JP2008063620A - 硫黄酸化細菌を用いる硫化銅鉱からの銅の採取方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から常温常圧で銅を効率よく浸出する方法を提供すること。
【解決手段】黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を採取するに際し、浸出液に対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌を添加して銅の浸出を行うことを特徴とする、硫化銅鉱からの銅の採取方法。
【選択図】図1
【解決手段】黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を採取するに際し、浸出液に対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌を添加して銅の浸出を行うことを特徴とする、硫化銅鉱からの銅の採取方法。
【選択図】図1
Description
本発明は硫化銅鉱、特には黄銅鉱などの一次硫化銅鉱から銅を効率良く採取する方法に関する。
銅鉱石から銅を回収する方法の一つとして知られるSX−EW法(SX−EW:溶媒抽出・電解採取)は、銅鉱石から銅を硫酸などで浸出し、その溶液から銅を有機溶媒で濃縮した後、電解採取により電気銅を得る湿式製錬法である。銅鉱石の湿式製錬に使用される溶媒は硫酸が主流であるため、湿式製錬の対象鉱は硫酸などで容易に溶解する酸化銅鉱に限られていた。しかしながら、酸化銅鉱は硫化銅鉱に比べて一般に鉱量が少ないため、鉱量の多い硫化銅鉱を湿式製錬の対象鉱として用いることが検討されている。
湿式製錬による硫化銅鉱の浸出形態としては、硫酸または塩酸を用いた回分攪拌反応による浸出形態、積層体を形成しその頂部から硫酸または塩酸を供給して重力により滴り落ちる液を回収する浸出形態(ヒープリーチング法)などが知られている。しかし、ヒープリーチング法では、浸出に数年を要し、しかも浸出率は非常に低く効率が悪い。そこで、微生物の力を借りて銅を効率よく浸出し、回収する方法(バクテリアリーチング法)が検討されている。バクテリアリーチング法は、既に斑岩銅鉱床の二次富化帯に存在する輝銅鉱(Cu2S),銅藍(CuS)等の二次硫化銅鉱に対しては実用化されているが、現在、技術開発の主体は銅資源の中で最も大量に存在する黄銅鉱(CuFeS2)を含有する一次硫化銅鉱である。
しかしながら、黄銅鉱は硫酸にはほとんど溶けず、銅の浸出速度が極端に遅いため、浸出速度を上げるため、酸化剤の添加に加えて様々な技術が提案されている。例えば、高温加圧処理(特許文献1〜3)、鉄量や3価鉄と2価鉄の比率の調整による一定の酸化還元電位(銀‐塩化銀電極基準)の維持(特許文献4)、浸出液に活性炭と鉄を添加することによる一定の酸化還元電位の維持(特許文献5)などが報告されている。しかしながら、上記の方法はいずれも浸出速度の改善にある程度の効果があるもの、エネルギーや試薬の点でコスト高になるという問題がある。また、浸出反応が進んだ場合には精鉱に含まれる硫黄分が表面に残留することに起因する浸出阻害現象のため、浸出速度が著しく低下するという問題もある。従って、黄銅鉱を含有する一次硫化銅鉱に対する湿式製錬は実用化に至る技術がないのが現状である。
従って、本発明の課題は、上記のような事情に鑑み、実操業レベルで汎用性ある条件で黄銅鉱を主体とする一次硫化銅鉱から銅を効率よくかつ経済的に採取する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、黄銅鉱を含有する一次硫化銅鉱から湿式製錬により銅を採取するに際して、浸出液に対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌を添加して銅の浸出を行うことで、浸出反応で生成した元素硫黄の鉱物表面への付着が抑制され、常温でも銅を効率よく浸出できることを見出した。本発明はかかる知見により完成されたものである。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を採取するに際し、浸出液に対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌を添加して銅の浸出を行うことを特徴とする、硫化銅鉱からの銅の採取方法。
(2)硫黄酸化細菌が、アシディチオバチルス・スピーシーズ(Acidithiobacillus sp.)TTH−19A株(NITE P−164)である硫化銅鉱からの銅の採取方法。
(1)黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を採取するに際し、浸出液に対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌を添加して銅の浸出を行うことを特徴とする、硫化銅鉱からの銅の採取方法。
(2)硫黄酸化細菌が、アシディチオバチルス・スピーシーズ(Acidithiobacillus sp.)TTH−19A株(NITE P−164)である硫化銅鉱からの銅の採取方法。
本発明によれば、以下の効果が得られる。
(1)黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を常温にて効率よく浸出することができる。
(2)高温加圧処理などを必要とせず、浸出液に対数増殖期で植え継ぎ続けて活性化させた硫黄酸化細菌を添加することにより銅の浸出速度を高めることができるため、簡便でかつ経済性に優れる。
(3)硫黄酸化細菌の添加は、硫化銅鉱の浸出反応において副生し、鉱物表面に付着して浸出性の低下を招く原因となる硫黄を硫酸に変えることができる。従って、副生する硫黄の鉱物表面へのコーティング現象を防ぐことができるとともに、産生した硫酸が銅の浸出に消費されるためさらに銅を効率よく浸出できる。
(1)黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を常温にて効率よく浸出することができる。
(2)高温加圧処理などを必要とせず、浸出液に対数増殖期で植え継ぎ続けて活性化させた硫黄酸化細菌を添加することにより銅の浸出速度を高めることができるため、簡便でかつ経済性に優れる。
(3)硫黄酸化細菌の添加は、硫化銅鉱の浸出反応において副生し、鉱物表面に付着して浸出性の低下を招く原因となる硫黄を硫酸に変えることができる。従って、副生する硫黄の鉱物表面へのコーティング現象を防ぐことができるとともに、産生した硫酸が銅の浸出に消費されるためさらに銅を効率よく浸出できる。
本発明の硫化銅鉱からの銅の採取方法は、黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を採取するに際し、浸出液に対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌を添加して銅の浸出を行うことを特徴とする。
対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌の調製は、例えば次のようにして行う。硫酸にてpH2.3に調整した培養液(硫酸アンモニウム3g/L、リン酸水素カリウム0.5g/L、硫酸マグネシウム七水和物0.5g/L、塩化カリウム0.1g/Lを含む)に滅菌した元素硫黄粉末を混合し、銅の浸出に用いる硫黄酸化細菌を添加して常温で振とう培養する。培養液中の菌濃度を経時的に測定し、対数増殖期であることを確認する。対数増殖期の確認は、培養液中の菌濃度が106cells/mL以下から108cells/mLオーダーに急上昇することを指標に行う。上記操作を好ましくは3回以上、または誘導期の短縮が確認されるまで繰り返し、菌を活性状態にする。
本発明方法の対象鉱である黄銅鉱を含有する硫化銅鉱は、黄銅鉱を主体とする硫化銅鉱であっても、黄銅鉱を一部に含有する硫化銅鉱であってもいずれでもよく、その含量は特に限定はされない。
本発明方法は、硫酸溶液を浸出液とする銅の湿式製錬であれば、いずれの浸出形態にも用いることができ、例えば、回分攪拌浸出のみならず、鉱石を堆積させた上から硫酸を散布して、銅を硫酸中に浸出させるヒープリーチング、ダンプリーチングのいずれであってもよい。
硫化銅鉱の溶解、浸出は下記(式1)、(式2)に示す一連の反応によって進行する。
[化1]
CuFeS2+3Cu2++3Fe2+→2Cu2S+ 4Fe3+ (式1)
CuFeS2+3Cu2++3Fe2+→2Cu2S+ 4Fe3+ (式1)
[化2]
Cu2S+4Fe3+→2Cu2++4Fe2++S (式2)
Cu2S+4Fe3+→2Cu2++4Fe2++S (式2)
上記の浸出液へ対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌を添加する。硫黄酸化細菌を添加することによって、上記(式2)の反応で生成し、コーティング現象の要因となる元素硫黄を、下記(式3)の反応にて取り除くことによって、浸出速度の鈍化を防ぎ、効率良い浸出を実現することができる。
[化3]
S+1.5O2 +H2O+ 硫黄酸化細菌 → H2SO4 (式3)
S+1.5O2 +H2O+ 硫黄酸化細菌 → H2SO4 (式3)
ここで用いられる硫黄酸化細菌は、水系(地下水、排水、海水、河川水、湖沼水等)や土壌において硫黄を酸化し、硫酸を産生させる能力を有する菌であれば特に限定されない。かかる硫黄酸化細菌として、好適には、2006年1月13日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に受託番号NITEP−164として寄託されている、アシディチオバチルス・スピーシーズTTH−19A株(Acidithiobacillus sp. TTH−19A株)を用いることができる。
一方、前記(式2)で生じるCu2Sは下記(式4)の反応で溶解するため、pHは低く設定するほうが浸出には有利である。また、(式3)で生成する硫酸は浸出を加速させるが、pH1.6より低い場合、硫黄酸化細菌の硫黄酸化能力が阻害され、また、pH2.5より高い場合は、鉄明礬石(jarosite)の生成などによる浸出反応の阻害が起こる。従って、浸出液のpHは1.6〜2.5が好ましい。
[化4]
Cu2S +4H++O2→2Cu2+ +2H2O+S (式4)
Cu2S +4H++O2→2Cu2+ +2H2O+S (式4)
上記硫黄酸化細菌の浸出液への添加量は、特に限定されないが、一般的には、菌濃度が1×106〜1×107cells/mLになるように添加する。時間の経過とともに変動する菌の濃度は特に調整する必要はない。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌の調製
元素硫黄粉末(和光純薬工業社製、特級)をオートクレーブにて110℃で5分間、3回繰り返し滅菌した。この滅菌した硫黄粉末1gを、硫酸にてpH2.3に調整した培養液(硫酸アンモニウム3g/L、リン酸水素カリウム0.5g/L、硫酸マグネシウム七水和物0.5g/L、塩化カリウム0.1g/Lを含む)300mLに混合し、500mL容量の坂口フラスコに調製した。上記の培養液に、硫黄酸化細菌(Acidithiobacillus sp.TTH−19A株)を添加して常温で振とう培養した。培養液中の菌濃度を、位相差光学顕微鏡を用いてトーマ血球係数盤で経時的に測定し、菌濃度が106cells/mL以下から108cells/mLオーダーに急上昇する期間を対数増殖期と判定した。対数増殖期であることを確認した菌について、上記と同じ培養液による培養と菌濃度の測定の操作を3回繰り返し、活性状態にした。
(1)対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌の調製
元素硫黄粉末(和光純薬工業社製、特級)をオートクレーブにて110℃で5分間、3回繰り返し滅菌した。この滅菌した硫黄粉末1gを、硫酸にてpH2.3に調整した培養液(硫酸アンモニウム3g/L、リン酸水素カリウム0.5g/L、硫酸マグネシウム七水和物0.5g/L、塩化カリウム0.1g/Lを含む)300mLに混合し、500mL容量の坂口フラスコに調製した。上記の培養液に、硫黄酸化細菌(Acidithiobacillus sp.TTH−19A株)を添加して常温で振とう培養した。培養液中の菌濃度を、位相差光学顕微鏡を用いてトーマ血球係数盤で経時的に測定し、菌濃度が106cells/mL以下から108cells/mLオーダーに急上昇する期間を対数増殖期と判定した。対数増殖期であることを確認した菌について、上記と同じ培養液による培養と菌濃度の測定の操作を3回繰り返し、活性状態にした。
(2)硫化銅鉱の浸出
対象鉱として、黄銅鉱を主成分とするカンデラリア産の精鉱を用いた。この品位は、Cu:28mass%、Fe:28mass%、S:32mass%であった。
対象鉱として、黄銅鉱を主成分とするカンデラリア産の精鉱を用いた。この品位は、Cu:28mass%、Fe:28mass%、S:32mass%であった。
上記の精鉱3gを、硫酸にてpH1.8に調整した浸出液(硫酸アンモニウム3g/L、リン酸水素カリウム0.5g/L、硫酸マグネシウム七水和物0.5g/L、塩化カリウム0.1g/Lを含む)300mLに混合し、500mL容量の坂口フラスコに調製した。この浸出液に、上記(1)で調製した対数増殖期で植え継ぎ続けて活性状態となった硫黄酸化細菌(Acidithiobacillus sp.TTH−19A株)を1×107cells/mLの濃度で添加して振とう浸出し、浸出液の上澄みの銅濃度をICP発光分光装置にて測定し、銅濃度を経時的に測定した。
(比較例1)
実施例1に記載の浸出液(pH1.8)に、活性化処理を行なっていない硫黄酸化細菌(Acidithiobacillus sp. TTH−19A株)を1×107cells/mLの濃度で添加する以外は、実施例1と同様にして常温で振とう浸出し、銅濃度を経時的に測定した。
実施例1に記載の浸出液(pH1.8)に、活性化処理を行なっていない硫黄酸化細菌(Acidithiobacillus sp. TTH−19A株)を1×107cells/mLの濃度で添加する以外は、実施例1と同様にして常温で振とう浸出し、銅濃度を経時的に測定した。
(比較例2)
実施例1に記載の浸出液に、硫黄酸化細菌を添加しない以外は、実施例1と同様にして常温で振とう浸出し、銅濃度を経時的に測定した。
実施例1に記載の浸出液に、硫黄酸化細菌を添加しない以外は、実施例1と同様にして常温で振とう浸出し、銅濃度を経時的に測定した。
実施例1、及び比較例1,2の試験結果を図1に示す。
図1に示されるように、実施例1は、40日後の銅濃度が2.0g/Lと高い値となり、銅の浸出速度が速いことが確認できた。一方、比較例1では40日後の銅濃度が1.0g/Lとなり、比較例2の40日後の銅濃度の0.6g/Lに比べると、硫黄酸化細菌を添加した優位性がわずかに見られるものの、実施例1に比べると、銅濃度の上昇率は低く、銅の浸出が良好に行われていないといえる。
図1に示されるように、実施例1は、40日後の銅濃度が2.0g/Lと高い値となり、銅の浸出速度が速いことが確認できた。一方、比較例1では40日後の銅濃度が1.0g/Lとなり、比較例2の40日後の銅濃度の0.6g/Lに比べると、硫黄酸化細菌を添加した優位性がわずかに見られるものの、実施例1に比べると、銅濃度の上昇率は低く、銅の浸出が良好に行われていないといえる。
以上の結果から、対数増殖期で植え継ぎ続けて活性状態となった硫黄酸化細菌の添加によって銅の浸出が促進されることがわかった。
Claims (2)
- 黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を採取するに際し、浸出液に対数増殖期で植え継ぎ続けた硫黄酸化細菌を添加して銅の浸出を行うことを特徴とする、硫化銅鉱からの銅の採取方法。
- 硫黄酸化細菌が、アシディチオバチルス・スピーシーズ(Acidithiobacillus sp.)TTH−19A株(NITE P−164)である、請求項1に記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006242868A JP2008063620A (ja) | 2006-09-07 | 2006-09-07 | 硫黄酸化細菌を用いる硫化銅鉱からの銅の採取方法 |
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JP2006242868A JP2008063620A (ja) | 2006-09-07 | 2006-09-07 | 硫黄酸化細菌を用いる硫化銅鉱からの銅の採取方法 |
Publications (1)
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JP2008063620A true JP2008063620A (ja) | 2008-03-21 |
Family
ID=39286580
Family Applications (1)
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JP2006242868A Pending JP2008063620A (ja) | 2006-09-07 | 2006-09-07 | 硫黄酸化細菌を用いる硫化銅鉱からの銅の採取方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2008063620A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20200105445A (ko) * | 2019-02-28 | 2020-09-07 | 전북대학교산학협력단 | 황동원광의 구리 침출용 복합 미생물 제제 및 이의 제조방법 |
-
2006
- 2006-09-07 JP JP2006242868A patent/JP2008063620A/ja active Pending
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KR20200105445A (ko) * | 2019-02-28 | 2020-09-07 | 전북대학교산학협력단 | 황동원광의 구리 침출용 복합 미생물 제제 및 이의 제조방법 |
KR102266705B1 (ko) | 2019-02-28 | 2021-06-21 | 전북대학교산학협력단 | 황동원광의 구리 침출용 복합 미생물 제제 및 이의 제조방법 |
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