JP2008067678A - 昆虫の減数分裂期における染色体標的組換え誘導方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 昆虫の減数分裂期において染色体切断を誘導する方法、および該方法のために利用可能なDNAの提供を課題とする。
【解決手段】 Gal4DNA結合ドメイン(Gal4BD)とショウジョウバエの減数分裂組換え開始酵素(DmSpo11)との融合蛋白質を利用することにより、ショウジョウバエ等の昆虫において減数分裂期に特異的な染色体切断を誘導する方法を開発した。本発明の方法によって、効率的に相同組換えを誘導することが可能である。本発明の方法は、減数分裂組換えが卵母細胞のみで起こることと、そこでは非相同組換え酵素が発現していないことを特徴とする方法である。
【選択図】なし
【解決手段】 Gal4DNA結合ドメイン(Gal4BD)とショウジョウバエの減数分裂組換え開始酵素(DmSpo11)との融合蛋白質を利用することにより、ショウジョウバエ等の昆虫において減数分裂期に特異的な染色体切断を誘導する方法を開発した。本発明の方法によって、効率的に相同組換えを誘導することが可能である。本発明の方法は、減数分裂組換えが卵母細胞のみで起こることと、そこでは非相同組換え酵素が発現していないことを特徴とする方法である。
【選択図】なし
Description
本発明は、昆虫の減数分裂期における染色体切断誘導方法、および該方法のために利用可能なDNAに関する。
最近いくつかのグループによって、配列特異的にデザインされたZinc-Fingerモチーフとエンドヌクレアーゼとの融合蛋白による標的相同組換え(ジーンターゲティング)法が開発され、ジーンターゲティング頻度が著しく上昇することが報告された(非特許文献1参照)が、(1) 標的配列以外での切断によって細胞毒性が生じること、(2) 標的切断が起こってもそこで相同組換えではなくて非相同的末端結合が起こること、のような2次的な問題点が浮かび上がってきた。
また、太田らにより出芽酵母SPO11(減数分裂組換えのDNA二本鎖切断)とGal4 DNA結合ドメイン(Gal4BD)との融合蛋白(Gal4BD-SPO11)が、Gal4結合サイトであるGal2プロモーターを切断することが報告された(非特許文献2参照)。
しかしながら、酵母より高等な動物である昆虫等において、上記の融合蛋白質が目的の機能を発揮し得るか否かは全く不明であった。
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
M. H. Porteus and D. Carroll, Nat. Biotech. 2005, Vol.23 pp. 967-973. A. Pecina, K. N. Smith,C. Mezard, H. Murakami, K. Ohta, and A. Nicolas, 2002, Vol.111 pp. 173-184.
M. H. Porteus and D. Carroll, Nat. Biotech. 2005, Vol.23 pp. 967-973. A. Pecina, K. N. Smith,C. Mezard, H. Murakami, K. Ohta, and A. Nicolas, 2002, Vol.111 pp. 173-184.
本発明は、昆虫の減数分裂期において染色体切断を誘導する方法、および該方法のために利用可能なDNAの提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った。本発明者らは、Gal4DNA結合ドメイン(Gal4BD)とショウジョウバエの減数分裂組換え開始酵素(DmSpo11)との融合蛋白による、ショウジョウバエでの、減数分裂期に限定された染色体切断方法の開発を行った。該方法によって、効率的に相同組換えを誘導することが可能である。本発明の方法では、減数分裂組換えが卵母細胞のみで起こることと、そこでは非相同組換え酵素が発現していないと考えられることから、上述の問題点(1)(2)の改善が期待される。ショウジョウバエではUAS配列による強制発現系統(GS系統;EP系統)が染色体全域にわたって保存されているので、任意のUASラインにGal4BD-DmSpo11トランスジーンを導入することによって、標的減数分裂組換えを誘導することができる。
また、多数のGal4BD-DmSpo11トランスジェニックラインを得て、dmspo11変異株(mei-W68変異株)を相補できることを確認した。
出芽酵母SPO11とGal4 DNA結合ドメイン(Gal4BD)との融合蛋白(Gal4BD-SPO11)が、Gal4結合サイトであるGal2プロモーターを切断することが報告されているが、これは、原始的な単細胞生物である酵母において観察された現象である。当該現象が昆虫を始めとするその他の多細胞生物においても同様に観察されるか否かは、実際に実験を行うまでは全く不明であり、また、当該知見に基いて、ある程度の蓋然性をもって当該現象が昆虫において観察され得ることを推測することは困難である。
酵母と昆虫とは相違する点が多い。例えば、酵母において減数分裂組換えは、2本鎖DNA切断の後、相同染色体対合の順序で開始するが、ショウジョウバエにおいては、相同染色体対合の後、2本鎖DNA切断の順に開始するという相違がある。従って、対合している相同染色体に対しても、Gal4BD-SPO11による切断反応が酵母のように働くかどうかは、実際に実験を行うまで全く不明である。酵母においてみられる現象が、そのまま昆虫へ適用されるものと想到することは、通常困難である。
上述の如く本発明は、昆虫の減数分裂期において染色体切断を誘導する方法を見出し、本発明を完成させた。即ち本発明は、昆虫の減数分裂期における染色体切断誘導方法、および該方法のために利用可能なDNAに関し、より具体的には、
〔1〕 Gal4 DNA結合ドメインと、昆虫の減数分裂組換え開始酵素との融合蛋白質をコードするDNA、
〔2〕 昆虫がショウジョウバエである、〔1〕に記載のDNA、
〔3〕 前記減数分裂組換え開始酵素が、DmSpo11である、〔2〕に記載のDNA、
〔4〕 プロモーターの下流に、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAが機能的に連結した構造からなるDNA、
〔5〕 前記プロモーターがhsp70プロモーターである、〔4〕に記載のDNA、
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAによってコードされるポリペプチド、
〔7〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAを担持するベクター、
〔8〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAを有することを特徴とする、遺伝子改変昆虫、
〔9〕 さらに、1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列を有する、〔8〕に記載の遺伝子改変昆虫、
〔10〕 前記昆虫がショウジョウバエである、〔8〕または〔9〕に記載の遺伝子改変昆虫、
〔11〕 1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列を有する昆虫の染色体へ、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAを挿入する工程を含む、昆虫において減数分裂期に染色体切断を誘導する方法、
〔12〕 1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列を有する昆虫の染色体へ、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAを挿入する工程を含む、減数分裂期に染色体切断が誘導される遺伝子改変昆虫の製造方法、
〔13〕 前記昆虫がショウジョウバエである、〔11〕または〔12〕に記載の方法、
〔14〕 前記Gal4結合配列を有する昆虫が、ショウジョウバエP因子を有するショウジョウバエである、〔13〕に記載の方法、
を、提供するものである。
〔1〕 Gal4 DNA結合ドメインと、昆虫の減数分裂組換え開始酵素との融合蛋白質をコードするDNA、
〔2〕 昆虫がショウジョウバエである、〔1〕に記載のDNA、
〔3〕 前記減数分裂組換え開始酵素が、DmSpo11である、〔2〕に記載のDNA、
〔4〕 プロモーターの下流に、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAが機能的に連結した構造からなるDNA、
〔5〕 前記プロモーターがhsp70プロモーターである、〔4〕に記載のDNA、
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAによってコードされるポリペプチド、
〔7〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAを担持するベクター、
〔8〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAを有することを特徴とする、遺伝子改変昆虫、
〔9〕 さらに、1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列を有する、〔8〕に記載の遺伝子改変昆虫、
〔10〕 前記昆虫がショウジョウバエである、〔8〕または〔9〕に記載の遺伝子改変昆虫、
〔11〕 1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列を有する昆虫の染色体へ、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAを挿入する工程を含む、昆虫において減数分裂期に染色体切断を誘導する方法、
〔12〕 1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列を有する昆虫の染色体へ、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNAを挿入する工程を含む、減数分裂期に染色体切断が誘導される遺伝子改変昆虫の製造方法、
〔13〕 前記昆虫がショウジョウバエである、〔11〕または〔12〕に記載の方法、
〔14〕 前記Gal4結合配列を有する昆虫が、ショウジョウバエP因子を有するショウジョウバエである、〔13〕に記載の方法、
を、提供するものである。
本発明の昆虫の減数分裂期における染色体切断誘導方法の開発により、相同組換えを染色体上の特定部位に標的化するための重要な技術が確立した。
本発明の方法によって、標的遺伝子の配列を高頻度に加工することが可能であり、蛋白ドメイン機能解析のみならず、有用形質転換生物作成の高速化をもたらす。特定の標的遺伝子を切断することによって、相同DNA組換えにより新しい配列を高頻度に導入できる系の開発が可能となり、また、昆虫におけるこの技術開発は、医薬や食料としての有用蛋白質を生産する形質転換昆虫の作成を可能にする。
本発明の方法によって、標的遺伝子の配列を高頻度に加工することが可能であり、蛋白ドメイン機能解析のみならず、有用形質転換生物作成の高速化をもたらす。特定の標的遺伝子を切断することによって、相同DNA組換えにより新しい配列を高頻度に導入できる系の開発が可能となり、また、昆虫におけるこの技術開発は、医薬や食料としての有用蛋白質を生産する形質転換昆虫の作成を可能にする。
本発明は、昆虫において減数分裂期に染色体切断を誘導する方法を提供する。
本発明の方法の好ましい態様においては、1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列(Gal2プロモーター配列、UAS配列等)を有する昆虫の染色体へ、Gal4 DNA結合ドメインと、昆虫の減数分裂組換え開始酵素との融合蛋白質(以下、「本発明の融合蛋白質」と記載する場合あり)をコードするDNA(以下、「本発明のDNA」と記載する場合あり)を挿入する工程を含む、昆虫において減数分裂期に染色体切断を誘導する方法である。
本発明の方法が適用可能な生物種は、減数分裂組換え開始酵素を有する昆虫であれば特に制限されないが、例えば、有用昆虫として、ハエ、蚕、ミツバチ、病原性害虫としてマラリア原虫を運ぶネッタイシマカであり、好ましくはショウジョウバエである。
本発明の方法において昆虫の染色体へ挿入されるDNAは、Gal4 DNA結合ドメインと、昆虫の減数分裂組換え開始酵素との融合蛋白質をコードするDNAである。該Gal4 DNA結合ドメインとして、出芽酵母由来のGAL4結合蛋白質中に存在するDNA結合ドメインを好適に利用することができる。
本発明において好適に利用可能なGal4 DNA結合タンパク質のアミノ酸配列を配列番号:2に、該アミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号:1に示す。
また、本発明における減数分裂組換え開始酵素は、例えば、出芽酵母SPO11(減数分裂組換えのDNA二本鎖切断酵素)の昆虫におけるホモログ蛋白質を挙げることができる。具体的には、ハエのSpo11蛋白質(DmSpo11、MeiW68蛋白質)を好適に示すことができる。Spo11は、酵母から哺乳類に至る真核生物に普遍的に存在する蛋白質である。減数分裂期初期に相同DNA組換えのホットスポットでDNA二本鎖切断を導入する酵素である。
本発明において好適に利用可能な減数分裂組換え開始酵素の例として、ショウジョウバエのSpo11(DmSpo11)のアミノ酸配列を配列番号:4に、該アミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号:3に示す。また、ネッタイシマカのSpo11の配列(A.aegyptiSPO11)のアミノ酸配列を配列番号:6に、該アミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号:5に示す。
Gal4 DNA結合蛋白質は、Gal2プロモーター配列(例えば、UAS配列)等のGal4結合配列と結合する機能を有するため、本発明の上記融合蛋白質は、Gal2プロモーター配列(例えば、UAS配列)等のGal4結合配列の近傍において染色体を切断(二本鎖切断)する活性を有する。
本発明において好適に利用可能なGal2プロモーター配列を、配列番号:7に示す。
本発明において好適に利用可能なGal2プロモーター配列を、配列番号:7に示す。
本発明の好ましい態様においては、上記Gal2プロモーター配列(例えば、UAS配列)等のGal4結合配列を染色体上に1もしくは複数コピー数有する昆虫を対象とする。本発明においては、該Gal2プロモーター配列(例えば、UAS配列)等のGal4結合配列を持つP因子コレクション(GS因子(強制遺伝子発現系統のコレクションのために改変されたP因子)の挿入系統)を好適に利用することができる。P因子は、ショウジョウバエの転移性遺伝要素(トランスポゾン)の一つで、遺伝学実験のツールとして主に、(1)トランスジーンを胚に導入するためのベクターとして、(2)挿入変異系統や強制遺伝子発現系統のコレクションのためと、エンハンサートラップスクリーニングのために利用される。
また、予め染色体上にGal2プロモーター配列(例えば、UAS配列)等のGal4結合配列を有さない昆虫であっても、該Gal4結合配列を人工的に染色体へ導入させることは可能である。当業者であれば、任意の昆虫の染色体へ、該Gal4結合配列を人工的に挿入させることは可能である。例えば、該Gal2プロモーター配列(例えば、UAS配列)等のGal4結合配列を有するトランスポゾン(例えば、P因子等)を利用して、適宜実施することが可能である。
本発明において、融合蛋白質をコードするDNAが挿入される染色体上の部位は特に制限されないが、例えば、一般的に転写活性が強いeuchromatin領域が好ましい。ハエにおいても例外ではない。赤眼レポーター遺伝子を隣接させているので赤の強度によって転写の強さを判定することができる。これを指標にして発現の強いトランスジーンを選ぶことが可能である。
本発明の好ましい態様においては、昆虫の代表として分子遺伝学的技術が高度に発達しているショウジョウバエ(ハエ)を用いる。ハエのSpo11相同蛋白 MeiW68(切断ドメイン)と、出芽酵母由来のGAL4結合蛋白(切断サイト認識ドメイン)からなる融合蛋白 GAL4BD-MeiW68をコードする遺伝子を作成して、該遺伝子を発現するハエ形質転換個体を作成する。次いで、交配により、GAL4BD-MeiW68トランス遺伝子とその切断サイト(Gal4BDが結合する酵母のGAL2プロモーター配列等)を持つハエを得ることにより、そのサイトに染色体切断を誘導することができる。
本発明の融合蛋白質は、Gal4 DNA結合ドメイン(Gal4 DBD)と減数分裂組換え開始酵素とが結合した構造の蛋白質を言うが、その融合蛋白質におけるそれぞれの蛋白質の配置は特に制限されず、N末側がGal4 DNA結合ドメインに相当する領域であり、C末側が減数分裂組換え開始酵素に相当する領域であってもよいし、その反対に、N末側が減数分裂組換え開始酵素に相当する領域であり、C末側がGal4 DNA結合ドメインに相当する領域であってもよい。
また、これらの2つの蛋白質(ペプチド)は、通常、直接結合した構造を有していてるが、必ずしも直接結合している必要はなく、例えば、スペーサーペプチド等を介して、これらの2つの蛋白質が連結していてもよい。
本発明において好適に利用可能なスペーサーとしては、例えば、配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなる12アミノ酸残基のスペーサーを挙げることができる。さらに、配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなる22アミノ酸残基のスペーサーを挙げることができる。
また本発明には、Gal4 DNA結合ドメインと、昆虫の減数分裂組換え開始酵素との融合蛋白質のアミノ酸配列改変体であって、該融合蛋白質と機能的に同等な蛋白質、および、該蛋白質をコードするDNAが含まれる。
具体的には、以下の(a)または(b)に記載の蛋白質、および該蛋白質をコードするDNAもまた、本発明に含まれる。
(a)本発明の融合蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、本発明の融合蛋白質と機能的に同等な蛋白質
(b)本発明の融合蛋白質をコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、本発明の融合蛋白質と機能的に同等な蛋白質
(a)本発明の融合蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、本発明の融合蛋白質と機能的に同等な蛋白質
(b)本発明の融合蛋白質をコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、本発明の融合蛋白質と機能的に同等な蛋白質
上記の機能的に同等な蛋白質とは、例えば、本発明の融合蛋白質が有する機能、例えば、Gal2プロモーター配列(例えば、UAS配列)近傍においてDNAを切断する機能(DNA二本鎖切断活性)を例示することができる。任意の蛋白質について、上記機能を有するか否かは、例えば、パルスフィールド電気泳動法等によって適宜評価することができる。
また、本発明の融合蛋白質は、例えば、ハエSpo11蛋白質と機能的に同等な蛋白質と、Gal4 DNA結合蛋白質と機能的に同等な蛋白質との融合蛋白質であってもよい。
ハエSpo11蛋白質と機能的に同等な蛋白質とは、例えば、該Spo11の改変体もしくはホモログであって、減数分裂期に相同DNA組換えホットスポットにおいてDNA二本鎖切断を導入する活性を有する蛋白質を挙げることができる。
また、Gal4 DNA結合蛋白質と機能的に同等な蛋白質とは、例えば、該Gal4 DNA結合蛋白質の改変体もしくはホモログであって、Gal2プロモーター配列(例えば、UAS配列)等のGal4結合配列と結合する活性を有する蛋白質を挙げることができる。
配列表において具体的に記載されたアミノ酸配列からなる蛋白質以外の蛋白質であっても、例えば配列表に記載された配列と高い相同性(通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)を有し、かつ、Spo11もしくはGal4 DNA結合蛋白質が有する機能を持つ蛋白質は、本発明の上記蛋白質に含まれる。該蛋白質とは、例えば、配列番号:2、4、または6に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が付加、欠失、置換、挿入されたアミノ酸配列からなる蛋白質であって、通常変化するアミノ酸数が30アミノ酸以内、好ましくは10アミノ酸以内、より好ましくは5アミノ酸以内、最も好ましくは3アミノ酸以内である。
本発明におけるSpo11遺伝子またはGal4 DNA結合蛋白質をコードする遺伝子には、例えば、配列番号:1、3、または5に記載の塩基配列からなるDNAに対応する他の昆虫における内在性の遺伝子が含まれる。
また、配列番号:1、3、または5に記載の塩基配列からなるDNAに対応する他の生物の内在性のDNAは、一般的に、配列番号:1、3、または5に記載のDNAと高い相同性を有する。高い相同性とは、50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上(例えば、95%以上、さらには96%、97%、98%または99%以上)の相同性を意味する。この相同性は、mBLASTアルゴリズム(Altschul et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-7)によって決定することができる。また、該DNAは、生体内から単離した場合、配列番号:1、3、または5に記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすると考えられる。本発明において「ストリンジェントな条件」としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件として「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」および「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件を挙げることができる。当業者においては、他の昆虫における本発明の遺伝子に相当する内在性の遺伝子を、配列表に掲載された塩基配列を基に適宜取得することが可能である。なお、本明細書においては、ハエ以外の昆虫におけるSpo11蛋白質(遺伝子)に相当する蛋白質(遺伝子)、あるいは、上述のSpo11と機能的に同等な蛋白質(遺伝子)を、単に「Spo11蛋白質(遺伝子)」と記載する場合がある。
ある蛋白質と機能的に同等な蛋白質を調製するための、当業者によく知られた方法としては、蛋白質に変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci USA. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを用いて、本発明の蛋白質のアミノ酸に適宜変異を導入することにより、該蛋白質と機能的に同等な蛋白質を調製することができる。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このように、本発明の蛋白質のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が変異したアミノ酸配列を有し、該蛋白質と機能的に同等な蛋白質もまた本発明の蛋白質に含まれる。このような変異体における、変異するアミノ酸数は、通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内)であると考えられる。
変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字表記を表す)。
あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有する蛋白質がその生物学的活性を維持する蓋然性が高いことはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. and Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413 )。
任意の2つの蛋白質(ポリペプチド)についての融合蛋白質を発現するDNAは、当業者であれば、公知の種々の技術を利用して、過度の負担なく適宜作製することができる。例えば、本発明の融合蛋白質をコードするDNAは、Gal4 DNA結合蛋白質をコードするDNAと、Spo11等の減数分裂組換え開始酵素をコードするDNAをフレームが一致するように連結すればよい。
また、本発明の融合蛋白質を昆虫細胞にて発現させるために、該細胞において発現し得るプロモーターを、上記融合蛋白質をコードするDNAの上流に機能的に配置させることが可能である。上記「機能的」とは、該プロモーターによって転写可能なように本発明の融合蛋白質をコードするDNAが配置(連結)された状態を言う。
該プロモーターは、対象とする昆虫の細胞において転写機能を有するDNAであれば特に制限されないが、好ましくは、減数分裂期に機能し得るプロモーターである。例えば、ハエにおいてはhsp83プロモーター、vasaプロモーターなどを好適に利用することができる。
即ち、本発明は、本発明の融合蛋白質が発現可能な状態でプロモーターと連結した構造のDNAカセットを提供する。
即ち、本発明は、本発明の融合蛋白質が発現可能な状態でプロモーターと連結した構造のDNAカセットを提供する。
また、ある蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするDNAは、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)を利用して取得することも可能である。即ち、当業者であれば、本発明の蛋白質をコードするDNA配列(配列番号:1、3、または5等)もしくはその一部を基に、これと相同性の高いDNAを単離して、該DNAによってコードされる蛋白質が、本発明の上記機能を有するか否かについて適宜評価することが可能である。
本発明の蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、0.1×SSC 、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、5×SSC及び0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
ハイブリダイゼーション技術により単離されるDNAがコードする本発明の蛋白質と機能的に同等な蛋白質は、通常、本発明の蛋白質(配列番号:2、4または6に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質)とアミノ酸配列において高い相同性を有する。本発明の蛋白質には、本発明の蛋白質と機能的に同等であり、かつ該蛋白質のアミノ酸配列と高い相同性を有する蛋白質も含まれる。高い相同性とは、アミノ酸レベルにおいて、通常、少なくとも50%以上の同一性、好ましくは75%以上の同一性、さらに好ましくは85%以上の同一性、さらに好ましくは95%以上の同一性を指す。蛋白質の相同性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムにしたがえばよい。
本発明はまた、本発明のDNAもしくはDNAカセットが挿入されたベクターを提供する。本発明のベクターは、本発明のDNAもしくはDNAカセットを対象となる昆虫の染色体へ導入するために好適に利用することができる。また、本発明のベクターは、宿主細胞内において本発明のDNAを保持したり、本発明の融合蛋白質を発現させるために有用である。
ベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、XL1Blue)などで増幅させ調製するために、大腸菌で増幅されるための「ori」をもち、さらに形質転換された大腸菌の選抜遺伝子(例えば、なんらかの薬剤(アンピシリンやテトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すれば特に制限はない。ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Scriptなどが挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM-T、pDIRECT、pT7などが挙げられる。本発明の蛋白質を生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌での発現を目的とした場合は、ベクターが大腸菌で増幅されるような上記特徴を持つほかに、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1-Blueなどの大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら, Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーター(Betterら, Science (1988) 240, 1041-1043 )、またはT7プロモーターなどを持っていることが不可欠である。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX-5X-1(ファルマシア社製)、「QIAexpress system」(キアゲン社製)、pEGFP、またはpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)などが挙げられる。
また、ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。蛋白質分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。
大腸菌以外にも、例えば、本発明の蛋白質を製造するためのベクターとしては、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3 (インビトロゲン社製)や、pEGF-BOS (Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322)、pEF 、pCDM8 )、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BAC baculovairus expression system」(ギブコBRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウイルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw )、レトロウイルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」(インビトロゲン社製)、pNV11 、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)が挙げられる。
また本発明は、本発明のDNAまたは本発明のベクターを保持する形質転換細胞を提供する。本発明のベクターが導入される宿主細胞としては特に制限はなく、例えば、大腸菌や種々の動物細胞などを用いることが可能である。本発明の形質転換細胞は、例えば、本発明の蛋白質の製造や発現のための産生系として使用することができる。蛋白質製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
真核細胞を使用する場合、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を宿主に用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、CHO(J. Exp. Med. (1995) 108, 945)、COS、3T3、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Vero、両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et al., Nature (1981) 291, 358-340)、あるいは昆虫細胞、例えば、Sf9、Sf21、Tn5が知られている。CHO細胞としては、特に、DHFR遺伝子を欠損したCHO細胞であるdhfr-CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220)やCHO K-1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1968) 60, 1275)を好適に使用することができる。動物細胞において、大量発現を目的とする場合には特にCHO細胞が好ましい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、カチオニックリボソームDOTAP(ベーリンガーマンハイム社製)を用いた方法、エレクトロポレーション法、リポフェクションなどの方法で行うことが可能である。
植物細胞としては、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が蛋白質生産系として知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli)、例えば、JM109、DH5α、HB101等が挙げられ、その他、枯草菌が知られている。
本発明の方法の好ましい態様としては、目的の昆虫の染色体へ挿入された本発明のDNAによってコードされる融合蛋白質を発現させる工程、を含む方法である。
また本発明は、1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列(UAS配列等)を有する昆虫の染色体へ、本発明のDNAを挿入(導入)する工程を含む、減数分裂期に染色体切断が誘導される遺伝子改変昆虫(形質転換体)の製造方法を提供する。
本発明の遺伝子改変昆虫は、例えば、昆虫がハエの場合には、本発明の融合蛋白質(ハエのSpo11相同蛋白質MeiW68(切断ドメイン)と出芽酵母由来のGAL4 DNA結合蛋白質(切断サイト認識ドメイン)からなる融合蛋白質 GAL4BD-MeiW68)をコードする遺伝子を作製した後、該遺伝子をハエ初期胚にインジェクションして形質転換体を作製する。インジェクションのためのマイクロマニュピュレーターとそれを固定するアイソレーションテーブルは、市販の器機を利用することができる。より具体的には、後述の実施例に記載の方法によって、本発明の遺伝子改変昆虫を作製することができる。
上記の製造方法によって作製される遺伝子改変昆虫もまた、本発明に含まれる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕 ハエ生殖細胞内での十分な発現が期待されるベクターCASPER-hsp83の作製
GAL4BD-DmSpo11融合遺伝子をハエに導入するためのベクターを作製した。従来、ハエ形質転換のために、P因子ベクターCASPER-hsp70が用いられてきたが、このベクターが持つ発現プロモーターは生殖細胞内では十分に発現しない。
GAL4BD-DmSpo11融合遺伝子をハエに導入するためのベクターを作製した。従来、ハエ形質転換のために、P因子ベクターCASPER-hsp70が用いられてきたが、このベクターが持つ発現プロモーターは生殖細胞内では十分に発現しない。
ハエMeiP22はDmSpo11とともに減数分裂組換えを開始させる。K. S. McKimのグループは、meiP22 cDNAをhsp83プロモーター支配下に置いた時にも減数分裂組換えを誘導できることを示した(H. Liu, J. K. Jang, N. Kato, K. S. McKim, Genetics 2002, Vol.162 pp. 245-258.)。これはhsp83プロモーターが減数分裂期に機能することを示しているので、GAL4-MeiW68の減数分裂期発現のためにhsp83プロモーターを採用した。
本発明者らは、生殖細胞内で十分な発現が保証されている上記プロモーターhsp83を、ハエgenomic DNAからPCRクローニングした(pTOPO-hsp83)。pTOPO-hsp83 からhsp83を含むXhoI-HpaI断片を取り出して、CASPER-hsp70のXhoIとHpaIサイトに連結させた。そのとき同時にhsp70プロモーターは除かれた。このようにハエ生殖細胞内での十分な発現が期待されるP因子ベクターCASPER-hsp83を完成させた。
〔実施例2〕 GAL4BD-DmSpo11融合遺伝子の形質転換用プラスミド(CASPER-hsp83-GAL4BD-DmSpo11)
ハエのSPO11ホモローグであるMeiW68のcDNAをクローニングするために、embryo由来のcDNAライブラリーを作製して、プライマーPRI129とPRI130(表1)を用いてPCR合成を行い、MeiW68 cDNAをクローニングした(pTOPO-DmSpo11)。
ハエのSPO11ホモローグであるMeiW68のcDNAをクローニングするために、embryo由来のcDNAライブラリーを作製して、プライマーPRI129とPRI130(表1)を用いてPCR合成を行い、MeiW68 cDNAをクローニングした(pTOPO-DmSpo11)。
pTOPO-MeiW68からMeiW68配列を含むNdeI-EcoRI断片を取り出して、GAL4 DNA結合ドメインを持つベクターpAS2-1のNdeIとEcoRIサイトにサブクローニングして、GAL4BD-MeiW68融合遺伝子を作製した(pAS2-1-DmSpo11)。
pAS2-1-MeiW68 DNAからGAL4BD-DmSpo11融合遺伝子をPCR合成してサブクローニングした(pTOPO-GAL4BD-DmSpo11)。pTOPO-GAL4BD-DmSpo11から融合遺伝子を含むBglII-KpnI断片を取り出して、CASPER-hsp83のBglIIとKpnIサイトに連結させることによって、GAL4BD-MeiW68融合遺伝子の形質転換ベクター(形質転換用プラスミド)を完成させた(図1; CASPER-hsp83-GAL4BD-DmSpo11)。
〔実施例3〕 GAL4BD-DmSpo11融合遺伝子の形質転換体の作製
a)実施状況
ハエ生殖細胞内での十分な発現が期待される形質転換ベクターCASPER-hsp83に、3つのタイプのGal4DB-DmSpo11融合遺伝子の各々を導入して形質転換プラスミドを完成させた(図1)。ひとつは、翻訳後Gal4DBがDmSpo11のNH2末端側に位置するプラスミド(CASPER-hsp83::Gal4DBD-DmSpo11)であり、別のひとつは、翻訳後Gal4DBがDmSpo11のN H2末端側に位置するが、その間に9つのアミノ酸が介在するプラスミド(CASPER-hsp83::Gal4DBD-Spacer-DmSpo11)であり、最後のひとつは、翻訳後Gal4DBがDmSpo11のCOOH末端側に位置するプラスミド(CASPER-hsp83::DmSpo11-Gal4DBD)である(図1A)。これらのプラスミドを初期胚にマイクロインジェクションして形質転換体を作製した(図1B)。非形質転換体は、赤眼遺伝子座が欠失しているので白眼である。形質転換ベクターには標識として赤眼遺伝子を挿入してあるので、形質転換体ではトランスジーンの傍らに赤眼遺伝子が存在する。従って、白眼から赤眼への転換を標識にして形質転換体のスクリーニングを行った。得られた赤眼形質転換体候補のすべてにおいて、PCR法によってトランスジーンの存在を確認することができた。
a)実施状況
ハエ生殖細胞内での十分な発現が期待される形質転換ベクターCASPER-hsp83に、3つのタイプのGal4DB-DmSpo11融合遺伝子の各々を導入して形質転換プラスミドを完成させた(図1)。ひとつは、翻訳後Gal4DBがDmSpo11のNH2末端側に位置するプラスミド(CASPER-hsp83::Gal4DBD-DmSpo11)であり、別のひとつは、翻訳後Gal4DBがDmSpo11のN H2末端側に位置するが、その間に9つのアミノ酸が介在するプラスミド(CASPER-hsp83::Gal4DBD-Spacer-DmSpo11)であり、最後のひとつは、翻訳後Gal4DBがDmSpo11のCOOH末端側に位置するプラスミド(CASPER-hsp83::DmSpo11-Gal4DBD)である(図1A)。これらのプラスミドを初期胚にマイクロインジェクションして形質転換体を作製した(図1B)。非形質転換体は、赤眼遺伝子座が欠失しているので白眼である。形質転換ベクターには標識として赤眼遺伝子を挿入してあるので、形質転換体ではトランスジーンの傍らに赤眼遺伝子が存在する。従って、白眼から赤眼への転換を標識にして形質転換体のスクリーニングを行った。得られた赤眼形質転換体候補のすべてにおいて、PCR法によってトランスジーンの存在を確認することができた。
即ち、図2に示すように、CASPER-hsp83::Gal4DBD-DmSpo11から11系統の形質転換体を、CASPER-hsp83::Gal4DBD-Spacer-DmSpo11から4系統の形質転換体を、CASPER-hsp83::DmSpo11-Gal4DBから4系統の形質転換体を作製し系統保存することができた。系統間で眼色の程度が異なっていたのは、導入された染色体上の位置効果によるので、眼色が濃い系統ほどトランスジーンの発現が強いと考えられた。例えば、GM-70A系統の眼はGM-7Kよりも赤いので、hsp83::Gal4DBD-DmSpo11の発現においてもGM-70Aの方がGM-7Kよりも強いと予想された。
〔実施例4〕 ハエ生殖細胞でのhsp83::GAL4DB-DmSpo11の発現の分子生物学的手法による確認
トランスジーンからの転写量を測定するために、まず、hsp83::Gal4DBD-DmSpo11を持つ11系統の形質転換体のうちの7系統から、胚あるいは蛹を採取して、それらからRNAを抽出精製して、逆転写PCRのための鋳型サンプルを調整した。逆転写PCRのプライマー配列は、GAL4DB内の塩基配列からデザインした。
トランスジーンからの転写量を測定するために、まず、hsp83::Gal4DBD-DmSpo11を持つ11系統の形質転換体のうちの7系統から、胚あるいは蛹を採取して、それらからRNAを抽出精製して、逆転写PCRのための鋳型サンプルを調整した。逆転写PCRのプライマー配列は、GAL4DB内の塩基配列からデザインした。
結果、図3に示すように、非形質転換体ではGal4配列を持たないので、110 bpの逆転写PCR産物は現れなかったが、7系統の形質転換体では確認することができた。従って、本研究を通してGAL4DB-DmSpo11トランスジーンが予想通り生体内で発現していることが分かった。
以上のように、形質転換体細胞の中で、GAL4DBD-DmSpo11がhsp83プロモータから転写していることを定性的に確認できた。
〔実施例5〕 hsp83::GAL4BD-DmSpo11形質転換遺伝子の機能相補性の確認:dmspo11変異による不妊性に対する相補性試験
遺伝学的な方法として、dmspo11変異による不妊性を相補するかどうかを試験した。そのために、hsp83::Gal4DBD-DmSpo11を持つ形質転換体のうちの2系統、GM-7KとGM-70A(発現確認済)を使用した。dmspo11変異体の雌は減数分裂期に染色体切断を導入できないので、産卵率(交尾後の1日当りの産卵数)が低下し、しかもその卵は低い孵化率を示す。dmspo11変異雌の産卵率と孵化率における、トランスジーンの有無の影響を定量した。
遺伝学的な方法として、dmspo11変異による不妊性を相補するかどうかを試験した。そのために、hsp83::Gal4DBD-DmSpo11を持つ形質転換体のうちの2系統、GM-7KとGM-70A(発現確認済)を使用した。dmspo11変異体の雌は減数分裂期に染色体切断を導入できないので、産卵率(交尾後の1日当りの産卵数)が低下し、しかもその卵は低い孵化率を示す。dmspo11変異雌の産卵率と孵化率における、トランスジーンの有無の影響を定量した。
孵化率を比較した結果を、図4に示す。dmspo11ヘテロ接合体の孵化率は61-89%であったのに対して、dmspo11ホモ接合体では17-24%に減少した。GM-7Kトランスジーンを持つdmspo11ホモ接合体の孵化率は32%であったので、GM-7Kによる相補は認められなかった。ところが、GM-70Aトランスジーンを持つdmspo11ホモ接合体の孵化率は58%まで上昇したことから、同じトランスジーンによって産卵率が上昇した結果と合わせて、GM-70Aトランスジーンはdmspo11変異による不妊性を相補することが示された。さらに、Gal4DBD-DmSpo11トランスジーンのみならず、Gal4DBD-Spacer-DmSpo11トランスジーンとDmSpo11-Gal4DBトランスジーンのうちの発現が強いと考えられるGSM-15CとMG-35Bについて、機能相補能を試験したが、GSM-15CはGM-70Aと同程度に相補した。MG-35Bは相補できなかった(図5)。
相補トランスジーンGM-70A、GSM-15Cと非相補トランスジーンGM-7K、MG-35Bにおける相補性の有無は、発現量の大小によると考えられた。なぜならば、眼色がより赤いGM-70A、GSM-15Cによってほぼ完全に機能相補されたからである。
また、本実施例においてデザイン・作製された形質転換ベクターCASPER-hsp83については、これによって導入されたトランスジーンが、体細胞のみならず生殖細胞系列、特に卵巣において発現することを転写産物と機能相補を確認することによって証明できたので、一般的使用に値するベクターであると考えられた。
〔実施例6〕 hsp83::GAL4DB-DmSpo11形質転換遺伝子の機能相補性の確認:減数分裂期染色体切断の細胞生物学的検出系の準備
細胞生物学的な方法を準備した。ヒトリン酸化H2AXは染色体切断点に集まるので、抗リン酸化H2AX抗体は、ヒト/哺乳類培養細胞の染色体切断点を検出するために用いられるが、最近ハエの減数分裂期切断も検出できることが報告された。この報告によると、減数分裂組換え欠損の変異系統(spn-A変異、spn-B変異)では、減数分裂組換え能を有する標準系統よりも切断点の数が著しく上昇し、このような未修復切断点はdmspo11変異の追加によって消失する。そこで、本発明ではまず、分与可能な減数分裂組換え欠損株である、mus301変異系統を取り寄せて、市販の抗リン酸化H2AX抗体によって、未修復減数分裂切断を観察した。
細胞生物学的な方法を準備した。ヒトリン酸化H2AXは染色体切断点に集まるので、抗リン酸化H2AX抗体は、ヒト/哺乳類培養細胞の染色体切断点を検出するために用いられるが、最近ハエの減数分裂期切断も検出できることが報告された。この報告によると、減数分裂組換え欠損の変異系統(spn-A変異、spn-B変異)では、減数分裂組換え能を有する標準系統よりも切断点の数が著しく上昇し、このような未修復切断点はdmspo11変異の追加によって消失する。そこで、本発明ではまず、分与可能な減数分裂組換え欠損株である、mus301変異系統を取り寄せて、市販の抗リン酸化H2AX抗体によって、未修復減数分裂切断を観察した。
その結果、mus301ヘテロ接合体(mus301-/+)卵巣の減数分裂期細胞では、抗リン酸化H2AX抗体によるシグナルは観察されなかったが、mus301ホモ接合体(mus301-/-)卵巣の減数分裂期細胞では、再現よく多数のシグナルを検出できた(図6AB)。
上述のとおり、mus301ホモ接合体において未修復減数分裂切断が蓄積していることが分かった。さらに未修復切断がdmspo11変異の追加によって消失することを確認できた(図6CD)。
Claims (14)
- Gal4 DNA結合ドメインと、昆虫の減数分裂組換え開始酵素との融合蛋白質をコードするDNA。
- 昆虫がショウジョウバエである、請求項1に記載のDNA。
- 前記減数分裂組換え開始酵素が、DmSpo11である、請求項2に記載のDNA。
- プロモーターの下流に、請求項1〜3のいずれかに記載のDNAが機能的に連結した構造からなるDNA。
- 前記プロモーターがhsp70プロモーターである、請求項4に記載のDNA。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のDNAによってコードされるポリペプチド。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のDNAを担持するベクター。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のDNAを有することを特徴とする、遺伝子改変昆虫。
- さらに、1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列を有する、請求項8に記載の遺伝子改変昆虫。
- 前記昆虫がショウジョウバエである、請求項8または9に記載の遺伝子改変昆虫。
- 1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列を有する昆虫の染色体へ、請求項1〜5のいずれかに記載のDNAを挿入する工程を含む、昆虫において減数分裂期に染色体切断を誘導する方法。
- 1もしくは複数のコピー数のGal4結合配列を有する昆虫の染色体へ、請求項1〜5のいずれかに記載のDNAを挿入する工程を含む、減数分裂期に染色体切断が誘導される遺伝子改変昆虫の製造方法。
- 前記昆虫がショウジョウバエである、請求項11または12に記載の方法。
- 前記Gal4結合配列を有する昆虫が、ショウジョウバエP因子を有するショウジョウバエである、請求項13に記載の方法。
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