JP2008095188A - 真空浸炭部品およびその製造方法並びにそれに使用する熱処理油組成物 - Google Patents

真空浸炭部品およびその製造方法並びにそれに使用する熱処理油組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】真空浸炭やその後の加工の実施の確認に好適な真空浸炭部品およびその製造方法並びにそれに使用する熱処理油組成物を提供する。
【解決手段】真空浸炭により浸炭処理した表面に加工が施される真空浸炭部品の製造方法において、真空浸炭処理したワークを着色添加剤を配合した熱処理油により焼入れ処理を施してワーク表面に着色皮膜を形成し、次いで、前記着色皮膜を形成した部位へ加工を施すことにより、前記着色皮膜の少なくとも一部を除去するようにした。
【選択図】図1(A)

Description

本発明は、真空浸炭部品およびその製造方法並びにそれに使用する熱処理油組成物に関し、特に、真空浸炭後にショットピーニングや研削等の表面加工が施される部品に好適な真空浸炭部品およびその製造方法並びにそれに使用する熱処理油組成物に関するものである。
従来から歯車類やシャフト類の高強度化ならびに高信頼性のために、粒界酸化層が全く認められなくなる真空浸炭処理がなされた後にショットピーニング等による強化により、ピッチング寿命等の面圧疲労強度が高められ、かつまた、歯元疲労強度を高めて、強靭で信頼性の高い高面圧歯車を得る浸炭部品の表面処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
特許第2945714号公報
ところで、上記従来例の浸炭部品の表面処理方法では、真空下(1[kPa]以下)での浸炭処理のため、部品表面に酸化皮膜がほとんど形成されず、処理品の光輝性に優れている。このため、その後に実施されるショットピーニング等の表面加工によっても表面色の変化が少なく、ショットピーニングが実施されたか否か見分けがつかず、ショットピーニング処理されないで後工程に流される懸念があった。また、同様の理由により、後工程での部品に対して、真空浸炭が実施されている部品か真空浸炭されていない部品かの識別することが外観からは判定できないという不具合もあった。
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、真空浸炭やその後の加工の実施の確認に好適な真空浸炭部品およびその製造方法並びにそれに使用する熱処理油組成物を提供することを目的とする。
本発明は、真空浸炭により浸炭処理した表面に加工が施される真空浸炭部品の製造方法において、真空浸炭処理したワークを着色添加剤を配合した熱処理油により焼入れ処理を施してワーク表面に着色皮膜を形成し、次いで、前記着色皮膜を形成した部位へ加工を施すことにより、前記着色皮膜の少なくとも一部を除去するようにした。
したがって、本発明では、真空浸炭処理したワークを着色添加剤を配合した熱処理油により焼入れ処理を施してワーク表面に着色皮膜を形成し、次いで、前記着色皮膜を形成した部位へ加工を施すことにより、前記着色皮膜の少なくとも一部を除去するようにしたため、工程を増やすことなく、焼入れと同時にワーク表面に着色皮膜を形成することができ、ワークへの加工の実施をワーク表面の着色皮膜の有無により容易に確認することができる。このため、真空浸炭の未処理品や加工の洩れ品の後工程への流出を防ぐことができる。
以下、本発明の真空浸炭部品およびその製造方法並びにそれに使用する熱処理油組成物の一実施形態を図1に基づいて説明する。図1(A)は本発明を適用した第1実施形態の真空浸炭部品およびその製造方法を示す工程図であり、真空浸炭部品として、車両のファイナルドライブ装置におけるドリブンギヤの浸炭焼入れからファイナルドライブ装置への組立・出荷工程までの工程図である。また、図1(B)は、表面処理加工の種類および方法を示す工程図である。
前記ファイナルドライブ装置におけるドリブンギヤは、図示しない前工程において、素材を鍛造し、切削加工等の機械加工により歯車として加工されたワークが前洗浄されて投入される。このワークの表面色は、ワーク素材が本来備えている表面色である銀白色を呈している。まず、浸炭工程炉により真空浸炭処理(S1)および油焼入れ処理(S2)が実施され、次に、前記真空浸炭焼入れ処理がなされたワークの表面に付着した焼入れ油を洗浄(S3)する。
本実施形態においては、前記焼入れ処理(S2)において、着色機能を発揮する添加剤が添加された熱処理油組成物からなる焼入れ油を使用することにより、焼入れされたワークの表面を素材本来の表面色である銀白色から濃灰色〜黒色の膜厚が100[nm]未満とミクロンオーダ以下の着色皮膜を形成して着色させる。この着色皮膜は、強靭で信頼性の高い高面圧歯車とするために後工程で実施されるショットピーニング等の表面処理加工や機械加工による仕上げ加工により、着色された表面皮膜が剥離される範囲を少なくとも含めてそれ以外の表面部位にも施されていることが望ましい。
このように、ワークの着色された表面色を確認することにより、後工程において、真空浸炭が実施されている部品か真空浸炭されていない部品かの識別することが外観から容易に判定できる。前記着色された表面色の確認は、真空浸炭工程の直後や後工程である表面処理工程若しくは仕上げ加工工程の前後において、ワークの表面の光沢を目視により、又は、表面の子光(着色されたことによる表面からの特定の波長を持つ反射光)の反射率を検出するセンサ等により、検知することができる。後工程である表面処理工程若しくは仕上げ加工工程の前後においては、後述するように、加工された表面部位と加工されない表面部位との表面光沢の違いが明確となるため、より一層容易に、真空浸炭の処理済,未処理を判別(識別)することができる。このため、真空浸炭工程を経由していないワークが後工程へ流出して表面処理加工や仕上げ加工されることを防止することができる。
次いで、表面処理工程(S4)において、ワークの歯車の歯面に対して、例えば、粒径が0.05〜0.2[mm]の鉄系ショットを用いてショットピーニングを実施して表面近傍の残留応力値を高める。この表面処理加工により、ピッチング寿命等の面圧疲労強度が高められ、かつまた、歯元疲労強度が高いものとなり、強靭で信頼性の高い高面圧歯車を形成することができる。この表面処理加工は同時に、ワークの歯車の歯面・歯底部分に付着していた膜厚がミクロンオーダ以下の着色皮膜を、ワークの歯面の表面から除去(以下では、「剥離」も含めて「除去」という)させ、歯面全体をワーク素材が本来備えている表面色である銀白色とする。なお、前記表面処理工程(S4)でなされる加工処理方法として、ショットピーニングを例示したが、それ以外の加工処理方法として、例えば、図1(B)に示すように、ショットブラストやマイクロショット(FPP)を採用するものであってもよく、また、これらを組合わせて採用するものであってもよい。
また、ワーク表面に形成される着色皮膜の膜厚は前記したようにミクロンオーダ以下であるため、部品単体、例えば、浸炭層への強度的な影響を及ぼさない。また、ワーク表面の着色皮膜の形成により、浸炭層の腐食および破壊起点などの形成を行わないため、強度への影響を及ぼさない。さらに、表面処理加工後の残留応力分布も、従来の着色皮膜がない場合と同等となる。
一方、表面処理加工の範囲から外れた領域、例えば、ワークの歯車面から外れた部分に付着する着色皮膜は、依然としてワーク表面に黒色となって残っている。このため、表面処理加工領域と表面処理加工領域外とのワーク表面色を対比することにより、表面処理加工が確実になされたことを確認することができる。また、表面処理加工がなされた部位が明確となるため、黒皮残り等の表面処理工程における処理異常の発見も容易となる。このように、表面処理加工の有無および正常に表面処理加工されたか否かが容易に識別できるので、表面処理加工の洩れ品の後工程への流出を防ぐことができる。
その後の仕上げ加工工程(S5)、例えば、研削工程およびラッピング工程において、ワークの歯車の歯面および軸受け部分の表面が仕上げ研削され、ラッピング仕上げされる。前記着色皮膜は、ワークの歯面部分においては表面処理工程(S4)において除去(剥離)されているため、仕上げ研削およびラッピング仕上げ等の機械加工に対して悪影響を及ぼすことがなく、その生産性およびその他に影響を及ぼさない。また、ワークの歯車の軸受け部分の着色皮膜も、仕上げ加工工程の仕上げ研削およびラッピング仕上げ等の機械加工により、除去されるため、仕上げ加工等の機械加工領域と機械加工領域外とのワーク表面色を対比することにより、機械加工が確実になされたことを確認することができる。また、機械加工された部位における黒皮残り等の加工不良も同時に確認することができる。このように、機械加工の有無および加工の正常・異常が容易に識別できるので、機械加工の洩れ品の後工程への流出を防ぐことができる。その後、ファイナルドライブ装置のドリブンギヤとして組付けられ(S6)、ファイナルドライブ装置として出荷(S7)される。
本実施形態において使用する熱処理油組成物は、潤滑油基油として鉱油及び/又は合成油からなる熱処理油を用いることができる。特に、光輝焼入油(例えば、ブライトクエンチ、ブライトクエンチS 出光興産株式会社 光輝熱処理油 商品名)を用いることが望ましい。即ち、一般に熱処理油の基油として用いられているものであればよく、特に制限はないが、100℃における動粘度が1.5[mm2/s]以上のものが好ましく、2〜50[mm2/s]の範囲にあるものがより好ましい。基油の粘度が低すぎると蒸気膜段階が長くなり、冷却性能が不足する。同時にミスト発生により作業性悪化を招いたり、火災の危険性が増大する場合があり好ましくない。また、この基油の低温流動性の指標である流動点については特に制限はないが、−10[℃]以下であるのが好ましい。
前記光輝熱処理油に配合される添加物としては、(a)チオリン酸亜鉛化合物、チオリン酸モリブデン化合物、チオカルバミン酸亜鉛化合物及びチオカルバミン酸モリブデン化合物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物、(b)ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物、(c)リン酸エステル化合物の少なくとも何れか一つ、または、これらを2つ以上組合わせて、使用することができる。
前記(a)のチオリン酸亜鉛化合物、チオリン酸モリブデン化合物、チオカルバミン酸亜鉛化合物及びチオカルバミン酸モリブデン化合物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物としては、具体的には、ジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)、ジチオリン酸モリブデン(Mo−DTP)、チオカルバミン酸亜鉛(Zn−DTC)、チオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)を挙げることができる。中でも、Zn−DTPが好ましい。上記(a)成分は一種で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
前記(b)のジヒドロカルビルポリサルファイド化合物としては、一般式(R1−Sx−R2、R1 及びR2 は、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基又は環状アルキル基,炭素数6〜20のアリール基,炭素数7〜20のアルキルアリール基又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、xは2〜8の整数を示す。)で表される化合物である。ここで、R1 及びR2 がアルキル基の場合、硫化アルキルと称する。
上記一般式におけるR1 及びR2 の具体例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,各種ペンチル基,各種ヘキシル基,各種ヘプチル基,各種オクチル基,各種ノニル基,各種デシル基,各種ドデシル基,シクロヘキシル基,シクロオクチル基,フェニル基,ナフチル基,トリル基,キシリル基,ベンジル基,フェネチル基などを挙げることができる。
このジヒドロカルビルポリサルファイド化合物としては、例えば、ジベンジルポリサルファイド,ジ−tert−ノニルポリサルファイド,ジドデシルポリサルファイド,ジ−tert−ブチルポリサルファイド,ジオクチルポリサルファイド,ジフェニルポリサルファイド,ジシクロヘキシルポリサルファイドなどを好ましく挙げることができる。上記(b)の成分は一種用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
前記(c)のリン酸エステル化合物としては、リン酸エステル化合物は、リン酸エステル,酸性リン酸エステル,亜リン酸エステル,酸性亜リン酸エステルを包含する。リン酸エステルとしては、トリアリールホスフェート,トリアルキルホスフェート,ジアルキルアリールホスフェート,ジアリールアルキルホスフェート,トリアルケニルホスフェートなどがあり、具体的には、例えばトリフェニルホスフェート,トリクレジルホスフェート,ベンジルジフェニルホスフェート,エチルジフェニルホスフェート,トリブチルホスフェート,エチルジブチルホスフェート,クレジルジフェニルホスフェート,ジクレジルフェニルホスフェート,(エチルフェニル)ジフェニルホスフェート,ジ(エチルフェニル)フェニルホスフェート,(プロピルフェニル)ジフェニルホスフェート,ジ(プロピルフェニル)フェニルホスフェート,トリ(エチルフェニル)ホスフェート,トリ(プロピルフェニル)ホスフェート,(ブチルフェニル)ジフェニルホスフェート,ジ(ブチルフェニル)フェニルホスフェート,トリ(ブチルフェニル)ホスフェート,トリヘキシルホスフェート,トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート,トリデシルホスフェート,トリラウリルホスフェート,トリミリスチルホスフェート,トリパルミチルホスフェート,トリステアリルホスフェート,トリオレイルホスフェートなどを挙げることができる。
また、酸性リン酸エステルとしては、具体的には、例えば2−エチルヘキシルアシッドホスフェート,エチルアシッドホスフェート,ブチルアシッドホスフェート,オレイルアシッドホスフェート,テトラコシルアシッドホスフェート,イソデシルアシッドホスフェート,ラウリルアシッドホスフェート,トリデシルアシッドホスフェート,ステアリルアシッドホスフェート,イソステアリルアシッドホスフェートなどを挙げることができる。
また、亜リン酸エステルとしては、具体的には、例えばトリエチルホスファイト,トリブチルホスファイト,トリフェニルホスファイト,トリクレジルホスファイト,トリ(ノニルフェニル)ホスファイト,トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト,トリデシルホスファイト,トリラウリルホスファイト,トリイソオクチルホスファイト,ジフェニルイソデシルホスファイト,トリステアリルホスファイト,トリオレイルホスファイトなどを挙げることができる。
また、酸性亜リン酸エステルとしては、具体的には、例えばジブチルハイドロゲンホスファイト,ジラウリルハイドロゲンホスファイト,ジオレイルハイドゲンホスファイト,ジステアリルハイドロゲンホスファイト,ジフェニルハイドロゲンホスファイトなどを挙げることができる。
以上のリン酸エステル化合物の中で、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート,オレイルアシッドホスフェート,ラウリルアシッドホスフェート,ステアリルアシッドホスフェートなどの酸性リン酸エステルが好適である。上記(c)の成分は一種用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
そして、前記した(a)チオリン酸亜鉛化合物、チオリン酸モリブデン化合物、チオカルバミン酸亜鉛化合物及びチオカルバミン酸モリブデン化合物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物、(b)ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物、(c)リン酸エステル化合物の少なくとも何れか一つ、または、これらを2つ以上組合わせて、使用する場合に、その配合量は、組成物全量基準で、0.05〜7[質量%]の範囲が好ましく、0.05〜5[質量%]の範囲がより好ましい。0.05[質量%]未満では、着色が不十分となり、黒染め処理を兼ねる場合、色むらが生じる場合があり、7[質量%]を超えると、着色部分が部分的に剥離し易くなる場合がある。なお、着色のために上記(a)〜(c)の添加物を全て組合わせて使用する場合においても、各添加剤の合計配合量が、組成物全量基準で、0.05〜7[質量%]の範囲が好ましく、0.05〜5[質量%]の範囲がより好ましい。
なお、熱処理油組成物の潤滑油基油として、光輝焼入れ油を使用するものについて説明したが、潤滑油基油として、光輝性の低い焼入れ油を用いることもでき、その場合には、焼入れ処理されたワーク表面の光輝性の度合いのばらつきが生じるが、前記した(a)、(b)、(c)の何れか一つ若しくは2つ以上の添加剤を配合することにより、一定の着色を確実に確保することができる。勿論、光輝焼入油と前記添加剤との組合せにより、その着色効果を最大限に引き出せる。
また、熱処理油組成物の潤滑油基油に対して、黒染め添加剤である前記した(a)、(b)、(c)の何れか一つ若しくは2つ以上の添加剤を配合するものについて説明しているが、前記した黒染め添加剤以外で着色しようとすれば、相当の添加が必要であり、真空浸炭部品の焼入れ時の冷却性が変化することとなり望ましくない。
(実施例)
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
図2(第1表)に示す性状の光輝性焼入れ油(出光興産株式会社 製品名 ダフニーブライトクエンチS)を基油とし、この基油に(a),(b),(c)の各成分を添加してコンセント(添加混合油)1〜4を調製した。
次いで、調製したコンセント(添加混合油)1〜4を図3(第2表)に示す割合で、基油に配合して実施例1〜10及び比較例1、2の焼入れ油を調製した。これらの焼入れ油について、下記の方法により焼入れ試験を行い、その被処理物の物性を評価した。
〔焼入れ試験〕テストピース(SCM420H,直径10[mm]×長さ30[mm])を下記の条件で焼入れし、
雰囲気 : N2+ H2
処理温度 : 850[℃]
加熱時間 ; 30[分]
冷却時間 : 5[分]
油 温 : 100[℃]
被処理物をアセトンで脱脂後、その被処理物の外観の評価を行った。
具体的には、目視で着色状態および光輝状態を判定した。光輝性の判定基準は、良好、やや良好、不良の3段階とし、着色性の判定基準は、良好、やや薄い、薄いの3段階とした。
図3(第2表)から、実施例1〜10の組成物は、光輝性が実施例1、4、5、7、8、9において「やや劣り」、着色性が実施例3、6、10で「やや薄い」ものの、略良好な結果が得られることが分かる。
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
(ア)真空浸炭により浸炭処理した表面に加工が施される真空浸炭部品の製造方法において、真空浸炭処理したワークを着色添加剤を配合した熱処理油により焼入れ処理を施してワーク表面に着色皮膜を形成し、次いで、前記着色皮膜を形成した部位へ加工を施すことにより、前記着色皮膜の少なくとも一部を除去するようにした。このため、工程を増やすことなく、焼入れと同時にワーク表面に着色皮膜を形成することができ、ワークへの加工の実施をワーク表面の着色皮膜の有無により容易に確認することができる。従って、真空浸炭の未処理品や加工の洩れ品の後工程への流出を防ぐことができる。
前記ワーク表面への加工としては、ショットピーニング,ショットブラスト,マイクロショット(FPP)等の表面処理加工および/又は切削や研削等の機械加工による仕上げ加工が代表的な加工であるが、これらの加工実施をワーク表面の着色皮膜の有無により容易に確認することができる。このため、前記加工の洩れ品の後工程への流出を防ぐことができる。
(イ)真空浸炭により浸炭処理した表面に表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工の少なくともいずれか一方が施される真空浸炭部品の製造方法において、真空浸炭処理したワークを着色添加剤を配合した熱処理油により焼入れ処理を施してワーク表面に着色皮膜を形成し、その後に、ワークの表面の光沢を目視により、若しくは、表面の着色皮膜による表面からの特定の波長を持つ反射光の反射率を検出することにより、真空浸炭の処理および未処理を識別することにより、真空浸炭の処理済,未処理を判別(識別)することができる。このため、真空浸炭工程を経由していないワークが後工程へ流出して表面処理や仕上げ加工されることを防止することができる。
(ウ)着色添加剤を配合した熱処理油は、熱処理基油に、(a)チオリン酸亜鉛化合物、チオリン酸モリブデン化合物、チオカルバミン酸亜鉛化合物及びチオカルバミン酸モリブデン化合物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物、(b)ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物、(c)リン酸エステル化合物の内のいずれか一つ若しくは2つ以上を選択して配合した熱処理油組成物であるため、その配合割合を0.05〜7[質量%]と少量としてワークに対する焼入れ時の冷却性を変化させることなく、焼入れされたワーク表面を黒色に着色することができる。また、ワーク表面に形成される着色皮膜の膜厚はミクロンオーダ以下であるため、浸炭層の腐食および破壊起点等の形成がなく、ワークの強度への影響がないことは勿論、表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工の少なくともいずれか一方により確実に除去させることができ且つ表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工の少なくともいずれか一方の加工後の残留応力分布も従来の皮膜がない場合と同等とでき、生産性およびその他に影響を及ぼすこともない。
(エ)熱処理油の基油が、光輝性のよい光輝熱処理油であることにより、ワーク表面に光輝性の度合いの高い着色皮膜を得ることができる。
(オ)真空浸炭により浸炭処理した表面に表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工の少なくともいずれか一方が施される真空浸炭部品において、真空浸炭処理した後に着色添加剤を配合した熱処理油により焼入れ処理することにより、表面に着色皮膜を形成し、表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工により、表面部位に加工を施し、前記着色皮膜の少なくとも一部を除去させて形成したことにより、ワーク表面の真空浸炭による着色皮膜、および着色皮膜が表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工により除去されていることより、ワークの加工履歴を確実に確認することができる。
真空浸炭部品として、車両のファイナルドライブ装置におけるドライブギヤについて説明したが、ドライブギヤに噛合うクラウンギヤにも適用可能であり、また、他の歯車部品やシャフト部品に対しても適用可能である。
本発明を適用した第1実施形態の真空浸炭部品およびその製造方法を示す工程図。 表面処理加工の種類および方法を示す工程図。 同じくコンセント(添加混合油)の性状を示す第1表。 添加混合油の基油に対する配合割合を変化させた各実施例および比較例を示す第2表。

Claims (9)

  1. 真空浸炭により浸炭処理した表面に加工が施される真空浸炭部品の製造方法において、
    真空浸炭処理したワークを着色添加剤を配合した熱処理油により焼入れ処理を施してワーク表面に着色皮膜を形成し、
    次いで、前記着色皮膜を形成した部位へ加工を施すことにより、前記着色皮膜の少なくとも一部を除去することを特徴とする真空浸炭部品の製造方法。
  2. 前記着色添加剤を配合した熱処理油は、熱処理基油に、(a)チオリン酸亜鉛化合物、チオリン酸モリブデン化合物、チオカルバミン酸亜鉛化合物及びチオカルバミン酸モリブデン化合物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物、(b)ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物、(c)リン酸エステル化合物の内のいずれか一つ若しくは2つ以上を選択して配合した熱処理油組成物であることを特徴とする請求項1に記載の真空浸炭部品の製造方法。
  3. 前記熱処理基油は、光輝性のよい光輝熱処理油であることを特徴とする請求項2に記載の真空浸炭部品の製造方法。
  4. 前記着色皮膜の少なくとも一部を、面圧疲労強度を向上させる表面処理加工を施すことにより除去することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の真空浸炭部品の製造方法。
  5. 前記着色皮膜の少なくとも一部を、機械加工による仕上げ加工を施すことにより除去することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の真空浸炭部品の製造方法。
  6. 真空浸炭により浸炭処理した表面に表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工の少なくともいずれか一方が施される真空浸炭部品の製造方法において、
    真空浸炭処理したワークを着色添加剤を配合した熱処理油により焼入れ処理を施してワーク表面に着色皮膜を形成し、
    その後に、ワークの表面の光沢を目視により、若しくは、表面の着色皮膜による表面からの特定の波長を持つ反射光の反射率を検出することにより、真空浸炭の処理および未処理を識別することを特徴とする真空浸炭部品の製造方法。
  7. 真空浸炭により浸炭処理した表面に表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工の少なくともいずれか一方が施される真空浸炭部品において、
    真空浸炭処理した後に着色添加剤を配合した熱処理油により焼入れ処理することにより、表面に着色皮膜を形成し、
    表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工により、表面部位に加工を施し、前記着色皮膜の少なくとも一部を除去させて形成することを特徴とする真空浸炭部品。
  8. 潤滑油基油に、(a)チオリン酸亜鉛化合物、チオリン酸モリブデン化合物、チオカルバミン酸亜鉛化合物及びチオカルバミン酸モリブデン化合物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物、(b)ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物、(c)リン酸エステル化合物の内のいずれか一つ若しくは2つ以上を選択して配合して構成され、真空浸炭後の焼入れの熱処理油として用いることにより、真空浸炭部品の表面に形成され且つ後工程である表面処理加工若しくは機械加工による仕上げ加工により少なくとも一部が除去される着色皮膜を形成させる熱処理油組成物。
  9. 前記熱処理油は、光輝性のある光輝熱処理油であることを特徴とする請求項8に記載の熱処理油組成物。
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