とを、導電体からなる電極表面に交互に積層してなり、前記第一の帯電層において、前記酵素及び前記電子メディエータが、同一の有機高分子との間に分子軌道を形成し、化学的に結合されていることを特徴とする酵素電極及び該酵素電極を備える生物燃料電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、酵素電極及びこれを備える生物燃料電池に関する。
酵素は、その高い基質特異性から種々の物質の存在量を測定する分析、例えば、酵素センサー等に利用されている。酵素を利用した酵素センサーとしては、例えば、分析の対象である対象物質(基質)と酵素との酸化還元反応により生じる電流を測定し、対象物質の定量を行うセンサーがある。具体的には、グルコースを酸化する酵素とグルコースとの間における酸化還元反応に伴って発生する電流が、グルコース濃度に比例することを利用したグルコースセンサーがある。
さらに、最近では、白金等の金属触媒に代わる燃料電池用新規触媒としても、酵素の研究開発が進められている。酵素と基質との酸化還元反応に伴い発生する電流を利用した酵素電極は、酵素センサーや燃料電池の他にも広範囲な分野においてその利用が期待されている。
一般的に、酵素は電極表面で直接酸化還元されにくいため、酵素と電極間の電子伝達を媒介する電子メディエータを用いた電極反応の効率化が行われている。電子メディエータは、酵素と共に電解液中に混合、分散されるか、或いは、電極に固定等される。酵素−電子メディエータ−電極間のスムーズな電子輸送によって、酵素電極の電流値が増加し、充分な電流を取り出せる生物燃料電池が得られる。
酵素−電子メディエータ−電極間の電子輸送には酵素及び電子メディエータの酵素電極内における密度や分散状態等が大きく影響するため、これら密度や分散状態を制御することが、酵素−電子メディエータ−電極間の電子輸送をスムーズに進行させ、充分な電流を得るために重要であるといえる。すなわち、酵素や電子メディエータの電極表面への固定化方法は、酵素電極の電流値を決定する重要な要素の一つとなる。
従来、酵素や電子メディエータの電極表面への固定化方法として、種々の方法が提案されている。例えば、ポリアクリルアミド等の担体となる半透膜性の高分子物質により酵素を包み込む方法や、酵素のイオン吸着、物理吸着を利用した吸着法、酵素やメディエータのアミノ基やカルボキシ基と架橋試薬とを架橋させる架橋法等が挙げられる。具体的な架橋法としては、導電体であるカーボンペーパーに、電子メディエータを含む溶液と、酵素を含む溶液と、架橋試薬であるポリエチレングリコールグリシジルエーテル(PEGDE)とを、滴下し、酵素、電子メディエータ及びPEGDEとを架橋させ、乾燥させる方法が挙げられる。
また、特許文献1には、少なくとも酵素、メディエータ及び電解により高分子膜を形成するモノマーを含有する電解液を用い、電解重合により、電極基体上に生成する導電性高分子膜中へ前記酵素とともにメディエータを固定化することを特徴とする酵素及びメディエータの固定化方法が開示されている。
さらに、特許文献2には、導電体表面に、電子を授受し得るメディエータを介して酵素層が積層され、該酵素層に補酵素が接触するように構成されてなり、前記酵素層が、前記メディエータの電子の授受及び前記補酵素の酸化還元反応に作用するものであることを特徴とする補酵素依存型酵素の活性測定用電極が提案されており、メディエータ、酵素層を積層する方法として、交互積層法が例示されている。尚、特許文献2には、前記酵素層がメディエータと共に導電体上に配置してもよい旨が記載されているが、具体的な方法は記載されておらず、実施例においては、メディエータ、酵素層、補酵素層等の各層を順次積層した酵素電極が用いられている。
特開平2−99850号公報 特開2005−69836号公報
しかしながら、従来の固定化方法では、十分な量の酵素や電子メディエータを、酵素−電子メディエータ−電極間の電子輸送に適した状態で電極上に固定させることが困難であり、電子メディエータと酵素が互いに離れた状態で存在する場合がある。例えば、特許文献1に記載の方法では、酵素と電子メディエータの分散状態が悪く、酵素−電子メディエータ−電極間の電子輸送が円滑に進まないため、得られる酵素電極の電流密度の増加には限界がある。
一方、特許文献2の電極、特に、酵素と電子メディエータとを共に導電体上に配置した電極によれば、酵素−電子メディエータ−電極間における電子伝達効率の改善が期待できるが、酵素と電子メディエータの分散性が不十分なため、得られる電子伝達の効率向上効果は十分とはいえない。
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、十分な量の酵素及び電子メディエータを、酵素−電子メディエータ−電極間の電子輸送に適した状態で電極表面に固定化し、高密度電流の取り出しが可能な酵素電極を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記酵素電極を備え、優れた発電性能を発現する生物燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の酵素電極は、電極と、酵素と、前記電極及び前記酵素間の電子伝達を媒介する電子メディエータと、を備える酵素電極であって、酵素及び電子メディエータを含有し、且つ、正又は負に帯電した、第一の帯電層と、前記第一の帯電層の極性に対して逆極性に帯電した第二の帯電層とを、導電体からなる電極表面に交互に積層してなり、前記第一の帯電層において、前記酵素及び前記電子メディエータが、同一の有機高分子との間に分子軌道を形成し、化学的に結合されていることを特徴とする。
本発明の酵素電極は、酵素と電子メディエータとを電極表面に固定化する方法として、静電相互作用による交互吸着を利用することによって、酵素電極に必要な充分量の酵素及び電子メディエータを均一に電極表面に固定することができる。また、交互吸着法によれば、タンパク質によって構成された酵素の変性を回避することができるため、電極表面への固定化による酵素活性の低下を抑制することができる。さらに、本発明の酵素電極は、酵素と電子メディエータとを共に同一の有機高分子に化学的に結合させることで、酵素と電子メディエータ間の距離がコントロールされているため、酵素−電子メディエータ−電極間の電子移動が円滑に進行する。
前記第二の帯電層は、例えば、前記第一の帯電層の極性に対して逆極性の電荷を発現するイオン性有機高分子を含有させることにより、前記第一の帯電層の極性に対して逆極性の電荷に帯電させることができる。
本発明の酵素電極は、生物燃料電池の電極として、好適に用いることができるものである。
本発明の酵素電極は、充分量の酵素及び電子メディエータが固定化され、且つ、電極上に固定された酵素及び電子メディエータの分散性に優れているため、酵素−電子メディエータ−電極間の電子伝達がスムーズに行われる。従って、本発明の酵素電極によれば、高密度電流を得ることが可能であり、優れた発電性能を発現する生物燃料電池が実現できる。
本発明の酵素電極は、電極と、酵素と、前記電極及び前記酵素間の電子伝達を媒介する電子メディエータと、を備える酵素電極であって、酵素及び電子メディエータを含有し、且つ、正又は負に帯電した、第一の帯電層と、前記第一の帯電層の極性に対して逆極性に帯電した第二の帯電層とを、導電体からなる電極表面に交互に積層してなり、前記第一の帯電層において、前記酵素及び前記電子メディエータが、同一の有機高分子との間に分子軌道を形成し、化学的に結合されていることを特徴とする。
本発明の酵素電極は、酵素と電子メディエータとを電極表面に固定化する方法として、交互吸着法(Layer−by−Layer Electrostatic Self−Assembly)を利用することを第一の特徴としている。交互吸着法は、もともと、複合有機薄膜を形成する方法として、1992年にデッカーらにより発表されたものある。デッカーらによって発表された基本的な方法によれば、まず、正の電解質ポリマー(カチオンポリマー)の水溶液と、負の電解質ポリマー(アニオンポリマー)の水溶液とを別々の容器に用意し、これらの容器に初期表面電荷を与えた基板(被成膜材料)を交互に浸漬することにより、該基板上に多層構造を有する複合有機超薄膜が得られる。尚、現在では、電解質ポリマー以外にも、生物材料、無機材料、金属粒子などのイオン性材料が交互吸着法により積層可能であることが知られている。
交互吸着法においては、まず、負又は正の電荷を帯びた基板表面に、該基板が有する電荷と逆極性の電荷を有するイオン性材料1を含有する溶液を接触させると、クーロン力により該イオン性材料1が基板表面に吸着し、基板上にイオン性材料1を含む超薄膜が形成される。このとき、イオン性材料1は基板表面の電荷を中和するまで吸着し、さらに過剰に吸着する。そのため、イオン性材料1の薄膜表面は、イオン性材料1が有する電荷(基板が有する電荷に対して逆極性の電荷)を帯びることとなる。そこで、今度はこの基板をイオン性材料1が有する電荷に対して逆極性の電荷を有するイオン性材料2を含む溶液と接触させると、クーロン力により該イオン性材料2が基板表面に吸着する。このように、2つの異なる電荷を有するイオン性材料1及びイオン性材料2との接触工程を交互に繰り返すことにより、イオン性材料1を含む層とイオン性材料2を含む層とを基板上に交互に積層することができる。
本発明の酵素電極は、以上のような静電相互作用による吸着を利用する交互吸着法によって、酵素及び電子メディエータを含有する層を電極表面に形成し、酵素及び電子メディエータを電極に固定化したものである。ここで、交互吸着法を利用して、本発明の酵素電極を製造する方法の一例について説明する。
まず、表面に正又は負の電荷(初期表面電荷)を有する導電体を準備する。導電体は、酵素電極の基板となるものである。次に、酵素、電子メディエータ及び有機高分子を含み、上記導電体が有する初期表面電荷に対して逆極性の電荷を有する溶液(第一溶液とする)を、上記導電体に接触(浸漬、塗布等)させる。このとき、前記導電体の初期表面電荷に対して逆極性の電荷を有する第一溶液中の成分は、導電体の電荷を中和し、さらに、導電体表面に過剰に吸着して第一の帯電層を形成する。その結果、第一溶液と接触後の導電体表面は、第一溶液接触前と逆極性に帯電する。
続いて、第一の帯電層(第一溶液)が有するに電荷に対して逆極性を有する溶液(第二溶液とする)を、第一の帯電層が形成された上記導電体に接触させると、該導電体表面の第一の帯電層上には、該第一の帯電層の電荷に対して逆極性の電荷を有する第二溶液中の成分が電荷中和及び過剰吸着し、第二の帯電層が形成される。その結果、導電体表面はさらに逆極性の電荷を帯びる。このような導電体と第一溶液及び第二溶液との接触の繰り返しにより、酵素と電子メディエータとを含む層が表面に多数積層された電極が作製される(図1参照)。尚、本発明の酵素電極の製造方法はこれに限定されるものではない。
一般的に、酵素、電子メディエータ、有機高分子等は、電荷を有しているものが多く、これら成分が有する電荷を利用することによって、上記のような交互吸着法による積層が可能である。
以上のように、交互吸着法によるイオン性材料の基板表面への固定化は、基板表面とイオン性材料との間に作用するクーロン力による吸着に基づくものであるため、タンパク質等、熱や乾燥などの条件による影響を受けやすい成分を、安定な状態で変性等を伴わずに固定化することができる。従って、交互吸着法を利用して、酵素を電極へ固定化させた本発明の酵素電極では、タンパク質より構成されている酵素の変性を回避することが可能であり、電極表面への酵素の固定化に伴う酵素活性の低下を抑制することができる。
また、交互吸着法において、導電体(基板)と該導電体に吸着させるイオン性材料との接触工程一回当たりの最大吸着量は、導電体の表面が有する電荷の飽和によって制限される。そのため、交互吸着法を利用して酵素及び電子メディエータを電極上に固定する本発明の酵素電極においては、各接触工程によりほぼ一定量の酵素及び電子メディエータが導電体上に固定化されることになる。ゆえに、接触工程を繰り返すことで、所望量の酵素及び電子メディエータを電極表面に固定化することが可能であり、充分量の酵素及び電子メディエータが固定化された酵素電極を作製することができる。
さらに、交互吸着法により形成される薄膜層は均一な膜厚を有するため、交互吸着法を利用することによって、導電体表面に酵素と電子メディエータとを含む層を均一に形成することができる。また、交互吸着法によれば、電極の形状にかかわらず、均一な層を形成することが可能である。
しかも、交互吸着法による層形成は、導電体表面に正の電荷を有する成分を含む溶液及び負の電荷を有する成分を含む溶液を交互に接触させるだけという極めて簡便な方法であり、特別な設備を要せず、条件設定によっては短時間で行うことが可能なものである。
また、導電体、第一の帯電層、第二の帯電層は、クーロン力の作用によって互いに吸着しているため、酵素及び電子メディエータを含有する第一の帯電層や第二の帯電層が導電体から剥離しにくく、さらに、固定された酵素や電子メディエータの溶出も生じにくい。
本発明に係る酵素電極の第二の特徴は、酵素と電子メディエータとが、共に同一の有機高分子に化学的に結合されている点である。
上述したように、交互吸着法によれば、均一な薄層を形成することが可能である。しかしながら、1つの層内に複数種の成分を含有する層を形成する場合に、層内における各成分の分散性までも制御することは難しい。酵素及び電子メディエータを含む第一の帯電層内において、酵素と電子メディエータの分布に偏りが生じると、有効に利用されない電子メディエータが存在することとなり、酵素−電子メディエータ−電極間における電子伝達が効率よく行われない。
そこで、本発明では、酵素と電子メディエータとを同一の有機高分子に結合させることによって、第一の帯電層内における酵素と電子メディエータの分散性を向上させた。同一の有機高分子に結合させることによって、酵素と電子メディエータ間の距離をコントロールすることが可能であり、酵素と電子メディエータ間とを電子の授受が円滑に行われる距離で配置することができる。すなわち、本発明の酵素電極によれば、電子メディエータの有効利用率を高めることが可能である。
ここで、酵素と電子メディエータとが同一の有機高分子に結合されているとは、酵素(酵素の機能を有する原子団)及び電子メディエータ(電子メディエータの機能を有する原子団)が各々、同一の有機高分子との間に分子軌道を形成し、該有機高分子化合物と化学的に結合され、酵素、電子メディエータ及び有機高分子が1つの化合物として存在しうる状態であり、一般的には、酵素及び電子メディエータがそれぞれ、同一の有機高分子に、共有結合又は配位結合により直接結合されているか、或いは、共有結合、配位結合又はこれら両方からなる結合基を介して結合されている状態である。このような分子軌道を形成する化学的な結合には、物理化学的は吸着や静電的引き合いによる結合は含まれない。また、イオン結合や水素結合は、化学的な結合ではあるが、結合のための分子軌道を新た委に形成するものではないので、やはり含まれない。ただし、イオン結合型錯体における、イオン結合性を有する配位結合による結合のように、イオン結合性を帯びた配位結合は含まれる。
酵素及び電子メディエータは、有機高分子の主鎖に結合してもよいし、或いは、有機高分子の側鎖に結合してもよい。また、酵素−有機高分子、電子メディエータ−有機高分子の結合構造は、特に限定されない。
以下、本発明の酵素電極について、詳しく説明していく。
本発明において、酵素(酵素機能を有する原子団)としては、酸化還元酵素であれば特に限定されず、例えば、デヒドロゲナーゼや、オキシダーゼ等を用いることができる。具体的には、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、グルコースオキシダーゼ(GOD)、アルコールオキシダーゼ(AOD)等が挙げられる。本発明の酵素電極を燃料電池用電極として用いる場合には、燃料の入手及び管理の安易さ、並びに安全性の観点からGDH、ADH、GOD、AODが好ましく用いられる。酵素は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酵素と有機高分子とを結合させる方法は特に限定されず、酵素機能を損なわないように適宜選択すればよい。例えば、有機高分子と酵素とを、架橋試薬を用いて架橋する方法が挙げられ、架橋試薬としては、一般的に用いられているもの、例えば、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDE)等を例示することができる。
また、電子メディエータとしては、上記酵素と導電体からなる電極との間の電子伝達を媒介できるものであれば特に限定されない。例えば、フェロセン、フェリシアン化アルカリ金属(フェリシアン化カリウム、フェリシアン化リチウム、フェリシアン化ナトリウム等)又はこれらのアルキル置換体(メチル置換体、エチル置換体、プロピル置換体等)、フェナジンメトサルフェート、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、メチレンブルー、β−ナフトキノン−4−スルホン酸カリウム、フェナジンエトサルフェート、ビタミンK、ビオローゲン、Os錯体(例えば、特表2003−514823号公報、特表2003−514924号公報に記載のもの等)等の酸化還元性の有機又は無機化合物等を用いることができる。
これら電子メディエータを有機高分子に結合させる方法は特に限定されず、電子メディエータ機能を損なわないように適宜選択すればよい。例えば、Os錯体(例えば、特表2003−514823号公報、特表2003−514924号公報に記載のもの等)のうち、その分子内に有機高分子構造を有するものや、上記有機又は無機化合物が有機高分子に結合しているものは、予め、電子メディエータ機能を有する原子団が有機高分子に結合されているものとしてみなすことができる。つまり、電子メディエータ機能を有する原子団が結合している当該有機高分子に、上記したような酵素を結合させることで、同一の有機高分子に電子メディエータ(電子メディエータ機能を有する原子団)と酵素とを結合させたものとすることができる。
また、電子メディエータとしては、第一の帯電層からの電子メディエータの溶出をより確実に防止する、及び、第一の帯電層と第二の帯電層との吸着力を高めるという観点から、多価のイオン性を示すもの、或いは、有機又は無機化合物が有機イオン性高分子に結合しているものが好ましく用いられる。尚、ここで、有機イオン性高分子としては、後述する有機イオン性高分子が挙げられる。電子メディエータは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記したような酵素(酵素機能を有する原子団)及び電子メディエータ(電子メディエータ機能を有する原子団)を結合させる有機高分子としては、用いる酵素及び電子メディエータを共に結合させることができれば、特に限定されず、例えば、ポリビニルイミダゾール等を挙げることができる。
酵素及び電子メディエータを有機高分子と結合させる時期は特に限定されず、例えば、(1)予め酵素及び電子メディエータを有機高分子に結合させ、当該酵素及び電子メディエータが共に結合した有機高分子を、交互吸着法により第一の帯電層を形成する際に導電体に接触させる溶液(上記第一の溶液)に混合させてもよい。或いは、(2)酵素を含有する溶液、電子メディエータを含有する溶液、及び有機高分子を含有する溶液を、逐次、導電体表面に接触させ、必要に応じて、酵素と有機高分子及び/又は電子メディエータと有機高分子とを結合させる成分とを用いることで、導電体表面上で酵素及び電子メディエータを同一の有機高分子に結合させてもよい。(2)の方法は、交互吸着法における基板と吸着成分を含む溶液との接触工程が、酵素と電子メディエータを有機高分子に結合させる工程でもある。尚、(2)において、用いる酵素溶液、電子メディエータ溶液、有機高分子溶液の各溶液を導電体に接触させる順序は特に限定されない。
或いは、(3)予め有機高分子に電子メディエータが結合したものを含有する溶液と、酵素を含む溶液とを、該電子メディエータが結合した有機高分子と酵素とを結合させうる条件下、導電体表面に接触させ、該電子メディエータが結合した有機高分子に酵素を結合させてもよい。また、(4)予め有機高分子に酵素が結合したものを含む溶液と、電子メディエータを含む溶液とを、該酵素が結合した有機高分子と電子メディエータとを結合させる条件下、導電体表面に接触させ、該酵素が結合した有機高分子に電子メディエータを結合させてもよい。
一般的に、酵素や電子メディエータは、正又は負の電荷(通常は、正の電荷)を有しているため、上記(1)の場合、これら酵素及び電子メディエータを結合した状態の有機高分子が、全体として、正又は負に帯電していれば、有機高分子そのものが正又は負の電荷を有していなくてもよく、或いは、酵素や電子メディエータと逆極性の電荷を有していてもよい。また、上記(2)の場合、酵素と電子メディエータが同極性の電荷を有していれば、有機高分子が正又は負の電荷を有している必要はなく、また、酵素と電子メディエータに対して逆極性の電荷を有していてもよい。
但し、第一の帯電層−第二の帯電層間の吸着力を確保し、各層の剥離や酵素、電子メディエータの溶出等を確実に防止する観点から、酵素及び電子メディエータと有機高分子との電荷は同極性であるか、或いは、有機高分子が電荷を有していない(イオン性でない)ことが好ましい。
本発明の酵素電極では、必要に応じて第一の帯電層に補酵素を含有させてもよい。補酵素は、用いる酵素の種類に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。例えば、ピロロキノリンキノン(PQQ)、ニコチンアミドアデニンジヌレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌレオチドリン酸(NADP)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、リポ酸、ユビキノン等が挙げられる。補酵素は、1種のみを単独で用いてもよいし、或いは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酵素及び電子メディエータを含有する第一の帯電層の電荷に対して逆極性に帯電した第二の帯電層は、第一の帯電層の電荷に対して逆極性の電荷を発現する成分を含有することとなる。第二の帯電層に電荷を付与する成分としては、特に限定されるものではないが、一般的には、イオン性有機高分子等を挙げることができる。
ここで、イオン性有機高分子とは、荷電を有する官能基を主鎖及び/又は側鎖に持つ高分子であり、アニオン性有機高分子としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ヒドロキシ基など負の電荷を発現することができる官能基を有するものであり、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニル硫酸、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、カラゲナン(κ、ι、λ)などが用いられる。
また、カチオン性有機高分子としては、4級アンモニウム基、アミノ基等の正の電荷を発現することができる官能基を有するものであり、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリビニルピリジン、ポリリジン、ポリピロール、ポリアニリン等を用いることができる。イオン性有機高分子としては、水溶性或いは、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合液に可溶なものが好ましい。
酵素電極の基板となる導電体としては、特に限定されず、一般的に用いられているものを使用することができる。例えば、グラファイト、グラッシーカーボン、カーボンファブリック等の炭素系材料、アルミニウム、銅、金、白金、銀等の金属又は合金、SnO、In23、WO3、TiO2等の導電性酸化物等の導電性材料からなるものが挙げられる。中でも、導電性と化学的安定性が両立しやすいことから、炭素系材料が好適に用いられる。導電体は、上記導電性材料1種のみからなるものであっても、複数を組み合わせてなるもの(例えば、積層など)であってもよい。
また、交互吸着法における積層機構が単純な吸着に基づいているため、導電体の表面は平滑である必要はなく、多孔体のように凹凸形状を有していてもよい。
以下、本発明の酵素電極の製造方法について、説明する。
上記したように、交互吸着法により最初の第一の帯電層又は第二の帯電層が導電体表面に形成されるように、導電体表面には初期表面電荷を付与する。導電体表面を帯電させる方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電、グロー放電処理、プラズマ処理、加水分解処理、シランカップリング処理、プライマー処理等を挙げることができる。
特に、導電体として、炭素系材料からなるものを用いる場合には、硝酸、硫酸、過酸化水素等で電極の表面を酸処理する方法を好適に用いることができる。また、空気(酸素)雰囲気下、加熱処理することによっても、炭素系材料導電体に初期表面電荷を付与することができる。金などの金属導電体の場合には、例えば、末端にカルボキシル基等の官能基を有するチオールなどを導入することで、初期表面電荷を付与することができる。
尚、導電体表面が電荷を有している場合には、上記のような初期表面電荷を付与するための処理は必要ない。
初期表面電荷を有する導電体表面には、まず、当該導電体の表面電荷に対して逆極性の電荷を有する帯電層が形成される。すなわち、導電体の初期表面電荷が負である場合には、まず、正の電荷を有する帯電層が形成され、導電体の初期表面電荷が正である場合には、まず、負の電荷を有する帯電層が形成される。導電体表面に最初に形成される層は、第一の帯電層であっても、第二の帯電層であってもよいが、通常は、酵素−電子メディエータ−電極間のより円滑な電子伝達の観点からは、第一の帯電層であることが好ましい。
導電体表面(第二の帯電層が形成された導電体表面も含む)に第一の帯電層を形成するには、第一の帯電層を構成する各成分を含む溶液(以下、第一の帯電層溶液という)を、導電体表面に接触させる。第一の帯電層溶液を導電体表面に接触させる方法は特に限定されず、第一の帯電層溶液中に導電体を浸漬したり、導電体表面に第一の帯電層溶液を塗布する方法が挙げられる。第一の帯電層溶液の塗布方法としては、一般的な方法、例えば、スプレー塗布、刷毛塗り等を採用することができる。
第一の帯電層溶液において、酵素、電子メディエータ、有機高分子を溶解及び/又は分散させる溶媒は、特に限定されるものではないが、一般的には、水、エタノール等の有機溶媒、又は、水と有機溶媒の混合溶液等を用いることができる。酵素を溶解、分散させる溶媒であること、第一の帯電層溶液の電荷の制御する必要があること等の観点から、水又は好ましいpHに調製された緩衝液が好適である。
第一の帯電層溶液のpHは、特に限定されるものではないが、溶液のpHによって酵素や電子メディエータ、特にタンパク質である酵素の電荷が制御できるため、用いる成分に応じて適宜決定することが好ましい。通常は、中性付近(pH5〜9程度)でよい。
また、第一の帯電層溶液における各成分の濃度は、用いる各成分の種類や溶媒の種類、有機高分子に酵素と電子メディエータを結合させる方法等により好適な範囲が異なってくるため、特に限定されない。
第一の帯電層溶液を導電体表面に接触させる際の接触時間等は特に限定されず、形成したい第一の帯電層の1層の厚さ等に応じて適宜設定すればよい。接触温度は、酵素の安定性が確保できる温度域であることが好ましく、用いる酵素によるが、通常、20℃〜40℃以下のような低温域が好ましい。
導電体表面(第一の帯電層が形成された導電体表面も含む)に第二の帯電層を形成するには、第二の帯電層を構成する各成分を含む溶液(以下、第二の帯電層溶液という)を、導電体表面に接触させる。第二の帯電層溶液を導電体表面に接触させる方法は特に限定されず、第一の帯電層溶液同様、第二の帯電層溶液中に導電体を浸漬したり、導電体表面に第二の帯電層溶液を塗布する方法が挙げられる。第二の帯電層溶液の塗布方法としては、一般的な方法、例えば、スプレー塗布、刷毛塗り等を採用することができる。
第二の帯電層溶液において、第二の帯電層を構成する成分を溶解及び/又は分散させる溶媒は、特に限定されるものではないが、一般的には、一般的には、水、エタノール等の有機溶媒、又は、水と有機溶媒の混合溶液等を用いることができる。
第二の溶液の濃度は、用いる各成分の種類や溶媒の種類等により好適な範囲が異なってくるため、特に限定されるものではない。また、第二の帯電層溶液のpHは、特に限定されるものではないが、溶液のpHによって第二の帯電層に電荷を付与するイオン性材料の電荷が制御できるため、用いる成分に応じて適宜決定することが好ましい。
第二の帯電層溶液を導電体表面に接触させる際の温度、接触時間等は特に限定されず、形成したい第二の帯電層の1層の厚さ等に応じて適宜設定すればよい。
導電体表面に第一の帯電層溶液を接触させた後や、第二の帯電層溶液を接触させた後などに、適宜、乾燥工程を設けてもよい。乾燥工程における乾燥方法としては、特に限定されないが、第一の帯電層及び第二の帯電層に対してダメージを与えない方法を採用することが好ましい。例えば、減圧乾燥等が挙げられる。
導電体表面への第一の帯電層溶液及び第二の帯電層溶液の接触は交互に行われるが、この接触工程は、所望量の酵素及び電子メディエータを導電体上に固定できるまで、任意の回数繰り返せばよい。
尚、本発明の酵素電極は、上記第一の帯電層及び第二の帯電層以外の層を有していてもよい。
ここで、本発明の酵素電極の製造方法の一例を、具体例を挙げて説明する。
(1)まず、導電体であるカーボンペーパーを、ポリ(1−ビニルイミダゾール)とOs(4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン)2Clの複合体(以下、PVI−Osという)の0.05〜0.1mg/ml水溶液に浸漬し、サイクリックボルタンメトリー(例えば、掃引電位範囲:−100mV〜500mV、掃引速度:100mV/s、)にて、300サイクル掃引し、カーボンペーパー表面に初期表面電荷として正の電荷を付与する。尚、サイクリックボルタンメトリーの条件は上記したものに限定されず、例えば、掃引電位範囲−50mV〜250mV、掃引速度10mV/sにて、100サイクル等の条件でもよい。
(2)イオン性有機高分子であるκ−カラゲナン(アニオン性ポリマー)2mg/ml水溶液に10分間浸漬し、負電荷をもつ層を形成する。このとき、(1)と異なり、電位は印加しなくても、静電相互作用により、κ−カラゲナンはカーボンペーパー表面に自然吸着する。つづいて、純水等に2分間浸漬し、カーボンペーパーに吸着していない余分なカラゲナンを除去する。
(3)GDH濃度1mg/mlのMOPS(モルホリノプロパンスルホン酸)溶液に10分間浸漬し、GDHをカーボンペーパー表面に付着させる。このとき、(2)同様、κ−カラゲナンの負電荷層との静電相互作用により、GDHは電位を印加しなくてもカーボンペーパー表面に自然吸着する。つづいて、純水に2分間浸漬し、カーボンペーパーに吸着していない余分なGDHを除去する。
(4)ポリ(1−ビニルイミダゾール)とOs(4,4'−ジメチル−2,2’−ビピリジン)2Clの複合体(下記式(1)。以下、PVI−Osという。)の1mg/ml水溶液に10分間浸漬し、PVI−Osをカーボンペーパー表面に付着させる。(3)同様、κ−カラゲナンの負電荷層との静電相互作用により、PVI−Osは電位を印加しなくてもカーボンペーパー表面に自然吸着する。続いて、純水に2分間浸漬して余分なPVI−Osを除去する。
(5)ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(以下、PEGDEとする)3mg/ml溶液に2分間浸漬し、GDHをPVI−OsのPVIにPEGDEを介して結合させる。その結果、Os(4,4'−ジメチル−2,2’−ビピリジン)2Clが直接結合し、且つ、GDHがPEGDEを介して結合したPVIを含有し、正電荷をもつ層が形成される。その後、純水に2分間浸漬して余分なPEGDEを除去する。
上記(2)〜(5)の工程を繰り返すことにより、カーボンペーパー表面に、PEGDEを介してPVIに結合したGDH及び該GDHが結合したPVIに直接結合したOs(4,4'−ジメチル−2,2’−ビピリジン)2Clを含有する第一の帯電層と、κ−カラゲナンを含有する第二の帯電層とが交互に積層した酵素電極(図1参照)を形成することができる。
Figure 2008177088
以上のような本発明の酵素電極は、生物燃料電池用電極として特に好適に用いることができる。本発明の酵素電極においては、上述したように、酵素−電子メディエータ−電極間の電子伝達が円滑に進行するため、酵素及び電子メディエータ共に有効利用効率が高い。従って、本発明の酵素電極を備える生物燃料電池は、高密度電流を得ることが可能であり、優れた発電性能を有するものである。
以下、本発明の酵素電極を備える生物燃料電池について、説明する。
本発明の酵素電極が基質酸化型の酵素電極である場合、電解液中の基質(燃料)は、酵素電極の第一の帯電層内に固定化された酵素によって酸化され、補酵素又は補欠分子族が電子を受け取る。電子を受け取った補酵素又は補欠分子族は、電子メディエータへと電子を渡し、さらに、該電子メディエータより電極へと電子が受け渡される。そして、アノードから外部回路を通ってカソードに電子が到達することで、電流が発生する。上記過程において発生するプロトン(H)は、プロトン伝導膜又はプロトン伝導膜のない電解液内をカソードまで移動する。
そして、カソードでは、到達したプロトンと、外部回路を経てアノード側から移動してきた電子と、酸素等の酸化剤とが反応して水が生成される(図2参照)。カソードでは、酸化剤の還元反応に有効な触媒として、白金や白金合金等、燃料電池において電極触媒として一般的に用いられているものを用いることができる。白金や白金合金は、グラファイトのような炭素質材料等からなる電極に担持させたり、又は、白金や白金合金そのものからなる電極を用いることで、カソード触媒として用いることができる。或いは、ラッカーゼやビリルビンオキシターゼ等の公知の酵素を導電性電極に固定、又は、電解液に含有させてもよい。
また、本発明の酵素電極が基質還元型酵素電極の場合には、上記カソード電極として用いることができる。或いは、カソード電極及びアノード電極共に、本発明の酵素電極を用いて、生物燃料電池としてもよい。
生物燃料電池において、電解液は、電極反応が効率よく定常的に進行するように、トリス緩衝液、リン酸緩衝液等の緩衝液によって、最適なpH、例えば、pH7付近に維持されることが好ましい。
電解液中に酸素が存在する場合、酸化還元酵素による酸素の還元や酸素による電子メディエータの酸化等が生じる場合がある。これらの反応により、酵素電極の電圧低下や電流減少が生じ、その結果、燃料電池の発電性能の低下が発生する。これらの問題を回避するため、酸素を消費する酵素(例えば、オキシダーゼ等)を、電極近傍に配置又は電解液中に溶解する等してもよい。
また、酵素や電子メディエータ等は、電極反応が効率よく定常的に進行するように、適宜温度制御されることが好ましい。
基質酸化型酵素電極の基質(燃料)としては、生物学的栄養源を広く利用することができ、例えば、炭水化物やその発酵生産物が挙げられ、特に、アルコール、糖及びアルデヒドが好ましく用いられる。具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール、グルコース等の糖類、アルデヒド等が挙げられる。その他にも、脂肪類、タンパク質等の糖代謝の中間生成物等の有機酸、これら混合物などを用いることができる。燃料として、取り扱いが極めて容易であること、入手が容易であること等の観点から、特にグルコース、が好適に用いられる。
カソード電極における電極反応を妨害する不純物による影響を回避するために、ジメチルポリシロキサン等の酸素選択性の膜をカソード電極の周囲に配置してもよい。
本発明の酵素電極は、生物燃料電池用電極以外にも、酵素センサー等に用いることができる。
[酵素電極の作製]
以下の手順で、酵素電極を作製した。
(1)カーボンペーパーを、ポリ(1−ビニルイミダゾール)とOs(4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン)2Clの複合体(上記(1)。以下、PVI−Osという)の0.1mg/ml水溶液に浸漬し、サイクリックボルタンメトリー(掃引電位範囲:−100mV〜500mV、掃引速度:100mV/s、)にて、300サイクル掃引し、カーボンペーパー表面にPVI−Osを吸着させ、初期表面電荷として正の電荷を付与した。
(2)次に、上記カーボンペーパーを、κ−カラゲナンの2mg/ml水溶液に10分間浸漬し、PVI−Osにより初期表面電荷(正電荷)を付与した上記カーボンペーパー表面にκ−カラゲナンを吸着させた。その後、純水に2分間浸漬し、吸着していない余分なカラゲナンを除去した。
(3)次に、上記カーボンペーパーを、GDH濃度1mg/mlのMOPS(モルホリノプロパンスルホン酸)溶液に10分間浸漬し、カーボンペーパー表面のκ−カラゲナン層上にGDHを吸着させた。その後、純水に2分間浸漬し、吸着していない余分なGDHを除去した。
(4)続いて、上記カーボンペーパーを、PVI−Osの1mg/ml水溶液に10分間浸漬し、カーボンペーパー表面にPVI−Oを吸着させた。その後、純水に2分間浸漬してカーボンペーパーに吸着していない余分なPVI−Osを除去した。
(5)続いて、上記カーボンペーパーをポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(以下、PEGDEという)3mg/ml溶液に2分間浸漬し、GDHをPVI−OsのPVIに結合させた。その後、純水に2分間浸漬して余分なPEGDEを除去した。
(6)さらに、上記(2)〜(5)の工程を2回繰り返したのち、常温で一昼夜乾燥させ、PVI−OsのPVIにPEGDEによってGDHが結合された複合体を含有する第一の帯電層(正に帯電)と、κ−カラゲナンを含有する第二の帯電層(負に帯電)とが、カーボンペーパー表面に交互に積層(3層ずつ)した酵素電極(図1参照)を作製した。
[酵素電極の評価]
図4に示すようにして、上記にて作製した酵素電極をナイロン製ネット及びOリングにより先端に固定した試料極を作製した。
上記試料極を用いて、下記条件下、3電極式電気化学評価を行った(図5参照)。尚、参照極としてAg/AgCl、対極としてPtワイヤーを用いた。
<試験条件>
・温度:室温(約27℃)
・電解液A:MOPS 30mM、CaCl2 3mM及びKCl 100mMを含む水溶液(pH7.0)
・電解液B:MOPS 30mM、CaCl2 3mM、KCl 100mM、及びグルコース80mMを含む水溶液(pH7.0)
<結果>
本発明の酵素電極を備える上記試料極の電解液A(グルコースなし)におけるサイクリックボルタンメトリーを図6に示す。図6に示すように、メディエータであるOs錯体の酸化還元ピークが観察された(矢印*1)。すなわち、本発明の酵素電極において、メディエータであるOs錯体が電極表面に固定されていることが確認できた。
また、本発明の酵素電極を備える上記試料極の電解液B(グルコースあり)における酸化電流を図7に示す。図7に示すように、グルコースの酸化電流が確認できた(矢印*2)。すなわち、本発明の酵素電極は、酵素(GDH)によりグルコースを酸化し、メディエータ(Os錯体)を介して、電極(カーボンペーパー)に電子を受け渡す酵素電極として機能していることが確認された。
本発明の酵素電極の一形態例を示す模式図である。 本発明の酵素電極を備えた生物燃料電池の一形態例を示す概念図である。 本発明の酵素電極の製造方法の一例を示すフローチャートである。 実施例における試料極の作製方法を示す図である。 実施例における三電極式電気化学評価法の評価系を示す図である。 実施例における試料極のサイクリックボルタンメトリー結果である。 実施例における試料極の酸化電流を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 電極と、酵素と、前記電極及び前記酵素間の電子伝達を媒介する電子メディエータと、を備える酵素電極であって、
    酵素及び電子メディエータを含有し、且つ、正又は負に帯電した、第一の帯電層と、前記第一の帯電層の極性に対して逆極性に帯電した第二の帯電層とを、導電体からなる電極表面に交互に積層してなり、
    前記第一の帯電層において、前記酵素及び前記電子メディエータが、同一の有機高分子との間に分子軌道を形成し、化学的に結合されていることを特徴とする、酵素電極。
  2. 前記第二の帯電層が、前記第一の帯電層の極性に対して逆極性の電荷を発現するイオン性有機高分子を含有する、請求項1に記載の酵素電極。
  3. 請求項1又は2に記載の酵素電極を備えることを特徴とする、生物燃料電池。
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WO2011155549A1 (ja) * 2010-06-09 2011-12-15 ソニー株式会社 燃料電池
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CN113588734A (zh) * 2021-07-17 2021-11-02 可孚医疗科技股份有限公司 一种电化学葡萄糖传感器及其电极制备方法

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