JP2008125452A - オリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物 - Google Patents
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Abstract
【課題】統合失調症モデル動物として期待できるオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物や、このオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物を用いた統合失調症などのオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の予防・治療組成物のスクリーニング方法等を提供すること。
【解決手段】4週齢のC57BL/6N雌マウスに低タンパク質餌を4〜10日給餌して、この低タンパク質餌を給餌した雌マウスと、6週齢のC57BL/6N雄マウスとを交配して雌マウスを妊娠させ、妊娠した雌マウスにリポ多糖(LPS)を経膣的に投与すると、自然分娩で生まれてくる子マウスの脳梁部におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現細胞が減少しているオリゴデンドロサイト発達障害のモデルマウスが作製できる。
【選択図】なし
【解決手段】4週齢のC57BL/6N雌マウスに低タンパク質餌を4〜10日給餌して、この低タンパク質餌を給餌した雌マウスと、6週齢のC57BL/6N雄マウスとを交配して雌マウスを妊娠させ、妊娠した雌マウスにリポ多糖(LPS)を経膣的に投与すると、自然分娩で生まれてくる子マウスの脳梁部におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現細胞が減少しているオリゴデンドロサイト発達障害のモデルマウスが作製できる。
【選択図】なし
Description
本発明は、オリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物やその作製方法、オリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物を用いた統合失調症などのオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の予防・治療組成物のスクリーニング方法等に関する。
すべての神経系は脳、脊髄からなる中枢神経系と、その他の末梢神経系に分類される。中枢神経系は、情報伝達を担うニューロン(神経細胞)と、ニューロンを包み込むように存在するオリゴデンドロサイト(乏突起神経膠細胞,希突起神経膠細胞)、アストロサイト(星状神経膠細胞)、および、これらの間隙に存在するマイクログリア(小神経膠細胞)によって構成され、ニューロンは細胞から軸索を伸ばして神経ネットワークを形成し、オリゴデンドロサイトはこの軸索を取り囲むように存在しミエリン(髄鞘)を形成するが、ミエリンは情報伝達の電気的な信号を絶縁する役割を有している。
従来、オリゴデンドロサイト発達障害モデル動物としては、DAP12(DNAX activation protein 12)遺伝子機能を染色体上で欠損させたDAP12ノックアウトマウスが知られており、このDAP12ノックアウトマウスがミエリン形成不全を含む髄鞘形成障害を起こし、那須−ハコラ病等の精神神経障害を示すことが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
他方、統合失調症治療薬開発を目的として多くの動物モデルが作製されている。例えば、フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量の減少、情動性の異常、情報処理機構の低下、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有する継代可能な非ヒト動物(例えば、特許文献2参照)や、アクチビン遺伝子が少なくとも脳で過剰発現され、かつ、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有する継代可能な非ヒト動物(例えば、特許文献3参照)や、Pax6遺伝子に変異を有し、且つヒト精神疾患の指標となる行動異常を示す非ヒト動物(例えば、特許文献4参照)が知られている。
しかし、従来のモデル動物の多くは、精神疾患の神経機能障害のみに着目し、特定の神経回路を障害することで作製されており、これらの手法では特定の神経回路改善薬しか開発できない。そのため、陽性症状はドーパミン系製剤で改善されるが、陰性症状は他の神経回路が介在するため難治性となっている。この様に、統合失調症の病態は複数の神経回路における微小な障害の組み合わせであり、単一要因で生じるとは考えにくい。一方、最近の研究で統合失調症患者の意外な共通点が判ってきた。死亡脳の検索から、統合失調症とオリゴデンドロサイト減少の関連が明らかになってきつつあり(例えば、非特許文献1及び2参照)、共通性の見えなかった複数の神経回路障害の背景に、オリゴデンドロサイト減少という共通点が存在することが示唆されている。また、インフルエンザを代表とする母体感染と統合失調症発症の関連が指摘されている。これらの知見に基づき、母体感染によるオリゴデンドロサイト減少動物の作製が試みられている(例えば、非特許文献3及び4参照)が、今のところ、胎仔が死亡または流産するほどの重篤な感染を負荷しないとオリゴデンドロサイト減少は生じない。
本発明の課題は、統合失調症モデル動物として期待できるオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物や、このオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物を用いた統合失調症などのオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の予防・治療組成物のスクリーニング方法等を提供することにある。
本発明者らは、4週齢のC57BL/6N雌マウスに低タンパク質餌を4〜10日給餌して、この低タンパク質餌を給餌した雌マウスと、6週齢のC57BL/6N雄マウスとを交配して雌マウスを妊娠させ、妊娠した雌マウスにリポ多糖(LPS)を投与すると、自然分娩で生まれてくる子マウスの脳梁部におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現細胞が減少しているオリゴデンドロサイト発達障害のモデルマウスとなることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)(a)雌非ヒト哺乳動物に低タンパク質餌を4〜10日給餌するステップ、(b)雄非ヒト哺乳動物と低タンパク質餌を給餌した前記雌非ヒト哺乳動物とを交配し、雌非ヒト哺乳動物を妊娠させるステップ、(c)妊娠した前記雌非ヒト哺乳動物に、細菌又はウイルスに由来する炎症誘発物質を投与するステップ、(d)前記雌非ヒト哺乳動物から生まれてくる子非ヒト哺乳動物を育てるステップ、の各ステップを備えたことを特徴とするオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法や、(2)低タンパク質餌として、タンパク質含量が5〜10質量%の餌を用いることを特徴とする請求項1記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法や、(3)細菌又はウイルスに由来する炎症誘発物質が、リポ多糖(LPS)であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法や、(4)非ヒト哺乳動物がマウス又はラットであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法に関する。
また本発明は、(5)前記(1)〜(4)のいずれか記載の作製方法によって得られるオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物や、(6)脳梁部におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現細胞が減少していることを特徴とする前記(5)記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物に関する。
さらに本発明は、(7)前記(5)又は(6)記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物に被検物質を投与し、該非ヒト哺乳動物の脳梁部におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現細胞数を、同種の野生型の非ヒト哺乳動物における場合と比較・評価することを特徴とするオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の予防・治療組成物のスクリーニング方法や、(8)前記(5)又は(6)記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の脳梁部由来の細胞と、被検物質とをインビトロで接触させ、該細胞におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現の程度を、同種の野生型の非ヒト哺乳動物の脳梁部由来の細胞における場合と比較・評価することを特徴とするオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の予防・治療組成物のスクリーニング方法や、(9)オリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病が、統合失調症であることを特徴とする前記(7)又は(8)記載のスクリーニング方法や、(10)前記(5)又は(6)記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の脳組織由来の細胞における低分子生理活性物質、タンパク質又はタンパク質の発現に影響を及ぼすRNA分子の発現状態を、同種の野生型の非ヒト哺乳動物における場合と比較・評価することを特徴とするオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の標的分子の同定方法に関する。
本発明によると、非トランスジェニック動物で、特別な手術を必要としない、化学的に安定した物質を用いて、脳内の指定した細胞の障害を再現性良く引き起こすことができ、ドーパミン系等の特定の神経伝達物質系をターゲットにしない、統合失調症モデル動物として期待できるオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物や、このオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物を用いた統合失調症などのオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の予防・治療組成物のスクリーニング方法を提供することができる。また、オリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の責任遺伝子の同定方法を提供することができる。
本発明のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法としては、以下の(a)〜(d)の各ステップを備えた方法であれば特に制限されず、上記非ヒト哺乳動物としては、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、サル等を例示することができるが、取扱いの簡便さの点ではマウスやラットが好ましく、ヒトにより近いという点ではサルが好ましい。
(a)雌非ヒト哺乳動物に低タンパク質餌を4〜10日給餌するステップ
(b)雄非ヒト哺乳動物と低タンパク質餌を給餌した前記雌非ヒト哺乳動物とを交配し、雌非ヒト哺乳動物を妊娠させるステップ
(c)妊娠した前記雌非ヒト哺乳動物に、細菌又はウイルスに由来する炎症誘発物質を投与するステップ
(d)前記雌非ヒト哺乳動物から自然分娩等により生まれてくる子非ヒト哺乳動物を育てるステップ
(a)雌非ヒト哺乳動物に低タンパク質餌を4〜10日給餌するステップ
(b)雄非ヒト哺乳動物と低タンパク質餌を給餌した前記雌非ヒト哺乳動物とを交配し、雌非ヒト哺乳動物を妊娠させるステップ
(c)妊娠した前記雌非ヒト哺乳動物に、細菌又はウイルスに由来する炎症誘発物質を投与するステップ
(d)前記雌非ヒト哺乳動物から自然分娩等により生まれてくる子非ヒト哺乳動物を育てるステップ
上記低タンパク質餌としては、タンパク質含量が1〜15質量%、好ましくは3〜12質量%、より好ましくは5〜10質量%の餌を例示することができる。例えば、マウスの場合、上記のような低タンパク質餌を給餌し、1日あたりのタンパク質摂取量を16〜240mg/個体、好ましくは50〜190mg/個体、より好ましくは80〜160mg/個体とし、ラットの場合、上記のような低タンパク質餌を給餌し、1日あたりのタンパク質摂取量を60〜900mg/個体、好ましくは180〜720mg/個体、より好ましくは300〜600mg/個体とすることができる。
低タンパク質餌を4〜10日間摂取した雌非ヒト哺乳動物と交配させる雄非ヒト哺乳動物には、上記の低タンパク質餌を給餌しても、タンパク質含量が18〜25質量%程度の通常の餌を給餌してもよいが、低タンパク質餌を給餌する方が好ましい。
上記細菌又はウイルスに由来する炎症誘発物質としては、グラム陰性菌の細胞壁に特異的な糖脂質であるリポ多糖(LPS)、ペプチドグリカン(PGN)、2本鎖RNAであるpolyriboinosinic-polyribocytidylic acid (PolyI:C)、イミダゾキノリン、非メチル化CpGモチーフを有する細菌DNA、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド、細菌由来トリアシル化リポタンパク質、マイコプラズマ由来ジアシル化リポタンパク質、及びTrypanosoma cruzi(クルーズトリパノソーマ)のGPIアンカー等のToll様受容体(TLR:Toll Like Receptor)のリガンドを挙げることができるが、中でもリポ多糖(LPS)を好適に例示することができる。これら炎症誘発物質の投与方法としては、経皮、経粘膜(経腟)、経口、静注、筋注、腹腔内投与等を挙げることができ、また、投与量は、炎症誘発物質の種類、非ヒト哺乳動物の種類、投与方法、投与回数等により異なるが、当業者であれば適宜選択することができるが、一般的に低濃度で用いることが多い。また、炎症誘発物質の投与に際しては、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種配合成分を添加することもできる。
本発明のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物としては、上記オリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法によって得られる非ヒト哺乳動物であれば特に制限されず、少なくとも脳梁部におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現細胞が減少している非ヒト哺乳動物が好ましい。また、本発明のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物は、統合失調症モデル非ヒト哺乳動物として使用しうる可能性が大きい。
本発明のオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の予防・治療組成物のスクリーニング方法としては、上記本発明のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物に被検物質を投与し、該非ヒト哺乳動物の脳梁部におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現細胞数を、同種の野生型の非ヒト哺乳動物における場合と比較・評価する方法や、上記本発明のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の脳梁部由来の細胞と、被検物質とをインビトロで接触させ、該細胞におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現の程度を、同種の野生型の非ヒト哺乳動物の脳梁部由来の細胞における場合と比較・評価する方法であれば特に制限されず、MBPの発現は、抗MBP抗体を用いる免疫定量法や、MBP遺伝子に特異的に結合するプローブ用の標識化ヌクレオチドを用いたノーザンブロット法により行うことができる。
また、MBP遺伝子のプロモーターの下流にルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を連結した融合遺伝子をトランスジェニックしたレポーター・トランスジェニック非ヒト哺乳動物の雌雄を用いて作製した本発明のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物を用いたり、あるいは、本発明のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の脳梁部由来の細胞を、MBP遺伝子のプロモーターの下流にルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を連結した発現コンストラクトで形質転換した細胞を用いると、インサイチュウで、MBPの発現の程度を測定することができる。
上記オリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病としては、統合失調症を含めて種々の中枢神経系の疾患を例示することができ、より具体的には、統合失調症、(びまん性)脳室周囲白質軟化症(=小児脳性麻痺の責任病態)、統合失調症様障害、失調感情障害、妄想性障害・共有精神病性障害、大うつ病性障害(=いわゆる「うつ病」)、双極性障害(=いわゆる「躁鬱病」)、パニック障害などの不安障害、強迫性障害、注意欠陥障害(注意欠陥/多動性障害)、トゥレット障害、自閉症性障害、読字障害(などの学習障害)、滑脳症、認知症(アルツハイマー病)、多発性硬化症等を挙げることができる。
本発明のオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の標的分子の同定方法としては、上記本発明のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物(サンプル)の脳組織由来の細胞、例えば脳梁部由来の細胞における低分子生理活性物質、タンパク質又はタンパク質の発現に影響を及ぼすRNA分子の発現状態を、同種の野生型の非ヒト哺乳動物(コントロール)における場合と比較・評価する方法であれば特に制限されず、上記標的分子としては、オリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の責任遺伝子や、低分子生理活性物質を挙げることができる。上記低分子生理活性物質(候補)としては、ドーパミン、グルタミン酸、GABA等の多くの神経伝達物質の他、細胞の代謝産物などを例示することができ、これら低分子生理活性物質はHPLCにより測定することができる。そして、サンプル中のみ発現する、あるいは、コントロールに比較してサンプル中で強く発現する低分子生理活性物質を選定したり、コントロール中のみ発現する、あるいは、サンプルに比較してコントロール中で強く発現する低分子生理活性物質を選定することにより、標的低分子生理活性物質(候補)を同定することができる。
また、タンパク質やタンパク質の発現に影響を及ぼすRNA分子の発現状態を測定する方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、サンプルとコントロール中のタンパク質の発現状態を測定し、比較・評価する方法としては、サンプルとコントロール中のタンパク質を蛍光標識した後、二次元電気泳動して蛍光イメージャーにより検出し、二次元電気泳動解析ソフトで解析を行い、発現差のあるスポットを決め、そのスポットを全自動プロテオーム前処理装置を用いて処理後、MALDI-TOF/MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置)にてタンパク質を同定し、サンプル中のみ発現する、あるいは、コントロールに比較してサンプル中で強く発現するタンパク質を選定したり、コントロール中のみ発現する、あるいは、サンプルに比較してコントロール中で強く発現するタンパク質を選定する方法を挙げることができ、かかるタンパク質の配列情報により責任遺伝子(候補)を同定することができる。
上記タンパク質の発現に影響を及ぼすRNA分子としては、mRNAの他、アンチセンスRNA、マイクロRNA、siRNA等のnon-coding RNAを例示することができ、サンプルとコントロール中のこれらRNAの発現状態を測定し、比較・評価する方法として、DNAマイクロアレイ法を挙げることができる。例えばmRNAを例にとると、サンプルとコントロール中のトータルmRNAをそれぞれ調製し、該mRNAを鋳型とした逆転写反応を行う際に、適切な標識を付したプライマーや標識ヌクレオチドを使用することにより、得られる標識化cDNAと全遺伝子型マイクロアレイとの間でハイブリダイゼーションを行わせ、サンプルとのハイブリダイゼーション及びコントロールとのハイブリダイゼーションのそれぞれ結果を比較し、サンプル中のみ発現する、あるいは、コントロールに比較してサンプル中で強く発現するmRNAを選定したり、コントロール中のみ発現する、あるいは、サンプルに比較してコントロール中で強く発現するmRNAを選定する方法を挙げることができ、かかるmRNAの配列情報により責任遺伝子(候補)を同定することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[OL減少マウスの作製]
東北大学マウスセンターより4週齢C57BL/6Nマウスを導入し、供試動物とした。C57BL/6Nは一般的に用いられているノックアウトマウスの元となる系統であり、将来的にノックアウトマウスなどの遺伝子変異を持つモデルと本モデルを組み合わせる場合でも、基礎データとして利用可能である。供試動物を室温23℃、12L−12Dの通常環境で飼育した。5週齢以降、実験終了まで低蛋白餌(AIN−93G改:オリエンタル酵母)(表1)、または対照餌(AIN−93G)を給餌し、それぞれ低蛋白群(L)、対照群(N)とした。オリゴデンドロサイト(OL)減少マウス作製スケジュールを図1に示す。
東北大学マウスセンターより4週齢C57BL/6Nマウスを導入し、供試動物とした。C57BL/6Nは一般的に用いられているノックアウトマウスの元となる系統であり、将来的にノックアウトマウスなどの遺伝子変異を持つモデルと本モデルを組み合わせる場合でも、基礎データとして利用可能である。供試動物を室温23℃、12L−12Dの通常環境で飼育した。5週齢以降、実験終了まで低蛋白餌(AIN−93G改:オリエンタル酵母)(表1)、または対照餌(AIN−93G)を給餌し、それぞれ低蛋白群(L)、対照群(N)とした。オリゴデンドロサイト(OL)減少マウス作製スケジュールを図1に示す。
雌と同じ餌を摂取している雄マウスと6週齢以降、交配を開始した。交尾の確認は定時的な膣栓の確認で行い、膣栓確認日を胎齢(E)0とした。E0以降、マウスは単独飼育とし、毎日摂餌量と体重を測定した。
摂餌量の測定により、L群が過食による蛋白質量の摂取補正を行わないことを確認した。E14に炎症惹起物質LPS(0.1mg/ml 30μl(Sigma社 カタログ番号:L2880 from Escherichia coli; serotype O55: B5))、また対照群には生理食塩水(PBS)(30μl)を経腟的に投与し、本症との関わりが知られる周産期におけるストレスである絨毛膜羊膜炎の因子を付加した。それぞれLPS群、PBS群とし、4群(L_LPS, L_PBS, N_LPS, N_PBS)を作製した。満期による自然分娩を待ち、分娩日を生後(P)0(日)とした。P7に新生仔を過麻酔下で開胸し、4%PFA(Paraformaldehyde)による生体灌流の後、断頭し脳を採材した。
[OL減少評価法]
クリオスタット(Leica社 CM3050S)で厚さ12μmの凍結切片を作製し、4%PFAにて追加固定後、免疫染色した。一次抗体は成熟OLのマーカーであるミエリン塩基性蛋白質(MBP)(Chemicon: 1:200 Rat(Chemicon社 型番:MAB386))に対するものを用い、二次抗体には可視化のためにCy3(Jackson:1:500;赤色蛍光を発する)を結合したIgG(Jackson Immuno Research社 型番:712-165-150)を用いた。統合失調症との関連が指摘され、かつ事前の試行にて最も大きな影響が観察された側脳室周囲の脳梁部を撮影し(インテリジェント顕微鏡:Leica社 CM5000B,撮影用ソフト:Leica社 Leica IM,画像評価用ソフト:Adobe社 Photoshop CS2)、陽性細胞数および染色面積を測定した。評価領域、脳梁部を黒枠で示したものを図2に示す。
クリオスタット(Leica社 CM3050S)で厚さ12μmの凍結切片を作製し、4%PFAにて追加固定後、免疫染色した。一次抗体は成熟OLのマーカーであるミエリン塩基性蛋白質(MBP)(Chemicon: 1:200 Rat(Chemicon社 型番:MAB386))に対するものを用い、二次抗体には可視化のためにCy3(Jackson:1:500;赤色蛍光を発する)を結合したIgG(Jackson Immuno Research社 型番:712-165-150)を用いた。統合失調症との関連が指摘され、かつ事前の試行にて最も大きな影響が観察された側脳室周囲の脳梁部を撮影し(インテリジェント顕微鏡:Leica社 CM5000B,撮影用ソフト:Leica社 Leica IM,画像評価用ソフト:Adobe社 Photoshop CS2)、陽性細胞数および染色面積を測定した。評価領域、脳梁部を黒枠で示したものを図2に示す。
[結果]
各群において産仔数に差を認めなかった。L_LPS群で有意なOL陽性細胞数減少を認めた。結果を図3及び図4に示す。
各群において産仔数に差を認めなかった。L_LPS群で有意なOL陽性細胞数減少を認めた。結果を図3及び図4に示す。
[評価]
低蛋白食、LPS投与それぞれ単独では成熟OLマーカーであるMBPに有意な影響を与えなかった。一方、これら二つを併用したL_LPS群では、L_PBS群とN_LPS群に対してMBP陽性細胞数に有意な減少を認めた。
低蛋白食、LPS投与それぞれ単独では成熟OLマーカーであるMBPに有意な影響を与えなかった。一方、これら二つを併用したL_LPS群では、L_PBS群とN_LPS群に対してMBP陽性細胞数に有意な減少を認めた。
Claims (10)
- 以下の(a)〜(d)の各ステップを備えたことを特徴とするオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法。
(a)雌非ヒト哺乳動物に低タンパク質餌を4〜10日給餌するステップ
(b)雄非ヒト哺乳動物と低タンパク質餌を給餌した前記雌非ヒト哺乳動物とを交配し、雌非ヒト哺乳動物を妊娠させるステップ
(c)妊娠した前記雌非ヒト哺乳動物に、細菌又はウイルスに由来する炎症誘発物質を投与するステップ
(d)前記雌非ヒト哺乳動物から生まれてくる子非ヒト哺乳動物を育てるステップ - 低タンパク質餌として、タンパク質含量が5〜10質量%の餌を用いることを特徴とする請求項1記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法。
- 細菌又はウイルスに由来する炎症誘発物質が、リポ多糖(LPS)であることを特徴とする請求項1又は2記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法。
- 非ヒト哺乳動物がマウス又はラットであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の作製方法。
- 請求項1〜4のいずれか記載の作製方法によって得られるオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物。
- 脳梁部におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現細胞が減少していることを特徴とする請求項5記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物。
- 請求項5又は6記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物に被検物質を投与し、該非ヒト哺乳動物の脳梁部におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現細胞数を、同種の野生型の非ヒト哺乳動物における場合と比較・評価することを特徴とするオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の予防・治療組成物のスクリーニング方法。
- 請求項5又は6記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の脳梁部由来の細胞と、被検物質とをインビトロで接触させ、該細胞におけるミエリン塩基性蛋白質(MBP)発現の程度を、同種の野生型の非ヒト哺乳動物の脳梁部由来の細胞における場合と比較・評価することを特徴とするオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の予防・治療組成物のスクリーニング方法。
- オリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病が、統合失調症であることを特徴とする請求項7又は8記載のスクリーニング方法。
- 請求項5又は6記載のオリゴデンドロサイト発達障害モデル非ヒト哺乳動物の脳組織由来の細胞における低分子生理活性物質、タンパク質又はタンパク質の発現に影響を及ぼすRNA分子の発現状態を、同種の野生型の非ヒト哺乳動物における場合と比較・評価することを特徴とするオリゴデンドロサイト発達障害に起因する疾病の標的分子の同定方法。
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2006
- 2006-11-21 JP JP2006314709A patent/JP2008125452A/ja active Pending
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