JP2008088254A - インクジェット用インク組成物、インクジェット記録方法、平版印刷版の製造方法、及び平版印刷版 - Google Patents

インクジェット用インク組成物、インクジェット記録方法、平版印刷版の製造方法、及び平版印刷版 Download PDF

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Abstract

【課題】放射線の照射に対して高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、連続吐出安定性及び保存安定性が良好なインクジェット用インク組成物及び該インクジェット用インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】(A)下記式(a)〜(d)で表される化合物、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光ラジカル発生剤を含有することを特徴とするインクジェット用インク組成物。式中、R1a〜R5dは、それぞれ独立に、一価の有機基、又は水素原子を表す。Xは、有機酸又は無機酸の共役塩基を表す。Zは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、又はCOYを表し、Yはヘテロ原子を介してカルボニル基に連結している一価の基、又はハロゲン原子を表す。
Figure 2008088254

【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用インク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法、更に、該インク組成物を用いて得られる平版印刷版、並びに平版印刷版の製造方法に関するものである。
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
中でも、インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、且つ、必要とされる画像部のみにインクを吐出して被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率よく使用でき、ランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
インクジェット方式の一つとして、放射線の照射により、硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、印字後直ちに又は一定の時間後に放射線照射し、インク液滴を硬化させることで、印字の生産性が向上し、鮮鋭な画像を形成することができる。
このような放射線、例えば、紫外線による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録が可能な点で、近年注目されつつある。
紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインク組成物、特に、上記のようにインクジェット記録用に用いられるインク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、十分に高い感度及び高画質の提供が求められている。高感度化を達成することにより、放射線に対し高い硬化性が付与され、消費電力低減、放射線発生器への負荷軽減による高寿命化、不十分硬化に基づく低分子物質の発生の防止等、多くの利益が生じる。また、高感度化が達成されると、インク組成物を用いて平版印刷版の画像部を形成した場合、画像部の硬化強度が高まることになり、高耐刷性が得られることになる。
例えば、特許文献1には、様々な印字環境下においても、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型組成物、活性光線硬化型インクを提供すること等を目的として、オキセタン化合物と増感剤とを併用することが提案されている。
このようなカチオン重合を用いた活性光線硬化型インクの場合、感度に優れることから、保存中や、活性光線の被記録媒体からの反射光により、所望されない硬化反応が生起してしまい、安定性が悪いという問題を有していた。
特開2004−192943号公報 Y. Yagci and I. Reetz, Prog. Polym. Sci., Vol. 123, p. 1485-1538 (1998)
前記課題を考慮してなされた本発明の目的は、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、連続吐出安定性及び保存安定性が良好なインクジェット用インク組成物及び該インクジェット用インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記インクジェット用インク組成物を用いて得られる平版印刷版、及び、該平版印刷版の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の手段により、上記課題が解決されることを見出した。
即ち、本発明のインクジェット用インク組成物は、(A)下記式(a)〜(d)で表される化合物、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光ラジカル発生剤を含有することを特徴とする。
Figure 2008088254
〔式中、R1a、R2a、R1b、R2b、R3b、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R1d、R2d、R3d、R4d、及びR5dは、それぞれ独立に、一価の有機基、又は水素原子を表し、R1a及びR2a、R1c、R2c、R3c、R4c、及びR5cのうちいずれか2つ、並びに、R1d、R2d、R3d、R4d、及びR5dのうちいずれか2つは、それぞれ独立に、互いに結合して環構造を形成してもよい。Zは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、又はCOYを表し、Yはヘテロ原子を介してカルボニル基に連結している一価の基、又はハロゲン原子を表す。Xは、有機酸又は無機酸の共役塩基を表す。〕
本発明のインク組成物は、更に(D)着色剤を含有することが好ましい。
また、(A)上記式(a)〜(d)で表される化合物の極大吸収波長が、(C)光ラジカル発生剤の極大吸収波長よりも短波であることがより好ましい態様である。
本発明のインクジェット記録方法は、(I)被記録媒体上に、本発明のインクジェット用インク組成物を吐出する工程、及び(II)吐出されたインクジェット用インク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。
ここで、前記活性放射線が前記(A)式(a)〜(d)で表される化合物の紫外線吸収波長よりも長い波長であることが好ましい。
本発明の平版印刷版の製造方法は、(i)親水性支持体上に、本発明のインクジェット用インク組成物を吐出する工程、及び(ii)吐出されたインクジェット用インク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化させることにより、該インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記親水性支持体上に形成する工程、を含むことを特徴とする。
ここで、前記活性放射線が前記(A)式(a)〜(d)で表される化合物の紫外線吸収波長よりも長い波長であることが好ましい。
また、本発明の平版印刷版は、本発明の平版印刷版の製造方法によって製造されたものである。
本発明によれば、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、連続吐出安定性及び保存安定性が良好なインクジェット用インク組成物及び該インクジェット用インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記インクジェット用インク組成物を用いることで、高画質の印刷物が得られる平版印刷版、及び、該平版印刷版の製造方法を提供することができる。
<本発明のインクジェット用インク組成物>
本発明のインクジェット用インク組成物(以下、単に「インク組成物」と称する場合がある。)は、(A)式(a)〜(d)で表される化合物、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光ラジカル発生剤を含有することを特徴とする。
以下、本発明のインク組成物の必須成分について順次説明する。
〔(A)式(a)〜(d)で表される化合物(ラジカル酸発生剤)〕
本発明における(A)下記式(a)〜(d)で表される化合物は、ラジカルにより酸を発生しうる化合物であり、以下、適宜、「ラジカル酸発生剤」と称する。
Figure 2008088254
式(a)〜(d)中、R1a、R2a、R1b、R2b、R3b、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R1d、R2d、R3d、R4d、及びR5dは、それぞれ独立に、一価の有機基、又は水素原子を表す。
前記一価の有機基としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基が挙げられる。
アルキル基としては炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。
これらの中でも、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基(以下、カルボキシラートと称す)、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(−Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基などを挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基、フェニルエチニル基等が挙げられる。
上述のアシル基(R’CO−)としては、R’が水素原子及び上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルブチル基、エトキシカルボニルメチル基、ブトキシカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルメチル基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルフェニルメチル基、トリクロロメチルカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、及び以下に示す基等を挙げることができる。
Figure 2008088254
アリール基としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基等を挙げることができ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
置換アリール基は、置換基がアリール基に結合したものであり、上記のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、並びに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。
これらの置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基、テトラクロロフェニル基、テトラブロモフェニル基、テトラフルオロフェニル基等を挙げることができる。
アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられる。
置換アルケニル基は、置換基がアルケニル基の水素原子と置き換わり結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方アルケニル基は上記のアルケニル基を用いることができる。
好ましい置換アルケニル基の例としては、以下に示す基等を挙げることができる。
Figure 2008088254
アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
置換アルキニル基は、置換基がアルキニル基の水素原子と置き換わり、結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方アルキニル基は上記のアルキニル基を用いることができる。
式(a)におけるR1a及びR2a、式(c)におけるR1c、R2c、R3c、R4c、及びR5cのうちいずれか2つ、並びに、式(d)におけるR1d、R2d、R3d、R4d、及びR5dのうちいずれか2つは、それぞれ独立に、互いに結合して環構造を形成してもよい。
形成される環構造の例としては、脂肪族環や芳香族環が挙げられる。
脂肪族環は、飽和、若しくは不飽和の脂肪族環のどちらでもよく、より好ましくは、5員環、6員環、7員環及び8員環の脂肪族環が挙げられ、特に、5員環及び6員環の脂肪族環が好ましい。
また、これらは更に、これらを構成する炭素原子上に置換基を有していてもよく(置換基の例としては、先に例として挙げた、置換アルキル基における置換基の例を挙げることができる)、また、環構成炭素の一部が、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)で置換されていてもよい。また更に、この脂肪族環の一部が芳香族環の一部を形成していてもよい。
形成される環構造の好ましい具体例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロ−1,3−ジオキサペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロ−1,3−ジオキサペンテン環、シクロ−1,3−ジオキサヘキセン環、シクロヘキサジエン環、ベンゾシクロヘキセン環、ベンゾシクロヘキサシエン環、テトラヒドロピラノン環、マレイミド、スクシンイミド、フタルイミド、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド、2,4,6−ピペリジントリオン、1,4,5,6,7,7−ヘキサクロロ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等を挙げることができる。
また、芳香族環を形成する例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、ピリジン環、ピペラジン環、ベンズキノリン環、ベンズイソキノリン環が挙げることができる。また、これらは構成する炭素原子上に置換基を有していてもよい(置換基の例としては、先に例として挙げた、置換アルキル基における置換基の例を挙げることができる)。
式(a)〜(d)におけるZは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、又はCOYを表す。ここで、Yはヘテロ原子を介してカルボニル基に連結している一価の基、又はハロゲン原子を表す。
炭素数1〜20のアルキル基は、鎖状、環状、分岐のいずれのアルキル基であってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基等が挙げられ、中でも、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましい。
炭素数1〜20のアルキルオキシ基は、鎖状、環状、分岐のいずれのアルキル基を有するものであってもよく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキシロキシ基、等が挙げられ、また、複数の酸素原子により鎖状、環状、分岐のアルキル基が連結していてもよい。中でも、メトキシ基、エトキシ基、が好ましい。
ZがCOYである場合、Yはヘテロ原子を介してカルボニル基に結合している一価の基又はハロゲン原子を表す。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子としては、好ましくは非金属原子であり、具体的には酸素原子、イオウ原子、窒素原子、リン原子が挙げられる。
Yが表すヘテロ原子を介してカルボニル基に結合している一価の基として好ましくは、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、スルホナト基、置換スルフィニル基、置換スルホニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、ニトロ基、ヘテロ環基(但し、ヘテロ原子で連結している)が挙げられる。
特に好ましいもの(Y−1〜Y−8)を以下に示す。
Figure 2008088254
また、このヘテロ原子を介してカルボニル基に結合している一価の基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、式(a)〜(d)の構造やポリマー鎖が挙げられる。
式(a)〜(d)におけるXは、有機酸又は無機酸の共役塩基を表す。
有機酸又は無機酸の共役塩基としては、特に制限はなく、高分子化合物でも低分子化合物でもよく、多価のアニオンであってもよい。これらのアニオンとしては、R−SO 、R−SO 、R−CO 、R−CS 、R−O−CS 、R−S−CS 、R−O−PO 、(R−O)PO 、R(R−O)PO 、R−EW−A−EW−R、(R、Arなどの有機酸共役塩基に相当するアニオン、又は、F、Cl、Br、I、PF 、BF 、SbF 、ClO 、SO 2−、NO 、CO 2−、SCN、CN、SiF 、FSO 、I 、Br 、IBr 等の無機酸共役塩基に相当するアニオンを挙げることができる。ここで、Rは有機置換基であり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はそれらを更に置換した基を表し、分子内に複数存在する場合は、互いに独立して選択してよく、また、互いに結合して環を形成してもよい。
EW及びEWは電子吸引性基を表し、具体例として、−SO−、−CO−、−SO−、−CN等を挙げることができる。
は、−CRb−−、−N−(Rは水素原子又は置換基)を表す。
Arは、アリール基を表す。
反応性及び安定性の面から、PF 、BF 、テトラアルキルボレート、テトラアリールボレート(例えば、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキス−3,5−トリフルオロメチルフェニルボレート)体が好ましい。
本発明においては、式(a)〜(d)で表される化合物として、二量体、或いは式(a)〜(d)中のカチオン部が複数連結された構造をとるものも包含される。
また、化合物のラジカルに対する反応性と、インク中での経時安定性などを考慮すると、以下の構造を有することが好ましい。
式(a)で表される化合物であれば、硫黄原子が環構造に含まれ、且つ、分子内に塩基性ヘテロ原子を含有しない構造が好ましい。
また、式(b)〜(d)で表される化合物であれば、分子内に、塩基性ヘテロ原子を含有しない構造が好ましい。
本発明における(A)式(a)〜(d)で表される化合物は、放射線(特にUV光)に対する安定性の観点から、最大吸収波長が300nm以下のものを用いることが好ましく、240nm以下のものを用いることがより好ましい。
(A)式(a)〜(d)で表される化合物のうち、好ましい態様として、以下の化合物〔a−1〜a−8、b−1〜b−4、c−1〜c−3、d−1〜d−4〕を挙げることができる。
Figure 2008088254
Figure 2008088254
Figure 2008088254
Figure 2008088254
前記式(a)〜(d)で表される化合物は、例えば、S. Denizligil, Y. Yagci, and C. McArdle, Polymer, 1995, 36, p.3093-3098やI. Reetz, V. Bacak, and Y. Yagci, Macromol. Chem. Phys., 1997, 198, p.19-28に記載されている方法で合成することができる。
前記式(a)〜(d)で表される化合物の中でも、硬化感度の観点から、a−1、a−2、a−8、b−1、c−3、及びd−4が好ましい。
本発明のインク組成物における(A)式(a)〜(d)で表される化合物の含有量は、感度と保存安定性の観点から、インク全量に対して、1.0〜25.0質量%の範囲が好ましく、10.0〜20.0質量%の範囲が更に好ましい。
本発明のインク組成物おいて、(C)光ラジカル発生剤から発生するラジカル種が、(A)式(a)〜(d)で表される化合物(ラジカル酸発生剤)に付加されると、酸(カチオン重合開始種)が発生し、この酸により、(B)カチオン重合性化合物を高感度で重合する。
インクジェット用インク組成物はインクジェットヘッド内における安定性が重要となるが、本発明のインク組成物は、被記録媒体からの反射光等により、組成物中に微量のラジカルが発生しても、(A)ラジカル酸発生剤が酸(カチオン重合開始種)を発生するより前に、酸素によりラジカルがクエンチされ無害化されるため、高い安定性を維持することができる。
また、吐出後に硬化させる際には、十分な露光により多量のラジカルが発生するため、酸(カチオン重合開始種)も発生し、カチオン重合が進行する。その結果、酸素による阻害を受けずに、高感度を維持できる。これらの機構により、高い連続吐出安定性及び保存安定性が得られ、更に、高感度化が達成されるものと推測される。
なお、本発明のインク組成物は、硬化に用いられる露光光源として、メタルハライドランプ、オゾンレスタイプメタルハライドランプが好ましく、また、高寿命、安価の観点と、(A)ラジカル酸発生剤がUV光により直接分解してしまうことを防ぐために、UV−LED光源を使用することも好ましい。
ここで、このような光源で高感度を実現するためには、増感色素(後述の増感剤)を併用することが、好ましい。特に、増感色素と(A)式(a)〜(d)で表される化合物(ラジカル酸発生剤)を使用することで高感度を実現することが可能である。
〔(B)カチオン重合性化合物剤〕
本発明に用いられる(B)カチオン重合性化合物は、前記(A)ラジカル酸発生剤から発生する酸により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、脂肪族エポキシドなどが挙げられ、芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
具体的には、単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
本発明におけるオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
Figure 2008088254
a1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
Figure 2008088254
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO、C(CF、又は、C(CHを表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
Figure 2008088254
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2008088254
式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、多価連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
Figure 2008088254
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
また、本発明に好適に使用しうるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2008088254
式(5)において、Ra1、Ra8は前記式におけるのと同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号〔0021〕乃至〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
本発明のインク組成物には、これらのカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、インク硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
本発明のインク組成物中における(B)カチオン重合性化合物の含有量は、インク組成物の全固形分に対し、10質量%〜95質量%が適当であり、好ましくは30質量%〜90質量%、更に好ましくは50質量%〜85質量%の範囲である。
〔(C)光ラジカル発生剤〕
本発明に用いうる(C)光ラジカル発生剤は、光による外部エネルギーを吸収してラジカルを生成する化合物である。この(C)光ラジカル発生剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
本発明で使用され得る好ましい(C)光ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)としては、(1)芳香族ケトン類、(2)有機過酸化物、(3)チオ化合物、(4)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(5)ケトオキシムエステル化合物、(6)ボレート化合物、(7)メタロセン化合物、(8)アシルホスフィン化合物(9)活性エステル化合物、(10)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(11)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、(A)ラジカル酸発生剤との吸収波長に十分な差があり、効果感度がよい点から、(1)芳香族ケトン類、(5)ケトオキシムエステル化合物、(8)アシルホスフィン化合物が好ましい。
本発明における(C)光ラジカル発生剤は単独で用いてもよいし、併用してもよい。
本発明における(C)光ラジカル発生剤は、インク全量に対して、好ましくは1.0〜25.0質量%、より好ましくは3.0〜20.0質量%、更に好ましくは5.0〜15.0質量%の範囲で含有されるのが適当である。
なお、本発明のインク組成物においては、(A)式(a)〜(d)で表される化合物(ラジカル酸発生剤)の極大吸収波長が、(C)光ラジカル発生剤の極大吸収波長よりも短波であることが好ましい態様である。
本発明のインク組成物を硬化させるため放射線は、一般に、(A)ラジカル酸発生剤及び(C)光ラジカル発生剤よりも長波長のものであるため、上記の組み合わせにすることにより、インクジェット記録装置のヘッドに微弱な反射光が当たっても、(C)光ラジカル発生剤が微量なラジカルを発生するのみで、(A)ラジカル酸発生剤は反射光により直接影響を受けることがない。また、(C)光ラジカル発生剤から発生した微量のラジカルは空気中の酸素によりトラップされるため、(A)ラジカル酸発生剤を分散させることがなく、ヘッド内でのインク組成物の粘度の上昇を抑制することができる。
一方、吐出された後の硬化は、強度の露光(放射線照射)により、(C)光ラジカル発生剤から過剰量のラジカルが発生することで、(A)ラジカル酸発生剤から酸が発生し、酸素に阻害されないカチオン重合により感度良く硬化する。
〔(D)着色剤〕
本発明のインク組成物は(D)着色剤を含有することが好ましい。本発明のインク組成物に(D)着色剤を添加することで、可視画像を形成することができる。例えば、平版印刷版の画像部領域を形成する場合などには、必ずしも添加する必要はないが、得られた平版印刷版の検版性の観点からは着色剤を用いることも好ましい。
本発明に使用することのできる着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。本発明のインク組成物に好適に使用し得る着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点からは、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
(顔料)
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
赤或いはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
青或いはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCOPb(OH)、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
顔料の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
インク組成物において顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記(B)カチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、(B)カチオン重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
顔料の平均粒径は0.02〜0.4μmにするのが好ましく、0.02〜0.1μmとするのが更に好ましく、より好ましくは、0.02〜0.07μmの範囲である。
顔料粒子の平均粒径を上記好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
(染料)
本発明に用いる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
本発明に用いることのできる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基及びこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性がよくなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vsSCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vsSCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vsSCE)以上のものが特に好ましい。
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]から[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]から[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]から[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
−酸化電位−
本発明における染料の酸化電位の値(Eox)は、当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著“New Instrumental Methods in Electrochemistry”(1954年,Interscience Publishers社刊)や、A.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年、John Wiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10−2〜1×10−6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポーラログラフィー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(又はピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)とで作られる線分の中間電位値をSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
以下に、本発明で使用しうる染料の具体例を示すが、本発明に用いられる染料は、下記の具体例に限定されるものでない。
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これらの(D)着色剤はインク組成物中、固形分換算で1〜20質量%添加されることが好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
本発明のインク組成物には、前記の各成分に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、物性向上などの目的で、他の成分を併用することができる。
以下、これら任意の成分について以下に説明する。
〔ラジカル重合性化合物〕
本発明のインク組成物に、ラジカル重合性化合物を併用し、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インク組成物としてもよい。
本発明に使用しうるジカル重合性化合物としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー、及びポリマーを用いることができる。
また、ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物材料が知られており、これらも本発明のインク組成物に適用することができる。
このようなラジカル重合性化合物は、インク全量に対して、10.0〜50.0質量%、より好ましくは、20.0〜30.0質量%の範囲で使用することができる。
〔紫外線吸収剤〕
本発明のインク組成物には、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物中の固形分換算で0.5〜15質量%程度である。
〔増感剤〕
本発明のインク組成物には、(A)ラジカル酸発生剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、(A)ラジカル酸発生剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、(A)ラジカル酸発生剤に対し0.01〜1モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%で使用される。
〔酸化防止剤〕
本発明のインク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物中の固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
〔褪色防止剤〕
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物中の固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
〔溶剤〕
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
〔高分子化合物〕
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
〔界面活性剤〕
本発明のインク組成物には界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
〔インク組成物の好ましい物性〕
本発明のインク組成物は、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、25〜80℃、好ましくは25〜50℃)において、インク粘度が5〜30mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは7〜15mPa・sであり、上記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。なお、25〜30℃でのインク粘度は、好ましくは8〜300mPa・s、より好ましくは10〜100mPa・sである。本発明のインク組成物は、粘度が上記の範囲になるように、適宜、組成を調整することが好ましい。
室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される利点を有する。室温での粘度を低く設定した場合、インク吐出時の加温が不要、又は加温温度を比較的低温に設定できるため、インクジェット装置に対する負荷が小さくなるとともに、使用できるインクジェットヘッドの範囲が広がる利点を有する。
本発明のインク組成物の表面張力は、好ましくは20〜30mN/m、更に好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
このようにして調整された本発明のインクジェット用インク組成物は、インク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に吐出(印字)し、その後、吐出されたインク組成物に放射線を照射して硬化して記録を行う。
このインクにより得られた印刷物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
<インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法、及び該インクジェット記録方法に適用しうるインクジェット記録装置について、以下説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、(I)被記録媒体上に本発明のインクジェット用インク組成物を吐出する工程、及び、(II)吐出されたインクジェット用インク組成物に放射線を照射してインク組成物を硬化する工程を含むことを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法においては、上記インク組成物を40〜80℃に加熱して、インク組成物の粘度を5〜10mPa・sの範囲に下げた後、吐出することが好ましく、この方法を用いることにより高い吐出安定性を実現することができる。一般に、放射線硬化型インク組成物では、概して水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動幅が大きい。このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴吐出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。インク組成物温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが一つの特徴であり、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル吐出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、或いは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
次に、放射線の照射条件について述べる。
基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
使用される放射線としては、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは、350〜450nmであることが適当である。なお、活性放射線が(A)式(a)〜(d)で表される化合物の紫外線吸収波長よりも長い波長であることが好ましい。
また、本発明では、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。従って、活性放射線の出力は、例えば、2,000mJ/cm以下、好ましくは、10〜2,000mJ/cm、より好ましくは、20〜1,000mJ/cm、更に好ましくは、50〜800mJ/cmの照射エネルギーであることが適当である。また、活性放射線は、露光面照度が、例えば、10〜2,000mW/cm、好ましくは、20〜1,000mW/cmで照射されることが適当である。
また、本発明では、インク組成物を一定温度に加温するとともに、着弾から照射までの時間を0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒後に放射線を照射することである。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
上記説明したインクジェット記録方法と本発明のインク組成物とを併せて用いることにより、大きな相乗効果をもたらすことになる。特に、25℃におけるインク粘度が8〜500mP・sのインク組成物を用いると大きな効果を得ることができる。このような記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。
なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクを重ねると、下部のインクまで照射線が到達しにくく、硬化感度の阻害、残留モノマーの増加及び臭気の発生、密着性の劣化が生じやすい。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
本発明に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。即ち、本発明においては、本発明のインク組成物をインクジェット記録装置により被記録媒体へ適用することで、記録する、即ち印刷物を得ることができる。
本発明に適用可能なインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含むことが好ましい。
インク供給系は、例えば、本発明の上記インク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜100pl、好ましくは、8〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4,000×4,000dpi、好ましくは、400×400〜1,600×1,600dpi、より好ましくは、720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット装置には、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
特に、本発明のインク組成物に対しては、(A)(a)〜(d)で表される化合物が、低波長領域のUV光によって直接分解することで、連続吐出安定性が低下するおそれがあるため、200nm以下の低波長領域がカットされている、オゾンレス水銀ランプや、波長が限定されている、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として好適に用いることが可能である。
特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
また、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cmであることが好ましく、20〜1,000mW/cmであることがより好ましく、特に好ましくは50〜800mW/cmである。
〔被記録媒体〕
本発明のインク組成物を適用しうる被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料或いは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
本発明のインク組成物は、硬化時の熱収縮が少なく、基材(被記録媒体)との密着性に優れるため、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいフィルム、例えば、熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムなどにおいても、高精細な画像を形成しうるという利点を有する。
<平版印刷版及びその製造方法>
本発明のインク組成物の好適な応用例として、平版印刷版への使用が挙げられる。
本発明の平版印刷版の製造方法は、(i)本発明のインクジェット用インク組成物を親水性支持体上に吐出する工程、及び、(ii)吐出されたインクジェット用インク組成物に放射線を照射して、該インク組成物を硬化させることにより、該インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記親水性支持体上に形成する工程を含むことを特徴とする。ここで、前記活性放射線が前記(A)式(a)〜(d)で表される化合物の紫外線吸収波長よりも長い波長であることが好ましい。
また、本発明の平版印刷版は、前記平版印刷版の製造方法によって製造された平版印刷版である。
本発明のインク組成物を、インクジェット記録装置などを用いて、親水性支持体上に吐出した後、放射線を照射してインクを硬化させ疎水性画像を形成することで、親水性支持体表面に画像様に疎水性のインク受容性領域が形成される。ここに、インクと水性成分を供給すると、水性成分が親水性支持体の露出している領域に保持され、インクが疎水性画像に保持されて、そのまま印刷工程を実施することができる。
本発明のインク組成物は感度が高く、放射線照射により優れた硬化性を示すことから、これを応用した本発明の平版印刷版は、耐刷性に優れた画像部を有することになる。また、画像部を形成するのにインクジェット記録装置を用いて、デジタルデータにより直接、高精細な平版印刷版の画像部を形成することができる。
平版印刷版の製造に用いられるインク組成物は、前記した本発明のインク組成物をそのまま適用すればよい。
(親水性支持体)
本発明の平版印刷版を作製するにあたって好ましく使用される被記録媒体の1つである親水性支持体について説明する。
本発明の平版印刷版に用いられる親水性支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状の支持体であればよい。また、支持体を構成する材料が表面親水性を有するものであれば、そのまま用いてもよく、また、支持体を構成する板状材料の表面に親水化処理を行って用いてもよい。
支持体を構成する材料としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等が挙げられる。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像記録層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いてもかまわない。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/mであるのが好ましく、1.5〜4.0g/mであるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られるので好ましい。
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板をそのまま用いてもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などをの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号や特開2001−322365号に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理は、これらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
(封孔処理)
封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理など無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔、熱水による封孔処理でも可能である。
中でも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理及び熱水による封孔処理が好ましい。
(親水化処理)
本発明に用いられる親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウムなどの水溶液で浸漬処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが挙げられる。
本発明の平版印刷版に用いられる支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像記録層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
このようにして本発明のインク組成物により形成された本発明の平版印刷版は、デジタルデータにより簡易に製造され、且つ、耐刷性に優れた画像部を有するため、高画質の印刷物を多数枚形成するのに有用である。
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。
なお、以下の実施例は各色のUVインクジェット用インクに係るものである。
〔実施例1〕
《顔料分散物の調製》
下記に記載の方法に従って、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各顔料分散物1を調製した。なお、分散条件は、各顔料粒子の平均粒径が0.2〜0.3μmの範囲となるように、公知の分散装置を用いて、分散条件を適宜調整して行、次いで加熱下でフィルター濾過を行って調製した。
(イエロー顔料分散物1)
・C.I.ピグメントイエロー13 20質量部
・高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 20質量部
・ジエチレングリコールジビニルエーテル(BASF社製) 60質量部
(マゼンタ顔料分散物1)
・C.I.ピグメントレッド57:1 20質量部
・高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 20質量部
・ジエチレングリコールジビニルエーテル(BASF社製) 60質量部
(シアン顔料分散物1)
・C.I.ピグメントブルー15:3 20質量部
・高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 20質量部
・ジエチレングリコールジビニルエーテル(BASF社製) 60質量部
(ブラック顔料分散物1)
・C.I.ピグメントブラック7 20質量部
・高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 20質量部
・ジエチレングリコールジビニルエーテル(BASF社製) 60質量部
《インクの調製》
下記の成分を混合し、フィルターによって濾過し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色インクを調製した。
(イエローインク1)
・(A)ラジカル酸発生剤:化合物a−1 15質量部
・(B)カチオン重合性化合物:
セロキサイド2021(エポキシ化合物、ダイセルUCB(株)製) 35質量部
OXT−221(オキセタン化合物、東亞合成(株)製) 55質量部
・(C)光ラジカル開始剤:IRGACURE184 5質量部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)
・(D)着色剤:イエロー顔料分散物1 5質量部
(マゼンタインク1)
・(A)ラジカル酸発生剤:化合物a−1 15質量部
・(B)カチオン重合性化合物:
セロキサイド2021(エポキシ化合物、ダイセルUCB(株)製) 35質量部
OXT−221(オキセタン化合物、東亞合成(株)製) 55質量部
・(C)光ラジカル開始剤:IRGACURE184 5質量部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)
・(D)着色剤:マゼンタ顔料分散物1 5質量部
(シアンインク1)
・(A)ラジカル酸発生剤:化合物a−1 20質量部
・(B)カチオン重合性化合物:
セロキサイド2021(エポキシ化合物、ダイセルUCB(株)製) 35質量部
OXT−221(オキセタン化合物、東亞合成(株)製) 55質量部
・(C)光ラジカル開始剤:IRGACURE184 5質量部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)
・(D)着色剤:シアン顔料分散物1 5質量部
(ブラックインク1)
・(A)ラジカル酸発生剤:化合物a−1 20質量部
・(B)カチオン重合性化合物:
セロキサイド2021(エポキシ化合物、ダイセルUCB(株)製) 35質量部
OXT−221(オキセタン化合物、東亞合成(株)製) 55質量部
・(C)光ラジカル開始剤:IRGACURE184 5質量部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)
・(D)着色剤:ブラック顔料分散物1 5質量部
・増感剤:9,10−ジメトキシアントラセン 0.5質量部
ここで、(A)ラジカル酸発生剤:化合物a−1及び(C)光ラジカル開始剤:IRGACURE184の極大吸収波長を、UV−vis測定装置CARY500(バリアン テクノロジーズ社製)を用いて、それぞれ測定した。
化合物a−1の極大吸収波長は208nmであり、また、IRGACURE184の極大吸収波長は240nmであった。
また、化合物a−1の紫外線吸収波長は200〜220nmであった。
《インクジェット画像記録》(多色画像の評価)
次に、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に40℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV−A光(320〜400nm)を露光面照度100mW/cm、に集光し、被記録媒体上にインク着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
上記調製した各色インク(イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1、ブラックインク1)を用い、環境温度25℃にて、ブラック→シアン→マゼンタ→イエローの順に射出、1色毎に紫外線を照射した。触診で粘着性が無くなる様、完全に硬化するエネルギーとして、1色あたりのトータル露光エネルギーが一律300mJ/cmで露光した。被記録媒体としては、砂目立てしたアルミニウム支持体、印刷適性を持たせた表面処理済みの透明二軸延伸ポリプロピレンフィルム、軟質塩化ビニルシート、キャストコート紙、市販の再生紙に各カラー画像を記録したところ、いずれもドットの滲みの無い高解像度の画像が得られた。更に、上質紙においてもインクが裏周りすることなく、十分にインクが硬化し、未反応モノマーによる臭気が殆どしなかった。また、フィルムに記録したインクには十分な可とう性があり、折り曲げてもインクにクラックが入ることは無く、セロハンテープ剥離による密着性テストにおいても問題無かった。
[実施例2〜9]
《インクの調製》
実施例1においてマゼンタインク1に用いた各成分を以下の各成分に変更した以外は、実施例1におけるマゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク2〜9を調製した。
(マゼンタインク2〜9)
・(A)ラジカル酸発生剤(表1記載の化合物) 15質量部
・(B)カチオン重合性化合物(表1記載の化合物) 90質量部
・(C)光ラジカル発生剤(表1記載の化合物) 5質量部
・(D)着色剤:前記マゼンタ顔料分散物1 1質量部
・増感剤:Darocure ITX 0.5質量部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)
実施例2〜9(マゼンタインク2〜9)に使用した各成分の化合物については、下記表1に示す。
なお、下記表1に記載の(A)ラジカル酸発生剤は前述の具体例であり、また、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光ラジカル発生剤の詳細は以下の通りである。
カチオン重合性化合物(1):セロキサイド2021(エポキシ:ダイセルUCB(株)製)/OXT−221(オキセタン:東亞合成(株)製)=35/55混合物
光ラジカル発生剤(A):IRGACURE184(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製、極大吸収波長=240nm)
〔比較例1〕
実施例1においてマゼンタインク1に用いた各成分を以下の各成分に変更した以外は、実施例1におけるマゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク10を調製した。
(マゼンタインク10)
・(B)カチオン重合性化合物:
セロキサイド2021(エポキシ化合物:ダイセルUCB(株)製) 35質量部
OXT−221(オキセタン化合物:東亞合成(株)製) 55質量部
・カチオン重合開始剤:UVR−6992(ダウ・ケミカル社製) 5質量部
・着色剤:前記マゼンタ顔料分散物1 5質量部
〔比較例2〕
実施例1においてマゼンタインク1に用いた各成分を以下の各成分に変更した以外は、実施例1におけるマゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク11を調製した。
(マゼンタインク11)
・(B)カチオン重合性化合物:
セロキサイド2021(エポキシ化合物:ダイセルUCB(株)製) 35質量部
OXT−221(オキセタン化合物:東亞合成(株)製) 55質量部
・カチオン重合開始剤:UVR−6992(ダウ・ケミカル社製) 5質量部
・カチオン重合安定剤:オクチルアミン(pKa値=7) 0.3質量部
・着色剤:前記マゼンタ顔料分散物1 5質量部
〔比較例3〕
実施例1においてマゼンタインク1に用いた各成分を以下の各成分に変更した以外は、実施例1におけるマゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク12を調製した。
(マゼンタインク12)
・ラジカル重合性化合物:
Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 50質量部 ライトアクリレートL−A(共栄社化学製アクリレートモノマー) 40質量部
・(C)光ラジカル発生剤:IRGACURE184 5質量部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)
・着色剤:前記マゼンタ顔料分散物1 5質量部
〔インクジェット画像記録〕(単色画像評価)
以上のようにして調製したマゼンタインク2〜12を用いて、実施例1に記載の方法と同様にして、マゼンタ画像印字を行った。
1.インクジェット画像の評価
次いで、各形成した画像について、下記に記載の方法に準じて、硬化に必要な感度、市販の再生紙における浸透性、砂目立てしたアルミニウム支持体でのインク滲み、密着性、耐刷性、保存安定性の評価を行った。
2.硬化感度の測定
紫外線照射後の画像面において、粘着感の無くなる露光エネルギー量(mJ/cm
を硬化感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。
3.保存安定性の評価
作成したインクを75%RH、60℃で3日保存した後、射出温度でのインク粘度を測定し、インク粘度の増加分を、保存後/保存前の粘度比で表した。粘度が変化せず1.0に近いほうが保存安定性良好であり、1.5を超えると射出時に目詰まりを起こす場合があり好ましくない。
4.市販の再生紙に対する浸透性評価
市販の再生紙に対し印字した画像について、下記の基準に従い浸透性の評価を行った。
○:殆ど浸透せず、残留モノマー臭もしない
△:僅かに浸透し、残留モノマー臭も僅かに認められる
×:明らかにインクが裏面側に浸透し、残留モノマー臭も強い
5.砂目立てしたアルミニウム支持体におけるインク滲み評価
砂目立てしたアルミニウム支持体上に印字した画像について、下記の基準に従いインク滲みの評価を行った。
○:隣接するドット間の滲みが無い
△:僅かにドットが滲む
×:ドットが滲み、明らかに画像がぼやける
6.砂目立てしたアルミニウム支持体における密着性の評価
上記作成した印字画像について、全く印字面に傷をつけない試料と、JIS K 5400に準拠して、印字面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個作った試料を作製し、各印字面上にセロハンテープを貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った印字画像或いは碁盤目の状況について、下記の基準に則り評価した。
○:碁盤目テストでも、印字画像の剥がれが全く認められない
△:碁盤目テストでは若干のインク剥がれが認められるが、インク面に傷をつけなければ剥がれは殆ど認められない
×:両条件共に、簡単にセロハンテープでの剥がれが認められる
7.連続吐出におけるノズルロスの個数測定
被記録媒体からの反射光に対するインク組成物のヘッドノズルでの連続吐出安定性を評価するために、下記の条件でピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置により60分連続吐出におけるノズルロス個数の評価を行った。実験は、PET基板上に吐出して露光(露光量:1000mW/cm)を行った場合と、露光せず吐出のみ行った場合(括弧内に記載)のそれぞれのノズルロス数(ノズルが詰まってしまった数)を数えた。
チャンネル数:318/ヘッド
駆動周波数:4.8kHz/dot
インク滴:7滴、42pl
温度:45℃
〔平版印刷版としての評価〕
上記で作成した砂目立てしたアルミニウム支持体上に本発明のインク組成物で印字し、画像形成した。これを平版印刷版として評価した。
a.画像の評価
本発明のインク組成物により作製した平版印刷版を、ハイデルKOR−D機に掛け、インク〔枚葉用VALUES−G紅(大日本インク(株)製)〕と湿し水〔Ecolity2(富士写真フイルム(株)製)〕とを供給して印刷を行った。100枚印刷後の印刷物を目視で以下の基準により評価した。
○:画像部の白ヌケ、及び、非画像部の汚れのない画像が得られた。
△:画像部に僅かな白ヌケ、及び/又は、非画像部に僅かな汚れが観察された。
×:画像部の白ヌケ、及び/又は、非画像部の汚れが観察され、実用上問題のあるレベルであった。
b.耐刷性の評価
そのまま印刷を継続し、刷了枚数を耐刷性の指標として相対比較した(比較例1を100とした)。数値が大きいものほど高耐刷であり好ましい。
上記の評価結果を表1に示す。なお、表1には、使用した(A)ラジカル酸発生剤の極大吸収波長、及び紫外線吸収波長の最大値を併記した。
Figure 2008088254
表1に示されるように、実施例のインク組成物は、放射線の照射に対して高感度で硬化し、紙への画像形成性においても高画質の画像を形成することができ、保存安定性、連続吐出安定性も良好であった。このように、実施例のインク組成物においては、硬化感度、非浸透性支持体上での滲み抑制、インクの保存安定性、が達成されたことがわかる。また、実施例のインク組成物は、比較例インク組成物と比較して、露光時のノズルロス数が4〜15個と少なく、また、露光時と未露光時における差異も少ないことから、被記録媒体(PET基板)からの反射光等の低露光量の光に曝されていた場合の安定性が高いことがわかった。特に、実施例1〜6のインク組成物は、露光時のノズルロス数が4〜5個と少なく、また、露光時と未露光時における差異もないことから、低露光量の光に曝されていた場合の安定性が非常に高いことがわかった。
一方、カチオン重合開始剤を含有する比較例1のインク組成物は、保存安定性に問題があり、また、露光時のノズルロスが非常に多いことがわかった。これは、被記録媒体からの反射光などの低露光量の光によってもカチオン重合性化合物が高い重合性を示したことに起因するものである。
また、既存のカチオン重合安定剤であるオクチルアミンを含んだ比較例2のインク組成物は、保存安定性は多少改善されるものの、硬化感度が著しく低下する結果となった。また、実施例に比べ、露光時が非常にノズルロスが多いことが分かる。
更に、比較例3のラジカル重合系インク組成物は、保存安定性に優れ、露光時、未露光時共に、ノズルロス数は少ないものの、実施例に比べ、硬化感度が著しく低下する結果となった。
実施例のインク組成物により画像形成した平版印刷版は、高画質の画像形成が可能であり、耐刷性も良好であることがわかった。
以上の結果から、本発明の、(A)式(a)〜(d)で表される化合物(ラジカル酸発生剤)、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光ラジカル発生剤を含むカチオン重合性のインク組成物は、従来の他のカチオン重合開始剤含有のインク組成物とは異なり、低露光量における組成物の安定性を大きく向上させる一方で、通常の露光量では組成物の重合を阻害せず、高い重合速度を達成し、また、従来のラジカル重合系インクと比べても高感度、且つ、同等の高い安定性をもつ、という有利な効果を奏するものであることがわかる。
また、本発明のインク組成物により画像形成した平版印刷版は、高画質の画像形成が可能であり、耐刷性も良好であることがわかった。
(実施例10)
前記マゼンタインク1を用いて、UV−A光による露光の代わりに、紫外発光ダイオード(UV−LED)による露光を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様にして、マゼンタ画像を作製した。
本実施例でUV−LEDは、日亜化学製NCCU033を用いた。前記LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、被記録媒体(以下、メディアとも言う。)表面で0.3W/cmのパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、及び露光時間はメディアの搬送速度及びヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光される。
メディアとの距離及び搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cmの間で調整することができる。
その結果、触診で粘着性が無くなるように、完全に硬化するエネルギーとしては、300mJ/cmであった。被記録媒体としては、砂目立てしたアルミニウム支持体、印刷適性を持たせた表面処理済みの透明二軸延伸ポリプロピレンフィルム、軟質塩化ビニルシート、キャストコート紙、市販の再生紙に各カラー画像を記録したところ、いずれもドットの滲みの無い高解像度の画像が得られた。更に、上質紙においてもインクが裏周りすることなく、十分にインクが硬化し、未反応モノマーによる臭気が殆どしなかった。また、フィルムに記録したインクには十分な可とう性があり、折り曲げてもインクにクラックが入ることは無く、セロテープ(登録商標)剥離による密着性テストにおいても問題無かった。
更に、前記マゼンタインク1を、ピエゾ型インクジェットヘッドCA3(東芝テック社製)を使用し、30分間連続突出させた後、ノズルの状態を確認したところ、目詰りを生じたノズルはなく問題はなかった。また、インクに、ピエゾ型インクジェットヘッドCA3(東芝テック社製)を一部浸し、50℃にて1週間経時させた後、浸した金属部分の腐食(変色)を調べたところ、変色は見られず、全く問題なかった。

Claims (8)

  1. (A)下記式(a)〜(d)で表される化合物、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光ラジカル発生剤を含有することを特徴とするインクジェット用インク組成物。
    Figure 2008088254
    〔式中、R1a、R2a、R1b、R2b、R3b、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R1d、R2d、R3d、R4d、及びR5dは、それぞれ独立に、一価の有機基、又は水素原子を表し、R1a及びR2a、R1c、R2c、R3c、R4c、及びR5cのうちいずれか2つ、並びに、R1d、R2d、R3d、R4d、及びR5dのうちいずれか2つは、それぞれ独立に、互いに結合して環構造を形成してもよい。Zは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、又はCOYを表し、Yはヘテロ原子を介してカルボニル基に連結している一価の基、又はハロゲン原子を表す。Xは、有機酸又は無機酸の共役塩基を表す。〕
  2. 更に(D)着色剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
  3. 前記(A)式(a)〜(d)で表される化合物の極大吸収波長が、前記(C)光ラジカル発生剤の極大吸収波長よりも短波であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット用インク組成物。
  4. (I)被記録媒体上に、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物を吐出する工程、及び
    (II)吐出されたインクジェット用インク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、
    を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
  5. 前記活性放射線が前記(A)式(a)〜(d)で表される化合物の紫外線吸収波長よりも長い波長であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
  6. (i)親水性支持体上に、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物を吐出する工程、及び
    (ii)吐出されたインクジェット用インク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化させることにより、該インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記親水性支持体上に形成する工程、
    を含むことを特徴とする平版印刷版の製造方法。
  7. 前記活性放射線が前記(A)式(a)〜(d)で表される化合物の紫外線吸収波長よりも長い波長であることを特徴とする請求項6に記載の平版印刷版の製造方法。
  8. 請求項6又は請求項7に記載の平版印刷版の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする平版印刷版。
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