JP2007530454A - 補体C5a受容体モジュレーターを使用する神経疾患の治療 - Google Patents

補体C5a受容体モジュレーターを使用する神経疾患の治療 Download PDF

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Abstract

本発明は神経疾患の、C5a受容体の活性を変調する能力を有する新規な環状ペプチドおよびペプチドミメティック化合物による治療に関する。前記化合物は好ましくはC5a受容体の拮抗剤として作用し、多形核白血球、単球、リンパ球および/またはマクロファージ上のC5a受容体に対抗して作用する。本発明の好ましい形態において神経疾患は、神経変性疾患、神経免疫疾患、血液脳関門の機能不全から生ずる疾患、および脳卒中である。

Description

本発明はC5a受容体の活性を変調する能力を有する新規な環状ペプチドおよびペプチドミメティック化合物を用いる神経疾患の治療に関する。前記化合物は好ましくはC5a受容体拮抗剤として作用し、多形核白血球、単球、リンパ球および/またはマクロファージ上のC5a受容体に対して活性である。本発明の好ましい形態においては、神経疾患は神経変性疾患、神経免疫疾患、血液脳関門の機能不全から生ずる疾患、および脳卒中である。
本明細書で挙げるいかなる特許および特許出願をも含む全ての引例も参照により本明細書に組み込む。いかなる引例も先行技術を構成すると認めるものではない。引例の解説はそれらの著者らが主張していることを述べるもので、本出願人は引用した資料の正確さおよび妥当性に異議を申し立てる権利を留保する。多数の先行技術の出版物による公表が本明細書に引用されているが、これらの資料のいずれもオーストラリアおよびいかなる他国においても当業者における共通の一般的知識の一部を形成するという是認をこの引用が与えるものでないことは明確に理解されるであろう。
Gタンパク質結合受容体は人体中に広く存在していて、知られている細胞受容体タイプのおよそ60%を含み、広範囲の内在性リガンドのために細胞膜を通してのシグナル伝達を媒介している。これらGタンパク質結合受容体は、心臓血管、中枢および末梢神経系、生殖、代謝、消化、免疫、炎症、および成長疾患ならびに他の細胞調節および増殖疾患に関連するものを含むが、これらに限定されない多種多様で多数の生理学的および病理生理学的過程に関与している。Gタンパク質結合受容体の機能を選択的に変調する作用薬には、重要な治療応用がある。これらの受容体は、シグナル伝達におけるその極めて重要な役割の故に、重要な薬剤の標的として認識が増大しつつある(「G protein-coupled Receptors」、IBC Biomedical Library Series、1996年)。
最も徹底的に研究されているGタンパク質結合受容体の1つはC5a受容体である。C5aは知られている最も強力な走化作用因子の1つである。これには種々の活性があり、
(a)障害部位に好中球およびマクロファージを補充すること、
(b)好中球およびマクロファージの形態を変化させること、
(c)好中球の脱顆粒を誘起すること、
(d)カルシウム動員、血管透過性(浮腫)および好中球接着性を増大させること、
(e)平滑筋の収縮を誘起すること、
(f)ヒスタミン、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-8、プロスタグランジン、およびロイコトリエンを含む炎症媒介物質の放出を活性化すること、
(g)リソゾーム酵素の放出を活性化すること、
(h)酸素ラジカルの形成を促進すること、および
(i)抗体産生を増強すること
が含まれる(GerardおよびGerard、1994年)。
C5aの炎症誘発性作用を制限する作用薬は、急性および慢性両方の炎症およびそれに随伴する苦痛および組織損傷を抑制する可能性を有する。そのような化合物は上述した種々の炎症媒介物質の上流で作用し、これらの化合物の多くの形成を阻害するので、これらの媒介物質またはそれらの受容体の活性を直接阻害する作用薬よりも炎症症状を軽減または防止するのにより強力な効果をもつことができる。
本発明者らの先の出願PCT/AU98/00490号において、ヒトC5aのC末端の或る類似体の3次元構造を述べ、この情報を、ヒトC5a受容体(C5aR)に結合して、C5aの作用物質または拮抗剤のいずれかとして振舞う新規化合物を設計することに使用した。推定上の拮抗剤は受容体結合および拮抗剤活性のためにC末端アルギニンおよびC末端カルボキシルの両者を必要とするであろうと以前は考えられていた。実際にはC5aRへの高親和性結合のためにも拮抗剤活性のためにも末端カルボキシル基は一般的には必要とされないことを本発明者らは示した。本発明者らは、そうではなくてこれまで認められていなかった構造上の特徴である回転配座が、好中球上のヒトC5a受容体への高親和性結合のための鍵となる認識特性であることを発見した。本発明者らの国際出願PCT/AU01/01427で述べたように、我々はこれらの発見を、疎水基がC5a受容体との相互作用のために疎水的配列に集合することが可能になるように束縛した構造鋳型を設計することに使用した。これらの明細書の開示全体をここでの参照により本明細書に組み込む。
運動の障害は人口の高齢領域の間で特に深刻な健康問題となる。これらの運動障害はしばしば脳の病変または神経変性疾患の結果である。運動障害の結果になる脳幹神経節に関連する障害には、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病およびウィルソン病が含まれる。さらに、運動異常がしばしば脳虚血および他の神経障害の後遺症として生ずる。
神経変性疾患は、一般に運動および/または認知機能の容赦のない低下に関連する慢性で進行性の疾患である。アルツハイマー病、ハンチントン病、前頭側頭骨痴呆(ピック病)、レーヴィ体形成を伴う痴呆、パーキンソン病、クロイツフェルトヤコブ病および新しい変種クロイツフェルトヤコブ病などのプリオン関連疾患、および筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病としても知られている)など、或るものは脳中におけるタンパク質凝集体の沈着と関連している。多発性硬化症など他のものは自己免疫機序に伴って生ずる。外傷、感染、先天的代謝異常、脳出血または脳血栓の結果として起こる脳傷害は、麻痺および/または認知機能障害を含む重症の能力障害の非常に一般的な原因である。運動ニューロン疾患は一群の重症の神経系障害を含み、各神経系障害は運動ニューロンの進行性変性により特徴づけられる。運動ニューロン疾患は、脳から髄質または脊髄に通じる上位運動ニューロン、および/または脊髄から体の筋肉に通じる下位運動ニューロンに影響することがある。痙縮および過剰な反射運動は上位運動ニューロンの損傷を示す。神経の供給を失った筋肉の進行性の萎縮および脱力感は下位運動ニューロンの損傷を示す。この群の疾患には、筋萎縮性側索硬化症、進行性延髄麻痺、幼児性および若年型を含む脊髄性筋萎縮症、クーゲルバーグヴェランダー症候群、デュシェンヌ麻痺、ウェルトニッヒホフマン病、および良性限局性筋萎縮症が含まれる。これら全ての疾患は極度に悲惨で、どの治療の選択も限られていてしかも非常に費用がかかるか、または有効な治療が現在のところ存在しない。それ故、これらの疾患の改良された治療法、および特にもっと費用効率の高い治療に対する差し迫った必要性がある。
異常な遺伝病の1種であるポリグルタミンリピート病群は表現促進と呼ばれる現象を示し、両親は症状を示さないことがあるが、その子供達の50%は発病する。この系統群には、ハンチントン病および脊髄延髄性筋萎縮症を含む他の神経変性疾患、脊髄小脳性運動失調の幾つかの形態、および歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症が含まれる。これらの疾患は特定の遺伝子中のトリヌクレオチドリピートにより特徴付けられ、そのリピートが、不溶性の凝集体の形成を生ずる対応するタンパク質中のポリグルタミン配列をコードしている。しかしながら、この原因となるタンパク質はその他の点では関係なく、知られた機能を有していないこともある。このタンパク質凝集体が病変を誘起する機序は未だ不明である。
ハンチントン病の症状には、舞踏病(運動調整の喪失の結果として起こる手足のぎごちない動き)、発語、嚥下、集中および記憶の困難ならびに抑欝などの精神医学症状が含まれる。世代を継ぐ毎に発症年齢が下がり、一方疾患の重症度は増大する。
ハンチントン病に特有のタンパク質、ハンチンチンは知られた機能を有していない。ハンチンチンをコードする遺伝子の第1エクソンは、一連のトリヌクレオチドCAG(グルタミン)リピートを含み、このリピートは、世代間で自然に増えていく。この増加が35リピートという臨界閾を超えると、ハンチンチンタンパク質の正常機能を乱す。その結果生ずる神経毒性の効果が大脳皮質および線条体のニューロンを殺して、記憶、高度の認知機能、および運動の調整に壊滅的な影響を及ぼす。特徴的な線条体病変が観察される。
全てのヒトがこの遺伝子を持っているが、前記トリヌクレオチドリピート数が5と35の間であれば、影響はない。しかしこの数を超えると前記遺伝子は不安定になって、自発的に増加する。前記リピート数は発症年齢に強く関係している。200リピートで1または2歳の子供達が症状を呈し始めることがあり、これらの子供達は幼児期の早期に死亡するであろう。これとは対照的に、35から39のリピートを有する個々人は発病するとは限らず、発病する人達も生涯の非常に遅くに発病する傾向がある。また、前記欠陥遺伝子が父性的に遺伝すると、この疾患はより早く発症し、より急速に重症化するように思われる。
約50,000人の1人が罹患するケネディ病(脊髄延髄性筋萎縮症)はこの系統群のもう1つの疾患であって、アンドロゲン受容体タンパク質にポリグルタミンリピートまたは拡張を生ずる変異によって惹起される(La Spada、1991年)。この疾患はヒトではX染色体連関であって、通常男性では40台で発症し、運動ニューロン喪失、筋萎縮および精巣病変に至る。アンドロゲン受容体に結合するテストステロンが、この疾患の進行を制御することにおいて、重要な役割を演じているかもしれないということが提唱されている。女性の方が循環テストステロンは著しく少なく、このことが神経変性の速度に影響している可能性がある。
パーキンソン病の4つの典型的な症状は、震え、硬直、運動不能および姿勢の変化である。パーキンソン病はまた通常、鬱、痴呆および総体的認知低下とも関連している。パーキンソン病は全人口の1,000分の1の有病率で、60歳を超えた年齢の人達では100分の1に増加する。黒質中のドーパミン作動性のニューロンの変性およびその結果である線条体中におけるドーパミン組織間腔濃度の減少は、この疾患の発症にとって極めて重要である。臨床症状が現れる前に、黒質由来の細胞の約80%が破壊される必要がある。
パーキンソン病の治療のための現在の戦略は、伝達物質補充療法 (L-ジヒドロキシフェニル酢酸(L-DOPA))、モノアミンオキシダーゼの阻害(例えばデプレニール(登録商標))、ドーパミン受容体作用物質(例えばブロモクリプチンおよびアポモルフィン)および抗コリン作動薬(例えばベンズトロフィンおよびオルフェナドリン) に基づいている。しかしながらこれらの治療、特に伝達物質補充療法は、一貫性のある臨床上の利点を提供しない。長期の伝達物質補充療法の後では、「オンオフ」症状が発現して、この治療は無定位運動症および舞踏病、吐き気および嘔吐という不随意の動作にも結びつく。その上、現在の療法は根底にある神経変性障害を治療しておらず、その結果治療にも拘らず患者は継続する認知低下を示す。
当業界における最近の進歩にも拘らず、依然として運動障害、特にハンチントン病およびパーキンソン病、およびALSなどの神経変性疾患のための改良された療法に対する大きな必要性がある。特に、必要な投薬の頻度を減らし、重い副作用の減少および/または軽減に結びつき、および/または根底にある神経変性障害を制御または回復させる効果的治療が求められている。
ハンチントン病、前頭側頭骨痴呆(ピック病)、多発性硬化症、アルハイマー病、パーキンソン病および加齢関連神経変性(痴呆)を含む多くの神経変性疾患の病因に、ならびに脳卒中または外傷による急性脳傷害に、炎症機序が関わっている可能性があると広く考えられていたにも拘らず、これらの疾患における補体の役割の可能性には比較的少ししか注意が払われていなかった。ハンチントン病、前頭側頭骨痴呆(ピック病)およびアルハイマー病における補体活性化は研究されており、補体成分が正常および病気の脳の両方で広く発現していることは知られている。補体活性化因子C1r、C4およびC3、補体制御因子C1阻害剤、クラステリン、MCP、DAFおよびCD59、およびアナフィラトキシンC3aおよびC5aに対する受容体を含む補体経路の幾つかの成分の上方制御が、ハンチントン病患者の脳中で検出されている。ハンチントン病における尾状核ニューロン中に蓄積する変異ハンチンチンがC1qに結合し、それにより補体古典経路の活性化を開始する可能性があることが提唱された(Singhraoら、1999年)。
しかしながら、C5a受容体の阻害剤、および特にこの受容体の低分子量拮抗剤が、炎症を伴う神経または神経変性疾患の治療に役立つかもしれないことを提案する証拠はこれまでなかった。
「G protein-coupled Receptors」、IBC Biomedical Library Series 1996年 PCT/AU98/00490 PCT/AU01/01427 PCT/AU02/01427 Remington、「The Science and Practice of Pharmacy」第2巻、2000年(第20版)、A. R. Gennaro(編)、Williams & Wilkins (ペンシルバニア州) 「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第20版(Williams & Wilkins (2000年)) 「The British National Formulary」第43版(British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of great Britain、2002年; http://bnf.rhn.net) GoodmanおよびGilman著、「The Pharmacological Basis for Therapeutics」(第7版、1985年) Langer、Science、249巻、1527頁(1990年) Gavrieli,Y.ら、J.Cell.Biol.、119巻、493頁(1992年)
この度、本発明者らは、驚いたことに、C5a受容体の低分子量拮抗剤である小環状ペプチドが、代謝性虚血に誘起された神経細胞死の動物モデルにおいて神経損傷を防止または軽減し得ることを発見した。この動物モデルは種々の神経疾患、特に線条体の病変に関連する疾患のためのモデル系として使用される。本発明者らはALSの動物モデルにおいても生存の向上および運動機能喪失の遅延を示した。
第1の態様により、本発明は炎症を含む神経または神経変性疾患の治療方法を提供するものであって、該方法はそのような治療を必要とする被検者に有効量のC5a受容体阻害剤を投与する工程を含む。好ましくは、前記疾患は補体経路の増大した活性に関連した疾患である。
好ましくは、前記阻害剤は
(a)C5a拮抗剤であり、
(b)実質的に作用物質活性を有せず、
(c)式Iの環状ペプチドまたはペプチドミメティック化合物である
化合物である。
[式中、AはH、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキル、またはO-アリールであり、
Bはアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチル、もしくはインドール基、またはL-フェニルアラニンもしくはL-フェニルグリシンなどのD-もしくはL-アミノ酸の側鎖であるが、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシン、またはL-ホモチロシンの側鎖ではなく、
Cはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリン、またはチオプロリンなどのD-、L-またはホモ-アミノ酸の側鎖などの小さな置換基であるが、好ましくはイソロイシン、フェニルアラニン、またはシロヘキシルアラニンなどの嵩高い置換基ではなく、
DはD-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタメート、またはD-チロシンなどの中性D-アミノ酸の側鎖であるが、好ましくはグリシンもしくはD-アラニンの側鎖などの小さな置換基、D-トリプトファンなどの嵩高な平面状側鎖、またはD-アルギニンもしくはD-リジンなどの嵩高な荷電側鎖ではなく、
EはL-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよびL-ホモトリプトファンからなる群から選択されたアミノ酸の側鎖などの嵩高な置換基であり、またはL-1-ナフチルもしくはL-3-ベンゾチエニルアラニンであるが、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチル-L-テトラヒドロイソキノリン、L-シクヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニン、またはL-ヒスチジンの側鎖ではなく、
FはL-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリン、もしくはL-カナバニンの側鎖、またはそれらの生物学的等価体(bioisostere)、すなわち、末端グアニジンもしくは尿素基は保持されるが、炭素骨格が、異なった構造をもつが、側鎖が全体として親基と同様に標的タンパク質と反応するような基により置換された側鎖であり、また
Xは-(CH2)nNH-または(CH2)n-S-(nは1から4の整数、好ましくは2または3);-(CH2)2O-;-(CH2)3O-;-(CH2)3-;-(CH2)4-;-CH2COCHRNH-;または-CH2-CHCOCHRNH-(Rは一般的な、または一般的でないアミノ酸の側鎖である)である]
Cにおいて、ヒドロキシプロリンおよびチオプロリンのcisおよびtrans型の両者が使用できる。
好ましくは、Aはアセトアミド基、アミノメチル基、または置換もしくは非置換スルホンアミド基である。
好ましくは、Aが置換スルホンアミドである場合、置換基は炭素原子1から6、好ましくは1から4のアルキル鎖、またはフェニルもしくはトルイル基である。
特に好ましい実施形態において、前記化合物はC5aRに対する拮抗剤活性を有し、しかもC5a作用剤活性は実質的に有しない。
前記化合物は、好ましくは、ヒト多形核白血球、単球、リンパ球およびマクロファージを含むが、これらに限定されないヒトおよび哺乳動物細胞上のC5a受容体の拮抗剤である。前記化合物は、好ましくは、C5a受容体に強くかつ選択的に結合し、さらに好ましくはサブマイクロモルの濃度で強力な拮抗剤活性を有する。さらに一層好ましくは、この化合物はIC50<25μMの受容体親和性、およびIC50<1μMの拮抗剤力価を有する。
最も好ましくは、前記化合物は国際特許出願PCT/AU02/01427号に記載した化合物1(PMX53;AcF[OP-Dcha-WR]、化合物33(PMX273;AcF[OP-Dphe-WR])、化合物60(PMX95;AcF[OP-Dcha-FR])もしくは化合物45(PMX201;AcF[OP-Dcha-WCit])、またはHC-[OPdChaWR](PMX205)またはHC-[OPdPheWR](PMX218)である。これらの環状ペプチドの構造は図1に例示してある。
1つの好ましい実施形態で、前記化合物は血液脳関門を通過できる。特に好ましい実施形態において、前記化合物はPMX205またはPMX53である。
本発明の1つの好ましい形態では、疾患は線条体病変および/またはポリグルタミンリピートに関連した神経変性疾患である。
本発明のこの形態において、さらに好ましくは、前記疾患がハンチントン病、脊髄延髄性筋萎縮症、脊髄小脳性運動失調、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、線条体障害、およびI型グルタル酸性尿に関連した急性線条体壊死からなる群から選択される。
本発明のもう1つの好ましい形態において、前記疾患は筋萎縮性側索硬化症、進行性延髄麻痺、幼児性および若年性を含む脊髄性筋萎縮症、クーゲルバーグヴェランダー症候群、デュシェンヌ麻痺、ウェルトニッヒホフマン病、および良性限局性筋萎縮症などの運動ニューロン疾患である。
本発明の第3の好ましい形態では、前記疾患はパーキンソン病、アルツハイマー病、ウィルソン病、および血液脳関門の機能不全に関連する疾患を含む脳虚血および他の神経疾患の後遺症として生ずる病状を含むが、これらに限定されない神経変性および/または虚血性損傷を含む疾患である。線条体部位は最も一般的に卒中の発症する脳の領域であって、3-NPが脳無酸素症を誘起するので3-NPモデルは脳卒中の有用なモデルである。特別の関心があるパーキンソン型疾患は、パーキンソン病、薬剤誘起パーキンソン症候群、脳炎後パーキンソン症候群、中毒により誘起されたパーキンソン症候群(例えばMPTP、マンガンまたは一酸化炭素)および外傷後パーキンソン症候群(拳闘酔態症候群)である。前記療法が有益である他の運動疾患には、進行性核上麻痺、ハンチントン病、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、ウィルソン病、ハレルフォルデンスパッツ病(脳に鉄蓄積を伴う神経変性)、進行性淡蒼球萎縮、ドーパ反応性ジストニアパーキンソン症、痙縮、アルツハイマー病および結果として異常な運動または姿勢を生ずる脳幹神経節の他の疾患が含まれる。
前記阻害剤はこれらの疾患の治療のために1つまたは複数の他の薬剤と併用して使用できる。例えば、トレハロース、コパキソン、短単鎖オリゴヌクレオチド、クレアチン、ミノシクリンおよびヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含む種々の薬剤がハンチントン病の治療のために提案されている。グルタミン酸経路拮抗剤であるリルゾンは、ALSの治療のために承認されている。また、クレアチン、組換え型ヒトIGF-1および毛様体神経栄養因子は全てこの疾患のための臨床試験中である。正常SOD1遺伝子を導入する遺伝子治療と組み合わせたRNA干渉を使用して、異常SOD1の抑制により家族性型のALSを治療できたということが最近提言された(Raoulら、2005年; Ralphら、2005年)。しかしこの取り組みは臨床に到達するのに何年もかかることになりそうである。抗アンドロゲン薬のリュープロレリンが脊髄延髄性筋萎縮症の治療のために試験中である(Katsunoら、2003年)。伝達物質補充剤L-ジヒドロキシフェニル酢酸(L-DOPA)、デプレニール(登録商標)などのモノアミンオキシダーゼ阻害剤、ブロモクリプチンおよびアポモルフィンなどのドーパミン受容体作用物質およびベンズトロフィンおよびオルフェナドリンなどの抗コリン作動薬が現在パーキンソン病の治療に使用されている。
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入、経鼻、経直腸または経皮使用のために製剤化できるが、経口または非経口製剤が好ましい。本発明の全部ではないとしても大部分の化合物は、腸、血液、肺の酵素または細胞内酵素などの代謝酵素の存在下で安定であろうと期待される。そのような安定性は当業者に知られている日常的方法によって容易に試験できる。
場合によっては、製剤は前記化合物の血液脳関門を通過しての移動を促進する薬剤またはキャリアーを含むことができる。幾つかのそのような薬剤、例えばマンニトールなどの浸透活性剤が当業者に知られている。
いかなる所望の経路による投与に適した製剤も、標準的な方法例えばRemington著「The Science and Practice of Pharmacy」第2巻、2000年(第20版)、A. R. Gennaro(編)、Williams & Wilkins (ペンシルバニア州)などのよく知られたテキストを参照することにより調製できる。
本発明はいかなる特定の動物または種の治療にも何ら限定されるものではないが、本発明の方法はヒトの医学的治療に有用であり、また獣医学的治療、特に猫および犬などのペット、牛、馬および羊などの家畜、およびヒト以外の霊長類、大型のウシ科、ネコ科、有蹄類およびイヌ科を含む動物園動物の治療にも有用であろうということが特に考えられる。
前記化合物はいかなる適当な投与量およびいかなる適当な経路によっても投与できる。経口、経皮または経鼻投与が好ましい。それはこれらの経路の至便性および受容性が大きいからである。有効な投与量は治療する疾患の性質、ならびに個々の治療の年齢、体重、および基調の健康状態に依存するであろう。これは担当の医師または獣医師の判断にかかることであろう。適当な投薬量レベルは当業者によく知られた方法を使用して試行錯誤の実験により容易に決定できる。
これから本発明を次の一般的方法および実験例のみを参照する方法によって説明することとする。
本明細書の目的から、「含んでいる」という用語は「含んでいるが限定はされない」を意味すること、および「含む」も対応する意味を有することは明確に理解されるであろう。
本明細書で使用する単数形は、文脈が明らかに他の場合を示していない限り、複数を指すことも含む。それ故、例えば、「酵素」という言い方は複数のそのような酵素を含み、「アミノ酸」という言い方は1または複数のアミノ酸を指す。
値の範囲が示される場合、その範囲は範囲の上限および下限ならびにこれらの限界の間の全ての値を含むことは明確に理解されるであろう。
特に断らない限り、本明細書で使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で記載したものと同様または同等のいかなる材料および方法も本発明を実施または試験するために使用できるが、ここでは好ましい材料および方法を記載する。
本明細書で使用する略記号は次の通りである。
C5aR C5a受容体
Cit シトルリン
dCha D-シクロヘキシルアミン
DPhe D-フェニルアラニン
IL-6 インターロイキン-6
ip 腹腔内
i.v. 静脈内
LPS リポ多糖類
MPO ミエロペルオキシダーゼ
3-NP 3-ニトロプロピオン酸
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PMN 多形核顆粒球
PMSF フッ化フェニルメチルスルホニル
po 経口的に
sc 皮下の
TdT 末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ
TNF-α 腫瘍壊死因子アルファ
本明細書を通してアミノ酸を表わすために通常の1字および3字コードを使用する。
本明細書の目的には、「アルキル」という用語は、炭素が1から6、好ましくは1から4の直鎖、分岐、または環状の置換もしくは非置換アルキル鎖を意味すると受け取るべきである。最も好ましいアルキル基はメチル基である。「アシル」という用語は炭素原子1から6、好ましくは1から4の置換または非置換アシルを意味すると受け取るべきである。最も好ましいアシル基はアセチルである。「アリール」という用語は、環が好ましくは5もしくは6員環である置換もしくは非置換の単素環式または複素環式アリール基を意味すると理解すべきである。
「一般的な」アミノ酸は、グリシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、メチオニン、アルギニン、リジン、プロリン、セリン、トレオニンおよびヒスチジンなる群から選択されたL-アミノ酸である。
「一般的でない」アミノ酸には、D-アミノ酸、ホモアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、デヒドロアミノ酸、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン以外の芳香族アミノ酸、オルト-、メタ-、もしくはパラ-アミノ安息香酸、オルニチン、シトルリン、カナバニン、ノルロイシン、γ-グルタミン酸、アミノ酪酸、L-フルオレニルアラニン、L-3-ベンゾチエニルアラニン、およびα,α-二置換アミノ酸が含まれるが、これらに限定はされない。
本明細書では一般的に、「治療する」「治療」等の用語を、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得るために、被検者、組織または細胞に影響を及ぼすことを意味して使用する。その効果は、疾患またはその徴候もしくは症状を完全にまたは部分的に防止する点から見て予防的であるかもしれず、および/または疾患の部分的または完全な治癒の点から見て治療的であるかもしれない。
本明細書で使用する「治療する」は脊椎動物、哺乳類、特にヒトにおける疾患のいかなる治療または予防をも包含し、その含むところは、疾患に罹る素因はあるが未だ罹っていると診断されていない被検者での疾患の発症を防止すること;疾患を阻止すること、すなわちその発生を阻むこと;または疾患の影響を軽減することもしくは寛解させること、すなわち疾患の影響の後退を起こさせることである。
本発明は疾患を回復させるための有用な種々の薬剤組成物の使用を含む。本発明の1つの実施形態による薬剤組成物は、式Iの化合物、その類似体、誘導体もしくは塩と1もしくは複数の薬理学的に活性な薬剤とを、または式Iの化合物と1もしくは複数の薬理学的に活性な薬剤との配合物を、担体、賦形剤および添加剤もしくは助剤を使用して被検者に投与するために適した形態にすることにより調製する。
しばしば使用される担体または助剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖類、タルク、牛乳タンパク質、ゼラチン、澱粉、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物および植物油、ポリエチレングリコールならびに滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールなどの溶媒が含まれる。静脈注射用賦形剤には液体で栄養素の補液が含まれる。保存剤には抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスが含まれる。他の薬理学的に許容し得る担体には、例えば、内容を参照により本明細書に組み込む「Remington's Pharmaceutical Sciences」第20版(Willams & Wilkins (2000年))および「The British National Formulary」第43版(British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of great Britain、2002年; http://bnf.rhn.net)に記載されているような塩、保存剤、緩衝剤等を含む水溶液、非毒性賦形剤が含まれる。薬剤組成物の種々の成分のpHおよび正確な濃度は当業者の日常的技能により調節する。GoodmanおよびGilman著、「The Pharmacological Basis for Therapeutics」(第7版、1985年)を参照されたい。
前記薬剤組成物は好ましくは投与単位で調製して投与する。固体の投与単位には錠剤、カプセルおよび座剤が含まれる。被検者の治療のために、化合物の活性、投与方法、疾患の性質および重症度、および被検者の年齢および体重に依存して、異なった日間投与量が使われる。しかしある状況下では、日間投与量を上げるかまたは下げることが適当なこともある。日間投与量の投与は、個々の投与単位の形で単回投与によるか、または、そうでなければ幾つかの小さい投与単位にして特定の間隔での細分した投与単位の複数回の投与によるかのいずれによっても実施できる。
本発明の薬剤組成物は治療的に有効な投与量で局所的にまたは全身的に投与できる。この使用のために有効な量は、勿論、疾患の重症度および被検者の体重および全身状態に依存する。通常、in vitroで使用した投与量が、薬剤組成物のin situ投与で有用な量に役立つ指針を提供し、また動物モデルが細胞毒性副作用の治療のための有効投与量を決定するために使用できる。種々の考慮すべき事柄が、例えば、Langer、Science、249巻、1527頁(1990年)に記述されている。経口使用のための製剤は、硬質ゼラチンカプセルの形態にすることができ、カプセル中で活性成分が不活性な希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されている。製剤は軟質ゼラチンカプセルの形態にしてもよく、製剤中で活性成分は水またはピーナツ油、液体パラフィンまたはオリーブ油などの油性媒体と混合されている。
水性懸濁液は、通常、水性懸濁液を製造するために適した賦形剤との混合剤中に活性物質を含有している。そのような賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムなどの懸濁剤;分散または湿潤剤であってよく、分散または湿潤剤になり得るものは、
(a)レシチンなどの天然産ホスファチド;
(b)アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン;
(c)エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール;
(d)ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエイトなどエチレンオキシドの脂肪酸とヘキシトールとからの部分エステルとの縮合生成物;または
(e)エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエイト
である。
薬剤組成物は無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液の形態にすることができる。この懸濁液は、上で述べたような適当な分散もしくは湿潤剤および懸濁剤を使用して知られた方法により製剤化できる。前記無菌注射用製剤は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のような、無毒性で非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。利用できる許容可能な賦形剤および溶媒の中に、水、リンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。それに加えて、無菌固定油が溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的には、合成モノ-またはジグリセリドを含むいかなるブランドの固定油も利用できる。それに加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射液の調製に使用できる。
式Iの化合物は、小単層小胞、大単層小胞、および多層小胞などのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなど種々のリン脂質から形成できる。
本発明の式Iの化合物の投与レベルは、通常、体重キログラム当り1日約0.5mgから約20mgのオーダーであり、好ましい投与量の範囲は体重キログラム当り1日約0.5mgから約10mgの間である(患者当り1日約0.5gから約3g)。単回投与製剤を製造するために担体と配合する活性成分の量は治療すべき受容者および具体的投与法に依存して変わるであろう。例えば、ヒトへの経口投与を意図した製剤は、適当で手頃な量の担体材料と共に約5mgから1gの活性化合物を含むことができ、担体材料は全組成物の約5から95パーセントで変えることができる。投与単位製剤は、活性成分を通常約5mgから500mgの範囲で含むであろう。
しかしながら、どのような患者のための具体的投与レベルも、使用する具体的化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性、食事、投与時間、投与経路、排出率、薬剤の組合せおよび治療を受ける具体的疾患の重症度を含む種々の要因に依存するであろうということは理解されるであろう。
それに加えて、本発明の化合物のあるものは、水または普通の有機溶媒と溶媒和物を形成することがある。そのような溶媒和物は本発明の範囲内に包含される。
本発明の化合物はまた、効力のある組合せを提供するために、他の治療用化合物と組み合わせることができる。前記組合せが本発明の化合物の活性を失わせない限り、薬理学的に活性な作用薬の化学的に適合できるいかなる組合せも含むことが意図されている。
(一般的方法)
〈ペプチド合成〉
式Iの化合物の環状ペプチドは、その開示全体を参照により本明細書に組む込む本発明者らの先の出願PCT/AU98/00490号およびPCT/AU02/01427号で詳細に述べた方法により調製する。対応する線状ペプチドがAc-Phe-Orn-Pro-dCha-Trp-Argである化合物AcF-[OPdChaWR](PMX53)を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明がこの化合物に限定されないことは明確に理解されるであろう。
国際特許出願PCT/AU98/00490号に開示した化合物1〜6、17、20、28、30、31、36、および44、および国際特許出願PCT/AU02/01427号にはじめて開示した化合物10〜12、14、15、25、33、35、40、45、48、52、58、60、66および68〜70は、ヒト好中球上のC5a受容体に対して相当の拮抗剤力価(IC50<1μM)を有する。PMX205、PMX53、およびPMX273、PMX201およびPMX218が最も好ましい。
個々の化合物の物理化学的性質、力価、および生物学的利用能は具体的な置換基により若干変動するが、これまで試験した全ての式Iの化合物は広く同様な薬理学的活性を有することを、本発明者らは発見した。
以下で述べる一般試験は、Gタンパク質結合受容体、および特にC5a受容体の候補阻害剤の初期スクリ-ニングのために使用できる。
〈薬剤調製および製剤化〉
ヒトC5a受容体拮抗剤AcF-[OPdChaWR](AcPhe[Orn-Pro-D-シクロヘキシルアラニン-Trp-Arg])は、上記のようにして合成し、逆相HPLCによって精製し、質量分析法およびプロトンNMR分光法によって十分にキャラクタライズした。前記C5a拮抗剤は経口投与のために蒸留水中で製剤化した。
〈受容体結合アッセイ〉
先に述べたように(Sandersonら、1995年)、50mM HEPES緩衝液、1mM CaCl2、5mM MgCl2、0.5%ウシ血清アルブミン、0.1%バシトラシンおよび100μMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を使用して単離したフレッシュなヒトPMNを用いて、アッセイを行う。4℃で実施するアッセイでは、緩衝液、非標識ヒト組替えC5a(Sigma)または試験ペプチド、ハンター/ボルトン法により調製した標識125I-C5a(〜20pM)(New England Nuclear社、マサチュセッツ州)およびPMN(0.2×106)を、最終容積200μL/ウェルのミリポアのマルチスクリーンアッセイプレート(HV 0.45)に順次加える。4℃で60分間インキュベーションの後、試料を濾過してプレートを緩衝液で1回洗浄する。フィルターを乾燥し、打ち抜いてLKBガンマカウンターで計数する。非特異的結合を1mMペプチドまたは100nM C5aを用いて評価したところ、それは通常全結合の10〜15%になる。
データを非線形回帰および統計のダネットの事後検定により解析する。
〈拮抗剤活性を目的とするミエロペルオキシダーゼ放出アッセイ〉
細胞は先に述べたようにして単離し(Sandersonら、1995年)、サイトカラシンBとインキュベートする(5μg/mL、15分、37℃)。0.15%のゼラチンおよび試験ペプチドを含むハンクス平衡塩類溶液を96ウェルのプレート(全容量100μL/ウェル)に加え、次に細胞25μL(4×106/mL)を加える。C5aに拮抗する各ペプチドの能力を評価するために、細胞を各ペプチドと37℃で5分間インキュベートし、次にC5a(100nM)を加えてさらに5分間インキュベートする。次に50μLのリン酸ナトリウム(0.1M、pH6.8)を各ウェルに加え、プレートを室温に冷やし、ジメトキシベンジジン(5.7mg/mL)およびH2O2(0.51%)の新鮮な等容量混合物25μLを各ウェルに加える。反応は10分で2%のアジ化ナトリウムを加えて停止させる。Bioscan450プレートリーダーで450nmの吸光度を測定し、対照値(ペプチドなし)に対して補正し、非線形回帰により解析した。
〈動物および細胞モデル〉
3-ニトロプロピオン酸(3-NP)(酵素コハク酸デヒドロゲナーゼの阻害剤)が、齧歯類および霊長類で、ハンチントン病に特徴的な運動性、損傷性および/または認知に関する影響を誘起することは十分確立されている(Brouilletら、1999年; Palfiら、1996年; Blumら、2001年)。3-NPは代謝的に誘起した無酸素症により選択的に線条体領域で神経死を誘起する。このモデルは、ハンチントン病および他の疾患の治療のための候補薬の評価に使われてきた。選択的線条体病変が3-NPにより誘起されるので、この系は、有機酸代謝の先天的欠陥であるI型グルタミン酸尿症を患う幼児に共通する急性線条体壊死のモデルとしても提案されている(StraussおよびMorton、2003年)。血液脳関門、グルタミン酸作動性の興奮毒性、グルタミン酸輸送およびドーパミン作動性の毒性への3-NPの効果ゆえに、これが脳卒中、血液脳関門の機能不全、神経変性もしくは神経免疫障害、および神経/グリア細胞死の研究ための有用なモデルであるということも提唱されている(Nishinoら、2000年)。C3/C4受容体の発現がこのモデルの線条体病変において検出されている(Shimanoら、1995年)。
変異スーパーオキシド1(SOD1)であるSOD1 G93Aを発現しているトランスジェニックラットは、候補の治療用化合物の試験のために広く使用されているALS用の十分認知されたモデルである。SOD1 G93Aを発現しているトランスジェニックラットは約115日で後肢衰弱を発現する。これらの動物に見られる病状は、末期疾患でアストログリアのグルタミン酸輸送体EAAT2の非常に顕著に減少している変異SOD1マウスモデルで観察される病状と同様であって、ALSの病因におけるEAAT2機能不全に対する役割を支持する。この輸送体は細胞外グルタミン酸塩レベルを低く維持する主要な手段であって、その減少は細胞外グルタミン酸塩レベルが増加する結果になり、運動ニューロンの興奮毒性の変性に通じる。運動ニューロン減少に先立って、EAAT2発現の変化が最も早期に検出される(Howlandら、2002年)。
ハンチントン病に対しては2つのトランスジェニックマウスモデルが利用可能であり、1つはヒトハンチンチン遺伝子のノックイン115トリヌクレオチドリピートを有し(Mangiariniら、1996年)、他方はそれ自身のハンチンチン遺伝子中にヒト遺伝子の決定的な第1エクソンのノックインコピーを有する。
ニューロ2a細胞が、増強した緑色蛍光タンパク質に融合した60または150のグルタミンを含む切断N末端ハンチンチンを発現する細胞モデルも記述されている(Wangら、1999年)。
ケネディ病(脊髄延髄性筋萎縮症)のマウスモデル(筋肉衰弱および不妊を含むヒトのこの病気の大部分の症状を表わす)が、最近開発された(McManamnyら、2002年)。
脊髄小脳性運動失調-1のためのマウスモデルが記述されている(Klement.T.A.ら、Cell、95巻、41〜53頁、1998年)
〈一般的実験プロトコル〉
特に断らない限り、本発明の研究で利用した3-NP神経毒性の誘起のためのプロトコルは、本発明者らが56mg/kg、5日間ではなく、42mg/kg/日、7日間を使用したこと以外は、Blumら(2001年;2002年)のものと同様であった。簡単に述べると、PBS(0.1M、pH7.4)中で90mg/mLの3-NP溶液を調製し、5M NaOHでpH7.4に調整した。この溶液を満たしたAlzet浸透ミニポンプ(モデル2ML1、10μL/hrで7日間送液)を、12週齢オスLewisラットに埋め込んで、各ラットが正確に42 mg/kg/日を受けるようにした。
ラットは個別のケージで飼育した。これらのラットをケタミン、キシラジンおよびゾラザパムで麻酔した。ポンプは各ラットの背中の肩甲骨の間を切除してs.c.挿入し、切除部は創クリップで閉じた。麻酔から回復の後、次の7日間にわたって食物摂取、体重および神経の状態を毎日評価した。標準的な基準による神経の、および行動の評価も、群の識別情報を知らされていない観察者により、幾つかの点で実施した。
ラットは次の群に分けた:
試験 試験薬を、3-NP投与(第2日)より2日前から実験終了まで、飲料水に入れ、およびs.c.注射により、または経口胃管栄養法により投与した。
偽手術 偽手術した対照; 3-NP無投与
無治療 3-NPを投与するが、他に治療せず。
比較 インフリキシマブ(5mg/kgを第0日に単回i.v.注射)またはイブプロフェン(飲料水中30mg/kg)投与

スコア付けは次の通り:
ジストニア:
ジストニアなし: -0
1後肢の間歇的ジストニア: -1
2後肢の間歇的ジストニア: -2
後肢の持続的ジストニア: -3

歩行:
正常歩行: -0
ぎごちない歩行およびよろめき: -1

横臥:
軽度の横臥: -1
(動物が横向きに横たわっているが、刺激があるとぎごちない動きを示す)
瀕死状態の横臥: -2

ケージの把握:
前肢でケージを把握できる -0
前肢でケージを把握できない -1

台に乗せる試験:
台上に10秒間とどまれる: -0
台上に10秒間とどまれない: -1

合計点 8
試験終了後、ラットはキシラジンおよびケタミンで深く麻酔した。次に前記ラットは血液を除去するために約100mLの硝酸ナトリウム溶液で、続いてin situで脳を固定するために約400mLのホルムアルデヒド溶液で灌流した。次に脳を注意深く取り出して、病理学処理の前に少なくとも3日間ホルムアルデヒド溶液中で保存した。スライドはクレジルバイオレットで染色して光学顕微鏡により検査した。
(実施例1:PMX53の効果についてのパイロットスタディ)
予備実験により、42mg/kg/日で7日間投与すると前記モデルの再現性ある誘起が得られることが示されていた。前記モデル系でPMX53の効果を試験するために小規模なパイロットスタディを実施した。次の合計12匹のラットを使用した。
偽手術 2
無治療 5
PMX53 5
PMX53は飲料水中に毎日2mg/kgの投与量で、3-NP投与の2日前から投与を始めた。これらのPMX53治療動物には、食事をしていないので水を飲んでいないかもしれないと考えられるという理由で、第0、3、6および8日に1mg/kgのs.c.投与を行った。続く実験では、この交絡因子の可能性を回避するために、動物には2日前から胃管栄養法により毎日投与を行った。この初期の実験では、7日後に前記ポンプを取り外し、軽度のハロタン麻酔下に皮膚を縫合し、その後7日間ラットを毎日検査した。
結果を図2A〜2Dに示す。これらは、無治療およびPMX53治療ラットの両者とも体重および食物消費の減少に続いて快復を示したが、偽手術ラットは実験期間中継続する成長を示したことを示している(図2Aおよび図2B)。PMX53治療ラットは、第5〜7日の体重減少が顕著に小さくなり(P<0.05、n=5;図2A)、同様に第5〜7日の食物摂取が顕著に多くなっている(P<0.05、n=5;図2B)。無治療ラットは、3-NP注射の期間中神経学的/行動性スコアにおいて急激な増加を示し、その増加は第4日に始まって第7日にピークになり、その後低下して第12日(すなわち注射停止後5日)には少しだけ上昇したレベルになった。対照的にPMX53治療ラットは、スコアがやはり第7日にピークのある僅かな増加を示しただけで、その後低下して第12日には少しだけ上昇したレベルになった。PMX53治療ラットは、第4〜9日の神経学的/行動性スコアが顕著に低下した(P<0.05、n=5; 図2C)。偽手術処置したラットは、実験期間中スコアに顕著な変化を示さなかった。
組織学的に、この予備的検討における無治療ラットの脳の線条体切片は、細胞壊死および病変を示していて、先に論文に発表された所見と一致した(図2D)。しかし、PMX53で治療したラットは線条体領域において対照よりも少ない壊死細胞しか示さなかった。
7日後に全てのラットが快復し始めたことがわかったので、群間の相違が最大になった期間で、すなわち最初の7日間の後、実験継続を中止することを決定し、それでポンプを取り外す必要がなかった。
(実施例2:他の薬剤との比較)
PMX53の効果を、式Iの第2の化合物PMX205(ヒドロシンナメート-[OpdChaWR](HC-[OPdChaWR]))の効果、および既知の抗炎症剤イブプロフェンおよびインフリキシマブの効果と比較した。ラットの群および各群の数は次の通りであった。
偽手術 4
無治療 6
PMX53 4
PMX205 4
イブプロフェン 5
インフリキシマブ 4
3-NP投与の2日前から、PMX53(10mg/kg/日)およびPMX205(10mg/kg/日)を胃管栄養法により毎日投与し、イブプロフェン(30mg/kg/日)を飲料水に入れて投与した。インフリキシマブは第0日に5mg/kgをi.v.注射で単回投与した。
結果を図3A〜3Dに示した。図2Aおよび2Bは、7日後の体重増加および食物消費の程度が、実施例1で観察されたものと同様であったことを示している。神経学的/行動性スコアにとって、PMX53およびPMX205の両方とも3-NPの有害効果に対する顕著な保護を提供したが、一方インフリキシマブは効果を示したとしても少しだけで、イブプロフェンは第5日までだけ効果を示した(図3C)。
図3Dに示したように、無治療ラットの脳の線条体領域の切片の組織学的検査は、顕著な細胞壊死および実施例1で観察したものより大きい程度の目に見える巨視的な病変を示した。PMX53で治療したラットは、線条体領域に、実施例1のPMX53治療ラットの切片と同様なより少ない壊死細胞を示した。
この実験をもっと多数の動物、および本発明の他の化合物、PMX201を含むように拡張した。それに加えて、ニッスル染色で染色した脳切片の写真を検討し、コンピューターソフトウェアを使用して病変のサイズを計算することにより、脳中の病変のサイズを求めた。動物の群は次の通りである。
無治療 26
PMX53 21
PMX205 19
PMX201 3
インフリキシマブ 10
イブプロフェン 12
結果は図4にまとめ、試験した3つのPMX化合物が全て3-NPの有害効果を軽減したことを示す。PMX53およびPMX205は試験した4つの全てのパラメーターに対して統計的に有意であった。しかし、PMX201で治療した動物の数が化合物の使用可能量によって制限されたので、有意性を評価するには少な過ぎた。実験のこの部分は、より多くの化合物PMX201が使用可能になったので、繰り返しているところである。
(実施例3:PMX53類似体の効果)
式Iの次の化合物を実施例2で述べたのと同様にして試験した。
PMX205: HC-[OPdChaWR]
PMX273: AcF-[OPdPheWR]
PMX201: AcF-[OPdChaWシトルリン]
PMX218: HC-[OPdPheWR]
全ての薬剤は2日前から胃管栄養法により10mg/kg/日の投与量で投与する。この投与量が有効であることがわかれば、投与量と反応の関係を決定するために3および1mg/kg/日またはそれ未満の投与量も試験する。PMX53についての投与量と反応の関係も決定する。
これらの薬剤の効果は、インフリキシマブ(第0日に5mg/kgの単回i.v.注射)および飲料水に入れたイブプロフェン(30mg/kg)の効果とも比較する。
(実施例4:実施例2の試料の組織学的および組織化学的検査)
実施例2で使用したラットの脳組織のパラフィン切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、顕微鏡下で検査した。図5に示すように、病変の周囲および内側で炎症性細胞の広範な浸潤が明らかであり、このことは図5bに例示したように、好中球のナフチルエステラーゼでの特異的染色によって確認した。
TUNEL(TdT媒介dUTPニック末端ラベリング)アッセイ(Gavrieli,Y.ら、(1992年)、J.Cell.Biol.、119巻、493頁)は、アポトーシスの重要な生化学的証明である核DNA断片化を測定するものである。この方法は、脊髄性筋萎縮症の1形態であるウェルトニッヒホフマン病における運動ニューロンのアポトーシスを示すために使用されてきた(Simicら、2000年)。それ故脳切片は、標準的キット(ApopTag Plus/TUNEL法;Chemicon社)を使用して、TUNEL分析のためにも染色できる。興味ある領域を含む脳の線条体切片は、スライドに固定して脱パラフィンした。次にスライドをプロテイナーゼK(20μg/mL)で前処理し、内因性ペルオキシダーゼを3%過酸化水素で失活させた。次に平衡緩衝液を加え、続いてTdT酵素により1時間処理した。それから試料を洗浄し、抗ジゴキシゲニン結合体を30分間加えておいた。次にペルオキシダーゼ基質(シアミノベンジジン)を加え、6分間で発色させた。次に試料を0.5%メチルグリーンで対比染色して、パーマウントで封入した。切片は各工程の間でPBS(0.1M、pH 7.4)に入れて洗浄した。図5cは病変が明らかにアポトーシス細胞を含んでいたことを示す。
全ての場合に、C5a受容体拮抗剤であるPMX53およびPMX205を用いる治療が、好中球浸潤を完全に防止して、アポトーシスの程度を減少させた。
(実施例5:免疫組織化学的分析)
実施例2のラット脳の切片も種々の補体成分に対する特異的抗体で染色した。標準キット(IHC Select; Chemicon社)をC3、C9およびC5a受容体の切片を染色するために使用した。
C5a受容体(C5aR)染色のために、一次モノクローナル抗体である抗ラットC5aRはHyCult Biotechnology社から購入した。この抗体はラットC5a受容体に対して特異的であることが示されている(Rothermelら、2000年)。興味ある領域を含む脳線条体切片をスライドに固定して、脱パラフィンした。スライドは抗原をアンマスキングするためにクエン酸緩衝液(pH6.0)により80℃で40分処理した。次にスライドを血清で、続いて1:100希釈一次抗体でブロックして、2時間インキュベートした。それから内因性ペルオキシダーゼを3%過酸化水素で失活させて、二次抗体(ウサギ抗マウスIgG)を2時間加えた。次に切片をストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼとインキュベートして、次にジアミノベンジジンと6分間または発色するまでインキュベートした。それから切片をパーマウントで封入した。全ての切片は各工程の間でPBSに入れて洗浄した。
C3染色のために、ウサギ抗ラットC3抗体をBethyl Laboratoriesから購入した。このポリクローナル抗体はある程度までキャラクタライズされている(Julianら、1992年)。C9染色のために、ウサギ抗ラットC9抗体をBPモーガン教授(University of Wales、College of Medicine、Cardiff)から入手した。この抗体はよくキャラクタライズされている(Liningtonら、1989年)。これらの抗体は、抗体を1:10の濃度でインキュベートして、ヤギ抗ウサギIgG二次抗体を使用したこと以外は、上記のように使用した。C5a受容体の染色を示す代表的結果を図6に例示する。濃く染色された細胞が、おそらくC5aを発現している活性化ミクログリア細胞で、病変の縁部の周囲に見出される。偽手術をした動物は検出可能な染色を示さなかった。
補体成分C3およびC9のおよびC5a受容体の強い上方制御も病変縁部周囲で観察された。これは補体活性化およびそれと同時に起こるC5a受容体発現増大がこのモデルの病理における決定的な過程であることを示し、このようにして本発明のC5a受容体拮抗剤で見られる顕著な治療効果が説明される。細胞死に通じる不明瞭な障害、すなわちミトコンドリア性虚血に続くこれらのラットの脳中における補体の顕著な上方制御は、脳における補体活性化および上方制御が、脳卒中、外傷および神経変性疾患など種々の種類の脳障害において作用する共通の経路であるかもしれないことを示唆している。
(実施例6:3-NPモデルにおけるさらなる検討)
補体C5aは脳細胞(ニューロンおよびグリア)上の上方制御されたC5a受容体に結合し、炎症性細胞浸潤、および最終的な病変形成(脳細胞壊死/アポトーシス)を促進すると想定される。目に見える病変が検出できる前に脳中の補体活性化が起こるのかどうかを知ることを目的として、このモデルで使われた7日間を通して種々の時点でラットを検査する実験が現在進行中である。
C5a拮抗剤が病状を回復することができるかどうかを確かめるために他の研究も進行中である。本発明者らは現在、3-NP投与開始後2日からPMX2O5(10mg/kg/日po)をラットに投与中である。
線条体細胞培養物または線条体の脳切片を、細胞損傷を誘起するために3-NPの存在下にin vitroでインキュベートする。それから、この損傷を防止する能力を評価するためにC5a拮抗剤を培養物に加える。この方法はin vivoでさらに試験する候補薬剤を選択するための予備的スクリーニングアッセイとして有用であろうと期待される。
(実施例7:ALSのためのモデルにおけるC5a受容体拮抗剤の効果)
変異SOD-1遺伝子(G63A)の1コピーをもつトランスジェニックSDラットを、Howard Florey Institute for Physiology and Medicine(メルボルン、オーストラリア)から購入した。これらのラットは、ヒトの疾患に見られるものと強い類似性のある運動ニューロン病(MND;筋萎縮性側索硬化症(ALS))の急性形態を、約110〜140日齢から自然に発症する。実際、G63A変異は家族性のALSでヒト患者の10〜20%に見られるのと同じ変異である。
これは、C5a受容体拮抗剤の有効性を研究するために適当なモデルを提供する。初期の研究で、オスのラットをPMX53(n=6)、PMX205(n=2)、または無治療の疾患対照群として水だけ(n=10)のいずれかで治療した。ラットが70日齢になったときに治療を開始した。薬剤は飲料水中に約1mg/kg/日で投与した。野生型(WT)SDラット(G63)3匹の群を偽手術対照動物として含めた。その後、次の尺度を用いて、運動障害の徴候についてラットを毎日モニターした。
後肢(左右についてのスコア):
異常なし
目立つ筋肉衰弱(尾を掴んだとき傾くか揺れる)
極度の筋肉衰弱(背屈不能)
両肢麻痺

歩行:
異常なし
異常歩行、麻痺歩行その他

立直り反射(仰向けにされたとき立ち直る時間):
0秒 (うまく仰向けにできない)
<1秒 (またはラットが直ぐに立直らない)
<5秒
5〜10秒
>10秒 →この時点で安楽死させる
体重も毎日記録した。ラットは、立直り反応のスコアが4に達したとき、または体重減少がピーク時の20%を超えたときに安楽死させた。
安楽死に続いて、各ラットは食塩水(100mL)で、次に組織を固定するためにホルムアルデヒドで灌流した。次に脳、脊髄および両足の後部腓腹筋を切除して、組織学、組織化学および電子顕微鏡検査のために試料を採取した。
結果を図7に示す。図7Aに例示したように、治療しなかった無治療ラットは101日齢から運動機能喪失の徴候を示し、平均116±4日で発症した。PMX53で治療したラットは平均124±10の発症日齢で、一方PMX205治療ラットは138±7の発症日齢であった。それ故、PMX205治療群の発症には明確な、PMX53治療群にはそれより小さい程度の遅延があった。PMX205で見られた効果を確認するために、動物の数を多くしてこの実験を繰り返している。
図7Bは時間経過に伴う異なる群のラットの生存百分率を示す。やはり、2匹のPM205治療ラットで明確な死亡の遅延があった。PMX53治療群では、無治療動物に比較して可能性として小さな改善があった。
図7Cは時間経過に伴う運動症状の発症を示す異なる群のラットの百分率を示す。図7Cに示した生存率のように、2匹のPMX205治療ラットで運動発症の明確な遅延がある。PMX53治療ラットでは、無治療ラットに比較して小さな改善の可能性がある。
図7Dは、C5a拮抗剤治療ラットにおいて、体重の最初の減少と運動機能の最初の観察可能な低下との間の期間に増加があったことを示す。この結果は、特にPMX205治療ラットにおいて目立った。このことはこの薬剤で治療したラットにおける生存の延長が、病気の進行の遅れの結果かもしれないことを示唆している。
これらの結果は、C5a受容体拮抗剤がこのトランスジェニックラットのMNDモデルで治療効果を有することを示す。特に前記データはPMX205がPMX53よりも大きな有効性および/または効能を有することを示唆している。このことは他の疾患モデルにおけるこれら2つの化合物で観察された傾向と一致している。それで、このモデルでさらに研究するためにPMX205の大きなバッチを調製した。
(実施例8;C5a受容体拮抗剤で治療したトランスジェニックラットの組織の検討)
C5a受容体拮抗剤が運動ニューロンの死を減少させ、その結果生存を延長しているのかどうかを決定する目的で、脊髄および運動皮質中の運動ニューロンの数を推定するために実施例7からの脊髄および脳の試料について、現在組織学的分析を実施中である。C5a拮抗剤が筋肉自体を変性から保護しているかどうかを決定する目的で、終板変性の徴候を求めて後肢腓腹筋を電子顕微鏡技法を使用して検査中である。補体の上方制御がこの疾患の病因に含まれているかどうかを解明する目的で、実施例5で述べたように、C5a受容体を含む異なった補体成分に対する抗体で、切除した脊髄および運動皮質を免疫化学的に染色する。
(実施例9:PMX205治療の時間の効果)
疾患の症状の予期される発症の約1〜2ヶ月前に、C5a受容体拮抗剤を投与したときに、有益な効果が得られたことを図7に示した。早めの治療が治療反応を改善するかどうかを試験する目的で、オスSOD-1ラットの1群(n=12)に、28日齢からPMX205(飲料水中1mg/日)を投与している。
薬剤療法が活動期の疾患を回復できるかどうかを知る目的で、症状発症後の種々の病期でラットに投与する効果を調べる。
メスのラットも試験する。
(実施例10:PMX化合物は血液脳関門を通過するか?)
PMX化合物が血液脳関門を通過できるかどうかを確かめるために、メスのウィスターラット(250〜300g)を麻酔してから、3mg/kgのPMX53(AcF-[OPdChaWR])、PMX205(HC-[OPdChaWR])、PMX201(AcF-[OPdChaWCit])またはPMX200(HC-[OPdChaWCit])を大腿部静脈を通して静脈注射した。それからラットを15分間放置した時点で、血漿を回収するために血液試料を尾部から採取して、次に脳から血液を除去するためにラットを心臓穿刺により150mLの食塩水で灌流した。それから脳を解剖した。血漿および脳の試料を薬物動態分析のために調製して、各試料中のPMX化合物を定量した。結果は、血液中のレベルの百分率として脳中で定量したレベルとして表わして、図8に示す。
PMX化合物で治療した全てのラットは、i.v.投与後15分で脳中にある程度の吸収を示した。PMX53、PMX205またはPMX201のいずれかを投与したラットは同程度のレベルの吸収(〜7%)を示したが、PMX200はそれより低い程度の吸収を示した。
これらの結果は、C5a受容体拮抗剤が、全身投与後に血液脳関門を通過できること、および化合物の末端アルギニンの正電荷をシトルリンによる置換によって除去することは吸収に影響しないように思われることを示している。その上、ヒドロシンナメートまたはシトルリンのいずれかでの置換によりPMXの親油性を増大することも吸収を変化させない。このことは、PMX200は例外として、PMX化合物の一貫したかつ比較的高い取り込みと相俟って、血液脳関門通過の特有の輸送体機序を可能性として示す。
血液脳関門を通るPMXの吸収は、種々の経路による投与(i.v.、i.p.、s.c.、p.o.他)に続く前記化合物の脳への吸収の詳細な薬理動態プロフィールを作成することによってさらに探求する。これは化合物投与後の種々の時点でのサンプリングを含む。脳脊髄液の試料も化合物投与後の種々の時間で採取する。PMX化合物の脳への蓄積も慢性的にラットに投与してから脳をサンプリングすることによって調べる。
(実施例11:さらなる細胞および動物モデルにおける試験)
上に述べたように、ハンチントン病への本発明の化合物の効果の一層の研究のためには、in vitroでの検討のためのNeuro2a細胞における細胞モデルおよびin vivoのためのトランスジェニックマウスが利用できる。マウスモデルはケネディ病(脊髄延髄性筋萎縮症)および1型脊髄小脳性運動失調のためにも知られている。
式Iの化合物は、Neuro2a細胞モデルを使用してin vitroの最初のスクリーニングにかけることができる。化合物の適当な投与量は、所定の試行錯誤の実験を使用して容易に定めることができる。
このモデルまたは3-NPモデルで有効とわかった化合物は、1または複数のトランスジェニックマウスモデルを使用してin vivoでも試験する。
食物摂取および体重減少の知見が、本発明の化合物の示す毒性は最小限であることを示すので、PMX53はリューマチ性関節炎および乾癬で臨床試験を実施中である。当業者は、本明細書に掲載した神経および神経変性疾患の治療において式Iの化合物の有効性および安全性を試験する臨床試験プロトコルを容易に設計できるであろう。
本発明を明確にして理解させる目的で幾分詳細に説明したが、本明細書で開示した本発明の発明概念の範囲から離れることなく、本明細書で記述した実施形態および方法に種々の改良および改変がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。
本明細書で引用した参考文献を次頁に掲載し、この参照により本明細書に組み込む。
[参考文献]
本発明の好ましい化合物の構造を示す図である。 図2は、3-NPラットモデルへのPMX53の効果のパイロットスタディの結果を示す図である。図2Aは、体重変化を示す。 図2Bは、食物消費を示す。 図2Cは、神経学的/行動性スコアを示す。 図2Dは、線条体区域における壊死の程度を例示する、偽手術した(A)、無治療の(B)およびPMX53治療した(C)ラットの線条体の代表的なクレジルバイオレット染色切片を示す。 図3は、PMX53または比較薬を経口胃管栄養法により投与した実験結果を示す図である。図3Aは、第7日での体重変化を示す。 図3Bは、第7日での食物消費を示す。 図3Cは、神経学的/行動性スコアを示す。 図3Dは、線条体区域における壊死の程度を例示する、偽手術した(A)、無治療の(B)、PMX53治療した(C)、PMX205治療した(D)ラットの第7日での線条体の代表的なクレジルバイオレット染色切片を示す。 図4は、実施例2で報告した拡大研究で得られた結果を示す図である。図4Aは、7日目の体重変化を示す。 図4Bは、7日目の食物消費を示す。 図4Cは、神経学的/行動性スコアを示す。 図4Dは、ラット脳のニッスル染色切片の分析により定量した病変サイズを示す。 実施例2のラットの脳切片の組織学的および組織化学的検査結果を示す図である。 (a)ヘマトキシリンおよびエオシン染色 (b)ナフチルエステラーゼ染色 (c)アポトーシスの検出のためのTUNEL染色 実施例2のラットの脳切片の免疫組織化学的検査結果を示す図である。 ALSのトランスジェニックラットモデルにおける本発明の化合物での治療効果を示す図である。 (a)運動機能喪失の発症時期 (b)生存百分率 (c)時間経過に伴う運動症状の発症を示す各群におけるラットの百分率 (d)最初の体重減少と運動性症状発症との間の遅延 i.v.注射後の脳中における本発明の化合物のレベルを示す図である。

Claims (31)

  1. 炎症を含む神経または神経変性疾患の治療方法であって、そのような治療を必要とする対象者に有効量のC5a受容体阻害剤を投与する工程を含む治療方法。
  2. 前記疾患が補体経路の増大した活性と関連するものである請求項1に記載の方法。
  3. 前記阻害剤が、
    (a)C5a受容体の拮抗剤であり、
    (b)実質的に作用物質活性を有さず、
    (c)下記の式Iの環状ペプチドまたはペプチドミメティック化合物である、
    請求項1または2に記載の方法。
    [式中、AはH、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキル、またはO-アリールであり;
    Bはアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチル、またはインドール基、またはD-もしくはL-アミノ酸の側鎖であるが、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシン、もしくはL-ホモチロシンの側鎖ではなく;
    CはD-、L-またはホモ-アミノ酸の側鎖であるが、イソロイシン、フェニルアラニン、またはシクロヘキシルアラニンの側鎖ではなく;
    Dは中性D-アミノ酸の側鎖であるが、グリシンもしくはD-アラニンの側鎖、嵩高な平面状側鎖、または嵩高な荷電側鎖ではなく;
    Eは嵩高な置換基であるが、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチルL-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニン、またはL-ヒスチジンの側鎖ではなく;
    FはL-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリン、もしくはL-カナバニンの側鎖、またはそれらの生物学的等価体であり;かつ
    Xは-(CH2)nNH-または(CH2)n-S-(nは1から4の整数);-(CH2)2O-;-(CH2)3O-;-(CH2)3-;-(CH2)4-;-CH2COCHRNH-;または-CH2-CHCOCHRNH-(Rは一般的な、または一般的でないアミノ酸の側鎖である)である]
  4. nが2または3である請求項3に記載の方法。
  5. Aがアセトアミド基、アミノメチル基、または置換もしくは非置換スルホンアミド基である請求項3または4に記載の方法。
  6. Aが置換スルホンアミドであり、かつ前記置換基は1から6の炭素原子のアルキル鎖、またはフェニルもしくはトルイル基である請求項5に記載の方法。
  7. 前記置換基は1から4の炭素原子のアルキル鎖である請求項6に記載の方法。
  8. BがL-フェニルアラニンまたはL-フェニルグリシンの側鎖である請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. Cがグリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリン、またはチオプロリンの側鎖である請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. DがD-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタメート、またはD-チロシンの側鎖である請求項3から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. EがL-フェニルアラニン、L-トリプトファン、およびL-ホモトリプトファンからなる群から選択されたアミノ酸の側鎖であるか、またはL-1-ナフチルもしくはL-3-ベンゾチエニルアラニンである請求項3から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記阻害剤がC5aRに対する拮抗剤活性を有し、かつC5a作用物質活性を有しない化合物である請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記阻害剤がサブマイクロモル濃度で強力な拮抗剤活性を有する請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記化合物がIC50<25μMの受容体親和性およびIC50<1μMの拮抗剤力価を有する請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記化合物がPCT/AU02/01427に記載された化合物1から6、10から15、17、19、20、22、25、26、28、30、31、33から37、39から45、47から50、52から58および60から70からなる群から選択された化合物である請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記化合物がPMX53 (AcF[OP-DCha-WR])、PMX205 (HC-[OPdChaWR])、PMX273 (AcF[OP-DPhe-WR])、PMX201 (AcF[OP-DCha-WCit])またはPMX218 (HC-[OPdPheWR])である請求項14に記載の方法。
  17. 前記化合物がPMX205またはPMX53である請求項16に記載の方法。
  18. 前記化合物が血液脳関門を通過できる請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記疾患が線条体病変および/またはポリグルタミンリピートに関連する神経変性疾患である請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記疾患がハンチントン病、脊髄延髄性筋萎縮症、脊髄小脳性運動失調、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、線条体障害、およびI型グルタル酸尿症と関連する急性線条体壊死からなる群から選択される請求項19に記載の方法。
  21. 前記疾患が運動ニューロン疾患である請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記疾患が筋萎縮性側索硬化症、進行性延髄麻痺、幼児性および若年性を含む脊髄性筋萎縮症、クーゲルバーグヴェランダー症候群、デュシェンヌ麻痺、ウェルトニッヒホフマン病、および良性限局性筋萎縮症からなる群から選択される請求項20に記載の方法。
  23. 前記疾患が神経変性および/または虚血性障害を含む請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、ウィルソン病、および血液脳関門の機能不全に関連する疾患を含む、脳虚血および他の神経疾患の後遺症として生ずる病状からなる群から選択される請求項23に記載の方法。
  25. 前記疾患が運動疾患である請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記疾患が進行性核上性麻痺、ハンチントン病、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、ウィルソン病、ハレルフォルデンスパッツ病(脳に鉄蓄積を伴う神経変性)、進行性淡蒼球萎縮、ドーパ反応性ジストニアパーキンソン症、痙縮、アルツハイマー病および結果として異常な運動または姿勢を生ずる脳幹神経節の他の疾患からなる群から選択される請求項23に記載の方法。
  27. 前記阻害剤が神経または神経変性疾患の治療のための1つまたは複数の他の薬剤と併用して使用される請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 他の薬剤がインフリキシマブまたはC3a阻害剤である請求項27に記載の方法。
  29. 炎症を含む神経または神経変性疾患の治療用医薬の製造におけるC5a受容体阻害剤の使用。
  30. 前記疾患が補体経路の増大した活性に関連するものである請求項29に記載の使用。
  31. 前記化合物が請求項3から18のいずれか一項で定義されている、請求項29または30に記載の使用。
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