JP2007535947A - 幹細胞増幅及び分化のための方法 - Google Patents
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Abstract
【選択図】図1
Description
本発明は、多分化能幹細胞集団のエクスビボ(ex vivo)増幅、増殖及び分化、そのような方法を実行するための方法、並びに培養を促進するための生産物、及び造血幹細胞並びに造血系列の細胞の両方の細胞集団の臨床的に有用な量の使用に広く関与する。
骨髄は、多能性及び委任細胞に対して独特な環境を提供する。それは、未だ培養液中でうまく複製されない構造的及び体液性成分の両方を含む。髄腔それ自体は、内皮細胞で裏打ちされた、薄い壁で囲まれた類洞である。骨の壁の間は、造血細胞及び内皮を介して入る成熟血液細胞によって継続的に供給される脂肪細胞のクラスターである。分化細胞は似た様式で空洞から離れ、循環系内で機能することができる状態にある。
化学療法及び放射線治療などの治療によって消耗された(造血を介して)骨髄の造血細胞を補充する必要がある場合に、骨髄移植は、様々な血液学的、自己免疫性及び悪性疾患に対する有用な治療である。現在の骨髄移植治療は、骨髄から直接的にというのと同様に、臍帯血又は末梢血(G−CSFのような作用物質で非動員された、又は動員されたのどちらか)から獲得された造血細胞の使用を含む。
本発明は、Opn及び/又は活性型Opnフラグメントの調節によって、エクスビボにおける特定の細胞集団の実用的な量を産生するための方法、培地、及び装置を提供する。本発明は、臍帯血からのHSC、又は動員後の末梢血から単離されたHSCなどの多分化能幹細胞に結合するOpnは、概してHSCからの細胞増殖を阻害するが、HSCの数の特異的な増幅を促進し、培養中のHSC集団の増加を導くことに基づいている。Opn存在下で培養されたHSCは造血系列細胞の産生の明らかな減少を示したが、該培養環境において産生される多能性HSCの数の増加を示した。それゆえ、HSCへのOpnの結合は、多能性HSCの最初の増幅を促進し、また同様にHSCから造血系列の子孫への増殖及び分化を抑制する。
本発明はまた、薬剤スクリーニング、毒性試験、及び他の研究活動などの、臨床的及び研究活動の使用のためのHSCのエクスビボ増幅された集団を提供する。造血に関する治療薬剤の効果は、特に重篤な病態の患者において重要であり、また多くの場合において、これは臨床的問題を悪化させることがある。例えば、貧血は、腎不全、うっ血性心疾患、及び慢性閉塞性肺疾患を含む疾患を治療するために使用される治療薬剤の共通した副作用である。造血に関するこれらの治療薬剤の効果を理解することは、そのような患者集団においてこの副作用を取り除くためのこれらの産物の改良を導き、結果としてよりよい臨床的成果を提供する薬剤の開発をもたらし得る。本発明は、これら及び他の関連した活動のためのOpnの使用を介して増幅されたHSCの使用を想定する。
毒性テストのためにエクスビボ増幅されたHSCの集団を提供することは、本発明の他の目的である。治療薬剤の毒性テストは、患者集団でテストすることを必要とせずに、造血における悪影響の同定を可能にする。HSCなどのヒト細胞集団において薬剤テストを利用して、米国食品医薬品局などの取締機関に治療薬剤の安全性の証拠を提供することができる。
Opn結合を阻害又は阻止し、HSC集団の全体的な増殖及び分化を増加させ、造血系列由来のより成熟した細胞集団を産生しかつ単離することは、本発明の目的である。これは、Opnが存在する場合に能動的阻害であり得、又は任意のOpnが欠如した培養環境を提供することを介した受動的阻害であり得る。能動的阻害は、直接又は間接、すなわちOpn分子上に直接的に作用してもよく、若しくは該培養環境中でOpn活性のために必要とされる分子の活性を阻害してもよい。
本発明は、また分化した造血細胞集団の産生のための細胞培地及び装置を特色とする。特定の実施態様において、本発明は、HSCへのOpn結合を阻害する1以上の薬剤の十分なレベルを含む細胞培地を提供する。この培地はHSCレベルの維持しながら、造血系列においてより成熟した細胞型の増殖及び分化を促進することを可能にする。より特定の実施態様において、この培地は、先に記載したように、活性型Opnフラグメントの産生を介して、HSCへのOpn結合を強化することができるトロンビンを阻害する薬剤の添加によって強化され得る。該培地は、フラスコ、バイオリアクターなどを含む、任意の従来型の細胞培養装置で使用し得る。
したがって、関連した態様において、静止幹細胞は、トロンビン存在下でのOpnを用いた活性化を含むOpn又は活性型Opnフラグメントの存在下で活性化され、かつ活性化剤又は輸送ベクターと共に培養される。
これら及び本発明の他の目的、利点及び特性は、さらに以下に十分説明されるように、該装置の構造、組成物の剤形並びに使用方法の詳細を読むことで、当業者に明白となる。
本装置、細胞、及び細胞産生方法が記載されるのに先立ち、本発明は記載される特定の方法論、産物、装置、及び因子には限定されず、方法、装置及び剤形はもちろん異なってよいものとして理解される。本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施態様のみを表現する目的のためであって、かつ添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないこともまた理解される。
本明細書で用いられているように、用語「活性型Opnフラグメント」は、記載された方法で、OpnのHSC増幅活性を維持する活性型Opnフラグメントを含む。これはOpnの切断産物を含むが、Opnと酵素トロンビンとの相互作用によって産生された切断産物を含むがこれに限定されない。
用語「血液細胞」は、赤血球(erythrocyte)(赤血球(red blood cell))、網状赤血球、巨核球、好酸球、好中球、好塩基球、血小板、単球、マクロファージ、顆粒球、及びリンパ球系列の細胞を含むことが意図される。患者への成熟細胞集団の移入の目的に対して、赤血球、顆粒球及び血小板は特に価値がある。語句「臨床的に有用な量の血液細胞」は、特定の細胞集団が、病態を治療するためのヒト患者へ移入に十分である血液細胞の量を意味することが意図される。
本明細書で用いられる用語「オステオポンチン」、「Opn」などは、本発明の方法でのエクスビボと同様に、インビボ(in vivo)、例えば初期骨マトリクス組織に影響を与えることができる形態の両方でその意図された機能を実行することができるタンパク質オステオポンチン又はそのフラグメントの形態をさす。Opnは、骨系列の細胞によって初めに合成され、石化された組織中に固定化されたECM及びサイトカインとして存在する、リン酸化された酸性糖タンパク質である。
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」、及び「含むこと(comprising)」並びに「含む(comprises)」などの単語の変化は、他の添加物又は成分若しくは整数又は段階を排除することを意図していない。
静脈的に注入された骨髄による造血の回復は、ホーミング、移行、及び骨髄微小環境内でのHPCの堆積を含む、いくつかの共同的事象を必要とする。最初の事象であるホーミングは、循環しているHSCの骨髄への特異的な動員として定義され、骨髄の毛細血管内皮のHSCによる選択的認識、及び血管外造血空間への内皮貫通的細胞移行を含む。これに対し、堆積は管外遊出に続く事象を含み、骨髄血管外造血空間中の適切な微小環境的間隙への細胞の選択的移行として定義される。
本発明者によるさらなる研究で、Opnはまた、HSC堆積、制御及び増殖、そして特にさらにHSCへと増幅させる、又は選択的に造血系列のより分化した細胞へ増殖させるHSCの能力に関して重要な役割を担うことが見出された。本発明は、HSC制御におけるOpnの活性に関連した科学的観察に大部分基づいており、また記載された方法、培地及び装置は、幹細胞制御、増幅並びに増殖におけるOpnの固有の性質を利用する。
またOpnの役割は、そのCD44との相互作用に完全には依存せず、かつ実際に間質へのHSCの移動を可能にするためのSDF−1相互作用を含む。
HSCは、成人及び胎児両方の骨髄、動員された末梢血、並びに臍帯血を含む、任意の既知の幹細胞のヒト供給源から単離されてよい。はじめに、骨髄細胞は、腸骨(例えば、腸骨稜を介して寛骨から)、頸骨、大腿骨、脊椎、又は他の骨空洞を含む、骨髄の供給源から獲得されてよい。幹細胞の他の供給源は、胚卵黄嚢、胎児肝臓、及び胎児脾臓を含む。本発明の方法での使用のために供給されたHSCは、多能性HSC、免疫担当細胞及び線維芽細胞を含む間質細胞の組み合わせ並びに内皮細胞を含む、混成細胞集団を含むことができる。
末梢血への幹細胞の動員方法は当業者に既知であり、かつ一般的に、例えばサイトキサン(Cytoxan)、シクロフォスファミド、VP−16のような化学療法薬、及びGM−CSF、G−CSF、又はIL−3、若しくはこれらの組み合わせのようなサイトカインを用いた治療を含む。通常、全白血球に対する除去療法は、該全白血球数が500〜2000細胞/μlに達し、かつ血小板数が50,000/μlに達した場合に着手する。日々の白血球分離サンプルはCD34+及び/又はThy−1+細胞の存在に関して観測し、幹細胞動員のピークを測定し、その後末梢血幹細胞を回収するのに適した時間を決定してよい。
HSCへのOpn又は活性型Opnフラグメントの結合は、幹細胞のエクスビボ増幅、及び幹細胞のエクスビボ遺伝子操作などの様々なエクスビボ操作を向上させる新規かつ有力な手段を提供する。本発明の方法、培地及び装置はまた、成人ヒト骨髄又はヒト臍帯血細胞などの混成細胞集団中のHSCのエクスビボ増幅のために使用され得ることが意図されるが、そのような装置において好ましく使用されるHSCは、単離されたHSC集団である。
例えば、CD34マーカーを用いる陽性選別を提供する粗分離に付随して又はその次に陰性選別が実行されてよく、それには特定の細胞上に存在する系列特異的マーカーに対する抗体が使用される。ほとんど、これらのマーカーは、CD2−、CD3−、CD7−、CD8−、CD10−、CD14−、CD15−、CD16−、CD19−、CD20−、CD33−、CD38−、CD71−、HLA-DR−、及びグリコフォリン(glycophorin)Aを含み;好ましくは、少なくともCD2−、CD14−、CD15−、CD16−、CD19−、及びグリコフォリンAを含み;また通常は、少なくともCD14−、CD15−を含む。本明細書で使用されるように、Lin−は、少なくとも1つの系列特異的マーカーを欠いている細胞集団をさす。特定の細胞が大幅に減少した造血細胞組成はさらに、Thy−1+及び/又はRho123l0に対する選別を使用して分離されてもよく、それによって高度に濃縮されたHSC集団が達成される。
細胞を、はじめに粗分離によって分離し、続いてHSCに付随するマーカーを用いた陽性選別、及び系列委任細胞に付随するマーカーに対する陰性選別を用いて高純度に分離することができる。高度に濃縮されたHSCの組成は、この様式で達成され得る。所望の幹細胞はCD34+Thy−1+Lin−表現型を有する集団によって裏づけられ、また長時間培養で維持されることができ、選抜して2次及び高次の培養に移すことができ、かつ様々なリンパ球性及び骨髄単球性系列、特にB並びにTリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、赤血球などへ分化できることによって特徴付けられる。
Opn又はそのフラグメントを培地に添加し、HSCへのOpn結合を促進させ、かつHSC間質介在性微小環境的間隙を人工的に再現することができる。特定のHSC増幅培地を使用して、様々な使用のための多能性HSC集団を確立し、かつ維持することができる。特定の実施態様において、該培地はまた、HSCへのOpn結合を増加させるためのトロンビンを含む。
非共有結合は当業者に既知であり、かつこれらに限定されないが、例えばCa++、Mg++又はMn++架橋のような2価イオン架橋を介した結合;物質へのOpn又はそのフラグメントの吸着を介した結合;物質上における、例えばポリリジン、ポリアルギニン、スペルミン、スペルミジン又はカダベリンのようなポリアミンのプラズマ溶射又は被覆乾燥を介した結合;物質上に被覆された、例えばフィブロネクチン又はコラーゲンのような第2ポリペプチドを介した接着;又は、例えば、N−ヒドロキシスルフォスクシンイミジル−4−アジドサリチル酸(Sulfo-NHS-ASA)、スルフォスクシンイミジル(4−アジドサリチルアミド)ヘキサン酸(Sulfo-NHS- LC-ASA)、N−γ−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、N−γ−マレイミドブチリルオキシスルフォスクシンイミドエステル(Sulfo-GMBS)、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)−トルエン(SMPT)、スルフォスクシンイミジル6[α−メチル−α(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサン酸(Sulfo-LC-SMPT)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサン酸(LC-SPDP)、スルフォスクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサン酸(Sulfo-LC-SPDP)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸(SMCC)、スルフォスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸(Sulfo-SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルフォスクシンイミドエステル(Sulfo MBS)、N−スクシンイミジ(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸(SIAB)、スルフォスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸(Sulfo-SIAB)、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)酪酸(SMPB)、スルフォスクシンイミジル4(p−マレイミドフェニル)酪酸(Sulfo-SMPB)、又はアジドベンゾイルヒドラジド(ABH)のような二価性クロスリンカーを介する物質への接着を含む。他の実施態様において、Opn又はOpnの活性フラグメントは、静電相互作用を介して物質に接着する。
HSCが分裂する場合、全てではないが、いくつかの分裂は非対称である。非対称性分裂において、最初のHSCは分裂し、娘HSC、及びより分化した子孫細胞を産生する。非対称性分裂は、さらなる分化を伴い又は伴わずに使用される子孫細胞集団を生じるHSC集団の定常状態をもたらす。本発明のある態様は、HSC培養中のOpnの阻害は、全体として細胞増殖を促進するという知見に基づいている。本発明におけるOpnの阻害を利用して、培養システム中で非対称性分裂の速度を増加させることによって、非対称プロセスを活用することができる。
HSCへのOpn結合の阻害はまた、研究、HSCの機能又は生存率を変化させる化合物又は薬剤に対するスクリーニング、医薬品の毒性テストなどの用途の細胞集団を提供することに実用性を有する。HSC開始培地を提供すること、及びHSCへのOpn結合の阻害を介した、より成熟した細胞型の増殖を選択的に増幅させることは、HSC増殖の増加のみならず、より分化した子孫の産生を特異的に促進させることを可能にする。
例えば、産生された分化子孫の数を最大化させるために、Opn結合を介してHSC集団を最初に増幅させ(培養セッティング内に固定化されて提供されるOpn、又はOpnを含む培地を介して培養セッティングに提供されるOpnを用いて)、続くOpnの阻害がより成熟した造血子孫の増殖及び分化を促進させることが望ましいことがある。
特定の実施態様において、産生される細胞は赤血球(erythrocyte)(赤血球(red blood cell))である。赤血球の主要な機能は、身体の組織に酸素を運搬することである。主要でない機能は、栄養素、細胞間メッセージ、及びサイトカインの運搬、並びに細胞内代謝物の吸収を含む。貧血、又は赤血球若しくは赤血球限度容量の不足は、酸素を運搬する血液の能力の減少として明らかに定義されることができ、かつ急性又は慢性であってよい。慢性失血は、外因性赤血球異常、内因性異常、又は赤血球の産生障害によって引き起こされることもある。外因性、又は赤血球外異常は、輸血反応及び赤芽球症などの抗体介在性疾患、微小血管症性溶血性貧血などの赤血球に対する物理的損傷、血栓性血小板減少性紫斑病及び播種性血管内凝固症候群を含む。さらに、プラスモディウム(Plasmodium)などの寄生生物による感染、例えば鉛中毒からの化学的損傷、及び脾機能亢進症などの単核細胞における分画症は、赤血球疾患を誘発することができる。
本発明の特定の治療態様において、造血細胞が対象から摘出され、エクスビボで形質導入され、そして該修飾細胞は該対象へと戻される。修飾HSC及びそれらの子孫は、インビボで所望の遺伝子産物を発現し、それゆえ持続的な治療的有用性を提供する。
静止HSCは、薬剤の取り込み又は遺伝情報の形質導入を促進するために、そのような細胞をOpnに暴露させることによって、分裂することを活性化さることができる。本発明のこの態様は重要な臨床的意義を有し、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクター)を利用する方法を介したHSCへの遺伝物質の改良された形質導入、HSC集団における遺伝子発現、タンパク質産生及び/又は酵素活性化のエクスビボ操作用の低分子干渉RNA分子(RNAi)、アンチセンス、リボザイムなどを含む。
骨髄除去した受容者への移植は、依然として患者がHSCの移植片を与えられるという標準的な手段のままである。しかしながら、骨髄内の細胞の空間分布及びこのプロセスを制御する因子を解析するための最も適切な方法は、HMが予備切除によって除去されていない場合におけるものである。性不整合骨髄移植及び正常な所在ハイブリダイゼーションによる提供者細胞の検出を使用して、本発明者は、移植後6週間の、骨内膜領域内に移植されたHSCの検出(骨から12個の細胞として独断的に定義された)を以前に報告した(Nilsson, S. K.らの論文, Blood, 1997. 89. p. 4013- 4020)。この研究室のそれに続く研究は、これらの所見を確認し、拡張する。
細胞表面ヒアルロン酸(HA)は明らかに、正常細胞及び主要細胞の両方の幅広い細胞型の接着、運動性及び成長に影響する。その複数結合価(隣接細胞上の複数の受容体の架橋を可能にする)のために、内因性細胞表面HAと、その一次受容体であるCD44との相互作用は、いくつかの細胞型の凝集を仲介する(Aruffo, A.らの論文, Cell, 1990. 61. p. 1303- 1313)。HAへの細胞の曝露、又はHAの異所性発現のどちらかの後の増加した細胞運動又は進入の多くの例があり、また細胞運動の阻害は、HA分解、又はHA受容体のブロッキングのどちらかの結果として起こる(Turley, E.A.らの論文, Exp Cell Res, 1993. 207. p. 277-82)。
インビボの限界希釈アッセイでのHSC潜在性の解析は、受容者微小環境的間隙内のみならず提供者HSCの両方でのCD44のきわめて重要な必要性を示した(図2)。CD44が提供者HSCに存在しない場合、50%未満のキメラを、野生型HSCに同数の移植に続く、100%提供者再構成に比較した1000個のHSCの移植後12週で獲得した。さらに、野生型HSCを、CD44を欠く微小環境へと移植した場合、野生型HMへ移植した野生型HSCに比較して、移植後12週間で100%提供者再構成を得るために、著しく多くのHSCが必要であった。これは、HSC潜在性の制御における、CD44の機能的役割を示唆する。
CD44は、造血組織内の細胞で普遍的に発現し、厳重に制御され、かつ特定の細胞型及び活性化状態でのみ起こるオルタナティブスプライシングを有する(Isacke, CM. 及びH. Yarwoodの論文, lnt J Biochem Cell Biol, 2002. 34. p. 718-21)。CD44は、細胞外マトリクスタンパク質コラーゲン、ラミニン、及びフィブロネクチンと同様に、広い範囲の細胞型への結合を仲介する複数のリガンドを有する(Wayner, E.A.及び W.G. Carterの論文, The Journal of Cell Biology, 1987. 105. p. 1873-1884; Faassen, A.E.らの論文, J Cell Biol, 1992. 116. p. 521-31 ; Jalkanen, S.及びM. Jalkanenの論文, J Cell Biol, 1992. 116. p. 817-25)。マウス及びヒトHSCの解析は、CD44H、CD44v6、及びCD44v7発現を明示した。骨内膜内のHSC細胞堆積におけるCD44の役割を解析するために、この領域に固有の分布を有するCD44受容体の解析を行った。これらの調査は、CD44との十分に立証された相互作用を有する微小環境的間隙内の2つの潜在的候補、他の細胞成分であるHA及びOpnを同定した。
特異的抗Opn抗体を用いたマウス大腿骨の切片のラベリングは、骨内膜へのOpnの限局的な発現を示した。さらに、本発明者は、マウスHSCが、β1インテグリン及びCD44を介してOpnに結合することを示した(図3)。これは、HSCとOpnとの間の特異的相互作用の初めての証明である。Opnが骨髄微小環境的間隙に存在しない場合、移植後15時間の骨内膜に位置する細胞数の大幅な(〜30%)減少がある。それと共に、これらのデータはまた、移植したHSCの空間分布における、CD44−Opn相互作用の機能的役割を示唆する。
最新の実験は、HSCがOpnに結合することのみならず、これらの相互作用が造血前駆細胞の増殖を阻害することを示す(図4)。これらの実験において、CD34+細胞への2μg/mlのOpnの添加は、培養4日後に全体の細胞増殖を50%にまで阻害した。しかしながら、全体的な増殖の増加にもかかわらず、4週間の継続的なブロモデオキシウリジン(BrdU)の経口投与後のOpn−/−及び野生型マウスから単離したHSCの循環履歴の解析は、野生型コントロールに比較して、Opn−/−マウスの著しく速い細胞周期速度を示した(図5)。それと共に、これらのデータは、HSC制御におけるインビボOpnの重要な役割を示唆する。培養中のHSCへのOpnの添加は、細胞増殖に関して2つの重要な効果を有する:1)Opnは、造血系列細胞の細胞産生の全体的なレベルを阻害している;それゆえ、Opnは、HSCの増殖及び分化を阻害している;及び2)Opnは、さらなるHSCへのHSCの分裂を促進しており、それゆえ、培養中の多能性HSCの産生を増幅している。
さらなるデータは、Opnの活性がCD44とのその相互作用に完全には依存していないことを示す。間質におけるOpnの存在が、間質へのHSCの移行を阻害することを示しているデータを図6に示す。間質へのHSCの通常の移行はほとんどSDF−1(これはAMDによって特異的に阻害される)のためなので、これはOpnがSDF−1制御に関与していることを示唆する。CD44は、SDF−1及びOpnのこの潜在的相互作用に関与していないようなので、本結果は、野生型及びCD44ノックアウトマウスにおいて同じである。さらに、固定されたOpnは、HSCのSDF−1誘導型走化性を阻害する能力を有する(図7)。
本発明は、特定の実施態様への言及をもって記載されているが、様々な変化が作り出されてよく、かつ同等物は、本発明の実際に意とするところ及び範囲から逸脱することなしに置換されてよいことは当業者によって理解されるはずである。さらに、多くの修飾を作り出し、特定の状況、素材、又はプロセスを、本発明の対象物、意とするところ及び範囲に適合させてもよい。全てのそのような修飾は、本発明の範囲内であることが意図されている。
上記列挙された本発明の特性、利点、及び目的を達成し、かつ、より詳細に理解することができるように、上記に手短に要約した本発明のより具体的な説明が、添付の実施例及び図面に描写される実施態様を参照することによって得られる。しかしながら、本発明は他の同等な効果を有する実施態様を受け入れてよいため、添付の実施例及び図面は本発明の特定の実施態様のみを描写し、それゆえその範囲を制限すると考えるべきでないことに留意されたい。
Claims (16)
- 多分化能幹細胞集団のエクスビボ制御、増幅、増殖、又は分化を調節する方法であって、Opn及び/又は活性型Opnフラグメントに対する該多分化能幹細胞集団の曝露を調節することを含む、前記方法。
- 多分化能幹細胞集団のエクスビボ増幅を増加させるための請求項1記載の方法であって、該多分化能幹細胞集団をOpn及び/又は活性型Opnフラグメントに曝露させることを含む、前記方法。
- 前記Opn及び/又は活性型Opnフラグメントが、前記多分化能幹細胞集団培養の培地に添加される、請求項2記載の方法。
- 前記Opn及び/又は活性型Opnフラグメントが培養装置上に固定されている、請求項2又は3記載の方法。
- 該培養装置が、ビーズ、培養フラスコ、又はバイオリアクターを含む群から選択される、請求項4記載の方法。
- さらにトロンビンを添加することを含む、請求項2〜5いずれか1項記載の方法。
- 多分化能幹細胞集団のエクスビボ増殖及び分化を増加させるための請求項1記載の方法であって、Opn及び/又は活性型Opnフラグメントへの該多分化能幹細胞集団の曝露を減少させる又は阻止することを含む、前記方法。
- Opn及び/又は活性型Opnフラグメントを含まない培地中で該多分化能幹細胞集団を培養することを含む、請求項7記載の方法。
- 1以上のOpn結合の阻害剤の存在下で、該多分化能幹細胞集団を培養することを含む、請求項7又は8記載の方法。
- 多分化能幹細胞集団を獲得すること、及びOpn及び/又は活性型Opnフラグメントを含む培地中で該多分化能幹細胞集団を培養することを含む方法によって作成される、多能性細胞集団。
- 多分化能幹細胞集団を獲得すること、及び1以上のOpn及び/又は活性型Opnフラグメントの結合阻害剤を含む培地中で、多分化能幹細胞集団を獲得すること及び該多分化能幹細胞集団を培養することを含む方法によって作成された分化細胞集団。
- 多分化能幹細胞集団の増幅を促進する濃度で、Opn及び/又は活性型Opnフラグメントを含む、細胞培地。
- 多分化能幹細胞集団の分化を促進する濃度で、Opn及び/又は活性型Opnフラグメントの結合阻害剤を含む、細胞培養液。
- 該多分化能幹細胞が造血幹細胞である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
- 該多分化能幹細胞が造血幹細胞である、請求項10又は11記載の細胞集団。
- 該多分化能幹細胞が造血幹細胞である、請求項12又は13記載の培地。
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