JP2007521333A - 中枢神経系の活動を調節するための組成物および方法 - Google Patents

中枢神経系の活動を調節するための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達のアゴニストを投与することにより、うつ病ならびに他の中枢神経系行動障害および/または情動障害を処置するための方法および組成物に関する。本発明方法により処置できる他の障害には、注意欠陥障害、非アルツハイマー型認知症、および記憶消失の各種症状が含まれる。本発明はまた、これらの機能に影響を及ぼす疾患に罹患している患者、および記憶機能または認知機能の欠陥が診断されない対象の両方において、記憶機能および/または認知機能を増強するための方法および組成物に関する。本発明の方法および組成物は、神経発生および分化を刺激し、ニューロンのシナプス伝達を増強する。

Description

発明の詳細な説明
発明の背景
hh遺伝子ファミリー
[0001] 最初のヘッジホッグ(hh)遺伝子は、ミバエであるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)における遺伝子スクリーニングにより同定された(Nusslein-Volhard, C. and Wieschaus, E. (1980) Nature 287, 795-801)。このスクリーニングにより、胚や幼虫の発生に影響を及ぼす多数の変異が同定された。1992年および1993年に、ショウジョウバエhh遺伝子の分子性が報告され(参照:Lee et al. (1992) Cell 71, 33-50)、それ以後、多種の脊椎動物から数種類のhh相同体が単離された。ショウジョウバエおよび他の無脊椎動物のゲノム中には1種類のhh遺伝子が見いだされたにすぎないが、脊椎動物には複数のhh遺伝子が存在する。
[0002] 脊椎動物のhh遺伝子ファミリーには、少なくとも4つのメンバー、すなわちショウジョウバエの単一hh遺伝子のパラログが含まれる。hh遺伝子およびタンパク質の例は、PCT公開WO 95/18856およびWO 96/17924に記載されている。これらのメンバーのうち3つ、すなわち本明細書中でdesertヘッジホッグ(Dhh)、sonicヘッジホッグ(Shh)およびindianヘッジホッグ(Ihh)と呼ぶものは、魚類、鳥類および哺乳動物を含めたすべての脊椎動物に存在すると思われる。第4メンバー、すなわち本明細書中でtiggie-winkleヘッジホッグ(Thh)と呼ぶものは、魚類に特異的であると思われる。Dhhは、マウスの胚発生時ならびにげっ歯類およびヒトの成体の両方において、主に精巣に発現する;Ihhは、胚形成中の骨発生および成体における骨形成に関与する;Shhは、前記のように主に形態形成および神経誘導性活動に関与する。
[0003] 種々のヘッジホッグ(Hh)タンパク質が、高度に保存されたN末端領域であるシグナルペプチド、およびより多様なC末端ドメインを含む。Hh前駆タンパク質は、分泌経路におけるシグナル配列開裂のほかに、C末端部分の保存配列に依存した内部自己タンパク質分解性開裂を行なう。この自己開裂により、19 kDaのN末端ペプチド(それが合成された細胞の表面に強固に結合した状態を維持する)および26〜28 kDaのC末端ペプチド(インビトロおよびインビボのいずれでも、自由に拡散できる)が生成する。生化学的研究により、Hh前駆タンパク質の自己タンパク質分解性開裂は内部チオエステル中間体を経て進行し、これが続いて求核置換において開裂することが示された。求核体は親油性低分子であり、これがN-ペプチドのC末端に共有結合してN-ペプチドを細胞表面に繋ぎ止めると思われる。この繋ぎ止めの結果、Hh産生細胞の表面に高い局部濃度のN末端Hhペプチドが生成する。ショウジョウバエおよび脊椎動物において短領域および長領域Hhシグナル伝達活性に必要かつ十分なものは、このN末端ペプチドである。
発生および分化におけるヘッジホッグの役割
[0004] Hhファミリーのシグナル伝達分子のメンバーは、無脊椎動物および脊椎動物の発生に際して、多数の重要な短領域および長領域パターン形成プロセスを仲介する。ハエにおいては、単一のhh遺伝子が分節および成虫盤のパターン形成を調節する。これは、初期胚の分節極性の確立に際しては直接仲介されると思われる短領域作用をもつが、成虫盤のパターン形成に際しては二次シグナルの誘導により長領域作用を誘発する。これに対し脊椎動物においては、hh遺伝子ファミリーが左右非対称、中枢神経系、体節および手足の極性、器官形成、軟骨形成ならびに精子形成の制御に関与する。
[0005] 脊椎動物において、この数年間に数種類のhh遺伝子がクローニングされた。これらの遺伝子のうちShhは、隣接組織をパターン形成するシグナルの起源である種々の組織化中枢に発現するので、実験上最も多くの関心がもたれている。最近の証拠は、マウス、ニワトリおよびミノカサゴにおいて実験室で観察されたこれらの相互作用に、Shhが関与することを示している。Shhは中枢神経系(”CNS”)の発生に重要な役割をもつと思われる。
[0006] Hhファミリーのタンパク質および発生におけるそれらの役割についての詳細な記載は米国特許公開No. 2003-0139457中にみられ、その開示内容全体を本明細書に援用する。
[0007] Hhポリペプチドと直接相互作用することが知られているあるタンパク質は、遺伝子patchedによりコードされる(Chen, Y. et al. (1996) Cell 87:553)。patchedは、最初はショウジョウバエにおいて、細胞分化に影響を及ぼす発生遺伝子グループのひとつである分節極性遺伝子として同定された。patchedタンパク質は2つの大きな細胞外ドメイン、12の膜貫通セグメント、および幾つかの細胞質セグメントをもつ。参照:Hooper, J.E. et al. (1989) Cell 59:751; およびNakano, Y. et al. (1989) Nature 341:508; Johnson, R.L. et al. (1996) Science 272:1668; ならびにHahn, H. et al. (1996) Cell 85:841。遺伝子および機能の研究により、patchedはHhシグナル伝達カスケードの一部であることが証明されている;これは進化に際して保存された経路であって多数の下流遺伝子の発現を調節する。参照:Perrimon, N. (1995) Cell 80:517; およびPerrimon, N. (1996) Cell 86:513。patchedは、smoothened遺伝子によりコードされる他の膜貫通タンパク質と一緒に、Hh受容体複合体の一部をなすと考えられる。
[0008] patchedのヒト相同体がクローニングされ、染色体9q22.3にマッピングされた。参照:Johnson(前掲)およびHahn(前掲)。
[0009] smoothened遺伝子は、上記受容体の下流にあってHhシグナルを細胞内シグナルに伝達する膜貫通タンパク質をコードする。Alcedo, J. et al. (1996) Cell 86(2): 221-232; van den Heuvel, M. et al. (1996) Nature 382:547-551。Hhシグナル伝達経路には、gli-1、gli-2およびgli-3遺伝子によりコードされるタンパク質も見いだされた。Gli-1は活性化転写因子であり、Gli-3は抑制性転写因子である。Dai, P. et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:8143-8152。
うつ病
[0010] 国立精神保健研究所(National Institute of Mental Health)によれば、毎年約1900万人の米国成人が何らかの形のうつ病に罹患しており、これは成人10人中1人である。女性は男性の2倍、うつ病エピソードを示すと考えられている。しかし、男性におけるうつ病は過少報告され、しばしば多様な身体愁訴、たとえば活力低下、疼痛や痛み、食欲低下または睡眠障害に隠されていると考えられる。
[0011] うつ病は、米国の小児の2.5%および十代の8.3%を襲う。完全なうつ病は中年で開始することが最も多いが、軽度のうつ病、または気分変調は、小児または十代の年齢で開始する場合がある。小児および十代のうつ病は、しばしば行動問題、不安または物質乱用と共存する。American Journal of Psychiatryの研究によれば、年齢だけがうつ病に有意の影響をもつとは思われない。しかし、うつ病は高齢者においては過少報告されていると思われる。うつ病の症状は時には認知症(痴呆症)と誤診され、うつ病を人格虚弱とみなす不名誉な見方が高齢者世代ではなお広く存在する。うつ病を治療するためのメディケア適用が無いことも、過少報告の原因であろう。
[0012] 3つの主カテゴリーのうつ病が現在知られている:大うつ病または単極性うつ病;気分変調、すなわち持続的な軽度のうつ病;および双極性障害、これは双極性感情障害または躁うつ病としても知られる。もうひとつのカテゴリーは循環性気質と呼ばれ、これは躁状態とうつ状態を特色とするが、双極性障害または大うつ障害という診断に適合するには重症度も期間もまだ不十分である。
[0013] 大うつ病は少なくとも2週間持続し、その間に患者は下記のうち少なくとも4つのうつ病徴候を示す:時には体重の増減をもたらす食欲変化;不眠、またはより低頻度ではあるが過眠;会話や他の作業の実行のスローダウン、または逆に情動不安および静坐不能;多くの時間における活力喪失または疲労感;無力感または過度の罪悪感。
[0014] 気分変調は、成人で少なくとも2年間、小児および十代で少なくとも1年間続く、軽度の持続的なうつ病である。抑圧された気分が2カ月以上高揚せず、下記の症状のうち少なくとも2つがみられる:過食または食欲低下;不眠または過眠;活力低下または疲労感;自己過小評価;集中力障害または決断障害;失望感。
[0015] 双極性障害には、常に1回以上の高揚行動または躁行動のエピソードが含まれる。しばしば、抑うつのエピソードも含まれる。躁エピソード期間中、患者は一般に1週間以上にわたって著しく発揚的、誇大的または刺激的に感じ、下記の症状のうち少なくとも3つを伴う:誇大妾想または過大な自己評価;睡眠欲求が正常より低下;性急な会話願望;観念の競合(racing thoughts)および被転導性(逸らされやすさ);活動亢進、これは目標に向けて注がれ、または激越として現われる可能性がある;快楽追求欲動、これは性的逸脱、浪費、または多様な計画につぎ込まれ、しばしば悲惨な結果を伴う可能性がある。
[0016] うつ病は多数の潜在原因をもつ。これはしばしば、単一要因ではなく幾つかの要因、たとえば遺伝的易損性、ある形のストレス、または脳の化学的状態の変化の組合わせが引き金となる。ストレスとうつ病の関係が示唆されており、ある種のストレス、たとえば過去の心的外傷または喪失感(たとえば小児期の身体的もしくは性的虐待、親の死、または愛していた者の感情の離脱)はより大きな影響をもつ。これらの事象の体験が後にうつ病を発症するリスクを高めることが、研究により示されている。うつ病は再発の可能性もある。大うつ病は再発性の高い疾患であることが、研究により示されている。参照:Solomon, D.A. et al. (2001) Am. J. Psychiatry 158(5):819-20; Stoudemire, A. (1997) J. Neuropsychiatry Clin. Neurosci. 9(2):208-21。他の形のうつ病、たとえば双極性障害も再発性が高いと考えられている。
[0017] うつ病を誘発する単一遺伝子はないが、遺伝子変異の組合わせが特定の形のこの疾患に対する易損性を高める可能性のあることが、遺伝子研究により示されている。うつ病の遺伝子成分は突き止められていない。最も明瞭な遺伝的関係は双極性障害にみられる(たとえば一親等血族の完全躁病体験は、双極性障害の発症を12%変化させる)。うつ障害は、易損性を形成する遺伝子型が過去の心的外傷または喪失感または慢性的ストレスを含めた環境要因と相互作用して増幅された場合に起きるのであろうと専門家は考えている。
[0018] うつ病または躁病の症状がある種の医薬、たとえばステロイドまたは血圧薬物療法の副作用である可能性もある。医原病(medical illnesses)または薬物療法がすべてのうつ病の約10%〜15%の原因であると考えられる。気分障害の医学的原因(medical causes)のうち最もよく知られているものは、2種類の甲状腺ホルモン平衡異常である。甲状腺ホルモン過剰、すなわち甲状腺機能亢進は躁病症状の引き金となる可能性がある。甲状腺機能低下、すなわち体内での甲状腺ホルモン産生が不足した状態は、しばしば極度疲労およびうつ病をもたらし、数百万人の米国人(主に女性または高齢者)が罹患している。そのほか気分障害の医学的原因の可能性としては下記のものが含まれる:変性性神経状態、たとえば多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病;卒中;ある種の栄養欠乏、たとえばビタミンB12欠乏;ホルモン平衡異常をもたらす他の内分泌障害、たとえば副甲状腺または副腎の活動亢進または低下;ある種の免疫障害、たとえば狼瘡;ある種の感染性疾患、たとえば単核細胞症、肝炎、およびヒト免疫不全ウィルス(HIV);ある種の癌、たとえば膵臓癌または脳癌。
[0019] しかし、うつ病の発症とこれらの病的状態およびそれに伴うストレスとの因果関係は分かっていない。少なくとも6年間持続する慢性うつ病に罹患している高齢者はあらゆるタイプの癌発症のリスクが88%高いことが、研究により示された。他の研究は、うつ病が健康上の理由で入院している高齢者の回復を遅らせることを示している。アルツハイマー病とうつ病の関係も示唆された:うつ病であった者(ただし8年以上持続した者のみ)はアルツハイマー病発症または精神力低下を経験するリスクの高いことが認められている。
[0020] さらに、ホルモンもうつ病に関係する可能性がある。エストロゲンおよびプロゲステロンは月経前症候群(”PMS”)に罹患している若干の女性について、うつ病と関係する可能性がある。分娩後うつ病、すなわち初めて母親となった者のうち70%が産後10日以内に経験する”baby blues”として知られる涙もろく、不安で情動が激変する状態は、女性のみが罹患する他の形の抑うつ障害である。男性の場合、加齢に伴うテストステロンレベル低下がうつ病、過敏症、不安、活力低下、集中力および記憶力の低下、ならびに睡眠障害に関連すると思われる。
[0021] うつ病に罹患している患者の脳における神経学的および生化学的変化が研究により示され、これにより睡眠逸脱、食欲抑制、興奮、極度疲労または無感情など、うつ病の症状を説明できる。重度のうつ病または躁病患者においては、脳が正常に機能するのに必要な脳内神経伝達物質の恒常性が撹乱状態または平衡異常になる可能性がある。たとえば、特定の神経伝達物質に対する受容体が過敏性または不感性になり、その結果、与えられた量の神経伝達物質に対する応答が過剰または不適切になる可能性がある。逆に、受容体に達する神経伝達物質の量が過剰または過小になる可能性がある;これは、その物質の産生および分泌またはその系からの物質の再取込みもしくは排出のレベルが異常であることにより起きる。したがって、そのような神経伝達物質によるシグナル伝達のバランス回復は、場合によってはうつ病の効果的な処置である。たとえば、睡眠、食欲、気分の調節を補助し、痛みを抑制する神経伝達物質セロトニンは、うつ病者では低レベルであることが認められている;セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、たとえばフロキセチン(floxetine)は、セロトニンの取込みを制限することによりセロトニンの利用可能濃度を高め、したがってある種のうつ病患者に対する抗うつ薬として有効である。
[0022] うつ病には、生化学的変化のほかに患者の脳の物理的変化が伴う;これには脳の特定領域、たとえば海馬および前前頭皮質の病変、ニューロン損失または萎縮が含まれる。たとえばSheline, Y.I. et al., (1996) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 93: 3908-3913を参照。これらの細胞損失がうつ病の病因に関与するのか、またはその結果であるのかは不明であるが、抗うつ薬がそのような神経学的変化を回復させ、症状にとって補助となりうるという指摘がある。
[0023] 一般に医師は、可能性のある医学的原因を調べ、判断の補助となる情報を引き出すことにより、うつ病を診断する。第1段階は身体検査またはスクリーニングのための道具、たとえばうつ病または双極性障害の標徴基準に基づく自己報告スケール(書き込むための症状チェックリスト)、医師が書き込むスケール、および/またはドクターやセラピストによる臨床聞取りであろう。他の検査も、診断を確認し、情報を引き出し、またはうつ病を他の心理学的問題もしくは神経学的問題と鑑別するために有用となる可能性がある;これらには、心理学テスト、たとえばミネソタ多面人格目録検査(Minnesota Multi-phasic Personality Inventory (”MMPI”))、ロールシャッハ(Rorschach)(“インクブロット”)テスト、または主題統覚検査(Thematic Apperception Test)、神経心理学テスト、たとえば改変ハルステッド-ライタンバッテリー(Halstead-Reitan battery)、神経学的検査、たとえば脳電図(”EEG”)もしくはMRI、および/またはうつ病の生物学的原因に関する検査、たとえば甲状腺機能検査が含まれる。
注意欠陥障害
[0024] 注意欠陥障害(ADD)は、発達上不適切な程の注意散漫、過活動、および衝動性を特徴とする発達障害である。症状は神経学的なものに基づき、幼児期に発症し、大部分の場合が慢性的である。症状は、肉眼的な神経損傷、感覚障害、会話障害もしくは運動障害、精神発育遅滞、または情動障害によるものではない。
[0025] 活動亢進(多動性)を伴うADDと伴わないADDは、別個の、特異な小児障害である。それらは同一の注意障害のサブタイプではない。ADD/-Hの小児はうつ病、学習能力障害または”怠惰”とされる場合の方が多く、一方、ADD/+Hの小児は伝導障害または行動障害と標記される場合の方が多いと指摘されている。
記憶機能および認知機能
[0026] 記憶、すなわち生物が情報を蓄積してそれを後に機能可能な形で検索する機能は、多数のプロセスからなり、多様な脳領域の機能を必要とする。ヒトの記憶は、陳述的追想(declarative recall)、すなわち意識的想起が可能な事実および事象と、非陳述的追想(non-declarative recall)、すなわち時間や場所に関しては蓄積されない技能や操作の手続的記憶(procedual memory)を備えている。
[0027] 記憶に追加される情報の処理は、幾つかの段階で行われる。新たに獲得した経験は、最初は多様な形の撹乱を受けやすい。しかし、時間と共にこの新たな経験は撹乱に対して抵抗性になる。この所見は、不安定な作動中の短期記憶がより安定な長期記憶に”強化される(consolidated)”ことを示すと解釈されている。この記憶強化の初期段階は、新たな思考または学習経験を受けた後、最初の数分で起きる。次の段階は、より長時間をかけて、たとえば睡眠中に行われる。学習経験が我々にとって進行中のものである場合、次の週などがさらに記憶強化の期間となる。実際に、この段階で記憶が短期から長期蓄積へと移行する。
[0028] 長期記憶の形成については多様な機序が提唱されている。広範な所見から、長期記憶の形成について進化に際して保存された分子機序が示唆される。これらの所見には、シナプス伝達物質放出およびシナプス受容体数の増加、ならびに受容体のKmの増大、シナプス前またはシナプス後構成要素における新たな記憶因子の合成、新たなシナプス結合、ならびにシナプス前膜における活動領域の増大が含まれる。シナプスの柔軟性、脳におけるニューロン結合強度の変化が、長期記憶蓄積の基礎になると考えられる。
[0029] 一連の古典的研究により、臨界時間ウインドウ中にmRNAおよびタンパク質合成を阻害すると長期記憶の形成が撹乱される可能性のあることが、分子レベルで示された。タンパク質合成を一時的に遮断しても、初期学習および以前に蓄積した情報の想起は損なわれなかった。このことから、脳の短期修飾を長期記憶に変換または強化するためには新たな遺伝子発現が必要であるという仮説が導かれた。
[0030] 記憶の強化、すなわち長期記憶は、精神発育遅滞、アルツハイマー病およびうつ病を含めた多様な神経障害および精神障害にも重大な役割をもつと考えられる。事実、長期記憶の消失または障害はそれらの疾患の重要な所見である。
認知症
[0031] 認知症(痴呆症)は、それ以前に達成した知的能力の衰退を特徴とし、人格変化、ならびに記憶、判断および抽象的思考の損傷を伴う精神障害であると定義される。それは多かれ少なかれ、日数または週数ではなく月数または年数のいずれかで測定できるほどの時間、持続する。長期間持続するが、ある型の認知症は停止または反転する可能性がある。”認知症”という用語は、健忘症、失語症、失認症または失行症において起きるような孤立した局所性機能損失に適用されるのではない。この衰退は通常は、記憶、他の認知能力および適応行動に関係する。通常は意識には大きな変化がない。患者が認知症を自覚する場合、またはしない場合がある。ほとんどすべての症例で、記憶、ならびに1以上の他の知的機能、たとえば言語、空間的または時間的見当識、判断力、および抽象的思考が有意に衰退する。ある認知症の基準は記憶以外に1以上の知的機能成分の欠損を要求し;ある基準はその欠損が全体的であること、すなわちすべての知的機能成分の欠損を伴うことを要求する。
[0032] 認知症は多数の脳障害により起きる可能性があり、これにはアルツハイマー病、ハンチントン病、多発性硬化症およびパーキンソン病が含まれる。他のタイプの認知症は血管性または多発梗塞性認知症、レーヴィ体認知症、前頭葉認知症、たとえばピック病、皮質下認知症(たとえばハンチントンまたは進行性核上麻痺)、局所性皮質萎縮症候群(たとえば原発性失語症)、代謝性-中毒性認知症(たとえば慢性甲状腺機能低下症またはB12欠乏症)、および感染症(たとえば梅毒、神経性エイズまたは慢性脳膜炎)により起きる認知症である。
発明の概要
[0033] 本発明は、中枢神経系(”CNS”)におけるHhファミリータンパク質によるシグナル伝達を調節することによりCNSの活動を調節する方法を提供する。したがって本発明は、対象の行動障害および情動障害を処置する方法、ならびに記憶機能および/または認知機能を増強または回復する方法を提供する。
[0034] 本発明の1観点は、Hhシグナル伝達経路を介して神経幹細胞を刺激することによって神経幹細胞の分化および/または移動を促進することにより、ならびに/あるいは大脳基底核領域のシナプス伝達を直接制御することにより、哺乳動物のCNSの活動を調節する方法を提供する。Hhシグナル伝達経路は、Hhポリペプチド、もしくはその活性を模倣するHhアゴニスト、または最終的にGli、特にGli-1の活性を高める化合物もしくは組成物によって活性化できる。Hhシグナル伝達経路は、たとえばこの経路内の負の調節エレメントまたは負のフィードバックエレメントのアンタゴニスト(たとえばpatched受容体のアンタゴニスト)によって増強することができる。
[0035] さらに本発明は、Hhシグナル伝達経路を介してCNSの活動を調節することにより、行動障害および/または情動障害を処置する方法を提供する。
[0036] 本発明の他の観点は、患者の認知機能および記憶機能を高める方法である。種々の薬剤でHhシグナル伝達経路を活性化し、これにより神経幹細胞の分化および移動を刺激すると、認知および記憶が改善される。本発明のさらに他の観点は、神経発生を刺激し、神経幹細胞を活性化して分化させ、損傷部位へ移動させることにより、神経細胞の損失または病変を伴う障害を処置する方法を提供する。種々の薬剤でHhシグナル伝達経路を活性化することにより、そのような分化および移動を促進できる。神経発生の促進により、既にアップレギュレートされた神経発生(これは病的状態に対する身体の補修応答であろう)を促進することができる。
[0037] 本発明の1観点によれば、エイズ関連認知症などの疾患により起きた記憶および認知が増強され、これらの疾患、および記憶機能および認知機能の低下に関連する他の障害、たとえばうつ病の症状が軽減される。さらに本発明は、記憶および認知を損なう障害の一般症状を伴わないけれども記憶機能および認知機能の改善が有益である対象において、記憶および認知の増強を提供する。
[0038] 本発明は、うつ病、パニック障害、強迫性障害、不安、痛み(特に慢性疼痛)、精神興奮性物質の乱用、偏頭痛、社会不安/恐怖障害、および心的外傷後ストレス症候群の治療または予防のための、ならびに食欲抑制薬としての、好ましくは後記の医薬組成物中におけるHhアゴニストの使用を含む。これらのいずれの目的についても、治療にはある状態の1以上の症状の部分的または完全な軽減が含まれ、予防にはある状態の1以上の症状の発症の遅延または重症度の低下が含まれる。本明細書に記載する方法はいずれかの動物、特に哺乳動物に有効であると期待されるが、特定の態様においてはヒトの処置が好ましい。
[0039] 本発明の他の観点は、Hhシグナル伝達経路を刺激する医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、Hhポリペプチドまたはその機能均等物(functional equivalent)、またはHh活性のアゴニストを含む。医薬組成物は、Hh経路の負のフィードバック系または抑制性エレメントのアンタゴニストを含むこともできる。医薬組成物は、さらに追加の療法薬、たとえば神経増殖因子または神経栄養因子を含むことができる。
[0040] 1態様において、本発明方法でこの経路を刺激する薬剤はHhポリペプチドまたはその機能均等物である。好ましくは、この薬剤はHhポリペプチドである。より好ましくは、この薬剤はShhポリペプチドである。1態様において、この薬剤はHhポリペプチドのフラグメントである。より好ましくは、この薬剤はHhポリペプチドの受容体に結合する領域を含むN末端フラグメントである。さらに好ましくは、このフラグメントはヒトHhポリペプチドの19 kDaのN末端フラグメントである。他の態様においてこの薬剤は、SEQ ID NO: 10〜19として示すHhアミノ酸配列のいずれかと少なくとも60、70、80または90%のアミノ酸配列相同性をもつポリペプチドである。
[0041] 特定の態様において、本発明方法を実施するために使用するHhポリペプチドは、成熟したプロセシングされた細胞外ドメインの1以上の内部部位において親油性部分(1以上)により修飾されており、成熟ポリペプチドのN末端またはC末端残基においても親油性部分で誘導体化されていてもよく、誘導体化されていなくてもよい。他の態様においてこのポリペプチドは、C末端残基においてステロール以外の疎水性部分で修飾されている。さらに他の態様においてこのポリペプチドは、N末端残基において環式(好ましくは多環式)親油性基で修飾されている。前記のものの多様な組合わせも含まれる。Hhポリペプチドを含めたポリペプチドの修飾の例については、米国特許出願No. 09/579680を参照;その開示内容全体を本明細書に援用する。
[0042] 本発明の他の態様において、本発明方法を実施するための薬剤は低分子アゴニストである。好ましくは、この低分子は約2500 amu未満、さらに好ましくは約1500 amu未満の分子量をもつ化合物である。
[0043] 1態様において、前記の薬剤はHhファミリーのタンパク質に対する抗体の抗イディオタイプ抗体である。そのような抗イディオタイプ抗体は、Hhポリペプチドの作用を模倣する。
[0044] 特定の態様において、本発明方法は1種類以上の神経増殖因子、神経生存因子または神経向性因子(neural tropic factor)の共投与を含む。
[0045] 他の態様において、本発明方法は遺伝子活性化構築体の投与により実施することができる。この遺伝子活性化構築体は、患者のゲノムhh遺伝子と組み換えて、hh遺伝子のコード配列に作動可能な状態で結合したヘテロロガス転写調節配列を供給するように設計される。
[0046] 他の態様において、本発明のHhアゴニストはRNAi構築体である。この構築体は、Hhシグナル伝達経路の負の調節エレメントの発現を阻害し、Hhシグナル伝達の抑圧または抑制を開放して、この経路を活性化する。
[0047] さらに他の態様において、本発明方法は、Hhポリペプチドまたはその均等物をコードする遺伝子療法構築体の投与により実施することができる。たとえばこの遺伝子療法構築体は、組換えウイルス粒子、リポソームおよびポリカチオン核酸結合剤から選択される組成物中において供給することができる。
[0048] さらに他の観点において、本発明は、うつ病または他の行動障害もしくは情動障害の処置に適切なHhアゴニストの配合および用量を決定し、そしてその配合物をさらに開発および販売するための権利を第3者に許諾することにより、医薬ビジネスを実施する方法を提供する。
[0049] さらに他の観点において、本発明は、うつ病または他の行動障害もしくは情動障害の処置に適切なHhアゴニストの配合および用量を決定し、同定した配合物の有効性および毒性に関する療法プロファイリングを動物において実施し、そして許容できる療法プロファイルをもつ製品を販売するための配布ネットワークを用意することにより、医薬ビジネスを実施する方法を提供する。特定の態様において、この方法はさらにその製品をヘルスケアプロバイダーに販売する追加段階を含む。
発明の詳細な記述
I.大要
[0050] 本発明は、動物の胚性幹細胞の発生および分化に重要な役割をもつことが知られているヘッジホッグ(hh)ファミリーのタンパク質の生理学的機能に基づく。最近、ヘッジホッグ(Hh)ポリペプチドが成体動物においても役割をもち、幹細胞から多様な機能細胞への分化および適切な位置への移動を誘導することが観察された。Hhポリペプチドは、動物の中枢神経系において神経発生、神経分化、および神経幹細胞の移動、ならびにニューロンの保守および保護に際しても役割をもつ。たとえばBezard, E. et al. (2003) FASEB J. express article 10.1096/fj.03-0291fje、オンライン公開、Pascuala, O. et al. (2002) J. Physiol.-Paris 96: 135-166、およびMachold, R. et al. (2003) Neuron 39: 937-950を参照;それらの内容を本明細書に援用する。
[0051] 種々の抗うつ薬が海馬において神経発生を刺激し、この神経発生が抗うつ薬の効果に寄与することが、最近観察された。抗うつ薬、たとえばフルオキセチン(fluoxetine)またはイミプラミン(imipramine)は、ラット海馬の歯状回において神経発生を増大させる。海馬の照射によりこの神経発生を撹乱すると、被験マウスはもはや抗うつ薬処理に応答しなかった;novelty suppressing feeding (NSF)試験および長期推定不能ストレスパラダイム(chronic unpredictable stress paradigm)により測定。さらに、5-HT1A受容体を欠如するノックアウトマウスは、セロトニン選択的再取込み阻害薬フルオキセチンに応答しないが、三環系抗うつ薬イミプラミンおよびデシプラミン(desipramine)には応答する。これは、2つの独立した分子経路があることを示唆する。参照:Santarelli, L. et al. (2003) Science 301:805-809。したがって、神経発生および分化を刺激するHhポリペプチドまたはHhアゴニストは、抗うつ薬として作用すると期待される。
[0052] さらにHhポリペプチドは、成体動物の視床下核(STN)ニューロンの電気的活動の調節に直接関与すると思われる。ShhポリペプチドのN末端フラグメントを適用して数分以内に、ラット脳切片中の一組のSTNニューロンの電気的活動が阻害され、シナプス伝達が低下する。STNは大脳基底核の鍵となる構成要素であり、現在では、随意運動および不随意運動の制御のほかに、情動活動および認知活動にも役割をもつと認識されている。したがって、Hhポリペプチドは対象において情動応答および認知応答の調節に直接関与することが示唆される。さらに、脂質修飾形のsonicヘッジホッグ(Shh)を脳幹切片標本に適用すると、成体の孤束核(NTS)ニューロンの活動が可逆的に調節され、作動電位バーストの遅れを伴う阻害が起きた。NTSは、呼吸、心血管機能および食機能の調節に関与する脳幹構造体である。ShhはNTSに隣接した脳領域で産生されるので、Shhは成体NTSに神経調節機能を及ぼしている可能性がある。参照:Pascuala、前掲。
[0053] 多くの神経障害が別個のニューロン構成要素集団の破壊に関連し、Hhアゴニストを含む療法で処置できる。重篤なうつ病に罹患している患者は海馬の萎縮を示すことが最近観察された。そのような変性状態を伴う患者の処置は、たとえばニューロンの損失を生じる分化およびアポトーシス事象を制御するために(たとえば既存のニューロンの生存を高めるために)、ならびに罹患領域の前駆細胞による分化および再生を促進するために、Hhポリペプチド、またはそれらの作用を模倣する薬剤の適用を含むことができる。管理された研究室での実験において、CNSを襲撃する前にHhアゴニストで被験動物を処理すると、病変がより小さく、ニューロン体積が保持される。
[0054] 認知症および記憶消失は、中枢神経系の各所、特に大脳皮質におけるニューロンの死を特徴とする幾つかの変性性疾患にみられる。ある形の認知症は、視床または大脳皮質下白質の変性を伴う。たとえばアルツハイマー病(AD)は、幾つかの神経伝達系の欠損に関連する:新皮質へ突出したものおよび皮質内にあるものの両方。たとえば、AD患者の基底核は、同年齢の対照と比較して顕著な(75%)ニューロン損失のあることが観察された。最近、ADを伴うヒト患者の海馬において、未熟な神経マーカータンパク質の発現増大が示すように、神経発生がアップレギュレートされていることが示された。Jin, K. et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 初版、www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.2634794100。そのような神経発生増大は、病的な細胞損失に対する身体の自然防御の可能性があり、ニューロン損失を示す他の変性性疾患に適用できる。この神経発生の補足および増強は、有望な処置選択肢であると期待される。
[0055] ADは最も一般的な形の認知症であるが、他の幾つかの障害が認知症を発症する可能性があり、これには血管性または多発梗塞性認知症、レーヴィ体認知症、ピック病、ハンチントン病、進行性核上麻痺、局所性皮質萎縮症候群(たとえば原発性失語症)、代謝性-中毒性認知症(たとえば慢性甲状腺機能低下症またはB12欠乏症)、および感染症(たとえば梅毒、神経性エイズまたは慢性脳膜炎)により起きる認知症が含まれる。ある疾患においては、遠心性および求心性神経の変性による皮質領域の分離により認知機能不全が起きる。ハンチントン病は、線条体内および皮質のコリン作動性ニューロンおよびGABA作動性ニューロンの変性を伴う。ピック病は、前頭葉および前側頭葉の新皮質における重篤な神経変性であり、時には線条体のニューロン死を伴う。
[0056] 本発明方法は、低血圧または運動失調をもたらす小脳障害、たとえば病変部と同側の手足の障害を生じる小脳病変の処置にも適用できる。たとえばhh相同体製剤を用いて、アルコール中毒患者に一般的な前葉(虫部および脚領域)における特定の形態の小脳皮質変性を処置できる。
[0057] 本発明は一般に、情動障害および行動障害、たとえばうつ病を処置するための、ならびに認知および記憶を増強し、記憶機能および認知機能の損失を伴う神経障害、たとえば認知症を処置するための方法および組成物に関する。本発明は、そのような疾患を処置するための、Hhシグナル伝達経路の刺激に基づく方法および組成物を提供する。本発明方法は、Hhポリペプチドまたはその機能均等物を用いて実施でき、これにはペプチドフラグメントおよび変異タンパク質も含まれる。本発明方法は、低分子のペプチド、ペプチド模倣体または有機分子、および抗体を用いて実施することもできる。本発明方法は、遺伝子療法を行うことにより、すなわち、たとえばヘッジホッグ、smoothened、またはgli-1遺伝子を含む特定の遺伝子構築体を対象に導入し、これによって対象の細胞内から機能性タンパク質を産生させることにより実施することもできる。
II.定義
[0058] 便宜上、本明細書、実施例および特許請求の範囲中で用いる特定の用語をここに集める。
[0059] 本明細書中で用いる用語”薬剤”および”化合物”には、タンパク質部分および非タンパク質部分の両方が含まれる。薬剤は有機低分子、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド複合体、ペプチド模倣体、非ペプチド系薬剤、またはポリヌクレオチドであってよい。
[0060] 本明細書中で用いる”改善する(ameliorate)”は、症状の程度を軽減、低下または/および降下させ、あるいは疾患発現エピソードの発生回数を減少させることを意味する。
[0061] 本明細書中で用いる”抗体”は、2つのH鎖と2つのL鎖を含み、抗原を認識する、免疫グロブリン分子を意味する。免疫グロブリン分子は、一般に知られているいずれのクラスに由来するものであってもよく、これにはIgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMが含まれるが、これらに限定されない。IgGサブクラスも当技術分野で周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が含まれるが、これらに限定されない。抗体は、たとえば天然抗体および非天然抗体の両方を含む。具体的には、”抗体”にはポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびにその一価および二価フラグメントが含まれる。さらに、”抗体”にはキメラ抗体、全合成抗体、一本鎖抗体、およびそのフラグメントが含まれる。場合により、抗体を検出可能なマーカーで標識することができる。検出可能なマーカーには、たとえば放射性マーカーまたは蛍光マーカーが含まれる。抗体を他の生物学的または化学的官能基、たとえば架橋剤またはペプチドへの結合により修飾することもできる。
[0062] 用語”抗うつ薬”、”抗うつ薬類”および”抗うつ薬部分”は、その主効果が急性または慢性うつ病を予防、治療または改善することであるCNS活性部分またはそのプロドラッグ形を表わす。本発明の組合わせ剤を調製する際に使用できる抗うつ薬の例には、下記のものが含まれる:二環系抗うつ薬、たとえばカロキサゾン(caroxazone)、フェンカミン(fencamine)、インダルピン(indalpine)、塩酸インデロキサジン(indeloxazine HCl)、ノミフェンシン(nomifensine)、オキシトリプタン(oxitriptan)(L-5HTP)、パロキセチン(paroxetine)およびセルトラリン(sertraline);ヒドラジド類、たとえばベンモキシン(benmoxine)、イプロクロジド(iproclozide)、イプロニアジド(iproniazid)、イソカルボキサジド(isocarboxazid)、オクタモキシン(octamoxin)およびフェネルジン(phenelzine);ピロリドン類、たとえばロリシプリン(rolicyprine)、ロリプラム(rolipram)およびセルチンドール(sertindole);四環系抗うつ薬、たとえばマプロチリン(maprotiline);三環系抗うつ薬、たとえばアモキサピン(amoxapine)、デメキシプチリン(demexiptiline)、デシプラミン(desipramine)、メタプラミン(metapramine)、ノルチプタリン(nortiptaline)、オピプラモール(opipramol)、プロピゼピン(propizepine)、プロトリプチリン(protriptyline)およびチアネプチン(tianeptine);ならびに他の抗うつ薬、たとえばアドラフィニル(adrafinil)、ベナクチジン(benactyzine)、ジオキサドロル(dioxadrol)、ダルオキセチン(duloxetine)、フェバルバメート(febarbamate)、フェンペンタジオール(fenpentadiol)、フルボキサミン(fluvoxamine)、ヘマトポルフィリン(hematoporphyrin)、ハイペリシン(hypericine)、レボファセトペラン(levophacetoperane)、ミルナシプラン(milnacipran)、ミナプリン(minaprine)、モクロベミド(moclobemide)、ピリスクシデアノール(pyrisuccideanol)、ロキシンドール(roxindole)、スルピリド(sulpiride)、トロキサトン(toloxatone)、トラニルシプロミン(tranylcypromine)、l-トリプトファン(l-tryptophan)、ベンラファキシン(venlafaxine)およびビロキサジン(viloxazine)。
[0063] 用語”抗精神病薬”、”抗精神病薬類”および”抗精神病薬部分”は、互換性をもって用いられ、その主効果が急性または慢性精神病を予防、治療または改善することであるCNS活性部分またはそのプロドラッグ形を表わす。本発明の組合わせ剤を調製する際に使用できる抗精神病薬の例には、下記のものが含まれる:ベンザミド類、たとえばアミスルプリド(amisulpride)、ネモナプリド(nemonapride)およびスルピリド(sulpiride);ベンゾイソオキサゾール類;ブチロフェノン類、たとえばベンペリドール(benperidol)、ブロモペリドール(bromperidol)、ドロペリドール(droperidol)、ハロペリドール(haloperidol)、モペロン(moperone)、ピパンペロン(pipamperone)、スピペロン(spiperone)、チミペロン(timiperone)およびトリフルペリドール(trifluperidol);ホチアジン類、たとえばアセトフェナジン(acetophenazine)、カルフェナジン(carphenazine)、ジキシラジン(dixyrazine)、フルフェナジン(fluphenazine)、ペリシアジン(pericyazine)、ペリメタジン(perimethazine)、ペルフェナジン(perphenazine)、ピペラセタジン(piperacetazine)およびピポチアジン(pipotiazine);チオキサンテン類、たとえばクロペンチキソール(clopenthixol)およびフルペンチキソール(flupentixol);他の三環系抗精神病化合物、たとえばカルピプラミン(carpipramine)、クロカプラミン(clocapramine)、モサプリミン(mosaprimine)、オランザピン(olanzapine)、リスペリドン(risperidone)、9-ヒドロキシリスペリドン、オピプラモール(opipramol)およびセロケル(seroquel);ならびに他の抗精神病薬、たとえばアリピプラゾール(aripiprazole)、ブラメート(buramate)、ペンフルリドール(penfluridol)、ピモジド(pimozide)およびジプラシドン(ziprasidone)。
[0064] 用語”抗不安薬”、”抗不安薬類”および”抗不安薬部分”は、その主機能が急性または慢性精神病を軽減、予防、治療または改善することであるCNS活性部分またはそのプロドラッグ形を表わす。重篤な不安障害には、全般性不安障害(GAD)、パニック障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)および心的外傷後ストレス障害(PSTD)が含まれる。本発明の組合わせ剤を調製する際に使用できる抗不安薬の例には、下記のものが含まれる:アリールピペラジン類、たとえばエンシプラジン(enciprazine)およびフレシノキサン(flesinoxan);ベンゾジアゼピン誘導体、たとえばクロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、クロラゼペート(clorazepate)、フルタゾラム(flutazolam)、ロラゼパム(lorazepam)、マキサゾラム(mexazolam)、ジアゼパム(diazepam)、アルプラゾラム(alprazolam)、クロナゼパム(clonazepam)、クロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、ノルダゼパム(nordazepam)およびオキサゼパム(oxazepam);カルバメート類、たとえばエミルカメート(emylcamate)、ヒドロキシフェナメート(hydroxyphenamate)、メプロバメート(meprobamate)、フェンプロバメート(phenprobamate)およびチバメート(tybamate);ならびに他の抗不安化合物、たとえばベンゾクタミン(benzoctamine)、グルタミン酸、ヒドロキシジン(hydroxyzine)、メクロラルウレア(mecloralurea)、メフェノキサロン(mephenoxalone)、プロプラノロール(propranolol)、アテノロール(atenolol)、ブスピロン(buspirone)、バルプロエート(valproate)、ニューロンチン(neurontin)、カルバマゼピン(carbamazepine)およびオキサナミド(oxanamide);ならびに選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、たとえばフルオキセチン、フルボキサミン(fluvoxamine)、インダルピン(indalpine)、塩酸インデロキサジン(indeloxazine HCl)、ミルナシプラン(milnacipran)、パロキセチン(paroxetine)およびセルトラリン(sertralin)。
[0065] 用語”不安障害”には強迫性障害、精神興奮性物質不安障害、心的外傷後ストレス障害、全般性不安障害、社会不安障害、恐怖症、社会恐怖症、不安障害NOS、および器質性不安障害が含まれるが、これらに限定されない。
[0066] 本明細書中で用いる用語”自閉性障害”は、DSM-IV-R、カテゴリー299.xx(299.00、299.80および299.10、好ましくは299.00を含む)に自閉性障害として定めた状態を意味する。
[0067] 本明細書中で用いる用語”双極性障害”は、DSM-IV-R、カテゴリー296.xxに双極性障害として定めた状態を表わす(双極性障害Iおよび双極性障害IIの両方を含む)。
[0068] 本明細書中で用いる用語”dsRNA”は、small interference RNA (siRNA)分子、または二本鎖形を含み、細胞内でプロセシングされてsiRNAになりうる他のRNA分子、たとえばヘアピンRNA部分を表わす。
[0069] 用語”ED50”は、最大の応答または作用の50%を生じる薬物量を意味する。
[0070] 本発明の処置方法に関して、たとえばHhアゴニストの”有効量”は、製剤中のアゴニスト量であって、目的投与方式の一部として適用した際に、処置すべき障害または目的効果(たとえば記憶もしくは認知の増強)に関する臨床的に許容できる基準に従ってたとえば細胞増殖速度および/または細胞分化状態および/または細胞生存率の変化をもたらす量を表わす。
[0071] 本明細書中で用いる用語”攻撃性過剰”は、個体の日常機能、相互関係を妨げるほど過度であり、個体の安全性を脅かす可能性がある(たとえば暴力的自殺を考える状況にある)攻撃性を特徴とする状態を表わす。本発明により処置できる攻撃性過剰は、精神病状態とは無関係であり、薬物その他の物質の摂取とは直接関係がない。
[0072] 本発明のRNAi法により阻害された遺伝子に関する用語”機能獲得”は、RNAi構築体の不存在下でのレベルと比較した遺伝子発現レベルの増大を表わす。
[0073] 用語”ヘルスケアプロバイダー(healthcare provider)”は、個人、自治体などに保健サービスを提供する個人または組織を表わす。”ヘルスケアプロバイダー”の例には、医師、病院、継続ケア型老人専用住宅地、専門介護施設、準長期ケア施設、診療所、総合診療所、独立救急センター、在宅看護サービス機関、およびHMOが含まれる。
[0074] 用語”Hhアゴニスト”は、Hhの生物活性を増強または反復する(recapitulate)、たとえば標的遺伝子、特にgli-1の転写を活性化する薬剤を表わす。本明細書中で用いる用語”Hhアゴニスト”は、Hhまたはsmoothenedポリペプチドの正常な機能を直接活性化することにより作用する薬剤だけでなく、Hhシグナル伝達経路を活性化する薬剤をも表わし、これにはこの経路の負の調節エレメント、たとえばPatchedタンパク質の抑圧または抑制を開放する薬剤が含まれる。たとえば、HhアゴニストはHhシグナル伝達経路の負の調節エレメントの阻害薬であってもよい。本明細書中で用いる用語”Hhアゴニスト”には、Hhシグナル伝達経路内の負の制御エレメントの発現を抑制するRNA干渉(RNAi)調節薬が含まれる。好ましいHhアゴニストは、Hhポリペプチドの活性または作用をsmoothened依存性様式で模倣または増強するために使用できる。他のタイプの好ましいHhアゴニストは、SmoothenedポリペプチドとPatchedポリペプチドの結合を撹乱し、Patchedの抑制作用を緩和してHh経路を活性化する。
[0075] 用語”Hhポリペプチド”は、hh遺伝子ファミリーに属する遺伝子から発現するいずれかのタンパク質、その変異体、および機能的に同等なポリペプチドを表わす。”遺伝子ファミリー”は、共通の機能をもち、共通の配列相同性を示す遺伝子グループを意味する。
[0076] 用語”hh RNAiアゴニスト”は、hhシグナル伝達成分(たとえばgli-3)の生物活性を阻害するRNAi薬剤を表わし、したがってこれは、普通はhhシグナル伝達のサプレッサーまたはリプレッサーとして作用する標的hhシグナル伝達成分の発現を抑制する。たとえば、ある好ましいhh RNAiアゴニストは、ptc機能獲得および/またはgli-3機能獲得を克服するために使用できる。他の好ましいRNAiアゴニストは、hhシグナル伝達の抑制を緩和するために使用できる。Hhシグナル伝達経路のタンパク質をコードする遺伝子に、RNAiアゴニストを指向させることができる。大部分の場合、RNAiアゴニストは、たとえばHh経路の遺伝子によりコードされる、Hh経路を負に調節するタンパク質の産生を低下させ、こうしてHhシグナル伝達をアップレギュレートすることにより、標的タンパク質の活性を阻害するであろう。
[0077] 本明細書中で用いる”阻害する”は、対照試料において生じる量と比較して量が減少することを意味する。好ましい態様において阻害は、量が50%以上、より好ましくは75%以上、さらには100%低下することを意味する。
[0078] 本明細書中で用いる”インストラクション資料”は、医薬組成物を使用するための、書面による、または聴覚による指示を含む、書類または記録媒体を意味する。インストラクション資料には、ボトルのラベル、箱に装入した紙、箱またはカートン上の印刷、これらのいずれかの箇所に提示したアドレスのウェブサイトにより提供される指示などが含まれる。
[0079] 用語”LD50”は、被験対象の50%において致死的である薬物量を意味する。
[0080] 本明細書中で用いる句”RNAiを仲介する”は、どのRNAがRNAi法で分解されるかを識別できることを表わす。たとえば、分解は配列無関係なdsRNA応答(たとえばPKR応答)によってではなく、配列特異的な様式で起きる。
[0081] 本明細書中で用いる用語”非アルツハイマー型認知症”は、脳の気質性疾患または障害により起きる知的機能衰退、たとえば記憶、集中力および判断力の衰退を特徴とするいずれかの形の認知症および精神障害であって、アルツハイマー病の他の特質を伴わないものを意味する。これは時には情動障害および人格変化を伴う。
[0082] 用語”予防する”は、当技術分野で認識されているものであり、うつ病などの疾患、認知症などの複合症候群、または他の病的状態の再発または発症のような状態に関して用いる場合は当技術分野で十分に理解されており、その組成物を投与されていない対象と比較して病的状態の症状の発症の頻度を低下させる、または発症を遅延させる組成物の投与を含む。たとえばうつ病の予防には、予防処置を受けている患者集団において非処置対照集団と比較して抑うつエピソードの再発を低下させること、および/または処置集団において非処置対照集団と比較してうつ病の発症を遅延させることが含まれる。たとえば記憶障害の予防には、予防処置を受けている患者集団において非処置対照集団と比較して想起失敗のエピソード回数を減らすこと、および/または処置集団において非処置対照集団と対比して記憶欠損の発症を遅延させること(たとえば統計的および/または臨床的に有意量で)が含まれる。たとえば認知機能不全の予防には、予防処置を受けている患者集団において非処置対照集団と対比して認知障害のエピソード回数を減らすこと、および/または処置集団において非処置対照集団と対比して認知障害の症状の発症を遅延させることが含まれる。
[0083] 本明細書中で用いる用語”精神病状態”は、病的精神状態を意味し、これは精神病であり、あるいは精神病の所見を伴うものであってもよい。そのような状態には、DSM-IV-R、精神障害の診断および統計マニュアル、改訂4版(1994)に定められた精神障害(統合失調症(精神分裂病)および急性躁病)が含まれるが、これらに限定されない。DSM-IV-Rは、Task Force on Nomenclature and Statistics of the American Associationにより作成され、診断カテゴリーを明確な記述を提供する。病的精神状態について他の命名法、疾病分類法および分類方式があり、これらの方式が医療科学の進歩に伴って発展することは、当業者に認識されるであろう。
[0084] 本明細書中で用いる用語”RNAi構築体”は、small interfering RNA (siRNA)、ヘアピンRNA、およびインビボで開裂してsiRNAを形成しうる他のRNA種を含めるために本明細書全体で用いる遺伝学用語である。本明細書においてRNAi構築体は、細胞内でdsRNAもしくはヘアピンRNAを形成する転写体および/またはインビボでsiRNAを産生しうる転写体を生成しうる、発現ベクター(RNAi発現ベクターとも呼ぶ)をも含む。
[0085] ”RNAi発現ベクター”(本明細書においては”dsRNAコードプラスミド”とも呼ぶ)は、この構築体が発現する細胞内でsiRNA部分を産生するRNAを発現(転写)させるために用いる複製可能な核酸構築体を表わす。そのようなベクターは、下記のアセンブリーを含む転写ユニットを含有する:(1)遺伝子発現に際して調節の役割をもつ遺伝子エレメント、たとえばプロモーター、オペレーターまたはエンハンサー:これらは下記のものに作動可能な状態で結合している、(2)”コード”配列:これは転写されて二本鎖RNA(細胞内でアニールしてsiRNAを形成する2つのRNA部分、またはプロセシングされてsiRNAになりうる単一のヘアピンRNA)を産生する、ならびに(3)適切な転写開始配列および転写終止配列。プロモーターその他の調節エレメントの選択は、一般に意図する宿主細胞に応じて異なる。一般に組換えDNA技術に有用な発現ベクターはしばしば”プラスミド”の形であり、これは環状キメラ二本鎖DNAループを表わし、それらのベクター形で染色体に結合することはない。プラスミドは最も一般的に用いられる形のベクターであるので、本明細書において”プラスミド”および”ベクター”は互換性をもって用いられる。しかし本発明は、同等な機能を果たし、当技術分野で今後知られるようになる、他の形の発現ベクターをも含むものとする。
[0086] 用語”siRNA”は、small interfering RNAを表わす。
[0087] 用語”低分子”は、約2500 amu未満、好ましくは約2000 amu未満、より好ましくは約1500 amu未満、さらに好ましくは約1000 amu未満、または最も好ましくは約750 amuの分子量をもつ化合物を表わす。
[0088] 本明細書中で用いる”統計的に正常な範囲”は、検査量について再現性がありかつ代表的であると当業者が認めたテストまたはアッセイにおいて、20パーセンタイル未満ではないスコアを意味する。特定の集団内で同一試験において得たスコアの少なくとも20%が、考慮されるスコアより低い場合、そのスコアは統計的に正常な範囲内にあるとみなされる。言い換えると、正規分布であると仮定して、同等な検査スコアの平均の0.84標準偏差未満であるスコアは、統計的に正常な範囲外にあるとみなされる。
[0089] 本発明方法により処置される”対象”または”患者”は、ヒトまたはヒト以外の動物のいずれも意味することができる。
[0090] 本明細書中で用いる”処置”は、その障害の進行を速度低下、停止または反転させることを意味する。好ましい態様において”処置”は、その障害が排除される時点まで進行を反転させることを意味する。
[0091] 用語”アシルアミノ”は当技術分野で認識されているものであり、一般式:
Figure 2007521333
により示すことができる部分を表わす。式中のR9は前記に定めたものであり、R'11は水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R8を表わし、ここでmおよびR8は前記に定めたものである。
[0092] 本明細書中において用語”脂肪族基”は、直鎖、分枝鎖または環式の脂肪族炭化水素基を表わし、飽和および不飽和脂肪族基、たとえばアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基を含む。
[0093] 用語”アルケニル”および”アルキニル”は、長さおよび置換可能性は前記のアルキルと同様であるが、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む、不飽和脂肪族基を表わす。
[0094] 本明細書中で用いる用語”アルコキシ”または”アルコキシ”は、前記に定めたアルキル基に酸素ラジカルが結合したものを表わす。代表的アルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、t-ブトキシなどが含まれる。”エーテル”は2つの炭化水素が酸素により共有結合したものである。したがって、アルキルの置換基であって、そのアルキルをエーテルにするものはアルコキシであるか、またはアルコキシに類似し、-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O-(CH2)m-R8のいずれかで表わすことができ、ここでmおよびR8は前記に定めたものである。
[0095] 用語”アルキル”は、飽和脂肪族基のラジカルを表わし、これには直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基が含まれる。好ましい態様において、直鎖または分枝鎖アルキル基はその主鎖中に30個以下の炭素原子をもち(たとえば直鎖についてはC1-C30、分枝鎖についてはC3-C30)、より好ましくは20個以下の炭素原子をもつ。同様に、好ましいシクロアルキルはそれらの環構造中に3〜10個の炭素原子をもち、より好ましくはそれらの環構造中に5、6または7個の炭素をもつ。
[0096] さらに、たとえば本明細書全体、実施例および特許請求の範囲において用いる用語”アルキル”(または”低級アルキル”)は、”非置換アルキル”および”置換アルキル”の両方を含むものとし、これらのうち後者は炭化水素主鎖の1個以上の炭素において水素を置換した置換基をもつアルキル部分を表わす。そのような置換基には、たとえば下記のものを含めることができる:ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(たとえばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(たとえばチオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート)、アルコキシ、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロサイクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分。炭化水素鎖上に置換した部分自体が適宜置換されていてもよいことは、当業者に理解されるであろう。たとえば置換アルキル上の置換基には、置換形および非置換形のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、およびシリル基、ならびにエーテル類、アルキルチオ、カルボニル(ケトン類、アルデヒド類、カルボキシレート、およびエステルを含む)、-CF3、-CNなどを含めることができる。置換アルキルの例を後記に示す。シクロアルキルは、さらにアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、-CF3、-CNなどで置換されていてもよい。
[0097] 炭素数を特定していない場合、本明細書中で用いる”低級アルキル”は、前記に定めたアルキル基であるが、その主鎖構造中に1〜10個の炭素、より好ましくは1〜6個の炭素をもつものを意味する。”低級アルケニル”および”低級アルキニル”も同様な鎖長をもつ。本明細書全体において、好ましいアルキル基は低級アルキルである。好ましい態様において、本明細書中にアルキルとして示す置換基は低級アルキルである。
[0098] 用語”アルキルチオ”は、前記に定めたアルキル基に硫黄ラジカルが結合したものを表わす。好ましい態様において、”アルキルチオ”部分は、-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、および-S-(CH2)m-R8のいずれかにより表わされ、ここでmおよびR8は前記に定めたものである。代表的アルキルチオ基には、メチルチオ、エチルチオなどが含まれる。
[0099] 用語”アミン”および”アミノ”は当技術分野で認識されているものであり、非置換アミンおよび置換アミンの両方を表わし、たとえば一般式:
Figure 2007521333
により示すことができる部分である。式中のR9、R10およびR'10はそれぞれ独立して水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R8を表わし、あるいはR9とR10はそれらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4〜8個の原子をもつ複素環を完成し;R8はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表わし;mは0または1〜8の整数である。好ましい態様においては、R9またはR10のうち一方のみがカルボニルであることができ、たとえばR9、R10および窒素が一緒にイミドを形成することはない。さらに好ましい態様において、用語”アミン”はアミド(R9およびR10のうちの一方がカルボニルを表わす)を含まない。さらに好ましい態様において、R9およびR10(および場合によりR'10)はそれぞれ独立して水素、アルキル、アルケニル、または-(CH2)m-R8を表わす。たとえば本明細書中で用いる用語”アルキルアミン”は、前記に定めたアミン基に置換または非置換アルキルが結合したもの、すなわちR9およびR10のうち少なくとも一方がアルキル基であるものを意味する。
[00100] 用語”アミド”は当技術分野でアミノ置換カルボニルとして認識されているものであり、一般式:
Figure 2007521333
により示すことができる部分を含む。式中のR9、R10は前記に定めたものである。アミドの好ましい態様は、不安定な可能性のあるイミドを含まない。
[00101] 本明細書中で用いる用語”アラルキル”は、アリール基(たとえば芳香族基またはヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基を表わす。
[00102] 本明細書中で用いる用語”アリール”は、0〜4個のヘテロ原子を含むことができる5-、6-および7-員単環式芳香族基、たとえばベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを含む。環構造中にヘテロ原子をもつアリール基は、”アリール複素環”または”ヘテロ芳香族”と呼ぶこともできる。芳香環は1以上の環位置において前記の置換基、たとえば下記のもので置換されていてもよい:ハロゲン、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族もしくはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなど。用語”アリール”には2以上の環をもつ多環式環系も含まれ、それらにおいて2個以上の炭素が2つの結合環に共通であり(これらの環は”縮合環”である)、これらの環のうち少なくとも1つが芳香族であり、他の環式基はたとえばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/または複素環であってよい。
[00103] 本明細書中で用いる用語”炭素環”は、環の各原子が炭素である芳香族または非芳香族の環を表わす。
[00104] 用語”カルボニル”は当技術分野で認識されているものであり、一般式:
Figure 2007521333
により示すことができる部分を表わす。式中のXは結合であるか、または酸素もしくは硫黄を表わし、R11は水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R8、または医薬的に許容できる塩を表わし、R'11は水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R8を表わし、ここでmおよびR8は前記に定めたものである。Xが酸素であり、R11またはR'11が水素でない場合、この式は”エステル”を表わす。Xが酸素であり、R11が前記に定めたものである場合、この部分を本明細書においてカルボキシル基と呼ぶ。特にR11が水素である場合、この式は”カルボン酸”を表わす。Xが酸素であり、R'11が水素である場合、この式は”ホルメート”を表わす。一般に前記式の酸素原子が硫黄で置き換えられている場合、この式は”チオカルボニル”基を表わす。Xが硫黄であり、R11またはR'11が水素でない場合、この式は”チオエステル”を表わす。Xが硫黄であり、R11が水素である場合、この式は”チオカルボン酸”を表わす。Xが硫黄であり、R'11が水素である場合、この式は”チオホルメート”を表わす。一方、Xが結合であり、R11が水素でない場合、前記式は”ケトン”基を表わす。Xが結合であり、R11が水素である場合、前記式は”アルデヒド”基を表わす。
[00105] 本明細書中で用いる用語”ヘテロ原子”は、炭素または水素以外のいずれかの元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンである。
[00106] 用語”ヘテロサイクリル”または”複素環式基”は、3-〜10-員環構造、より好ましくは3-〜7-員環であって、環構造が1〜4個のヘテロ原子を含むものを表わす。複素環式基は多環であってもよい。複素環式基には、たとえば下記のものが含まれる:チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン(phenarsazine)、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン類、ラクタム類、たとえばアゼチジノンおよびピロリジノン、スルタム類、スルトン類など。複素環式環は1以上の位置において前記の置換基、たとえば下記のもので置換されていてもよい:ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロサイクリル、芳香族もしくはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなど。
[00107] 本明細書中で用いる用語”ニトロ”は-NO2を表わす;用語”ハロゲン”は-F、-Cl、-Brまたは-Iを表わす;用語”スルフヒドリル”は-SHを表わす;用語”ヒドロキシル”は-OHを表わす;用語”スルホニル”は-SO2-を表わす。
[00108] ”ホスホンアミダイト”は、一般式:
Figure 2007521333
で表わすことができる。式中のR9およびR10は前記に定めたものであり、Q2はO、SまたはNを表わし、R48は低級アルキルまたはアリールを表わし、Q2はO、SまたはNを表わす。
[00109] ”ホスホルアミダイト”は、一般式:
Figure 2007521333
で表わすことができる。式中のR9およびR10は前記に定めたものであり、Q2はO、SまたはNを表わす。
[00110] ”ホスホリル”は、一般に式:
Figure 2007521333
で表わすことができる。式中のQ1はSまたはOを表わし、R46は水素、低級アルキルまたはアリールを表わす。アルキルを置換するために用いた場合、ホスホリルアルキルのホスホリル基は、一般式:
Figure 2007521333
で表わすことができる。式中のQ1はSまたはOを表わし、各R46は独立して水素、低級アルキルまたはアリールを表わし、Q2はO、SまたはNを表わす。Q1がSである場合、ホスホリル部分は”ホスホロチオエート”である。
[00111] 用語”多環”または”多環式基”は、2個以上の炭素が2つの結合環に共通である2以上の環(たとえばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロサイクリル)を表わし、たとえばこれらの環は”縮合環”である。隣接しない原子により結合した環を”架橋”環と呼ぶ。多環の各環は、前記の置換基、たとえば下記のもので置換されていてもよい:ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロサイクリル、芳香族もしくはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなど。
[0012] 本明細書中で用いる句”保護基”は、潜在的に反応性である官能基を目的外の化学変換から保護する一時的な置換基を意味する。そのような保護基の例には、それぞれカルボン酸のエステル、アルコール類のシリルエーテル、ならびにアルデヒドおよびケトンのアセタールおよびケタールが含まれる。保護基化学の分野は概説されている(Greene, T.W.; Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 第2版; Wiley: ニューヨーク, 1991)。
[00113] ”セレノアルキル”は、アルキル基に置換セレノ基が結合したものを表わす。アルキル上に置換しうる”セレノアルキル”の例は、-Se-アルキル、-Se-アルケニル、-Se-アルキニル、および-Se-(CH2)m-R8のいずれかより選択され、ここでmおよびR8は前記に定めたものである。
[00114] 本明細書中で用いる用語”置換された”は、許容できるすべての有機化合物置換基を含むものとする。広義において、許容できる置換基には、環式、分枝鎖および非分枝鎖、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の有機化合物置換基が含まれる。具体的な置換基には、たとえば前記のものが含まれる。許容できる置換基は、適宜な有機化合物について1個以上であってよく、同一でも異なってもよい。本発明の目的に関して、ヘテロ原子、たとえば窒素は、水素置換基、および/または本明細書に記載した許容できるいずれかの有機化合物置換基であってヘテロ原子の原子価を満たすものをもつことができる。本発明は、決して許容できる有機化合物置換基により限定されるものではない。
[00115] ”置換”または”で置換された”が、そのような置換は置換される原子および置換基の許容できる原子価に従うこと、ならびに置換の結果として、転位、環化、離脱などによる自然変換を受けない安定な化合物が生成することという条件を含むのは理解されるであろう。
[00116] 用語”スルファモイル”は当技術分野で認識されているものであり、一般式:
Figure 2007521333
で表わすことができる部分を含む。式中のR9およびR10は前記に定めたものである。
[00117] 用語”スルフェート”は当技術分野で認識されているものであり、一般式:
Figure 2007521333
で表わすことができる部分を含む。式中のR41は前記に定めたものである。
[00118] 用語”スルホンアミド”は当技術分野で認識されているものであり、一般式:
Figure 2007521333
で表わすことができる部分を含む。式中のR9およびR'11は前記に定めたものである。
[00119] 用語”スルホネート”は当技術分野で認識されているものであり、一般式:
Figure 2007521333
で表わすことができる部分を含む。式中のR41は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。
[00120] 本明細書中で用いる用語”スルホキシド”または”スルフィニル”は、一般式:
Figure 2007521333
で表わすことができる部分を含む。式中のR44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、アラルキルまたはアリールよりなる群から選択される。
[00121] アルケニルおよびアルキニル基に類似の置換を行うことができ、たとえばアミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルが生成する。
[00122] 本明細書中で用いる各表現、たとえばアルキル、m、nなどがいずれかの構造中に1回より多く現われる場合、同一構造中の他の箇所のそれの定義とは独立であるものとする。
[00123] 用語トリフリル、トシル、メシル、およびノナフリルは当技術分野で認識されているものであり、それぞれトリフルオロメタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、メタンスルホニル、およびノナフルオロメタンスルホニル基を表わす。用語トリフレート、トシレート、メシレート、およびノナフレートは当技術分野で認識されているものであり、それぞれトリフルオロメタンスルホネートエステル、p-トルエンスルホネートエステル、メタンスルホネートエステル、およびノナフルオロメタンスルホネートエステル官能基、ならびにそれらの基を含む分子を表わす。
[00124] 略号Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、Msは、それぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロメタンスルホニル、p-トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルを表わす。有機化学の当業者が用いる略号のより詳細なリストがJournal of Organic Chemistryの各巻の最初の号に示されている;このリストは一般に略号の標準リストと題する表に提示されている。そのリストに含まれる略号、および有機化学の当業者が用いるすべての略号を本明細書に援用する。
III.方法および組成物の例
処置方法
[00125] Hhシグナル伝達経路を活性化すると、神経幹細胞の神経発生、分化および移動が刺激される。Hhポリペプチドは、シナプスの電気的神経伝達も直接調節する。したがって本発明によれば、神経の増殖および分化の増強ならびにシナプス活性の調節が有益である種々の障害または状態を処置する方法に、Hhアゴニストを使用する。
[00126] 本発明の1観点は、Hhシグナル伝達経路を介して神経幹細胞を刺激することによって神経幹細胞の分化および/または移動を促進することにより、哺乳動物のCNSの活動を調節する方法を提供する。この本発明方法は、特定のCNS神経機能不全を伴う対象または特定のCNS機能の増強が有益である対象に、Hhアゴニストを投与することを含む。
[00127] より詳細には、本発明は、Hhシグナル伝達経路を介して中枢神経系の活性を調節することにより、行動障害および/または情動障害を処置する方法を提供する。
[00128] 本発明は、情動障害、たとえばうつ病、パニック障害、強迫性障害、不安、および社会不安/恐怖障害の治療または予防のためのHhアゴニスト(好ましくは医薬組成物中において)の使用を含む。これらの目的のいずれについても、治療にはある状態の1以上の症状の部分的または完全な軽減が含まれ、予防にはある状態の1以上の症状の発症の遅延または重症度の低下が含まれる。
[00129] 本発明の具体的観点は、うつ病の処置である。低分子抗うつ薬は海馬における神経発生を刺激し、この神経発生が抗うつ薬の効果に寄与することが示されている。Hhアゴニストは海馬における神経発生を刺激するので、既知の抗うつ薬と類似の効果を示すと期待される。
[00130] 本発明の他の観点は、対象の認知機能および/または記憶機能を増強する方法を提供する。本発明の1観点は、認知の増強をも提供し、これはさらに関連認知症を示す疾患の処置、ならびに記憶機能および認知機能の衰退を示すこれらの疾患および他の障害、たとえばうつ病の症状を軽減を意図する。本発明のさらに他の観点は、対象において学習障害および/または記憶障害の発症を予防し、したがって対象の学習能力および/または記憶能力を変化させるための、Hhアゴニストの使用に関する。特定の態様において本発明方法は、たとえば手続的記憶(procedual memory)ではなく陳述的記憶(declarative memory)の減退がその症状である障害を伴うか、またはそれを発症するリスクがあると診断された患者の処置に使用できる。したがって、本発明方法は記憶障害の予防に使用できる。記憶障害について考えられる原因には、毒物被曝、脳傷害、加齢性記憶障害、軽度の認知障害、てんかん、小児の精神発育遅滞、ならびに疾患により起きる認知症、たとえば特定の症例のパーキンソン病、エイズ、頭部外傷、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト-ヤコブ病、心臓手術後、ダウン症候群、前交通動脈症候群、および他の卒中症状が含まれる。本発明のさらに他の観点は、神経幹細胞の分化および損傷部位への移動を刺激することにより、神経細胞の損失または病変を伴う障害を処置する方法を提供する。そのような分化および移動は、種々の薬剤でHhシグナル伝達経路を活性化することにより促進できる。さらに本発明は、正常な個体において記憶を増強するのに使用できる。
[00131] 高齢者において最も一般的な認知症の原因はアルツハイマー病(AD)である。ADは、進行性認知症を示す病因不明の非感染性神経障害である。65歳を越える人の約3〜5%がADに罹患する。ADの決定的な特徴は患者の死後の脳におけるアミロイド班および神経線維もつれ(神経細胞内の異常形態)であるが、生存患者におけるADの診断を補助する指針が確立された。国立神経および伝導障害および卒中研究所−アルツハイマー病および関連障害協会(National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke−Alzheimer’s Disease and Related Disorders Association (NINCDS-ADRDA))がAD診断のための指標症状リストを作成した。ADを伴う対象の可能性について、幾つかの基準がある。
[00132] A. ほぼ確実なAD(Probable AD)の臨床診断基準
[00133] 1. 認知症が下記により確認されている:
a1. 臨床的診察、ならびに
a2. MMSE、BDS、またはこれらに類する他の検査による証明、ならびに
a1. 神経心理学的テストによる確認
b. 2以上の領域の認知が欠損している
c. 記憶および他の認知機能が進行性に悪化する
d. 意識障害がない
e. 40〜90歳、最も多くの場合65歳以後に発症する
f. 記憶および認知の進行性欠損に関与する可能性のある全身障害または他の脳疾患がない
[00134] 2. ほぼ確実なADという診断は下記により支持される:
a. 特定の認知機能、たとえば言語(失語症)、運動能力(失行症)および識別(失認症)が進行性に衰退する
b. 日常生活活動の障害および行動パターンが変化する
c. 類似障害の家族歴がある、特に神経病理学的に確認された場合
d. 下記の検査結果:
d1. 標準法で評価して腰椎穿刺は正常である
d2. EEGパターンは正常、または非特異的EEG変化、たとえば徐波活動の増加がある
e. CTで経過観察により追跡証明された脳萎縮の証拠がある
[00135] 3. 認知症の他の原因を除外した後に、他の臨床所見がAほぼ確実なDという診断と一致する
a. 疾病の経過中にプラトーに達する
b. うつ病、不眠、失禁、妄想、錯覚、幻覚、破局的な言語、情動または身体面での激発、性的障害、および体重減少の随伴症状がある
c. ある患者、特に疾患の進行した患者にみられる、筋緊張亢進、ミオクローヌスまたは歩行障害を含めた他の神経学的異常
d. 進行した疾患におけるけいれん発作
e. CTは年齢に応じて正常
[00136] 4. ほぼ確実なADという診断を不確実または疑わしいものにする所見
a. 突然の卒中発症
b. 疾病初期の局所神経所見、たとえば半側不全麻痺、感覚喪失、視野欠損、および協調運動障害
c. 症状発症時または疾病のごく初期におけるけいれん発作または歩行障害。
[00137] B. ADの疑い(Possible AD)の診断
[00138] 1. 認知症症候群に基づいて診断できる;
a. 認知症の原因となるのに十分な他の神経障害、精神障害または全身障害がない;かつ
b. 発症、様式または臨床経過に変動がある
[00139] 2. 認知症を発症するのに十分な第2の全身障害または脳障害はあるが、認知症の原因と考えられる場合に診断できる
[00140] 3. 他の確認できる原因がなく、進行性の重篤な認知欠損が1つ確認された場合、研究試験に採用すべきである。
[00141] C. 確実なAD(Definite AD)の診断基準
1. ほぼ確実なADの臨床基準を満たす
2. 生検または剖検により得られた組織病理学的証拠がある
3. 研究目的でのサブタイプ分類
4. 家族性発症
5. 65歳以前の発症
6. トリソミー-21の存在
7. 他の関連状態、たとえばPDの合併
[00142] ADのDSM-IV基準は下記のとおりである:
[00143] A. 下記の両方によって顕性となる多重認知欠損の発症:
1. 記憶障害(新しい情報を学習する能力または以前に学習した情報を想起する能力の障害)
2. 下記の認知障害のうち1つ(またはそれ以上)がある:
a. 失語症(言語障害)
b. 失行症(運動機能には損傷がないにもかかわらず、運動活動を行う能力に障害がある)
c. 失認症(感覚機能には損傷がないにもかかわらず、対象を認識または同定できない)
d. 実行機能(すなわち計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)の障害
[00144] B. A1およびA2の認知障害が、それぞれ社会機能および職業機能の著しい障害を引き起こし、またそれ以前の機能水準からの著しい低下を示す
[00145] C. 経過は、ゆるやかな発症および持続的な認知低下を特徴とする
[00146] D. 基準A1およびA2の認知障害が下記のいずれによるものでもない:
1. 記憶および認知に進行性の障害を引き起こす他の中枢神経系状態(たとえば脳血管疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍)
2. 認知症を引き起こすことが知られている全身性状態(たとえば甲状腺機能低下、甲状腺機能亢進、ビタミンB12または葉酸の欠乏症、ナイアシン欠乏症、高カルシウム血症、神経梅毒、HIV感染症)
3. 物質誘発による状態
[00147] E. 上記の障害がせん妄の期間中にのみ出現するわけではない
[00148] F. 上記の障害が他のAxis I障害(たとえば大うつ病障害、統合失調症)によってより良く説明できるわけではない
[00149] アルツハイマー病の特徴には、認知症が進行性であること、頭頂葉と側頭葉の連合野および帯状皮質における2FDG代謝の低下を示す特徴的なポジトロン放射形断層撮影がみられることが含まれる。低下は通常は両側性であるが、代謝低下の重症度および率はしばしば非対象性である。臨床症状の進行した患者は、しばしば前前頭連合野皮質にも代謝低下を示す。一次感覚皮質および運動皮質領域(身体運動皮質、聴覚皮質および視覚皮質を含む)では代謝は比較的余剰がある。典型的なADでは、皮質下構造体(基底核、視床、脳幹および小脳を含む)も保存されている。ADにおける全般的な代謝分布は、既知のニューロンおよびシナプスの局所性損失を一部反映しているが、連合野への求心性入力低下をもたらす皮質離断の影響も含むと思われる。さらにバイオマーカー、たとえば脳脊髄液中の全タウおよびリン酸化タウの増加が、アルツハイマー病診断の補助となる。アルツハイマー病のリスクを高める遺伝因子、たとえばアポEタンパク質の対立遺伝子4についてホモ接合性であることは、この診断を支持する。ADのバイオマーカーに関する最近の概説については、Frank, R.A. et al. (2003) Neurobiol. Aging 24:521-536を参照;その内容全体を本明細書に援用する。
[00150] 種々の態様において本発明は、1種類以上のHhアゴニストを使用する治療および予防方式を含む。これらのアゴニストは、生物において学習障害および/または記憶障害の発症を低下させ、したがって生物の学習能力および/または記憶機能を維持するのに使用できる。他の態様においては、本発明の製剤を単に正常な記憶機能の増強に使用できる。
[00151] 本発明の方法および組成物は、運動障害の処置に使用できる。Hhアゴニストを用いて、下記を伴う患者を処置できる:運動失調症、皮質脳幹神経節変性(CBGD)、ジスキネジー、ジストニー、振戦、遺伝性痙性対麻痺、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統萎縮、ミオクローヌス、パーキンソン病、進行性核上麻痺、不穏下肢症候群、レット(Rett)症候群、痙縮、シドナム舞踏病、他の舞踏病、アテトーシス、バリスム、常同行動、遅発性ジスキネジー/ジストニー、チック病、トゥーレット症状群、オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、広汎性レーヴィ体病、片側バリスム、片側顔面痙攣、不穏下肢症候群、ウィルソン病、スティッフマン症候群、無動無言症、精神運動遅滞、疼痛性脚運動性趾症候群(painful legs moving toes syndrome)、歩行障害、薬物誘発性運動障害、または他の運動障害。
[00152] 本発明の方法および組成物は、行動障害、たとえば注意欠陥障害(ADD)、活動亢進を伴う注意欠陥障害(ADHD)、および認知障害、たとえば認知症(加齢性認知症、HIV関連認知症、複合エイズ認知症(ADC)、HIV脳障害および老人性認知症を含む)を処置し、または重症度を軽減するために使用できる。ある種の組合わせ剤は、正常者(正常な高齢者を含む)または記憶障害患者において、長期記憶および/または作動記憶を改善する1以上のCNS活性部分を提供する。
[00153] ADHDの特徴は大部分の個体において小児期に発生することが証明された。この障害は、しばしば7歳以前に発症し、少なくとも6カ月間持続する、慢性的行動を特徴とする。現在、下記の4つのサブタイプのADHDが定義されている:
[00154] 1. 注意散漫型
[00155] 2. 活動亢進/衝動型
[00156] 3. 複合型
[00157] 4. 特定されていない型は、若干の特徴を示すが、完全な診断に達するには症状数が不十分な個体により定義される。ただし、これらの症状は日常生活を撹乱する。
[00158] 米国精神医学会、診断および統計マニュアル(DSM-IV)によるADHD診断基準には、下記のものが含まれる:
[00159] A. 下記の(1)または(2):
[00160] (1).下記の注意散漫症状のうち6(またはそれ以上)が少なくとも6カ月間持続し、発育レベルに適応不良かつ不適合な程度に達する:
[00161] 注意散漫
[00162] (a) 細かいことに十分に注意を払うことができない、または学業、作業その他の活動において不注意な誤りをおかす
[00163] (b) 作業や遊び活動において注意を持続するのがしばしば困難
[00164] (c) 直接話しかけられたとき、しばしば聞いていないように見える
[00165] (d) しばしば指示に従わず、学校での学習、日課、または作業場での課題をやり通せない(反抗的行動または指示を理解できないためではない)
[00166] (e) 作業や活動を組織化するのがしばしば困難である
[00167] (f) 持続的な精神努力を必要とする作業(たとえば学校での学習または家庭学習)の約束をしばしば避け、嫌い、または不承不承行う
[00168] (g) 作業または活動に必要な物(たとえば玩具、宿題、鉛筆、本、または道具)をしばしば紛失する
[00169] (h) 外界からの刺激によりしばしば容易に気が散る
[00170] (i) 日常活動においてしばしば物忘れしやすい
[00171] (2).下記の活動亢進-衝動性症状のうち6(またはそれ以上)が少なくとも6カ月間持続し、発育レベルに適応不良かつ不適合な程度に達する:
[00172] 活動亢進(多動性)
[00173] (a) 座っていても手足を始終そわそわ動かしたり、もじもじしたりする
[00174] (b) 座っているべき教室や他の場所で、しばしば席を離れる
[00175] (c) それが不適切な場所で走り回ったり、よじ登ったりする(若者や成人では、主観的な落着きなさに限られる場合がある)
[00176] (d) 遊ぶ際に静かに遊ぶことやその約束をすることがしばしば困難である
[00177] (e) しばしば”動き続ける(on the go)”か、またはしばしば”モーターで動いている”ように動く
[00178] (f) しばしばしゃべり過ぎる
[00179] 衝動性
[00180] (g) しばしば質問が終わらないうちに出し抜けに答える
[00181] (h) しばしば順番を待つのが困難である
[00182] (i) しばしば他人に介入したり、邪魔をしたりする(たとえば会話やゲームに口出しする)
[00183] B.障害の原因となったある活動亢進-衝動性または注意散漫症状が、7歳以前からあった
[00184] C. 2カ所以上で(たとえば学校[または作業場]と家庭)それらの症状に由来するある障害がみられる
[00185] D. 社会、学校または職場での機能において、臨床的に有意の障害の明瞭な証拠がなければならない
[00186] E. それらの症状は専らPervasive発育障害、統合失調症、または他の精神障害の経過中に起きるものではなく、他の精神障害(たとえば気分障害、不安障害、分裂性障害、または人格障害)によってより良く説明できるわけでもない
[00187] 本発明の方法および組成物は、自閉性障害を伴う患者を処置するための療法の一部として使用できる。
[00188] 本発明の方法および組成物は、睡眠不全、錯睡眠、病的もしくは精神病的状態に関連する睡眠障害、または他の睡眠障害を伴う患者を処置するための療法の一部として使用できる。特定の好ましい態様において、睡眠不全は内因性睡眠障害、外因性睡眠障害、およびサーカディアンリズム睡眠障害から選択される。内因性睡眠障害の例には、精神生理学的不眠症、睡眠状態誤認、特発性不眠症、ナルコレプシー、再発性過眠症、特発性過眠症、外傷後過眠症、閉塞性睡眠無呼吸症候群、中枢性睡眠無呼吸症候群、中枢性肺胞低換気症候群、周期性四肢運動障害、不穏下肢症候群(RLS)などが含まれる。外因性睡眠障害の例には、不適切睡眠衛生、環境性睡眠障害、高所不眠症、適応睡眠障害、睡眠不全症候群、限界設定(limit-setting)睡眠障害、睡眠開始関連障害、食物アレルギー不眠症、夜間飲食症候群、催眠薬依存性睡眠障害、覚醒薬依存性睡眠障害、アルコール依存性睡眠障害、毒素誘発性睡眠障害などが含まれる。サーカディアンリズム睡眠障害には、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、不規則睡眠/覚醒パターン、睡眠期遅延症候群、睡眠期前進症候群、非24時間型睡眠/覚醒障害などが含まれる。
[00189] 特定の態様において、本発明は健忘症の処置を含む。記憶問題の愁訴は一般的にみられる。集中力不足、覚醒不足および注意力不足はすべて、ある程度、記憶プロセスを撹乱する可能性がある。したがって、主観的な記憶問題愁訴を真の健忘症と区別しなければならない。これは通常はベッドサイドで、より肉眼的な評価および特定の神経心理学的テストにより行われる。視覚記憶と単語記憶の欠損をそれらのテストにより分離することができる。定義によれば、健忘症では他の精神能力、たとえば論理能力は保存されている。記憶の神経生物学的仮説では、健忘症には病理生物学的変動が比較的少ないと推定する。臨床的に、健忘症の問題はしばしば、他の点では健康な者に突然の疾病の結果として現われる。健忘症は、特定の陳述的記憶欠損と記述される。記憶が忠実にコード化されるには、情報の登録、復唱および維持が必要である。最初の2要素には海馬および中側頭葉構造体が関係すると思われる。維持または蓄積は、ヘテロモード連合野が関係すると思われる。健忘症は蓄積した記憶の消失または新たな記憶の形成不能として現われる可能性がある。蓄積した記憶の消失は、逆行性健忘症として知られる。新たな記憶の形成不能は、前向性健忘症として知られる。
[00190] 本発明方法により処置できる形態の健忘症の例には、短期健忘症、アルコール性ブラックアウト(一過性黒内障)、ウェルニッケ-コルサコフ症候群(初期)、部分複雑けいれん発作、一過性全健忘症、投薬、たとえばトリアゾラム(triazolam)(Halcion)に関連するもの、および脳底動脈性片頭痛が含まれる。本発明方法は、より持続的な健忘症、たとえば振盪症後健忘症、またはヘルペス脳炎の結果としての健忘症の処置にも使用できる。
[00191] 本発明の方法および組成物は、他のいずれかのCNS関連状態を治療し、または重症度を軽減するために使用できる。そのような状態には、たとえば学習能力障害、記憶消失状態、摂食障害、または薬物嗜癖(たとえばニコチン嗜癖)が含まれる。特定の態様において、CNS関連状態は神経変性性疾患および/または運動障害ではない。
[00192] 本発明方法は、陳述的記憶の改善を望む正常な個体の処置にも使用できる。
[00193] 本発明の特定の態様は、前記のいずれかの障害、より具体的には、うつ病およびADHD(成人または小児)を処置する方法であって、ADHDの注意要素を処置するのに十分な量のHhアゴニスト、および場合により運動障害要素を処置するのに十分な量のドーパミン再取込み阻害薬を対象に共投与することを含む方法に関する。Hh経路の活性化は、適切な神経発生を正に調節し、シナプス伝達を増強して、神経シグナル伝達の欠損に起因するADHDの症状を軽減すると期待される。特定の態様においては、Hhアゴニストとドーパミン再取込み阻害薬を同時に投与する。特定の態様においては、Hhアゴニストとドーパミン再取込み阻害薬を単一組成物の一部として投与する。特定の態様において、この組成物は経口投与用または経皮投与用である。
[00194] さらに、本発明の1観点は、Hhアゴニストとドーパミン再取込み阻害薬の組合わせを使用する方法および組成物に関する。多様な構造をもつ種々のドーパミン輸送阻害薬(ドーパミン取込み阻害薬とも呼ばれる;本明細書においては有効化合物と呼ぶ)が知られている。たとえばS. Berger, U.S.P. No. 5,217,987; J. Boja et al. (1995) Molec. Pharmacol. 47: 779-786; C. Xu et al. (1995) Biochem. Pharmacol. 49: 339-50; B. Madras et al. (1994) Eur. J. Pharmacol. 267: 167-73; F. Carroll et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 2865-73; A. Eshleman et al. (1994) Molec. Pharmacol. 45: 312-16; R. Heikkila and L. Manzino (1984) Eur. J. Pharmacol. 103: 241-8を参照。ドーパミン輸送阻害薬は、一般にドーパミントランスポータータンパク質に立体特異的に結合するリガンドである。そのような化合物の例は下記のものである:
[00195] (1) 三環系抗うつ薬、たとえばブプリオン(buprion)、ノミフェンシン(nomifensine)およびアミネプチン(amineptin);
[00196] (2) 1,4-ジ置換ピペラジンまたはピペラジン類似体、たとえば1-[2-[ビス(4-フルオロフェニル)メトキシ]エチル]-4-(3-フェニルプロピル)ピペラジン二塩酸塩(またはGBR 12909)、1-[2-[ビス(フェニル)メトキシ]エチル]-4-(3-フェニルプロピル)ピペラジン二塩酸塩(またはGBR12934)、およびGBR13069;
[00197] (3) トロパン類似体、または(ジ置換フェニル)トロパン-2-ベータ-カルボン酸メチルエステル、たとえば3[ベータ]-(4-フルオロフェニル)トロパン-2[ベータ]-カルボン酸メチルエステル(またはWIN 35,428)および3[ベータ]-(4-ヨードフェニル)トロパン-2[ベータ]-カルボン酸イソプロピルエステル(RTI-121);
[00198] (4) 置換ピペリジンまたはピペリジン類似体、たとえばN-[1-(2-ベンゾ[ベータ]-チオフェニル)シクロヘキシル]ピペリジン、インダトラリン(indatraline)および4-[2-[ビス(4-フルオロフェニル)メトキシ]エチル]-1-(3-フェニルプロピル)ピペリジン(またはO-526);
[00199] (5) キノキサリン誘導体またはキノキサリン類似体、たとえば7-トリフルオロメチル-4-(4-メチル-1-ピペラジニル)ピロロ[1,2-[アルファ]]-キノキサリン(またはCGS 12066b);ならびに
[00200] (6) ドーパミン再取込み阻害薬である他の化合物、たとえばマジンドール(mazindol)、ベンゾトロピン(benztropine)、ブフロピオン(bupropion)、フェンシクリジン(phencyclidine)、メチルフェニデート(methylphenidate)など。
[00201] 本発明方法は、Hhシグナル伝達経路を刺激する種々の薬剤を用いて実施できる。そのような薬剤には、Hhポリペプチドおよびそれらの機能均等物(functional equivalent)、生物活性低分子、抗体などが含まれる。Hhアゴニストは、Hhシグナル伝達経路の阻害薬または抑制薬であってもよい。そのような阻害薬の例は、RNAi構築体である。それらを含むこれらの薬剤および組成物について、以下に詳述する。
[00202] 特定の好ましい態様において、本発明方法を実施するのに用いるHhアゴニストは、1 mM以下、より好ましくは1μM以下、さらに好ましくは1 nM以下のED50でHh仲介シグナル伝達を活性化する。
[00203] 特定の態様において、本発明方法は、Hhシグナル伝達経路の抑制薬のRNAi調節薬の投与により実施できる。Hhシグナル伝達経路は多数の調節エレメントを含み、それらのうちのあるもの、たとえばpatchedは、負の調節物質と同定されている。これら負の調節物質を阻害または拮抗すると、Hhシグナル伝達経路が活性化されるであろう。特定の好ましい態様において、本発明のHhアゴニストはHhシグナル伝達経路に対するそれらの選択性に基づいて選ぶことができる。この選択性は、Hh経路と特定の成分を共有する他の経路、たとえばウィングレス経路と対比したHhシグナル伝達経路に対する選択性;または幾つかの相同体を用いる個々のHhシグナル伝達経路間の選択性、たとえばptc-1対ptc-2などであってよい。
[00204] 他の態様において、本発明方法は遺伝子活性化構築体の投与により実施できる。この遺伝子活性化構築体は、患者のゲノムhh遺伝子と組換えて、hh遺伝子のコード配列に作動可能な状態で結合したヘテロロガス転写調節配列を供給するように設計される。
[00205] さらに他の態様において、本発明方法は、Hhポリペプチドまたはその均等物をコードする遺伝子療法構築体の投与により実施できる。たとえばこの遺伝子療法構築体は、組換えウイルス粒子、リポソームおよびポリカチオン核酸結合剤から選択される組成物中において供給することができる。これらの遺伝子療法薬については後記に述べる。
[00206] 本明細書に記載する方法の1態様において、対象はいずれかの動物、またはその障害に罹患しうる人工的に改変した動物である。対象にはヒト、霊長類、ウマ、ヒツジ、トリ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコまたはネズミ対象が含まれるが、これらに限定されない。好ましい態様において、対象はヒトである。
[00207] 本明細書に記載する方法の1態様においては、薬剤を下記のいずれかの経路で投与する:病変部内、腹腔内、皮下、筋肉内または静脈内注射;注入;リポソーム仲介送達;局所、クモ膜下、歯肉ポケット、直腸、気管支内、鼻腔、経粘膜、腸、経口、眼または耳送達。本発明の化合物および/または薬剤は、薬剤またはペプチドを長時間にわたって持続放出しうるカプセルにより送達することもできる。制御放出または持続放出組成物には、親油性デポー剤(たとえば脂肪酸、ろう、油)中の配合物が含まれる。本発明には、ポリマー(たとえばポロキサマー類またはポロキサミン類)でコーティングした粒状組成物も含まれる。本発明組成物の他の態様は、非経口、肺、鼻腔および経口投与を含めた各種投与経路のための粒状剤形保護コーティング、プロテアーゼ阻害薬または透過促進剤を含む。特定の態様においては、Hhアゴニスト供給源を変性領域内またはその近くに定位供給する。
[00208] 本明細書に記載する方法の1態様において、薬剤の有効量は約1〜約50 mg/kg(対象の体重)である。1態様において、薬剤の有効量は約2〜約40 mg/kg(対象の体重)である。1態様において、薬剤の有効量は約3〜約20 mg/kg(対象の体重)である。ただし本発明組成物の用量が対象および用いる個々の投与経路に応じて異なることは、当業者に理解されるであろう。個々の対象に合わせて用量を調整することは当技術分野で一般に行われる。さらに、有効量は特に化合物のサイズ、化合物の生分解性、化合物の生物活性、および化合物の生物学的利用能に基づくであろう。化合物が速やかに分解しない場合、生物学的利用能が高い場合、および高活性の場合、有効であるために必要な量はより少ないであろう。
[00209] 本発明化合物は毎時間、毎日、毎週、毎月、毎年1回(たとえば持効性剤形で)または1回送達として送達できる。送達はある期間の連続送達、たとえば静脈内送達であってもよい。本明細書に記載する方法の1態様においては、薬剤を毎日少なくとも1回投与する。1態様においては、薬剤を毎日1回投与する。1態様においては、薬剤を隔日投与する。1態様においては、薬剤を6〜8日毎に投与する。1態様においては、薬剤を毎週1回投与する。
[00210] 特定の態様において、本発明方法は、Hhシグナル伝達経路を刺激する薬剤と、1種類以上の神経増殖因子、神経生存因子または神経栄養因子の共投与を含む。例には、神経増殖因子、毛様体神経栄養性増殖因子、神経鞘腫由来増殖因子、グリア増殖因子、線条体由来ニューロン栄養因子、血小板由来増殖因子、および細胞分散因子(HGF-SF)が含まれる。
ポリペプチドおよび変異体
[00211] 1態様において、この経路を刺激する薬剤はHhポリペプチドまたはその機能均等物である。用語”機能均等物(functiona equivalent)”には、それらが比較されるタンパク質と類似の生物学的機能および生理学的機能を示すタンパク質のフラグメント、変異体およびムテインが含まれる。
[00212] 特定の態様において、Hhポリペプチドはそれらの安定性を高めるために、または特定の環境への溶解度もしくは親和性を変化させるために、化合物部分により修飾される。そのような修飾は、成熟したプロセシングされた細胞外ドメインの1以上の内部部位に親油性部分(1以上)を付加することであってよく、成熟ポリペプチドのN末端またはC末端残基を親油性部分で誘導体化してもよく、しなくてもよい。他の態様において、このポリペプチドは、C末端残基においてステロール以外の疎水性部分で修飾されている。さらに他の態様においてこのポリペプチドは、N末端残基において環式(好ましくは多環式)親油性基で修飾されている。前記のものの多様な組合わせも考慮される。
[00213] 前記のように、脊椎動物にはhhファミリーの幾つかの異なる遺伝子が見いだされている。脊椎動物Hhポリペプチドのアミノ酸配列の例を本明細書にSEQ ID NO: 1〜8として記載する。単一のショウジョウバエHhポリペプチドも記載する。対応する核酸配列も記載する。提示した配列リスト(表1も参照)によれば、ニワトリShhポリペプチドはSEQ ID No:1によりコードされる;マウスDhhポリペプチドはSEQ ID No:2によりコードされる;マウスIhhポリペプチドはSEQ ID No:3によりコードされる;マウスShhポリペプチドはSEQ ID No:4によりコードされる;ミノカサゴShhポリペプチドはSEQ ID No:5によりコードされる;ヒトShhポリペプチドはSEQ ID No:6によりコードされる;ヒトIhhポリペプチドはSEQ ID No:7によりコードされる;ヒトDhhポリペプチドはSEQ ID No. 8によりコードされる;ミノカサゴThhはSEQ ID No. 9によりコードされる。
Figure 2007521333
[00214] 好ましくは、本発明の方法および組成物に使用する薬剤はHhポリペプチドである。より好ましくは、薬剤はソニックHhポリペプチドである。1態様において、薬剤はHhポリペプチドのフラグメントである。より好ましくは、これはHhポリペプチドに対する受容体への結合部位を含むN末端フラグメントである。さらに好ましくは、このフラグメントはヒトHhポリペプチドの19 kDaのN末端フラグメントである。他の態様においてこの薬剤は、SEQ ID NO: 10〜18として示すHhアミノ酸配列のいずれかと少なくとも60、70、80または90%のアミノ酸配列相同性をもつポリペプチドである。相同性は通常のいずれかの分析アルゴリズムにより評価できる:たとえばPileup配列分析ソフトウェア(Wisconsin Package, 1996のプログラムマニュアル)。
[00215] 本発明の方法および組成物のための薬剤は、Hhポリペプチドの変異体であってもよい。あるタンパク質の”変異体”は、たとえば変異していないタンパク質の標的に結合する能力を変異体が保持するように、1以上のアミノ酸欠失、置換または付加により変異したアミノ酸配列を含む。保存置換は、元のタンパク質と機能的に同等な変異体を生成する可能性がより大きい。そのような保存置換は、下記のグループ内での置換であってよい:(1)グシリンおよびアラニン;(2)バリン、イソロイシンおよびロイシン;(3)アスパラギン酸およびグルタミン酸;(4)アスパラギンおよびグルタミン;(5)セリンおよびトレオニン;(6)リシンおよびアルギニン;(7)フェニルアラニンおよびチロシン。そのような置換は、たとえば下記のグループ内での相同置換であってもよい:(a)グシリン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;(b)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;(c)リシン、アルギニンおよびヒスチジン;(d)アスパラギン酸およびグルタミン酸;(e)アスパラギンおよびグルタミン;(f)セリンおよびトレオニン;(g)システインおよびメチオニン。
[00216] 他の好ましい態様において、本発明は、Hhポリペプチドの生物活性を調節する(たとえば模倣または拮抗する)ポリペプチドの使用を特徴とする。このポリペプチドは、SEQ ID No:1、SEQ ID No:2、SEQ ID No:3、SEQ ID No:4、SEQ ID No:5、SEQ ID No:6、SEQ ID No:7、SEQ ID No:8またはSEQ ID No:9のいずれかにより表わされるヌクレオチド配列と同一または相同な遺伝子のコード領域のヌクレオチド配列の全部または一部を含む核酸によりコードされる。好ましくはこの核酸は、SEQ ID No:1〜9により表わされる1以上の核酸のコード部分にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするHhコード部分を含む。
[00217] 用語”均等物”は、たとえば本明細書に記載する脊椎動物Hhポリペプチドの活性をもつ、機能的に同等なHhポリペプチドまたは機能的に同等なペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むと理解される。同等なヌクレオチド配列には、1以上のヌクレオチド置換、付加または欠失により異なる配列、たとえば対立遺伝子変異体が含まれるであろう;またそれには、遺伝子コードの縮重のためSEQ ID No:1〜9に示す脊椎動物hh cDNAのヌクレオチド配列と異なる配列が含まれるであろう。均等物には、SEQ ID No:1〜9のうち1以上に示すヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下で(すなわち、約1 Mの塩中で形成されるDNAデュプレックスの融点(Tm)より約20〜27℃低い温度に相当)ハイブリダイズするヌクレオチド配列も含まれるであろう。1態様において、均等物はさらにSEQ ID No:1〜9のいずれかに示すヌクレオチド配列に由来する核酸配列および進化上それらに関係するものを含むであろう。
[00218] さらに他の好ましい態様において、Hhポリペプチドをコードする本発明に有用な核酸は、SEQ ID No:1〜9のうち1以上のセンス配列またはアンチセンス配列の少なくとも12個の連続ヌクレオチド;好ましくはSEQ ID No:1〜9のうち1以上のセンス配列またはアンチセンス配列の少なくとも20個の連続ヌクレオチド;より好ましくは少なくとも40、50または75個の連続ヌクレオチドに相当する核酸プローブに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
融合タンパク質
[00219] 1態様において、本発明方法を実施するための薬剤は、Hhポリペプチドの全部または一部、および他のいずれかのペプチド部分、たとえばマーカーまたは他の生物活性タンパク質を含む、融合タンパク質である。追加ドメインが本発明のこの融合タンパク質中に含まれてもよい。融合タンパク質がタンパク質の発現を促進する可能性があることも広く認められており、したがって本発明のHhポリペプチドの発現に使用できる。たとえば融合タンパク質はそれらの精製を容易にするドメイン、たとえば”ヒスチジンタグ”またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼドメインを含むことができる。それらは、細胞内のタンパク質の検出またはインビトロでの抗体によるタンパク質捕獲のために、既知のモノクローナル抗体が認識する”エピトープタグ”を含むペプチドを含有することができる。好ましい態様において、組換えHhポリペプチドは、それの精製を容易にするドメインを含む融合タンパク質、たとえばHh/GST融合タンパク質である。
[00220] 場合により、キメラタンパク質の類似ペプチドと他の部分の間に、非構造化ポリペプチドリンカー領域を導入することが必要であろう。リンカーは融合タンパク質に高い柔軟性を付与することができる。リンカーは、融合タンパク質のいずれか2つのフラグメント間の立体障害を低下させることもできる。リンカーは、各フラグメントの適切な折りたたみの形成を促進することもできる。リンカーは天然源のもの、たとえばタンパク質の2ドメイン間のランダムコイル中に存在することが確認された配列であってもよい。リンカー配列の一例は、RNAポリメラーゼaサブユニットのC末端ドメインとN末端ドメインの間にみられるリンカーである。天然リンカーの他の例には、lcIおよびLexAタンパク質中にみられるリンカーが含まれる。あるいは、リンカーは合成によるものであってもよい。たとえば配列(Gly4Ser)3を合成の非構造化リンカーとして使用できる。このタイプのリンカーはHuston et al. (1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85:4879; およびU.S.P. No. 5,091,513に記載されている。
[00221] ある態様においては、リンカーの設計に際してリンカーが比較的短かい距離、好ましくは約10Å未満であることが要求されるドメインの配置を伴うことが好ましい。しかし特定の態様において、たとえば選択したドメインおよび立体配置に応じて、リンカーが最高約50Åの距離にわたってもよい。
[00222] リンカー内のアミノ酸配列は、経験的に判定した、またはモデル作成により明らかになった、好ましいリンカー特性に基づいて変更できる。たとえばモデル作成試験は、目的長さのほかに、特定のアミノ酸の側基が融合タンパク質の生物活性を妨害する可能性を示すことができる。リンカー選択に際して考慮する事項には、リンカーの柔軟性、リンカーの電荷、およびリンカー中に天然サブユニット中の若干のアミノ酸が存在することが含まれる。リンカー中の残基がDNAに接触し、これにより結合親和性もしくは特異性に影響を及ぼし、または他のタンパク質と相互作用するように、リンカーを設計することもできる。たとえばリンカーはプロテアーゼが認識するアミノ酸配列を含むことができ、これによりキメラタンパク質の活性を開裂により調節できる。場合により、特にサブユニット間の比較的長い距離にわたる必要がある場合、またはそれらのドメインを特定の立体配置に保持しなければならない場合、リンカーは所望により折りたたまれた追加ドメインを含むことができる。
タンパク質の調製
[00223] 本明細書に記載する薬剤は、当業者に既知のいずれかの方法で製造できる。たとえばタンパク質は、核酸、たとえばコード核酸を含むプラスミドまたはベクターから、組換え発現により製造でき、その際プラスミドまたはベクターは適切な宿主細胞中、すなわち目的ポリペプチドを産生させるための宿主-ベクター系中にある。原核細胞および真核細胞の両方の多様な発現系が、タンパク質およびペプチド製造の当業者に既知であり、市販されている。アミノ酸残基50個未満の低分子ポリペプチドは、当業者に周知の方法で化学合成できる。
[00224] 本発明の一本鎖構築体を哺乳動物細胞で発現させるために使用できる種々の細胞、細胞系統およびDNA配列が当技術分野で十分に解明されており、容易に入手できる。トランスフェクション、組換えタンパク質の発現および精製は当技術分野で十分な記載があり、当業者に理解されている。哺乳動物細胞発現系において外来遺伝子を組換え産生させるのに用いられる各工程の種々の技術的観点に関する詳細は、さらに当技術分野で多数のテキストおよび実験マニュアル中にある:たとえばAusubel et al.編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, ニューヨーク(1989)。
[00225] 当技術分野で知られているように、Hhポリペプチドは生物学的標準法により製造できる。たとえば、本発明ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を指令する核酸ベクターでトランスフェクションした宿主細胞を、適切な条件下で培養して、そのペプチドの発現を行わせることができる。Hhポリペプチドを分泌させ、細胞と組換えHhポリペプチド含有培地の混合物から単離することができる。あるいは、組換えhh遺伝子からシグナルペプチド配列を除去することによりペプチドを細胞質に保持させ、細胞を収穫し、溶解し、タンパク質を単離することができる。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副生物を含有する。細胞培養に適切な培地は当技術分野で周知である。
[00226] 組換えhh遺伝子は、Hhポリペプチドまたはその一部をコードする核酸を、原核細胞、真核細胞または両方における発現に適切なベクター中へライゲートすることにより作成できる。組換え形の本発明Hhポリペプチドを産生させるための発現ベクターには、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。たとえば、Hhポリペプチドの発現に適切なベクターには、原核細胞、たとえば大腸菌(E. coli)における発現のための下記のタイプのプラスミドが含まれる:pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド、およびpUC由来プラスミド。
[00227] 酵母において組換えタンパク質を発現させるための多数のベクターがある。たとえばYEP24、YIP5、YEP51、YEP52、pYES2およびYRP17は、サッカロミセス-セレビシエ(S. cerevisiae)に遺伝子構築体を導入するのに有用なクローニングおよび発現用のビヒクルである(たとえばBroach et al. (1983), Experimental Manipulation of Gene Expression, 編者M. Inouye, Academic Press, p. 83を参照;本明細書に援用する)。これらのベクターは、pBR322 oriが存在するため大腸菌において複製可能であり、酵母2ミクロンプラスミドの複製決定配列があるためサッカロミセス-セレビジエにおいて複製可能である。さらに薬物耐性マーカー、たとえばアンピシリン耐性マーカーを使用できる。具体例においては、SEQ ID No: 1〜9または19に示すhh遺伝子のいずれかのコード配列をサブクローニングすることにより作成した発現ベクターを用いて、Hhポリペプチドを組換え産生する。
[00228] 好ましい哺乳動物発現ベクターは、細菌内でのベクター増殖を促進するための原核細胞配列、および真核細胞内で発現する1以上の真核細胞転写ユニットの両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neoおよびpHyg由来のベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのうちあるものを細菌プラスミド由来の配列、たとえばpBR322で修飾して、原核細胞および真核細胞の両方における複製および薬物耐性選択を促進する。あるいは、ウイルス誘導体、たとえばウシパピローマウイルス誘導体(BPV-1)、またはエプスタイン-バーウイルス誘導体(pHEBo、pREP-由来およびp205)を、真核細胞内での一過性タンパク質発現のために使用できる。プラスミドの調製および宿主細胞の形質転換に用いる種々の方法が当技術分野で周知である。原核細胞および真核細胞の両方に適切な他の発現系ならびに一般的な組換え法については、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Sambrook, Fritsch and Maniatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989) 16および17章を参照。
[00229] 場合により、バキュロウイルス発現系を用いて組換えHhポリペプチドを発現させるのが望ましいであろう。そのようなバキュロウイルス発現系の例は、昆虫細胞、たとえばSf9細胞、およびバキュロウイルス由来ベクター、たとえばpVL由来ベクター(たとえばpVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来ベクター(たとえばpAcUW1)、およびpBlueBac由来ベクター(たとえばβ-gal含有pBlueBac III)を含む。
[00230] Hhポリペプチドの一部のみ、たとえばN末端の一部を欠如する形態、すなわちシグナルペプチドを欠如するトランケーション変異体を発現させたい場合、発現させるべき目的配列を含むオリゴヌクレオチドフラグメントに、開始コドン(ATG)を付加することが必要であろう。酵素メチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)を用いてN末端位置のメチオニンを酵素開裂させうることは、当技術分野で周知である。MAPは大腸菌(Ben-Bassat et al. (1987) J. Bacteriol. 169:751-757)およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)からクローニングされ、そのインビトロ活性が組換えタンパク質において証明された(Miller et al. (1987) PNAS 84:2718-1722)。したがって、N末端メチオニンを除去したい場合、これは、MAP産生宿主(たとえば大腸菌またはCM89またはサッカロミセス-セレビシエ)においてインビボでHh由来ポリペプチドを発現させるか、あるいは精製MAPをインビトロで用いて(たとえば前掲のMillerらの方法)達成できる。
[00231] さらに、タンパク質またはその機能均等物の特性を目的に合わせるために、既知のタンパク質配列から、たとえば1個以上のヌクレオチドの付加、置換、欠失または挿入により核酸レベルで変更を行えることは、当業者に自明である。部位特異的変異誘発は、変異タンパク質を作成するために使用できる好ましい方法である。当業者に既知の多数の部位特異的変異誘発法があり、これにはSambrookに記載の、または市販のキットを用いたPCRによるオリゴヌクレオチド特異的変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。
[00232] どのアミノ酸残基が受容体結合ドメインに関与するかを決定すると、当業者は予め選択した受容体結合モチーフを規定するアミノ酸配列をもつ合成ペプチドを設計することができる。生物活性の可能性をもつペプチド模倣体を設計するのに有用なコンピュータープログラムがU.S.P. No. 5,331,573に記載されており、その開示内容を本明細書に援用する。
[00233] 目的とするアミノ酸配列を選択するほか、当業者は標準分子モデリングソフトウェアパッケージを用いて、たとえば当該ペプチドの環化を促進する追加システインアミノ酸を予め選択した位置に配置した特異的なペプチドを設計することができる。これらの追加システイン残基が酸化されるとペプチドが環化し、これにより天然タンパク質の対応するアミノ酸配列のコンホメーションを模倣したコンホメーションにペプチドが拘束される。合成ペプチドを環化するために一般に用いられるいずれかの標準的な共有結合、たとえばジスルフィド結合を、本発明の実施に使用できるものとする。他の環化化学については国際特許出願PCT/WO 95/01800中に考察されており、その開示内容を本明細書に援用する。
[00234] あるいは、通常は長さが最高50アミノ酸の低分子ペプチドである類似体を、標準的な固相ペプチド合成法、たとえばMerrifield (1963) J. Am. Chem. Soc., 85:2149に記載のものと同様な方法により合成することができる。たとえば合成に際して、そのC末端を不溶性ポリマー支持体(たとえばポリスチレンビーズ)に結合させた生長中のポリペプチドに、保護された側鎖をもつN-α-保護アミノ酸を段階的に付加する。ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの試薬と反応させることにより活性化したN-α-保護アミノ酸のα-カルボキシ基に、N-α-保護アミノ酸のアミノ基が結合することにより、ペプチドが合成される。活性化カルボキシルへの遊離アミノ基の結合により、ペプチド結合が形成される。慣用されるN-α-保護基には、酸不安定Boc、および塩基不安定Fmocが含まれる。
[00235] 適切な化学、樹脂、保護基、保護されたアミノ酸、および試薬は当技術分野で周知であるので、本明細書には詳述しない。たとえばAtherton et al. (1963) Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach (IRL Press,)、およびBodanszky (1993) Peptide Chemistry, A Practical Textbook, 第2版, Springer-Verlag、およびFields et al. (1990) Int. J. Peptide Protein Res. 35:161-214を参照;それらの記載を本明細書に援用する。
タンパク質の回収および精製
[00236] 組換えHhポリペプチドは、調製用HPLCを含めたタンパク質精製のための当技術分野で既知の技術、たとえばゲル濾過、分配および/またはイオン交換クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ならびにそれらのペプチドに特異的な抗体によるイムノアフィニティー精製を用いて、細胞培地、宿主細胞、または両方から単離できる。適切なマトリックスおよび緩衝液の選択は当技術分野で周知であるので、本明細書には詳述しない。
[00237] 発現ベクター中へ精製タグを工学的に挿入して、たとえば目的とするタンパク質またはポリペプチドにポリヒスチジンを付加することにより、発現したタンパク質の精製を容易にし、信頼性をもって実施することができる。ポリ(His)-Hhポリペプチドは、Ni2+金属樹脂を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、容易に精製できる。次いでエンテロキナーゼ処理によりポリ(His)リーダー配列を除去することができる(たとえばHochuli et al. (1987) J. Chromatography 411:177; およびJanknecht et al. PNAS 88:8972を参照)。
[00238] GST-融合タンパク質は、たとえばグルタチオン誘導体化したマトリックスの使用により、Hhポリペプチドの精製を容易にすることができる(たとえばCurrent Protocols in Molecular Biology, 編者Ausubel et al. (ニューヨーク: John Wiley & Sons, 1991)を参照)。
タンパク質の精製
[00239] Hhポリペプチドを誘導体化しうる広範な親油性部分がある。Hhポリペプチドに結合させることに関して用語”親油性基”は、脂質相に対する高い親和性を与える炭化水素の含量が高い基を表わす。親油性基は、たとえば約7〜30個の炭素原子をもつ比較的長鎖のアルキルまたはシクロアルキル(好ましくはn-アルキル)基であってよい。アルキル基は、末端にヒドロキシまたは第一級アミン”テイル”をもつことができる。さらに具体的には、親油性分子には天然および合成の芳香族および非芳香族部分、たとえば脂肪酸、エステルおよびアルコール類、他の脂質分子、ケージ構造体、たとえばアダマンタンおよびバックミンスターフラーレン類、ならびに芳香族炭化水素、たとえばベンゼン、ペリレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタレン、ピレン、クリセンおよびナフタセンが含まれる。さらにHhポリペプチドの修飾の詳細については、米国特許出願No. 09/ 579680を参照;その開示内容全体を本明細書に援用する。
[00240] 親油性分子として特に有用なのは下記のものである:脂肪族炭化水素、飽和および不飽和脂肪酸ならびに他の脂質およびリン脂質部分、ろう、コレステロール、イソプレノイド、テルペン、ならびに多脂環式炭化水素:アダマンタンおよびバックミンスターフラーレンを含む;ビタミン、ポリエチレングリコールまたはオリゴエチレングリコール、(C1-C18)-アルキルホスフェートジエステル、-O-CH2-CH(OH)-O-(C12-C18)-アルキル、特にピレン誘導体とのコンジュゲート。親油性部分は、本発明に使用するのに適切な親油性色素であってもよく、これには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ジフェニルヘキサトリエン、ナイルレッド(Nile Red)、N-フェニル-1-ナフチルアミン、プロダン(Prodan)、ラウロダン(Laurodan)、ピレン(Pyrene)、ペリレン(Perylene)、ローダミン、ローダミンB、テトラメチルローダミン、テキサスレッド(Texas Red)、スルホローダミン、過塩素酸1,1'-ジドデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドカルボシアニン、オクタデシルローダミンBおよびBODIPY色素:Molecular Probes Inc.より入手。
[00241] 他の親油性分子の例には、下記のものを含む脂肪族カルボニル基が含まれる:1-または2-アダマンチルアセチル、3-メチルアダマンタ-1-イルアセチル、3-メチル-3-ブロモ-1-アダマンチルアセチル、1-デカリンアセチル、ショウノウアセチル、カンファンアセチル、ノルアダマンチルアセチル、ノルボルナンアセチル、ビシクロ[2.2.2.]-オクタ-5-エンアセチル、1-メトキシビシクロ[2.2.2.]-オクタ-5-エン-2-カルボニル、シス-5-ノルボルネン-endo-2,3-ジカルボニル、5-ノルボルネン-2-イルアセチル、(1R)-(-)-ミルテンタンアセチル、2-ノルボルナンアセチル、アンチ-3-オキソ-トリシクロ[2.2.1.0<2,6>]-ヘプタン-7-カルボニル、デカノイル、ドデカノイル、ドデセノイル、テトラデカジエノイル、デシノイルまたはドデシノイル。
Hhポリペプチドの誘導体化
[00242] 化学結合手段または遺伝子工学によるものを含めた多数の方法で、Hhポリペプチドを疎水性部分に結合させることができる。
[00243] 当業者に既知の多数の化学架橋剤がある。本発明に好ましい架橋剤はヘテロ二官能性架橋剤であり、これらはHhポリペプチドと疎水性部分を段階的に結合させるのに使用できる。ヘテロ二官能性架橋剤を用いるとタンパク質に結合させるためのより特異的な結合方法を考案でき、これにより目的外の副反応、たとえばホモタンパク質ポリマーの発生が減少する。多様なヘテロ二官能性架橋剤が当技術分野で知られている。これらには下記のものが含まれる:4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル(SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS);(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸N-スクシンイミジル(SIAB)、4-(p-マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミジル(SMPB)、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC);4-スクシンイミジルオキシカルボニル-a-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)-トルエン(SMPT)、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SPDP)、6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート]ヘキサン酸スクシンイミジル(LC-SPDP)。N-ヒドロキシスクシンイミド部分をもつ架橋剤は、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド類似体として得ることができ、これらは一般に、より大きな水溶性をもつ。さらに、インビボでのリンカー開裂量を少なくするために、架橋鎖内にジスルフィド橋をもつ架橋剤をその代わりにアルキル誘導体として合成することができる。
[00244] ヘテロ二官能性架橋剤のほかに他の多数の架橋剤があり、これにはホモ二官能性架橋剤および光反応性架橋剤が含まれる。スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)およびジメチルピメルイミデート.2 HCl (DMP)は本発明に用いるのに有用なホモ二官能性架橋剤の例であり、ビス-[β-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド(BASED)およびl-6(4'-アジド-2'-ニトロフェニル-アミノ)ヘキサン酸N-スクシンイミジル(SANPAH)は有用な光架橋剤の例である。タンパク質結合法の最近の概説については、Means et al. (1990) Bioconjugate Chemistry 1:2-12を参照;本明細書に援用する。
[00245] 前記に含まれる特に有用なあるクラスのヘテロ二官能性架橋剤は、第一級アミン反応性基であるN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはその水溶性類似体N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)を含む。第一級アミン(リシンイプシロン基)はアルカリ性pHでプロトン化しておらず、NHSまたはスルホ-NHSエステルへの求核攻撃により反応する。この反応の結果、アミド結合が形成され、NHSまたはスルホ-NHSが副生物として離脱する。
[00246] ヘテロ二官能性架橋剤の一部として有用な他の反応性基は、チオール反応性基である。一般的なチオール反応性基には、マレイミド、ハロゲン、およびピリジルジスルフィドが含まれる。マレイミドは、わずかに酸性ないし中性(pH 6.5〜7.5)条件下で遊離スルフヒドリル(システイン残基)と数分以内に特異的に反応する。ハロゲン(ヨードアセチル官能基)は-SH基と生理的pHで反応する。これらの反応性基は両方とも安定なチオエステル結合を形成する。
[00247] ヘテロ二官能性架橋剤の第3成分はスペーサーアームまたは橋である。この橋は2つの反応性末端を結合する構造体である。この橋の最も明らかな貢献は、立体障害に対するそれの影響である。場合により、長い橋ほど2つの複雑な生体分子を架橋するのに必要な距離をより容易に架橋できる。たとえばSMPBは14.5Åの長さをもつ。
[00248] ヘテロ二官能性試薬を用いるタンパク質-タンパク質コンジュゲートの調製は、アミン反応とスルフヒドリル反応を伴う2工程反応である。第1工程のアミン反応について、選択するタンパク質は第一級アミンを含まなければならない。これは、リシンイプシロンアミンまたは大部分のタンパク質のN末端にある第一級アルファアミンであってよい。このタンパク質はスルフヒドリル基を含むべきでない。結合させる両タンパク質が遊離スルフヒドリル基を含む場合、すべてのスルフヒドリルが遮断されるように、たとえばN-エチルマレイミドを用いて一方のタンパク質を修飾することができる(参照:Partis et al. (1983) J. Pro. Chem. 2:263;本明細書に援用する)。エルマン試薬(Ellman's Reagent)を用いて、そのタンパク質のスルフヒドリルの量を計算することができる(たとえばEllman et al. (1958) Arch. Biochem. Biophys. 74:443、およびRiddles et al. (1979) Anal. Biochem. 94:75を参照;本明細書に援用する)。
[00249] 反応緩衝液は、余分なアミンおよびスルフヒドリルを含有すべきでない。反応緩衝液のpHは7.0〜7.5とすべきである。このpH範囲では、マレイミドがアミンと反応するのが防止され、スルフヒドリルとの第2反応用のマレイミド基が保存される。
[00250] NHS-エステルを含む架橋剤の水溶性には限界がある。それらの架橋剤を反応混合物に導入する前に、最小量の有機溶媒(DMFまたはDMSO)に溶解すべきである。架橋剤/溶媒はエマルションを形成し、これにより反応が起きる。
[00251] スルホ-NHSエステル類似体はより水溶性であり、反応用緩衝液に直接添加することができる。高イオン濃度の緩衝液はスルホ-NHSエステルを”塩析”する傾向をもつので、避けるべきである。加水分解による反応性損失を避けるために、タンパク質溶液の溶解直後に架橋剤を反応混合物に添加する。
[00252] これらの反応は、濃厚なタンパク質溶液中ではより効率的な可能性がある。反応混合物のpHがよりアルカリ性であるほど、反応速度は速くなる。NHSおよびスルホ-NHSエステルの加水分解速度は、pHの上昇に伴っても増大する。温度が高いほど、加水分解およびアシル化両方の反応速度が増大する。
[00253] 反応が完了した時点で、第1タンパク質はスルフヒドリル反応性部分で活性化されている。この活性化されたタンパク質を、単にゲル濾過または透析により反応混合物から単離できる。架橋の第2工程であるスルフヒドリル反応を実施するために、マレイミド、活性化ハロゲン、またはピリジルジスルフィドとの反応のために選択する親油性基は、遊離スルフヒドリルを含有しなければならない。あるいは、第一級アミンを修飾してスルフヒドリル基を付加してもよい。
[00254] すべての場合、スルフヒドリル基の酸化を防止するために緩衝液を脱泡すべきである。EDTAを添加して、緩衝液中に存在する可能性のある酸化性金属をキレート化することができる。緩衝液はスルフヒドリル含有化合物を含むべきでない。
[00255] マレイミドは、わずかに酸性ないし中性の範囲(pH 6.5〜7.5)で-SH基と特異的に反応する。ハロゲンおよびピリジルジスルフィドを伴う反応には中性pHで十分である。これらの条件下で、マレイミドは一般に数分以内に-SH基と反応する。ハロゲンおよびピリジルジスルフィドには、より長い反応時間が必要である。
[00256] アミン反応工程で製造した第1のスルフヒドリル反応性タンパク質を、適切な緩衝液条件下で、スルフヒドリルを含む親油性基と混合する。コンジュゲートはゲル濾過または透析などの方法で反応性混合物から単離できる。
[00257] コンジュゲーションのために活性化した親油性部分の例には、下記のものが含まれる:N-(1-ピレン)マレイミド; 2,5-ジメトキシスチルベン-4'-マレイミド、エオシン-5-マレイミド; フルオレセイン-5-マレイミド; N-(4-(6-ジメチルアミノ-2-ベンゾフラニル)フェニル)マレイミド; ベンゾフェノン-4-マレイミド; 4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4'-マレイミド(DABMI)、テトラメチルローダミン-5-マレイミド、テトラメチルローダミン-6-マレイミド、ローダミンレッド(Rhodamine Red、商標)C2マレイミド、N-(5-アミノペンチル)マレイミド、トリフルオロ酢酸塩、N-(2-アミノエチル)マレイミド、トリフルオロ酢酸塩、オレゴングリーン(Oregon Green、商標)488マレイミド、N-(2-((2-(((4-アジド-2,3,5,6-テトラフルオロ)ベンゾイル)アミノ)エチル)ジチオ)エチル)マレイミド(TFPAM-SS1)、2-(1-(3-ジメチルアミノプロピル)-インドール-3-イル)-3-(インドール-3-イル)マレイミド(ビスインドリルマレイミド; GF 109203X)、BODIPY(登録商標)FL N-(2-アミノエチル)マレイミド、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)マレイミド(DACM)、Alexa(商標)488 C5マレイミド、Alexa(商標)594 C5マレイミド、ナトリウム塩N-(1-ピレン)マレイミド、2,5-ジメトキシスチルベン-4'-マレイミド、エオシン-5-マレイミド、フルオレセイン-5-マレイミド、N-(4-(6-ジメチルアミノ-2-ベンゾフラニル)フェニル)マレイミド、ベンゾフェノン-4-マレイミド、4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4'-マレイミド、メタンスルホン酸1-(2-マレイミジルエチル)-4-(5-(4-メトキシフェニル)オキサゾール-2-イル)ピリジニウム、テトラメチルローダミン-5-マレイミド、テトラメチルローダミン-6-マレイミド、ローダミンレッド(Rhodamine Red、商標)C2マレイミド、N-(5-アミノペンチル)マレイミド、N-(2-アミノエチル)マレイミド、N-(2-((2-(((4-アジド-2,3,5,6-テトラフルオロ)ベンゾイル)アミノ)エチル)ジチオ)エチル)マレイミド、2-(1-(3-ジメチルアミノプロピル)-インドール-3-イル)-3-(インドール-3-イル)マレイミド、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)マレイミド(DACM)、11H-ベンゾ[α]フルオレン、ベンゾ[α]ピレン。
[00258] 1態様においては、Hhポリペプチドをピレンマレイミドで誘導体化することができ、これはMolecular Probes (オレゴン州ユージーン)から購入できる:たとえばN-(1-ピレン)マレイミドまたはヨード酢酸1-ピレンメチル(PMIAエステル)。図1に示すように、ピレン誘導体化Hhポリペプチドは非修飾形タンパク質より活性がほぼ2倍高い活性プロフィールを備えていた。
[00259] 疎水性部分がポリペプチドである態様について、本発明の修飾Hhポリペプチドは、Hhポリペプチドおよび疎水性部分を1つの連続ポリペプチド鎖として含む融合タンパク質として構築できる。
[00260] 特定の態様において、親油性部分は両親媒性ポリペプチド、たとえばマガイニン(magainin)、セクロピン(cecropin)、アタシン(attacin)、メリチン(melittin)、グラミシジンS(gramicidin S)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、アラメシチン(alamethicin)、または合成の両親媒性ポリペプチドである。ウイルス粒子由来の融合誘導性コートタンパク質も、本発明のHhポリペプチドに好都合な両親媒性配列源となりうる。
低分子
[00261] 特定の態様において、Hhシグナル伝達経路を刺激する薬剤は低分子アゴニストである。
[00262] そのような方法および組成物に有用な化合物には、一般式(I)により表わされるものが含まれる:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
ArおよびAr'は、独立して置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし;
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
CyおよびCy'は、独立して置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
iは、それぞれの場合独立して、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表わす。
[00263] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。
[00264] 特定の態様において、ArおよびAr'はフェニル環、たとえば置換されていないもの、またはO、NおよびSなどのヘテロ原子を含む1個以上の基で置換されたものを表わす。特定の態様において、ArおよびAr'のうち少なくとも一方はフェニル環を表わす。特定の態様において、ArおよびAr'のうち少なくとも一方はヘテロアリール環、たとえばピリジル、チアゾリル、チエニル、ピリミジルなどを表わす。特定の態様において、YおよびAr'はArにメタおよび/または1,3-関係で結合している。
[00265] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。ある位置にYが存在する態様において、隣接するMi中のiは好ましくは1〜2の整数を表わし、i=0であれば、2つある場合のYは直接結合し、または1つある場合のYはNに直接結合している。
[00266] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリールである。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式またはヘテロアリール環、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジンなどである。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。
[00267] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00268] 特定の態様において、RはHまたは低級アルキル、たとえばHまたはMeを表わす。
[00269] 特定の態様において、Cyは置換形または非置換形の非芳香族炭素環式または複素環式環を表わし、すなわち少なくとも1個のsp3混成原子、好ましくは複数個のsp3混成原子を含む。特定の態様において、Cyは環原子内もしくは環置換基上にアミンを含み、たとえばCyはピリジル、イミダゾリル、ピロリル、ピペリジル、ピロリジル、ピペラジルなどであり、および/またはアミノ置換基をもつ。特定の態様において、Cyは5〜7員環である。特定の態様において、CyはNに直接結合している。CyがNに直接結合した6員環であり、Nに対して環の4位にアミノ置換基をもつ特定の態様において、Nとアミン置換基は環上にトランス配置されていてもよい。
[00270] 特定の態様において、ArおよびAr'上の置換基は下記のものから選択される:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;これらにおいてpおよびnは、それぞれの場合個々に、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00271] 特定の態様において、本発明に有用な化合物は、一般式(II)により表わすことができる:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
ArおよびAr'は、独立して置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし;
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし、その際、Mj中のMは一部または全部が環構造の全体または一部を形成し;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
Cy'は、置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
jは、それぞれの場合独立して、0〜10、好ましくは2〜7の整数を表わし;
iは、それぞれの場合独立して、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表わす。
[00272] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。
[00273] 特定の態様において、ArおよびAr'はフェニル環、たとえば置換されていないもの、またはO、NおよびSなどのヘテロ原子を含む1個以上の基で置換されたものを表わす。特定の態様において、ArおよびAr'のうち少なくとも一方はフェニル環を表わす。特定の態様において、ArおよびAr'のうち少なくとも一方はヘテロアリール環、たとえばピリジル、チアゾリル、チエニル、ピリミジルなどを表わす。特定の態様において、YおよびAr'はArにメタおよび/または1,3-関係で結合している。
[00274] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。ある位置にYが存在する態様において、隣接するMi中のiは好ましくは1〜2の整数を表わし、i=0であれば、2つある場合のYは直接結合し、または1つある場合のYはNもしくはNR2に直接結合している。
[00275] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリールである。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式またはヘテロアリール環、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジンなどである。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。
[00276] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00277] 特定の態様において、RはHまたは低級アルキル、たとえばHまたはMeを表わす。
[00278] 特定の態様において、NR2は、第一級アミン、またはそれぞれ1個もしくは2個の低級アルキル基、アリール基もしくはアラルキル基で置換された第二級もしくは第三級アミン、好ましくは第一級アミンまたは第二級アミンを表わす。
[00279] 特定の態様において、ArおよびAr'上の置換基は下記のものから選択される:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;これらにおいてpおよびnは、それぞれの場合個々に、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00280] 特定の態様において、本発明に有用な化合物は、一般式(III)により表わすことができる:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
ArおよびAr'は、独立して置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし;
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
CyおよびCy'は、独立して置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
iは、それぞれの場合独立して、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表わす。
[00281] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。
[00282] 特定の態様において、ArおよびAr'はフェニル環、たとえば置換されていないもの、またはO、NおよびSなどのヘテロ原子を含む1個以上の基で置換されたものを表わす。特定の態様において、ArおよびAr'のうち少なくとも一方はフェニル環を表わす。特定の態様において、ArおよびAr'のうち少なくとも一方はヘテロアリール環、たとえばピリジル、チアゾリル、チエニル、ピリミジルなどを表わす。特定の態様において、YおよびAr'はArにメタおよび/または1,3-関係で結合している。
[00283] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。ある位置にYが存在する態様において、隣接するMi中のiは好ましくは1〜2の整数を表わし、i=0であれば、2つある場合のYは直接結合し、または1つある場合のYはNもしくはNR2に直接結合している。
[00284] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリールである。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式またはヘテロアリール環、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジンなどである。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。
[00285] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00286] 特定の態様において、RはHまたは低級アルキル、たとえばHまたはMeを表わす。
[00287] 特定の態様において、NR2は、第一級アミン、またはそれぞれ1個もしくは2個の低級アルキル基、アリール基もしくはアラルキル基で置換された第二級もしくは第三級アミン、好ましくは第一級アミンまたは第二級アミンを表わす。
[00288] 特定の態様において、Cyは置換形または非置換形の非芳香族炭素環式または複素環式環を表わし、すなわち少なくとも1個のsp3混成原子、好ましくは複数個のsp3混成原子を含む。特定の態様において、CyはNおよび/またはNR2に直接結合している。特定の態様において、Cyは5〜7員環である。CyがNに直接結合した6員環であり、Nに対して環の4位にアミノ置換基をもつ特定の態様において、Nとアミン置換基は環上にトランス配置されていてもよい。
[00289] 特定の態様において、ArおよびAr'上の置換基は下記のものから選択される:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;これらにおいてpおよびnは、それぞれの場合個々に、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00290] 特定の態様において、本発明に有用な化合物は、一般式(IV)により表わされる化合物を含む:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
Cy'は、置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし(多環を含む);
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
R1およびR2は、独立して、原子価が許す限り、それが結合している環上における0〜5個の下記のものから選択される置換基を表わし:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、アミド、アミジノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;
Cyは、置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
iは、それぞれの場合独立して、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表わし;
pおよびnは、それぞれの場合独立して、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00291] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。
[00292] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式または複素環式環系、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジンなどを表わす。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。
[00293] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。ある位置にYが存在する態様において、隣接するMi中のiは好ましくは1〜2の整数を表わし、i=0であれば、2つある場合のYは直接結合し、または1つある場合のYはNに直接結合している。
[00294] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00295] 特定の態様において、RはHまたは低級アルキル、たとえばHまたはMeを表わす。
[00296] 特定の態様において、Cyは置換形または非置換形の非芳香族炭素環式または複素環式環を表わし、すなわち少なくとも1個のsp3混成原子、好ましくは複数個のsp3混成原子を含む。特定の態様において、Cyは環原子内もしくは環置換基上にアミンを含み、たとえばCyはピリジル、イミダゾリル、ピロリル、ピペリジル、ピロリジル、ピペラジルなどであり、および/またはアミノ置換基をもつ。特定の態様において、CyはNに直接結合している。特定の態様において、Cyは5〜7員環である。CyがNに直接結合した6員環であり、Nに対して環の4位にアミノ置換基をもつ特定の態様において、Nとアミン置換基は環上にトランス配置されていてもよい。
[00297] 特定の態様において、R1およびR2は、独立して、原子価が許す限り、それが結合している環上における0〜5個の下記のものから選択される置換基を表わす:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形。
[00298] 特定の態様において、本発明に有用な化合物は、一般式(V)により表わすことができる:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
Cy'は、置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし(多環を含む);
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
R1およびR2は、独立して、原子価が許す限り、それが結合している環上における0〜5個の下記のものから選択される置換基を表わし:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、アミド、アミジノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;
Cy'は、置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
jは、それぞれの場合独立して、0〜10、好ましくは2〜7の整数を表わし;
iは、それぞれの場合独立して、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表わし;
pおよびnは、それぞれの場合独立して、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00299] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。
[00300] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式または複素環式環系、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジンなどを表わす。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。
[00301] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。ある位置にYが存在する態様において、隣接するMi中のiは好ましくは1〜2の整数を表わし、i=0であれば、2つある場合のYは直接結合し、または1つある場合のYはNもしくはNR2に直接結合している。
[00302] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00303] 特定の態様において、NR2は、第一級アミン、またはそれぞれ1個もしくは2個の低級アルキル基、アリール基もしくはアラルキル基で置換された第二級もしくは第三級アミン、好ましくは第一級アミンまたは第二級アミンを表わす。
[00304] 特定の態様において、RはHまたは低級アルキル、たとえばHまたはMeを表わす。
[00305] 特定の態様において、R1およびR2は、独立して、原子価が許す限り、それが結合している環上における0〜5個の下記のものから選択される置換基を表わす:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形。
[00306] 特定の態様において、本発明に有用な化合物は、一般式(VI)により表わすことができる:
Figure 2007521333
[00307]
式中、原子価および安定性が許す限り、
Cy'は、置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし(多環を含む);
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
Cyは、置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
R1およびR2は、独立して、原子価が許す限り、それが結合している環上における0〜5個の下記のものから選択される置換基を表わし:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、アミド、アミジノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;
iは、それぞれの場合独立して、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表わし;
nおよびpは、それぞれの場合独立して、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00308] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。
[00309] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式またはヘテロアリール環系、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジルなどを表わす。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。
[00310] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。ある位置にYが存在する態様において、隣接するMi中のiは好ましくは1〜2の整数を表わし、i=0であれば、2つある場合のYは直接結合し、または1つある場合のYはNもしくはNR2に直接結合している。
[00311] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00312] 特定の態様において、NR2は、第一級アミン、またはそれぞれ1個もしくは2個の低級アルキル基、アリール基もしくはアラルキル基で置換された第二級もしくは第三級アミン、好ましくは第一級アミンを表わす。
[00313] 特定の態様において、RはHまたは低級アルキル、たとえばHまたはMeを表わす。
[00314] 特定の態様において、Cyは置換形または非置換形の非芳香族炭素環式または複素環式環を表わし、すなわち少なくとも1個のsp3混成原子、好ましくは複数個のsp3混成原子を含む。特定の態様において、CyはNおよび/またはNR2に直接結合している。特定の態様において、Cyは5〜7員環である。CyがNに直接結合した6員環であり、Nに対して環の4位にアミノ置換基をもつ特定の態様において、Nとアミン置換基は環上にトランス配置されていてもよい。
[00315] 特定の態様において、R1およびR2は、独立して、原子価が許す限り、それが結合している環上における0〜5個の下記のものから選択される置換基を表わす:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形。
[00316] 特定の態様において、本発明化合物は、式VIIの構造をもつ:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
Cyは、置換形または非置換形の複素環またはシクロアルキルを表わし;
Cy'は、置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし(多環を含む);
Wは、OまたはSを表わし;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
R1およびR2は、独立して、原子価が許す限り、それが結合している環上における0〜5個の下記のものから選択される置換基を表わし:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、アミド、アミジノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;
nおよびpは、それぞれの場合独立して、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00317] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式またはヘテロアリール環系、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジルなどを表わす。特定の態様において、Cy'はアリールまたはヘテロアリール環を表わし、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール環系を形成している。
[00318] 特定の態様において、NR2は、第一級アミン、またはそれぞれ1個もしくは2個の低級アルキル基、アリール基もしくはアラルキル基で置換された第二級もしくは第三級アミン、好ましくは第一級または第二級アミンを表わす。
[00319] 特定の態様において、Cyは置換形または非置換形の飽和炭素環式または複素環式環を表わし、すなわち複数個のsp3混成原子を含む。特定の態様において、Cyは5〜7員環である。CyがNに直接結合した6員環であり、Nに対して環の4位にアミノ置換基をもつ特定の態様において、Nとアミン置換基は環上にトランス配置されていてもよい。
[00320] 特定の態様において、R1およびR2は、独立して、原子価が許す限り、それが結合している環上における0〜5個の下記のものから選択される置換基を表わす:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形。
[00321] 特定の態様において、本発明化合物は、式VIIIの構造をもつ:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
Uは、窒素含有環に縮合した置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし;
Vは、低級アルキレン基、たとえばメチレン、1,2-エチレン、1,1-エチレン、1,1-プロピレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレンなどを表わし;
Wは、SまたはO、好ましくはOを表わし;
Xは、C=O、C=S、またはSO2表わし;
R3は、置換形または非置換形のアリール、ヘテロアリール、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボサイクリル、カルボサイクリルアルキル、ヘテロサイクリル、ヘテロサイクリルアルキル、アラルキル、またはヘテロアラルキルを表わし;
R4は、置換形または非置換形のアラルキルまたは低級アルキル、たとえばフェネチル、ベンジル、またはアミノアルキルなどを表わし;
R5は、置換形または非置換形のアリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキルを表わし、これには多環式芳香族またはヘテロ芳香族基が含まれる。
[00322] 特定の態様において、Uは窒素含有環に縮合したフェニル環を表わす。
[00323] 特定の態様において、R3は、置換形または非置換形のアリール、ヘテロアリール、低級アルキル、低級アルケニル、アラルキル、およびヘテロアラルキルから選択される。
[00324] 特定の態様において、R4は非置換低級アルキル基であり、または第二級もしくは第三級アミンで置換された低級アルキル基である。
[00325] 特定の態様において、R5は、置換形または非置換形のフェニルもしくはナフチルから選択され、またはジアルキル基、たとえば2,2-ジフェニルエチル、ジフェニルメチルなどである。
[00326] 特定の態様において、本発明化合物は、一般式(IX)により表わされる化合物を含む:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
Arは、置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし;
Zは、存在しないか、あるいは置換形もしくは非置換形のアリール、カルボサイクリル、ヘテロサイクリル、もしくはヘテロアリール環、または低級アルキル、ニトロ、シアノもしくはハロゲン置換基を表わし;
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし、ただし、Zが環でない場合、Zに結合するYは存在せず;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、カルボサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロサイクリルアルキル、カルボサイクリルアルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
CyおよびCy'は、独立して置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
iは、それぞれの場合独立して、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表わし;
kは、それぞれの場合独立して、0〜3、好ましくは0〜2の整数を表わす。
[00327] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。特定の態様において、iは、配列N-Mi-Y-Ar(iは1を表わす)以外のすべての場合、0を表わす。
[00328] 特定の態様において、ArおよびXは、独立して置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環、たとえば置換されていないもの、または所望によりO、NおよびSなどのヘテロ原子を含む1個以上の基で置換されたものを表わす。特定の態様において、Arはフェニル環を表わす。特定の態様において、少なくとも1つのArはヘテロアリール環、たとえばピリジル、チアゾリル、チエニル、ピリミジル、フラニルなどを表わす。特定の態様において、Arに結合した場合のYは、メタおよび/または1,3-関係で配置されている。
[00329] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。1個だけ存在する場合のYはMkに結合している。ある位置にYが存在する態様において、隣接するMi/k中のiまたはkは好ましくは2を表わし、i/k=0であれば、2つある場合のYは互いに直接結合し、または1つある場合のYはNに直接結合している。特定の態様において、2つのYがMに結合している場合、それらの場合のYのうち少なくとも一方は存在しない。特定の態様において、2つより多いYが存在することはない。
[00330] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリールである。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式またはヘテロアリール環、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジンなどである。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。特定の態様において、Cy'はたとえばベンゾ(b)チエン-2-イル、好ましくは3-クロロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、3-フルオロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、または3-メチル-ベンゾ(b)チエン-2-イルを表わし、これらにおいてベンゾ環はハロゲン、ニトロ、シアノ、メチル(たとえばハロメチル、たとえばCHCl2およびCF3を含む)、およびエチル(たとえばハロエチル、たとえばCH2CCl3、C2F5などを含む)、好ましくはハロゲンおよびメチル(たとえばハロメチル、たとえばCHCl2およびCF3を含む)から選択される1〜4個の置換基で置換されている。そのような特定の態様において、Cy'は3-クロロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、3-フルオロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、または3-メチル-ベンゾ(b)チエン-2-イルを表わし、ベンゾ環は4-位(チエニル環上の3-置換基に対してペリ)、および所望により7-位(チエニル環のSに対して'ペリ')において、フルオロで置換されている。
[00331] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00332] 特定の態様において、Cyは置換形または非置換形の非芳香族炭素環式または複素環式環を表わし、すなわち少なくとも1個のsp3混成原子、好ましくは複数個のsp3混成原子を含む。特定の態様において、Cyは環原子内または環置換基上にアミンを含み、たとえばCyはピリジル、イミダゾリル、ピロリル、ピペリジル、ピロリジル、ピペラジルなどであり、および/またはアミノ置換基をもつ。特定の態様において、Cyは5〜7員環である。特定の態様において、CyはNに直接結合している。CyがNに直接結合した6員環であり、Nに対して環の4位にアミノ置換基をもつ特定の態様において、Nとアミン置換基は環上にトランス配置されていてもよい。
[00333] 特定の態様において、ArまたはZ(Zがアリールまたはヘテロアリール環である場合)上の置換基は下記のものから選択される:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;これらにおいてpおよびnは、それぞれの場合個々に、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00334] 特定の態様において、ZはArに直接結合し、または原子1もしくは2個の鎖を介してArに結合している。特定の態様において、Z-Y-Mは合わせて、存在しない。
[00335]
[00336] 特定の態様において、本発明に有用な化合物は、一般式(X)により表わすことができる:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
Arは、置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし;
Zは、存在しないか、あるいは置換形もしくは非置換形のアリール、カルボサイクリル、ヘテロサイクリル、もしくはヘテロアリール環、または低級アルキル、ニトロ、シアノもしくはハロゲン置換基を表わし;
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし、ただし、Zが環でない場合、Zに結合するYは存在せず;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、カルボサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロサイクリルアルキル、カルボサイクリルアルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
Cy'は、置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし、その際、Mj中のMは一部または全部が環構造の全体または一部を形成し;
jは、それぞれの場合独立して、2〜10、好ましくは2〜7の整数を表わし;
iは、それぞれの場合独立して、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表わし;
kは、それぞれの場合独立して、0〜3、好ましくは0〜2の整数を表わす。
[00337]
[00338] 特定の態様において、NR2は、第一級アミン、またはそれぞれ1個もしくは2個の低級アルキル基、アリール基もしくはアラルキル基で置換された第二級もしくは第三級アミン、好ましくは第一級または第二級アミンを表わす。
[00339] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。特定の態様において、iは、配列N-Mi-Y-Ar(iは1を表わす)以外のすべての場合、0を表わす。
[00340] 特定の態様において、ArおよびXは、独立して置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環、たとえば置換されていないもの、または所望によりO、NおよびSなどのヘテロ原子を含む1個以上の基で置換されたものを表わす。特定の態様において、Arはフェニル環を表わす。特定の態様において、Arはヘテロアリール環、たとえばピリジル、チアゾリル、チエニル、ピリミジル、フラニルなどを表わす。特定の態様において、Arに結合した場合のYは、メタおよび/または1,3-関係で配置されている。
[00341] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。1個だけ存在する場合のYはMkに結合している。ある位置にYが存在する態様において、隣接するMi/k中のiまたはkは好ましくは2を表わし、i/k=0であれば、2つある場合のYは互いに直接結合し、または1つある場合のYはNに直接結合している。特定の態様において、2つのYがMに結合している場合、それらの場合のYのうち少なくとも一方は存在しない。特定の態様において、2つより多いYが存在することはない。
[00342] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリールである。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式またはヘテロアリール環、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジンなどである。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。特定の態様において、Cy'はたとえばベンゾ(b)チエン-2-イル、好ましくは3-クロロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、3-フルオロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、または3-メチル-ベンゾ(b)チエン-2-イルを表わし、これらにおいてベンゾ環はハロゲン、ニトロ、シアノ、メチル(たとえばハロメチル、たとえばCHCl2およびCF3を含む)、およびエチル(たとえばハロエチル、たとえばCH2CCl3、C2F5などを含む)、好ましくはハロゲンおよびメチル(たとえばハロメチル、たとえばCHCl2およびCF3を含む)から選択される1〜4個の置換基で置換されている。そのような特定の態様において、Cy'は3-クロロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、3-フルオロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、または3-メチル-ベンゾ(b)チエン-2-イルを表わし、ベンゾ環は4-位(チエニル環上の3-置換基に対してペリ)、および所望により7-位(チエニル環のSに対して'ペリ')において、フルオロで置換されている。
[00343] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00344] 特定の態様において、ArまたはZ(Zがアリールまたはヘテロアリール環である場合)上の置換基は下記のものから選択される:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;これらにおいてpおよびnは、それぞれの場合個々に、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00345] 特定の態様において、ZはArに直接結合し、または原子1もしくは2個の鎖を介してArに結合している。特定の態様において、Z-Y-Mは合わせて、存在しない。
[00346]
[00347] 特定の態様において、本発明に有用な化合物は、一般式(XI)により表わすことができる:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
Arは、置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし;
Zは、存在しないか、あるいは置換形もしくは非置換形のアリール、カルボサイクリル、ヘテロサイクリル、もしくはヘテロアリール環、または低級アルキル、ニトロ、シアノもしくはハロゲン置換基を表わし;
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし、ただし、Zが環でない場合、Zに結合するYは存在せず;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、カルボサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロサイクリルアルキル、カルボサイクリルアルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし、あるいは2つのRが、たとえばNと一緒になって4-〜8-員環を形成してもよく:
CyおよびCy'は、それぞれの場合独立して、置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
iは、それぞれの場合独立して、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表わし;
kは、それぞれの場合独立して、0〜3、好ましくは0〜2の整数を表わす。
[00348] 特定の態様において、NR2は、第一級アミン、またはそれぞれ1個もしくは2個の低級アルキル基、アリール基もしくはアラルキル基で置換された第二級もしくは第三級アミン、好ましくは第一級または第二級アミンを表わす。
[00349] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。
[00350] 特定の態様において、ArおよびZは、独立して置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環、たとえば置換されていないもの、または所望によりO、NおよびSなどのヘテロ原子を含む1個以上の基で置換されたものを表わす。特定の態様において、ArおよびZのうち少なくとも一方はフェニル環を表わす。特定の態様において、ArおよびZのうち少なくとも一方はヘテロアリール環、たとえばピリジル、チアゾリル、チエニル、ピリミジル、フラニルなどを表わす。特定の態様において、Arに結合した場合のYは、メタおよび/または1,3-関係で配置されている。
[00351] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。1個だけ存在する場合のYはMkに結合している。ある位置にYが存在する態様において、隣接するMi/k中のiまたはkは好ましくは2を表わし、i/k=0であれば、2つある場合のYは互いに直接結合し、または1つある場合のYはNに直接結合している。2つある場合のYがMに結合している特定の態様において、それらの場合のYのうち少なくとも一方は存在しない。特定の態様において、2つより多いYが存在することはない。
[00352] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリールである。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式またはヘテロアリール環、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジンなどである。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。特定の態様において、Cy'はたとえばベンゾ(b)チエン-2-イル、好ましくは3-クロロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、3-フルオロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、または3-メチル-ベンゾ(b)チエン-2-イルを表わし、これらにおいてベンゾ環はハロゲン、ニトロ、シアノ、メチル(たとえばハロメチル、たとえばCHCl2およびCF3を含む)、およびエチル(たとえばハロエチル、たとえばCH2CCl3、C2F5などを含む)、好ましくはハロゲンおよびメチル(たとえばハロメチル、たとえばCHCl2およびCF3を含む)から選択される1〜4個の置換基で置換されている。そのような特定の態様において、Cy'は3-クロロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、3-フルオロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、または3-メチル-ベンゾ(b)チエン-2-イルを表わし、ベンゾ環は4-位(チエニル環上の3-置換基に対してペリ)、および所望により7-位(チエニル環のSに対して'ペリ')において、フルオロで置換されている。
[00353] 特定の態様において、Cyは置換形または非置換形の非芳香族炭素環式または複素環式環を表わし、すなわち少なくとも1個のsp3混成原子、好ましくは複数個のsp3混成原子を含む。特定の態様において、Cyは5〜7員環である。特定の態様において、CyはNおよび/またはNR2に直接結合している。CyがNに直接結合した6員環であり、Nに対して環の4位にアミノ置換基をもつ特定の態様において、Nとアミン置換基は環上にトランス配置されていてもよい。
[00354] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00355] 特定の態様において、ArまたはZ(Zがアリールまたはヘテロアリール環である場合)上の置換基は下記のものから選択される:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、アジド、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pアリール、-(CH2)pアラルキル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;これらにおいてnおよびpは、それぞれの場合個々に、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00356] 特定の態様において、ZはArに直接結合し、または原子1もしくは2個の鎖を介してArに結合している。特定の態様において、Z-Y-Mは合わせて、存在しない。
[00357]
[00358] 特定の態様において、本発明に有用な化合物は、一般式(XII)により表わすことができる:
Figure 2007521333
式中、原子価および安定性が許す限り、
Arは、置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を表わし;
Zは、存在しないか、あるいは置換形もしくは非置換形のアリール、カルボサイクリル、ヘテロサイクリル、もしくはヘテロアリール環、または低級アルキル、ニトロ、シアノもしくはハロゲン置換基を表わし;
Yは、それぞれの場合独立して、存在しないか、または-N(R)-、-O-、-S-もしくは-Se-を表わし、ただし、Zが環でない場合、Zに結合するYは存在せず;
Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(O2)-、-S(O)-、-C(=NCN)-、-P(=O)(OR)-、および1〜2個の基、たとえば低級アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換されていてもよいメチレン基から選択され;
Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わし、あるいは2つのMが一緒になって置換形または非置換形のエテンまたはエチンを表わし;
Rは、それぞれの場合独立して、H、または置換形もしくは非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、カルボサイクリル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロサイクリルアルキル、カルボサイクリルアルキル、アルキニル、アルケニルもしくはアルキルを表わし:
CyおよびCy'は、それぞれの場合独立して、置換形または非置換形のアリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールまたはシクロアルキルを表わし(多環式基を含む);
kは、それぞれの場合独立して、0〜3、好ましくは0〜2の整数を表わす。
[00359] 特定の態様において、NR2は、第一級アミン、またはそれぞれ1個もしくは2個の低級アルキル基、アリール基もしくはアラルキル基で置換された第二級もしくは第三級アミン、好ましくは第二級アミンを表わす。
[00360] 特定の態様において、Mは、それぞれの場合独立して、置換または非置換メチレン基、たとえば-CH2-、-CHF-、-CHOH-、-CH(Me)-、-C(=O)-などを表わす。
[00361] 特定の態様において、Yはすべての位置に存在しない。YがMkに隣接する特定の態様において、Yは存在しないか、またはk=0である。特定の態様において、MkがCyに結合した少なくとも一方の場合について、所望により両方の場合について、k=0である。特定の態様において、ArおよびNに結合したMkについて、k=1である。
[00362] 特定の態様において、ArおよびZは、独立して置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環、たとえば置換されていないもの、または所望によりO、NおよびSなどのヘテロ原子を含む1個以上の基で置換されたものを表わす。特定の態様において、ArおよびZのうち少なくとも一方はフェニル環を表わす。特定の態様において、ArおよびZのうち少なくとも一方はヘテロアリール環、たとえばピリジル、チアゾリル、チエニル、ピリミジル、フラニルなどを表わす。特定の態様において、Arに結合した場合のMkは、メタおよび/または1,3-関係で配置されている。
[00363] 特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリールである。特定の態様において、Cy'はXに直接結合している。特定の態様において、Cy'は置換形または非置換形の二環式またはヘテロアリール環、好ましくは二環式かつヘテロアリール、たとえばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、ベンゾピリジンなどである。特定の態様において、Cy'は単環式アリールまたはヘテロアリール環であり、少なくとも置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環で置換されて、すなわちビアリール系を形成している。特定の態様において、Cy'は、たとえば1以上の結合により直接結合した同一または異なる2つの置換形または非置換形のアリールまたはヘテロアリール環を含み、たとえばビアリールまたは二環式環系を形成している。特定の態様において、Cy'はたとえばベンゾ(b)チエン-2-イル、好ましくは3-クロロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、3-フルオロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、または3-メチル-ベンゾ(b)チエン-2-イルを表わし、これらにおいてベンゾ環はハロゲン、ニトロ、シアノ、メチル(たとえばハロメチル、たとえばCHCl2およびCF3を含む)、およびエチル(たとえばハロエチル、たとえばCH2CCl3、C2F5などを含む)、好ましくはハロゲンおよびメチル(たとえばハロメチル、たとえばCHCl2およびCF3を含む)から選択される1〜4個の置換基で置換されている。そのような特定の態様において、Cy'は3-クロロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、3-フルオロ-ベンゾ(b)チエン-2-イル、または3-メチル-ベンゾ(b)チエン-2-イルを表わし、ベンゾ環は4-位(チエニル環上の3-置換基に対してペリ)、および所望により7-位(チエニル環のSに対して'ペリ')において、フルオロで置換されている。
[00364] 特定の態様において、Cyは置換形または非置換形の非芳香族炭素環式または複素環式環を表わし、すなわち少なくとも1個のsp3混成原子、好ましくは複数個のsp3混成原子を含む。特定の態様において、Cyは5〜7員環である。特定の態様において、CyはNおよび/またはNR2に直接結合している。CyがNに直接結合した6員環であり、Nに対して環の4位にアミノ置換基をもつ特定の態様において、Nとアミン置換基は環上にトランス配置されていてもよい。
[00365] 特定の態様において、Xは、-C(=O)-、-C(=S)-、および-S(O2)-から選択される。
[00366] 特定の態様において、ArまたはZ(Zがアリールまたはヘテロアリール環である場合)上の置換基は下記のものから選択される:ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオカルボニル、ケトン、アルデヒド、アミノ、アシルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、スルホニル、スルホキシド、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、-(CH2)pアルキル、-(CH2)pアルケニル、-(CH2)pアルキニル、-(CH2)pOH、-(CH2)pO-低級アルキル、-(CH2)pO-低級アルケニル、-O(CH2)nR、-(CH2)pSH、-(CH2)pS-低級アルキル、-(CH2)pS-低級アルケニル、-S(CH2)nR、-(CH2)pN(R)2、-(CH2)pNR-低級アルキル、-(CH2)pNR-低級アルケニル、-NR(CH2)nR、および前記のものの保護された形;これらにおいてnおよびpは、それぞれの場合個々に、0〜10、好ましくは0〜5の整数を表わす。
[00367] 特定の態様において、ZはArに直接結合し、または原子1もしくは2個の鎖を介してArに結合している。特定の態様において、Z-Y-Mは合わせて、存在しない。
抗体
[00368] 本明細書に記載する本発明の1態様において、Hhシグナル伝達経路を刺激する薬剤は抗体またはそのフラグメントである。
[00369] 本発明の1態様は、提唱されたHh受容体であるPatchedタンパク質と競合してHhポリペプチドに結合するHhポリペプチドインヒビターに対して形成された抗体である。そのようなインヒビターに対する特定の抗体は、インヒビターに結合するHhポリペプチド領域を模倣したものであり、これはHh受容体に結合する領域の可能性がある。したがって、そのような抗体はPatchedタンパク質に結合し、細胞においてHhポリペプチドが行うのと類似の種類の応答を誘発する。
[00370] 本発明の他の態様は、抗イディオタイプ抗体である。抗イディオタイプ抗体は一次抗体に対して形成される。特定の抗イディオタイプ抗体は、一次抗体に対するエピトープの内部イメージを模倣したものであり、これにより、それに対して一次抗体が形成される抗原の活性も模倣する。たとえばMa, J. et al., (2002) Japan. J. Cancer Res. 93(1):78-84; Depraetere, H. et al., (2000) Eur. J. Biochem. 267(8): 2260-7; Rajeshwari, K. and Karande, A.A., (1999) Immunol. Invest. 28(2-3):103-14を参照。Hhポリペプチドがそれの受容体に機能可能な状態で結合するのに関与する部位に特異的な抗体に対する抗イディオタイプ抗体は、Hhポリペプチドのそのような部位の構造を反映する。したがって、そのような抗イディオタイプ抗体もHhポリペプチドに対する受容体に結合し、生物学的に関連する応答を誘発する。抗イディオタイプ抗体は、いずれかの抗体を産生するのと同様にして産生される。
[00371] 本発明に有用な抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってよい。本明細書中で用いる”モノクローナル抗体”(mAbとも表示される)は、その一次配列が本質的に同一でありかつ同一の抗原特異性を示す抗体を記述するために用いられる。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え体、トランスジェニックその他、当業者に既知の技術により産生できる。さらに、トランスジェニック動物または植物においてモノクローナル抗体を産生させる方法がある(Pollock et al., J. Immunol. Methods, 231:147, 1999; Russell, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 240:119, 1999)。
[00372] 1態様において、抗体の一部は抗体のL鎖を含む。本明細書中で用いる”L鎖(軽鎖)”は、1つの可変ドメイン(VL)および1つの定常ドメイン(CL)、またはそのフラグメントからなる、小さい方の抗体分子ポリペプチドを意味する。1態様において、抗体の一部は抗体のH鎖を含む。本明細書中で用いる”H鎖(重鎖)”は、1つの可変ドメイン(VH)および3または4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3およびCH4)、またはそのフラグメントからなる、大きい方の抗体分子ポリペプチドを意味する。1態様において、抗体の一部は抗体のFab部分を含む。本明細書中で用いる”Fab”は、免疫グロブリンの1つのL鎖とH鎖の一部とからなる一価の抗原結合フラグメントを意味する。1態様において、抗体の一部は抗体のF(ab’)2部分を含む。本明細書中で用いる”F(ab’)2フラグメント”は、免疫グロブリンの両方のL鎖と両方のH鎖の一部とからなる二価の抗原結合フラグメントを意味する。FabおよびF(ab’)2は、短時間のペプシン消化または組換え法により得ることができる。1態様において、抗体の一部は抗体の1以上のCDRドメインを含む。本明細書中で用いる”CDR”または”相補性決定領域”は、抗体の可変ドメインの高可変性アミノ酸配列を意味し、これは抗原のエピトープと直接相互作用する。抗体の可変ドメインは、枠組み構造領域(FR)をも含み、これらはパラトープの三次元構造を維持する(一般にClark, 1986; Roitt, 1991を参照)。IgG免疫グロブリンのH鎖FdフラグメントおよびL鎖の両方に、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)で分離された4つの枠組み構造領域(FR1〜FR4)がある。これらのCDR、特にCDR3領域、さらに特にH鎖CDR3は、抗体特異性に大きく関与する。
[00373] 哺乳動物抗体のCDR以外の領域を、元の抗体のエピトープ特異性を保持した状態で同種抗体または異種抗体の類似領域により交換しうることは、現在、当技術分野で十分に確立されている。これは、ヒト以外のCDRをヒトのFRおよび/またはFc/pFc'領域に共有結合させて機能性抗体を作成した”ヒト化抗体”の使用の発展に最も明瞭に実現されている。
[00374] 抗体はヒトまたはヒト以外の抗体であってよい。ヒト以外の抗体を組換え法により”ヒト化”して、ヒトにおける免疫原性を低下させることができる。抗体をヒト化する方法は当業者に既知である。本明細書中で用いる”ヒト化”は、CDR外のアミノ酸の一部、大部分または全部を、ヒト免疫グロブリン分子由来の対応するアミノ酸で交換した抗体を表わす。ヒト化形抗体の1態様においては、CDR外のアミノ酸の一部、大部分または全部がヒト免疫グロブリン分子由来のアミノ酸で交換されているが、1以上のCDR領域内にあるアミノ酸の一部、大部分または全部が元のままである。わずかなアミノ酸の付加、欠失、挿入、置換または修飾は、抗体が特定の抗原に結合する能力をそれらが妨げない限り許容される。適切なヒト免疫グロブリン分子には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgM分子が含まれる。”ヒト化”抗体は、元の抗体と類似の抗原特異性を保持する。
[00375] ヒト化法には、下記に記載のものが含まれるが、これらに限定されない:U.S.P. 4,816,567、5,225,539、5,585,089、5,693,761、5,693,762および5,859,205;これらを本明細書に援用する。当業者には抗体のヒト化のための他の方法が自明であろう。
[00376] ヒト化のための特定の方法を用いて、抗体の結合の親和性および/または特異性を高めることができる:Wu et al., J. Mol. Biol. 294:151, 1999に記載の”指向性進化”方法を使用;その内容を本明細書に援用する。
[00377] 完全ヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンH鎖およびL鎖遺伝子座の大部分についてトランスジェニックであるマウスを免疫化することによっても調製できる。参照:U.S.P. 5,591,669、5,598,369、5,545,806、5,545,807、6,150,584、およびそれらに引用される参考文献;それらの内容を本明細書に援用する。これらの動物は、内因性(たとえばネズミ)抗体の産生に機能的欠損があるように、遺伝子修飾されている。これらの動物を、さらにヒト遺伝子系列の免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するように修飾すると、これらの動物の免疫化により、目的抗原に対する完全ヒト抗体が産生されるであろう。これらのマウス(たとえばXenoMouse (Abgenix)、HuMAbマウス(Medarex/GenPharm))を免疫化した後、標準的なハイブリドーマ技術に従ってモノクローナル抗体を産生させることができる。これらのモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列をもち、したがってヒトに投与した際にヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を誘発することはないであろう。
[00378] ヒト抗体を産生するためのインビトロ法もある。これらには、ファージディスプレイ法(U.S.P. 5,565,332および5,573,905)およびヒトB細胞のインビトロ刺激(U.S.P. 5,229,275および5,567,610)が含まれる。これらの特許の内容を本明細書に援用する。
RNA干渉
1態様において、HhアゴニストはRNA干渉(RNAi)分子である。RNAi構築体は、標的遺伝子の発現を特異的に遮断しうる二本鎖RNAを含む。したがって、Hhシグナル伝達経路を負に調節する遺伝子の発現を特異的に遮断するRNAi構築体は、Hhシグナル伝達経路のアゴニストとして作用できる。”RNA干渉”または”RNAi”は最初は、植物および蠕虫にみられた、二本鎖RNA (dsRNA)が遺伝子発現を特異的に転写後に遮断する現象に適用された用語である。理論に拘束されるわけではないが、RNAiはmRNA分解を伴うと思われる;しかし、生化学的機序は現在活発に研究されている領域である。作用機序に関しては若干不確定であるにもかかわらず、RNAiはインビトロまたはインビボで遺伝子発現を阻害するための有用な方法を提供する。
[00379] 好ましい態様において、本発明のhh RNAiアゴニストは下記のいずれかのsiRNA:短かいヘアピン(ループ-ステム)siRNAをコードするDNAベクターから転写されたもの、合成siRNA、またはより長いdsRNAであってさらにプロセシングされてより短かいsiRNA (たとえば21〜23個のヌクレオチド)になりうるものであり、Hhシグナル伝達経路の負の制御エレメント、たとえばPatchedまたはGli-3を妨害する配列をコードする。
[00380] RNAi構築体は、阻害すべき遺伝子(すなわち”標的”遺伝子)のmRNA転写体の少なくとも一部に細胞の生理的条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。この二本鎖RNAは、RNAiを仲介する能力をもつのに十分な程度に天然RNAに類似するだけでよい。したがって本発明は、予測される遺伝子変異、系統多型性または進化多様性による配列変動に耐えうるという利点をもつ。標的配列とRNAi構築体配列の間で耐容される不適正ヌクレオチド対合数は、5塩基対中1を超えず、または、10塩基対中1を超えず、または、20塩基対中1を超えず、または、50塩基対中1を超えない。siRNAデュプレックスの中心における不適正対合は最も重大であり、本質的に標的RNAの開裂を行わない可能性がある。これに対し、標的RNAに相補的なsiRNA鎖の3'末端ヌクレオチドは、標的認識の特異性に著しく関与することはない。
[00381] 当技術分野で既知の配列比較およびアラインメントアルゴリズム(参照:Gribskov and Devereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991、およびそこに引用される参考文献)、ならびにたとえばデフォルトパラメーターを用いてBESTFITソフトウェア(たとえばUniversity of Wisconsin Genetic Computing Group)中に実現されたSmith-Watermanアルゴリズムにより、配列同一性を最適化することができる。阻害RNAと標的遺伝子の一部の間の90%を超える配列同一性、さらに100%の配列同一性が好ましい。あるいはRNAのデュプレックス領域は、標的遺伝子転写体の一部とハイブリダイズしうるヌクレオチド配列として、機能的に定めることができる(たとえば400 mM NaCl, 40 mM PIPES pH 6.4, 1 mM EDTA, 50℃または70℃で12〜16時間のハイブリダイゼーション、続いて洗浄)。
RNAiの標的の例
[00382] 下記に挙げる遺伝子は、Hhシグナル伝達経路の負の調節物質である。負の調節物質を阻害するhh RNAiアゴニストは、たとえばHhシグナル伝達の活性低下を伴う状態において、またはHhシグナル伝達をアップレギュレートすることが望ましい場合に、Hhシグナル伝達をアップレギュレートするのに有用であろう。
Figure 2007521333
公開データベースからのヌクレオチド配列アクセス番号を”()”に挙げる。
[00383] Patchedは、Hhポリペプチドの不存在下で第2の膜結合タンパク質Smoothenedを阻害する。PatchedとSmoothenedの結合により、キネシン関連分子Costal2 (Cos2)、セリン-トレオニンプロテインキナーゼFused (Fu)およびFusedの抑制タンパク質[Su(fu)]を含む細胞内高分子量タンパク質複合体は、全長キュビタスインターラプタス(Cubitus interruptus)(Ci155)のタンパク質分解プロセシングを促進することができ、これにより転写リプレッサーCi75が産生される。この高分子量複合体と直接相互作用することはまだ証明されていないが、プロテインキナーゼA (PKA)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3 (GSK3)およびカゼインキナーゼ1α(CK1α)も、Ciを修飾してそれの開裂を調節する。このプロセスは、Slimbにも依存する。HhがPtcに結合するとSmoの抑制が緩和され、機序は不明であるがSmoが前記の細胞質複合体のCiプロセシング活性を抑制する。次いで、プロセシングされていないCi155が核へ移行し、そこで特異的標的遺伝子の発現を活性化する。
[00384] ヒトの散在性腫瘍には、patchedの両方の機能性対立遺伝子の損失が示された。一本鎖コンホメーション多型性スクリーニングアッセイでpatched変異が同定された12例の腫瘍のうち9例が染色体の第2対立遺伝子の欠失を伴い、他の3例は両方の対立遺伝子に不活性化変異を伴っていた(Gailani, 前掲)。同定された変異の大部分は、早期停止コドンまたはフレームシフトを生じていた(Lench, N.J. et al. (1997) Hum. Genet. 100(5-6): 497-502)。さらに、細胞外ドメインまたは細胞質ドメインのいずれかにアミノ酸置換をもたらす点変異である変異が、幾つか同定されている。これらの変異は、対応する生殖細胞系列DNAには起きなかった。ショウジョウバエpatched遺伝子の例をSEQ ID No:23に示す。
[00385] patchedが遺伝子発現の阻害に関与していること、およびBCCにおいて頻繁なpatched対立遺伝子欠失が起きることは、この遺伝子の腫瘍抑制機能を支持する。細胞のシグナル伝達および細胞内コミュニケーションに関与することが知られている遺伝子ファミリーにおいてそれが役割をもつことから、腫瘍抑制の可能性をもつ機序が提供される。
[00386] 最近、Lum et al. (Science (2003) 299: 2039-2045)がHhシグナル伝達経路の幾つかのメンバーをさらに同定した。これらの著者は、インビトロおよびインビボアッセイ法により、これまでその生成物がHhシグナル伝達経路において特異的な役割をもつと認識されていなかった4種類の遺伝子を同定した:それら4種類のうちCK1αは負の調節物質であり、一方、他の3種類は正の調節物質である。CK1αはCi開裂、すなわちそれのリプレッサー形を生成するプロセスの、正の調節物質である(Price and Kalderon (2002) Cell 108: 823-835, 図1)。したがってCK1αはHhシグナル伝達の負の調節物質である。
[00387] 多様な種におけるすべてのHhシグナル伝達経路遺伝子を、公開および占有データベースからルーティンに得ることができる:たとえばGenBank、EMBL、FlyBase、これらは数例にすぎない。特定の生物、たとえばヒトおよびショウジョウバエにおいては全ゲノムが配列決定され、配列比較プログラム、たとえばNCBIウェブサイトにオンライン提供されたBLAST系列のプログラムを利用して、既知のいずれのHhシグナル伝達経路遺伝子についても最も更新された配列を検索することができる。後記の表に、多様な種の既知のHhシグナル伝達経路遺伝子の幾つかの代表的なメンバーを挙げる。これはすべてではなく、決して限定とみるべきではない。むしろそれは網羅的探索に有用な出発点として役立つ。当業者はルーティンなバイオ技術によりこれらの探索を行うことができるであろう。ある遺伝子は、アクセス番号の異なる数種類の異なるデータベースエントリーをもつ場合があるが、それにもかかわらず配列は同一またはほぼ同一である。ただし、上記で述べた表には各遺伝子につき1つのエントリーのみを提示する。
RNAi構築体の例
[00388] 特定の態様において、本発明のRNAi構築体は”small interfering RNA”すなわち”siRNA”である。これらの核酸は約19〜30ヌクレオチド長さ、さらに好ましくは21〜23ヌクレオチド長さであり、たとえばより長い二本鎖RNAのヌクレアーゼ”ダイシング”により生成するフラグメントの長さに相当する。siRNAは二本鎖であり、各末端に短かいオーバーハングを含む場合がある。好ましくは、オーバーハングは3'末端における1〜6ヌクレオチド長さである。siRNAは化学合成でき、またはより長い二本鎖RNAまたはヘアピンRNAから誘導できることが当技術分野で知られている。siRNAは標的RNAに対する有意の配列類似性をもち、したがってsiRNAは標的RNAと対合してRNA干渉機序により標的RNAを配列特異的に分解することができる。siRNAは、特異的配列への対合によりヌクレアーゼ複合体を動員し、複合体を標的mRNAへ誘導すると考えられる。その結果、標的mRNAはこのタンパク質複合体中のヌクレアーゼにより分解される。特定の態様において、21〜23ヌクレオチド長さのsiRNA分子は3'ヒドロキシル基を含む。
[00389] 特定の好ましい態様において、siRNA分子の少なくとも一方の鎖は約1〜6ヌクレオチド長さの3'側オーバーハングをもつが、2〜4ヌクレオチド長さであってもよい。より好ましくは3'側オーバーハングは1〜3ヌクレオチド長さである。特定の態様において、一方の鎖は3'側オーバーハングをもち、他方の鎖は平滑末端または同様にオーバーハングをもつ。オーバーハングの長さは各鎖について同一でも異なってもよい。siRNAの安定性をさらに高めるために、3'側オーバーハングを分解に対して安定化することができる。1態様においては、プリンヌクレオチド、たとえばアデノシンまたはグアノシンヌクレオチドを含有させることによりRNAを安定化する。あるいは、ピリミジンヌクレオチドを修飾類似体で置換する;たとえば2'-デオキシチミジンによる3'側オーバーハングのウリジンヌクレオチド置換は耐容され、RNAiの有効性に影響しない。2'-ヒドロキシルの不存在は組織培養においてオーバーハングのヌクレアーゼ抵抗性を有意に高めるので、インビボで有益であろう。
[00390] RNAi構築体は、標的核酸配列と同一もしくは実質的に同一である長い二本鎖RNA、または標的核酸配列のある領域のみと同一もしくは実質的に同一である短かい二本鎖RNAを含むことができる。長いまたは短かいRNAi構築体を作成および送達する方法は、たとえばWO 01/68836およびWO 01/75164中にある。
[00391] 特定の態様において、RNAi構築体は長い二本鎖RNAの形である。特定の態様において、RNAi構築体は少なくとも25、50、100、200、300または400個の塩基である。特定の態様において、RNAi構築体は400〜800塩基の長さである。これらの二本鎖RNAは細胞内消化されて、たとえば細胞内にsiRNAを生成する。しかし、長い二本鎖RNAをインビボ使用するのは必ずしも実用的でない。これはおそらく配列とは無関係なdsRNA応答により起きる可能性のある有害作用のためであろう。そのような態様の場合、局所送達系の使用、および/またはインターフェロンもしくはPKRの作用を低下させる薬剤の使用が好ましい。
[00392] 特定の態様において、RNAi構築体はヘアピン構造体(すなわちヘアピンRNA)の形である。ヘアピンRNAは外部で合成でき、あるいはインビボでRNAポリメラーゼIIIプロモーターからの転写により形成できる。哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングのためにそのようなヘアピンRNAを作成および使用する方法は、たとえばPaddison et al. (2002) Genes Dev.,16:948-58; McCaffrey et al. (2002) Nature,418:38-9; McManus et al., (2002) RNA, 8:842-50; Yu et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:6047-52)に記載されている。目的遺伝子を確実に継続的に安定発現させるために、好ましくはそのようなヘアピンRNAを細胞内または動物体内で遺伝子工学的に産生させる。細胞内でのヘアピンRNAのプロセシングによりsiRNAを産生しうることは、当技術分野で知られている。
RNAi構築体の調製
[00393] 本発明のsiRNA分子は、当業者に既知の多数の技術を用いて得ることができる。たとえば、siRNAは当技術分野で既知の方法により化学合成または組換え産生することができる。たとえば短かいセンスおよびアンチセンスRNAオリゴマーを合成し、アニールして、各末端に2ヌクレオチドのオーバーハングをもつ二本鎖RNA構造体を形成することができる(Caplen, et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98:9742-9747; Elbashir, et al. (2001) EMBO J, 20:6877-88)。次いでこれらの二本鎖siRNA構築体を、受動取込みにより、または選択した後記の送達系により、細胞に直接導入することができる。
[00394] 特定の態様においてRNAi構築体は、より長い二本鎖RNAを、たとえば酵素ダイサーの存在下でプロセシングにより形成することができる。1態様においては、ショウジョウバエのインビトロ系を使用する。この態様においては、dsRNAをショウジョウバエ胚由来の可溶性抽出物と混和することにより、組合わせを調製する。この組合わせを、dsRNAがプロセシングされて約21〜23ヌクレオチドのRNA分子になる条件下に保持する。二本鎖構造体は、1本の自己相補性RNA鎖または2本の相補性RNA鎖により形成できる。細胞内または細胞外でRNAデュプレックス形成を開始することができる。
[00395] siRNA分子は、当業者に既知である多数の技術により精製できる。たとえばゲル電気泳動を用いてsiRNAを精製できる。あるいは、非変性法、たとえば非変性性カラムクロマトグラフィーを用いてsiRNAを精製できる。さらに、クロマトグラフィー(たとえばサイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール濃度勾配遠心分離、抗体によるアフィニティー精製を用いてsiRNAを精製できる。
[00396] RNAi構築体の作成は、化学合成法または組換え核酸技術により実施できる。処理した細胞の内因性RNAポリメラーゼがインビボ転写を仲介でき、あるいはクローン化したRNAポリメラーゼをインビトロ転写に使用できる。たとえば細胞性ヌクレアーゼに対する感受性を低下させ、生物学的利用能を改善し、配合特性を改善し、および/または他の薬物動態特性を改善するために、RNAi構築体はリン酸-糖主鎖またはヌクレオシドのいずれかに対する修飾を含むことができる。たとえば天然RNAのホスホジエステル結合を修飾して、少なくとも1個の窒素または硫黄ヘテロ原子を含有させることができる。特異的な遺伝子阻害を可能にし、一方ではdsRNAに対する全身応答を避けるように、RNA構造体の修飾を調整できる。同様に、アデノシンデアミナーゼの活性を遮断するために、塩基を修飾することもできる。RNAi構築体は、酵素により、または部分/全有機合成により作成でき、修飾したリボヌクレオチドをインビトロでの酵素合成または有機合成により導入できる。
[00397] RNA分子を化学修飾する方法をRNAi構築体の修飾に適用できる(たとえばHeidenreich et al. (1997) Nucleic Acids Res., 25:776-780; Wilson et al. (1994) J. Mol. Recog., 7:89-98; Chen et al. (1995) Nucleic Acids Res., 23:2661-2668; Hirschbein et al. (1997) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7:55-61を参照)。説明のためにすぎないが、RNAi構築体の主鎖を、ホスホロチオエート、ホスホルアミダイト、ホスホジチオエート、キメラメチルホスホネート-ホスホジエステル、ペプチド核酸、5-プロピニルピリミジン含有オリゴマーまたは糖修飾体(たとえば2'-置換リボヌクレオシド、α-立体配置)で修飾できる。
RNAi構築体の送達
[00398] 前記のRNAを、少なくとも細胞当たり1コピーの送達が可能な量で導入することができる。より高用量(たとえば、少なくとも細胞当たり5、10、100、500または1000コピー)の二本鎖材料はより効果的な阻害をもたらし、一方、より低用量も特定の用途には有用な場合がある。そのRNAのデュプレックス領域に対応するヌクレオチド配列が遺伝子阻害のために標的とされるという点で、阻害は配列特異的である。
[00399] さらに他の態様においては、プラスミドを用いて二本鎖RNAをたとえば転写生成物として送達する。そのような態様において、プラスミドはRNAi構築体のセンス鎖およびアンチセンス鎖それぞれの”コード配列”を含むように設計される。コード配列は、たとえば逆方向プロモーターによりフランキングされた同一配列であってもよく、あるいはそれぞれ別個のプロモーターによる転写制御下にある2つの別個の配列であってもよい。コード配列が転写された後、相補的RNAが塩基対を転写して二本鎖RNAを形成する。
[00400] PCT出願WO 01/77350には、真核細胞においてトランスジーンの二方向(または収束)転写により同一トランスジーンのセンスRNA転写体とアンチセンスRNA転写体の両方を得るためのベクターの例が記載されている。したがって特定の態様において、本発明は下記のユニークな特性をもつ組換えベクターを提供する:それは、反対方向に配向し、目的とするRNAi構築体のトランスジーンをフランキングする、オーバーラップした2つの転写ユニットをもつウイルスレプリコンを含み、これらのオーバーラップした2つの転写ユニットは、宿主細胞において同一のトランスジーンフラグメントからセンスRNA転写体とアンチセンスRNA転写体の両方を生成する。Tran et al., (2003) BMC Biotechnology 3: 21(本明細書に援用する)も参照されたい。
組成物
[00401] 本発明の1観点は、Hhシグナル伝達経路のアゴニストを含む医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、Hhポリペプチドまたはその機能均等物、またはHh活性のアゴニストを含む。この医薬組成物は、Hhシグナル伝達経路の負のフィードバック系または抑制エレメントのアンタゴニストを含んでもよい。この医薬組成物は、さらに追加の療法薬、たとえば神経増殖因子または神経栄養因子を含んでもよい。
[00402] さらに他の態様において本発明は、Hhアゴニスト、所望により追加の療法有効成分、および医薬的に許容できる賦形剤を、これらの薬物の同時投与のための組成物中に組み合わせることを含む、医薬組成物の調製方法に関する。
[00403] 本発明は、本明細書に記載する薬剤を提供し、医薬組成物はさらに医薬的に許容できるキャリヤーを含むことができる。医薬的に許容できるキャリヤーは当業者に周知である。そのような医薬的に許容できるキャリヤーには希釈剤、エーロゾル、局所用キャリヤー、水溶液、非水性溶液または固体キャリヤーが含まれるが、これらに限定されない。非水性溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、たとえばオリーブ油、および注射用有機エステル、たとえばオレイン酸エチルである。水性キャリヤーには、水、アルコール/水溶液、エマルションまたは懸濁液、塩類溶液および緩衝液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンガー液、または固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、水分および栄養素補充液、電解質補充液、たとえばリンガーデキストロースをベースとするものなどが含まれる。保存剤その他の添加剤、たとえば抗微生物薬、抗酸化剤、キレート化剤、不活性ガスなどが存在してもよい。
[00404] 薬剤がポリペプチドおよび抗体である態様については、生物学的に許容できる媒質、たとえば水、緩衝化生理食塩水、ポリオール(たとえばグリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)、またはその適切な混合物を用いて、医薬組成物を投与のために配合できる。好ましい態様においては、そのタンパク質を送達すべき天然の細胞膜の脂質組成と近似する脂質配合物、たとえばミセルに、ポリペプチドを分散させる。本明細書中で用いる”生物学的に許容できる媒質”には、目的とする本発明の医薬製剤の投与経路に適切と思われる溶剤、分散媒質などがすべて含まれる。医薬有効物質のためのそれらの媒質の使用は当技術分野で既知である。一般的な媒質および薬剤がHhシグナル伝達経路アゴニストの活性と適合しない場合以外は、本発明の医薬組成物中におけるその使用が考慮される。種々のタンパク質を含めた適切なビヒクルおよびそれらの配合物が、たとえば書籍Remington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている(Remington's Pharmaceutical Sciences. Mack Publishing Company, 米国ペンシルベニア州イーストン, 1985)。
[00405] そのような投与のために、ポリペプチドを含む配合物中に、バリヤーを透過するのに適切な透過剤を用いる。そのような透過剤は当技術分野で一般に知られており、たとえば経粘膜投与用として胆汁酸およびフシジン酸誘導体が含まれる。さらに、透過促進のために界面活性剤を使用できる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーにより、または坐剤を用いて行うことができる。局所投与のためには、本発明のタンパク質を当技術分野で一般に知られている軟膏剤、膏薬、ゲル剤またはクリーム剤中に配合する。
[00406] 本発明方法によれば、本発明ポリペプチド(および適宜、内皮化ポリペプチド(endothelializaion polypeptide))の発現構築体を、いずれかの生物学的に有効なキャリヤー中、たとえば組換え融合遺伝子をインビボで細胞に効果的にトランスフォクションしうる配合物または組成物中において投与できる。方法には、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルス-1を含めたウイルスベクター、または組換え細菌プラスミドもしくは真核細胞プラスミドに、本発明の融合遺伝子を挿入する方法が含まれる。ウイルスベクターは、細胞を直接トランスフォクションするのに使用できる;プラスミドDNAは、たとえばカチオン性リポソーム(リポフェクチン)、または誘導体化した(たとえば抗体結合させた)ポリリシンコンジュゲート、グラマシジンS、人工ウイルスエンベロープもしくはこれに類する他の細胞内キャリヤーの補助により、および遺伝子構築体の直接注入により送達でき、あるいはインビボでCaPO4沈降を行うことができる。適切な標的細胞のトランスダクションは遺伝子療法の重要な第1段階であるので、具体的な遺伝子送達系の選択は意図する標的の表現型および投与経路(たとえば局所または全身)などの要因に依存することは自明であろう。
[00407] 選択した媒質中における薬剤(1種類以上)の最適濃度は、医薬化学者に周知の方法に従って経験的に決定できる。
遺伝子療法
[00408] 本発明の1観点は、遺伝子療法により各種の行動障害および情動障害を処置する方法を提供する。本明細書中で用いる”遺伝子療法”は、核酸が発現しうるように対象細胞に導入し、その結果、疾病を軽減する療法を表わす。
[00409] 他の好ましい態様において、本発明はHhポリペプチドの生物活性を調節する(たとえば模倣または拮抗する)ポリペプチドをコードする核酸を特徴とし、この核酸は、SEQ ID No:1、SEQ ID No:2、SEQ ID No:3、SEQ ID No:4、SEQ ID No:5、SEQ ID No:6、SEQ ID No:7、SEQ ID No:8またはSEQ ID No:9のいずれかにより表わされるヌクレオチド配列と同一または相同な遺伝子のコード領域のヌクレオチド配列の全部または一部を含む。好ましくはこの核酸は、SEQ ID No:1〜9により表わされる1以上の核酸のコード部分にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするHhコード部分を含む。
[00410] 用語、均等物は、たとえば本明細書に記載する脊椎動物Hhポリペプチドの活性をもつ機能的に同等なHhポリペプチドまたは機能的に同等なペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むものと理解される。同等なヌクレオチド配列には、1以上のヌクレオチド置換、付加または欠失により異なる配列、たとえば対立遺伝子変異体が含まれるであろう;またそれには、遺伝子コードの縮重のためSEQ ID No:1〜9に示す脊椎動物hh cDNAのヌクレオチド配列と異なる配列が含まれるであろう。均等物には、SEQ ID No:1〜9のうち1以上に示すヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下で(すなわち、約1 Mの塩類中で形成されるDNAデュプレックスの融点(Tm)より約20〜27℃低い温度に相当)ハイブリダイズするヌクレオチド配列も含まれるであろう。1態様において、均等物はさらにSEQ ID No:1〜9のいずれかに示すヌクレオチド配列に由来する核酸配列および進化上それらに関係するものを含むであろう。
[00411] さらに他の好ましい態様において、Hhポリペプチドをコードする本発明に有用な核酸は、ストリンジェントな条件下で、SEQ ID No:1〜9のうち1以上のセンス配列またはアンチセンス配列の少なくとも12個の連続ヌクレオチド;好ましくはSEQ ID No:1〜9のうち1以上のセンス配列またはアンチセンス配列の少なくとも20個の連続ヌクレオチド;より好ましくは少なくとも40、50または75個の連続ヌクレオチドに対応する核酸プローブにハイブリダイズする。
[00412] 用語、均等物は、たとえば本明細書に記載する脊椎動物Hhポリペプチドの活性をもつ機能的に同等なHhポリペプチドまたは機能的に同等なペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むものと理解される。同等なヌクレオチド配列には、1以上のヌクレオチド置換、付加または欠失により異なる配列、たとえば対立遺伝子変異体が含まれるであろう;またそれには、遺伝子コードの縮重のためSEQ ID No:1〜9に示す脊椎動物hh cDNAのヌクレオチド配列と異なる配列が含まれるであろう。均等物には、SEQ ID No:1〜9のうち1以上に示すヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下で(すなわち、約1 Mの塩類中で形成されるDNAデュプレックスの融点(Tm)より約20〜27℃低い温度に相当)ハイブリダイズするヌクレオチド配列も含まれるであろう。1態様において、均等物はさらにSEQ ID No:1〜9のいずれかに示すヌクレオチド配列に由来する核酸配列および進化上それらに関係するものを含むであろう。
[00413] 本発明の遺伝子療法に使用するのに好ましい核酸は、SEQ ID No:10〜18から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%相同である、より好ましくは少なくとも70%相同である、最も好ましくは少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含む、脊椎動物Hhポリペプチドをコードする。SEQ ID No:10〜18のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98〜99%相同であるポリペプチドをコードする核酸も、本発明の範囲に含まれる。1態様において核酸は、対象脊椎動物Shhポリペプチドの少なくとも1つの活性をもつペプチドをコードするcDNAである。好ましくは本発明の核酸は、SEQ ID No:1〜9のコード領域に相当するヌクレオチド配列の全部または一部を含む。
[00414] ソニッククローンの機能同等フラグメントに関して、好ましい核酸は、分子量約19 kDaをもつHh部分を含むポリペプチドであってHhの生物活性を調節しうる(たとえば模倣または拮抗する)ポリペプチドをコードする。好ましくは、この核酸によりコードされるポリペプチドは、SEQ ID No:10、SEQ ID No:11、SEQ ID No:12、SEQ ID No:13、SEQ ID No:14、SEQ ID No:15、SEQ ID No:16、SEQ ID No:17またはSEQ ID No:18のいずれかに示されるアミノ酸配列と同一または相同なアミノ酸配列を含む。より好ましくは、このポリペプチドはSEQ ID No:21に示されるアミノ酸配列を含む。
[00415] 好ましい核酸は、式A-Bにより示されるアミノ酸配列を含むHhポリペプチドをコードし;式中のAはSEQ ID No:21の残基1〜168により示されるアミノ酸配列の全部または一部を表わし;BはSEQ ID No:21の残基169〜221により示されるアミノ酸配列のうち少なくとも1個のアミノ酸残基を表わし;AとBは一緒にSEQ ID No:21により示される連続ポリペプチド配列を表わす。好ましくは、Bは、SEQ ID No:21の残基169〜221により示されるアミノ酸配列のうち少なくとも5、10または20個のアミノ酸残基を表わすことができる。
[00416] さらに説明すると、他の好ましい核酸は、式A-Bにより示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし;式中のAはSEQ ID No:15の残基24〜193により示されるアミノ酸配列の全部または一部を表わし;BはSEQ ID No:15の残基194〜250により示されるアミノ酸配列のうち少なくとも1個のアミノ酸残基を表わし;AとBは一緒にSEQ ID No:15に示される連続ポリペプチド配列を表わし、このポリペプチドはHhポリペプチドの生物活性を調節する(たとえば作動または拮抗する)。
[00417] さらに他の好ましい核酸は、式A-Bにより示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし;式中のAはSEQ ID No:13と同一または相同な脊椎動物Hhポリペプチドの残基25〜193またはその類似残基により示されるアミノ酸配列の全部または一部、たとえば25、50、75または100個の残基を表わし;BはSEQ ID No:13と同一または相同な脊椎動物Hhポリペプチドの残基194〜250またはその類似残基により示されるアミノ酸配列のうち少なくとも1個のアミノ酸残基を表わし;AとBは一緒にSEQ ID No:13により示される連続ポリペプチド配列を表わす。
[00418] 他の好ましい核酸は、式A-Bにより示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし;式中のAはSEQ ID No:11の残基23〜193により示されるアミノ酸配列の全部または一部、たとえば25、50、75または100個の残基を表わし;BはSEQ ID No:11の残基194〜250により示されるアミノ酸配列のうち少なくとも1個のアミノ酸残基を表わし;AとBは一緒にSEQ ID No:11により示される連続ポリペプチド配列を表わし、このポリペプチドはHhポリペプチドの生物活性を調節する(たとえば作動または拮抗する)。
[00419] 他の好ましい核酸は、式A-Bにより示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし;式中のAはSEQ ID No:12の残基28〜197により示されるアミノ酸配列の全部または一部、たとえば25、50、75または100個の残基を表わし;BはSEQ ID No:12の残基198〜250により示されるアミノ酸配列のうち少なくとも1個のアミノ酸残基を表わし;AとBは一緒にSEQ ID No:12により示される連続ポリペプチド配列を表わし、このポリペプチドはHhポリペプチドの生物活性を調節する(たとえば作動または拮抗する)。
[00420] さらに他の好ましい核酸は、式A-Bにより示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし;式中のAはSEQ ID No:18と同一または相同な脊椎動物Hhポリペプチドの残基1〜98またはその類似残基により示されるアミノ酸配列の全部または一部、たとえば25、50または75個の残基を表わし;BはSEQ ID No:18と同一または相同な脊椎動物Hhポリペプチドの残基99〜150またはその類似残基により示されるアミノ酸配列のうち少なくとも1個のアミノ酸残基を表わす。
[00421] 本発明の他の観点は、SEQ ID No:1〜9のいずれかにより示される核酸に高ストリンジェンシー条件下または低ストリンジェンシ条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件、たとえば6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃、続いて2.0×SSCによる50℃での洗浄が当業者に既知であり、あるいはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, ニューヨーク(1989), 6.3.1-6.3.6にある。たとえば洗浄工程の塩類濃度は、約2.0×SSC、50℃の低ストリンジェンシー、ないし約0.2×SSC、50℃の高ストリンジェンシーから選択できる。さらに、洗浄工程の温度を室温(約22℃)での低ストリンジェンシー条件から、約65℃での高ストリンジェンシー条件に高めることができる。
[00422] 遺伝子コードの縮重のためSEQ ID No:1、SEQ ID No:2、SEQ ID No:3、SEQ ID No:4、SEQ ID No:5、SEQ ID No:6、SEQ ID No:7、SEQ ID No:8またはSEQ ID No:9のいずれかに示すヌクレオチド配列と異なる配列をもつ核酸も本発明の範囲に含まれる。それらの核酸は機能的に同等なペプチド(すなわち脊椎動物hhポリペプチドの生物活性をもつペプチド)をコードするが、遺伝子コードの縮重のため、配列表に示す配列と配列が異なる。たとえば多数のアミノ酸が1より多いトリプレットにより表示される。同一アミノ酸を特定するコドンまたはその同義語(たとえばCAUおよびCACはそれぞれヒスチジンをコードする)は、脊椎動物hhポリペプチドのアミノ酸配列に影響を与えない”サイレント”変異を生じるであろう。しかし、脊椎動物中には本発明のhhポリペプチドのアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列多型性があると予想される。脊椎動物hhポリペプチドの活性をもつポリペプチドをコードする核酸の1個以上のヌクレオチド(最高で約3〜5%のヌクレオチド)における、自然の対立遺伝子変異変動によるこれらの変動がその種の個体内に存在する可能性のあることは、当業者に認識されるであろう。本明細書中で用いるhh遺伝子フラグメントとは、脊椎動物hhポリペプチドの完全な天然形をコードするヌクレオチド配列より少ないヌクレオチドをもつが、なおかつ(好ましくは)全長タンパク質のある生物活性を保持するポリペプチドをコードする核酸を表わす。
[00423] 例示態様において、各Shhクローンのエキソン1、2、および一部のエキソン3がコードする配列(たとえば天然タンパク質のN末端の約221残基)をアラインすると、下記の一般式で表わされる一組の縮重Shhポリペプチドが得られる:
[00424] C-G-P-G-R-G-X(1)-G-X(2)-R-R-H-P-K-K-L-T-P-L-A-Y-K-Q-F-I-P-N-V-A-E-K-T-L-G-A-S-G-R-Y-E-G-K-I-X(3)-R-N-S-E-R-F-K-E-L-T-P-N-Y-N-P-D-I-I-F-K-D-E-E-N-T-G-A-D-R-L-M-T-Q-R-C-K-D-K-L-N-X(4)-L-A-I-S-V-M-N-X(5)-W-P-G-V-X(6)-L-R-V-T-E-G-W-D-E-D-G-H-H-X(7)-E-E-S-L-H-Y-E-G-R-A-V-D-I-T-T-S-D-R-D-X(8)-S-K-Y-G-X(9)-L-X(10)-R-L-A-V-E-A-G-F-D-W-V-Y-Y-E-S-K-A-H-I-H-C-S-V-K-A-E-N-S-V-A-A-K-S-G-G-C-F-P-G-S-A-X(11)-V-X(12)-L-X(13)-X(14)-G-G-X(15)-K-X-(16)-V-K-D-L-X(17)-P-G-D-X(18)-V-L-A-A-D-X(19)-X(20)-G-X(21)-L-X(22)-X(23)-S-D-F-X(24)-X(25)-F-X(26)-D-R (SEQ ID No: 21);
[00425] ここでそれぞれの縮重位置”X”は、その位置にヒト、マウス、ニワトリまたはミノカサゴのいずれかのShhクローンにおいて生じるアミノ酸であってよい。あるいはライブラリーを拡張するために、各Xはそれらの各位置に自然界でみられるアミノ酸に対する保存置換であるアミノ酸残基から選択することもできる。たとえばXaa(1)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、TyrまたはTrpを表わし;Xaa(2)はArg、HisまたはLysを表わし;Xaa(3)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThrを表わし;Xaa(4)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThrを表わし;Xaa(5)はLys、Arg、His、AsnまたはGlnを表わし;Xaa(6)はLys、ArgまたはHisを表わし;Xaa(7)はSer、Thr、Tyr、TrpまたはPheを表わし;Xaa(8)はLys、ArgまたはHisを表わし;Xaa(9)はMet、Cys、SerまたはThrを表わし;Xaa(10)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThrを表わし;Xaa(11)はLeu、Val、Met、ThrまたはSerを表わし;Xaa(12)はHis、Phe、Tyr、Ser、Thr、MetまたはCysを表わし;Xaa(13)はGln、Asn、Glu,またはAspを表わし;Xaa(14)はHis、Phe、Tyr、Thr、Gln、Asn、GluまたはAspを表わし;Xaa(15)はGln、Asn、Glu、Asp、Thr、Ser、MetまたはCysを表わし;Xaa(16)はAla、Gly、Cys、Leu、ValまたはMetを表わし;Xaa(17)はArg、Lys、Met、Ile、Asn、Asp、Glu、Gln、Ser、ThrまたはCysを表わし;Xaa(18)はArg、Lys、MetまたはIleを表わし;Xaa(19)はAla、Gly、Cys、Asp、Glu、Gln、Asn、Ser、ThrまたはMetを表わし;Xaa(20)はAla、Gly、Cys、Asp、Asn、GluまたはGlnを表わし;Xaa(21)はArg、Lys、Met、Ile、Asn、Asp、GluまたはGlnを表わし;Xaa(22)はLeu、Val、MetまたはIleを表わし;Xaa(23)はPhe、Tyr、Thr、HisまたはTrpを表わし;Xaa(24)はIle、Val、LeuまたはMetを表わし;.Xaa(25)はMet、Cys、Ile、Leu、Val、ThrまたはSerを表わし;Xaa(26)はLeu、Val、Met、ThrまたはSerを表わす。さらに拡張したライブラリーにおいて、各Xはいかなるアミノ酸からも選択できる。
[00426] 同様にヒト、マウス、ニワトリまたはミノカサゴのいずれかのhhクローン(図5B)をアラインすると、下記の一般式で表わされる縮重ポリペプチド配列が得られる:
[00427] C-G-P-G-R-G-X(1)-X(2)-X(3)-R-R-X(4)-X(5)-X(6)-P-K-X(7)-L-X(8)-P-L-X(9)-Y-K-Q-F-X(10)-P-X(11)-X(12)-X(13)-E-X(14)-T-L-G-A-S-G-X(15)-X(16)-E-G-X(17)-X(18)-X(19)-R-X(20)-S-E-R-F-X(21)-X(22)-L-T-P-N-Y-N-P-D-I-I-F-K-D-E-E-N-X(23)-G-A-D-R-L-M-T-X(24)-R-C-K-X(25)-X(26)-X(27)-N-X(28)-L-A-I-S-V-M-N-X(29)-W-P-G-V-X(30)-L-R-V-T-E-G-X(31)-D-E-D-G-H-H-X(32)-X(33)-X(34)-S-L-H-Y-E-G-R-A-X(35)-D-I-T-T-S-D-R-D-X(36)-X(37)-K-Y-G-X(38)-L-X(39)-R-L-A-V-E-A-G-F-D-W-V-Y-Y-E-S-X(40)-X(41)-H-X(42)-H-X(43)-S-V-K-X(44)-X(45) (SEQ ID No: 22);
[00428] ここで、前記のようにそれぞれの縮重位置”X”は、野生型クローンのいずれかにおいて対応する位置に生じるアミノ酸であってよく、保存置換であるアミノ酸残基も含むことができ、あるいは各Xはいかなるアミノ酸であってもよい。例示態様において、Xaa(1)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、PheまたはTyrを表わし;Xaa(2)はGly、Ala、Val、LeuまたはIleを表わし;Xaa(3)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Lys、HisまたはArgを表わし;Xaa(4)はLys、ArgまたはHisを表わし;Xaa(5)はPhe、Trp、Tyrまたはアミノ酸ギャップを表わし;Xaa(6)はGly、Ala、Val、Leu、Ileまたはアミノ酸ギャップを表わし;Xaa(7)はAsn、Gln、His、ArgまたはLysを表わし;Xaa(8)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThrを表わし;Xaa(9)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThrを表わし;Xaa(10)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThrを表わし;Xaa(11)はSer、Thr、GlnまたはAsnを表わし;Xaa(12)はMet、Cys、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThrを表わし;Xaa(13)はGly、Ala、Val、Leu、IleまたはProを表わし;Xaa(14)はArg、HisまたはLysを表わし;Xaa(15)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Arg、HisまたはLysを表わし;Xaa(16)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、PheまたはTyrを表わし;Xaa(17)はArg、HisまたはLysを表わし;Xaa(18)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThrを表わし;Xaa(19)はThrまたはSerを表わし;Xaa(20)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、AsnまたはGlnを表わし;Xaa(21)はArg、HisまたはLysを表わし;Xaa(22)はAspまたはGluを表わし;Xaa(23)はSerまたはThrを表わし;Xaa(24)はGlu、Asp、GlnまたはAsnを表わし;Xaa(25)はGluまたはAspを表わし;Xaa(26)はArg、HisまたはLysを表わし;Xaa(27)はGly、Ala、Val、LeuまたはIleを表わし;Xaa(28)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、ThrまたはSerを表わし;Xaa(29)はMet、Cys、Gln、Asn、Arg、LysまたはHisを表わし;Xaa(30)はArg、HisまたはLysを表わし;Xaa(31)はTrp、Phe、Tyr、Arg、HisまたはLysを表わし;Xaa(32)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、TyrまたはPheを表わし;Xaa(33)はGln、Asn、AspまたはGluを表わし;Xaa(34)はAspまたはGluを表わし;Xaa(35)はGly、Ala、Val、Leu,またはIleを表わし;Xaa(36)はArg、HisまたはLysを表わし;Xaa(37)はAsn、Gln、ThrまたはSerを表わし;Xaa(38)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、MetまたはCysを表わし;Xaa(39)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、ThrまたはSerを表わし;Xaa(40)はArg、HisまたはLysを表わし;Xaa(41)はAsn、Gln、Gly、Ala、Val、LeuまたはIleを表わし;Xaa(42)はGly、Ala、Val、LeuまたはIleを表わし;Xaa(43)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、ThrまたはCysを表わし;Xaa(44)はGly、Ala、Val、Leu、Ile、ThrまたはSerを表わし;Xaa(45)はAspまたはGluを表わす。
[00429] 機能均等物であるポリペプチドは、これらの配列から、コンビナトリアル発現ライブラリーをスクリーニングするための当技術分野で周知のプロトコルを用いて選択できる。
[00430] 本発明のポリペプチドのいずれかをコードする核酸を細胞にインビボで導入するための好ましい方法は、遺伝子生成物をコードする核酸、たとえばcDNAを含むウイルスベクターを用いるものである。細胞へのウイルスベクター感染は、大きな標的細胞集団に核酸を導入できるという利点をもつ。さらに、ウイルスベクター内において、たとえばそのウイルスベクターに含まれるcDNAによりコードされる分子は、ウイルスベクター核酸を受け取った細胞内で効率的に発現する。
[00431] レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターは、外因性遺伝子をインビボ伝達(特にヒトに)するための好ましい組換え遺伝子送達系であると一般に理解されている。これらのベクターは遺伝子を細胞内へ効率的に送達し、伝達された核酸は宿主の染色体DNA中に安定に組み込まれる。レトロウイルスを用いるための主な前提条件は、特に野生型ウイルスが細胞集団内で拡散する可能性に関して、それらの使用の安全性を確保することである。複製欠損型レトロウイルスのみを産生する特殊な細胞系統(”パッケージング細胞”という)の開発が遺伝子療法に対するレトロウイルスの有用性を高め、遺伝子療法のための遺伝子伝達における使用に関して欠損型レトロウイルスは十分に特性解明されている(概説についてはMiller, A.D. (1990) Blood 76:271を参照)。たとえば、レトロウイルスのコード配列の一部(gag、pol、env)をCKIポリペプチドコード核酸で交換してレトロウイルスを複製欠損型にすることにより、組換えレトロウイルスを構築できる。次いでこの複製欠損型レトロウイルスをウイルス粒子内にパッケージし、これを標準法によりヘルパーウイルスを用いて標的細胞の感染に使用できる。組換えレトロウイルスの作成、およびそれらのウイルスによるインビトロまたはインビボでの感染のためのプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M. et al. (編者), Greene Publishing Associates, (1989), 9.10-9.14章、および他の標準的な実験マニュアル中にある。適切なレトロウイルスの例には、当業者に周知のpLJ、pZIP、pWEおよびpEMが含まれる。エコトロピックおよび両種性レトロウイルス系の両方を作成するのに適切なパッケージングウイルス系統の例には、ψCrip、ψCre、ψ2およびψAmが含まれる。レトロウイルスは、神経細胞、上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋原細胞、肝細胞、骨髄細胞を含めた多数の細胞タイプに、インビトロおよび/またはインビボで多様な遺伝子を導入するために用いられている(たとえば、Eglitis, et al. (1985) Science 230:1395-1398; Danos and Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6460-6464; Wilson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3014-3018; Armentano et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6141-6145; Huber et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8039-8043; Ferry et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8377-8381; Chowdhury et al. (1991) Science 254:1802-1805; van Beusechem et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7640-7644; Kay et al. (1992) Human Gene Therapy 3:641-647; Dai et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10892-10895; Hwu et al. (1993) J. Immunol. 150:4104-4115; U.S.P. No. 4,868,116; U.S.P. No. 4,980,286; PCT出願WO 89/07136; PCT出願 WO 89/02468; PCT出願 WO 89/05345; およびPCT出願WO 92/07573を参照)。
[00432] レトロウイルスベクターを本発明のタンパク質の遺伝子送達系として選択する際、下記の点を留意するのが重要である:すなわち、大部分のレトロウイルスによる標的細胞の感染に成功し、したがって組換え遺伝子を安定に導入するための前提条件は、標的細胞が分裂していなければならないということである。感染に際してのそのような制限は、標的細胞の周囲組織が著しく細胞分裂してはおらず、したがってレトロウイルスベクターに対して無反応性である場合に、有益となる可能性がある。
[00433] さらに、ウイルス粒子の表面のウイルスパッケージングタンパク質を修飾することにより、レトロウイルスの感染スペクトルを制限でき、結果的にレトロウイルスをベースとするベクターの感染スペクトルを制限できることが示された(たとえばPCT公開WO 93/25234、WO 94/06920およびWO 94/11524を参照)。たとえば、レトロウイルスベクターの感染スペクトルを改変するための対策には下記のものが含まれる:細胞表面抗原に対する抗体をウイルスenvタンパク質に結合させる(Roux et al. (1989) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:9079-9083; Julan et al. (1992) J. Gen. Virol. 73:3251-3255; およびGoud et al. (1983) Virology 163:251-254);または細胞表面リガンドをウイルスenvタンパク質に結合させる(Neda et al. (1991) J. Biol. Chem. 266:14143-14146)。結合は化学的架橋によるものであってもよい:タンパク質その他、多様なものによる(たとえばenvタンパク質をアシアログリコプロテインに変換するための乳糖)、および融合タンパク質の形成による(たとえば一本鎖抗体/env融合タンパク質)。この方法は感染を特定の組織タイプに限定または指向するのに有用であるが、エコトロピックベクターを両種性ベクターに変換するためにも利用できる。
[00434] さらに、レトロウイルス遺伝子送達の使用は、レトロウイルスベクターの融合遺伝子の発現を制御する組織特異的または細胞特異的な転写調節配列の使用により、さらに増強できる。
[00435] 本発明のポリペプチドを送達するために有用な他のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。アデノ随伴ウイルスは、効率的な複製および増殖ライフサイクルのためのヘルパーウイルスとして他のウイルス、たとえばアデノウイルスまたはヘルペスウイルスを必要とする、天然の欠損型ウイルスである(概説については、Muzyczka et al. (1992) Curr. Topics Microbiol. Immunol. 158:97-129を参照)。このウイルスは、それのDNAを非分裂細胞中へ組み込むことができ、高頻度の安定組込みを示す、少ないウイルスのひとつでもある(たとえば、Flotte et al. (1992) Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 7:349-356; Samulski et al. (1989) J. Virol. 63:3822-3828; およびMcLaughlin et al. (1989) J. Virol. 62:1963-1973を参照)。300塩基対程度のAAVを含むベクターをパッケージして組み込ませることができる。外因性DNAのためのスペースは約4.5 kbに限定される。AAVベクター、たとえばTratschin et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260に記載のものを用いて、DNAを細胞に導入できる。AAVを用いて多様な核酸が種々の細胞タイプに導入されている(たとえば、Hermonat et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470; Tratschin et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081; Wondisford et al. (1988) Mol. Endocrinol. 2:32-39; Tratschin et al. (1984) J. Virol. 51:611-619; およびFlotte et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:3781-3790を参照)。
[00436] 本発明に有用な他のウイルス遺伝子送達系は、アデノウイルス由来のベクターを用いる。目的とする遺伝子生成物をコードするが、正常な溶解性のウイルスライフサイクルで複製する能力に関しては不活性となるように、アデノウイルスのゲノムを操作することができる(たとえば、Berkner et al. (1988) BioTechniques 6:616; Rosenfeld et al. (1991) Science 252:431-434; およびRosenfeld et al. (1992) Cell 68:143-155を参照)。アデノウイルス株Adタイプ5 dl324または他のアデノウイルス株(たとえばAd2、Ad3、Ad7など)に由来する適切なアデノウイルスベクターが、当業者に周知である。組換えアデノウイルスは、非分裂細胞には感染できず、内皮細胞(Lemarchand et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6482-6486)および平滑筋細胞(Quantin et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:2581-2584)を含めた広範な細胞タイプの感染に使用できるという点で、特定の状況で有利となる可能性がある。さらに、このウイルス粒子は比較的安定であり、精製および濃縮が可能であり、かつ前記のように感染スペクトルに影響を及ぼすように修飾できる。さらに、導入したアデノウイルスDNA(およびそれに含まれる外来DNA)は宿主細胞のゲノムに組み込まれるのではなく、エピソーム状態のままであり、これにより、導入されたDNAが宿主ゲノム(たとえば、レトロウイルスDNA)に組み込まれた場合に挿入変異誘発の結果として起きる可能性のある潜在問題が避けられる。さらに、アデノウイルスの外来DNA運搬容量は他の送達ベクターと比較して大きい(最高8 キロベース) (Berkner et al., 前掲; Haj-Ahmand and Graham (1986) J. Virol. 57:267)。現在用いられている最も複製欠損性が高く、したがって本発明に好ましいアデノウイルスベクターは、ウイルスE1およびE3遺伝子の全部または一部を欠失するが、アデノウイルス遺伝子材料を80%も保持している(たとえば、Jones et al. (1979) Cell 16:683; Berkner et al., 前掲; およびGraham et al. in Methods in Molecular Biology, E.J. Murray編 (Humana, ニュージャージー州クリフトン, 1991) vol. 7. pp. 109-127を参照)。挿入した融合遺伝子の発現は、たとえばE1Aプロモーター、主要後期プロモーター(MLP)および付随するリーダー配列、E3プロモーター、または付加した外因性プロモーター配列により制御できる。
[00437] 遺伝子療法に使用できる他のウイルスベクター系は、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、および数種類のRNAウイルスに由来するものである。特にヘルペスウイルスベクターは、本発明の融合タンパク質を中枢神経系および眼組織の細胞内で持続発現させるためのユニークな方法を提供する(Pepose et al. (1994) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 35:2662-2666)。
[00438] 前記のウイルス伝達法のほかに、動物の組織内で本発明のタンパク質を発現させるために非ウイルス法も使用できる。非ウイルス法による遺伝子伝達の大部分は、哺乳動物細胞が高分子を取り込んで細胞内輸送するために用いる正常な機序に依存する。好ましい態様において、本発明の非ウイルス遺伝子送達系は標的細胞による遺伝子取込みのためのエンドサイトーシス経路に依存する。このタイプの遺伝子送達系の例には、リポソーム由来の系、ポリリシンコンジュゲート、および人工ウイルスエンベロープが含まれる。
[00439] 代表的な態様においては、本発明のタンパク質のいずれかをコードする遺伝子を、それらの表面に正電荷をもつリポソーム(たとえばリポフェクチン類)内にトラップし、(所望により)これらに標的組織の細胞表面抗原に対する抗体タグを付与することができる(Mizuno et al. (1992) No Shinkei Geka 20:547-551; PCT公開WO 91/06309; 特開平1047381; および欧州特許公開EP-A-43075)。たとえば神経膠腫細胞のリポフェクションは、神経膠腫関連抗原に対するモノクローナル抗体タグを付与したリポソームを用いて実施できる(Mizuno et al. (1992) Neurol. Med. Chir. 32:873-876)。
[00440] さらに他の具体的態様において、遺伝子送達系は抗体または細胞表面リガンドを含み、これはポリリシンなどの遺伝子結合剤で架橋している(たとえば、PCT公開WO 93/04701, WO 92/22635, WO 92/20316, WO 92/19749およびWO 92/06180)。たとえば本発明の遺伝子構築体は、ポリカチオン、たとえばポリリシンに結合したアシアログリコプロテインを含む可溶性ポリヌクレオチドキャリヤーにより、肝細胞をインビボでトランスフェクションするのに使用できる(参照:U.S. Patent 5,166,320)。遺伝子のエンドソーム構造体回避を向上させる物質を用いて、本発明の核酸構築体の受容体仲介エンドサイトーシスによる効果的送達を改善することも好ましい。たとえば、全アデノウイルス、またはインフルエンザHA遺伝子生成物の融合誘導ペプチドを送達系の一部として用いて、DNA内包エンドソームの効果的破壊を誘導することができる(Mulligan et al. (1993) Science 260-926; Wagner et al. (1992) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 89:7934; およびChristiano et al. (1993) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90:2122)。
[00441] 臨床的には、それぞれ当技術分野で慣用される多数の方法のいずれかにより遺伝子送達系を患者に導入することができる。たとえば、遺伝子送達用の医薬製剤を、たとえば静脈内注射により全身導入すると、標的細胞の特異的なトランスダクションが起きる;これは主に、遺伝子送達ビヒクル、遺伝子発現を制御する転写調節配列による細胞タイプまたは組織タイプ発現、またはその組合わせにより得られる、トランスフェクション特異性によるものである。他の態様においては、動物への導入をきわめて限局化することにより、組換え遺伝子の初期送達をより限定する。たとえば、遺伝子送達ビヒクルをカテーテルで(参照:U.S. Patent 5,328,470)、または定位注射により(たとえば、Chen et al. (1994) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91: 3054-3057)導入できる。
[00442] さらに、本発明の医薬製剤は本質的に、許容できる希釈剤中の遺伝子送達系からなるものであってもよく、あるいは遺伝子送達ビヒクルを埋め込んだ徐放性マトリックスからなるものであってもよい。あるいは、完成した遺伝子送達系を組換え細胞、たとえばレトロウイルスパッケージから無傷で作成できる場合、医薬製剤は遺伝子送達系を産生する1以上の細胞を含むことができる。後者の場合、ウイルスパッケージング細胞を導入する方法は、たとえば再装填式または生分解性デバイスにより得ることができる。最近、タンパク質性バイオ医薬を含めた薬物の制御送達のために多様な徐放性ポリマーデバイスが開発されてインビボ試験されており、これらをポリマーの組成および形状の操作によりウイルス粒子の放出に適用できる。生分解性ポリマーおよび非分解性ポリマーの両方を含めた多様な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を用いて、特定の標的部位に移植した細胞による持続的なウイルス粒子放出のための移植体を作成できる。本発明のそのような態様は、外部で精製してポリマーデバイスに取り込ませたウイルスの送達、またはポリマーデバイスに封入した細胞により産生されるウイルス粒子の送達に使用できる。
医薬ビジネスを実施する方法
[00443] 他の観点において本発明は、Hhアゴニストおよび場合により追加の医薬有効化合物を含む製剤またはそれぞれ別個の配合物を含むキットを調製し、そして行動障害および/または情動障害および/または認知障害の処置にその製剤またはキットを使用する恩恵をヘルスケアプロバイダーに販売することによる、医薬ビジネスの実施方法に関する。
[00444] さらに他の観点において本発明は、組合わせ製剤およびキットを販売するための配布ネットワークを用意し、そして行動障害および/または情動障害および/または認知障害の処置にその製剤またはキットを使用するためのインストラクション資料を患者または医師に提供することによる、医薬ビジネスの実施方法を提供する。
[00445] さらに他の観点において本発明は、行動障害および/または情動障害および/または認知障害の処置に際して投与するHhアゴニスト、場合により共投与する追加の医薬有効成分の適切な配合および用量を決定し、同定した配合物の有効性および毒性に関する療法プロファイリングを動物において実施し、そして許容できる療法プロファイルをもつと同定した製品を販売するための配布ネットワークを用意することによる、医薬ビジネスの実施方法に関する。特定の態様において、この方法はさらに、製品をヘルスケアプロバイダーに販売するための販売グループを用意する追加段階を含む。
[00446] さらに他の観点において本発明は、行動障害および/または情動障害および/または認知障害の処置に際して投与するHhアゴニスト、場合により共投与する追加の医薬有効成分の適切な配合および用量を決定し、そしてその配合物をさらに開発および販売するための権利を第3者に許諾することによる、医薬ビジネスの実施方法を提供する。
[00447] 特定の態様において、処置される障害は下記を含む運動障害である:運動失調症、皮質脳幹神経節変性(CBGD)、ジスキネジー、ジストニー、振戦、遺伝性痙性対麻痺、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統萎縮、ミオクローヌス、パーキンソン病、進行性核上麻痺、不穏下肢症候群、レット症候群、痙縮、シドナム舞踏病、他の舞踏病、アテトーシス、バリスム、常同行動、遅発性ジスキネジー/ジストニー、チック病、トゥーレット症状群、オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、広汎性レーヴィ体病、片側バリスム、片側顔面痙攣、不穏下肢症候群、ウィルソン病、スティッフマン症候群、無動無言症、精神運動遅滞、疼痛性脚運動性趾症候群、歩行障害、薬物誘発性運動障害、または他の運動障害。
[00448] 他の態様において、情動障害または認知障害は下記のものである:注意欠陥障害(ADD)、活動亢進を伴う注意欠陥障害(ADHD)、および認知障害、たとえば認知症(加齢性および老人性認知症、HIV関連認知症、複合エイズ認知症(ADC)、HIV脳障害による認知症、パーキンソン病、アルツハイマー病、頭部外傷、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト-ヤコブ病、前交通動脈症候群、低酸素症、心臓手術後、ダウン症候群および卒中を含む)、ならびに毒物被曝、脳傷害、加齢性記憶障害、軽度の認知障害、てんかん、または小児の精神発育遅滞による記憶障害。
[00449] 特定の態様において、障害は自閉性障害である。
[00450] さらに他の態様において、行動障害は睡眠不全、錯睡眠、病的もしくは精神病的状態に関連する睡眠障害、または他の睡眠障害である。特定の好ましい態様において、睡眠不全は内因性睡眠障害、外因性睡眠障害、およびサーカディアンリズム睡眠障害から選択される。内因性睡眠障害の例には、精神生理的不眠症、睡眠状態誤認、特発性不眠症、ナルコレプシー、再発性過眠症、特発性過眠症、外傷後過眠症、閉塞性睡眠無呼吸症候群、中枢性睡眠無呼吸症候群、中枢性肺胞低換気症候群、周期性四肢運動障害、不穏下肢症候群(RLS)などが含まれる。外因性睡眠障害の例には、不適切睡眠衛生、環境性睡眠障害、高所不眠症、適応睡眠障害、睡眠不全症候群、限界設定睡眠障害、睡眠開始関連障害、食物アレルギー不眠症、夜間飲食症候群、催眠薬依存性睡眠障害、覚醒薬依存性睡眠障害、アルコール依存性睡眠障害、毒素誘発性睡眠障害などが含まれる。サーカディアンリズム睡眠障害には、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、不規則睡眠/覚醒パターン、睡眠期遅延症候群、睡眠期前進症候群、非24時間型睡眠/覚醒障害などが含まれる。
[00451] 特定の態様において、処置される障害はADHDであり、追加の医薬有効成分はドーパミン再取込み阻害薬である。他の態様において、追加の医薬有効成分はから選択される。
[00452] 特定の態様において処置は、前記の障害例を伴うかまたは発症のリスクをもつと診断された患者に施される予防処置である。
[00453] 医薬ビジネスを実施するための方法の態様はいずれも、記憶障害および認知障害の処置の代わりに、正常範囲の記憶機能および認知機能を示す対象において記憶および認知を増強するために適用できる。
[00454] 本明細書に引用したすべての刊行物および特許の全体を本明細書に援用する。
均等物
[00455] 本明細書に記載した本発明の具体的態様に対する多数の均等物を当業者は認識し、またはルーティン実験程度で確認できるであろう。そのような均等物は特許請求の範囲に含まれるものとする。

Claims (65)

  1. うつ病を治療する方法であって、うつ病の症状を示している患者にHhシグナル伝達のアゴニストを投与し、これによりそれらの症状の一部または全部を改善することを含む方法。
  2. うつ病に関連する記憶障害または認知障害を改善する、請求項1に記載の方法。
  3. うつ病を発症するリスクのある患者を予防処置する方法であって、該患者にHhシグナル伝達のアゴニストを投与し、これによりうつ病を予防する方法。
  4. 哺乳動物において認知機能を増強する方法であって、該哺乳動物にHhシグナル伝達経路のアゴニストを投与し、これにより哺乳動物の認知機能を増強する方法。
  5. 哺乳動物が、アゴニストの投与前に、統計的に正常な範囲の認知機能を示す、請求項4に記載の方法。
  6. 哺乳動物が、アゴニストの投与前に、アルツハイマー病以外の原因の結果としての認知機能不全を伴う、請求項4に記載の方法。
  7. 哺乳動物が、認知機能不全のほかにアルツハイマー病の特徴を示さない、請求項4に記載の方法。
  8. 認知不全を発症するリスクのある患者を予防処置する方法であって、哺乳動物にHhシグナル伝達経路のアゴニストを投与し、これにより認知機能不全を予防する方法。
  9. 哺乳動物において記憶を増強する方法であって、該哺乳動物にHhシグナル伝達経路のアゴニストを投与し、これにより哺乳動物の記憶を増強する方法。
  10. 哺乳動物が、アゴニストの投与前に、統計的に正常な範囲の記憶機能を示す、請求項9に記載の方法。
  11. 哺乳動物が、アゴニストの投与前に、アルツハイマー病以外の原因の結果としての記憶機能不全を伴う、請求項9に記載の方法。
  12. 哺乳動物が、記憶機能不全のほかにアルツハイマー病の特徴を示さない、請求項9に記載の方法。
  13. 記憶不全を発症するリスクのある患者を予防処置する方法であって、該哺乳動物にHhシグナル伝達経路のアゴニストを投与し、これにより記憶不全を予防する方法。
  14. 哺乳動物の中枢神経系の異常な活動を特徴とする情動障害を治療する方法であって、該哺乳動物にHhシグナル伝達経路のアゴニストを投与し、これにより情動障害を治療することを含む方法。
  15. 障害がうつ病、不安障害、パニック障害、強迫性障害、社会不安/恐怖障害、または心的外傷後ストレス症候群である、請求項14に記載の方法。
  16. 哺乳動物の中枢神経系の異常な活動を特徴とする情動障害を予防処置する方法であって、該哺乳動物にHhシグナル伝達経路のアゴニストを投与し、これにより情動障害を予防することを含む方法。
  17. 障害がうつ病、不安障害、パニック障害、強迫性障害、社会不安/恐怖障害、または心的外傷後ストレス症候群である、請求項16に記載の方法。
  18. 非アルツハイマー型認知症またはADHDを治療する方法であって、哺乳動物にHhシグナル伝達経路のアゴニストを投与し、これによりその行動障害を治療することを含む方法。
  19. 非アルツハイマー型認知症またはADHDを予防処置する方法であって、哺乳動物にHhシグナル伝達経路のアゴニストを投与し、これによりその行動障害を予防することを含む方法。
  20. アゴニストが、Hhポリペプチドに対するPatched受容体を含む受容体複合体に機能可能な状態で結合する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. アゴニストが、Smoothenedタンパク質に機能可能な状態で結合する、請求項20に記載の方法。
  22. アゴニストが、Hhシグナル伝達経路内の負のフィードバックまたは抑制因子を阻害する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  23. アゴニストがPatchedタンパク質の抑制機能を妨げ、これによりHhシグナル伝達経路を活性化する、請求項22に記載の方法。
  24. アゴニストがPatchedタンパク質とSmoothenedタンパク質の機能性相互作用を撹乱する、請求項23に記載の方法。
  25. アゴニストが有機低分子である、請求項20に記載の方法。
  26. アゴニストが、SEQ ID NO: 10〜18のいずれかの全配列または部分配列を含むポリペプチドの機能均等物である、請求項20に記載の方法。
  27. アゴニストが、SEQ ID NO: 10〜18のいずれかと少なくとも80%同一のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含むポリペプチドであり、該アミノ酸配列またはそのフラグメントがpatched受容体に結合する、請求項27に記載の方法。
  28. アゴニストが、SEQ ID NO: 10〜18のいずれかの19 kDaのN末端フラグメントである、請求項27に記載の方法。
  29. アゴニストが、SEQ ID NO: 10〜18のいずれかと少なくとも70%同一のポリペプチドである、請求項27に記載の方法。
  30. ポリペプチドが、SEQ ID NO: 15、またはpatchedに結合するそのフラグメントを含む、請求項20に記載の方法。
  31. アゴニストが、Hhシグナル伝達経路を活性化する抗イディオタイプ抗体である、請求項20に記載の方法。
  32. アゴニストが、発現した場合にHhシグナル伝達を活性化する核酸を含むベクターである、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  33. ベクターが、SEQ ID NO: 10〜18のいずれかと少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項32に記載の方法。
  34. ポリペプチドが、SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
  35. ベクターが、6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃における洗浄、続いて2.0×SSCによる50℃における洗浄を含む条件下で、SEQ ID NO: 1〜9のいずれかを含む第2ポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有する、請求項32に記載の方法。
  36. アゴニストがRNAi構築体である、請求項22に記載の方法。
  37. ベクターがRNAi構築体および該RNAi構築体に作動可能な状態で結合したプロモーターを含み、RNAi構築体がHhシグナル伝達経路内の負のフィードバックまたは抑制因子を阻害する、請求項36に記載の方法。
  38. RNAi構築体がsiRNAである、請求項36に記載の方法。
  39. RNAi構築体が表2に挙げる遺伝子を阻害する、請求項36に記載の方法。
  40. RNAi構築体がGli-3を阻害する、請求項36に記載の方法。
  41. RNAi構築体がpatchedを阻害する、請求項39に記載の方法。
  42. アゴニストが有機低分子である、請求項22に記載の方法。
  43. アゴニストを含む医薬組成物を経口投与する、請求項25又は42のいずれか1項に記載の方法。
  44. アゴニストを含む医薬組成物を非経口投与する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  45. アゴニストを含む医薬組成物を標的部位内への注射により投与する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  46. さらに、追加の医薬有効成分を投与することを含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  47. 追加の医薬有効成分がドーパミン再取込み阻害薬である、請求項46に記載の方法。
  48. 下記のものを含むキット:
    a. 医薬的に許容できる賦形剤中におけるHhアゴニスト;および
    b. 哺乳動物の中枢神経系の異常な活動を特徴とする情動障害または行動障害を処置する際に該Hhアゴニストを投与するためのインストラクション。
  49. 下記のものを含むキット:
    a. 医薬的に許容できる賦形剤中における、Hhアゴニストおよび1種類以上の追加の医薬有効成分;
    b. 哺乳動物の中枢神経系の異常な活動を特徴とする情動障害または行動障害を処置する際に該Hhアゴニストを投与するためのインストラクション。
  50. 追加医薬成分がドーパミン再取込み阻害薬である、請求項49に記載のキット。
  51. 追加医薬成分が他のHhアゴニストである、請求項49に記載のキット。
  52. 哺乳動物の中枢神経系の異常な活動を特徴とする情動障害または行動障害を処置するための医薬の調製における、Hhアゴニストの使用。
  53. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. Hhアゴニストを含む組成物または請求項48〜51のいずれか1項に記載のキットを調製し;そして
    b. 哺乳動物の中枢神経系の異常な活動を特徴とする情動障害または行動障害を処置する際にその配合物(formulation)またはキットを使用する恩恵をヘルスケアプロバイダーに販売する。
  54. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. Hhアゴニストを含む組成物または請求項48〜51のいずれか1項に記載のキットを販売するための配布ネットワークを用意し;そして
    b. うつ病の処置にその配合物を使用するためのインストラクション資料を患者または医師に提供する。
  55. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. Hhアゴニストを含む組成物または請求項48〜51のいずれか1項に記載のキットを販売するための配布ネットワークを用意し;そして
    b. うつ病の処置にその配合物を使用するためのインストラクション資料を患者または医師に提供する。
  56. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. うつ病の処置に際して投与するのに適切なHhアゴニストの配合および用量を決定し;
    b. 工程(a)で同定した配合物の有効性および毒性に関する療法プロファイリングを動物において実施し;そして
    c. 工程(b)において許容できる療法プロファイルを有すると同定した製品を販売するための配布ネットワークを用意する。
  57. さらに、製品をヘルスケアプロバイダーに販売するための販売グループを用意することを含む、請求項54に記載の方法。
  58. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. うつ病の処置に際して投与するのに適切なHhアゴニストの配合および用量を決定し;そして
    b. その配合物をさらに開発および販売するための権利を第3者に許諾する。
  59. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. Hhアゴニストを含む組成物または請求項48〜51のいずれか1項に記載のキットを調製し;そして
    b. 対象において記憶機能または認知機能を増強する際にその配合物またはキットを使用する恩恵をヘルスケアプロバイダーに販売する。
  60. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. Hhアゴニストを含む組成物または請求項48〜51のいずれか1項に記載のキットを販売するための配布ネットワークを用意し;そして
    b. 対象において記憶機能または認知機能の増強にその配合物を使用するためのインストラクション資料を患者または医師に提供する。
  61. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. Hhアゴニストを含む組成物または請求項48〜51のいずれか1項に記載のキットを販売するための配布ネットワークを用意し;そして
    b. 対象において記憶機能または認知機能の増強にその配合物を使用するためのインストラクション資料を患者または医師に提供する。
  62. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. 対象の記憶機能または認知機能の増強のために投与するのに適切なHhアゴニストの配合および用量を決定し;
    b. 工程(a)で同定した配合物の有効性および毒性に関する療法プロファイリングを動物において実施し;そして
    c. 工程(b)において許容できる療法プロファイルを有すると同定した製品を販売するための配布ネットワークを用意する。
  63. さらに、製品をヘルスケアプロバイダーに販売するための販売グループを用意することを含む、請求項60に記載の方法。
  64. 下記を含む、医薬ビジネスの実施方法:
    a. 記憶機能または認知機能の増強のために投与するのに適切なHhアゴニストの配合および用量を決定し;そして
    b. その配合物をさらに開発および販売するための権利を第3者に許諾する。
  65. Hhアゴニストが式I〜XIIのいずれかの構造を有する化合物である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
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