JP2008075510A - 軸シール装置 - Google Patents

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Hitoshi Sakakida
均 榊田
Tatsuo Yamashita
達雄 山下
Toshio Hirano
俊夫 平野
Kazunori Ikeda
和徳 池田
Itaru Murakami
格 村上
Kenji Kamimura
健司 上村
Satoru Asai
知 浅井
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Abstract

【課題】流体の漏洩量を低減でき、効率の良いターボ機械の軸シール装置を提供すること、および快削材の脱落を防止し、快削材の端部まで摩滅されるようにして信頼性の高い軸シール装置とする。
【解決手段】シール取付け部である動翼の基材表面から突出する長短二種類以上の長さを有する複数のシールフィン1a,1bと、シール取付け部37と相対するシール取付け部であるケーシング38に設けられ、シールフィン1a,1bに対し間隔を介して対向する段付き形状の快削材層3a、3bとを備えた。
【選択図】 図3

Description

本発明はターボ機械の流体漏れを防止するラビリンスシールを備えた軸シール装置に係り、特にラビリンスシールとして段付きのアブレイダブルシールを適用した軸シール装置に関するものである。
蒸気タービン等のターボ機械は、作動流体を翼列等に作用させて出力を得る回転機械である。このターボ機械においては、翼列等における作動流体の流体漏れを防止するため、回転体と静止部等のシール取付け部間にラビリンスシールを設け、これにより効率を向上させるようにしている。
図14は、蒸気タービンの翼列構造を示す断面図である。図14に示すように、蒸気タービンでは、ロータ36に複数の動翼37が組立てられており、ケーシング38には静翼39が組込まれている。作動流体40は動翼37と静翼39とで形成される翼列に作用し、出力はロータ36に伝達される。
作動流体40は、高温かつ高圧の流体であることが多く、ロータ36とケーシング38との間には翼列に作用しない作動流体が漏れて流れる。この漏れ流体は動力としてロータ36に作用するものではないため、漏れ流体が多くなるとターボ機械の効率低下の原因となる。この漏れ流体を極力減少するため、ロータ36とケーシング38との間には多数の非接触型のラビリンスシール41が使用されている。このシール間隙cを減ずることで漏れ流体を減らすことができ、ターボ機械の効率向上が可能である。
しかし、シール間隙cを狭めると、起動時などの非定常状態時にロータ36とケーシング38との熱伸び差により、シールフィン1がロータ36に接触し、振動問題やシールフィンの損傷を発生させる場合がある。図14に示したシールフィン1は、ケーシング38等の静止側に組込まれているが、ロータ36である可動側に組込まれている場合もある。
ロータ36とケーシング38との熱伸び差は、ケーシング38に比較して一般的にロータ36の体積が小さく熱容量が小さいため、起動時などの温度上昇時にロータ36がケーシング38より先に、スラスト軸受43を起点として軸方向xへ伸び、また半径方向yへ伸びるために生じる。なお、半径方向yの伸びには、遠心力による伸びも加わる。
シールフィン1とロータ36との接触時に発生する振動問題は、シールフィン1とロータ36の表面との接触による発熱、その熱によるロータ36の局所的な過熱、これによるロータ36の曲がりの発生等が原因となっている。また、シールフィン1の先端は一般的に鋭角として加工されており、接触により先端部分が摩耗して組立時の間隙が確保できなくなり、これにより効率が低下する場合もある。
そこで、接触しても発熱やシールフィン1の損傷を発生させない快削材(例えばアブレイダブル材)をシールフィン1と対向する箇所に適用するアブレイダブルシールが古くから種々のターボ機械で使用されている。アブレイダブルシールを用いた場合には、通常のラビリンスシールに比べてシール間隙を小さくすることが可能であることから、従来では、アブレイダブルシールを用いた高効率のターボ機械が種々提案されている(例えば、特許文献1、2等参照)。
特公昭63−23428号公報 特開平2−298604号公報
従来、高温かつ高圧の作動流体を扱うターボ機械の軸シール装置において、ラビリンスシールとして、シール取付け部にその基材表面から突出する長短二種類以上の長さを有する複数のシールフィンを設けるとともに、このシール取付け部と相対するシール取付け部を、シールフィンの先端に対して間隔を介して対向する段付き形状とすることにより、シール性を向上させることが行なわれている。
図15は、このような段付きシール44の構成例を示したものである。図15の例では、シール取付け部であるロータ36の軸部36aおよび動翼37に、長短二種類の長さを有する複数のシールフィン44aが設けられ、これらに相対するシール取付け部であるケーシング38および静翼39側には凹凸の段部45が設けられている。
発明者においては、このような段付きシール44の段部45に対して快削材を設置し、上述のアブレイダブルシールを適用すれば、シール間隙cを一層減ずることができ、更なる効率向上が図れることに想到した。
ただし、この場合にはアブレイダブルシールに起因する課題がある。この点を図16により説明する。図16は、段付きシールに快削材を適用した例を示す構成図である。
図16において、一方のシール取付け部46に長歯のシールフィン1aおよび短歯のシールフィン1bが設けられ、これと相対する位置に配置される他方のシール取付け部47に凹凸の段部45が設けられ、この段部45に快削材層3a,3bが設置されている。
この構成では、ターボ機械の効率向上を目的としてシールフィン1a,1bと快削材層3a,3bとの間隙を極力小さくするため、遠心力による膨張分と半径方向の熱伸び差により、シールフィン1a,1bが快削材層3a、3bに侵入する。ここで、発熱およびシールフィンの摩耗を生じさせずに快削材層3a、3bが削られるため、敢えてこの状態を許容できることがアブレイダブルシールの特徴である。
ところが、ターボ機械の起動時などの非定常状態では、上述したように、静止部とロータとの熱伸び差により、シールフィン1a,1bが快削材層3a、3bに侵入した状態で快削材を軸方向に接触しながら削り移動する状態が見られる。特に、この現象はターボ機械の組立後の初起動時および負荷上昇時の非定常状態で発生し易い。快削材は本来、合金を疎として基材にボンド層を介して溶射することから空間を多く有する部材であるため、快削性を発揮する反面、脆い性質を有する。
図17は、この性質による課題を説明するための作用説明図である。図17において、シールフィン1bが段付きシールの凸部快削材層3bに侵入した状態で軸方向に移動すると、段付きシールの凸部端部近傍にシールフィンが達した時、快削材の端部9aが図17に示すように脱落することが、実験などから確認されている。端部が大きく脱落すると、脱落した快削材9aが他の部分の快削材に当り、健全な快削材に損傷を与えたり、翼に当って翼を損傷させたりして、ターボ機械の信頼性を著しく低下させる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、流体の漏洩量を低減でき、効率の良いターボ機械の軸シール装置を提供すること、および快削材の脱落を防止し、快削材の端部まで摩滅されるようにして信頼性の高い軸シール装置を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明では、ターボ機械の回転体と静止部との間にラビリンスシールを設けて作動流体の漏れを防止する軸シール装置であって、前記ラビリンスシールは、シール取付け部の基材表面から突出する長短二種類以上の長さを有する複数のシールフィンと、前記シール取付け部と相対するシール取付け部に設けられ、前記シールフィンに対し間隔を介して対向する段付き形状の快削材層とを備えたことを特徴とする軸シール装置を提供する。
また、本発明では、前記快削材層は、Ni、CrおよびAlから選ばれる1以上の粉末を前記シール取付け部の基材表面へ溶着することにより構成されており、この快削材層は前記シールフィンとの高速接触に対し、前記各基材が非発熱および非摩耗発生状態に維持される軸シール装置を提供する。
さらに、本発明では、前記基材に設けられた前記快削材層のうち、段付き形状の凸状部分の軸方向側端面が周面側に向って次第に幅狭となる傾斜面とされている軸シール装置を提供する。
本発明によれば、ラビリンスシールがシール取付け部の基材表面から突出する長短二種類以上の長さを有する複数のシールフィンと、シール取付け部と相対するシール取付け部に設けられ、シールフィンに対し間隔を介して対向する段付き形状の快削材層とを備えることにより、流体の漏洩量を段付きの無いストレートシールよりも低減することができ、ターボ機械の効率を高めることができる。
また、本発明によれば、快削材層は、Ni、CrおよびAlから選ばれる1以上の粉末をシール取付け部の基材表面へ溶着し、この快削材層はシールフィンとの高速接触に対し、各基材が非発熱および非摩耗発生状態に維持される構成とし、また、基材に設けられた快削材層のうち、段付き形状の凸状部分の側端面を表面側に向って次第に幅狭となる傾斜面とすることにより、この傾斜面においてシールフィンと快削材との接触面積が軸方向に移動するとともに減少するようにし、シールフィンが快削材を押す力も減少させ、快削材端部を脱落することなく、端部まで摩滅させることができ、軸シールの信頼性を高めることができるとともに、効率を高めることができる。
以下、本発明に係る軸シール装置の実施形態について、図1〜図13を参照して具体的に説明する。なお、ターボ機械の全体構成については、図14を参照する。
[第1実施形態(図1)]
図1は、本発明の第1実施形態による軸シール装置の構成を示す拡大断面図である。本実施形態では、ターボ機械の回転体と静止部との間にラビリンスシールを設けて作動流体の漏れを防止する軸シール装置であって、ラビリンスシールは、シール取付け部である動翼37の基材表面から突出する長短二種類以上の長さを有する複数のシールフィン1a,1bと、シール取付け部37と相対するシール取付け部であるケーシング38に設けられ、シールフィン1a,1bに対し間隔を介して対向する段付き形状の快削材層3a、3bとを備えた軸シール装置50について説明する。
また、快削材層3a、3bは、Ni、CrおよびAlから選ばれる1以上の粉末をシール取付け部であるケーシング38の基材表面への溶着により構成されており、この快削材層3a、3bはシールフィン1a,1bとの高速接触に対し、各基材が非発熱および非摩耗発生状態に維持される軸シール装置50について説明する。
図1に示すように、本実施形態の軸シール装置50では、動翼37に長歯のシールフィン1aおよび短歯のシールフィン1bが軸方向に交互に設けられている。また、これらのシールフィン1a,1bに相対する位置に配置された動翼37の凹凸状をなす基材2(2a,2b)の表面には、快削材層3a、3bが形成されている。
基材2の凹状部分(以下、「基材凹部2a」という。)の表面側には快削材層3aが周面4aのみ露出して形成されている。また、基材2の凸状部分(以下、「基材凸部2b」という。)の表面側には周面4bおよび軸方向側端面4cが露出して形成されている。
そして、快削材層3a、3bは、例えばNi、CrおよびAlから選ばれる1以上の粉末をシール取付け部であるケーシング38の基材表面への溶着により構成されている。このような材質の採用により、快削材層3a、3bはシールフィン1a,1bとの高速接触に対し、各基材が非発熱および非摩耗発生状態に維持されるようになっている。
このように、長歯のシールフィン1aおよび短歯のシールフィン1bに対し、間隔を介して対向する段付き形状の快削材層3a、3bを形成しているため、段付きシールを実現することができる。なお、快削材層3a、3bの外周面4a,4bはシールフィン1a,1bとの間隙を均一にするために快削材を施工した後に仕上げる場合もある。
以上の本実施形態によれば、軸シール装置50が段付きシール構造を有する構成としたことにより、流路の凹凸により流体抵抗が増加し、流体の漏洩量を段付きの無いストレートシールに比べて低減することができ、この軸シール装置50により効率の良いターボ機械を提供することができる。
また、本実施形態においては、快削材層3a、3bをNi、CrおよびAlから選ばれる1以上の粉末をシール取付け部であるケーシング38の基材表面への溶着により構成し、快削材層3a、3bがシールフィン1a,1bとの高速接触に対し、各基材が非発熱および非摩耗発生状態に維持されるようにしたので、信頼性を向上することができる。
[第2実施形態(図2,図3)]
図2は本発明の第2実施形態による軸シール装置50の構成を示す拡大断面図であり、図3(a),(b)は作用を説明するための拡大断面図である。なお、本実施形態〜第10実施形態の軸シール装置50は、基本的に第1実施形態の構成および材質と同一であるため、重複する説明は省略する。本実施形態では、基材に設けられた快削材層3a、3bのうち、段付き形状の凸状部分の軸方向側端面4cが周面4b側に向って次第に幅狭となる傾斜面とされている軸シール装置50について説明する。
図2には、シールフィン1a,1bに対し間隔を介して対向する段付き形状の快削材層3a、3b部分のみを示している。この図2に示すように、本実施形態では、基材凸部2bに施工された快削材層3bの軸方向側端面4cの両面に、周面4b側に向って次第に幅狭となる傾斜面5が形成されている。この傾斜面5は快削材層3bの周方向全体に亘って形成されている。
図3(a)は本実施形態の作用を示し、図3(b)は比較例として従来構成の作用を示している。図3(a)に示すように、本実施形態の軸シール装置50では、快削材層3bを施工した軸シール装置50が、シールフィン1bと快削材層3bとの接触によるシールフィン1bの摩滅と発熱による振動問題を回避できるため、シールフィンと快削材との間隙を従来のラビリンスシールよりも小さくすることが可能である。
これにより、従来の段付きシールよりも効率が比較的に向上できるが、前述したように、ターボ機械の起動時や非定常時にシールフィンは快削材に半径方向の伸び差で侵入し、シールフィンが快削材に侵入したまま軸方向の伸び差により軸方向xに移動し、快削材層1bの端部近傍にまで達する場合がある。
図3(b)は快削材の端部に傾斜面が形成されていない従来の段付きシール3bを示しており、シールフィン1bがターボ機械のケーシングとロータの伸び差により快削材層3bと接触し、快削材を摩滅させながら軸方向xに移動し、快削材層3bの端部近傍まで達した場合を表している。
この場合には、シールフィン1bと快削材との接触面7に押付力Fがシールフィンから快削材に作用する。この押付力Fにより、快削材層3bの端部に残った残留快削材9の根元部10には軸方向剪断力τが発生する。押付力Fは接触面7の接触高さhに比例し、剪断力τは押付力Fを残留快削材の根元長さLで除した値に比例するため、下記の式(1)のように表すことができる。ここで、定数はシールフィン1bの形状、移動速度、剛性、シールフィン1bと快削材との摩耗速度等から決定される値である。
[数1]
剪断力τ=定数×(接触高さh/根元長さL) …… 式(1)
この剪断力τが快削材の剪断強度τlimitより大きくなった時に、残留快削材9は根元部10から破断・離脱する。前述したように快削材は脆く剪断強度τlimitは小さいため、端部はある大きさを持って脱落して、他の部位に当たるためその部位の損傷を引き起こす可能性がある。破断する場合の剪断強度τlimitは快削材の材料により決定される。
一方、上述した図3(a)の本実施形態においては、軸シール装置50で快削材端面に傾斜5(傾斜角度α)を持たせた場合、シールフィン先端12が角度βのとき、接触高さhを用いて残留快削材9bの根元長さLaを表すと、下記の式(2)のように表すことができる。
[数2]
根元長さLa=接触高さh×cotα+接触高さh×tanβ …… 式(2)
したがって、剪断力は式1と式2を用いて式3のように表すことができる。
[数3]
剪断力τ=定数×接触高さh/(接触高さh×cotα+接触高さh×tanβ)
…… 式(3)
すなわち、式4のように表すことができる。
[数4]
剪断力τ=定数×1/(cotα+tanβ) …… 式(4)
したがって、剪断力τは残留快削材の根元長さLaに関係なく快削材層3bの傾斜αとシールフィン1bの先端角度βで決まり、式4で表される剪断力τが快削材の剪断強度τlimitよりも小さくなるように傾斜角度αを設定することにより、残留快削材9bは脱落することはなく、信頼性の高い軸シール装置50の提供が可能である。
本実施形態による軸シール装置50は快削材層3bの端部が傾斜しているため、シールフィン1bと快削材層3bとの接触面積が軸方向に移動するとともに減少し、シールフィン1bが快削材を押す力もそれにつれて現象していく。したがって、快削材層3bの端部は脱落することなく、端部まで摩滅されることになる。このように、本実施形態により信頼性の高い効率の良い軸シールの提供が可能となる。
[第3実施形態(図4)]
図4は本発明の第3実施形態による軸シール装置50の構成を示す拡大断面図である。
本実施形態では、快削材層3bの傾斜面5が、快削材自体に施された加工により形成されている軸シール装置50について説明する。すなわち、快削材は通常溶射により基材に溶着して施工される。したがって、溶射方向と同方向に快削材は厚みを持って形成され、通常は基板凸部2aに施工された快削材層3bは、シールフィンの向く方向と同一方向(矢印13方向)に溶射されるため、図4に細線枠で示すように、縦断面が長方形状をなす凸部として形成される。
これに対し、本実施形態による軸シール装置50では、快削材端部に傾斜5を持たせる手段として、を快削材溶射後に快削材層3bを切削することにより施工する(端部切削部15)。このような手段により、傾斜面5を形成することができ、この結果として快削材が脱落することなく信頼性の高い軸シール装置50の提供が可能となる。
[第4実施形態(図5)]
図5は本発明の第4実施形態による軸シール装置50の構成を示す拡大断面図である。
本実施形態では、快削材層3bの傾斜面は、基材凸部2に形成された傾斜面に追随する形状とされている軸シール装置50について説明する。
図5に示すように、本実施形態では、基材凸部2における軸方向端部の両角部が傾斜面16として形成されている。この両角部が傾斜面16として形成された基材凸部2に対して、快削材をシールフィンが向く方向と同一方向(矢印13方向)に溶射すれば、快削材層17自体に傾斜面を加工する必要なく、快削材層17の端部に傾斜面5を形成することができる。
本実施形態によれば、特に加工の必要なく快削材層17に傾斜面5を形成することができるため、前述したように快削材が脱落することなく、信頼性の高い軸シール装置50の提供が可能となる。
[第5実施形態(図6)]
図6は本発明の第5実施形態による軸シール装置50の構成を示す拡大断面図である。
本実施形態では、基材の凸状部分の傾斜面は、湾曲面とされている軸シール装置50について説明する。
図6に示すように、本実施形態では基材凸部2が予め、例えば断面ドーム状の曲面18をもつ形状として成形されている。このような構成となっているため、快削材をシールフィンが向く方向と同一方向(矢印13方向)に向けて溶射すれば、快削材層3bは曲面となって形成される。
なお、本実施形態においては、シール間隙を均一にするために、快削材層3bの周面の表面部分の快削材21を切削することにより、平面状に仕上げる。この結果として、快削材層3bの端部に湾曲した傾斜面22が残ることになる。
本実施形態によっても、快削材層3bの端部の傾斜面5は、快削材施工後に加工する必要なく、快削材施工時に形成される。
[第6実施形態(図7、図8)]
図7は本発明の第6実施形態による軸シール装置50の構成を示す拡大断面図である。
本実施形態では、基材の凸状部分の表面に傾斜面23が形成されるとともに、この傾斜面23に対して角部が直角な快削材層2bが形成され、この快削層2bの側端面が傾斜面とされている軸シール装置50について説明する。
図7に示すように、本実施形態の基材凸部2bの周面には予め傾斜面23が形成されており、この基材凸部2bの傾斜面23に、その傾斜に対して垂直な方向24に快削材が溶射されている。このような構成によると、快削材層3bが基材凸部2bの傾斜面23に対して垂直に施工されるので、角部が直角な快削材層2bの軸方向側端面4cは当然に傾斜面5となる。
快削材の施工後には、シールフィンとの間隙を調整するため、快削材層25切削線26より上部を削除すれば、快削材層3bの周面にある表面部分の快削材21を切削することにより、平面状に仕上げることができる。
図8は第6実施形態による軸シール装置50の変形例を示す拡大断面図である。この変形例では、図8に示すように、基材凸部2の両端に傾斜面27をもつ窪み28が形成されている。この、基材凸部2に対し、両端の傾斜面27の部位に、その傾斜と垂直方向29a、29bに快削材を溶射し、その他の部位にはシール方向と同方向13に快削材を溶射する。そして、シールフィンとの間隙を調整するため快削材表面26の加工を施せば、快削材層3bの両端部には傾斜面5が形成される。
本実施形態によっても、快削材層3bの端部の傾斜面5は快削材施工後に加工する必要なく、快削材施工時に形成される。
[第7実施形態(図9)]
図9は本発明の第7実施形態による軸シール装置50の構成を示す拡大断面図である。
本実施形態では、基材凸部2bに設けられた快削材層3bの側端部30bに、中間部分30aよりも剪断強度が高い快削材層3bが形成されている軸シール装置50について説明する。また、快削材層3bの剪断強度が高い部分は、密度が中間部分よりも高い構成とされている軸シール装置50について説明する。
すなわち、図9に示した実施形態では、シールフィンと快削材層3bとの接触により脱落し易い快削材層3bの側端部30bに、剪断強度を高めた快削材を施工したものである。剪断強度を高める一例としては、快削材の密度を中間部分30a等の他の部分より密にしたもので、これは溶射速度、溶射温度を調整することにより可能である。
本実施形態によっても、快削材が脱落することなく、信頼性の高い軸シール装置50の提供が可能となる。
[第8実施形態(図10、図11)]
図10は、本発明の第8実施形態による軸シール装置50の構成を示す拡大断面図である。
本実施形態では、快削材層3bが、基材の各段部に亘って一体に形成されている軸シール装置50について説明する。
図10に示すように、本実施形態では、段付きシールに快削材層30を施工した軸シール装置50において、快削材層3bを上記の各実施形態に示したような基材凸部2bおよび基材凹部2aに独立させて施工するのではなく、快削材層3bを連続的に基材に一体施工させたものである。
また、図11は本実施形態に対する比較例(従来の構成)を示す拡大断面図である。従来の構成では、基材凸部2bに快削材層3bを施工する場合において、快削材は空間層を多く有するポーラス状の脆い金属であることから、基材凸部2bとの接合性を良くするために、先ず基材凹部2aの表面にボンド層32と呼ばれる合金を溶射する。その後快削材を溶射するが、図11に示すように、高温・高速で溶射するため、端部のボンド層32は端部で薄く垂れ下がるる特性がある。この部分は、快削材層3bの剪断強度が他の部分に比べて極端に弱くなっている。
そして、シールフィン1bの侵入が深くボンド層32に近くなると、シールフィンが軸方向伸び差による移動で快削材端部に達した時、剪断強度の弱くなっているボンド層32と快削材層3bの境界に沿って亀裂33が進展し、前述の図3に示した残留快削材9よりも大きな快削材9aが、この亀裂33から脱落し、タービン羽根等に損傷を与える可能性が大きくなる。
これに対し、図10に示した本実施形態による軸シール装置50では、快削材が連続して施工されているため、図11で示したような剪断強度の弱くなる部位を無くすることが可能であり、大きな快削材の脱落を防止することができ、信頼性の高い高性能の段付きシールを提供することが可能となる。
[第9実施形態(図12)]
図12は、本発明の第9実施形態による軸シール装置50の構成を示す拡大断面図である。
本実施形態では、快削材層2bが平坦形状であり、この快削材層2bが加工により段付き形状とされている軸シール装置50について説明する。
図12に仮想線も含めて示すように、本実施形態の軸シール装置50では、予め基材凹部2aに快削材層3bがほぼ一様な厚さに施工される。その後に、快削材層3bの凹部となる部分を切削して、仮想線で示した切削部35を除去することにより、段付きシールを形成したものである。
本実施形態によっても快削材層3bが連続して施工されているため、図11で示したような剪断強度が弱くなる部位を無くすることが可能である。
これにより、大きな快削材の脱落を防止することができ、信頼性が高い高性能の段付きシールを提供することが可能となる。
[第10実施形態(図13)]
図13は、本発明の第10実施形態による軸シール装置50の構成を示す拡大断面図である。
本実施形態では、第9実施形態で示した快削材層3bの側端部に、傾斜面5が形成されている軸シール装置50について説明する。
図13に示すように、本実施形態においても、仮想線で示したように、基材凹部2aに快削材層3bをほぼ一様な厚さで施工した後、快削材層3bの凹部となる端部に傾斜面5を有する形状で切除し、切削部35aを除去することにより、段付きシールを形成したものである。
この構成によって、快削材層3bが連続して施工されており、かつ端部に傾斜を有しているため、前述した各実施形態と同様に、快削材の脱落を防止することができ、信頼性が高い高性能の段付きシールを提供することが可能となる。
本発明の第1実施形態による軸シール装置を示す構成図。 本発明の第2実施形態による軸シール装置を示す構成図。 (a)、(b)は本発明の快削材端部のシールフィンとの接触状況を示す説明図。 本発明の第3実施形態による軸シール装置を示す構成図。 本発明の第4実施形態による軸シール装置を示す構成図。 本発明の第5実施形態による軸シール装置を示す構成図。 本発明の第5実施形態による快削材の溶射方向と快削材の形成を示す図。 本発明の第6実施形態による軸シール装置を示す構成図。 本発明の第7実施形態による軸シール装置を示す構成図。 本発明の第8実施形態による軸シール装置を示す構成図。 図10に示した快削材端部の拡大図。 本発明の第9実施形態による軸シール装置を示す構成図。 本発明の第10実施形態による軸シール装置を示す構成図。 蒸気タービンの翼列部を示す断面図。 段付きシール適用箇所構造図。 箇所図段付きシールへのアブレイダブルシール適用図。 アブレイダブルシールの端部脱落の様子を示す図。
符号の説明
1,1a,1b シールフィン
2 基材凸部
2a 基材凹部
2b 基材凸部
3b 快削材層
4 快削材表面
5 傾斜
7 接触面
9 残留快削材
10 残留快削材根元
12 シールフィン先端
13 溶射方向(シールフィン方向)
15 切削部
16 傾斜
18 曲面
20 切削線
21 切削部
23 傾斜
24 溶射方向(傾斜面垂直)
25 快削材
26 切削線
27 傾斜
28 窪み
29 溶射方向(傾斜面垂直)
30 快削材(高剪断強度)
32 ボンド層
33 亀裂
34 基材
35,35a 切削部
36 ロータ
37 動翼
38 ケーシング
39 静翼
40 作動流体
41 ラビリンスシール
43 スラスト軸受
44 段付きシール
50 軸シール装置

Claims (12)

  1. ターボ機械の回転体と静止部との間にラビリンスシールを設けて作動流体の漏れを防止する軸シール装置であって、前記ラビリンスシールは、シール取付け部の基材表面から突出する長短二種類以上の長さを有する複数のシールフィンと、前記シール取付け部と相対するシール取付け部に設けられ、前記シールフィンに対し間隔を介して対向する段付き形状の快削材層とを備えたことを特徴とする軸シール装置。
  2. 前記快削材層は、Ni、CrおよびAlから選ばれる1以上の粉末を前記シール取付け部の基材表面へ溶着することにより構成されており、この快削材層は前記シールフィンとの高速接触に対し、前記各基材が非発熱および非摩耗発生状態に維持される請求項1記載の軸シール装置。
  3. 前記基材に設けられた前記快削材層のうち、段付き形状の凸状部分の軸方向側端面が周面側に向って次第に幅狭となる傾斜面とされている請求項1記載の軸シール装置。
  4. 前記快削材層の傾斜面は、当該快削材自体に施された加工により形成されている請求項3記載の軸シール装置。
  5. 前記快削材層の傾斜面は、前記基材に形成された傾斜面に追随する形状とされている請求項3記載の軸シール装置。
  6. 前記基材の凸状部分の傾斜面は、湾曲面とされている請求項5記載の軸シール装置。
  7. 前記基材の凸状部分の表面に傾斜面が形成されるとともに、この傾斜面に対して角部が直角な前記快削材層が形成され、この快削層の側端面が傾斜面とされている請求項3記載の軸シール装置。
  8. 前記基材の凸部に設けられた快削材層の側端部に、中間部分よりも剪断強度が高い快削材層が形成されている請求項1記載の軸シール装置。
  9. 前記快削材層の剪断強度が高い部分は、密度が前記中間部分よりも高い構成とされている請求項8記載の軸シール装置。
  10. 前記快削材層は、前記基材の各段部に亘って一体に形成されている請求項1記載の軸シール装置。
  11. 前記快削材層が平坦形状であり、当該快削材層の肉厚が加工により段付き形状とされている請求項10記載の軸シール装置。
  12. 前記快削材層の側端部に傾斜面が形成されている請求項10記載の軸シール装置。
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