JP2008167935A - 腹膜透析装置及び制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】腹膜透析装置と腹腔との位置関係によらず、正確に注入した腹膜透析液の量を測定可能な腹膜透析装置を提供する。
【解決手段】本発明は、腹膜透析液を腹腔に注入するためのカセットが装着される腹膜透析装置であって、前記カセットに配置され、内部に含まれる腹膜透析液をヒータによって加温するための加温チューブと、前記加温チューブに腹膜透析液を送液して、前記加温チューブにおいて加温された前記腹膜透析液を、前記カセットに接続されたチューブを通じて腹腔に注入するポンプと、前記腹膜透析液の送液が終了した後に、前記加温チューブ内から流れ出た腹膜透析液の量に基づいて、注入された腹膜透析液の量を測定する流量測定部とを含む。
【選択図】図4
【解決手段】本発明は、腹膜透析液を腹腔に注入するためのカセットが装着される腹膜透析装置であって、前記カセットに配置され、内部に含まれる腹膜透析液をヒータによって加温するための加温チューブと、前記加温チューブに腹膜透析液を送液して、前記加温チューブにおいて加温された前記腹膜透析液を、前記カセットに接続されたチューブを通じて腹腔に注入するポンプと、前記腹膜透析液の送液が終了した後に、前記加温チューブ内から流れ出た腹膜透析液の量に基づいて、注入された腹膜透析液の量を測定する流量測定部とを含む。
【選択図】図4
Description
本発明は、腹膜透析の際に注入した腹膜透析液の量を測定する腹膜透析装置に関する。
腹膜透析装置は、腹膜透析液を腹腔に注入する際に、当該腹膜透析液を加温する。これは、注入する腹膜透析液の温度が低すぎることによって、患者に対して思わぬ副作用を引き起こしてしまうことを防止するために行われる。このため、腹膜透析装置は、流れている腹膜膜透析液が加温される加温流路を有している。加温流路は、腹膜透析液を加温するためのヒータを有しており、適度な温度に加温するため、一定の長さを有する必要がある。
特許文献1は、ダイアフラム、加温部が一体的に形成された使い捨てカセットを用い、流路切替え動作が静かで、加温能力が高い、小型の腹膜透析装置を示している。また、特許文献1に記載の腹膜透析装置では、加温部分がポリエチレン等のソフトな材質で形成されている。
特開2003−000704号公報
腹膜透析において、注入した腹膜透析液の量を正確に測定することは、治療効果を向上させるために重要なことである。しかしながら、上述した従来技術では、加温流路がソフトな材質で構成されているため、腹膜透析を行った際に、腹膜透析装置に対する腹腔の位置によって加温流路内から流れ出す腹膜透析液の量が異なる。加温流路内に腹膜透析液の送液が継続されている場合、加温流路内の腹膜透析液は、新たな腹膜透析液によって押し出されるように流れ出る。しかしながら、送液が終了した時点で、加温流路内に残留している腹膜透析液は、腹腔に腹膜透析液が注入された量だけ、加温流路が変形(収縮)することで流れ出すこととなる。この現象は、加温流路が密閉された状態であり、かつ、ソフトな材質で構成されているため発生する。したがって、腹膜透析装置より腹腔の方が下に位置するほど、重力の関係に基づいて、加温流路内から流れ出す腹膜透析液の量が異なる。このため、腹膜透析装置が送液する腹膜透析液の量と、実際に腹腔に注入される腹膜透析液の量とが一致せず、透析量の正確な測定が困難である。
本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであり、腹膜透析装置と腹腔との位置関係によらず、正確に注入した腹膜透析液の量を測定可能な腹膜透析装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための一の形態に対応する本発明は、腹膜透析液を腹腔に注入するためのカセットが装着される腹膜透析装置であって、前記カセットに配置され、内部に含まれる腹膜透析液をヒータによって加温するための加温チューブと、前記加温チューブに腹膜透析液を送液して、前記加温チューブにおいて加温された前記腹膜透析液を、前記カセットに接続されたチューブを通じて腹腔に注入するポンプと、前記腹膜透析液の送液が終了した後に前記加温チューブ内から流れ出た腹膜透析液の量に基づいて、注入された腹膜透析液の量を測定する流量測定部とを含むことを特徴とする。
本発明は、腹膜透析装置と腹腔との位置関係によらず、正確に注入した腹膜透析液の量を測定可能な腹膜透析装置を提供できる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に記載された発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
本発明の腹膜透析装置は、腹膜透析装置と患者の腹腔との位置関係に影響を受けず、腹腔に注入される腹膜透析液(以下、透析液と称す。)の量を正確に測定する。具体的に、本腹膜透析装置は、透析液の送液が終了した後に加温チューブ内から流れ出た透析液の量を測定する。これにより、本腹膜透析装置は、腹膜透析の際に送液した透析液の量と、腹膜透析を行った後に加温チューブ内から流れ出た透析液の量に基づいて、実際に腹腔に注入された透析液の量を測定する。
以下では、図1乃至図10を参照して、具体的な実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る腹膜透析装置の一例を示す図である。ここでは、本発明に関する部分についてのみ説明を記載する。
腹膜透析装置100には、腹膜透析液を腹腔に注入するためのカセット101が装着される。また、腹膜透析装置100は、カセット装着部106、操作部107a、107b及び表示部108を含む。カセット101は、ポンプであるダイアフラムポンプ102、加温チューブ103、切替部104及び接続チューブ105を含む。接続チューブ105についての詳細は、図2を用いて後述する。
カセット装着部106には、図1に示す矢印110のように、カセット101が装着される。操作部107a、107bは、例えば、ユーザ(患者)が腹膜透析を開始する際の開始指示や、腹膜透析を終了する際の終了指示を入力するために使用される。表示部108は、ユーザ(患者)に情報を報知するものであり、例えば、腹膜透析装置100の動作状態を報知する。ここで、動作状態とは、例えば、腹腔に透析液を注入する注入処理や腹腔から透析液を排液する排液処理の実施中、終了などの状態を示す。
ダイアフラムポンプ102は、ポンプとして機能し、伸縮膨張することにより透析液を送液する。ダイアフラムポンプ102は、フランジ部材により密閉状態で収容され、空気圧で加圧又は減圧される。これにより、ダイアフラムポンプ102は、透析液を送液するために、加圧すると収縮し、減圧すると膨張するように構成されている。加圧及び減圧を行う構成については、図3を用いて後述する。
カセット101の加温部分には、注液処理用の加温チューブ103及び排液処理用のチューブを含み、注液処理用の加温チューブ103内を流れる透析液を加温する。そのため、加温部分には、不図示のヒータと伝熱部材(例えば、アルミ部材)とをさらに有する。また、ヒータは、注液処理用のチューブを挟み込むように上面ヒータ及び下面ヒータを含むことで、効率的に透析液を加温することができる。加温チューブ103内には、例えば、最大で40ml程度の透析液が収容される。
切替部104は、カセット101に張り巡らされたチューブにおいて、透析液の流路を切替える。主に、切替部104は、注液処理用又は排液処理用の流路に切替える。注液処理用の流路とは、例えば、後述する透析液バッグに収容されている透析液を注入する場合、透析液バッグ、ダイアフラムポンプ102、加温チューブ103、カセット101に接続された透析カテーテルの順で通じる流路となる。一方、排液処理用の流路とは、上記透析カテーテル、加温部分の排液処理用のチューブ、ダイアフラムポンプ102、後述する排液処理タンクの順で通じる流路となる。
さらに、本実施形態によれば、切替部104は、加温チューブ103からチューブに腹膜透析液が流れ出る流出口を開口又は遮断する。具体的に、切替部104は、腹膜透析を行う場合に当該流出口を開口し、腹膜透析が終了した後に当該流出口を遮断する。この遮断は、加温チューブ103内に透析液を充填させるために行われる。本実施形態に係る腹膜透析装置100は、腹膜透析が終了した後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量を測定して、実際に腹腔に注入された透析液の量を測定する。このように、流路を開口又は遮断する切替部104は、例えば、クランプによって形成されてもよい。しかしながら、本発明による切替部104は、流路を開口又は遮断するクランプ以外の構成であってもよい。
上述したダイアフラムポンプ102、加温チューブ103、及びカセット101に張り巡らされたチューブの構成材料としては、それぞれ、軟質の樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ−(4−メチルペンテンー1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の各種熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
図2は、本実施形態に係る腹膜透析装置に装着されるカセットを示す図である。ここでは、図1で説明した構成に加えて、接続チューブ105に接続される要素について説明する。したがって、図1と同一の要素については、同一の番号を付し、説明を省略する。
カセット101には、接続チューブ105によって、透析カテーテル201、透析液バッグ203a、203b及び排液処理タンク202が接続される。透析カテーテル201は、カセット101に接続された一方の端部と、腹腔204に接続されるように構成された他方の端部とを有するチューブである。カセット101は、この透析カテーテル201を介して、腹腔204に透析液を注入する注液処理及び腹腔204から透析液を排出する排液処理を行う。透析液バッグ203a、203bは、患者の腹腔204内に注入される透析液を収容する。排液処理タンク202は、患者の腹腔204内から排出される透析液を収容する。
次に、図3を参照して、ダイアフラムポンプ102に加圧及び減圧する構成について説明する。図3は、本実施形態に係るダイアフラムポンプをポンピング作動させるエア回路の一例を示す図である。
エア回路(エア加減圧回路)300は、腹膜透析装置100に配置され、カセット101を腹膜透析装置100に装着したときに、エア回路300の一端がダイアフラムポンプ102のポンプ室314に連通するように構成されている。このポンプ室314には液漏れ検出機能を有するセンサブロック303と大気開放用バルブ304を中継して、切替弁305で切替えられる一対の分岐エア回路306、307が分岐接続されている。分岐エア回路306の他端部には、圧力センサ308を接続した空気圧発生装置301が接続されており、他方の分岐エア回路307には、圧力センサ309を接続した真空圧発生装置(減圧装置)302が接続されている。分岐エア回路306、307の開放端には、真空ポンプ313の吸気側と排気側とサイレンサ312に切替えるバルブ310、311が接続されている。
以上の構成により、切替弁305は、エア回路300と一方の分岐エア回路306とが連通した加圧状態と、エア回路300と他方の分岐エア回路307とが連通した減圧状態との間で切替を行う。これにより、腹膜透析装置100は、ポンプ室314内部を加圧状態又は減圧状態に変化させることでダイアフラムポンプ102による送液を行う。例えば、注液処理を行う場合、エア回路300は、透析液バッグ203aとダイアフラムポンプ102とが切替部104によって連通された状態で、減圧を行う。これにより、ダイアフラムポンプ102には、透析液バッグ203aから透析液が流れ込む。次に、エア回路300は、ダイアフラムポンプ102と加温チューブ103とが切替部104によって連通された状態で、加圧する。これにより、ダイアフラムポンプ102内に蓄積された透析液が流れ出し、送液が行われる。
次に、図4を参照して、腹膜透析装置100の機能ブロックについて説明する。図4は、本実施形態に係る腹膜透析装置における機能ブロックの一例を示す図である。ここでは、腹膜透析装置100の主要な機能ブロックについてのみ説明を記載する。即ち、本発明の腹膜透析装置100は、以下で説明する機能ブロックに限定されず、他の機能ブロックを含んでもよい。
腹膜透析装置100は、CPU401、操作部107a、107b、電源回路403、流量制御部404、記憶部405、流量測定部406、切替制御部408、ヒータ制御部409及びポンピング作動部410を含む。CPU401は、以下で説明する各機能ブロックを統括的に制御する。
操作部107a、107bは、図1に示すように、腹膜透析装置100の外面に配置され、操作者からの入力を受け付けて、CPU401に通知する。例えば、操作部107a、107bは、腹膜透析を開始する際に、操作者によって治療の開始を指示するために使用される。電源回路403は、CPU401へ電力を供給する。流量制御部404は、予め定められた量の透析液をダイアフラムポンプ102によって送液させるように制御する。記憶部405は、腹膜透析を行うために必要となる各パラメータ、例えば、注入する透析液の温度を予め記憶している。切替制御部408は、切替部104を制御することにより、透析液の流路を制御する。ヒータ制御部409は、加温チューブ103に含まれる上面ヒータ411a、下面ヒータ411bを制御する。ポンピング作動部410は、エア回路300によって加圧又は減圧させることにより、ダイアフラムポンプ102を制御して、透析液を送液させる。したがって、流量制御部404は、腹膜透析の際に送液する透析液の量に応じて、ポンピング作動部410にダイアフラムポンプ102の制御を指示することとなる。
本実施形態によれば、流量測定部406は、透析液を送液した後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量に基づいて、実際に腹腔に注入された透析液の量を測定する。このため、流量測定部406は、第1及び第2の測定部として機能する測定部407を含む。測定部407は、透析液の腹腔への注入開始から注入終了までに、ダイアフラムポンプ102から送液された透析液の量を測定する。さらに、測定部407は、透析液の送液が終了した後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量を測定する。したがって、流量測定部406は、測定部407の測定結果から、即ち、送液された新たな透析液の量及び送液後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量に基づいて、実際に注入された透析液の量を測定する。
また、CPU401には、カセット101に配置された温度センサ412及び気泡センサ413からの信号が入力される。温度センサ412は、例えば、上面ヒータ411a、下面ヒータ411b及び透析カテーテル201へ透析液が送液される出口付近に配置される。ここで、透析液の出口付近に設けられる温度センサ412は、応答速度が極めて速いサーモパイル型赤外線センサ(非接触型の温度センサ)を用いることが望ましい。これにより、上面ヒータ411a、下面ヒータ411bの温度を高精度に制御することができる。気泡センサ413は、切替部104における透析液の入り口側及び出口側に配置され、透析液中の気泡を検知する。
次に、図5及び図6を用いて注液処理時における腹膜透析装置100と腹腔204との位置関係による実際に注入される透析液の量の違いについて説明する。図5は、腹膜透析装置が腹腔よりも低い位置に配置された一例を示す図である。図6は、腹膜透析装置が腹腔よりも高い位置に配置された一例を示す図である。
図5では、腹膜透析装置100が腹腔204から長さL1だけ低い位置に配置されている様子を示している。このように、腹膜透析装置100が腹腔204より低い位置に配置された状態で腹膜透析を行うと、腹膜透析装置100の位置が腹腔204の位置と同じ場合或いは高い場合と比較して、実際に腹腔204に注入される透析液の量は少なくなる。これは、図5に示すように、送液後に加温チューブ103内から流れ出る透析液の量が少なくなるため、当該加温チューブ103内に残留する透析液の量が多くなるということを意味する。
加温チューブ103内に透析液の送液が継続されている場合、加温チューブ103内の透析液は、新たな透析液によって押し出されるように流れ出る。しかしながら、送液が終了した時点で、加温チューブ103内に残留している透析液は、腹腔204に透析液が注入された量だけ、加温チューブ103が変形(収縮)することで流れ出すこととなる。この現象は、加温チューブ103及び透析カテーテル201が密閉された状態であり、かつ、ソフトな材質で構成されているため発生する。したがって、腹膜透析装置100より腹腔204の方が下に位置するほど、重力の関係に基づいて、加温チューブ103内から流れ出す透析液の量が異なる。
一方、図6では、腹膜透析装置100が腹腔204から長さL2だけ高い位置に配置されている様子を示している。このように、腹膜透析装置100が腹腔204より高い位置に配置された状態で腹膜透析を行うと、送液された透析液は、腹腔204の位置が下方に位置するため、加温チューブ103内から容易に流れ出ることとなる。したがって、腹膜透析装置100が腹腔204より高い位置に配置される場合は、送液した量と、腹腔204に注入された量とがほぼ一致することとなる。よって、図6に示すように、腹膜透析装置100が腹腔204より高い位置に配置される場合は、腹膜透析が終了した後に、加温チューブ103内から透析液が流れ出しやすいため、当該加温チューブ103内に透析液が残留しづらい。
このように、腹膜透析装置100と、腹腔204との位置関係によって、同じ量の透析液が送液された場合であっても、実際に腹腔204に注入される透析液の量は異なる。しかしながら、治療を安全に行うため、或いは、治療効果を維持するためには、1回の腹膜透析によって実際に腹腔204に注入された透析液の量を正確に測定する必要がある。加温チューブ103内には、例えば、最大で40mlの透析液が収容される。したがって、実際に注入された透析液の量を正確に測定するためには、送液後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量を測定する必要がある。本実施形態による、流量測定部406は、腹膜透析を行った後に、加温チューブ103内から流れ出た透析液の量を測定することによって、実際に腹腔204に注入された透析液の量を正確に測定する。
次に、図7及び図8を用いて、腹膜透析が終了した後に、実際に腹腔204に注入された透析液の量を測定する方法について説明する。ここでは、図6と同様に腹膜透析装置100が腹腔204よりも高い位置に配置された場合を一例として、送液後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量を測定する方法について説明する。しかしながら、本実施形態に係る腹膜透析装置100は、当該腹膜透析装置100と腹腔204との位置関係に左右されず、どのような位置関係であっても以下で説明する方法を用いて、送液後に流れ出た透析液の量を測定することができる。図7は、腹膜透析が行われている様子を示す図である。
腹膜透析装置100は、透析液の注液処理を行っている間、ダイアフラムポンプ102のポンピング動作に応じて、送液した透析液の量を測定する。これは、ボイル・シャルルの法則に従って導出される。詳細については、図9を用いて後述する。ここで、1回の注液処理で送液された透析液の量をVtとする。また、本実施形態に係る腹膜透析装置100は、加温チューブ103内に透析液が充填された状態から注液処理を開始している。したがって、実際に注入されるはずの透析液の量は、加温チューブ103内における容量を量Vtに加算した値となる。しかしながら、実際には、全ての透析液が注入されず、一部の透析液は、加温チューブ103内に残留することとなる。
図8は、腹膜透析が行われた後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量を測定する様子を示す図である。矢印801に示すように、腹膜透析装置100は、まず、切替部104によって、加温チューブ103から透析カテーテル201に透析液が流れ出る流出口を遮断する。次に、図8に示すように、腹膜透析装置100は、加温チューブ103内を透析液で充填させるために、ポンピング作動部410によって透析液を送液させる。ここで、測定部407は、加温チューブ103内を充填させるために送液された透析液の量を測定する。なお、測定された量をΔVとする。この測定された量ΔVは、注液処理が行われる前に、予め加温チューブ103内に充填されていた透析液の量から、送液処理後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量と等しくなる。したがって、本実施形態によれば、実際に腹腔204に注入された透析液の量は、Vt+ΔVで導出されることとなる。
次に、図9を参照して、ダイアフラムポンプ102から送液された透析液の量を測定する方法について説明する。図9は、本実施形態に係るダイアフラムポンプ及びポンプ室の断面図を示す図である。図9は、説明を容易にするため、ダイアフラムポンプ102及びポンプ室314を概念的に図示している。
カセット101を腹膜透析装置100に装着すると、図3で示したように、ポンプ室314に対して、エア回路300が空気圧による加圧及び減圧を行うように構成されている。また、ダイアフラムポンプ102には、透析液903を供給又は送液するためのチューブ901が接続されている。チューブ901内では、矢印904に示すように、供給する場合と送液する場合とで透析液903の流れが変わる。
図9(a)は、ダイアフラムポンプ102内に透析液903が充填された様子を示す。透析液903の充填は、ダイアフラムポンプ102と透析液バッグ203aとが連通した状態で、エア回路300が減圧することで行われる。ダイアフラムポンプ102は、ソフトな材質で形成された膜902を含む。したがって、ダイアフラムポンプ102内に透析液903が充填されると、図9(a)に示すように、膜902が膨張するため、ダイアフラムポンプ102内の体積は増大し、ポンプ室314内の体積はV1となる。透析液903が充填されると、ダイアフラムポンプ102と加温チューブ103とが連通した状態で、エア回路300は、圧力(空気圧)P1を加えることにより、加温チューブ103内に透析液903を送液する。ここで、圧力P1が加えられると、点線906で示すように、ポンプ室314は、密閉された状態となる。
図9(b)は、ダイアフラムポンプ102内に充填された透析液903を送液した後の様子を示す。圧力P1が加えられると、膜902は、透析液903が充填されたダイアフラムポンプ102内の方に押されて、透析液903を矢印905の方向へ送り出す。また、膜902の位置が移動することによって、図9(b)に示すように、ポンプ室314内の体積がV2となる。
ここで、V1<V2という条件式が成り立つ。また、ボイル・シャルルの法則では、PV/Tは常に一定となる。さらに、腹膜透析を行う際のダイアフラムポンプ102付近の温度は、ほぼ一定となる。したがって、絶対温度Tが一定であるとすると、PVが一定(ボイルの法則)となる。即ち、ポンプ室314内の体積がV1からV2に増大すると、圧力P1は、圧力P2に低下することとなる。
この原理を利用して、測定部407は、送液した透析液の量を測定する。具体的に手順を説明すると、測定部407は、送液が実施されている間、加圧した圧力を圧力センサ308、309を用いて測定している。上述したように、圧力P1は、ダイアフラムポンプ102内に透析液903が充填されている状態で、加圧した時点の圧力となる。また、圧力P2は、ダイアフラムポンプ102内の透析液903が全て流れ出た状態の圧力P1から低下した圧力となる。したがって、測定部407は、圧力センサ308、309が圧力P2を検出すると、ダイアフラムポンプ102内の体積に相当する容量の透析液903を送液したと測定する。
また、P1>P3>P2の条件式が成り立つ圧力P3が検出されて、それ以上の圧力の低下が検出されない場合、測定部407は、圧力P3から求まる体積V3により、送液された透析液の量を導出することができる。この圧力P3の状態で送液された透析液の量を測定することは、本発明において、送液処理が終了した後に、加温チューブ103内から流れ出た透析液の量を測定するために必要となる。
送液後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量を測定する場合、上述したように測定部407は、加温チューブ103内を透析液で充填させるために送液された透析液の量を測定する。ここで重要となることは、加温チューブ103内が透析液で充填されたか否かを判定することである。そのため、測定部407は、圧力センサ308、309を用いて、圧力P1の低下を監視する。具体的に、測定部407は、加圧した圧力P1が圧力P2に低下する前に、即ち圧力P3の状態でそれ以上の圧力の低下が検出されない場合に、加温チューブ103内が透析液で充填されたと判定する。これは、加温チューブ103内が透析液で充填されると、ダイアフラムポンプ102からそれ以上の透析液が流れ出さないため、ポンプ室314の体積が一定となり、圧力も一定となるためである。
この圧力P3が検出された状態でダイアフラムポンプ102から送液された透析液の量をXmlとし、さらに、ダイアフラムポンプ102内の最大容量がYmlであると仮定する。また、このポンピング動作がN回目であると仮定する。この場合、測定部407は、加温チューブ103内を充填させるために送液された透析液の量を、(N−1)*Y+Xの式で導出することができる。
本実施形態によれば、例えば、腹膜透析装置100は、圧力P1を第1の所定値、例えば、140mmHg(18.7kPa)とし、圧力P2を第2の所定値、例えば、50mmHg(6.7kPa)として、記憶部405に予め格納している。したがって、測定部407は、格納されている圧力P1及び圧力P2の間で、圧力の変化を監視することとなる。
厳密に言えば、送液後に透析カテーテル201から流れ出た透析液の量も考慮して、実際に腹腔204に注入された透析液の量を測定することが望ましい。この場合、腹腔204と透析カテーテル201との間の所定の位置でチューブを遮断して流れ出た量を測定することとなる。しかしながら、この場合であっても、本発明の測定方法は、使用可能である。
次に、図10を用いて、本実施形態に係る腹膜透析装置が腹膜透析を行った際に、注入された透析液を測定する手順について説明する。図10は、本実施形態に係る注入された透析液の量を測定する手順を示すフローチャートである。以下に記載される手順は、CPU401が統括的に制御を行う。また、ここでは、上述したように、注液処理が開始される前に、予め加温チューブ103内に透析液が充填されていることとする。
腹膜透析が開始されると、ステップS1001において、ポンピング作動部410は、エア回路300を制御して、例えば、透析液バッグ203aに収容された透析液を加温チューブ103に予め定められた量だけ送液する。ここで、加温チューブ103は、上面ヒータ411a及び下面ヒータ411bを制御して、送液されてきた透析液を加温する。また、ポンピング作動部410によって継続して透析液が送液されてくるため、加温チューブ103内では、加温された透析液が新たに送液されてきた透析液に押し出されるようにして、透析カテーテル201へ流出する。さらに、流出した透析液は、透析カテーテル201を介して腹腔204に注入される。
さらに、ステップS1002において、測定部407は、ダイアフラムポンプ102を監視して、送液された透析液の量を測定する。上述したように、この測定は、ボイル・シャルルの法則に従って導出される。なお、この測定は、注液処理が終了するまで行われる。ここで、測定された値は、上述した量Vtとして使用される。
注液処理が終了すると、ステップS1003において、切替制御部408は、切替部104を制御して透析液の流路を切替える。具体的に、切替部104は、加温チューブ103から透析カテーテル201に透析液が流れ出す流出口を遮断する。これは、送液後に加温チューブ103内から流れ出た透析液の量を測定する前処理となる。続いて、ステップS1004において、ポンピング作動部410は、ダイアフラムポンプ102を制御して、再び加温チューブ103内に透析液を送液させる。この処理は、加温チューブ103内が透析液で充填されるまで継続される。
さらに、ステップS1005において、測定部407は、S1002と同様に、S1004でダイアフラムポンプ102によって送液された透析液の量を測定する。ここで、測定された値は、上述した量ΔVとなる。最後に、ステップS1006において、流量測定部406は、Vt+ΔVを求めることで、実際に腹腔204に注入された透析液の量を測定する。
以上、説明したように、本実施形態に係る腹膜透析装置は、透析液を送液した後に、加温チューブから流れ出た腹膜透析液の量に基づいて、実際に腹腔に注入された透析液の量を測定する。したがって、本腹膜透析装置は、当該腹膜透析装置と、腹腔との位置関係によって異なる送液後に加温チューブから流れ出た透析液の量に影響を受けることなく正確に注入された透析液の量を測定することができる。よって、本腹膜透析装置は、より安全な腹膜透析を実行するとともに、注入される透析液の量がばらつくことによる治療効果の低下を抑制しうる。
なお、本発明は、上記実施形態に限らず様々な変形が可能となる。本実施形態に係る腹膜透析装置は、実際に注入された透析液の量を測定するために、注液処理時にポンプから送液された透析液の量と、送液処理後に加温チューブから流れ出た透析液の量とを測定する。これにより、本腹膜透析装置は、注液処理後に加温チューブに残留する透析液に影響を受けることなく、正確に注入された腹膜透析液の量を容易に測定することができる。
また、本実施形態に係る腹膜透析装置は、送液処理後に加温チューブから流れ出た透析液の量を測定するために、加温チューブから透析カテーテルに透析液が流れ出る流出口を遮断して、加温チューブに透析液を充填させる。これにより、本腹膜透析装置は、加温チューブが充填されるまでに送液された透析液を測定することによって、送液後に加温チューブから流れ出た透析液の量を正確に測定することができる。
100:腹膜透析装置
101:カセット
102:ダイアフラムポンプ
103:加温チューブ
104:切替部
107a、b:操作部
401:CPU
403:電源回路
404:流量制御部
405:記憶部
406:流量測定部
407:測定部
408:切替制御部
409:ヒータ制御部
410:ポンピング作動部
411a:上面ヒータ
411b:下面ヒータ
412:温度センサ
412:気泡センサ
101:カセット
102:ダイアフラムポンプ
103:加温チューブ
104:切替部
107a、b:操作部
401:CPU
403:電源回路
404:流量制御部
405:記憶部
406:流量測定部
407:測定部
408:切替制御部
409:ヒータ制御部
410:ポンピング作動部
411a:上面ヒータ
411b:下面ヒータ
412:温度センサ
412:気泡センサ
Claims (4)
- 腹膜透析液を腹腔に注入するためのカセットが装着される腹膜透析装置であって、
前記カセットに配置され、内部に含まれる腹膜透析液をヒータによって加温するための加温チューブと、
前記加温チューブに腹膜透析液を送液して、前記加温チューブにおいて加温された前記腹膜透析液を、前記カセットに接続されたチューブを通じて腹腔に注入するポンプと、
前記腹膜透析液の送液が終了した後に前記加温チューブ内から流れ出た腹膜透析液の量に基づいて、注入された腹膜透析液の量を測定する流量測定部と
を含むことを特徴とする腹膜透析装置。 - 前記流量測定部は、
前記腹膜透析液の送液開始から送液終了までに、前記ポンプから送液された腹膜透析液の量を測定する第1測定部と、
前記腹膜透析液の送液が終了した後に前記加温チューブ内から流れ出た腹膜透析液の量を測定する第2測定部とを含み、
前記第1及び前記第2測定部によって測定された腹膜透析液の量から、注入された腹膜透析液の量を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の腹膜透析装置。 - 前記加温チューブから前記チューブに腹膜透析液が流れ出る流出口を開口又は遮断する切替部をさらに含み、
前記切替部は、前記腹膜透析液の注入が終了すると、前記流出口を遮断し、
前記ポンプは、前記流出口が遮断された状態で腹膜透析液を送液することで、前記加温チューブ内に腹膜透析液を充填させ、
前記第2測定部は、前記加温チューブを充填するために前記ポンプから送液された腹膜透析液の量を測定する
ことを特徴とする請求項2に記載の腹膜透析装置。 - 腹膜透析液を腹腔に注入するためのカセットが装着される腹膜透析装置の制御方法であって、
前記カセットに配置される加温チューブ内に含まれる前記腹膜透析液を加温するステップと、
前記加温チューブに腹膜透析液を送液して、前記加温チューブにおいて加温された前記腹膜透析液を、前記カセットに接続されたチューブを通じて腹腔に注入するステップと、
前記腹膜透析液の送液が終了した後に前記加温チューブ内から流れ出た腹膜透析液の量に基づいて、注入された腹膜透析液の量を流量測定部が測定するステップと
を含むことを特徴とする制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007003827A JP2008167935A (ja) | 2007-01-11 | 2007-01-11 | 腹膜透析装置及び制御方法 |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2008167935A true JP2008167935A (ja) | 2008-07-24 |
Family
ID=39696578
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2007003827A Withdrawn JP2008167935A (ja) | 2007-01-11 | 2007-01-11 | 腹膜透析装置及び制御方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2008167935A (ja) |
-
2007
- 2007-01-11 JP JP2007003827A patent/JP2008167935A/ja not_active Withdrawn
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