JP2008034701A - 有機発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】CIE色度座標y値が0.12以下の適正範囲であり、リーク、黒点の発生が少なく、発光効率の良い有機発光素子を提供する。
【解決手段】正孔輸送層として炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物で形成された層を用いた構成とした。
【選択図】図1
【解決手段】正孔輸送層として炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物で形成された層を用いた構成とした。
【選択図】図1
Description
本発明は、反射メタル、透明電極(陽極)、正孔輸送層、有機化合物からなる発光層、透明電極(陰極)を少なくとも順に有する、取り出し光のCIE色度座標y値が0.12以下の青色有機発光素子に関する。
図1に示すトップエミッション型で反射メタル側が陽極の有機発光素子では、発光層3の発光界面から反射メタル0までの光学距離が発光波長λの1/4の奇数倍のときに干渉効果により発光効率が極大をとる事が知られている(特許文献1、4頁43−49行)。
また、蒸着する有機膜の膜厚を厚くする事により電気的なリークを防止する事も知られている(特許文献1、5頁18−22行)。
つまり、従来から干渉効果による光取り出し効率の向上や、それを利用し膜厚を厚くしてリークを防止する事は知られていた。
しかし、発光界面から反射メタル0までの光学距離を発光効率の一次極大の膜厚付近で用いる場合が生産時の膜厚精度の観点からは有利であり、その場合に適した正孔輸送材料については全く知られていなかった。
特許文献1では、干渉効果により光取り出し効率を向上させることを目的として発光波長に合わせて発光界面から反射メタルまでの光学距離を設定する試みがなされている。
しかしながら、発光界面から反射メタルまでの光学距離を発光効率の一次極大の膜厚付近に設定する場合、膜厚が薄くなるためにリークが起こりやすい。
更に、発光界面から反射メタルまでの光学距離を発光効率の二次極大以上の膜厚付近に設定する場合、膜厚が厚くなるためリークは防止しやすいが、発光効率や取り出し光の色度を良くするためには膜厚精度が厳しくなる問題があった。
本発明は、発光界面から反射メタルまでの光学距離を膜厚精度が最も低くて済む発光効率の一次極大の膜厚付近に設定する場合でも、CIE色度座標y値が0.12以下で、リークが少なく、黒点の発生しにくい発光効率の高い有機発光素子の提供を目的とする。
すなわち、本発明の有機発光素子は、反射メタル、透明電極(陽極)、有機化合物からなる正孔輸送層、有機化合物からなる発光層、透明電極(陰極)を少なくとも順に有する有機発光素子において、前記透明電極(陽極)の膜厚が5nm以上40nm以下、前記正孔輸送層の膜厚が10nm以上45nm以下、前記発光層のPLスペクトルピーク波長が460nm以上490nm以下、取り出し光のCIE色度座標y値が0.12以下であって、前記正孔輸送層として炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物で形成された層を有することを特徴とする。
本発明の有機発光素子は、発光界面から反射メタルまでの光学距離を膜厚精度が最も低くて済む発光効率の一次極大の膜厚付近に設定する場合でも、CIE色度座標y値が0.12以下の適正範囲であり、リーク、黒点の発生が少なく、発光効率が高い。
本発明の様に反射メタルを有する有機発光素子は、発光波長をλとすると、発光面と反射メタルの光学距離がおおよそ1/4λの奇数倍のとき、いったん反射して取り出される光の位相と直接取り出される光の位相が一致し、光取り出し効率が最大となる。
反射メタルが一般的な金属である場合、位相シフトφの値はπに近い値となるが、πよりも外れる分に関しては、強め合いの極大に相当する光学膜厚を0.25λ×(2n−φ/π)で表される値に変換する必要がある(nは正の整数)。
つまり、より正確には、位相シフトを含めて光学膜厚は設定されるが、これ以降では位相シフトをπとして説明する。
青色素子では発光波長を475nmとすると、1/4λの奇数倍は、一倍で118.75nm、三倍で356.25nm、五倍で593.75nmとなる。
光学距離は膜厚と屈折率の積であるため、有機物のおおよその屈折率を1.8とすると、この光学距離に設定するための有機物の膜厚は65.97nm、197.92nm、329.86nmとなる。
実際の青色素子では取り出し光の色度を調整するために上記の膜厚よりも薄く設定し、色純度を高めることもある。
ここで、発光効率の一次極大付近に合わせるための有機膜の膜厚を66nmとし、有機膜の生産時の膜厚精度を±5%とすると、一次極大付近狙いでは62.7nm以上69.3nm以下が実際に生産時に成膜できる膜厚となる。
二次極大付近に合わせるための膜厚を198nmとすると、生産時の膜厚精度が±5%では188.1nm以上207.9nm以下が実際に生産時に成膜できる膜厚となり、ズレ量の絶対値は一次極大付近に合わせる場合に比べて3倍になってしまう。
このように膜厚の誤差精度は狙い膜厚に対して割合で決まるが、色度や発光効率への干渉効果は狙い膜厚からのズレ量の絶対値で決まるため、膜厚が厚ければ厚いほど生産時の膜厚精度を厳しくしないと色度、効率ずれが大きくなる。
そこで本発明者らは、生産時の膜厚精度が低くても済むように発光面と反射メタルの光学距離を発光効率の一次極大付近で使う事を前提に、リークが少なく、黒点の発生しにくい発光効率の高い有機発光素子を提供する事を検討した。
その結果、正孔輸送層として炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物で形成された層を用いた場合に屈折率が低い事から膜厚を比較的厚く出来、リーク、黒点の発生が少なく、発光効率の良い有機発光素子が作れる事を見出した。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
ここでは、図1を用い、トップエミッション型の発光素子で、反射電極が陽極の場合のみを説明するが、ボトムエミッション素子で反射電極が陽極の場合も本発明に含まれる。
図1は、本発明を代表するトップエミッション型で反射電極が陽極の有機発光素子の積層構造を表す模式図である。図中、0は基板上に形成された光を反射する反射メタル、1は透明電極(陽極)、2は正孔輸送層、3は発光層、4は電子輸送層、5は電子注入層、6は透明電極(陰極)をそれぞれ表している。
本発明の有機発光素子は、透明電極(陽極)1の膜厚が5nm以上40nm以下であり、正孔輸送層2の膜厚が10nm以上45nmである。そして、発光層3のPLスペクトルピーク波長が460nm以上490nm以下であり、取り出し光のCIE色度座標y値が0.12以下であり、青色発光素子として好適である。
ここで本発明での発光層3のPLスペクトルピーク波長は、有機発光素子としての発光波長ではなく、発光層から発せられる発光スペクトルのピークとして定義され、発光層材料に紫外光を照射したときの発光スペクトルから求められる。
発光層3のPLスペクトルピーク波長が460nmよりも小さい場合は発光効率の低下や寿命の低下が起き易く、490nmよりも大きい場合は取り出し光がCIE色度座標y値>0.12となり、水色になり易い。
また、本発明の発光素子は、赤、緑色発光素子と組み合わせて多色表示装置を形成する事を前提とするため、色再現範囲を広くするために、取り出し光のCIE色度座標y値が0.12以下である事を前提とする。
そして、反射メタル0側の電荷輸送層である正孔輸送層2を一定の材料を用いて形成したものである。
本発明では光を反射する反射メタル0を有するが、ここで光を反射するとは、反射率50%以上の金属電極を示す。用いられる金属としては、Cr、Al、Agもしくはその合金などが挙げられるが、反射率の高い金属ほど好ましい。
また、本発明では陽極として、反射メタル0に電荷を注入するための透明電極1を積層して用いる。
透明電極(陽極)1としては、ITO、IZOなどの透明導電材料が用いられ、透過率が50%以上であれば用いる事ができるが、透過率が高いほど好ましく、反射メタル0を酸化しない材料が選ばれる。
透明電極(陽極)1の膜厚は5nm以上40nm以下である。5nmよりも薄いと正孔注入がされにくい。40nmよりも厚いと反射メタル0から発光面の距離が厚くなるために青色発光素子では取り出し光のCIE色度座標y値>0.12になりやすい。
また、本発明では、透明電極(陽極)1上には有機化合物からなる正孔輸送層2が形成される。
正孔輸送層2の膜厚は10nm以上45nm以下の範囲で用いられる。10nmよりも薄いとリークが大きくなる。45nmより厚いと透明電極(陽極)1と同様に反射メタル0から発光面の距離が厚くなるために青色発光素子では取り出し光のCIE色度座標y値>0.12になりやすい。
この正孔輸送層2として、炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物で形成された層を少なくとも有する。
炭素数3以上のアルキル基としては、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかである事が好ましい。これらのアルキル基は立体障害が大きく、成膜したときに膜密度が低くなりやすく、屈折率が1.0以上1.7以下になりやすいため好ましい。
有機膜の屈折率は通常に知られている正孔輸送材料では1.8前後であるが、1.0以上1.7以下と低い膜を形成する事で、同じ光学膜厚を成膜するときにでも実膜厚を厚く出来、リークや黒点を防止できる事から好ましい。
屈折率<1.0には有機物を成膜した場合にはなりにくく、1.7より大きい場合は、従来知られている正孔輸送材料を用いて正孔輸送層を形成する場合に実膜厚が近くなり、膜厚が薄く好ましくない。
また、屈折率は、測定波長によって異なった値を示す場合があるが、この場合は発光層3のPLスペクトルピーク波長の屈折率で定義される。
更に、上記の炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物が、下記一般式[1]で表される4−アミノフルオレン化合物である事が好ましい。
Ar2は、置換あるいは無置換のアリール基、複素環基を表わす。
R1乃至R9は水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基またハロゲン基を表わし、それぞれ同じであっても異なっていても良く、互いに結合し環を形成しても良い。)
このようなモノアミン型の正孔輸送材料は炭素数が3以上のアルキル基を有する場合にかさ高い膜になりやすく好ましい。従来、有機発光素子に用いられることの多いジアミン型の正孔輸送材料は移動度が高いが、膜密度が高くなり、本発明では好ましくない。
さらに、上記一般式[1]において、Ar1が4位に結合する置換あるいは無置換のフルオレン基であり、Ar2が置換あるいは無置換のフルオレン基であることが更に好ましい。フルオレン基を有する事により、モノアミン型であってもガラス転移温度が大きく、膜の結晶化が抑止できる事から好ましい。
また、正孔輸送層2が炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物で形成された層と、異なる材料によって形成された層を2層以上積層した構成で用いても良い。かさ高い膜のみで正孔輸送層を形成すると、屈折率が低い事から膜厚を厚く出来、リークや黒点の発生を防ぐ効果があるが、基板からの正孔注入に関しては、別の層を設けて機能を分離する事ができる。
更に正孔輸送層2上には、有機化合物からなる発光層3が形成される。発光層3には従来から知られている材料を用いる事が出来るが、本発明では上述したように発光層のPLスペクトルピーク波長が460nm以上490nm以下のものが用いられる。
さらに発光層3上には、電子輸送層4、電子注入層5を形成してもよく、この場合も従来から知られている材料を用いる事ができる。
さらにその上には光を透過する透明電極(陰極)6が積層される。透明電極(陰極)6を形成する材料としてはITOやIZOなどの透明導電材料を用いてもよく、また、半透明の金属薄膜を用いても良い。
半透明の金属薄膜としては、反射メタル0と同様の金属が用いられ、吸収が50%以下の膜厚であれば、透過と反射の割合に関わらず用いる事ができる。
また、トップエミッション型の発光素子では光取り出し側の光学膜厚によっても干渉効果が起こる事が一般に知られている。
本発明では光取り出し電極の上が空洞である場合は、その界面が屈折率差を生じ、反射メタルからの光学膜厚を最適化することで光取り出し効率を高める事ができる。
また、光取り出し電極に半透明の金属電極を用いる場合は、有機層と金属電極の界面反射を生じ、反射電極もしくは反射層からの光学膜厚を最適化することで光取り出し効率を高める事ができる。
以下、本発明の実施例について説明する。実施例に用いた材料や素子構成は、特に好ましい例であるが、これに限定されるものではない。
<実施例1>
AgとIZOを積層した反射電極を用いた、図1に示すトップエミッション型構造の有機発光素子を作製した。
AgとIZOを積層した反射電極を用いた、図1に示すトップエミッション型構造の有機発光素子を作製した。
ガラス上にスパッタ法にて反射メタル0としてAgを200nmの厚さになるよう形成し、その上に透明電極(陽極)1としてIZOを20nmの厚さになるよう積層した。
続いて、真空蒸着装置(アルバック社製)に洗浄済みの電極までを形成した基板と材料を取り付け、1.333×10-4Pa(1×10-6Torr)まで排気した後、UV/オゾン洗浄を施した。
そして、基板を100℃に加熱し、透明電極(陽極)1上に下記構造式[2]で示される正孔輸送材料を20nmの膜厚となるように成膜して正孔輸送層2を形成した。
次に、基板が80℃に下がるまで冷却したのち、下記構造式[3]で示される青色発光ドーパント(5vol%)と下記構造式[4]で示される発光層ホスト材料の共蒸着膜を20nmの膜厚で成膜して発光層3を形成した。
次に、電子輸送層4として、下記構造式[5]で示される、フェナントロリン化合物を5nm成膜した。
次に、電子輸送層4の上に、上記構造式[5]で示されるフェナントロリン化合物と炭酸セシウムをセシウムの濃度が23wt%となるように蒸着レートを調整して共蒸着膜を40nmの厚さに成膜し、電子注入層5とした。
続いて、電子注入層5まで成膜した基板を、別のスパッタ装置(アルバック社製)へ移動させ、電子注入層5上にインジウム錫酸化物(ITO)をスパッタ法にて35nm成膜し、透明電極(陰極)6を得た。
その後、基板をグローブボックスに移し、窒素雰囲気中で乾燥剤を入れたガラスキャップにより封止した。
これとは別に発光層3を単層膜として石英ガラス上に形成し、紫外光照射により発光スペクトルを調べた。PLスペクトルのピーク波長は474.6nmであり、この波長での正孔輸送層2の屈折率は1.68であった。
上記手順により得られた有機発光素子の発光を調べたところ、発光効率と色度座標(x,y)はそれぞれ、2.94cd/A、(0.146,0.111)であった。黒点、リークの発生がなく効率の良い、色度が適正範囲の発光素子であった。
<実施例2>
透明電極(陽極)1上に正孔輸送層2として、従来知られているN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を10nm、次に上記構造式[2]に示される正孔輸送材料を10nm積層した以外は実施例1と同様に有機発光素子を作製した。
透明電極(陽極)1上に正孔輸送層2として、従来知られているN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を10nm、次に上記構造式[2]に示される正孔輸送材料を10nm積層した以外は実施例1と同様に有機発光素子を作製した。
上記手順により得られた有機発光素子の発光を調べたところ、発光効率と色度座標(x,y)はそれぞれ、3.12cd/A、(0.147,0.108)であった。黒点、リークの発生がなく効率の良い、色度が適正範囲の発光素子であった。
<比較例1>
透明電極(陽極)1上に正孔輸送層2てしてN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を20nm積層して形成した以外は実施例1と同様に有機発光素子を作製した。
透明電極(陽極)1上に正孔輸送層2てしてN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を20nm積層して形成した以外は実施例1と同様に有機発光素子を作製した。
上記手順により得られた有機発光素子の発光を調べたところ、発光効率と色度座標(x,y)はそれぞれ、2.90cd/A、(0.142,0.134)であった。色度が適正範囲から外れた発光素子であった。
0:反射メタル
1:透明電極(陽極)
2:正孔輸送層
3:発光層
4:電子輸送層
5:電子注入層
6:透明電極(陰極)
1:透明電極(陽極)
2:正孔輸送層
3:発光層
4:電子輸送層
5:電子注入層
6:透明電極(陰極)
Claims (6)
- 反射メタル、透明電極(陽極)、有機化合物からなる正孔輸送層、有機化合物からなる発光層、透明電極(陰極)を少なくとも順に有する有機発光素子において、
前記透明電極(陽極)の膜厚が5nm以上40nm以下、前記正孔輸送層の膜厚が10nm以上45nm以下、前記発光層のPLスペクトルピーク波長が460nm以上490nm以下、取り出し光のCIE色度座標y値が0.12以下であって、前記正孔輸送層として炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物で形成された層を有することを特徴とする有機発光素子。 - 前記炭素数3以上のアルキル基が、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
- 前記炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物で形成された層の屈折率が1.0以上1.7以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
- 前記Ar1が4位に結合する置換あるいは無置換のフルオレン基であり、Ar2が置換あるいは無置換のフルオレン基であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
- 前記正孔輸送層が前記炭素数3以上のアルキル基を二つ以上有する有機化合物で形成された層と、異なる材料によって形成された層を2層以上積層した構成であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の有機発光素子。
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