JP2008118942A - カビの発育環境を調査する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
被調査箇所が実際にどのような種類のカビによってどの程度汚染する環境にあるのかどうかを具体的に知る方法を提供する。
【解決手段】
カビが発育するのに適した培地を含浸させたシート状培養部材が支持体に支持されている試験片の前記培養部材に、被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビを付着させた後、前記試験片を袋の中に閉じ込めて被調査箇所に一定の期間放置し、その結果、前記培養部材に付着させたカビの発育状況を観察することによって、前記被調査箇所が、その被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビの発育する環境にあるのかどうかを評価し、そして前記の袋がカビは透過させないで酸素と水分は透過させる通気性を具えていることを特徴とする、前記調査方法。
【選択図】図1
被調査箇所が実際にどのような種類のカビによってどの程度汚染する環境にあるのかどうかを具体的に知る方法を提供する。
【解決手段】
カビが発育するのに適した培地を含浸させたシート状培養部材が支持体に支持されている試験片の前記培養部材に、被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビを付着させた後、前記試験片を袋の中に閉じ込めて被調査箇所に一定の期間放置し、その結果、前記培養部材に付着させたカビの発育状況を観察することによって、前記被調査箇所が、その被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビの発育する環境にあるのかどうかを評価し、そして前記の袋がカビは透過させないで酸素と水分は透過させる通気性を具えていることを特徴とする、前記調査方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、被調査箇所でカビが発育する環境にあるのかどうかを調査する方法に関するものである。
一般にカビが置かれている環境でそのカビが発育するかどうかは、その環境の温度と湿度に依存するので、或る環境の温度と湿度が判れば、その環境で大体のカビが発育するかどうかを非常に大雑把に予測できる場合もあるが、温度と湿度が知られている環境であっても、その環境で具体的に或る種のカビが発育するかどうかを実際に予測することは困難であって、カビが発育する環境にあるのかどうかを調査すべき場所に、その特定の種類のカビを置いて見なければ、その場所でそのカビが実際に発育するかどうかを知ることができない。
外気中には様々な種類のカビが浮遊しているため、カビによって汚染されていない建物内部の空気中にも外気に由来するカビが存在している。建物の内部にカビが付着すると、その付着した箇所の環境で発育に適しているカビが寡占状態で発育するが、この寡占状態で発育するカビの種類は建物内部のそれぞれの箇所の環境ごとに異なってくる。したがって、或る特定の種類のカビが寡占状態で発育している箇所周辺の空気中には、この寡占種のカビ胞子が専ら浮遊することになる。
このような寡占種となるカビは、元をただせば、外気由来のカビであるか、あるいは建材や家具などに付着して建物内部に持ち込まれたカビであるが、このように建物の外部から建物内部に入ってきたカビの中で、どのような種類のカビが寡占種になるのかは、その建物に固有の内部環境、この建物が置かれている地域の気候、建物の立地条件又はその建物の使用者の生活習慣などの建物を囲む様々な環境要因の影響を受けるので、それぞれの建物ごとに、また、同じ建物でも、その内部の箇所ごとに、そこで寡占種となるカビの種類は異なってくる。
或る箇所がカビで汚染され易いかどうかを調査する場合に、その箇所を囲む環境の温湿度を指標にするか、あるいは或る特定の種類のカビの発育を指標にして、その箇所がカビで汚染され易いかどうかを予測することはできるが、実際に、その調査箇所でどの種類のカビが寡占種になっているか、あるいはどの種類のカビが将来寡占種になる可能性があるのかを知ることはできない。
このように、或る箇所が実際にどのようなカビで汚染されるのかどうかを具体的に詳しく調査する方法が知られていなかったので、従来は、特許第2710903号公報(黴の生育速度および生育状態の推定方法ならびにこれを防黴対策に利用する方法)、特開2001−343382号(微生物を指標生物とする環境調査用試験片およびそれを利用する環境調査方法)及び再公表2004−033713号(被調査環境における微小生物の発育可能レベルの調査方法、調査表示装置および調査システム)で提案されたような方法によって、或る環境がカビの発育する環境であるのかどうかを大雑把に把握していた。
特許第2710903号公報
特開2001−343382号
再公表2004−033713号
しかし、このような方法では、或る種のカビが調査すべき箇所、すなわち被調査箇所で実際にどのように発育するのかどうか、また、そのカビが寡占種になっているのか、あるいは寡占種になる可能性があるのかどうかを具体的に詳しく知ることができなかった。
それで、本発明は、例えば、住宅内の或る場所でどのような種類のカビが実際にどのように、又はどの程度発育するのかを具体的に詳しく知る方法を提供することを課題としている。
一般に、外気中及びカビで汚染されている室内の空気中にはカビの胞子が1立方メートル当たりそれぞれ200〜300個程度及び1000個以上浮遊し、また、カビで汚染されていない室内の空気中にも、外気あるいはカビで汚染された室内から飛来してくるカビの胞子のために、1立方メートル当たり50〜500個程度のカビの胞子が浮遊して、その室内にある壁面や器物等の表面に付着するので、もし、カビの発育を調査するため、その発育に必要な培地を含む試験片を前記のようなカビで汚染されていない室内に置いても、その試験片にはカビの胞子が付着することになる。
カビの発育する環境であるのかどうかを調査すべき箇所が上記のいずれの場所であっても、前記の試験片が置かれた場所がカビの発育する環境を保っている場合には、その試験片に付着したカビの胞子は発育して新しいコロニーを作り、一方、前記の場所がカビの発育しない環境を保っている場合には、試験片にカビが付着しても、その胞子は試験片で新しいコロニーを作ることがない。
一般に室内がカビで汚染されている程度に応じて、その室内空気中に飛散しているカビの胞子の個数、したがってそれの空気中の濃度が変化し、その濃度に応じてカビの胞子が試験片に付着する確率、したがってその付着の程度が変化して、前記コロニーの形成の多寡が生ずる。したがって、コロニーの形成状態を観察するとともに、コロニーを形成しているカビを分離し、同定することによって、被調査箇所の環境が実際にどのような種類のカビによってどの程度汚染されるのかを評価することができる。
本発明は、上記のような状況に着目して発明されたもので、
被調査箇所がカビの発育する環境にあるのかどうかを調査する方法であって、カビが発育するのに適した培地を含浸させたシート状培養部材が支持体に支持されている試験片の前記培養部材を前記被調査箇所付近の雰囲気に対し露出させた状態で、前記試験片を前記被調査箇所に設置して、その被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビを前記培養部材に付着させた後、そのカビの発育によって新たに着生した胞子が被調査箇所付近の前記雰囲気中に飛散しないように試験片を袋の中に閉じ込めて前記被調査箇所に一定の期間放置し、その結果、前記培養部材に付着させたカビの発育状況を観察することによって、前記被調査箇所が、その被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビの発育する環境にあるのかどうかを評価し、そして前記の袋がカビは透過させないて酸素と水分は透過させる通気性を具えていることを特徴とする、前記調査方法、
に係わるものである。
被調査箇所がカビの発育する環境にあるのかどうかを調査する方法であって、カビが発育するのに適した培地を含浸させたシート状培養部材が支持体に支持されている試験片の前記培養部材を前記被調査箇所付近の雰囲気に対し露出させた状態で、前記試験片を前記被調査箇所に設置して、その被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビを前記培養部材に付着させた後、そのカビの発育によって新たに着生した胞子が被調査箇所付近の前記雰囲気中に飛散しないように試験片を袋の中に閉じ込めて前記被調査箇所に一定の期間放置し、その結果、前記培養部材に付着させたカビの発育状況を観察することによって、前記被調査箇所が、その被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビの発育する環境にあるのかどうかを評価し、そして前記の袋がカビは透過させないて酸素と水分は透過させる通気性を具えていることを特徴とする、前記調査方法、
に係わるものである。
本発明によれば、被調査箇所が実際にどのような種類のカビによってどの程度汚染される環境にあるのかないのかを具体的に知ることができるので、これらのカビに対する対策を検討する場合に必要な指針を得ることができる。
本発明に係わる試験片で使用される培地としては、従来カビの培養に用いられている培地ならば一般にどのような種類の培地でもよく、例えば次のような培地が好ましく使用される。
(1)サブローデキストロース培地
組成: ぶどう糖 40g
ペプトン 10g
精製水 1000mL
(2)YM20培地
組成: ぶどう糖 200g
ペプトン 5g
酵母エキス 3g
麦芽エキス 3g
精製水 1000mL
(3)YS10培地
組成: シュークロース 100g
酵母エキス 10g
精製水 1000mL
組成: ぶどう糖 40g
ペプトン 10g
精製水 1000mL
(2)YM20培地
組成: ぶどう糖 200g
ペプトン 5g
酵母エキス 3g
麦芽エキス 3g
精製水 1000mL
(3)YS10培地
組成: シュークロース 100g
酵母エキス 10g
精製水 1000mL
本発明において、この培地は濾紙又は綿布のような多孔質の材料でできたシート状の部材に含浸させて乾燥させた状態の培養部材として使用され、例えば、培地を濾紙に含浸させて乾燥させた培養部材が好ましく使用される。
培養部材は適当な支持体に支持させると、シート状の培養部材の変形を防止できるとともに、培養部材に直接手を触れることなく、また、培養部材が直接袋に触れることもなく、この培養部材を取り扱うことができるので、この培養部材は支持体に支持させた状態の試験片として用いられ、この支持体は、一般にシート状乃至板状であるのが好ましく、例えば、写真のスライド用マウント、シャーレ、又はシャーレのような外周に若干の立ち上がり部分が形成されている、例えばガラス製もしくはプラスチック製の盤状部材が好ましく使用される。
培養部材を支持体に支持させるには、例えば、この支持体がスライド用マウントである場合には、通常のスライドフィルムが嵌め込まれる箇所に培養部材を嵌め込むようにして培養部材がスライド用マウントに支持され、また、支持体が例えばシャーレ又はシャーレに類する形状の支持体である場合には、そのシャーレ又はシャーレに類する形状の支持体の中央付近に培養部材を接着することによって培養部材がシャーレ又はシャーレに類する形状の支持体に支持される。
図1は、本発明に係わる試験片を示す平面図であって、図1において1は試験片を、2は培養部材を、そして3は支持体のスライド用マウントを表し、そしてこの培養部材2は写真のフィルムをスライド用マウントに嵌め込むのと同様にしてこのスライド用マウント3に嵌め込まれている。
このような試験片は、それの培養部材が被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビ又はカビの胞子を捕捉するように、その培養部材が露出した状態で、この被調査箇所に設置され、適当な期間、通常、例えば、1〜7日間の間放置される。
このように空中に浮遊しているカビの胞子を試験片に付着させる場合、この試験片を垂直な壁面に設置するよりも水平に置いた場合の方が、発育するカビのコロニーの数が一般に多くなるので、この浮遊したカビを試験片に付着させる段階では一般に試験片を水平に設置するのがよい。
上記の放置期間が経過した後、試験片は、カビの胞子が試験片から飛散しないように、カビは透過させないで酸素と水分は透過させる通気性の袋の中に封じ込められて、前記被調査箇所に一定の期間、例えば、1〜12週間の間放置される。
上記の袋の材料としては、例えば、メッシュ、ナイロン布のような織布、不織布、セロファン紙のようなフィルム又はビニロンシートのようなシートが使用され、そにうち、不織布のタイペック1073B(旭デュポンフラッシュスパンプロダクツ株式会社製)が好ましく使用される。
上記の一定期間放置された後に試験片に形成されたコロニーの数とカビの発育状態を観察するとともに、必要に応じて、カビのコロニーから分離したカビを同定してカビの種類を同定することによって、前記被調査箇所付近の雰囲気が実際にどのようなカビによってどの程度汚染されているのか、あるいは将来汚染されるのかを具体的に評価することができる。
以下の実施例は、本発明を実施する場合の好ましい例を具体的に示すことを意図するものであって、本発明がこれらの実施例によって限定されることは意図されていない。
実施例1
次のようにして、被調査箇所がカビの生育する環境にあるのかどうかを調査するために使われる試験片を作成した。
1.培養部材となる濾紙を用意し、この濾紙をスライド用マウントに濾紙を挟み込むための寸法;33mm×37mmに切断した。
2.上記の寸法に切断した濾紙片を高圧の水蒸気で滅菌した後、この濾紙片を予め用意した滅菌済のYS10液体培地(酵母エキス1%、シュークロース10%)に浸し、その濾紙片から滴り落ちる水(液体培地)を切ってこれを滅菌済のネットの上に並べ、60℃において30分間乾燥させた。
3.このように乾燥させた後の培地含有濾紙片をスライド用マウントに挟んで更に60℃において2時間乾燥させた。
4.上記のようにして作製した試験片を滅菌済の新しいシャーレに入れて保存した。
次のようにして、被調査箇所がカビの生育する環境にあるのかどうかを調査するために使われる試験片を作成した。
1.培養部材となる濾紙を用意し、この濾紙をスライド用マウントに濾紙を挟み込むための寸法;33mm×37mmに切断した。
2.上記の寸法に切断した濾紙片を高圧の水蒸気で滅菌した後、この濾紙片を予め用意した滅菌済のYS10液体培地(酵母エキス1%、シュークロース10%)に浸し、その濾紙片から滴り落ちる水(液体培地)を切ってこれを滅菌済のネットの上に並べ、60℃において30分間乾燥させた。
3.このように乾燥させた後の培地含有濾紙片をスライド用マウントに挟んで更に60℃において2時間乾燥させた。
4.上記のようにして作製した試験片を滅菌済の新しいシャーレに入れて保存した。
このようにして用意された試験片を用いて、一般住宅の被調査箇所についてカビの発育する環境にあるのかどうかを次のようにして調査した。
1.一般住宅における床下収納部の底部床面及び1階収納部の床面を被調査箇所に選び、前記の培地含有濾紙片を被調査箇所周囲の雰囲気に露出した状態にして、試験片をこれらの被調査箇所にそれぞれ8月1日に設置した。
床下の収納部はカビの発育する環境にあることが分かっている箇所であり、また、1階の収納部は、除湿機が導入されていて、カビの発育しない環境にあることが分かっている箇所であった。
2.試験片を設置してから1週間後の8月8日に、それぞれの被調査箇所に置かれていた試験片を、カビの胞子は透過させないで酸素と水分は透過させる通気性を具えた不織布製の袋に入れて、その袋の口を折り、その折り口にセロテープを貼って袋に封をした後、袋の中に閉じ込められた試験片を引続きそのまま同じ箇所に設置した。
3.袋の中に入れてから23日目の9月1日に袋の中から試験片を回収して、その試験片でカビが発育した状態を調べるために、試験片を写真で撮影した。
この写真撮影の結果、次のことが観察された。
1.一般住宅における床下収納部の底部床面及び1階収納部の床面を被調査箇所に選び、前記の培地含有濾紙片を被調査箇所周囲の雰囲気に露出した状態にして、試験片をこれらの被調査箇所にそれぞれ8月1日に設置した。
床下の収納部はカビの発育する環境にあることが分かっている箇所であり、また、1階の収納部は、除湿機が導入されていて、カビの発育しない環境にあることが分かっている箇所であった。
2.試験片を設置してから1週間後の8月8日に、それぞれの被調査箇所に置かれていた試験片を、カビの胞子は透過させないで酸素と水分は透過させる通気性を具えた不織布製の袋に入れて、その袋の口を折り、その折り口にセロテープを貼って袋に封をした後、袋の中に閉じ込められた試験片を引続きそのまま同じ箇所に設置した。
3.袋の中に入れてから23日目の9月1日に袋の中から試験片を回収して、その試験片でカビが発育した状態を調べるために、試験片を写真で撮影した。
この写真撮影の結果、次のことが観察された。
カビが発育する環境にあることが分かっている箇所である床下収納部の底部床面に設置された試験片では、この試験片を袋の中に入れた時点ではカビの発育は目視されなかったが、回収時には、図2に示されるように、濾紙片全体にカビのコロニーが多数(約80個)出現していた。ただし、この図2はイメージ図として描かれており、そこに示されるコロニーの寸法と数は正確ではない。
一方、カビが発育ない環境にあることが分かっている箇所である、除湿機が導入されている1階収納部の床面では、試験片の回収時にも、図3に示されるように、濾紙片全体にわたってカビのコロニーは全く出現しなかった。
試験片上に形成された上記のコロニーからカビを単離し、それの属を調べたところ、大多数(90%以上)がペニシリウム属に相当するカビであることが認められ、この調査によれば、床下収納部の付近は主としてペニシリウム属のカビで汚染されていることが明らかになった。
また、除湿機が導入されている1階収納部の床面付近はカビによって汚染されないことが明らかになった。
実施例2
室内に浮遊するカビが、その室内の相対湿度がどのくらいであれば目視できるコロニーを何日程度で出現させるのかを、次のようにして調査した。
1.実施例1と同様にして準備した試験片12枚を、日中窓が開放されている研究所の事務室の机の上に並べて24時間放置し、自然落下するカビの胞子を培地含有濾紙片に付着させた。この研究所の事務室の机の上はカビが発育ない環境であったが、研究所の外部の空気中に浮遊するカビの胞子が事務室の中に侵入して事務室の中に置かれた机の上に落下する環境にあった。
2.24時間放置した後の試験片を、実施例1の場合と同様に、カビの胞子は透過させないで酸素と水分は透過させる通気性を具えた不織布製の袋に入れて、その袋の口に封をした。
3.不織布製の袋に封じ込めた試験片を、
(1)K2 SO4 の飽和水溶液と、それの結晶(K2 SO4 )とを用いて、湿度を相対湿度97%に調節した湿室、
(2)KNO3 の飽和水溶液と、それの結晶(KNO3 )とを用いて、湿度を相対湿度94%に調節した湿室、
(3)BaCl2 の飽和水溶液と、それの結晶(BaCl2 ・2H2 O)とを用いて、湿度を相対湿度90%に調節した湿室、及び
(4)KClの飽和水溶液と、それの結晶(KCl)とを用いて、湿度を相対湿度84%に調節した湿室、
にそれぞれ3枚づつ入れて、これらの試験片に付着したカビの胞子をいずれも25℃において培養した。
室内に浮遊するカビが、その室内の相対湿度がどのくらいであれば目視できるコロニーを何日程度で出現させるのかを、次のようにして調査した。
1.実施例1と同様にして準備した試験片12枚を、日中窓が開放されている研究所の事務室の机の上に並べて24時間放置し、自然落下するカビの胞子を培地含有濾紙片に付着させた。この研究所の事務室の机の上はカビが発育ない環境であったが、研究所の外部の空気中に浮遊するカビの胞子が事務室の中に侵入して事務室の中に置かれた机の上に落下する環境にあった。
2.24時間放置した後の試験片を、実施例1の場合と同様に、カビの胞子は透過させないで酸素と水分は透過させる通気性を具えた不織布製の袋に入れて、その袋の口に封をした。
3.不織布製の袋に封じ込めた試験片を、
(1)K2 SO4 の飽和水溶液と、それの結晶(K2 SO4 )とを用いて、湿度を相対湿度97%に調節した湿室、
(2)KNO3 の飽和水溶液と、それの結晶(KNO3 )とを用いて、湿度を相対湿度94%に調節した湿室、
(3)BaCl2 の飽和水溶液と、それの結晶(BaCl2 ・2H2 O)とを用いて、湿度を相対湿度90%に調節した湿室、及び
(4)KClの飽和水溶液と、それの結晶(KCl)とを用いて、湿度を相対湿度84%に調節した湿室、
にそれぞれ3枚づつ入れて、これらの試験片に付着したカビの胞子をいずれも25℃において培養した。
この培養によって、次のことが明らかになった。
相対湿度97%に調節されている(1) のK2 SO4 湿室に入れられた試験片では、4日間の培養で最大で15mm、そして平均で約6mmの直径のカビのコロニーが目視され、その3枚の試験片におけるカビのコロニー数の平均は20個であった。
相対湿度97%では、発育したカビの種類が多く、コロニーのサイズと色は様々であった。
相対湿度94%に調節されている(2) のKNO3 湿室に入れられた試験片では、4日間の培養ではコロニーの寸法が未だ小さく、7日間の培養で最大で8mm、そして平均で約4mmの直径のカビのコロニーが目視され、その3枚の試験片におけるコロニー数の平均は21個であった。
相対湿度94%では、コロニーの約1/3がクラドスポリウム属によるコロニーであった。
相対湿度90%に調節されている(3) のBaCl2 湿室に入れられた試験片では、7日間の培養で最大で4mm、そして平均で約2mmの直径のカビのコロニーが目視され、その3枚の試験片におけるコロニー数の平均は17個であった。 相対湿度90%においても、約1/3のコロニーがクラドスポリウム属で形成されていた。
相対湿度84%に調節されている(4) のKCl湿室に入れられた試験片では、7日間の培養でカビのコロニーの発育は全く目視されず、2週間の培養でやっとコロニーがうっすらと目視されるようになり、3週間の培養ではっきりとコロニーが目視されるようになったが、その色は他の湿室で培養された場合に生ずるコロニーよりも淡色であった。また、この3週間後に形成されたコロニーの平均直径は約2mmで、その3枚の試験片におけるコロニー数の平均は7個であった。
この場合に発育したコロニーの数は、相対湿度が90%に調節されている上記の環境で生じたコロニー数の半分以下であり、また、クラドスポリウム属のコロニーは現れないで、ペニシリウム属とアスペルギルス属レストリクタスグループのコロニーだけが現れた。
以上の(1)〜(4)の湿室において最終的に形成されたカビのコロニーの状態を図2と同様にイメージ図として図示すると、図4〜7のようになる。
以上の実験により、温度が一定である場合、相対湿度が高い環境ほどカビが早く発育し、また、相対湿度が90%以上の環境であれば1週間でカビのコロニーが目視できるようになり、そして相対湿度が84%であっても3週間でコロニーが目視できるほどにカビが発育することが判明した。
また、相対湿度97%付近を保つような環境は、多種類のカビによって汚染される可能性があり、相対湿度84%付近を保つような環境は、ペニシリウム属又はアスペルギルス属レストリクタスグループによって汚染される可能性が高いことが分かった。
以上に述べた説明から明らかなように、本発明は、カビの発育を避けなければならない様々な箇所が実際にどのような種類のカビで汚染されるのかされないのかを知るための手段として広範囲に利用することができる。
また、例えば、特定のカビに対してアレルギーを起こすことが分かっている患者の住宅が十分なカビ対策が採られて既に問題のない住環境になっているのか、あるいは住宅内の空気中にその特定のカビが多量に浮遊して、アレルギーを起こすこのカビに対して適切な対策が必要であるのかを知るのに本発明を利用することができる。
更に、カビに対するアレルギーが疑われている患者において、既知のカビアレルゲンを用いてもアレルギーの原因となるカビの種類を特定できない場合であっても、その住宅内の空気中に浮遊して患者にアレルギーを起こす原因となっているカビを分離して、このカビの種類を特定するのにも本発明を利用することができる。
1・・・・・・・・・・・試験片
2・・・・・・・・・・・培養部材
3・・・・・・・・・・・支持体
2・・・・・・・・・・・培養部材
3・・・・・・・・・・・支持体
Claims (4)
- 被調査箇所がカビの発育する環境にあるのかどうかを調査する方法であって、カビが発育するのに適した培地を含浸させたシート状培養部材が支持体に支持されている試験片の前記培養部材を前記被調査箇所付近の雰囲気に対し露出させた状態で前記試験片を前記被調査箇所に設置して、その被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビを前記培養部材に付着させた後、そのカビの発育によって新たに着生した胞子が被調査箇所付近の前記雰囲気中に飛散しないように試験片を袋の中に封じ込めて前記被調査箇所に一定の期間放置し、その結果、前記培養部材に付着させたカビの発育状況を観察することによって、前記被調査箇所が、その被調査箇所付近の雰囲気中に浮遊しているカビの発育する環境にあるのかどうかを評価し、そして前記の袋がカビは透過させないで酸素と水分は透過させる通気性を具えていることを特徴とする、前記調査方法。
- 前記の袋が、カビは透過させないで酸素と水分は透過させる通気性を具えているメッシュ、織布、不織布、フィルム又はシートで作られている、請求項1の調査方法。
- 請求項1又は2の調査方法で用いられる試験片であって、前記のシート状培養部材が支持体に嵌め込まれるか、又は貼り付けられることによって支持体に支持される、前記試験片。
- 前記のシート状培養部材が濾紙に培地を含浸させてなる、請求項3記載の試験片。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100943679B1 (ko) * | 2003-10-24 | 2010-02-22 | 헤름.프리에드르.?c네 게엠베하 앤 컴퍼니 | 관절을 구비하는 마루 프로파일 구성 |
CN106929391A (zh) * | 2017-04-06 | 2017-07-07 | 大连理工大学 | 一种预测室内空气微生物污染潜在性的热湿响应装置及其制作方法 |
-
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- 2006-11-14 JP JP2006307678A patent/JP2008118942A/ja not_active Withdrawn
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JP2018174915A (ja) * | 2017-04-06 | 2018-11-15 | 大連理工大学Dalian University of Technology | 室内環境における空中微生物汚染の潜在的可能性を予測する湿熱応答装置及びその製造方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20100202 |