JP2008022704A - 感染症予防食品添加用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ウエルシュ菌、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌による感染症の発症を予防できる食品添加用組成物を提供すること。
【解決手段】乳清タンパクのような、乳由来のウエルシュ菌、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌およびアルカリゲネス属細菌に対する抗体のうち、少なくとも1つの抗体を含有する食品添加用組成物およびそれを添加して得られる感染症の発症を予防することのできる食品。食品添加用組成物には、アミノ酸類、糖類、有機酸およびその塩類、塩基性タンパクおよびそのペプチド類、植物由来の抗菌性抽出物、乳酸発酵産物、アルコール類、酵素類から選ばれる1種または2種以上の抗菌性成分を併用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、感染症予防食品添加用組成物およびそれを含有する食品に関し、さらに詳しくは、ウェルシュ菌汚染による食中毒や、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌による日和見感染症を予防する機能を持つ食品添加用組成物およびそれを添加して得られた食品に関する。
ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は、人、動物の腸管内、土壌、下水などに広く分布し、食品汚染の機会は多い。本菌は人の糞便中にも常在していて、耐熱性芽胞形成ウェルシュ菌の保菌率は年齢や生活環境によって異なるが、およそ6〜40%であるといわれている。
ウェルシュ菌は熱に強い芽胞を作るため、加熱調理して、他の細菌が死滅してもウェルシュ菌の耐熱性の芽胞は生き残る。また、食品の中心部は酸素の無い状態になり、嫌気性菌のウェルシュ菌にとって好ましい状態になり、加熱した食品の温度が発育に適した温度まで下がると発芽して急速に増殖を始める。
加熱調理後、すぐに喫食すれば、問題は起こりにくいが、特に、給食のように大量に調理した食品の場合、調理してから食事するまでの時間が長いため、増殖する危険性が高い。
食品の中で大量に増殖したウェルシュ菌(10の9乗以上)を食べ物ととも摂取すると、胃を通過し、小腸内で増殖して、菌が芽胞型に移行する際にエンテロトキシン(毒素)が産生され、その毒素の作用で下痢などの症状が起きる。
現在のウェルシュ菌食中毒予防の対策としては、ウェルシュ菌の増殖を抑えることであると考えられている。例えば、ウェルシュ菌は嫌気性菌で酸素のあるところでは増殖しにくいため、カレーやスープを調理するときは、菌を空気に触れさせるためによくかきまわす;低温では増殖しにくいため、調理済み食品を室温で放置せず、すばやく冷却し、冷蔵庫に保存する;等の対策がとられている。
しかし、増殖してしまったウェルシュ菌を除く手段はなく、事前に汚染が確認できれば廃棄処分することもできるが、汚染の有無を確認することは難しい。
そこで、ウェルシュ菌およびウェルシュ菌のエンテロトキシンを除くことができれば、この菌による食中毒を防ぐことができ、汚染の有無を確認する必要もなく、加工食品に対する信頼性を向上させることができる。
一方、感染症は近年大きく変貌したといわれている。古典的な伝染病から、宿主側の要因に左右される感染症へと移行しており、高齢者、各種基礎疾患を有する者、抵抗力が減少した者に起こる日和見感染症が、感染症の中心になってきている。
日和見感染症とは、普通の健康な人に対しては通常ほとんど病原性を示さない微生物(弱毒微生物・非病原微生物・平素無害菌などと呼ばれる)が原因で発症する感染症で、宿主の感染防御能がなんらかの原因によって低下したために惹起される感染症ということができる。
他の疾患にかかっているとき、臓器移植などで免疫抑制剤を使用しているとき、その他病後や高齢期等の要因によって免疫力が低下すると、普段であればその人が本来持っている免疫力によって、増殖が抑えられている病原性の低い微生物が増殖し、その結果として病気を引き起こす。すなわち、日和見感染症は宿主と病原菌の間で本来保たれていたバランスが、宿主側の抵抗力が低下することで発病するものである。日和見感染症を起こす病原菌の中には薬剤耐性を獲得しているものも含まれており、このような病原菌に対しては、いったん発病した場合にその治療に有効な薬剤が限定されることから、医学上の大きな問題になっている。
感染症に対しては抗生物質や抗血清(菌または毒素に対する抗体)が有効であるが、日和見感染症を起こすセラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌は多剤耐性株が多く、抗生物質の選択が難しい。また、抗血清も、日和見感染症のような重篤でない症状の原因となる菌に対するものは準備されていない。また、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌を抗原として牛や鶏に免疫し、これらの菌に対する抗体をその乳や鶏卵から採取することも行われていない。
特許文献1には、ウシの初乳由来の免疫グロブリンGが非有益腸内微生物の定着を阻止することが記載されている(請求項3等)。しかし、特許文献1には、非有益腸内微生物として大腸菌、クロストリジウム属細菌、バクテロイデス属細菌、ブドウ状球菌が記載されている(請求項4)が、クロストリジム属細菌としてウエルシュ菌は記載されていない。また、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌のいずれも記載されていない。
特開2000−159687号公報
本発明の目的は、感染症の中でも、特に、ウェルシュ菌による食中毒や、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌の少なくともいずれかの細菌による日和見感染症を予防できる食品添加用組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ウェルシュ菌に対する抗体(抗ウェルシュ菌抗体)、セラチア属細菌に対する抗体(抗セラチア菌抗体)、エンテロバクター属細菌に対する抗体(抗エンテロバクター菌抗体)、アルカリゲネス属細菌に対する抗体(抗アルカリゲネス菌抗体)が、乳清タンパク中に含まれていることを初めて発見し、これらを、実用的に感染症の予防に利用できることを見出した。また、他の抗菌性成分を組み合わせることにより、感染症のリスクをさらに軽減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
1)抗ウエルシュ菌抗体、抗セラチア菌抗体、抗エンテロバクター菌抗体、抗アルカリゲネス菌抗体のうち少なくとも一つの抗体を含有することを特徴とする感染症予防食品添加用組成物、
2)前記抗体が乳由来の抗体である前記1)に記載の感染症予防食品添加用組成物、
3)アミノ酸類、糖類、乳化剤類、有機酸およびその塩類、塩基性タンパク及びそのペプチド類、植物由来の抗菌性を有する抽出物、乳酸発酵産物、アルコール類、ビタミンB1の脂肪酸エステル類、キトサン、ペクチン分解物、細菌DNA、酵素類からなる群から選ばれる1種または2種以上の抗菌性成分をさらに含有する前記1)または2)に記載の感染症予防食品添加用組成物、
4)前記1)〜3)のいずれか1項に記載の食品添加用組成物を含有する感染症予防措置食品。
本発明の感染症予防食品添加用組成物は、食品に添加されると、ウェルシュ菌、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌の少なくともいずれかによる感染症を予防することができる。請求項3記載の発明によれば、ウエルシュ菌以外の細菌による食中毒との合併症等の感染症予防効果をより高めることができる。請求項4記載の発明によれば、本発明の組成物を添加された食品は感染症の発症を予防することができる。
本発明において、感染症としては、ウエルシュ菌による食中毒、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌による感染症を対象とする。食中毒の原因菌となるウェルシュ菌はグラム陽性の芽胞形成菌で、その産生する毒素からA〜E型の5型に分けられている。人に食中毒を起こすのは大部分がA型であるが、全てのA型菌が食中毒を起こすわけではなく、エンテロトキシンといわれる毒素産生菌に限られる。
この毒素産生菌の芽胞は、100度で1〜4時間の加熱に耐えるところから「耐熱性変異株」と呼ばれている。本菌は15〜50℃の範囲で増殖し、増殖至適温度は一般細菌より高く43〜47℃である。なお、この菌の細胞分裂速度は最も速いといわれるコレラ菌や腸炎ビブリオに近く、至適条件下ではわずか10〜12分間といわれている。
本菌は嫌気性菌であるが、嫌気度の要求はボツリヌス菌ほど厳しくはなく、一般食品中でも加熱調理後であれば、とくに嫌気的条件にしなくとも増殖できる。
次に、日和見感染症の原因細菌の1つであるセラチア(Serratia)属細菌はグラム陰性通性嫌気性の桿菌で、セラチア・マルセッセンス(S.marcescens)、セラチア・リケファシエンス(S.liquefaciens)、セラチア・ルビダエア(S.rubidaea)等が知られている。人に対しては弱毒性で、健常者の場合、セラチアが皮膚に付いたり、たとえ口から入っても、腸炎や肺炎、敗血症などの病気(感染症)になることはない。しかし、免疫不全状態などの際、腸管からの細菌の侵入を阻止しているバリアの機能が低下し、腸管内に常在している菌が血液中に侵入し、菌血症や敗血症を引き起こす場合や、腎盂炎などの際に腎臓から血液中に菌が入る場合、重症の肺炎や術創感染症などに伴って菌血症や敗血症になる場合がある。
エンテロバクター(Enterobacter)属細菌はグラム陰性通性嫌気性の桿菌で、エンテロバクター・アエロゲネス(E.aerogenes)、エンテロバクター・クロアカエ(E.cloacae)、エンテロバクター・アグロメランス(E.agglomerans)等が知られている。人、動物の腸内に常在するが、水、土壌、下水などにも広く分布し、病院環境でも広く存在する弱毒菌である。免疫不全状態で、敗血症、髄膜炎や複雑性尿路感染症、胆道感染症、腹膜炎などの起炎菌となる。また、消毒剤にも抵抗性があるため、院内感染の原因となり易い菌である。
アルカリゲネス(Alcaligenes)属細菌はグラム陰性好気性の桿菌、球桿菌または球菌で、アルカリゲネス・デニトリフィカンス(A.denitrificans)、アルカリゲネス・フェカーリス(A.faecalis)等が知られている。土壌、水回りおよび人腸管の常在菌で、敗血症、複雑性尿路感染症の起炎菌となる。
本発明において、抗ウェルシュ菌抗体、抗セラチア菌抗体、抗エンテロバクター菌抗体、抗アルカリゲネス菌抗体としては卵由来、血清由来等の抗体を用いることもできるが、好ましくは容易に入手できる乳由来の抗体を用いる。乳の起源及び形態には限定されない。例えば乳の起源として牛、山羊、羊、馬、らくだなどの哺乳動物の乳をあげることができる。好ましくは大量に市場にある牛乳由来の抗体を利用することが好ましい。さらに好ましくは、牛乳を原料とし遠心分離機やレンネットなどを用いて牛乳中の抗体を含まない成分(カゼインや脂肪分)を除去したチーズホエーや、チーズホエーからさらに乳糖を除去し濃縮したホエーたん白濃縮物(WPC)、ホエーたん白単離物(WPI)などの乳清タンパクを挙げることができる。
本発明に用いる感染症予防食品添加用組成物中には、抗ウェルシュ菌抗体、抗セラチア菌抗体、抗エンテロバクター菌抗体、抗アルカリゲネス菌抗体の少なくともひとつを1μg/g以上含有することが好ましい。各抗体量の測定は、後記する実施例に記載された方法による。
本発明においては、前記抗体を他の抗菌性成分と組み合わせることができる。他の抗菌性成分としては、アミノ酸類として、例えばグリシン、アラニン、ベタイン等、糖類として、例えば、ブドウ糖、果糖等の還元力のある単糖類やソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール等の糖アルコール等を挙げることができる。また、乳化剤として、例えば、低級脂肪酸のグリセリン脂肪酸エステル類、蔗糖脂肪酸エステル類等を挙げることができ、有機酸およびその塩類として、例えば、醸造酢、乳酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、DL−リンゴ酸、氷酢酸、グルコノデルタラクトン、L−酒石酸、DL−酒石酸、フィチン酸及び前記酸類のカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム塩類等、例えばプロタミン、ポリリリジン、リゾチーム、ムラミダーゼ等の塩基性タンパク及びそのペプチド類、植物由来の抗菌性を有する抽出物として、例えば、甘草、ホップ、ユッカ、わさび、唐辛子、香辛料等の抽出物、そのほかに、バクテリオシンなどの乳酸発酵産物、アルコール類、ビタミンB1の脂肪酸エステル類、キトサン、ペクチン分解物、細菌DNA、グルコースオキシダーゼやラクトパーオキシダーゼなどの酵素類等が挙げられ、これらの物質の1種または2種以上を抗体と組み合わせることができる。
本発明における感染症予防食品添加用組成物の形態は限定されない。例えば、形態として粉末、ペースト、溶液などを挙げることができる。
また、本発明の食品添加用組成物が前記抗菌性成分の1種または2種以上を含有する場合には、前記抗菌性成分が食品添加用組成物中に0.1質量%以上あればよい。
本発明の感染症予防食品添加用組成物の使用方法には限定されない。例えば、食品に対して0.1〜10質量%を添加することでその効果を発揮することができ、特にカレーやスープ類では、加熱調理後、65℃以下まで冷却した後に添加すると、ウエルシュ菌、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌による感染症の発症予防効果が高い。ポテトサラダや卵サラダ等では、予めマヨネーズに混ぜておけば良い。本発明の食品添加用組成物は、各種食品に添加してウエルシュ菌、セラチア属細菌、エンテロバクター属細菌、アルカリゲネス属細菌による感染症の危険性の低減された加工食品を製造することができる。添加できる食品の種類としては、特に制限はなく、添加する時期としては、適宜の時期に添加すればよいが、高温による殺菌工程を経る場合には、その工程の後で、添加することが抗体活性の低下を抑制することができ、好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。実施例中、抗ウェルシュ菌抗体、抗セラチア菌抗体、抗エンテロバクター菌抗体および抗アルカリゲネス菌抗体の各抗体量の測定は次の方法によった。また、実施例中、組成、糖濃度および抗体含量の%は質量%である。
(各菌に対する抗体量の測定法)
抗LPS(大腸菌O−111由来)抗体を精製し、ELISA法により、この抗体と大腸菌O−111の抗原用菌体から検量線を作成した。この検量線から、各菌の抗原用菌体を用いて、試料中の抗菌抗体量を求めた。以下、順に記述する。
(抗LPS抗体の精製)
牛の初乳より得られた乳清から、50%飽和硫安の沈殿画分を得、PBSに溶解、透析した。透析内液の遠心上清をLPSアフィニティカラムに流した。PBSで洗浄後、0.1Mグリシン−塩酸緩衝液(pH2.7)で溶出させた。抗体分画は280nmの紫外部吸収で集め、抗体分画をプロテインGセファロース4ファーストフロー(アマシャムバイオサイエンス)5mlを用いて、吸着洗浄溶出により精製した。LPSカラムアフィニティとプロテインGカラムアフィニティを2回繰り返し、精製した抗体標品を標準品とした。抗体タンパク質濃度は280nmにおける1%溶液の紫外部吸収を14として算出した。
(抗原用菌体の調製)
大腸菌O−111およびウェルシュ菌、セラチア・マルセッセンス、エンテロバクター・クロアカエ、アルカリゲネス・フェカーリスをブレインハートインヒュージョン(BHI)スラント培地で前培養後、BHIプレート5枚に塗抹し、ウェルシュ菌は嫌気的、その他の菌は好気的に、37℃で培養した。菌が増殖したところで、菌体をPBSで回収し、沸騰水中で60分間加熱して、菌を死滅させた。遠心して上清を除去し、菌体ペレットを再度PBSに縣濁することを3回繰り返して、菌体を洗浄し、その後、660nmの吸光度が10となるように容量を調整し、抗原用菌体とした。
(ELISA法による定量)
大腸菌O−111の抗原用菌体をELISAプレートにコートし、牛血清アルブミンでブロッキングした後、上記で精製した抗LPS抗体を濃度を0〜40ng/mlに調整して、添加した。洗浄後、HRP標識抗牛IgG抗体(コスモバイオ製)を結合させ、o−Phenylenediamine(SIGMA社)を基質として発色させ、490nmの吸光度を測定して、検量線を求めた。
一方、上記4菌株の抗原用菌体をELISAプレートにコートし、同様にブロッキングした後、PBSに溶解し適宜濃度を調整した試料を添加した。洗浄後、同様に発色させ、490nmの吸光度を測定し、上記検量線を用いて、その測定値から4菌株に対する抗体量を求めた。
(全抗体量の測定法)
試料を50mlの50mMリン酸緩衝液(pH6.8)に溶解し、2時間以上撹拌してから、その10ml以上を0.45μmメンブランフィルターでろ過した。一方、プロテインGカラム(Amersham、HiTrap Protein G HP 1ml)を50mMリン酸緩衝液(pH6.8)で平衡化し、前記メンブランフィルターでろ過した試料10mlをカラムに流し、同緩衝液(pH6.8)で洗浄後、100mMグリシン塩酸緩衝液(pH2.7)で抗体を溶出させた。
溶出液の280nmの吸光度を測定し、抗体濃度1%のときの吸光度を14として試料中の抗体濃度を換算し、試料中に含まれる抗体量を計算した。
(一般生菌数の測定法)
標準寒天培地(栄研化学(株))を滅菌し、希釈した試料を入れたシャーレに分注し、混釈し平板として固める。37℃、24時間好気的に培養を行い、発生した集落数を測定し、菌数を算定した。
(ウェルシュ菌数の測定法)
カナマイシン含有CW寒天基礎培地「ニッスイ」(日水製薬(株))を滅菌し、シャーレに分注して、平板とする。希釈した試料をコンラージ棒で塗布し、37℃、20時間嫌気培養を行い、発生した集落数を測定し、菌数を算定した。
[参考例1](乳清タンパク中の上記4菌株に対する抗体量および全抗体含量の測定)
前記測定法に従い、市販の乳清タンパクである乳清タンパクLN23((株)アオテアロア製)中の抗ウェルシュ菌抗体量、抗セラチア菌抗体量、抗エンテロバクター菌抗体量、抗アルカリゲネス菌抗体量および全抗体含量を測定したところ、66μg/g、12μg/g、54μg/g、32μg/gおよび114mg/gであった。
[実施例1〜3、比較例1]
表1に示した配合で、ウェルシュ菌食中毒に効果のある感染症予防食品添加用組成物を作製した。組成物中の抗ウェルシュ菌抗体量は、実施例1は66μg/g、実施例2、3はともに13μg/gであった。
(表1)
実施例1 実施例2 実施例3 比較例1
乳清タンパクLN23 100 20 20 -
デキストリン - 80 60 100
白子たんぱく - - 20 -
[実施例4]
市販のクリームシチューのもと(ルー)を用い、その作り方にしたがって、ウェルシュ菌に汚染されている鶏もも肉、玉ネギ、ジャガイモ、ニンジンを材料として、クリームシチューを作製した。65℃まで冷却後、4等分し、実施例1〜3、比較例1で得られた組成物をそれぞれ、シチューに対して100分の1量添加し、撹拌後、室温で24時間放置した。その後、一般生菌数およびウェルシュ菌数の測定を行った。また、8人の健常なボランティアを2人ずつ4組に分け、24時間放置後のシチューを試食してもらい下痢の発生について観察した。
結果は表2に示すとおりであり、比較例1の組成物を添加したシチューでは、ウェルシュ菌が食中毒汚染の危険域である10の9乗まで増えていたのに対し、実施例1〜3の組成物ではいずれも10の2〜3乗台で食中毒汚染の危険性はなかった。また、実施例2、3の組成物は実施例1のものよりもシチューへの分散性が良く、扱いやすかった。
下痢の発生については、比較例1で得られた組成物を添加したシチューを試食した組は2人とも12時間以内に下痢の症状を示したのに対し、実施例1〜3で得られた組成物を添加したシチューを試食した組は48時間後まで経過の観察を行ったが、全員、下痢を起こすこともなく体調も壊すことはなかった。
(表2)
実施例1 実施例2 実施例3 比較例1
一般生菌数 8.6×105 1.4×106 6.2×103 5.6×109
ウェルシュ菌数 1.2×10 2 7.5×10 3 4.7×10 3 3.8×10 9
下痢の発生 なし なし なし 全員発生
[実施例5](スパゲティナポリタン)
スパゲティ1000g、たまねぎ5個、ピーマン10個、ウエルシュ菌に汚染されている豚挽き肉150g、缶詰トマト400g、ケチャップ400gその他調味料を用いて、スパゲティナポリタンを作製した。品温が65℃まで下がったところで、実施例1の粉末を50g添加し、混合した。室温で24時間放置してもウェルシュ菌は10の2乗台であり、ウェルシュ菌による食中毒汚染の危険性のないスパゲティナポリタンが作製できた。
[実施例6](うどんのつけ汁)
50℃のお湯の中に、ウエルシュ菌に汚染されている鶏肉、にんじん、だしの素、醤油、なるとを入れ、1時間沸騰させ、うどんのつけ汁を作製した。品温が65℃まで下がったところで、実施例3の組成物粉末を100分の1量添加した。室温で24時間放置してもウェルシュ菌は10の3乗台であり、ウエルシュ菌による食中毒汚染の危険性のないうどんのつけ汁が作製できた。
[実施例7、8、比較例2]
表3に示した配合で、日和見感染症に効果のある感染症予防食品添加用組成物を作製した。組成物中の抗セラチア菌抗体量、抗エンテロバクター菌抗体量、抗アルカリゲネス菌抗体量は、実施例7はそれぞれ12μg/g、54μg/g、32μg/g、実施例8はそれぞれ6μg/g、27μg/g、16μg/gであった。比較例2はいずれの抗体量も検出できなかった。
(表3)
実施例7 実施例8 比較例2
乳清タンパクLN23 100 50 -
白子タンパク - 50 -
スキムミルク - - 100
[実施例9]
30匹の6週齢雌BALB/c系マウスに一匹あたり4mgの5−フルオロウラシル(5−FU)を経口投与し、生態防御機能を低下させた内因性敗血症モデルを作成し、実施例7投与群、実施例8投与群、比較例2投与群の三群に各10匹ずつグループ分けした。5−FU投与の翌日、それぞれの群に各組成物の4%水溶液を一匹あたり0.25ml経口投与した。その3時間後に、各組成物の4%水溶液とセラチア・マルセッセンスの生菌を103/mlとした菌縣濁液との等量混合液を一匹あたり0.5ml経口投与し、セラチア菌を感染させた。さらに、感染24時間後および48時間後に各組成物の4%溶液を一匹あたり0.25ml経口投与し、感染12日後まで経過を観察し、生存数を調べた。その結果をグラフ(第1図)に示す。比較例2の組成物と比べたときの生存数の増加を効果の指標とした。
その結果、実施例7、8の組成物を投与した群は、比較例2の組成物を投与した群と比較し、有意に生存数が増加した。
[実施例10]
感染菌体をセラチア・マルセッセンスの代わりにエンテロバクター・クロアカエを用いて、実施例9と同様の試験を行ったところ、実施例9と同様に、実施例7、8の組成物投与群は比較例2投与群より、マウスの生存数が有意に増加した。
[実施例11]
感染菌体をセラチア・マルセッセンスの代わりにアルカリゲネス・フェカーリスを用いて、実施例9と同様の試験を行ったところ、実施例9と同様に、実施例7、8の組成物投与群は比較例2投与群より、マウスの生存数が有意に増加した。
[実施例12]
18gの卵黄と3gの乳清タンパクLN23を泡立て器を用いて攪拌した後、米酢13.5mlを添加しよく混合した。さらにサラダ油90mlを徐々に添加してマヨネーズタイプの感染症予防措置食品を調製した。
[実施例13、比較例3]
セラチア・マルセッセンスに汚染されているジャガイモ10個とニンジン1本の皮をむいて一口大に切り、茹で、そこに、輪切りにしたキュウリ2本を混合する。ここに実施例12のマヨネーズタイプの感染症予防措置食品を150g加え、さらにマスタード、レモン汁、砂糖、コショウを加え、よく混ぜ合わせ、ポテトサラダを作製した(実施例13)。また、実施例12のマヨネーズの代わりに市販のマヨネーズを用いたポテトサラダも作製した(比較例3)。
6人の65歳以上のボランティアを3人ずつ2組に分け、それぞれ実施例13または比較例3のポテトサラダを試食してもらい、体調を観察した。比較例3のポテトサラダを試食した組は3人とも12時間以内に下痢の症状を示し、体調を壊したのに対し、実施例13のポテトサラダを試食した組は48時間後まで経過の観察を行ったが、全員、下痢を起こすこともなく体調も壊すことはなかった。
[実施例14]
サラダ油50ml、米酢5ml、卵黄7g、香辛料0.5g、食塩1gを混合し、さらに乳清タンパクLN23を1g添加、混合して、ドレッシングタイプの感染症予防措置食品を調製した。
実施例9において試験したセラチア菌感染による感染症発症阻止効果の結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 抗ウエルシュ菌抗体、抗セラチア菌抗体、抗エンテロバクター菌抗体、抗アルカリゲネス菌抗体のうち少なくとも一つの抗体を含有することを特徴とする感染症予防食品添加用組成物。
  2. 前記抗体が乳由来の抗体である請求項1記載の感染症予防食品添加用組成物。
  3. アミノ酸類、糖類、乳化剤類、有機酸およびその塩類、塩基性タンパク及びそのペプチド類、植物由来の抗菌性を有する抽出物、乳酸発酵産物、アルコール類、ビタミンB1の脂肪酸エステル類、キトサン、ペクチン分解物、細菌DNA、酵素類からなる群から選ばれる1種または2種以上の抗菌性成分をさらに含有する請求項1または2に記載の感染症予防食品添加用組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品添加用組成物を含有する感染症予防措置食品。
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