JP2008036559A - フッ素樹脂系高分子分離膜の酸化加工処理方法 - Google Patents

フッ素樹脂系高分子分離膜の酸化加工処理方法 Download PDF

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啓一 池田
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Abstract

【課題】 分離特性、透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度とともに耐汚れ性に優れたフッ素樹脂系高分子分離膜ならびに該高分子分離膜を有する膜モジュールを提供する。
【解決手段】 三次元網目構造層と球状構造層とを有するフッ素樹脂系高分子分離膜であって、三次元網目構造層が、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体を含有させたフッ素樹脂系高分子組成物からなるものを、酸化剤に接触処理することにより、三次元網目構造の表層中の親水性高分子の一部を脱離ないし変性させ、フッ素樹脂系高分子分離膜の改質を行う。
【選択図】 なし

Description

本発明は、飲料水製造、浄水処理、廃水処理などの水処理分野、医薬品製造分野、食品工業分野、荷電膜分野、燃料電池分野、血液浄化用膜分野等におけるろ過膜として好適なフッ素樹脂系高分子分離膜を製造するための加工処理方法に関するものである。
近年、高分子分離膜は、飲料水製造、浄水処理、廃水処理などの水処理分野、食品工業分野等の様々な方面でろ過膜として利用されている。飲料水製造、浄水処理、廃水処理などの水処理分野においては、分離膜によるろ過が、従来の砂ろ過や凝集沈殿工程の代替として、水中の不純物を除去するために行われるようになってきている。また、食品工業分野においては、発酵に用いた酵母の分離除去や液体の濃縮を目的として、分離膜が用いられている。
このように多様な分野で高分子分離膜は用いられるが、例えば、浄水処理や廃水処理などの水処理分野においてはろ過処理する水の量が大きいため、ろ過時における透水性能をさらに向上させることが求められている。透水性能が優れていれば、ろ過処理に使用する分離膜の膜面積を減らすことが可能となり、ろ過処理装置がコンパクトになるので、設備費を節約でき、膜交換費や設置面積の点からも有利である。
また、浄水処理の分野では透過水の殺菌や膜面におけるバイオファウリングを防止する目的のために、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を膜モジュール内の水に添加したり、酸、アルカリ、塩素、界面活性剤などで膜そのものを洗浄するので、分離膜には耐薬品性も求められる。
さらに、水道水製造の分野では、家畜の糞尿などに由来するクリプトスポリジウムなどの、塩素に対して耐性のある病原性微生物が浄水場内での処理で除去しきれず、処理水に混入する事故が1990年代から顕在化していることから、このような事故を防ぐため、分離膜には、原水中の除去対象物質が処理水に混入しないように十分な分離特性を備え、かつ、ろ過処理を継続しても分離膜の破損や糸切れが起こらないような高い物理的強度を備えることが要求されている。
このように、分離膜には、優れた分離特性、化学的強度(特に耐薬品性)、物理的強度および透過性能が強く求められる。そこで、化学的強度(特に耐薬品性)と物理的強度を併せ有する特長をもつ、ポリフッ化ビニリデン系樹脂製の分離膜が多くの分野で使用されるようになってきている。
しかしながら、ポリフッ化ビニリデン系樹脂製分離膜を構成するポリフッ化ビニリデン系樹脂は本来的に疎水性であるので、膜面が疎水性相互作用により汚染されやすいという欠点がある。特に、医薬品製造工程においてタンパク質等の生理活性物質の分離・精製等に使用される場合、膜面へ生理活性物質が吸着して変性を生じるので、回収率の低下を招き、さらに、膜内の細孔が閉塞してろ過速度が急激に低下する、という問題を生じ易い。
それら問題を改善するために、ポリフッ化ビニリデン系樹脂製の分離膜を親水化して、耐汚れ性を改善することが考えられ、親水化するための技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、ポリエチレンイミンポリマー類を化学反応により導入し、疎水性樹脂膜を親水化する技術が提案されている。しかし、導入した親水性高分子は荷電基を有するため、荷電を有する物質、特に両性電解質であるタンパク質や表流水中に存在するフミン質などを含む溶液に対してむしろ逆効果であった。
また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と混和するポリ酢酸ビニルや酢酸セルロースを利用した親水化方法も提案されている。
特許文献2には、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体とポリフッ化ビニリデン系樹脂とをブレンドした樹脂組成物から分離膜を作製することが提案されている。しかし、この分離膜は単層からなる分離膜であるので、酸、アルカリ、塩素等による薬液洗浄が行われると、物理的強度が大幅に低下し易い問題がある。また、このビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体は親水性が強いために、疎水性のポリフッ化ビニリデン系樹脂との均一なブレンド体とすることが難しい、という問題がある。
そこで、ビニルアルコール系親水性高分子を含有するポリフッ化ビニリデン系分離膜を製造する他の方法として、特許文献3には、ポリ酢酸ビニルとポリフッ化ビニリデン系樹脂とのブレンド樹脂から分離膜を製膜した後に、分離膜中のポリ酢酸ビニルを水酸化ナトリウムのような強アルカリ条件下でけん化してポリビニルアルコールとする方法が提案されている。このようにして製造されたポリビニルアルコールとポリフッ化ビニリデン系樹脂とのブレンド樹脂からなる分離膜は、優れた親水性を示し、タンパク質などに対しても優れた耐汚れ性を示す。しかしながら、この分離膜は、上記ブレンド樹脂の溶液から製膜された単層の分離膜であるので、酸、アルカリ、塩素等により薬液洗浄すると、その薬液によりポリビニルアルコールが侵され、性能低下を招く恐れがある。また、ポリビニルアルコールは親水性が強く、水溶性であるため、水系ろ過に使用すると徐々に溶出されていくので、透過水の汚染を嫌う用途、特に飲料水製造や浄水製造の用途には適していない。さらに、ポリビニルアルコールの溶解性は水温の上昇とともに大きくなるため、ボイラー冷却水の回収用途等の高温水の処理にも適していない。
一方、特許文献4には、酢酸セルロースとポリフッ化ビニリデン系樹脂とのブレンド樹脂から分離膜を作製することが開示されている。しかし、酢酸セルロースは親水性が弱いので、十分な親水性を得るためには多くの酢酸セルロースをブレンドする必要があり、疎水性のポリフッ化ビニリデン系樹脂との均一なブレンド体とすることが難しい、という問題がある。
そこで、酢酸セルロースをブレンドしたポリフッ化ビニリデン系樹脂分離膜において、酢酸セルロースの含有量を高めることなく、親水性を高める方法が特許文献5に開示されている。この公報では、酢酸セルロースをポリフッ化ビニリデン系樹脂にブレンドして製膜して分離膜とした後に、分離膜中の酢酸セルロースを水酸化ナトリウムのような強アルカリ条件でけん化することにより親水性の高いセルロースとしている。このようにして得られたセルロースとポリフッ化ビニリデン系樹脂とのブレンドからなる分離膜は、優れた親水性を示し、タンパク質などに対しても優れた耐汚れ性を示す。しかしながら、この分離膜は単層の分離膜であるので、分離膜中には高親水性を示すセルロースが一様に分布しているので、上述したような酸、アルカリ、塩素等による薬液で洗浄すると、分離膜全体が薬液に侵され、物理的強度の低下を招く恐れがある。
また、特許文献6には、膜表面を平滑にし、表面細孔を巧みに制御することができる分離膜が記載されている。この分離膜は、物理的強度に優れた内層部に分離機能を有する表層部を被覆させてなる複合膜であり、内層部も表層部も、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のみからなるので、薬液洗浄を行っても物理的強度が低下しない利点がある。しかし、疎水性のポリフッ化ビニリデン系樹脂のみで構成されるために、表流水中のフミン質などを吸着し易く、ろ過抵抗の上昇により、長期間の安定運転が困難という問題がある。
特開昭57−174104号公報 特開昭61−257203号公報 特許第3200095号公報 特開平2−78425号公報 特許第3093811号 国際公開第03/106545号パンフレット
本発明は、従来の技術における上述した問題点を改善し、化学的強度(特に耐薬品性)及び物理的強度に優れるとともに、さらに耐汚れ性能と透水性能にも優れたフッ素樹脂系高分子分離膜を製造することができる方法を提供することを主たる目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜の酸化加工処理方法は、三次元網目構造層と球状構造層とを有するフッ素樹脂系高分子分離膜であって、三次元網目構造の層が、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体を含有させたフッ素樹脂系高分子組成物からなるものを、酸化剤に接触処理することにより、三次元網目構造の表層の親水性高分子の一部を脱離ないし変性させることを特徴とする。
ここで、酸化剤は次亜塩素酸(塩)、二酸化塩素、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸(塩)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。酸化処理前の高分子分離膜において、三次元網目構造層を構成するフッ素樹脂系高分子組成物が、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体を、フッ素樹脂系高分子の量に対し2〜75重量%の量で含有することが好ましい。高分子分離膜の球状構造の層が、親水性高分子を実質的に含有せず、フッ素樹脂系高分子からなる球状構造層であることが好ましい。高分子分離膜の最表層に三次元網目構造が存在することが好ましい。
また、酸化処理後の高分子分離膜の三次元網目構造層の表面細孔の平均孔径が0.005μm以上1μm以下であることが好ましい。中空糸形状の分離膜の場合には、酸化処理後の高分子分離膜の50kPa、25℃における純水透過性能が0.10m/m・hr以上、強力5N以上、かつ、破断伸度50%以上であることが好ましい。このようにして酸化加工処理されたフッ素樹脂系高分子分離膜は、ろ過膜モジュールにおけるろ過膜として特に好適である。
本発明法により製造されるフッ素樹脂系高分子分離膜は、球状構造層と三次元網目構造層とからなる複合分離膜であって、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体を三次元網目構造層中に含有させているものであり、しかも、酸化剤との接触処理によって、三次元網目構造の表層中の親水性高分子の一部が脱離ないし変性させられているので、表面の三次元網目構造層の親水性能が十分に高くなっていて、表流水中のフミン質に代表される汚れ物質が膜表面に吸着されることをより一層抑制することができる。
しかも、この複合分離膜は、親水性高分子を実質的に含まない球状構造層を有するので、酸化加工処理されているにもかかわらず、物理的強度等の耐久性能も十分であり、膜ろ過処理時における糸切れや膜破れの問題を生じない。
また、三次元網目構造層中にセルロースエステルを多く含有する分離膜の場合には、本発明による酸化加工処理を行うことによって、表層の親水性高分子のエステル基が脱離され、水酸基に置換されて、親水性がより高まることの他に、表層の一部の親水性高分子が脱離させられることによって、膜細孔径が若干大きくなり、ろ過抵抗を小さくすることができる。
従って、本発明の高分子分離膜の酸化加工処理方法によると、化学的強度(特に耐薬品性)および物理的強度に優れた特性を阻害することなく、耐汚れ性と透水性能とを、より一層高めることができる。そして、これによる得られた分離膜を、水ろ過処理する際のろ過膜に用いることにより、ろ過膜のろ過寿命を長くし、造水コストを低減させることが可能となる。
本発明における酸化加工処理を行う対象のフッ素樹脂系高分子分離膜は、三次元網目構造層と球状構造層とを有する分離膜であって、三次元網目構造層が、親水性高分子として、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体を含有させたフッ素樹脂系高分子組成物からなる分離膜である。
また、このフッ素樹脂系高分子分離膜に対して行う酸化加工処理は、この高分子分離膜を酸化剤と接触させる処理であり、この処理により、三次元網目構造の表層中の親水性高分子の一部を脱離ないし変性させることができるものである。
この酸化加工処理で用いる酸化剤は、次亜塩素酸(塩)、二酸化塩素、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸(塩)等、酸化機能を有する薬剤である。
本発明で用いる、三次元網目構造層と球状構造層が積層された分離膜の一例について図1〜図4に電子顕微鏡写真を示す。図1は、酸化加工処理前の横断面の電子顕微鏡写真(1,000倍)であり、図2は、酸化加工処理前の三次元網目構造層の表面の電子顕微鏡写真(50,000倍)である。また、図3は、酸化加工処理後の横断面の電子顕微鏡写真(1,000倍)であり、図4は、酸化加工処理後の三次元網目構造層の表面の電子顕微鏡写真(50,000倍)である。図1における上側部分が三次元網目構造の層であり、下側部分が球状構造の層である。
酸化加工処理前の三次元網目構造層では、図1の上側部分ないし図2に示すように、樹脂固形分が三次元的に網目状に繋がって広がっている構造(これを三次元網目構造という)が分布している。この三次元網目構造には、網を形成する樹脂固形分によって仕切られて形成された細孔(ボイド)が点在している。この細孔は、図2において黒色で示されている。
また、球状構造層では、図1の下側部分に示すように、多数の略球状形(球状形も含む)の樹脂固形分が、直接もしくは筋状の固形分を介して連結している構造(これを球状構造という)が分布している。なお、球状構造層は、高分子分離膜の横断面を走査型電子顕微鏡を用いて3000倍で写真撮影した際に、上記球状構造が観察される範囲の層をいう。
酸化加工処理後の三次元網目構造層は、図3の上側部分を観察する限り、酸化加工処理前とほとんど差がないようにみえるが、表面の細孔径は図4に示す通り、酸化加工処理前より若干大きくなっている。三次元網目構造の表層の一部が脱離しているためと推察される。
X線光電子分光法を用いて、酸化加工処理前と酸化加工処理後の三次元網目構造の表面組成を分析した結果を表1、表2に示す。酸化加工処理後の表面では、酸化加工処理前と比較すると、フッ素の割合が多く、酸素の割合が少ない。フッ素量が酸化加工処理によって増加することはないので、フッ素を基準としたときの炭素および酸素の原子数比の減少は、酸化加工処理によって炭素および酸素の原子が減少していると解することができる。このように三次元網目構造層の表層中の炭素および酸素が脱離していることは、三次元網目構造層中の親水性高分子の一部が脱離していると言える。また、C1sピーク分割結果からすると、酸化加工処理後の三次元網目構造の表層では、エステル基が殆どない、ないしは相当に少なく、水酸基に置換されており、親水性高分子の変性も生じている。
本発明の酸化加工処理で使用する酸化剤としては、次亜塩素酸(塩)、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸(塩)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。酸化力が強い酸化剤ほど、短時間で三次元網目構造の表層を脱離ないし変性させることができる。
これら酸化剤と接触処理させるためには、酸化剤を含有する水溶液と分離膜とを、浸漬等の手段により接触させればよい。その水溶液中の酸化剤濃度や温度、酸化剤の種類、また、接触時間等の条件は、高分子分離膜の構成等に応じて適宜選択すればよい。例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬させることにより酸化剤加工処理する場合には、水溶液中の次亜塩素酸ナトリウムの濃度を0.1〜0.5重量%程度、浸漬時間を5〜500時間程度とすればよい。
本発明の酸化加工処理を行う対象の高分子分離膜は、球状構造層と三次元網目構造層の両方が存在する複合構造であり、球状構造層と三次元網目構造層とが積層された層構造であることが好ましい。一般に、層を多段に重ねた積層分離膜において、各層が界面で強固に接合されている場合、その界面において層同士が互いに入り込むために膜内部構造が緻密になり易く、透過性能が低下する傾向にある。逆に、界面において層同士が互いに入り込まない場合には、透過性能は低下しないが、界面での耐剥離強度が低下する。このように、各層の界面における耐剥離強度と透過性能とは、相反する傾向にあるが、共に満足させる水準とすることが望まれている。この観点からすると、球状構造層と三次元網目構造層との積層界面数、即ち積層数は少ない方が好ましく、球状構造層の1層と三次元網目構造層の1層との合計2層からなることが特に好ましい。また、球状構造層と三次元網目構造層の以外の層、例えば多孔質基材などの支持体層が、他の層として含まれていてもよい。多孔質基材を構成する材料は、有機材料、無機材料等、特に限定されないが、軽量化し易い点から有機繊維が好ましい。多孔質基材としては、さらに好ましくは、セルロース系繊維、酢酸セルロース系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維などの有機繊維からなる織布や不織布が挙げられる。
三次元網目構造層と球状構造層との配置(平膜の場合は上下層配置、中空糸膜の場合は内外層配置)は、ろ過方式によって変えることができる。この分離膜において、三次元網目構造層が分離機能を担い、球状構造層が物理的強度を担うため、分離膜使用時に三次元網目構造層が原水側となるように配置することが好ましい。特に、原水中の汚れ物質の付着による透過性能の低下を抑制するためには、三次元網目構造層が原水側の最表層に配置することが好ましい。三次元網目構造層と球状構造層の各厚みは、分離特性、透水性能、化学的強度(特に耐薬品性)、物理的強度、耐汚れ性の各性能が要求される条件を満足するように適宜調整すればよい。三次元網目構造層が薄いと分離特性や物理的強度が低くなり、厚いと透水性能が低くなる傾向にある。球状構造層が薄いと物理的強度が低くなり、厚いと透水性能が低くなる傾向にある。
この高分子分離膜において、三次元網目構造層も球状構造層も、ベースポリマはフッ素樹脂系高分子であり、三次元網目構造層には、前記した特定の親水性高分子を含有させている。三次元網目構造層に配合する親水性高分子は、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体であり、実質的に水不溶性である。
セルロースエステルは、繰り返し単位中に3つのエステル基を有し、それらの加水分解の程度を調整することにより、フッ素樹脂系高分子との良好な混和性と、高分子分離膜表面における良好な親水性をともに達成し易い。このセルロースエステルとしては、例えば、セルロールアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。また、これらセルロースエステルに、脂肪酸ビニルエステルのような親水性分子ユニットをグラフト重合等により導入したセルロースエステル変性物でもよい。
脂肪酸ビニルエステル系重合体は、主鎖および/または側鎖に、脂肪酸ビニルエステルから誘導される親水性分子ユニットを含む重合体である。この重合体の具体例としては、脂肪酸ビニルエステルのホモポリマー、脂肪酸ビニルエステルと他モノマーとの共重合体、脂肪酸ビニルエステルを他ポリマーにグラフト重合した共重合体が挙げられる。脂肪酸ビニルエステルのホモポリマーとしては、ポリ酢酸ビニルが安価で取り扱いが容易なため好ましい。脂肪酸ビニルエステルと他モノマーとの共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体が安価で取り扱いが容易なため好ましい。この共重合体における酢酸ビニルの共重合割合は高いほど、分離膜の親水性増大、透過性能や耐汚れ性の向上という点から好ましく、具体的には、50モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上である。
また、フッ素樹脂系高分子は、フッ化ビニリデンホモポリマー、及び/又は、フッ化ビニリデン系共重合体である。これらの複数種類のフッ化ビニリデン系共重合体を含有していてもよい。また、本発明の分離膜特性を阻害しない少量ならば他のポリマを併用してもよい。フッ化ビニリデン系共重合体としては、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれる少なくとも1種とフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。また、フッ素樹脂系高分子の重量平均分子量は、要求される高分子分離膜の強度と透水性能によって適宜選択すればよい。重量平均分子量が大きくなると透水性能が低下し、重量平均分子量が小さくなると強度が低下する傾向にある。このため、重量平均分子量は5万以上100万以下が好ましい。薬液洗浄に晒される水処理用途で使用する高分子分離膜の場合は、フッ素樹脂系高分子の重量平均分子量は10万以上70万以下が好ましく、さらに15万以上60万以下が好ましい。
上記した親水性高分子は、三次元網目構造層を形成するためのフッ素樹脂系高分子に配合されるので、フッ素樹脂系高分子と適当な条件で混和することが好ましい。なかでも、フッ素樹脂系高分子の良溶媒に、親水性高分子とフッ素樹脂系高分子が混和溶解できる場合には、取り扱いが容易になるので特に好ましい。
本発明では、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体を含有させたフッ素樹脂系高分子組成物からなる三次元網目構造層を有するフッ素樹脂系複合分離膜を、酸化剤と接触処理させる。この酸化加工処理により、三次元網目構造層中に含まれるセルロースエステルや脂肪酸ビニルエステル系重合体が変性される。即ち、そのエステル基部分の一部が加水分解され、エステル基よりも親水性の高い水酸基が生成する。水酸基の割合が多くなるほど、得られる高分子分離膜の表面の親水性が増大し、透過性能や耐汚れ性は向上する。また、このように酸化加工処理による加水分解等の変性を効率的に生じさせ、悪影響を防止するためには、三次元網目構造層を分離膜の最外部(被処理液と接触する表面側の最外部)に位置させ、その層厚みを極力薄くすることが好ましい。
また、本発明において酸化加工処理を行う対象のフッ素樹脂系高分子分離膜は、三次元網目構造層と球状構造層の両方を有する積層膜であって、三次元網目構造層中には、セルロースエステルおよび/または脂肪酸ビニルエステル系重合体が親水性高分子として含有されている。親水性高分子として配合したセルロースエステルおよび/または脂肪酸ビニルエステル系重合体は、フッ素樹脂系高分子との混和性を損なわない範囲において、エステル部分の加水分解の程度を広範囲に調整可能であり、酸化加工処理によって、得られる高分子分離膜に高度の親水性を付与しやすいからである。
本発明における分離膜の三次元網目構造層中には親水性向分子として、セルロースエステルおよび/または脂肪酸ビニルエステル系重合体を配合するが、これ以外の親水性高分子成分が併用されてもよい。その場合、三次元網目構造層中に含まれる親水性高分子全体において、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体が占める割合(含有率)が70モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上である。なお、この含有率は、セルロースエステルも脂肪酸ビニルエステルも含有する場合にはセルロースエステルの含有率と脂肪酸ビニルエステルの含有率の和である。
また、本発明において酸化加工処理を行う対象の高分子分離膜の三次元網目構造層および球状構造層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の成分、例えば、他の有機物、無機物、高分子などが含まれていてもよい。
この高分子分離膜は、三次元網目構造層のみに特定の親水性高分子を含有させているので、球状構造層と三次元網目構造層との界面は、両層が互いに入り組んだ構造をしていることが、界面における耐剥離性を高めるために好ましい。
球状構造層と三次元網目構造層の両方ともがフッ素樹脂系高分子のみから構成される従来の分離膜の場合は、フッ素樹脂系高分子同士の疎水性相互作用により、球状構造層と三次元網目構造層との界面の剥離は生じにくい。しかし、フッ素樹脂系高分子と異なる親水性高分子を片側の層のみに共存させる場合は、フッ素樹脂系高分子同士の疎水性相互作用による界面剥離防止効果が低減され、しかも、親水性−疎水性間の反発が生じてくるので、界面の剥離が生じ易くなる。
そこで、このような界面の剥離を低減させるためには、界面を両層が互いに入り組んだ構造とすることが好ましく、また、三次元網目構造層中の親水性高分子の含有量を、界面付近において低減させることが好ましい。
三次元網目構造層中において界面付近の親水性高分子量を低減させるためには、例えば、親水性高分子量が、高分子分離膜表面から界面に向かって徐々に減少する傾斜構造とすることが好ましい。このような傾斜構造とするためには、例えば、三次元網目構造を形成させるために塗布した高分子溶液を凝固させる液として極性の高い非溶媒を用い、この極性の高い非溶媒を、塗布した高分子分離膜の表面側から接触させることが好ましい。このようにすると、フッ素樹脂系高分子よりも極性の高い親水性高分子が高分子分離膜の表面側に多く分布するようになるので、膜内部に向かっては親水性高分子が徐々に減少する構造となり、界面付近の親水性高分子量が相対的に減少する。極性の高い非溶媒は、後述する種類の非溶媒の中から選択すればよいが、とりわけ、水が、極性が高く安価なため好ましい。
上記した界面剥離を防止するという観点からすると、三次元網目構造層中において、フッ素樹脂系高分子の量(b)に対する親水性高分子の量(a)の比(a/b)は、2重量%以上20重量%未満とすることが好ましく、より好ましくは5重量%以上15重量%以下である。なお、フッ素樹脂系高分子量に対する親水性高分子量の値(重量%)は、三次元網目構造層を形成させるための高分子溶液中における親水性高分子の濃度(a1重量%)とフッ素樹脂系高分子の濃度(b1重量%)とから、(a1/b1)×100 の式により算出することができる。
分離膜に親水性を付与するためには、三次元網目構造層中における、親水性高分子量のフッ素樹脂系高分子量に対する比(a/b)は、一般的に、上記比(a/b)として、2〜75重量%の範囲を採用することができ、分離膜の分離特性、透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐汚れ性の各性能が要求される条件を満足するように、任意に調整し最適化すればよい。ここで、親水性高分子の含有量が少な過ぎると、本発明による酸化加工処理を施しても、分離膜に十分な耐汚れ性を付与することが困難である。一方、親水性高分子の含有量が多過ぎると、化学的強度や物理的強度が低下し易く、透水性能が低下し易い。
また、三次元網目構造層中にマクロボイド(長径が5μm以上)が存在しない分離膜を製造するためには、三次元網目構造層をフッ素樹脂系高分子とセルロースエステルとで構成し、かつ、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比を20〜75重量%とすることが有効である。また、三次元網目構造層を形成させるための高分子溶液中における高分子濃度を14〜30重量%とすることが好ましい。
即ち、フッ素樹脂系高分子溶液における高分子濃度は、14重量%以上30重量%以下、好ましくは16重量%以上25重量%以下の範囲である。14重量%未満では、三次元網目構造層の物理的強度が低下し、三次元網目構造層表面の細孔径が大きくなり易い。一方、30重量%を超えると透水性能が低下するため好ましくない。ここで、フッ素樹脂系高分子溶液における高分子濃度は、該溶液中に含まれる各高分子成分の濃度の和であり、セルロースエステルの濃度とフッ素樹脂系高分子濃度の和で算出される。
ここで、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比は、得られるフッ素樹脂系高分子溶液の粘度および凝集性が所定水準となるように設計し、マクロボイドの生成を防止する。セルロースエステルが少ないほど、粘度が低く、凝集性が高くなり、得られる三次元網目構造層表面の細孔径が大きくなり、マクロボイドが生成し易くなる。逆に、セルロースエステルが多いほど、相対的にフッ素樹脂系高分子の割合が低下するため、得られる三次元網目構造の化学的強度と物理的強度が低下する。これら観点から、マクロボイドが実質的に存在しない三次元網目構造層を形成させるためには、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比は20重量%以上75重量%以下とする。なかでも、20重量%以上65重量%以下、さらには20重量%以上50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは25重量%以上35重量%以下の範囲である。
なお、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比は、次式により算出される値である。
セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比(%)
={(セルロースエステルの重量%濃度)/(フッ素樹脂系高分子の重量%濃度)}×100
また、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比が20重量%以上50重量%未満の場合には、マクロボイド形成を回避するために、凝固浴として、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固液を用いる。
本発明で用いる分離膜の球状構造層中に含まれる略球状形固形分の平均直径は0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上4μm以下である。ここで、球状構造層中の略球状固形部の平均直径が大きくなるほど、空隙率が高くなり、透水性が増大するが、物理的強度が低下する。一方、その平均直径が小さくなるほど、空隙率が低くなり、物理的強度が増大するが、透水性が低下する。これら観点から、分離膜の実用的特性を備えるためには、上記した範囲が好ましい。この球状構造層中の略球状固形部の平均直径は、高分子分離膜の横断面を走査型電子顕微鏡を用いて10000倍で写真撮影し、任意に選択した略球状固形部の10個以上、好ましくは20個以上の直径を測定し、数平均することにより求めることができる。この略球状固形部の直径として、画像処理装置等を用いて、略球状固形部面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、この等価円の直径を用いてもよい。
三次元網目構造層が分離対象側の最表層として配置された分離膜の場合、最表層の表面をこの層の真上から顕微鏡観察すると、細孔が観察される。三次元網目構造層が分離機能を担うため、三次元網目構造層の表面の細孔の平均孔径は、分離膜の用途によって最適値に制御される。この三次元網目構造の表面の平均孔径の好ましい値は、分離対象物質によって異なる。
例えば、高い阻止性能と高い透水性能を両立するためには、その平均孔径は0.005μm以上1μm以下が好ましい。とりわけ水処理用途においては、その平均孔径は0.01μm以上0.5μm以下が好ましい。表面における平均孔径がこの範囲内であると、水中の汚れ物質による細孔の詰まりが生じにくく、透水性能の低下が起こりにくいので、高分子分離膜をより長期間連続して使用することができる。また、細孔が詰まった場合でも、いわゆる逆流洗浄や空気洗浄によって膜表面の汚れを除去することができる。ここで、汚れ物質とは、水源によって異なるが、例えば、河川や湖沼などでは、土や泥に由来する無機物やコロイド、微生物やその死骸、植物に由来するフミン質などを挙げることができる。逆流洗浄とは、通常のろ過とは逆の方向に透過水などを通す操作により膜表面を洗浄することである。空気洗浄は特に中空糸膜の洗浄に用いられ、空気を送ることによって中空糸膜を揺らし膜表面に堆積した汚れ物質を振り落として除去する洗浄操作である。
三次元網目構造層の表面における細孔の平均孔径は、三次元網目構造の表面を、走査型電子顕微鏡を用いて100,000倍で写真撮影し、任意の細孔の10個以上、好ましくは20個以上について、その直径を測定し、数平均することにより求める。細孔が円状でない場合には、画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を細孔の直径とすればよい。
本発明により酸化加工処理を行う高分子分離膜は、中空糸膜形状、平膜形状のいずれの形態でもよいが、中空糸膜形状の場合は、膜モジュール内へ分離膜を効率良く充填することが可能であって、単位体積当たりの有効膜面積を増大させることができる利点があり、中空糸膜形状の方が実用上好ましい。
本発明法により、高分子分離膜を酸化剤に接触させて酸化加工処理を行う方法としては、製膜した分離膜を容器内に入った酸化剤溶液中に一定時間浸漬する方法や、分離膜を原液流入口や透過液流出口などを備えたケーシング内に収容して膜モジュールを作製した後に、ポンプやサイフォン等を利用して膜モジュール内に酸化剤溶液を供給し充填させ、膜モジュール内で分離膜を酸化剤溶液に浸漬させる方法が挙げられる。酸化剤溶液に浸漬させた後には、膜面に付着した酸化剤を除去させるが、後者の方法の場合には、酸化剤溶液浸漬の後に純水等をろ過することで、酸化処理後の膜面や膜細孔内に保持された酸化剤を容易に短時間で洗い流せることができ、好ましい。
本発明の高分子分離膜をろ過用分離膜として用いたろ過膜モジュールとしては、分離膜が中空糸状である場合には、中空糸膜を複数本束ねて円筒状の容器内に納め、中空糸膜の両端または片端をポリウレタンやエポキシ樹脂等の樹脂で固定したモジュール構造とし、中空糸膜の膜面を通過した透過液を回収するようにしたタイプや、また、平板状に中空糸膜の両端を固定して、中空糸膜の膜面を通過した透過液を回収するようにしたタイプが例示される。
また、高分子分離膜が平膜である場合には、集液管の周りに平膜を封筒状に折り畳みながらスパイラル状に巻き回して円筒状の容器内に収納し、膜面を通過した透過液を回収するモジュール構造や、集液板の両面に平膜を配置し、平膜の周囲を板に水密に固定し、膜面を透過した透過液を回収するモジュール構造が例示される。
本発明により酸化加工処理することにより分離膜の透水性能を高めることもでき、この酸化加工処理して得られるフッ素樹脂系高分子分離膜は、水ろ過用途に応じて実用上要求される透水性能、強伸度性能を満足することができる。例えば、透水性能として、50kPa、25℃における純水透過性能が0.10m/m・hr以上、特に0.20m/m・hr以上という好ましい水準を満足させることができる。高分子分離膜の純水透過性能が低過ぎる場合には、透水性能が低すぎて実用的使用に適さない。本発明による酸化剤加工処理は、処理前の高分子分離膜の特性に応じて、酸化剤の種類、濃度、浸漬時間を適宜設定することにより、透水性能を向上させればよい。
一般に、透水性能が向上すると、強力や破断伸度が低下する傾向にある。酸化加工処理後の高分子分離膜の強力や破断伸度は、上述したハンドリング性と水ろ過時における物理的耐久性が達成される範囲内の水準であればよく、透水性能や運転コストなどとのバランスによって決定すればよい。酸化加工処理後の強力は5N以上が好ましく、より好ましくは6N以上である。酸化加工処理後の破断伸度は50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上である。強力5N未満、または破断伸度50%未満の場合には、高分子分離膜を扱う際のハンドリング性が悪くなり、ろ過時における膜の破断、糸切れおよび圧壊が生じ易くなるので好ましくない。三次元網目構造層より球状構造層が強力、破断伸度を支配しているので、球状構造層の強力、破断伸度が低下しないよう、酸化剤の種類、濃度、浸漬時間を適宜設定する。
これら純水透過性能、不純物阻止性能、強力、及び破断伸度の条件を満たすことで、水処理、荷電膜、燃料電池、血液浄化用膜等の用途に十分な強度、透水性能を有する高分子分離膜とすることができる。
中空糸状の分離膜の純水透過性能は、中空糸膜4本からなる長さ200mmのミニチュア膜モジュールを作製してろ過試験することにより測定する。また、平膜状の分離膜の場合は、分離膜を直径43mmの円形に切り出し、円筒型のろ過ホルダー(アドバンテック社製攪拌型ウルトラホルダーUHP−43K)にセットしたろ過装置によってろ過試験することにより測定する。
それらミニチュア膜モジュール若しくはろ過装置により、温度25℃、ろ過差圧16kPaの条件下で、外圧全ろ過による膜ろ過を10分間行い、透過水量(m)を求める。その透過水量(m3)を単位時間(hr)および有効膜面積(m)あたりの値に換算し、さらに(50/16)倍することにより、圧力50kPaにおける透過水量値(m/m・hr)に換算し、純水透過性能の値とする。
また、分離膜の純水透過性能は、ポンプ等で加圧や吸引して得た値を換算して求めることもできる。測定時の水温はろ過対象の液体(原水)の粘性により適宜変更してもよい。
分離膜の破断強度と破断伸度の測定方法は、特に限定されるものではないが、例えば、引っ張り試験機を用い、測定長さ50mmの試料を、引っ張り速度50mm/分で引っ張り試験する方法により、破断時の強力と伸度を測定し、試料を変えて5回以上行い、強力の平均値と破断伸度の平均値を求めることで測定すればよい。
分離膜をろ過に用いる膜分離装置は、水処理分野であれば浄水処理、上水処理、廃水処理、工業用水製造などで利用でき、被処理水としては、河川水、湖沼水、地下水、海水、下水、廃水などが用いられる。
なお、本発明において酸化加工処理する対象の分離膜を得るための製膜方法としては、例えば、球状構造からなるフッ素樹脂系層の上に、所定の親水性高分子を含有させたフッ素樹脂系高分子溶液からなる三次元網目構造層を形成させる方法、又は、2種類以上のフッ素樹脂系高分子溶液(そのうちの1種類は所定の親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液)を口金から同時に吐出し、三次元網目構造層と球状構造層とを同時に形成させる方法が挙げられる。
球状構造からなるフッ素樹脂系層の上に、所定の親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液からなる三次元網目構造層を形成させる方法について、以下に説明する。
この製造方法の場合、まず球状構造からなるフッ素樹脂系膜(層)を製造する。フッ素樹脂系高分子を20重量%以上60重量%以下程度の比較的高濃度で、該高分子の貧溶媒または良溶媒に比較的高温で溶解することにより高分子溶液を調製し、該高分子溶液を中空糸膜状または平膜状となるように口金から吐出し、冷却浴中で冷却固化させることにより相分離せしめて、球状構造を形成させる。ここで、貧溶媒とは、上記高分子を、60℃以下の低温では5重量%以上溶解させることができないが、60℃以上かつ高分子の融点以下(例えば、高分子がフッ化ビニリデンホモポリマー単独で構成される場合の融点は178℃程度)の高温領域で5重量%以上溶解させることができる溶媒のことである。これに対し、60℃以下の低温領域でも高分子を5重量%以上溶解させることが可能な溶媒は良溶媒であり、また、高分子の融点または溶媒の沸点の高温にしても、高分子を溶解も膨潤もさせない溶媒は非溶媒である、と定義する。
フッ素樹脂系高分子の場合の貧溶媒としては、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、メチルイソアミルケトン、フタル酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジアセトンアルコール、グリセロールトリアセテート等の中鎖長のアルキルケトン、エステル、グリコールエステルおよび有機カーボネート等およびそれらの混合溶媒が挙げられる。非溶媒と貧溶媒の混合溶媒であっても、上記貧溶媒の定義を満足するものは、貧溶媒として扱う。また、良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアキド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等およびそれらの混合溶媒が挙げられる。さらに、非溶媒としては、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o−ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール、塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
上記の方法では、まずフッ素樹脂系高分子を20重量%以上60重量%以下程度の比較的高濃度で、該高分子の貧溶媒または良溶媒に、80〜170℃程度の比較的高温で溶解して高分子溶液を調製することが好ましい。この高分子溶液における濃度が高いほど高い強度、伸度を有する高分子分離膜が得られるが、高過ぎると高分子分離膜の空孔率が小さくなり透過性能が低下する。また、高分子溶液の取り扱い易さや製膜性の観点から、溶液粘度が適正な範囲内にあることが好ましい。従って、高分子溶液の濃度は30重量%以上50重量%以下の範囲とすることがより好ましい。
この高分子溶液を中空糸や平膜のような所定の形状にして冷却固化するためには、高分子溶液を口金から冷却浴中に吐出する方法が好ましい。この際、冷却浴に用いる冷却液体としては、温度が5〜50℃であって、濃度が60〜100重量%で貧溶媒もしくは良溶媒を含有する液体を用いることが好ましい。冷却液体中には、貧溶媒、良溶媒以外に非溶媒を、球状構造生成を阻害しない範囲内で含有させてもよい。なお、冷却液体に非溶媒を主成分とする液体を用いると、冷却固化による相分離よりも非溶媒滲入による相分離が優先して生じるので、球状構造が得られ難くなる。また、フッ素樹脂系高分子を比較的高濃度で、該高分子の貧溶媒もしくは良溶媒に比較的高温度で溶解した溶液を、急冷して固化する方法で高分子分離膜を製造する場合、条件によっては、分離膜の構造が球状構造でなく、緻密な網目構造となる場合もあるので、球状構造を形成させるためには、高分子溶液の濃度および温度、用いる溶媒の組成、冷却液体の組成および温度の組み合わせを適正に制御する。
ここでの高分子分離膜の形状を中空糸膜とする場合には、調製した高分子溶液を、二重管式口金の外側の管から吐出するとともに、中空部形成用流体を二重管式口金の内側の管から吐出し、冷却浴中で冷却固化して、中空糸膜とすればよい。この際、中空部形成用流体には、通常気体もしくは液体を用いることができるが、本発明においては、冷却液体と同様の濃度が60〜100重量%の貧溶媒もしくは良溶媒を含有する液体を用いることが好ましい。なお、中空部形成用流体は冷却して供給してもよいが、冷却浴の冷却力のみで中空糸膜を固化することが十分可能な場合は、中空部形成流体は冷却せずに供給してもよい。
また、高分子分離膜の形状を平膜とする場合には、調製した高分子溶液を、スリット口金から吐出し、冷却浴中で固化し平膜とする。
以上のようにして得られた球状構造からなるフッ素樹脂系膜(層)の上に、所定の親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液からなる三次元網目構造を形成(積層)させる。その積層方法は、特に限定されないが、以下の方法が好ましい。すなわち、球状構造からなるフッ素樹脂系膜(層)の上に、所定の親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬することにより三次元網目構造を有する層を積層させる方法である。
ここで、三次元網目構造を形成させるための、所定の親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液は、前記した特定の親水性高分子、フッ素樹脂系高分子および溶媒で構成されるものであり、その溶媒としてはフッ素樹脂系高分子の良溶媒を用いることが好ましい。フッ素樹脂系高分子の良溶媒としては、前記した良溶媒を用いることができる。親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液における高分子濃度は、通常5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜25重量%の範囲である。5重量%未満では、三次元網目構造層の物理的強度が低下し易く、30重量%を超えると透過性能が低下する傾向にある。
また、この親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液は、フッ素樹脂系高分子や親水性高分子の種類・濃度、溶媒の種類、後述する添加剤の種類・濃度によって、最適の溶解温度が異なってくる。このフッ素樹脂系高分子溶液において再現性良く安定な溶液調製するためには、溶媒の沸点以下の温度で攪拌しながら数時間加熱して、透明な溶液となるようにすることが好ましい。さらに、このフッ素樹脂系高分子溶液を塗布する際の温度も、優れた特性の高分子分離膜を製造するために重要である。例えば、高分子分離膜を安定して製造するためには、フッ素樹脂系高分子溶液の安定性を損なわないように温度を制御し、かつ系外からの非溶媒の侵入を防止することが好ましい。また、塗布時のフッ素樹脂系高分子溶液の温度が高すぎると、球状構造層の表面部分のフッ素樹脂系高分子を溶解して、三次元網目構造層と球状構造層の界面に緻密な層が形成され易くなり、得られる分離膜の透水性能が低下する。逆に、塗布時の溶液温度が低すぎると、塗布中に溶液の一部分がゲル化し、欠点を多く含む分離膜が形成され、分離性能が低下する。このため、塗布時の溶液温度は、溶液の組成や、目的とする分離膜性能等によって最適温度とする必要がある。
中空糸状の高分子分離膜を製造する場合において、球状構造からなるフッ素樹脂系中空糸膜(層)の外表面上に、所定の親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液を塗布する方法としては、中空糸膜を高分子溶液中に浸漬する方法や、中空糸膜の表面に高分子溶液を滴下する方法が好ましい。また、中空糸膜の内表面側に、所定の親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液を塗布する方法としては、高分子溶液を中空糸膜内部に注入する方法などが好ましい。この際に高分子溶液の塗布量を制御する方法としては、塗布への高分子溶液の供給量自体を制御する方法や、高分子分離膜を高分子溶液に浸漬し、若しくは高分子分離膜に高分子溶液を塗布した後に、付着した高分子溶液の一部を掻き取ったり、エアナイフを用いて吹き飛ばすことにより塗布量調整する方法を用いることができる。
また、塗布後に浸漬する凝固浴には、フッ素樹脂系高分子の非溶媒を含むことが好ましい。この非溶媒としては、前記したような非溶媒が好ましく用いられる。塗布された樹脂溶液を非溶媒に接触させることにより、非溶媒誘起相分離が生じ、三次元網目構造層が形成される。所定の親水性高分子を含有させたフッ素樹脂系高分子溶液を塗布した後に凝固浴に浸漬させる本発明の場合、凝固浴として、極性の高い非溶媒、例えば水を用いることが好ましい。
三次元網目構造層の表面における細孔の平均孔径を所望範囲内(例えば1nm以上1μm以下)に制御するための方法は、フッ素樹脂系高分子溶液中に含有させる親水性高分子の種類や濃度によって異なるが、例えば、以下の方法を採用することができる。
親水性高分子を含有するフッ素樹脂系高分子溶液に、孔径を制御するための添加剤を配合すると、三次元網目構造を形成する際に、または、三次元網目構造を形成した後に、その添加剤が溶出され、表面における細孔の平均孔径を制御することができる。
この孔径制御用の添加剤としては、以下の有機化合物や無機化合物が挙げられる。有機化合物としては、フッ素樹脂系高分子溶液に用いる溶媒および非溶媒誘起相分離を起こす非溶媒の両方に溶解するものが好ましく用いられ、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、デキストランなどの水溶性ポリマー、界面活性剤、グリセリン、糖類などを挙げることができる。無機化合物としては、フッ素樹脂系高分子溶液に用いる溶媒および非溶媒誘起相分離を起こす非溶媒の両方に溶解するものが好ましく、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。また、この添加剤を用いずに、凝固浴における非溶媒の種類、濃度および温度の調整によって相分離速度を制御し、表面の平均孔径を制御することも可能である。一般的には、相分離速度が速いと表面の平均孔径が小さくなり、相分離速度が遅いと表面の平均孔径が大きくなる。また、その高分子溶液に非溶媒を添加することにより、相分離速度を制御することもできる。 上記した三次元網目構造を形成させる方法において、三次元網目構造層形成用の高分子溶液がフッ素樹脂系高分子とセルロースエステルとを含み、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの割合が20重量%以上50重量%未満である場合には、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴を用いることが好ましい。この場合、凝固浴中に、フッ素樹脂系高分子の良溶媒成分を10重量%以上60重量%以下、好ましくは20重量%以上50重量%以下含有することが好ましい。凝固浴中に含まれる良溶媒成分を上記範囲に調整することにより、塗布されたセルロースエステル・フッ素樹脂系高分子溶液へ非溶媒が侵入する速度が低下し、三次元網目構造層中のマクロボイド(長径5μm以上)の形成を抑止することができる。
また、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの割合が50重量%以上75重量%以下である場合には、フッ素樹脂系高分子の良溶媒成分を含有しない凝固浴、例えば、非溶媒のみからなる凝固浴中を用いることができ、このような凝固浴を用いても、マクロボイドの存在しない三次元網目構造層を形成することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の分離膜における膜構造を表す数値や膜性能は、以下の方法で測定した。
[分離膜の球状構造層中における略球状固形部の平均直径]
高分子分離膜の横断面を、走査型電子顕微鏡(S−800)((株)日立製作所製)を用いて10,000倍で写真撮影し、この写真から、球状構造層内における、30個の任意の略球状固形部の直径を測定し、数平均して平均直径を求める。
[分離膜の三次元網目構造層の表面における細孔の平均直径]
高分子分離膜の表面部分を上記の走査型電子顕微鏡を用いて100,000倍で写真撮影し、この写真から、三次元網目構造の表面における、30個の任意の細孔の孔径の直径を測定し、数平均して平均直径を求める。
[分離膜の三次元網目構造層の平均厚みや球状構造層の平均厚み]
高分子分離膜の横断面を上記の走査型電子顕微鏡を用いて100倍および1000倍で写真撮影し、その写真から次の方法で各層の厚みを算出する。
外層に三次元網目構造層、内層に球状構造が配された層構造の分離膜の場合、三次元網目構造層の平均厚みを次の方法で求める。
1000倍の顕微鏡写真において、外層表面の任意の1点から内層に向かって外層表面接線に対して垂直な方向に進み、初めて球状構造が観察される点までの距離を測定する。この距離が、三次元網目構造層の厚みである。この操作を任意の30カ所で行い、数平均することにより、三次元網目構造層の平均厚みを算出する。
同様にして、球状構造層の平均厚みも算出することができる。但し、以下の実施例における分離膜は球状構造層が厚いので、1000倍の顕微鏡写真では、高分子分離膜の外層表面から反対側の内装表面までが1枚の写真画面内に収まらないので、数枚の写真を貼り合わせて測定することになる。そこで、以下の実施例では、100倍で撮影した顕微鏡写真を用い、高分子分離膜全体の厚みとして、高分子分離膜の横断面において外層表面から反対側の内層表面までの距離を求める。この操作を任意の30カ所で行い、数平均して高分子分離膜全体の平均厚みを求める。そして、高分子分離膜全体の平均厚みから三次元網目構造層の平均厚みを引き、球状構造層の厚みとする。
[分離膜の純水透過性能]
高分子分離膜が中空糸膜の場合には、中空糸膜4本からなる長さ200mmのミニチュア膜モジュールを作製する。また、高分子分離膜が平膜の場合には、直径43mmの円形に切り出し、円筒型のろ過ホルダーにセットし、ろ過装置とした。逆浸透膜でろ過した純水を原水とし、温度25℃、ろ過差圧16kPaの条件下で、外圧全ろ過による膜ろ過を10分間行い、透過水量(m)を求める。次に、その透過水量(m)を単位時間(hr)および有効膜面積(m)あたりの値に換算し、さらに(50/16)倍することにより、圧力50kPaにおける透過水量値(m/m・hr)に換算し、純水透過性能とした。
[分離膜の破断強度および破断伸度]
引っ張り試験機(TENSILON、RTM−100)((株)東洋ボールドウィン製)を用い、測定長さ50mmの試料を、引っ張り速度50mm/分で引張り試験し、破断時の強力と伸度を求める。この操作を試料を変えて10回実施し、数平均することにより強力の平均値と破断伸度の平均値を求める。なお、平膜の場合の試料幅は5mmとする。
[分離膜のエアースクラビング耐久性評価]
分離膜の物理的耐久性を評価するため、次のエアースクラビング耐久性試験を行った。
中空糸膜1500本を束ね、直径10cm、長さ100cmの円筒状透明容器内に詰めて膜モジュールを作製する。次に、膜モジュール内を飲料水で満たし、容器下部より100L/分の空気を連続的に供給して膜面をエアースクラビングする。このエアースクラビングを122日間継続して行い、122日間における糸切れの有無を調べる。なお、この122日間は、実運転において30分に1回の頻度でエアースクラビングを1分間実施する運転方法を採用した場合の、10年間分のエアースクラビングに相当する。
[分離膜のろ過運転性評価]
エアースクラビング耐久性評価で糸切れを生じなかった中空糸膜について、次の運転性評価を行った。
直径3cm、長さ50cm、有効膜面積が0.3mとなるように、通常の方法で中空糸膜モジュールを作製した。この中空糸膜モジュールを用いて、琵琶湖水を原水として、定流量外圧全ろ過を行った。ろ過運転は、原水側の加圧ポンプで原水を加圧供給することにより行った。ろ過線速度は、3m/dとした。30分毎に、10ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液による逆流洗浄を30秒間行ない、続いて空気によるエアースクラビングを1分間行い、膜面を洗浄した。このろ過運転を4月から6月までの3か月間継続して実施した。ろ過運転開始時の物理洗浄直後のろ過差圧(A)とろ過運転終了時の該ろ過差圧(B)を計測した。ろ過運転開始時のろ過差圧(A)が低いほど、低エネルギーで運転開始できることを意味する。また、ろ過差圧上昇速度を、(B−A)/運転日数 の式により算出した。ろ過差圧上昇速度が低いほど安定に運転できる、すなわち、運転性が優れることを意味する。よって、ろ過運転開始時のろ過差圧(A)とろ過差圧上昇速度の両方が低い膜ほど、低エネルギーで安定に運転できることを意味する。
[実施例1]
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ−ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で170℃の温度で溶解した。この高分子溶液をγ−ブチロラクトンを中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを12重量%、セルロースアセテート(三酢酸セルロース、イーストマンケミカル社製のCA435−75S)を7.2重量%、N−メチル−2−ピロリドンを80.8重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を、球状構造からなる中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水100%からなる凝固浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.8μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径0.02μm、三次元網目構造層の平均厚み35μm、球状構造層の平均厚み244μm、純水透過性能0.3m/m・hr、強力7.0N、破断伸度55%であった。
次に、得られた中空糸膜を、濃度3000mg/lの次亜塩素酸ナトリウムの水溶液中に300hr浸漬した後、純水で洗浄して次亜塩素酸ナトリウムを洗い流した。
このようにして酸化加工処理した後の中空糸膜は、外径1337μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.8μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径0.04μm、三次元網目構造層の平均厚み34μm、球状構造層の平均厚み244μm、純水透過性能0.4m/m・hr、強力6.9N、破断伸度53%であった。
また、酸化加工処理して得られた中空糸膜についてエアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
運転性評価を実施した結果、ろ過運転開始時はろ過差圧25kPaであり、ろ過運転終了時はろ過差圧30kPaと、ろ過運転開始時のろ過差圧が低かった。また、ろ過差圧上昇速度は0.056kPa/日と低く、安定に運転できることが分かった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性に優れ、運転性も優れるため長期間安定に運転できることが分かった。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテート(三酢酸セルロース、イーストマンケミカル社製のCA435−75S)を1重量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成工業株式会社製、商品名イオネットT−20C、以下T−20Cと略す)を5重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を、球状構造からなる中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。 得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径3.0μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径0.04μm、三次元網目構造層の平均厚み34μm、球状構造層の平均厚み246μm、純水透過性能0.6m/m・hr、強力7.6N、破断伸度88%であった。
次に、得られた中空糸膜を、濃度3000mg/lの次亜塩素酸ナトリウムの水溶液中に300hr浸漬した後、純水で洗浄して次亜塩素酸ナトリウムを洗い流した。
酸化加工処理して得られた中空糸膜について評価したところ、外径1338μm、内径780μm、球状構造の平均直径3.0μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径0.06μm、三次元網目構造層の平均厚み33μm、球状構造層の平均厚み246μm、純水透過性能0.7m/m・hr、強力7.5N、破断伸度87%であった。
また、酸化加工処理して得られた中空糸膜についてエアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
運転性評価を実施した結果、ろ過運転開始時はろ過差圧22kPaであり、ろ過運転終了時はろ過差圧28kPaと、ろ過運転開始時のろ過差圧が低かった。また、ろ過差圧上昇速度は0.066kPa/日と低く、安定に運転できることが分かった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性に優れ、運転性も優れるため長期間安定に運転できることが分かった。
[実施例3]
実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを13重量%、セルロースアセテート(イーストマンケミカル社製、CA435−75S)を4重量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%、T−20Cを3重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を、球状構造からなる中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.7μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径0.01μm、三次元網目構造層の平均厚み35μm、球状構造層の平均厚み245μm、純水透過性能0.11m/m・hr、強力8.1N、破断伸度86%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。
次に、得られた中空糸膜を、濃度3000mg/lの次亜塩素酸ナトリウムの水溶液中に300hr浸漬した後、純水で洗浄して次亜塩素酸ナトリウムを洗い流した。
酸化加工処理して得られた中空糸膜について評価したところ、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.7μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径0.03μm、三次元網目構造層の平均厚み35μm、球状構造層の平均厚み245μm、純水透過性能0.14m/m・hr、強力7.9N、破断伸度85%であった。
また、酸化加工処理して得られた中空糸膜についてエアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
運転性評価を実施した結果、ろ過運転開始時はろ過差圧31kPaであり、ろ過運転終了時はろ過差圧35kPaと、ろ過運転開始時のろ過差圧が低かった。また、ろ過差圧上昇速度は0.044kPa/日と低く、安定に運転できることが分かった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性に優れ、運転性も優れるため長期間安定に運転できることが分かった。
[比較例1]
実施例1において次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸漬する前の中空糸膜を分離膜として用いた。
この浸漬前の中空糸膜についてエアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
運転性評価を実施した結果、ろ過運転開始時はろ過差圧31kPaであり、高かった。また、4月28日にろ過差圧150kPaに達したため、ろ過差圧上昇速度は4.25kPaと高く、安定運転性が不十分であった。
本発明法により酸化加工処理して得られる高分子分離膜は、飲料水製造、浄水処理、廃水処理などの水処理分野、医薬品製造分野、食品工業分野、電池用セパレーター、荷電膜、燃料電池、血液浄化用多孔質膜等におけるろ過処理用分離膜として利用することができる。
酸化処理前の中空糸膜の横断面を示す電子顕微鏡写真である。 酸化処理前の中空糸膜の外表面を示す電子顕微鏡写真である。 酸化処理後の中空糸膜の横断面を示す電子顕微鏡写真である。 酸化処理後の中空糸膜の外表面を示す電子顕微鏡写真である。

Claims (8)

  1. 三次元網目構造層と球状構造層とを有するフッ素樹脂系高分子分離膜であって、三次元網目構造層が、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体を含有させたフッ素樹脂系高分子組成物からなるものを、酸化剤に接触処理することにより、三次元網目構造の表層中の親水性高分子の一部を脱離ないし変性させることを特徴とするフッ素樹脂系高分子分離膜の酸化加工処理方法。
  2. 酸化剤が、次亜塩素酸(塩)、二酸化塩素、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸(塩)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂系高分子分離膜の酸化加工処理方法。
  3. 酸化処理前の高分子分離膜において、三次元網目構造層を構成するフッ素樹脂系高分子組成物が、セルロースエステル及び/又は脂肪酸ビニルエステル系重合体を、フッ素樹脂系高分子の量に対し2〜75重量%の量で含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフッ素樹脂系高分子分離膜の酸化加工処理方法。
  4. 高分子分離膜における球状構造層が、親水性高分子を実質的に含有せず、フッ素樹脂系高分子からなる球状構造層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子分離膜の酸化加工処理方法。
  5. 高分子分離膜の最表層に三次元網目構造層が存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子分離膜の酸化加工処理方法。
  6. 酸化処理後の高分子分離膜の三次元網目構造層の表面細孔の平均孔径が0.005μm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子分離膜の酸化処理方法。
  7. 酸化処理後の高分子分離膜の50kPa、25℃における純水透過性能が0.10m/m・hr以上、強力5N以上、かつ、破断伸度50%以上の中空糸膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高分子分離膜の酸化処理方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって酸化加工処理されたフッ素樹脂系高分子分離膜を、ろ過用分離膜として用いたことを特徴とするろ過膜モジュール。
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