JP2008176116A - 防眩性フィルム、防眩性反射防止フィルム、これらを用いた偏光板、及び表示装置 - Google Patents

防眩性フィルム、防眩性反射防止フィルム、これらを用いた偏光板、及び表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 液晶ディスプレイ等に用いられる防眩性フィルムについて、防眩性と視認性をバランス良く満たす光学特性、耐久保存後のハードコート性、塗工液の安定性、生産性や低コスト化に優れた防眩性フィルム、及び反射防止性と耐擦性に優れた防眩性反射防止フィルム、これらを用いた偏光板、及び表示装置を提供する。
【解決手段】 透明フィルム基材上に防眩層を有する防眩性フィルムであって、防眩層は、互いに反応する官能基を有しかつ樹脂の表面張力の差:Δγが、1.8dyne/cm以上、30.0dyne/cm以下である第1樹脂及び第2樹脂と、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子とを含む塗布組成物から形成されている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、防眩性フィルム、防眩性反射防止フィルム、これらを用いた偏光板、及び表示装置に関するものである。
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT、EL等に代表される画像表示装置(以下、これを「ディスプレイ」と称する)は、テレビやコンピュータをはじめとして様々な分野で使用されており、目覚ましい発展を遂げている。特に液晶ディスプレイは、薄く、軽量で、かつ汎用性に富むディスプレイとして、薄型テレビや携帯電話、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、PDAその他各種デバイス用の表示媒体として普及が著しい。
これらディスプレイを屋外や蛍光灯下等の比較的明るい場所で使用する場合、太陽光や蛍光灯等の外部光によるディスプレイへの映り込みが問題となり、これを防止するためにディスプレイ表面に凹凸を形成して、映り込む外部光を乱反射させる防眩処理を施すことが一般的となっている。
この防眩処理は、ディスプレイの表面材料に対してサンドブラスト等により粗面形成を行ったり、凹凸を有する賦型フィルムやロールで透明樹脂層の賦型処理を行ったり、透明樹脂中に無機や有機の透明微粒子を分散させた塗料をコーティングしてディスプレイ表面に防眩層を設けたりする等の方法により行われる。
これらの技術のうち、最後に挙げた透明樹脂と微粒子を用いる防眩処理は、例えば下記の特許文献1〜特許文献3等に開示されているように、微粒子によって形成される凹凸や透明樹脂と微粒子との屈折率差によって外部光を散乱させることができ、さらに、液晶ディスプレイの視野角の拡大効果も期待できるため、現在、最も一般的な方法となっている。
特許第3314965号明細書 特開平5−162261号公報 特開平7−181306号公報 一方、ディスプレイが薄型化及び軽量化するに伴い、防眩処理は透明プラスチックフィルムやシートになされ、これらフィルムとディスプレイ表面を直接貼り合わすことで、ディスプレイが形成されている。特に、液晶ディスプレイでは、液晶表示に使用される偏光板において、偏光膜を保護あるいは補強するために、偏光膜の両面に透明プラスチックフィルムもしくはシートを直接貼合わせている。この場合に、透明プラスチックフィルム及びシートの外側に面するフィルムに防眩処理された透明プラスチックフィルム及びシートを使用すると、さらに防眩フィルム及びシートを別に設ける必要がなく、薄型化及び軽量化を達成することができるため、メリットが大きい。このような使用方法の場合、本来の表示像の視認性を低下させては利点がないことから、光によるディスプレイへの映り込み防止機能(防弦性)と表面に傷が付きにくいハードコート性が同時に要求される。
従来の透明樹脂と微粒子を用いて防眩処理された透明プラスチックフィルム及びシートにおいては、防弦性とハードコート性(耐擦性、鉛筆硬度)をバランス良く満足させることが困難であった。例えば微粒子の配合において、その平均粒子径を小さくした場合には、視認性を向上させ、高い防弦性を得るのに有効であるが、同時にハードコート層の膜厚を薄くしなければ、表面に微粒子の凹凸が形成されず、ハードコート性が低下する問題が生じる。
また逆に、ハードコート層の膜厚を厚くした場合には、ハードコート性を付与するには効果的であるが、透明微粒子が膜内に埋もれてしまうため、表面の凹凸形成に寄与しなくなり、高い防眩性が得られない。粒子の添加量を多くすると防弦性は得られてくるものの、視認性は下がってしまうという問題がある。
これらの課題に対して、下記の特許文献4には、透明フィルム上に、2種類の微粒子及び樹脂を含有する防眩層を設けてなる防眩フィルムであって、第1の微粒子は平均直径が1〜7μmの有機物微粒子であり、その量は該樹脂に対して5〜40重量%であり、第2の微粒子は平均直径が0.1μm以下の無機物微粒子であり、その量は該樹脂に対して10重量%以下であり、かつ、該防眩層の厚さが第1の微粒子の平均直径の0.8〜3倍である防眩フィルムが開示されており、この特許文献4では、粒径の異なる微粒子を用いることで、防弦性とハードコート性(耐擦性)の両立を図っている。
また、下記の特許文献5には、透明フィルム上に、2種の微粒子及び樹脂から成る防眩層を設けてなる防眩フィルムであって、第1種の微粒子は球形であり、その平均径が1〜10μmであって、その量が該樹脂に対して5〜30重量%であり、第2種の微粒子は不定形であり、その平均径が5μm以下であって、その量が該樹脂に対して10重量%以下であり、かつ該防眩層の厚さが該第1種の微粒子の平均径以上であることを特徴とする防眩フィルムが開示されており、この特許文献5では、有機や無機の屈折率の異なる微粒子を用いることで、防弦性とハードコート性(耐擦性)の両立を図っている。
さらに、下記の特許文献6には、透明プラスチックフィルムもしくはシート基材の少なくとも一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂被膜層を設けたハードコートフィルムであって、前記基材上に第1ハードコート層として無機もしくは有機微粒子を含有しないクリア硬化樹脂層を設けた後、さらに第2ハードコート層として無機もしくは有機微粒子を含有する硬化樹脂の薄膜を設けてなる活性エネルギー線硬化樹脂被膜層であることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムもしくはシートが開示されており、この特許文献6では、第1ハードコート層と第2ハードコート層とを積層し、防弦性とハードコート性を各層毎に持たせることで、防弦性とハードコート性(耐擦性)の両立を図っている。
特開2004−25650号公報 特開2003−260748号公報 特開2000−912号公報
しかしながら、上記の特許文献4、及び特許文献5では、防弦性とある程度のハードコート性を有するものの、特に耐久保存後のハードコート性(耐擦性、鉛筆硬度)が不十分であった。また、塗布時のレベリング性や取り扱い性から塗工液の液粘度を下げるため、固形濃度を低くした方が良いが、このような状態にした際に経時安定性が悪く、微粒子等の沈殿が生じやすいという問題があった。
また、特許文献6では、特に耐久保存後のハードコート性が不十分であった。また第1ハードコート層と第2ハードコート層とを積層するため、生産性の低下や高コスト化につながるという問題があった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、防眩性と視認性をバランス良く満たす光学特性、耐久保存後のハードコート性、塗工液の安定性、生産性や低コスト化に優れた防眩性フィルム、防眩性反射防止フィルム、これらを用いた偏光板、及び表示装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、透明フィルム基材上に防眩層を有する防眩性フィルムであって、防眩層は、互いに反応する官能基を有しかつ樹脂の表面張力の差:Δγが、1.8dyne/cm以上、30.0dyne/cm以下である第1樹脂及び第2樹脂と、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子とを含む塗布組成物から形成されていることを特徴としている。
請求項2の防眩性フィルムの発明は、請求項1に記載の防眩性フィルムであって、第1樹脂が水酸基含有樹脂であり、第2樹脂がメラミン樹脂であることを特徴としている。
請求項3の防眩性フィルムの発明は、請求項1に記載の防眩性フィルムであって、第1樹脂がカルボキシル基含有樹脂であり、第2樹脂がエポキシ基含有樹脂であることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムであって、微粒子が、フッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子であることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムであって、透明フィルム基材が、セルロースエステルフィルムであることを特徴としている。
請求項6の防眩性反射防止フィルムの発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムの防眩層上に、内部が多孔質または空洞である中空シリカ微粒子を含有した低屈折率層が積層されていることを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項6に記載の防眩性反射防止フィルムであって、防眩層と、低屈折率層との間に、高屈折率層が介在させられていることを特徴としている。
請求項8の偏光板の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムを一方の面に用いることを特徴としている。
請求項9の偏光板の発明は、請求項6または7に記載の防眩性反射防止フィルムを一方の面に用いることを特徴としている。
請求項10の表示装置の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムを用いることを特徴としている。
請求項11の表示装置の発明は、請求項6または7に記載の防眩性反射防止フィルムを用いることを特徴としている。
請求項12の表示装置の発明は、請求項8または9に記載の偏光板を用いることを特徴としている。
請求項1の発明は、透明フィルム基材上に防眩層を有する防眩性フィルムであって、防眩層は、互いに反応する官能基を有しかつ樹脂の表面張力の差:Δγが、1.8dyne/cm以上、30.0dyne/cm以下である第1樹脂及び第2樹脂と、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子とを含む塗布組成物から形成されているもので、請求項1の防眩性フィルムの発明によれば、防眩性と視認性をバランス良く満たす光学特性、耐久保存後のハードコート性、塗工液の安定性、生産性や低コスト化に優れているという効果を奏する。
請求項2の防眩性フィルムの発明は、請求項1に記載の防眩性フィルムであって、第1樹脂が、水酸基含有樹脂であり、第2樹脂が、メラミン樹脂であるもので、請求項2の防眩性フィルムの発明によれば、特に上記した効果を奏する。
請求項3の防眩性フィルムの発明は、請求項1に記載の防眩性フィルムであって、第1樹脂がカルボキシル基含有樹脂であり、第2樹脂がエポキシ基含有樹脂であるもので、請求項3の防眩性フィルムの発明によれば、特に上記した効果を奏する。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムであって、微粒子が、フッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子であるもので、請求項4の防眩性フィルムの発明によれば、特に高いハードコート性の効果も奏する。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムであって、透明フィルム基材が、セルロースエステルフィルムであるもので、請求項5の防眩性フィルムの発明によれば、特に上記した効果を奏する。
請求項6の防眩性反射防止フィルムの発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムの防眩層上に、内部が多孔質または空洞である中空シリカ微粒子を含有した低屈折率層が積層されているもので、このような中空シリカ微粒子を含有した低屈折率層が積層された請求項6の防眩性反射防止フィルムの発明によれば、優れた反射防止性と耐擦性を有するという効果を奏する。
請求項7の発明は、請求項6に記載の防眩性反射防止フィルムであって、防眩層と、低屈折率層との間に、高屈折率層が介在させられているもので、このような低屈折率層、高屈折率層が積層された請求項7の防眩性反射防止フィルムの発明によれば、優れた反射防止性と耐擦性を有するという効果を奏する。
請求項8の偏光板の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の防眩性と視認性をバランス良く満たす防眩性フィルムを一方の面に用いるものであるから、請求項8の偏光板の発明によれば、これを表示装置に用いたときに、光の写り込みが気にならず、視認性に優れているという効果を奏する。
請求項9の偏光板の発明は、請求項6または7に記載の防眩性反射防止フィルムを一方の面に用いるものであるから、請求項9の偏光板の発明によれば、優れた反射防止性と耐擦性を有するという効果を奏する。
請求項10の表示装置の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の防眩性と視認性をバランス良く満たす防眩性フィルムを用いるものであるから、請求項10の表示装置によれば、光の写り込みが気にならず、視認性に優れているという効果を奏する。
請求項11の表示装置の発明は、請求項6または7に記載の防眩性反射防止フィルムを用いるものであるから、請求項11の表示装置の発明によれば、優れた反射防止性と耐擦性を有するという効果を奏する。
請求項12の表示装置の発明は、請求項8または9に記載の偏光板を用いるもので、本発明の表示装置によれば、光の写り込みが気にならず、視認性に優れており、また、優れた反射防止性と耐擦性を有するという効果を奏する。
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(防眩層)
本発明による防眩性フィルムは、透明フィルム基材上に防眩層を有する防眩性フィルムであって、防眩層は、互いに反応する官能基を有しかつ樹脂の表面張力の差:Δγが、1.8dyne/cm以上、30.0dyne/cm以下である第1樹脂及び第2樹脂と、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子とを含む塗布組成物から形成されているものである。
本発明の防眩性フィルムによれば、防眩性と視認性をバランス良く満たす光学特性、耐久保存後のハードコート性、塗工液の安定性、生産性や低コスト化に優れた防眩性フィルムを得ることができる。
ここでいう防眩性とは、表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に反射像の映り込みが気にならないようにするものである。表面に適切な凹凸を設けることによって、このような性質を持たせることができる。
このような凹凸を形成する方法としては、透明フィルム基材への加工、防眩層の塗設等がある。
凹凸形状としては、直円錐、斜円錐、角錐、斜角錐、楔型、凸多角体、半球状等から選ばれる構造、並びにそれらの部分形状を有する構造が挙げられる。なお、半球状は、必ずしもその表面形状は真球形状である必要はなく、楕円体形状や、より変形した凸曲面形状であってもよい。また、凹凸形状の稜線が線状に伸びた、プリズム形状、レンチキュラーレンズ形状、フレネルレンズ形状も挙げられる。その稜線から谷線にかけての斜面は平面状、曲面状、もしくは両者の複合的形状であってもよい。
防眩層の凹凸形状の粗さは、JIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さ(Ra)が60〜700nm、好ましくは80〜400nmが好ましい。ここで、凹凸形状の粗さ(Ra)が、60nm未満では、防眩性の効果が弱く、凹凸形状の粗さ(Ra)が、700nmを超えると、目視で粗すぎる印象を受ける。算術平均粗さ(Ra)は、光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えば光学干渉式表面粗さ計RST/PLUS(WYKO社製)を用いて測定することができる。
さらに、防眩性を付与するために、以下の方法、及び後述する透明フィルム基材の表面に凹凸形状を形成する方法を併用してもよい。
(1)ロールや原盤に目的とする形状のネガ型を形成しておき、エンボスにて形状を付与する方法。
(2)ロールや原盤に目的とする形状のネガ型を形成しておき、熱硬化性樹脂をネガ型に充填し、加熱硬化後ネガ型から剥離する方法。
(3)ロールや原盤に目的とする形状のネガ型を形成しておき、紫外線または電子線硬化樹脂を塗布し凹部に充填後、樹脂液を介して凹版上に透明フィルム基材を被覆したまま紫外線または電子線を照射し、硬化させた樹脂とそれが接着した透明フィルム基材とをネガ型から剥離する方法。
(4)目的とする形状のネガ型を流延ベルトに形成しておき、キャスティング時に目的とする形状を付与する溶剤キャスト法。
(5)光または加熱により硬化する樹脂を透明基板に凸版印刷し、光または加熱により硬化して凹凸を形成する方法。
(6)透明フィルム基材表面に光または加熱して硬化する樹脂をインクジェット法により印刷し、光または加熱により硬化して透明フィルム基材表面を凹凸形状にする方法。
(7)透明フィルム基材表面に光または加熱して硬化する樹脂をインクジェット法により印刷し、光または加熱により硬化して凹凸形状を形成し、さらに、透明樹脂層にて被覆する方法。
(8)表面を工作機械等で切削加工する方法。
(9)球、多角体等各種形状の粒子を、透明フィルム基材表面に半ば埋没する程度に押し込んで一体化し、透明フィルム基材表面を凹凸形状にする方法。
(10)球、多角体等各種形状の粒子を少量のバインダーに分散したものを透明フィルム基材表面に塗布し、透明フィルム基材表面を凹凸形状にする方法。
(11)透明フィルム基材表面に、バインダーを塗布し、その上に球、多角体等各種形状の粒子を散布し、透明フィルム基材表面を凹凸形状にする方法。
(12)透明フィルム基材表面に鋳型を押し当てて凹凸を形成する方法。具体的には特開2005−156615号公報記載の方法。
上記において、併用して表面に凹凸形状を形成する方法の中でも、ネガ型を形成する方法やインクジェット法との併用が効果的である。
つぎに、防眩層用塗布組成物について説明する。
(微粒子)
本発明の目的効果の点から防眩層用塗布組成物には、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子を含有することを特徴とする。
なお、高速塗布時のレベリング性や取り扱い性から、塗工液の液粘度を下げるため、固形濃度を低くした方が良いが、このような状態での塗工液の安定性、また良好な分散性が得られることから、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子の平均粒子径としては、5nm〜30μmの範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、10nm〜15μmである。平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
また、前記の理由により、防眩層用塗布組成物に含まれるポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子の含有量としては、塗布組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.01〜500質量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜100質量部であり、特に好ましくは1〜30質量部である。
ここで、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、及びメラミンポリマー系微粒子の具体例として、ポリメチルメタクリレート系微粒子としては、例えば綜研化学製;MX150、MX300、日本触媒製;エポスターMA、グレード;MA1002、MA1004、MA1006、MA1010、エポスターMX(エマルジョン)、グレード;MX020W、MX030W、MX050W、MX100W)、積水化成品工業製:MBXシリーズ(MBX−8、MBX12)があげられる。
ポリメチルメタクリレート系微粒子の中でも、本発明の効果であるハードコート性をより良く発揮する点から、フッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子が好ましい。本発明におけるフッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子とは、フッ化アクリレートまたはフッ化メタクリレートをモノマーまたはポリマーから形成された微粒子、フッ素含有アクリル酸、フッ素含有メタクリル酸、フルオロアクリル酸もしくはフルオロメタクリル酸から形成された微粒子、及びフッ素含有メタアクリル酸を架橋剤の存在下にビニル単量体と共重合させて得られる微粒子等が挙げられる。
フッ素含有メタアクリル酸としては、例えばトリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート等のフッ素含有メタクリル酸アルキル、パーフルオロオクチルエチルアクリレートのようなフッ素含有アクリル酸アルキル等が挙げられる。
フッ素含有(メタ)アクリル酸と共重合可能なビニル単量体としては、ビニル基を有するものであればよく、具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類等が挙げられる。
重合反応の際に用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、2個以上の不飽和基を有するものを用いることが好ましく、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等の2官能性ジメタクリレートや、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。なお、共重合反応は、ランダム共重合およびブロック共重合のいずれでもよい。
具体的化合物としては、例えば特開2000−169658号公報に記載の化合物等も挙げることができ、市販品としては、日本ペイント製:FS−701、根上工業製:MF−0043等を挙げることができる。
ポリスチレン系微粒子としては、例えば綜研化学製;SX−130H、SX−200H、SX−350H)、積水化成品工業製、SBXシリーズ(SBX−6、SBX−8)等の市販品が挙げられる。また、ポリスチレン系微粒子の中には、アクリルとスチレンが架橋した微粒子も含まれ、具体的には、日本ペイント製:FS−102、FS−401、FS−201、MG−351等の市販品を挙げることができる。
メラミンポリマー系微粒子としては、日本触媒製:ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;M30、商品名:エポスターGP、グレード;H40〜H110)、日本触媒製:メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;S12、S6、S、SC4)、日産化学工業製:メラミン樹脂・シリカ複合粒子(商品名:オプトビーズ)等の市販品を挙げることができる。
一方、親水性シリカ微粒子としては、日本アエロジル製、アエロジル200、200V、300、デグサ製、アエロジルOX50、TT600、富士シリシア化学製、サイリシア350等の商品名を挙げることができる。
なお、本発明の微粒子は、単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これら微粒子の状態は、粉体あるいはエマルジョン等のどのような状態で加えられても良い。
その他の微粒子としては、ベンゾグアナミン系微粒子が挙げられ、日本触媒製:ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;L15、M05、MS、SC25)等、ポリウレタン系技粒子としては、大日精化製ダイミックビーズ、またエチレン・メチルメタクリラート共重合物等が挙げられる。
シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等の紫外線硬化性樹脂組成物をも加えることができる。また必要に応じて、さらに特開2000−241807号公報に記載の微粒子を含んでいても良い。
つぎに、本発明の目的効果の点から含有される第1樹脂及び第2樹脂について説明する。
第1樹脂及び第2樹脂は、透明フィルム基材上に塗布することにより得られる塗膜を乾燥させることによって、表面に凹凸形状を有する樹脂層を形成する組成物である。例えば特開2006−3647号公報に記載の塗布組成物が好ましく用いられる。これらの第1樹脂及び第2樹脂は、塗布組成物を塗布した後に、それぞれの表面張力の差に基づいて、第1樹脂及び第2樹脂が局在化すると考えられる。
第1樹脂及び第2樹脂は、互いに反応する官能基を有する樹脂を使用する。第1樹脂が有する官能基と第2樹脂が有する官能基とが反応することによって、樹脂層が硬化する。
このような官能基の組合せとしては、例えば水酸基とメラミン樹脂のイミノ基、メチロール基、アルコキシド基との組合せ、水酸基と(ブロック)イソシアネート基との組合せ、水酸基と酸(無水物)基との組合せ、水酸基とシラノール基との組合せ、エポキシ基とカルボキシル基との組合せ、エポキシ基とアミノ基との組合せ、エポキシ基と水酸基との組合せ、エポキシ基とシラノール基との組合せ、オキサゾリン基とカルボキシル基との組合せ、活性メチレン基とアクリロイル基との組合せ等の、異なる官能基の組み合わせが挙げられる。なお、ここにいう「互いに反応する官能基」とは、第1樹脂及び第2樹脂のみを混合しただけでは反応は進行しないか、または反応速度が遅いが、触媒等を併せて混合することにより互いに反応するものも含まれる。ここで使用できる触媒としては、例えば光開始剤、ラジカル開始剤、酸・塩基触媒、金属触媒などが挙げられる。
第1樹脂及び第2樹脂は、第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差:Δγが、1.8dyne/cm以上、30.0dyne/cm以下である樹脂を使用する。この表面張力との差:Δγは1.8dyne/cm以上、15.0dyne/cm以下が好ましい。より好ましくは、Δγが、1.8dyne/cm以上、5.0dyne/cm以下であり、更に好ましくはΔγが、1.8dyne/cm以上、2.5dyne/cm以下である。
ここで、表面張力との差:Δγが、1.8dyne/cm未満であれば、表面張力の差に基づいて形成される十分な凹凸形状が得られないので、好ましくない。また、表面張力との差:Δγが30.0dyne/cmを超える場合は、溶液状態での均一な状態が保てなくなり、安定性が低下するので、好ましくない。
第1樹脂の表面張力と第2樹脂の表面張力との差:Δγが上記範囲である樹脂を使用することによって、透明フィルム基材に塗布組成物を塗布した後に、表面張力の差に基づいて第1樹脂及び第2樹脂が局在化して、表面にランダムな凹凸を有する樹脂層が得られることとなる。
上記において、表面張力とは、一般に、異なる相の界面の面積を最小にしようとする力である。本発明で用いられる第1樹脂及び第2樹脂は、水などの液体と比べると粘度が非常に高い。そのため、リング法(吊環法)などによって樹脂の表面張力をそのまま測定するのは非常に困難である。そこで本発明においては、第1樹脂及び第2樹脂の表面張力は、特定の溶媒の表面張力を測定し、ついでその溶媒に樹脂固形分40質量%の濃度で樹脂を溶解させた溶液を調製して表面張力を測定し、得られた測定値から溶媒の表面張力値を減じた値を算出することにより、第1樹脂の表面張力及び第2樹脂の表面張力の差:Δγを測定している。このような方法において、表面張力の測定は、例えばビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターなどを使用して測定することができる。
第1樹脂及び第2樹脂は、乾燥工程においてそれぞれの表面張力が異なることに起因して、局在化が生じると考えられる。そして硬化工程において、それぞれの樹脂の表面張力が異なることで凝集力も異なり、これにより表面に凹凸を有する樹脂層が形成されると考えられる。このため、第1樹脂及び第2樹脂から形成された樹脂層は、表面張力に基づいて凹凸形成されるため、凹凸樹脂層の表面形状は、特別な規則性を有せず、ランダムな凹凸形状となる。このため、規則性を有する凹凸において生じ得る、光の干渉作用によるモアレ発生などの不都合が生じないという利点がある。
つぎに、第1樹脂及び第2樹脂の具体的化合物について説明する。
第1樹脂(a−1)としては、水酸基含有樹脂が好ましく、かつアクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂及びポリウレタン樹脂よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の骨格を有する水酸基有樹脂がさらに好ましい。
第2樹脂(b−1)としては、メラミン樹脂を使用することが好ましい。この場合、第1樹脂(a−1)が有する水酸基と、第2樹脂(b−1)が有するイミノ基、メチロール基及び/またはアルコキシド基とが反応して、架橋が形成され、硬化する。
第1樹脂(a−1)として用いることができるオレフィン樹脂としては、アクリル樹脂、例えば(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂などであって、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体などが挙げられる。
第1樹脂(a−1)として用いることができるポリエーテル樹脂は、分子鎖中にエーテル結合を含む樹脂であり、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
第1樹脂(a−1)として用いることができるポリエステル樹脂は、分子鎖中にエステル結合を含む樹脂であり、例えば不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
第1樹脂(a−1)として用いることができるポリカーボネート樹脂は、4,4−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(通称、ビスフェノールA)をはじめとする4,4−ジオキシジアリルアルカン系ポリカーボネートであるが、その中でも特に4,4−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンのポリカーボネートが好ましく、その数平均分子量が15,000〜80,000程度のものが好ましい。ポリカーボネート樹脂としては、例えば帝人化成株式会社製のパンライトL−1225、L−1250、K−1300等がある。
第1樹脂(a−1)として用いることができるポリアミド樹脂は、分子鎖中に酸アミド結合(−CONH−)を有するものであり、例えばε―カプロラクタム、6−アミノカプロン酸、ε―エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ラウロラクタム、α―ピロリドンやヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの重縮合物、ジアミンとアジピン酸、セバシン酸などのジカルボン酸との重縮合物からなる重合体、もしくはこれらの共重合体、もしくはこれらの重合体あるいは共重合体のブレンド物を挙げることができる。好ましくは、ε―カプロラクタム、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ラウロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合物からなる重合体、もしくはこれらの共重合体、もしくはこれらの重合体や共重合体のブレンド物である。
第1樹脂(a−1)として用いることができるポリウレタン樹脂は、分子鎖中にウレタン結合を含む樹脂であるが挙げられる。
さらに、第1樹脂(a−1)としては、上記の樹脂の共重合物も使用することができる。
第1樹脂(a−1)の水酸基価(OH価)は、好ましくは10〜400であることが好ましい。第1樹脂(a−1)のOH価が、10未満の場合は、硬化が不十分となり、成膜性(樹脂層形成能力)の低下、得られる樹脂層の耐薬品性の低下が生じるおそれがある。一方、第1樹脂(a−1)のOH価が400を超える場合は、架橋密度が高くなりすぎることによる、得られる樹脂層の可撓性の低下、機械的強度の低下が生じるおそれがある。
上記第1樹脂(a−1)のうち、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂が、本発明において特に好ましく使用される。この樹脂は、第2樹脂(b−1)としてメラミン樹脂を用いる組み合わせにおいて、より良好な凹凸表面を有する樹脂層を形成することができるからである。
第2樹脂(b−1)を構成するメラミン樹脂は、一般に市販されているものを用いることができ、例えば日本サイテックインダストリーズ株式会社、大日本インキ株式会社、三井東圧株式会社などから購入することができる。
他の具体的な実施態様として、第1樹脂(a−2)としては、カルボキシル基含有樹脂を使用することが好ましい。
そして、これに対し、第2樹脂(b−2)として、エポキシ基含有樹脂を使用することが好ましい。この場合、第1樹脂(a−2)が有するカルボキシル基と、第2樹脂(b−2)が有するエポキシ基とが反応して、架橋が形成され、硬化する。
第1樹脂(a−2)として用いることができる樹脂として、アクリル樹脂、例えば(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、または(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂など、のアクリル樹脂であって、その骨格上にカルボキシル基を有する樹脂が特に好ましい。
ここで、第1樹脂(a−2)の酸価は、20〜400であることが好ましく、50〜250であることがより好ましい。第1樹脂(a−2)の酸価が、20未満の場合は、硬化が不十分となり、成膜性(樹脂層形成能力)の低下、得られる樹脂層の耐薬品性の低下が生じるおそれがある。一方、第1樹脂(a−2)の酸価が、400を超える場合は、架橋密度が高くなりすぎることによる、得られる樹脂層の可撓性の低下、機械的強度の低下が生じるおそれがある。
本発明の上記の実施態様において、第2樹脂(b−2)として用いることができるエポキシ基含有樹脂は、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂などが挙げられ、特にエポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。なお、本明細書において「エポキシ基含有樹脂」とは、エポキシ基を有する樹脂をいい、その樹脂の骨格の構造は限定されない。
本発明において、第2樹脂(b−2)として使用することができるエポキシ基含有樹脂として、例えばエポキシ基を有するラジカル重合性モノマー30〜70質量%、水酸基を有するラジカル重合性モノマー10〜50質量%、及びその他のラジカル重合性モノマーを残量含むモノマー組成物を共重合して得ることができる共重合体が挙げられる。
エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4エポキシシクロヘキサニルメチルメタクリレート等が挙げられる。水酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等、アクリル酸4ヒドロキシブチル、プラクセルFM−1(ダイセル社製)等が挙げられる。その他のラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n、i、及びt−ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等)、メタクリル酸エステル類(例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n、i、及びt−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等)、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのモノマーを、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート等のラジカル重合開始剤の存在下で重合させることによって、エポキシ基含有樹脂を得ることができる。
また、第2樹脂(b−2)として使用するエポキシ樹脂は、エポキシ当量100〜5000のエポキシ樹脂を使用するのが好ましく、エポキシ当量160〜2000のエポキシ樹脂を使用するのが、より好ましい。
上記のいずれの態様においても、第1樹脂の重量平均分子量は、500〜500,000、特に1000〜100,000であることが好ましい。第1樹脂の重量平均分子量が500,000を超えると、ポリマー粘度が高くなり、作業性などが悪くなる恐れがある。一方、第1樹脂の重量平均分子量が500未満の場合には、局在化が不十分となる恐れがある。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により求めることができる。
また、第2樹脂の重量平均分子量は、200〜500,000、特に400〜100,000であることが好ましい。第2樹脂の重量平均分子量が500,000を超えると、ポリマー粘度が高くなり、作業性などが悪くなる恐れがある。一方、第2樹脂の重量平均分子量が200未満の場合には、局在化が不十分となる恐れがある。この重量平均分子量もゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により求めることができる。
用いられる溶媒は、特に限定されるものではなく、塗布の下地となる部分の材質や、バインダー樹脂及び塗布方法などを考慮して適宜選択される。
溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒;n−ブタン、n−へキサン、シクロヘキサン等の脂肪族系溶媒;i−プロパノール、i−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒が挙げられる。これらの溶媒のうちエステル系、エーテル系、アルコール系溶媒が好ましく、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、水系の溶媒が用いられてもよい。
第1樹脂と第2樹脂は、樹脂の固形分質量比(第1樹脂/第2樹脂)で表して10/90〜90/10の範囲で用いられるのが好ましく、70/30〜40/60の範囲で用いられるのがより好ましい。このような比率で用いることによって、良好な凹凸表面を有し、そして物理的強度などに優れた樹脂層を得ることができる。
第1樹脂と第2樹脂の屈折率は同じでも異なっていてもよく、好ましい屈折率差としては0.00〜0.50、さらに、好ましくは0.01〜0.30である。
また、必要に応じて、その他、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤としてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのワックス類のようなレオロジーコントロール剤、アセチレンジオール類のような表面調整剤(レベリング剤)、カップリング剤、可塑剤、分散剤等が挙げられる。レベリング剤としては、後述の低屈折率層に記載のフッ素系またはシリコーン界面活性剤やポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物等が挙げられる。
ポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物としては、一般的に一般式(I)で表される化合物である。
一般式(I) C1835−O(CO)
式中、nは2〜40を表す。
オレイル部分に対するエチレンオキシドの平均付加個数(n)は、2〜40であり、好ましくは2〜10である。また一般式(I)の化合物はエチレンオキシドとオレイルアルコールとを反応させて得られる。
具体的商品としては、エマルゲン404〔ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル〕、エマルゲン408〔ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル〕、エマルゲン409P〔ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル〕、エマルゲン420〔ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル〕、エマルゲン430〔ポリオキシエチレン(30)オレイルエーテル〕以上花王社製、日本油脂製NOFABLEEAO−9905〔ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル〕等が挙げられる。なお、()内がnの数字を表す。
本発明の防眩層用塗布組成物には、親水性シリカ以外の無機微粒子や金属酸化物も含んで良い。具体的には、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウム−スズ(ITO)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
また、防眩層の厚さは、ハードコート性(耐擦性、鉛筆硬度)や、良好な光拡散性が付与され、視野角の拡大に貢献することから、制限されないが、通常、0.5〜50μm、とくに1〜30μmが好ましい。また、防眩層は単層または複数の層から構成しても良い。
防眩層は、透明フィルム基材に上記防眩層用塗布組成物を塗布する塗布工程、得られた塗膜を乾燥させる乾燥工程、及び乾燥させた塗膜を硬化させる硬化工程、を包含する方法によって形成される。
防眩層用の塗布組成物を基材に塗布する方法は、特に限定されるものではなく、使用する塗布組成物や塗布工程の状況に応じて適宜選択される。例えばワイヤバーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、グラビアコーティング、後述のインクジェット法等の種々の塗布方法を採用することができる。
また、塗布は後述の透明フィルム基材幅が1.4〜4mでロール状に巻き取られた状態から繰り出して、塗布を行い、乾燥・硬化処理した後、ロール状に巻き取られることが好ましい。
乾燥工程は、減圧乾燥によって行われるのが好ましい。減圧乾燥することにより、塗布組成物中に含まれる溶媒を除去し、そして第1樹脂及び第2樹脂を良好に局在化させることができるためと考えられる。
乾燥工程において第1樹脂及び第2樹脂が局在化した塗膜を硬化させることによって、凹凸樹脂層が形成される。硬化方法としては、加熱することによって熱硬化させる方法、電子線、または紫外線等の光照射によって硬化させる方法などが挙げられる。紫外線光照射としては、例えば低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。熱硬化させる場合は、加熱温度は50〜300℃が好ましく、好ましくは60〜250℃、さらに好ましくは80〜150℃である。
加熱時間は、加熱温度により変化するが、3〜300分の範囲が適当である。あるいは一度巻き取った後、50〜100℃程度の温度で1〜20日間程度エージング処理する方法でも良い。
また光照射によって硬化させる場合は、照射光の露光量は10mJ/cm〜10J/cmであることが好ましく、50mJ/cm〜1J/cmであるのがより好ましい。ここで照射される光の波長域としては特に限定されないが、紫外線領域の波長を有する光が好ましく用いられる。
さらに、防眩層には、活性エネルギー線硬化樹脂を含有させてもよい。もしくは別の層として積層することもできる。
活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることができる。
例えばユニディック17−806(大日本インキ化学工業株式会社製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン株式会社製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜20質量部であり、好ましくは1〜15質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化株式会社製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー株式会社製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成株式会社製);NKハードB−420、B−500(新中村化学工業株式会社製)等を適宜選択して利用できる。
また、その他としては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、イソボニルアクリレート等を挙げることができる。
光硬化反応の照射条件は、上記の水銀ランプ等によって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm、好ましくは5〜150mJ/cmであるが、特に好ましくは20〜100mJ/cmである。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、さらに好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによってさらに平面性優れたフィルムを得ることができる。
(インクジェット方法による凹凸形成の例)
本発明の防眩層はインクジェット方法より凹凸形成することもできる。
防眩層用塗布組成物をインキ液として、インクジェット方法により塗布することで凸構造部を形成してもよく、もしくは活性エネルギー線硬化樹脂を有する塗布液で形成された凸構造部の上にオーバーコート層として用いることもでき、またはインクジェット方法により凸構造部を形成しさらに、その上にオーバーコートする際の両者の塗布液として用いることもできる。
図1は、インクジェット方法による凸構造部形成と、透明樹脂層によるオーバーコートを示した模式図である。
図2は、本発明に用いられるインクジェット方法に使用できるインクジェットヘッドの一例を示す断面図である。
図2(a)はインクジェットヘッド10の断面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線矢視拡大図である。図中、11は基板、12は圧電素子、12bは駆動圧電素子、12aは非駆動圧電素子、13は流路板、13aはインク流路、13bは壁部、14は共通液室構成部材、14aは共通液室、15はインク供給パイプ、16はノズルプレート、16aはノズル、17は駆動用回路プリント板(PCB)、18はリード部、19は駆動電極、20は溝、21は保護板、22は流体抵抗、23、24は電極、25は上部隔壁、26はヒータ、27はヒータ電源、28は伝熱部材、30はインクジェットヘッドである。
集積化されたインクジェットヘッド30において、電極23、24を有する積層された圧電素子12は、流路13aに対応して、該流路13a方向に溝加工が施され、溝20と駆動圧電素子12bと非駆動圧電素子12aに区分される。溝20には充填剤が封入されている。溝加工が施された圧電素子12には、上部隔壁25を介して流路板13が接合される。すなわち、上部隔壁25は、非駆動圧電素子12aと隣接する流路を隔てる壁部13bとで支持される。駆動圧電素子12bの幅は流路13aの幅よりも僅かに狭く、駆動用回路プリント板(PCB)上の駆動回路により選択された駆動圧電素子12bはパルス状信号電圧を印加すると、該駆動圧電素子12bは厚み方向に変化し、上部隔壁25を介して流路13aの容積が変化し、その結果、ノズルプレート16のノズル16aよりインク液滴を吐出する。
流路板13上には、伝熱部材28を介してヒータ26がそれぞれ接着されている。伝熱部材28はノズル面にまわり込んで設けられている。伝熱部材28は、ヒータ26からの熱を効率良く流路板13に伝え、かつ、ヒータ26からの熱をノズル面近傍に運びノズル面近傍の空気を温めることを目的としており、したがって、熱伝導率の良い材料が用いられる。例えばアルミニウム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス等の金属、あるいは、SiC、BeO、AlN等のセラミックス等が好ましい材料として挙げられる。
圧電素子を駆動すると、流路の長手方向に垂直な方向に変位し、流路の容積が変化し、その容積変化によりノズルからインク液滴となって噴射する。圧電素子には常時流路容積が縮小するように保持する信号を与え、選択された流路に対して流路容積を増大する向きに変位させた後、再び流路の容積が縮小する変位を与えるパルス信号を印加することにより、流路と対応するノズルよりインクがインク液滴となって噴射する。
図3は、本発明で用いることのできるインクジェットヘッド部、ノズルプレートの一例を示す概略図である。
図3において、図3(a)はヘッド部の断面図、図3(b)はノズルプレートの平面図である。図中、10は透明フィルム基材、31はインク液滴、32はノズル、29は活性光線照射部である。ノズル32より噴射したインク液滴31は透明フィルム基材10方向に飛翔して付着する。透明フィルム基材10上に着弾したインク液滴は、その上流部に配置されている活性光線照射部より、活性光線を照射され、硬化する。なお、35は透明フィルム基材10を保持するバックロールである。
本発明においては、図3(b)に示すように、インクジェットヘッド部のノズルは、千鳥状に配置することが好ましく、また、透明フィルム基材10の搬送方向に並列に多段に設けることが好ましい。また、インク吐出の際にインクジェットヘッド部に微細な振動を与え、インク滴がランダムに透明基材上に着弾するようにすることも好ましい。これによって、干渉縞の発生を抑制することができる。微細な振動は、高周波電圧、音波、超音波などによって与えることができるが、特にこれらに限定されない。
本発明に用いられる凸構造部の形成方法は、多ノズルからインク小液滴を吐出して形成するインクジェット方式を用いることが好ましい。図4に、本発明で好ましく用いることのできるインクジェット方式の一例を示す。
図4において、図4(a)は、インクジェットヘッド30を透明フィルム基材10の幅手方向に配置し、透明フィルム基材10を搬送しながらその表面に凸構造部を形成する方法(ラインヘッド方式)であり、図4(b)はインクジェットヘッド30が副走査方向に移動しながらその表面に凸構造部を形成する方法(フラットヘッド方式)であり、図4(c)はインクジェットヘッド30が、透明フィルム基材10上の幅手方向を走査しながらその表面に凸構造部を形成する方法(キャプスタン方式)であり、いずれの方式も用いることができるが、本発明においては、生産性の観点からラインヘッド方式が好ましい。なお、図4(a)〜図4(c)に記載の29は、インクとして後述の活性光線硬化型樹脂を用いる場合に使用する活性光線照射部である。
また、本発明においては、図4(a)、図4(b)、図4(c)の透明フィルム基材の搬送方向の下流側に、別の活性光線照射部を設けてもよい。
本発明において、微細な凹凸形成するため、インク液滴としては0.1〜100plが好ましく、0.1〜50plがより好ましく、0.1〜10plが特に好ましい。上記条件でインク液滴を出射することにより、ドットの長径が1〜30μm、ドットの高さが0.1〜10μmである微細な凹凸を得ることができる。
また、インク液滴の粘度は、25℃において0.1〜20mPa・sであることが好ましく、さらに、好ましくは0.5〜10mPa・sである。
インクジェット方法で形成した凸構造部を被覆するように透明樹脂層を塗布することもできる。
透明樹脂層は、防眩層用塗布組成物の項で説明した本発明に係る第1樹脂、第2樹脂、活性エネルギー線硬化樹脂、光重合開始剤、光反応開始剤、光増感剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、微粒子、溶媒等を適宜用いてインキ組成物を調製し、さらに、任意の塗布方法により凸構造部の上に塗布を行う。
図5は、凹凸型ローラを用いた凹凸面形成装置の概略図である。同図において、予め調液された樹脂溶液をダイス51より流延用ベルト52上に流延し、ウェブ(金属支持体上にドープを流延した以降の残留溶媒を含むフィルムをウェブという)を形成し、剥離後、凹凸面形成用凹凸型ローラ53、及びそれと対向したバックロール54によりウェブ上に凹凸面を形成する。ついで、同様にしてウェブの反対側の面に凹凸形状を有する凹凸面形成用凹凸型ローラ53′とバックロール54によりウェブ裏面上に凹凸面を形成し、その後、テンター55によりウェブは延伸され、次のフィルム乾燥装置56により乾燥され、巻き取りロール57により巻き取られる。
また、凹凸面形成は、図5のテンター55の後でも、図5の乾燥装置56内でも、さらには乾燥が終了した後で行ってもよく、図5では、表面側及び裏面側に一対の凹凸型ローラとバックロールを配して凹凸形成を行っているが、複数の凹凸型ローラとバックロールを用いて行ってもよい。
図6に乾燥装置内における凹凸面形成装置の概略図を示す。この場合は、残留溶媒量は、図5の場合に比べて大幅に低下するが、乾燥装置による加熱条件を制御することにより透明支持体表面の温度を所望の温度に設定できるため、精度よく凹凸形成ができる利点がある。なお、図6におけるその他の点は上記図5の場合と同様であるので、図面において同一のものには同一の符号を付した。
フィルムを室温に戻した後、別ラインで凹凸型ローラを用いた凹凸面形成装置を使用することもできるが、この場合は残留溶媒や温度が低いと凹凸面形成の安定性に欠ける。また、凹凸型ローラによる凹凸加工前にゴミや異物の付着する危険性があり、図5、及び図6で示したようにフィルム製膜工程の中で行うことが、故障が減るため好ましいだけでなく凹凸も形成しやすく好ましい。
凹凸面形成に用いられる凹凸型ローラとしては、凹凸が細かいもの、粗いものまで、適宜選択して適用でき、模様、マット状、レンチキュラーレンズ状、球面の一部からなる凹部または凸部、プリズム状の凹凸を形成するためのエンボスが規則正しくもしくはランダムに配列されたものが使用できる。例えば凸部または凹部の直径が5〜100μm、高さが0.1〜2μmの球の一部からなる凹部または凸部等が挙げられるが、これらは大きな凹凸と小さな凹凸を組み合わせてもよい。
凹凸型ローラ及びバックロールの材質は、金属、ステンレス、炭素鋼、アルミニウム合金、チタン合金、セラミック、硬質ゴム、強化プラスチックまたはこれらを組み合わせた素材等が使用できるが、強度の点や加工のし易さの点から凹凸型ローラは金属が好ましい。特に洗浄のしやすさ、耐久性も重要であり、ステンレス製の凹凸型ローラを使用することが好ましい。特に好ましくは、視認側用は金属材料、セラミック材料で表面凹凸形状を形成し、裏面側用はゴム材料で表面凹凸形状を形成することである。材質が異なる凹凸型ローラを用いることで、凹凸形状(山、谷、稜線等の形状)が微妙に異なる凹凸が形成でき、ギラツキを効果的に防止することができる。
また、表面に撥水もしくは撥水加工を施してもよい。凹凸型ローラに所望の凹凸面を形成する方法としてはエッチングによる方法、サンドブラストによる方法、機械的に加工する方法または金型等を使用して形成することができる。バックロールとしては硬質ゴムまたは金属が好ましく用いられる。
凹凸型ローラの表面温度T1は、用いる樹脂の熱変形温度T2に対してT2+10℃〜T2+55℃、好ましくはT2+30℃〜T2+50℃とであることが好ましい。なお、熱変形温度T2とは、ASTMD−648に従って測定した値である。
凹凸型ローラの表面温度T1が熱変形温度T2より低いと、微細な凹凸形状が形成しにくくなる。表面温度T1が熱変形温度T2よりも55℃を超えると、得られるフィルムの平面性が劣化しやすくなる。凹凸型ローラの表面温度T1は、凹凸型ローラ自身の温度、雰囲気温度、凹凸を形成するフィルム温度、フィルムの残留溶媒量、凹凸形成速度を設定することで制御することができる。凹凸型ローラ自身の温度は凹凸型ローラ内に温度制御された気体もしくは液体の媒体を循環させることで制御することができる。例えば40〜300℃、好ましくは50〜250℃の範囲で樹脂の種類や形成する凹凸形状に応じて選択される。その時、フィルム中の残留溶媒が発泡しないようにすることが好ましく、凹凸型ローラの表面が例えば残留溶媒の沸点以上の温度であっても、凹凸を形成する速度が速ければ発泡を防ぐことができる。例えば10m/min以上の速度で凹凸を形成することができる。
バックロールの温度も同様に制御することが好ましく、凹凸型ローラと同等か低い温度に設定することが好ましい。
凹凸を形成する際のロール圧力は、線圧で5〜500N/cm、さらに好ましくは30〜500N/cmから熱可塑性樹脂の種類、形成する凹凸の形状、温度等を考慮して適宜決定される。
本発明の防眩性フィルムの防眩層上に、内部が多孔質または空洞である中空シリカ微粒子を含有した低屈折率層が積層された防眩性反射防止フィルムは、優れた反射防止性と耐擦性という特徴を有する。
また、このような防眩性反射防止フィルムの防眩層と、低屈折率層との間に、高屈折率層が介在させられていることが好ましい。
つぎに、本発明は防眩層の上に設けることができる低屈折率層について説明する。
〔低屈折率層〕
低屈折率層の屈折率は、支持体である透明フィルム基材の屈折率より低く、23℃、波長550nmで1.30〜1.45の範囲が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmが好ましく、10nm〜0.3μmがより好ましく、30nm〜0.2μmであることがさらに好ましい。
低屈折率層形成用組成物は、好ましくは2種類のシリカ微粒子を含有し、そのうちの1種類のシリカ微粒子は、内部が多孔質または空洞である中空シリカ微粒子(以下、中空微粒子とも言う)であり、該中空シリカ微粒子を含有した低屈折率層が積層された防眩性反射防止フィルムは、優れた反射防止性と耐擦性という特徴を有する。
他の1種類のシリカ微粒子は、特に限定されるものではないが、本発明ではコロイダルシリカであることが好ましく、該コロイダルシリカの平均粒径は中空シリカ微粒子の平均粒径の1.1〜20倍未満であることが好ましい。
また、低屈折率層には平均粒径の異なる2種の中空シリカ微粒子を含有していてもよい。
つぎに、本発明の防眩性反射防止フィルムの特徴である低屈折率層に含有される中空シリカ微粒子について説明する。
(中空シリカ微粒子)
中空微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。
なお、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空微粒子の平均粒径は5〜200nm、好ましくは10〜70nmが望ましい。中空微粒子の粒径は、変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。
本発明で用いられる中空シリカ微粒子、およびコロイダルシリカ微粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
使用する中空微粒子の平均粒径は、形成される低屈折率層の透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、透明被膜の膜厚の3/2〜1/10、好ましくは2/3〜1/10が望ましい。これらの中空微粒子は、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)、プロピレンモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜40nm、好ましくは1〜20nm、さらに、好ましくは2〜15nmが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することができないことがあり、塗布液成分が容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率化の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、塗布液成分が内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率化の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持できないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率化の効果が十分に現れないことがある。
複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al、B、TiO、ZrO、SnO、CeO、P、Sb、MoO、ZnO、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF、NaF、NaAlF、MgF等からなるものが挙げられる。
これらのうち、特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al、B、TiO、ZrO、SnO、CeO、P、Sb、MoO、ZnO、WO3等との1種または2種以上を挙げることができる。
このような多孔質粒子では、シリカをSiOで表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MO)で表したときのモル比:MO/SiOが、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。
ここで、多孔質粒子のモル比:MO/SiOが0.0001未満のものは、得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また、多孔質粒子のモル比:MO/SiOが、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、さらに屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
なお、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることができる。また空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、上記の多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような中空微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1工程〜第3工程から中空微粒子は製造される。
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料と、シリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、またはシリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して、多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができる。なお、アンモニウムのケイ酸塩または有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物が用いられる。具体的には、Al、B、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、W等から選ばれる元素のオキソ酸、該オキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウムが適当である。
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度には特に制限はない。また複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。ここで、シード粒子としては、特に制限はないが、SiO、Al、TiOまたはZrO等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。さらに前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整した後、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにしてシード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、または、シード粒子上に析出して粒子成長が起る。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MO)に換算し、MO/SiOのモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積はほとんど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MO/SiOのモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、または陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
なお、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することができる。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られる、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有するケイ酸液または加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜40nm、好ましくは0.5〜15nmの厚さであればよい。なお、シリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することができる。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することができる。なお、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので、必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また、空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持できる範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多すぎると、シリカ保護膜が厚くなりすぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、
一般式 RSi(OR′)4−n
〔ここで、R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3を表わす〕
で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、フッ素置換したテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、ア
ルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。なお、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有する加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式
Si(OR′)4−n
〔ここで、R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3を表わす〕
で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子(空洞粒子の場合は、空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、または有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は、空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は、空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。なお、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆できる程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜40nm、好ましくは1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は、空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜40nm、好ましくは1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物またはケイ酸液は添加される。
ついで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞できる程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化できないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率化の効果が得られないことがある。
このようにして得られた無機微粒子の屈折率は、1.42未満と低い。このような無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
低屈折率性や膜強度の点から、内部が多孔質または空洞の微粒子の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、0.01〜500質量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜100質量部であり、特に好ましくは1〜50質量部である。
また、中空微粒子としては、シリカの表面に炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合しているものも用いることができる。具体的には、特開2006−257308号公報に記載された化合物等が挙げられる。
内部が多孔質または空洞である中空シリカ微粒子の低屈折率層中の含有量は、10〜50質量%、特に10〜40質量%であることが好ましい。低屈折率化の効果を得る上で、15質量%以上が好ましく、40質量%を超えると、バインダー成分が少なくなり、膜強度が不十分となることがある。特に好ましくは20〜40質量%である。
(コロイダルシリカ)
本発明に好ましく用いられるコロイダルシリカは、二酸化ケイ素をコロイド状に水または有機溶媒に分散させたものであり、特に限定はされないが球状、針状または数珠状である。反射防止フィルムの低屈折率層は、2種類以上の異なる平均粒径を有するシリカ系微粒子を含有し、一方の粒子の平均粒径に対して他方のシリカ系微粒子の平均粒径が1.1〜20倍未満であるのが好ましい。特に好ましくは、コロイダルシリカの平均粒径が中空微粒子の平均粒径の1.1〜20倍未満であることが好ましく、さらに、好ましくは1.5〜5.0倍である。従って、コロイダルシリカの平均粒径は50〜300nmの範囲が好ましく用いられる。コロイダルシリカの粒径は変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。しかし、コロイダルシリカの平均粒径と中空微粒子の平均粒径の比を求める場合は、同じ計測方法によらねばならない。
本発明に用いられる上記のようなコロイダルシリカは市販されており、例えば日産化学工業社のスノーテックスシリーズ、触媒化成工業社のカタロイド−Sシリーズ、バイエル社のレバシルシリーズ等が挙げられる。また、アルミナゾルや水酸化アルミニウムでカチオン変性したコロイダルシリカや、シリカの一次粒子を2価以上の金属イオンで粒子間を結合して数珠状に連結した数珠状コロイダルシリカも好ましく用いられる。数珠状コロイダルシリカには、日産化学工業社のスノーテックス−AKシリーズ、スノーテックス−PSシリーズ、スノーテックス−UPシリーズ等がある。
コロイダルシリカを含有させる場合、低屈折率層中の含有量は、低屈折率層中の固形分に対し10〜60質量%、さらに、30〜60質量%であることが好ましい。低屈折率化の効果を得る上で、30質量%以上が好ましく、40質量%を超えるとバインダー成分が少なくなり膜強度が不十分となる。
低屈折率層に含有させる少なくとも2種の微粒子の総含有量は、10〜80質量%、好ましくは15〜70質量%であり、特に20〜60質量%が好ましい。また2種の粒子を含有させる際の含有量比は1:0.1〜10の範囲であり、特に中空微粒子とコロイダルシリカの含有量比は、反射率低減効果と表面硬度の観点から選ばれるが、1:0.8〜5がより好ましい。
(バインダー)
低屈折率層は、全体で5〜80質量%のバインダーを含むことが好ましい。バインダーは、シリカ微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。バインダーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。バインダーとしては、下記一般式(2)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物あるいはその重縮合物が挙げられる。
一般式(2) Si(OR)
式中、Rはアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
具体的化合物化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
また、低屈折率層にはバインダーとしてシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、珪素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
2種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリング剤を用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例えばオルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)及びその加水分解物が挙げられる。
低屈折率層のその他のバインダーとしては、例えばポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂、フルオロアクリレートが挙げられる。
(溶媒)
本発明に係る低屈折率層用塗布組成物は有機溶媒を含有することが好ましい。具体的な有機溶媒の例としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
低屈折率層用塗布組成物中の固形分濃度は1〜4質量%であることが好ましく、該固形分濃度が4質量%以下にすることによって、塗布ムラが生じにくくなり、1質量%以上にすることによって乾燥負荷が軽減される。
(フッ素系またはシリコーン界面活性剤)
低屈折率層にはフッ素系またはシリコーン系の界面活性剤を含有することが好ましい。上記界面活性剤を含有させることで、塗布ムラを低減したり膜表面の防汚性を向上させるのに有効である。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を含有するモノマー、オリゴマー、ポリマーを母核としたもので、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン等の誘導体等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は市販品を用いることもでき、例えばサーフロン「S−381」、「S−382」、「SC−101」、「SC−102」、「SC−103」、「SC−104」(いずれも旭硝子株式会社製)、フロラード「FC−430」、「FC−431」、「FC−173」(いずれもフロロケミカル−住友スリーエム製)、エフトップ「EF352」、「EF301」、「EF303」(いずれも新秋田化成株式会社製)、シュベゴーフルアー「8035」、「8036」(いずれもシュベグマン社製)、「BM1000」、「BM1100」(いずれもビーエム・ヒミー社製)、メガファック「F−171」、「F−470」(いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
本発明におけるフッ素系界面活性剤のフッ素含有割合は、0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。上記のフッ素系界面活性剤は、1種または2種以上を併用することができ、またその他の界面活性剤と併用することができる。
シリコーンオイルまたはシリコーン界面活性剤について説明する。
本発明に用いられるシリコーンオイルは、ケイ素原子に結合した有機基の種類により、ストレートシリコーンオイルと変性シリコーンオイルに大別できる。ここで、ストレートシリコーンオイルとは、メチル基、フェニル基、水素原子を置換基として結合したものをいう。変性シリコーンオイルとは、ストレートシリコーンオイルから二次的に誘導された構成部分をもつものである。一方、シリコーンオイルの反応性からも分類することができる。これらをまとめると、以下のようになる。
シリコーンオイル
1.ストレートシリコーンオイル
1−1.非反応性シリコーンオイル:ジメチル、メチルフェニル置換等
1−2.反応性シリコーンオイル:メチル水素置換等
2.変性シリコーンオイル:ジメチルシリコーンオイルに、さまざまな有機基を導入することで生まれたものが、変性シリコーンオイル
2−1.非反応性シリコーンオイル:アルキル、アルキル/アラルキル、アルキル/ポリエーテル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル置換等
アルキル/アラルキル変性シリコーンオイル:ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を長鎖アルキル基あるいはフェニルアルキル基に置換えたシリコーンオイル
ポリエーテル変性シリコーンオイル:親水性のポリオキシアルキレンを疎水性のジメチルシリコーンに導入したシリコーン系高分子界面活性剤
高級脂肪酸変性シリコーンオイル:ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を高級脂肪酸エステルに置換えたシリコーンオイル
アミノ変性シリコーンオイル:シリコーンオイルのメチル基の一部をアミノアルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイル
エポキシ変性シリコーンオイル:シリコーンオイルのメチル基の一部をエポキシ基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイル
カルボキシル変性あるいはアルコール変性シリコーンオイル:シリコーンオイルのメチル基の一部をカルボキシル基あるいは水酸基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイル
2−2.反応性シリコーンオイル:アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコール置換等
これらのうち、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば1,000〜100,000、好ましくは2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
具体的な商品としては、日本ユニカー株式会社のL−45、L−9300、FZ−3704、FZ−3703、FZ−3720、FZ−3786、FZ−3501、FZ−3504、FZ−3508、FZ−3705、FZ−3707、FZ−3710、FZ−3750、FZ−3760、FZ−3785、FZ−3785、Y−7499、信越化学社のKF96L、KF96、KF96H、KF99、KF54、KF965、KF968、KF56、KF995、KF351、KF351A、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、FL100等がある。
本発明に用いられるシリコーン界面活性剤は、シリコーンオイルのメチル基の一部を親水性基に置換した界面活性剤である。置換の位置は、シリコーンオイルの側鎖、両末端、片末端、両末端側鎖等がある。親水性基としては、ポリエーテル、ポリグリセリン、ピロリドン、ベタイン、硫酸塩、リン酸塩、4級塩等がある。
シリコーン界面活性剤としては、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤が好ましい。
非イオン界面活性剤は、水溶液中でイオンに解離する基を有しない界面活性剤を総称していうが、疎水基のほか親水性基として多価アルコール類の水酸基、また、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン)等を親水基として有するものである。親水性はアルコール性水酸基の数が多くなるに従って、またポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖)が長くなるに従って強くなる。本発明に係わる非イオン界面活性剤は疎水基としてジメチルポリシロキサンを有することに特徴がある。
疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤を用いると、低屈折率層のムラや膜表面の防汚性が向上する。ポリメチルシロキサンからなる疎水基が表面に配向し汚れにくい膜表面を形成するものと考えられる。他の界面活性剤を用いることでは得られない効果である。
これらの非イオン活性剤の具体例としては、例えば日本ユニカー株式会社製、シリコーン界面活性剤 SILWET L−77、L−720、L−7001、L−7002、L−7604、Y−7006、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2105、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2120、FZ−2122、FZ−2123、FZ−2130、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164、FZ−2166、FZ−2191等が挙げられる。
また、SUPERSILWET SS−2801、SS−2802、SS−2803、SS−2804、SS−2805等が挙げられる。
また、これら、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン系の界面活性剤の好ましい構造としては、ジメチルポリシロキサン構造部分とポリオキシアルキレン鎖が交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマーであることが好ましい。主鎖骨格の鎖長が長く、直鎖状の構造であることから、優れている。親水基と疎水基が交互に繰り返したブロックコポリマーであることにより、シリカ微粒子の表面を1つの活性剤分子が、複数の箇所で、これを覆うように吸着することができるためと考えられる。
これらの具体例としては、例えば日本ユニカー株式会社製、シリコーン界面活性剤 ABN SILWET FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208、FZ−2222等が挙げられる。
これらのシリコーンオイルまたはシリコーン界面活性剤の中では、ポリエーテル基を有するものが好ましい。
また、ビックケミージャパン社製の界面活性剤BYKシリーズ、BYK−300/302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−340、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−352、BYK−354、BYK−355/356、BYK−358N/361N、BYK−357、BYK−390、BYK−392、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570、BYK−Silclean3700、GE東芝シリコーン社製のジメチルシリコーンシリーズ、XC96−723、YF3800、XF3905、YF3057、YF3807、YF3802、YF3897を好ましく用いることができる。
他の界面活性剤も併用して用いてもよく、適宜、例えばスルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、リン酸エステル塩系等のアニオン界面活性剤、また、ポリオキシエチレン鎖親水基として有するエーテル型、エーテルエステル型等の非イオン界面活性剤等を併用してもよい。
本発明では、これらのシリコーンオイルまたはシリコーン界面活性剤を、低屈折率層及び低屈折率層に隣接する層、具体的には高屈折率層の成分として用いることが好ましい。低屈折率層が反射防止フィルムの最表面層である場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。低屈折率層用塗布液中の含有量はクラック耐性効果及び塗布ムラの点から0.05〜2.0質量%であることが好ましい。
(酸)
本発明では、低屈折率層用塗布組成物への酸の添加により、中空微粒子の内部からアンモニア等のアルカリ成分が溶出して、塗布液調製後塗布までの間に低屈折率層用塗布組成物の粘度が増加することを防止するもできる。
添加する酸は公知の無機酸や有機酸が挙げられるが、本発明においては有機酸が好ましい。有機酸としては酢酸、蟻酸、プロピオン酸等が挙げられ、このうちでは酢酸が好ましい。有機酸の添加量は、中空微粒子の内部からアンモニア等のアルカリ成分に対応する量であり、中空微粒子分散液中の固形分に対し、酸、例えば酢酸を5〜100質量%添加する。中空微粒子分散液の濃度によるが、通常、中空微粒子分散液の0.5〜30.0質量%の範囲で酸を添加することが好ましい。
本発明の防眩性反射防止フィルムは、防眩層と、低屈折率層との間に、高屈折率層が介在させられていることを特徴としている。
ここで、高屈折率層について説明する。
〔高屈折率層〕
(高屈折率層の金属酸化物微粒子)
高屈折率層には金属酸化物微粒子を含有することが好ましい。金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Ta等の微量の原子をドープしてあってもよい。また、これらの混合物でもよい。本発明においては、中でも酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが好ましく、特に好ましくはアンチモン酸亜鉛である。
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球状、立方体状、紡錘形状、針状あるいは不定形状であることが好ましい。
高屈折率層の屈折率は、具体的には、支持体である透明フィルム基材の屈折率より高く、23℃、波長550nm測定で、1.50〜1.90の範囲であることが好ましい。高屈折率層の屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子の種類、添加量が支配的であるため、金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましい。
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑えることもできる。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
金属酸化物微粒子を含有する高屈折率層の厚さは5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。
使用する金属酸化物微粒子と、後述の活性エネルギー線硬化型樹脂等のバインダーとの比は、金属酸化物微粒子の種類、粒子サイズ等により異なるが体積比で前者1に対して後者2から前者2に対して後者1程度が好ましい。
本発明において用いられる金属酸化物微粒子の使用量は高屈折率層中に5〜85質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましく、20〜75質量%がさらに好ましい。使用量が少ないと所望の屈折率や本発明の効果が得られず、多すぎると膜強度の劣化等が発生する。
上記金属酸化物微粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、ケトンアルコール(例、ジアセトンアルコール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
また金属酸化物微粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することができる。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
本発明では、さらにコア/シェル構造を有する金属酸化物微粒子を含有させてもよい。シェルはコアの周りに1層形成させてもよいし、耐光性をさらに向上させるために複数層形成させてもよい。コアは、シェルにより完全に被覆されていることが好ましい。
コアは酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型等)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ等を用いることができる。
シェルは酸化チタン以外の無機化合物を主成分とし、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。例えば二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化鉄、硫化亜鉛等を主成分とした無機化合物が用いられる。この内アルミナ、シリカ、ジルコニア(酸化ジルコニウム)であることが好ましい。また、これらの混合物でもよい。
コアに対するシェルの被覆量は、平均の被覆量で2〜50質量%である。好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは4〜25質量%である。シェルの被覆量が多いと微粒子の屈折率が低下し、被覆量が少な過ぎると耐光性が劣化する。二種以上の無機微粒子を併用してもよい。
コアとなる酸化チタンは、液相法または気相法で作製されたものを使用できる。また、シェルをコアの周りに形成させる手法としては、例えば米国特許第3,410,708号公報、特公昭58−47061号公報、米国特許第2,885,366号公報、同第3,437,502号公報、英国特許第1,134,249号公報、米国特許第3,383,231号公報、英国特許第2,629,953号公報、同第1,365,999号公報に記載されている方法等を用いることができる。
(活性エネルギー線硬化型樹脂)
活性エネルギー線硬化型樹脂は金属酸化物微粒子のバインダーとして塗膜の成膜性や物理的特性の向上のために添加される。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、前述や以下に記載の紫外線や電子線のような電離放射線の照射により直接、または光重合開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じる官能基を2個以上有するモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。官能基としては(メタ)アクリロイルオキシ基等のような不飽和二重結合を有する基、エポキシ基、シラノール基等が挙げられる。中でも不飽和二重結合を2個以上有するラジカル重合性のモノマーやオリゴマーを好ましく用いることができる。必要に応じて光重合開始剤を組み合わせてもよい。このような活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば多官能アクリレート化合物等が挙げられ、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。ここで、多官能アクリレート化合物とは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
多官能アクリレート化合物のモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、イソボルニルアクリレートが好ましく挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
活性エネルギー線硬化型樹脂の添加量は、高屈折率組成物では固形分中の15質量%以上50質量%未満であることが好ましい。
活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化促進のために、光重合開始剤と分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物とを質量比で3:7〜1:9含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
(溶媒)
高屈折率層をコーティングする際に用いられる有機溶媒としては、例えばアルコール類(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えばホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えばジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えばスルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられるが、特に、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類が好ましい。
本発明による防眩性反射防止フィルムは、セルロースエステルフィルムなどの透明フィルム基材の防眩層と、低屈折率層との間に、高屈折率層および/または中屈折率層の他に、帯電防止層等の種々の機能層を設けることができる。
〔バックコート層〕
本発明では、セルロースエステルフィルムなどの透明フィルム基材の防眩層を設けた側と反対側の面にはバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、活性エネルギー線硬化樹脂層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。すなわち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。なお、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層用塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものがヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
これらの微粒子は、例えばアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えばアエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられる防眩フィルムは、活性エネルギー線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層は、具体的にはセルロースエステルフィルムを溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他さらに溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合いや樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えばジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム等がある。溶解させない溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノールまたは炭化水素類(トルエン、キシレン)等がある。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.2〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えばアクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン株式会社製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン株式会社製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマー等が市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することもできる。
特に好ましくはジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートのようなセルロース系樹脂層である。
バックコート層を塗設する順番はセルロースエステルフィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。または2回以上に分けてバックコート層を塗布することもできる。
〔透明フィルム基材〕
つぎに、本発明で用いることのできる透明フィルム基材について説明する。
本発明に用いられる透明フィルム基材としては、製造が容易であること、活性線硬化型樹脂層との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。
また、本発明の透明フィルム基材は、平面性の点から特に1.4〜4mのものが好ましい。
本発明でいう透明とは、可視光の透過率60%以上であることを指し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有していれば、特に限定はないが、例えばセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン社製))、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはガラス板等を挙げることができる。中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)が好ましく、本発明においては、特にセルロースエステルフィルム(例えばコニカミノルタタック、製品名KC8UX2MW、KC4UX2MW、KC8UY、KC4UY、KC5UN、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4UEW、KC4FR−1、KC4FR−2(コニカミノルタオプト株式会社製))が、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の観点から好ましく用いられる。これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
(セルロースエステル)
本発明においては、透明フィルム基材としてはセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましく用いられる。
特にアセチル基の置換度をX、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有するものが好ましい。
2.3≦X+Y≦3.0 0.1≦Y≦2.0
特に、2.4≦X+Y≦2.9 0.3≦Y≦1.5であることが好ましい。
本発明に用いられる透明フィルム基材として、セルロースエステルを用いる場合、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
アシル化剤が、酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法等を参考にして合成することができる。また、本発明に用いられるセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えばセルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
本発明に用いられるセルロースエステルの置換度として、2位、3位、6位が平均的にアシル基で置換されていてもよく、もしくは6位に多くもしくは少なく置換されているセルロースエステルも好ましく用いられる。好ましい6位の置換度は0.7〜0.97、さらに、好ましくは0.8〜0.97である。
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。なお、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。
プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネートは耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
セルロースエステルの数平均分子量は、70000〜250000が、成型した場合の機械的強度が強く、かつ、適度なドープ粘度となり好ましく、さらに好ましくは、80000〜150000である。
これらセルロースエステルフィルムは、一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造されることが好ましい。
(有機溶媒)
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)として挙げられる。
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライドあるいは酢酸メチルが好ましく用いられる。
上記有機溶媒の他に、0.1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%でアルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70〜95質量%に対してエタノール5〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることもできる。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
もしくはメチレンクロライドと酢酸メチルを併用することもでき、例えば10.1〜3の質量比で併用することができる。ここに、さらに前述のアルコールを含有させることが好ましい。
(可塑剤)
本発明の防眩フィルムにセルロースエステルフィルムを用いる場合、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えばリン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。その他のカルボン酸エステルの例には、トリメチロールプロパントリベンゾエート、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることができる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
(紫外線吸収剤)
本発明の防眩フィルムには、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば下記の紫外線吸収剤を具体例として挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
また、特開2001−187825号公報に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、長尺フィルムの面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
また、特開平6−148430号公報に記載の一般式(1)または一般式(2)、特願2000−156039号公報の一般式(2)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学株式会社製)等が市販されている。
(微粒子)
また、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには滑り性を付与するため、以下の微粒子を用いることができる。
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmが好ましく、さらに好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えばアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えばアエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
また、ポリマー微粒子も用いることができ、その例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。これらの中ではシリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため、特に好ましく用いられる。本発明で用いられるセルロースエステルフィルムにおいては活性エネルギー線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が1.0以下であることが好ましい。
(セルロースエステルフィルムの製造方法)
本発明のセルロースエステルフィルムは溶液流延製膜法により製造されたものであっても、溶融流延製膜法によって製造されたものであっても、好ましく用いることができる。
以下、溶液流延製膜法を例にとり、セルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
セルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
上記のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤または膨潤させた後、さらに良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃がさらに好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
また、冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
つぎに、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、さらに好ましくは50個/m以下であり、さらに好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
つぎに、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい金属支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃がさらに好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で金属支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明の防眩性フィルム用のセルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向に延伸し、さらにウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが特に好ましい。縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.05〜1.5倍であり、さらに好ましくは1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍がさらに好ましい。縦方向及び横方向延伸により面積が1.1〜2倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることができる。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力及びその後の搬送張力によって延伸することが好ましい。例えば剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は30〜150℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性をよくするためさらに好ましい。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。特に10〜70μmの薄膜フィルムでは平面性と硬度に優れた反射防止フィルムを得ることが困難であったが、本発明によれば、平面性と硬度に優れた薄膜の反射防止フィルムが得られ、また生産性にも優れているため、セルロースエステルフィルムの膜厚は10〜70μmであることが特に好ましい。さらに好ましくは20〜60μmである。最も好ましくは30〜60μmである。また、共流延法によって多層構成としたセルロースエステルフィルムも好ましく用いることができる。セルロースエステルが多層構成の場合でも紫外線吸収剤と可塑剤を含有する層を有しており、それがコア層、スキン層、もしくはその両方であってもよい。
透明フィルム基材の表面に算術平均粗さ(Ra)が50〜1000nm未満の凹凸形状を形成する方法として、例えば透明フィルム基材上に型押しによって形成することが好ましい。
(防眩性反射防止フィルムの構成)
防眩性フィルムに積層して構成される防眩性反射防止フィルムの好ましい積層構成を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
透明フィルム基材/防眩層/低屈折率層
透明フィルム基材/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
透明フィルム基材/帯電防止層/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
防眩性反射防止フィルムの最表面の算術平均粗さ(Ra)は40〜500nm未満、好ましくは60〜300nmとすることが好ましい。
防眩性反射防止フィルムの最表面の算術平均粗さ(Ra)は、例えば光学干渉式表面粗さ計:RST/PLUS(WYKO社製)を用いて測定することができる。
防眩性反射防止フィルムの反射率は上記と同様に分光光度計により測定を行うことができる。その際、上記のようにサンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行ってから、可視光領域(400〜700nm)の反射光を測定する。反射率は低いほど好ましいが、可視光領域の波長における平均値が1.2%以下であることが好ましく、最低反射率は1.2%以下が好ましく、さらには1.0%以下であることが好ましい。また、可視光の波長領域において平坦な形状の反射スペクトルを有することが好ましい。
また、反射防止処理を施した際の偏光板表面の反射色相は、短波長域や長波長域の反射率が高くなることから赤や青に色づくことが多いが、反射光の色味は用途によって要望が異なり、FPDテレビ等の最表面に使用する場合にはニュートラルな色調が要望される。この場合、一般に好まれる反射色相範囲は、XYZ表色系(CIE1931表色系)上で、
0.17≦x≦0.27、 0.07≦y≦0.17である。
(最表面処理)
防眩層の表面は、洗浄法、アルカリ処理法、フレームプラズマ処理法、高周波放電プラズマ法、電子ビーム法、イオンビーム法、スパッタリング法、酸処理、コロナ処理法、大気圧プラズマ法等で処理しても良い。
(コロナ処理法)
コロナ処理とは、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行う処理のことであり、春日電機株式会社や株式会社トーヨー電機等で市販されている装置を用いて行うことができる。コロナ放電処理の強度は、電極間距離、単位面積当たりの出力、ジェネレーターの周波数に依存する。コロナ処理装置の一方の電極(A電極)は、市販のものを用いることができるが、材質はアルミニウム、ステンレス等から選択ができる。もう一方はプラスチックフィルムを抱かせるための電極(B電極)であり、コロナ処理が、安定かつ均一に実施されるように、A電極に対して一定の距離に設置されるロール電極である。これも通常市販されているものを用いることができ、材質は、アルミニウム、ステンレス、及びそれらの金属でできたロールに、セラミック、シリコーン、EPTゴム、ハイパロンゴム等がライニングされているロールが好ましく用いられる。本発明に用いられるコロナ処理に用いる周波数は、20〜100kHzの周波数であり、30〜60kHzの周波数が好ましい。周波数が低下するとコロナ処理の均一性が劣化し、コロナ処理のムラが発生する。また、周波数が大きくなると、高出力のコロナ処理を行う場合には、特に問題ないが、低出力のコロナ処理を実施する場合には、安定した処理を行うことが難しくなり、結果として、処理ムラが発生する。コロナ処理の出力は、1〜5w・min./m2であるが、2〜4w・min./m2の出力が好ましい。電極とフィルムとの距離は、5〜50mmであるが、好ましくは、10〜35mmである。間隙が開いてくると、一定の出力を維持するためにより高電圧が必要になり、ムラが発生し易くなる。また、間隙が狭くなりすぎると、印加する電圧が低くなりすぎ、ムラが発生し易くなる。さらにまた、フィルムを搬送して連続処理する際に電極にフィルムが接触し傷が発生する。
(アルカリ処理法)
アルカリ処理法としては、防眩性反射防止層を塗設したフィルムをアルカリ水溶液に浸す方法であれば特に限定されない。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等が使用可能であり、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
アルカリ水溶液のアルカリ濃度、例えば水酸化ナトリウム濃度は0.1〜25質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
アルカリ処理温度は、通常10〜80℃、好ましく20〜60℃である。アルカリ処理時間は、5秒〜5分、好ましくは30秒〜3分である。アルカリ処理後のフィルムは、酸性水で中和した後、十分に水洗いを行うことが好ましい。
(大気圧プラズマ法)
本発明では、大気圧またはその近傍の圧力下で、対向する電極の間に周波数が50kHz〜150MHzの高周波電圧を印加して放電を形成し、該放電により形成された励起ガスを、透明フィルム基材または透明フィルム基材上に防眩性反射防止層を有するフィルムの表面に接触させた後に、反射防止層を塗布により形成することが好ましい。
周波数は50kHz〜27MHzであることが好ましい。対向する電極は、第1電極と第2電極とで構成され、何れか一方の電極に印加する高周波電圧の周波数が50kHz〜150MHzであることが好ましい。また、第1電極に印加する高周波電圧の周波数が1〜200kHzであり、かつ第2電極に印加する高周波電圧の周波数が800kHz〜150MHzであることが好ましい。
大気圧またはその近傍の圧力下で行うプラズマ放電処理を以下、単に大気圧プラズマ法ともいう。
すなわち、透明フィルム基材または透明フィルム基材上に防眩層を有するフィルムを、大気圧またはその近傍の圧力下、第1電極と第2電極とで構成する対向電極間に、第1電極には第1の周波数ω1の電圧成分の高周波電圧を印加し、第2電極には第2の周波数ω2の電圧成分の高周波電圧を印加して放電を形成し、該放電により形成された励起ガスに該透明フィルム基材の表面を接触させた後、その上に反射防止層を形成する。
本発明に適用できる大気圧プラズマ法としては、特開平11−133205号公報、特開2000−185362号公報、特開平11−61406号公報、特開2000−147209号公報、同2000−121804号公報等に開示されている技術を参考にすることができる。
以下に、大気圧プラズマ方法について説明する。
まず最初に、本発明に有用な大気圧プラズマ方法、及びその装置について説明する。
本発明では、大気圧またはその近傍の圧力下で、放電空間(対向電極間)にガスを供給し、該放電空間に高周波電圧を印加し、ガスを励起してプラズマ状態とし、この励起したプラズマ状態のガスに透明フィルム基材、または透明フィルム基材上に防眩性反射防止層を有するフィルムの表面を晒すものである。対向電極間で形成する放電空間に印加する高周波電圧は、一つの周波数の高周波であってもよいし、二つあるいはそれ以上の周波数の高周波であってもよい。
本発明において、大気圧プラズマ処理は、大気圧またはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧またはその近傍の圧力とは20〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93〜104kPaが好ましい。
本発明において、対向電極間(放電空間)に供給するガスは、少なくとも、高周波電圧により励起する励起ガス、または、高周波電圧により励起する励起ガスとそのエネルギーを受け取ってプラズマ状態あるいは励起状態になるガスとを含んでいる。本発明でいう高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものをいう。
一つの周波数の高周波電圧でプラズマ放電処理する場合(1周波数高周波電圧印加方式という場合がある)、または二つの周波数の高周波電圧でプラズマ放電処理する場合(2周波数高周波電圧印加方式という場合がある)の電極は全く同じものが使用でき、装置自体は大きな違いはない。異なる点は、高周波電源が二つ、それに付随するフィルターがあること、さらに対向電極の両方の電極から高周波電圧を印加することである。
本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式の場合には、対向電極の一方はアース電極、もう片方は印加電極であり、印加電極に高周波電源が接続されており、アース電極にはアースが接地されている。
図を使用して、1周波数高周波電圧印加方式及び2周波数高周波電圧印加方式のそれぞれの方式の薄膜形成装置(大気圧プラズマ処理装置)を説明する。
図7は、本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
プラズマ放電容器130の内部にある高周波電圧を印加する印加電極(角筒型電極)136とその下側にある透明フィルム基材Fを巻き回すロール型アース電極135とで対向電極を形成している。印加電極136は何個並べてもよい。ガスGは、プラズマ放電容器10のガス供給口152から供給され、ガスGを均一化するメッシュを通り、印加電極136の間及び印加電極とプラズマ放電容器131の内壁に沿って通り、対向電極の間の放電空間132をガスGで満たす。高周波電源142により印加電極136に高周波電圧を印加し、放電空間132で励起したガスGに透明フィルム基材Fが晒される。印加する高周波電圧の周波数が50kHz以上であることが好ましい。より好ましくは50kHz〜150MHzの範囲である。
50kHz未満では本発明の効果が得られない。また、150MHzを越える周波数は、放電形成が難しくなり複雑な設備が必要になること、また電位分布発生で不均一処理となり大面積化処理に不向きとなること、等から本発明には適さないと考えられる。
励起したガスGに透明フィルム基材Fが晒される間、電極温度調節手段160から配管を経て電極を加熱または冷却する。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
本発明においては、透明フィルム基材Fは、透明フィルム基材、透明フィルム基材上に防眩層が塗布されたフィルム、またはさらにその上に高屈折率層及び/または中屈折率層が塗布されたフィルム等であっても良い。
図8は、本発明に有用な2周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の別の一例を示す概略図である。これは図7と同様にロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との対向電極間(放電空間)132で、透明フィルム基材Fをプラズマ放電処理するものである。
ロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との間の放電空間(対向電極間)132に、ロール電極(第1電極)135には第1電極141から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また角筒型電極群(第2電極)136には第2電源142から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
ロール電極(第1電極)135と第1電源141との間には、第1電源141からの電流がロール電極(第1電極)135に向かって流れるように第1フィルター143が設置されており、該第1フィルターは第1電源141からの電流を通過しにくくし、第2電源142からの電流を通過しやすくするように設計されている。また、角筒型電極群(第2電極)136と第2電源142との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター144が設置されており、第2フィルター144は、第2電源142からの電流を通過しにくくし、第1電源141からの電流を通過しやすくするように設計されている。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過しやすいとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
本発明において、上記のような性質のあるフィルターであれば制限なく使用できる。例えば第1フィルターとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、もしくは数μH程度のコイルを用いることができる。第2フィルターとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサーを介してアース接地することでフィルターとして使用できる。
なお、本発明においては、ロール電極135を第2電極、また角筒型電極群136を第1電極としてもよい。いずれにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。さらに、第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加できる能力を有していればよい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有していればよい。
ガス供給手段150のガス供給装置151で発生させたガスGは、流量を制御して給気口152よりプラズマ放電処理容器131内に導入する。放電空間132及びプラズマ放電処理容器131内をガスGで満たす。
透明フィルム基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール164を経てニップロール165で透明フィルム基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール電極135に接触したまま巻き回しながら角筒型電極群136との間に移送し、ロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)132で放電プラズマを発生させる。透明フィルム基材Fはロール電極135に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスに晒される。透明フィルム基材Fは、ニップロール166、ガイドロール167を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口153より排出する。
プラズマ状態のガスに晒す間は、ロール電極(第1電極)135及び角筒型電極群(第2電極)136を加熱または冷却するために、電極温度調節手段160で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管161を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、165及び166はプラズマ放電処理容器131と外界とを仕切る仕切板である。
本発明において、印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であってもよいし、連続したサイン波であってもよく、印加電圧波形に限定されないが、ハイパワーの高周波電圧を印加、強固な薄膜を形成させるのにサイン波が好ましい。
本発明では、第1電極に印加する高周波電圧の周波数が1〜200kHzであり、かつ第2電極に印加する高周波電圧の周波数が800kHz以上であることが好ましい。
その時の電力密度は1〜50W/cm(ここで、分母のcmは放電が起こっている面積である。)が好ましく、より好ましくは1.2〜30W/cmである。
本発明に有用な高周波電源としては、100kHz*(ハイデン研究所製)、200kHz、800kHz、2MHz、13.56MHz、27MHz及び150MHz(何れもパール工業製)等を挙げることができる。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
本発明においては、このような電圧を印加して、以下に述べる均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
図9は、ロール電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図9において、ロール電極135aは導電性の金属質母材135Aとその上に誘電体135Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて温度調節が行われるようになっている。
図10は、図7と図8に示されている角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図10において、角筒型電極136aは、導電性の金属質母材136Aに対し、図9同様の誘電体136Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
なお、角筒型電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されていおり、該電極の放電面積はロール電極135に対向している全角筒型電極面の面積の和で表される。
図10に示した角筒型電極136aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
図9と図10において、ロール電極135a及び角筒型電極136aは、それぞれ導電性の金属質母材135A及び136Aの上に誘電体135B及び136Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
導電性の金属質母材135A及び136Aとしては、チタンまたはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタンまたはチタン合金が特に好ましい。
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
プラズマ放電処理容器はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えばアルミニウム、またはステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体について、詳細に説明する。
このようなハイパワーの大気圧プラズマ法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、さまざまな金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、さらに好ましくは5×10−6/℃以下、さらに好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、つぎのものが挙げられる。
金属母材 誘電体
(1)純チタンまたはチタン合金 セラミックス溶射被膜
(2)純チタンまたはチタン合金 ガラスライニング
(3)ステンレススティール セラミックス溶射被膜
(4)ステンレススティール ガラスライニング
(5)セラミックス及び鉄の複合材料 セラミックス溶射被膜
(6)セラミックス及び鉄の複合材料 ガラスライニング
(7)セラミックス及びアルミの複合材料 セラミックス溶射皮膜
(8)セラミックス及びアルミの複合材料 ガラスライニング
ここで、線熱膨張係数の差という観点では、上記(1)または(2)及び(5)〜(8)が好ましく、特に(1)が好ましい。
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタンである。本発明において、チタン合金またはチタン中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタンは、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることができ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタンはステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタンの上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
また、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することができる。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることができる。さらに空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることができる。
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜3mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、さらに、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液としてセラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
ここで、ゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射等がある。さらに封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化のない緻密な電極ができる。
誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
本発明においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601:2001で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、さらに好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、さらに熱収縮差や残留応力による歪やひび割れをなくし、かつ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。さらにJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。
なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1〜50W/cm、好ましくは1.2〜30W/cmの電力密度を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え、薄膜を形成させる。
ここで、高周波電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
放電条件は、対向する第1電極と第2電極との放電空間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分を少なくとも有することが好ましい。
高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ω1のサイン波上に、それより高い周波数ω2のサイン波が重畳されたω1のサイン波の波形となる。サイン波の重畳した波形に限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方がサイン波でもう一方がパルス波であってもかまわない。また、さらに第3の電圧成分を有していてもよい。しかし、本発明においては、1周波数高周波電圧印加方式と同様に、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方が、より緻密で良質な膜が得られる。
本発明において、放電開始電圧とは、実際に使用される放電空間(電極の構成等)及び反応条件(ガス条件等)において放電を起こすことのできる最低電圧のことを指す。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種等によって多少変動するが、放電ガス単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
上記で述べたような高周波電圧を対向電極間(放電空間)に印加することによって、放電を起こし、高密度プラズマを発生することができると推定される。
本発明において、高周波電圧を、放電空間に印加する具体的な方法は、対向電極を構成する第1電極に周波数ω1であって電圧V1である第1の高周波電圧を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2であって電圧V2である第2の高周波電圧を印加する第2電源を接続した薄膜形成装置(大気圧プラズマ処理装置)を用いる。
このような二つの高周波電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ω1側によって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の周波数ω2側はプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成するのに必要であるということが重要な点である。
本発明において、第1電源を用いて第1電極からは1〜200kHz程度の高周波電圧を、また第2電源を用いて第2電極からは800kHz〜15MHzの程度の高周波電圧を印加するのが好ましい。この場合、印加する1〜200kHzの高周波電圧により、放電開始電圧の高い放電ガスが励起しプラズマを発生する。
さらに、第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加できる能力を有していることが好ましい。
また、本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V1及び第2の高周波電圧V2を重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
V1≧IV>V2 または V1>IV≧V2 を満たす。 さらに好ましくは、
V1>IV>V2 を満たすことである。
高周波及び放電開始電圧の定義、また、上記高周波電圧を、対向電極間(放電空間)に印加する具体的な方法としては、上述したものと同様である。
ここで、高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
高周波電圧V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、該電極間の電圧を増大させていき、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は、上記高周波電圧測定と同じである。
高い電圧をかけるような放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電圧が高い放電ガスでも、放電ガスを開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持できるのである。
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
放電ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の希ガス、空気、水素、酸素等があり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわないが、窒素ガスを用いることが、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスを用いる場合に比較し、放電ガスの高い経済性を得ることができるため、特に好ましい。
大気圧プラズマ処理装置に設置する高周波電源は、前述のものと同じであるが、第1電源(高周波電源)と第2電源(高周波電源)とに周波数により下記のように分けられる。
第1電源としては、下記のものが挙げられる。
高周波電源記号 メーカー 周波数
A1 神鋼電機 3kHz
A2 神鋼電機 5kHz
A3 春日電機 15kHz
A4 神鋼電機 50kHz
A5 ハイデン研究所 *100kHz
A6 パール工業 200kHz
なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
また、第2電源(高周波電源)としては、下記のものが挙げられる。
高周波電源記号 メーカー 周波数
B1 パール工業 800kHz
B2 パール工業 2MHz
B3 パール工業 13.56MHz
B4 パール工業 27MHz
B5 パール工業 150MHz
上記の対向電極の少なくとも一方の電極が、対向電極間に放電ガスを供給するガス供給手段を備えることが好ましい。さらに、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
また、図7、図8の電極には金属母材及び誘電体が示されていないが、図9及び図10と同様に、電極の金属母材に同様な誘電体が被覆されていることはいうまでもない。
対向電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、連続したサイン波であることが好ましい。
本発明において、電極間の距離は、電極の金属母材に設置した誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ等を考慮して決定される。上記電極の一方に誘電体を設置した場合の誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設置した場合の誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5〜20mmが好ましく、より好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm、特に好ましくは1mm±0.5mmである。
高屈折率層、低屈折率層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、インクジェット法やエクストルージョンコート法を用いて、塗布により形成できる。
また、上記塗布を行う際、透明フィルム基材の幅が1.4〜4mでロール状に巻き取られた状態から繰り出して、乾燥・硬化処理した後、ロール状に巻き取られることが好ましい。
さらに、高屈折率層、低屈折率層を積層した防眩性反射防止フィルムは、塗布後、ロール状に巻き取った状態で50〜160℃で加熱処理を行う製造方法によって製造することが好ましい。加熱処理の期間は、設定される温度によって適宜決定すればよく、例えば50℃であれば、好ましくは3日間以上、30日未満の期間、160℃であれば、10分以上、1日以下の範囲が好ましい。通常は、巻外部、巻中央部、巻き芯部の加熱処理効果が偏らないように、比較的低温に設定することが好ましく、50〜60℃付近で7日間程度行うことが好ましい。
加熱処理を安定して行うためには、温湿度が調整可能な場所で行うことが必要であり、塵のないクリーンルーム等の加熱処理室で行うことが好ましい。
防眩性反射防止フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、特に限定されないが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度に耐える耐熱性プラスチックが好ましく、例えばフェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。またガラス繊維等の充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることがさらに好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましい。
このようにして長巻の防眩性反射防止フィルムを、巻き取った状態で加熱処理を行うとき、該ロールを回転させることが好ましく、回転は、1分間に1回転以下の速度が好まく、連続でも良く断続的な回転であってもよい。また、加熱期間中に該ロールの巻き替えを1回以上行うことが好ましい。
コアに巻き取られた長巻の防眩性反射防止フィルムを加熱処理中に回転させるため加熱処理室に専用の回転台を設けることが好ましい。
回転は、断続の場合は停止している時間を10時間以内とすることが好ましく、停止位置は、円周方向に均一となるようにすることが好ましく、停止時間は10分以内とすることがより好ましい。最も好ましくは、連続回転である。
連続回転での回転速度は、1回転に要する時間は好ましくは10時間以下とすることであり、早いと装置的に負担となるため実質的には、15分から2時間の範囲が好ましい。
なお、回転機能を有する専用の台車の場合には、移動や保管中にも光学フィルムロールを回転させることができて好ましく、この場合、保管期間が長い場合に生じるブラックバンド対策として回転が有効に機能する。
〔偏光板〕
本発明の防眩性フィルム及び防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板について述べる。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の防眩性フィルム及び防眩性反射防止フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した該フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも該反射防止フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明の防眩性フィルム及び防眩性反射防止フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内方向リタデーション(Ro)が590nmで、20〜70nm、厚み方向リタデーション(Rt)が100〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)であることが好ましい。これらは、例えば特開2002−71957号公報、特願2002−155395号公報記載の方法で作製することができる。また、さらにディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば特開2003−98348号記載の方法で、光学異方性層を形成することができる。あるいは面内方向リタデーション(Ro)が590nmで0〜5nm、厚み方向リタデーション(Rt)が−20〜+20nmの無配向フィルムも好ましく用いられ、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2(コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本発明の反射防止フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
〔画像表示装置〕
本発明の防眩性フィルム及び防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板を画像表示装置の鑑賞面側に組み込むことによって、種々の視認性に優れた画像表示装置を作製することができる。本発明の防眩性フィルムは反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上の大画面の画像表示装置では、色ムラや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(樹脂の作製)
(合成例1)
水酸基を有するアクリル樹脂溶液1の調製
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)を429gし込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにメタクリル酸メチル(MMA)173.0g、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)47.0g、アクリル酸(AA)23.0g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.0gからなる、モノマー及び重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。
滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0g及びPFG12.0gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌してさらに反応を継続し、不揮発分40.0%、重量平均分子量14000の樹脂溶液1を得た。得られた樹脂は、水酸基価180、酸価40であり、これは本発明において第1樹脂として使用できる。
(合成例2)
エポキシ基含有アクリル樹脂溶液2の調製
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を457.6gし込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにメタクリル酸メチル(MMA)32.0g、スチレン(ST)72.0g、グリシジルメタクリレート(GMA)216.0g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.4gからなる、モノマー及び重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。
滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0g及びPFG7.4gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌してさらに反応を継続し、不揮発分40.0%、重量平均分子量16600の樹脂溶液2を得た。得られた樹脂は、エポキシ当量211であり、これは本発明において第2樹脂として使用できる。
(合成例3)
カルボキシル基含有アクリル樹脂溶液3の調製
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を433gし込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにスチレン(ST)155.9g、n−ブチルアクリレート(NBA)52.4g、アクリル酸91.7g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート9.0gからなる、モノマー及び重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.5g及びPFG6.9gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌してさらに反応を継続し、不揮発分40.0%、重量平均分子量10000の樹脂溶液3を得た。得られた樹脂は、酸価238であり、これは本発明において第1樹脂として使用できる。
(合成例4)
水酸基を有するアクリル樹脂溶液4の調製
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)を433gし込み、攪拌下で120℃に昇温した。これにn−ブチルメタクリル酸メチル(NBMA)201.9g、エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)54.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)41.8g、メタアクリル酸(MAA)2.3g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.0gからなる、モノマー及び重合開始剤を含む溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。滴下終了後30分120℃で攪拌下保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.5g及びPFG6.9gからなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後120℃で2時間攪拌してさらに反応を継続し、不揮発分40%、重量平均分子量14000の樹脂溶液4を得た。得られた樹脂は、水酸基価60、酸価5であり、これは本発明において第1樹脂として使用できる。
(表面張力の測定法)
表面張力及び表面張力の差:Δγの測定
上記合成例で調製した樹脂の表面張力を以下の方法で測定した。また表面張力差:Δγ、は以下の計算で求めた。
Δγ=第1樹脂のγ(PFG)−第2樹脂のγ(PFG)
測定方法A
プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒中に、樹脂固形分40重量%となるように各樹脂を溶解させて、表面張力測定用溶液を調製した。この溶液の表面張力を、ビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターを使用して、20℃で測定した。一方、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒の表面張力を同条件で測定したところ29.0dyne/cmであった。各樹脂についての上記測定値からプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒の表面張力値を減じた数値を、PFG溶媒を基準とした樹脂成分の表面張力概算値であるγ(PFG)とした。
測定方法B
ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)溶媒中に、樹脂固形分40重量%となるように各樹脂を溶解させて、表面張力測定用溶液を調製した。この溶液の表面張力を、ビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターを使用して、20℃で測定した。一方、同条件で溶媒の表面張力を測定したところ、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)溶媒の表面張力は32.0dyne/cmであり、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒の表面張力は29.0dyne/cmであった。各樹脂についての上記測定値からジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)溶媒の表面張力値(32.0dyne/cm)を減じ、次いでDMDG溶媒の表面張力とPFG溶媒の表面張力との差(3.0dyne/cm)を減じることにより、PFG溶媒を基準とした樹脂成分の表面張力概算値であるγ(PFG)を算出した。
上記2種の測定方法を、測定対象としている樹脂の合成時に用いた溶媒と同一の溶媒を用いる測定方法により表面張力を測定した。また、メラミン樹脂については以下の測定方法Cで表面張力を測定した。
測定方法C
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶媒中に、樹脂固形分40重量%となるように各樹脂を溶解させて、表面張力測定用溶液を調製した。この溶液の表面張力を、ビック・マリンクロット・インターナショナル社製、ダイノメーターを使用して、20℃で測定した。一方、同条件で溶媒の表面張力を測定したところ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶媒の表面張力は31.0dyne/cmであり、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)溶媒の表面張力は29.0dyne/cmであった。各樹脂についての上記測定値からプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶媒の表面張力値を減じ、ついでPGMAC溶媒の表面張力とPFG溶媒の表面張力との差(2.0dyne/cm)を減じることにより、PFG溶媒を基準とした樹脂成分の表面張力概算値であるγ(PFG)を算出した。
(防眩層用塗布組成物の調製)
合成例2のエポキシ基含有アクリル樹脂溶液2(第2樹脂)23.0部、及び合成例3のカルボキシル基含有アクリル樹脂溶液3(第1樹脂)15.0部を、溶媒であるメチルエチルケトン31.0部、酢酸メチル31.0部に加えて混合し、SF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合した。
つぎに、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4〜5μm、日本触媒製)5.0部を加えてた後、循環式超音波分散機で10分間分散して、防眩層塗布組成物を調製した。
また、合成例2のエポキシ基含有アクリル樹脂溶液2(第2樹脂)及び合成例3のカルボキシル基含有アクリル樹脂溶液3(第1樹脂)の表面張力をそれぞれ上記測定方法Bで測定し、表面張力の差:Δγを上記の計算で求めた。
表面張力の測定値、及び差:Δγ
第1樹脂の表面張力の測定値(測定方法B):33.5dyne/cm
第1樹脂の表面張力γ(PFG) :−1.5dyne/cm
第2樹脂の表面張力の測定値(測定方法B):31.5dyne/cm
第2樹脂の表面張力γ(PFG) :−3.5dyne/cm
表面張力の差:Δγは、2.0dyne/cm
〈透明フィルム基材の作製〉
下記のようにして、透明なセルローストリアセテートフィルム(膜厚80μm)の透明フィルム基材1を作製した。
(ドープ組成物)
セルローストリアセテート(平均酢化度61.0%) 100質量部
トリフェニルフォスフェート 8質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
上記の材料を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解してドープ組成物を得た。
つぎに、このドープ組成物を濾過し、冷却して33℃に保ち、ステンレスバンドよりなる支持体上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンドから剥離し、テンターで幅方向に1.1倍に延伸した後、多数のロールで搬送させながら乾燥させ、両端部に高さ10μmのナーリングを設けて巻き取り、膜厚80μm、幅1.5m、長さ3000mの透明フィルム基材1(セルローストリアセテートフィルム)を得た。
また、膜厚を40μmにした以外は、上記の場合と同様にして、膜厚40μm、幅1.5m、長さ5000mの透明フィルム基材2(セルローストリアセテートフィルム)を作製した。
(防眩性フィルムの作製)
〈防眩層の形成〉
上記のようにして作製した透明フィルム基材1に、上記調整した防眩層用塗布組成物をダイコートし、80℃で乾燥した後、0.15J/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化後の膜厚が8.0μmになるように防眩層を設けた。
〈バックコート層の形成〉
上記防眩層を塗設した面の反対側に、下記バックコート層用塗布液をウェット膜厚14μmとなるようにダイコートし、85℃にて乾燥し巻き取り、バックコート層を設け、実施例1の防眩性フィルムを作製した。
(バックコート層用塗布組成物)
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
ジアセチルセルロース 0.6質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液 0.2質量部
(日本アエロジル株式会社製アエロジル200V)
実施例2〜10、及び比較例1と2
(実施例2〜10、及び比較例1と2の防眩層用塗布組成物の調製)
上記実施例1の防眩層用塗布組成物のポリメチルメタクリレート微粒子を、表1に記載した化合物及び添加量に変更した以外は同様にして、実施例2〜10、及び比較例1と2の防眩層用塗布組成物を調整した。
なお、実施例2〜10及び比較例1と2において、微粒子としては、以下のものを使用した。
・ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径8μm、積水化成品工業製)
・ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4〜5μm、日本触媒製)
・ポリスチレン微粒子(平均粒径6μm、積水化成品工業製)
・メラミンポリマー微粒子(平均粒径2.5〜4μm、日本触媒製)
・親水性シリカ微粒子(平均粒径1.8μm、富士シリシア化学製)
・フッ化ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径3.5μm、根上工業製)
・疎水性シリカ微粒子(1次平均粒径90nm)、日本アエロジル製
・ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物(平均粒径3.5μm、日本触媒製)
実施例11
(実施例11の防眩層用塗布組成物の調製)
メチルブチル化メラミン樹脂(分子量700、第2樹脂)10.8部、および合成例1の水酸基を有するアクリル樹脂溶液(第1樹脂)22.5部を、溶媒であるメチルエチルケトン31.0部、酢酸メチル31.0部に加えて混合し、ついで、SF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合した。つぎに、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4〜5μm、日本触媒製)5.0部を加えた後、循環式超音波分散機で10分間分散して、実施例11の防眩層用塗布組成物を調製した。
なお、メチルブチル化メラミン樹脂(第2樹脂)の表面張力を上記測定方法Cで測定した。また合成例1の水酸基を有するアクリル樹脂溶液(第1樹脂)の表面張力を上記測定方法Aで測定し、△γを上記計算で求めた。
表面張力の測定値、及び差:Δγ
第1樹脂の表面張力の測定値(測定方法A):30.4dyne/cm
第1樹脂のγ(PFG) : 1.4dyne/cm
第2樹脂の表面張力の測定値(測定方法C):32.2dyne/cm
第2樹脂のγ(PFG) :−0.8dyne/cm
差:△γは、2.2dyne/cm
実施例12
(実施例12の防眩層用塗布組成物の調製)
メチルブチル化メラミン樹脂(分子量700、第2樹脂)10.8部、および合成例1の水酸基を有するアクリル樹脂溶液(第1樹脂)22.5部を、溶媒であるメチルエチルケトン31.0部、酢酸メチル31.0部に加えて混合し、ついで、SF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合した。つぎに、ポリスチレン微粒子(平均粒径6μm、積水化成品工業製)を5.0部加えた後、循環式超音波分散機で10分間分散して、実施例12の防眩層用塗布組成物を調製した。
なお、メチルブチル化メラミン樹脂(第2樹脂)の表面張力は上記測定方法Cで測定した。また合成例1の水酸基を有するアクリル樹脂溶液(第1樹脂)の表面張力を上記測定方法Aで測定し、△γを上記計算で求めた。
表面張力の測定値、及び差:Δγ
第1樹脂の表面張力の測定値(測定方法A):30.4dyne/cm
第1樹脂のγ(PFG) : 1.4dyne/cm
第2樹脂の表面張力の測定値(測定方法C):32.2dyne/cm
第2樹脂のγ(PFG) :−0.8dyne/cm
差:△γは、2.2dyne/cm
比較例3
(比較例3の防眩層用塗布組成物の調製)
メチル化メラミン樹脂(分子量550、第2樹脂)10.8部、および合成例1の水酸基を有するアクリル樹脂溶液1(第1樹脂)22.5部を、溶媒であるメチルエチルケトン31.0部、酢酸メチル31.0部に加えて混合し、ついで、SF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合した。つぎに、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4〜5μm、日本触媒製)5.0部を加えた後、循環式超音波分散機で10分間分散して、実施例11の防眩層用塗布組成物を調製した。
なお、メチル化メラミン樹脂(第2樹脂)の表面張力を上記測定方法Cで測定した。また合成例1の水酸基を有するアクリル樹脂溶液(第1樹脂)の表面張力を上記測定方法Aで測定し、△γを上記計算で求めた。
表面張力の測定値、及び差:Δγ
第1樹脂の表面張力の測定値(測定方法A):30.4dyne/cm
第1樹脂のγ(PFG) : 1.4dyne/cm
第2樹脂の表面張力の測定値(測定方法C):33.0dyne/cm
第2樹脂のγ(PFG) : 0.0dyne/cm
差:△γは、1.4dyne/cm
比較例4
(比較例4の防眩層用塗布組成物の調製)
メチル化メラミン樹脂(分子量550、第2樹脂)10.8部、および合成例1の水酸基を有するアクリル樹脂溶液(第1樹脂)22.5部を、溶媒であるメチルエチルケトン31.0部、酢酸メチル31.0部に加えて混合し、ついで、SF104E(サーフィノール104E、エアープロダクツジャパン株式会社製、添加剤)0.20部も加えて混合した。つぎに、ポリスチレン微粒子(平均粒径6μm、積水化成品工業製)を5.0部加えた後、循環式超音波分散機で10分間分散して、比較例4の防眩層用塗布組成物を調製した。
なお、メチル化メラミン樹脂(分子量550)の表面張力を上記測定方法Cで測定した。また合成例1の水酸基を有するアクリル樹脂溶液(第1樹脂)の表面張力を上記測定方法Aで測定し、△γを上記計算で求めた。
表面張力の測定値、及び差:Δγ
第1樹脂の表面張力の測定値(測定方法A):30.4dyne/cm
第1樹脂のγ(PFG) : 1.4dyne/cm
第2樹脂の表面張力の測定値(測定方法C):33.0dyne/cm
第2樹脂のγ(PFG) : 0.0dyne/cm
差:△γは、1.4dyne/cm
つぎに、上記実施例1の防眩層用塗布組成物を、実施例11と12、及び比較例3と4の防眩層用塗布組成物に変更した以外は、実施例1の場合と同様にして、実施例11と12、及び比較例3と4の防眩性フィルムを作製した。
Figure 2008176116
(評価)
つぎに、上記実施例1〜12及び比較例1〜4の各防眩層用塗布組成物と、実施例1〜12及び比較例1〜4の各防眩性フィルムについて、以下の項目でそれぞれの性能を評価した。
《防眩層用塗布組成物の評価》
経時安定性評価
実施例1〜12及び比較例1〜4の各防眩層用塗布組成物を、遮光性のガラス瓶に入れて、温度−5℃〜50℃のサイクルサーモに6か月間放置した。放置後の防眩層用塗布組成物を、以下の基準で観察した。
◎:沈殿や凝集物等が全く生じない。
○:実用上問題ないレベルであるが、わずかな沈殿や凝集物等が生じる。
△:沈殿や凝集物等が生じる。
×:沈殿や凝集物等が多量に生じる。
《防眩性フィルムの評価》
擦傷性
上記実施例1〜12及び比較例1〜4で作製した防眩性フィルムを、防眩層を表面にして、耐候性試験機(アイスーパーUVテスター、岩崎電気株式会社製)にて、250時間光照射した。ついで、これらの試料について、温度25℃、相対湿度60%の条件で、2時間調湿した後、#0000のスチールウール(SW)に800g/cmの荷重をかけ、10往復したときの1cm幅当たりの傷の本数を測定した。なお、傷の本数は荷重をかけた部分の中で最も傷の本数の多い所で測定する。5本/cm以下が好ましく、1本/cm以下がさらに好ましい。
鉛筆硬度
上記実施例1〜12及び比較例1〜4で作製した防眩性フィルムを、防眩層を表面にして、耐候性試験機(アイスーパーUVテスター、岩崎電気株式会社製)にて、250時間光照射した。ついで、これらの試料について、温度25℃、相対湿度60%の条件で、2時間調湿した後、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、1Kgのおもりを用いて各硬度の鉛筆で引っ掻きを5回繰り返し、傷が1本までの硬度を測定した。数字か高いほど、高硬度を示す。
視認性評価
視認性の指標として、写り込み(防眩性)、鮮鋭性、及び透過写像性を評価した。
〔写り込み(防眩性)、鮮鋭性〕
上記実施例1〜12及び比較例1〜4で作製した防眩性フィルムの各試料をモニター上に基材レス両面テープで貼り付け、30人で画像の写り込み及び鮮鋭性の官能評価を行い、その平均点を求めた。10点が最も良好で、写り込みが少ない、あるいは鮮鋭性が高い。1点が最も劣る。7点以上が許容レベルである。
(透過写像性)
上記実施例1〜12及び比較例1〜4で作製した防眩性フィルムの各試料について、スガ試験機株式会社の写像性測定器ICM−IDPで櫛幅2.5mmにおける透過写像性を測定した。透過写像性は、鮮鋭性と相関するパラメータである。上記の評価結果を表2にまとめて示した。
Figure 2008176116
上記表2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜12で作製したΔγが1.8dyne/cm以上である少なくとも2種の樹脂と、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子とを含む塗布組成物から形成された本発明の防眩性フィルムは、視認性、ハードコート性、及び塗布組成物の安定性のいずれについても優れていることが分かる。
また、本発明の中でも、微粒子がフッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子を含む防眩性フィルムは、特に優れたハードコート性を有していることが分かる。
これに対し、比較例1〜4で作製した防眩性フィルムでは、視認性、ハードコート性、及び塗布組成物の安定性のいずれについても劣るものであることが分かる。
なお、透明フィルム基材1の代わりに、透明フィルム基材2を用いた以外は、上記実施例1〜12の場合と同様にして防眩性フィルムを作製し、各防眩性フィルムについて、上記の場合と同様の評価を実施したところ、透明フィルム基材1を用いて作製した上記実施例1〜12の防眩フィルムの場合と同様の効果を確認することができた。
実施例13
上記実施例8の防眩性フィルムの作製において、防眩層用塗布組成物をダイコートし、40℃で仮乾燥した後、防眩層の表面を突起の付いたロールで型押しした後に、80℃で本乾燥した以外は、同様にして防眩性フィルムを作製した。
実施例14
(ハードコート層用塗布組成物)
下記組成物を混合撹拌し、ハードコート層用塗布組成物を調製した。
アクリルモノマー(KAYARAD DPHA) 35質量部
(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製)
トリメチロールプロパントリアクリレート 13質量部
光重合開始剤 1.9質量部
(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
シリコン化合物(BYK−307ビックケミージャパン社製)0.1質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 25質量部
メチルエチルケトン 25質量部
上記の材料を混合撹拌し、ハードコート層用塗布組成物を調製した。
(ハードコート層の作製)
つぎに、セルローストリアセテートフィルム(膜厚80μm)の透明フィルム基材1の表面に、上記のハードコート層用塗布組成物をスリットダイで塗布し、熱風の温度、風速を徐々に強め最終的に85℃で乾燥し、続いて0.15J/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して、乾燥膜厚で3.0μmのハードコート層を設けた。
さらに、実施例8の防眩層用塗布組成物よりなる凸構造部液を、上記のハードコート層上に、下記インクジェット方式によりインク液滴として、4plで出射し、熱乾燥、0.15J/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化させ、凸構造部を形成し、実施例14の防眩性フィルムを作製した。また、このフィルムの凸構造部高さは、約8μm、凸構造部径は、約35μmであった。
インクジェット出射装置は、ラインヘッド方式〔図4(a)〕を使用し、ノズル径が3.5μmのノズルを256個有するインクジェットヘッドを10基を準備した。インクジェットヘッドとしては、図2に記載の構成のものを使用した。インク供給系は、インク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッド及び配管から構成されており、インク供給タンクからインクジェットヘッド部までは、断熱及び加温(40℃)し、出射温度は40℃、駆動周波数は20kHzで行った。
つぎに、上記に作製した実施例13と実施例14の防眩性フィルムについて、実施例1の場合と同様に評価を行い、得られた結果を下記の表3に示した。
Figure 2008176116
上記表3の結果から明らかなように、本発明の実施例13と実施例14の防眩性フィルムは、実施例8の防眩性フィルムと同等の優れた性能を有していた。
実施例15と16、及び比較例5
〈大気圧プラズマ処理〉
特願2005−351829号の図7に記載の大気圧プラズマ処理装置を用い、本発明の実施例1と8、及び比較例2の防眩性フィルムを、それぞれの防眩層を表面に、大気圧プラズマ処理を行った。電極間隙を0.5mmとして、以下に示す放電ガスを放電空間に供給し、100kHzで放電させて、表面処理を行った。
(放電ガス)
窒素ガス 80.0体積%
酸素ガス 20.0体積%
〈高屈折率層の形成〉
大気圧プラズマ処理された本発明の実施例1と8、及び比較例2の各防眩性フィルムの防眩層表面に、下記高屈折率層塗布液をダイコートした。
(粒子分散液Aの調製)
まず、粒子分散液Aを調製した。すなわち、メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業株式会社製、アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX−Z610M−F2)6.0kgに、イソプロピルアルコール12.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、粒子分散液Aを調製した。
(高屈折率層塗布組成物)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 40質量部
イソプロピルアルコール 25質量部
メチルエチルケトン 25質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.9質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.0質量部
ウレタンアクリレート 0.6質量部
(U−4HA、新中村化学工業社製)
粒子分散液A 20質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.4質量部
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパ ン−1−オン 0.2質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
FZ−2207 0.4質量部
(10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、日本ユニカー社製)
上記の高屈折率層塗布液を調製し、この高屈折率層塗布液をダイコートした後、温度70℃で乾燥し、さらに、0.1J/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して、硬化後の膜厚が110nmとなるように高屈折率層を設けた。高屈折率層の屈折率は1.60であった。
〈低屈折率層の形成〉
本発明の実施例1と8、及び比較例2の防眩性フィルムに高屈折率層を塗布した上に、下記の低屈折率層塗布液をダイコートした。
(テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製)
まず、テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製するために、テトラエトキシシラン230g(商品名:KBE04、信越化学工業社製)とエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて28時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
(中空シリカ微粒子1イソプロピルアルコール分散液の調製)
つぎに、中空シリカ微粒子1イソプロピルアルコール分散液の調製するために、平均粒径5nm、SiO 濃度が20質量%のシリカゾル100gと、純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiOとして0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gと、Alとして1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して、固形分濃度20質量%のSiO・Al核粒子分散液を調製した。〔工程(a)〕
この核粒子分散液500gに、純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO濃度3.5質量%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。〔工程(b)〕
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
ついで、pH3の塩酸水溶液10Lと、純水5Lを加えながら、限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO・Al多孔質粒子の分散液を調製した〔工程 (c)〕。
上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1.750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を、35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO28質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して、第2シリカ被覆層を形成した。
ついで、限外濾過膜を用いて溶媒をイソプロピルアルコールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ微粒子1の分散液を調製した。
この中空シリカ微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は45nm、MOx/SiO(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径及び粒径の変動係数は動的光散乱法により測定した。
(低屈折率層塗布組成物)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 430質量部
イソプロピルアルコール 430質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A(固型分21%換算) 120質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 3.0質量部
(商品名:KBM503、信越化学工業社製)
中空シリカ微粒子1イソプロピルアルコール分散液 40質量部
(平均粒径45nm、粒径変動係数30%)
イソプロピルアルコール分散球状コロイダルシリカ 20質量部
(固形分20%、平均粒径45nm、粒径の変動係数30%、市販品)
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート 3.0質量部
(川研ファインケミカル社製)
FZ−2207 3.0質量部
(10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、日本ユニカー社製)
上記の低屈折率層塗布液をダイコートした各フィルムを、80℃で乾燥した後、0.1J/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して膜厚が92nmになるように低屈折率層を設け、本発明の実施例15と16、及び比較例5の防眩性反射防止フィルムを作製した。
これらのフィルムの低屈折率層の屈折率は1.38であった。屈折率層の屈折率は、分光光度計の分光反射率の測定結果から求めた。分光光度計はU−4000型(日立製作所製)を用いて、試料の測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率の測定を行った。
そして、実施例15と16、及び比較例5の防眩性反射防止フィルムの反射率、及び耐擦性を、以下の方法で評価した。
(反射率)
実施例15と16、及び比較例5の防眩性反射防止フィルムの試料を、裏面反射を防ぐために、黒いアクリル板上に基材レス両面テープで貼り付け、コニカミノルタ社製の分光測色計、CM−3700dで反射率を測定した。
(擦傷性)
実施例15と16、及び比較例5の防眩性反射防止フィルムの試料を、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、#0000のスチールウール(SW)に800g/cmの荷重をかけ、10往復したときの1cm幅当たりの傷の本数を測定した。なお、傷の本数は荷重をかけた部分の中で最も傷の本数の多い所で測定する。5本/cm以下が好ましく、1本/cm以下がさらに好ましい。得られた結果を、下記の表4に示した。
Figure 2008176116
上記表4の結果から明らかなように、実施例1と8の防眩性フィルムに反射防止層を積層して得られた本発明の防眩性反射防止フィルムである実施例15と16は、優れた反射防止性と耐擦性を有していることが分かる。これに対し、比較例5の防眩性フィルムに反射防止層を積層して得られた防眩性反射防止フィルムは、反射防止性と耐擦性が、いずれも劣るものであった。
実施例17〜28、及び比較例6〜9
(偏光膜の作製)
液晶表示パネルの作製のために、まず、偏光膜を作製した。すなわち、厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
(偏光板の作製)
ついで、下記の工程1〜工程5に従って、偏光膜と、実施例1〜12及び比較例1〜4で作製した防眩性フィルムを市販の位相差を有するセルロースエステルフィルム・コニカミノルタタック(コニカミノルタオプト株式会社製)に防眩層が外側になるように貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:50℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、ついで水洗し乾燥して、偏光膜と貼合する側を鹸化した防眩性フィルム、セルロースエステルフィルムを得た。
工程2:偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、この偏光膜の上に工程1で処理したセルロースエステルフィルム、防眩層が外側になるように工程1で処理した防眩性フィルムを、この順で積層して、配置した。
工程4:工程3で配置した偏光膜フィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜フィルムと防眩フィルムを2分間乾燥し、偏光板を作製した。
(液晶表示パネルの作製)
ついで、市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ、MultiSync、LCD1525J:型名、LA−1529HM)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに上記作製した防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板を貼合して、実施例17〜28、及び比較例6〜9の液晶表示パネルを作製し、以下について評価した。
《評価》
〔写り込み(防眩性)〕
上記のようにして得られた実施例17〜28、及び比較例6〜9の液晶パネルを床から80cmの高さの机上に配置し、床から3mの高さの天井部に昼色光直管蛍光灯(FLR40S・D/M−X、松下電器産業株式会社製)40W×2本を1セットとして1.5m間隔で10セット配置した。このとき評価者が液晶パネル表示面正面にいるときに、評価者の頭上より後方に向けて天井部に蛍光灯がくるように配置した。液晶パネルは机に対する垂直方向から25°傾けて蛍光灯が写り込むようにして画面の見易さを下記のようにランク評価した。得られた結果を、下記の表5に示した。
写り込み(防眩性)評価ランク
4:最も近い蛍光灯の写り込みが気にならず、フォントの大きさ8以下の文字もはっきりと読める。
3:近くの蛍光灯の写り込みはやや気になるが、遠くは気にならず、フォントの大きさ8以下の文字もなんとかと読める。
2:遠くの蛍光灯の写り込みも気になり、フォントの大きさ8以下の文字を読むのは困難である。
1:蛍光灯の写り込みがかなり気になり、写り込みの部分はフォントの大きさ8以下の文字を読むことはできない。
(鮮明性)
実施例17〜28、及び比較例6〜9の各液晶パネルに、動画表示をした時の像の鮮明性を目視にて下記基準で評価した。得られた結果を、下記の表5に示した。
鮮明性評価ランク
4:速く動いている像も鮮明に見える。
3:速く動いている像がやや不鮮明に見える時がある。
2:動かない像は鮮明だが動く像は不鮮明である。
1:動く像、動かない像は共に不鮮明である。
(ぎらつき)
上記作製した実施例17〜28、及び比較例6〜9の各液晶パネルに、ルーバーを有する蛍光灯の拡散光を映し、表面のぎらつき感を以下に示す基準に則り、目視評価した。得られた結果を、下記の表5に示した。
ぎらつき評価ランク
4:ぎらつきが全く認められない。
3:ほとんどぎらつきが認められない。
2:わずかにぎらつきが認められる。
1:明らかに、ぎらつきが認められる。
Figure 2008176116
上記表5の結果から明らかなように、本発明の実施例17〜28の液晶パネルによれば、比較例6〜9の液晶パネルに比べて、優れた視認性(防眩性、鮮明性、ぎらつき)を有していることが分かる。
実施例29と30、及び比較例10
(偏光板及び液晶表示パネルの作製)
実施例1〜12及び比較例1〜4で使用した防眩性フィルムを、実施例15、16及び比較例5の防眩性反射防止フィルムに変更した以外は、実施例17〜28、及び比較例6〜9で作製した方法と同様にして、偏光板及び液晶表示パネルを作製し、同様に評価した。結果を表6に示す。
Figure 2008176116
上記表6の結果から明らかなように、本発明の実施例29と30の液晶パネルは、比較例10の液晶パネルに比べて、優れた視認性(防眩性、鮮明性、ぎらつき)を有していることが分かる。
インクジェット方法による凸構造部形成と透明樹脂層によるオーバーコートを示した模式図である。 インクジェット方法に使用できるインクジェットヘッドの一例を示す断面図である。 インクジェットヘッド部、ノズルプレートの一例を示す概略図である。 インクジェット方式の一例を示す模式図である。 凹凸型ローラを用いた凹凸面形成装置の概略図である。 乾燥装置内における凹凸面形成装置の概略図である。 本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。 本発明に有用な2周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。 ロール電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。 角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
符号の説明
10:透明フィルム基材
11:基板
12:圧電素子
13:流路版
13a:インク流路
13b:壁部
14:共通液室構成部材
15:インク供給パイプ
16:ノズルプレート
16a:ノズル
17:駆動用回路プリント板
18:リード部
19:駆動電極
20:溝
21:保護板
22:流体抵抗
23、24:電極
25:上部隔壁
26:ヒータ
27:ヒータ電源
28:伝熱部材
29:活性光線照射部
30:インクジェットヘッド
31:液滴
32:ノズル
35:バックロール
51:ダイ
52:流延用ベルト
53:凹凸型ローラ
53′:凹凸型ローラ
54:バックロール
55:テンター
56:フィルム乾燥装置
57:巻き取りロール
60:静電気除去装置
F:透明フィルム基材
G:放電ガス
G′:励起放電ガス
P:送液ポンプ
135a:ロール電極
135A、136A:金属質母材
135A、136B:誘電体
136a:角筒型電極
130:大気圧プラズマ処理装置
131:大気圧プラズマ処理容器
132:放電空間
135:ロール電極(第1電極)
136:角筒型電極群(第2電極)
140:電界印加手段
141:第1電源
142:第2電源
143:第1フィルター
144:第2フィルター
150:ガス供給手段
151:ガス発生装置
152:給気口
153:排気口
160:電極温度調節手段
161:配管
164、167:ガイドロール
165、166:ニップロール
168、169:仕切板

Claims (12)

  1. 透明フィルム基材上に防眩層を有する防眩性フィルムであって、防眩層は、互いに反応する官能基を有しかつ樹脂の表面張力の差:Δγが、1.8dyne/cm以上、30.0dyne/cm以下である第1樹脂及び第2樹脂と、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子とを含む塗布組成物から形成されていることを特徴とする、防眩性フィルム。
  2. 第1樹脂が、水酸基含有樹脂であり、第2樹脂が、メラミン樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の防眩性フィルム。
  3. 第1樹脂が、カルボキシル基含有樹脂であり、第2樹脂が、エポキシ基含有樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の防眩性フィルム。
  4. 微粒子が、フッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
  5. 透明フィルム基材が、セルロースエステルフィルムであることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
  6. 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムの防眩層上に、内部が多孔質または空洞である中空シリカ微粒子を含有した低屈折率層が積層されていることを特徴とする、防眩性反射防止フィルム。
  7. 防眩層と、低屈折率層との間に、高屈折率層が介在させられていることを特徴とする、請求項6に記載の防眩性反射防止フィルム。
  8. 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムを一方の面に用いることを特徴とする、偏光板。
  9. 請求項6または7に記載の防眩性反射防止フィルムを一方の面に用いることを特徴とする、偏光板。
  10. 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の防眩性フィルムを用いることを特徴とする、表示装置。
  11. 請求項6または7に記載の防眩性反射防止フィルムを用いることを特徴とする、表示装置。
  12. 請求項8または9に記載の偏光板を用いることを特徴とする、表示装置。
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