JP2008072598A - 基準局用のアンテナ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】DGPSの基準局などに用いることができる、水平面内無指向性、垂直面シャープカットオフ特性を有するアンテナ装置を提供する。
【解決手段】それぞれ水平面内の4方向のうちのいずれかを向いている4個のダイポールアンテナ20A〜20Dを備える複数個のエレメントアレイE1〜E11と、基準面10に対して垂直な方向に配列するようにエレメントアレイE1〜E11を保持するアンテナマスト11と、エレメントアレイE1〜E11に対して給電するアレイ給電部12とを設ける。各エレメントアレイE1〜E11には、所定の円偏波成分のみを送受信可能とするように4個のダイポールアンテナ20A〜20Dに対して給電するアンテナ給電回路21を設ける。各エレメントアレイE1〜E11に対し、エレメントアレイごとの伝送路によって、所定の位相差を有するように給電する。
【選択図】図1

Description

本発明は、GPS(汎地球測位システム;Global Positioning System)信号などの受信に用いられるアンテナに関し、特に、DGPS(ディファレンシャルGPS)の基準局などに適したアンテナ装置に関する。
GPSの利用の拡大に伴い、例えば、航空機の精密な着陸誘導にもGPSの利用が検討されている。航空機の着陸誘導のためには、航空機側で例えば数センチメートル程度の測位精度が要求され、これは、航空機に搭載したGPS受信機をのみを用いた単独測位では達成することができず、DGPSの手法を用いなければならない。DGPSでは、地上の既知の点に設置された基準局においてGPS信号を受信してGPS測位における誤差を求めて補正量を算出し、その補正量を例えば航空機側に送信する。航空機側では受信した補正量に応じて、その航空機でのGPS測位による値を補正することによって、例えば数cmといった測位精度を達成するようにしている。
このようなDGPSでは、基準局においては直接波のGPS信号のみを正確に受信しなければならない。上空のGPS衛星からのGPS信号を受信する場合、アンテナ周囲の地物(建物など)や大地からの反射によるマルチパス成分も受信する可能性がある。より多くのGPS衛星からの電波を受信するためにアンテナを大地から離れて高所に設置する場合には、大地からの反射によるマルチパスの影響を受けやすくなる。なお、アンテナよりも高い位置にある建物の垂直な壁面で反射されたマルチパス成分は、円偏波方向が反転するため、直接波に対する妨害成分とはなりにくい。
そこで、基準局用のアンテナとしては、基準面(例えば水平面)より下側の半球方向からの到来波については受信せず(垂直面シャープカットオフ特性)、基準面から上側の半球方向に対してのみ指向性を有することが望まれる。そしてこの基準面から上側方向においては、水平面内無指向性すなわち基準面内の360°方向のいずれの方向に対しても等しく指向性を有することが望まれる。GPS衛星からの電波は右旋偏波であるから、右旋の円偏波成分のみを受信するアンテナである必要がある。ここで基準面とは、アンテナの指向性を規定するための仮想的な平面であり、基準面に対応する接地導体や放射器などがアンテナに設けられるわけではない。
このような条件を満たすDGPSの基準局用のアンテナとして、米国特許第5,534,882号明細書(特許文献1)には、4素子ダイポールアンテナアレイであるエレメントアレイを基準面方向に垂直な方向に7段重ねて(スタックさせて)構成されたアンテナ装置が開示されている。各エレメントアレイは、基準面に対して垂直となるように設けられているアンテナマストに取り付けられている。
各エレメントアレイでは、基準面に平行な面内で、アンテナマストの位置を中心にして、0°方向、90°方向、180°方向及び270°方向にそれぞれの指向軸が向くように、アンテナマストの位置を囲むように4個のダイポールアンテナが配置されている。このとき、異なるエレメントアレイに属するダイポールアンテナは基準面に対して相互に揃った位置で、すなわち、基準面に対する投影位置が一致するように配置している。このように配置していることを、整列しているという。同一のエレメントアレイ中のこれらのダイポールアンテナに対しては、順番に位相差が0°、90°、180°、270°となるように給電系が構成されている。言い換えれば、円周を4等分する点にそれぞれ配置されているダイポールアンテナに対して、その円周角に沿って360°の面内方向で位相が進行するように給電系が構成されている。また、各ダイポールアンテナのアンテナ素子の伸びる方向は、上述した基準面に対して、例えば45°程度傾いており、4方向のスラントダイポールアンテナとして構成されている。このようにして各エレメントアレイは、右旋偏波であるGPS衛星からの信号を受信できるようにしている。
指向特性、特に、基準面より下側の半球方向に対して指向性を持たないようなシャープカットオフ特性を実現するために、各エレメントアレイは、アンテナマストにおけるそれぞれの所定の位置に配置されるとともに、所定の位相差及び信号レベル比をもって給電されるようになっている。
このような特許文献1に記載されたアンテナ装置において、各エレメントアンテナに対して給電するための給電系は、4本のマイクロストリップライン型の伝送線路を備えている。各伝送線路は、エレメントアレイごとにそのエレメントアレイの4個のダイポールアンテナのいずれか1つに接続してそのダイポールアンテナに給電する。上述したように、エレメントアレイ間には位相差が設定されており、また、エレメントアレイ内でもダイポールアンテナ間に位相差が設定されているから、伝送線路は、その接続する各ダイポールアンテナに対して適切な位相差と信号レベル比で給電できるように、位相差を調整するための遅延回路部分やレベル比を調整するためのマイクロストリップ・トランス部を備えている。そして、アンテナ装置としての給電点に対して4分配器が設けられており、4分配器の4個の分配側ポートはそれぞれ上述した伝送線路に接続している。
米国特許第5,534,882号明細書
しかしながら、特許文献1に記載されたアンテナ装置では、各ダイポールアンテナに給電するための給電線としてマイクロストリップラインを使用しているため、マイクロストリップラインとダイポールアンテナとの電磁的な干渉や、4本の伝送線路相互間の干渉により、所期の特性を得ることが難しくなる。伝送線路からダイポールアンテナへの分岐回路としては、いわゆるTジャンクションを使用せざるを得ないので、各ダイポールアンテナが外周の影響を受けてVSWR(電圧定在波比)が変動したときに、その影響で給電位相や振幅が変化し、放射パターンに乱れが生じやすい。周方向の非対称性をなくすために、アンテナの中心軸(エレメントアレイのスタック方向に向いた中心軸)において、マイクロストリップライン型の伝送線路が形成されている基板をひねるような構造を採用しているが、そのような構造を形成するためには種々の工程が必要であり、また、一般に屋外に設置されることとなるアンテナ装置としては、あまり現実的でない構造である。
そこで本発明の目的は、DGPSにおける基準局に用いられるのに適し、製作及び調整が容易であって、水平面内無指向性、垂直面シャープカットオフ特性を有するアンテナ装置を提供することにある。
本発明のアンテナ装置は、それぞれ4個のダイポールアンテナを備える複数個のエレメントアレイと、基準面に対して垂直な方向に配列するように複数個のエレメントアレイを保持するマスト部材と、各エレメントアレイに対して給電する第1の給電手段と、を備え、エレメントアレイは、4個のダイポールアンテナによって所定の円偏波成分のみを送受信可能とするように4個のダイポールアンテナに対して給電する第2の給電手段を備え、エレメントアレイごとに、第1の給電手段と当該エレメントアレイの第2の給電手段とが独立した伝送路によって接続され、各エレメントアレイは、それぞれ所定の位相差を有して給電される。
このようなアンテナ装置においては、各エレメントアレイにおいて、4個のダイポールアンテナが基準面内において相互に90°ずつ異なる方向に指向性を有するように配置されるようにし、このような複数個のエレメントアレイがマスト部材に整列して保持されてるようにすることが好ましい。また、エレメントアレイごとの第2の給電手段は、そのエレメントアレイに向けた伝送路と接続するコネクタと、コネクタに入力端子が接続した第1の90°ハイブリッドと、第1の90°ハイブリッドの0°出力端子に入力端子が接続した第2の90°ハイブリッドと、90°の位相遅れを与える遅延線路部分を介して第1の90°ハイブリッドの90°出力端子に対して接続する第3の90°ハイブリッドとを有するものとすることができる。この場合、そのエレメントアレイの4個のダイポールアンテナは、それぞれ第2及び第3の90°ハイブリッドの出力端子(0°出力端子及び90°出力端子)に接続される。
本発明においては、所望の指向特性を得るために、各エレメントアレイに対し、それぞれそのエレメントアレイごとに定められた所定のレベル比で給電することが好ましい。
さらに本発明のアンテナ装置は、それぞれ4個のダイポールアンテナを備える複数個の無給電エレメントアレイを備えていてもよい。そのような無給電エレメントアレイは、基準面に対して垂直な方向に配列するように、マスト部材に保持される。
また本発明のアンテナ装置では、エレメントアレイの数は、例えば奇数とすることができる。具体的には、エレメントアレイの数は、例えば11であり、あるいは、7、9、13などである。奇数個のエレメントアレイを有する場合、エレメントアレイの配列の中央になるエレメントアレイを中央エレメントアレイとすると、中央エレメントアレイとその隣接するエレメントアレイとの間隔をaとし、中央エレメントアレイを除いた残りのエレメントアレイの間隔を2aとし、中央エレメントアレイを基準として(すなわち0°の位相差で給電されるとして)、中央エレメントアレイを挟んで一方の側のエレメントアレイを−90°の位相差で給電し、他方の側のエレメントアレイは+90°の位相差で給電することが好ましい。このような構成において無給電エレメントアレイを配置するのであれば、そのような無給電エレメントアレイは、エレメントアレイ間の間隔が2aとなっている位置においてそのエレメントアレイ間の間隔の中点に設けるようにすることが好ましい。さらに、エレメントアレイの配列の端部に位置するエレメントアレイからそれぞれ配列の外側に向かってaだけ離れた位置にも無給電エレメントアレイを配置してもよい。
無給電エレメントアレイを設ける場合には、(第1の給電手段によって給電される)エレメントアレイに対して整列させることが好ましい。
本発明においては、各ダイポールアンテナは、基準面に対しそのダイポールアンテナのアンテナ導体の延びる方向を傾けることが好ましい。その傾きの角度は、例えば、20°〜30°である。
本発明では、第1の給電手段とエレメントアレイごとの伝送路とによって、複数個のエレメントアレイに対して他のエレメントアレイとは独立して給電できるようにし、さらに、各エレメントアレイごとの第2の給電手段によってそのエレメントアレイの各ダイポールアンテナを所定の位相差で給電できるようにしているので、位相差の設定や調整が容易に行えるようになるとともに、給電用の伝送路の設計・製作も容易になる。エレメントアレイごとの1箇所の給電点からそのエレメントアレイの各ダイポールアンテナに給電する第2の給電手段として、後述する実施の形態から明らかなように、対称性の高いものを使用できるので、アンテナパターンの軸対称性をも向上させることができる。伝送路として同軸ケーブルの使用も可能になるので、伝送路間での干渉も防止することができる。
したがって、本発明によれば、水平面内無指向性、良好な垂直面シャープカットオフ特性を有するともに、製作及び調整が容易なアンテナ装置を得ることができる。
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の実施の一形態のアンテナ装置の構成の概要を示す図である。
このアンテナ装置は、GPS衛星からのL1周波数(中心周波数:1575.42MHz)の信号を受信するように構成されたものである。以下の説明のために、アンテナの指向性を規定する平面である基準面10を図1(a)において破線で示すように定義し、また、基準面内にxy軸が配向し、基準面10に垂直になるようにz軸が配向するように、xyzの3次元座標を定義する。基準面10自体は、アンテナ装置における特定の接地導体や放射器に対応するものではないが、GPSの基準局アンテナとしてこのアンテナ装置を用いる場合には、基準面10としては、一般に水平面が用いられる。
基準面10に対して垂直に延びるように、すなわちz軸方向に延びるように、アンテナマスト11が設けられており、アンテナマスト11に対して、11個のエレメントアレイE1〜E11が取り付けられている。各エレメントアレイは、それぞれ4個のダイポールアンテナ20A〜20Dと、これらダイポールアンテナ20A〜20Dに給電するためのアンテナ給電回路21とを一体化したものである。ここでエレメントアレイE1〜E11は、アンテナマスト11の根元側からこの順でz軸に沿って、整列して、この順で取り付けられている。ここで、エレメントアレイE1からエレメントアレイE5までは、z軸方向に2aの間隔でアンテナマスト11に取り付けられ、エレメントアレイE5、E6間の間隔とエレメントアレイE6、E7間の間隔はaであり、エレメントアレイE7からエレメントアレイE11までは、z軸方向に2aの間隔でアンテナマスト11に取り付けられている。GPSのL1周波数を対象とする場合、aは、例えば85mmである。
各エレメントアレイにおいて、4個のダイポールアンテナ20A〜20Dは、中央給電のものである。アンテナ給電回路21は、後述するように、中心部にアンテナマスト11が貫通するように構成された略正方形のユニットとして構成されており、その正方形の各頂点にそれぞれダイポールアンテナ20A〜20Dが取り付けられている。ダイポールアンテナ20A〜20Dの指向軸は基準面10に平行な面内にあって、相互に90°ずつ異なる方向を向いている。各エレメントアレイのダイポールアンテナ20Aは基準面10に対していずれも揃った位置にあり、同様に、各エレメントアレイのダイポールアンテナ20B〜20Dについても、それぞれ、基準面10に対していずれも揃った位置にある。そこで、上述したxyz座標系で考えて、アンテナマスト11の位置から見て、x軸の(+)方向に位置するダイポールアンテナをダイポールアンテナ20Aとし、以下、同様に、y軸の(−)方向、x軸の(−)方向及びy軸の(+)方向にそれぞれ位置するダイポールアンテナをダイポールアンテナ20B、20C、20Dとする。
同一のエレメントアレイに属するダイポールアンテナ20A〜20Dに対しては、アンテナ給電回路21により、右旋円偏波成分のみを受信できるように、90°ずつずれた位相差が生じるように給電がなされている。また、垂直面シャープカットオフ特性を実現するために、エレメントアレイE1〜E11間でも位相差が与えられるように給電がなされている。具体的には、中央に位置するエレメントアレイE6を基準として、アンテナマスト11の近端側にあるエレメントアレイE1〜E5は+90°の位相差をもって給電され、遠端側にあるエレメントアレイE7〜E11は−90°の位相差をもって給電される。そこで、中央に位置するエレメントアレイE6のダイポールアンテナ20Aに対する位相を基準とすると(すなわち位相差0°)、エレメントアレイE1〜E5内のダイポールアンテナ20A〜20Dは、図1(b)に示す位相差で給電されることになる。また、エレメントアレイE6内の各ダイポールアンテナは図1(c)で示す位相差で給電され、エレメントアレイE7〜E11内のダイポールアンテナ20A〜20Dは、図1(d)に示す位相差で給電される。
本実施形態のアンテナ装置において、各エレメントアレイのダイポールアンテナ20A〜20Dは、いずれも、基準面に対して約25°傾いており、4方向のスラントダイポールアンテナとして構成されている。図1(a)においては、ダイポールアンテナがアンテナマスト11よりも手前側にあるのかアンテナマスト11の位置より遠くにあるのかを示すために、手前側の部分を太くしてダイポールアンテナを示している。図示したものでは、エレメントアレイの外側から見たときに、ダイポールアンテナの素子の伸びる方向は、基準面に対して時計回りに約25°傾いている。
上述した特許文献1に記載のアンテナ装置でも、各ダイポールアンテナの伸びる方向が基準面に対して傾いている。しかしながら、特許文献1に記載のものではその傾き角は45°であり、本実施形態における約25°とは異なっている。本発明者らの検討によれば、特許文献1のようにダイポールアンテナの傾き角を45°とした場合には、基準面が水平面であるとして、水平方向に対しては良好な軸比が得られるものの、天頂方向に対して軸比が劣化するとともに、受信レベルの低下が認められた。これは、アンテナマストや給電用の伝送線路の影響などによるものと考えられる。これに対し本実施形態のように傾き角を20°〜30°程度とした場合、特に25°程度とした場合には、水平方向の軸比は多少劣化するものの、天頂方向の軸比は良好なものとなる。
アンテナマスト11の根元には、エレメントアレイE1〜E11に給電するためのアレイ給電部12が設けられており、アレイ給電部12の給電端Tは、GPS受信機に接続する。後述するように、エレメントアレイE1〜E11は、エレメントアレイごとの同軸ケーブル(セミリジット)によってそれぞれアレイ給電部12に接続している。その結果、各エレメントアレイにおいて、ダイポールアンテナ20A〜20Dで受信されたGPS信号は、そのエレメントアレイのアンテナ給電回路21によって右旋円偏波成分のみが合成されてアレイ給電部12に送られる。アレイ給電部12は、各エレメントアレイE1〜E11からのGPS信号を所定のレベル比で合成し、その得られた信号をGPS受信機に出力する。
以下、エレメントアレイE1〜E11の構成の詳細を説明する。エレメントアレイE1〜E11はいずれも同じ構成を有するので、ここではエレメントアレイE1を例にあげて説明する。図2(a)はエレメントアレイE1を上側(z軸の正方向)から見た図であり、図2(b)はエレメントアレイE1の正面図であり、図3は図2(a)における矢印の方向に見た図である。
エレメントアレイE1は、図2(a)に示すように、アンテナ給電回路21を構成する略正方形の回路基板22を備えている。回路基板22には、アンテナマスト11を受け入れるための切り欠き部28が設けられているとともに、回路基板22の4個の頂点には、それぞれ、ダイポールアンテナ20A〜20Dを接続するための同軸コネクタ23A〜23Dが設けられている。ダイポールアンテナ20A〜20D側にも、回路基板22側の同軸コネクタ23A〜23Dに対応した同軸コネクタが24A〜24D設けられており、これら同軸コネクタ23A〜23Dと同軸コネクタ24A〜24Dを嵌合させることによって、回路基板22にダイポールアンテナ20A〜20Dが接続されることになる。なお、後述するように回路基板22上のアンテナ給電回路21や同軸コネクタは非平衡型の回路要素であり、ダイポールアンテナは平衡給電されるアンテナであるから、本来ならばバラン(平衡−非平衡変換回路)を挿入すべきであるが、本実施形態では、アンテナ装置自体を小型にし、また、バランによる挿入損失を低減することなどの要請から、バランを設けていない。同軸コネクタの中心導体を、ダイポールアンテナの2本のアンテナ導体のうちの一方に直接接続し、同軸コネクタの外側導体を他方のアンテナ導体に直接接続している。バランを設けることなくダイポールアンテナを同軸コネクタに直接接続しても、そのことによるアンテナ特性の大きな劣化は認められなかった。
回路基板22の表面には、アンテナ給電回路21としてマイクロストリップラインによって分配回路が形成されている。回路基板22の裏面側には、アレイ給電部12との電気的な接続のために用いられる同軸コネクタ25が設けられており、同軸コネクタ25の中心導体の引き出し位置を除いて、回路基板22の裏面には接地導体が形成されている。同軸コネクタ25は、アンテナ給電回路21における給電点となるものである。図2(a)において網点で示されている部分は、回路基板22の表面における導体パターンの形成位置を示している。アンテナ給電回路21の等価回路については後述するが、上述したような位相差をもって同軸コネクタ25からダイポールアンテナ20A〜20Dに給電するために、アンテナ給電回路21は3個の90°ハイブリッド26A〜26Cを備えており、これらの90°ハイブリッド26A〜26Cは回路基板22の表面に実装されている。
このような回路基板22は、アンテナシャフト11を挟み込むように切り込み部28内にアンテナシャフト11を受け入れ、図2には図示しない取り付け金具29によってアンテナシャフト11に回路基板22を取り付けることによって、アンテナシャフト11に対して固定されることになる。
次に、このアンテナ装置の回路構成について説明する。図4(a)はアンテナ装置全体としての回路構成を示している。
アレイ給電部12から11個のエレメントアレイE1〜E11に給電するために、アレイ給電部12は、3分配器41と、2つの5分配器42,43を備えている。アレイ給電部12の給電端Tに対し、3分配器41の入力端が接続している。3分配器41の3つの出力のうちの1つは、エレメントアレイE1〜E11のうちのちょうど真ん中にあるエレメントアレイE6に接続する。3分配器41の残りに2つの出力には、それぞれ、5分配器42,43の出力が接続する。5分配器42の5つの出力は、それぞれエレメントアレイE1〜E5に接続し、5分配器43の5つの出力は、それぞれエレメントアレイE7〜E11に接続する。各分配器41〜43における各出力端子への分配比を調整することにより、各エレメントアレイに対する上述したレベル比を所定の値に設定することができる。各分配器41〜43としては、いわゆるウィルキンソン(Wilkinson)型の分配器を用いることが好ましい。なお、アレイ給電部12を構成する分配器41〜43の構成は上述したものに限定されるものではない。すなわち、アレイ給電部12を構成する分配器の数や接続関係を変更したり、各分配器が有する分配出力の数を変更したりすることができる。
アレイ給電部12とエレメントアレイE1〜E11への接続には、同軸ケーブル(セミリジットケーブル)が用いられるが、本実施形態では、エレメントアレイごとにそのエレメントアレイとアレイ給電部12とを接続する同軸ケーブルの長さを調整することにより、各エレメントアレイが上述したような位相差で給電されるようにしている。
上述したように各エレメントアレイは、ダイポールアンテナ20A〜20Dとアンテナ給電回路21を備えている。そこで、アンテナ給電回路21の構成について、図4(b)を用いて説明する。
アンテナ給電回路21は、回路基板22に取り付けられた同軸コネクタ25(図2参照)によってアレイ給電部12から給電される。第1の90°ハイブリッド26Aの入力端子は同軸コネクタ25に接続する。この90°ハイブリッド26Aの0°出力端子は第2の90°ハイブリッド26Bの入力端子に接続する。第2の90°ハイブリッド26Bの0°出力端子及び90°出力端子は、それぞれ、ダイポールアンテナ20A,20Bに接続する。一方、第1の90°ハイブリッド26Aの90°出力端子は、90°の位相遅延を与える遅延線路部分27を介して、第3の90°ハイブリッド26Cの入力端子に接続する。第3の90°ハイブリッド26Cの0°出力端子及び90°出力端子は、それぞれ、ダイポールアンテナ20C,20Dに接続する。ここで遅延線路部分27は、90°の位相遅れが生じる長さを有するマイクロストリップラインとして回路基板22に設けられている。
このようにしてアンテナ給電回路21を構成することにより、そのアンテナ給電回路に接続するダイポールアンテナ20A〜20Dは、上述したような相互に90°ずつの位相差をもって給電されることになる。その結果、ダイポールアンテナ20A〜20Dに入射した到来波のうち、右旋円偏波成分のみが合成されてアンテナ給電回路21の出力、すなわち同軸コネクタ25に受信信号として現れる。そして、各エレメントアレイE1〜E11からの受信信号は、アレイ給電部12において合成され、アレイ給電部12の給電端TからGPS受信機に供給されることになる。
次に、本発明の別の実施形態のアンテナ装置について説明する。
図5に示すアンテナ装置は、図1に示したものに対して、さらに、10個の無給電エレメントアレイE21〜E30を追加したものである。図1に示したアンテナ装置では、エレメントアレイ間の間隔が2aであるところが8箇所あるが、無給電エレメントアレイE22〜E29は、それぞれ、エレメントアレイ間の間隔が2aである箇所にそれぞれ配置されている。その際、無給電エレメントアレイと両隣に隣接するエレメントアレイとの間隔はそれぞれaに設定されている。具体的には、エレメントアレイE1とE2の間の中点の位置に無給電エレメントアレイE22が設けられ、エレメントアレイE2とE3の間の中点の位置に無給電エレメントアレイE23が設けられ、以下、同様にして、エレメントアレイE10とE11の間の中点の位置に無給電エレメントアレイE29が設けられている。さらに、無給電エレメントアレイE21は、エレメントアレイE1より距離aだけアレイ給電部12側の位置に設けられており、無給電エレメントアレイE30は、エレメントアレイE11よりも距離aだけアンテナマスト11の先端側に設けられている。その結果、アレイ給電部12から給電されるエレメントアレイE1〜E11と無給電エレメントアレイとを区別しなければ、アンテナマスト11において、エレメントアレイが間隔aで等間隔に配置されていることになる。
無給電エレメントアレイE21〜E30は、それぞれ4個のダイポールアンテナを有してエレメントアレイE1〜E11と同様の構成のものであるが、アンテナ給電回路を備えず、アレイ給電部12からの給電がなされない点で相違する。無給電エレメントアレイE21〜E30のダイポールアンテナがエレメントアレイE1〜E11と整列するように、無給電エレメントアレイE21〜E30はアンテナマスト11に取り付けられている。無給電エレメントアレイE21〜E30におけるダイポールアンテナ20A〜20Dの給電点は、アンテナ給電回路に接続する代わりに抵抗で終端されていてもよいし、あるいは、開放終端となっていてもよい。
さらに、図5に示したアンテナ装置は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)からなるレードーム(radome)50で覆われており、アレイ給電部12の給電端Tとして、同軸コネクタ51が設けられている。もちろん、図1に示したアンテナ装置においてもレードームを設けるようにしてもよい。
次に、図5に示したアンテナ装置を実際に製作してその特性を測定した例を説明する。アンテナ周波数はGPS衛星からのL1周波数に一致させるものとし、間隔aを85mmに設定し、ダイポールアンテナの基準面に対する傾き角は25°とした。各エレメントアレイにおいて、各ダイポールアンテナのアンテナ長(2本のアンテナ導体の長さの和)を94mmとした。回路基板22を挟んで対向するダイポールアンテナ20A,20Cの間隔は、同じく対向するダイポールアンテナ20B,20Dの間隔と等しく、52mmとした。さらに、各エレメントアレイE1〜E11に対するレベル比を下表のように設定した。
Figure 2008072598
アンテナ装置の基準面が水平面と平行になるようにアンテナ装置を設置し、仰角を10°及び30°として、水平面内の各方位に対する指向特性を測定したところ、図6に示す結果が得られた。図6に示されるように、このアンテナ装置は水平面内方向にはほぼ無指向性であることがわかる。また、上述したxyz座標系において、x軸の(+)方向における垂直面振幅パターンを測定したところ図7Aに示す結果が得られ、同様に、y軸の(−)方向、x軸の(−)方向及びy軸の(+)方向のそれぞれにおける垂直面振幅パターンとして図7B、図7C、図7Dに示す結果が得られた。これらの垂直面振幅パターンから明らかなように、基準面よりも下側の方向に対しては概ね−20dB以下の振幅となっており、このアンテナ装置が良好な垂直面シャープカットオフ特性を有することが分かった。結局、製作したアンテナ装置は、DGPSの基準局用のアンテナ装置として、十分に運用に耐えるものであることが判明した。
(a)は本発明の実施の一形態のアンテナ装置の構成を示す図であり、(b)〜(d)は、エレメントアレイごとのダイポールアンテナの位相差を説明する図である。 (a)はエレメントアレイの平面図であり、(b)はエレメントアレイの正面図である。 図2(a)の矢印Aの方向で見たエレメントアレイを示す図である。 (a)はアンテナ装置全体構成を示す回路図であり、(b)はエレメントアレイに設けられるアンテナ給電回路の回路図である。 本発明の別の実施形態のアンテナ装置を示す図である。 アンテナ装置の方位指向特性を示すグラフである。 アンテナ装置の垂直面振幅パターンを示すグラフである。 アンテナ装置の垂直面振幅パターンを示すグラフである。 アンテナ装置の垂直面振幅パターンを示すグラフである。 アンテナ装置の垂直面振幅パターンを示すグラフである。
符号の説明
10 基準面
11 アンテナマスト
12 アレイ給電回路
20A〜20D ダイポールアンテナ
21 アンテナ給電回路
22 回路基板
23A〜23D,24A〜24D,25,51 同軸コネクタ
26A〜26C 90°ハイブリッド
27 遅延線路部分
28 切り欠き部
29 取り付け金具
41 3分配器
42,43 5分配器
50 レードーム
E1〜E11 エレメントアレイ
E21〜E30 無給電エレメントアレイ

Claims (7)

  1. それぞれ4個のダイポールアンテナを備える複数個のエレメントアレイと、
    基準面に対して垂直な方向に配列するように前記複数個のエレメントアレイを保持するマスト部材と、
    前記各エレメントアレイに対して給電する第1の給電手段と、
    を備え、
    前記エレメントアレイは、前記4個のダイポールアンテナによって所定の円偏波成分のみを送受信可能とするように前記4個のダイポールアンテナに対して給電する第2の給電手段を備え、
    前記エレメントアレイごとに、前記第1の給電手段と当該エレメントアレイの前記第2の給電手段とが独立した伝送路によって接続され、
    前記各エレメントアレイは、それぞれ所定の位相差を有して給電される、
    アンテナ装置。
  2. 前記各エレメントアレイにおいて、前記4個のダイポールアンテナは前記基準面内において相互に90°ずつ異なる方向に指向性を有するように配置され、
    前記複数個のエレメントアレイは前記マスト部材に整列して保持されている、
    請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 前記第2の給電手段は、前記伝送路と接続するコネクタと、前記コネクタに入力端子が接続した第1の90°ハイブリッドと、前記第1の90°ハイブリッドの0°出力端子に入力端子が接続した第2の90°ハイブリッドと、90°の位相遅れを与える遅延線路部分を介して前記第1の90°ハイブリッドの90°出力端子に対して接続する第3の90°ハイブリッドとを有し、前記第2及び第3の90°ハイブリッドの出力端子にそれぞれダイポールアンテナが接続する、請求項2に記載のアンテナ装置。
  4. 前記各エレメントアレイは、それぞれそのエレメントアレイごとに定められた所定のレベル比で給電される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
  5. 奇数個のエレメントアレイを備え、前記奇数個のエレメントアレイの配列のうちの中央のエレメントアレイを除いた残りのエレメントアレイは相互に等間隔に配置され、前記中央のエレメントアレイを基準として、前記中央のエレメントアレイを挟んで一方の側のエレメントアレイは+90°の位相差で給電され、他方の側のエレメントアレイは−90°の位相差で給電される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
  6. さらに、それぞれ4個のダイポールアンテナを備える複数個の無給電エレメントアレイを有し、前記無給電エレメントアレイは前記基準面に対して垂直な方向に配列するように前記マスト部材に保持されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
  7. 前記各ダイポールアンテナは、前記基準面に対してアンテナ導体の延びる方向が傾いている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
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