JP2008063826A - 水流の運動エネルギー低減方法、水流の運動エネルギー低減装置、被害軽減システム及び湧昇流発生システム - Google Patents

水流の運動エネルギー低減方法、水流の運動エネルギー低減装置、被害軽減システム及び湧昇流発生システム Download PDF

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Abstract

【課題】海底地震等により発生した津波等の運動エネルギーを、比較的沖合で展張したネット等の通水性部材で減少させることにより、沿岸部に到達する津波エネルギーを低減させて、波高を小さくし、陸岸における被害を軽減させること等ができる水流の運動エネルギー低減方法及び水流の運動エネルギー低減装置等を提供する。
【解決手段】対象とする水域に、通過する水流の流速Vaを低減する通水性部材2を水底10又は水底近傍又は水中に配設し、前記水域内の水流の流速Vaが増加した時にのみ前記通水性部材2を水流が通過するように水中に展開して、水流を前記通水性部材2を通過させることにより水流の流速Vaを低減する。
【選択図】図1

Description

本発明は、津波のエネルギー等の水流の運動エネルギーを低減することができる水流の運動エネルギー低減方法及び水流の運動エネルギー低減装置等に関する。
津波や高波などは、海岸から遠く離れた地点では分散していた水流のエネルギーが沿岸に到達する時点で集中することにより、大きな被害を発生する。従来は、沿岸付近に到達した津波や高波に対して、沿岸近傍に設けた防波堤や護岸堤により防いだり、そのエネルギーを低減させていた。
この津波防波堤の一つとして、例えば、堤体の天端面のほぼ中央位置を切欠いて津波の一部を越波させる越流開口を設け、この越流開口の周面の少なくとも一部に粗度面を形成し、この堤体を津波来襲のおそれのある湾部の浅海域に設置するようにした津波防波堤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、津波の越波を許容する程度の堤高を有する複数の堤体を津波進行に対して多段に設置し、津波が陸上位置に設置された防潮堤に到達する前に堤体を順次越波させて津波エネルギーを減衰させるようにした多段津波防波堤が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
このような防波堤はコンクリート又は金属を使用し、堅固な構造物として海底に設置するが、水深が比較的浅い水域又は海域に設定される場合は、航路や漁場等によって制約を受ける場合が多い。また、防波堤は、海岸線に沿って長く設ける必要があり、高さ(深さ)も大きくなりがちで、強度を保つために建設期間が長くなり、また、建設コストが著しく高くなるという問題がある。また、防波堤を設置すると、水や海水等の流出入が広範囲にわたり妨げられるので、海洋生物等の生活環境に対して悪影響を及ぼすという問題を解決する必要がある。
この対策として、平時には波受け板を支持基盤上に畳んだ状態で格納した堤体を海中に沈設し、津波時に波受け板に設けられた気室に気体を供給してこの気室の浮力により海底から沖側に傾斜するように起立させると共に、この波受け板を係留索で支持して、津波の衝撃を受けさせる津波防波堤が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、この津波防波堤は津波の衝撃を海上に突出する波受け板で受けるため、波受け板を強固なものとする必要がある上に、津波警報を受けた時に気室に気体を供給する必要がある上に、波受け板をヒンジ回りに回転して起立させる構造であることから、海中に長く置かれるヒンジが必ず回転できるようにしておく必要がある等の問題がある。
また、津波対策ではないが、上下方向かつ水平方向の一方向に延びて水中に配置される膜体と、この膜体の上縁部に連結されてこの膜体に浮力を与える浮体とを備え、膜体の下縁部をアンカーで水底に固定させ、係留体で膜体の上縁部を水底に向かって引張して、水平方向で上記一方向への直交方向に向かって膜体を傾斜させた膜構造潜堤が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、この膜構造潜堤では、水域における汚濁水の拡散防止、波の消波、水流の流速の低減などを目的としており、膜体で埋立などにより汚濁水が発生する岸辺側の水中と清浄な沖側とを仕切るように結合具によって互いに結合されて列状に配置される構成となっている。そして、この膜体には汚濁水の拡散防止の機能があるため、通水性はなく、水の力を膜体を水平面に対して傾斜させて展張することにより、水のエネルギーを受け止める面を広くしてはいるが、膜体は水の衝突を受け、この衝突によりエネルギーを吸収して低減するので、大きなエネルギーを持つ水流に対処することは難しいという問題がある。
一方、本発明者らは、津波は沿岸付近に到達すると運動エネルギーが集中しているので、この大きな運動エネルギーに対抗しなければならず、強固な建造物等で対応しなければならないが、運動エネルギーが集中する前の沿岸から離れた沖合の地点では、比較的運動エネルギー密度は小さく、津波時の水流の流速も比較的小さいので、運動エネルギーを低減し易いという知見と、水流のエネルギーはその流速を低下させることで大きく低減でき、必ずしも、水流を膜体や防波堤などで完全に止める必要はないという知見を得た。
特開平07−113216号公報 特開平07−113219号公報 特開2005−207220号公報 特開2004−204609号公報
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、海底地震等により発生した津波等の運動エネルギーを、比較的沖合で展張したネット等の通水性部材で減少させることにより、沿岸部に到達する津波エネルギーを低減させて、波高を小さくし、陸岸における被害を軽減させること等ができる水流の運動エネルギー低減方法及び水流の運動エネルギー低減装置等を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の水流の運動エネルギー低減方法は、対象とする水域に、通過する水流の流速を低減する通水性部材を水流が通過するように水中に展開して、水流を前記通水性部材を通過させることにより水流の流速を低減することを特徴とする。
この水流は、海流、潮流、川の流れ、湖沼における流れ等、水底は、海底、河川底、湖底等、水中は、海中、河川中、湖沼中等を含む。また、通過する水流の流速を低減する通水性部材とは、部材の一方から他方へ水流の水の少なくとも一部が通過でき、通過する前と通過後で流速が低下する部材のことを言い。例えば、ネット部材(網部材)や格子状部材や多孔部材等がある。また、この通水性部材は、展開を確実にするために柔軟性のあるネット状のもの等が好ましいが、水流が遅い時には折り畳み可能で、水流が早い時には展開可能なものであれば、剛体であってもよい。この剛体の例としては簾状、ブラインド状、パネルスクリーン状、車庫扉のような伸縮状のもの等がある。
上記の水流の運動エネルギー低減方法によれば、水流を通水性部材を通過させて流速を低減するので、膜体や堤防等で水の通過を遮る方式に比べて通水性部材に作用する力を著しく低減でき、通水性部材の係留及び設置が著しく容易となる。
この水流の運動エネルギー低減方法の用途としては、津波が発生した時に津波エネルギーを沖合の水流エネルギーの密度が小さい内に、この水流の運動エネルギー低減方法で減少して津波被害を軽減したり、海水浴場や防波堤等に台風等の影響で大きな波が寄せてきた時に沖合や沿岸周囲で、波のエネルギーをこの水流の運動エネルギー低減方法で減少して高波被害を軽減したり、河川における水量の増加によって河川を流れる水流の流速が増加した時に、水流のエネルギーをこの水流の運動エネルギー低減方法で減少して堤防や岸壁等への水流の衝突力を事前に軽減して護岸したりすること等がある。
また、上記の目的を達成するための本発明の水流の運動エネルギー低減方法は、対象とする水域に、通過する水流の流速を低減する通水性部材を水底又は水底近傍又は水中に配設し、前記水域内の水流の流速が増加した時にのみ前記通水性部材を水流が通過するように水中に展開して、水流を前記通水性部材を通過させることにより水流の流速を低減することを特徴とする。
上記の水流の運動エネルギー低減方法によれば、津波発生時等の水域内の水流の流速の増加時にのみ通水性部材を展開するので、平時は、水流の移動のみならず、魚類などの水中生物の移動も妨げることがないので、生物環境への影響を少なくすることができる。
上記の水流の運動エネルギー低減方法において、前記通水性部材の水中での展開を、水流の力を利用して自動的に行うことを特徴とする。この水流の力を利用して自動的に行うことは、水流により揚力を発生する揚力発生体を設け、この揚力発生体の揚力により通水性部材を上方又は側方に展開すること等により容易に行うことができる。
この水流の力による自動展開により、展開に要するエネルギーを外部から供給する必要を無くすことができ、展開に要する機構が単純化すると共に、展開機構における故障の発生を防止でき、また、人為的なミスによる展開し忘れるを防止するとができるので、必要時に確実に展開できて、津波や高波時等における被害の発生を確実に軽減できるようになる。
そして、上記の目的を達成するための本発明の水流の運動エネルギー低減装置は、対象とする水域の水底又は水底近傍又は水中に配設され、通過する水流の流速を低減する通水性部材と、該通水性部材の一部を水底又は水底近傍又は水中に位置保持する第1の位置保持手段と、前記通水性部材を水流が通過するように水中に展開する展開手段と、展開した前記通水性部材を位置保持する第2の位置保持手段とを有して構成される。
また、上記の水流の運動エネルギー低減装置において、前記展開手段が、水域内の水流の流速が増加した時にのみ前記通水性部材を水中に展開するように構成される。
これらの水流の運動エネルギー低減装置によれば、上記の水流の運動エネルギー低減方法を実施することができ、同様な効果を奏することができる。
上記の水流の運動エネルギー低減装置において、前記通水性部材をネット状部材で形成し、前記第1の位置保持手段を前記ネット状部材の一部を係留保持する第1の係留装置で形成し、前記展開手段を前記ネット状部材の上部側に設けた揚力発生装置で形成し、前記第2の位置保持手段を前記ネット状部材の上部側の一部を係留保持する第2の係留装置で形成する。この構成により、水流の運動エネルギー低減装置を比較的単純な周知技術の部材で形成できるようになる。
この通水性部材は、水を通過させると共に、通過する水流の流速を低減できるものであれば良く、この水流の流速の低減としては、通水率を少なくする方法や、通過する水流に渦流を発生する方法や、水流の方向を変更する方法等が考えられるが、通水率が多く、渦流によって水流の流速を低減するネット状部材が、水流によって受ける力が比較的少なく、配置も保守も容易であるので好ましい。つまり、流体の移動を妨げるよりも、通過させて渦流などにより流速を低減させるような流速低減用ネットが好ましい。
また、第1の位置保持手段は、通水性部材の展開元の位置保持を行うことができるものであれば良く、通水性部材の下側に設けられたアンカーや、通水性部材の下側を係留する係留索とこの係留索の他端に連結されたアンカー等の係留装置(第1の係留装置)で形成することができる。
展開手段は、水流の流速が増加して来た時に通水性部材を展開できるものであればよいが、揚力を発生する揚力発生装置で形成すると、比較的簡単に、また、自動的に通水性部部材を展開することができる。
この揚力発生装置としては柔軟性のあるシート部材や剛体としての板状部材等がある。形状としては翼形状のものも考えられるが、ネット状部材の一部を通水性の悪いあるいは通水性の無い部材で覆うと、この部分が揚力を発生するので、非常に簡単に揚力発生装置を形成することができる。特にネット状部材の一部が揚力を発生するので、展開力を広く発生でき、効率よく展開できる。つまり、ネット状部材の上部に部分的又が連続的に装着して、水流が増加した時に大きな揚力を発生して、ネット状部材を浮上及び展開させる機能を有するものである。なお、ネット状部材の上端の位置を適切に維持するためにこの揚力発生装置は揚力発生体だけでなくバランスウェイトを備えることが好ましい。
また、第2の位置保持手段は、通水性部材の展開後の位置保持を行うことができるものであれば良く、例えば、通水性部材の上側に連結された浮力体(浮き:ブイ)と、通水性部材の上側に連結された係留索とこの係留索に連結されたアンカー等の係留装置(第2の係留装置)で形成することができる。
そして、通水性部材は、通常は対象水域で、船舶の航行や漁業の邪魔にならないように、水面直下を避けて、水底や水底近傍や水中に配置され、水流の流速が増加してきた場合には、通水性部材の上部を持ち上げて、水流が通過するように上方方向に展開するのが好ましい。しかし、対象水域の都合によっては、水域の一部に垂直方向に配置され、水流の流速が増加してきた場合に、通水性部材の側部を水平方向に移動させて、水流が通過するように水平方向に展開する構成にしてもよい。
また、津波又は高波又は河川の増水に対する被害軽減システムにおいて、上記の水流の運動エネルギー低減装置を用いると、比較的、小さな構造物の集合で、大きな水流エネルギーを低減することができ、津波や高波や河川の増水に対する被害を軽減することができる。
津波対策に用いる場合は、この水流の運動エネルギー低減装置を沖合の海底部に設置するが、津波発生時の水流の増加によって、揚力発生装置の揚力が増加するので、この揚力により、この海底部に係留された通水性部材(津波ネット)が浮上し、通水性部材の上方を持ち上げて水面近くまで展張し、この水面近くまで展張した通水性部材が津波の流速を低減させることにより、沿岸部に到達する津波波高を減少させ、陸岸での被害を軽減することができる。また、津波が通過した後は、水流の流速が低下するので、揚力発生装置の揚力が減少し、通水性部材は自重で降下し元の位置に戻る。従って、この水流の運動エネルギー低減装置は、繰返し使用することができる。
そして、津波発生時においても、沖合で津波の運動エネルギが集中する前の段階で、水流の流速が早まりつつある段階で展開して効果を発揮するので、津波であっても、沿岸に比べれば、流速は小さく、また、津波による波高も低いので、通水性部材に作用する荷重は比較的小さくなり、大規模な係留装置を必要としない。
また、材料、構成及び動作が単純なため、従来の堤防や波受け板方式や膜体方式に比べて比較的安価に製作及び設置が可能となる。そのため、分散配置による水域全体での津波エネルギー低減を行うことが容易となる。そして、防波堤より沖合に設置するため、防波堤と併用することが可能であり、この場合には、大きな津波に対しても複合的な被害軽減対策効果を期待できる。
そして、高波対策に用いる場合には、この水流の運動エネルギー低減装置を津波対策と同様に沖合の海底部に設置したり、あるいは、津波対策よりも沿岸に近い沿岸近傍や海水浴場の遠浅の深い海底などにも設置する。これにより、波が高まってきたり、高い波が発生した場合には、水流の流速が増加するので、展開した通水性部材により流速を低減でき、高波のエネルギーを低減して、高波による被害を軽減できる。
また、河川の増水時の護岸対策に用いる場合は、この水流の運動エネルギー低減装置を河川に設置するが、所謂潜堤と同様に、水流のエネルギーを低減できる。しかし、従来の固定式の潜堤とは異なり、水流の遅い通常時は展開しないので、魚類の通行や漁業の妨げにならない。また、設置やメインテナンスも容易である。
また、水底付近にある富栄養水を水面付近に上昇させる湧昇流発生システムにおいて、上記の水流の運動エネルギー低減装置を用いると、比較的、小さな構造物の集合で、水底付近における水流を妨げて、上昇する流れを発生することができる。
つまり、水流の速度が小さく、湧昇流を発生するだけの水流エネルギーが無い場合は、水流の運動エネルギー低減装置による水流の速度低減効果が少ないので、水底付近の水流は妨げられない。一方、潮流や海流の影響により水流の速度が早くなった時には、水流の運動エネルギー低減装置の水流の速度の低減効果により、水流の水底側が減速され、通水部材が抵抗体として作用するために、水流は通水部材から通水部材の上部側に流れる流れ、即ち、湧昇流を発生する。そのため、水底付近にある栄養過多の富栄養水を上昇させて、水底付近の酸欠状態等の水質環境を改善して、水産資源への被害を減少したり、水質環境の浄化による水産資源の復活を図ることができる。
本発明の水流の運動エネルギー低減方法及び水流の運動エネルギー低減装置によれば、水域内の水流の流速の増加時にのみ通水性部材を展開して、水流を通水性部材を通過させて流速を低減するので、平時は、水流の移動のみならず、魚類などの水中生物の移動も妨げることがないので、生物環境への影響を少なくすることができると共に、膜体や堤防等で水の通過を遮る方式に比べて通水性部材に作用する力を著しく低減できる。そのため、通水性部材の係留及び設置を著しく容易とすることができる。
また、津波又は高波又は河川の増水に対する被害軽減システムにおいて、本発明の水流の運動エネルギー低減装置を用いると、比較的、小さな構造物の集合で、大きな水流エネルギーを低減することができ、津波や高波や河川の増水に対する被害を軽減することができる。
更に、水底付近にある富栄養水を水面付近に上昇させる湧昇流発生システムにおいて、本発明の水流の運動エネルギー低減装置を用いると、比較的、小さな構造物の集合で、水底付近における水流を妨げて、水流の運動エネルギーを利用して上昇する流れを発生することができる。
以下図面を参照して本発明に係る水流の運動エネルギー低減方法及び水流の運動エネルギー低減装置について説明する。
図1〜図3に示すように、本発明の実施の形態の水流の運動エネルギー低減装置1は、通水性部材2と、第1の位置保持手段3と、展開手段4と、第2の位置保持手段5とを有して形成される。
通水性部材2は、水を通過させると共に、通過する水流の流速を低減できるものであれば良く、例えば、ネット状部材で形成され、対象とする水域の水底20又は水底近傍又は水中に配設されて、通過する水流の流速を低減する。ネット状部材で形成した場合には、流体の移動を妨げるよりも、通過させて渦流などにより流速を低減させるので、水流によって受ける力が比較的少なく、配置も保守も容易となる。
なお、通水性部材2を材料の選択や、浮き等の浮上物又はバランスウェイト等の沈降物の分散配置等により、比重1に近い重さにすると、展開手段4を小さくすることができる上に、通水性部材2が水底20に沈降して、水底20を移動する生物などの活動を妨げることを少なくすることができ、生物環境の保護面でより良いものとなる。
第1の位置保持手段3は、第1の係留装置であり、通水性部材2の下側に設けられた第1のアンカー3で形成され、通水性部材2の下端等の一部を水底20又は水底近傍又は水中に位置保持する。なお、水底20を移動する生物等の移動を自由にする場合には、通水性部材2を少し浮かせて、この通水性部材2と水底20の間に隙間を設けるが、この場合は、通水性部材2の下部を係留する係留索とこの係留索の他端に連結されたアンカーで形成する。
展開手段4は、通水性部材2の上部側に設けた揚力発生装置4で形成され、通水性部材2を水域内の水流の流速が増加した時にのみ水流が通過するように水中に展開する。この揚力発生装置4は、通水性部材2の水中での展開を、水流の力を利用して自動的に行うように構成することが好ましく、このような構成は、膜体4aと、この膜体4aの上部に設けた浮き4bと、この膜体4aの下部に設けたバランスウェイト4cとで構成できる。
この膜体4aは、通水性の悪いあるいは通水性の無い部材で形成され、必要とされる揚力に応じて、通水性部材2の幅方向(水平方向)に沿って部分的又は連続的に装着される。この膜体4aは、浮き4bとバランスウェイト4cにより膜体4a部分に水流が当たるようにその姿勢を保たれるので、この膜体4aの部分に水流が当たり揚力が発生する。この構成により、通水性部材2の上部の幅方向に沿って揚力を発生できるので、浮上力Fを大きくして、この浮上力Fによる展開力を広く発生でき、効率よく通水性部材2を上方に展開できるようになる。
揚力発生装置4が発生する揚力は、図1に示すように水流が小さい流速Vaの間は小さいので、通水性部材2やバランスウェイト4cや係留索5a等の重さにより沈降したままであるが、揚力発生装置4が発生する揚力は、図2に示すように水流が大きな流速Vbになると大きくなり、揚力と共に大きくなった浮上力Fにより、通水性部材2が持ち上がり、水流が通過するように水中に通水性部材2が展開することになる。
第2の位置保持手段5は、例えば、通水性部材2の上側に連結された係留索5aとこの係留索5aに連結されたアンカー5bとからなる係留装置(第2の係留装置)で形成され、図2に示すように、展開後の通水性部材2を位置保持する。アンカー5bの位置や係留索5aの長さと係留索5aの重量分布を調整することにより、通水性部材2の水平方向や上下方向の上端位置を、揚力発生体4が発生する揚力と関係させながら、適切な位置に位置保持することができる。
そして、通常時は、通水性部材2は、自重やバランスウェイト4cにより、対象水域における船舶の航行や漁業の邪魔にならないように、水面直下を避けて、水底20や水底近傍や水中に沈降状態で配置される。図1に示すように、水流が小さい流速Vaの場合には、揚力発生装置4が発生する揚力は小さく浮上力Fも小さいので、通水性部材2は、沈降状態を保持する。
また、津波や高波や河川の増水などで、水流の流速が増加し、大きな流速Vbになった場合は、揚力発生装置4が発生する揚力が大きくなるので、浮上力Fも大きくなり、通水性部材2の上部を持ち上げて、通水性部材2を水流が通過するように上方方向に展開する。
この展開後の通水性部材2を水流が通過すると、通水性部材2のネット状等の構造により通過した水流に渦流が発生し、水流の流速Vbは通過後は通過前の流速Vbよりも小さい流速Vcとなり、水流の運動エネルギーが低減される。
この水流の運動エネルギーの低減量は、通水性部材2の構造や材質などによって調整できる。例えば、ネット状部材のネットの形状や開口率や開口部分の形状等により、また、部材が振動して振動エネルギーを吸収するような材質を全体的又は部分的に使用した構成とすることによっても調整できる。
更には、通水性部材2の展開状態の形状によっても水流の運動エネルギーの低減量が変化するので、第2の位置保持手段である係留索5aの長さや本数、重量分布、通水性部材2の係留位置などによっても調整することができる。
これらの調整は水槽実験や流体解析プログラム等による数値計算によって行うことができ、この水流の運動エネルギー低減装置1において、それぞれの水域で目的にあった設計を適宜することができる。
この水流の運動エネルギー低減装置1の対象水域への配設は、対象水域の水深や水底(海底、川底、湖底等)等の状況によるが、水流に対して略直交する方向に通水性部材2を配置する。この配置は、対象水域が狭い場合は、通水性部材2を横方向に連続させた、一つの水流の運動エネルギー低減装置1を配設してもよいが、対象水域が広い場合には、複数の水流の運動エネルギー低減装置1を横並びや縦並びに配置するのが好ましい。この複数の装置1の分散配置により、1つの装置1の配置よりも、予想外の大きな水流が局部的に発生した場合でも損傷を受ける水流の運動エネルギー低減装置1の数を少なくして、全体として水流の運動エネルギー低減効果を維持することができ、また、メインテナンスも容易となる。
また、この水流の運動エネルギー低減装置1は、個々の装置1の背後の水流エネルギーを低減するためと言うよりは、対象水域における水流エネルギーの全体を減少するために使用されることが多いので、必要に応じて、多列に配置するが、水底を這う生物等への影響を少なくするためには、上方から見て、千鳥状あるいは市松模様状に配置するのが好ましい。また、大きさも統一してもよいが、幾つかの大きさを組み合わせて、水流分布や水底の地形等にきめ細かく対応できるようにすることが好ましい。
なお、この水流の運動エネルギー低減装置1を用いた場合は、対象とする水域に、通過する水流の流速を低減する通水性部材2を水底又は水底近傍又は水中に配設し、水域内の水流の流速が増加した時にのみ通水性部材2を水流が通過するように水中に展開して、水流を通水性部材2を通過させることにより水流の流速を低減する水流の運動エネルギー低減方法を実施できる。
しかし、常時、通水性部材2を展開していてもよい場合は、上記の水流の運動エネルギー低減装置1から揚力発生手段4の膜体4aとバラストウェイト4cを省いて、第2の位置保持手段5によって常時通水性部材2を展開した状態で保持しておく。これにより、対象とする水域に、通過する水流の流速を低減する通水性部材2を水流が通過するように水中に展開して、水流を通水性部材2を通過させることにより水流の流速を低減する水流の運動エネルギー低減方法を実施できる。
なお、この場合は、定置網や生け簀等の魚類などを囲い込む網とは異なり、水流の運動エネルギー低減方法で使用する通水性部材2は水域を囲い込まず、魚類等が対象水域の内外に移動可能な状態に置かれる。また、作業のために水面上から下に垂らす海苔や貝等の養殖用網等と異なり、水底から浮力あるいは浮上力を利用して水中に展開、及び、配置されるものであり、通水性部材2には水面上に出る部分を設けない方が好ましい。これは、通水性部材2が水面上に出ると通水性部材2や浮き4b等が波の影響を受けて、第2の係留装置2の係留索5aに作用する力が大きくなり、その分係留索5aや第2のアンカー5b等の係留装置5が大がかりになるので、これを避けるためである。また、この水流の運動エネルギー低減装置1は比較的沖合に設置し、水面あるいは水面近くを利用する必要がないことで海苔や貝等の養殖用網等とは異なる。
上記の水流の運動エネルギー低減方法及び水流の運動エネルギー低減装置1によれば、水流を通水性部材2を通過させて流速を低減するので、膜体や堤防等で水の通過を遮る方式に比べて通水性部材2に作用する力を著しく低減できる。そのため、通水性部材2の係留及び設置を著しく容易とすることができる。
また、比較的小さな構造物の集合で、津波又は高波又は河川の増水に対する被害軽減システムにおいては、大きな水流の運動エネルギーを低減して、津波や高波や河川の増水に対する被害を軽減することができ、また、湧昇流発生システムにおいては、水流の運動エネルギーを利用して上昇する流れを発生して、水底付近にある富栄養水を水面付近に上昇させることができる。
更に、水域内の水流の流速の増加時にのみ通水性部材2を展開するように構成することにより、水流の流速が遅い平時は、水流の移動のみならず、魚類などの水中生物の移動も妨げることが無くなるので、生物環境への影響を少なくできる。
本発明に係る実施の形態の水流の運動エネルギー低減装置の展開前の状態を示す側断面図である。 図1の水流の運動エネルギー低減装置の展開後の状態を示す側断面図である。 図2の正面図である。
符号の説明
1 水流の運動エネルギー低減装置
2 ネット状部材(通水性部材)
3 第1アンカー(第1の係留装置:第1の係留手段)
4 揚力発生装置(揚力発生手段)
4a 膜体
4b 浮き(ブイ)
4c バランスウェイト
5 第2の係留装置(第2の係留手段)
5a 係留索
5b 第2のアンカー
10 水面
20 水底

Claims (8)

  1. 対象とする水域に、通過する水流の流速を低減する通水性部材を水流が通過するように水中に展開して、水流を前記通水性部材を通過させることにより水流の流速を低減することを特徴とする水流の運動エネルギー低減方法。
  2. 対象とする水域に、通過する水流の流速を低減する通水性部材を水底又は水底近傍又は水中に配設し、前記水域内の水流の流速が増加した時にのみ前記通水性部材を水流が通過するように水中に展開して、水流を前記通水性部材を通過させることにより水流の流速を低減することを特徴とする水流の運動エネルギー低減方法。
  3. 前記通水性部材の水中での展開を、水流の力を利用して自動的に行うことを特徴とする請求項2記載の水流の運動エネルギー低減方法。
  4. 対象とする水域の水底又は水底近傍又は水中に配設され、通過する水流の流速を低減する通水性部材と、該通水性部材の一部を水底又は水底近傍又は水中に位置保持する第1の位置保持手段と、前記通水性部材を水流が通過するように水中に展開する展開手段と、展開した前記通水性部材を位置保持する第2の位置保持手段とを有してなることを特徴とする水流の運動エネルギー低減装置。
  5. 前記展開手段が、水域内の水流の流速が増加した時にのみ前記通水性部材を水中に展開することを特徴とする請求項4記載の水流の運動エネルギー低減装置。
  6. 前記通水性部材をネット状部材で形成し、前記第1の位置保持手段を前記ネット状部材の一部を係留保持する第1の係留装置で形成し、前記展開手段を前記ネット状部材の上部側に設けた揚力発生装置で形成し、前記第2の位置保持手段を前記ネット状部材の上部側の一部を係留保持する第2の係留装置で形成したことを特徴とする請求項5記載の水流の運動エネルギー低減装置。
  7. 津波又は高波又は河川の増水に対する被害軽減システムであって、前記請求項4、5、又は、6記載の水流の運動エネルギー低減装置を用いることを特徴とする被害軽減システム。
  8. 水底付近にある富栄養水を水面付近に上昇させる湧昇流発生システムであって、前記請求項4、5、又は、6記載の水流の運動エネルギー低減装置を用いることを特徴とする湧昇流発生システム。
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