ここで図面に転じると、図1は、好ましい実施形態のラチェットレンチ10の平面図であり、図2は、図1の線2−2に沿って見た断面図であり、また図3は、図1に示すラチェットレンチ10の一部の拡大平面図である。これらの図に示すように、ラチェットレンチ10は、ヘッド20を備えたハンドル15を含む。図2に示すように、ラチェットレンチ10は、回転するようになった駆動スタッド要素25を支持する。駆動スタッド要素25は、第1の端部32における駆動スタッド30と第2の端部37における駆動凹部35とを有する。駆動スタッド30は、ツールの非円形開口部に受け入れられるような形状及び寸法にされる。本明細書で使用する場合、「ツール」という用語は、それに限定されないが、ソケット、六角形キー、スクリュドライバブレードなどを含むあらゆる形式のトルク伝達ツールを広く意味する。駆動スタッド30は、付加的な形状を取ることができ、全ての実施形態において矩形であることを必要としないことに注目されたい。例えば、六角形形状を含む、駆動要素の雌形空洞と噛み合うことによってトルクを伝動するのに適した他の非円形形状を使用することもできる。
駆動凹部35は、軸方向整列駆動ツールの駆動スタッドを受けるような形状及び寸法にされる。この図示した実施形態では、駆動凹部35は、軸方向整列駆動ツールの急速解除機構の回止めボール又はピンを受ける4つの凹部36を有する。別の実施形態では、凹部の代わりに孔が使用される。本明細書で使用する場合、「駆動ツール」というのは、それに限定されないが、別のレンチ、延長バー及びナットドライバを含むあらゆるトルク伝達装置を広く意味する。さらに、図2及び図3に示すように、第2の端部37は、駆動凹部35に結合する駆動スタッドに対して自動心出しをもたらすための勾配付き入口29を有する。駆動凹部35は、ヘッド20の上面と同一面として示しているが、駆動スタッド要素25は、駆動凹部35がヘッド20の上面の上方又は下方となるように配置することができる。さらに、駆動スタッド要素25は、あらゆる所望の長さのものとすることができ、この実施形態では、延長バーの形態を取っている。駆動スタッド要素25は、例えばユニバーサルジョイントのような他の形態も取ることができる。
ラチェットレンチ10はまた、一方向駆動伝達ホイール40と、該一方向駆動伝達ホイール40とハンドル15との間に結合されたラチェット機構45とを含む。本明細書で使用する場合、「一方向駆動伝達ホイール」という用語は、適切なラチェット機構と共に使用した時にラチェット作用を行い、また歯付き型(例えば、ラチェットホイール)或いは非歯付き型(例えば、その円周部の周りに摩擦面又はクラッチ機構を有するディスク)とすることができるホイールを意味する。ラチェット機構45は、ハンドル15に対する駆動スタッド要素25の回転を制御する。一方向駆動伝達ホイール40は駆動スタッド要素25に結合され、一方向駆動伝達ホイール40及び駆動スタッド要素25は、軸線Aの周りで一致して回転するようにヘッド20内に回転可能に取付けられる。この実施形態では、一方向駆動伝達ホイール40は、歯付き型ラチェットホイールの形態を取っており、ラチェット機構45は、歯付き型ラチェットホイールの歯と係合する爪の形態を取っている。一方向駆動伝達ホイール40が駆動スタッド要素25の上部に配置されているように示しているが、この一方向駆動伝達ホイール40は、駆動スタッド要素25の長さに沿ってあらゆる中間部位に配置することもできる。さらに、急速解除機構を使用して駆動スタッド要素25をレンチ10のヘッド20から容易に取り外すのを可能にすることもできる。ヘッド20及びハンドル15に結合したカバープレート52は、上述した構成部品をヘッド20内に保持する。
ラチェットレンチ10はさらに、レンチ10のラチェット機構45を制御するのに使用することができる逆転レバー50を含む。逆転レバー50は、ハンドル52を含む。この実施形態では、逆転レバー50は、ラチェット機構45を3つの機能位置、すなわち正転、中立及び逆転のいずれか1つに移動させる。ばね(図示せず)によって付勢された回転止めボール(図示せず)は、ラチェット機構45をこれら3つの位置のいずれか1つに弾性的に保持する。中立位置では、ラチェット機構45は、一方向駆動伝達ホイール40と接触しないように保持されてラチェット作用が起こらないようにし、必要に応じて、ハンドル15に対する一方向駆動伝達ホイール40及び駆動スタッド要素25の自由回転運動を可能にする。正転及び逆転位置では、ラチェット機構45は、それぞれ順方向及び逆方向における一方向駆動伝達ホイールの一方向回転のみを可能にする。爪が回転止め機構によって中立位置に保持されることが、全ての実施形態において必要なわけではではない。中立位置は、他の方法及び例えば摩擦保持手段を含む他の手段によって維持することができる。これに代えて、ラチェット機構45は、中立位置にある時に安定な平衡状態になるような形状とすることができる。また、中立位置を有することは必ずしも必要でない。付加的な情報として、本発明の出願人に譲渡されかつ本明細書に参考文献として組み入れている米国特許第6,190,140号を参照されたい。
この実施形態では、駆動スタッド要素25は、急速解除機構55を有する。図2に示すように、駆動スタッド要素25には、斜め配向の開口部が形成され、固定ピン60が開口部内で移動するように該開口部内に配置される。その係合位置では、固定ピン60の第1の端部65は、ツールの凹部と係合して該ツールを駆動スタッド30上の所定位置に確実に固定する。ばね70が固定ピン60を下向きに付勢する。ツールを駆動スタッド30から解除するためには、オペレータが、ばね70と組合されたカラー75を上向きに移動させる。カラー75が引き上げられると、ばね70が圧縮され、固定ピン60を囲むばね71により、固定ピン60が後退して開口部内を上向きに移動し、固定ピン60の第1の端部65をツールと接触しないように移動させることになる。それによって、ツールは駆動スタッド30から解除される。急速解除機構55のさらなる詳細は、本出願の出願人に譲渡されかつ本明細書に参考文献として組み入れている米国特許第5,644,958号に見ることができる。他のツール解除機構を使用することができることに注目することが重要である。例えば、図示した急速解除機構を使用する代わりに、駆動スタッド30上のばね付勢回転止めボールを使用することもできる。この構造の場合、ボールが駆動スタッド要素25の内部全体で動くことができてツールを駆動スタッド30上に挿入しかつ該駆動スタッド30から取り外すことが可能になる。ツールが駆動スタッド30上に挿入されると、ボールは駆動スタッドからツールの凹部内に部分的に突出してツールを駆動スタッド30上に確実に保持することができる。本発明の出願人に譲渡されかつ本明細書に参考文献として組み入れている米国特許第6,109,140号に、別の好適な構成を示している。急速解除機構の使用がこれらの実施形態において必ずしも必要でないことに注目することもまた重要である。
再び図2に戻ると、本明細書では「ホイール/駆動スタッド要素複合体」と呼ぶ、一方向駆動伝達ホイール40と駆動スタッド要素25との組合せ体は、駆動スタッド30と対向する第1の面80を含む。第1の面80は、軸線Aの周りで少なくとも部分的に延びる荷重支持面85を含む。図2に示すように、一方向駆動伝達ホイール40は、荷重支持面85よりも軸線Aからさらに遠くに延びている。この実施形態では、レンチ10のヘッド20は、荷重支持面85に係合する非回転センタリング要素90を含む。センタリング要素90は、軸方向整列駆動ツールに接続するために駆動凹部35を露出させるような形状になっている。センタリング要素90は、一方向駆動伝達ホイール40と係合して軸線Aに対して一方向駆動伝達ホイール40を中心からそらす傾向にあるトルク及び他の付加荷重に抗して一方向駆動伝達ホイール40を中心に位置させる。一般的に、センタリング要素90は、一方向駆動伝達ホイール40とラチェット機構45との間の有効な係合を阻害することになる、ラチェット機構45から離れる方向の偏揺れ運動に抗して一方向駆動伝達ホイール40を中心に位置させるような形状になっている。さらに、必要に応じて、センタリング要素90は、ラチェット機構45に向かう方向の動き及び/又は軸線Aとラチェット機構45との間で延びる線に対して直角な方向の動きのような他の方向において一方向駆動伝達ホイール40を中心に位置させるような形状とすることができる。
センタリング要素90は、何らかの適切な方法で、軸線Aから離れる少なくとも1つの方向において一方向駆動伝達ホイール40の動きに抗するような形状とすることができる。例えば、センタリング要素90は、軸線Aの周りで連続して延びることができ、或いは軸線Aの周りで180度以上であるが360度以下にわたって延びることができる。馬蹄形状などの他の形状も可能である。さらに、センタリング要素90は、ギャップ又はノッチを含むことができる。
この実施形態では、一方向駆動伝達ホイール40上全体にわたって荷重支持面85を形成しているが、他の実施形態では、荷重支持面は、駆動スタッド要素上全体にわたって形成されるか、又はその一部が一方向駆動伝達ホイール上にかつその一部が駆動スタッド上に形成される。さらに、荷重支持面は、軸線に対して半径方向外向きに(図2に示すように)又は半径方向内向きに面するようにすることができる。さらに、荷重支持面の一部は軸線に対して半径方向内向きに面するが荷重支持面の他の部分は、軸線に対して半径方向外向きに面するようにすることができる。この変形形態を図4に示す。図4に示すように、ホイール/駆動スタッド要素複合体は、駆動スタッド130と対向する面180を含む。面180は、荷重支持面を含み、その一部185は、一方向駆動伝達ホイール140の外縁の一部として形成されまたその別の一部187は、駆動スタッド要素125の外径の一部として形成される。レンチ100のヘッド120は、非回転センタリング要素を形成し、この非回転センタリング要素は、この実施形態では、一方向駆動伝達ホイール140内の噛み合い凹部内に受けられた隆起環形部である。非回転センタリング要素190は、荷重支持面185、187に係合し、かつ軸線A’から離れる少なくとも1つの方向における一方向駆動伝達ホイール140の動きに抗するように配置される。勿論、図2に示す実施形態の他の特徴及び態様は、図4に示す実施形態に使用することができる。
上述のように、一方向駆動伝達ホイール40は、駆動スタッド要素25に結合(又は接続)される。本明細書で使用する場合、「結合した」(又は「接続した」)という用語は、直接的及び間接的に結合すること(又は接続すること)の両方を含むことを広く意図するものである。従って、第1及び第2の部品は、それらが直接機能的に係合(例えば、直接接触によって)している場合、並びに第1の部品が、直接的に又は1つ又はそれ以上の付加的中間部品を介してのいずれかで第2の部品に機能的に係合した中間部品(例えば、接着剤の層又はキー)に機能的に係合している場合に、互いに結合していると称する。また、2つの要素は、それらがある時点では機能的に係合(直接的に又は間接的に)しているが他の時点では機能的に結合していない場合にも、結合していると称する。さらに、「結合した」(又は「接続した」)というのは、状況がそうでないことを必要としない限り、一体形構成を含むものとして広く定義される。このようにして、一方向駆動伝達ホイール40は、一方向駆動伝達ホイール40及び駆動スタッド要素25が後で互いに接合される個別に形成した要素であるか又は単一構成部品として互いに形成されたかに関係なく、駆動スタッド要素25に結合される。図5は、単一構成部品として形成したホイール/駆動スタッド要素複合体500を示す。
ある特定の状況では、駆動スタッド要素及び一方向駆動伝達ホイールを互いに単一構成部品として形成するのではなくて、一方向駆動伝達ホイールとは別個に駆動スタッド要素を形成することが好ましい場合がある。例えば、駆動スタッド要素及び一方向駆動伝達ホイールを単一構成部品として形成した場合、一方向駆動伝達ホイールの存在により、特に短い駆動スタッド要素が望ましい場合には、駆動スタッド要素内に急速解除機構を形成することが困難になる可能性がある。別の実施例としては、2つの別個の構成部品を使用することにより、一方向駆動伝達ホイールを既存の部品に単に付加することのみによって最少の時間と労力で既存の駆動スタッド要素をホイール/駆動スタッド要素複合体に変更することが可能になる。さらに、個別に形成した構成部品により、駆動スタッド要素用の新しいダイを製作せずに異なる大きさの一方向駆動伝達ホイールを製作することが可能になる。
駆動スタッド要素及び一方向駆動伝達ホイールを別個の構成部品にした場合には、それらは、その組成、硬度、延性、仕上げ、展性及び成形方法の少なくとも1つにおいて互いに異なるものとすることができる。例えば、このことにより、一方向駆動伝動要素を異なる材料で製作することを可能にしながら、駆動スタッド要素を冷間成形加工(例えば、冷間圧造)に適した材料で製作することが可能になる。1つの現時点での好ましい実施形態では、駆動スタッド要素は、6140クローム・バナジウム鋼と少なくとも同程度に強い材料で製作され、また一方向駆動伝達ホイールは、US4140鋼で製作される。駆動スタッド要素と一方向駆動伝達ホイールとの間の接触領域は、それに限定されないが、ほぼ円形600(図6参照)、ほぼ六角形700(図7参照)、ほぼ矩形800(図8参照)、ほぼ卵形900(図9参照)、ほぼ多角形及びそれらの組合せ(例えば、矩形半分、六角形半分)である形状を含むあらゆる好適な形状を取ることができる。図3に示す実施形態では、駆動スタッド要素25と一方向駆動伝達ホイール40との間の接触領域は、一方向駆動伝達ホイール40を駆動スタッド要素25にキー止めして一方向駆動伝達ホイール40と駆動スタッド要素25とが一致して回転することを保証する4つの平面部分を有するほぼ円形である。
駆動スタッド要素は、圧入によって一方向駆動伝達ホイールに結合することができる。図2に示すように、駆動スタッド要素25には、一方向駆動伝達ホイール40を駆動スタッド要素25上の正しい位置に圧入するのを助ける段部27を形成することができる。勿論、駆動スタッド要素を一方向駆動伝達ホイールに接続するのに、それに限定されないが、はんだ、接着剤及びクロスバーを含む他の方法を使用することができる。さらに、接触領域は、非円形型又はスプライン型とすることができる。さらに、図2は、一方向駆動伝達ホイール40の底面から圧入した駆動スタッド要素25を示しているが、別の実施形態では、駆動スタッド要素は、一方向駆動伝達ホイールの上面から圧入される。
最後に、別個に形成した駆動スタッド要素及び一方向駆動伝達ホイールは、センタリング要素及び/又は急速解除機構がある状態で又はそれらがない状態でラチェットレンチ内において使用することができることに注目することが重要である。
次に、別の好ましい実施形態に転じると、2つのラチェットレンチを使用してツールを駆動する新規な方法を提供する。第1のラチェットレンチは、ハンドルと、軸線の周りで回転するようにハンドルに取付けられた一方向駆動伝達ホイールと、第1の端部における駆動スタッドと第2の端部における駆動凹部とを備えた駆動スタッド要素と、一方向駆動伝達ホイールとハンドルとの間に結合されたラチェット機構とを含む。第2のラチェットレンチは、駆動スタッドを含む。いずれかのレンチは、上述した形式のもの又は本発明の出願人に譲渡されかつ本明細書に参考文献として組み入れている米国特許第6,182,536号に示す形式のものとすることができることに注目されたい。さらに、第1及び第2のラチェットレンチのいずれかは、任意選択的にセンタリング要素及び/又は急速解除機構を有することができる。さらに、第1のラチェットレンチにおける駆動スタッド要素は、一方向駆動伝達ホイールとは別個に形成することができ、又はそれに代えて駆動スタッド要素及び一方向駆動伝達ホイールは、単一構成部品として互いに形成することができる。
操作時には、第2のラチェットレンチの駆動スタッドが、第1のラチェットレンチの駆動凹部に結合され、またツールが、第1のラチェットレンチの駆動スタッドに結合される。上述のように、「ツール」というのは、それに限定されないが、ソケット、六角形キー、スクリュドライバブレードなどを含むあらゆる形式のトルク伝動ツールを広く意味する。上述したのと同様に、ツールを駆動スタッドに「結合すること」は、直接的又は間接的とすることができる。使用時には、ツールを回転させるために第1のラチェットレンチを第1の方向に回転させると同時に、第2のラチェットレンチを第1の方向とは逆の第2の方向に逆回転させる。必要な場合には、第2のラチェットレンチの駆動スタッドは、第1のラチェットレンチの駆動凹部から結合を切り離すことができる。これは、各レンチを対立法で使用することを可能にする両手での/2ストローク駆動作業を提供する。
上に示した実施形態では、一方向駆動伝達ホイールは歯付き型ラチェットホイールの形態を取り、またラチェット機構は爪の形態を取っているが、他の実施形態では、一方向駆動伝達ホイールは非歯付き型である。例えば、クラッチ式ラチェット機構を使用することもできる。歯付き型ラチェットホイールとは異なり、クラッチ式ラチェット機構は、歯がないことによりラチェット機構がラチェット作用をもたらすために少なくとも1つの歯において戻り方向に滑る必要性が排除されるので、極めて小さい角度でラチェット作用するのを可能にする。本明細書に参考文献として組み入れている米国特許第1,412,688号及び第5,535,647号には、クラッチ式ラチェット機構を構成するようにすることができる構成部品が開示されている。図示するように、図2及び図4に示す一方向駆動伝達ホイールは、歯付き型又は非歯付き型構成部品のいずれかとすることができる。
最後に、これらの好ましい実施形態の各々は、単独で又は互いに組合せて使用することができる。例えば、センタリング要素の実施形態は、一体形のホイール/駆動スタッド要素複合体又は別個に形成した構成部品から製作したホイール/駆動スタッド要素複合体で使用することができる。さらに、開示したレンチは、単独で又は2ストローク作業のための第2のレンチと共に使用することができる。さらに、上述したように、図面には急速解除機構を示しているが、急速解除機構の使用は必ずしも必要でない。
以上の詳細な説明は、本発明が取り得る多くの形態の僅かなもののみを説明したものであり、従って限定としてではなく例示的なものとして受け取らなければならない。本発明の範囲を限定することを意図するものは、全ての均等物を含む状態での特許請求の範囲だけである。