JP2008008874A - 地中の汚染物質の評価方法 - Google Patents

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靖英 古川
Nobuyasu Okuda
信康 奥田
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孝昭 清水
Minoru Kawarada
稔 川原田
Akihiko Uchida
明彦 内田
Toyohiko Fujita
豊彦 藤田
Satoshi Saito
聰 齋藤
Ayako Hishikawa
絢子 菱川
Keisuke Omura
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  • Investigation Of Foundation Soil And Reinforcement Of Foundation Soil By Compacting Or Drainage (AREA)
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Abstract

【課題】地中の汚染物質を評価する際、例えば既存の建屋下等、ボーリングによる深い位置の土壌の採取が困難な場所であっても容易に評価することができる方法を提供する。
【解決手段】地中の汚染物質を評価する方法であって、既存の埋設物10を加熱することにより該埋設物の周囲の地中に存在する汚染物質12を気化させ、該気化した汚染物質を回収して分析することにより前記埋設物の周囲の地中に存在する汚染物質12を評価することを特徴とする汚染物質の評価方法。既存の埋設物としては、杭、特に鋼管杭を好適に利用することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、特に既存の構造物直下やその周辺における地中の汚染物質の種類、濃度等を評価する方法に関する。
工場や倉庫などの既存構造物直下あるいはその周辺部(例えば建屋際数m)において、テトラクロロエチレン等の揮発性有機塩素化合物や軽質油に含まれるベンゼン等によって汚染された土壌や地下水を浄化する場合、汚染物質の種類や濃度に応じて浄化剤を注入することによって原位置で浄化する方法がある。そして、このような汚染された土壌を浄化する際、地中の汚染物質の種類や濃度を事前に調査する方法として、汚染された土地の平面領域を碁盤目状に区切って調査地点を定め、その地点でのガス濃度測定、ボーリング調査を順次行う方法がある。このようにボーリングによって試料を採取し、試料に含まれる汚染物質を分析すれば、深度別の汚染物質や汚染傾向を把握することも可能である。
しかし、汚染領域が工場などの既存の建屋の下に存在する場合、稼動中の工場内では土壌試料の採取が難しく、特に杭基礎の建屋については杭周辺部の土壌をボーリングすることは極めて困難である。例えば、建屋床面をコア抜きした後、ボーリングを行なうことができるが、多大な労力と費用がかかってしまう。
また、揮発性有機化合物(VOC)等の汚染物質の原液は、その地盤を空間的に構成する各土要素の粒度組成、密度、その他の土質性状に敏感に対応して決まる変化に富んだ移動経路をたどる。従って、上記のような表層ガス等による調査を行ったとしても、得られた結果と実際のVOC等の濃度分布が異なることは決して珍しいことではない。
すなわち、特に既存建屋下の地中におけるVOC等の汚染物質についてボーリング等による事前調査を行う場合、多大な労力と費用を要するだけでなく、調査の精度(特に既存建屋下の場合)が決して高くないという問題がある。
汚染土壌に浄化剤を注入して浄化を行う際、例えば事前調査におけるVOCの最大濃度に応じた浄化剤量をエリア全域に注入することが考えられる。しかし、この場合、浄化剤が本来不要な部分にも注入してしまうことになり、浄化剤が無駄になるほか、過剰な浄化剤によって周囲の環境に悪影響を及ぼすおそれもある。
一方、事前調査の結果に忠実に従って浄化剤を注入すると、実際にはVOCが高濃度である部分に低めの濃度を想定して必要量より少ない浄化剤を注入してしまい、浄化の目標値を達成できないというリスクが生じる。
また、浄化剤によっては、VOC等の汚染物質が高濃度(原液またはそれに近い濃度)に存在する場合と低濃度に存在する場合とでは、汚染を浄化するのに必要な期間が大きく異なる場合があり、高濃度の領域だけでもその存在を明らかにすることが望ましい。
地中のVOC等の汚染物質を調査する他の方法として、土壌に設けた孔に吸着管を挿入し、チューブを介して吸引することにより土壌中の揮発成分を吸着管に吸着させ、その後加熱により脱離させた揮発成分のガスをガスクロマトグラフで分析する方法がある(特許文献1参照)。また、汚染領域に所定深さの井戸を穿設し、井戸内に複数個の検知センサーを夫々所定の間隔をもって吊り下げた状態に設置し、各検知センサーの検知結果によって地層の汚染状況を検知する方法なども提案されている(特許文献2参照)。しかし、これらの方法でも土壌に所定の大きさの孔を設ける必要があり、例えば既存建屋の下の土壌については施工が困難である。
また、土壌中にカップ形状等の土壌捕獲部を挿入して土壌を捕獲した後、その土壌に含まれる汚染物質の沸点に応じた温度に加熱してガス化し、そのガス化成分を分析する方法も提案されている(特許文献3参照)。このような方法によれば、ボーリングを行う必要がなく、既存建屋下の土壌についても適用することができる。しかし、カップ等によって土壌を捕獲して分析を行うため、浅い位置での汚染物質を調べることができるとしても、深い位置での汚染状況を把握することは極めて困難である。
特開平5−10935号公報 特公平7−86301号公報 特開2004−144707号公報
上記のような問題点に鑑み、本発明は、地中の汚染物質を評価する際、例えば既存の建屋下等、ボーリングによる深い位置の土壌の採取が困難な場所であっても容易に評価することができる方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明によれば、以下の方法が提供される。
<1> 地中の汚染物質を評価する方法であって、既存の埋設物を加熱することにより該埋設物の周囲の地中に存在する汚染物質を気化させ、該気化した汚染物質を回収して分析することにより前記埋設物の周囲の地中に存在する汚染物質を評価することを特徴とする汚染物質の評価方法である。
<2> 前記埋設物が、杭であることを特徴とする<1>に記載の汚染物質の評価方法である。
<3> 前記杭が、鋼杭であることを特徴とする<2>に記載の汚染物質の評価方法である。
<4> 前記杭が、管状のものであることを特徴とする<2>又は<3>に記載の汚染物質の評価方法である。
<5> 前記管状の杭の内側に加熱手段を配置し、該加熱手段により前記杭を加熱することを特徴とする<4>に記載の汚染物質の評価方法である。
<6> 前記管状の杭が、底部が塞がれているものであることを特徴とする<4>又は<5>に記載の汚染物質の評価方法である。
<7> 前記杭の頭部に、前記気化した汚染物質を回収するための管を設けることを特徴とする<2>ないし<6>のいずれかに記載の汚染物質の評価方法である。
<8> 前記汚染物質が、揮発性有機化合物であることを特徴とする<1>ないし<7>に記載の汚染物質の評価方法である。
<9> 前記揮発性有機化合物が、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする<8>に記載の汚染物質の評価方法である。
本発明によれば、地中の汚染物質を評価する際、例えば既存の建屋下等、ボーリングによる深い位置の土壌の採取が困難な場所であっても、既存の埋設物を利用することによって容易に評価することができる。
本発明者らは、VOC等の汚染物質により汚染された土壌の浄化に先立ち、例えば既存の建屋下など、ボーリングによる深い位置の土壌のサンプリングが困難である場所あっても地中の汚染物質の種類や濃度について容易に評価することができる方法を見出すべく鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、建屋を支える杭等の埋設物を加熱して地中の汚染物質を気化させ、地表に現れた汚染物質を含むガスを回収して分析することで、地中の汚染状況を把握することができることを見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明の好適な態様として、工場等の建屋直下の地中の汚染物質を評価する方法について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に係る地中の汚染物質の評価方法の一例を示すフロー図であり、図2は、既存の杭への加熱手段、ガス回収管等の配置の一例を示す概略図である。
まず、評価対象となる土壌について施工前の状況調査、例えば、対象となる土壌の面積、地質、杭や配管等の埋設物、周辺地域の環境、予測される汚染物質の種類などについて調査を行い、加熱すべき杭を選定する(工程(A))。
工場などの建屋を構築する際、例えば図3に見られるように地盤22の地表近くにシルト層24が存在すると、シルト層24は変形し易く支持地盤として不向きであるため、支持地盤に適した砂層26までコンクリート杭や鋼管杭などの基礎杭10を打ち込み、基礎梁28の上に建屋20が構築される。杭10の大きさや数は、地層の構成、地盤の強度、建屋の重量などによるが、地盤22が弱い場合には60m以上の杭を打ち込む場合もある。
このような構造の建屋20から汚染物質12が流出すると、汚染物質12は杭10とその周囲の土壌との間に形成された隙間などから地中に浸透する。そして、砂層26では、地下水の流れによって横方向にも拡散し、図2(A)に示したように杭10の底部付近に溜まる場合がある。そこで、例えば、建屋20の施工図や現場の調査などに基づき、杭10の種類、数、長さ、配置、さらに、汚染物質12が流出し易い場所などを特定し、杭10の周囲が水みちとなって地中の汚染物質12の濃度が高くなっていると予想される杭を選定する。
利用できる杭の材質や形状は、杭10を加熱することで地中の汚染物質12を気化することができれば特に限定されないが、鋼杭であれば、熱が伝わり易く好適である。さらに、鋼杭には、H形、円筒形など種々の形状のものがあり、特に鋼管杭であれば杭の内部が空洞となっているため、後述するように加熱手段を杭の内側に配置して加熱することもでき、有利である。ただし、既製のコンクリート杭、場所打ちコンクリート杭などのコンクリート製の杭を利用することもできる。特に鉄筋で補強されているコンクリート杭であれば熱が伝わり易く、また、管状であれば、鋼管杭と同様に加熱手段を杭の内側に配置して加熱することができ、好適である。
選定する杭の数は特に限定されず、例えば汚染物質の濃度が高い領域の存在を特定したい場合には、建屋下の土地をいくつかのエリアに分け、各エリア内で1本の杭を選ぶようにしてもよい。また、建屋20の下の土壌全体の汚染状況をより詳しく調べたい場合には全ての杭を対象としてもよいし、特定の杭周辺部の汚染状況を把握したい場合には1本だけでもよい。
選定した杭に、気化した汚染物質を回収するためのガス回収用の管(回収管)を配置する(工程(B))。
回収管の位置は、杭10を加熱して気化した汚染物質を回収することができれば特に限定されないが、通常、汚染物質12は杭周辺部における水みちを通って深層部へと浸透し、杭10の加熱によって気化した汚染物質は杭周辺部の隙間を通過して地表に出ると考えられる。鋼管杭のように管状の杭10であれば、気化した汚染物質は杭10の内側と外側近辺から地表に出てくることが考えられる。そこで、例えば、図2(B)に示すように、回収管14を杭10の直上に配置するほか、杭頭部にもガス回収用の管16を設けることが好ましい。必要に応じて杭頭部の周囲の土壌を掘り、杭10の頭部側面に回収管16を挿入するための孔を形成する。ガス回収管16から吸引することで、大気中の濃度変化を確認する。このようにガス回収管14,16を配置すれば、鋼管杭10の内側と外側から地表まで上昇するガスを効率よく回収することができる。
また、選定した杭には加熱手段を配置する(工程(C))。
例えば図2(C)に示したように、杭の頭部付近に電気ヒータ等の加熱手段18を設けることにより、杭頭部から杭を徐々に加熱することができる。
加熱手段18は杭10に損傷を与えずに加熱して杭10の周囲の地中に存在する汚染物質12を気化させることができれば特に限定されず、赤外線、マイクロ波などによって加熱することができるものを好適に用いることができる。例えば電気ヒータであれば、加熱温度を任意に設定することができ、杭10を所定の温度に安全に加熱することができる。
また、例えば図4(A)に示したように、鋼管杭などの管状の杭30であり、杭30の内側が一定の深さまで空洞が形成されていれば、杭30の内側に加熱手段18を配置することもできる。杭30の内側に加熱手段18を配置して加熱を行えば、比較的深い位置から加熱することができるため、杭30の中部あるいは下部の周囲に存在する汚染物質12でも効率的に気化させることができる。
さらに、図4(B)に示したように、底部が塞がれている管状の杭32であって、杭32の内部に土等が充填されずに底部まで空洞であれば、加熱手段18を底部まで落とし込むこともできる。加熱手段18によって杭32の底部から加熱することができれば、汚染物質が杭32の周囲を伝って底部付近まで浸透している場合でも効率的に気化させることができる。また、杭32の底部から加熱を行えば、建屋への影響も最小限に抑えることができる。なお、杭32の内側が空洞となっていれば、杭32の内側に例えば熱電対36を所定の間隔で配置することで深さ方向の温度を確実に把握することができ、加熱温度をより正確に制御することができる。
加熱手段を配置した後、杭を加熱することにより杭の周囲の地中に存在するVOC等の汚染物質を気化させる(工程(D))。
図2(D)に示したように、杭10の頭部付近を電気ヒータ(不図示)によって加熱すれば、杭10の下方に向けて徐々に伝熱する。そして、杭10の周囲の地中に存在する汚染物質12は、加熱された杭10によって暖められて気化し、図2(E)に示されるように地表に向けて上昇する。
加熱温度は、杭10の種類、分析対象となる汚染物質の種類、加熱手段18の位置などを考慮し、杭10自体あるいは杭10に支えられている建屋20にダメージを与えず、かつ、杭10の周囲に存在する汚染物質12を揮発させることができる温度に加熱すればよい。
調査対象の土壌が、例えば、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンといった揮発性有機化合物で汚染されている場合には、杭周辺(例えば杭の表面から1m以内)の土壌の温度が40〜120℃となるように杭10を加熱すれば、それらの揮発性有機化合物を気化させることができる。また、杭周辺の土壌の温度が120℃程度となるように杭10を加熱しても杭10や建屋20にダメージを与えることはない。
なお、杭10を高温に加熱する必要がある場合には、加熱による建屋への影響を確実に防止するため、沈下量等の計測を行うなどリスクヘッジを実施すればよい。
必要に応じ、例えば汚染されていない土壌において、加熱容量、地中での熱伝達等を予め実測するか、あるいはシミュレーションによって計算しておいてもよい。このような実測あるいはシミュレーションに基づき、例えば杭10の加熱時間と深さ方向の温度との関係等を把握しておけば、汚染領域において実際に杭に加える熱量や深さ方向の温度等を予測しながら加熱することができる。
杭の加熱によって気化した汚染物質を回収し(工程(E))、回収した汚染物質を分析する(工程(F))。
杭10を加熱して周囲の汚染物質12を気化させると、気化した汚染物質は杭周辺の隙間を通って地表に出るので、図2(F)に示したように、ガス回収管14,16によって回収し、分析装置40で分析すればよい。
回収したガスを分析する方法は、対象となる汚染物質の種類、濃度などを分析することができれば特に限定されず、ガスクロマトグラフ式の測定装置を好適に用いることができる。
例えば、図5に示したように、回収管14,16にVOCガス連続測定装置40、吸引ポンプ44等を連結しておく。そして、回収管14,16から回収されたガスをVOCガス連続測定装置40に誘導し、PIDモニター42等の計測装置によって連続測定することができる。
なお、鋼管杭のように管状の杭10では、内側と外側の両方、あるいはいずれか一方からのガスを回収して分析を行ってもよいが、杭10の内側と外側とで汚染物質の濃度が大きく異なる可能性もある。そこで、杭10の内側から回収したガスと、杭10の外側から回収したガスをそれぞれ別々に分析して分析結果を比較してもよい。分析の結果、例えば、杭10の内側が汚染物質の通り道となっていることがわかれば、杭10の内側を中心として浄化対策をとることができる。
また、図4(A)(B)に示したような内部に空洞が形成されている杭30,32であれば、例えば加熱手段18の位置を変えて加熱し、回収したガスの分析を行うことにより、深さ方向の汚染分布についても把握することができる。
回収したガスには特に有害なものも含まれている可能性もある。そこで、周囲の安全を図るべく、測定後のガスを排気あるいは排水する前に無害化するためのVOC処理室46や監視用測定装置48も連結し、回収したVOC等を含むガスを処理した上で排気するか、水に通して排水してもよい。
以上のように既存建屋の杭10を加熱することにより杭10の周囲の地中に存在する汚染物質12を気化させ、気化した汚染物質を回収して分析することにより、その杭10の周囲の地中に存在する汚染物質12の種類や濃度を評価することができる。
従って、例えばVOC等によって汚染された工場直下あるいはその周辺の土壌を浄化剤で浄化する際、事前調査として本発明を適用すれば、建屋床面をコア抜きしてボーリングを行なう等の大掛かりな施工を行う必要がなく、工場直下又はその周辺の汚染状況を容易に把握することができる。
例えば建屋下の領域をいくつかのエリアに分け、各エリアで選定した杭を利用して同様に分析を行う。そして、汚染物質の濃度が特に高い場所(高濃度汚染部)が見つかった場合には、その周囲に汚染物質を分解させるため浄化剤を集中的に注入するといった対策をとることができる。これにより適量の浄化剤を施すことができ、コストを低く抑えることができる。
なお、本発明の方法によれば、杭を加熱することで、杭周辺部の汚染物質が気化されて地表に排出されるため、杭周辺部の土壌の浄化を見込むこともできる。さらに、杭周辺部の汚染物質が気化されることで空隙が形成されるため、そこに浄化剤を投入することで浄化剤を効率的に浸透させることができる。このように本発明によって地中の汚染物質を評価した後、浄化剤を適用することにより原位置において汚染物質を効率的に分解し、汚染物質の拡散を有効に防止することができる。
<地盤加熱シミュレーション>
図6に示すような表土(1.0m)、ローム(10.0m)、砂(7.5m)、粘土(5.5mm)の各層により構成される地盤をモデルとして、鋼管杭を加熱した場合の杭周囲における温度の上昇の仕方について地盤加熱シミュレーションを行った。図7〜図10は、加熱開始から、それぞれ1時間、1日、3日、7日経過した後の地盤中の温度変化を示している。これらの図に見られるように、加熱開始後、杭全体にわたって周囲の温度が徐々に昇温することがわかる。
図11は種々の深さにおける杭(加熱部)から50cm離れた位置の温度変化を示している。加熱開始後、1日(24時間)では20℃以下であるが、3日(72時間)後には全て20℃を超え、35℃近い箇所もあり、5日(120時間)後には全箇所で30℃を超え、さらに7日(168時間)後には全箇所で40℃を超えることがわかる。
さらに図12は杭から100cm離れた位置の温度変化を示しており、杭から100cm離れた位置でも徐々に昇温することがわかる。
図13はVOCの飽和蒸気圧を示している。図13において、例えばトリクロロエチレンの飽和蒸気圧についてみると、15℃で45mmHgであるが、例えば30℃では91.8mmHgに上昇し、他のVOCの飽和蒸気圧も同様に上昇することが示されている。従って、3〜5日間杭の加熱を行えば、地中の気相(空隙)に存在するVOC濃度は大幅に増加し、地表での検出が容易になることがわかる。
以上、本発明について説明したが、本発明は上記実施形態や実施例に限定されるものではない。例えば、加熱手段18は、ガス回収管14,16より先に配置してもよい。
また、実施形態では、主に鋼管杭を加熱して汚染物質を気化させる場合について説明したが、加熱させる埋設物は鋼管杭に限定されず、コンクリート杭のほか、地下に埋設されている配管、ピット、ディープウェル、燃料タンクなど、杭以外の埋設物を利用することもできる。さらに、稼動中の工場等の建屋を支える杭等に限定されず、例えば、工場や倉庫の跡地に残存する杭等を加熱して地中の汚染物質を気化させ、分析を行ってもよい。
また、実施形態では、汚染された土壌に浄化剤を注入して原位置で浄化する際、事前調査として本発明を適用する場合について説明したが、本発明の適用場面はこのような事前調査に限定されない。例えば、浄化剤を注して浄化を行った後、事後調査として、汚染物質の残存状況を把握する場合にも本発明を好適に適用することができる。
本発明による汚染物質の評価方法の一例を示すフロー図である。 既存の杭への加熱手段、ガス回収管等の配置の一例を示す概略図である。 杭基礎により支えられた建屋の一例を示す概略図である。 管状の杭における加熱手段の配置の他の例を示す概略図である。(A)底部が塞がれていない杭 (B)底部が塞がれている杭 回収したガスを分析するための分析装置等の構成の一例を示す概略図である。 地盤加熱シミュレーションにおける地層の構成を示す図である。 地盤加熱シミュレーションにおいて加熱開始から1時間後の地層の温度分布を示す図である。 地盤加熱シミュレーションにおいて加熱開始から1日後の地層の温度分布を示す図である。 地盤加熱シミュレーションにおいて加熱開始から3日後の地層の温度分布を示す図である。 地盤加熱シミュレーションにおいて加熱開始から7日後の地層の温度分布を示す図である。 地盤加熱シミュレーションによる杭表面から50cmの温度変化を示すグラフである。 地盤加熱シミュレーションによる杭表面から100cmの温度変化を示すグラフである。 VOCの飽和蒸気圧を示すグラフである。
符号の説明
10 杭
12 汚染物質
14,16 ガス回収用の管
18 加熱手段(電気ヒータ)
20 既存建屋(工場等)
22 地盤
24 シルト層
26 砂層
30,32 杭

Claims (9)

  1. 地中の汚染物質を評価する方法であって、既存の埋設物を加熱することにより該埋設物の周囲の地中に存在する汚染物質を気化させ、該気化した汚染物質を回収して分析することにより前記埋設物の周囲の地中に存在する汚染物質を評価することを特徴とする汚染物質の評価方法。
  2. 前記埋設物が、杭であることを特徴とする請求項1に記載の汚染物質の評価方法。
  3. 前記杭が、鋼杭であることを特徴とする請求項2に記載の汚染物質の評価方法。
  4. 前記杭が、管状のものであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の汚染物質の評価方法。
  5. 前記管状の杭の内側に加熱手段を配置し、該加熱手段により前記杭を加熱することを特徴とする請求項4に記載の汚染物質の評価方法。
  6. 前記管状の杭が、底部が塞がれているものであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の汚染物質の評価方法。
  7. 前記杭の頭部に、前記気化した汚染物質を回収するための管を設けることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか一項に記載の汚染物質の評価方法。
  8. 前記汚染物質が、揮発性有機化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の汚染物質の評価方法。
  9. 前記揮発性有機化合物が、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項8に記載の汚染物質の評価方法。
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