以下、本発明の液晶表示素子の製造方法について詳細に説明する。
本発明の液晶表示素子の製造方法は、第1基材上に第1電極層および第1配向膜がこの順に積層された液晶側基板を、上記強誘電性液晶がスメクチック相を示す温度に設定した後に、上記液晶側基板の第1配向膜上に塗布された上記強誘電性液晶がスメクチック相状態となるように、上記第1配向膜上に上記強誘電性液晶を塗布する液晶塗布工程と、上記強誘電性液晶の塗布欠陥の有無を検査する検査工程と、上記検査工程にて塗布欠陥が検出された場合に、上記第1配向膜上の欠陥部分に上記強誘電性液晶を吐出法によって塗布する修正工程と、上記強誘電性液晶が塗布された液晶側基板、ならびに、第2基材上に第2電極層および第2配向膜がこの順に積層された対向基板を貼り合わせる基板貼り合わせ工程とを有することを特徴とするものである。
本発明の液晶表示素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。図1〜図3は本発明の液晶表示素子の製造方法の一例を示す図であり、図2(a)は図1のA−A線断面図であり、図2(b)は図3のB−B線断面図である。
まず、図1および図2(a)に示すように、液晶側基板2aを強誘電性液晶がスメクチック相を示す温度に設定し、また塗布される強誘電性液晶を強誘電性液晶が等方相を示す温度に加温して、インクジェット装置を用いて、液晶側基板2aの第1配向膜7a上に強誘電性液晶3を連点状にストライプ状に塗布する(液晶塗布工程)。次に、図1に示すように、強誘電性液晶3の塗布欠陥の有無を検査する(検査工程)。
ここで、本発明に用いられる強誘電性液晶の相系列としては、例えば、降温過程において、等方相−ネマチック(N)相−コレステリック(Ch)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、等方相−ネマチック(N)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、等方相−ネマチック(N)相−スメクチックA(SmA)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、等方相−ネマチック(N)相−コレステリック(Ch)相−スメクチックA(SmA)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、などを挙げることができる。
なお、強誘電性液晶がスメクチック相を示す温度とは、強誘電性液晶がカイラルスメクチックC(SmC*)相、スメクチックA(SmA)相等のスメクチック相を示す温度をいう。
上記の例においては、強誘電性液晶3は等方相を示す温度に加温されているが、液晶側基板2aは強誘電性液晶がスメクチック相を示す温度に設定されているので、強誘電性液晶の温度よりも液晶側基板の温度の方が低い。また、強誘電性液晶がネマチック相を示す温度に加温されている場合においても、強誘電性液晶の温度よりも液晶側基板の温度の方が低くなる。このため、液晶側基板上に塗布された強誘電性液晶は瞬時に冷やされて、スメクチック相の状態となる。
一般に、等方相状態の強誘電性液晶は無色透明であるが、スメクチック相状態の強誘電性液晶は白濁している。本発明においては、液晶側基板上に塗布された強誘電性液晶は瞬時に冷やされてスメクチック相の状態になるので、液晶側基板の所望の位置に強誘電性液晶が塗布されたか否かを視認することが可能となる。例えば図1に示すように、強誘電性液晶3の塗布欠陥を目視等により容易に検出することができる。
次に、図1に示すように、強誘電性液晶3の塗布欠陥が検出された場合には、図3に示すように、強誘電性液晶を強誘電性液晶が等方相を示す温度に加温し、インクジェット装置を用いて、液晶側基板2a上の欠陥部分11に強誘電性液晶3を吐出する(修正工程)。
本発明においては、上述したように、液晶側基板を強誘電性液晶がスメクチック相を示す温度に設定することにより、液晶側基板の所望の位置に強誘電性液晶が塗布されたか否かを視認することができるので、欠陥部分に強誘電性液晶を吐出することによって、塗布欠陥を容易に修正することができる。
このように、検査工程および修正工程を行うことにより、液晶表示素子の歩留まりを向上させることが可能である。
次に、強誘電性液晶の塗布後、図3および図2(b)に示すように、液晶側基板2a上に液晶封入領域を囲むようにシール剤4を枠状に塗布する。
次に、図2(c)に示すように、第1基材5a上に第1電極層6aおよび第1配向膜7aが積層され、強誘電性液晶3が塗布された液晶側基板2aと、第2基材5b上に第2電極層6bおよび第2配向膜7bが積層された対向基板2bとを、第1配向膜7aおよび第2配向膜7bが対向するように配置する。この際、液晶側基板2aおよび対向基板2bを、強誘電性液晶が等方相を示す温度まで加熱する。次いで、液晶側基板2aおよび対向基板2bの間を十分に減圧し、図2(d)に示すように、減圧下で液晶側基板2aおよび対向基板2bを重ね合わせる。この際、強誘電性液晶は液晶側基板2aおよび対向基板2bの間を濡れ拡がる。そして、液晶側基板2aおよび対向基板2bに所定の圧力を加えてセルギャップを均一にし、常圧に戻すことでさらに圧力を加える。次いで、シール剤4を加熱して硬化させ、液晶側基板2aおよび対向基板2bを貼り合わせる(基板貼り合わせ工程)。その後、室温まで徐冷することにより、封入された強誘電性液晶を配向させる。
一般に、液晶は温度が低くなるにつれて粘度が高くなる。例えば、等方相、ネマチック相またはコレステリック相の状態の強誘電性液晶は液状であり、スメクチック相状態の強誘電性液晶はペースト状である。本発明においては、液晶側基板上に塗布された強誘電性液晶は瞬時に冷やされてスメクチック相状態になり、粘度が高くなってペースト状になるので、容易には濡れ拡がらない。一方、従来では、強誘電性液晶および基板を、強誘電性液晶がコレステリック相、ネマチック相または等方相を示す温度に加熱していたため、基板上に塗布された強誘電性液晶は、粘度が低く液状であり、濡れ拡がりやすかった。したがって、本発明においては、従来の場合と比較して、液晶塗布工程にて強誘電性液晶が空気に触れる面積を小さくすることができる。
また一般に、強誘電性液晶は室温にてスメクチック相を示す。すなわち、本発明においては、液晶側基板の温度を室温に設定することができる。これに対し、一般に、強誘電性液晶がコレステリック相、ネマチック相または等方相を示す温度は室温よりも高い。
したがって、液晶側基板を強誘電性液晶がスメクチック相を示す温度に設定することにより、液晶塗布工程での強誘電性液晶の劣化を抑制することが可能となる。
以下、本発明の液晶表示素子の製造方法における各工程について説明する。
1.液晶塗布工程
本発明における液晶塗布工程は、第1基材上に第1電極層および第1配向膜がこの順に積層された液晶側基板を、上記強誘電性液晶がスメクチック相を示す温度に設定した後に、上記液晶側基板の第1配向膜上に塗布された上記強誘電性液晶がスメクチック相状態となるように、上記第1配向膜上に上記強誘電性液晶を塗布する工程である。
以下、強誘電性液晶、液晶側基板、および強誘電性液晶の塗布方法について説明する。
(1)強誘電性液晶
本発明に用いられる強誘電性液晶としては、カイラルスメクチックC相(SmC*)を発現するものであれば特に限定されるものではない。強誘電性液晶の相系列としては、例えば、降温過程において、ネマチック(N)相−コレステリック(Ch)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、ネマチック(N)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、ネマチック(N)相−スメクチックA(SmA)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、ネマチック(N)相−コレステリック(Ch)相−スメクチックA(SmA)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、などを挙げることができる。
また、強誘電性液晶としては、クラークおよびラガーウォルにより提唱された電圧非印加時に安定状態を二つ有する双安定性のもの(図4上段)、および、電圧無印加時の液晶層の状態がひとつの状態で安定化している(以下、これを「単安定」と称する。)もの(図4下段、NONAKA, T., LI, J., OGAWA, A., HORNUNG, B., SCHMIDT, W., WINGEN, R., and DUBAL, H., 1999, Liq. Cryst., 26, 1599.)のいずれも用いることができる。中でも、単安定性を示す強誘電性液晶が好ましい。単安定性を示す強誘電性液晶を用いた場合には、電圧変化により液晶のダイレクタ(分子軸の傾き)を連続的に変化させ、透過光度をアナログ変調することで、階調表示が可能となるからである。
特に、液晶表示素子をフィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させる場合には、単安定性を示す液晶材料を用いることが好ましい。単安定性を示す液晶材料を用いることにより、TFTを用いたアクティブマトリックス方式による駆動が可能になり、また、電圧変調により階調制御が可能になり、高精細で高品位の表示を実現することができるからである。
なお、「単安定性を示す」とは、電圧無印加時の強誘電性液晶の状態がひとつの状態で安定化している状態をいう。強誘電性液晶は、図5に例示するように、液晶分子13が層法線zから傾いており、層法線zに垂直な底面を有する円錐(コーン)の稜線に沿って回転する。このような円錐(コーン)において、液晶分子13の層法線zに対する傾き角をチルト角θという。このように、液晶分子13は層法線zに対しチルト角±θだけ傾く二つの状態間をコーン上に動作することができる。具体的に説明すると、単安定性を示すとは、電圧無印加時に液晶分子13がコーン上のいずれかひとつの状態で安定化している状態をいう。
単安定性を示す液晶材料の中でも、例えば図4左下に示すような、正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作する、half−V shaped switching(以下、HV字型スイッチングと称する。)特性を示すものが特に好ましい。このようなHV字型スイッチング特性を示す強誘電性液晶を用いると、白黒シャッターとしての開口時間を十分に長くとることができ、これにより時間的に切り替えられる各色をより明るく表示することができ、明るいカラー表示の液晶表示素子を実現することができるからである。
なお、「HV字型スイッチング特性」とは、印加電圧に対する光透過率が非対称な電気光学特性をいう。
このような強誘電性液晶としては、一般に知られる液晶材料の中から要求特性に応じて種々選択することができる。
特に、Ch相からSmA相を経由しないでSmC*相を発現する液晶材料は、HV字型スイッチング特性を示すものとして好適である。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製「R2301」が挙げられる。
また、SmA相を経由する液晶材料としては、材料選択の幅が広いことから、Ch相からSmA相を経由してSmC*相を発現するものが好ましい。この場合、SmC*相を示す単一の液晶材料を用いることもできるが、低粘度でSmC相を示しやすいノンカイラルな液晶(以下、ホスト液晶とする場合がある。)に、それ自身ではSmC相を示さないが大きな自発分極と適当な螺旋ピッチを誘起する光学活性物質を少量添加することにより、上記のような相系列を示す液晶材料が、低粘度であり、より速い応答性を実現できることから好ましい。
上記ホスト液晶としては、広い温度範囲でSmC相を示す材料であることが好ましく、一般に強誘電性液晶のホスト液晶として知られているものであれば特に限定されることなく使用することができる。例えば、下記一般式:
Ra−Q1−X1−(Q2−Y1)m−Q3−Rb
(式中、RaおよびRbはそれぞれ、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニルオキシ基であり、Q1、Q2およびQ3はそれぞれ、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基であり、これらの基はハロゲン原子、水酸基、シアノ基等の置換基を有していてもよく、X1およびY1はそれぞれ、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−C≡C−または単結合であり、mは0または1である。)で表される化合物を使用することができる。ホスト液晶としては、上記化合物を1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記ホスト液晶に添加する光学活性物質としては、自発分極が大きく、適当な螺旋ピッチを誘起する能力を持った材料であれば特に限定されるものではなく、一般にSmC相を示す液晶組成物に添加する材料として知られるものを使用することができる。特に少量の添加量で大きな自発分極を誘起できる材料であることが好ましい。このような光学活性物質としては、例えば、下記一般式:
Rc−Q1−Za−Q2−Zb−Q3−Zc−Rd
(式中、Q1、Q2、Q3は上記一般式と同じ意味を表し、Za、ZbおよびZcは−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−C≡C−、−CH=N−、−N=N−、−N(→O)=N−、−C(=O)S−または単結合であり、Rcは不斉炭素原子を有していてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニルオキシ基であり、Rdは不斉炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニルオキシ基であり、RcおよびRdはハロゲン原子、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい。)で表される化合物を使用することができる。光学活性物質としては、上記化合物を1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
SmA相を経由する強誘電性液晶として、具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製「FELIXM4851−100」などが挙げられる。
また本発明においては、強誘電性液晶に任意の化合物を混合してもよい。任意の化合物としては、液晶表示素子に求められる機能に応じて任意の機能を備えるものを用いることができる。好適に用いられる化合物としては、重合性モノマーを挙げることができる。強誘電性液晶に重合性モノマーを混合することにより、強誘電性液晶の配列をいわゆる「高分子安定化」することができ、優れた配向安定性が得られるからである。
重合性モノマーとしては、重合反応により重合物を生じる化合物であれば特に限定されるものではない。重合性モノマーとしては、加熱処理により重合反応を生じる熱硬化性樹脂モノマー、および活性放射線の照射により重合反応を生じる活性放射線硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。中でも、活性放射線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂モノマーを用いる場合は、重合反応を生じさせるために加温処理をすることが必要であるため、このような加温処理により強誘電性液晶の規則的な配列が損なわれたり、相転移が誘起されてしまったりするおそれがある。一方、活性放射線硬化性樹脂モノマーを用いる場合は、このようなおそれがなく、重合反応が生じることによって強誘電性液晶の配列が害されることが少ないからである。
活性放射線硬化性樹脂モノマーとしては、電子線の照射により重合反応を生じる電子線硬化性樹脂モノマー、および光照射により重合反応を生じる光硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。中でも、光硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。光硬化性樹脂モノマーを用いることにより、製造工程を簡略化できるからである。
光硬化性樹脂モノマーとしては、波長が150nm〜500nmの範囲内の光を照射することにより、重合反応を生じるものであれば特に限定されるものではない。中でも波長が250nm〜450nmの範囲内、特に300nm〜400nmの範囲内の光を照射することにより重合反応を生じる紫外線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。照射装置の容易性等の面において利点を有するからである。
紫外線硬化性樹脂モノマーが有する重合性官能基は、上記波長領域の紫外線照射により、重合反応を生じるものであれば特に限定されるものではない。特に、アクリレート基を有する紫外線硬化型樹脂モノマーを用いることが好ましい。
また、紫外線硬化性樹脂モノマーは、一分子中に一つの重合性官能基を有する単官能性モノマーであってもよく、また、一分子中に二つ以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーであってもよい。中でも、多官能性モノマーを用いることが好ましい。多官能性モノマーを用いることにより、より強いポリマーネットワークを形成することができるため、分子間力および配向膜界面におけるポリマーネットワークを強化することができる。これにより、温度変化による強誘電性液晶の配列の乱れを抑制することができる。
多官能性モノマーの中でも、分子の両末端に重合性官能基を有する2官能性モノマーが好ましく用いられる。分子の両端に重合性官能基を有することにより、ポリマー同士の間隔が広いポリマーネットワークを形成することができ、重合性モノマーの重合物による駆動電圧の低下を防止できるからである。
また、紫外線硬化性樹脂モノマーの中でも、液晶性を発現する紫外線硬化性液晶モノマーを用いることが好ましい。このような紫外線硬化性液晶モノマーが好ましい理由は次の通りである。すなわち、紫外線硬化性液晶モノマーは液晶性を示すことから、配向膜の配向規制力により規則的に配列することができる。このため、紫外線硬化性液晶モノマーを、規則的に配列した後に重合反応を生じさせることにより、規則的な配列状態を維持したまま固定化することができる。このような規則的な配列状態を有する重合物が存在することにより、強誘電性液晶の配向安定性を向上させることができ、優れた耐熱性および耐衝撃性を得ることができる。
紫外線硬化性液晶モノマーが示す液晶相としては、特に限定されるものではなく、例えば、N相、SmA相、SmC相を挙げることができる。
本発明に用いられる紫外線硬化性液晶モノマーとしては、例えば、下記式(1)〜(3)に示す化合物を挙げることができる。
上記式(1)および(2)において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。M1およびM2は、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等の結合基を介して結合していてもよい。
また、上記式(3)において、Yは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。
上記の中でも、好適に用いられるものとして、下記式の化合物を例示することができる。
上記重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、上記式で示される紫外線硬化性液晶モノマーと他の紫外線硬化性樹脂モノマーとを併用してもよい。
強誘電性液晶に対する重合性モノマーの配合量としては、強誘電性液晶の配向安定性を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されないが、強誘電性液晶および重合性モノマーの合計質量を100質量%とした場合に、重合性モノマーの配合量が0.5質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1質量%〜20質量%の範囲内、さらに好ましくは1質量%〜10質量%の範囲内である。重合性モノマーの配合量が上記範囲よりも多いと、駆動電圧が増加したり、応答速度が低下したりする場合があるからである。また、重合性モノマーの配合量が上記範囲よりも少ないと、強誘電性液晶の配向安定性が不十分となり、耐熱性や耐衝撃性が低下する可能性があるからである。
重合性モノマーとして紫外線硬化性液晶モノマーを用いた場合、紫外線硬化性液晶モノマーを重合させて得られる重合物としては、主鎖に液晶性を示す原子団を有することにより主鎖が液晶性を示す主鎖液晶型重合物であってもよく、側鎖に液晶性を示す原子団を有することにより側鎖が液晶性を示す側鎖液晶型重合物であってもよい。中でも、側鎖液晶型重合物が好ましい。液晶性を示す原子団が側鎖に存在することにより、この原子団の自由度が高くなるため、液晶性を示す原子団が配向しやすくなるからである。また、その結果として強誘電性液晶の配向安定性を向上させることができるからである。
本発明においては、第1配向膜上に強誘電性液晶を塗布する前に、強誘電性液晶を加温してもよく加温しなくてもよい。この強誘電性液晶の温度は、後述の強誘電性液晶の塗布方法によって適宜選択される。
例えば、強誘電性液晶の塗布方法として吐出法を用いる場合には、強誘電性液晶をこの強誘電性液晶が等方相またはN相を示す温度に加温することが好ましい。すなわち、強誘電性液晶をN相以上の温度に加温することが好ましい。例えば、降温過程において等方相−N相−Ch相−SmC*相と相変化する、あるいは、等方相−N相−Ch相−SmA相−SmC*相と相変化する強誘電性液晶を用いた場合、N相−Ch相転移温度より高い温度に強誘電性液晶を加温することが好ましい。また、降温過程において等方相−N相−SmC*相と相変化する強誘電性液晶を用いた場合、N相−SmC*相転移温度より高い温度に強誘電性液晶を加温することが好ましい。さらに、降温過程において等方相−N相−SmA相−SmC*相と相変化する強誘電性液晶を用いた場合、N相−SmA相転移温度より高い温度に強誘電性液晶を加温することが好ましい。強誘電性液晶を加温しないと、強誘電性液晶の粘度が高すぎて吐出ノズルがつまってしまい、強誘電性液晶を安定して吐出するのが非常に困難になるからである。
上記の場合には、特に、強誘電性液晶を強誘電性液晶が等方相を示す温度に加温することが好ましい。
強誘電性液晶の具体的な温度としては、強誘電性液晶の種類によって異なり、適宜選択される。例えば、N相−Ch相転移温度、N相−SmC*相転移温度またはN相−SmA相転移温度よりも10℃〜20℃程度高い温度、あるいは、N相−等方相転移温度付近、あるいは、N相−等方相転移温度よりも0℃〜10℃高い温度に設定することができる。なお、強誘電性液晶の温度の上限は、強誘電性液晶が劣化するおそれのない温度とされる。
また、強誘電性液晶の塗布方法として吐出法を用いる場合、強誘電性液晶の粘度が30mPa・s以下、中でも10mPa・s〜20mPa・sの範囲内となるように強誘電性液晶を加温することが好ましい。強誘電性液晶の粘度が高すぎると、吐出ノズルがつまってしまい、強誘電性液晶を安定して吐出するのが非常に困難になるからである。
一方、強誘電性液晶の塗布方法としてコーティング法や印刷法を用いる場合には、強誘電性液晶を加温しないことが好ましい。コーティング法や印刷法を用いる場合には、塗工性を向上させるために強誘電性液晶を溶剤で希釈した強誘電性液晶溶液を用いることが好ましい。そのため、強誘電性液晶溶液を加温すると、強誘電性液晶溶液中の溶剤が揮発してしまい、強誘電性液晶を塗布するのが非常に困難になるからである。
一般に強誘電性液晶は室温付近でスメクチック相を示すので、上記の場合には、強誘電性液晶を強誘電性液晶がスメクチック相を示す温度に設定することが好ましいといえる。
(2)液晶側基板
本発明に用いられる液晶側基板は、第1基材上に第1電極層および第1配向膜がこの順に積層されたものである。
以下、液晶側基板の各構成および液晶側基板の温度について説明する。
(i)第1基材
本発明に用いられる第1基材は、一般に液晶表示素子の基材として用いられるものであれば特に限定されるものではなく、透明であっても不透明であってもよい。
例えば、TFTを用いたアクティブマトリックス方式の透過型液晶表示素子を作製する場合には、第1基材は透明とされる。また、TFTを用いたアクティブマトリックス方式の反射型液晶表示素子を作製する場合であって、液晶側基板が共通電極基板である場合も、第1基材は透明とされる。一方、TFTを用いたアクティブマトリックス方式の反射型液晶表示素子を作製する場合であって、液晶側基板がTFT基板である場合、第1基材には透明性は要求されない。
第1基材としては、例えば、ガラス板、プラスチック板などが好ましく挙げられる。
(ii)第1電極層
本発明に用いられる第1電極層は、一般に液晶表示素子の電極として用いられているものであれば特に限定されるものではない。第1電極層は、透明であっても不透明であってもよく、画像表示面に応じて適宜選択される。液晶側基板が画像表示面となる場合は、第1電極層は透明であることが好ましく、透明導電体で構成されることが好ましい。透明導電体材料としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)等が好ましく挙げられる。
また、例えば、TFTを用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子を作製する場合であって、液晶側基板がTFT基板である場合には、第1電極層は画素電極とされる。一方、液晶側基板が共通電極基板である場合には、第1電極層は共通電極とされる。
第1電極層の形成方法としては、例えば化学蒸着(CVD)法や、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等の物理蒸着(PVD)法などを挙げることができる。
(iii)第1配向膜
本発明に用いられる第1配向膜は、強誘電性液晶の配向制御が可能なものであれば特に限定されるものではない。第1配向膜としては、例えばラビング処理を施したラビング配向膜や、光配向処理を施した光配向膜などを用いることができる。中でも、光配向膜を用いることが好ましい。光配向処理は非接触配向処理であることから静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御ができる点で有用であるからである。
また、第1配向膜は、ラビング配向膜や光配向膜等と、反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層とが積層されたものであってもよい。反応性液晶はラビング配向膜や光配向膜等により配向しており、例えば紫外線を照射して反応性液晶を重合させ、その配向状態を固定化することにより反応性液晶層を形成することができる。反応性液晶層は、このように反応性液晶の配向状態を固定化してなるものであるので、液晶を配向させる配向膜として機能する。また、反応性液晶は固定化されているため、温度等の影響を受けないという利点を有する。さらに、反応性液晶は、液晶と構造が比較的類似しており、液晶との相互作用が強いので、ラビング配向膜や光配向膜等のみを用いた場合よりも効果的に液晶の配向を制御することができる。
以下、光配向膜および反応性液晶層について説明する。
(光配向膜)
光配向膜は、後述する光配向膜の構成材料を塗布した基板に偏光を制御した光を照射し、光励起反応(分解、異性化、二量化)を生じさせて得られた膜に異方性を付与することによりその膜上の液晶分子を配向させるものである。
本発明に用いられる光配向膜の構成材料は、光を照射して光励起反応を生じることにより、液晶を配向させる効果(光配列性:photoaligning)を有するものであれば特に限定されるものではない。このような材料としては、大きく、光反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料と、光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型の材料とに分けることができる。
光配向膜の構成材料が光励起反応を生じる光の波長領域は、紫外光域の範囲内、すなわち10nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、250nm〜380nmの範囲内であることがより好ましい。
以下、光反応型の材料および光異性化型の材料について説明する。
a.光反応型
光反応型の材料とは、光反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する材料である。本発明に用いられる光反応型の材料としては、このような特性を有するものであれば特に限定されるものではないが、これらの中でも、光二量化反応または光分解反応を生じることにより上記光配向膜に異方性を付与する材料であることが好ましい。
ここで、光二量化反応とは、光照射により偏光方向に配向した反応部位がラジカル重合して分子2個が重合する反応をいい、この反応により偏光方向の配向を安定化し、光配向膜に異方性を付与することができるものである。また、光分解反応とは、光照射により偏光方向に配向したポリイミドなどの分子鎖を分解する反応をいい、この反応により偏光方向に垂直な方向に配向した分子鎖を残し、光配向膜に異方性を付与することができるものである。本発明においては、これらの光反応型の材料の中でも、露光感度が高く、材料選択の幅が広いことから、光二量化反応により光配向膜に異方性を付与する材料を用いることがより好ましい。
光二量化反応を利用した光反応型の材料としては、光二量化反応により光配向膜に異方性を付与することができる材料であれば特に限定されるものではないが、ラジカル重合性の官能基を有し、かつ、偏光方向により吸収を異にする二色性を有する光二量化反応性化合物を含むことが好ましい。偏光方向に配向した反応部位をラジカル重合することにより、光二量化反応性化合物の配向が安定化し、光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
このような特性を有する光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリン、キノリン、カルコン基およびシンナモイル基から選ばれる少なくとも1種の反応部位を有する二量化反応性ポリマーを挙げることができる。
これらの中でも光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリンまたはキノリンのいずれかを含む二量化反応性ポリマーであることが好ましい。偏光方向に配向したα、β不飽和ケトンの二重結合が反応部位となってラジカル重合することにより、光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
上記二量化反応性ポリマーの主鎖としては、ポリマー主鎖として一般に知られているものであれば特に限定されるものではないが、芳香族炭化水素基などの、上記側鎖の反応部位同士の相互作用を妨げるようなπ電子を多く含む置換基を有していないものであることが好ましい。
上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、5,000〜40,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜20,000の範囲内であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量が小さすぎると、光配向膜に適度な異方性を付与することができない場合がある。逆に、大きすぎると、光配向膜形成時の塗工液の粘度が高くなり、均一な塗膜を形成しにくい場合がある。
二量化反応性ポリマーとしては、下記式(4)で表される化合物を例示することができる。
上記式において、M11およびM12は、それぞれ独立して、単重合体または共重合体の単量体単位を表す。例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、2−クロロアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−クロロアクリルアミド、スチレン誘導体、マレイン酸誘導体、シロキサンなどが挙げられる。M12としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレートであってもよい。xおよびyは、共重合体とした場合の各単量体単位のモル比を表すものであり、それぞれ、0<x≦1、0≦y<1であり、かつ、x+y=1を満たす数である。nは4〜30,000の整数を表す。D1およびD2は、スペーサー単位を表す。
R1は−A1−(Z1−B1)z−Z2−で表される基であり、R2は−A1−(Z1−B1)z−Z3−で表される基である。ここで、A1およびB1は、それぞれ独立して、共有単結合、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレンを表す。また、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、共有単結合、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CONR−、−RNCO−、−COO−または−OOC−を表す。Rは、水素原子または低級アルキル基であり、Z3は、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキルまたはアルコキシ、シアノ、ニトロ、ハロゲンである。zは、0〜4の整数である。E1は、光二量化反応部位を表し、例えば、ケイ皮酸エステル、クマリン、キノリン、カルコン基、シンナモイル基などが挙げられる。jおよびkは、それぞれ独立して、0または1である。
このような二量化反応性ポリマーとしては、具体的に下記式(4-1)〜(4-4)で表される化合物を挙げることができる。
また、上記二量化反応性ポリマーとして、より具体的には下記式(4-5)〜(4-8)で表される化合物を挙げることができる。
本発明においては、光二量化反応性化合物として、上述した化合物の中から、要求特性に応じて光二量化反応部位や置換基を種々選択することができる。また、光二量化反応性化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、光二量化反応を利用した光反応型の材料としては、上記光二量化反応性化合物のほか、光配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。
重合開始剤または重合禁止剤は、一般に公知の化合物の中から、光二量化反応性化合物の種類によって適宜選択して用いればよい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量は、光二量化反応性化合物に対し、0.001重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましく、0.1重量%〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量が小さすぎると重合が開始(禁止)されない場合があり、逆に大きすぎると、反応が阻害される場合があるからである。
光分解反応を利用した光反応型の材料としては、例えば日産化学工業(株)製のポリイミド「RN1199」などを挙げることができる。また、光二量化反応を利用した光反応型の材料としては、例えばRolic technologies社製の「ROP102」、「ROP103」などを挙げることができる。
b.光異性化型
光異性化型の材料とは、光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する材料である。本発明に用いられる光異性化型の材料としては、このような特性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、光異性化反応を生じることにより上記光配向膜に異方性を付与する光異性化反応性化合物を含むものであることが好ましい。このような光異性化反応性化合物を含むことにより、光照射により、複数の異性体のうち安定な異性体が増加し、それにより光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
光異性化反応性化合物としては、上記のような特性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、偏光方向により吸収を異にする二色性を有し、かつ、光照射により光異性化反応を生じるものであることが好ましい。このような特性を有する光異性化反応性化合物の偏光方向に配向した反応部位の異性化を生じさせることにより、上記光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
また、光異性化反応性化合物が生じる光異性化反応としては、シス−トランス異性化反応であることが好ましい。光照射によりシス体またはトランス体のいずれかの異性体が増加し、それにより光配向膜に異方性を付与することができるからである。
光異性化反応性化合物としては、単分子化合物、または、光もしくは熱により重合する重合性モノマーを挙げることができる。これらは用いられる液晶の種類に応じて適宜選択すればよいが、光照射により光配向膜に異方性を付与した後、ポリマー化することにより、その異方性を安定化することができることから、重合性モノマーを用いることが好ましい。このような重合性モノマーの中でも、光配向膜に異方性を付与した後、その異方性を良好な状態に維持したまま容易にポリマー化できることから、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマーであることが好ましい。
上記重合性モノマーは、単官能のモノマーであっても、多官能のモノマーであってもよいが、ポリマー化による光配向膜の異方性がより安定なものとなることから、2官能のモノマーであることが好ましい。
このような光異性化反応性化合物としては、具体的には、アゾベンゼン骨格やスチルベン骨格などのシス−トランス異性化反応性骨格を有する化合物を挙げることができる。
この場合に、分子内に含まれるシス−トランス異性化反応性骨格の数は、1つであっても2つ以上であってもよいが、強誘電性液晶の配向制御が容易となることから、2つであることが好ましい。
上記シス−トランス異性化反応性骨格は、液晶分子との相互作用をより高めるために置換基を有していてもよい。置換基は、液晶分子との相互作用を高めることができ、かつ、シス−トランス異性化反応性骨格の配向を妨げないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基、スルホン酸ナトリウム基、水酸基などが挙げられる。これらの構造は、用いられる液晶の種類に応じて、適宜選択することができる。
また、光異性化反応性化合物としては、分子内にシス−トランス異性化反応性骨格以外にも、液晶分子との相互作用をより高められるように、芳香族炭化水素基などのπ電子が多く含まれる基を有していてもよく、シス−トランス異性化反応性骨格と芳香族炭化水素基は、結合基を介して結合していてもよい。結合基は、液晶分子との相互作用を高められるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、−COO−、−OCO−、−O−、−C≡C−、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−などが挙げられる。
なお、光異性化反応性化合物として、重合性モノマーを用いる場合には、上記シス−トランス異性化反応性骨格を、側鎖として有していることが好ましい。上記シス−トランス異性化反応性骨格を側鎖として有していることにより、光配向膜に付与される異方性の効果がより大きなものとなり、強誘電性液晶の配向制御に特に適したものとなるからである。この場合に、前述した分子内に含まれる芳香族炭化水素基や結合基は、液晶分子との相互作用が高められるように、シス−トランス異性化反応性骨格と共に、側鎖に含まれていることが好ましい。
また、上記重合性モノマーの側鎖には、シス−トランス異性化反応性骨格が配向しやすくなるように、アルキレン基などの脂肪族炭化水素基をスペーサーとして有していてもよい。
上述したような単分子化合物または重合性モノマーの光異性化反応性化合物の中でも、本発明に用いられる光異性化反応性化合物としては、分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物であることが好ましい。アゾベンゼン骨格は、π電子を多く含むため、液晶分子との相互作用が高く、強誘電性液晶の配向制御に特に適しているからである。
以下、アゾベンゼン骨格が光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与できる理由について説明する。まず、アゾベンゼン骨格に、直線偏光紫外光を照射すると、下記式に示されるように、分子長軸が偏光方向に配向しているトランス体のアゾベンゼン骨格が、シス体に変化する。
アゾベンゼン骨格のシス体は、トランス体に比べて化学的に不安定であるため、熱的にまたは可視光を吸収してトランス体に戻るが、このとき、上記式の左のトランス体になるか右のトランス体になるかは同じ確率で起こる。そのため、紫外光を吸収し続けると、右側のトランス体の割合が増加し、アゾベンゼン骨格の平均配向方向は紫外光の偏光方向に対して垂直になる。本発明においては、この現象を利用することにより、アゾベンゼン骨格の配向方向を揃え、光配向膜に異方性を付与し、その膜上の液晶分子の配向を制御することができるのである。
このような分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物のうち、単分子化合物としては、例えば、下記式(5)で表される化合物を挙げることができる。
上記式中、R41は各々独立して、ヒドロキシ基を表す。R42は−(A41−B41−A41)m−(D41)n−で表される連結基を表し、R43は(D41)n−(A41−B41−A41)m−で表される連結基を表す。ここで、A41は二価の炭化水素基を表し、B41は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、mは0〜3の整数を表す。D41は、mが0のとき二価の炭化水素基を表し、mが1〜3の整数のとき−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、nは0または1を表す。R44は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基またはメトキシカルボニル基を表す。ただし、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。R45は各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。ただし、カルボキシ基またはスルホ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
上記式で表される化合物の具体例としては、下記式(5-1)〜(5-4)に示す化合物を挙げることができる。
また、上記アゾベンゼン骨格を側鎖として有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式(6)で表される化合物を挙げることができる。
上記式中、R51は各々独立して、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、ビニルイミノカルボニル基、ビニルイミノカルボニルオキシ基、ビニル基、イソプロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシカルボニル基、イソプロペニルイミノカルボニル基、イソプロペニルイミノカルボニルオキシ基、イソプロペニル基またはエポキシ基を表す。R52は−(A51−B51−A51)m−(D51)n−で表される連結基を表し、R53は(D51)n−(A51−B51−A51)m−で表される連結基を表す。ここで、A51は二価の炭化水素基を表し、B51は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、mは0〜3の整数を表す。D51は、mが0のとき二価の炭化水素基を表し、mが1〜3の整数のとき−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、nは0または1を表す。R54は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基またはメトキシカルボニル基を表す。ただし、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。R55は各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。ただし、カルボキシ基またはスルホ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
上記式で表される化合物の具体例としては、下記式(6-1)〜(6-4)に示す化合物を挙げることができる。
本発明においては、このような光異性化反応性化合物の中から、要求特性に応じて、シス−トランス異性化反応性骨格や置換基を種々選択することができる。なお、これらの光異性化反応性化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明に用いられる光異性化型の材料としては、上記光異性化反応性化合物のほか、光配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよい。上記光異性化反応性化合物として重合性モノマーを用いる場合には、添加剤としては、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。
重合開始剤または重合禁止剤は、一般に公知の化合物の中から、光異性化反応性化合物の種類によって適宜選択して用いればよい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量は、光異性化反応性化合物に対し、0.001重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましく、0.1重量%〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量が小さすぎると重合が開始(禁止)されない場合があり、逆に大きすぎると、反応が阻害される場合があるからである。
c.光配向膜の形成方法
本発明において光配向膜を形成するには、まず光配向膜の構成材料を有機溶剤で希釈した光配向膜形成用塗工液を塗布し、乾燥させる。この場合に、光配向膜形成用塗工液中の光二量化反応性化合物または光異性化反応性化合物の含有量は、0.05重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.2重量%〜2重量%の範囲内であることがより好ましい。含有量が上記範囲より少ないと、配向膜に適度な異方性を付与することが困難となり、逆に含有量が上記範囲より多いと、光配向膜形成用塗工液の粘度が高くなるので均一な塗膜を形成しにくくなるからである。
光配向膜形成用塗工液の塗布方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、ロッドバーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、スロットダイコート法、ワイヤーバーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
上記光配向膜形成用塗工液を塗布することにより得られる膜の厚みは、1nm〜2000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3nm〜100nmの範囲内である。膜の厚みが上記範囲より薄いと十分な光配列性を得ることができない可能性があり、逆に厚みが上記範囲より厚いとコスト的に不利になる場合があるからである。
得られた膜には光配向処理を施すことによって異方性を付与する。具体的には、偏光を制御した光を照射することにより、光励起反応を生じさせて異方性を付与することができる。照射する光の波長領域は、用いられる光配向膜の構成材料に応じて適宜選択すればよいが、紫外光域の範囲内、すなわち100nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは250nm〜380nmの範囲内である。また、偏光方向は、上記光励起反応を生じさせることができるものであれば特に限定されるものではない。
さらに、光配向膜の構成材料として、光異性化反応性化合物の中でも重合性モノマーを用いた場合には、光配向処理を行った後、加熱することにより、ポリマー化し、光配向膜に付与された異方性を安定化することができる。
(反応性液晶層)
本発明に用いられる反応性液晶層は、ラビング配向膜や光配向膜等の上に形成され、反応性液晶を固定化してなるものである。
本発明に用いられる反応性液晶としては、ネマチック相を発現するものであることが好ましい。ネマチック相は、液晶相の中でも配向制御が比較的容易であるからである。
また、反応性液晶は、重合性液晶材料を含有することが好ましい。これにより、反応性液晶の配向状態を固定化することが可能になるからである。重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、および重合性液晶ポリマーのいずれかを用いることができるが、中でも、重合性液晶モノマーが好適に用いられる。重合性液晶モノマーは、他の重合性液晶材料、すなわち重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーと比較して、より低温で配向が可能であり、かつ配向に際しての感度も高く、容易に配向させることができるからである。
上記重合性液晶モノマーとしては、重合性官能基を有する液晶モノマーであれば特に限定されるものではなく、例えばモノアクリレートモノマー、ジアクリレートモノマー等が挙げられる。また、これらの重合性液晶モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
モノアクリレートモノマーとしては、例えば下記式(1)および(2)で表される化合物を例示することができる。
上記式において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。M1およびM2は、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等のスペーサーを介して結合していてもよい。
ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式(7)および(3)に示す化合物を挙げることができる。
上記式において、XおよびYは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。また、mは2〜20の範囲内の整数を表す。上記式(7)において、Xとしては、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、メチルまたは塩素であることが好ましく、中でも炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、特にCH3(CH2)4OCOであることが好ましい。
また、ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式(8)に示す化合物を挙げることができる。
上記式において、Z31およびZ32は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−を表し、R31、R32およびR33は、各々独立して水素または炭素数1〜5のアルキルを表す。また、kおよびmは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。R31、R32およびR33は、k=1の場合、各々独立して炭素数1〜5のアルキルであり、k=0の場合、各々独立して水素または炭素数1〜5のアルキルであることが好ましい。このR31、R32およびR33は、互いに同じであってもよい。
上記式(8)で表される化合物の具体例としては、下記式(8-1)に示す化合物を挙げることができる。
上記式において、Z21およびZ22は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−を表す。また、mは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。
本発明においては、上記の中でも、上記式(7)および(8)で表される化合物が好適に用いられる。上記式(8)で表される化合物として、具体的には旭電化工業株式会社製の「アデカキラコール PLC-7183」、「アデカキラコール PLC-7209」などを挙げることができる。また、アクリレートモノマーとしては、例えばRolic technologies 社製の「ROF-5101」、「ROF-5102」なども挙げられる。
また本発明においては、重合性液晶モノマーの中でも、ジアクリレートモノマーが好適である。ジアクリレートモノマーは、配向状態を良好に維持したまま容易に重合させることができるからである。
上述した重合性液晶モノマーは、それ自体がネマチック相を発現するものでなくてもよい。これらの重合性液晶モノマーは、上述したように2種以上を混合して用いてもよいものであり、これらを混合した組成物すなわち反応性液晶が、ネマチック相を発現するものであればよいからである。
さらに本発明においては、必要に応じて、上記反応性液晶に光重合開始剤や重合禁止剤等を添加してもよい。例えば、電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合はあるが、一般的に用いられている例えば紫外線照射による重合の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられるからである。
本発明に用いることができる光重合開始剤としては、例えばベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲で上記反応性液晶に添加することができる。
反応性液晶層の厚みは、目的とする異方性に応じて適宜調整されるものであり、例えば1nm〜1000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは3nm〜100nmの範囲内である。反応性液晶層の厚みが厚すぎると必要以上の異方性が生じてしまい、また反応性液晶層の厚みが薄すぎると所定の異方性が得られない場合があるからである。
反応性液晶層は、配向膜上に反応性液晶を含む反応性液晶層形成用塗工液を塗布し、配向処理を行い、上記反応性液晶の配向状態を固定化することにより形成することができる。また、反応性液晶層形成用塗工液を塗布するのではなく、ドライフィルム等を予め形成し、これを配向膜上に積層することにより、反応性液晶層を形成してもよい。製造工程の簡便さの観点からは、反応性液晶を溶媒に溶解させて反応性液晶層形成用塗工液を調製し、これを配向膜上に塗布し、溶媒を除去する方法を用いることが好ましい。
上記反応性液晶層形成用塗工液に用いる溶媒としては、上記反応性液晶等を溶解することができ、かつ配向膜の配向能を阻害しないものであれば特に限定されるものではない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ類;などの1種または2種以上が使用可能である。
また、単一種の溶媒を使用しただけでは、上記反応性液晶等の溶解性が不十分であったり、配向膜が侵食されたりする場合がある。この場合には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することができる。上記の溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素類およびグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいのは、エーテル類またはケトン類と、グリコール系溶媒との混合系である。
反応性液晶層形成用塗工液の濃度は、反応性液晶の溶解性や、反応性液晶層の厚みに依存するため一概には規定できないが、通常は0.1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲で調整される。反応性液晶層形成用塗工液の濃度が上記範囲より低いと、反応性液晶が配向しにくくなる場合があり、逆に反応性液晶層形成用塗工液の濃度が上記範囲より高いと、反応性液晶層形成用塗工液の粘度が高くなるので均一な塗膜を形成しにくくなる場合があるからである。
さらに、上記反応性液晶層形成用塗工液には、本発明の目的を損なわない範囲内で、下記に示すような化合物を添加することができる。添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物;などが挙げられる。
上記反応性液晶に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択される。これらの化合物の添加により、反応性液晶の硬化性が向上し、得られる反応性液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
このような反応性液晶層形成用塗工液の塗布方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、プリント法、ディップコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、押し出しコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
また、上記反応性液晶層形成用塗工液を塗布した後は、溶媒を除去するのであるが、この溶媒の除去は、例えば、減圧除去もしくは加熱除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等により行われる。
本発明においては、上述したように塗布された反応性液晶を、配向膜により配向させて液晶規則性を有する状態とする。すなわち、反応性液晶にネマチック相を発現させる。これは、通常はN−I転移点以下で熱処理する方法等の方法により行われる。ここで、N−I転移点とは、液晶相から等方相へ転移する温度を示すものである。
反応性液晶は重合性液晶材料を有するものであり、このような重合性液晶材料の配向状態を固定化するには、重合を活性化する活性放射線を照射する方法が用いられる。ここでいう活性放射線とは、重合性液晶材料に対して重合を起こさせる能力がある放射線をいう。
このような活性放射線としては、重合性液晶材料を重合させることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450nm、さらに好ましくは300〜400nmの照射光が用いられる。
本発明においては、光重合開始剤が紫外線でラジカルを発生し、重合性液晶材料がラジカル重合するような重合性液晶材料に対して、紫外線を活性放射線として照射する方法が好ましい方法であるといえる。活性放射線として紫外線を用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる光重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易であるからである。
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ等の使用が推奨される。また、照射強度は、反応性液晶の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜調整されて照射される。
このような活性照射線の照射は、上記重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。一旦液晶相となった重合性液晶材料は、その後温度を低下させても、配向状態が急に乱れることはないからである。
また、重合性液晶材料の配向状態を固定化する方法としては、上記の活性放射線を照射する方法以外にも、加熱して重合性液晶材料を重合させる方法も用いることができる。この場合に用いられる反応性液晶としては、反応性液晶のN−I転移点以下で、反応性液晶に含有される重合性液晶モノマーが熱重合するものであることが好ましい。
(iv)スペーサ
本発明においては、液晶側基板にスペーサを形成してもよい。スペーサを形成することにより、外部衝撃に弱い強誘電性液晶の配向を安定に維持することができるからである。後述するように対向基板にスペーサを形成する場合には、液晶側基板にはスペーサを形成しなくてもよい。
スペーサとしては、壁状スペーサ、柱状スペーサ、球状スペーサ等を挙げることができる。図7に例示するように液晶側基板2aに壁状スペーサ8を形成した場合には、基板貼り合わせ工程にて、強誘電性液晶が微小な直線状空間に封じ込められ、流動可能な空間が規制されるので、強誘電性液晶の層構造を安定に保持できると考えられる。この場合、配向制御のために、壁状スペーサの長手方向と、第1配向膜の配向処理方向とが直交していることが好ましい。壁状スペーサの長手方向に対して略平行に液晶分子の流動が誘起されるため、強誘電性液晶の配向性をより向上させることができるからである。
ここで、壁状スペーサの長手方向と、第1配向膜の配向処理方向とが直交しているとは、直線状隔壁の長手方向と、配向膜の配向処理方向とのなす角度が90°±5°の範囲であることをいう。この角度は90°±1°の範囲であることが好ましい。
なお、上記の角度は、偏光顕微鏡を用いて、液晶分子の配向方向(配向膜の配向処理方向)および直線状隔壁の長手方向を観察することによって測定することができる。
液晶側基板には、複数のスペーサを形成することができ、所定の位置に規則的に形成することが好ましく、特に略平行に等間隔で形成することが好ましい。複数のスペーサの形成位置が無秩序であると、強誘電性液晶を塗布する位置を調整するのが困難となる場合があるからである。
スペーサのピッチとしては特に限定されるものではないが、例えば壁状スペーサの場合には、100μm〜3mm程度とすることが好ましく、より好ましくは200μm〜1.5mmの範囲内、さらに好ましくは300μm〜1.0mmの範囲内である。壁状スペーサのピッチが上記範囲より狭いと、壁状スペーサ付近での強誘電性液晶の配向不良によって表示品位が低下する可能性があるからである。逆に、壁状スペーサのピッチが上記範囲より広いと、液晶表示素子の大きさによって異なるが、所望の耐衝撃性が得られなかったり、液晶層の厚みを一定に保つことが困難になったりする場合があるからである。なお、壁状スペーサのピッチとは、隣接する壁状スペーサの中心部から中心部までの距離をいう。
また、スペーサの大きさとしては特に限定されるものではないが、例えば壁状スペーサの幅、柱状スペーサの底面の直径、および球状スペーサの直径は、1μm〜20μm程度とすることが好ましく、より好ましくは2μm〜10μmの範囲内、さらに好ましくは5μm〜10μmの範囲内である。上記範囲より大きいと、スペーサが画素領域にも設けられることになり、有効画素面積が狭くなって良好な画像表示が得られない場合があるからである。また、上記範囲より小さいと、スペーサの形成が困難となる場合があるからである。
さらに、スペーサの高さとしては、通常、液晶層の厚みと同程度とされる。
なお、上記スペーサのピッチ、幅、直径および高さ等は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて直線状隔壁の断面を観察することによって測定することができる。
スペーサの形成位置としては特に限定されるものではないが、画素領域を避けてスペーサを形成することが好ましい。スペーサ付近では強誘電性液晶の配向不良が生じやすいので、画像表示に影響のない領域にスペーサを形成することが好ましいからである。例えば、ストライプ状やマトリックス状に形成された第1電極層の開口部に、スペーサを形成することが好ましい。
また、スペーサの形成位置としては、図8に例示するように第1電極層6a上にスペーサ(壁状スペーサ8)を形成してもよく、図9(a)に例示するように第1基材5a上にスペーサ(壁状スペーサ8)を形成してもよい。また、第1基材上にスペーサを形成する場合は、図9(b)に例示するようにスペーサ(壁状スペーサ8)とベース部分8´とを一体に形成してもよい。
スペーサの数としては、液晶表示素子の大きさによって適宜選択される。
このようなスペーサの形成材料としては、一般に液晶表示素子のスペーサに用いられる材料を用いることができる。例えば、樹脂を挙げることができ、中でも感光性樹脂が好ましく用いられる。感光性樹脂はパターニングが容易であるからである。本発明に用いられる感光性樹脂としては、一般に液晶表示素子のスペーサに用いられるものであれば特に限定されるものではない。
スペーサの形成方法としては、所定の位置にスペーサを形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なパターニング法を適用することができる。例えば、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
(v)着色層
本発明においては、液晶側基板に着色層を形成してもよい。着色層を形成した場合には、カラーフィルタ方式の液晶表示素子を得ることができる。後述するように対向基板に着色層を形成する場合には、液晶側基板には着色層を形成しない。
本発明に用いられる着色層としては、一般にカラーフィルタの着色層として用いられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、赤、緑または青の顔料を含有する着色層形成用組成物を用いて、着色層を形成することができる。
着色層の形成方法としては、一般的な方法を適用することができ、例えば、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
(vi)液晶側基板の温度
本発明においては、液晶側基板を、強誘電性液晶がスメクチック相を示す温度に設定する。すなわち、液晶側基板を、強誘電性液晶がSmC*相またはSmA相を示す温度に設定する。例えば、降温過程において等方相−N相−Ch相−SmC*相と相変化する強誘電性液晶を用いた場合、Ch相−SmC*相転移温度より低い温度に液晶側基板を設定する。また、降温過程において等方相−N相−SmC*相と相変化する強誘電性液晶を用いた場合、N相−SmC*相転移温度より低い温度に液晶側基板を設定する。さらに、降温過程において等方相−N相−SmA相−SmC*相と相変化する強誘電性液晶を用いた場合、N相−SmA相転移温度より低い温度に液晶側基板を設定する。また、降温過程において等方相−N相−Ch相−SmA相−SmC*相と相変化する強誘電性液晶を用いた場合、Ch相−SmA相転移温度より低い温度に液晶側基板を設定する。
具体的な温度としては、強誘電性液晶の種類によって異なり、適宜選択される。通常は、液晶側基板を室温(15℃〜30℃程度)に設定する。
(3)強誘電性液晶の塗布方法
本発明において、強誘電性液晶の塗布方法としては、液晶側基板の第1配向膜上に強誘電性液晶を封入可能な所定量で塗布することができる方法であれば特に限定されるものではない。中でも、強誘電性液晶がほとんど流動しないように強誘電性液晶を塗布することができる方法であることが好ましい。第1配向膜上を強誘電性液晶が等方相状態で流動したときに、強誘電性液晶の流動距離が長すぎると、流動した強誘電性液晶が接触した界面で配向が乱れるおそれがあるからである。
通常、強誘電性液晶はパターン状に塗布される。中でも、塗布された強誘電性液晶がほとんど流動しないようなパターン状に強誘電性液晶を塗布することが好ましく、特に強誘電性液晶をストライプ状に塗布することが好ましい。強誘電性液晶をストライプ状に塗布することにより、強誘電性液晶が流動する距離を短くすることができ、強誘電性液晶が流動する際に生じる配向乱れを抑制することが可能である。理由は明らかではないが、強誘電性液晶を間欠的にドット状に塗布する場合と比較して、強誘電性液晶を連続的にストライプ状に塗布する場合では、流動した強誘電性液晶が接触した界面での配向乱れが生じにくい。
一般に、図6下段に例示するようなSmA相を経由する相系列を有する強誘電性液晶は、相変化の過程において、スメクチック層の層間隔が縮まり、その体積変化を補償するためにスメクチック層が曲がったシェブロン構造を有し、この曲げの方向によって液晶分子の長軸方向が異なるドメインが形成され、その境界面にジグザグ欠陥やヘアピン欠陥と呼ばれる配向欠陥が発生しやすい。また一般に、図6上段に例示するようなSmA相を経由しない相系列を有する強誘電性液晶は、層法線方向の異なる二つの領域(ダブルドメイン)が発生しやすい。上述したように強誘電性液晶をストライプ状に塗布することによって、強誘電性液晶の流動による配向乱れを抑制することができ、上記のような配向欠陥の発生を抑制することができる。
このような塗布方法としては、例えば、インクジェット法やディスペンサー法等の吐出法、バーコート法やスロットダイコート法等のコーティング法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法等が挙げられる。中でも、吐出法およびスクリーン印刷法が好ましい。吐出法およびスクリーン印刷法であれば、強誘電性液晶が流動する際に生じる配向乱れを効果的に抑制することができるからである。
さらには吐出法が好ましく、吐出法の中でもインクジェット法が特に好ましい。インクジェット法であれば、強誘電性液晶を連点状に塗布することができるので、流動距離が短くなるように強誘電性液晶を塗布することができ、流動した強誘電性液晶の接触界面で配向乱れの発生を防ぐことができるからである。
吐出する強誘電性液晶の液滴量は、1回の吐出当たり1pl〜1000plの範囲内であることが好ましく、より好ましくは2pl〜200plの範囲内、さらに好ましくは10pl〜100plの範囲内である。液適量が上記範囲よりも多いと、強誘電性液晶が流動する距離が長くなり、濡れ拡がる面積が大きくなるので、配向乱れが生じるおそれがある。また、液適量が上記範囲よりも少ないと、強誘電性液晶の塗布に要する時間が非常に長くなるからである。なお、従来では、基板上に強誘電性液晶を吐出する場合、吐出する強誘電性液晶の液滴量は、1回の吐出当たり10ng程度であったので、上記範囲は比較的少ない液滴量であることがわかる。
また、強誘電性液晶を塗布する位置としては、強誘電性液晶が封入可能な所定量で塗布されていれば特に限定されるものではない。
上述したように、液晶側基板に壁状スペーサを形成する場合であって、壁状スペーサの長手方向と第1配向膜の配向処理方向とが直交している場合は、図7に例示するように、壁状スペーサ8に沿って強誘電性液晶3を塗布することが好ましい。このように強誘電性液晶を塗布することにより、第1配向膜の配向処理方向に沿って強誘電性液晶を流動させやすくなり、配向欠陥等の発生を効果的に抑制することができるからである。
2.検査工程
本発明における検査工程は、強誘電性液晶の塗布欠陥の有無を検査する工程である。この検査工程では、図1に例示するように、強誘電性液晶3が塗布されるべき領域に塗布されていない場合には、塗布欠陥として検出される。
塗布欠陥の検査方法としては、例えば、CCD素子による方法、拡大した映像を目視により検査する方法等を挙げることができる。
本発明においては、検査工程にて塗布欠陥が検出されなかった場合には、そのまま基板貼り合わせ工程に進むが、検査工程にて塗布欠陥が検出された場合には、修正工程に進み、修正工程後に基板貼り合わせ工程に進む。
3.修正工程
本発明における修正工程は、上記検査工程にて塗布欠陥が検出された場合に、第1配向膜上の欠陥部分に強誘電性液晶を吐出法によって塗布する工程である。
強誘電性液晶を第1配向膜上の欠陥部分に塗布する方法としては、吐出法であり、この欠陥部分のみに強誘電性液晶を塗布することが可能であれば特に限定されるものではない。このような塗布方法としては、例えば、インクジェット法、ディスペンサー法等を挙げることができる。
4.基板貼り合わせ工程
本発明における基板貼り合わせ工程は、強誘電性液晶が塗布された液晶側基板、ならびに、第2基材上に第2電極層および第2配向膜がこの順に積層された対向基板を貼り合わせる工程である。
液晶側基板および対向基板を貼り合わせるには、まず液晶側基板または対向基板の少なくともいずれか一方の上に液晶封入領域を囲むようにシール剤を塗布し、次いで液晶側基板および対向基板をシール剤を介して重ね合わせ、最後にシール剤を硬化させる。
以下、シール剤、対向基板、ならびに、液晶側基板および対向基板を貼り合わせる方法について説明する。
(1)シール剤
本発明においては、液晶側基板または対向基板の少なくともいずれか一方の上に液晶封入領域を囲むようにシール剤を塗布する。すなわち、シール剤を、液晶側基板上に塗布してもよく、対向基板上に塗布してもよく、液晶側基板および対向基板の両方に塗布してもよい。
後述するように、液晶側基板または対向基板に枠状隔壁を形成する場合には、枠状隔壁の外周を囲むようにシール剤を塗布する。例えば図7に示すように、液晶側基板に枠状隔壁9を形成した場合、この枠状隔壁9の外周を囲むようにシール剤4を塗布する。
シール剤の塗布方法としては、所定の位置にシール剤を塗布することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、インクジェット法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
シール剤を塗布する位置としては、シール剤が液晶封入領域を囲むように連続して塗布され、かつ、強誘電性液晶が漏れないように液晶側基板および対向基板を貼り合わせることが可能であれば、特に限定されるものではない。シール剤を液晶側基板上に塗布する場合、第1基材上に塗布してもよく、第1配向膜上に塗布してもよい。また、シール剤を対向基板上に塗布する場合、第2基材上に塗布してもよく、第2配向膜上に塗布してもよい。通常は、液晶側基板または対向基板の周縁部にシール剤を塗布する。密着性の観点からは、第1基材または第2基材上にシール剤を塗布することが好ましい。この場合、第1基材または第2基材の周縁部に第1配向膜または第2配向膜をそれぞれ形成しないように、第1配向膜または第2配向膜をパターン状に形成する。
シール剤としては、一般に液晶表示素子に用いられるものを用いることができる。例えば、樹脂が挙げられ、熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂のいずれも用いることができる。中でも、シール剤としては、強誘電性液晶を汚染しないものを用いることが好ましい。
(2)対向基板
本発明に用いられる対向基板は、第2基材上に第2電極層および第2配向膜がこの順に積層されたものである。
なお、第2基材、第2電極層および第2配向膜については、上記液晶側基板の第1基材、第1電極層および第1配向膜とそれぞれ同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明においては、第1配向膜および第2配向膜の構成材料が強誘電性液晶を挟んで互いに異なる組成を有することが好ましい。これにより、SmA相をもたない強誘電性液晶を用いた場合に、ダブルドメイン等の配向欠陥を生じさせることなく、強誘電性液晶のモノドメイン配向を得ることができるからである。
第1配向膜および第2配向膜の構成材料の組成を異なるものとするには、例えば一方を光配向膜、他方をラビング配向膜とすればよい。また、両方をラビング配向膜として、ラビング配向膜の構成材料の組成を異なるものとする、あるいは、両方を光配向膜として、光配向膜の構成材料の組成を異なるものとすることもできる。
また、第1配向膜および第2配向膜が光配向膜である場合、例えば一方の光配向膜に光異性化型の材料を用い、他方の光配向膜に光反応型の材料を用いることにより、光配向膜の構成材料の組成を異なるものとすることができる。
第1配向膜および第2配向膜が光異性化型の材料を用いた光配向膜である場合、上述した光異性化反応性化合物の中から、要求特性に応じて、シス−トランス異性化反応性骨格や置換基を種々選択することにより、光配向膜の構成材料の組成を異なるものとすることができる。さらに、上述した添加剤の添加量を変えることによって、組成を変化させることもできる。
第1配向膜および第2配向膜が光反応型の材料を用いた光配向膜である場合、上述した光二量化反応性化合物、例えば光二量化反応性ポリマーを種々選択することにより、光配向膜の構成材料の組成を異なるものとすることができる。さらに、上述した添加剤の添加量を変えることによって、組成を変化させることもできる。
さらに、一方を光配向膜やラビング配向膜等の単層とし、他方を光配向膜やラビング配向膜等と反応性液晶層とを積層したものとすることにより、第1配向膜および第2配向膜の構成材料の組成を異なるものとすることができる。
第1配向膜および第2配向膜が配向膜やラビング配向膜等と反応性液晶層とを積層したものである場合、上述した重合性液晶材料を種々選択することにより、反応性液晶層の構成材料の組成を異なるものとすることができる。
本発明においては、対向基板にスペーサを形成してもよい。スペーサを形成することにより、耐衝撃性の高い液晶表示素子を得ることができる。上述したように液晶側基板にスペーサを形成する場合には、対向基板にはスペーサを形成しなくてもよい。
なお、スペーサについては、上記液晶側基板のスペーサと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)液晶側基板および対向基板を貼り合わせる方法
液晶側基板および対向基板は、液晶封入領域とシール剤とが所定の配置となり、かつ、液晶側基板の第1配向膜および対向基板の第2配向膜の配向処理方向が互いに略平行になるように対向させる。
液晶側基板および対向基板を対向させる際には、液晶側基板および対向基板を、強誘電性液晶がネマチック相または等方相を示す温度に加熱することが好ましく、中でも強誘電性液晶が等方相を示す温度に加熱することがより好ましい。液晶側基板および対向基板の具体的な温度としては、強誘電性液晶の種類によって異なり、適宜選択される。例えば、N相−等方相転移温度付近、あるいは、N相−等方相転移温度よりも0℃〜20℃程度高い温度、あるいは、N相−等方相転移温度よりも5℃〜10℃程度高い温度などに設定することができる。なお、液晶側基板および対向基板の温度の上限は、強誘電性液晶が劣化するおそれのない温度とされる。
また、強誘電性液晶の粘度が30mPa・s以下、中でも10mPa・s〜20mPa・sの範囲内となるように液晶側基板および対向基板を加熱することが好ましい。強誘電性液晶の粘度が高すぎると、第1配向膜上を強誘電性液晶が流動しにくくなるからである。
第1配向膜上に、強誘電性液晶を溶剤で希釈した強誘電性液晶溶液をコーティング法や印刷法により塗布した場合には、上記の液晶側基板の加熱時に、溶剤を除去することができる。
また、液晶側基板および対向基板を対向させる際には、チャンバー内を排気して、液晶側基板および対向基板間を十分に減圧することが好ましい。これにより、液晶セル内に空隙が残るのを防ぐことができる。
液晶側基板および対向基板を対向させた後は、減圧下で液晶側基板および対向基板を重ね合わせ、セルギャップが均一になるように一定の圧力を加える。そして、チャンバー内を常圧に戻すことにより、液晶側基板および対向基板間にさらに圧力を加える。これにより、セルギャップをより均一にすることができる。このようにして液晶側基板および対向基板がシール剤を介して圧着される。
次いで、シール剤を硬化させ、液晶側基板および対向基板を貼り合わせる。シール剤の硬化方法としては、用いるシール剤の種類によって異なるものであり、例えば紫外線を照射する方法、加熱する方法などが挙げられる。この際、通常は、液晶側基板および対向基板を重ね合わせたときの圧力を保持したままシール剤を硬化する。
強誘電性液晶から構成される液晶層の厚みとしては、1.2μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.3μm〜2.5μm、さらに好ましくは1.4μm〜2.0μmの範囲内である。液晶層の厚みが薄すぎるとコントラストが低下するおそれがあり、逆に液晶層の厚みが厚すぎると強誘電性液晶が配向しにくくなる可能性があるからである。
5.枠状隔壁形成工程
本発明においては、液晶側基板または対向基板に、液晶封入領域を囲むように、シール剤の内側に枠状隔壁を形成する枠状隔壁形成工程を行ってもよい。例えば、図7および図8(a)に示すように、液晶側基板2aに枠状隔壁9を形成し、枠状隔壁9の周囲にシール剤4を塗布することができる。なお、図8(a)は図7のC−C線断面図である。図8(b)および(c)に例示するように、液晶側基板2a上に塗布された強誘電性液晶3は、基板貼り合わせ工程にて液晶側基板2aおよび対向基板2b間を流動する。この際、シール剤4の内側に枠状隔壁9を形成することにより、強誘電性液晶3と未硬化のシール剤4とが直接接触するのを回避することができる。これにより、未硬化のシール剤中の不純物や、シール剤を硬化させる際にシール剤から発生する揮発性物質等が強誘電性液晶中に混入するのを防ぐことができる。したがって、不純物等の混入による強誘電性液晶の特性の劣化を回避することが可能となる。
枠状隔壁を形成する位置としては、枠状隔壁がシール剤の内側であって液晶封入領域を囲むように連続して形成されていれば、特に限定されるものではない。枠状隔壁を液晶側基板上に形成する場合、図8に例示するように第1電極層6a上に枠状隔壁9を形成してもよく、図9(a)に例示するように第1基材5a上に枠状隔壁9を形成してもよい。また、第1基材上に枠状隔壁を形成する場合、図9(b)に例示するように枠状隔壁9とベース部分8´とを一体に形成してもよい。一方、図示しないが、枠状隔壁を対向基板上に形成する場合、第2電極層上に枠状隔壁を形成してもよく、第2基材上に枠状隔壁を形成してもよい。また、第2基材上に枠状隔壁を形成する場合、枠状隔壁とベース部分とを一体に形成してもよい。通常は、第1配向膜または第2配向膜の周縁部に枠状隔壁を形成する。
枠状隔壁の幅としては、強誘電性液晶と未硬化のシール剤との接触を防ぐことが可能な幅であれば特に限定されるものではない。具体的には、枠状隔壁の幅は10μm〜3mm程度とすることが好ましく、より好ましくは10μm〜1mmの範囲内、さらに好ましくは10μm〜500μmの範囲内である。枠状隔壁の幅が上記範囲より広いと、枠状隔壁が画素領域にも設けられることになり、有効画素面積が狭くなり良好な画像表示が得られない場合があるからである。また、枠状隔壁の幅が上記範囲より狭いと、枠状隔壁の形成が困難となる場合があるからである。
また、枠状隔壁の高さは、通常、液晶層の厚みと同程度とされる。これにより、強誘電性液晶と未硬化のシール剤とが接触するのを効果的に防止することができる。
なお、上記枠状隔壁の幅および高さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて枠状隔壁の断面を観察することによって測定することができる。
このような枠状隔壁の形成材料は、一般に液晶表示素子の隔壁に用いられる材料を用いることができる。好ましくは、上記スペーサの形成材料と同一の材料が用いられる。これにより、枠状隔壁およびスペーサを同時に形成することができるからである。
枠状隔壁の形成方法としては、所定の位置に枠状隔壁を形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なパターニング法を適用することができる。例えば、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
枠状隔壁の形成は、通常、上記スペーサの形成と同時に行われる。パターニングの工程数を減らすことができるからである。枠状隔壁およびスペーサは別々の基板上に形成してもよいが、パターニングの観点から、同一の基板上に形成することが好ましい。
6.液晶表示素子
本発明においては、例えばTFTを用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子を作製することができる。TFTを用いたアクティブマトリックス方式では、目的の画素を確実に点灯、消灯できるため高品質な画像表示が可能である。
図10は、TFTを用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子の一例を示す概略斜視図である。図10に例示する液晶表示素子20は、第2基材5b上にTFT21がマトリックス状に配置されたTFT基板(対向基板2b)と、第1基材5a上に共通電極(第1電極層6a)が形成された共通電極基板(液晶側基板2a)とを有するものである。TFT基板(対向基板2b)には、画素電極(第2電極層6b)、ゲート電極22x、ソース電極22yおよびが形成されている。このような液晶表示素子20において、ゲート電極22xおよびソース電極22yはそれぞれ縦横に配列しており、ゲート電極22xおよびソース電極22yに信号を加えることによりTFT21を作動させ、強誘電性液晶を駆動させることができる。ゲート電極22xおよびソース電極22yが交差した部分は、図示しないが絶縁層で絶縁されており、ゲート電極22xの信号とソース電極22yの信号とは独立に動作することができる。ゲート電極22xおよびソース電極22yにより囲まれた部分は、液晶表示素子を駆動する最小単位である画素であり、各画素には少なくとも1つ以上のTFT21および画素電極(第2電極層6b)が形成されている。この液晶表示素子20では、ゲート電極22xおよびソース電極22yに順次信号電圧を加えることにより、各画素のTFT21を動作させることができる。
なお、図10において、第1配向膜、第2配向膜および強誘電性液晶は省略されている。
図10に示す例においては、液晶側基板が共通電極基板であり、対向基板がTFT基板であるが、これに限定されるものではなく、液晶側基板は、共通電極基板であってもよく、TFT基板であってもよい。中でも、液晶側基板は共通電極基板であることが好ましい。TFT基板は、半導体層、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極および絶縁層等を有するTFTが形成されているため、TFT基板と共通電極基板とでは、共通電極基板の方が製造コストが安い。このため、液晶側基板が共通電極基板であれば、仮に強誘電性液晶の塗布欠陥があり修正不可能であったとしても、ロスコストを少なくすることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。