JP2007504914A - 人工網膜用の光投影及びトラッキングシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な方法で、広い視野が得られる人工網膜の結像システムを提供する。
【解決手段】本発明に係るシステムは、哺乳類の眼球の視力を向上させるためのシステムであって、前記眼球の外部に配置され、入力光学像102を受像する撮像装置104と、前記眼球の外部に配置され、画像処理によって前記入力光学像から処理像を作成する画像処理装置106と、前記眼球の外部に配置され、前記処理像を視覚入力として前記眼球に提供するディスプレイ(108、110、112)と、前記眼球の内部に配置され、前記ディスプレイからの光が前記眼球によって投影される光電性人工網膜126と、前記人工網膜の前記ディスプレイに対する位置を判断するためのトラッキングサブシステム(120など)とを備えている。前記画像処理は、前記人工網膜の前記ディスプレイに対する位置に基づいて行われる空間的画像処理によって行われる。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係るシステムは、哺乳類の眼球の視力を向上させるためのシステムであって、前記眼球の外部に配置され、入力光学像102を受像する撮像装置104と、前記眼球の外部に配置され、画像処理によって前記入力光学像から処理像を作成する画像処理装置106と、前記眼球の外部に配置され、前記処理像を視覚入力として前記眼球に提供するディスプレイ(108、110、112)と、前記眼球の内部に配置され、前記ディスプレイからの光が前記眼球によって投影される光電性人工網膜126と、前記人工網膜の前記ディスプレイに対する位置を判断するためのトラッキングサブシステム(120など)とを備えている。前記画像処理は、前記人工網膜の前記ディスプレイに対する位置に基づいて行われる空間的画像処理によって行われる。
【選択図】図1
Description
本発明は、人工網膜を使用した視力向上に関するものである。
半盲又は全盲の原因となるいくつかの一般的な症状(例えば、網膜色素変性症又は加齢性黄斑変性症)は、主に網膜の光受容器の変性によって起こる。しかしながら、これらの症状では、網膜のワイヤリング(wiring)及び処理機能は、一般的に十分な程度に保たれる。そのため、網膜細胞を刺激することによって失われた光受容機能を提供する人工網膜は、前記症状の治療方法として盛んに研究されている。
大まかに言えば、そのようなシステムによって提供される機能は、光学像(optical image)の入力に従った網膜神経細胞の選択的刺激である。従来、この機能を果たすための様々な方法が提案されている。入力される光学像は、通常は、眼球の外側にあるビデオカメラ又は他の標準的な撮像装置によって取得される。画像情報(及び多くの場合は電力も)は、ポイントツーポイント無線リンク(例えば、RFリンク又は光リンク)によって眼球内にある人工網膜上のレシーバに連続的に伝送される。原理上は、有線リンクを使用することも可能であるが、有線リンクを使用することは明らかに困難である。
無線リンクにも、眼球内での多大な電力損失などの重要な実用上の問題がある(特に、多数のピクセルを有する人工網膜では)。特に、連続的に伝達される情報を、網膜刺激に適した形態へ変換することにより、眼球内での電力損失の総計を著しく増加する。そのような方法は、Krulevitchらによる米国特許出願第2003/0097165号及び米国特許出願第2003/0097166号、Okらによる米国特許出願第2002/0095193号、Scribnerらによる米国特許出願第2002/0161417号、Greenbergらによる米国特許出願第2002/0010496号、米国特許出願第2002/0193845号、米国特許出願第2002/0091421号及び米国特許出願第2002/0091422号によって検討されている。
人工網膜に入力を提供する他の方法としては、画像情報を人工網膜上に光学的に投影する方法がある。Nischらによる米国特許第6,298,270号及び第6,347,250号では、そのようなシステムに使用するのに適した人工網膜について検討している。Greenbergらによる米国特許第6,507,758号では、そのようなシステムに画像倍増(image intensification)を提供する外部ユニットについて検討している。Chowらによる米国特許第5,895,415号では、外部ユニットがいくつかの種類の画像処理を行う、人工網膜結像システム(imaging retinal prosthesis system)について検討している。
しかし、それらの像投影人工網膜システム(image projection retinal prosthesis system)には、依然としていくつかの欠点がある。これらの従来の方法では、ユーザの自然な眼球運動によって見ることができる広い視野を容易に提供できない。例えば、米国特許第5,895,415号では、眼球の位置をトラッキングし、対応する方向に入力ビデオ画像カメラ(input video imaging camera)を機械システムによって向ける、機械的に複雑な構成について検討している。また、斑点では光受容体とそれに対応する神経細胞の局所的な関係が存在しないので、人工網膜を有するそのようなシステムを、斑点(macula)又はその近傍で使用することは容易ではない。
したがって、当該技術分野では、簡単な方法で、広い視野が得られる人工網膜の結像システムが求められている。また、当該技術分野では、光受容体とそれに対応する神経細胞の局所的な関係が存在しない所(例えば斑点)での補償を簡単に行うことができる人工網膜の結像システムが求められている。
本発明は、哺乳類の眼球の内部に配置された人工網膜と、眼球の外部に配置された外部結像ユニット(external imaging unit)とを備えるシステムを提供する。外部結像ユニットは、入力光学像(input optical image)を受像する撮像装置と、眼球への入力としての処理光学像(processed optical image)を提供するディスプレイとを備えている。外部結像ユニットは、人工網膜のディスプレイに対する位置を判断するためのトラッキングサブシステムをさらに備えている。外部結像ユニットは、人工網膜のディスプレイに対する位置に基づいて空間的画像処理を行う画像処理装置を備えている。したがって、眼球に提供される処理像は、人工網膜の位置に基づいて空間的に処理される。また、前記画像処理装置は、他の種類の画像処理(例えば時間的画像処理)を行うこともできる。また、本発明は、前記システムに使用される外部結像ユニットを提供する。
前記システムの人工網膜に、トラッキングを容易にするための基準点を設けることもできる。また、前記人工網膜に、前記外部結像ユニットのディスプレイから供給される光パワー(optical power)を受け取るためのパワーレシーバーを設けることもできる。人工網膜の位置をトラッキングすることにより、前記パワーレシーバーにパワーが伝達されるように位置合わせ行うことができる。
本発明は次のような長所を有する。
(1)外部結像ユニットは、眼球の耐容量と同じ程度のパワー(一般に、約2〜3mWである。網膜の加熱により制限される)で放射することができるので、人工網膜の各ピクセルに強力な信号を提供することができる。
(2)外部ディスプレイから人工網膜内の各ピクセルへの情報伝達は、光学像の伝達によって行われる。したがって、全ピクセルに提供する単一の信号シリアルリンクを有する方法とは異なり、シリアル伝送をデコードする必要はなく、眼球内でのデコード処理も必要としない。
(3)外部ディスプレイは、眼球の残りの光受容体への刺激を避けるため、及び、血液、残りの光受容体及び色素上皮(或いは他の眼球色素)での光吸収作用による眼球の加熱を減少させるために、近赤外スペクトル部分で放射することができる。同時に、網膜インプラントの外側の画像領域で、患者の周辺視野に従来のカラー画像を提供することを保つことができる。
(4)外部ディスプレイは、人工網膜よりもはるかに大きい像を網膜上に投影することができる。したがって、患者は、自然な眼球運動によって、人工網膜により提供される視野よりも広い視野を見ることができる。
(5)人工網膜によって生成される刺激信号の強度、継続時間及び繰り返し率は、外部ディスプレイの強度、継続時間及び繰り返し率によって制御することができる。これらのパラメータは、人工網膜の内部での変更を何も行うことなく調整することができる。この特性によって、各患者に対して調整する必要のある刺激パラメータの最適化における柔軟性を提供できる。
(6)本発明は、網膜上及び網膜下インプラントの両方に適用できる。
(7)本発明は、様々な種類の網膜に使用できる。特に、本発明は、電気、機械及び化学的刺激を行う人工網膜に使用することができる。
(1)外部結像ユニットは、眼球の耐容量と同じ程度のパワー(一般に、約2〜3mWである。網膜の加熱により制限される)で放射することができるので、人工網膜の各ピクセルに強力な信号を提供することができる。
(2)外部ディスプレイから人工網膜内の各ピクセルへの情報伝達は、光学像の伝達によって行われる。したがって、全ピクセルに提供する単一の信号シリアルリンクを有する方法とは異なり、シリアル伝送をデコードする必要はなく、眼球内でのデコード処理も必要としない。
(3)外部ディスプレイは、眼球の残りの光受容体への刺激を避けるため、及び、血液、残りの光受容体及び色素上皮(或いは他の眼球色素)での光吸収作用による眼球の加熱を減少させるために、近赤外スペクトル部分で放射することができる。同時に、網膜インプラントの外側の画像領域で、患者の周辺視野に従来のカラー画像を提供することを保つことができる。
(4)外部ディスプレイは、人工網膜よりもはるかに大きい像を網膜上に投影することができる。したがって、患者は、自然な眼球運動によって、人工網膜により提供される視野よりも広い視野を見ることができる。
(5)人工網膜によって生成される刺激信号の強度、継続時間及び繰り返し率は、外部ディスプレイの強度、継続時間及び繰り返し率によって制御することができる。これらのパラメータは、人工網膜の内部での変更を何も行うことなく調整することができる。この特性によって、各患者に対して調整する必要のある刺激パラメータの最適化における柔軟性を提供できる。
(6)本発明は、網膜上及び網膜下インプラントの両方に適用できる。
(7)本発明は、様々な種類の網膜に使用できる。特に、本発明は、電気、機械及び化学的刺激を行う人工網膜に使用することができる。
図1は、本発明に係る視力向上システムを示している。入力光学像(input optical image)102は、撮像装置104に受像される。撮像装置104としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、又は、画像処理に適した出力を生成する他の標準的な撮像デバイスを用いることができる。撮像装置104は、画像処理装置106に入力を提供する。画像処理装置106としては、ここで説明する機能を果たすのに適したハードウエア及び/又はソフトウエアの任意の組み合わせを用いることができる。画像処理装置106は、画像処理によって、入力光学像102から処理像(processed image)を作成する。前記画像処理のさらなる詳細及び例を下記に説明する。
画像処理装置106によって駆動されるディスプレイは、人工網膜126を有する眼球124に、視覚入力(optical input)としての処理像を提供する。図1に示す好ましい実施形態では、前記ディスプレイは、平行光の赤外線を放出する発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)の線源アレイ108、集光レンズ110、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)112を含んでいる。より一般的には、ディスプレイは、眼球124に対して視覚出力としての処理像を提供できる任意のデバイスであり得る。ディスプレイの視野は、人工網膜126の視野よりもはるかに広いことが好ましい。そのようなディスプレイでは、ユーザは、自然な眼球運動によって、広い視野(眼球124の視野と比べる)を見ることができる。この広い視野は、撮像装置104の機械的動作を必要することなく提供されることに留意されたい。図1に示す好ましいディスプレイは、消費電力を減らし、そのことにより効率的なシステムを提供するという特長を持っている。
人工網膜から離れた所に投影される光(破線の矢印)を放射する素子が励起されることなく、人工網膜又はその近傍に投影される光(太線の矢印)を放射する素子のみが励起されるように、線源アレイ108及び/又はLCD112は選択的に電圧印加されることが好ましい。このことにより、線源アレイ108からLCD112を介して眼球124に伝達されるパワー(すなわち熱負荷)を大幅に減少させることができる。また、同様に、線源アレイ108内で、より明るいLEDを使用することが可能になる。より明るいLEDを使用することにより、人工網膜の各ピクセルで必要とされる電気増幅レベルを減少させることができる。LCD112によって人工網膜126上に表示される像(image)は、特に低周辺光レベルのために、光学入力像を増強する人工網膜126の動作に適した強度を有していることが好ましい。
例えば図1に示すような場合では、眼球内にあるパワーレシーバー128は、ディスプレイからの光(鎖線114)を受光する。パワーレシーバー128に伝達された光パワーは、例えばワイヤ(図示せず)によって人工網膜126へ電力を供給するのに使用される。また、人工網膜126とパワーレシーバー128は、図1では完全に分離して示しているが、同一構造(又はチップ)によって一体化することも可能である。パワーレシーバーを用いた場合は、パワーレシーバー128に投影される光を放射/伝達する線源アレイ108及び/又はLCD112の素子を、選択的に電圧印加される一般の線源素子として含んでいることが好ましい。投影は、パワーレシーバー128に最大の強度で行うことが好ましい。ただし、投影は、眼球124へのダメージを避けるために規定される制限に従って行う必要がある。人工網膜126に投影される光は神経細胞刺激を向上させるべくパルス化されるが、パワーレシーバー128に投影される光は、パワー伝達を最大化するために、一定の又はほぼ一定の強度で投影されることが好ましいことに留意されたい。
線源アレイ108は、好ましくは、比較的よく平行化されている(例えば、それらの発散角(全角)は、約8度以下である)。そして、集光レンズ110は、好ましくは、平行化された線源放射線を眼球124の中心に導くように設計されている。これらの2つの特長によれば、そのような等方性放射のごくわずか(一般的に<1%)が眼球124によって集められ、眼球124によって集められた光のごくわずか(約5%)が人工網膜126に到達するので、線源アレイ108が全方位に放射を出すシステムと比較すると、システム効率が著しく向上する。例えば、約1.5mWの光を直径3mmの人工網膜に提供するためには、図1に示した好ましい構成では、ディスプレイから約5mWの光パワーしか必要としない。等方性で非選択的なバックライティング(背面照明)を有している広い視野のディスプレイでは、人工網膜に同様の照明を提供するのに、7.5Wもの光パワーを必要とする。
光路116を通ってLCD112から眼球124に伝達される光は、人工網膜126に投影される。このようにして、人工網膜126に、眼球124の網膜内の神経細胞を次々に刺激する視覚入力が提供される。また、随意的に、上述したように、光路116を通ってディスプレイから眼球124に伝達される光は、パワーレシーバー128に投影される。このようにして、人工網膜126に電力を提供することができる。ここでは図示していないが、例えば、パワーレシーバー128と人工網膜126とのは、電力を提供すべく接続されている。
光路114及び116は、IR−反射スクリーン122によって反射される。スクリーン122は、好ましくは、可視光の視覚入力102がスクリーン122を通過して眼球124に入るように、可視光線を伝達可能である。このような眼球124への可視光線入力は、人工網膜システムによって提供される視野により、残りの正常色覚の周辺視野を調整することを可能にする。そのような調整を容易にすべく、線源アレイ108は、非可視波長(例えば赤外線波長に近い波長)で放射線を放射することが好ましい。そのような非可視波長を選択することによって、線源アレイ108からの光の吸収に起因する眼球内の温度上昇を抑えることができる。また、人工網膜126は、線源アレイ108から放射される波長に対して敏感であり、他の可視光線に対しては敏感でないことが好ましい。
上述した多くの機能を達成するために、LCD112に対する(又は、より一般的には、外部ディスプレイに対すての)人工網膜126の位置を判断することが必要である。したがって、図1のシステムは、前記位置を判断するためのトラッキングサブシステムを備えている。図1の好ましい実施形態では、人工網膜126上に基準点130及び132を設けることによって、トラッキングは容易になる。この2つの基準点は、人工網膜の位置を判断するのにも役立つ。また、基準点を2つ以上設けることによって、トラッキングの精度及び/又は安定性を向上させることができる。基準点130及び132としては、入射光線に応答する受動素子(例えばコーナーキューブ逆反射体)や能動素子(例えば発光ダイオード)を用いることができる。基準点から放射される、線源アレイ108から供給される放射線とは異なる放射線(例えば波長又は時間依存性で)は、本システムの他の放射線と容易に区別されることが好ましい。
基準点と人工網膜の残りの部分とを区別する方法は、次のステップを含んでいる。
(1)基準点の反射率及び/又は散乱率は、人工網膜の残りの部分の表面よりも高められている。反射又は散乱された光を眼球の瞳孔から来た方向に返すことは、この光を検出するために重要である。人工網膜の全方向から光が瞳孔へ戻る反射を確実にするために、この基準点は、3ミラー・バックリフレクター(3-mirror back-reflector)(別名コーナーキューブリフレクタ)を用いることもできる。
(2)基準点から放射された光と、眼球の他の部分から散乱された光とのコントラストを向上させるために、基準点を蛍光物質から作成して、トラッキングアレイ上での基準点の結像を照明波長ではなく蛍光波長によって行う。
(3)基準点として、ディスプレイに使用されるのとは異なる波長の発光ダイオード(LED)又は他の能動発光体を用いることができる。トラッキングアレイによって基準点波長の光を検出することによって、眼球からの散乱光により作成されるバックグラウンド信号を減少させることができる。また、基準点から放射される光が異なる時間依存性を有していれば、基準点から放射される光を散乱光と区別することができる。例えば、基準点からの放射体の検出は、ディスプレイが眼球124に光を提供しないときに行われる。
(1)基準点の反射率及び/又は散乱率は、人工網膜の残りの部分の表面よりも高められている。反射又は散乱された光を眼球の瞳孔から来た方向に返すことは、この光を検出するために重要である。人工網膜の全方向から光が瞳孔へ戻る反射を確実にするために、この基準点は、3ミラー・バックリフレクター(3-mirror back-reflector)(別名コーナーキューブリフレクタ)を用いることもできる。
(2)基準点から放射された光と、眼球の他の部分から散乱された光とのコントラストを向上させるために、基準点を蛍光物質から作成して、トラッキングアレイ上での基準点の結像を照明波長ではなく蛍光波長によって行う。
(3)基準点として、ディスプレイに使用されるのとは異なる波長の発光ダイオード(LED)又は他の能動発光体を用いることができる。トラッキングアレイによって基準点波長の光を検出することによって、眼球からの散乱光により作成されるバックグラウンド信号を減少させることができる。また、基準点から放射される光が異なる時間依存性を有していれば、基準点から放射される光を散乱光と区別することができる。例えば、基準点からの放射体の検出は、ディスプレイが眼球124に光を提供しないときに行われる。
基準点130及び132からの光は、眼球124からLCD112に伝達され、トラッキングアレイ120に偏向される。トラッキングアレイ120としては、光ダイオードのアレイ、又は、位置情報を作成するのに適したその他のデバイスを用いることができる。トラッキングアレイ120は、好ましくは、LCD112平面と対になった平面に配置される(例えば、結像レンズ118により決定される)。トラッキングアレイ120は、画像処理装置106に入力を提供する。眼球124からの光は、図示しないビームスプリッタ(beam splitter)によってトラッキングアレイ120上に偏向される。しかし、図1に示したよりコンパクトな構成のように、LCD112の表面上の角度がついた面によって、光をトラッキングアレイ120に向けて偏向させることが好ましい。
したがって、画像処理装置106で行われる画像処理は、人工網膜のディスプレイに対する位置に基づいた空間的画像処理を含んでいる。そのような位置依存性の空間的画像処理は、本発明の重要な特長である。上述した、眼球124へのイメージ光(及び随意的にパワー光)を作成するための線源アレイ素子の選択的励起は、そのような位置依存性の空間的画像処理の一例である。さらに具体的に言うと、これは、人工網膜126に投影されない処理像の一部を表示しない、2D−トリミング機能である。効率的な理由で、線源アレイ108の選択的励起によってこのトリミング機能を実施することが好ましい(LCD112による他のトリミングとは対照的によりも)。そのような位置依存性の空間的画像処理は、画像増倍、1−D矩形拡大縮小、2−D矩形拡大縮小、2−D放射状拡大縮小、2−D矩形トリミング、2−D放射状トリミング、回転、又は、平行移動を含む。さらに、そのような位置依存性の空間的画像処理のさらなる例は、図4a〜cを参照して後述する。
図1に示した素子104〜122は、人工網膜126に使用される外部作像ユニットに含まれること好ましい。そのような外部作像ユニットは、患者の長期間使用するのに便利なように、ゴーグル又は眼鏡としてパッケージ化される。画像処理ユニット106は、そのようなゴーグル又は眼鏡と一体化させることができる。または、ゴーグル又は眼鏡と電気的に接続される、患者に装着される又は持ち運ばれる分離ユニット(例えば、ポケットに入れられる又は衣類に取り付けられる)に組み込むことができる。
図2a及び図2bは、本発明に使用するのに適した人工網膜を概略的に示している。図2a及び図2bは、それぞれ人工網膜を網膜下又は網膜上に配置した場合を示している。ピクセルへの視覚入力(optical pixel input)202は、感光性ピクセル206のアレイ上に入射される。図1を参照して、ピクセルへの視覚入力202は、LCD112から投影された像である。図2a及び図2bに示した人工網膜への電力は、電源装置128で生成される。各ピクセルは、網膜神経細胞204を局所的に刺激するための電極を有している。一般的に、図2a及び図2bに示したような人工網膜は、多数の感光性ピクセル(例えば、3mmチップ上の18000ピクセルに対応する、20/80ビジョン、視野が10°)を有している。細胞刺激は、化学的、機械的又は電気的に行うことができる。電気的刺激を用いる場合は、電荷が平衡化されたパルス(charge-balanced pulse)が好ましい。そのようなパルスは、長期にわたる電気的刺激に最も適している。図2a及び図2bに示す人工網膜は、ピクセルへの視覚入力の強度とそれに対応する刺激レベルとの適合性を向上させるのに望ましい、各ピクセルの電気増幅を含んでいる。また、人工網膜のピクセルのサイズ及び間隔は、空間分解能を最大限に発揮すべく、各ピクセルが主に1つ又は少数の網膜神経細胞を刺激するようなサイズ及び間隔に設定されることが好ましい。本発明に使用するのに適した人工網膜のさらなる詳細は、2003年12月19日に出願された米国特許出願第10/742,584号(「Interface for Making Spatially Resolved Electrical Contact to Neural Cells in a Biological Neural Network」)に記載されている。
図2a及び図2bに示した人工網膜は、図1に示したシステムに使用され、ピクセルへの視覚入力は画像処理装置106によって効果的に制御される。これはシステム設計の大幅な柔軟性を可能にし、特に、ピクセル間の反応の不均一性の補償を可能にする。ピクセルへの視覚入力のそれぞれと、それに対応する刺激された神経細胞の応答との関係は非常に複雑である。例えば、この関係は、刺激する神経細胞の種類、細胞に対する電極の位置、及び、周囲細胞の性質によって決まる。人工網膜内の様々なピクセルは、インピーダンス(組織の成長の違い又は電極の汚れが原因で)、又は、標的細胞からの距離が異なるので、細胞を刺激するためには異なるパルス特性が必要である。これらの要素は、インプラントの異なる領域での前記関係(光像入力と刺激との関係)の不均一性の一因となる。さらに、この人工網膜システムは、網膜内の信号処理を少なくとも部分的に行うことができる(例えば、病気がそのような処理を低下させた場合に)。それらの場合は、刺激の大きさ、持続期間、及び他のパラメータは、光学像の複雑な関数となる(例えば、コントラスト、平均輝度、動作など)。したがって、画像処理装置106によって行われる画像処理は、そのような機能性を提供する処理を含むことができる(例えば時間的画像処理)。
図3は、人間の眼球の小窩(foveola)の概略図である。光受容体306は、神経線維304を介して神経細胞302に接続されている。小窩308には、神経細胞302がなく、光受容体306だけがある領域が存在ある。神経線維(ヘンレ線維)は、小窩の光受容体306を、小窩から離れて位置する神経細胞302に接続している。一般的に、これらの神経細胞は、小窩から約0.5mm離れている。したがって、小窩の中心にある像は、実際は、小窩領域外側の円形領域に存在する双極細胞及び神経節細胞によって処理される。おおよその正常視力に最も近づけるために、この網膜領域に使用される人工網膜システムは、それらの解剖学的特徴を模倣していることが好ましい。このような模倣は、図3に示す自然な非局所的マッピング(non-local mapping)に類似した、非局所的眼球内マッピング(non-local opto-neural mapping)を提供することによって、網膜インプラント内で行われる。しかしながら、この方法では、人工網膜を非常に複雑なものになる。
人工網膜を利用して網膜の小窩領域に人工視覚を提供するための好ましい方法は、ピクセルへの視覚入力と細胞刺激との間に局所的な関係を有している(例えば、図2a及び図2bに示したように)。要求される非局所的マッピングは、画像処理装置106(図1参照)で行われる位置依存性の空間的画像処理によって提供される。
図4a〜図4cは、そのような位置依存性の空間的画像処理を必要とする例を示している。図4aは、通常の情景を示している(すなわち、図1における典型的な光学像入力102である)。図4bは図4aに対応する図であり、トラッキングサブシステムによって小窩における人工網膜が一番右側の交通信号器の中心にあると判断された場合の、LCG112に表示される空間的に処理像を示している。空間的画像処理は、図3に示したような自然な生体構造と同様な効果を提供するために必要な、視野の中心からの放射状拡大縮小を含んでいる。図3を参照して、領域308には神経細胞302がないため、視野の中心領域には空白が存在する。図4cは、視野の中心が車にあること以外は、図4bと同様である。したがって、位置依存性の空間的画像処理も、本発明の重要な特長である。
図4aと図4b(又は図4c)の間のマッピングは、図3に示した通常構造が原因で、正常視力でも生じることに留意されたい。したがって、本発明に係る補綴的視覚システムでは、位置依存性の空間的画像処理は均等なマッピングを作成することが可能である。このような必要とされるマッピングを外部から提供すると、柔軟性が高まり、インプラントを著しく単純化し、手術時に正確に配置する必要性がはるかに少なくなり、各患者が幅広くカスタマイズすることができるので、マッピングが人工網膜(又はインプラント)に固有である方法と比べると明らかに有益である。人工網膜による網膜神経細胞の刺激は自然の網膜神経細胞と異なるので、最新の人工内耳を使用する際の学習と類似した、良好な視力を得るための様々な形態の神経の「学習」が必要になる。本発明により得られる柔軟性は、好ましいことに、そのような学習を容易にする。
光学像と神経刺激との間の非局所的眼球内マッピングが、部分的に失われた網膜像処理機能を補償するのに好ましい場合が他にもある。例えば、双極細胞の「オン」及び「オフ」を識別し、別々に刺激することができ、刺激レベルが対応するピクセル視覚入力の強度と異なる場合である。さらに、隣接したピクセルの刺激の時間的変化が必要である。例えば、異なるピクセルの刺激パルス間で、時間遅延を設けることは有用である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく限りにおいて、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、単眼視のための単眼に適用することもできるし、両眼視のための両眼に適用することもできる。
Claims (29)
- 光電性人工網膜を有する哺乳類の眼球の外部に配置される外部結像ユニットであって、
入力光学像を受像する撮像装置と、
画像処理によって前記入力光学像から処理像を作成する画像処理装置と、
前記眼球によって前記人工網膜上に投影すべく、前記処理像を視覚入力として前記眼球に提供するディスプレイと、
前記人工網膜の前記ディスプレイに対する位置を判断するためのトラッキングサブシステムとを備えており、
前記画像処理は、前記人工網膜の前記ディスプレイに対する位置に基づいて行われる空間的画像処理を含んでいることを特徴とするユニット。 - 請求項1に記載の外部作像ユニットであって、
前記処理像は、赤外線波長で表示されることを特徴とするユニット。 - 請求項2に記載の外部作像ユニットであって、
前記赤外線波長を実質的に反射し、可視光線を実質的に透過するスクリーンをさらに備えており、
前記ディスプレイからの光は前記スクリーンによって前記眼球内に反射され、周囲からの可視光は前記スクリーンを透過して前記眼球に伝達されることを特徴とするユニット。 - 請求項1に記載の外部作像ユニットであって、
前記画像処理装置は、画像増強をさらに含むことを特徴とするユニット。 - 請求項1に記載の外部作像ユニットであって、
前記画像処理は、時間的画像処理をさらに含むことを特徴とするユニット。 - 請求項1に記載の外部作像ユニットであって、
前記空間的画像処理は、回転、平行移動、1−D矩形拡大縮小、2−D矩形拡大縮小、2−D放射状拡大縮小、2−D矩形トリミング及び2−D放射状トリミングから成る群より選択される1つ以上のステップを含むことを特徴とするユニット。 - 請求項1に記載の外部作像ユニットであって、
前記ディスプレイは、前記人工網膜の視野よりも実質的に広い視野を提供することを特徴とするユニット。 - 請求項7に記載の外部作像ユニットであって、
前記ディスプレイの視野は、前記眼球の視野と実質的に等しいことを特徴とするユニット。 - 請求項1に記載の外部作像ユニットであって、
前記ディスプレイは、ピクセルアレイを有する液晶ディスプレイを含むことを特徴とするユニット。 - 請求項9に記載の外部作像ユニットであって、
前記人工網膜又はその近傍に投影される出力を有するピクセルには電圧が印加され、前記人工網膜から離れた所に投影される出力を有するピクセルには電圧が印加されないように、前記ディスプレイは選択的に電圧印加されることを特徴とするユニット。 - 請求項1に記載の外部作像ユニットであって、
前記ディスプレイは、平行光発光ダイオードアレイを含むことを特徴とするユニット。 - 請求項11に記載の外部作像ユニットであって、
前記人工網膜又はその近傍に投影される出力を有する発光ダイオードには電圧が印加され、前記人工網膜から離れた所に投影される出力を有する発光ダイオードには電圧が印加されないように、前記アレイは選択的に電圧印加されることを特徴とするユニット。 - 請求項12に記載の外部作像ユニットであって、
前記電圧が印加された発光ダイオードは、パルス化された視覚出力を提供することを特徴とするユニット。 - 哺乳類の眼球の視力を向上させるためのシステムであって、
前記眼球の外部に配置され、入力光学像を受像する撮像装置と、
前記眼球の外部に配置され、画像処理によって前記入力光学像から処理像を作成する画像処理装置と、
前記眼球の外部に配置され、前記処理像を視覚入力として前記眼球に提供するディスプレイと、
前記眼球の内部に配置され、前記ディスプレイからの光が前記眼球によって投影される光電性人工網膜と、
前記人工網膜の前記ディスプレイに対する位置を判断するためのトラッキングサブシステムとを備えており、
前記画像処理は、前記人工網膜の前記ディスプレイに対する位置に基づいて行われる空間的画像処理を含んでいることを特徴とするシステム。 - 請求項14に記載のシステムであって、
前記空間的画像処理は、前記入力光学像と前記人工網膜による網膜刺激との間で、前記哺乳類の眼球の自然な視神経マッピングと類似した視神経マッピングを行うことを特徴とするシステム。 - 請求項14に記載のシステムであって、
前記人工網膜は、前記眼球の斑点に配置されることを特徴とするシステム。 - 請求項14に記載のシステムであって、
前記人工網膜は、網膜上又は網膜下に配置されることを特徴とするシステム。 - 請求項14に記載のシステムであって、
前記人工網膜は離散ピクセルを有しており、各ピクセルは、光ピクセル入力を該前記光ピクセル入力に近接する神経細胞に対する局所的な電気、機械又は化学的刺激に変換することを特徴とするシステム。 - 請求項18に記載のシステムであって、
前記各ピクセルに電力を供給する眼球内の電源装置をさらに備えていることを特徴とするシステム。 - 請求項18に記載のシステムであって、
前記神経細胞刺激は電荷が平衡状態のパルス化された電気刺激であることを特徴とするシステム。 - 請求項18に記載のシステムであって、
前記空間的画像処理は、前記視覚ピクセル入力と前記神経細胞刺激との関係における各ピクセルの変化に対して補償することを特徴とするシステム。 - 請求項14に記載のシステムであって、
前記トラッキングサブシステムは、前記眼球内の基準点からの放射を検出する外部の光検出アレイを備えることを特徴とするシステム。
システム。 - 請求項21に記載のシステムであって、
前記人工網膜は、少なくとも2つのトラッキング基準点を有していることを特徴とするシステム。 - 請求項23に記載のシステムであって、
前記基準点は、コーナーキューブリフレクターを含むことを特徴とするシステム。 - 請求項23に記載のシステムであって、
前記基準点は、発光ダイオードを含むことを特徴とするシステム。 - 請求項23に記載のシステムであって、
前記基準点は、蛍光物質を含むことを特徴とするシステム。 - 請求項14に記載のシステムであって、
前記人工網膜は、光パワーレシーバーを含むことを特徴とするシステム。 - 請求項27に記載のシステムであって、
前記トラッキングサブシステムによって選択される前記ディスプレイの一部は、前記人工網膜に電力を供給するために、前記光パワーレシーバーに投影される光を放射することを特徴とするシステム。 - 光電性人工網膜を有する哺乳類の眼球に視覚入力を提供する方法であって、
前記眼球の外部の位置で、入力光学像を受像するステップと、
前記眼球の外部で行われる画像処理によって、前記入力光学像から処理像を作成するステップと、
前記眼球によって前記人工網膜上に投影すべく、前記眼球の外部に配置されるディスプレイに、前記処理像を前記眼球に対する視覚入力として表示するステップとを含んでおり、
前記画像処理は、前記人工網膜の前記ディスプレイに対する位置に基づいて行われる空間的画像処理を含むことを特徴とする方法。
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